JP2014218471A - スチレン誘導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的安価で除去が容易な試薬を用い、比較的穏やかな条件を使用して、簡便に且つ高い収率でスチレン誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】 ヒドロキシ桂皮酸誘導体を、水および/または水酸基含有化合物の存在下、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒中で、脱炭酸反応させるスチレン誘導体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は工業的に有用なスチレン誘導体の製造方法に関する。
p−ヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン誘導体は、多種多様な工業用途において潜在的な有用性を有する芳香族化合物である。例えば、これらの化合物、および分子中の水酸基をアセトキシ基やテトラヒドロピラニル基などで保護して得られる化合物は、樹脂、エラストマー、接着剤、コーティング、自動車仕上げ塗装およびインクの製造用のモノマー用途、ならびに電子材料用途に用いられる。
特に、近年の半導体デバイスの微細化と高集積化を背景として、高解像度と高感度を有するフォトレジスト材料が要望される中、光照射によって容易に脱離する保護基にて水酸基を保護したポリヒドロキシスチレン類が有用であることが知られており、ポリヒドロキシスチレン類の原料であるヒドロキシスチレン誘導体はレジスト材料の原料として非常に有用な化合物である。
ヒドロキシスチレン誘導体の水酸基をアセトキシ基で保護したアセトキシスチレンの製造方法は、従来、種々のものが知られており、例えば、ヒドロキシベンズアルデヒドをアセチル化してアセトキシベンズアルデヒドとし、有機溶媒中、亜鉛金属とトリメチルクロロシランや塩化アセチルのような活性な塩化物を触媒としてジブロモメタンを反応させ、アセトキシスチレンを得る方法が開示されている(特許文献1参照)。また、1−(4−アセトキシフェニル)エチルカルボキシレートを、不活性熱媒中、酸性触媒および重合防止剤の存在下、160〜200℃、0.1〜300ミリバール(10kPa〜30MPa)で脱カルボン酸反応することにより、p−アセトキシスチレンを製造する方法(特許文献2参照)やパラ−第三級ブトキシスチレンを出発原料として、硫酸、リン酸等の鉱酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のカチオン交換樹脂等の触媒存在下に、無水酢酸、塩化アセチル等のアセチル化剤と反応させる方法(特許文献3参照)が既に知られている。
しかしながら、上記各方法では目的物を得るまでに多段階の反応が必要であり、また、高価な試薬や特殊な反応を行うための設備が必要となることから、経済性および安全性に優れた製法として満足できるものではない。
一方、ヒドロキシ桂皮酸誘導体の脱炭酸反応によりヒドロキシスチレン誘導体が得られることが古くから知られている。また、この方法で得られたヒドロキシスチレン誘導体の水酸基をアセトキシ基やテトラヒドロピラニル基などで保護して誘導体化合物を得ることもできる。
例えば、p−ヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸からp−ヒドロキシ桂皮酸を得た後、キノリン中で銅触媒を添加し、225℃で加熱し、その後、減圧蒸留を行うことでp−ヒドロキシスチレンが得られることが報告されている(非特許文献1)。しかし、この方法で得られるp−ヒドロキシスチレンの収率は41%と低く、銅触媒の使用や高温での反応など工業化および経済性の面で満足できるものではない。
また、特許文献4にはアミン触媒を用いたp−ヒドロキシ桂皮酸の脱炭酸方法が記載されている。その方法では、アミン触媒、すなわち1,8−ジアザビシクロ[5,4−0]ウンデカ−7−エンおよびヒドロキノンの存在下にて、p−ヒドロキシ桂皮酸をジメチルスルホキシド中で135℃にて脱炭酸反応して、p−ヒドロキシスチレンが生成することが記載されている。さらには、得られたp−ヒドロキシスチレンの水酸基をテトラヒドロピラニル基で保護し、4−テトラヒドロピラン−2−イルオキシスチレンが生成することが記載されている。しかし、この方法では脱炭酸反応で得られた反応液をジエチルエーテルで希釈した後、5回の水洗いと、2回のn−ヘキサン溶媒による再結晶を行うなど、反応液中に含まれるp−ヒドロキシスチレンと、アミン触媒を初めとする共存不純物を分離するために煩雑な後処理を必要とし、工業化および経済性の面で満足できるものではない。
また、特許文献5には非アミン塩基触媒として酢酸カリウムなどの金属塩を使用し、極性非プロトン性溶媒中でp−ヒドロキシ桂皮酸を脱炭酸反応して、p−ヒドロキシスチレンを高収率で得る方法が開示されている。しかしながら、電子材料等、その用途によっては極微量の金属の含有を嫌う場合があり、金属塩を触媒として使用すると生成物であるヒドロキシスチレン誘導体に残存するリスクが伴い、満足できるものではない。
日本国特開平8−157410号公報 日本国特開平6−192172号公報 日本国特開2000−178227号公報 米国特許第5,274,060号明細書 日本国特許第4764416号公報
R. C. Sovish, J. Org. Chem., 24, 1345 (1959)
