JP2014226790A - インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの配線引き出し方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク室形成部材に設けられたインク室に対応する個別電極を、このインク室形成部材に接合される基板を利用して、該基板の強度低下を招くおそれなく、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すことができるインクジェットヘッドを提供すること。【解決手段】インクを吐出するインク室11のインク流入口11bと、インク室11内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極12とが一側に配置されたインク室形成部材1と、インク室形成部材1の一側に設けられた基板3とを備え、基板3は、インク室形成部材1のインク流入口11bと連通してインク流路を形成する第1の貫通穴31が設けられていると共に、個別電極12と電気的に接続される配線32が、第1の貫通穴31を通って、インク室形成部材1と反対側の面3bに引き出されていることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明はインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの配線引き出し方法に関し、詳しくは、インク室形成部材の一側に配置された個別電極を、インク室形成部材の一側に設けられた基板を利用して、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すようにしたインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの配線引き出し方法に関する。
インクジェットヘッドは、インク室内のインクに吐出エネルギーを付与してノズルからインク滴を吐出する。従来、吐出エネルギーを付与するための手段としては、電圧印加によって機械的に変位するPZT等の圧電素子を利用したもの、インク室内に配置されたヒーターへの通電によってインク中に気泡を生成させ、この気泡の破裂作用を利用したもの等が知られている。
中でも、圧電素子からなる駆動壁と細溝状のインク室とが交互に配置され、駆動壁に形成された駆動電極に電圧を印加することによって該駆動壁をせん断変形させ、インク室内のインクをノズルから吐出させるせん断モード型のインクジェットヘッドは、高密度化が容易である等の利点を有している。このせん断モード型のインクジェットヘッドの中でも、インク室の開口部が相反する前端面と後端面とに配置され、インク室がストレート状に形成される六面体形状からなる所謂ハーモニカ構造のインク室形成部材を有するインクジェットヘッドは、一枚のウエハーからのインク室形成部材の取り数が多く、極めて生産性に優れている。
このようなハーモニカ構造のインク室形成部材は、各インク室内に臨んでいる駆動電極に駆動信号発生回路からの駆動信号を印加するために、駆動電極をインク室形成部材の外部に電気的に引き出し、FPC等の外部配線部材との電気的接続を容易に行なえるようにする必要がある。
従来、インク室内の駆動電極をインク室形成部材の外部に電気的に引き出す手法として、特許文献1、2に記載のものが知られている。
特許文献1記載のインクジェットヘッドは、インク室形成部材の後端面に、インク室内の駆動電極と電気的に接続された第1の個別電極と、該後端面の端部に配置された第2の個別電極とを分離して設けておき、これら2つの個別電極間を絶縁層付き配線で電気的に接続すると共に、この後端面に別途の基板を接合し、この基板に形成された配線の一端を、第2の個別電極と電気的に接続させることによって、インク室内の駆動電極を基板の端部まで電気的に引き出すようにしている。
特許文献2記載のインクジェットヘッドは、インク室形成部材の後端面に、インク室内の駆動電極と電気的に接続された個別電極を配置させると共に、この後端面に別途の基板を接合し、この基板に形成された配線を利用して、インク室内の駆動電極を基板の端部まで電気的に引き出すようにしている。基板の配線は、複数のインク室によって構成されるインク室の列毎に基板の表裏に振り分けられており、基板の背面側の配線は、一端が個別電極と電気的に接続され、他端が基板に形成された貫通電極を介して背面側に引き出されている。この基板はインク室形成部材の後端面のほぼ全体を覆う大きさを有しており、各インク室のうちのインク吐出を行うインク室の開口部に対応する部位に、該インク室に個別に対応するインク流路用の貫通穴が形成されている。
近年、インクジェットヘッドはより高精細な記録を可能とするため、より一層のインク室の高密度化が求められており、この高密度化の要求によって、従来のインクジェットヘッドにおける新たな課題が生じている。
すなわち、特許文献1記載のインクジェットヘッドでは、インク室形成部材の後端面に絶縁層付き配線を設ける必要があるため、インク室が高密度になる程、絶縁層付き配線も高密度に形成する必要があり、絶縁層付き配線の形成作業が煩雑化する。
一方、特許文献2記載のインクジェットヘッドによれば、インク室形成部材の後端面に絶縁層付き配線を形成する必要はなく、また、インク室の列毎の配線が基板の表裏に形成されるため、インク室が高密度化しても配線同士が短絡しにくくなる利点がある。しかしながら、基板の表面の配線を背面側に引き出すために専用の貫通穴を設け、この貫通穴を利用して貫通電極を形成する必要があるため、配線を貫通させるための作業が煩雑である上に、インク室が高密度になるほど貫通穴数が増加するため、貫通穴数の増加によって基板の強度低下につながる問題がある。
そこで、本発明は、インク室形成部材に設けられたインク室に対応する個別電極を、このインク室形成部材に接合される基板を利用して、該基板の強度低下を招くおそれなく、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すことができるインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
また、本発明は、インク室形成部材に設けられたインク室に対応する個別電極を、このインク室形成部材に接合される基板を利用して、該基板の強度低下を招くおそれなく、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すことができるインクジェットヘッドの配線引き出し方法を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
1.インクを吐出するインク室のインク流入口と、前記インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極とが一側に配置されたインク室形成部材と、
前記インク室形成部材の前記一側に設けられた基板とを備え、
