JP2014516357A - アミロイドペプチドを測定するための抗体、キットおよび方法 - Google Patents

アミロイドペプチドを測定するための抗体、キットおよび方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、抗Aβ17抗体ならびに前記抗体を用いるキットおよび方法を使用することによってAβ17ペプチドを検出することを可能にする免疫測定法の分野に関する。本発明はまた、異なる病期の神経変性疾患を診断または識別する方法に関する。

Description

本発明は、抗Aβ17抗体ならびに前記抗体を用いるキットおよび方法を使用することによってAβ17ペプチドを検出することを可能にする免疫測定法の分野に関する。本発明はまた、異なる病期の神経変性疾患を診断または識別する方法に関する。
アルツハイマー病(AD)は、進行性かつ増加性の記憶喪失、その後の致命的結末を伴う四肢および身体機能の制御不能を特徴とする中枢神経系の進行性変性疾患である。この疾患は、65歳を超える人の1〜6%および80歳を超える人の10〜20%の間に発症する認知症の群を抜いて最も多い原因である。
ADは、ニューロンの間の細胞外間隙中の老人斑が患者の脳の中に進行的に出現することを含む、いくつかの病理学的特徴により他の型の認知症と識別される。斑は、変性した神経突起およびグリア細胞に囲まれたβアミロイドペプチド(Aβ)と呼ばれる40〜42個のアミノ酸ペプチドの原線維により主に形成されたアミロイド沈着の中核を有する。このペプチドは、βアミロイド前駆体タンパク質(βAPP)と呼ばれる前駆体タンパク質のタンパク質分解性プロセシングにより生じる。
国立神経疾患脳卒中研究所(NINCDS)およびアルツハイマー病関連障害協会(ADRDA)は、1984年に最も一般的に用いられているNINCDS-ADRDAアルツハイマー病診断基準を確立した。NINCDS/ADRDAによると、これらの基準は以下の通りである:
・ 確実な(definitive)アルツハイマー病:患者がほぼ確実なアルツハイマー病の基準を満たし、剖検または生検によりADの病理組織学的証拠を示している。
・ ほぼ確実な(probable)または前駆アルツハイマー病:臨床および神経心理学的検査により認知症が立証された。認知障害も進行性で、2つ以上の認知領域に存在しなければならない。欠陥の発症が40〜90歳の間であり、最後に認知症症候群をもたらすことができる他の疾患が存在してはならない。
・ 可能性のある(possible)または非前駆アルツハイマー病:非定型発症、症状または進行を伴う認知症症候群;既知の病因がない;認知症をもたらすことができるいかなる併存疾患もその原因であると考えられない。
・ 可能性が低い(unlikely)アルツハイマー病:患者が突然の発症、局所神経学的徴候、または病気の過程の初期の発作もしくは歩行障害を伴う認知症症候群を示している。
軽度認知障害(MCI、初期認知症または孤立性記憶障害としても知られている)は、年齢および教育から予測される程度以上であるが、日常活動に大きな支障がない認知障害を有する個体に下される診断である(Petersen RC他(1999)Arch. Neurol. 56(3):303〜8)。MCIは正常な加齢と認知症との間の境界または移行段階であると考えられている。MCIは種々の症状と共に存在し得るが、記憶喪失が主な症状である場合は、「健忘型MCI」と呼ばれ、しばしばアルツハイマー病の危険因子とみなされる(Grundman M他(2004)。Arch. Neurol. 61(1):59〜66)。研究により、これらの個体は毎年約10%〜15%の割合でほぼ確実なまたは前駆アルツハイマー病に進行する傾向があることが示唆されている(Grundman M他、上記)。さらに、個体が記憶以外の領域に障害を有する場合は、これは非健忘型単一領域型または複数領域型MCIに分類され、これらの個体は他の認知症に変わりやすいと考えられている(Tabert MH他(2006)。Arch. Gen. Psychiatry 63(8):916〜24)。
MCIの診断には相当な臨床判断が必要とされるので、臨床所見を含む包括的臨床評価、神経画像処理、血液検査および神経心理学的検査が代替診断を除外するために最良である。
アルツハイマー病の診断にも通常同様の評価を行う。以下の点が認められる場合に、MCIと診断される(Morris JC他(2001)。Arch. Neurol. 58(3):397〜405)。
- 記憶障害の証拠
- 一般的認知および機能的能力の保存
- 診断された認知症が存在しないこと
過去10年間、血漿、血清または循環細胞を用いることにより末梢性マーカーを同定するためのいくつかの試みが行われてきた。特に、アミロイド斑はアルツハイマー病神経病理学の特徴を規定し、Aβが血漿中に検出され得るので、その測定はアルツハイマー病の説得力のある候補バイオマーカーである。
臨床実習では、ADの診断は、神経画像処理技術および血液分析を用いた典型的な臨床的特徴の存在ならびに他の型の認知症の除外に基づく臨床基準を用いて行われる。これらの基準を用いると、脳剖検を用いた研究によるとADと診断された10〜20%の間の患者は異なる疾患を患っていたが、診断信頼性は許容できるものである。さらに、現在の診断法は、神経変性過程があまりに進行しており患者が重度の認知症を患っている場合および脳損傷があまりに広範であり治療手段の数が限定されている場合にのみ行うことができる。決定的診断には死後の脳組織の病理学的検査が必要である。
AβがAD患者の脳に蓄積し、ADの病因の中心要素であるという事実に照らして、このタンパク質はADバイオマーカーとして最も適当な候補とみなされてきた。しかしながら、ADの血漿バイオマーカーとしてのAβの使用は、血清中のAβペプチド(Aβ(1-40)およびAβ(1-42))の濃度が極めて低く、その結果として前記ペプチド種の信頼できる検出を可能にするために十分に高感度のアッセイが存在しないという課題に直面している。
生体試料中のアミロイドベータペプチドの濃度を決定するために多くの異なるアッセイが用いられてきた(例えば、Scheuner他(Nature Med.、1996、2:864〜870);Tamaoka A他(J Neurol Sci.、1996、141、65〜68);Suzuki, N.他(Science、1994、264:1336〜1340);WO200722015、Vanderstichele H他(Amyloid、2000、7、245〜258);Fukomoto y col.(Arch. Neurol. 2003、60、958〜964);Mehta他(Arch. Neurol. 57、2000、100〜105);Mayeux, R.他(Ann Neurol. 1999、46、412〜416);Lanz, T.AおよびSchacthter, J.B(J. Neuroscience Methods、2006、157:71〜81)、WO200750359、WO0162801、WO0315617、WO0246237、WO0413172に記載されている方法を参照されたい)。しかしながら、現在までに知られている全てのELISAベースのアッセイは、高くても1桁数字のpg/mLの範囲にはない低い検出限界を有し、これはCSF中のAβ40およびAβ42を検出するならびに家族性ADを患っている患者の血漿中の前記種を検出するのには十分であるが、Aβ42血漿中濃度がはるかに低い散発性ADを患っている患者の血漿中のAβ42を検出するのには適さない。
現在までに、1桁数字のpg/mL未満の低い検出限界を示すわずかなAβペプチドアッセイは、WO200646644およびWO2009015696に記載されているアッセイに相当する。
WO200646644は、電気化学発光(ECL)サンドイッチアッセイを記載しており、このアッセイではmAb 21F12(Aβ42のアミノ酸33〜42を認識する)を磁気ビーズに連結させ、次いでこれを用いてAβ42を含む試料中のAβ42ペプチドを捕捉し、さらにルテニウム錯体に連結した3D6 mAbと接触させる。次いで、電気エネルギーを印加した場合にルテニウム錯体から発せられる発光により結合した3D6抗体の量を検出する。このアッセイを用いると、本発明者らは、0.5pg/mLという低いAβ42標準を検出することができる。しかしながら、同じアッセイを用いてAD患者および健康な対照の血漿試料中のAβ42を比較すると、2セットの患者間で有意な差を観察することはできなかった。これにより、本発明者らは、血清中の完全Aβ42の量は分解されるために極めて低いと結論づけ、ng/mLの範囲のより低い感度レベルを提供する21F12mAbを用いた競合ELISAアッセイに転向した。
WO2009015696は、高感度ELISAサンドイッチアッセイを記載しており、このアッセイでは検出抗体を前記抗体に対する特異性を示すビオチン標識試薬と接触させる。この試薬をペルオキシダーゼと連結したストレプトアビジンと接触させる。次いで、TMBを用いた比色分析またはQuantaBlueを用いた蛍光性によりペルオキシダーゼ活性を検出する。
WO2006053251は、試料を変性剤と接触させるステップと、試料-変性剤混合物からペプチドプールを抽出するステップと、プールからアミロイドベータペプチド種を分離するステップと、アミロイドベータペプチド種の量を測定するステップとを含む、試料中のアミロイドベータペプチド種を測定する方法を記載している。この方法は、測定前にペプチドを分離するステップが必要であり、その結果処理時間が延長しコストが上昇する。
患者の脳またはCSF中に存在するバイオマーカーの濃度を検出することによりADを診断する方法が従来技術で知られている。その測定をCSFで行う異なるバイオマーカーが特徴づけられてきた。CSFは、中枢神経系の細胞外間隙の組成を直接反映するので、バイオマーカーとしてより高濃度を提供する。しかしながら、CSFは、記憶障害の患者は言うまでもなく、認知症を患っている患者に容易に受け入れられる日常診断法ではない腰椎穿刺によってのみ回収することができる。したがって、身体から非侵襲的に回収することができる試料中で検出することができるADバイオマーカーが必要である。
従来技術に記載されており、血漿中で検出することができる適当なADバイオマーカーとしては、(i)アミロイド斑から得られるマーカー、(ii)AβまたはβAPPに対する自己抗体、(iii)IL-6、その受容体もしくはgp130、C反応性タンパク質または酸化ストレス(イソプロスタン)などの炎症マーカー、(iv)脂質代謝のマーカー(apo E、オキシステロール)ならびに(v)血管病マーカー(ホモシステイン、リポタンパク質b C1q)が挙げられる(Scheuner D他(1996) Nature Med 2、864〜870)。
しかしながら、AβがAD患者の脳に蓄積し、ADの病因の中心要素であるという事実に照らして、このタンパク質はADバイオマーカーとして最も適当な候補とみなされてきた。しかしながら、ADの血漿バイオマーカーとしてのAβの使用は、血清中のAβペプチド(Aβ(1-40)およびAβ(1-42))の濃度が極めて低く、その結果として前記ペプチド種の信頼できる検出を可能にするために十分に高感度のアッセイが存在しないという課題に直面している。
さらに、Aβペプチドを検出し、免疫学的測定法に用いられるいくつかの抗体が報告されている。例えば、モノクローナル抗Aβ(1-17)(6E10)はAβペプチドのN末端領域に対する、ペプチドAβ(1-17)に対して産生された(Kim KS他、Neurosci. Res. Comm. 7;1988)、前記領域を含むAβペプチドを認識する抗体である、またはペプチドAβ(1-28)に対して産生されたモノクローナル抗体である(Pierce)。
WO200722015 WO200750359 WO0162801 WO0315617 WO0246237 WO0413172 WO200646644 WO2009015696 WO2006053251
Petersen RC他(1999) Arch. Neurol. 56(3):303〜8 Grundman M他(2004)。Arch. Neurol. 61(1):59〜66 Tabert MH他(2006)。Arch. Gen. Psychiatry 63(8):916〜24 Morris JC他(2001)。Arch. Neurol. 58(3):397〜405 Scheuner他(Nature Med.、1996、2:864〜870) Tamaoka A他(J Neurol Sci.、1996、141、65〜68) Suzuki, N.他(Science、1994、264:1336〜1340) Vanderstichele H他(Amyloid、2000、7、245〜258) Fukomoto y col.(Arch. Neurol. 2003、60、958〜964) Mehta他(Arch. Neurol. 57、2000、100〜105) Mayeux, R.他(Ann Neurol. 1999、46、412〜416) Lanz, T.AおよびSchacthter, J.B(J. Neuroscience Methods、2006、157:71〜81) Scheuner D他(1996) Nature Med 2、864〜870 Kim KS他、Neurosci. Res. Comm. 7;1988 Growdon他(Neurobiol. Aging、1998、19:109〜116) Sambrook他;Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版1989および第3版2001 Kohler他、Nature、256:495(1975) Ausubel, F.M.他(Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons Inc;リング製本、2003) McCafferty他、Nature、348:552〜554(1990) Clacksoii他、Nature、352:624〜628(1991) Marks他、J. Mol. Biol.、222:581〜597(1991) Marks他、Bio/Technology、10:779〜783(1992) Waterhouse他、Nucl. Acids. Res.、21:2265〜2266(1993) Kim, K.S.(Neuroscience Res. Comm. 1988、2:121〜130) DowdyおよびWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、ニューヨーク 1983 McKhann G.他、1984、Neurology、34:939〜44 Portelius他 2007(J.Proteome. Res. 6(11)、4433〜4439)
しかしながら、当技術分野で知られている方法およびキットの課題を克服する、特に、散発性ADを患っている患者の血漿中のAβペプチドを信頼できる方法で検出するのに十分な感度であるAβ由来ペプチドを検出するための改善された免疫学的測定法およびキットが必要とされている。高感度かつ特異的であり、年齢による認知障害をAD過程の初期症状に関連するものと識別することならびにADによる変化を他の変性状態による変化と識別することを可能にする、ADを早期診断するためのバイオマーカーを同定することも必要である。Growdon他(Neurobiol. Aging、1998、19:109〜116)によると、ADの理想的マーカーは、以下の要件を満たすべきである:
- 神経病理学の基礎的特徴を検出すべきである
- 疾患の神経学的に確認されたケースで確認されるべきである
- ADの検出に関して少なくとも80%の感度を示すべきである
- ADを他の型の認知症と識別する少なくとも80%の特異性を示すべきである
- 信頼でき、再現性があり、非侵襲性であり、行うのが簡単であり、安価であるべきである。
一態様では、本発明は、Aβ(1-17)ペプチドに特異的に結合する抗体に関する。
第2の態様では、本発明は、
(i)請求項1から3のいずれかに定義される抗体である第1の抗体と、
(ii)第1の抗体により認識される領域とは異なるAβ(1-17)ペプチドの領域を認識する第2の抗体と
を含む、Aβ(1-17)ペプチドを検出するためのキットに関する。
第3の態様では、本発明は、試料中のAβ(1-17)ペプチドを測定または検出する方法であって、
(i)試料中に存在するAβ(1-17)ペプチドを、前記ペプチドに特異的に結合する第1の抗体で捕捉するステップと、
(ii)ステップ(i)で形成された免疫複合体を第2の抗体と接触させるステップであって、前記第2の抗体は請求項1から4のいずれかに定義され、前記第2の抗体は第1の抗体とは異なる領域を認識し、結合対の第1のメンバーに連結しているステップと、
(iii)ステップ(ii)で形成された複合体を、検出可能なタグに連結している結合対の第2のメンバーと接触させるステップと、
(iv)検出可能なタグの活性または量を検出または測定するステップと
を含む方法に関する。
別の態様では、本発明は、対象の神経変性疾患をモニタリングする方法であって、
(a)第1の時点で前記対象の試料の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および前記対象の試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、
(b)第2の時点で前記対象の試料の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、
(c)前記第1および第2の時点で血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の比を比較するステップと
を含み、
第1の時点に対して第2の時点で前記比が増加している場合、これは前記第1の時点と前記第2の時点との間で対象のアルツハイマー病が悪化していることを示している方法に関する。
別の態様では、本発明は、対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)前記対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)前記対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(d)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;および
(e)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
からなる群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の前記パラメータの値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法に関する。
別の態様では、本発明は、対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)前記対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値;
(d)血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
(e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算濃度に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算濃度に相当する比率値;
(f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