本発明の目的は、比較的安価で除去が容易な試薬を用い、比較的穏やかな条件を使用して、簡便に且つ高い収率でスチレン誘導体を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術の現状に鑑み、鋭意検討の結果、比較的穏やかな条件の下で、安価で除去の容易な試薬を用い、高収率でスチレン誘導体を製造する方法を見出した。すなわち、上記目的を達成するために、本発明にかかるスチレン誘導体の製造方法は、下記の一般式(1)
Figure 2014218471
(式中、R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、OH基、または、OCH基のいずれかである)で示されるヒドロキシ桂皮酸誘導体を、水および/または水酸基含有化合物の存在下、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒中で、脱炭酸反応させ、下記の一般式(2)
Figure 2014218471
(式中、R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、OH基、または、OCH基のいずれかである)で示されるスチレン誘導体を得ることを特徴とする。
本発明のスチレン誘導体の製造方法では、短時間の反応でスチレン誘導体を得ることが出来る。このため反応時の熱履歴を低減でき、不純物の副生を抑制することができるため、高収率でスチレン誘導体を製造することができる。
また、反応に用いた水および/または水酸基含有化合物、およびアミド結合含有溶媒は、反応後に水洗や濃縮操作で容易に除去することができるため、スチレン誘導体の単離が容易となる。
また、本発明のスチレン誘導体の製造方法では水および/または水酸基含有化合物の存在下に反応を行い、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒中で脱炭酸反応を行うので、水、水酸基含有化合物、およびその他の溶媒が共存しても良い。このため、たとえば原料に水、水酸基含有化合物、および/またはその他の溶媒を含む未乾燥のヒドロキシ桂皮酸誘導体を用いることができる。また、同様に水、水酸基含有化合物、および/またはその他の溶媒を含むアミド結合含有溶媒を使用することができるため、たとえば、脱炭酸反応後に水洗除去したアミド結合含有溶媒を、単蒸留などの簡単な精製を施しただけでリサイクル使用することが出来るため、経済的であり、環境に優しい。
本発明により得られるスチレン誘導体は、製造過程で触媒などに金属塩を使用しないため、金属塩の残存リスクが無く、電子材料等の極微量の金属の含有を嫌う用途に好適に使用することが出来る。
図1は、実施例14で得られた4−ヒドロキシ−3−メトキシスチレンの質量スペクトルである。
以下に、本発明のスチレン誘導体の製造方法について詳細に記載する。
本発明のスチレン誘導体の製造方法は、下記の一般式(1)
Figure 2014218471
で示される4位にヒドロキシル基を有するヒドロキシ桂皮酸誘導体を基質に用いる。ヒドロキシ桂皮酸誘導体の二重結合における立体配置としてトランス体とシス体とが存在し、いずれの異性体を用いても良い。本発明で用いられるヒドロキシ桂皮酸誘導体は、その安定性から、トランス体が好ましい。また、本発明で用いられるヒドロキシ桂皮酸誘導体は、天然に得られるものを、用いることもできる。
一般式(1)において、R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、OH基、または、OCH基のいずれかである。
本発明で用いられるヒドロキシ桂皮酸誘導体は、具体的には、p−ヒドロキシ桂皮酸(R=R=R=R=H)、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)(R=R=R=H、R=OCH)、3,4−ジヒドロキシ桂皮酸(カフェー酸)(R=R=R=H、R=OH)、4−ヒドロキシ−3、5−ジメトキシ桂皮酸(シナピン酸)(R=R=H、R=R=OCH)などが挙げられる。上記ヒドロキシ桂皮酸誘導体の中でもp−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)が好ましく用いられる。
ヒドロキシ桂皮酸誘導体は乾燥状態のものを用いても良いし、水、水酸基含有化合物、および/またはその他の溶媒を含む未乾燥状態のものを用いても良い。
本発明のスチレン誘導体の製造方法は、好ましくは、脱炭酸反応は、100℃以上で行う。
本発明のスチレン誘導体の製造方法は、ヒドロキシ桂皮酸誘導体を脱炭酸反応する際に、水および/または水酸基含有化合物を、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒と共に用いる。
水としては、特に限定されないが、一般的な工業用水を用いることができる。すなわち、河川、地下水、湖沼、海水、かん水等を水源とし、沈殿、凝析、ろ過、蒸留、イオン交換、限外ろ過、逆浸透法等で精製したものである。
水酸基含有化合物としては、アルコール類、フェノール類を挙げることができる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールおよび1−ヘキサノールなどの1級アルコール類、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノールおよび3−ヘプタノールなどの2級アルコール類、tert−ブタノール、tert−ペンタノールなどの3級アルコール類、他にはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