前記基板は、前記インク室形成部材の前記インク流入口と連通してインク流路を形成する第1の貫通穴が設けられていると共に、前記個別電極と電気的に接続される配線が、前記第1の貫通穴を通って、前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
前記インク室形成部材の前記一側に設けられた基板とを備え、
前記基板は、前記インク室形成部材の前記インク流入口と連通してインク流路を形成する第1の貫通穴が設けられていると共に、前記個別電極と電気的に接続される配線が、前記第1の貫通穴を通って、前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.前記配線の一端側は、前記基板の前記インク室形成部材側の面に形成され、該面において、前記個別電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.前記配線は、前記第1の貫通穴の内周面に沿って通過していることを特徴とする前記1又は2記載のインクジェットヘッド。
4.前記基板は、前記インク室形成部材よりも側方に張り出して外部配線部材との電気的接続を行う張り出し部を有し、
前記配線の他端側は、前記張り出し部に延出していることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
前記配線の他端側は、前記張り出し部に延出していることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
5.前記基板は、前記張り出し部に前記第1の貫通穴とは別の第2の貫通穴が設けられ、
前記配線は、前記第2の貫通穴を通って、前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面から、前記インク室形成部材側の面に引き戻されていることを特徴とする前記4記載のインクジェットヘッド。
前記配線は、前記第2の貫通穴を通って、前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面から、前記インク室形成部材側の面に引き戻されていることを特徴とする前記4記載のインクジェットヘッド。
6.前記配線は、前記第2の貫通穴の内周面に沿って通過していることを特徴とする前記5記載のインクジェットヘッド。
7.前記配線は、前記基板の前記張り出し部側の端面を経由して、前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面から、前記インク室形成部材側の面に引き戻されていることを特徴とする前記4記載のインクジェットヘッド。
8.前記インク室形成部材は、圧電素子からなる駆動壁と、隣接する一対の前記駆動壁間の空間によって形成されるインク室とが交互に配置されると共に、前記インク室内に臨む前記駆動壁の表面に駆動電極が形成され、該駆動電極に電圧を印加して前記駆動壁を変形させることによって、前記インク室内に供給されたインクに吐出のための圧力を付与し、ノズルからインクを吐出する構成であり、
前記個別電極は、前記インク流入口を介して前記駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
前記個別電極は、前記インク流入口を介して前記駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
9.前記インク室形成部材は、インクを吐出する吐出インク室と、インクを吐出しない非吐出インク室とが交互に並設され、
前記配線は、前記吐出インク室の前記個別電極と電気的に接続され、
前記非吐出インク室の前記個別電極は、前記インク室形成部材の一面に形成された共通電極に電気的に接続されていることを特徴とする前記8記載のインクジェットヘッド。
前記配線は、前記吐出インク室の前記個別電極と電気的に接続され、
前記非吐出インク室の前記個別電極は、前記インク室形成部材の一面に形成された共通電極に電気的に接続されていることを特徴とする前記8記載のインクジェットヘッド。
10.インクを吐出するインク室のインク流入口と、前記インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極とが一側に配置されたインク室形成部材と、
前記インク室形成部材の前記一側に設けられた基板とを備え、
前記基板には、前記インク室形成部材の前記インク流入口と連通してインク流路を形成する第1の貫通穴と、前記個別電極と電気的に接続される配線とが設けられてなるインクジェットヘッドの配線引き出し方法であって、
前記配線を、前記基板の前記第1の貫通穴を通って、前記インク室形成部材と反対側の面に引き出すことを特徴とするインクジェットヘッドの配線引き出し方法。
前記インク室形成部材の前記一側に設けられた基板とを備え、
前記基板には、前記インク室形成部材の前記インク流入口と連通してインク流路を形成する第1の貫通穴と、前記個別電極と電気的に接続される配線とが設けられてなるインクジェットヘッドの配線引き出し方法であって、
前記配線を、前記基板の前記第1の貫通穴を通って、前記インク室形成部材と反対側の面に引き出すことを特徴とするインクジェットヘッドの配線引き出し方法。
本発明によれば、インク室形成部材に設けられたインク室に対応する個別電極を、このインク室形成部材に接合される基板を利用して、該基板の強度低下を招くおそれなく、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すことができるインクジェットヘッドを提供することができる。
また、本発明によれば、インク室形成部材に設けられたインク室に対応する個別電極を、このインク室形成部材に接合される基板を利用して、該基板の強度低下を招くおそれなく、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すことができるインクジェットヘッドの配線引き出し方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(本発明の概要の説明)
本発明の具体的な実施形態の説明の前に、本発明の概要を説明する。
本発明の具体的な実施形態の説明の前に、本発明の概要を説明する。
図1は、本発明に係るインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの配線引き出し方法の概要を説明するインクジェットヘッドの一例を左右に分解して示す断面図である。
図中、1はインク室形成部材、2はノズルプレート、3は基板である。
インク室形成部材1は、インクを吐出するインク室11を有している。ここでは、インク室形成部材1の前端面1a及び後端面1bに、それぞれインク室11の開口部11a、11bが配置されたものを例示している。一方の開口部11aはノズルプレート2に形成されたノズル21と連通し、インク室11内のインクをノズル21から吐出させる出口側の開口部である。他方の開口部11bは入口側の開口部であり、インク室11内にインクを流入させるインク流入口である。
