(第1実施形態)
以下、内燃機関の制御装置の第1実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示すように、内燃機関10の制御装置は、制御部50と内燃機関10の各種状態を検知する各種センサ71〜78とを備えている。制御部50は、各種センサ71〜78が出力する信号に基づいて、内燃機関10を制御する。本実施形態の内燃機関10は、直列4気筒のガソリンエンジンである。
制御部50は、内燃機関10を制御するための各種演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、演算プログラムや演算マップ、各種データが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)、演算の結果等を一時的に記憶しておくランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えて構成されている。
図1に示すように、制御部50には、以下の各種のセンサが接続されている。
アクセルポジションセンサ71は運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検知する。スロットルポジションセンサ72は電子制御式のスロットル弁13の開度であるスロットル開度を検知する。エアフロメータ73は内燃機関10に導入される空気の温度及びその量である吸入空気量を検知する。水温センサ74は内燃機関10を冷却する冷却水の温度である機関冷却水温を検知する。ブレーキスイッチ77はブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検知する。車速センサ78は車両の速度を検知する。
また、クランク角センサ75は内燃機関10のクランク軸20の回転角の変化に応じた信号を出力する。詳細には、クランク軸20には、クランクロータ21が固定されている。このクランクロータ21は、外周に複数の突起22が周方向に10°の間隔で形成されるとともに、その外周の一カ所に突起22が欠けた欠歯部23を備えている。この欠歯部23は、突起の三つ分の幅(30°分の幅)を有している。クランク角センサ75は、クランク軸20と一体回転するクランクロータ21の複数の突起22の通過に対応してパルス信号を出力する。そして、制御部50は、パルス信号を計数することでクランク角を算出するとともに、パルス信号がそれまでの出力間隔の3回分の期間継続して出力されなかった後にパルス信号が出力されたときには、それに基づいて欠歯部23を検知する。そして、算出されているクランク角を規定値、すなわち、欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角の値に更新する。すなわち、本実施形態では、欠歯部23が、クランクロータ21の外周の1カ所にのみ設けられているため、欠歯部23が検知されるのは、この欠歯部23が設けられたクランク角を通過するときに限られる。したがって、欠歯部23が検知されるときに、算出されているクランク角を欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角に更新することで、算出されているクランク角と実際のクランク角との間にずれが生じている場合には、そのずれが修正される。制御部50は、このようにしてクランク角を算出するとともに、単位時間当りのクランク軸20の回転速度を示す機関回転速度を算出する。
また、排気カム角センサ76(以下、単に「カム角センサ」という)は内燃機関10の排気カム軸30(以下、単に「カム軸」という)の回転角の変化に応じたカム信号を出力する。詳細には、カム軸30にはカムロータ31が固定されている。カムロータ31には、その周方向における占有範囲の広さが互いに異なる3つの凸部(突起)32,33,34と、各凸部32,33,34の間に位置し凸部32,33,34に対して凹んでいる凹部(突起が設けられていない部分)35,36,37が設けられている。
最も大きな第1の凸部32はカムロータ31の周方向において角度にして90°に亘って形成されている。これに対して、最も小さな第2の凸部33は角度にして30°に亘って広がるように形成されており、第3の凸部34は60°に亘って広がるように形成されている。また、第1の凸部32と第2の凸部33と間の第1の凹部35はカムロータ31の周方向の90°に亘って設けられており、第2の凸部33と第3の凸部34と間の第2の凹部36はカムロータ31の周方向の60°に亘って設けられている。そして、第1の凸部32と第3の凸部34の間の第3の凹部37は、カムロータ31の周方向の30°に亘って設けられている。
カム角センサ76は、カムロータ31の各凸部32,33,34と対向可能な位置に同カムロータ31の周縁部に向かって配設されている。カム角センサ76は、磁気抵抗素子タイプのセンサであり、カム軸30の回転に伴ってカムロータ31が回転することにより、凸部32,33,34に対応する第1の信号であるH信号と、凹部35,36,37に対応する第2の信号であるL信号とを制御部50に出力する。
内燃機関10には、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁11と、点火プラグ12と、吸気通路に設けられたスロットル弁13とが設けられている。これら内燃機関10の各駆動部11〜13は、制御部50により駆動制御される。
筒内噴射弁11は、内燃機関10の各気筒に対して1つずつ設けられており、制御部50から出力される駆動指令に基づいて開弁し、各気筒内に向かって燃料を噴射する。なお、本実施形態では、筒内噴射弁11により圧縮行程にある気筒に対して燃料の噴射が行われる。
点火プラグ12は、各気筒に1つずつ設けられ、制御部50から出力される点火指令に基づいて燃焼室内の混合気に点火する。そして、スロットル弁13は制御部50から出力される駆動指令に基づいて開閉駆動され、内燃機関10の吸入空気量を調量する。
また、制御部50には、機関始動時にクランク軸20を駆動するスタータ14が接続されている。
制御部50は、上記各種のセンサ71〜78から出力される信号に基づいて機関各部の状態を把握し、各気筒に供給される燃料の量に見合った量の空気を燃焼室内に導入して理想的な空燃比の混合気を形成するために、スロットル弁13を制御して吸入空気量を調量する。
また、制御部50は、筒内噴射弁11の開弁時期や開弁期間を調整して各気筒に供給する燃料の量や燃料の噴射時期を制御する。また、良好な燃焼による効率的な機関運転を実現するために点火プラグ12に点火指令を出力する時期を調整することで、各気筒における点火時期を調整する。詳細には、制御部50は、クランク角センサ75が出力するパルス信号を計数することによってクランク角を算出し、その算出されているクランク角に基づいて各気筒に対する燃料噴射や点火の時期を決定する。そして、その決定される時期に燃料噴射や点火が実行されるように筒内噴射弁11及び点火プラグ12に駆動信号を出力する。
また、本実施形態の内燃機関10は、信号待ち等により停車したときに、運転者の操作によらずに自動的に機関運転を停止するいわゆるアイドリングストップ機能を備えている。
制御部50は、アイドルストップ条件が成立したときに、アイドリングストップ制御を通じて機関運転を自動的に停止させる。なお、アイドルストップ条件は信号待ち等による停車を判定するために設定されるものであるため、例えば、車両が停止している(車速が「0」である)こと、アクセル操作量が「0」であること、ブレーキペダルが踏み込まれていること等の各要件がすべて成立していることがその成立要件とされている。そして、その後にアイドルストップ条件が成立しなくなったときに、内燃機関10を自動的に再始動させる。
本実施形態では、イグニッションスイッチがオン操作されたことによる内燃機関10の通常始動は、以下のようにして行われる。まず、制御部50の制御により、スタータ14によってクランク軸20を回転させるクランキングが行われる。そして、クランキングによってクランク軸20が回転している間に、クランク角センサ75の出力に基づいて欠歯部23が検知されると、制御部50がこれに基づいて気筒判別を完了する。そして、こうした気筒判別が完了してから、クランク角に応じて各気筒に対する個別の燃料噴射や点火が実行される。
一方、自動再始動時は、信号待ち等による停車状態からの車両を発進させるための始動であるため、通常始動時よりも早期の始動完了が要求される。そこで、本実施形態では、自動再始動時には、スタータ14によりクランク軸20を回転駆動しつつ、最も早く初爆を生じさせることのできる気筒に対して最初の燃料噴射及び点火を実行するようにしている。詳細には、自動再始動時に最初に圧縮行程の燃料噴射時期をむかえる気筒に対して、最初の燃料噴射及び点火がされる。
なお、自動再始動時に最初に圧縮行程の燃料噴射時期をむかえる気筒に対して、自動再始動時の最初の点火を行う場合には、自動再始動の開始から最初の点火までの期間が短い。したがって、最初の点火が実行されるまでのクランク軸20の回転量が少なく、最初の点火が実行されるまでに欠歯部23が検知されない可能性が高い。また、その後の点火についても、それまでのクランク軸20の回転量等によっては、欠歯部23が検知されず、上記態様により算出されるクランク角の推定精度が低い状態で実行されることになる。このようにクランク角の推定精度が低い状態で、算出されているクランク角に基づく点火が実行されると、不適切な点火が連続して実行されることになる。
そこで、本実施形態では、こうした不適切な点火が連続して実行されることを抑制しつつ、早期の始動を実現すべく、制御部50が、以下に詳述するような自動再始動時における点火制御及び燃料噴射制御を実行するようにしている。
以下、制御部50によって実行される自動再始動時の制御について、図2〜図6を参照して説明する。
本実施形態では、自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに算出されているクランク角を記憶しておき、その記憶されているクランク角を利用して、次の自動再始動時の最初の点火を実行することで、早期に初爆を生じさせる。また、最初の点火を実行した気筒に続いて点火時期をむかえる気筒に対しては、上記態様で算出されているクランク角の推定値が、実際のクランク角に即した適正な値にある旨が確認されていることを条件に、点火の実行を許可することで、点火が不適切な時期に実行されることを抑制するようにしている。なお、本実施形態では、初爆が生じた後に点火が禁止される可能性があるため、スタータ14によるクランク軸20の駆動を停止させる機関回転速度が、初爆で得られる機関回転速度よりも高い値に設定される。これにより、初爆の発生後もスタータ14によるクランク軸20の回転駆動が継続されるため、仮に初爆が生じた後に点火が禁止された場合でも、内燃機関10の始動性を確保することができる。
本実施形態では、制御部50が、確認手段及び異常確認手段として、クランク角センサ75の出力する信号とカム角センサ76の出力するカム信号とに基づいて、算出されているクランク角が適正な値にある旨及び適正な値にはない旨の確認を行う。図2を参照して、クランク角センサ75が出力するクランク信号及びそれに基づくクランク角の算出値と、カム角センサ76が出力するカム信号とについて説明する。
図2(a)に示すように、本実施形態では、クランク軸20が10°CA回転する毎にクランク角センサ75が、クランクロータ21の突起22に対応したパルス信号を出力する。また、クランク角が120〜140°CAであるときと、480〜500°CAであるときが、クランクロータ21の欠歯部23に対応している。すなわち、図1を示して説明したように、欠歯部23は、クランクロータ21の外周の1カ所に設けられているため、図2(a)に示すように、クランク軸20が1回転する360°CA毎に、パルス信号の出力間隔が長くなる欠歯部23に対応する期間が現れる。
そして、図2(b)に示すように、パルス信号の出力に応じてクランク角が10°CAずつ加算されるとともに、欠歯部23が検知されたときに、算出されているクランク角が、欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角の規定値に更新される。詳細には、本実施形態では、欠歯部23が設けられるクランク角(120〜140°CA、480〜500°CA)から30°CA後の170°CA,530°CAのときに算出されているクランク角が更新される。すなわち、継続して出力されていたパルス信号が30°CA分出力されず、その後にパルス信号が3回出力されたときに、それに基づいて欠歯部23を検知し、そのときに算出されているクランク角が、欠歯部23が検知されるときのクランク角(170°CA,530°CA)に更新される。このように、パルス信号が30°CA分出力されない状況からパルス信号が3回出力されたときに欠歯部23を検知するようにすれば、クランク軸20の回転速度が変化しやすい機関始動時においても、欠歯部23をより正確に検知することができる。
また、パルス信号の出力に応じてクランク角の算出値が710°CAまで計数されると、その次のパルス信号の出力により、クランク角の算出値が0°CAにリセットされる。本実施形態では、このようにしてクランク角を算出する。
また、本実施形態では、自動停止に伴ってクランク軸20の回転が停止する度に、制御部50のRAMに、そのときに算出されているクランク角を記憶する。こうすることで、次回の自動再始動時には最後に自動停止時がなされたときにクランク軸20の回転が停止したときのクランク角が記憶されていることになる。そのため、自動再始動時には、この記憶されているクランク角が初期値となり、パルス信号が出力される度に10°CAずつ加算されることによってクランク角が算出される。そして、その後、欠歯部23が検知されると、クランク角が、欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角の規定値に更新される。
また、図2(c)に示すように、カム信号は、H信号とL信号を交互に出力する。上記の通り、H信号は、カムロータ31の各凸部32,33,34に対応しており、L信号は、各凹部35,36,37に対応している。ここで、カム軸30とクランク軸20とは、タイミングチェーン等を介して連結されており、カム軸30は、クランク軸20が2回転する毎に1回転する。したがって、カムロータ31の第1の凸部32が同ロータ31の周方向の90°に亘って形成されているため、第1の凸部32に対応するH信号は0〜180°CAの180°CA分のH信号として出力される。また、第1の凸部32に隣接する第1の凹部35はカムロータ31の周方向の90°に亘って形成されているため、第1の凹部35に対応するL信号は第1の凸部32に対応するH信号に続いて出力され、180〜360°CAの180°CA分のL信号として出力される。そして、同様にして、第2の凸部33に対応するH信号は360〜420°CAの60°CA分のH信号として出力され、第2の凹部36に対応するL信号は420〜540°CAの120°CA分のL信号として出力される。そして、第3の凸部34に対応するH信号は540〜660°CAの120°CA分のH信号として出力され、第3の凹部37に対応するL信号は660〜720°CA(0°CA)の60°CA分のL信号として出力される。