(g)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
パラメータ(a)、(b)または(c)の1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の前記パラメータの値に対して増加している、かつ/またはパラメータ(d)、(e)、(f)もしくは(g)の1つもしくは複数の値が健康な対象の標準試料の前記パラメータの値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法に関する。
別の態様では、本発明は、対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)前記対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
(c)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ42総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
(d)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
(e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中のAβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
(a)の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/または前記パラメータ(b)、(c)、(d)および(e)の1つもしくは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法に関する。
別の態様では、本発明は、対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)血漿試料中の総Aβ42ペプチドおよび血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(d)血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(e)血漿試料中の総Aβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度の加算値;
(f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
(g)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法に関する。
別の態様では、本発明は、対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血漿試料中の遊離Aβ40ペプチドの濃度との比率値;および
(b)2つのパラメータの間の比であって、第1のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ40およびAβ42ペプチドの加算濃度に相当する比
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が前駆軽度認知障害対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法に関する。
膜に吸着されたポリクローナル抗Aβ(1-17)抗体および異なるAβペプチドを用いて行ったドットブロットアッセイの結果を示す図である。アッセイに用いた二次抗体は、ヤギ抗ウサギ抗体-HRPであった。1分および3分の暴露で、SNAP技術を用いてECLによりドットブロットを展開した。 CSF試料についての質量分析を示す図である。Aβピークを矢印で示す。 血漿試料についての質量分析を示す図である。Aβピークを矢印で示す。 異なる群の患者のマーカーのいくつかの平均値を示す図である。FP:血漿中遊離Aβ;TP:血漿中総Aβ;CB:細胞に結合しているAβ;PIB:血液中プール(血漿中総Aβ+細胞に結合しているAβ)。異なる群:CS>65(65歳より上の健康な対象)、可能性のあるMCI(可能性のあるまたは非前駆ADによる軽度認知障害の対象)、ほぼ確実なMCI(ほぼ確実なまたは前駆ADによる軽度認知障害の対象)および軽度AD(軽度アルツハイマー病の対象)についてのサンドイッチELISAで得られたAβマーカーの濃度(pg/mL)。 異なる群の患者のマーカーのいくつかの平均値を示す図である。FP:血漿中遊離Aβ;TP:血漿中総Aβ;CB:細胞に結合しているAβ;PIB:血液中プール(血漿中総Aβ+細胞に結合しているAβ)。異なる群にわたるいくつかのマーカーについてのELISAで得られた吸光度を表すグラフ。 異なる群の患者のマーカーのいくつかの平均値を示す図である。FP:血漿中遊離Aβ;TP:血漿中総Aβ;CB:細胞に結合しているAβ;PIB:血液中プール(血漿中総Aβ+細胞に結合しているAβ)。異なる群にわたるいくつかのマーカーについてのELISAで得られた吸光度を表すグラフ。 異なる群の患者のマーカーのいくつかの平均値を示す図である。FP:血漿中遊離Aβ;TP:血漿中総Aβ;CB:細胞に結合しているAβ;PIB:血液中プール(血漿中総Aβ+細胞に結合しているAβ)。(A)異なる群:CS>65(65歳より上の健康な対象)、可能性のあるMCI(可能性のあるまたは非前駆ADによる軽度認知障害の対象)、ほぼ確実なMCI(ほぼ確実なまたは前駆ADによる軽度認知障害の対象)および軽度AD(軽度アルツハイマー病の対象)についてのサンドイッチELISAで得られたAβマーカーの濃度(pg/mL)の比。(B)異なる群にわたるいくつかのマーカーについてのELISAで得られた吸光度を表すグラフ。 異なる群の患者のマーカーのいくつかの平均値を示す図である。FP:血漿中遊離Aβ;TP:血漿中総Aβ;CB:細胞に結合しているAβ;PIB:血液中プール(血漿中総Aβ+細胞に結合しているAβ)。(A)異なる群:CS>65(65歳より上の健康な対象)、可能性のあるMCI(可能性のあるまたは非前駆ADによる軽度認知障害の対象)、ほぼ確実なMCI(ほぼ確実なまたは前駆ADによる軽度認知障害の対象)および軽度AD(軽度アルツハイマー病の対象)についてのサンドイッチELISAで得られたAβマーカーの濃度(pg/mL)の比。(B)異なる群にわたるいくつかのマーカーについてのELISAで得られた吸光度を表すグラフ。 異なる群を区別するための、血漿中遊離Aβ17(FP)と細胞に結合しているAβ17(CB)の比を示す図である。(A)異なる群:CS>65(65歳より上の健康な対象)、可能性のあるMCI(可能性のあるまたは非前駆ADによる軽度認知障害の対象)、ほぼ確実なMCI(ほぼ確実なまたは前駆ADによる軽度認知障害の対象)および軽度AD(軽度アルツハイマー病の対象)についてのサンドイッチELISAで得られたAβマーカーの濃度(pg/mL)。(B)異なる群にわたる前記マーカーについてのELISAで得られた吸光度を表すグラフ。
本発明者らは、Aβ17ペプチドに高度に特異的であるが、他のAβ種を認識しない抗体を作製した。例えば、図1は、抗体がAβ15、Aβ16、Aβ38、Aβ40またはAβ42などの他のAβ種に対するいかなる実質的な交差反応性も示すことなくAβ17を特異的に認識することを示している。本発明者らはまた、任意の対象の任意の試料、特に、ADを患っている疑いのある対象の血漿中のAβ17ペプチドの信頼できる定量化を可能にする前記分子種を検出するためのキットも設計した。同様に、本発明者らは、異なるパラメータの濃度を測定することにより、異なる群の対象:健康、前駆AD、非前駆軽度認知障害および軽度AD対象を識別することが可能であることを示した。
本発明の抗体
第1の態様では、本発明は、Aβ(1-17)ペプチド(配列番号1)に特異的に結合する抗体(以下、本発明の抗体)に関する。
本明細書で使用する「特異的に結合する」という用語は、他のAβ17ペプチドとのいかなる実質的な交差反応もすることなくAβ17ペプチドに結合する抗体を指す。特定の実施形態では、Aβ17ペプチドに対する特異性は50%より高い、60%より高い、70%より高い、80%より高いまたは90%より高い。より好ましくは、Aβ17ペプチドに対する抗体の特異性は95%より高い。図1で分かるように、本発明者らは、抗Aβ17抗体の特異性を分析し、この抗体がAβ17ペプチドに高度に特異的であり、他のAβペプチド(Aβ15、Aβ16、Aβ38、Aβ40およびAβ42)に対する実質的な交差反応性を示さないことを示した。したがって、特定の実施形態では、本発明の抗体は、Aβ15、Aβ16、Aβ38、Aβ40、Aβ42およびこれらの1種または複数の組み合わせからなる群から選択されるAβペプチドに対する実質的な交差反応性を示さない。
本発明による抗体は、Aβ17に特異的な少なくとも1つの抗原結合部位を含む限り、その型に関して事実上制限はない。そのため、適当な抗体分子としては、以下のものが挙げられる。
- 抗原結合可変領域ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)と重鎖定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む「完全」抗体、
- 完全抗体のパパイン分解により得られ、単一抗原結合部位とCLおよびCH1領域を含む「Fab」フラグメント、
- 完全抗体のペプシン分解により得られ、2つの抗原結合部位を含む「F(ab’2」フラグメント、
- 軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含み、1つの抗原結合部位のみ有する「Fab’」フラグメント。Fab’フラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFabフラグメントとは異なり、抗体ヒンジ領域に1個または複数のシステインを含む。
- 「Fv」は完全抗原認識および抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、緊密に非共有会合した1本の重鎖および1本の軽鎖の二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域(CDR)が相互作用してVH-VL二量体の表面上に抗原結合部位を規定しているのはこの配置である。全体として、6つの超可変領域が抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なわずか3つの超可変領域を含む、Fvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識し抗原に結合する能力を有する。
- 単鎖FVまたは「scFv」抗体断片はVLおよびVH、抗体のドメインを含み、ここではこれらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、VLおよびVH領域は、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーにより接続されている。
- 「ダイアボディ(diabody)」は、同じ鎖上で2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーにより接続された、同じポリペプチド鎖上の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。これにより、別の鎖の相補的ドメインとの対形成がなされ、2つの機能的抗原結合部位との二量体分子の会合が促進される。
- 「二重特異性抗体」(BAb)は、2つの異なって特異的な抗原結合部位を有する単一の二価抗体(またはその免疫療法的に有効な断片)である。2つの抗原部位は化学的または当技術分野で既知の遺伝子工学法により連結され得る。
これらの全抗体断片は、単独でまたは組み合わせて、当技術分野で既知の従来技術を用いて、例えば、アミノ酸欠失、挿入、置換、付加および/または組換え(および/または当技術分野で既知の任意の他の修飾(例えば、翻訳後および化学修飾、例えばグリコシル化およびリン酸化))を用いることによりさらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基になるDNA配列にこのような修飾を導入する方法は当業者に周知である。例えば、Sambrook他;Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版1989および第3版2001を参照されたい。
本発明に適当な抗体としては、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方が挙げられる。ポリクローナル抗体を製造するために、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒツジ、イヌ、ラクダ、ヒトコブラクダ、リャマ、ヒト、トリおよび他の動物を含む種々の宿主を、免疫原性特性を有するAβ17の断片に対応するペプチドを注射することにより免疫化することができる。宿主種に応じて、免疫応答を増加させるために種々のアジュバントを用いることができる。このようなアジュバントとしては、それだけに限らないが、フロイント、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、およびリゾレシチンなどの表面活性物質、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、KLH、およびジニトロフェノールが挙げられる。ヒトに用いるアジュバントの中では、BCG(カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。好ましい実施形態では、本発明の抗体の作製に用いるアジュバントは、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバントおよびImject Alumである。
抗原を免疫化する種で免疫原性であるタンパク質に接合することが有用であり得る。ペプチドとの接合に有用なタンパク質は、それだけに限らないが、二官能性物質または誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して接合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸またはSOCl2を用いた、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア(ロコガイ(Concholepas concholepas)から単離されたヘモシアニン)、ウシサイログロブリンまたはダイズトリプシン阻害剤である。好ましい実施形態では、接合に用いるタンパク質はKLHである。好ましい実施形態では、ペプチドとKLHとの間の接合は架橋剤NHS-PEG4-マレイミドを介して行われ、ペプチドはペプチドとKLHの接合を行うためにN末端にシステインを有する。
モノクローナル抗体を製造するために、従来技術を用いることができる。例えば、Ausubel, F.M.他(Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons Inc;リング製本、2003)の単位11.4〜11.11に詳細に記載されている手順を用いて、Kohler他、Nature、256:495(1975)により最初に報告されたハイブリドーマ法を用いてモノクローナル抗体を作製することができる。あるいは、McCafferty他、Nature、348:552〜554(1990)に記載されている技術を用いて作製した抗体ファージライブラリーから組換えDNA手順によりモノクローナル抗体を単離することができる。Clacksoii他、Nature、352:624〜628(1991)およびMarks他、J. Mol. Biol.、222:581〜597(1991)は、それぞれファージライブラリーを用いたマウスおよびヒト抗体の単離を記載している。その後の刊行物は、鎖シャッフリング(chain shuffling) (Marks他、Bio/Technology、10:779〜783(1992))ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としての組合せ感染およびインビボ組換え(Waterhouse他、Nucl. Acids. Res.、21:2265〜2266(1993))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の製造を記載している。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法の実行可能な代替となる。
ポリクローナル抗体は、出血およびフィブリン凝塊の除去後に免疫化した宿主から得た抗血清として直接用いることができる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養液の上清としてまたは適当な宿主の腹膜腔へのハイブリドーマの移植後の腹水液として直接用いることができる。あるいは、免疫グロブリン分子は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、Aβ17由来のペプチドを用いた親和性精製、非変性ゲル精製、HPLCもしくはRP-HPLC、サイズ排除、タンパク質Aカラム上での精製、またはこれらの技術の任意の組み合わせなどの従来手段によりその使用前に精製することができる。
好ましい実施形態では、本発明の抗体はポリクローナル抗体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体を作製する方法は以下のステップを含む:
- 第1投与:アジュバントとしてフロイント完全アジュバントを用いたペプチド100μgによるウサギの免疫化。
- 第2投与:アジュバントとしてフロイント不完全アジュバントを用いたペプチド100μgによるウサギの免疫化。
- 第3投与:アジュバントとしてAlumを用いたペプチド100μgによるウサギの免疫化。
- フロイント不完全アジュバント-Alum-フロイント不完全アジュバントというようにアジュバントを交互にしたペプチド200μgによるさらに3回の投与。
好ましい実施形態では、本発明の抗体を作製するために用いるAβペプチドまたは免疫原の領域は、配列VHHQKL(配列番号2)に相当するペプチドAβ(12-17)および配列EVHHQKL(配列番号3)に相当するペプチドAβ(11-17)からなる群から選択される。
本発明のキット
第2の態様では、本発明は、
(i)本発明によるAβ(1-17)に特異的な抗体である第1の抗体と、
(ii)第1の抗体により認識される領域とは異なるAβ(1-17)ペプチドの領域を認識する第2の抗体と
を含む、Aβ(1-17)ペプチドを検出または測定するためのキット(以下、本発明のキット)に関する。
「アミロイドベータペプチド」という用語は、本明細書でAβ、アミロイドベータタンパク質、「Aベータ」、「ベータAP」または「Aベータペプチド」と互換的に用いられ、アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群およびオランダ型遺伝性脳出血(HCHWA-D)の患者の脳に見られる老人斑および血管アミロイド沈着(アミロイド血管症)の主要な化学成分であるペプチドのファミリーを指す。いかなる形態でも、アミロイドベータペプチドはβ-およびγ-セクレターゼによる、またはβ-およびα-セクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質の連続的タンパク質分解切断により産生される変化する数のアミノ酸を含むベータアミロイド前駆体タンパク質(APP)の断片である。
