JP2015010922A - 屈折率計測方法、屈折率計測装置および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 被検物の屈折率を高精度に計測すること。
【解決手段】 光源10からの光を被検光と参照光に分割し、被検物80を透過した被検光と参照光を干渉させる干渉計測によって被検物80の屈折率を計測する。第1の温度において第1の位相差を計測し、第1の温度とは異なる第2の温度において第2の位相差を計測し、第1の位相差と第2の位相差と被検物80の屈折率の温度係数とを用いて被検物80の屈折率を算出する。
【選択図】 図2
【解決手段】 光源10からの光を被検光と参照光に分割し、被検物80を透過した被検光と参照光を干渉させる干渉計測によって被検物80の屈折率を計測する。第1の温度において第1の位相差を計測し、第1の温度とは異なる第2の温度において第2の位相差を計測し、第1の位相差と第2の位相差と被検物80の屈折率の温度係数とを用いて被検物80の屈折率を算出する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、屈折率計測方法および屈折率計測装置に関し、特に、モールド成型により製造される光学素子の屈折率計測に有用である。
モールドレンズの屈折率は成型条件によって変化する。成型後のレンズの屈折率は、一般的に、プリズム形状に加工した後、最小偏角法やVブロック法で計測される。この加工作業は、手間とコストがかかる。さらに、成型後のレンズの屈折率は、加工時の応力解放によって変化する。したがって、成型後のレンズの屈折率を非破壊で計測する技術が必要である。
非特許文献1は、スペクトル領域の干渉信号を波長の関数を用いてフィッティングすることで屈折率を算出する方法を提案している。
H.Delbarre,C.Przygodzki,M.Tassou,D.Boucher,"High−precision index measurement in anisotropic crystals using white−light spectral interferometry."Applied Physics B,2000,vol.70,p.45−51.
非特許文献1に開示された方法では、被検物の厚みが既知である必要がある。さらに、干渉信号は複雑な関数であって、直接フィッティングすることは難しいため、屈折率の計測精度が低下しやすい。
本発明は、被検物の屈折率を高精度に計測することができる屈折率計測方法および屈折率計測装置を提供することを例示的な目的とする。
本発明の屈折率計測方法は、光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記被検光を被検物に入射させ、前記被検物を透過した被検光と前記参照光を干渉させた干渉光を計測することによって前記被検物の屈折率を計測する屈折率計測方法であって、前記被検物の温度が第1の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第1の位相差を計測する第1計測ステップと、前記被検物の温度が前記第1の温度とは異なる第2の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第2の位相差を計測する第2計測ステップと、前記第1の位相差と前記第2の位相差と前記被検物の屈折率の温度係数とを用いて前記被検物の屈折率を算出する算出ステップとを有することを特徴としている。
本発明の光学素子の製造方法は、光学素子をモールド成型するステップと、上記の屈折率計測方法を用いて前記光学素子の屈折率を計測することによって、成型された光学素子を評価するステップと、を有することを特徴としている。
本発明の光学素子の製造方法は、光学素子をモールド成型するステップと、上記の屈折率計測方法を用いて前記光学素子の屈折率を計測することによって、成型された光学素子を評価するステップと、を有することを特徴としている。
本発明の屈折率計測装置は、光源と、前記光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記被検光を被検物に入射させ、前記被検物を透過した被検光と前記参照光を干渉させる干渉光学系と、前記被検光と前記参照光の干渉光を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される干渉信号を用いて前記被検物の屈折率を演算する演算手段とを有する屈折率計測装置であって、前記被検物の温度を制御する温度制御手段を有し、前記演算手段は、前記被検物の温度が第1の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第1の位相差と、前記被検物の温度が前記第1の温度とは異なる第2の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第2の位相差と、前記被検物の屈折率の温度係数とを用いて前記被検物の屈折率を算出することを特徴とする屈折率計測装置。
