JP6111851B2 - インクジェットヘッド - Google Patents

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本発明はインクジェットヘッドに関し、詳しくは、インク室形成部材の一側に配置された個別電極を、インク室形成部材の一側に接合された基板を利用して、インク室形成部材の外部に電気的に引き出すようにしたインクジェットヘッドに関する。
インクジェットヘッドは、インク室内のインクに吐出エネルギーを付与してノズルからインク滴を吐出する。従来、吐出エネルギーを付与するための手段としては、電圧印加によって機械的に変位するPZT等の圧電素子を利用したもの、インク室内に配置されたヒーターへの通電によってインク中に気泡を生成させ、この気泡の破裂作用を利用したもの等が知られている。
中でも、圧電素子からなる駆動壁と細溝状のインク室とが交互に配置され、駆動壁に形成された駆動電極に電圧を印加することによって該駆動壁をせん断変形させ、インク室内のインクをノズルから吐出させるせん断モード型のインクジェットヘッドは、高密度化が容易である等の利点を有している。このせん断モード型のインクジェットヘッドの中でも、インク室の開口部が相反する前端面と後端面とに配置され、インク室がストレート状に形成される六面体形状からなる所謂ハーモニカ構造のインク室形成部材を有するインクジェットヘッドは、一枚のウエハーからのインク室形成部材の取り数が多く、極めて生産性に優れている。
このようなハーモニカ構造のインク室形成部材は、各インク室内に臨んでいる駆動電極に駆動信号発生回路からの駆動信号を印加するために、駆動電極をインク室形成部材の外部に電気的に引き出し、FPC等の外部配線部材との電気的接続を容易に行なえるようにする必要がある。
従来、インク室内の駆動電極をインク室形成部材の外部に電気的に引き出す手法として、特許文献1、2に記載のものが知られている。
特許文献1記載のインクジェットヘッドは、インク室形成部材の後端面に、インク室内の駆動電極と電気的に接続された第1の個別電極と、該後端面の端部に配置された第2の個別電極とを分離して設けておき、これら2つの個別電極間を絶縁層付き配線で電気的に接続すると共に、この後端面に別途の基板を接合し、この基板に形成された配線の一端を、第2の個別電極と電気的に接続させることによって、インク室内の駆動電極を基板の端部まで電気的に引き出すようにしている。
特許文献2記載のインクジェットヘッドは、インク室形成部材の後端面に、インク室内の駆動電極と電気的に接続された個別電極を配置させると共に、この後端面に別途の基板を接合し、この基板に形成された配線を利用して、インク室内の駆動電極を基板の端部まで電気的に引き出すようにしている。基板の配線は、複数のインク室によって構成されるインク室の列毎に基板の表面と背面とに振り分けられており、基板の背面側の配線は、一端が個別電極と電気的に接続され、他端が基板に形成された貫通電極を介して背面側に引き出されている。この基板はインク室形成部材の後端面のほぼ全体を覆う大きさを有しており、各インク室のうちのインク吐出を行うインク室の開口部に対応する部位に、該インク室に個別に対応するインク流路用の貫通穴が形成されている。
特開2008−143167号公報 特開2009−274327号公報
近年、インクジェットヘッドはより高精細な記録を可能とするため、より一層のインク室の高密度化が求められており、この高密度化の要求によって、従来のインクジェットヘッドにおける新たな課題が生じている。
すなわち、特許文献1記載のインクジェットヘッドでは、インク室形成部材の後端面に絶縁層付き配線を設ける必要があるため、インク室が高密度になる程、絶縁層付き配線を高密度に形成する必要があり、絶縁層付き配線の形成作業が煩雑化する。
一方、特許文献2記載のインクジェットヘッドによれば、インク室形成部材の後端面に絶縁層付き配線を形成する必要はなく、また、インク室の列毎の配線が基板の表面と背面とにそれぞれ形成されるため、インク室が高密度化しても配線同士が短絡しにくくなる利点がある。しかしながら、基板の両面にそれぞれ外部配線部材を接続する構造となるため、外部配線部材が少なくとも2枚必要であり、外部配線部材の接続作業が煩雑となる点で改善の余地がある。
この外部配線部材の接続作業が煩雑となる問題は、基板の背面側に引き出された配線を、基板を再度貫通させて表面側に引き戻し、基板の表面に全ての配線を配列させることで解決することができる。しかし、配線を基板を貫通させて表面に再度引き戻すために基板に貫通穴を形成すると、貫通穴の位置によっては、マニホールド部材から基板を介して供給されるインクが貫通穴を通って外部に漏れ出てしまうおそれがある。
この問題に対処するため、貫通穴をマニホールド部材が接合される領域よりも外側に配置すると、マニホールド部材を大型化できず、共通インク室の容積の増大化を図ることができない。また、マニホールド部材に対して基板が無駄に大型化し、インクジェットヘッドのコンパクト化を阻害する要因となる。
一方、ディスペンサー等で個々の貫通穴に接着剤を注入したり、絶縁テープ等を貼着したりして貫通穴を塞ぐことで、インクの漏れ出しを防止することも考えられるが、貫通穴を塞ぐためにわざわざ接着剤を注入したり絶縁テープ等を貼着する作業を行う必要があるため、製造工数の増加によりコスト増を招くばかりでなく、余剰の接着剤が貫通穴から周辺に溢れ出して硬化し、貫通穴の周辺でマニホールド部材等の他部材との接合を妨げる問題が発生するおそれもある。
そこで、本発明は、製造工数を増加させることなく、基板に形成した貫通穴からのインクの漏れ出しを防止することができ、マニホールド部材の大型化を図ることができるインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
また、本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