ここで、上記の通り、カム軸30は、クランク軸20とタイミングチェーン等を介して連結されているため、カム信号とクランク角との間には一定の相関関係があり、カム信号のH信号とL信号とが切り替わる時のクランク角の値は特定の値となる。そして、本実施形態では、制御部50のROMには、H信号とL信号とが切り替わるときのクランク角(H→L:180°CA,420°CA,660°CA、L→H:0°CA,360°CA、540°CA)が予め記憶されている。したがって、カム信号の切り替わりが検知されるときに、算出しているクランク角の値が、規定範囲内、すなわちカム信号の出力が切り替わるときに算出されるはずのクランク角(ROMに記憶したクランク角)を含む許容範囲内にある場合には、算出されているクランク角が適正な値にあると推定することができる。一方、カム信号の切り替わりが検知されるときに、上記規定範囲内にない場合には、算出されているクランク角が適正な値にはないと推定することができる。
ここで、算出されているクランク角が、欠歯部23の検知により更新されたときは、算出されているクランク角が適正な値にある旨を確認することができる。また、カム信号のH信号とL信号との切り替わりを検知することにより、算出されているクランク角が適正な値にあるか否かを確認することができる。したがって、本実施形態では、制御部50が、クランク角センサ75の出力する信号及びカム角センサ76の出力する信号に基づいて、算出されているクランク角が適正な値にある旨の確認を行うとともに、カム角センサ76の出力する信号に基づいて、算出されているクランク角が適正な値にはない旨の確認を行うようにしている。
表1に、算出されているクランク角が適正な値にある旨又は適正な値にはない旨の確認状況を示す指標値を示す。この指標値は、制御部50の制御により設定され、最後に設定された最新の指標値が制御部50のRAMに記憶されている。
表1に示すように、指標値は、自動再始動時にクランク角の確認が未だ行われていない場合には「0」に設定される。また、自動再始動時に、カム信号のH信号とL信号との切り替わりが既に検知され、この検知に基づいて算出されているクランク角が適正な値にはない旨が確認された場合には、カム信号によるチェック結果がNGであることを示す「1」に設定される。一方、カム信号の切り替わりの検知に基づいて算出されているクランク角が適正な値にあると確認された場合にはカム信号によるチェックが完了しており、算出されているクランク角が適正な値にあることを示す「2」に設定される。また、自動再始動時に、クランク角センサ75により欠歯部23が検知され、算出されているクランク角の更新がなされたときには欠歯検知済みであることを示す「3」に設定される。
こうしたクランク角の確認状況の指標値は、図3のフローチャートに示す処理手順に従って設定される。この処理は、クランク角センサ75がパルス信号を出力する毎に、制御部50により割り込み処理として実行される。
図3に示すように、クランク角確認状況の指標値の設定処理であるこの処理が開始されると、まず、ステップS11において、自動再始動中であるか否かが判定される。ステップS11では、例えば、制御部50が、各種センサの情報に基づいてアイドルストップ条件が成立しなくなったことを把握した直後であって、且つクランク軸20を回転駆動すべくスタータ14に駆動信号を出力していること等を条件に、自動再始動時である旨の判定が行われる。ステップS11では、内燃機関10の通常運転中である場合には、自動再始動時ではないと判定されるため(ステップS11:NO)、ステップS21に移る。そして、ステップS21では、クランク角の確認状況を示す指標値が未判定を示す「0」に設定される。すなわち、現在は自動再始動中ではないため、自動再始動時におけるクランク角の確認がなされていない状況であるため、指標値が「0」に設定される。
一方、ステップS11において、自動再始動時であると判定されると(ステップS11:YES)、ステップS12に移り、指標値が「3」であるか否かが判定される。ステップS12において、指標値が「3」であると判定される場合には(ステップS12:YES)、制御部50は本処理を一旦終了する。すなわち、指標値「3」は、自動再始動を開始してから既に欠歯部23が検知されており、算出されているクランク角が、欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角の規定値に更新されていることを示している。したがって、算出されているクランク角の精度が最も高い状況であるため、この後、指標値の変更が行う必要がないことから、本処理が終了される。
一方、ステップS12において、指標値が「3」ではないと判定されると(ステップS12:NO)、ステップS13に移り、欠歯部23が検知されたか否かが判定される。ステップS13において、欠歯部23が検知されていないと判定されると(ステップS13:NO)、ステップS16に移り、指標値が「0」又は「2」であるか否かが判定される。指標値が「1」に設定されている場合には、ステップS16において、指標値が「0」又は「2」ではないと判定されるため(ステップS16:NO)、制御部50は本処理を一旦終了する。すなわち、指標値が「1」である場合には、既にカム信号におけるH信号とL信号との切り替わりが検知され、これに基づいてクランク角が適正な値にはない旨が確認されているため、欠歯部23が検知されるまでは、算出されているクランク角と実際のクランク角とのずれを解消できないと推定される。したがって、欠歯部23が検知されていないと判定される状況において、指標値が「1」である場合には、本処理が一旦終了される。
一方、ステップS16において、指標値が「0」又は「2」であると判定されると(ステップS16:YES)、ステップS17に移り、カム信号の切り替わりが検知されたか否かが判定される。すなわち、指標値が「0」又は「2」である場合には、自動再始動時に未だカム信号が出力されていない場合(指標値「0」)、または、既に検知されたカム信号の切り替わりに基づいて、クランク角が適正な値にある旨の確認がなされている場合(指標値「2」)である。したがって、カム信号の切り替わりに基づく確認を行うべく、ステップS17以降の処理を実行する。
ステップS17において、カム信号の切り替わりが検知されていないと判定される場合には(ステップS17:NO)、算出されているクランク角が適正な値にあるか否かをカム信号の切り替わりに基づいて確認することができないため、制御部50は本処理を一旦終了する。
一方、ステップS17において、カム信号の切り替わりが検知されたと判定されると(ステップS17:YES)、ステップS18に移り、算出されているクランク角が上記規定範囲内、すなわちカム信号の切り替わりが検知されるときに算出されるはずのクランク角を含む許容範囲内にあるか否かが判定される。本実施形態では、この許容範囲が±20°CAに設定されている。すなわち、ここでは、10°CA刻みで算出されているクランク角が160〜190°CA,340〜370°CA,400〜430°CA,520〜550°CA,640〜670°CA,700〜10°CA(すなわち700°CA,710°CA,0°CA,10°CA)であるときに許容範囲内にある旨の判定がなされる。なお、この許容範囲は、例えば、クランク軸20及びカム軸30を連結するタイミングチェーン等の伸びや組み付け公差等による機械的なずれ、及びカムロータ31の凸部32,33,34と凹部35,36,37の境界に対するカム信号のH信号とL信号の境界との位相ずれ等に基づいて設定される。したがって、この許容範囲は、上記の内燃機関10及びカム角センサ76の特性に応じて適宜設定することができ、その値は±20°CAに限定されない。
そして、ステップS18において、算出されているクランク角が上記規定範囲内にあると判定されると(ステップS18:YES)、ステップS19に移り、指標値が「2」に設定され、制御部50は本処理を一旦終了する。すなわち、ステップS18において肯定判定がなされた場合には、算出されているクランク角が適正な値にあると推定することができるため、指標値が「2」に設定される。
一方、ステップS18において、算出されているクランク角がカム信号に基づくクランク角から許容範囲内にないと判定されると(ステップS18:NO)、ステップS20に移り、指標値が「1」に設定され、制御部50は本処理を一旦終了する。すなわち、ステップS19において否定判定がなされた場合には、算出されているクランク角と実際のクランク角とのずれが許容範囲を超えており、算出されているクランク角が適正な値にはないと判断することができるため、指標値が「1」に設定される。
ステップS19,20で指標値が設定されると、制御部50は、本処理を一旦終了する。
また、先のステップS13において、欠歯部23が検知されたと判定されると(ステップS13:YES)、ステップS14に移り、算出されているクランク角を欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角の規定値に更新する。そして、ステップ15に移り、指標値を「3」に設定して、制御部50は本処理を一旦終了する。すなわち、指標値を、欠歯部23を検知済みであることを示す「3」に設定する。
以上のようにして、クランク角センサ75がパルス信号を出力する毎に本処理が繰り返し実行される。
したがって、自動再始動時の開始時には、指標値が「0」であり、自動再始動中に指標値が「2」又は「3」へと変化する。また、指標値が「3」に設定された後には、自動再始動が終了して通常運転に移行するまではその値が維持されるとともに、通常運転となると、再び、指標値が「0」にリセットされる。また、自動再始動中にその指標値が「3」に変化する前に、指標値が「1」に設定されることもある。このようにして、自動再始動時には表1に示す指標値が設定され、設定された指標値は、自動再始動時の燃料噴射及び点火を許可するか禁止するかを決定するために用いられる。
表2に、本実施形態における自動再始動時の点火の許可条件を示す。表2における点火許可条件の設定態様について、図4を参照して説明する。
図4は、各気筒の行程とクランク角との関係を示しており、実線矢印Aで示す時期が、カム信号のL信号からH信号への切り替わりが検知されるクランク角を示し、実線矢印Bで示す時期が、カム信号のH信号からL信号への切り替わりが検知されるクランク角を示す。また、矢印Cで示す範囲のクランク角が欠歯部23に対応しており、その30°CA後の破線矢印Dで示すクランク角が、欠歯部23が検知されるクランク角である。また、各気筒においては、圧縮上死点の30°CA前(破線矢印)の時期が燃料噴射時期であり、圧縮上死点の10°CA前(実線矢印)から圧縮上死点10°CAまでの期間が点火プラグ12の通電時期である。
図4において、例えば、自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに、圧縮行程で停止している気筒が、その燃料噴射時期よりも進角側(圧縮行程上死点前40°CA以前)で停止している場合、最初の燃料噴射及び点火を、圧縮行程で停止している気筒に対して実行することが可能である。したがって、圧縮行程で停止している気筒に対して燃料噴射及び点火を行えば、最も早く初爆を生じさせることができるため、本実施形態では、圧縮行程において上死点よりも40°CA以上手前で停止している気筒がある場合には、この気筒に対して最初の燃料噴射及び点火が実行される。また、圧縮行程において停止している気筒がその燃料噴射時期又はその時期よりも遅角側(圧縮上死点前30°CA以降)で停止している場合には、最初の燃料噴射をその気筒に対して行うことができない。そのため、この場合には、その次に点火時期をむかえる気筒が最も早く初爆を生じさせる気筒となり、その気筒に対して最初の燃料噴射及び点火が実行される。なお、以下の説明においては、最初の燃料噴射及び点火が実行される気筒を「最初に点火時期をむかえる気筒」とし、その最初に点火時期をむかえる気筒に次いで圧縮行程となり、点火時期をむかえる気筒を「2番目に点火時期をむかえる気筒」と説明する。
そして、表2に示すように、最初に点火時期をむかえる気筒に対しては、点火許可条件が指標値「0」以上に設定され、算出しているクランク角が適正な値にあるか否かの確認がなされていない場合でも点火が許可される。また、2番目及び3番目に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「2」以上に設定されているため、指標値「2」以上で点火が許可される一方、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされていないときに、点火が禁止される。また、4番目以降に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「3」に設定されているため、指標値「3」で点火が許可され、欠歯部23が検知されていない状況においては、点火が禁止される。
4番目以降に点火時期をむかえる気筒について、点火許可条件を指標値「3」としているのは、本実施形態では、クランク角センサ75の異常等が生じない限り、遅くとも4番目の点火時期までに欠歯部23が検知されて、算出されているクランク角が欠歯部23の検知に基づいて更新されるためである。
すなわち、図4に示すように、例えば、最初に点火時期をむかえる気筒が第1気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第3気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、第4気筒における3番目の点火時期までには欠歯部23が検知されていることになる。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第4気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第2気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、第1気筒における3番目の点火時期までには欠歯部23が検出されていることになる。