本発明によれば、被検物の屈折率を高精度に計測することができる屈折率計測方法および屈折率計測装置を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の実施例1の屈折率計測装置のブロック図である。本実施例の屈折率計測装置は、マッハ・ツェンダー干渉計で構成されている。本実施例では、被検物は負の屈折力(焦点距離の逆数)をもつレンズである。被検物は屈折率と厚みが未知である。屈折率計測装置は被検物の屈折率を計測するものであるから、被検物はレンズでも平板でもよく、屈折型光学素子であれば足りる。
屈折率計測装置は、光源10、干渉光学系、媒質70と被検物80を収容可能な容器60、検出器90、コンピュータ100を有し、被検物80の屈折率を計測する。また、容器60は媒質70を介して被検物の温度を調整するための温度調整機構(温度制御手段)を備えている。
光源10は、波長帯域の広い光源(例えば、スーパーコンティニューム光源)である。干渉光学系は、光源10からの光を、被検物を透過する光(被検光)と被検物を透過しない光(参照光)とに分割し、被検光と参照光を重ね合わせて干渉させ、その干渉光を検出器90に導光する。干渉光学系は、ビームスプリッタ20、21、ミラー30、31、40、41、50、51を有する。
ビームスプリッタ20、21は、例えば、キューブビームスプリッタで構成される。ビームスプリッタ20は、界面(接合面)20aにおいて、光源10からの光の一部を透過すると同時に残りを反射する。界面20aを透過した光が参照光であり、界面20aで反射した光が被検光である。ビームスプリッタ21は、界面21aにおいて、参照光の一部を反射し、被検光の一部を透過する。この結果、被検光と参照光が干渉して干渉光を形成し、干渉光は検出部90に向けて射出される。
容器60は、媒質70(例えば、水やオイル)と被検物80を収容している。容器内における被検光の光路長と参照光の光路長は、被検物80が容器内に配置されていない状態で、一致することが好ましい。したがって、容器60の側面(例えば、ガラス)は厚みおよび屈折率が均一で、かつ、容器60の両側面が平行であるのが望ましい。容器60は、温度調整機構(温度制御手段)を備えており、媒質の温度の昇降、媒質の温度分布の制御等を行うことができる。媒質70の温度が変わると被検物80の温度も変化する。被検物80の温度は、媒質70の温度と等しい。尚、媒質70は空気でもよい。
媒質70の屈折率は、不図示の媒質屈折率算出手段によって算出される。媒質屈折率算出手段は、例えば、媒質の温度を計測する温度計測手段と、計測した温度を媒質屈折率に換算するコンピュータから構成される。また、媒質屈折率算出手段は、屈折率および形状が既知のガラスプリズム(基準被検物)と、媒質中に配置されたガラスプリズムの透過波面を計測する波面計測センサ(波面計測手段)と、透過波面とガラスプリズムの屈折率および形状から媒質の屈折率を算出するコンピュータから構成されてもよい。
ミラー40、41は、例えば、プリズム型ミラーである。ミラー50、51は、例えば、コーナーキューブリフレクターである。ミラー51は、図1の矢印の方向の駆動機構を有する。ミラー51の駆動機構は、例えば、駆動レンジの大きいステージと駆動分解能の高いピエゾ素子から構成されている。ミラー51の駆動量は、不図示の測長器(例えば、レーザ測長器やエンコーダ)によって計測される。ミラー51の駆動は、コンピュータ100によって制御されている。被検光と参照光の光路長差は、ミラー51の駆動機構によって調整することができる。
検出器90は、ビームスプリッタ21からの干渉光を分光し、干渉光強度を波長(周波数)の関数として検出する分光器などから構成されている。
コンピュータ100は、検出器90が出力する干渉信号から被検物の屈折率を算出する演算手段として機能すると共に、ミラー51の駆動量や媒質70の温度を制御する制御手段としても機能し、CPUなどから構成されている。ただし、検出器90が出力する干渉信号から被検物の屈折率を算出する演算手段と、ミラー51の駆動量や媒質70の温度を制御する制御手段を、互いに異なるコンビュータによって構成することもできる。
干渉光学系は、被検物80が容器内に配置されていない状態で、参照光と被検光の光路長が等しくなるように調整されている。調整方法は次のとおりである。
図1の屈折率計測装置において、被検物80が被検光路上に配置されない状態で参照光と被検光の干渉信号が取得される。このとき、参照光と被検光の位相差φ0(λ)および干渉強度I0(λ)は数式1で表される。