1.インクを吐出するインク室のインク流入口と、前記インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極とが一面に配置されたインク室形成部材と、
前記インク室形成部材の前記一面に接合され、第1の貫通穴と、前記インク室形成部材の接合領域の内に配置された第2の貫通穴を有する基板と、
前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面に接合され、前記基板を介して前記インク室にインクを供給するマニホールド部材とを備え、
前記個別電極と電気的に接続される第1の配線が、前記第1の貫通穴を通って前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていると共に、前記第2の貫通穴を通って前記インク室形成部材側の面に再び引き戻されており、
前記第2の貫通穴は、前記インク室形成部材と反対側の面の開口部が前記マニホールド部材の内部に臨んでいると共に、前記インク室形成部材側の面の開口部が前記インク室形成部材によって塞がれていることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.前記第1の配線の一端側は、前記基板の前記インク室形成部材側の面に形成され、該面において、前記個別電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.前記第1の配線は、前記第1の貫通穴及び前記第2の貫通穴のそれぞれの内周面に沿って通過していることを特徴とする前記1又は2記載のインクジェットヘッド。
4.前記第1の貫通穴は、前記インク室形成部材の接合領域の内に配置され、前記インク室の前記インク流入口と連通し、前記マニホールド部材からのインクを前記インク室に供給するインク流路を兼用していることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
5.前記第2の貫通穴から前記インク室形成部材側の面に引き戻された前記第1の配線の他端側は、前記第2の貫通穴から前記基板の端部に向けて延出していることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
6.前記基板は、第3の貫通穴と、前記インク室形成部材の接合領域の外に配置された第4の貫通穴とを更に有し、
前記第1の配線が電気的に接続される前記個別電極とは別の前記個別電極と電気的に接続される第2の配線が、前記第3の貫通穴を通って前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていると共に、前記第4の貫通穴を通って前記インク室形成部材側の面に再び引き戻されており、
前記第4の貫通穴は、前記マニホールド部材の端面によって塞がれていることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
7.前記第2の配線の一端側は、前記基板の前記インク室形成部材側の面に形成され、該面において、前記第1の配線が電気的に接続される前記個別電極とは別の前記個別電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記6記載のインクジェットヘッド。
8.前記第2の配線は、前記第3の貫通穴及び前記第4の貫通穴のそれぞれの内周面に沿って通過していることを特徴とする前記6又は7記載のインクジェットヘッド。
9.前記第3の貫通穴は、前記インク室形成部材の接合領域の内に配置され、前記インク室の前記インク流入口と連通し、前記マニホールド部材からのインクを前記インク室に供給するインク流路を兼用していることを特徴とする前記6、7又は8記載のインクジェットヘッド。
10.前記第4の貫通穴から前記インク室形成部材側の面に引き戻された前記第2の配線の他端側は、前記第4の貫通穴から前記インク室形成部材との接合領域に向けて延出し、前記基板の前記インク室形成部材側の面において前記第1の配線の他端側と並列していることを特徴とする前記6〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
11.前記インク室形成部材は、圧電素子からなる駆動壁と、隣接する一対の前記駆動壁間の空間によって形成されるインク室とが交互に配置されると共に、前記インク室内に臨む前記駆動壁の表面に駆動電極が形成され、該駆動電極に電圧を印加して前記駆動壁を変形させることによって、前記インク室内に供給されたインクに吐出のための圧力を付与し、ノズルからインクを吐出する構成であり、
前記個別電極は、前記インク流入口を介して前記駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする前記1〜10のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
本発明によれば、製造工数を増加させることなく、基板に形成した貫通穴からのインクの漏れ出しを防止することができ、マニホールド部材の大型化を図ることができるインクジェットヘッドを提供することができる。
本発明の概要を説明するインクジェットヘッドの一例を左右に分解して示す断面図 第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図 インク室形成部材のインク室を後端面側から見た図 図2に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図 図4中の(v)−(v)線に沿う断面を左右に分解して示す図 図4中の(vi)−(vi)線に沿う断面を左右に分解して示す図 第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図 図7に示すインクジェットヘッドを配線基板の背面側から見た図 図8中の(ix)−(ix)線に沿う断面を左右に分解して示す図 図8中の(x)−(x)線に沿う断面を左右に分解して示す図 図8中の(xi)−(xi)線に沿う断面を左右に分解して示す図