インク室形成部材1は後端面1bに個別電極12が設けられている。従って、インク室形成部材1は、その一側である後端面1bに、インク流入口である開口部11bと個別電極12とが配置されている。インク室形成部材1は、インク室11内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が、この個別電極12に対して印加される。
基板3には、インク室11の開口部11bに対応する位置に貫通穴31(第1の貫通穴)が形成されていると共に、インク室形成部材1側の面である表面3aに、配線32の表面配線部32aが形成されている。
基板3は、その表面3a側がインク室形成部材1の後端面1b側に配置されて設けられる。これにより、インク室形成部材1のインク流入口である開口部11bは、基板3の貫通穴31と連通し、インク室11内にインクを供給するためのインク流路を形成すると共に、配線32の表面配線部32aは個別電極12と電気的に接続している。
この配線32は、基板3の表面3aから、該基板3を貫通して、インク室形成部材1と反対側の面である背面3bに引き出されるが、本発明において配線32は、インク流路を構成する貫通穴31を利用して、この貫通穴31内を通って基板3の背面3bまで引き出されている。符号32bは、貫通穴31を通って背面3bに引き出された配線32の背面配線部である。
本発明は、以上のように、インク室形成部材1の端面1bに配置されている個別電極12と電気的に接続される配線32を、インク室11にインク供給するために基板3に形成される貫通穴31内を通って基板3の背面3bに引き出すため、この配線32を背面3bまで引き出すための貫通穴を基板3に別途新たに形成する必要がない。従って、基板3に対する貫通穴の加工数を減らすことができ、貫通穴数の増加による基板3の強度低下を招くおそれなく、個別電極12をインク室形成部材1の外部に電気的に引き出すことができる。
配線32を貫通穴31内に通過させるには、インクが流通可能であれば、例えば表面配線部32aと背面配線部32bとを、貫通穴31を通って金属線等で電気的に接続してもよい。しかし、図示するように、配線32を、例えば蒸着法、スパッタリング法又はめっき法等によって形成することにより、第1の貫通穴31の内周面31a及び第2の貫通穴32の内周面32aに沿って密着形成し、該内周面31aを通過させて基板3の背面3bまで引き出すことが好ましい。特に、蒸着法と電解めっき法との併用、又は、スパッタリング法と電解めっき法との併用が、貫通穴31の全長に亘って均一厚みの金属膜を形成することができるために特に好ましい。
図1中の符号32cは、貫通穴31の内周面31aに沿って形成され、表面配線部32aと背面配線部32bとを繋ぐ貫通穴配線部である。
これにより、貫通穴31はほぼそのままの形状でインク流路として機能することができるので、インク流路としてのインクの流れを阻害することがない。しかも、貫通穴31の内周面31aに沿う貫通穴配線部32cは、基板3の表面3a及び背面3bに形成される表面配線部32a及び背面配線部32bと同一材料で、なお且つ、ほぼ同等の厚みで形成することができるため、貫通穴配線部32cの部位で電気抵抗の増加を招くおそれもない。
基板3に使用される材料は、配線32の絶縁が可能であれば特に制限はないが、ガラス、シリコン、セラミックス、プラスチック等が挙げられる。中でも熱による寸法変化が少なく、比較的安価で、加工も容易である点でガラス製基板を用いることが好ましい。
基板3は単層基板とするものに限らず、複数の層が積層されることによって形成されるものであってもよい。複数の各層は全て同材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
基板3は、インク流路の形成と個別電極12との電気的接続がなされるようにインク室形成部材1の一側に設けられればよく、両者間が接着剤のみを介して接合されるものに限らない。例えば、開口部11bと貫通穴31との間をつなぎ、個別電極12と配線32との間を電気的に接続する別途の中間部材がそれぞれ介在されていてもよい。
インク流路を形成する貫通穴31は、インク室11のインク流入口となる開口部11bの開口面積と同一の開口面積を有するものであってもよいし、異なる開口面積を有するものであってもよい。異なる開口面積を有する場合、貫通穴31は開口部11bよりも大きくてもよいし、開口部11bよりも小さいものであってもよい。開口部11bより小さい貫通穴31はインク流路を絞る絞り穴として機能させることができる。また、インクの流通が可能であれば、貫通穴31の中心と開口部11bの中心とは、ずれて配置されていてもよい。
貫通穴31の開口形状は特に問わず、四角形状、円形状等の任意の形状とすることができる。また、断面形状は、図示したようにインクの流れ方向に沿ってストレート状に形成されるものに限らず、インク流路の入口側(図1における右側)が拡径したテーパー形状であってもよい。
配線32は、個別電極12に不図示の駆動信号発生回路からの所定電圧の駆動信号を印加するため、不図示の外部配線部材と電気的に接続される。この外部配線部材との接続のため、配線32の他端側は、基板3の端部まで引き出されていることが好ましい。ここでは、インク室形成部材1の後端面1bよりも大きな面積を持つ基板3を使用しているため、基板3の少なくとも一端部は、インク室形成部材1の側方(図示下方)に張り出した張り出し部33を有し、この張り出し部33の表面3a側又は背面3b側によって外部配線部材との接続領域を形成している。
図1では、配線32の他端側は、張り出し部33の背面3b側まで延出し、この張り出し部33上に配置されている。このようにインク室形成部材1よりも側方に張り出した張り出し部33によって外部配線部材との接続領域を形成することにより、接続領域を大きく確保できるため、外部配線部材の接続作業を容易に行うことができる。
基板3の背面3bに引き出した配線32は、以下に示すように、基板3の表面3aに再度引き戻すこともできる。これより、配線ルートの自由度をより向上させることができる。
図2は、配線32を表面3aに再度引き戻した態様の基板3を示している。図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は図1の説明を援用し、記載を省略する。
図2(a)は、基板3の張り出し部33に、インク流路を構成する貫通穴31とは別の貫通穴34(第2の貫通穴)を形成した態様を示している。基板3の背面3bに引き出された配線32は、もう一つの貫通穴34の内周面34aに沿って通過して、背面3bから表面3aに再度引き戻され、該表面3aに第2の表面配線部32dを形成している。この第2の表面配線部32cは、張り出し部33の表面3a側に配置されている。
この態様では、インク流路を構成する貫通穴31とは別に貫通穴34を設ける必要があるが、上述したように、配線32を基板3の表面3aから背面3bに引き出すための別途の貫通穴を必要としない分、基板3への貫通穴の加工数を減らすことができ、それだけ基板3の強度低下は抑えられる。