ただし、λは空気中の波長、Δ0は参照光と被検光の光路長の差、I0は参照光の強度と被検光の強度の和、γは可視度(ビジビリティ)である。数式1より、Δ0がゼロではないときは、干渉強度I0(λ)は振動関数となる。したがって、被検光と参照光の光路長を等しくするためには、干渉信号が振動関数とならない位置にミラー51を駆動させればよい。このとき、Δ0がゼロになる。
ここでは、被検光と参照光の光路長が等しくなるように調整される場合(Δ0=0)について説明したが、現在のミラー51の位置がΔ0=0からどれだけシフトしているかが分かれば、被検光と参照光の光路長を等しくする必要はない。被検光と参照光の光路長が等しくなる位置(Δ0=0)からのミラー51の駆動量は不図示の測長器(例えば、レーザ測長器やエンコーダ)によって測定することができる。
被検物が被検光路上に配置されているとき、図1の検出器90で計測されるスペクトル領域の干渉信号は図3のようになる。図3の(a)、(b)は、被検物80の温度が互いに異なるときに計測された干渉信号である。図3(a)は被検物80の温度が第1の温度であるときの干渉信号であり、図3(b)が被検物80の温度が第2の温度であるときの干渉信号である。基準温度T0における被検光と参照光の位相差φ(λ)は数式2で表される。
ただし、nsample(λ)は基準温度T0における被検物の位相屈折率、nmedium(λ)は基準温度T0における媒質の位相屈折率、Lは基準温度T0における被検物の幾何学厚みである。
なお、屈折率には、光の等位相面の移動速度である位相速度vp(λ)に関する位相屈折率Np(λ)と、光のエネルギーの移動速度(波束の移動速度)vg(λ)に関する群屈折率Ng(λ)があり、後述する数式13によって相互に変換することができる。
屈折率は温度によって変化するため、どの温度における屈折率を算出するかを明確にすることが必要である。本実施例では、算出したい屈折率の温度を基準温度T0と定め、基準温度T0における屈折率nsample(λ)を算出する。
図3のλ0は、位相差φ(λ)が極値をとる波長を示している。λ0付近の波長では干渉信号の周期が長くなるため、干渉信号が計測しやすい。逆に、λ0から離れた波長では干渉信号の周期が短くなるため、干渉信号が密になりすぎて分解できない可能性がある。もし、λ0が計測範囲から外れている場合は、ミラー51を駆動させてΔ0を調整すればよい。
図2は、被検物80の位相屈折率を算出する手順を示すフローチャートであり、「S」はStep(ステップ)の略である。
まず、被検物80の温度が第1の温度T1に調整される(S10)。被検物80の温度は、媒質70の温度を調整することによって調整される。次に、第1の温度T1において第1の位相差φ1(λ)が計測される(第1計測ステップS20)。
第1の温度T1における位相差φ1(λ)は、例えば、次のような位相シフト法を用いて計測することができる。ミラー51を微小量ずつ駆動させながら干渉信号が取得される。ミラー51の位相シフト量(=駆動量×2π/λ)がδk(k=0,1,・・・,M−1)のときの干渉強度Ik(λ)は数式3で表される。
第1の温度における位相差φ1(λ)は、位相シフト量δk、干渉強度Ik(λ)を用いて数式4で算出される。位相差φ1(λ)の算出精度を高めるためには、位相シフト量δkをできるだけ小さくし、駆動ステップ数Mをできるだけ大きくするのが良い。算出された位相差φ1(λ)は2πで畳み込まれている。したがって、2πの位相とびをつなぎ合わせる作業(アンラッピング)が必要である。尚、位相シフト法で得られた位相差は、2πの整数倍の任意性(未知のオフセット項)を含む。
次に、被検物80の温度が第2の温度T2に調整される(S30)。そして、第2の温度において第2の位相差φ2(λ)が計測される(第2計測ステップS40)。第2の位相差φ2(λ)は、第1の位相差φ1(λ)と同様に、位相シフト法を用いて計測される。
最後に、第1の位相差φ1(λ)と第2の位相差φ2(λ)と屈折率の温度係数dn(λ)/dTを用いて被検物の屈折率を算出する(算出ステップS50)。算出方法は、次のとおりである。
第1の位相差φ1(λ)および第2の位相差φ2(λ)を数式5でフィッティングすると、整数m1、m2、および分散式の係数Ak、Bk(k=1,2,・・・,6)が得られる。つまり、第1の温度における位相屈折率n1 sample(λ)(第1の屈折率)および第2の温度における位相屈折率n2 sample(λ)(第2の屈折率)が算出される。ここでは、位相屈折率の関数として、コーシーの分散式が用いられているが、他の屈折率分散式(例えば、セルマイヤーの分散式)でもよい。
第1の温度における媒質の位相屈折率n1 medium(λ)および第2の温度における媒質の位相屈折率n2 medium(λ)は、媒質屈折率計測手段で計測された既知の量である。αは被検物の線膨張係数であり、既知の量である。第1の位相差および第2の位相差の未知のオフセット項は、それぞれ2πm1、2πm2で表現されている。被検物80の厚みLは未知の量であるため、数式5では、厚みの仮定値が使用されている。厚み仮定値として、例えば、被検物の設計厚みが使用さればよい。数式5では、第1の温度における光路長差Δ0と第2の温度における光路長差Δ0が、等しいと仮定しているが、異なっていてもよい。
