JP2014217233A - モータ及び圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のモータでは、リード線が緩む問題がある。
【解決手段】このモータは、下インシュレータ70の外壁部72に、コイル巻回部52G〜52Iに接続されたリード線81G〜81Iを通過させる溝部74A〜74Cが形成されている。そして、外壁部72の外側に配置されたリード線81G〜81I(渡り線Ub、Vb、Wb)は、溝部74A〜74Cの両側の外壁部72にそれぞれ当接する2つの当接部(Ub1・Ub2、Vb1・Vb2、Wb1・Wb2)と、2つの当接部(Ub1・Ub2、Vb1・Vb2、Wb1・Wb2)の間において溝部74A〜74Cから外壁部72の内側に突出した突出部Ub3、Vb3、Vb3とを有する。
【選択図】図10

Description

本発明は、巻線方式が集中巻きのモータ及びそれを備えた圧縮機に関する。
従来のモータとしては、環状に配列された複数の歯部を有するコアと、コアの歯部にそれぞれ積層される複数の突出部を有するインシュレータと、コアの歯部及びインシュレータの突出部に巻き回されたコイルとを備えたものがある。インシュレータは、複数の突出部の径方向外側に配置される環状の外壁部を有する。この外壁部には、外壁が部分的にない溝部が複数形成される。各コイルの巻き始めと巻き終わりにそれぞれ接続されるリード線は、この溝部を通過してインシュレータの外壁部の外側に引き出される。インシュレータの外壁部の外側に引き出された各リード線は、インシュレータの外壁部の外側に形成された所定の渡り位置に配置される。
特許第3824001号公報 特許第4704177号公報
上記のモータでは、例えばリード線を結線処理する際などに、リード線が緩む問題がある。リード線が緩むと、インシュレータの外壁部の外側に形成された所定の渡り位置からリード線が外れて、モータの取扱い時に巻線が損傷又は断線したり、隣接するコイル同士が接触してレアショートが発生するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、リード線の緩みを取り除くことができるモータ及び圧縮機を提供することである。
第1の発明にかかるモータは、環状に配列された複数の歯部を有するコアと、前記歯部にそれぞれ積層される複数の突出部及び前記複数の突出部の径方向外側に配置される環状の壁部を有するインシュレータと、前記歯部及び当該歯部に積層された突出部に巻き回されたコイル巻回部とを備え、前記壁部には、前記コイル巻回部に接続されたリード線を通過させる溝部が形成されており、前記壁部の外側に配置されたリード線は、前記溝部の両側の壁部にそれぞれ当接する2つの当接部と、前記2つの当接部の間において前記溝部から前記壁部の内側に突出した突出部とを有していることを特徴とする。
このモータでは、インシュレータの壁部の外側に配置されたリード線が、2つの当接部の間において溝部から壁部の内側に突出した突出部を有するので、リード線が突出部を有さない場合に比べてリード線の必要長を長くでき、リード線の緩みを取り除くことができる。
第2の発明にかかるモータは、第1の発明にかかるモータにおいて、前記コイル巻回部の径方向外側に対応した位置且つ前記コアの軸方向において前記コイル巻回部から離れた位置に配置された第1溝部を含んでおり、前記コイル巻回部に接続されたリード線は、前記第1溝部から前記壁部の外側に引き出されるものであって、前記リード線における前記コイル巻回部と前記第1溝部との間の部分が、前記壁部の内側において前記コイル巻回部に向かって凸状であることを特徴とする。
このモータでは、リード線におけるコイル巻回部と第1溝部との間の部分が、壁部の内側においてコイル巻回部に向かって凸状であるので、凸状でない場合に比べてリード線の必要長を長くでき、リード線の緩みを取り除くことができる。特に、このモータでは、壁部の内側においてリード線の必要長を長くしているので、壁部の内側においてリード線が緩んでいる場合に効果が高い。
第3の発明にかかるモータは、第1または第2の発明にかかるモータにおいて、前記コイル巻回部に接続されたリード線は、隣接する2つの前記歯部及び当該歯部に積層された突出部にそれぞれ巻き回された2つのコイル巻回部の間を通過した後で、前記壁部の外側に引き出されたものであることを特徴とする。
このモータでは、リード線が2つのコイル巻回部の間を通過するように巻線が巻かれたモータ、すなわちリード線が緩みやすいモータにおいて、リード線の緩みを取り除くことができる。
第4の発明にかかる圧縮機は、第1〜第3のいずれかの発明に記載のモータを備えることを特徴とする。