配線32を背面3bから表面3aに引き戻すために基板3を貫通させる際、従来のように、貫通穴の内部に導電材料を形成した貫通電極を使用することもできる。また、背面配線部32bと第2の表面配線部32dを、貫通穴34を通って金属線等で電気的に接続することもできる。しかし、貫通穴31内の貫通配線部32cと同様に、貫通穴34の内周面34aに沿って通過させることによって貫通配線部32eを形成すれば、配線32を貫通させる作業が容易であると共に、貫通穴配線部32eの部位で電気抵抗の増加を招くおそれもない。
また、配線32の他端側は、張り出し部33の表面3a側に配置されるので、この基板3の表面3a側で外部配線部材との電気的接続を行うことができる。通常、外部配線部材の接続作業は、インク室形成部材1の端面1b側に基板3を設けた後に行うが、平坦面となる基板3の背面3b側を作業台上に載置させた状態で、張り出し部33aに対して上方から、すなわちインク室形成部材1側から外部配線部材を接続させることができるため、安定した状態で接続作業を行うことができる。
図2(b)は、配線32を表面3aに再度引き戻す際に、上記の貫通穴34を利用しない態様を示している。
すなわち、基板の背面3bに引き出された配線32は、貫通穴31から基板3の図示下側の端部に向かって延びている。そして、そのまま基板3の張り出し部33側の端面3cを通って表面3aに引き戻され、該表面3aにおいて第2の表面配線部32cを形成している。第2の表面配線部32cは、端面3cから上方に向かい、張り出し部33の表面3a側に配置されている。
この態様では、配線32が表面3aに再度引き戻されるように構成される基板3であっても、配線32を基板3の表面3aに再度引き戻すために貫通穴34を必要としない。このため、それだけ基板3への貫通穴の加工数を減らすことができ、基板3の強度低下を抑えることができる。
また、配線32の他端側は、張り出し部33の表面3a側に配置されるため、上述したように、外部配線部材の接続作業を安定した状態で行うことができる。
次に、本発明を適用した具体的なインクジェットヘッドの実施形態について説明する。実施形態の理解を容易にするため、図1、図2に対応する同一構成の部位には、同一の符号を付してある。
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図4は、インク室形成部材のインク室を後端面側から見た図、図5は、図3に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図6は、図5中の(vi)−(vi)線に沿う断面を左右に分解して示す図、図7は、図5中の(vii)−(vii)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。
図3は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図4は、インク室形成部材のインク室を後端面側から見た図、図5は、図3に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図6は、図5中の(vi)−(vi)線に沿う断面を左右に分解して示す図、図7は、図5中の(vii)−(vii)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。
本実施形態は、図2(a)に示す配線引き出し構造を採用したインクジェットヘッドの一例を示している。
このインクジェットヘッドH1は、基板3の背面3bに、インク室形成部材1の各インク室11に供給するインクを貯留するマニホールド部材4が接合され、また、基板3の表面3aにFPC5が接合されている。FPC5は、外部配線部材の一例である。
なお、図3は、インク室形成部材1と基板3との間で左右に展開した状態を示している。
インク室形成部材1は、圧電素子からなる複数の駆動壁13が並設されており、隣接する一対の駆動壁13、13間によって形成されるインク室11と駆動壁13とが交互に配置されている。ここでは複数のインク室11が並設されることによってインク室11の列を形成している。各列内のインク室11の数は何ら限定されない。ここでは上から順に第1の列であるA列、第2の列であるB列の2列のインク室11の列が平行に配置されたものを例示している。
図6、図7に示すように、インク室形成部材1の前端面1a及び後端面1bには、それぞれインク室11の開口部11a、11bが配置されている。一方の開口部11aはノズル21と連通するインクの出口側の開口部であり、他方の開口部11bは、インクが供給されるインク流入口である。各インク室11は、後端面1bに配置されるインク流入口である開口部11bから、前端面1aに配置される出口側の開口部11bにかけてストレート状に形成されている。
各インク室11内に臨む駆動壁13の表面には、図4に示すように、Ni、Au、Cu、Al等の金属膜からなる駆動電極14が形成されている。駆動電極14は、インク室11内に臨む各駆動壁13、13の表面全面から、これら駆動壁13、13に隣接する少なくともいずれか一つの壁面(ここでは図4中の下側の壁面)に亘って繋がるように形成されている。
このインク室形成部材1は、六面体からなる所謂ハーモニカ型のインク室形成部材であり、駆動壁13の両面の各駆動電極14に、不図示の駆動信号発生回路(駆動IC)から所定電圧の駆動信号が印加されることによって駆動壁13が変形動作する。この駆動壁13の変形動作によってインク室11の容積が変化し、これによりインク室11内に供給されたインクに吐出のための圧力変化を与え、ノズル21からインクを吐出する。
ここで、このインク室形成部材1において、ノズル21が配置されてインクが吐出される側の端面を「前端面」、それとは相反する端面を「後端面」と定義する。また、インク室形成部材1の前端面1a及び後端面1bと平行な方向であって該インク室形成部材1から離れる方向をインク室形成部材1の「側方」と定義する。
本実施形態に示すインク室形成部材1における各列のインク室11は、全てインクが供給されることによってインクを吐出する吐出インク室とされている。
インク室形成部材1の一側である後端面1bには、A列の各インク室11内の駆動電極14と電気的に接続された個別電極12と、B列の各インク室11内の駆動電極14と電気的に接続された個別電極12が、各インク室11の開口部11bを通ってインク室11毎に個別に引き出されている。このインク室形成部材1は、インク室11内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が、まず、この個別電極12に対して印加され、該個別電極12を介して各駆動電極14に伝達される。
各個別電極12の他端は、各開口部11bからいずれも同一方向に向けて延びている。ここではインク室11の列方向と直交する方向である図示下方向に向けて延びているが、A列のインク室11の各個別電極12は、B列と交差することはなく、B列の手前で止まっている。
