本発明者らは、複写機やプリンターにおいて高速プロセスにおいても様々な紙種に対応した低温定着性と現像安定性が両立できるトナーについて鋭意検討を行った。
その結果、トナー粒子中のワックスの分散状態が、低温定着性と染み出し抑制性に関係していることを見出した。そして、エステルワックスとマイクロクリスタリンワックスを含有するトナーにおいて、結着樹脂の分岐特性を制御することで、結着樹脂中のワックス成分の微分散状態を達成することができ、低温定着において平滑紙で発生するブリスターを改善し、かつトナー粒子の表面への染み出し抑制効果の高いトナーを発明するに到った。
以下、従来トナーのワックス分散状態と平滑紙におけるブリスター発生のメカニズムを説明し、続いて本発明における結着樹脂の分岐特性がワックス分散性におよぼす作用と、本発明のトナーを詳細に説明する。
水系媒体中でワックスや顔料等のトナー材料を含むモノマー粒子の液滴を作り、重合することによって得られる懸濁重合法トナーにおいて、エステルワックスと炭化水素ワックスを用いた従来トナーの場合、ワックスはトナー粒子の中心部に集まった状態で存在する。これは、極性の高い水系媒体中でトナー粒子を製造する場合、極性の高い成分がトナー粒子の界面に、低い成分がトナー粒子の中心部に向かって配向する性質によるものと考えられる。したがって、トナー粒子の製造過程で、無極性を示す炭化水素ワックスの殆どは、バインダー樹脂と相分離した状態でトナー粒子の中心部に集まりやすい。また、極性を有するエステルワックスは、長鎖の炭化水素基の影響で大部分は相分離した状態でトナー粒子の中心部に集まるが、一部は結着樹脂と相溶した形で存在する。2種類のワックスを併用した場合、エステルワックスは親和性の高い炭化水素ワックスに引きつけられる性質を示すため、結着樹脂中の相溶量が減少し、経時で染み出しにくい存在状態を維持できる。
このようなワックスの存在状態は、低温定着時にはバインダー樹脂の可塑化に寄与し、トナー保管時にはトナー粒子の表面への染み出し抑制効果を示す。
しかし、平滑度の高い普通紙にベタ画像を出力した場合、定着画像の一部にブリスターが発生する、新たな課題を生じることが分かった。
本発明者らは、ブリスター画像を詳しく解析した結果、定着画像と定着ローラーの接触面において、ワックス成分の供給が不足している微小な箇所で、定着トナー面が定着ローラーに付着し、結着樹脂の微小な火膨れを引き起こしていることを突き止めた。
平滑紙を用いて低温定着を行う場合、一般的な普通紙に比べて紙表面の凹凸形状が無くなるため、紙面と定着トナー面および定着トナー面と定着ローラー表面との接触面積が増加する。したがって、平滑紙を用いて低温定着を良好に行うには、定着ローラー表面により均一で十分な量のワックス成分の供給が必要になる。従来のエステルワックスと炭化水素ワックスを用いたトナーにおいては、ワックスがトナーの中心部に存在するため、定着トナー面の隅々まで均一にワックス成分を供給することが不利であることが示唆される。
本発明者らは、低温定着時においても十分かつ均一にワックス成分が定着ローラーに供給でき、かつ過酷な使用条件においても現像弊害の起こらない樹脂組成、ワックス種およびワックスの存在状態を検討した。その結果、マイクロクリスタリンワックスとエステルワックスを含有し、結着樹脂の分岐特性を制御することで、マイクロクリスタリンワックスをトナー粒子中で均一に分散させることでき、上記効果を満足する本発明のトナーを達成するに到った。
マイクロクリスタリンワックスは、一般的な直鎖炭化水素成分からなるパラフィンワックスとは異なり、分岐鎖構造を持ったイソパラフィンや環状構造を持ったシクロパラフィンを多量に含有している影響で、微小で多数の結晶成長が特徴のワックスである。
従来の懸濁重合法トナーにマイクロクリスタリンワックスを添加した場合、マイクロクリスタリンワックスはトナーの中心部で、多数の微結晶を生成して存在する。
本発明者らの検討によると、マイクロクリスタリンワックスとエステルワックスを含有するトナーにおいて、結着樹脂に一定の分岐組成を持たせた場合、トナー粒子を構成する結着樹脂中にワックスが微分散成長することを見出した。
結着樹脂中で微分散状態が達成できる理由は必ずしも明らかにはなっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと考えている。
懸濁重合法の製造工程に、ワックスの融点以上の高温で残留モノマーを除去する蒸留工程がある。結着樹脂中のワックス成分は、蒸留工程においては溶融した状態で存在しているが、次工程の冷却工程において、ワックスの結晶化温度に到達するとあるきっかけをもって結晶成長が始まる。このとき、結晶の成長は、樹脂中の相溶成分量と、結晶成長の起点となる結晶核の存在に依存すると考えられる。結晶化する前のエステルワックスは結着樹脂への相溶量が多く、またエステルワックスと親和性の高いマイクロクリスタリンワックスも結着樹脂に十分浸透した状態で存在すると考えられる。
このような雰囲気下でトナー粒子を冷却すると、結着樹脂中に存在する樹脂の分岐や架橋構造に起因する分子の絡まった箇所が結晶核として作用すると考えられ、そこを起点に微細な結晶成長が進んだ結果、均一なワックスの微分散状態が達成されたものと考えている。
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分の40℃におけるGPC−MALS−粘度計分析によって測定される絶対分子量、および分岐度を表す指標となる傾きを制御することが必須の要件である。
従来、一般的に測定されてきたTHF溶媒を用いたGPCによる分子量測定では、分子サイズによる換算分子量が得られるにとどまる。そのため、そのトナーに含まれるポリマー本来の分子量や分岐度といった情報を正確に得ることはできない。それに対して、本発明におけるテトラヒドロフラン(THF)可溶成分のGPC−MALS−粘度計分析より得られる分子量は、樹脂成分の絶対的な分子量を示すものである。また、樹脂成分に含まれる分岐情報も得られる。
本発明のトナーは、樹脂成分由来のテトラヒドロフラン(THF)不溶分を5.0質量%以下含有し、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分は、絶対分子量の重量平均分子量が2.5×104以上2.5×105以下であり、トナーの樹脂成分の組成としては比較的低分子量であるとともに、この分子量領域における樹脂成分に含まれる分岐度分布を下記で説明する状態に高度に制御したものである。
THFに不溶な樹脂成分は、高い架橋度を有する高分子ゲル成分である。本発明においては、THFに可溶な樹脂成分の分岐を意図的に持たせてワックスの微分散性を高めたものであり、樹脂の微架橋構造は、その弾性で低温定着領域に特化したオフセット抑止効果の発現も兼ね備えたものである。したがって、本発明においては低温定着性を阻害する恐れのあるTHF不溶分は必要なく、本発明のトナーではTHF不溶分の含有量がトナーに対して5.0質量%以下であることが必須である。
THF不溶分を5.0質量%以下とすることで、高速プロセスにおいても安定した低温定着特性を得ることができる。
上記THF可溶成分の絶対分子量の重量平均分子量が2.5×104未満の場合には、定着時の樹脂成分の粘度が低くなりすぎて、耐オフセット性能が劣るようになる。また、経時における、トナー粒子の表面へのワックス染み出し抑制効果が弱まる。一方、上記THF可溶成分の絶対分子量の重量平均分子量が2.5×105を超える場合には、低温定着特性が劣るようになる。
GPC−MALS−粘度計分析においては、先に述べた通り、直鎖型ポリマーと分岐型ポリマーの分布情報が得られる。一般に、高分子は分子量が大きくなるに従って、その構造の嵩高さの影響で粘度が上昇する。また、同一分子量の高分子で分岐度の異なる高分子の粘度を比較した場合、分岐度が高くなる程分子の広がりが抑制され回転半径も小さくなるためその粘度が低下する。上記関係は、粘度Ivの常用対数(log[Iv])を、絶対分子量(M)の常用対数(log[M])に対してプロットした場合、構成モノマーに固有のリニアな直線関係を示すことが知られている。また、分岐度の高い成分を多く含む分布である程、直鎖状の成分のみからなる高分子の分布と比べて低粘度を示すため、この直線の傾きが小さくなる。