しかしながら、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、3番目の点火時期までに欠歯部23を検知できない場合がある。これは、以下の理由による。例えば、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合は、初爆は第3気筒で生じるが、自動停止時に90°CA以降のクランク角で停止している場合には、第3気筒の圧縮行程において120〜140°CAの欠歯部23が検知できない。これは、欠歯部23を認識するためには、それ以前に出力されるパルス信号の出力期間が安定していることが要求されるものの、クランキング開始直後は機関回転速度が遅くパルス信号の出力期間が長くなる傾向にあるためである。自動停止時に90°CA以降のクランク角で停止している場合には、欠歯部23が検知されるまでに出力されるパルス信号が出力される回数が少なく且つ出力間隔が長いため、欠歯部23を正確に検知できない。したがって、第3気筒が最初に点火時期をむかえる気筒になっている場合には、第3気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されていない場合がある。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、530°CAにおいても欠歯部23が検知される。しかしながら、この時期は3番目に点火時期をむかえる第2気筒における点火時期(点火プラグ12の通電開始時期)と同時期であるため、3番目の点火時期である第2気筒の点火時期までには、480〜500°CAの欠歯部23の検知もなされないこととなる。したがって、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、3番目の点火時期までに欠歯部23が検知されていない場合がある。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第2気筒である場合にも、同様にして、第3気筒における3番目の点火時期までに欠歯部23が検知されていない場合がある。しかし、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合や第2気筒である場合であっても、4番目の点火時期をむかえるまでには欠歯部23が検知されるはずのクランク角を必ず通過することになる。そのため、いずれの場合にも4番目の点火時期をむかえるまでには、欠歯部23が検知され、クランク角の確認状況の指標値が「3」に設定されることになる。
すなわち、圧縮行程で停止している気筒が何れの気筒であっても、遅くとも4番目の点火時期までには欠歯部23が検知され、異常が発生していなければ、クランク角の確認状況の指標値が「3」に設定されることになる。こうした理由により、本実施形態では、4番目以降に点火時期をむかえる気筒について、点火許可条件を指標値「3」としている。
なお、本実施形態では、上述したように4番目の点火時期までには、欠歯部23が検知されるようになっているため、4番目の点火時期をむかえれば、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転していることになる。したがって、本実施形態では、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転するまでの間は、点火許可条件が指標値「2」以上とされる一方、クランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転した後には、点火許可条件が指標値「3」とされると換言することができる。
なお、本実施形態では、何れの停止位置から回転し始めたとしても、クランク軸20が440°CA回転すれば、欠歯部23の検知を完了させることができる。すなわち、欠歯部23の検知において最も不利な条件は、欠歯部23の直前の30°CA前で停止している状態から自動再始動が開始される場合である。しかし、この場合であっても、クランク角センサ75が、パルス信号を2回出力した後(20°CA)に欠歯部23に対応する期間(30°CA)が現れ、その後に1回転して欠歯部23に対応する期間が現れた後(360°CA)に、パルス信号が3回出力された(30°CA)ときに、欠歯部23が検知される。この間には、クランク軸20が欠歯部23にいたるまでの20°CAと、欠歯部23を通過するまでの30°CAと、再び欠歯部23にいたるまでの間隔に相当する330°CAと、再び欠歯部23を通過する30°CAと、欠歯部23を通過してからパルス信号が3回出力されるまでの30°CAと、をあわせた440°CA回転している。したがって、クランク軸20が少なくとも440°CA回転していれば、これに基づいて欠歯部23の検知が完了していると推定することもできる。
また、本実施形態では、図4に示すように、2番目に点火時期をむかえる気筒の点火時期までにカム信号の切り替わりが検知される構成となっているため、算出されているクランク角が適正な値にある場合には、カム角センサ76の異常等が生じない限り、2番目及び3番目の点火が実行されることになる。
自動再始動時における点火は、表2に示す許可条件に基づいて、図5のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。この処理は、制御部50によりイグニッションスイッチがオン状態であるときに所定周期毎の割り込み処理として実行される。
図5に示すように、本処理が開始されると、まずステップS31において、自動再始動時であるか否かが判定される。ステップS31の判定は、図3のステップS11と同様の態様で行われる。ステップS31において自動再始動時ではないと判定されると(ステップS31:NO)、制御部50は本処理を終了する。すなわち、自動再始動時ではないときには、自動再始動時の点火制御を行う必要がないため、本処理が終了される。
ステップS31において、自動再始動時である旨が判定されると(ステップS31:YES)、ステップS32に移り、自動始動時に最初に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であるか否かが判定される。ステップS32において、肯定判定がなされた場合には(ステップS32:YES)、ステップS39に移り、算出されているクランク角に基づいて点火が許可される。すなわち、制御部50のRAMには、最後の自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに算出されているクランク角が記憶されている。したがって、自動再始動時には、制御部50が、記憶されているクランク角を利用して算出されるクランク角に基づいて、点火時期を決定し、この決定された時期に点火を実行すべく、点火プラグ12に駆動指令を出力する。そして、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS32で、最初に点火時期をむかえる気筒における点火判定時ではないと判定されると(ステップS32:NO)、ステップS33に移り、2番目又は3番目に点火時期をむかえる気筒における点火の判定時であるか否かが判定される。ステップS33において、肯定判定がなされると(ステップS33:YES)、ステップS38に移り、クランク角判定の指標値が「2」以上に設定されているか否かが判定される。すなわち、表2に示したように、2番目又は3番目に点火時期をむかえる気筒においては、点火の許可条件が指標値「2」以上である。したがって、ステップS38では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS38において、指標値が「2」以上であると判定されると(ステップS38:YES)、点火の許可条件が成立しているため、ステップS36に移り、点火が許可される。すなわち、制御部50が、2番目又は3番目に点火時期をむかえる気筒における点火の時期を、算出されているクランク角に基づいて決定するとともに、決定された時期に点火が実行されるよう点火プラグ12に駆動指令を出力する。一方、ステップS38において、指標値が「2」以上ではないと判定されると(ステップS38:NO)、ステップS37に移り、点火が禁止される。すなわち、指標値が「2」以上ではない場合には、2番目及び3番目に点火時期をむかえる気筒における点火の許可条件が成立していないため、点火が禁止される。ステップS36及びステップ37の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。
ステップS33において、2番目又は3番目に点火時期をむかえる気筒における点火判定時ではないと判定されると(ステップS33:NO)、ステップS34に移り、4番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であるか否かが判定される。ステップS34で否定判定されると(ステップS34:NO)、点火判定時ではないため、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS34において、4番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であると判定されると(ステップS34:YES)、ステップS35に移り、クランク角確認状況の指標値が「3」に設定されているか否かが判定される。すなわち、表2に示すように、4番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、点火の許可条件が指標値「3」である。したがって、ステップS35では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS35において、指標値が「3」であると判定されると(ステップS35:YES)、点火の許可条件が成立しているため、ステップS36に移り、点火が許可される。すなわち、制御部50が、4番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火の時期を、算出されているクランク角に基づいて決定するとともに、決定された時期に点火が実行されるように点火プラグ12に駆動指令を出力する。一方、ステップS35において、指標値が「3」ではないと判定されると(ステップS38:NO)、ステップS37に移り、点火が禁止される。すなわち、指標値が「3」ではない場合には、4番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火の許可条件が成立していないため、点火が禁止される。ステップS36及びステップ37の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。以上のようにして、自動再始動時の点火制御が実行される。
次に、自動再始動時の燃料噴射の許可条件について、表3を参照して説明する。
表3に示すように、自動再始動時に最初に点火時期をむかえる気筒に対する燃料噴射は、その許可条件が指標値「0」以上とされ、2番目以降に点火時期をむかえる気筒の燃料噴射については、指標値「1」以外のときは許可される。すなわち、2番目以降に点火時期をむかえる気筒に対する噴射については、算出されているクランク角が適正な値にはないと確認されている場合にのみ禁止され、この確認がなされていない(指標値「0」、「2」及び「3」)場合には、燃料噴射が実行される。なお、2番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、指標値「0」も燃料噴射の許可条件としており、算出されているクランク角が適正な値にある旨が確認されていなくても、燃料噴射が許可されることとなる。しかしながら、仮に不適切な時期に燃料噴射が実行されたとしても、その後の点火は、算出されているクランク角が適正な値にあることを条件に実行されるため、不適切な燃焼は生じない。また、指標値「1」の場合は、算出されているクランク角が適正な値にはない旨の確認が既になされているため、算出されているクランク角に基づく不適切な燃料噴射が実行されることを抑制すべく、燃料噴射を禁止する。
自動再始動時における燃料噴射は、表3に示す許可条件に基づいて、図6のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。この処理は、制御部50によりイグニッションスイッチがオン状態であるときに所定周期毎の割り込み処理として実行される。
図6に示すように、本処理が開始されると、まずステップS41において、自動再始動時であるか否かが判定される。ステップS41の判定は、図3のステップS11と同様の態様で行われる。ステップS41において自動再始動時ではないと判定されると(ステップS41:NO)、制御部50は本処理を終了する。すなわち、自動再始動時ではないときには、自動再始動時の燃料噴射制御を行う必要がないため、本処理が終了される。
一方、ステップS41において、自動再始動時である旨が判定されると(ステップS41:YES)、ステップS42に移り、最初に点火時期をむかえる気筒での燃料噴射の判定時であるか否かが判定される。ステップS42において、肯定判定がなされた場合には(ステップS42:YES)、ステップS47に移り、燃料噴射が許可される。すなわち、制御部50は、最後の自動停止時に記憶したクランク角を利用して算出されているクランク角に基づいて燃料噴射時期を決定し、その時期に燃料噴射を実行すべく、筒内噴射弁11に駆動指令を出力する。そして、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS42で、最初に点火時期をむかえる気筒での燃料噴射の判定時ではないと判定されると(ステップS42:NO)、2番目以降に点火時期をむかえる気筒での燃料噴射の判定時であるか否かが判定される。ステップS42において否定判定されると(ステップS43:NO)、燃料噴射の判定時ではないため、制御部50は本処理を一旦終了する。