アミロイドベータペプチドは、一般的に「Aβ(x-y)」(xはアミロイドベータペプチドのアミノ末端のアミノ酸番号を表し、yはカルボキシ末端のアミノ酸番号を表す)として表される。本明細書で使用する「Aβ(1-17)」または「Aβ17」は、アミロイド前駆体タンパク質のアミノ酸672〜688(配列番号1)に相当する17個のアミノ酸ペプチドに関し、これはβ-およびα-セクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(配列番号4)の連続的タンパク質分解切断により作製される。
本発明の文脈中、「捕捉抗体」は、抗体が特異的に結合する全分子種を試料から回収するために用いる抗体である。抗体がAβ17に特異的な少なくとも1つの抗原結合部位を含む限り、その型に関して事実上制限はない。原則として、Aβ17ペプチドに特異的な任意の抗体を捕捉抗体として用いることができる。捕捉抗体は、第2の抗体とは異なる領域に結合する。好ましい実施形態では、捕捉抗体は、Aβ17ペプチドのN末端領域のエピトープに対して向けられている。なおさらに好ましい実施形態では、捕捉抗体により標的化され得るエピトープとして、Aβ17のアミノ酸1〜10の中に位置するエピトープが挙げられる。さらに別の好ましい実施形態では、捕捉抗体はモノクローナル抗体である。なおさらに好ましい実施形態では、捕捉抗体は、Aβペプチドのアミノ酸1〜16に相当する領域を認識する。なおさらに好ましい実施形態では、捕捉抗体として用いるモノクローナル抗体は、Kim, K.S.(Neuroscience Res. Comm. 1988、2:121〜130)に記載されている6E10 mAbである。
本発明のキットの第2の成分は、本発明で既に前に記載されている本発明の抗体に相当する。本発明の文脈中、「検出抗体」は、捕捉抗体により保持された抗原の量を検出するために用いる抗体である。第1の抗体は、捕捉抗体によりカバーされない抗原の領域に結合しなければならないので、第2の抗体とは異なる領域を認識する。
第1および第2の抗体は、捕捉および検出抗体として区別することなく本発明のキットに用いられ得る。
2種の抗体(第1または第2の抗体)の一方を結合対の第1のメンバーに連結して、捕捉抗体により捕捉された抗原に結合している抗体の検出を可能にすることができる。連結する抗体は検出抗体として作用し、第1または第2抗体のいずれであってもよい。
特定の実施形態では、キットは、Aβ40および/またはAβ42に特異的に結合する抗体または抗体の組み合わせをさらに含む。したがって、特定の実施形態では、キットは、Aβ17ペプチドならびにAβ40および/またはAβ42ペプチドを検出するのに有用であろう。
本明細書で使用する「Aβ42」は、アミノ酸672〜713(配列番号5)に相当する42個のアミノ酸ペプチドに関し、これはβ-およびγ-セクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(配列番号4)の連続的タンパク質分解切断により製造される。
本明細書で使用する「Aβ40」は、アミノ酸672〜711(配列番号6)に相当する40個のアミノ酸ペプチドに関し、これはβ-およびγ-セクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(配列番号4)の連続的タンパク質分解切断により製造される。
好ましい実施形態では、場合により、第1および第2の抗体が結合対の第1のメンバーと連結する。この場合、検出可能なタグに連結した結合対の第2のメンバーもキットに含まれる。特定の実施形態では、結合対の第2のメンバーに連結した検出可能なタグが酵素タグである場合、キットは前記酵素により検出可能な産物に転換され得る基質をさらに含む。
結合対の適当な第1および第2のメンバーとしては、それだけに限らないが、
・ ハプテンまたは抗原/抗体、例えば、ジゴキシンおよび抗ジゴキシン抗体、
・ ビオチンまたはビオチン類似体(例えば、アミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン)/アビジンまたはストレプトアビジン、
・ 糖/レシチン、
・ 酵素および補因子、
・ 葉酸/葉酸塩、
・ タンパク質に選択的に結合する二本鎖オリゴヌクレオチド/転写因子、
・ 核酸または核酸類似体/相補核酸、ならびに
・ 受容体/リガンド、例えば、ステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモン
が挙げられる。
結合対の「第1」および「第2」のメンバーという用語は相対的であること、ならびに上記メンバーの各々を結合対の第1または第2のメンバーとみなすことができることが理解されるだろう。好ましい実施形態では、結合対の第1のメンバーはビオチンまたはその機能的に等価な変異形であり、結合対の第2のメンバーはアビジン、ストレプトアビジンまたはその機能的に等価な変異形である。好ましい実施形態では、結合対の第2のメンバーはストレプトアビジンである。
適当な検出可能なタグとしては、それだけに限らないが、蛍光部分(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、クマリン、オキサジン、レゾルフィン、シアニンおよびこれらの誘導体)、発光部分(例えば、Quantum Dot Corporation、Palo Alto、CAにより供給されるQdot(商標)ナノ粒子)が挙げられる。検出可能なタグが酵素である場合、この酵素は、例えば活性剤、基質、増幅剤などを添加すると検出可能なシグナルを産生することができなければならない。本発明のための検出可能なタグとして適当な酵素およびその対応する基質としては、
・ アルカリホスファターゼ:
○ 発色基質:p-ニトロフェニルリン酸(p-NPP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、Fast-Red/ナフトール-AS-TSリン酸に基づく基質
○ 蛍光基質:リン酸4-メチルウンベリフェリル(4-MUP)、2-(5’-クロロ-2’-ホスホリルオキシフェニル)-6-クロロ-4-(3H)-キナゾリノン(CPPCQ)、3,6-フルオレセインジホスファート(3,6-FDP)、Fast Blue BB、Fast Red TRまたはFast Red Violet LBジアゾニウム塩
・ ペルオキシダーゼ:
○ 2,2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、o-フェニレンジアミン(OPT)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、o-ジアニシジン、5-アミノサリチル酸、3-ジメチルアミノ安息香酸(DMAB)および3-メチル-2-ベンゾチアゾリンヒドラゾン(MBTH)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)および3,3’-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB)に基づく発色基質。
○ 蛍光基質: 4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル酢酸、還元型フェノキサジンおよびAmplex(登録商標)Red試薬、Amplex UltraRedを含む還元型ベンゾチアジン、および還元型ジヒドロキサンテン。
・ グリコシダーゼ:
○ 発色基質:β-D-ガラクトシダーゼに対するo-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシド(o-NPG)、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシドおよび4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシド(MUG)。
○ 蛍光基質:レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニド、4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシドおよびフッ化クマリンβ-D-ガラクトピラノシド。
・ 酸化還元酵素(ルシフェラーゼ):
○ 発光基質:ルシフェリン。
が挙げられる。
特定の実施形態では、検出可能なタグは蛍光分子、発光分子または酵素である。好ましい実施形態では、検出可能なタグは西洋ワサビペルオキシダーゼであり、検出試薬はTMBである。
好ましい実施形態では、キットは固体支持体をさらに含む。本明細書で使用する場合、「支持体」または「表面」という用語は、ストリップ、棒、ラテックス粒子、磁性粒子、微粒子を含む粒子、ビーズ、膜、マイクロタイターウェルおよびプラスチックチューブなどのいくつかの形状の任意の1つを有することができる、多孔性または非多孔性水不溶性材料である固相を指す。原則として、十分な量の捕捉抗体に結合することができる限り、任意の材料が固体支持体として適当である。したがって、固相材料の選択は、所望のアッセイフォーマット性能特性に基づいて決定される。固体支持体に適当な材料としては、高分子材料、特にセルロース系材料およびセルロース由来の材料、例えば繊維含有紙、例えば濾紙、クロマトグラフィー紙、ガラス繊維紙等;合成または修飾天然ポリマー、例えばニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン、アガロース、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリビニルブチレート等;単独でまたは他の材料と合わせて用いられる;ガラス、例えばバイオガラス、セラミック、金属などが挙げられる。スチレンおよびカルボキシル化スチレンまたはアミノ、ヒドロキシル、ハロなどの他の活性基で官能化されたスチレンの非架橋ポリマーが好ましい。いくつかの例では、ブタジエンなどのジエンで置換されたスチレンの共重合体を用いる。
特定の実施形態では、結合対の第1のメンバーに連結していない抗体を固体支持体に事前結合させ(prebound to)、これは第1の抗体でも第2の抗体であってもよい。固体支持体および第1もしくは第2の抗体をキットに別々に用意してもよく、あるいは支持体を抗体で予めプレコートして送達してもよい。この場合、支持体を抗体の結合後にブロッキング溶液で処理したかもしれない。支持体をプレコートする場合、支持体を濃トレハロース溶液で処理し、乾燥させることが好ましく、この場合、乾燥トレハロースは支持体上でハローを形成する。乾燥トレハロースを含むこれらの支持体は並外れて安定であり、暗所で4℃に維持すると最大2年まで保管することができる。
キットの追加の成分としては、
・ 患者から分析すべき試料を回収する手段。
・ 標的ペプチドの標準曲線を用意するために必要とされる緩衝液および溶液。
・ アッセイ中に固体支持体を洗浄およびブロッキングするための緩衝液および溶液。
・ 固体支持体をコーティング抗体でコーティングするための緩衝液および溶液。
・ 検出可能なタグから着色または蛍光シグナルを発生させるための試薬。
・ 検出可能なタグから着色または蛍光産物が形成されるのを停止するための試薬(例えば、1N H2SO4)。
・ ペプチドを折り畳まれていない状態に維持するための手段(例えば、濃グアニジニウム塩酸塩)。
・ Aβ17ペプチドならびにさらにAβ40および/もしくはAβ42ペプチドまたはこれらの組み合わせのストック溶液を含む試料。
が挙げられる。
抗体の固体支持体への固定化は、検出すべき標的ペプチドを結合する前またはいったんペプチド/タンパク質が抗体に結合してから行うことができる。いずれにせよ、固体支持体を用いる場合、測定すべき標的ペプチドを含む試料を添加する前に担体上の過剰なタンパク質結合部位をブロックすることが好都合である。好ましくは、支持体上のペプチド結合部位のブロッキングまたはクエンチングは、約0.05%〜10%、好ましくは1〜5%、より好ましくは約3%の濃度の高分子化合物(例えば、ウシ血清アルブミン、脱脂粉乳、ウエスタンブロッキング試薬、カゼイン、ラクトアルブミン、オボアルブミン)を補った、各結合反応後に複合体を洗浄するために用いるのと同じ緩衝液(例えば、任意選択によりTween 20を含む50mM Tris-HCl、pH8、PBSまたはTBS)を用いて行う。固定化捕捉抗体を含む支持体をしばらく保管しなければならない場合、支持体を濃トレハロース溶液で処理し、乾燥させることが好ましく、この場合、乾燥トレハロースは支持体上でハローを形成する。乾燥トレハロースを含むこれらの支持体は並外れて安定であり、暗所で4℃に維持すると最大2年まで保管することができる。
本発明のキットは、ペプチドを高感度および特異性で検出または測定することを可能にし、ペプチドはキットの第1および第2の抗体成分により特異的に認識される。したがって、さらなる態様では、本発明は、試料中のAβ17ペプチドを検出するための本発明のキットの使用に関する。特定の実施形態では、キットを用いて任意選択により試料中のAβ40および/またはAβ42ペプチドならびにこれらの組み合わせを検出する。
本発明のキットが任意の試料中のAβ17ペプチドの濃度を高感度および特異性で測定する能力に照らして、このキットを任意の細胞液または組織中のこのペプチドのいずれかの濃度が変化する任意の疾患、特に、変性疾患、より具体的には神経変性疾患の診断に用いることができる。Aβ17の濃度変化またはAβ40もしくはAβ42の濃度変化の出現に基づいて診断することができる変性疾患の非限定的な例としては、
・ 骨変性障害、例えば、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、オステオミエローマ(osteomyeloma)、骨異栄養症、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化、無形成骨障害、体液性高カルシウム血骨髄腫、多発性骨髄腫および転移後骨減少。
・ 軟骨変性障害、例えば、ゴーハム-ストウト症候群;関節炎疾患;骨関節炎;関節リウマチ;乾癬性関節炎;リウマチ様疾患;および骨粗鬆症。
・ 筋肉変性疾患、例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮症、うっ血性閉塞性肺疾患、筋消耗症候群、筋肉減少症、悪液質。
・ 虚血による心細胞死、移植拒絶反応による組織および器官の死、自己毒性による難聴を含む心臓変性疾患。
・ 網膜変性障害、例えば、網膜色素変性症。
・ 神経系の変性疾患、例えば、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細管拡張性失調症、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナヴァン病、コケイン症候群、皮質基底核変性症、クロイツフェルト-ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連痴呆、ケネディ病、クラッベ病、レヴィ小体痴呆、マシャド-ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス-メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、統合失調症、スピールマイヤー-フォークト-シェーグレン-バッテン病(バッテン病としても知られている)、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルゼウスキー病、脊髄癆。
が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明のキットを用いて診断される神経変性障害はアルツハイマー病である。
Aβ17ペプチドを測定または検出する方法
本発明のキットは、試料中のAβ17ペプチドを測定または検出する方法を行うことを可能にする。したがって、別の態様では、本発明は、試料中のAβ(1-17)ペプチドを測定または検出する方法であって、
(i)試料中に存在するAβ(1-17)ペプチドを、前記ペプチドに特異的に結合する第1の抗体で捕捉するステップと、
(ii)ステップ(i)で形成された免疫複合体を第2の抗体と接触させるステップであって、前記第2の抗体は請求項1から4のいずれかに定義され、前記第2の抗体は第1の抗体とは異なる領域を認識し、結合対の第1のメンバーに連結しているステップと、
(iii)ステップ(ii)で形成された複合体を検出可能なタグに連結している結合対の第2のメンバーと接触させるステップと、
(iv)検出可能なタグの活性もしくは量を検出または測定するステップと
を含む方法(以下、本発明の検出方法)に関する。
本発明で理解される「試料」には、組織培養物、血漿、血清、唾液、精液、痰、脳脊髄液(CSF)、涙、粘液、汗、乳汁、脳または末梢組織抽出物などのいずれか1つが含まれる。好ましい実施形態では、試料は、血液、血清、血漿およびCSFからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、試料は血漿試料である。
好ましい実施形態では、検出されるペプチドは、前記ペプチドの非オリゴマー型、より好ましくはAβ17のモノマー型に相当する。
本方法の各ステップに用いる試薬および抗体は本発明のキットについて上に詳細に記載してきた。
本発明による方法の第1のステップでは、Aβ17ペプチドを含む試料を第1の抗体と接触させて第1の免疫複合体を形成する。好ましい実施形態では、第1の抗体はモノクローナル抗体である。より好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は6E10抗体である。
第1の結合ステップを行った後、複合体を洗浄して捕捉抗体に結合しなかった元の試料中に見られる任意の過剰なタンパク質/ペプチドを除去することができる。本発明の文脈で用いることができる好ましい洗浄バッファーには、任意選択により塩(例えば、150mM NaCl)を含み、任意選択により低濃度の洗剤(例えば、0.05% Tween-20)を含む、生理的に近いpHの任意のバッファー(例えば、50mM Tris-HCl)が含まれる。
次いで、第2のステップでは、捕捉抗体と試料中のAβペプチドとの間に形成された複合体を第2の抗体と接触させて「サンドイッチ型」免疫複合体を形成する。第1の抗体および第2の抗体はAβ17ペプチドの異なる領域に結合するので、これらの間に干渉はない。
本方法の第1および第2のステップは交換することができ、Aβ17ペプチドの捕捉を第2の抗体(本発明の抗体)により行うことができる。その場合、複合体を第1の抗体と接触させ、この第1の抗体は第2の抗体と異なる領域に結合する。2種の抗体の一方を結合対の第1のメンバーに連結し、この抗体は捕捉ステップで用いていない抗体に相当する。
第2のステップを行った後、前記と本質的に同じバッファーおよび手順を用いて、免疫複合体を洗浄して非特異的に結合した抗体を除去することができる。
第3のステップでは、本発明の方法は、捕捉抗体-抗原と結合対の第1のメンバーと連結した検出抗体との間で形成された複合体を、検出可能なタグに連結した結合対の第2のメンバーと接触させるステップを含む。好ましい実施形態では、結合対の第1のメンバーはビオチンであり、結合対の第2のメンバーはアビジン、ストレプトアビジンまたはこれらの機能的に同等な変異形である。