厚み仮定値が真値Lから誤差ΔL(厚み誤差)を持つ場合、数式5のフィッティングで得られる位相屈折率n1 sample(λ)、n2 sample(λ)は、それぞれ、厚み誤差ΔLによる屈折率誤差Δn1(λ)、Δn2(λ)をもつ。屈折率誤差Δn1(λ)、Δn2(λ)は、数式6で表される。
厚み仮定値が厚み誤差ΔLを持つ場合、位相屈折率n1 sample(λ)とn2 sample(λ)の差分は、数式7で表される。ただし、dn(λ)/dTは既知の量である。
数式7の右辺の第1項は、第1の温度と第2の温度の差分に対応する屈折率の差分である。厚み仮定値が厚み誤差ΔLを持たなければ、位相屈折率n1 sample(λ)とn2 sample(λ)の差分は、数式7の右辺の第1項と等しい。したがって、位相屈折率n1 sample(λ)とn2 sample(λ)の差分が、第1の温度と第2の温度の差分に対応する屈折率の差分と等しくなるように、厚み仮定値を選択して演算すれば良い。そのとき選択された厚み仮定値が被検物80の厚みとなり、そのとき算出された位相屈折率n1 sample(λ)、n2 sample(λ)が、被検物80の位相屈折率となる。なお、基準温度T0における被検物の位相屈折率nsample(λ)は、数式8を用いた屈折率の温度換算によって算出される。
このようにして、被検物80の屈折率が算出される(算出ステップS50)。
算出ステップS50において、位相屈折率n1 sample(λ)とn2 sample(λ)の差分と、第1の温度と第2の温度の差分に対応する屈折率の差分とが等しくなるような厚み仮定値を選択して演算するために、以下の第1乃至第3ステップを繰り返すのが良い。第1ステップは、被検物80の厚みの仮定値を用いて、第1の位相差φ1(λ)を屈折率分散式でフィッティングすることによって第1の屈折率n1 sample(λ)を求めるステップである。第2ステップは、被検物80の厚みの仮定値を用いて、第2の位相差φ2(λ)を屈折率分散式でフィッティングすることによって第2の屈折率n2 sample(λ)を求めるステップである。第3ステップは、第1ステップ及び第2のステップでそれぞれ求めた第1及び第2の屈折率の差分と、被検物80の屈折率の温度係数に第1の温度と第2の温度の温度差を適用して求めた屈折率差とを比較するステップである。被検物80の厚みの仮定値を変化させながら、差分と屈折率差が等しくなるまで第1乃至第3のステップを繰り返すことにより、被検物80の厚み誤差ΔLの影響を除去することができる。
未知の量である2πm1、2πm2は、第1の位相差φ1(λ)、第2の位相差φ2(λ)を波長に関して微分することによって除去することができる。第1の位相差の微分dφ1(λ)/dλ、第2の位相差の微分φ2(λ)/dλは、数式9で表される。
ng1 sample(λ)は第1の温度における被検物の群屈折率、ng2 sample(λ)は第2の温度における被検物の群屈折率、ng1 medium(λ)は第1の温度における媒質の群屈折率、ng2 medium(λ)は第2の温度における媒質の群屈折率である。ng1 sample(λ)、ng2 sample(λ)は、基準温度T0における被検物の群屈折率ng sample(λ)と数式10の関係をもつ。ただし、dng(λ)/dTは群屈折率の温度係数であり、屈折率の温度係数dn(λ)/dTを用いて数式11のように表される。
数式9より被検物の厚みLを消去すると、数式12で表される被検物の群屈折率が得られる。
群屈折率から被検物の位相屈折率を算出する方法は、次のとおりである。
位相屈折率Np(λ)と群屈折率Ng(λ)は、数式13のような関係をもつ。ただし、Cは積分定数である。
数式13からわかるとおり、位相屈折率Np(λ)から群屈折率Ng(λ)への算出は一通りだが、群屈折率Ng(λ)から位相屈折率Np(λ)への算出は、積分定数Cの任意性がある。位相屈折率Np(λ)は、群屈折率Ng(λ)のみの情報から算出することはできない。
そこで、被検物の群屈折率ng sample(λ)から位相屈折率nsample(λ)を算出するためには、積分定数Cの仮定が必要である。例えば、被検物の積分定数Csampleは、被検物の元となった母材の積分定数Cglassと等しいと仮定する。母材の積分定数Cglassは、硝材製造元が提供する母材の位相屈折率の値を用いて算出することができる。この積分定数Cglassと数式13を用いて、被検物の群屈折率ng sample(λ)から位相屈折率nsample(λ)への算出が可能である。