一方、ステップS43において肯定判定がなされると(ステップS43:YES)、2番目以降に点火時期をむかえる気筒での燃料噴射の判定時であるため、ステップS44に移り、クランク角確認状況の指標値が「1」であるか否かが判定される。すなわち、表3に示したように、2番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、燃料噴射の許可条件が指標値「1」以外であることとであることとされている。したがって、ステップS44では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS44において、指標値が「1」であると判定されると(ステップS44:YES)、ステップS46に移り、燃料噴射の許可条件が成立していないため、燃料噴射が禁止される。一方、ステップS44において、指標値が「1」ではないと判定されると(ステップS44:NO)、ステップS45に移り、燃料噴射が許可される。すなわち、制御部50は、算出されているクランク角に基づいて燃料噴射時期を決定し、その時期に燃料噴射を実行すべく、筒内噴射弁11に駆動指令を出力する。そして、ステップS45又はステップ46の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。以上のようにして、自動再始動時の燃料噴射制御が実行される。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、機関始動時の最初の点火は、最も早く初爆を生じさせることのできる気筒に対して、自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに記憶したクランク角を利用して算出したクランク角に基づいて実行される。また、機関始動時に最初の点火を実行した気筒に続いて点火時期をむかえる気筒に対しては、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされたときに、その算出しているクランク角に基づく点火が実行される。一方、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされていないときには、点火が禁止される。
以上詳述した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
(1)機関停止時に記憶したクランク角と実際のクランク角とにずれがなければ、記憶したクランク角を利用することで最初の点火が適切な時期に点火が行われるため、適切な初爆を早期に生じさせ、早期始動を実現することができる。
また、本実施形態では、2番目以降に点火時期をむかえる気筒に対しては、算出されているクランク角、すなわちクランク角の推定値が適正な値にある旨の確認がなされていることを条件に許可され、その確認がなされていないときには、点火が禁止される。したがって、仮に最初の点火が適正な値にはないクランク角に基づいて不適切な時期に実行された場合でも、次の点火が不適切な時期に実行されることを抑制することができる。このようにして、機関始動時に不適切な点火が連続して実行されることを抑制することができる。
なお、各気筒において点火が不適切な時期に実行された場合には、この点火によりクランク軸20に対して逆回転方向に作用するトルクが発生することがある。この点、圧縮行程にある気筒に対して筒内噴射弁11からの燃料噴射と点火とを実行する圧縮行程噴射始動の場合、最初の点火は、多くの場合は圧縮行程で停止していた気筒に対して実行される。そのため、吸気行程を経て燃焼が行われる2番目以降の燃焼と比べて気筒内の空気量が少なく、仮に誤った時期の点火によりクランク軸20に対して逆回転方向のトルクが作用したとしても、そのトルクは小さなものになることが多い。したがって、機関停止時のクランク角を利用した最初の点火が不適切な時期に行われたとしても、スタータ14によるクランク軸20の駆動によって、クランク軸20の逆回転を抑制することができる。すなわち、不適切な時期に最初の点火が行われた場合でもそれによる問題はさほど大きくなく、適切な時期に点火が行われた場合には、早期始動を実現することができる。
一方、最初の点火を実行した気筒に続いて点火時期をむかえる気筒においては、吸気行程を経た後に圧縮行程となり、点火時期をむかえるため、不適切な点火がなされた場合に発生する逆回転トルクが大きくなる。この点、本実施形態では、最初の点火を実行した気筒に続いて点火時期をむかえる気筒においては、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされていない場合には点火が実行されない。したがって、クランク軸20に不適切な点火に起因した大きな逆回転トルクが作用することを抑制することができる。
以上のように早期の始動完了を図るとともに、不適切な点火が連続して実行されることを抑制することができる。
(2)算出しているクランク角が、欠歯部23の検知がなされたことにより規定値に更新されたときには、算出されているクランク角が実際のクランク角に即した値となっている。したがって、欠歯部23の検知がなされている場合には、そのことに基づいて算出されているクランク角が適正な値にある旨を確認することができる。また、本実施形態では、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転した後には、指標値を「3」に設定するようにしている。したがって上記のような欠歯部23の検知とクランク角の更新との関係を利用して指標値が「3」になっていることに基づいてクランク角が適正な値にある旨を確認することができる。
(3)自動再始動時に3番目に点火時期をむかえる気筒での点火判定時までには、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転していないため、欠歯部23の検知がなされていない可能性がある。したがって、2番目及び3番目に点火時期をむかえる気筒でまでは、点火許可条件を指標値「2」以上とし、カム信号の出力が切り替わるときに算出しているクランク角の値が、規定範囲内、すなわちカム信号の出力が切り替わるときに算出されるはずのクランク角を含む許容範囲内にある場合にも点火を許可するようにしている。そのため、欠歯部23の検知がなされるまでの間においても、クランク角が概ね適正な値にあることを確認し、点火を許可することができる。
一方で、自動再始動時に4番目に点火時期をむかえる気筒での点火判定時までには、クランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転しており、既に欠歯部23が検知され、算出されているクランク角の推定値が、欠歯部23が検知されるときの規定値に更新されていると推定できる。この点、本実施形態では、4番目以降に点火時期をむかえる気筒に対しては、欠歯部23の検知がなされたことを条件にクランク角の推定値に基づく点火を実行する。こうした構成によれば、異常が生じていなければ欠歯部23が検知されているべき状況下においては、カム信号を利用した確認よりも正確な欠歯部23の検知を条件とする確認がなされるようになるため、クランク角の確認精度を高めることができる。
(4)本実施形態では、カム角センサ76から出力されるカム信号がH信号とL信号との間で切り替わるときに算出しているクランク角の値が、上記規定範囲外にあることに基づいて、算出しているクランク角が適正な値にはないことを確認する。そして、制御部50は、圧縮行程噴射始動において、算出しているクランク角が適正な値にはない旨の確認がなされたときに、機関始動に伴い最初の点火を実行した気筒に続いて点火時期をむかえる気筒に対する燃料噴射を禁止するようにしている。したがって、不適切な燃料噴射が実行されることを抑制することができる。
(第2実施形態)
次に内燃機関の制御装置の第2実施形態について、図1及び図7〜9を参照して説明する。
本実施形態では、上記第1実施形態の制御に加えて、自動再始動時に筒内噴射弁11に供給される燃料圧力に基づいて、燃料の噴射態様を切り替える制御を行う。
すなわち、自動停止中に筒内噴射弁11に燃料を供給するデリバリパイプ内の圧力が低下した場合には、自動再始動時に圧縮行程での燃料噴射を適切に実行することができない。なお、自動停止中においても、デリバリパイプの圧力は筒内噴射を実行可能な下限圧力以上に維持されるように、燃料供給配管には逆止弁等が設けられているが、自動停止期間が長期間に亘り、且つその間にデリバリパイプ内の燃料が漏れる場合には、デリバリパイプの圧力が下限圧力未満となるといった事態が生じる可能性がある。
そこで、本実施形態の制御装置は、図1に破線で示すように、デリバリパイプ内の圧力を検知する圧力センサ79を備えている。そして、同圧力センサ79により検知されるデリバリパイプ内の圧力が、上記下限圧力未満となった場合には、制御部50が、圧縮行程噴射始動を禁止して吸気行程にある気筒に対して燃料を噴射してから点火を実行し、初爆を生じさせる吸気行程噴射始動を実行するように、筒内噴射弁11及び点火プラグ12を制御する。なお、下限圧力は、圧縮行程で実際に燃料噴射を実行することが可能な下限の圧力よりも少し高い圧力に設定されている。
また、デリバリパイプ内の圧力が、圧縮行程での燃料噴射を実行するための下限圧力以上である場合には、自動再始動時に圧縮行程での燃料噴射が実行されるため、表2及び表3に示す許可条件に基づいて、図5及び図6のフローチャートを一部変更した制御が行われる。
詳細には、図5におけるステップS31では、自動再始動時であるか否かの判定のみを行っていたが、本実施形態では、圧縮行程噴射による自動再始動時であるか否かが判定される。すなわち、自動再始動時であるか否かの判定に併せて、圧力センサ79がデリバリパイプの圧力が下限圧力以上であることを検知したことによって、制御部50が圧縮行程噴射による始動を決定したか否かの判定が行われる。その他のステップにおいては、先に図5に基づいて説明した内容と同じであるため、説明を省略する。また、図6におけるステップS41においても、圧縮行程噴射による自動再始動時であるか否かが判定されることになる。そして、その他のステップにおいては、先に図6に基づいて説明した内容と同じであるため、説明を省略する。
表4に、自動再始動時に吸気行程噴射を行う場合、すなわち吸気行程噴射始動時の点火の許可条件を示す。
表4に示すように、吸気行程噴射始動を行う場合には、最初の点火判定時から、その許可条件が指標値「2」以上とされる。これは、以下の理由による。すなわち、吸気行程噴射始動の場合には、吸気行程を経て均質に混合された混合気に点火されるため、圧縮行程噴射始動による初爆と比較して得られるトルクが大きい。したがって、吸気行程噴射始動の場合には、不適切な点火がなされた場合に発生する逆回転トルクが大きくなる。そのため、吸気行程噴射始動を実行する場合には、上記態様により算出されるクランク角の推定値が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、点火の実行を禁止するようにしている。これにより、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、最も早く初爆を生じさせることのできる気筒に対しても点火が行わなくなるため、不適切な点火がなされて大きな逆回転トルクがクランク軸20に作用するようになることを抑制することができる。こうした理由により、圧縮行程噴射始動を行う場合には最初の点火許可条件を指標値「0」以上としているのに対して、吸気行程噴射始動を行う場合には最初の点火許可条件から指標値「2」以上に設定している。
表4における点火許可条件の設定態様について、図7を参照して説明する。
図7は、各気筒の行程とクランク角との関係を示しており、カム信号の切り替わりが検知される時期、及び欠歯部23が検知される時期については、図4と同様の態様で図示している。また、自動再始動時における最初の燃料噴射は吸気行程の気筒において吸気上死点の120°CA後(破線矢印)において実行され、それに続いて点火時期をむかえる気筒においては、吸気上死点の60°CA後に燃料噴射が実行される。なお、図7には、各気筒において最初に燃料噴射が行われた場合の噴射時期のみを示している。また、各気筒では、圧縮上死点の10°CA前(実線矢印)から圧縮上死点10°CAまでの期間が点火プラグ12の通電時期である。
吸気行程噴射の始動の場合、最初の燃料噴射時期を吸気上死点の120°CA後としているのは、以下の理由による。すなわち、燃料噴射時期を吸気上死点直後とした場合には、自動再始動の開始時に吸気行程で停止している気筒があったとしても、停止位置におけるクランク角が既に燃料噴射時期に相当するクランク角よりも遅角側である可能性も高く、その気筒に最初の燃料噴射を実行できないことがある。したがって、このような場合には、早期に初爆を生じさせることができない。一方、燃料噴射時期を吸気下死点近傍とすると、噴射された燃料が良好に均質化されず、初爆の燃焼状態が悪化する。そこで、本実施形態では、吸気行程で停止している気筒に対して、燃料の均質化を良好に維持しつつ、可能な限り最初の燃料噴射を実行すべく、燃料噴射時期を吸気上死点の120°CA後としている。
図7において、例えば、自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに、何れかの気筒が吸気行程における燃料噴射時期よりも進角側(吸気上死点の110°CA後以前)で停止している場合、最初の燃料噴射及び点火を、吸気行程で停止している気筒に対して実行することが可能である。したがって、吸気行程で停止している気筒に対して燃料噴射及び点火を行えば、最も早く最初の初爆を生じさせることができるため、本実施形態では、吸気行程において吸気上死点の110°CA後以前で停止している気筒がある場合には、この気筒が、最初に燃料噴射時期及び点火時期をむかえる気筒となる。また、吸気行程で停止している気筒がその燃料噴射時期又はその時期よりも遅角側(吸気上死点の120°CA後以降)で停止している場合には、最初の燃料噴射をその気筒に対して行うことができないため、その次に吸気行程となる気筒が、最初に燃料噴射時期及び点火時期をむかえる気筒となる。なお、以下の説明においては、最初に燃料噴射時期及び点火時期をむかえる気筒に次いで吸気行程となり、点火時期をむかえる気筒を「2番目に点火時期をむかえる気筒」と説明する。
表4を示して説明したように、全ての気筒において点火許可条件は、吸気行程噴射による大きな逆回転トルクの発生を抑制すべく指標値「2」以上とされる。詳細には、最初及び2番目に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「2」以上に設定されているため、指標値「2」以上で点火が許可される一方、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされていないときに、点火が禁止される。また、3番目以降に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「3」に設定されているため、指標値「3」で点火が許可され、欠歯部23が検知されていない状況においては、点火が禁止される。