本発明者らはこの関係に着目し、トナーを構成する樹脂成分の分子量と分岐度がワックス分散性におよぼす効果について鋭意検討した。その結果、絶対分子量を小さく制御し、かつ樹脂成分の分岐度を一定の割合で高めた場合に優れた特性を発揮する知見を見出した。
本発明のトナーは、上記GPC−MALS−粘度計分析によって測定される絶対分子量(M)の常用対数(log[M])を横軸にプロットし、粘度(Iv)の常用対数(log[Iv])を縦軸にプロットした際の傾き(a)が0.50以上0.80以下である。
本発明においては、上記傾き(a)が表す樹脂の分岐構造を精密に制御することが、本発明の効果を発揮する上で特に重要な要素である。
なお、本発明における、粘度(Iv)の常用対数(log[Iv])を絶対分子量(M)の常用対数(log[M])に対してプロットした際の傾き(a)の求め方は、本体付属の解析ソフトでMark−Houwink−Sakurada Plotsを行い、GPC−MALS−粘度計分析の3元同時出力プロファイルにおける粘度計が検出したクロマトグラムの全樹脂成分に相当する分析範囲を指定することで求められる(図1参照)。
傾き(a)が0.50に満たない場合、分岐度の高い高分子の割合が過剰となり、弾性率が増大するため低温定着特性が劣る傾向にある。一方、傾き(a)が0.80を超える場合、直鎖状高分子の割合が高くなるため、ワックスの結晶核となる樹脂の分岐点が減少し、ワックスの微分散状態が悪くなる。
なお、本発明のトナーを構成する樹脂成分の分子量および分岐度分布を制御し、上記(a)を調整するには、懸濁重合法によってモノマーを重合してトナー粒子を製造する場合に、水素引き抜き効果の高い開始剤を選択し、添加方法や活性条件を調整することで架橋反応やグラフト重合をコントロールして分岐度を制御する方法を挙げることができる。また、モノマー種の選択や、架橋剤の添加、分岐度を制御した複数種の樹脂成分を添加することによっても制御することができる。
本発明で用いられるエステルワックスは、1官能以上4官能以下のエステルワックスであり、2官能または4官能のエステルワックスがさらに好ましい。
具体的には、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸モノエステル類;セバシン酸ジベヘニル、ドデカン二酸ジステアリル、オクタデカン二酸ジステアリル等の飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのジエステル化物;ノナンジオールジベヘネート、ドデカンジオールジステアレート等の飽和脂肪族ジオールと飽和脂肪酸とのジエステル化物;グリセリントリベヘネート、グリセリントリステアレート等のトリアルコール類と飽和脂肪酸のトリエステル化物;グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート等のトリアルコール類と飽和脂肪酸との部分エステル化物;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の4価アルコール類と飽和脂肪酸のテトラエステル化物;ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の4価アルコール類と飽和脂肪酸との部分エステル化物;等が挙げられる。
所望の融点を満たす4官能を超えるエステルワックスは、分子量が高くなるため樹脂可塑性が弱まるので、低温定着特性を有効に発揮しにくくなる。
本発明で用いられるエステルワックスは2官能または4官能のエステルワックスであることがさらに好ましい。明確な理由は必ずしも明らかになっていないが、本発明者らはその理由を、以下のように考えている。
2官能または4官能のエステルワックスの分子構造が、結着樹脂に相溶しやすく、また、マイクロクリスタリンワックスとも馴染みやすい特性を示すため、親和性がさらに高まりより均一な微分散性が達成され、低温定着時には定着トナー面により均一にワックス成分を供給することができ、また長期保管時の染み出し抑制効果も高まったものと考えている。
本発明で用いられるマイクロクリスタリンワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、補外融解開始温度(Tim)が52℃以上70℃以下であることが好ましい。
上記補外融解開始温度(Tim)を52℃以上70℃以下とすることで、ワックスの融解開始温度と結着樹脂のガラス転移温度が近づくため、定着時の樹脂可塑効果がより有効に働き、定着トナーの表面に十分な量のワックスを供給でき、紙種によらず安定した低温定着特性を示すことができる。
上記補外融解開始温度(Tim)が52℃未満の場合には、経時においてワックスがトナー表面に染み出しやすく、長期保管後の耐久性に劣る。一方、上記補外融解開始温度(Tim)が70℃を超える場合には、低温定着時に定着トナー表面に十分な量のワックスを供給しにくくなり、低温定着性に劣る。
本発明で用いられるマイクロクリスタリンワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)が60℃以上90℃以下であることが好ましい。
上記最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)を60℃以上90℃以下とすることで、低温定着における平滑紙へのベタ画像出力時に発生するブリスターを改善でき、低速プロセスにおけるグロス紙等厚紙へのべた画像出力においても、オフセットを抑止し高いグロスの画像が得られる。
上記最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)が60℃未満の場合は、高温定着時に離型効果を発揮しにくくなるため、ホットオフセット性に劣る。一方、上記最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)が90℃を超える場合、低温定着時に瞬時にワックスを定着画像表面に供給することができにくくなり、低温定着性に劣る。
本発明で用いられるマイクロクリスタリンワックスとエステルワックスの総量(添加総量)に対するエステルワックスの割合は、30質量%以上96質量%以下であることが好ましい。
上記エステルワックスの添加の割合を、30質量%以上96質量%以下とすることで、幅広い温度領域において紙種を問わず良好な定着特性を示し、かつ経時におけるトナー表面へのワックス染み出し抑止効果に優れる。
上記エステルワックスの添加比率が30質量%未満の場合は、エステルワックスによる樹脂可塑効果や低温定着時における離型効果が得られにくく、低温定着性に劣る。一方、上記エステルワックスの添加比率が96質量%を超える場合は、ワックスの微分散性が不十分になり、平滑紙へベタ画像を出力した場合のブリスター抑止効果や、オフセット防止効果、また経時におけるワックスの染み出し抑制効果に劣る。
なお、本発明で用いられるマイクロクリスタリンワックスとエステルワックスの添加総量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは4質量部以上16質量部以下、より好ましくは7質量部以上14質量部以下である。
上記マイクロクリスタリンワックスとエステルワックスの添加総量を、4質量部以上16質量部以下とすることで、本発明の効果をより有効に発揮することができ、様々な紙種に対応した低温定着性と、長期保管後の現像特性に優れる。
以下に、本発明で用いられる材料について説明する。
本発明のトナーを製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。前記ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体または多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