基板3は、インク室形成部材1の後端面1bよりも大きな面積を持ち、インク室形成部材1の後端面1bに接着剤によって接合されている。基板3はインク室形成部材1よりも図示下側方に大きく張り出した張り出し部33によってFPC5との接続領域を形成している。
基板3には、インク室形成部材1の後端面1bの各インク室11の開口部11bにそれぞれ対応する位置に、後述するマニホールド部材4の共通インク室41内のインクを、A列の各インク室11に開口部11bを介して供給するためのインク流路を形成する貫通穴32(第1の貫通穴)と、B列の各インク室11にインクを供給するためのインク流路を形成する貫通穴35とが、インク室11毎に個別に形成されている。
基板3の表面3aには、インク室形成部材1のB列の各個別電極12と電気的に接続されるB列用配線36が個別に形成されている。各B列用配線36の一端は、貫通穴35の近傍に配置され、他端は基板3の図示下側の端部まで延び、FPC5との接続領域となる張り出し部33の表面3a側にB列のインク室11のピッチと同一ピッチで配列されている。
また、同じく表面3aには、インク室形成部材1のA列の各個別電極12と電気的に接続されるA列用配線32が個別に形成されている。このA列用配線32が、本発明においてインク室形成部材と反対側の面に引き出される「配線」に相当する。
各A列用配線32は、それぞれ個別電極12と電気的に接続すべく、基板3の表面3aに設けられた第1の表面配線部32aが貫通穴31の近傍に配置されている。A列用配線32は、基板3がインク室形成部材1の後端面1bに接合される際、この第1の表面配線部32aによって個別電極12との電気的接続が行われる。これにより、個別電極12とA列用配線32との電気的接続を、互いに対向するインク室形成部材1の後端面1bと基板3の表面3aとの間で行うことができるため、電気的接続作業が容易である。
各A列用配線32は、貫通穴31の内周面31aに沿って通過して背面3bに引き出され、背面配線部32bを形成している。背面配線部32bは、貫通穴31から更に基板3の張り出し部33に向けて延び、B列のインク室11に対応して配列されている貫通穴35、35間を通ることにより、該背面3b上でB列を跨いでいる。
このようにA列用配線32は、インク室形成部材1の後端面1bと接する基板3の表面3aでB列のインク室11や駆動壁13と交差することがないので、B列の各インク室11の開口部11bから露出する駆動電極14や各個別電極12との短絡のおそれがない。これにより、インク室形成部材1のインク室11の数や列数の増加によって高密度化されたインク室形成部材1であっても、各個別電極12を介して各駆動電極14を、基板3の端部まで短絡の心配なく電気的に引き出すことができる。
第2の貫通穴である貫通穴34は、インク室形成部材1の接合領域30よりも下側に位置する張り出し部33に、貫通穴31と同数、同ピッチで個別に形成されている。各A列用配線32の背面配線部32bは、貫通穴31からそれぞれ対応する貫通穴34まで延び、該貫通穴34の内周面34aに沿って通過して、再び基板3の表面3aに引き戻され、第2の表面配線部32cを形成している。
第2の表面配線部32cは、貫通穴34から貫通穴31に向かう方向とは反対方向となる基板3の図示下側の端部まで延びており、FPC5との接続領域である張り出し部33の表面3a側に、A列のインク室11のピッチと同一ピッチで配列されている。従って、張り出し部33には、A列用配線32の第2の表面配線部32cとB列用配線36とが交互に配列されている。このため、この張り出し部33の表面3a側において、A列用配線32とB列用配線36に対する1枚のFPC5の接続作業を、安定した状態で容易に行うことができる。
マニホールド部材4は、第1の貫通穴31及び貫通穴35を介して各インク室11にインクを供給するインク供給手段の一例であり、一面がインク室形成部材1に形成された全てのインク室11を取り囲む大きさで開口した箱型に形成され、基板3の背面3bに接着剤によって接合されている。マニホールド部材4の内部は、A列、B列の各インク室11に共通に供給するインクが貯留される共通インク室41となっており、この共通インク室41内のインクが、基板3の各貫通穴31、35及びインク流入口である各開口部11bを通って各インク室11内に供給されるようになっている。
ここでは、マニホールド部材4は、基板3の各貫通穴31、35の全てを取り囲んでいるが、貫通穴34を取り囲まない程度の大きさに形成されている。このため、基板3の貫通穴34は、該基板3に接合されたマニホールド部材4の外部に配置され、共通インク室41内のインクが貫通穴34から漏れ出すことはない。
FPC5は、基板3の張り出し部33に異方性導電フィルム等によって接続され、不図示の駆動信号発生回路からの所定電圧の駆動信号を、張り出し部33に配列されたA列用配線32及びB列用配線36にそれぞれ印加する。A列用配線32及びB列用配線36にそれぞれ印加された駆動信号は、該A列用配線32及びB列用配線36を通り、インク室形成部材1の各個別電極12を介して各インク室11内の駆動電極14に印加され、駆動壁13を変形させる。FPC5には駆動ICが実装されていてもよい。
このインクジェットヘッドH1によれば、インク流路を構成する基板3の貫通穴31を利用してA列用配線32を背面3bに引き出しているため、上述したように、基板3に対する貫通穴の加工数を減らすことができ、貫通穴数の増加による基板3の強度低下を抑えることができる。
なお、基板3の背面3bに引き出されたA列用配線33は、マニホールド部材4の共通インク室41内に配置されるため、直にインクと接触する。このため、インク室形成部材1に基板3を接合した後でマニホールド部材4を接合する前に、A列用配線32をインクに対して保護するための保護膜を形成しておくことが好ましい。
保護膜としては、パラキシリレン及びその誘導体からなる被膜(パリレン膜という。)が好ましい。パリレン膜は、ポリパラキシリレン樹脂及び/又はその誘導体樹脂からなる樹脂被膜であり、固体のジパラキシリレンダイマー又はその誘導体を蒸着源とする気相合成法(Chemical Vaper Deposition:CVD法)により形成する。すなわち、ジパラキシリレンダイマーが気化、熱分解して発生したパラキシリレンラジカルが、インク室形成部材1の表面に吸着して重合反応し、被膜を形成する。
パリレン膜には、種々のパリレン膜があり、必要な性能等に応じて、各種のパリレン膜やそれら種々のパリレン膜を複数積層したような多層構成のパリレン膜等を所望のパリレン膜として適用することもできる。
パリレン膜は、インク室形成部材1と基板3とを接合した後であって、ノズルプレート2及びマニホールド部材4を接合する前に、これらインク室形成部材1と基板3に対して被覆形成することで、各インク室11内の駆動電極14はもちろんのこと、基板3上の各配線をパリレン膜によってインクから保護することができる。
このようなパリレン膜の膜厚は、1μm〜10μmとすることが好ましい。