本発明による方法の第4のステップでは、本方法は検出可能なタグを検出するステップを含む。検出可能なタグの検出および/または定量化はタグの性質に依存し、当技術分野で既知の技術であることが理解されるだろう。完全基質または検出可能なタグが発光または染料成分を含む場合、検出は、UVトランスイルミネーターでの目視によっても、またはUV型電荷結合素子(CCD)カメラ検出系、レーザー型ゲルスキャナ、キセノンアーク型CCDカメラ検出系、UVトランスイルミネーターと組み合わせたポラロイド(登録商標)カメラならびに発光を検出するために用いられる種々の他の装置を用いることによってもよい。検出可能なタグが酵素である場合、本発明による方法の第4のステップは、タグで標識した免疫複合体(例えば、検出可能なタグで標識した捕捉されたペプチド、検出抗体および試薬)を検出可能なタグとして用いる酵素の活性剤、基質または増幅剤に暴露するステップを含む。検出可能なシグナルを産生することができる周知の検出可能なタグには酵素標識抗体が含まれる。この目的のための周知な代表的な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼならびにβ-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼおよびβ-グルクロニダーゼを含むグルコシダーゼが挙げられる。例として、検出抗体に特異的に結合する試薬を、西洋ワサビペルオキシダーゼでタグをつけることができる。捕捉部分-検出抗体-試薬複合体が形成したら、検出可能なタグとして用いる酵素のための広範囲の周知の基質のいずれかを用いて検出を行うことができる。好ましい実施形態では、検出可能なタグは蛍光分子、発光分子または酵素である。
特定の実施形態では、本発明の検出方法は、Aβ40および/またはAβ42ペプチドの検出をさらに含む。
神経変性疾患の進行をモニタリングする方法
別の態様では、本発明は、対象の神経変性疾患をモニタリングする方法(以下、本発明のモニタリング方法)であって、第1の時点で試料の血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および対象の試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、濃度を第2の時点での前記濃度と比較するステップとを含み、第1の時点に対して第2の時点で血漿中の遊離Aβ17ペプチドと細胞に結合したAβ17ペプチドの比が増加している場合、これは対象のアルツハイマー病が悪化していることを示している方法に関する。
本明細書で使用する「神経変性疾患」という用語は、細胞死により神経細胞が失われて認知機能の悪化をもたらす、または神経学的、神経変性、生理学的、心理学的もしくは行動異常を特徴とし得る損傷、機能障害もしくは合併症をもたらす状態または障害を指す。本発明の方法により診断され得る適当な神経変性疾患としては、それだけに限らないが、加齢黄斑変性、クロイツフェルト-ヤコブ病、アルツハイマー病、アミロイドーシスによる脳血管障害、血管性認知症、放射線療法誘発認知症、軸索傷害、急性皮質拡延性抑制、α-シヌクレイン病、脳虚血、ハンチントン病、持続性局所脳虚血、末梢神経再生、てんかん重積状態後モデル、脊髄損傷、散発性筋萎縮性側索硬化症および伝達性海綿状脳症が挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明の方法によりモニタリングされる神経変性疾患は、アルツハイマー病または軽度認知障害、ほぼ確実なアルツハイマー病による軽度認知障害もしくは可能性のあるアルツハイマー病による軽度認知障害を含むその前駆型である。
本発明のモニタリング方法は、対象のアルツハイマー病の進行を評価するのに有用である。したがって、本発明者らは、血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度/細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の比の増加がADの悪化を示すことを示した。
特定の実施形態では、本発明のモニタリング方法は、
(a)第1の時点で対象の試料の血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップ(FP Aβ17/CB Aβ17);
(b)第2の時点で同対象の試料の血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップ;
(選択する時点は対象にしたがって当業者により決定されるだろう。)
(c)第1の時点と第2の時点で血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度/細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の比を比較するステップ
を含み、
(d)第1の時点に対して第2の時点で前記パラメータの比が高い場合、これは対象のアルツハイマー病が悪化していることを示している。
本発明で使用する「アルツハイマー病が悪化している」という用語は、この疾患が最初の測定時点の期に対して後期に進行していることを意味する。当業者は、他の暗示的特徴を分析することによっても疾患の進行が悪化しているのかどうかを認識および確認するだろう。後期に現れ、疾患の進行を示す特徴または徴候は、それだけに限らないが、アミロイド斑および神経原線維変化の出現ならびに認知機能のより速い低下である。好ましい実施形態では、第1の時点に対して第2の時点で血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度/細胞に結合しているAβ17ペプチドの濃度の比が増加している場合、これは対象の認知障害の速度が速いことを示している。したがって、血漿中に遊離して見られるAβ17ペプチドの濃度が高いことはより高い認知障害を示している。
ペプチドの測定に適当な任意の方法を本発明に用いることができる。例として、アミロイドベータペプチドの濃度を、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴、沈降反応、ゲル拡散免疫拡散法、放射免疫測定法(RIA)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、二次元ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化-飛行時間(SELDI-TOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、タンデム質量分析(MS/MS)を伴う多次元液体クロマトグラフィー(LC)、薄層クロマトグラフィー、プロテインチップ発現分析およびレーザーデンシトメトリーから選択される1種または複数の技術を用いて測定することができる。特定の実施形態では、前記パラメータの濃度の測定をELISAにより測定する。好ましい実施形態では、ELISAに用いる抗体の1つはAβ17ペプチドのC末端領域に向けられた本発明の抗体である。
本明細書で使用する「血漿中の遊離Aβ17ペプチド」(以下、FP Aβ17として知られる)という用語は、生体試料のいかなる成分とも会合していない、特異的抗体との結合に容易に利用できるアミロイドベータペプチドの濃度を指す。このペプチドは、生体試料を前記ペプチドに特異的な抗体と接触させることにより従来の免疫学的技術によって測定することができる。好ましい実施形態では、遊離アミロイドペプチドの濃度を血漿中で測定する。
本明細書で使用する「細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度」(以下、CB Aβ17として知られる)という用語は、生体試料中に存在する細胞の表面に非共有会合しており、試料に添加した抗体との結合に利用できず、したがって免疫学的に検出可能であるアミロイドベータペプチドを指す。典型的には、生体試料が血液の場合、アミロイドベータペプチドは、赤血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球を含む白血球、ならびに血小板と会合する。所与の試料中の細胞に会合したアミロイドベータペプチドの量を測定することができ、この値を単独でまたは本発明の方法におけるアミロイドベータペプチドに関連する他のパラメータと組み合わせて用いることができる。この目的のために、生体試料から細胞画分を単離することが最初に必要である。これは、遠心分離、沈降、濾過などの当業者に既知の任意の技術を用いて行うことができる。いったん生体試料の細胞画分を単離したら、細胞をタンパク質可溶化剤と接触させる。
所与の試料中の細胞に会合したアミロイドベータペプチドの量を測定することができ、この値を単独でまたは本発明の方法におけるアミロイドベータペプチドに関連する他のパラメータと組み合わせて用いることができる。この目的のために、生体試料から細胞画分を単離することが最初に必要である。これは、遠心分離、沈降、濾過などの当業者に既知の任意の技術を用いて行うことができる。いったん生体試料の細胞画分を単離したら、細胞をタンパク質可溶化剤と接触させる。
好ましい実施形態では、対象の試料は、血液、血清、血漿およびCSFからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、試料は血漿試料である。
対象がアルツハイマー病または初期のアルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法
本発明者らは、直接または特定の計算をそれらの間で行うことにより決定される特定の集団のアミロイドベータペプチドの濃度を、患者が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定するため、対象が前駆アルツハイマー病を患っているか判定するため、非前駆軽度認知障害を患っている対象を、前駆アルツハイマー病を患っている対象と識別するため、非前駆軽度認知障害を患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別するため、または前駆アルツハイマー病を患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別するために用いることができることを確認した。
したがって、別の態様では、本発明は、対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42の総ペプチド濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)前記対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(d)前記対象の血漿試料中のAβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;および
(e)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との間の比率値
からなる群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法に関する。
そのため、健康な対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別するために測定すべきパラメータは以下である:
(a)CB Aβ17+CB Aβ40+CB Aβ42
(b)(CB Aβ17+CB Aβ40+CB Aβ42)+(TP Aβ17+TP Aβ40+TP Aβ42)
(c)TP Aβ42+CB Aβ42
(d)(TP Aβ40+TP Aβ42)+(CB Aβ40+CB Aβ42)
(e)FP Aβ17/CB Aβ17
対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値;
(d)血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
(e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算濃度に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算濃度に相当する比率値;
(f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
(g)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
パラメータ(a)、(b)または(c)の1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/またはパラメータ(d)、(e)、(f)もしくは(g)の1つもしくは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
そのため、健康な対象を前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象と識別するために測定すべきパラメータは以下である:
(a)TP Aβ42+CB Aβ42
(b)(TP Aβ40+TP Aβ42)+(CB Aβ40+CB Aβ42)
(c)FP Aβ17/CB Aβ17
(d)CB Aβ17/CB Aβ42
(e)(TP Aβ17+CB Aβ17)/(TP Aβ42+CB Aβ42)
(f)CB Aβ17/(CB Aβ40+CB Aβ42)
(g)(TP Aβ17+CB Aβ17)/(TP Aβ40+TP Aβ42)+(CB Aβ40+CB Aβ42)
別の態様では、本発明は、非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象と識別する方法であって、
(a)対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
(c)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ42総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
(d)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
(e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中のAβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
(a)の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/または前記パラメータ(b)、(c)、(d)および(e)の1つもしくは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法に関する。
そのため、非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象と前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を識別することを可能にする測定すべきパラメータは以下である:
(a)CB Aβ17+CB Aβ40+CB Aβ42
(b)CB Aβ17/CB Aβ42
(c)(TP Aβ17+CB Aβ17)/(TP Aβ42+CB Aβ42)
(d)CB Aβ17/(CB Aβ40+CB Aβ42)
(e)(TP Aβ17+CB Aβ17)/(TP Aβ40+TP Aβ42)+(CB Aβ40+CB Aβ42)
別の態様では、本発明は、非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する方法であって、
(a)血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)血漿試料中の総Aβ42ペプチドおよび血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(d)血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(e)血漿試料中の総Aβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度の加算値;
(f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
(g)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法に関する。
そのため、非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別するための測定すべきパラメータは以下である:
(a)CB Aβ17+CB Aβ40+CB Aβ42
(b)(TP Aβ17+TP Aβ40+TP Aβ42)+(CB Aβ17+CB Aβ40+CB Aβ42)
(c)TP Aβ42+CB Aβ42
(d)(TP Aβ40+TP Aβ42)+(CB Aβ40+CB Aβ42)
(e)TP Aβ40+CB Aβ40
(f)CB Aβ17/(CB Aβ40+CB Aβ42)
(g)FP Aβ17/CB Aβ17
別の態様では、本発明は、前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する方法であって、
(a)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血漿試料中の遊離Aβ40ペプチドの濃度との比率値;および
(b)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法に関する。
そのため、前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象と軽度アルツハイマー病を患っている対象を識別するために測定すべきパラメータは以下である:
(a)FP Aβ17/FP Aβ40
(b)FP Aβ17/FP Aβ40+FP Aβ42
本明細書で使用する「診断」という用語は、対象の疾患への罹患性の評価、対象が現在疾患にかかっているかどうかに関する判定、および疾患に冒されている対象の予後も含む。当業者により理解されるように、このような評価は正確であることが好ましいが、通常は診断すべき対象の100%について正確とはなり得ない。しかしながら、この用語は、統計学的に有意な割合の対象を、疾患を患っているまたは疾患になりやすい素因を有しているものと同定することができることを要する。割合が統計学的に有意であれば、それはいくつかの周知の統計学的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン-ホイットニー検定等を用いて当業者により簡単に決定され得る。詳細は、DowdyおよびWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、ニューヨーク 1983に示される。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは0.2、0.1または0.05である。
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、哺乳動物に分類される全動物に関し、それだけに限らないが、家畜および農用動物、霊長動物およびヒト、例えば、ヒト、ヒト以外の霊長動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯動物を含む。好ましくは、対象は任意の年齢もしくは人種のヒト男性または女性である。
「アルツハイマー病」(または「老人性痴呆」)という用語は、老人斑、神経突起のもつれおよび進行性のニューロンの欠損を特徴とする特定の変性脳疾患に関連する精神機能低下を指し、臨床的には進行性の記憶欠損、錯乱、行動の問題、自分の世話ができない、漸進的身体的悪化および最終的には死として現れる。