本発明においては、前記した単官能性重合性単量体を単独でまたは2種以上組み合わせて、または前記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。多官能性重合性単量体は架橋剤としても作用するため、本発明の分岐度制御に有効である。
本発明のトナーの製造時には、結着樹脂成分の分子量および分岐度を制御する手段として、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることが好ましい。
本発明に用いられる架橋剤としては、2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、および上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤の添加量は、前記単量体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上2質量部以下である。
本発明のトナーが、結着樹脂の分子量および分岐度を制御するために用いることのできる重合開始剤としては、油溶性開始剤および/または水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5時間以上30時間以下のものである。また重合性単量体100質量部に対し0.5質量部以上20質量部以下の添加量で重合反応を行うと、通常、分子量1万以上10万以下の間に極大を有する重合体が得られ、適当な強度と溶融特性を有するトナーを得ることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドのような過酸化物系重合開始剤等が例示できる。
本発明においては、結着樹脂の分岐度を制御する上で最も好ましい開始剤の選択および条件は、水素引き抜き効果の高い開始剤を重合反応初期時に活性状態で用いる方法が挙げられる。水素引き抜き能の高い開始剤としては、有機過酸化物系の開始剤が好ましく、t−ブトキシラジカルを発生するパーブチル系の有機過酸化物の使用が最も好ましい。また、本発明における開始剤の活性状態の好ましい雰囲気とは、例えば開始剤の10時間半減期温度より10℃以上高い温度での重合状態等が挙げられる。
本発明においては、結着樹脂を構成する重合性単量体の重合度を制御するために、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いることも可能である。
本発明のトナーは、プロセススピードの速いプリンターや複写機で使用する場合、耐久安定性の向上を目的に、極性基を有する樹脂を添加することが好ましい。極性基を有する樹脂を、本発明の懸濁重合法トナーに添加した場合、極性基の作用でトナー粒子の界面側に傾斜濃度を有して存在する傾向があるため、トナー粒子の堅牢性が高まる。本発明で好ましく用いることのできる極性基を有する樹脂は、結着樹脂と相分離することで強固なシェル層を形成できるポリエス樹脂や、結着樹脂と相溶性に優れ、傾斜型のシェル層を形成できる、結着樹脂と同組成のものを含むビニル系樹脂が好ましい。
極性基を有する樹脂は、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂のいずれか一方または両方を適宜選択して使用することが可能である。
本発明で用いることのできるポリエステル樹脂は、飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一方または両方を適宜選択して使用することが可能である。
ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分と酸成分を以下に例示する。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また下記一般式(1)で表されるビスフェノール誘導体、
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
あるいは一般式(1)の化合物の水添物、また、下記一般式(2)で示されるジオール、
あるいは式(2)の化合物の水添物のジオール、さらには、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルのような多価アルコール等、が挙げられる。
2価のカルボン酸としては以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸またはその無水物、さらには、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸のような多価カルボン酸やその無水物。
上記極性基を有する樹脂がポリエステル樹脂である場合の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
本発明で用いることのできる、ビニル系の極性基を有する樹脂としては、スチレン系のアクリル酸共重合体、スチレン系のメタクリル酸共重合体、スチレン系のマレイン酸共重合体等が好ましく、特にスチレン−アクリル−アクリル酸系共重合体が帯電量を制御しやすく好ましい。また、本発明の極性基を有する樹脂は1級または2級の水酸基を有するモノマーを含有していることがより好ましい。
具体的には、スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−n−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。1級または2級の水酸基を有するモノマーを含有した樹脂は極性が大きく、長期放置安定性がより良好となる。
上記極性基を有する樹脂がビニル系樹脂である場合の添加量は、結着樹脂100質量部に対して2質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
なお、上記極性基を有する樹脂の好ましい添加方法は、懸濁重合法によりトナーを製造する過程において、結着樹脂を構成するモノマーへ上記極性基含有樹脂を溶解させる方法が好ましい。
本発明で帯電制御や水系分散媒体中の造粒安定化を主目的として、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を側鎖に持つ高分子が用いられることが好ましい。その中でも特にスルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基の重合体または共重合体を用いることが好ましい。
本重合体を製造するためのスルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する単量体は、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸やそれらのアルキルエステルがある。
本発明に用いられるスルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を含有する重合体は、上記単量体の単重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、先の結着樹脂成分の説明で例示した単官能性重合性単量体または多官能性重合性単量体を使用することができる。
上記スルホン酸基等を有する重合体は、重合性単量体または結着樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部以下を含有することが好ましい。より好ましくは、0.1質量部以上3.0質量部以下である。
上記スルホン酸基等を有する重合体が0.01質量部以上5.00質量部以下の場合には、トナー粒子の十分な帯電安定効果を発揮するため、環境特性や耐久特性に優れる。さらに、ポジ成分を有する分散安定剤を用いる水系分散媒体中での造粒工程においては、電気二重層の形成を強めるために、トナー粒子サイズのシャープな分布を得ることができる。