上記のうち、本発明では、水、アルコール類が好ましく用いられ、特に、水、1−ブタノール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましい。これらの化合物を使用することで、その沸点が100℃以上であることから反応に必要な100℃以上の温度の維持が容易となり、化合物の水溶性が高いことから水洗による反応液からの除去を容易にすることができる。
また、水および/または水酸基含有化合物は、単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
水および/または水酸基含有化合物の使用量は、水および/または水酸基含有化合物と少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒を合計した量に対して、好ましくは0.2重量%から50重量%であり、より好ましくは0.2重量%から30重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%から20重量%である。0.2重量%から50重量%の範囲内とすることで脱炭酸反応を速やかに進めることができ、高収率でスチレン誘導体を製造することができる。
水および/または水酸基含有化合物の使用量を0.2重量%から50重量%の範囲内に調整する方法としては、水および/または水酸基含有化合物と、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒を、それぞれ事前に計量して混合することによって調整しても良いし、基質であるヒドロキシ桂皮酸誘導体、水および/または水酸基含有化合物、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒など、反応に供する原料を仕込んで混合した後に、蒸留操作を行い、水および/または水酸基含有化合物を計外に除去することによって、0.2重量%から50重量%の範囲内に調整しても良い。
本発明のスチレン誘導体の製造方法は、ヒドロキシ桂皮酸誘導体を脱炭酸反応する際に少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒を用いる。
アミド結合含有溶媒は、特に限定されないが、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−プロピルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N−イソプロピルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−プロピルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N−イソプロピルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルアセトアミド、プロピオンアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−エチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、ブタンアミド、N−メチルブタンアミド、N,N−ジメチルブタンアミド、N−エチルブタンアミド、N,N−ジエチルブタンアミド、ペンタンアミド、N−メチルペンタンアミド、N,N−ジメチルペンタンアミド、N−エチルペンタンアミド、N,N−ジエチルペンタンアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−プロピルピロリドン、N−イソプロピルピロリドン、2−ピペリドン、1−メチル−2−ピペリドン、1−エチル−2−ピペリドン、1−プロピル−2−ピペリドン、1−イソプロピル−2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム、N−プロピル−ε−カプロラクタム、N−イソプロピル−ε−カプロラクタムが挙げられる。
アミド結合含有溶媒は、好ましくは、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−プロピルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N−イソプロピルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−プロピルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N−イソプロピルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルアセトアミドであり、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
アミド結合含有溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミドを使用した場合、水および/または水酸基含有化合物は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールであり、より好ましくは、水、1−ブタノール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールである。