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(本発明の概要の説明)
本発明の具体的な実施形態の説明の前に、本発明の概要を説明する。
図1は、本発明の概要を説明するインクジェットヘッドの一例を左右に分解して示す断面図である。
図中、1はインク室形成部材、2はノズルプレート、3は基板、4はマニホールド部材である。
インク室形成部材1は、インクを吐出するインク室11を有している。ここでは、インク室形成部材1の前端面1a及び後端面1bに、それぞれインク室11の開口部11a、11bが配置されたものを例示している。一方の開口部11aはノズルプレート2に形成されたノズル21と連通し、インク室11内のインクをノズル21から吐出させる出口側の開口部である。他方の開口部11bは入口側の開口部であり、インク室11内にインクを流入させるインク流入口である。
インク室形成部材1は後端面1bに個別電極12が設けられている。従って、インク室形成部材1は、その一側である後端面1bに、インク流入口である開口部11bと個別電極12とが配置されている。インク室形成部材1は、インク室11内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が、この個別電極12に対して印加される。
基板3には、第1の貫通穴31と第2の貫通穴32とが形成されている。第1の貫通穴31及び第2の貫通穴32は、いずれもインク室形成部材1との接合領域30a内に配置されている。第1の貫通穴31は、インク室11の開口部11bと対応する位置に配置されている。
基板3のインク室形成部材1側の面である表面3aには、配線33(第1の配線)の第1の表面配線部33aが形成されている。基板3は、表面3aがインク室形成部材1の後端面1bに接着剤を介して接合されることにより、インク室形成部材1のインク流入口である開口部11bは、基板3の第1の貫通穴31と連通し、インク室11内にインクを供給するためのインク流路を形成すると共に、配線33の一端側である第1の表面配線部33aを個別電極12と電気的に接続させている。
配線33は、基板3の表面3aから、第1の貫通穴31内を通って、基板3の背面3bに引き出されている。背面3bに引き出された配線33は、背面3b上を第1の貫通穴31から第2の貫通穴32に向けて延出し、背面配線部33bを形成している。また、背面3bに引き出された配線33は、第2の貫通穴32内を通って、基板3の表面3aに再度引き戻され、該表面3aに第2の表面配線部33cを形成している。
配線33の他端側には、個別電極12に不図示の駆動信号発生回路からの所定電圧の駆動信号を印加するため、不図示の外部配線部材と電気的に接続される。ここでは、インク室形成部材1の後端面1bよりも大きな面積を持つ基板3を使用しているため、基板3の少なくとも一端部は、インク室形成部材1の側方(図示下方)に張り出した張り出し部34を有し、この張り出し部34の表面3a側によって外部配線部材との接続領域を形成している。配線33の第2の表面配線部33cは、この外部配線部材との接続のため、張り出し部34に配置されている。
マニホールド部材4は、基板3に面する側が開口する箱型に形成されており、第1の貫通穴31を通って各インク室11内に供給されるインクを貯留する共通インク室41を形成している。マニホールド部材4は、基板3に面する端面42が、基板3の背面3bに接着剤を介して接合される。
第2の貫通穴32は、第1の貫通穴31と同様、インク室形成部材1との接合領域30a内に配置されているが、端面42が基板3の背面3bと接することによって形成されるマニホールド部材4との接合領域30bよりも内側に配置されている。
このため、基板3の表面3aにインク室形成部材1が接着剤を介して接合され、背面3bにマニホールド部材4が接着剤を介して接合されると、第2の貫通穴32は、背面3b側の開口部が、マニホールド部材4の内部の共通インク室41に臨むように配置されるが、表面3a側の開口部は、インク室形成部材1の後端面1bのインク室11及び個別電極12が配置されていない領域によって塞がれる。
本発明は、以上のように、マニホールド部材4の内部に臨むように配置される第2の貫通穴32を、インク形成部材1によって塞ぐようにしているため、第2の貫通穴32を塞ぐための別途の作業の必要がなくインクの漏れ出しを防止することができる。このため製造工数を増加させることはない。また、マニホールド部材4を第2の貫通穴32を内部に含むように大きくすることができるため、マニホールド部材4の大型化による共通インク室41の容積の増大化を図ることができる。
また、配線33を基板3の背面3bに引き出すための第1の貫通穴31は、インク室形成部材1との接合領域30a外に配置されてもよい。しかし、図示したように、インク室形成部材1の接合領域30a内に配置され、インク室11の開口部11bと連通するインク流路を兼用していることが好ましい。これにより、インク流路専用の貫通穴を別途形成する必要がなく、それだけ貫通穴の形成スペースが不要となって、インク室形成部材1や基板3の大型化を抑制できると共に、基板3に対する貫通穴の加工数の削減により、貫通穴数の増加による基板3の強度低下を抑えることができる。
配線33は、例えば蒸着法、スパッタリング法又はめっき法等によって形成することにより、第1の貫通穴31の内周面31a及び第2の貫通穴32の内周面32aに沿って密着形成し、該内周面31a、32aに沿って通過させることが好ましい。特に、蒸着法と電解めっき法との併用、又は、スパッタリング法と電解めっき法との併用が、各貫通穴31、32の全長に亘って均一厚みの金属膜を形成することができるために特に好ましい。
図1中の符号33dは、第1の貫通穴31の内周面31aに沿って形成され、第1の表面配線部33aと背面配線部33bとを繋ぐ第1の貫通穴配線部、符号33eは、第2の貫通穴32の内周面32aに沿って形成され、背面配線部33bと第2の表面配線部33cとを繋ぐ第2の貫通穴配線部である。