また本発明のトナーを製造する場合においては、本発明のトナーを好ましい分子量分布にするために、低分子量ポリマーを添加することが好ましい。低分子量ポリマーは、懸濁重合法トナーの製造過程で、重合性単量体組成物中に添加することができる。該低分子量ポリマーとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が2,000以上5,000以下の範囲で、かつ、Mw/Mnが4.5未満、好ましくは3.0未満のものが好ましい。
低分子量ポリマーの例としては、低分子量ポリスチレン、低分子量スチレン−アクリル酸エステル共重合体、低分子量スチレン−アクリル共重合体が挙げられる。
本発明のトナーは、着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料または染料、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料または有機染料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料または有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
イエロー系着色剤としての有機顔料または有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、および上記イエロー系/マゼンタ系/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
本発明は、懸濁重合法を用いてトナー粒子を得るため、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料系やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。染料系を表面処理する好ましい方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体系に添加する。
また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンで処理を行ってもよい。
これらの着色剤は、単独または混合しさらには固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
さらに、本発明のトナーは、着色剤として磁性材料を含有させ磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性材料は着色剤の役割を兼ねることもできる。磁性材料としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属またはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が例示できる。
上記磁性体は、より好ましくは、表面改質された磁性体が好ましい。重合法により磁性トナーを調整する場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
これらの磁性体は個数平均粒径が2μm以下、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下のものが好ましい。トナー粒子中に含有させる量としては重合性単量体または結着樹脂100質量部に対し20質量部以上200質量部以下、特に好ましくは結着樹脂100質量部に対し40質量部以上150質量部以下が良い。
本発明のトナーにおいては、先に説明したスルホン酸基を側鎖に持つ高分子とは別に、または、それとともに、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤の例として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類が挙げられる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
また、荷電制御剤の例として、トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独でまたは2種類以上組み合わせて含有することができる。
これら荷電制御剤の中でも、本発明の効果を十分に発揮するためには、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上3質量部以下である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
以下に本発明のトナーの製造方法について述べる。
本発明のトナーは、懸濁重合法により製造される。この懸濁重合法においては、重合性単量体にワックス及び着色剤(さらに必要に応じて重合開始剤、架橋剤、帯電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物とする。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水系分散媒体中に適当な撹拌器を用いて分散し、そして重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって蒸留、濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。
水系分散媒体調製時に使用する分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。また、有機系の分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
本発明のトナーに用いられる水系分散媒体調製時に使用する分散剤としては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤の使用量は重合性ビニル系単量体100質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3,000質量部以下の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水のような液媒体中で、高速撹拌下、上記したような難水溶性無機分散剤を生成させて水系分散媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散剤を得ることができる。
本発明において、重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程は、高剪断力を有する撹拌機を備えた容器内で、回分式操作によって行う方法でも、撹拌機を備えた第1の容器(以下タンク1)と、高剪断力を有する撹拌機を備えた第2の容器(以下タンク2)の間に循環ラインを設け、循環流通させることによって造粒を行う方法の何れであってもかまわないが、ショートパスを防ぎ、より均一な粒度分布を達成できる循環流通させる方法の方がより好ましい。
図2は、本発明において造粒工程で用いることのできるシステムの一例である。図3は、本発明において造粒工程で使用できる高剪断撹拌機の一例である。溶解タンク(符号1)とタンク1(符号2)、さらにタンク1と重合タンク(符号7)は、それぞれ排出ラインにより接続されている。また、タンク1には循環ライン(符号4)が接続され、循環ライン中には、ポンプ(符号5)、高剪断撹拌機(図示せず)を備えたタンク2(符号6)、及び必要に応じて圧力計、温度計、流量計等の付帯機器(図示せず)が設置されている。
造粒工程を回分式操作によって行う場合は、タンク1(符号2)内で難水溶性無機分散剤等を含む水系分散媒体を調製後、溶解タンク(符号1)より重合性単量体、ワックス及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を受入れ、高剪断撹拌機(符号3)によって重合性単量体組成物の液滴形成を行い、重合タンク(符号7)に排出し、重合タンク内で反応を進めてトナー粒子の形成を行う。