積分定数Cの算出の代わりに、位相屈折率と群屈折率の差分や比を用いた方法が適用できる。差分を用いる位相屈折率算出方法や比を用いる位相屈折率算出方法は、それぞれ数式14で表される。ここでは、母材の位相屈折率をNp(λ)、母材の群屈折率をNg(λ)で表している。
本実施例では、被検物80をオイル等の媒質70(空気の屈折率より高い屈折率を有する媒質)中に配置しているが、媒質70が空気であっても成り立つ。しかし、被検物80を媒質70中に配置することには利点がある。
利点の1つは、被検物と媒質の屈折率差が小さくなることによって、レンズによる屈折の影響を低減できることである。もう1つの利点は、第1の位相差と第2の位相差の差が大きくなることによって、屈折率算出精度が向上することである。数式12の右辺の分母は、第1の位相差と第2の位相差の差に関係する量である。分母が大きくなることで、屈折率算出精度が高くなる。一般に、固体では温度の上昇とともに屈折率も高くなり、液体では温度の上昇とともに屈折率は低下する。したがって、被検物がオイル等の媒質中に配置されることで、第1の位相差と第2の位相差の差が大きくなる。
第1の温度と第2の温度の差が大きいほど、第1の位相差と第2の位相差の差が大きくなり、屈折率算出精度が向上する。したがって、第1の温度T1と第2の温度T2は温度差を大きくすることが好ましい。
媒質70の温度分布によって、媒質70の屈折率分布が生じるため、算出される被検物の屈折率に誤差が生じる。したがって、媒質70の温度分布が発生しないように温度調整機構(温度調整手段)で媒質70の温度分布を制御するのが望ましい。また、媒質70の屈折率分布による誤差は、屈折率分布の量がわかれば補正できるため、媒質70の屈折率分布を計測するための波面計測装置(波面計測手段)を有することが望ましい。
屈折率の温度係数dn(λ)/dT(dng(λ)/dT)と線膨張係数αは既知であることを前提としており、例えば、硝材製造元が提供する母材の値を用いることができる。厳密には、被検物80の屈折率の温度係数dn(λ)/dTと線膨張係数αは母材の値と異なるが、母材の値と等しいと仮定しても問題はない。その理由は、硝材の屈折率が多少変化しても屈折率の温度係数と線膨張係数はほとんど変化せず、かつ、数式7、数式12を用いて算出される屈折率nsample(λ)(ng sample(λ))は屈折率の温度係数と線膨張係数の変化に対して鈍感だからである。したがって、被検物と屈折率の近い硝材の屈折率の温度係数と線膨張係数が1組既知であればよい。なお、線膨張係数が屈折率へ与える影響は特に小さいため、被検物80の膨張は未考慮(つまり、線膨張係数がゼロ)でもよい。
本実施例では、ミラー51による機械的な位相シフトと検出器90による分光の組み合わせによって位相差を計測したが、ヘテロダイン干渉法を用いてもよい。ヘテロダイン干渉法を用いる場合、その干渉計は、例えば、光源直後に分光器を配置して疑似単色光を射出し、音響光学素子で被検光と参照光の間に周波数差を発生させ、干渉信号をフォトダイオード等の検出器で計測する。そして、分光器で波長を走査しながら各波長で位相差を算出する。
本実施例では、波長帯域の広い光源10として、スーパーコンティニューム光源を用いた。その代わりに、スーパールミネッセントダイオード(SLD)やハロゲンランプ、短パルスレーザー等が使われてもよい。波長を走査する場合には、広帯域光源と分光器の組み合わせの代わりに、波長掃引光源が使用されてもよい。
本実施例では、マッハ・ツェンダー干渉計の構成をとっているが、代わりにマイケルソン干渉計の構成としても良い。また、本実施例では、屈折率や位相差を波長の関数として算出しているが、代わりに周波数の関数として算出してもよい。
本実施例では、干渉信号から得られる単純な関数である位相差に対してフィッティングしているため、フィッティング精度が高い。また、数式9〜14を用いればフィッティングを省いて屈折率を算出することも可能である。さらに、本実施例は、2種類の温度条件で干渉光を計測することによって、被検物の厚み誤差成分を除去したり、被検物の厚みを消去したりすることにより、被検物の厚みを正確に測定することなく被検物の屈折率を高い精度で算出することができる。すなわち、本実施例の屈折率計測装置によれば、被検物の厚みが未知であっても屈折率を高精度に計測することができる。
図4は、本発明の実施例2の屈折率計測装置のブロック図である。本実施例では、媒質70の屈折率を計測する干渉計が実施例1の屈折率計測装置に追加されている。被検物は、正の屈折力をもつレンズである。実施例1と同様の構成については、同一の符号を付して説明する。
光源10から射出された光は、ビームスプリッタ22で透過光と反射光に分割される。透過光は、被検物80の屈折率を計測するための干渉光学系へ進み、反射光は、媒質70の屈折率を計測するための干渉光学系へと導かれる。反射光は、ビームスプリッタ23でさらに透過光(媒質参照光)と反射光(媒質被検光)に分割される。