これにより、基板3を容易に貫通させて配線33を形成することができる。しかも、第1の貫通穴配線部33c、第2の貫通配線部33eは、それぞれ基板3の表面3a及び背面3bに形成される第1の表面配線部32a、背面配線部32b及び第2の表面配線部33cと同一材料で、なお且つ、ほぼ同等の厚みで形成することができるため、第1の貫通穴配線部33c及び第2の貫通配線部33eの部位で電気抵抗の増加を招くおそれもない。また、第1の貫通穴31がインク流路を形成する場合は、ほぼそのままの形状でインク流路として機能することができるので、インク流路としてのインクの流れを阻害することがない。
基板3に使用される材料は、配線の絶縁が可能であれば特に制限はないが、ガラス、シリコン、セラミックス、プラスチック等が挙げられる。中でも熱による寸法変化が少なく、比較的安価で、加工も容易である点でガラス製基板を用いることが好ましい。
基板3は単層基板とするものに限らず、複数の層が積層されることによって形成されるものであってもよい。複数の各層は全て同材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
インク流路を形成する場合の第1の貫通穴31は、インク室11のインク流入口となる開口部11bの開口面積と同一の開口面積を有するものであってもよいし、異なる開口面積を有するものであってもよい。異なる開口面積を有する場合、第1の貫通穴31は開口部11bよりも大きくてもよいし、開口部11bよりも小さいものであってもよい。開口部11bより小さい第1の貫通穴31はインク流路を絞る絞り穴として機能させることができる。また、インクの流通が可能であれば、第1の貫通穴31の中心と開口部11bの中心とは、ずれて配置されていてもよい。
インク流路を形成する場合の第1の貫通穴31の開口形状は特に問わず、四角形状、円形状等の任意の形状とすることができる。また、断面形状は、図示したようにインクの流れ方向に沿ってストレート状に形成されるものに限らず、インク流路の入口側(図1における右側)が拡径したテーパー形状であってもよい。
また、インク流路を形成しない場合の第1の貫通穴31及び第2の貫通穴32の開口面積、開口形状等は任意である。
次に、本発明を適用した具体的なインクジェットヘッドの実施形態について説明する。なお、実施形態の理解を容易にするため、図1に対応する構成の部位には、同一の符号を付してある。
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図3は、インク室形成部材のインク室を後端面側から見た図、図4は、図2に示すインクジェットヘッドを基板の背面側から見た図、図5は、図4中の(v)−(v)線に沿う断面を左右に分解して示す図、図6は、図4中の(vi)−(vi)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。
図中、H1はインクジェットヘッド、1はヘッドチップ、2はヘッドチップ1の前端面1aに接合されるノズルプレート、3はヘッドチップ1の後端面1bに接合される基板、4は基板3の背面側に接合され、基板3を介してヘッドチップ1に対して供給するインクを貯留するマニホールド部材、5は基板3に接続されるFPCである。FPC5は、外部配線部材の一例である。
なお、図1は、ヘッドチップ1と配線基板3との間で左右に展開した状態を示している。
インク室形成部材1は、圧電素子からなる複数の駆動壁13が並設されており、隣接する一対の駆動壁13、13間によって形成されるインク室11と駆動壁13とが交互に配置されている。ここでは複数のインク室11が並設されることによってインク室11の列を形成している。各列内のインク室11の数は何ら限定されない。ここでは上から順に第1の列であるA列、第2の列であるB列の2列のインク室11の列が平行に配置されたものを例示している。
図5、図6に示すように、インク室形成部材1の前端面1a及び後端面1bには、それぞれインク室11の開口部11a、11bが配置されている。一方の開口部11aはノズル21と連通するインクの出口側の開口部であり、他方の開口部11bは、インクが供給されるインク流入口である。各インク室11は、後端面1bに配置されるインク流入口である開口部11bから、前端面1aに配置される出口側の開口部11aにかけてストレート状に形成されている。
各インク室11内に臨む駆動壁13の表面には、図3に示すように、Ni、Au、Cu、Al等の金属膜からなる駆動電極14が形成されている。駆動電極14は、インク室11内に臨む各駆動壁13、13の表面全面から、これら駆動壁13、13に隣接する少なくともいずれか一つの壁面(ここでは図3中の下側の壁面)に亘って繋がるように形成されている。
このインク室形成部材1は、六面体からなる所謂ハーモニカ型のインク室形成部材であり、駆動壁13の両面の各駆動電極14に、不図示の駆動信号発生回路(駆動IC)から所定電圧の駆動信号が印加されることによって駆動壁13が変形動作する。この駆動壁13の変形動作によってインク室11の容積が変化し、これによりインク室11内に供給されたインクに吐出のための圧力変化を与え、ノズル21からインクを吐出する。
ここで、このインク室形成部材1において、ノズル21が配置されてインクが吐出される側の端面を「前端面」、それとは相反する端面を「後端面」と定義する。また、インク室形成部材1の前端面1a及び後端面1bと平行な方向であって該インク室形成部材1から離れる方向をインク室形成部材1の「側方」と定義する。
本実施形態に示すインク室形成部材1における各列のインク室11は、全てインクが供給されることによってインクを吐出する吐出インク室とされている。