3番目以降に点火時期をむかえる気筒について、点火許可条件を指標値「3」としているのは、本実施形態では、クランク角センサ75の異常等が生じていない限り、遅くとも3番目の点火時期までに欠歯部23が検知されて、算出されているクランク角が欠歯部23の検知に基づいて更新されるためである。なお、遅くとも3番目の点火時期までに欠歯部23が検知される理由は、第1実施形態において圧縮行程噴射始動の場合に4番目に点火時期をむかえる気筒の点火時期までに欠歯部23が検知される理由として説明した理由と同様の理由である。
すなわち、図7に示すように、例えば、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、その第3気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、2番目に点火時期をむかえる第4気筒の点火時期までには欠歯部23が検知されていることになる。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第2気筒である場合には、その第2気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、2番目に点火時期をむかえる第1気筒の点火時期までには欠歯部23が検出されていることになる。これに対して、最初に点火時期をむかえる気筒が第1気筒であり、自動再始動の開始時における停止位置が450°CA以降のクランク角である場合には、2番目に点火時期をむかえる第3気筒の点火時期までに欠歯部23を検知することはできないが、3番目に点火時期をむかえる第4気筒の点火時期までには欠歯部23を検知できる。同様に、最初に点火時期をむかえる気筒が第4気筒である場合にも、2番目に点火時期をむかえる第2気筒の点火時期までに欠歯部23を検知できない場合があるものの、3番目に点火時期をむかえる第1気筒の点火時期までには欠歯部23を検知できる。したがって、本実施形態における吸気行程噴射始動時には、クランク角センサ75の異常等が生じていない限り、遅くとも3番目の点火時期までに欠歯部23が検知されるため、表4に示すように、3番目に吸気行程となる気筒における点火許可条件は「3」とされる。
なお、本実施形態では、図7に示すように、最初の点火時期までにカム信号の切り替わりが検知される構成となっているため、算出されているクランク角が適正な値にある場合には、カム角センサ76の異常等が生じない限り、最初の点火から実行されることになる。
自動再始動時における点火は、表4に示す許可条件に基づいて、図8のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。この処理は、制御部50によりイグニッションスイッチがオン状態であるときに所定周期毎の割り込み処理として実行される。
図8に示すように、本処理が開始されると、まずステップS51において、吸気行程噴射による自動再始動時であるか否かが判定される。ステップS51の判定は、自動再始動時であることと、その再始動の開始時に圧力センサ79がデリバリパイプの圧力が下限圧力未満であることを検知したことによって、制御部50が吸気行程噴射による始動を決定したことを条件に肯定判定がなされる。ステップS51では、自動再始動時ではない場合や自動再始動時であっても圧縮行程噴射始動である場合には、否定判定がなされ(ステップS51:NO)、制御部50は本処理を終了する。すなわち、自動再始動時ではないときには、通常運転中の点火制御が行われ、圧縮行程噴射始動による自動再始動時である場合には、図5に示した点火制御が実行される。
一方、ステップS51で、吸気行程噴射による自動再始動時であると判定されると(ステップS51:YES)、ステップS52に移り、最初又は2番目に点火時期をむかえる気筒における点火の判定時であるか否かが判定される。ステップS52において、肯定判定がなされると(ステップS52:YES)、ステップS56に移り、クランク角判定の指標値が「2」以上に設定されているか否かが判定される。すなわち、表4に示したように、最初又は2番目に点火時期をむかえる気筒においては、点火の許可条件が指標値「2」以上である。したがって、ステップS56では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS56において、指標値が「2」以上であると判定されると(ステップS38:YES)、点火の許可条件が成立しているため、ステップS55に移り、点火が許可される。すなわち、制御部50が、最初又は2番目に点火時期をむかえる気筒における点火の時期を、算出されているクランク角に基づいて決定するとともに、決定された時期に点火が実行されるよう点火プラグ12に駆動指令を出力する。一方、ステップS56において、指標値が「2」以上ではないと判定されると(ステップS56:NO)、ステップS57に移り、点火が禁止される。すなわち、指標値が「2」以上ではない場合には、最初及び2番目に点火時期をむかえる気筒における点火の許可条件が成立していないため、点火が禁止される。ステップS55及びステップ57の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。
ステップS52において、最初又は2番目に点火時期をむかえる気筒における点火判定時ではないと判定されると(ステップS52:NO)、ステップS53に移り、3番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であるか否かが判定される。ステップS53で否定判定されると(ステップS53:NO)、点火判定時ではないため、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS53において、3番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であると判定されると(ステップS53:YES)、ステップS54に移り、クランク角確認状況の指標値が「3」に設定されているか否かが判定される。すなわち、表2に示すように、3番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、点火の許可条件が指標値「3」である。したがって、ステップS54では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS54において、指標値が「3」であると判定されると(ステップS54:YES)、点火の許可条件が成立しているため、ステップS55に移り、点火が許可される。すなわち、制御部50が、3番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火の時期を、算出されているクランク角に基づいて決定するとともに、決定された時期に点火が実行されるよう点火プラグ12に駆動指令を出力する。一方、ステップS54において、指標値が「3」ではないと判定されると(ステップS38:NO)、ステップS57に移り、点火が禁止される。すなわち、指標値が「3」ではない場合には、3番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火の許可条件が成立していないため、点火が禁止される。ステップS36及びステップ37の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。
以上のようにして、吸気行程噴射始動では最初の点火から、算出されているクランク角が適正な値にあること(指標値「2」又は「3」)が確認されている場合にのみその実行が許可される。そして、3番目以降の点火については、欠歯部23が検知された場合に(指標値「3」)のみ実行される。したがって、自動再始動時に吸気行程噴射を行う場合には、算出されているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、点火の実行が禁止される。そして、表4に示す許可条件を満たさないときには、その気筒での点火が禁止される。
表5は、吸気行程噴射始動時の燃料噴射の許可条件を示す。
表5に示すように、吸気行程噴射始動時には、燃料噴射条件は、「1」以外とされる。すなわち、吸気行程噴射による自動再始動時では、最初の燃料噴射から、算出されているクランク角が適正な値にはないと確認されている場合には燃料噴射が禁止され、この確認がなされていない(指標値「0」、「2」及び「3」)場合には、燃料噴射が実行される。したがって、算出されているクランク角が不適切な値にある場合には、そのクランク角に基づいて燃料噴射が実行されることを抑制することができる。これにより、不適切な時期に燃料噴射が実行されることに起因した大きな逆回転トルクが発生することを初回から抑制することができる。
自動再始動時における燃料噴射は、表5に示す許可条件に基づいて、図9のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。この処理は、制御部50によりイグニッションスイッチがオン状態であるときに所定周期毎の割り込み処理として実行される。
図9に示すように、本処理が開始されると、まずステップS61において、吸気行程噴射による自動再始動時であるか否かが判定される。ステップS61では、図8のステップS51の判定と同様の判定が行われる。したがって、ステップS61では、自動再始動時ではない場合や、自動再始動時であっても圧縮行程噴射始動である場合には、否定判定がなされて(ステップS61:NO)、制御部50は本処理を終了する。
一方、ステップS61において、吸気行程噴射始動による自動再始動時であると判定されると(ステップS61:YES)、ステップS62に移り、各気筒における燃料噴射判定時であるか否かが判定される。ステップS62において、否定判定がなされると(ステップS62:NO)、点火判定時ではないため、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS62において、各気筒における燃料噴射判定時であると判定されると(ステップS62:YES)、ステップS63に移り、クランク角確認状況の指標値が「1」であるか否かが判定される。すなわち、表5に示したように、全ての気筒においては、燃料噴射の許可条件が指標値「1」以外であることとであることとされている。したがって、ステップS63では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS63において、指標値が「1」であると判定されると(ステップS63:YES)、燃料噴射の許可条件が成立していないため、ステップS65に移り、燃料噴射が禁止される。一方、ステップS63において、指標値が「1」ではないと判定されると(ステップS63:NO)、ステップS64に移り、燃料噴射が許可される。すなわち、制御部50は、算出されているクランク角に基づいて燃料噴射時期を決定し、その時期に燃料噴射を実行すべく、筒内噴射弁11に駆動指令を出力する。そして、ステップS64又はステップ65の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。以上のようにして、自動再始動時の燃料噴射制御が実行される。
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、吸気行程噴射始動を実行する場合には、制御部50が、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、点火の実行を禁止する。したがって、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、最も早く初爆を生じさせることのできる気筒に対しても点火が行われなくなる。
以上詳述した本実施形態では、第1実施形態で説明した(1)〜(4)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(5)吸気行程噴射始動を実行する場合には、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、最も早く初爆を生じさせることのできる気筒に対しても点火が行わなくなるため、不適切な点火がなされて大きな逆回転トルクがクランク軸20に作用するようになることを抑制することができる。
(6)筒内噴射弁11に供給される燃料の圧力が、圧縮行程において燃料噴射を実行するための下限圧力未満である場合には、制御部50が、圧縮行程噴射始動を禁止して吸気行程噴射始動が実行されるように制御するようにしている。したがって、圧縮行程において燃料噴射を実行するための下限圧力未満である場合であっても、機関始動時に燃料噴射を実行して内燃機関10を始動させることができる。
(7)初爆を生じさせる吸気行程噴射始動を実行する場合には、算出しているクランク角が適正な値にはない旨の確認がなされていることを条件に、最も早く初爆を生じさせることのできる気筒に対する燃料噴射も禁止するようにしている。したがって、不適切な時期に噴射や点火が実行されることに起因した大きな逆回転トルクが発生することを初回から抑制することができる。
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、吸気行程噴射始動を行う場合においても、筒内噴射弁11により燃料噴射を実行するようにしている。
これに代わり、本変形例では、図1に破線で示すように、内燃機関10が吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁15も備えており、筒内噴射弁11に供給される燃料の圧力が下限圧力未満である場合に、ポート噴射弁15により燃料を噴射する吸気行程噴射始動を実行する。
なお、その他の作用及び構成は第2実施形態と同じである。
こうした構成を採用した場合にも、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に内燃機関の制御装置の第3実施形態について、図10〜12を参照して説明する。
本実施形態の制御装置が適用される内燃機関は、筒内噴射弁を備えるV型6気筒のガソリンエンジンであり、自動再始動時に圧縮行程噴射が行われる。本実施形態の内燃機関はV型エンジンであるため、右バンク及び左バンクの2つのバンクを有している。なお、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いて説明する。また、特に説明しない構成については、第1実施形態と同様である。