ビームスプリッタ23で反射した媒質被検光は、ミラー42、52で反射した後に、容器60の側面および媒質70を透過し、ミラー33で反射されてビームスプリッタ24に至る。ビームスプリッタ23を透過した媒質参照光は、ミラー32、43、53で反射した後に、補償板61を透過してビームスプリッタ24へ至る。ビームスプリッタ24へ至った媒質参照光と媒質被検光は干渉して干渉光を形成し、分光器等で構成される検出部91によって検出される。検出器91で検出された干渉信号は、コンピュータ100に送られる。
補償板61は、容器60の側面による屈折率分散の影響を補正する役割を担い、容器60の側面と同一材料かつ同一厚み(=容器60の側面の厚み×2)で構成される。補償板61は、容器60内が空気のとき、媒質被検光と媒質参照光の各波長それぞれの光路長差を等しくする効果を有する。
ミラー53は、ミラー51と同様の駆動機構により駆動することができ、図4の矢印の方向に駆動される。ミラー53の駆動は、コンピュータ100で制御される。
本実施例の被検物80の位相屈折率算出手順は、次のとおりである。
まず、被検物80の温度が第1の温度に調整される(S10)。第1の温度において第1の位相差が計測される(第1計測ステップS20)。第1の位相差が計測されるとき、媒質70の屈折率を計測する干渉計を用いて、第1の温度における媒質参照光と媒質被検光の位相差η1(λ)が計測される。第1の温度における媒質参照光と媒質被検光の位相差η1(λ)およびその微分dη1(λ)/dλは、数式15で表される。
ただし、Ltankは容器60の側面間の距離(媒質被検光の媒質70内の光路長)、Δは媒質参照光と媒質被検光の光路長差であり、既知の量である。媒質70の位相屈折率n1 medium(λ)は、被検物の位相屈折率n1 sample(λ)を算出する方法と同様に、数式15のη1(λ)の関係式をフィッティングすることによって算出することができる。媒質70の群屈折率ng1 medium(λ)は、数式15のdη1(λ)/dλを変形することで得られる。
次に、被検物80の温度が第2の温度に調整される(S30)。第2の温度において第2の位相差が計測される(第2計測ステップS40)。第2の位相差が計測されるとき、媒質70の屈折率を計測する干渉計を用いて、第2の温度における媒質参照光と媒質被検光の位相差も計測される。第2の温度における媒質参照光と媒質被検光の位相差から、第2の温度における媒質70の屈折率が算出される。最後に、第1の位相差と第2の位相差と屈折率の温度係数を用いて被検物80の屈折率が算出される(算出ステップS50)。
図5は、実施例3の屈折率計測装置のブロック図である。本実施例では、被検物80とガラスプリズム(基準被検物)130の透過波面が2次元センサ(波面計測手段)を用いて計測される。媒質70の屈折率を計測するために、屈折率および形状が既知のガラスプリズム130が被検光束上に配置されている。実施例1、実施例2と同様の構成については、同一の符号を付して説明する。
光源10から射出された光は、分光器95で分光され、疑似単色光となってピンホール110に入射する。ピンホール110へ入射させる疑似単色光の波長は、コンピュータ100で制御される。ピンホール110を透過して発散光となった光は、コリメータレンズ120で平行光にコリメートされる。コリメート光は、ビームスプリッタ25で透過光(参照光)と反射光(被検光)に分割される。
ビームスプリッタ25を透過した参照光は、容器60内の媒質70を透過した後、ミラー31で反射してビームスプリッタ26へ至る。ミラー31は、図5の矢印方向の駆動機構を有し、コンピュータ100で制御される。
ビームスプリッタ25で反射された被検光は、ミラー30で反射して、媒質70と被検物80とガラスプリズム130を収容している容器60に入射する。被検光の一部の光は媒質70および被検物80を透過する。被検光の一部の光は媒質70およびガラスプリズム130を透過する。被検光の残りの光は媒質70のみを透過する。容器60を透過したそれぞれの光は、ビームスプリッタ26において参照光と干渉して干渉光を形成し、結像レンズ121を介して検出器92(例えば、CCDやCMOSセンサ)で検出される。検出器92で検出された干渉信号は、コンピュータ100に送られる。
検出器92は、被検物80およびガラスプリズム130の位置と共役位置に配置されている。被検物80と媒質70の位相屈折率が異なると、被検物80を透過した光は発散光や収束光になる。その発散光(収束光)が被検物80以外を透過した光と交差する場合は、被検物80の後方(検出器92側)にアパーチャ等を配置して、迷光をカットすればよい。ガラスプリズム130を透過した光と参照光の干渉縞が密になりすぎないように、ガラスプリズムは、媒質70の位相屈折率とほぼ等しい位相屈折率を有するものが好ましい。被検光と参照光の光路長は、被検物80およびガラスプリズム130が被検光路上に配置されていない状態で、等しくなるように調整されている。