この圧縮機では、リード線の緩みを取り除くことができるモータを備えた圧縮機を提供できる。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1の発明では、インシュレータの壁部の外側に配置されたリード線が、2つの当接部の間において溝部から壁部の内側に突出した突出部を有するので、リード線が突出部を有さない場合に比べてリード線の必要長を長くでき、リード線の緩みを取り除くことができる。
第2の発明では、リード線におけるコイル巻回部と第1溝部との間の部分が、壁部の内側においてコイル巻回部に向かって凸状であるので、凸状でない場合に比べてリード線の必要長を長くでき、リード線の緩みを取り除くことができる。特に、このモータでは、壁部の内側においてリード線の必要長を長くしているので、壁部の内側においてリード線が緩んでいる場合に効果が高い。
第3の発明では、リード線が2つのコイル巻回部の間を通過するように巻線が巻かれたモータ、すなわちリード線が緩みやすいモータにおいて、リード線の緩みを取り除くことができる。
第4の発明では、リード線の緩みを取り除くことができるモータを備えた圧縮機を提供できる。
本発明の実施形態に係る圧縮機の断面図である。 ステータの平面図である。 ステータの背面図である。 ステータのコアの平面図である。 下インシュレータの背面図である。 ステータの展開図である。 巻線の回路図である。 U相の巻線の回路図である。 リード線の構成を説明するための概略図である。 ステータの模式背面図である。 ステータを下方から見た外観図である。 図11の一部拡大図である。 図11の一部拡大図である。 リード線の構成を説明するための概略図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る圧縮機の実施形態について説明する。
[圧縮機の全体構成]
本実施形態に係る圧縮機1は、図1に示すように、1シリンダ型ロータリー圧縮機であって、密閉ケーシング10と、密閉ケーシング10内に配置されるモータ20及び圧縮機構30とを有する。この圧縮機1は、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機であって、例えばCO2冷媒(以下、冷媒と略記する)を利用している。この圧縮機1は、密閉ケーシング10内において、圧縮機構30がモータ20の下側に配置される。また、密閉ケーシング10の下部には、圧縮機構30の各摺動部に供給される潤滑油2が貯留されている。
[密閉ケーシング]
密閉ケーシング10は、パイプ11、トップ12及びボトム13によって構成されている。パイプ11は、上下方向に延びた略円筒状の部材であり、その上下端が開口している。パイプ11の側面には、アキュームレータ(図示せず)に接続されるインレットチューブ14を密閉ケーシング10の内部に導入するための接続口11aが形成される。この接続口11aの内周面には、インレットチューブ14を保持する円筒形状の継手管15が接合される。トップ12は、パイプ11の上端の開口を塞ぐ部材である。このトップ12には、圧縮機構30によって圧縮された高温高圧の冷媒を密閉ケーシング10の外部に吐出するための吐出管16が接続される。また、トップ12には、モータ20に接続されるターミナル端子17が設けられる。ボトム13はパイプ11の下端の開口を塞ぐ部材である。上記した構成の密閉ケーシング10には、パイプ11、トップ12及びボトム13によって囲まれた密閉空間が形成される。
[圧縮機構]
圧縮機構30は、モータ20のシャフト44の回転軸に沿って上から下に向かって、マフラ31と、フロントヘッド32と、シリンダ33及びピストン34と、リアヘッド35とを有する。
[モータ]
モータ20は、上記した圧縮機構30を駆動するために設けられており、ロータ40と、このロータ40の径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータ50とを有する。このモータ20は、後述するコア51の歯部54A〜54Iに巻線が巻き回された巻線方式が集中巻きのモータである。
<ロータ>
ロータ40は、コア41及び複数の永久磁石(図示せず)を有する。コア41は、金属材料からなる複数の薄板が互いに積層されるとともに、溶接などによって互いに接合されることによって形成される。また、コア41には、その略中央部に、平面視で略円形の貫通孔43が形成される。貫通孔43には、シャフト44の上端部が挿入されており、ロータ40とステータ50との間に発生する磁力によって、シャフト44がロータ40と共に回転する。
<ステータ>
図2に示すように、ステータ50は、環状のコア51と、コア51の両端面に配置される上および下インシュレータ60、70(図1参照)と、コイル巻回部52A〜52Iとを有する。