インク室形成部材1の後端面1bには、A列の各インク室11内の駆動電極14と電気的に接続された個別電極12Aと、B列の各インク室11内の駆動電極14と電気的に接続された個別電極12Bが、各インク室11の開口部11bを通ってインク室11毎に個別に引き出されている。このインク室形成部材1は、インク室11内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が、まず、この個別電極12A、12Bに対して印加され、該個別電極12A、12Bを介して各駆動電極14に伝達される。
各個別電極12A、12Bの他端は、各開口部11bからいずれも同一方向に向けて延びている。ここではインク室11の列方向と直交する方向である図示下方向に向けて延びているが、A列のインク室11の各個別電極12Aは、B列と交差することはなく、B列の手前で止まっている。
基板3は、インク室形成部材1の後端面1bよりも大きな面積を持ち、インク室形成部材1の後端面1bに接着剤によって接合されている。基板3はインク室形成部材1よりも図示下側方に大きく張り出した張り出し部34によってFPC5との接続領域を形成している。
基板3には、インク室形成部材1の後端面1bの各インク室11の開口部11bにそれぞれ対応する位置に、後述するマニホールド部材4の共通インク室41内のインクを、A列の各インク室11に開口部11bを介して供給するためのインク流路を兼用する第1の貫通穴31と、B列の各インク室11に開口部11bを介してインクを供給するためのインク流路を形成する貫通穴35とが、インク室11毎に個別に形成されている。また、第2の貫通穴32は、インク室形成部材1との接合領域30a内で、且つ、後端面1b上のB列の各インク室11の列を挟んでA列とは反対側に、第1の貫通穴31と1対1に対応し、インク室形成部材1のインク室11の列方向と同一方向に向けて一直線上に配列されている。
基板3の表面3aには、インク室形成部材1のB列の各個別電極12Bと電気的に接続されるB列用配線36(第2の配線)が個別に形成されている。各B列用配線36の一端は、貫通穴35の近傍に配置され、その他端側は基板3の図示下側の端部まで延び、FPC5との接続領域となる張り出し部34の表面3a側にB列のインク室11のピッチと同一ピッチで配列されている。
また、同じく表面3aには、インク室形成部材1のA列の各個別電極12Aと電気的に接続されるA列用配線33(第1の配線)が個別に形成されている。
各A列用配線33は、それぞれ個別電極12Aと電気的に接続するべく、基板3の表面3aに設けられた第1の表面配線部33aが第1の貫通穴31の近傍に配置されている。A列用配線33は、基板3がインク室形成部材1の後端面1bに接合される際、この第1の表面配線部33aによって個別電極12Aとの電気的接続が行われる。これにより、個別電極12AとA列用配線33との電気的接続を、互いに対向するインク室形成部材1の後端面1bと基板3の表面3aとの間で行うことができるため、電気的接続作業が容易である。
各A列用配線33は、第1の貫通穴31の内周面31aに沿って通過して背面3bに引き出され、背面配線部33bを形成している。背面配線部33bは、第1の貫通穴31から第2の貫通穴32に向けて延び、B列のインク室11に対応して配列されている貫通穴35、35間を通ることにより、該背面3b上でB列を跨いでいる。
このようにA列用配線33は、インク室形成部材1の後端面1bと接する基板3の表面3aでB列のインク室11や駆動壁13と交差することがないので、B列の各インク室11の開口部11bから露出する駆動電極14や各個別電極12Bとの短絡のおそれがない。これにより、インク室形成部材1のインク室11の数や列数の増加によって高密度化されたインク室形成部材1であっても、各個別電極12A、12Bを介して各駆動電極14を、基板3の端部まで短絡の心配なく電気的に引き出すことができる。
各A列用配線33の背面配線部33bは、第1の貫通穴31からそれぞれ対応する第2の貫通穴32まで延び、該第2の貫通穴32の内周面32aに沿って通過して、再び基板3の表面3aに引き戻され、第2の表面配線部33cを形成している。
第2の表面配線部33cは、第2の貫通穴32から基板3の図示下側の端部まで延びており、FPC5との接続領域である張り出し部34の表面3a側に、A列のインク室11のピッチと同一ピッチで配列されている。従って、張り出し部34の表面3a側には、A列用配線33の第2の表面配線部33cとB列用配線36とが交互に配列されている。このため、この張り出し部34の表面3a側において、A列用配線33とB列用配線36に対する1枚のFPC5の接続作業を、安定した状態で容易に行うことができる。
マニホールド部材4は、第1の貫通穴31及び貫通穴35を介して各インク室11にインクを供給するインク供給手段の一例であり、基板3に対向する面がインク室形成部材1に形成された全てのインク室11を取り囲む大きさで開口した箱型に形成され、該開口を取り囲む端面42によって基板3の背面3bに接着剤を介して接合されている。図4中に符号30bを付して斜線で示す領域は、マニホールド部材4が端面42によって接合される接合領域を示している。
マニホールド部材4の内部は、A列、B列の各インク室11に共通に供給するインクが貯留される共通インク室41となっており、この共通インク室41内のインクが、インク流路を形成する第1の貫通穴31及び貫通穴35を通って各インク室11内に供給されるようになっている。第2の貫通穴32の全ては、マニホールド部材4との接合領域30bよりも内側に配置され、共通インク室41に臨んでいる。
FPC5は、基板3の表面3aの張り出し部34に異方性導電フィルム等によって接続され、不図示の駆動回路からの所定電圧の駆動信号を、該張り出し部34に配列されたA列用配線33及びB列用配線36にそれぞれ印加する。A列用配線33及びB列用配線36にそれぞれ印加された駆動信号は、該A列用配線33及びB列用配線36を通り、インク室形成部材1の各個別電極12A、12Bを介して各インク室11内の駆動電極14に印加され、駆動壁13を変形させる。FPC5には駆動ICが実装されていてもよい。