本実施形態のクランクロータ21は、第1実施形態と同様の構成であり、その外周に10°間隔で形成される複数の突起22と、外周の1カ所に設けられて突起22の3個分に相当する幅の欠歯部23とを備えている。しかしながら、後述するように、欠歯部23が設けられるクランク角が第1実施形態と異なるため、欠歯部23が検知されるクランク角が第1実施形態と異なっている。
図10に示すように、右バンク及び左バンクには、それぞれ排気カム軸(以下、単に「カム軸」という)80,90が設けられており、2つの排気カム角センサ(以下、単に「カム角センサ」という)88,98が各バンクのカム軸80,90の回転角の変化に応じたカム信号を出力する。各バンクのカム軸80,90に設けられるカムロータ81,91の形状は同じ形状であるが、第1実施形態のカムロータ31とは形状が異なっている。なお、図10に示すように、各カムロータ81,91の形状は同じであるため、右バンクのカムロータ81のみ説明する。
カムロータ81には、その周方向における占有範囲の広さが互いに異なる3つの凸部(突起)82,83,84と、各凸部82,83,84の間に位置し凸部82,83,84に対して凹んでいる凹部(突起がない部分)85,86,87が設けられている。
最も大きな第1の凸部82はカムロータ81の周方向において角度にして90°に亘って広がるように形成されている。これに対して、最も小さな第2の凸部83は角度にして30°に亘って広がるように形成されており、第3の凸部84は60°に亘って広がるように形成されている。また、第1の凸部82と第2の凸部83と間の第1の凹部85はカムロータ81の周方向の30°に亘って設けられており、第2の凸部83と第3の凸部84と間の第2の凹部86はカムロータ81の周方向の90°に亘って設けられている。そして、第1の凸部82と第3の凸部84の間の第3の凹部87は、カムロータ81の周方向の60°に亘って設けられている。
左バンクのカムロータ91は、右バンクのカムロータ81に対して、回転位相を60°遅角側にずらして取り付けられている。これにより、左バンクのカム角センサ98が出力する信号は、右バンクのカム角センサ88が出力する信号に対して120°CA遅れることになる。
本実施形態においても、制御部50が、確認手段及び異常確認手段として、クランク角センサ75の出力する信号とカム角センサ88,98の出力するカム信号とに基づいて、算出されているクランク角の推定値が適正な値にある旨及び適正な値にはない旨の確認を行う。図11を参照して、クランク角センサ75が出力するクランク信号及びそれに基づくクランク角の算出値と、カム角センサ88,98が出力するカム信号とについて説明する。
図11(a)に示すように、本実施形態では、クランク軸20が10°CA回転する毎にクランク角センサ75が、クランクロータ21の突起22に対応したパルス信号を出力する。また、クランク角が180〜200°CAであるときと、540〜560°CAであるときが、クランクロータ21の欠歯部23に対応している。すなわち、欠歯部23は、クランクロータ21の外周の1カ所に設けられているため、図11(a)に示すように、クランク軸20が1回転する360°CA毎に、パルス信号の出力間隔が長くなる欠歯部23に対応する期間が現れる。
そして、図11(b)に示すように、パルス信号の出力に応じてクランク角が10°CAずつ加算されるとともに、欠歯部23が検知されたときに、算出されているクランク角が、欠歯部23が検知されるときに算出されるはずのクランク角の規定値に更新される。詳細には、本実施形態では、欠歯部23が設けられるクランク角(180〜200°CA、540〜560°CA)から30°CA後の230°CA,570°CAのときに算出されているクランク角が更新される。すなわち、継続して出力されていたパルス信号が30°CA分出力されず、その後にパルス信号が3回出力されたときに、それに基づいて欠歯部23を検知し、そのときに算出されているクランク角が、欠歯部23が検知されるときのクランク角(230°CA,570°CA)に更新される。このように、パルス信号が30°CA分出力されない状況からパルス信号が3回出力されたこときに欠歯部23を検知するようにすれば、クランク軸20の回転速度が変化しやすい機関始動時においても、欠歯部23をより正確に検知することができる。
また、パルス信号の出力に応じてクランク角の算出値が710°CAまで計数されると、その次のパルス信号の出力により、クランク角の算出値が0°CAにリセットされる。本実施形態では、このようにしてクランク角を算出する。
また、本実施形態においても、自動停止に伴ってクランク軸20の回転が停止する度に、制御部50のRAMに、そのときに算出されているクランク角を記憶する。こうすることで、次回の自動再始動時には最後に自動停止時がなされたときにクランク軸20の回転が停止したときのクランク角が記憶されていることになる。そのため、自動再始動時には、この記憶されているクランク角が初期値となり、パルス信号が出力される度に10°CAずつ加算されることによってクランク角が算出される。そして、その後、欠歯部23が検知されると、クランク角が、欠歯部23が検知されるときのクランク角の規定値に更新される。
また、図11(c)に示すように、右バンク及び左バンクに対応した各カム角センサ88,98は、H信号とL信号のカム信号を交互に出力する。第1実施形態におけるカム信号と同様に、H信号は、各カムロータ81,91の各凸部82,83,84,92,93,94に対応しており、L信号は、各カムロータ91の各凹部85,86,87,95,96,97に対応している。そして、カム軸80,90は、クランク軸20とタイミングチェーン等を介して連結されており、クランク軸20が2回転する毎に1回転する。したがって、H信号は、各カムロータ81、91の各凸部82,83,84,92,93,94の周方向の角度の2倍のクランク角分出力される。また、L信号は、各カムロータ81の各凹部85,86,87,95,96,97の周方向の角度の2倍のクランク角分出力される。
詳細には、右バンクのカム信号は、右バンクのカムロータ81の第1の凸部82に対応するH信号が150〜330°CAの180°CA分のH信号として出力され、第1の凹部85に対応するL信号が330〜390°CAの60°CA分のL信号として出力される。また、第2の凸部83に対応するH信号は390〜450°CAの60°CA分のH信号として出力され、第2の凹部86に対応するL信号は450〜630°CAの180°CA分のL信号として出力される。そして、第3の凸部84に対応するH信号は630〜30°CAの120°CA分のH信号として出力され、第3の凹部87に対応するL信号は30〜150°CAの120°CA分のL信号として出力される。
また、上記の通り、左バンクのカム信号は、右バンクのカム信号に対して120°CA位相が遅れた波形として出力される。したがって、左バンクのカム信号は、左バンクのカムロータ91の第1の凸部92に対応するH信号が270〜450°CAの180°CA分のH信号として出力され、第1の凹部95に対応するL信号が450〜510°CAの60°CA分のL信号として出力される。また、第2の凸部93に対応するH信号は510〜570°CAの60°CA分のH信号として出力され、第2の凹部96に対応するL信号は570〜30°CAの180°CA分のL信号として出力される。そして、第3の凸部94に対応するH信号は30〜150°CAの120°CA分のH信号として出力され、第3の凹部97に対応するL信号は150〜270°CAの120°CA分のL信号として出力される。
ここで、上記の通り、カム軸30は、クランク軸20とタイミングチェーン等を介して連結されているため、カム信号とクランク角との間には一定の相関関係があり、カム信号のH信号とL信号とが切り替わる時のクランク角の値は特定の値となる。制御部50のROMには、H信号とL信号とが切り替わるときのクランク角(右バンクH→L:30°CA,330°CA,450°CA、右バンクL→H:150°CA,390°CA、630°CA、左バンクH→L:150°CA,450°CA,570°CA、左バンクL→H:30°CA,270°CA、510°CA)が予め記憶されている。したがって、カム信号の切り替わりが検知されるときに、算出しているクランク角の値が、規定範囲内、すなわち、カム信号の出力が切り替わるときに算出されるはずのクランク角(ROMに記憶したクランク角)を含む許容範囲内にある場合には、算出されているクランク角が適正な値にあると推定することができる。一方、カム信号の切り替わりが検知されるときに、算出しているクランク角の値が、上記規定範囲内にない場合には、算出されているクランク角が適正な値にはないと推定することができる。
ここで、算出されているクランク角が、欠歯部23の検知により更新されたときは、算出されているクランク角が適正な値にある旨を確認することができる。また、カム信号のH信号とL信号との切り替わりを検知することにより、算出されているクランク角が適正な値にあるか否かを確認することができる。したがって、本実施形態では、制御部50が、クランク角センサ75の出力する信号及びカム角センサ88,98の出力する信号に基づいて、算出されているクランク角が適正な値にある旨の確認を行うとともに、カム角センサ76の出力する信号に基づいて、算出されているクランク角が適正な値にはない旨の確認を行う。
本実施形態においても、自動再始動時に、第1実施形態の表1と同様の態様でクランク角の確認状況の指標値が設定される。なお、本実施形態では、カム信号に基づくクランク角の確認状況の指標値を設定するにあたっては、右バンク及び左バンクの双方のカム信号が用いられる。すなわち、指標値の設定は、図3のフローチャートに示す実行手順と同様の態様で行われるものの、ステップS17においては、少なくとも一方のバンクにおいてカム信号が検知されたか否かが判定される。そして、算出されているクランク角と、双方のバンクにおけるカム信号の切り替わりの有無に基づいて、クランク角が適正な値にあるか否かの判定が行われる。
すなわち、ステップS17において、少なくとも一方のカム信号の切り替わりが検知されたと判定されると(ステップS17:YES)、ステップS18に移り、算出されているクランク角が、上記規定範囲内、すなわち、カム信号の切り替わりが検知されるときに算出されるはずのクランク角を含む許容範囲内にあるか否かが判定される。本実施形態では、この許容範囲が±20°CAに設定されている。そして、右バンクのカム信号のみにおいて切り替わりが検知されるときには、10°CA刻みで算出されているクランク角が310〜340°CA,370〜400°CA,610〜640°Cであるときに許容範囲内にある旨の判定がなされる。また、左バンクのカム信号のみにおいて切り替わりが検知されるときには、10°CA刻みで算出されているクランク角が250〜280°CA,490〜520°CA,550〜580°CAであるときに許容範囲内にある旨の判定がなされる。そして、右バンク及び左バンクの双方のカム信号の切り替わりが検知されるときには、10°CA刻みで算出されているクランク角が10〜40°CA,130〜160°CA,430〜460°CAであるときに許容範囲内にある旨の判定がなされる。
以上のようにして、本実施形態においても自動再始動時にクランク角確認状況の指標値が設定される。
表6に、本実施形態における自動再始動時の点火の許可条件を示す。表6における点火許可条件の設定態様について、図12を参照して説明する。
図12は、各気筒の行程とクランク角との関係を示しており、実線矢印ARで示す時期が、右バンクのカム信号のL信号からH信号への切り替わりが検知されるクランク角を示し、実線矢印BRで示す時期が、右バンクのカム信号のH信号からL信号への切り替わりが検知されるクランク角を示す。また、実線矢印ALで示す時期が、左バンクのカム信号のL信号からH信号への切り替わりが検知されるクランク角を示し、実線矢印BLで示す時期が、左バンクのカム信号のH信号からL信号への切り替わりが検知されるクランク角を示す。また、矢印Cで示す範囲のクランク角が欠歯部23に対応しており、その30°CA後の破線矢印Dで示すクランク角が、欠歯部23が検知されるクランク角である。また、各気筒においては、圧縮上死点の30°CA前(破線矢印)の時期が燃料噴射時期であり、圧縮上死点の10°CA前(実線矢印)から圧縮上死点10°CAまでの期間が点火プラグ12の通電時期である。
図12において、例えば、自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに、圧縮行程で停止している気筒が、その燃料噴射時期よりも進角側(圧縮行程上死点前40°CA以前)で停止している場合、最初の燃料噴射及び点火を、圧縮行程で停止している気筒に対して実行することが可能である。したがって、圧縮行程で停止している気筒に対して燃料噴射及び点火を行えば、最も早く初爆を生じさせることができるため、本実施形態では、圧縮行程において上死点よりも40°CA以上手前で停止している気筒がある場合には、この気筒に対して最初の燃料噴射及び点火が実行される。また、圧縮行程において停止している気筒がその燃料噴射時期又はその時期よりも遅角側(圧縮上死点前30°CA以降)で停止している場合には、最初の燃料噴射をその気筒に対して行うことができない。そのため、この場合には、その次に点火時期をむかえる気筒が最も早く初爆を生じさせる気筒となり、その気筒に対して最初の燃料噴射及び点火が実行される。なお、以下の説明においては、最初の燃料噴射及び点火が実行される気筒を「最初に点火時期をむかえる気筒」とし、その最初に点火時期をむかえる気筒に次いで圧縮行程となり、点火時期をむかえる気筒を「2番目に点火時期をむかえる気筒」と説明する。
そして、表6に示すように、最初に点火時期をむかえる気筒に対しては、点火許可条件が指標値「0」以上に設定され、算出しているクランク角が適正な値にあるか否かの確認がなされていない場合でも点火が許可される。また、2〜4番目に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「2」以上に設定されているため、指標値「2」以上で点火が許可される一方、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされていないときに、点火が禁止される。また、5番目以降に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「3」に設定されているため、指標値「3」で点火が許可され、欠歯部23が検知されていない状況においては、点火が禁止される。
5番目以降に点火時期をむかえる気筒について、点火許可条件を指標値「3」としているのは、本実施形態では、クランク角センサ75の異常等が生じていない限り、遅くとも5番目の点火時期までに欠歯部23が検知されて、算出されているクランク角が欠歯部23の検知に基づいて更新されるためである。