<コア>
コア51は、金属材料からなる複数の薄板が互いに積層される共に、溶接などによって互いに接合されることによって形成される。このコア51は、図4に示すように、環状のバックヨーク部53と、そのバックヨーク部53から径方向内側に突出する9個の歯部54A〜54Iとを有する。コア51の略中央部分には、上下方向(Z方向)に延びた貫通孔Hが形成される。この貫通孔Hの内部には、上記したロータ40が配置される。それぞれの歯部54A〜54Iは、バックヨーク部53の内周面から径方向内側に延在する突出部55A〜55Iと、当該突出部55A〜55Iの先端に設けられ、突出部55A〜55Iより周方向に幅広に形成される幅広部56A〜56Iとを有する。
<スロット>
図4に示すように、隣接する歯部54A〜54Iのそれぞれの間には、コア51を上下方向(Z方向)に貫通する9個のスロットS1〜S9が形成される。このスロットS1〜S9のそれぞれは、隣接する歯部54A〜54Iの幅広部56A〜56Iの間に形成される開口Gを介して、貫通孔Hに連通している。巻線は、この開口Gを介してスロットS1〜S9の内部に挿入される巻線機のノズル(図示せず)によって、各歯部54A〜54Iに巻き回される。
<下インシュレータ>
下インシュレータ70は、コア51とコイル巻回部52A〜52Iとを絶縁するものであって、コア51の下端面に配置される。この下インシュレータ70は、図5に示すように、コア51の突出部55A〜55Iに積層される9個の突出部71A〜71Iと、突出部71A〜71Iの径方向外側に配置される環状の外壁部72(壁部)と、突出部71A〜71Iのそれぞれの径方向内側に配置され、上記した幅広部56A〜56Iに積層される内壁部73A〜73Iとを有する。この外壁部72及び内壁部73A〜73Iは、下方(コア51と反対側)に突出しており、歯部54A〜54I及び突出部71に巻き回されたコイル巻回部52A〜52Iが崩れるのを防止する役割を果たしている。なお、図5に記載した位置(A1)〜(I2)と、図6に記載した位置(A1)〜(I2)とは対応している。
図6及び図10に示すように、環状の外壁部72には、複数の溝部74が形成される。この溝部74は、環状の外壁部72が部分的にない部分であって、外壁部72が切り欠かれた部分と、外壁部72と外壁部72との間の間隙部分とを含む。一例として、図10では、溝部74のうち、外壁部72が切り欠かれた部分の一つを符号74Xで示し、外壁部72と外壁部72との間の間隙部分の一つを符号74Yで示す。
図10に示すように、複数の溝部74のうち、相が異なる3つのコイル巻回部52A〜52Cの径方向外側に対応した位置に配置された3つの溝部が第1溝部74A〜74Cである。第1溝部74A〜74Cは、コイル巻回部52A〜52Cよりも下方に位置している(コア51の軸方向においてコイル巻回部52A〜52Cから離れた位置にある)。また、第1溝部74A〜74Cは、それぞれコイル巻回部52A〜52Cの中心線L3(図14参照)よりも、コイル巻回部52H、52F、52D側にある。後述するリード線81G〜81Iは、各第1溝部74A〜74Cを通過して下インシュレータ70の外壁部72の外側に引き出される。なお、「コイル巻回部52A〜52Cの径方向外側に対応した位置」とは、平面視においてそれぞれのコイル巻回部52A〜52Cを径方向外側に延長した領域であり、一例として、図3では、「コイル巻回部52Aの径方向外側に対応した位置」を斜線領域Rで示している。
図6に示すように、下インシュレータ70の外壁部72には、下インシュレータ70の外壁部72の外周面から径方向外側に突出した突起75が多数形成されている(図6では、煩雑を避けるため多数の突起75のうちの一つに符号75を付すこととする)。これらの突起75は、後述する渡り線(Ua〜Uc、Va〜Vc、Wa〜Wc)が配置される所定の渡り位置を形成するためのものである。
<上インシュレータ>
上インシュレータ60は、コア51とコイル巻回部52A〜52Iとの絶縁を図るために設けられ、コア51の上端面に配置される。この上インシュレータ60は、下インシュレータ70と略同形状であり、図9に示すように、突出部61、外壁部62、内壁部63などを有する。ただし、下インシュレータ70と略同形状であるので、その詳しい説明は割愛する。
<巻線>