本発明の文脈中、「軽度アルツハイマー病」という表現は、初期のアルツハイマー病を指し、ここでは対象は、
・ 最近の出来事についての記憶喪失。
・ 課題解決、複雑な仕事および音の判断が困難である。
・ 人格の変化。
・ 考えを整理し表現することが困難である。
・ 道に迷うまたは所持品を置き忘れる。
を経験する。
軽度アルツハイマー病を患っている患者は、MINCDS-ADRDA基準(CDR=1、16〜24ポイントの間のMMSEおよびScheltensスケールで3ポイントより高い内側側頭部萎縮(MRIにより測定))を用いて同定される。
「軽度認知障害」またはMCIという用語は、正常な加齢と初期アルツハイマー病との間の移行期の認知障害を指す。患者は、通常、Mayo Clinic基準(CDR=0.5、Scheltensスケールで3ポイントより高い内側側頭部萎縮(MRIにより測定)を示す、18-フルオロデオキシグルコースを用いたポジトロン放射形断層撮影(PET-FDG)で頭頂および/または側頭代謝低下のパターンを示す(ADの示唆))を満たす場合にMCIにかかっていると同定される。
「ほぼ確実なアルツハイマー病によるMCI」としても知られる「前駆アルツハイマー病」という表現は、MCIを示し、アルツハイマー病に転換する高いリスクを示していると考えられる患者を指す。患者をほぼ確実なADと同定するための基準は、NINCDS-ADRDA基準(McKhann G.他、1984、Neurology、34:939〜44)、すなわち、臨床および神経心理学的検査により立証された認知症、2つ以上の認知領域に存在する進行性認知障害、40〜90歳の間の欠陥の発症、および認知症症候群をもたらすことができる他の疾患が存在しないことにより定義されるものである。
「可能性のあるアルツハイマー病によるMCI」としても知られる「非前駆アルツハイマー病」という表現は、MCIを示し、アルツハイマー病を発症する低いリスクを示していると考えられる患者を指す。患者を可能性のあるADと同定するための基準は、NINCDS-ADRDA基準(McKhann G.他、1984、Neurology、34:939〜44)、すなわち、非定型発症、症状または進行を伴う認知症症候群であり、既知の病因がないが、認知症をもたらすことができるいかなる併存疾患もその原因であると考えられないことにより定義されるものである。
本発明で使用する「健康な対象」という用語は、健康である対象を指す。好ましい実施形態では、前記対象は65歳より上である。この対象は、神経変性疾患を患っておらず、神経変性疾患の病歴を有さない対象に相当する。好ましくは、健康な対象は、記憶の愁訴を示さず、神経心理学的検査で正常な能力を示し、MRIで構造変化を示さない患者である。健康な対象は健康であり、他の疾患にかかっていない、またはMCIおよびAD以外の疾患にかかっていてもよい。
「健康な対象を、前駆アルツハイマー病を患っている対象と識別する」という用語は、アルツハイマー病(AD)の症状を有していない対象と前駆アルツハイマー病を患っている患者を識別することができることを指す。
「健康な対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する」という用語は、アルツハイマー病(AD)の症状を有していない対象と初期のAD(軽度アルツハイマー病)の対象を識別することができることを指す。
「非前駆MCIを患っている対象を、前駆アルツハイマー病を患っている対象と識別する」という用語は、非前駆MCIの症状を有している対象と前駆アルツハイマー病を患っている対象を識別することができることを指す。
「非前駆MCIを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する」という用語は、非前駆MCIの症状を有している対象と初期のAD(軽度アルツハイマー病)の対象を識別することができることを指す。
「前駆ADを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する」という用語は、前駆ADの症状を有している対象と初期のAD(軽度アルツハイマー病)の対象を識別することができることを指す。
「血漿」という用語は、全血の液体成分を指す。用いる分離方法に応じて、血漿は細胞成分を完全に含まないことができる、または種々の量の血小板および/または少量の他の細胞成分を含むことができる。
本明細書で使用する「細胞に結合したAβ17、Aβ40またはAβ42ペプチドの濃度」(以下、それぞれCB Aβ17、CB Aβ40またはCB Aβ42として知られる)という用語は、生体試料中に存在する細胞の表面に非共有会合しており、試料に添加した抗体との結合に利用できず、したがって免疫学的に検出可能であるアミロイドベータペプチドを指す。典型的には、生体試料が血液の場合、アミロイドベータペプチドは、赤血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球を含む白血球、ならびに血小板と会合する。所与の試料中の細胞に会合したアミロイドベータペプチドの量を測定することができ、この値を単独でまたは本発明の方法におけるアミロイドベータペプチドに関連する他のパラメータと組み合わせて用いることができる。この目的のために、生体試料から細胞画分を単離することが最初に必要である。これは、遠心分離、沈降、濾過などの当業者に既知の任意の技術を用いて行うことができる。いったん生体試料の細胞画分を単離したら、細胞をタンパク質可溶化剤と接触させる。
所与の試料中の細胞に会合したアミロイドベータペプチドの量を測定することができ、この値を単独でまたは本発明の方法におけるアミロイドベータペプチドに関連する他のパラメータと組み合わせて用いることができる。この目的のために、生体試料から細胞画分を単離することが最初に必要である。これは、遠心分離、沈降、濾過などの当業者に既知の任意の技術を用いて行うことができる。いったん生体試料の細胞画分を単離したら、細胞をタンパク質可溶化剤と接触させる。
適当なタンパク質可溶化剤としては、以下に定義される洗剤、カオトロピック剤および還元剤が挙げられ、通常は十分な濃度で緩衝液として用意される。適当な薬剤、緩衝液および緩衝液中の薬剤の濃度を以下に記載した。接触させるステップは、生体試料の成分(タンパク質および脂質)に付着したアミロイドペプチドを放出する方法において本質的に以下に説明するように行われる。好ましい実施形態では、タンパク質可溶化剤は洗剤である。なおさらに好ましい実施形態では、洗剤はTween 20である。タンパク質可溶化剤として用いるために適当なTween 20の濃度は上に定義されるもの、すなわち、0.004〜0.02%の間、より好ましくは0.005〜0.01%(w/v)である。
接触させるステップは、試料中に存在するタンパク質分解活性を阻害するために好ましくは低温で行う。適当な温度は約0〜10℃、好ましくは約3〜5℃、例えば約4℃である。
典型的には、接触させるステップを、生体試料中の細胞画分を、タンパク質可溶化剤を含む溶液を用いて再懸濁することにより行う。前記再懸濁は、穏やかな上下ピペット操作、攪拌、好ましくは振盪、より好ましくは高速振盪、最も好ましくは、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間、より好ましくは少なくとも15秒間(例えば、15〜50秒間)ボルテックスすることにより行うことができる。前記混合、攪拌、振盪、高速振盪またはボルテックスに有利な速度には、少なくとも250rpm、好ましくは少なくとも500rpm、より好ましくは少なくとも1000rpm、最も好ましくは約2000〜2500rpmの速度が含まれる。
接触させるステップは、アミロイドベータペプチドを生体試料中に存在する細胞から部分的にまたは好ましくは完全に解離するのに十分な条件下で行う。条件は、接触させるステップの前および連続的に接触させるステップを行った後の異なる時点で、検出可能なアミロイドベータペプチドの量をモニタリングすることにより、当業者により十分に決定され得る。
本明細書で使用する「血漿中の総Aβペプチド」(以下、TP Aβ17、TP Aβ40またはTP Aβ42として知られる)という用語は、「血漿中の遊離Aβペプチド」+「高分子成分に会合したアミロイドベータペプチド」を指す。本明細書で使用する「高分子成分に会合したアミロイドベータペプチド」という用語は、研究下で生体試料中に見られる分子に非共有結合または付着しているアミロイドベータペプチドを指す。このペプチドは通常、免疫学的検出に容易には接近できず、したがって、成分からペプチドを分離するためには生体試料の前処理が必要である。これらの条件下で、高分子成分に付着したアミロイドベータペプチドは前記成分から放出され、特異的抗体を用いて免疫学的検出に利用可能になる。生体試料は既に一定量の遊離アミロイドベータペプチドを含んでいるので、試料をタンパク質可溶化剤と接触させた後の遊離アミロイドペプチドの総量は、元々存在する遊離アミロイドベータペプチドの濃度とタンパク質可溶化剤で処理して放出されたアミロイドベータペプチドの濃度の合計である。これは、典型的には生体試料中に存在する高分子成分に会合したアミロイドベータペプチドの濃度を測定する必要がある場合、タンパク質可溶化剤による処理前の遊離アミロイドベータペプチドの濃度およびタンパク質可溶化剤による処理後の遊離アミロイドベータペプチドの濃度を測定し、第2の値から第1の値を引くことにより行うことができる。本発明の目的のためには、元々の遊離アミロイドベータペプチドを含む遊離アミロイドベータペプチドの濃度ならびにタンパク質可溶化剤による処理後に高分子成分から放出したアミロイドベータペプチドの濃度の合計を測定することで通常は十分である。そのため、高分子成分からアミロイドペプチドを解離するために試料を処理する場合に通常測定するパラメータは、試料中に存在する遊離ペプチドおよび高分子成分に会合しているペプチドの加算に相当する。
アミロイドベータペプチドを結合することができ、高分子成分に会合しているアミロイドベータペプチドのプールに貢献する試料の高分子成分は、タンパク質ならびに脂質の両方を含む。血液または血漿試料で本方法を行う特定の場合、高分子成分は、それだけに限らないが、血液タンパク質および脂質を含む。代表的な血液タンパク質としては、アルブミン、免疫グロブリンG、免疫グロブリンE、免疫グロブリンM、免疫グロブリンA、フィブリノーゲン(フィブリンおよびその分解産物)、α-1アンチトリプシン、プレアルブミン、α-1酸性糖タンパク質、α-1フェトプロテイン、α-2ハプトグロビン、マクログロブリン、セルロプラスミン、トランスフェリン、C3/C4β2ミクログロブリン、βリポタンパク質、α、βおよびγグロブリン、C反応性タンパク質(CRP)、プロトロンビン、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチンなどが挙げられる。代表的な血液脂質としては、遊離脂肪酸、コレステロール、トリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質などが挙げられる。
高分子成分に会合しているアミロイドベータペプチドの量は、高分子成分からの前記アミロイドベータペプチドの放出を誘導するのに十分な条件下で生体試料の無細胞試料をタンパク質可溶化剤と接触させることにより測定することができる。
接触させるとは、本明細書ではタンパク質可溶化剤を含む十分な量の溶液を試料に添加して、結果として混合物中のタンパク質可溶化剤の濃度が、試料中のタンパク質および細胞に結合しているアミロイドベータペプチドを有効に可溶化するのに十分なものとなるようにすることを意味する。好ましくは、タンパク質可溶化剤は、緩衝液で溶液中に見られ、結果としてタンパク質可溶化剤を添加することにより試料のpHの実質的な変化がもたらされない。
本明細書で使用する「タンパク質可溶化剤」という用語は、ポリペプチドの一次構造をそのままにしながら、その二次、三次および/または四次構造を変化させることができる組成物の任意の化合物を指す。これらの特性によって、タンパク質可溶化剤は、タンパク質の試料への溶解度を増加させることができ、ならびにタンパク質の分子間および分子内凝集を防ぐことができる。本発明に用いるのに適当なタンパク質可溶化剤としては、それだけに限らないが、洗剤、カオトロピック剤、還元剤またはこれらの混合物が挙げられる。
本明細書で使用する「洗剤」という用語は、一般に界面活性剤の同義語であり、液体に添加すると、洗剤が存在しない同じ液体と比較して液体の表面張力を低下させる両親媒性表面活性剤を指す。洗剤はまた、タンパク質の凝集を防ぎ、混入物が対象となるタンパク質と非特異的に相互作用または結合するのを防ぐこともできる。本発明に用いるのに適当な洗剤としては、それだけに限らないが、非イオン性(中性)、陰イオン性、陽イオン性または双性イオン性洗剤が挙げられる。
非イオン性または中性洗剤の例としては、それだけに限らないが、Tweenシリーズの洗剤、例えば、Tween(登録商標) 20、Tween(登録商標) 21、Tween(登録商標) 40、Tween(登録商標) 60、Tween(登録商標) 61、Tween(登録商標) 65、Tween(登録商標) 80、Tween(登録商標) 81、Tween(登録商標) 85、Span(登録商標)シリーズの洗剤、例えば、Span(登録商標) 20;Tergitolシリーズの洗剤、例えば、Tergitol Type 15-S-12;Brij(登録商標)シリーズの洗剤、例えば、Brij(登録商標) 35、Brij(登録商標) 56、Brij(登録商標) 72、Brij(登録商標) 76、Brij(登録商標) 92V、Brij(登録商標) 97、Brij(登録商標) 58P;Triton(登録商標)シリーズの洗剤、例えば、Triton(登録商標) X-100、Triton(登録商標) X-114、Triton(登録商標) CF-21、Triton(登録商標) CF-32、Triton(登録商標) DF-12、Triton(登録商標) DF-16、Triton(登録商標) GR-5M、Triton(登録商標) X-102、Triton(登録商標) X-15、Triton(登録商標) X-151、Triton(登録商標) X-207、Triton(登録商標) X-165、Triton(登録商標) X-305、Triton(登録商標) X-405、Triton(登録商標) X-45、Triton(登録商標) X-705-70または前記洗剤の少なくとも1種の非イオン性保存的変異型が挙げられる。
陰イオン性洗剤の例としては、それだけに限らないが、コール酸およびその誘導体、タウコール酸、Triton X-200、Triton W-30、Triton-30、Triton-770、ジオクチルスルホコハク酸、N5N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド、1-アルキルスルホン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンまたは脂肪酸塩が挙げられる。
陽イオン性洗剤の例としては、それだけに限らないが、モノおよびジ-メチル脂肪族アミン、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミンアセテート、トリアルキルアンモニウムアセテート、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウムハライドおよびアルキル(アルキル置換)ピリジニウム塩、アルキルチオメチルピリジニウム塩、アルキルアミドメチルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、N,N-アルキルメチルピロリドニウム塩、1,1-ジアルキルピペリジニウム塩、4,4-ジアルキルチアモルホリニウム塩、4,4-ジアルキルチアモルホリニウム-1-オキシド塩、メチルビス(アルキルエチル)-2-アルキルイミダゾリニウムメチル硫酸塩(および他の塩)、メチルビス(アルキルアミドエチル)-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメチル硫酸塩(および他の塩)、アルキルアミドプロピル-ジメチルベンジルアンモニウム塩、カルボキシアルキル-アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド、ポリ(ビニルメチルピリジニウム)塩、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリエチレンイミン、トリアルキルホスホニウム重炭酸塩(および他の塩)、トリアルキルメチルホスホニウム塩、アルキルエチルメチルスルホニウム塩、ならびにアルキルジメチルスルホキソニウム塩が挙げられる。
双性イオン性洗剤の例としては、それだけに限らないが、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸塩(CHAPS);3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩(CHAPSO);N-(アルキルC10〜C16)-N,N-ジメチルグリシンベタイン(EMPIGEN BB);カプリリルスルホベタイン(SB3-10);3-[N,N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホン酸塩(アミドスルホベタイン-14;ASB-14);N-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩(3-14 Detergent;ZWITTERGENT);N-ドデシル-N,N’-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩;N-オクタデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩;N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニウム-1-プロパンスルホン酸塩;Mirataine CB;Mirataine BB;Mirataine CBR;Mirataine ACS;Miracare 2MHTおよびMiracare 2MCAが挙げられる。
好ましい実施形態では、タンパク質可溶化剤は洗剤である。なおさらに好ましい実施形態では、洗剤はTween 20である。なおさらに好ましい実施形態では、Tween 20は0.5%の濃度で用いられる。
本明細書で使用する「カオトロピック剤」は、タンパク質間およびタンパク質内の両方の水素結合および疎水相互作用を崩壊させる化合物または化合物の混合物に関する。高濃度で用いると、カオトロピック剤は二次タンパク質構造を崩壊させ、そうでなければ可溶性ではないタンパク質を溶解する。適当なカオトロピック剤としては、それだけに限らないが、尿素、グアニジニウムイソチオシアナート、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、グアニジンHCl、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウムまたはトリフルオロ酢酸セシウムが挙げられる。
本明細書で使用する「還元剤」という用語は、還元された状態でスルフヒドリル基を維持し、分子内または分子間ジスルフィド結合を還元する任意の化合物または物質を指す。例として、本発明の方法に適当な還元剤としては、スルフヒドリルまたはホスフィン還元剤の両方が挙げられる。スルフヒドリル還元剤の例としては、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)およびβ-メルカプトエタノールが挙げられる。ホスフィン還元剤の例としては、トリブチルホスフィン(TBP)およびトリス-カルボキシエチルホスフィン(TCEP)が挙げられる。