以上のように構成されたインクジェットヘッドH1は、基板3の表面3aにインク室形成部材1が接合されることによって、第2の貫通穴32が、該インク室形成部材1によって塞がれ、接着剤によって封止される。このため、この第2の貫通穴31からインクが漏れ出すおそれはない。この第2の貫通穴32を塞ぐためにディスペンサーで接着剤を注入したり、絶縁テープ等を貼着して塞ぐといった別途の作業を追加する必要は全くないため、製造工数を増加させることなく、インクの漏れ出しを防止することができる。しかも、第2の貫通穴32をマニホールド部材4の外部に配置させる必要がないため、それだけマニホールド部材4を大型化でき、共通インク室41の容積を大きくできる。
第2の貫通穴32が複数配列されると、その配列方向に沿って基板3が折れ易くなる懸念があるが、この第2貫通穴32の配列部位にはインク室形成部材1が接合されるため、第2の貫通穴32の配列部位を補強することができ、破損のおそれはない。
第2の貫通穴32は、インク室形成部材1と基板3との間の余剰の接着剤を流入させる所謂グルーガードとしても機能することができる。このため、余剰の接着剤が第2の貫通穴32の周辺に残留したり、余剰の接着剤がチャネル11に流入してチャネル11を塞いだりするおそれを低減できる。
本実施形態では、A列用配線33の他端側は、基板3の表面3aの張り出し部34において、第2の貫通穴32から基板3の端部に向けて延出し、B列用配線36と配列されるため、第2の貫通穴32よりも端部側の直線状に延びる配線部分でFPC5との電気的接続を行うことができる。一般に配線が貫通穴の内周面に沿って通過するように形成されると、その周囲には、配線形成時の金属膜がはみ出すように形成されるため、FPC5が温度や湿度の影響によって伸縮すると、貫通穴の周囲で短絡を起こすおそれがある。しかし、第2の貫通穴32よりも端部側の直線状に配列された配線部分でFPC5と接続できることにより、A列用配線33を第2の貫通穴32の内周面32aに沿って形成しても、FPC5に伸縮が生じた際に第2の貫通穴32の周囲で短絡を起こすおそれを低減することができる。
なお、基板3の背面3bに引き出されたA列用配線33は、マニホールド部材4の共通インク室41に臨んでいるため、直にインクと接触する。このため、インク室形成部材1に基板3を接合した後でマニホールド部材4を接合する前に、A列用配線33をインクに対して保護するための保護膜を形成しておくことが好ましい。
保護膜としては、パラキシリレン及びその誘導体からなる被膜(パリレン膜という。)が好ましい。パリレン膜は、ポリパラキシリレン樹脂及び/又はその誘導体樹脂からなる樹脂被膜であり、固体のジパラキシリレンダイマー又はその誘導体を蒸着源とする気相合成法(Chemical Vaper Deposition:CVD法)により形成する。すなわち、ジパラキシリレンダイマーが気化、熱分解して発生したパラキシリレンラジカルが、インク室形成部材1の表面に吸着して重合反応し、被膜を形成する。
パリレン膜には、種々のパリレン膜があり、必要な性能等に応じて、各種のパリレン膜やそれら種々のパリレン膜を複数積層したような多層構成のパリレン膜等を所望のパリレン膜として適用することもできる。
パリレン膜は、インク室形成部材1と基板3とを接合した後であって、ノズルプレート2及びマニホールド部材4を接合する前に、これらインク室形成部材1と基板3に対して被覆形成することで、各インク室11内の駆動電極14はもちろんのこと、基板3上の各配線をパリレン膜によってインクから保護することができる。
このようなパリレン膜の膜厚は、1μm〜10μmとすることが好ましい。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図、図8は、図7に示すインクジェットヘッドを配線基板の背面側から見た図、図9は、図8中の(ix)−(ix)線に沿う断面を左右に分解して示す図、図10は、図8中の(x)−(x)線に沿う断面を左右に分解して示す図、図11は、図8中の(xi)−(xi)線に沿う断面を左右に分解して示す図である。図2〜図6に示した第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、ここでは相違する構成のみを説明し、その他の説明は第1の実施形態の説明を援用し、記載を省略する。
このインクジェットヘッドH2は、インク室形成部材1にA列、B列のインク室11の列を有し、基板3に、これら各列に対応するA列用配線33、B列用配線36を有する点で、第1の実施形態に係るインクジェットヘッドH1と同一であるが、インク室形成部材1が、A列とB列との間に、更にC列のインク室11の列を有する3列構造である点で相違している。
C列の各インク室11にも、A列、B列の各インク室11と同様に、後端面1bに配置された開口部11bから駆動電極14と電気的に接続された個別電極12Cが引き出されており、個別電極12A、12Bと同様に図示下方に向けて延びている。各個別電極12Cの他端は、B列の手前で止まっている。
一方、基板3には、このC列の各インク室11の開口部11bにそれぞれ対応する位置に、第3の貫通穴37がインク室11毎に個別に貫通形成されている。この第3の貫通穴37も、インク室形成部材1の接合領域30a外に配置してもよいが、図示したように、第1の貫通穴31と同様、インク室形成部材1の接合領域30a内に配置され、マニホールド部材4内の共通インク室41のインクをC列の各インク室11に供給するためのインク流路を兼用していることが好ましい。
また、インク室形成部材1との接合領域30a外で、基板3の図示下側の端部近傍に、第1の貫通穴31と1対1に対応する第4の貫通穴38が、インク室形成部材1のインク室11の列方向と同一方向に向けて一直線上に配列されている。この第4の貫通穴38は、マニホールド部材4との接合領域30b内に配置されている。