図2に示すように、各歯部54A〜54Iには、各相(U相、V相、W相)の巻線が巻き回される。その結果、各歯部54A〜54Iには、コイル巻回部52A〜52Iが形成される。具体的には、周方向に2極おきに配置される3つの歯部54A、54D、54Gに、U相のコイル巻回部52A、52D、52Gが形成される。また、周方向に2極おきに配置される3つの歯部54B、54E、54Hに、V相のコイル巻回部52B、52E、52Hが形成される。また、周方向に2極おきに配置される3つの歯部54C、54F、54Iに、W相のコイル巻回部52C、52F、52Iが形成される。本実施形態では、外径が0.5mm〜1.5mmの巻線が使用されている。
図7に示すように、9個のコイル巻回部52A〜52Iの一端および他端には、18本のリード線81A〜81I、82A〜82Iが接続される。9個のコイル巻回部52A〜52Iの一端に接続される9本のリード線81A〜81Iは、それぞれ電源(ターミナル端子17)に接続される電源線PU、PV、PWとなる。具体的には、リード線81A、81D、81Gが電源線PUなり、リード線81B、81E、81Hが電源線PVとなり、リード線81C、81F、81Iが電源線PWとなる。これらの電源線PU、PV、PWは、図2に示すように、それぞれが絶縁部材によって被覆されており、3本がねじった状態で束ねられる。また、9個のコイル巻回部52A〜52Iの他端に接続される9本のリード線82A〜82Iは、中性線となる。これらの中性線は、図6に示すように、上インシュレータ60の外壁部の外側に位置する中性線結束位置Nで結束される。なお、本実施形態において、リード線とは、巻線のうち歯部54A〜54Iに巻き回されていない部分(すなわち、コイル巻回部52A〜52Iを形成していない部分)を指す。
<リード線の詳細>
以下、図7を参照しつつリード線の詳細について説明する。
まず、電源線PU、PV、PWとなるリード線81A〜81Iについて説明する。図7に示すように、リード線81A〜81Cは、それぞれコイル巻回部52A〜52Cの一端(巻き始め)に接続される。例えば、図9を参照してコイル巻回部52Aの一端52A1(巻き始め)について説明すると、コイル巻回部52Aの一端52A1(巻き始め)は、上インシュレータ60の外壁部62の内周面とコイル巻回部52Aとによって挟持される。したがって、コイル巻回部52Aの一端52A1に接続されるリード線81Aは、その端部(すなわち、一端52A1)が固定されている。なお、図7に示すように、コイル巻回部52A〜52Cの一端(巻き始め)は、上インシュレータ70側にある。したがって、リード線81A〜81Cは、コイル巻回部52A〜52Cの上インシュレータ60側に接続される。すなわち、コイル巻回部52A〜52Cは、上インシュレータ60側から巻き回される。
リード線81D〜81Fは、それぞれコイル巻回部52D〜52Fの一端(巻き始め)に接続される。これらのリード線81D〜81Fは、それぞれコイル巻回部52Aとコイル巻回部52Hとの間、コイル巻回部52Bとコイル巻回部52Fとの間、コイル巻回部52Cとコイル巻回部52Dとの間を通過する。そして、これらのリード線81D〜81Fは、下インシュレータ70の外壁部72に形成された所定の溝部74から外壁部72の外側に引き出され、コイル巻回部52D〜52Fまで渡り線Ua、Va、Waを形成する。なお、コイル巻回部52D〜52Fの一端(巻き始め)は、下インシュレータ70側にある。したがって、リード線81D〜81Fは、コイル巻回部52D〜52Fの下インシュレータ70側に接続される。すなわち、コイル巻回部52D〜52Fは、下インシュレータ70側から巻き回される。
リード線81G〜81Iは、それぞれコイル巻回部52G〜52Iの一端(巻き終わり)に接続される。これらのリード線81G〜81Iは、リード線81D〜81Fと同様に、それぞれコイル巻回部52Aとコイル巻回部52Hとの間、コイル巻回部52Bとコイル巻回部52Fとの間、コイル巻回部52Cとコイル巻回部52Dとの間を通過する。そして、これらのリード線81G〜81Iは、それぞれ下インシュレータ70の外壁部72に形成された第1溝部74A〜74Cから外壁部72の外側に引き出されて、コイル巻回部52G〜52Iまで渡り線Ub、Vb、Wbを形成する。なお、コイル巻回部52G〜52Iの一端(巻き終わり)は、下インシュレータ70側にある。したがって、リード線81G〜81Iは、コイル巻回部52G〜52Iの下インシュレータ70側に接続されている。
本実施形態のモータ20では、例えば電源線PUとなるU相の3本のリード線81A、81D、81Gを考えたときに、3本のうちの1本(リード線81A)は、その端部(すなわち、一端52A1)がコイル巻回部52Aに固定される。しかし、残りの2本(リード線81D、81G)は、コイル巻回部52Aとコイル巻回部52Hとの間を通過するように巻線が巻かれており、コイル巻回部52Aに固定されない。なお、電源線PVとなるV相のリード線81B、81E、81Hおよび電源線PWとなるW相のリード線81C、81F、81Iも同様である。したがって、本実施形態のモータ20の巻線の巻き方は、例えば特許文献2に記載されたモータのように、各相(U相、V相、W相)それぞれの3本のリード線が一つのコイル巻回部に固定されるモータとは異なる。