典型的には、最初に生体試料を処理して細胞画分を除去する。次いで、無細胞試料をタンパク質可溶化剤と接触させる。好ましい実施形態では、タンパク質可溶化剤を含む緩衝液を用いて試料を希釈する。典型的には、試料をTween 20を含む緩衝液に5倍希釈する。
本明細書で使用する場合、「緩衝液」は、溶液の元の酸度またはアルカリ度を明らかに変化させることなく、酸および塩基の両方を中和することができる溶液の任意の物質または化合物の混合物である。本発明の方法に用いるべき適当な緩衝液としては、それだけに限らないが、Tris緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン-水酸化ナトリウム緩衝液などが挙げられる。好ましくは、緩衝液はリン酸緩衝食塩水またはPBSなどのリン酸緩衝液である。
生体試料に添加されるタンパク質可溶化剤を含む溶液の量は、アミロイドベータペプチドの十分な解離が達成される限り重要ではない。例として、生体液を、少なくとも1/2(v/v)、1/3(v/v)、1/4(v/v)、1/5(v/v)、1/6(v/v)、1/7(v/v)、1/8(v/v)、1/9(v/v)、1/10(v/v)、1/20(v/v)、1/50(v/v)、1/60(v/v)、1/80(v/v)、1/90(v/v)、1/100(v/v)またはそれ以上の希釈でタンパク質可溶化剤を含む溶液に希釈することができる。当業者は、タンパク質可溶化剤の最終濃度が所望の効果を達成するのに十分である限り、前記希釈率および前記タンパク質可溶化剤濃度の任意の組み合わせを用いることができることを認識するだろう。例えば、タンパク質可溶化剤を含む溶液は、0.001%〜0.5%(w/v)に及ぶ濃度で前記選択されたタンパク質可溶化剤を含むことができる。タンパク質可溶化剤を含む前記溶液に希釈した後、前記生体液は典型的には0.1%(w/v)未満、好ましくは0.6%(w/v)未満、より好ましくは0.5%(w/v)以下、最も好ましくは0.45%(w/v)以下、さらに最も好ましくは0.5%の前記界面活性剤を含む。
本発明に用いるのに適当な緩衝系としては、NaClもしくはKClなどの塩および任意選択によりBSAを含むTris-HCl緩衝液が挙げられる。具体的な緩衝系としては、それだけに限らないが、
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20、1M GuHCl;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M KCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M KCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20、1M GuHCl;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-80;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M KCl、0.05% BSA、0.05% Tween-80;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl; 0.05% BSA、0.05% Triton X-100;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M KCl、0.05% BSA、0.05% Triton X-100;
50mM Tris-HCl pH8; 0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.1% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.1% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.1% BSA、0.1% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、1M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、1.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、2M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、2.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、3M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20、10% DMSO;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20、0.5M GuHCl;
50mM Tris-HCl pH6、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH7、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH9、0.5M NaCl、0.05% BSA、0.05% Tween-20;
50mM Tris-HCl pH8、0.5M NaCl、0.05% BSA
が挙げられる。
例えば、Tween 20をタンパク質可溶化剤として用いる場合、好ましい濃度は0.004〜0.02%、より好ましくは0.005〜0.01%(w/v)である。
接触させるステップは、試料中に存在するタンパク質分解活性を阻害するために好ましくは低温で行う。適当な温度は約0〜10℃、好ましくは約3〜5℃、例えば約4℃である。
いったん生体液を、タンパク質可溶化剤を含む溶液と接触させたら、両液体を混合することができる。混合は、攪拌、好ましくは振盪、より好ましくは高速振盪、最も好ましくは、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間、より好ましくは少なくとも15秒間(例えば、15〜50秒間)ボルテックスすることにより行うことができる。前記混合、攪拌、振盪、高速振盪またはボルテックスに有利な速度には、少なくとも250rpm、好ましくは少なくとも500rpm、より好ましくは少なくとも1000rpm、最も好ましくは約2000〜2500rpmの速度が含まれる。
接触させるステップは、アミロイドベータペプチドを生体試料中に存在するタンパク質および脂質から部分的にまたは好ましくは完全に解離するのに十分な条件下で行う。条件は、接触させるステップの前および連続的に接触させるステップを行った後の異なる時点で、検出可能なアミロイドベータペプチドの量をモニタリングすることにより、当業者により十分に決定され得る。時間経過実験は、実験部の例に記載するように測定することができる。
当業者は、生体試料を、タンパク質可溶化剤を含む緩衝液で希釈することによりアミロイドベータペプチドの濃度を測定する場合に、生体試料に先に適用した希釈係数を考慮するために、免疫学的測定により得られる遊離アミロイドベータペプチドの濃度を補正しなければならないことを認識するだろう。
本明細書で使用する「血漿中の遊離Aβ17、Aβ40またはAβ42ペプチド」(以下、それぞれFP Aβ17、FP Aβ40またはFP Aβ42として知られる)という用語は、生体試料のいかなる成分とも会合しておらず、特異的抗体との結合に容易に利用できるアミロイドベータペプチドの濃度を指す。このペプチドは、生体試料を前記ペプチドに特異的な抗体と接触させることにより従来の免疫学的技術によって測定することができる。好ましい実施形態では、遊離アミロイドペプチドの濃度を血漿中で測定する。
本明細書で使用する「基準値」という用語は、比較のために用いられており、神経変性疾患を患っていないまたは神経変性疾患のいかなる病歴も有さない対象で測定されたパラメータの値を指す。好ましくは、異なるパラメータについての基準値および計算されたパラメータを得る対象は、記憶の愁訴を示さず、神経心理学的検査で正常な能力を示し、MRIで構造変化を示さない患者である。
特に、85%より高い感度および75%より高い特異度を可能にする基準値を選択する。別の好ましい実施形態では、70%より高い感度および70%より高い特異度を得るように基準値を選択する。好ましくは、基準値は、少なくとも80%の正確度または精度を有する予測を得ることを可能にする。
いったんパラメータの値を測定したら、基準値に対してパラメータの値または計算されたパラメータの値の変化がある場合に、対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかの判定を行う。
ペプチドの測定に適当な任意の方法を本発明に用いることができる。例として、アミロイドベータペプチドの濃度を、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴、沈降反応、ゲル拡散免疫拡散法、放射免疫測定法(RIA)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、二次元ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化-飛行時間(SELDI-TOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、タンデム質量分析(MS/MS)を伴う多次元液体クロマトグラフィー(LC)、薄層クロマトグラフィー、プロテインチップ発現分析およびレーザーデンシトメトリーから選択される1種または複数の技術を用いて測定することができる。
好ましい実施形態では、本発明の方法の測定を免疫学的方法により行う。本明細書で使用する場合、測定に適用する場合は「免疫学的方法」は、試料中に見られる他の物質を除く標的物質の量/濃度を測定するために、前記標的物質に特異的な1種または複数の抗体を使用することを含む任意の方法に関する。適当な免疫学的方法としては、それだけに限らないが、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴、放射免疫測定法(RIA)が挙げられる。好ましい実施形態では、アミロイドベータペプチドの測定または検出をELISAにより行う。
当業者は、抗体が試料中のアミロイドベータペプチド種を他の物質と有効に識別するのに十分特異的である限り、任意の型の抗体が本発明による免疫学的検出方法を行うのに十分であることを認識するだろう。
本明細書で使用する「ELISA」という用語は、酵素結合免疫吸着測定法を表し、未知量の標的物質(アミロイドベータペプチド)を表面に付着させ、次いで、特異的抗体が抗原と結合することができるように特異的抗原を表面上に流すアッセイに関する。この抗体を酵素に連結し、最終ステップで、物質を添加して酵素がある検出可能なシグナルに転換することができるようにする。直接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISAおよびELISA reverse method & device(ELISA-R m&d)を含む異なる型のELISAアッセイが知られており、本発明の方法に適用することができる。
直接ELISAは、アミロイドベータペプチドを含む試験試料を、非相互作用タンパク質または試薬(ウシ血清アルブミン、カゼイン)の濃縮溶液で予めコーティングした固体支持体と接触させることにより行う。いったん試験試料中に存在するアミロイドベータペプチドが支持体上に吸収されたら、アミロイドベータペプチドに特異的な抗体を、アミロイドベータペプチド上に結合するのに十分な条件下で添加する。次いで、結合している抗体を、検出可能なタグまたは基質修飾酵素に連結している二次抗体を用いて検出する。次いで、検出可能なタグまたは基質から生じるシグナルは、支持体に結合した抗体の量に比例し、これは同様に、試料中のアミロイドベータペプチドの量と直接相関する。
競合ELISAアッセイは、未知量のアミロイドベータペプチドを含む試験試料を上に定義する第1の抗体と接触させる第1のステップを含む。抗体-抗原複合体を抗原被覆ウェルに添加する。いったん支持体を洗浄して任意の非特異的に結合した複合体を除去したら、第1の抗体の量を、検出可能な部分に連結している第2の抗体を用いて検出する。この型のアッセイでは、元の抗原濃度が高いほど、最終的なシグナルは弱くなる。代替競合ELISAアッセイは、酵素結合抗体ではなく酵素結合抗原を含むものである。標識抗原が一次抗体結合部位について試料抗原(未標識)と競合する。この型のアッセイを用いると、試料中の抗原の濃度は、ウェル中に保持されている標識抗原の量との逆相関をもたらし、したがって、より弱いシグナルをもたらす。
reverse ELISA method & device(ELISA-R m&d)は、4〜12個の突出オジーブを有する免疫吸着ポリスチレンロッドからなる画期的な固相を用いる。装置全体が回収した試料を含む試験管に導入するのに適しており、その後のステップ(洗浄、複合体でのインキュベーション、および発色物質(chromogenous)でのインキュベーション)は、試薬を予め充填し、使用するまで密閉および保管した標準的マイクロプレートのマイクロウェルにオジーブを浸漬することにより容易に行われる。
好ましい実施形態では、ELISAアッセイはELISAサンドイッチアッセイである。ELISAサンドイッチアッセイは、支持体をアミロイドベータペプチドに特異的な第1の抗体と接触させるステップと、アミロイドベータペプチドを含む試料をアプライし、アミロイドベータペプチドと第1の抗体の結合をもたらすステップと、同様にアミロイドベータペプチドに特異的な第2の抗体をアプライするステップであって、前記第2の抗体は通常は検出可能なタグまたは基質修飾酵素に連結しているステップとを含む。タグまたは転換された基質により産生されるシグナルは、試料中の抗原の量に比例する。
測定すべき試料および既知の濃度の測定すべき化合物を含むいくつかの標準試料を並行して用いて、本方法の異なるステップを行うことが好ましい。Aβ17ペプチドの標準曲線は、上記パラメータの濃度を測定するために増加する濃度を用いて用意しなければならない。標準曲線は、(i)シグナルが標的ペプチドの濃度と共に直線的に増加する濃度範囲を確立する、および(ii)濃度値を得るために試験または標準試料により得られたシグナルを曲線に内挿することにより試験試料中のペプチドの濃度を測定する二重の目的にかなう。本発明のアッセイの感度が高いことに照らして、試験試料の好ましい濃度は、例えば、3.125;6.25;12.5;25;50;100および200pg/mLである。標準曲線を得るために用いる試料の濃度は、各試験基質によって変化することが認識されるだろう。しかしながら、アッセイの線形範囲の決定は、従来手段により当業者が容易に決定することができる。
「変化」という用語は、標準値に対する、検討中のパラメータの値の統計学的に有意な増加または減少を指す。
本明細書に使用する「統計学的に有意な」は、2つ以上の結果、エンドポイントまたは転帰の間にランダムでない関連がある、すなわち、パラメータの値が基準値に対して特定の患者集団に関連しているという一定程度の数学的保証がある確率の統計解析に関する。
値の変化の統計学的有意性は、p値を用いて決定することができる。例えば、p値を用いる場合、p値が0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満、さらにより好ましくは0.005未満、最も好ましくは0.001未満である場合に、パラメータが有意な変化を示していると同定される。
典型的には、基準値より上の値が基準値と比較して少なくとも1.1倍、1.5倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍またはさらに上である場合に、検討中のパラメータの値を「増加した」と特定することができる。他方、パラメータ値が基準値と比較して少なくとも0.9倍、0.75倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、0.025倍、0.02倍、0.01倍、0.005倍またはさらに下である場合に、「減少した」とみなすことができる。特定の実施形態では、基準値に対するパラメータの値または計算したパラメータの値の変化は増加である。
本発明のさらなる実施形態は以下である:
[1]Aβ(1-17)ペプチドに特異的に結合する抗体。
[2]Aβ(1-15)、Aβ(1-16)、Aβ(1-38)、Aβ(1-40)、Aβ(1-42)およびこれらの1種または複数の組み合わせからなる群から選択されるAβペプチドに対する実質的な交差反応性を示さない、[1]に定義される抗体。
[3]ポリクローナル抗体である、[1]または[2]に定義される抗体。
[4]配列番号1または配列番号2からなる群から選択されるAβペプチドを免疫原として用いて得られた、[1]〜[3]のいずれかに定義される抗体。
[5](i)[1]〜[3]のいずれかに定義される抗体である第1の抗体と、
(ii)第1の抗体により認識される領域とは異なるAβ(1-17)ペプチドの領域を認識する第2の抗体と
を含む、Aβ(1-17)ペプチドを検出するためのキット。
[6]第1または第2の抗体が結合対の第1のメンバーに連結している、[5]に記載のキット。
[7]前記結合対の第2のメンバーをさらに含み、結合対の前記第2のメンバーが検出可能なタグに連結している、[6]に記載のキット。
[8]結合対の第2のメンバーに連結している検出可能なタグが酵素タグである場合、前記酵素により検出可能な産物に転換され得る基質をさらに含む、[7]に定義されるキット。
[9]Aβ40および/またはAβ42に特異的に結合する抗体または抗体の組み合わせをさらに含む、[5]〜[8]のいずれかに定義されるキット。
[10]固体支持体をさらに含む、[5]〜[9]のいずれかに定義されるキット。
[11]結合対の第1のメンバーに連結していない抗体を固体支持体に事前結合させる、[10]に定義されるキット。
[12]Aβ17、Aβ40および/またはAβ42ペプチドを含む試料をさらに含む、[5]〜[11]のいずれかに定義されるキット。
[13]試料中のAβ(1-17)ペプチドを測定または検出する方法であって、
(i)試料中に存在するAβ(1〜17)ペプチドを、前記ペプチドに特異的に結合する第1の抗体で捕捉するステップと、
(ii)ステップ(i)で形成された免疫複合体を第2の抗体と接触させるステップであって、前記第2の抗体は[1]〜[4]のいずれかに定義され、前記第2の抗体は第1の抗体とは異なる領域を認識し、結合対の第1のメンバーに連結しているステップと、
(iii)ステップ(ii)で形成された複合体を検出可能なタグに連結している結合対の第2のメンバーと接触させるステップと、
(iv)検出可能なタグの活性もしくは量を検出または測定するステップと
を含む方法。
[14]生体試料が血液、血清、血漿およびCSFの群から選択される、[13]〜[17]のいずれかに定義される方法。
[15]第1の抗体がモノクローナル抗体である、[1]〜[12]のいずれかに定義されるキットまたは[13]もしくは[14]に定義される方法。
[16]モノクローナル抗体が6E10抗体である、[15]に定義されるキットまたは方法。
[17]結合対の前記第1のメンバーがビオチンであり、結合対の前記第2のメンバーがアビジン、ストレプトアビジンまたはこれらの機能的に同等な変異形である、[1]〜[16]のいずれかに定義されるキットまたは方法。
[18]検出可能なタグが蛍光分子、発光分子または酵素である、[1]〜[17]のいずれかに定義されるキットまたは方法。