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図9は、図8に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図10は、図9中の(x)−(x)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。図3〜図7に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
図8は、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図9は、図8に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図10は、図9中の(x)−(x)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。図3〜図7に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
このインクジェットヘッドH2は、A列用配線32が、インク流路を構成する貫通穴31内を通って基板3の表面3aから背面3bに引き出され、貫通穴34内を通って再度表面3aに引き戻される点で、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一であるが、貫通穴34の位置が、基板3の図示下側の端部近傍に位置している点で相違している。このため、貫通穴34内を通って基板3の表面3aに再度引き戻されたA列用配線32の第2の表面配線部32cは、貫通穴34から上方に向かい、インク室形成部材1との接合領域30の手前まで延び、FPC5の接続領域となる張り出し部33の表面3a側に、B列用配線36と交互に配列されている。
これにより、図9に示すように、マニホールド部材4を貫通穴34の近傍まで大型化することができ、それだけ第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1に比べて共通インク室41の容積を大きくすることができる。
その他、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同様の効果が得られる。
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図12は、図11に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図13は、図12中の(xiii)−(xiii)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。図3〜図7に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
図11は、第3の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図12は、図11に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図13は、図12中の(xiii)−(xiii)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。図3〜図7に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
このインクジェットヘッドH3は、基板3に第2の貫通穴である貫通穴34を形成せず、A列用配線32を、図2(b)の態様と同様に、基板3の端面3cを通って表面3aに引き戻すようにしている。
A列用配線32を表面3aに再度引き戻すために第2の貫通穴を必要としない分、基板3の強度低下を抑えることができる。しかも、第2の貫通穴がないことによってインクの漏洩の心配がないため、マニホールド部材4を基板3と同等の大きさとすることができ、共通インク室41の容積を最も大きくすることができる。また、マニホールド部材4の大きさをインクジェットヘッドH1、H2と同一とすれば、第2の貫通穴がない分、基板3の大きさをコンパクトにすることができる。
その他、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同様の効果が得られる。
(第4の実施形態)
図14は、第4の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図15は、図14に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図である。図3〜図7に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
図14は、第4の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図15は、図14に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図である。図3〜図7に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
このインクジェットヘッドH4は、A列、B列の各インク室11が、インクが供給されることによってインク吐出を行う吐出インク室111と、インクが供給されず、インク吐出を行わない非吐出インク室112とが交互に並設されることによって構成されている。基板3には、AB各列の吐出インク室111に対応する位置のみに貫通穴31、35がそれぞれ個別に貫通形成されており、非吐出インク室112は基板3によって塞がれている。
各吐出インク室111の個別電極12は、吐出インク室111内の駆動電極と電気的に接続されるが、各非吐出インク室112の個別電極12は、AB各列毎に設けられた共通電極15とそれぞれ電気的に接続されている。図示上側のA列用の共通電極15は、インク室形成部材1の後端面1bにおいて、A列を挟んでB列と反対側に配置され、列方向に沿って延びている。また、図示下側のB列用の共通電極15は、インク室形成部材1の後端面1bにおいて、A列とB列の間に列方向に沿って延びている。
一方、基板3の表面3aには、インク室形成部材1の後端面1bに接合された際に、各共通電極15、15とそれぞれ電気的に接続される共通電極用配線37、37が形成されている。各共通電極用配線37、37の一端側は、インク室形成部材1の後端面1bの共通電極15、15と電気的に接続するべく、インク室形成部材1との接合領域30内に配置され、他端側は接合領域30外にそれぞれ延出し、基板3の図示下側の端部に向かい、A列用配線32及びB列用配線36と同様に張り出し部33の表面3a側に配列されている。
このインクジェットヘッドH4では、A列用配線32が、基板3の背面3bにおいて、B列のインク室111、112と該B列の共通電極15を跨いでいるため、インク室形成部材1の後端面1bと接する基板3の表面3aでこれらと交差することがなく、B列の各インク室111、112内の駆動電極14、各個別電極12及び共通電極15との短絡のおそれがない。
また、非吐出インク室112は共通電極15と電気的に接続され、基板3には個別に配線する必要がないため、配線の高密度化が可能である。