前記造粒工程を、循環流通させる方法で行う場合は、重合性単量体組成物を受入れた後、高剪断撹拌機(符号3)によって重合性単量体組成物の液滴形成を行う間、ポンプ(符号5)及びタンク2(符号6)内の高剪断撹拌機の起動をかけ、循環ライン(符号4)を通じて重合性単量体組成物を含む水系媒体を循環流通させながら、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。
本発明においては、前記循環流通時に、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された回転子と同様の形状の固定子が一定間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置された撹拌装置を用いて、前記重合性単量体組成物を処理する工程を有することが好ましい。
循環流通させる上記造粒工程において、上記の撹拌装置を用いた処理を行うことで、モノマー溶解度の比較的低いマイクロクリスタリンワックスの高融点成分を、モノマー液滴中に均一に分散することができ、定着時における性能安定性を高めることができる。
また、上記の撹拌装置を用いた場合、液滴粒子の剪断と合一の機会が増えるため、分岐度を制御する働きを示す開始剤や架橋剤が、液滴粒子間で均一に分散されるため、トナー粒子の重合過程で分岐や微架橋構造がより均質化された状態で働くため、マイクロクリスタリンの微分散性を高めることができる。
続いて、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された回転子と、同様の形状の固定子が一定間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置された撹拌装置の例を挙げる。上記撹拌装置の全体図を図3(a)に、撹拌装置の側面図を図3(b)に、撹拌部の図3(a)におけるA−A’断面図を図3(c)に、撹拌部の図3(b)におけるB−B’断面図を図3(d)に、回転子の斜視図を図3(e)に、固定子の斜視図を図3(f)にそれぞれ示す。ホールディングタンク158に、あらかじめリン酸カルシウム等の難水溶性無機分散剤が分散された水系媒体を調整する。続いて別容器で調整した、重合性単量体、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス及び着色剤を含有する重合性単量体組成物の溶解液を、ホールディングタンク158内の水系媒体に投入し、造粒液とする。投入された該造粒液は、循環ポンプ160を介して、撹拌装置入口より供給され、撹拌装置においては、ケーシング152の内部に具備された、回転子175と固定子171のスリットを通過し、遠心方向に排出される。撹拌装置内を造粒液が通過する際、回転子、固定子のスリットのずれにより生じる遠心方向への圧縮、吐出による衝撃と回転子、固定子間のせん断による衝撃により水系媒体中に重合性単量体組成物の液滴が形成される。
回転子と固定子の形状は、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された形状であり、一定の間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置されていることが好ましい。
回転子及び固定子が相互に噛み合うように設置された形状であることにより、ショートパスが軽減され、重合性単量体組成物の液滴形成が十分に行える。また、回転子と固定子が同心円方向に交互に多段に存在することにより、造粒液が遠心方向に進行する際に、多くのせん断・衝撃を受けるため、一層、均一な液滴の形成を行うことができる。ホールディングタンク158は、ジャケット構造であるため、造粒液の冷却・加熱が可能である。上述の撹拌装置としては、例えば、キャビトロン(ユーロテック社製)を好適に用いることができる。
本発明においては、残存する未反応の重合性単量体や副生成物等の揮発性不純物を除去するために、重合工程終了後に一部水系媒体を蒸留工程により留去してもよい。蒸留工程は常圧もしくは減圧下で行うことができる。
本発明においては、反応工程終了後に、蒸留工程を行う場合は蒸留工程終了後に、前記工程に続いてトナー粒子を含む水系媒体を撹拌しながら冷却を行う冷却工程を有する製造方法であることが好ましい。該冷却工程は、該トナーの示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、ガラス転移温度(Tg)以上最大発熱ピークのピーク温度(Tpc)以下の温度領域を0.70℃/分以下の冷却速度で冷却する製造方法であることが好ましい。
また、該冷却工程における該温度領域内で、温度を一定時間一定に保つ、いわゆるアニール工程を有する製造方法も好ましい。
トナーのガラス転移温度(Tg)以上最大発熱ピークのピーク温度(Tpc)以下の温度領域では、トナー粒子を構成する樹脂成分は軟らかく、ワックス成分が比較的自由に結晶成長できる温度領域である。この温度領域で徐冷を行うと、結着樹脂中の架橋や分岐点がより確実にマイクロクリスタリンワックスの結晶核の起点と成りやすく、また、微分散したクラスター状のワックスドメインが大きく成長する傾向を示す。このようなワックスの分散状態は、低温定着時にトナー定着面へ十分な量の溶融ワックスを供給しやすく、また、樹脂中のエステルワックスに由来する相溶成分が相対的に減少するため、染み出し抑制効果が高まる。
本発明においては、トナー粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、重合性単量体組成物の粒子を含む水系媒体を酸またはアルカリで処理することもできる。その後、一般的な固液分離法により、トナー粒子は液相と分離されるが、酸またはアルカリ及びそれに溶解した分散剤を完全に取り除くため、再度水を添加してトナー粒子を洗浄する。この工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナー粒子を得る。得られたトナー粒子は、必要であれば公知の乾燥手段により乾燥される。
本発明のトナー粒子には流動化剤として無機微粉体が外添されている。本発明のトナー粒子に添加する無機微粉体としては、シリカが好ましく、個数平均一次粒径が4nm以上80nm以下のシリカ微粉体が好ましい。本発明において個数平均一次粒径が上記範囲にあることで、トナーの流動性が向上するとともに、トナーの保存安定性も良好になる。
無機微粉体の個数平均一次粒径は、走査電子顕微鏡で観察し視野中の100個の無機微粉体の粒子径を測定して平均粒子径を求める。
またシリカと酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物のような微粉体を併用することができる。シリカと併用する該無機微粉体の中でも酸化チタンが好ましい。