すなわち、図12に示すように、例えば、最初に点火時期をむかえる気筒が第2気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第3気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、第4気筒における3番目の点火時期までには欠歯部23が検知されていることになる。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第5気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第6気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、第1気筒における3番目の点火時期までには欠歯部23が検出されていることになる。
また、例えば、最初に点火時期をむかえる気筒が第1気筒である場合には、3番目に点火時期をむかえる第3気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、第4気筒における4番目の点火時期までには欠歯部23が検知されていることになる。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第4気筒である場合には、3番目に点火時期をむかえる第6気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されるため、第1気筒における4番目の点火時期までには欠歯部23が検出されていることになる。
しかしながら、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、4番目の点火時期までに欠歯部23を検知できない場合がある。これは、以下の理由による。例えば、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合は、初爆は第3気筒で生じるが、自動停止時に150°CA以降のクランク角で停止している場合には、その第3気筒の圧縮行程において180〜210°CAの欠歯部23が検知できない。これは、欠歯部23を認識するためには、それ以前に出力されるパルス信号の出力期間が安定していることが要求されるものの、クランキング開始直後は機関回転速度が遅くパルス信号の出力期間が長くなる傾向にあるためである。自動停止時に150°CA以降のクランク角で停止している場合には、欠歯部23が検知されるまでに出力されるパルス信号が出力される回数が少なく且つ出力間隔が長いため、欠歯部23を正確に検知できない。したがって、第3気筒が最初に点火時期をむかえる気筒になっている場合には、第3気筒の圧縮行程において欠歯部23が検知されていない場合がある。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、590°CAにおいても欠歯部23が検知される。しかしながら、この時期は4番目に点火時期をむかえる第6気筒における点火時期(点火プラグ12の通電開始時期)と同時期であるため、4番目の点火時期である第6気筒の点火時期までには、540〜570°CAの欠歯部23の検知もなされないこととなる。したがって、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、4番目の点火時期までに欠歯部23が検知されていない場合がある。また、最初に点火時期をむかえる気筒が第6気筒である場合にも、同様にして、第3気筒における4番目の点火時期までに欠歯部23が検知されていない場合がある。しかし、最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合や第6気筒である場合であっても、5番目の点火時期をむかえるまでには欠歯部23が検知されるはずのクランク角を必ず通過することになる。そのため、いずれの場合にも5番目の点火時期をむかえるまでには、欠歯部23が検知され、クランク角の確認状況の指標値が「3」に設定されることになる。
すなわち、圧縮行程で停止している気筒が何れの気筒であっても、遅くとも5番目の点火時期までには欠歯部23が検知され、異常が発生していなければ、クランク角の確認状況の指標値が「3」に設定されることになる。こうした理由により、本実施形態では、5番目以降に点火時期をむかえる気筒について、点火許可条件を指標値「3」としている。
なお、本実施形態では、上述したように5番目の点火時期までには、欠歯部23が検知されるようになっているため、5番目の点火時期をむかえれば、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転していることになる。したがって、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転するまでの間は、点火許可条件が指標値「2」以上とされる一方、機関始動に伴いクランク軸20が欠歯部23の検知が完了していることが推定される回転量回転した後には、点火許可条件が指標値「3」とされると換言することができる。
なお、本実施形態では、何れの停止位置から回転し始めたとしても、クランク軸20が440°CA回転すれば、欠歯部23の検知を完了させることができる。すなわち、欠歯部23の検知において最も不利な条件は、欠歯部23の直前の30°CA前で停止している状態から自動再始動が開始される場合である。しかし、この場合であっても、クランク角センサ75が、パルス信号を2回出力した後(20°CA)に欠歯部23に対応する期間(30°CA)が現れ、その後に1回転して欠歯部23に対応する期間が現れた後(360°CA)に、パルス信号が3回出力された(30°CA)ときに、欠歯部23が検知される。この間には、クランク軸20が欠歯部23にいたるまでの20°CAと、欠歯部23を通過するまでの30°CAと、再び欠歯部23にいたるまでの間隔に相当する330°CAと、再び欠歯部23を通過する30°CAと、欠歯部23を通過してからパルス信号が3回出力されるまでの30°CAと、をあわせた440°CA回転している。したがって、クランク軸20が少なくとも440°CA回転していれば、これに基づいて欠歯部23の検知が完了していると推定することもできる。
また、本実施形態では、図12に示すように、2番目に点火時期をむかえる気筒の点火時期までにカム信号の切り替わりが検知される構成となっているため、算出されているクランク角が適正な値にある場合には、カム角センサ76の異常等が生じない限り、2〜4番目の点火が実行されることになる。
自動再始動時における点火は、表6に示す許可条件に基づいて、図13のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。この処理は、制御部50によりイグニッションスイッチがオン状態であるときに所定周期毎の割り込み処理として実行される。なお、図13のフローチャートは、図5のフローチャートのステップS33の判定をステップS71に置き換え、ステップS34の判定をステップS72に置き換えたものであり、その他のステップについては、図5のフローチャートと同様の処理が行われる。
図13に示すように、本処理が開始されると、まずステップS31において、自動再始動時であるか否かが判定される。ステップS31の判定は、図3のステップS11と同様の態様で行われる。ステップS31において自動再始動時ではないと判定されると(ステップS31:NO)、制御部50は本処理を終了する。
一方、ステップS31において、自動再始動時である旨が判定されると(ステップS31:YES)、ステップS32に移り、自動始動時に最初に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であるか否かが判定される。ステップS32において、肯定判定がなされた場合には(ステップS32:YES)、ステップS39に移り、算出されているクランク角に基づいて点火が許可され、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS32で、最初に点火時期をむかえる気筒における点火判定時ではないと判定されると(ステップS32:NO)、ステップS71に移り、2〜4番目に点火時期をむかえる気筒における点火の判定時であるか否かが判定される。ステップS71において、肯定判定がなされると(ステップS71:YES)、ステップS38に移り、クランク角判定の指標値が「2」以上に設定されているか否かが判定される。すなわち、表6に示すように、2〜4番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、点火の許可条件が指標値「2」以上である。したがって、ステップS38では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS38において、指標値が「2」以上であると判定されると(ステップS38:YES)、点火の許可条件が成立しているため、ステップS36に移り、点火が許可される。一方、ステップS38において、指標値が「2」以上ではないと判定されると(ステップS38:NO)、ステップS37に移り、点火が禁止される。すなわち、指標値が「2」以上ではない場合には、2〜4番目に点火時期をむかえる気筒における点火の許可条件が成立していないため、点火が禁止される。ステップS36及びステップ37の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。
ステップS71において、2〜4番目に点火時期をむかえる気筒における点火判定時ではないと判定されると(ステップS71:NO)、ステップS72に移り、5番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であるか否かが判定される。ステップS72において否定判定されると(ステップS72:NO)、点火判定時ではないため、制御部50は、本処理を一旦終了する。
一方、ステップS72において、5番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火判定時であると判定されると(ステップS72:YES)、ステップS35に移り、クランク角確認状況の指標値が「3」に設定されているか否かが判定される。すなわち、表6に示すように、5番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、点火の許可条件が指標値「3」である。したがって、ステップS35では、この許可条件が成立しているか否かの判定が行われる。ステップS72において、指標値が「3」であると判定されると(ステップS35:YES)、点火の許可条件が成立しているため、ステップS36に移り、点火が許可される。一方、ステップS35において、指標値が「3」ではないと判定されると(ステップS38:NO)、ステップS37に移り、点火が禁止される。すなわち、指標値が「3」ではない場合には、5番目以降に点火時期をむかえる気筒における点火の許可条件が成立していないため、点火が禁止される。ステップS36及びステップ37の処理の後、制御部50は、本処理を一旦終了する。以上のようにして、自動再始動時の点火制御が実行される。
次に、自動再始動時の燃料噴射の許可条件について、表7を参照して説明する。
表7に示すように、本実施形態における燃料噴射許可条件は、第1実施形態において表3に示した燃料噴射許可条件と同様となっている。
すなわち、自動再始動時に最初に点火時期をむかえる気筒に対する燃料噴射は、その許可条件が指標値「0」以上とされ、2番目以降に点火時期をむかえる気筒の燃料噴射については、指標値「1」以外のときは許可される。したがって、2番目以降に点火時期をむかえる気筒に対する噴射については、算出されているクランク角が適正な値にはないと確認されている場合にのみ禁止され、この確認がなされていない(指標値「0」、「2」及び「3」)場合には、燃料噴射が実行される。なお、2番目以降に点火時期をむかえる気筒においては、指標値「0」も燃料噴射の許可条件としており、算出されているクランク角が適正な値にある旨が確認されていなくても、燃料噴射が許可されることとなる。しかしながら、仮に不適切な時期に燃料噴射が実行されたとしても、その後の点火は、算出されているクランク角が適正な値にあることを条件に実行されるため、不適切な燃焼は生じない。また、指標値「1」の場合は、算出されているクランク角が適正な値にはない旨の確認が既になされているため、算出されているクランク角に基づく不適切な燃料噴射が実行されることを抑制すべく、燃料噴射を禁止する。
自動再始動時における燃料噴射は、表7に示す燃料噴射許可条件に基づいて実行される。なお、上記したように、表7に示す燃料噴射許可条件は、表3に示す燃料噴射許可条件と同様であるため、自動再始動時における燃料噴射制御は、第1実施形態の図6のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。したがって、実際の制御については第1実施形態において説明した自動再始動時の燃料噴射制御と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、及び第1実施形態の(1)〜(4)の同様の効果を奏することができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、上記第3実施形態の構成に加え、自動再始動時に筒内噴射弁11に供給される燃料の圧力に基づいて、燃料の噴射態様を切り替える制御を行う。
詳細には、本実施形態の制御装置は、第2実施形態で説明したデリバリパイプ内の圧力を検知する圧力センサ79を備えている。そして、同圧力センサ79により検知される圧力が、圧縮行程での燃料噴射を実行することが可能な下限圧力未満である場合には、制御部50が、圧縮行程噴射始動を禁止して吸気行程噴射始動が実行されるように、筒内噴射弁11及び点火プラグ12を制御する。
なお、デリバリパイプ内の圧力が、圧縮行程での燃料噴射を実行するための下限圧力以上である場合には、自動再始動時に圧縮行程での燃料噴射が実行されるため、表6及び表7、並びに図6及び図13を参照して説明した上記制御とほぼ同様の制御が行われる。詳細には、図13におけるステップS31では、自動再始動時であるか否かの判定のみを行っていたが、本実施形態では、圧縮行程噴射による自動再始動時であるか否かが判定される。すなわち、自動再始動時であるか否かの判定に併せて、圧力センサ79がデリバリパイプの圧力が下限圧力以上であることを検知したことによって、制御部50が圧縮行程噴射による始動を決定したか否かの判定が行われる。また、図6におけるステップS41においても、圧縮行程噴射による自動再始動時であるか否かが判定されることになる。その他のステップにおいては、先に説明した内容と同様であるので、説明を省略する。