[19]対象の神経変性疾患をモニタリングする方法であって、
(a)第1の時点で対象の試料の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および前記対象の試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、
(b)第2の時点で前記対象の試料の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、
(c)前記第1および第2の時点で血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の比を比較するステップと
を含み、
第1の時点に対して第2の時点で前記比が増加している場合、これは前記第1の時点と前記第2の時点との間で対象のアルツハイマー病が悪化していることを示している方法。
[20]神経変性疾患がアルツハイマー病である、[19]に記載の方法。
[21]Aβ17ペプチドの濃度の測定をELISAにより行う、[19]または[20]のいずれかに記載の方法。
[22]Aβ17ペプチド濃度の濃度の測定を[13]〜[18]のいずれかに定義される方法を用いて行う、[21]に記載の方法。
[23]対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)前記対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(d)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;および
(e)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
からなる群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の前記パラメータの値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
[24]対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っているかどうかを判定する方法であって、
(a)対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値;
(d)血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
(e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算濃度に相当する比率値;
(f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
(g)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
パラメータ(a)、(b)または(c)の1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/またはパラメータ(d)、(e)、(f)もしくは(g)の1つもしくは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法。
[25]非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象と識別する方法であって、
(a)対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
(c)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ42総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
(d)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
(e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中のAβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
(a)の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/または前記パラメータ(b)、(c)、(d)および(e)の1つもしくは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法。
[26]非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する方法であって、
(a)血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(b)血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(c)血漿試料中の総Aβ42ペプチドおよび血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(d)血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
(e)血漿試料中の総Aβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度の加算値;
(f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
(g)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
[27]前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象を、軽度アルツハイマー病を患っている対象と識別する方法であって、
(a)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血漿試料中の遊離Aβ40ペプチドの濃度との比率値;および
(b)2つのパラメータの間の比であって、第1のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ40およびAβ42ペプチドの加算濃度に相当する比率値
の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
前記パラメータの1つまたは複数の値が前駆軽度認知障害対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
[28]Aβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの1種または複数の濃度の測定をELISAにより測定する、[23]〜[27]のいずれかに記載の方法。
以下の実施例は例証として提供するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
(実施例)
(実施例1)
抗Aβ17抗体の作製
4匹のウサギを、以下のペプチド、Aβ(12-17)(配列番号2)に相当するVHHQKLおよびAβ(11-17)(配列番号3)に相当するEVHHQKLで免疫化した。4匹のうちの2匹は第1のペプチドで、残りの2匹は第2のペプチドで免疫化した。両ペプチドはN末端に接合用の追加のアミノ酸、システインを含んでいた。
接合に用いる担体はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Pierce、参照77600)とした。架橋剤NHS-PEG4-マレイミド(Pierce、参照22104)を用いて接合を行った。アジュバントとして、3種を用いた:フロイント完全アジュバント(Sigma、参照F5881)、フロイント不完全アジュバント(Sigma、参照F5506)およびImject Alum(Pierce、参照77161)。
免疫化プロトコルは以下であった:
- 4匹のウサギを毎週ペプチド100μgで免疫化した。
- 第1の用量はアジュバントとしてのフロイント完全アジュバントを用いて投与し、別の用量はフロイント不完全アジュバントを用いて投与し、第3の用量はAlumを用いて投与した。
- 最初の3回の投与後、得られた抗体価はあまりに低く精製が不可能であった。したがって、用量をペプチド200μgに増加させ、さらに3回投与し、アジュバントを交互にした:フロイント不完全アジュバント-Alum-フロイント不完全アジュバント。
- 4匹のウサギについて得られた抗体価は極めて高くなり、アフィニティークロマトグラフィー(Aβ17ペプチドを用いた)により精製を行った。
ドットブロットを行い抗Aβ17抗体の特異性を測定した。ここでは他のAβペプチドを含めた(図1)。抗Aβ17抗体を2種の希釈(1:1000および1:2000)で添加し、用いる二次抗体はヤギ抗ウサギHRP 1:2000とした。各ペプチド500ngを2.5μlで充填した。ドットブロットを、1分および3分暴露でSNAP技術を用いてECLにより展開した。前記図に示されるように、抗体はAβ17ペプチドに高度に特異的であり、Aβ15、Aβ16、Aβ38、Aβ40およびAβ42を特異的には認識しない。
(実施例2)
試料中のAβ17ペプチドの測定
(1)質量分析による測定
試薬
ギ酸、塩化ナトリウム、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(α-CHCA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、DL-ジチオトレイトール(DTT)、トリエタノールアミン、Trisおよびウシ血清アルブミン(BSA)はSigma(Steimheim、ドイツ)製とした。アセトニトリルはCarlo-Erba(Rodano、MI、イタリア)から購入した。ピメリミド酸ジメチル・2HCl(DMP)はPierce(Rockford、IL、米国)から入手した。トリシン試料バッファーはBio-Rad(Hercules、CA、米国)から購入した。
免疫沈降(IP)手順
手順をイヌ試料の分析に適合させるために、いくらかの修正を加えて、Portelius他 2007(J.Proteome. Res. 6(11)、4433〜4439)により記載されているようにIP-MALDI手順を行った。最初に、ウエスタンブロット法により各抗体の最適量を決定するために、異なる量のAβ特異的抗体を用いた(それぞれアミノ酸4〜9および18〜22でAβエピトープに特異的な6E10および4G8、Signet Laboratories, Inc.、Dedham、MA、米国ならびにSAR2(抗Aβ40カルボキシ末端エピトープに特異的、Araclon Biotech S.L.、Zaragoza、スペイン))。最適化手順は異なるステップを含んでいた。製造業者の説明にしたがって、各抗体を50μL Dynabeads Protein G(Invitrogen Dynal AS、Oslo、ノルウェー)に別々に添加した。ビーズを異なる量の抗体と共にインキュベートし、洗浄し、次いで、DTTを含むトリシン試料バッファー中でビーズを沸騰させることにより抗体を溶出させた。飽和量の各抗体をウエスタンブロット法により測定した。さらに、ビーズと抗体および複合体ビーズ-抗体と試料のインキュベーション時間(1時間および一晩)ならびに温度(4℃、室温および37℃)も最適化した。別の最適化パラメータは溶出条件であった(0.5、2.5および5%ギ酸ならびに数%の有機溶媒、例えばアセトニトリル)。
本研究中、2種の異なるプロトコルを適用した。第1のものは、基本的に最適化パラメータを用いた製造業者の指示に基づくものである:一定分量のAβ特異的抗体(6E10 4μgまたは4G8 8μgまたはSAR2 6μg)をDynabeads Protein G 50μLと共に回転式振盪機中室温で1時間インキュベートした。その後、リン酸緩衝食塩水(PBS:1mM NaH2PO4 H2O、5mM Na2HPO4・2H2O、138mM NaCl)による3回の洗浄を行った。CSF 1mLを添加し、回転式振盪機中室温で一晩インキュベートした。磁石(DynaMag-2またはDynaMag-15、Invitrogen Dynal AS、Oslo、ノルウェー)の助けをかりて、インキュベーション後にCSFをビーズから除去し、捨てた。ビーズを1mL 100mM Tris pH=6.8で3回洗浄し、最終的に5%ギ酸25μLで溶出を行った。溶出液をThermomixer中室温で5分間インキュベートした。
溶出化合物をZipTip C18チップ(Millipore、Billerica、MA、米国)により脱塩した。ZipTip C18プロトコルはいくつかのステップからなる:アセトニトリルによるチップ溶媒和、0.1%TFAによる調整(このステップを数回繰り返す)、試料充填(数回の上下ピペット操作による)、0.1%TFAによる洗浄ステップ、およびα-CHCA(5mg/mL) 3μLによる最終溶出。
第2のプロトコルでは、PBSの代わりにクエン酸-リン酸緩衝液、pH=5.0(24.5mMクエン酸、52mM Na2HPO4・2H2O)を洗浄および結合ステップに用いた。溶出前に、100mM Tris pH=6.8の代わりにPBSでビーズを洗浄した。この第2のプロトコルにより、バックグラウンドノイズが小さく強いピークの質量スペクトルが得られ、これを実験の残りで用いた。
ヒト試料の免疫沈降のために、Dynabeadsヒツジ抗マウス50μl(Invitrogen Dynal AS、Oslo、ノルウェー)を用いた。ビーズをPBSで3回洗浄し、最適化量の特異的抗体(6E10 8μgまたは4G8 8μg)と共に回転式振盪機中室温で1時間インキュベートした。その後、上清を除去し、ビーズを0.2MトリエタノールアミンpH=8.2 1mLで洗浄した。0.2MトリエタノールアミンpH=8.2中20mM DMP(アミン反応基を有するホモ二官能性(homobifunctional)架橋剤(Greg T Hermanson、2010))1mLを添加した後、架橋反応が起こった。ビーズおよび抗体を室温で30分間インキュベートし、次いで、上清を捨て、回転式振盪機中50mM Tris pH=7.5 1mLを15分間添加することにより反応を停止した。架橋したビーズを0.1%のBSAを含むPBS 1mlで3回洗浄した。プールしたヒトCSF 1mLを添加し、室温で一晩インキュベートした。上清を捨て、ビーズをPBSで数回洗浄した。Aβ種を5%のギ酸25μlで溶出した。溶出化合物を上記と同じプロトコルを用いてZipTip C18で脱塩した。
MALDI-TOFおよびMALDI-TOF/TOF質量分析(MS)
溶出試料0.7μlを完全に蒸発するまでMALDI標的上に直接置いた。200Hz繰り返し数で作動するダイオード励起固体Nd:YAGレーザー(355nm)を備えたABI4800 MALDI-TOF/TOF質量分析計(AB/Sciex)で全スペクトルを得た。MSスペクトルを得るために、装置を反射モードで作動させ、全実験を陽イオンモードで行った。レーザー発射400ナノ秒後、20kVの加速電圧を印加した。イオンを2段階反射鏡に再度焦点を合わせ、最終的に第2の検出器で検出した。鏡2と電源1との電圧差を1.105の比率値で一定に維持した。MS/MS取得のために、電源1電圧を8kVに維持し、レーザー値をMS実験でよりも高い1000ユニットに設定した。250(最大半量で全幅)の分解能値でTimed Ion Selectorによってフラグメンテーションのために前駆イオンを選択した。選択されたイオンを減速スタックで衝突室に到達する前に減速させ、1keVの運動エネルギーで空気と衝突して解離させた(高エネルギー衝突誘起解離)。短い遅延時間後に、15kVの第2の電源でフラグメントイオンを再加速した。準安定サプレッサーを全MS/MS実験において起動して残っている前駆イオンおよび不要な準安定崩壊フラグメントの検出を回避した。スペクトル処理(補整および/またはノイズフィルタリング)のためにデータエクスプローラーソフトウェアを用いた。モノアイソトピック(monoisotopic)m/z比のみ報告する。質量分析計は900〜4000Daの質量範囲を網羅する、製造業者により提供されたペプチド混合物を用いて外部較正した。必要に応じて、装置を、インスリン(M+H+=5730.609Da)を用いて較正した。
脳脊髄液(CSF)試料および血漿試料についての質量分析の結果を図2に示す。ここでは、Aβ17に相当するピークを矢印で示す。
(2)ELISAによる測定
試薬および溶液
- β-アミロイド1-17標準、ヒト由来。20ng/mlのストック溶液。
- 抗体を表面に吸着するよう最適化したマイクロプレート。
- ヒトAβペプチドのNH2末端に特異的な捕捉モノクローナル抗体(6E10抗体)。
- アミノ酸17で終わるヒトAβペプチドを特異的に認識するビオチン複合検出ポリクローナル抗体。
- ストレプトアビジン-HRP複合体の増幅溶液。
- 安定化色素原TMB。
- コーティングバッファー:100mM Na2CO3 pH9.6。
- 洗浄バッファー:50mM Tris、0.05% Tween20、150mM NaCl、pH8.0。
- ブロッキングバッファー:50mM Tris、0.2% Tween20、0.5% BSA、pH8.0。
- 保存溶液:20mg/mlトレハロース、50mM tris、pH8.0。
- 抗体希釈剤:50mM tris、0.05% BSA、0.5M NaCl、0.05% Tween20、pH8.0。
- PBST:80mM Na2HPO4、20mM NaH2PO4、100mM NaCl、0.5% Tween20、pH7.5。
- 標準/試料希釈剤:合成ブロッキング試薬 PBST中1:100。
- 停止液:1N H2SO4
方法
Aβアミロイドペプチドのアミノ酸1〜17を認識する6E10モノクローナル捕捉抗体を用いてプレートをコーティングした。使用する濃度は、それが抗原-抗体反応の制限要因にならないように抗体の飽和濃度にしたがって決定した。この目的のために、ウェルに吸着した抗体のモニタリングにより、450nmでの吸光度を各ウェル中の抗体濃度と関連づけ、抗マウスIgG HRP複合抗体を室温で1時間振盪し、色素原基質によるインキュベーションステップ、引き続く反応の停止を行った。シグナルが抗体濃度と共に増加しなくなった濃度を選択した。
いったん飽和濃度を選択したら、マイクロプレートをコーティングバッファー中捕捉抗体100μlでコーティングし、約20時間中4℃で一晩(ON)インキュベートした。
次いで、プレートを洗浄バッファーで5回洗浄し、1ウェル当たり300μlのブロッキングバッファーを添加した。プレートを室温で3時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄バッファーで5回洗浄し、保存溶液100μlを添加した。トレハロースの白色ハロー特徴が現れるまで(室温で2〜3日)、プレートを放置して蒸発させた。こうして処理したプレートは、4℃でアルミ箔で覆ったまま維持することができ、これは2年間安定である。
試料調製
無希釈のまたは試料/標準希釈剤に1:2〜1:10希釈した試料を用いることができる。血漿試料には1:3希釈が推奨され、血液細胞試料には1:5が推奨される。正確な定量化を保証するために、標準曲線およびブランクを試料と同じ希釈剤または緩衝液で作製しなければならない。
ヒトAβ17(hAβ17)の標準曲線の試料を、6E10 mAbでコーティングし、トレハロースで処理したプレート上にペプチドAβ17の200pg/mlストック溶液から調製した。これらの溶液から、試料/標準希釈剤への1:2連続希釈を行い、200、100、50、25、12.5、6.25および3.125pg/mlの濃度を得た。各試料100μlを添加し、4℃で一晩(または37℃で2時間)インキュベートする。