マニホールド部材4は、端面42と配線基板3の背面3bとの間に不図示の接着剤が塗布され、該端面42と基板3の背面3bとが当接することによって接合される。これにより、第4の貫通穴38の全ては、マニホールド部材4の端面42によって塞がれ、接着剤によって封止される。
基板3の表面3aには、インク室形成部材1のC列の各個別電極12Cと電気的に接続されるC列用配線39(第2の配線)が個別に形成されている。各C列用配線39は、それぞれ個別電極12Cと電気的に接続するべく、基板3の表面3aに設けられた第1の表面配線部39aが第3の貫通穴37の近傍に配置されている。C列用配線39は、基板3がインク室形成部材1の後端面1bに接合される際、この第1の表面配線部39aによって個別電極12Cとの電気的接続が行われる。これにより、個別電極12CとC列用配線39との電気的接続を、互いに対向するインク室形成部材1の後端面1bと基板3の表面3aとの間で行うことができるため、電気的接続作業が容易である。
各C列用配線39は、第3の貫通穴37の内周面37aに沿って通過して背面3bに引き出され、背面配線部39bを形成している。背面配線部39bは、第3の貫通穴37から第4の貫通穴38に向けて延び、B列のインク室11に対応して配列されている貫通穴35、35間を通ることにより、該背面3b上でB列を跨いでいる。
なお、A列用配線33は、C列のインク室11に対応して配列されている第3の貫通穴37、37間を通ることにより、該背面3b上でC列をも跨いでいる。
このようにC列用配線39は、インク室形成部材1の後端面1bと接する基板3の表面3aでB列のインク室11や駆動壁13と交差することがないので、B列の各インク室11の開口部11bから露出する駆動電極14や各個別電極12Bとの短絡のおそれがない。これにより、インク室形成部材1のインク室11の数や列数の増加によって高密度化されたインク室形成部材1であっても、各個別電極12A、12B、12Cを介して各駆動電極14を、基板3の端部まで短絡の心配なく電気的に引き出すことができる。
各C列用配線39の背面配線部39bは、第3の貫通穴37からそれぞれ対応する第4の貫通穴38まで延び、該第4の貫通穴38の内周面38aに沿って通過して、再び基板3の表面3aに引き戻され、第2の表面配線部39cを形成している。
第2の表面配線部39cは、第4の貫通穴38からインク室形成部材1との接合領域30aの手前まで延びており、FPC5との接続領域である張り出し部34の表面3a側に、C列のインク室11のピッチと同一ピッチで配列されている。従って、張り出し部34の表面3a側には、A列用配線33の第2の表面配線部33c、B列用配線36及びC列用配線39の第2の表面配線部39cが順次並列するように配列されている。このため、この張り出し部34の表面3a側において、A列用配線33、B列用配線36及びC列配線39に対する1枚のFPC5の接続作業を、安定した状態で容易に行うことができる。
以上のように構成されたインクジェットヘッドH2は、第4の貫通穴38がマニホールド部材4との接合領域30b内に配置され、マニホールド部材4が接合することによって、該マニホールド部材4の端面42によって塞がれ、封止される。このため、この第4の貫通穴38からインクが漏れ出すおそれはない。この第4の貫通穴38を塞ぐためにディスペンサーで接着剤を注入したり、絶縁テープ等を貼着して塞ぐといった別途の作業を追加する必要は全くないため、第2の貫通穴32からのインクの漏れ出しを防止することと併せて、この第4の貫通穴38からもインクの漏れ出しを防止することができる。しかも、第4の貫通穴38をマニホールド部材4の外部に配置させる必要がないため、マニホールド部材4の大型化を阻害することはない。
第4の貫通穴38が複数配列されると、その配列方向に沿って基板3が折れ易くなる懸念があるが、この第4貫通穴38の配列部位に沿ってマニホールド部材4の端面42が接合されるため、第4の貫通穴38の配列部位を補強することができ、破損のおそれはない。
第4の貫通穴38は、基板3とマニホールド部材4との間の余剰の接着剤を流入させる所謂グルーガードとしても機能することができる。このため、余剰の接着剤が第4の貫通穴38の周辺に溢れ出して残留したり、余剰の接着剤がインク室11に流入してインク室11を塞いだりするおそれを低減できる。
(その他の実施形態)
以上説明したインクジェットヘッドH1、H2のインク室形成部材1は、2列のインク室11の列を有するインク室形成部材1を例示したが、インク室形成部材1が備えるインク室11の列数はA列のみの1列であってもよい。この場合、インクジェットヘッドH1、H2におけるA列用配線33と同様の配線引き出し構造を採用することにより、インクの漏れ出しのおそれなく、配線を基板の表面に容易に引き戻すことができる効果が得られる。
また、インク室11の列数は4列以上であってもよい。例えば、インクジェットヘッドH1、H2のインク室形成部材1及びノズルプレート2をインク室11の列と直交する上下方向に対称に形成することにより、4列や6列のインク室11の列を有するインクジェットヘッドを容易に構成することができる。
インクジェットヘッドH1、H2において、A列のインク室11に対応してインク流路を形成する第1の貫通穴31を、インク室11毎にそれぞれ個別に形成したが、この第1の貫通穴31は、A列のインク室11の列方向に沿って延び、該A列のインク室11の全てを含む大きさの1つの長穴状の貫通穴によって形成してもよい。また、それぞれ複数のインク室11を含む大きさの複数の貫通穴に分割されていてもよい。
インクジェットヘッドH1、H2において、インク室形成部材1のインク室11は全てインク吐出を行う吐出インク室であるものを例示したが、各インク室の列は、それぞれインクが供給される吐出インク室と、インクが供給されず、インクを吐出しない非吐出インク室とが交互に並設されたものであってもよい。
なお、以上の説明では、インク室形成部材1として、隣接するインク室11間の駆動壁13を圧電素子によって形成し、駆動壁13の変形によってインク室11内のインクに吐出のための圧力を付与するせん断モード型のインク室形成部材1を例示したが、本発明においてインクを吐出させるための具体的な構造は特に問わない。