更に、基板3は、各吐出インク室111に対応する位置のみに貫通穴31、35が形成されているので、基板3の強度低下もより抑えられる。
なお、このインクジェットヘッドH4では、A列用配線32について、インクジェットヘッドH1と全く同様の配線引き出し構造を採用したが、インクジェットヘッドH2、H3の各A列用配線32と全く同様の配線引き出し構造を採用してもよい。
その他、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同様の効果が得られる。
(第5の実施形態)
以上の説明では、インク室形成部材1として、隣接するインク室11間の駆動壁12を圧電素子によって形成し、駆動壁12の変形によってインク室11内のインクに吐出のための圧力を付与するせん断モード型のインク室形成部材1を例示したが、本発明においてインクを吐出させるための具体的な構造は特に問わない。
以上の説明では、インク室形成部材1として、隣接するインク室11間の駆動壁12を圧電素子によって形成し、駆動壁12の変形によってインク室11内のインクに吐出のための圧力を付与するせん断モード型のインク室形成部材1を例示したが、本発明においてインクを吐出させるための具体的な構造は特に問わない。
図16は、第5の実施形態に係るインクジェットヘッドの部分断面図であり、ここでは、インク室の一壁面を振動板によって構成し、この振動板を圧電素子の伸縮動作によって振動させることにより、インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するタイプのインクジェットヘッドを例示している。
インクジェットヘッドH5は、インク室形成部材6と、このインク室形成部材6の一側(図示上側)に設けられた基板7とを有している。
インク室形成部材6は積層基板によって形成され、図中下層側から、Si(シリコン)基板によって形成されたノズルプレート61、ガラス基板によって形成された中間プレート62、Si(シリコン)基板によって形成された圧力室プレート63、SiO2薄膜によって形成された振動板64と有している。ノズルプレート61はノズル611が開口している。
圧力室プレート63には、吐出のためのインクを収容するインク室631が形成されている。インク室631の上壁は振動板64によって形成され、下壁は中間プレート62によって形成されている。振動板64には、このインク室631内にインクを供給するためのインク流入口632が形成され、インク室形成部材6の上面に開口している。また、中間プレート62には、インク室631の内部とノズル611とを連通する連通路621が貫通形成されている。
圧電素子65は薄膜PZTからなり、その上面に設けられた個別電極651と下面に設けられた共通電極652とで挟まれている。共通電極652は振動板64の表面に形成されており、この共通電極652上に、インク室631に1対1に対応するように個別に圧電素子65とその上面の個別電極651とが積層されている。個別電極651上には、金等によって形成されたバンプ653が突出形成されている。
基板7は、貫通穴71を有している。貫通穴71は、インク室形成部材6と基板7との間に介在された中間部材である流路部材8によって、インク室631のインク流入口632と連通し、これによってインク流路を形成している。
インク室形成部材6と対向する基板7の下面7aには、個別電極651と電気的に接続される配線72の下面配線部72aが形成されている。下面配線部72aにはバンプ721が突出形成され、このバンプ721と個別電極651上のバンプ653とが中間部材として電気的に接続され、配線72と個別電極651とが電気的に接続されている。
そして、この配線72の他端側は、インク流路を形成している貫通穴71の内周面に沿って通過し、基板7の上面7bに引き出され、上面配線部72bを形成している。この上面配線部72bは、基板7の端部において、FPC等の不図示の外部配線部材と電気的に接続される。
このように構成されるインクジェットヘッドH5も、インク室形成部材6の一側に、インク流入口632と個別電極651とが配置されている。そして、基板7に形成される配線72が、インク流路を形成する貫通穴71内を通って、インク室形成部材6と対向する下面7aから、該下面7aと相対する上面7bに引き出される。このため、基板7に配線72を貫通させるための別途の貫通穴を形成する必要がなく、インク室631に対応する個別電極651を、基板7の強度低下を招くおそれなく、インク室形成部材6の外部に電気的に引き出すことができる。
(その他の実施形態)
以上説明したインクジェットヘッドH1〜H4のインク室形成部材1は、2列のインク室11の列を有するインク室形成部材1を例示したが、インク室形成部材1が備えるインク室11の列数はA列のみの1列であってもよい。この場合、インクジェットヘッドH1〜H4におけるA列用配線32と同様の配線引き出し構造を採用することにより、基板の強度低下のおそれなく、インク流路を利用して配線を基板の背面に容易に引き出すことができる効果が得られる。
以上説明したインクジェットヘッドH1〜H4のインク室形成部材1は、2列のインク室11の列を有するインク室形成部材1を例示したが、インク室形成部材1が備えるインク室11の列数はA列のみの1列であってもよい。この場合、インクジェットヘッドH1〜H4におけるA列用配線32と同様の配線引き出し構造を採用することにより、基板の強度低下のおそれなく、インク流路を利用して配線を基板の背面に容易に引き出すことができる効果が得られる。
また、インクジェットヘッドH1〜H4において、インク室11の列数は3列以上であってもよい。例えば、インクジェットヘッドH1〜H4のインク室形成部材1及びノズルプレート2をインク室11の列と直交する上下方向に対称に形成することにより、4列のインク室11の列を有するインクジェットヘッドを容易に構成することができる。
インクジェットヘッドH1〜H3において、A列のインク室11に対応する基板3の貫通穴31を、インク室11毎にそれぞれ個別に形成したが、この貫通穴31は、A列のインク室11の列方向に沿って延び、該A列のインク室11の全てを含む大きさの1つの長穴状の貫通穴によって形成してもよい。また、それぞれ複数のインク室11を含む大きさの複数の貫通穴に分割されていてもよい。
更に、インクジェットヘッドH1、H2及びH4は、貫通穴34を、いずれもマニホールド部材4の外側に配置するように構成したが、A列用配線32の形成後に、貫通穴34からインクが漏れ出ないように絶縁テープ等の目止め部材を別途使用して塞ぐことにより、マニホールド部材4の共通インク室41内に配置させるようにしてもよい。これにより、基板3に貫通穴34を形成しても、マニホールド部材4を大型化することができ、それだけ共通インク室41の容積を大きくすることができる。