本実施例の被検物80の位相屈折率算出手順は、次のとおりである。
まず、被検物の温度が第1の温度に調整される(S10)。分光器95による波長走査と、ミラー31の駆動機構を用いた位相シフト法により、第1の温度において第1の位相差および媒質70の屈折率が計測される(第1計測ステップS20)。次に、被検物の温度が第2の温度に調整される(S30)。第2の温度において第2の位相差および媒質70の屈折率が計測される(第2計測ステップS40)。最後に、第1の位相差と第2の位相差と屈折率の温度係数を用いて被検物80の屈折率が算出される(算出ステップS50)。
実施例1〜3にて説明した装置および方法を用いて計測された結果をレンズ等の光学素子の製造方法にフィードバックすることも可能である。
図7には、モールド成型を利用した光学素子の製造工程の例を示している。
光学素子は、光学素子の設計工程、金型の設計工程および該金型を用いた光学素子のモールド成型工程を経て製造される。成型された光学素子は、その形状精度が評価され、精度不足である場合は金型を補正して再度モールド成型を行う。形状精度が良好であれば、該光学素子の光学性能が評価される。この光学性能の評価工程に、本発明の屈折率計測方法を組み込むことで、モールド成型される光学素子を精度良く量産することができる。
なお、光学性能が低い場合は、光学面を補正した光学素子を設計し直す。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
屈折率計測装置は光学素子の屈折率を計測する用途に適用することができる。
10 光源
60 容器
70 媒質
80 被検物
90 検出器
100 コンピュータ
60 容器
70 媒質
80 被検物
90 検出器
100 コンピュータ
Claims (19)
- 光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記被検光を被検物に入射させ、前記被検物を透過した被検光と前記参照光を干渉させた干渉光を計測することによって前記被検物の屈折率を計測する屈折率計測方法であって、
前記被検物の温度が第1の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第1の位相差を計測する第1計測ステップと、
前記被検物の温度が前記第1の温度とは異なる第2の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第2の位相差を計測する第2計測ステップと、
前記第1の位相差と前記第2の位相差と既知の前記被検物の屈折率の温度係数とを用いて前記被検物の屈折率を算出する算出ステップと、
を有することを特徴とする屈折率計測方法。 - 前記算出ステップにおいて、
前記被検物の厚みの仮定値を用いて、前記第1の位相差を屈折率分散式でフィッティングすることによって第1の屈折率を求める第1ステップと、
前記厚みの仮定値を用いて、前記第2の位相差を屈折率分散式でフィッティングすることによって第2の屈折率を求める第2ステップと、
前記第1及び第2のステップでそれぞれ求めた第1及び第2の屈折率の差分と、前記被検物の屈折率の温度係数に前記第1の温度と前記第2の温度の温度差を適用して求めた屈折率差とを比較する第3のステップとを有し、
前記厚みの仮定値を変化させて、前記差分と屈折率差とが等しくなるまで前記第1乃至第3のステップを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の屈折率計測方法。 - 前記算出ステップにおいて、
前記第1の位相差の微分と前記第2の位相差の微分を算出し、前記第1の位相差の微分と前記第2の位相差の微分に基づいて、前記被検物の厚みを消去する演算を行うことにより、前記被検物の屈折率を算出することを特徴とする請求項1に記載の屈折率計測方法。 - 前記被検物を空気の屈折率より高い屈折率を有する媒質中に配置した状態で干渉光を計測することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の屈折率計測方法。
- 前記媒質の温度を計測し、計測された前記媒質の温度を前記媒質の屈折率に換算することによって前記媒質の屈折率を算出することを特徴とする請求項4に記載の屈折率計測方法。
- 前記媒質中に屈折率および形状が既知の基準被検物を配置し、前記基準被検物に光を入射させて前記基準被検物の透過波面を計測し、前記基準被検物の屈折率および形状と前記基準被検物の透過波面に基づいて、前記媒質の屈折率を算出することを特徴とする請求項4に記載の屈折率計測方法。