アミド結合含有溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミドを使用し、水および/または水酸基含有化合物として、水を使用した場合、水とN,N−ジメチルホルムアミドの混合比は、水とN,N−ジメチルホルムアミドを合計した量に対して、水の使用量を、0.2重量%から10重量%とするのが好ましく、より好ましくは1重量%から5重量%とするのが好ましい。
本発明により、下記の一般式(2)
Figure 2014218471
(式中、R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、OH基、または、OCH基のいずれかである)で示されるスチレン誘導体を得ることができる。本発明により、好ましくは、p−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−3−メトキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−3、5−ジメトキシスチレンを製造することができる。
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに制限されるものではない。
本発明において、反応混合物中に残存するp−ヒドロキシ桂皮酸および生成するp−ヒドロキシスチレンの重量は、高速液体クロマトグラフィー法(以下、「HPLC」と略)で、以下の分析条件で分析したものである。
・カラム: YMC―Pack ODS−AM303 4.6φ×250mm
・カラム温度: 40℃
・移動相: 0.1%(v/v)リン酸水溶液/メタノール=60/40(v/v)
・流量: 1ml/min
・注入量: 1μl
・検出: 紫外(UV)検出 波長254nm
・分析時間: 60分 。
・分析サンプル調製および分析:
内部標準物質としてp−トルイル酸0.1gを採取し、次いで反応液0.3gを採取し、メタノールで均一に溶解した後、条件の整ったHPLCに注入した。得られたHPLCチャートからp−ヒドロキシ桂皮酸とp−トルイル酸のピーク面積比、およびp−ヒドロキシスチレンとp−トルイル酸のピーク面積比を読み取った。別途標準物質を用いて作成した検量係数を用い、p−ヒドロキシ桂皮酸の残存量およびp−ヒドロキシスチレンの生成量を計算した。
・p−ヒドロキシ桂皮酸の検量係数の測定:
内部標準物質としてp−トルイル酸0.1gを採取し、次いでp−ヒドロキシ桂皮酸0.03gを採取し、メタノールで均一に溶解した後、条件の整ったHPLCに注入した。得られたHPLCチャートからp−ヒドロキシ桂皮酸とp−トルイル酸のピーク面積比を読み取った。p−ヒドロキシ桂皮酸とp−トルイル酸のピーク面積比と重量比の相関係数、すなわち検量係数を算出した。
・p−ヒドロキシスチレンの検量係数の測定:
内部標準物質としてp−トルイル酸0.1gを採取し、次いでp−アセトキシスチレン0.05gを採取し、48%水酸化ナトリウム0.2gおよびメタノール10mlを加えて室温で30分撹拌することで、p−アセトキシスチレンを加水分解させ、定量的にp−ヒドロキシスチレンを生成させた。p−ヒドロキシスチレンの生成量はp−アセトキシスチレンの採取量から100%の収率で生成する量として算出した。この混合物をメタノールで均一に溶解した後、条件の整ったHPLCに注入した。得られたHPLCチャートからp−ヒドロキシスチレンとp−トルイル酸のピーク面積比を読み取った。p−ヒドロキシスチレンとp−トルイル酸のピーク面積比と重量比の相関係数、すなわち検量係数を算出した。
また、本発明において合成、単離したヒドロキシスチレン誘導体の化学純度については、内部標準物質であるp−トルイル酸の添加無しで同様に分析し、ヒドロキシスチレン誘導体のピークを面積百分率として計算した。
ただし、上記の分析条件に基づく分析結果と同じ結果が得られる限り、この分析条件に限定されるものではない。
また、本発明において用いた試薬は市販のものを用い、溶媒については含水率が0.1%以下のものを使用した。
(実施例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた50mlフラスコにp−ヒドロキシ桂皮酸3.28g(20mmol)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.12g(1mmol)、および溶媒として水分率を3重量%に調整した含水N,N−ジメチルホルムアミド20mlを仕込み、撹拌下、150℃に温調したオイルバスに浸して加熱した。温度上昇に伴い還流が観察され、反応液の温度は136℃に達した。3時間加熱を継続した後、速やかに冷却し、反応混合物を、HPLCを用いて上述の方法で分析したところ、p−ヒドロキシ桂皮酸が0.545g(3.32mmol)残存し、p−ヒドロキシスチレンが1.929g(16.06mmol)生成し、脱炭酸反応成績は転化率83.4%、収率80.3%であった。
(実施例2〜6)
実施例1において溶媒を3%含水N,N−ジメチルホルムアミドから、種々の水酸基含有化合物とN,N−ジメチルホルムアミドを含む混合溶媒、および3%含水N,N−ジメチルアセトアミドに変えた以外は同様に実施した。脱炭酸反応成績を表1に示した。