また、インクジェットヘッドH1〜H4は、基板3の表面3aに各列の配線32、36の他端を配列させるようにしたが、貫通穴31を通って背面3bに引き出されたA列用配線32は、そのまま基板3の背面3bに配列させることにより、基板3の表面3aと背面3bに列毎に配線を振り分け、各面でそれぞれ外部配線部材と電気的接続させるようにしてもよい。これにより各列の配線同士が隣り合うことがないため、より短絡のおそれを低減でき、一層の高密度化を図ることができる。
H1〜H5:インクジェットヘッド
1:インク室形成部材
1a:前端面
1b:後端面
11:インク室
11a、11b:開口部
111:吐出インク室
112:非吐出インク室
12:個別電極
13:駆動壁
14:駆動電極
15:共通電極
2:ノズルプレート
21:ノズル
3:基板
3a:表面
3b:背面
3c:端面
30:インク室形成部材の接合領域
31:貫通穴(第1の貫通穴)
31a:内周面
32:配線(A列用配線)
32a:表面配線部(第1の表面配線部)
32b:背面配線部
32c:第1の貫通穴配線部
32d:第2の表面配線部
32e:第2の貫通穴配線部
33:張り出し部
34:貫通穴(第2の貫通穴)
34a:内周面
35:貫通穴
36:B列用配線
37:共通電極用配線
4:マニホールド部材
41:共通インク室
5:FPC(外部配線部材)
6:インク室形成部材
61:ノズルプレート
611:ノズル
62:中間プレート
621:連通路
63:圧力室プレート
631:インク室
632:インク流入口
64:振動板
65:圧電素子
651:個別電極
652:共通電極
653:バンプ
7:基板
7a:下面
7b:上面
71:貫通穴
72:配線
72a:下面配線部
72b:上面配線部
721:バンプ
8:流路部材
1:インク室形成部材
1a:前端面
1b:後端面
11:インク室
11a、11b:開口部
111:吐出インク室
112:非吐出インク室
12:個別電極
13:駆動壁
14:駆動電極
15:共通電極
2:ノズルプレート
21:ノズル
3:基板
3a:表面
3b:背面
3c:端面
30:インク室形成部材の接合領域
31:貫通穴(第1の貫通穴)
31a:内周面
32:配線(A列用配線)
32a:表面配線部(第1の表面配線部)
32b:背面配線部
32c:第1の貫通穴配線部
32d:第2の表面配線部
32e:第2の貫通穴配線部
33:張り出し部
34:貫通穴(第2の貫通穴)
34a:内周面
35:貫通穴
36:B列用配線
37:共通電極用配線
4:マニホールド部材
41:共通インク室
5:FPC(外部配線部材)
6:インク室形成部材
61:ノズルプレート
611:ノズル
62:中間プレート
621:連通路
63:圧力室プレート
631:インク室
632:インク流入口
64:振動板
65:圧電素子
651:個別電極
652:共通電極
653:バンプ
7:基板
7a:下面
7b:上面
71:貫通穴
72:配線
72a:下面配線部
72b:上面配線部
721:バンプ
8:流路部材
Claims (10)
- インクを吐出するインク室のインク流入口と、前記インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極とが一側に配置されたインク室形成部材と、
前記インク室形成部材の前記一側に設けられた基板とを備え、
前記基板は、前記インク室形成部材の前記インク流入口と連通してインク流路を形成する第1の貫通穴が設けられていると共に、前記個別電極と電気的に接続される配線が、前記第1の貫通穴を通って、前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記配線の一端側は、前記基板の前記インク室形成部材側の面に形成され、該面において、前記個別電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記配線は、前記第1の貫通穴の内周面に沿って通過していることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
- 前記基板は、前記インク室形成部材よりも側方に張り出して外部配線部材との電気的接続を行う張り出し部を有し、
前記配線の他端側は、前記張り出し部に延出していることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。 - 前記基板は、前記張り出し部に前記第1の貫通穴とは別の第2の貫通穴が設けられ、
前記配線は、前記第2の貫通穴を通って、前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面から、前記インク室形成部材側の面に引き戻されていることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッド。 - 前記配線は、前記第2の貫通穴の内周面に沿って通過していることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
- 前記配線は、前記基板の前記張り出し部側の端面を経由して、前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面から、前記インク室形成部材側の面に引き戻されていることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク室形成部材は、圧電素子からなる駆動壁と、隣接する一対の前記駆動壁間の空間によって形成されるインク室とが交互に配置されると共に、前記インク室内に臨む前記駆動壁の表面に駆動電極が形成され、該駆動電極に電圧を印加して前記駆動壁を変形させることによって、前記インク室内に供給されたインクに吐出のための圧力を付与し、ノズルからインクを吐出する構成であり、
前記個別電極は、前記インク流入口を介して前記駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッド。 - 前記インク室形成部材は、インクを吐出する吐出インク室と、インクを吐出しない非吐出インク室とが交互に並設され、
前記配線は、前記吐出インク室の前記個別電極と電気的に接続され、
前記非吐出インク室の前記個別電極は、前記インク室形成部材の一面に形成された共通電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項8記載のインクジェットヘッド。 - インクを吐出するインク室のインク流入口と、前記インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極とが一側に配置されたインク室形成部材と、
前記インク室形成部材の前記一側に設けられた基板とを備え、
前記基板には、前記インク室形成部材の前記インク流入口と連通してインク流路を形成する第1の貫通穴と、前記個別電極と電気的に接続される配線とが設けられてなるインクジェットヘッドの配線引き出し方法であって、
前記配線を、前記基板の前記第1の貫通穴を通って、前記インク室形成部材と反対側の面に引き出すことを特徴とするインクジェットヘッドの配線引き出し方法。
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