- 光源からの光を媒質被検光と媒質参照光に分割し、前記媒質被検光を前記媒質に入射させ、前記媒質を透過した前記媒質被検光と前記媒質参照光とを干渉させた干渉光を計測し、前記媒質参照光と前記媒質被検光の位相差に基づいて前記媒質の屈折率を算出することを特徴とする請求項4に記載の屈折率計測方法。
- 前記媒質の屈折率分布を計測するステップを有することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の屈折率計測方法。
- 前記媒質の温度分布を制御するステップを有することを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1項に記載の屈折率計測方法。
- 光学素子をモールド成型するステップと、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の屈折率計測方法を用いて前記光学素子の屈折率を計測することによって、成型された光学素子を評価するステップと、を有することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 光源と、前記光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記被検光を被検物に入射させ、前記被検物を透過した被検光と前記参照光を干渉させる干渉光学系と、前記被検光と前記参照光の干渉光を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される干渉信号を用いて前記被検物の屈折率を演算する演算手段とを有する屈折率計測装置であって、
前記被検物の温度を制御する温度制御手段を有し、
前記演算手段は、前記被検物の温度が第1の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第1の位相差と、前記被検物の温度が前記第1の温度とは異なる第2の温度であるときの前記被検光と前記参照光の位相差である第2の位相差と、既知の前記被検物の屈折率の温度係数とを用いて前記被検物の屈折率を算出することを特徴とする屈折率計測装置。 - 前記演算手段は、
前記被検物の厚みの仮定値を用いて、前記第1の位相差を屈折率分散式でフィッティングすることによって第1の屈折率を求める第1ステップと、
前記厚みの仮定値を用いて、前記第2の位相差を屈折率分散式でフィッティングすることによって第2の屈折率を求める第2ステップと、
前記第1及び第2のステップでそれぞれ求めた第1及び第2の屈折率の差分と、前記被検物の屈折率の温度係数に前記第1の温度と前記第2の温度の温度差を適用して求めた屈折率差とを比較する第3のステップとを有し、
前記厚みの仮定値を変化させて、前記差分と屈折率差とが等しくなるまで前記第1乃至第3のステップを繰り返すことを特徴とする請求項11に記載の屈折率計測装置。 - 前記演算手段は、前記第1の位相差の微分と前記第2の位相差の微分を算出し、前記第1の位相差の微分と前記第2の位相差の微分に基づいて、前記被検物の厚みを消去する演算を行うことにより、前記被検物の屈折率を算出することを特徴とする請求項11に記載の屈折率計測装置。
- 前記被検物を空気の屈折率より高い屈折率を有する媒質中に配置した状態で干渉光を計測することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の屈折率計測装置。
- 前記媒質の温度を計測する温度計測手段を有し、
前記演算手段は、前記温度計測手段により計測された前記媒質の温度を前記媒質の屈折率に換算することによって前記媒質の屈折率を算出することを特徴とする請求項14に記載の屈折率計測装置。 - 屈折率および形状が既知の基準被検物と、
前記媒質中に配置された前記基準被検物に入射させた光の透過波面を計測する波面計測手段を有し、
前記演算手段は、前記基準被検物の屈折率および形状と前記基準被検物の透過波面に基づいて、前記媒質の屈折率を算出することを特徴とする請求項14に記載の屈折率計測装置。 - 前記光源からの光を媒質被検光と媒質参照光に分割し、前記媒質被検光を前記媒質に入射させ、前記媒質を透過した媒質被検光と前記媒質参照光を干渉させる干渉光学系と、
前記媒質被検光と前記媒質参照光の干渉光を検出する検出手段と、
前記媒質参照光と前記媒質被検光の位相差に基づいて前記媒質の屈折率を算出する演算手段を有することを特徴とする請求項14に記載の屈折率計測装置。 - 前記媒質の屈折率分布を計測する波面計測手段を有することを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の屈折率計測装置。
- 前記媒質の温度分布を制御する温度制御手段を有することを特徴とする請求項11乃至18のいずれか1項に記載の屈折率計測装置。
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