Figure 2014218471
上記表1から分かるように、水または水酸基含有化合物の存在下、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒中で、脱炭酸反応させることで、高い生成物収率が得られた。
(比較例1〜12)
実施例1において溶媒を3%含水N,N−ジメチルホルムアミドから、種々の単独溶媒、および3%の水を含むアミド結合非含有溶媒に変えた以外は同様に実施した。脱炭酸反応成績を表2に示した。
Figure 2014218471
上記表2から分かるように、水または水酸基含有化合物が存在しない場合、およびアミド結合含有溶媒を含まない溶媒中では、表1に示したような高い生成物収率を得ることが出来なかった。
(実施例7〜12)
実施例1において含水N,N−ジメチルホルムアミドの水分率を変化させた以外は同様に実施した。脱炭酸反応成績を表3に示した。
Figure 2014218471
(実施例13)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた50mlフラスコにp−ヒドロキシ桂皮酸9.85g(60mmol)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.12g(1mmol)、および溶媒として水分率を3重量%に調整した含水N,N−ジメチルホルムアミド20mlを仕込み、撹拌下、150℃に温調したオイルバスに浸して加熱した。4時間加熱を継続した後、HPLCを用いて上述の方法で反応液を分析し、原料のp−ヒドロキシ桂皮酸が消失していることを確認した。次いで反応液をトルエン50gで希釈し、50gの水を加えて良く撹拌した後、水層と油層を分離した。油層をさらに25gの水で洗浄し、水層と油層を分離した。油層から溶媒を減圧留去することにより黄褐色固体6.97gを得た(理論収量の97%)。HPLCを用いて上述の方法で化学純度を分析したところ、p−ヒドロキシスチレンの化学純度は96.2%(面積百分率)であった。
(実施例14)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた100mlフラスコに4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸23.30g(120mmol)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.15g(1.2mmol)、および溶媒として水分率を3重量%に調整した含水N,N−ジメチルホルムアミド40mlを仕込み、撹拌下、150℃に温調したオイルバスに浸して加熱した。4時間加熱を継続した後、HPLCを用いて上述の方法で反応液を分析し、原料の4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸が消失していることを確認した。次いで反応液をトルエン50gで希釈し、100gの水を加えて良く撹拌した後、水層と油層を分離した。油層から溶媒を減圧留去することにより黄色液体16.95gを得た(理論収量の94%)。HPLCを用いて上述の方法で化学純度を分析したところ、化学純度は96.8%(面積百分率)であった。得られた化合物はガスクロマトグラフィ−質量分析法により4−ヒドロキシ−3−メトキシスチレンと同定した。図1にガスクロマトグラフィ−質量分析法で得られた、主生成物の質量スペクトルを示す。

Claims (5)

  1. 下記の一般式(1)
    Figure 2014218471
    (式中、R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、OH基、または、OCH基のいずれかである)で示されるヒドロキシ桂皮酸誘導体を、水および/または水酸基含有化合物の存在下、少なくとも1種のアミド結合含有溶媒を含む溶媒中で、脱炭酸反応させる下記の一般式(2)
    Figure 2014218471
    (式中、R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、OH基、または、OCH基のいずれかである)で示されるスチレン誘導体の製造方法。
  2. 脱炭酸反応における反応温度が100℃以上の温度である請求項1に記載のスチレン誘導体の製造方法。
  3. 水酸基含有化合物がアルコール類から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2に記載のスチレン誘導体の製造方法。
  4. アミド結合含有溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、または、N,N−ジメチルアセトアミドから選ばれる少なくとも1種の溶媒である請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン誘導体の製造方法。
  5. ヒドロキシ桂皮酸誘導体が、p−ヒドロキシ桂皮酸、または、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸である請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン誘導体の製造方法。
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