H1〜H2:インクジェットヘッド
1:インク室形成部材
1a:前端面
1b:後端面
11:インク室
11a、11b:開口部
12:個別電極
13:駆動壁
14:駆動電極
2:ノズルプレート
21:ノズル
3:基板
3a:表面
3b:背面
30a:インク室形成部材との接合領域
30b:マニホールド部材との接合領域
31:第1の貫通穴
32:第2の貫通穴
33:配線(A列用配線、第1の配線)
33a:表面配線部(第1の表面配線部)
33b:背面配線部
33c:第2の表面配線部
33d:第1の貫通穴配線部
33e:第2の貫通穴配線部
34:張り出し部
35:貫通穴
36:B列用配線
37:第3の貫通穴
38:第4の貫通穴
39:配線(C列用配線、第2の配線)
39a:第1の表面配線部
39b:背面配線部
39c:第2の表面配線部
39d:第1の貫通穴配線部
39e:第2の貫通穴配線部
4:マニホールド部材
41:共通インク室
42:端面
5:FPC(外部配線部材)

Claims (11)

  1. インクを吐出するインク室のインク流入口と、前記インク室内のインクに吐出エネルギーを付与するための電圧が印加される個別電極とが一面に配置されたインク室形成部材と、
    前記インク室形成部材の前記一面に接合され、第1の貫通穴と、前記インク室形成部材の接合領域の内に配置された第2の貫通穴を有する基板と、
    前記基板の前記インク室形成部材と反対側の面に接合され、前記基板を介して前記インク室にインクを供給するマニホールド部材とを備え、
    前記個別電極と電気的に接続される第1の配線が、前記第1の貫通穴を通って前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていると共に、前記第2の貫通穴を通って前記インク室形成部材側の面に再び引き戻されており、
    前記第2の貫通穴は、前記インク室形成部材と反対側の面の開口部が前記マニホールド部材の内部に臨んでいると共に、前記インク室形成部材側の面の開口部が前記インク室形成部材によって塞がれていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記第1の配線の一端側は、前記基板の前記インク室形成部材側の面に形成され、該面において、前記個別電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記第1の配線は、前記第1の貫通穴及び前記第2の貫通穴のそれぞれの内周面に沿って通過していることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記第1の貫通穴は、前記インク室形成部材の接合領域の内に配置され、前記インク室の前記インク流入口と連通し、前記マニホールド部材からのインクを前記インク室に供給するインク流路を兼用していることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記第2の貫通穴から前記インク室形成部材側の面に引き戻された前記第1の配線の他端側は、前記第2の貫通穴から前記基板の端部に向けて延出していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記基板は、第3の貫通穴と、前記インク室形成部材の接合領域の外に配置された第4の貫通穴とを更に有し、
    前記第1の配線が電気的に接続される前記個別電極とは別の前記個別電極と電気的に接続される第2の配線が、前記第3の貫通穴を通って前記インク室形成部材と反対側の面に引き出されていると共に、前記第4の貫通穴を通って前記インク室形成部材側の面に再び引き戻されており、
    前記第4の貫通穴は、前記マニホールド部材の端面によって塞がれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記第2の配線の一端側は、前記基板の前記インク室形成部材側の面に形成され、該面において、前記第1の配線が電気的に接続される前記個別電極とは別の前記個別電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド。
  8. 前記第2の配線は、前記第3の貫通穴及び前記第4の貫通穴のそれぞれの内周面に沿って通過していることを特徴とする請求項6又は7記載のインクジェットヘッド。
  9. 前記第3の貫通穴は、前記インク室形成部材の接合領域の内に配置され、前記インク室の前記インク流入口と連通し、前記マニホールド部材からのインクを前記インク室に供給するインク流路を兼用していることを特徴とする請求項6、7又は8記載のインクジェットヘッド。
  10. 前記第4の貫通穴から前記インク室形成部材側の面に引き戻された前記第2の配線の他端側は、前記第4の貫通穴から前記インク室形成部材との接合領域に向けて延出し、前記基板の前記インク室形成部材側の面において前記第1の配線の他端側と並列していることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  11. 前記インク室形成部材は、圧電素子からなる駆動壁と、隣接する一対の前記駆動壁間の空間によって形成されるインク室とが交互に配置されると共に、前記インク室内に臨む前記駆動壁の表面に駆動電極が形成され、該駆動電極に電圧を印加して前記駆動壁を変形させることによって、前記インク室内に供給されたインクに吐出のための圧力を付与し、ノズルからインクを吐出する構成であり、
    前記個別電極は、前記インク流入口を介して前記駆動電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェットヘッド。

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