上記無機微粉体のシリカの例としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカまたはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカの両者が含まれる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンのような他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物とともに用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。シリカはそれらも包含する。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー母粒子の摩擦帯電の均一化のために添加される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上等の機能を付与することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての摩擦帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じやすくなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、以下のものが挙げられる。未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらのような処理剤は単独でまたは併用して用いられてもよい。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時または処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の摩擦帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤としても、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることもできる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属及びそれらの合金または酸化物の平均粒径20〜300μmの粒子が使用される。また、磁性体が樹脂に分散された磁性体分散型キャリア、ポーラスな酸化鉄に樹脂を埋め込んだ低比重キャリアなども好ましく用いられる。
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂のような樹脂を付着または被覆させたものが好ましく使用される。
以下に、本発明にかかる物性値の測定方法について説明する。
〔1〕40℃におけるGPC−MALS−粘度計分析
(i)前処理
トナー0.1gを専用のろ過容器(例えば東ソー製溶解ろ過容器 ポアサイズ10μm)に入れ、THF 10mlとともに15ml試験管に入れる。これを溶液ろ過装置(例えば東ソー製DF−8020)を用い、40℃で24時間溶解させる。
24時間後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)が使用できる。)を通過させたものを測定試料とし、下記装置を用い、分析を行った。
(ii)[分析条件]
装置 :HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
DAWN EOS(Wyatt Technology社製)
高温差圧粘度検出器(Viscotek社製)
カラム:KF−807、806M、805、803(昭和電工社製)の4連カラム
検出器1:多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN EOS
検出器2:高温差圧粘度検出器
検出器3:ブライス型デュアルフロー式示差屈折計
温度:40℃
溶媒:THF
流速:1.0ml/min
注入量:400μl
本測定においては、絶対分子量に基く分子量分布及び固有粘度が、直接出力されるが、その測定理論は以下の通りである。
[測定理論]
M90=R(θ90)/KC・・・レイリー方程式
M90:90°における分子量
R(θ90):散乱角90°でのレイリー比
K:光学定数(=2π2n2/λ0 4NA・(dn/dc)2)
C:溶液濃度
Rg=(1/6)1/2([η]M90/φ)1/3・・・Flory Fox式
Rg:慣性半径
η:固有粘度
φ:形状要素
絶対分子量:M=R(θ0)/KC
R(θ0)=R(θ90)/P(θ90)
P(θ90)=2/X2・(e-X−(1−X)) (X=4πn/λ・Rg)
λ:波長
(dn/dc):本発明では、結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂であるため0.185ml/gとした。
本発明における絶対分子量の重量平均分子量、及び分岐度を表す粘度Ivの常用対数(log[Iv])を絶対分子量(Mw)の常用対数(log[Mw])に対してプロットした際の傾き(a)は、装置付属の専用ソフト「TriSEC GPC Software GPC−LS−Viscometry Module Version3.0 Rev.B.05.15」(Viscotek社製)を用いて求めた。
絶対分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−10」、東ソー社製)を用いて、既知の分子量及び固有粘度(例えば前記F−10を用いた場合、重量平均分子量(Mw)96400、固有粘度0.411dl/g)より校正を行って求めた。
傾き(a)の算出は、前記装置付属の専用ソフトでMark−Houwink−Sakurada Plotsを行って、分析範囲を指定することで求めた。
なお、本発明におけるトナーの全樹脂成分(a)の定義とは、40℃におけるGPC−MALS−粘度計分析の3元同時出力プロファイルにおいて、粘度計が検出したクロマトグラムの全樹脂成分に相当する領域の分析値に基づく。
〔2〕トナーの樹脂成分のTHF不溶分量
トナー中の樹脂成分のTHF不溶分は、以下のようにして測定する。
トナー約1.0gを秤量(W1g)し、予め秤量した円筒濾紙(例えば、商品名No.86R(サイズ28×100mm)、アドバンテック東洋社製)に入れてソックスレー抽出器にセットする。そして、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mlを用いて16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。
抽出終了後、円筒ろ紙を取り出して風乾した後、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を含む円筒濾紙の質量を秤量し、円筒濾紙の質量を差し引くことにより、抽出残分の質量(W2g)を算出する。
そして、樹脂成分以外の成分の含有量(W3g)を下記式(1)のように差し引くことによって、THF不溶分を求めることができる。
THF不溶分(質量%)={(W2−W3)/(W1−W3)}×100・・・(1)
樹脂成分以外の成分の含有量は、公知の分析手段によって測定することができる。分析が困難な場合には、以下のようにして樹脂成分以外の成分の含有量(トナー中の焼却残灰分(W3’g))を見積もり、その含有量を差し引くことによって、THF不溶分を求めることができる。
トナー中の焼却残灰分は以下の手順で求める。予め秤量した30mlの磁性るつぼに約2gのトナーを秤量(Wag)する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に1時間以上放冷し、焼却残灰分を含むるつぼの質量を秤量し、るつぼの質量を差し引くことにより焼却残灰分(Wbg)を算出する。そして、下記式(2)により、試料W1g中の焼却残灰分の質量(W3’g)を算出する。
W3’=W1×(Wb/Wa)・・・(2)
この場合、THF不溶分は、下記式(3)で求められる。
THF不溶分(質量%)={(W2−W3’)/(W1−W3’)}×100・・・(3)
〔3〕ワックスの補外融解開始温度(Tim)・最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)
ワックスの補外融解開始温度(Tim)及び最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、ワックス約4mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲20〜150℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度150℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度20〜150℃の範囲におけるDSC曲線の補外融解開始温度と最大吸熱ピークのピーク温度を、本発明のワックスの補外融解開始温度(Tim)及び最大吸熱ピークのピーク温度(Tpm)とする。