検出ステップ
検出抗体は、アミノ酸17で終わるヒトAβペプチドに対するポリクローナルビオチン結合抗体である。抗体のビオチンへの結合は、活性化ステップおよび暗所中室温で一晩のインキュベーション後に起こる。過剰ビオチンはさらなるステップで不活性化する。検出抗体を抗体希釈剤に添加して希釈した。100μlを各ウェルに添加し、次いで、室温で1時間振盪してインキュベートした。次いで、HRP結合ストレプトアビジン(SIGMA製)の抗体希釈剤への1/50希釈100μlを各ウェルに添加し、室温で1時間振盪してインキュベートした。プレートを展開するために、発色基質TMB(ZEU Inmunotec)100μlを用いた。TMBを添加し、暗所中で45分間インキュベートした。1ウェル当たり停止液50μlを添加した。450nmにおける吸光度をプレートリーダーSynergy HT(BioTek Instruments)で読み取った。
Aβ17定量化
任意の免疫測定ソフトウェアパッケージを用いて結果を計算することができる。曲線当てはめに用いる方法は線形回帰であり、Aβ17の濃度を以下のように計算した:
(i)以下のように各標準希釈および試料について平均正味ODを計算する:
平均正味OD(nm)=平均結合OD(nm)-平均ゼロOD(nm)。
(ii)方眼紙上に、標準についてのAβの濃度(pg/ml)に対する標準希釈の平均正味OD(nm)をプロットする。これらの点を通して最良の曲線を描いて標準曲線を作成する。
(iii)標準曲線からの内挿により、未知試料および対照中のAβ濃度を決定することができる。
(iv)試料について得た値に各試料の希釈係数をかける。
(v)200pg/ml標準よりも高いシグナルを産生する試料はさらに希釈して分析した。
(実施例3)
再現性ならびに検出および定量限界の決定
免疫測定法の再現性を分析するために、血漿試料におけるプレート内変動性、アッセイ内変動性、アッセイ間変動性および細胞試料におけるアッセイ間変動性を測定した。
プレート内変動性は、同じプレートにおいて試料、標準試料および基準試料で、3回、ウェル間の差を分析することにより計算した。アッセイ内再現性では、同じアッセイで11個の異なるプレートで分析した4つの標準血漿試料について得た濃度を比較した。血漿試料のアッセイ間変動性では、2つの異なる独立したアッセイで2個の血漿試料を分析した場合の濃度で得られた差を測定した。細胞試料のアッセイ間変動性は、8個の対照試料の2つの異なる独立した測定間のAβ17濃度の比較を指す。
得られた結果をTable 1(表1)に示す。
検出限界(DL)および定量限界(QL)を2種の異なる方法により計算した:
(a)方法1:
DL=濃度ブランク+3σブランク
QL=濃度ブランク+10σブランク
(b)方法2:
DL=3.3σブランク/m
QL=10σブランク/m
(式中、σブランクはブランクの標準偏差であり、mは検定線の勾配である)。
両方法を用いて得た検出限界(DL)および定量限界(QL)をTable 2(表2)に示す。
(実施例4)
AD診断とAβ17/Aβ40/Aβ42濃度との間の相関
65歳より上の対照の健康な対象(CS>65またはHC>65)のコホート(19人の対象)、軽度アルツハイマー病(軽度AD)を患っている対象のコホート(17人の対象)、前駆もしくはほぼ確実な軽度認知障害(MCI)にかかっている対象のコホート(16人の対象)および非前駆もしくは可能性のある軽度認知障害(MCI)にかかっている対象のコホート(16人の対象)の血漿試料において、実施例1に記載したELISAサンドイッチアッセイを用いてAβ17、Aβ40およびAβ42濃度を測定した。ペプチドについて得た濃度(pg/mL)を図3A、図4A、図5Aおよび図6Aの表に示す。
軽度ADにおける血漿中のAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチド濃度(血漿中の総ペプチド+細胞に結合したペプチド)(PIB(17+40+42))は、軽度アルツハイマー病対象に対して対照の健康な対象と可能性のあるまたは非前駆MCI対象の両方に関して有意に異なる。しかしながら、マーカーPIB(17+40+42)はHC>65対象とほぼ確実なMCIとの間で異ならない一方で、PIB(40+42)は極めて有意に異なる(図3B)。
群を識別することができる測定すべき他の関連するパラメータは以下である(図3、4、5および6):
- 細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度(CB(17+40+42))。図3に示すように、細胞に結合したこれらのペプチドの濃度は、可能性のあるMCIおよび健康な対象でよりもほぼ確実なMCIおよび軽度AD対象で高い。また、健康な対象と軽度AD、可能性のあるMCIとほぼ確実なMCI、および可能性のあるMCIと軽度ADを極めて有意に識別することが可能である。
- 血漿中の総Aβ42総ペプチド濃度+細胞に結合したAβ42ペプチド濃度(TP42+CB42)。図3に示すように、これらのマーカーの濃度は、可能性のあるMCIおよび健康な対象でよりもほぼ確実なMCIおよび軽度AD対象で高い。また、健康な対象と軽度ADまたはほぼ確実なMCI、および可能性のあるMCIと軽度ADを極めて有意に識別することが可能である。
- 血漿中の総Aβ40総ペプチド濃度+細胞に結合したAβ40ペプチド濃度(TP40+CB40)。図3に示すように、これらのマーカーの濃度は、可能性のあるMCIおよび健康な対象でよりもほぼ確実なMCIおよび軽度AD対象で高い。また、可能性のあるMCIと軽度ADを極めて有意に識別することが可能である。
- 血漿中の遊離Aβ17ペプチド濃度と血漿中の遊離Aβ40ペプチド濃度の比(FP17/40)は、ほぼ確実なMCIと軽度ADを識別することが可能である(図4)。
- 細胞に結合したAβ17ペプチド濃度と細胞に結合したAβ42ペプチド濃度の比(CB17/42)は、健康な対象または可能性のあるMCI対象とほぼ確実なMCIを識別することができる(図4)。
- 血漿中の総Aβ17ペプチド濃度+細胞に結合したAβ17ペプチド濃度と血漿中の総Aβ42ペプチド濃度+細胞に結合したAβ42ペプチド濃度の比(TP17+CB17/TP42+CB42)は、健康な対象または可能性のあるMCI対象とほぼ確実なMCIを識別することができる(図4)。
- 血漿中の遊離Aβ17ペプチド濃度と血漿中の遊離Aβ40およびAβ42ペプチド濃度の比(FP17/FP40+FP42)は、ほぼ確実なMCIと軽度ADを識別することができる(図5)。
- 細胞に結合したAβ17ペプチド濃度と細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチド濃度の比(CB17/CB40+CB42)は、健康な対象または可能性のあるMCI対象とほぼ確実なMCI、および健康な対象と軽度ADを識別することができる(図5)。
- 血漿中の総Aβ17ペプチド濃度+細胞に結合したAβ17ペプチド濃度と血漿中の総Aβ40およびAβ42ペプチド濃度の比(PIB(40+42))は、健康な対象または可能性のあるMCI対象とほぼ確実なMCIを識別することができる(図5)。
- 血漿中の遊離Aβ17ペプチド濃度と細胞に結合したAβ17ペプチド濃度の比(FP17/CB17)は、健康な対象または可能性のあるMCI対象と軽度AD、および健康な対象とほぼ確実なMCIを識別することができる(図6)。全Aβ17比を用いた統計解析(マン-ホイットニーのU検定)は、血漿中の遊離Aβ17ペプチド濃度/細胞に結合したAβ17ペプチド濃度(FP17/CB17)のマーカーでのみ統計学的に有意な差を示している(Table 3(表3)参照)。
同様に、血漿中の遊離Aβ17ペプチド濃度と細胞に結合したAβ17ペプチド濃度の比とADの進展の間に相関がある。認知障害が進行するほど、血漿中の遊離Aβ17ペプチドの濃度が高くなり、したがって、血漿中の遊離Aβ17ペプチド濃度と細胞に結合したAβ17ペプチド濃度の比(FP17/CB17)が高くなる。

Claims (14)

  1. Aβ(1-17)ペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗体であって、
    Aβ(1-15)、Aβ(1-16)、Aβ(1-38)、Aβ(1-40)、Aβ(1-42)およびこれらの1種または複数の組み合わせからなる群から選択されるAβペプチドに対する実質的な交差反応性を示さないポリクローナル抗体。
  2. (i)請求項1に定義される抗体である第1の抗体と、
    (ii)第1の抗体により認識される領域とは異なるAβ(1-17)ペプチドの領域を認識する第2の抗体と
    を含む、Aβ(1-17)ペプチドを検出するためのキット。
  3. 第1または第2の抗体が結合対の第1のメンバーに連結している、請求項2に記載のキット。
  4. 前記結合対の第2のメンバーをさらに含み、結合対の前記第2のメンバーが検出可能なタグに連結している、請求項3に記載のキット。
  5. 試料中のAβ(1-17)ペプチドを測定または検出する方法であって、
    (i)試料中に存在するAβ(1-17)ペプチドを、前記ペプチドに特異的に結合する第1の抗体で捕捉するステップと、
    (ii)ステップ(i)で形成された免疫複合体を第2の抗体と接触させるステップであって、前記第2の抗体は請求項1から4のいずれかに定義され、前記第2の抗体は第1の抗体とは異なる領域を認識し、結合対の第1のメンバーに連結しているステップと、
    (iii)ステップ(ii)で形成された複合体を検出可能なタグに連結している結合対の第2のメンバーと接触させるステップと、
    (iv)検出可能なタグの活性または量を検出または測定するステップと
    を含む方法。
  6. 前記試料が血液、血清、血漿およびCSFからなる群から選択される、請求項5に定義される方法。
  7. 対象の神経変性疾患をモニタリングする方法であって、
    (a)第1の時点で前記対象の試料の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および前記対象の試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、
    (b)第2の時点で前記対象の試料の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度および前記対象の試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度を測定するステップと、
    (c)前記第1および第2の時点で血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の比を比較するステップと
    を含み、
    第1の時点に対して第2の時点で前記比が増加している場合、これは前記第1の時点と前記第2の時点との間で対象のアルツハイマー病が悪化していることを示している方法。
  8. 前記神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項7に記載の方法。
  9. Aβ17ペプチド濃度の濃度の測定を請求項5または6のいずれかに定義される方法を用いて行う、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
  10. 対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
    (a)前記対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (b)前記対象の血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (c)前記対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (d)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;および
    (e)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
    からなる群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
    前記パラメータの1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の前記パラメータの値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
  11. 対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っているかどうかを判定する方法であって、
    (a)前記対象の血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (b)前記対象の血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (c)前記対象の血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値;
    (d)血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
    (e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ42ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算濃度に相当する比率値;
    (f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
    (g)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中の総Aβ17ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
    の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
    パラメータ(a)、(b)または(c)の1つまたは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/またはパラメータ(d)、(e)、(f)もしくは(g)の1つもしくは複数の値が健康な対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法。
  12. 対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っているかどうかを判定する方法であって、
    (a)前記対象試料の血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (b)前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ17の濃度と前記対象の血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度との比率値;
    (c)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ42総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
    (d)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;
    (e)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは前記対象の血漿試料中のAβ17総ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度の加算値に相当し、第2のパラメータは血漿試料中のAβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値
    の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
    (a)の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している、かつ/または前記パラメータ(b)、(c)、(d)および(e)の1つもしくは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して減少している場合、前記対象が前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている方法。
  13. 対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
    (a)血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (b)血漿試料中のAβ17、Aβ40およびAβ42総ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ17、Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (c)血漿試料中の総Aβ42ペプチドおよび血液試料中の細胞に結合したAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (d)血漿試料中の総Aβ40およびAβ42ペプチドの濃度ならびに血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値;
    (e)血漿試料中の総Aβ40ペプチドの濃度および血液試料中の細胞に結合したAβ40ペプチドの濃度の加算値;
    (f)2つのパラメータの間の比率値であって、第1のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血液試料中の細胞に結合したAβ40およびAβ42ペプチドの濃度の加算値に相当する比率値;および
    (g)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血液試料中の細胞に結合したAβ17ペプチドの濃度との比率値
    の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
    前記パラメータの1つまたは複数の値が非前駆アルツハイマー病によるMCIを患っている対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
  14. 対象が軽度アルツハイマー病を患っているかどうかを判定する方法であって、
    (a)血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度と血漿試料中の遊離Aβ40ペプチドの濃度との比率値;および
    (b)2つのパラメータの間の比であって、第1のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ17ペプチドの濃度に相当し、第2のパラメータは血漿試料中の遊離Aβ40およびAβ42ペプチドの加算濃度に相当する比率値
    の群から選択される1つまたは複数のパラメータの値を測定するステップを含み、
    前記パラメータの1つまたは複数の値が前駆軽度認知障害対象の標準試料の値に対して増加している場合、前記対象が軽度アルツハイマー病を患っている方法。
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