表8に、自動再始動時に吸気行程噴射を行う場合の点火の許可条件を示す。
表8に示すように、自動再始動時に吸気行程噴射始動を行う場合には、最初の点火判定時から、その許可条件が指標値「2」以上とされる。この理由は第2実施形態に記載した理由と同様である。すなわち、吸気行程噴射始動の場合には、不適切な点火がなされた場合に発生する逆回転トルクが大きくなるため、吸気行程噴射始動を実行する場合には、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、点火の実行を禁止するようにしている。こうした理由により、圧縮行程噴射始動を行う場合には最初の点火許可条件を指標値「0」以上としているのに対して、吸気行程噴射始動を行う場合には最初の点火許可条件から指標値「2」以上に設定している。
表8における点火許可条件の設定態様について、図14を参照して説明する。
図14は、各気筒の行程とクランク角との関係を示しており、カム信号の切り替わりが検知される時期、及び欠歯部23が検知される時期については、図12と同様の態様で図示している。また、自動再始動時における最初の燃料噴射は吸気行程の気筒において吸気上死点の120°CA後(破線矢印)において実行され、それに続いて点火時期をむかえる気筒においては、吸気上死点の60°CA後に燃料噴射が実行されるが、図14には、各気筒において最初に燃料噴射が行われた場合の噴射時期のみを示している。また、各気筒では、圧縮上死点の10°CA前(実線矢印)から圧縮上死点10°CAまでの期間が点火プラグ12の通電時期である。
吸気行程噴射の始動の場合、最初の燃料噴射時期を吸気上死点の120°CA後としているのは、第2実施形態において記載した理由と同様の理由による。すなわち、吸気行程で停止している気筒に対して、燃料の均質化を良好に維持しつつ、可能な限り最初の燃料噴射を実行すべく、燃料噴射時期を吸気上死点の120°CA後としている。
図14において、例えば、自動停止に伴ってクランク軸20が停止したときに、何れかの気筒が吸気行程における燃料噴射時期よりも進角側(吸気上死点の110°CA後以前)で停止している場合、最初の燃料噴射及び点火を、吸気行程で停止している気筒に対して実行することが可能である。したがって、吸気行程で停止している気筒に対して燃料噴射及び点火を行えば、最も早く最初の初爆を生じさせることができるため、本実施形態では、吸気行程において吸気上死点の110°CA後以前で停止している気筒がある場合には、この気筒が、最初に燃料噴射時期及び点火時期をむかえる気筒となる。また、吸気行程で停止している気筒がその燃料噴射時期又はその時期よりも遅角側(吸気上死点の120°CA後以降)で停止している場合には、最初の燃料噴射をその気筒に対して行うことができないため、その次に吸気行程となる気筒が、最初に燃料噴射時期及び点火時期をむかえる気筒となる。なお、以下の説明においては、最初に燃料噴射時期及び点火時期をむかえる気筒に次いで吸気行程となり、点火時期をむかえる気筒を「2番目に点火時期をむかえる気筒」と説明する。
表8を示して説明したように、全ての気筒において点火許可条件は、吸気行程噴射による大きな逆回転トルクの発生を抑制すべく指標値「2」以上とされる。詳細には、最初及び2番目に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「2」以上に設定されているため、指標値「2」以上で点火が許可される一方、算出しているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされていないときに、点火が禁止される。また、3番目以降に点火時期をむかえる気筒については、点火許可条件が指標値「3」に設定されているため、指標値「3」で点火が許可され、欠歯部23が検知されていない状況においては、点火が禁止される。
3番目以降に点火時期をむかえる気筒について、点火許可条件を指標値「3」としているのは、本実施形態では、遅くとも3番目の点火時期までに欠歯部23が検知されて、算出されているクランク角が欠歯部23の検知に基づいて更新されるためである。遅くとも3番目の点火時期までに欠歯部23が検知される理由は、第3実施形態において図12を示して説明した理由、すなわち、吸気行程噴射始動において5番目に点火時期をむかえる気筒の点火時期までに欠歯部23が検知される理由と同様の理由である。
すなわち、図14に示すように、例えば、吸気行程噴射始動において、吸気行程を経て最初に点火時期をむかえる気筒が第1気筒である場合には、その第1気筒の点火時期までには欠歯部23が検知されている。同様に、吸気行程を経て最初に点火時期をむかえる気筒が第4気筒である場合には、その第4気筒における点火時期までには欠歯部23が検出されていることになる。
また、吸気行程を経て最初に点火時期をむかえる気筒が第3気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第4気筒の点火時期までには欠歯部23が検知されている。同様に、吸気行程を経て最初に点火時期をむかえる気筒が第6気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第1気筒の点火時期までには欠歯部23が検知されている。
また、吸気行程を経て最初に点火時期をむかえる気筒が第2気筒である場合には、自動再始動の開始時における停止位置が510°CA以降のクランク角である場合には、2番目に点火時期をむかえる第3気筒の点火時期までに欠歯部23を検知できず、3番目に点火時期をむかえる第4気筒の点火時期までには欠歯部23を検知できる。同様に、吸気行程を経て最初に点火時期をむかえる気筒が第5気筒である場合には、2番目に点火時期をむかえる第6気筒の点火時期までに欠歯部23を検知できない場合があるものの、3番目に点火時期をむかえる第1気筒の点火時期までには欠歯部23を検知できる。したがって、表8に示すように、自動再始動時に3番目に吸気行程となる気筒における点火許可条件は「3」とされる。
なお、本実施形態では、図14に示すように、吸気行程を経て最初の点火時期をむかえるまでにカム信号の切り替わりが検知される構成となっているため、算出されているクランク角が適正な値にある場合には、カム角センサ76の異常等が生じない限り、最初の点火から実行されることになる。
自動再始動時における点火は、表8に示す許可条件に基づいて実行される。なお、表8に示す許可条件は、表4の許可条件と同様であるため、図8のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。なお、図8のフローチャートについては、第2実施形態で説明した内容と同様であるため、説明を省略する。
以上のようにして、吸気行程噴射始動では最初の点火から、算出されているクランク角が適正な値にあること(指標値「2」又は「3」)が確認されている場合にのみその実行が許可される。そして、3番目以降の点火については、欠歯部23が検知された場合に(指標値「3」)のみ実行される。したがって、自動再始動時に吸気行程噴射を行う場合には、算出されているクランク角が適正な値にある旨の確認がなされるまでは、点火の実行が禁止される。
表9は、吸気行程噴射始動時の燃料噴射の許可条件を示す。
表9に示すように、吸気行程噴射始動時には、燃料噴射条件は、「1」以外とされる。したがって、各気筒の燃料噴射判定時において、指標値が「1」以外であれば、燃料噴射は許可され、指標値が「1」であれば、燃料噴射が禁止される。
自動再始動時における燃料噴射は、表9に示す許可条件に基づいて実行される。なお、表9に示す許可条件は、第2実施形態における表5に示す許可条件と同様である。したがって、吸気行程噴射始動時における燃料噴射は、図9のフローチャートに示す処理手順に従って実行される。なお、図9のフローチャートについては、第2実施形態で説明した内容と同様であるため、説明を省略する。
以上のようにして、吸気行程噴射始動時には、最初の燃料噴射から、算出されているクランク角が適正な値にはないと確認されている場合には禁止される。したがって、算出されているクランク角に基づく不適切な燃料噴射が実行されることを抑制することができる。これにより、不適切な時期に噴射や点火が実行されることに起因した大きな逆回転トルクが発生することを初回から抑制することができる。
本実施形態においても、第1実施形態の(1)〜(4)に記載した効果、及び第2実施形態の(5)〜(7)に記載した効果と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態における吸気行程噴射についても、内燃機関がポート噴射弁15を備える場合には、ポート噴射弁15により燃料噴射を実行するようにしてもよい。
(その他の実施形態)
・上記各実施形態では、機関始動に伴いクランク軸が欠歯部の検知が完了していることが推定される回転量回転するまでの間は、欠歯部の検知がなされたことと、カム信号が切り替わるときにクランク角の推定値が規定範囲内にあることとの論理和条件が成立したことに基づいて、クランク角の推定値が適正な値にあることを確認している。しかしながら、クランク角の推定値が適正な値にあることの確認を欠歯部の検知のみにより行うようにしてもよい。また、機関始動に伴いクランク軸が欠歯部の検知が完了していることが推定される回転量回転した後であっても、上記論理和条件が成立したことに基づいて、クランク角の推定値が適正な値にあることを確認するようにしてもよい。また、それまでクランク軸がどれだけ回転しているかに関わらず、常に、カム信号が切り替わるときにクランク角の推定値が上記規定範囲内にあることを確認することのみによって、クランク角の推定値が適正な値にあることの確認を行うようにしてもよい。
・また、上記各実施形態では、カム信号に基づいて、クランク角の推定値が適正な値にあるか否かを判定する場合には、単にカム信号の切り替わりを検知するとともに、クランク角の推定値が、カム信号の切り替わりが検知されるときのクランク角の許容範囲内にあるか否かを判定するようにしている。これに対して、カム信号のL信号からH信号への切り替わりと、H信号からL信号への切り替わりとを区別して検知し、規定範囲内、すなわち、カム信号の切り替わりが検知されるときのクランク角の許容範囲内にあるか否かを、H信号からL信号への切り替わり時とL信号からH信号への切り替わり時とで区別して判定するようにしてもよい。すなわち、L信号からH信号への切り替わり時には、クランク角がL信号からH信号への切り替わりが検知されるときのクランク角の許容範囲内にあるか否かを判定し、H信号からL信号への切り替わり時には、クランク角がH信号からL信号への切り替わりが検知されるときのクランク角の許容範囲内にあるか否かを判定するようにしてもよい。
・さらに、カム信号のL信号からH信号への切り替わりを検知するとともに、それ以前に継続して出力されていたL信号の長さを把握することで、そのL信号からH信号への切り替わりがどのクランク角に対応するものかを特定し、クランク角の推定値がこの特定されたクランク角の許容範囲内である規定範囲内にあるか否かを判定するようにしてもよい。同様に、カム信号のH信号からL信号への切り替わりを検知するとともに、それ以前に継続して出力されていたH信号の長さを把握することで、クランク角の推定値が適正な値にあるか否かを判定するようにしてもよい。
・また、クランク角の推定値が適正な値にあるか否かの判定のために利用されるカム信号として、排気側のカム軸におけるカム信号を用いるようにしているが、これに代わり、吸気側のカム軸におけるカム信号を用いるようにしてもよいし、排気側及び吸気側の双方のカム信号を用いるようにしてもよい。
・さらに、クランク角が適正な値にあることの確認を、その他の信号に基づいて行うようにしてもよい。
・第2実施形態、その変形例及び第4実施形態では、圧力センサによってデリバリパイプの圧力が下限圧力以下であると検出されるときには、吸気行程噴射を実行するようにしている。しかしながら、機関温度等のその他の内燃機関の状態に基づいて、始動時における圧縮行程噴射と吸気行程噴射とを切り替えるようにしてもよい。
・上記各実施形態では、通常始動時には、欠歯検知による気筒判別後に燃料噴射と点火とを実行するようにしているが、通常始動時には、カム信号の切り替わりの検知及び欠歯検知の少なくとも一方により推定されるクランク角が適正な値にあることが確認された場合に、燃料噴射と点火を実行するようにしても良い。さらに、通常始動時においても、上記各実施形態の自動再始動時の点火制御及び燃料噴射制御と同様の制御を行うようにしてもよい。これにより、通常始動時においても、早期の始動完了を図るとともに、不適切な点火が連続して実行されることを抑制することができる。
・上記各実施形態では、始動時の点火制御に加え、燃料噴射についても、クランク角の推定値が適正な値にはない場合には禁止する制御を行うようにしているが、燃料噴射については、クランク角の推定値が適正な値にあるか否かに関わらず、常時実行するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、クランク角センサが出力するパルス信号を計数してクランク角を算出することで、クランク角を推定するようにしているが、クランク角の推定態様は上記態様に限定されない。例えば、機関停止時に記憶したクランク角と機関始動からの経過時間などに基づいてクランク角を推定するようにしてもよい。
・また、内燃機関及びカムロータ、クランクロータの具体的な構成、欠歯部やカム角の切り替わりが検知される時期は、上記各実施形態に例示した構成に特に限定されない。すなわち、内燃機関は、直列4気筒やV型6気筒以外のガソリンエンジンであってもよい。また、カムロータの凸部(突起)及び凹部(突起がない部分)の周方向の角度や、クランクロータの欠歯部が設けられるクランク角、及び欠歯部の個数は、上記例示した態様に限定されない。また、上記各実施形態では、欠歯部が設けられるクランク角の30°CA後に欠歯部を検知するようにしているが、この検知態様も特に限定されず、例えば、欠歯部に対応してパルス信号の出力が停止した後に最初にパルス信号が出力されるタイミングで欠歯部を検知するようにしてもよい。なお、こうしたクランクロータにおける欠歯部の形成態様や、クランク角センサによる欠歯部の検知態様によって、欠歯部の検知に要するクランク軸の回転量も変化する。したがって、欠歯部の検知が完了していることが推定される回転量も、上記各実施形態に例示した回転量に限定されない。