ここで、補外融解開始温度(Tim)とは、日本工業規格(JIS)K7121 9.1項(制定年月日1987年10月01日、確認年月日2013年02月04日)に定める補外融解開始温度(Tim)であり、上記測定方法により測定されるDSC曲線において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、融解ピークの低温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度とする。
ただし、融解ピークにショルダーや、多段のピークを有する場合は、融解ピークが低温側のベースラインを離脱し最初のこう配が最大になる点(低温側にショルダーを有する場合はショルダーのこう配が最大になる点)で引いた接線の交点の温度とする。
〔4〕トナーのガラス転移温度
本発明におけるトナーのガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて以下のように測定する。
具体的には、上記示差走査熱量計のモジュレーティッドモードを用い、以下の条件にて測定し、昇温1回目のDSC曲線のピーク位置から求める。測定サンプルは約5mgを精密に秤量する。それをアルミニウム製のパン中に入れ、対照用に空のアルミパンを用い、測定範囲を20℃から140℃の間で測定を行う。
<測定条件>
・温度20℃で5分間平衡を保つ。
・1.0℃/minのモジュレーションをかけ、温度140℃まで1℃/minで昇温。
・温度140℃で5分間平衡を保つ。
・温度20℃まで降温。
ここで、ガラス転移温度は、日本工業規格(JIS)K7121 9.3項(制定年月
日1987年10月01日、確認年月日2013年02月04日)に定める中間点ガラス転移温度である。
〔5〕トナーの最大発熱ピークのピーク温度(Tpc)
トナーの最大発熱ピークのピーク温度(Tpc)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナー約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲20〜150℃の間で、昇温速度10℃/min、降温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度150℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温させる過程において、降温過程の温度20〜150℃の範囲におけるDSC曲線の最大発熱ピークのピーク温度を、本発明のトナーの最大発熱ピークのピーク温度(Tpc)とする。
〔6〕トナーの重量平均粒径(D4)
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
専用ソフトの標準測定方法(SOM)を変更画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトのパルスから粒径への変換設定画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。実施例中及び比較例中の部は特に断りがない場合、全て質量基準である。
〔マイクロクリスタリンワックス〕
トナーの製造例で用いたマイクロクリスタリンワックスについて、DSC測定により求めた各物性を表1に示す。
〔エステルワックス〕
トナーの製造例で用いたエステルワックスについて、DSC測定により求めた各物性を表2に示す。
(トナーの製造例1)
下記の手順によって懸濁重合法トナーを製造した。
図2に示す態様のシステムを用いて、図3に示す高剪断力を有する撹拌手段を用いて水系分散媒体の調整及び造粒工程の操作を行った。
〔水系分散媒体の調製〕
高速撹拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を備えたタンク1(図2中の符号2の容器)中に0.1mol/L−Na3PO4水溶液850部および10%塩酸8.0質量部を添加し、回転数を10,000r/minに調整し、60℃に加温した。
次いで、この液の一部をタンク1底部より抜き出し、循環ラインよりロータリーポンプ(図2中の符号5)を用いて連続的に、高剪断力撹拌機:キャビトロン(ユーロテック社製)を設置したタンク2(図2中符号6の容器)の導入口に送液した。水系媒体は、タンク2内部において、高剪断処理された後、排出口より再び循環ラインを通り、タンク1へ戻る。このときの循環ライン中の水系媒体の流速は、0.5m/sであった。また、キャビトロンのロータ周速は、40m/sであった。
次に、上記操作を継続した状態で、タンク1内を窒素置換するとともに、タンク1に1.0mol/LのCaCl2水溶液68部を添加し、30分間撹拌を継続して微少な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系媒体を調製した。
〔溶解液の調製〕
また、下記の材料をプロペラ式撹拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
・スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31.0部
・アクリル酸n−ブチル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.0部
・スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0部
(スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=91.7/3.3/2.5/2.5、Mp=20,000、Mn=8,000、Mw=15,200、Mw/Mn=1.9、Tg=92.0℃、酸価=20.0mgKOH/g、水酸基価=10.0mgKOH/g)
・飽和ポリエステル樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0部
(イソフタル酸/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3mol付加物=50mol%/50mol%/0.1mol%/88mol%/22mol%から生成、酸価10mgKOH/g、ピーク分子量10,000、重量平均分子量:9,900、Tg=72℃)
・スルホン酸基含有共重合体 FCA−1001−NS(藤倉化成社製)・・0.3部
〔重合単量体組成物の調製〕
次に上記溶解液に
・スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39.0部
・着色剤 C.I.Pigment Blue 15:3・・・・・・・・・6.5部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製)・・・・・・・・0.5部
・マイクロクリスタリンワックス1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0部
・エステルワックス1−1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9.0部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート・・・・・・・・・・・・・・0.25部
を加え、その後、混合液を温度60℃に加温した後にTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)にて、9,000r/minにて撹拌し、溶解、分散し、重合性単量体組成物を得た。
〔トナー粒子の調製(造粒工程)〕
続いて、上記水系分散媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤として
・パーブチルPV(10時間半減期温度54.6℃(日本油脂製))・・・・9.0部
を加え、60℃にてTK式ホモミキサーを10,000r/min、キャビトロンをロータ周速40m/sの条件で、循環流速を0.5m/sで30分間撹拌し、造粒した。
その後、プロペラ式撹拌装置に移して100r/minで撹拌しつつ、70℃で5時間反応させた後、80℃まで昇温し、さらに2時間反応を行い、トナー粒子を製造した。重合反応終了後、反応容器内にスチームを吹き込み98℃まで昇温し、蒸留操作を5時間行った。蒸留工程終後、該粒子を含むスラリーを98℃から20℃まで、0.2℃/minの速度で冷却し、冷却工程終了後に希塩酸を加えて水系媒体のpHを3.0以下として難水溶性分散剤を溶解した。さらにスラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。なお、スラリーをろ過したろ液中の重合性単量体量を測定することによって、添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。
上記トナー粒子100部に対して、流動性向上剤として、シリカ微粉体に対して20質量%のジメチルシリコーンオイルで処理された、負極性に摩擦帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.7部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合して、重量平均粒径(D4)が6.5μmのトナー1を得た。トナー1の物性を表4に示す。
(トナーの製造例2〜35)
トナーの製造例1において、開始剤、架橋剤、連鎖移動剤の種類と添加量および重合温度を表3に記載したものに変更し、ワックスの種類と添加量およびトナー粒子の製造方法を表4に記載のものに変える以外はトナーの製造例1と同様にしてトナー2〜35を得た。トナー2〜35においても、添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることを確認した。トナー2〜35の物性を表4に示す。
なお、表4におけるワックスの含有量は、結着樹脂100.0部に対するワックスの含有量である。
以下に本発明の画像評価方法および評価基準について説明する。
(1)低温定着性
定着温調を自由に変えられるように改造したLBP9200C(キヤノン社製)を用い、ベタ全域画像(先端余白:5mm、トナー載り量0.50mg/cm2)をXerox社製Business4200(75g/m2)上に出力し、安定した定着画像が得られる最低定着可能温度を下記基準にて評価した。なお、本発明の安定した定着画像とは、得られた定着画像濃度と、定着画像を50g/cm2(0.49N/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で5回摺擦した後の画像濃度を測定し、濃度低下率が10%以下の定着状態と定義する。
A:最低定着可能温度が150℃以上160℃以下で、安定した定着画像が得られる
B:最低定着可能温度が160℃より高く170℃以下で、安定した定着画像が得られる
C:最低定着可能温度が170℃より高く190℃以下で、安定した定着画像が得られる
D:最低定着可能温度が190℃より高い、または定着可能温度を有さない
(2)ブリスター試験
プロセススピードを270mm/sec、定着温調を190℃に改造したLBP9200C(キヤノン社製)を用いて、2次色をイメージしたベタ全域画像(先端余白:5mm、トナー載り量0.90mg/cm2)を平滑度の高い普通紙GF−C081(キヤノン社製)(81.4g/m2)上に出力し、定着画像上のブリスター発生レベルを目視にて評価した。なお、ブリスターとは、定着工程で定着画像の一部が定着ローラーによって剥離する火膨れ状の画像欠陥である。
A:未発生
B:若干発生している
C:発生している
D:著しく発生している
(3)厚紙グロス安定性
定着温調とプロセススピードを自由に変えられるように改造したLBP9200C(キヤノン社製)を用いて、2次色をイメージしたベタ全域画像(先端余白:5mm、トナー載り量0.90mg/cm2)をHP社製HP Color Laser Photo Paper,glossy(220g/m2)上に、厚紙定着条件(プロセススピード100mm/sec)において、定着温調200℃、210℃、および230℃の各温度で出力した。各出力画像の定着画像内の75°グロスの5点平均値を測定し、各条件におけるグロスの平均値と、条件間の最大グロス差を求めて定着グロスの安定性を下記基準により評価した。
なお、出力は低温低湿環境(温度15℃,湿度10%RH)で行い、グロスの測定には、日本電色工業(株)製のPG−3D(入射角θ=75°)を使用し、標準面は光沢度96.9の黒色ガラスを使用した。
A:全ての条件でグロス70以上、かつグロス差2.0%未満
B:全ての条件でグロス70以上、かつグロス差2.0%以上5.0%未満
C:全ての条件でグロス70以上、かつグロス差5.0%以上10.0%未満
D:グロス70未満の条件あり、または全ての条件でグロス70以上であるがグロス差10.0%以上
[耐久現像性の評価]
下記のような改造を施した市販のレーザービームプリンターLBP9200C(キヤノン社製)を用いて、25,000枚の耐久試験を行った。プリンターの改造条件としては、普通紙モードのプロセススピードを270mm/secに変更し、定着温調を190℃に設定した。耐久評価チャートは印字率が2%のオリジナルチャートを用い、トナーカートリッジ322II(シアン)(キヤノン社製)に評価トナーを詰め替え、シアンステーションに装着してプリントを行った。
また、長期保管後の現像性評価用のサンプルとして、上記評価トナーを詰め替えたカートリッジをもう一本用意して、過酷環境(温度40℃,湿度95%RH)で30日放置し、長期保管トナーの評価に用いた。
耐久試験の条件は、通常評価として常温常湿環境(温度23℃,湿度50%RH)、長期保管トナーの評価として高温高湿環境(温度30℃,湿度80%RH)の各環境下において、普通紙モードで坪量75g/m2(LETTERサイズ)の用紙を用いて合計25,000枚のプリント試験を行った。
(4)ハーフトーン画像再現性(現像スジ)
トナー規制部材への、トナー或は遊離外添剤融着に起因する画像上縦スジの有無を、ハーフトーン画像による目視評価と、より早期にかつ厳密にスジの発生有無を確認するために、ディザ処理を行わないハーフトーン画像(疑似中間調表現を行わず、レーザー光量の調整のみで中間調を再現した画像)を出力して、縦スジの有無を目視確認により評価した。
なお、サンプリングのタイミングは、耐久試験において、1,000枚おきにハーフトーン画像およびディザ処理を行わないハーフトーン画像を出力し、耐久試験を通しての最悪画像をもって下記基準により評価した。
A:両ハーフトーン画像ともに、縦スジは無く良好。
B:ハーフトーン画像にはスジが見られないが、ディザ処理を行わないハーフトーン画像において、うっすらとスジが見られる部分がある。
C:ハーフトーン画像においては縦スジが見えにくいものの、ディザ処理を行わないハーフトーン画像においてははっきりとした縦スジが認められる。
D:ハーフトーン画像においても、目立った縦スジが認められる。
(5)濃度安定性
20mm四方のベタ黒パッチが現像域内に9箇所配置されたオリジナル画像を出力し、その9点平均濃度の初期画像濃度に対する耐久試験中の画像濃度の最大濃度差を比較することで、濃度安定性を評価した。画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
なお、サンプリングのタイミングは、前記ハーフトーン画像再現性評価と同様に、1,000枚おきにオリジナル画像を出力して評価した。
A:最大濃度差0.15未満
B:最大濃度差0.15以上、0.25未満
C:最大濃度差0.25以上、0.30未満
D:最大濃度差0.30以上
〔実施例1〜29、比較例1〜5〕
トナーの製造例1〜35で製造したトナーを、各々先に説明した項目の基準に即して評価を行った。実施例1〜29のトナーは、低温定着特性と現像耐久特性に優れた効果を発揮したのに対して、比較例1〜5のトナーは、低温定着性と現像耐久特性のバランスに乏しい結果であった。評価結果を表5に示す。