ここで、このリード線81A〜81Iは、引き出される長さが長いほど緩みやすい。また、コイル巻回部52A〜52Iの巻き始めに接続されるリード線、すなわちリード線の端部がコイル巻回部に固定されるリード線(例えば、リード線81A〜81F)よりも、コイル巻回部52A〜52Iの巻き終わりに接続されるリード線、すなわちリード線の端部がコイル巻回部に固定されないリード線(例えば、リード線81G〜81I))の方が緩みやすい。
図8を参照して、例えばU相の巻線について説明すると、リード線81Aは、コイル巻回部52Aの一端52A1(巻き始め)から、リード線が結束される上インシュレータ60側に直接引き出されているので、引き出される長さが比較的短い。また、リード線81Aは、コイル巻回部52Aの巻き始めに接続されるので、コイル巻回部52Aの一端52A1に固定される。以上より、リード線81Aは、比較的緩みにくい。
一方、リード線81Gは、コイル巻回部52Gの一端52G1(巻き終わり)から、一旦、下インシュレータ70側に引き出されて渡り線Ubを形成した後、リード線が結束される上インシュレータ60側に引き出されているので、引き出される長さが長い。また、リード線81Gは、コイル巻回部52Aの巻き終わりに接続されるので、リード線81Gの端部52G1がコイル巻回部52Gに固定されない。したがって、リード線81Gは、リード線81A、81D、81Gの中で最も緩みやすい。
また、リード線81Dは、コイル巻回部52Dの一端52D1(巻き始め)から、一旦、下インシュレータ70側に引き出されて渡り線Uaを形成した後、リード線が結束される上インシュレータ60側に引き出されているので、引き出される長さが長い。但し、リード線81Dは、コイル巻回部52Dの巻き始めに接続されるので、コイル巻回部52Dの一端52D1に固定される。したがって、リード線81Dは、リード線81Gよりは緩みにくいと考えられるが、緩むおそれがある。
なお、V相およびW相のリード線もU相と同様である。
次に、中性線となるリード線82A〜82Iについて説明する。図7に示すように、リード線82A〜82Cは、コイル巻回部52A〜52Cの他端(巻き終わり)に接続される。これらのリード線82A〜82Cは、上インシュレータ60の外壁部62の外側に引き出されて、中性線結束位置Nで結束される。
リード線82D〜82Fは、コイル巻回部52D〜52Fの他端(巻き終わり)に接続される。これらのリード線82D〜82Fは、下インシュレータ70の外壁部72の所定の溝部74から外壁部72の外側に引き出されて、コイル巻回部52D〜52Fまで渡り線Uc、Vc、Wcを形成する。また、これらのリード線82D〜82Fは、それぞれコイル巻回部52D〜52Fと同じ相のコイル巻回部52G〜52Iに巻き締められた後で、すなわち歯部54G〜54Iに巻き回される巻線によってリード線82D〜82Fが固定された後で、上インシュレータ60の外壁部62の外側に引き出されて、中性線結束位置Nで結束される。
リード線82G〜82Iは、コイル巻回部52G〜52Iの他端(巻き始め)に接続される。これらのリード線82G〜82Iは、上インシュレータ60の外壁部62の外側に引き出されて、中性線結束位置Nで結束される。
上記した9本の渡り線(Ua〜Uc、Va〜Vc、Wa〜Wc)は、図6に示すように、下インシュレータ70の外壁部72の外側に形成された所定の渡り位置にそれぞれ配置される。その結果、各相の渡り線は絶縁されている。また、図6に示すように、9本の渡り線(Ua〜Uc、Va〜Vc、Wa〜Wc)のうち渡り線Ub、Vb、Wbは、その少なくとも一部が下インシュレータ70の最も下方側(コア51とは反対側)に配置される。
[リード線の緩みを取り除く構成]
上記のように構成されたモータ20では、例えば電源線および中性線を結線処理する際に、全てのリード線81A〜81Iの中でリード線81G〜81Iが最も緩みやすい。そこで、このモータ20では、リード線81G〜81Iを変形(塑性変形)させることで、リード線81G〜81Iの緩みを取り除いている。以下、リード線81G〜81Iの緩みを取り除くための構成について説明する。
図10に示すように、下インシュレータ70の外壁部72の外側に配置されたリード線81G〜81I(すなわち、渡り線Ub、Vb、Wb)は、それぞれ溝部74D〜74Fにおいて、外壁部72の外側から内側に向かって平面視V字型に変形(塑性変形)している。具体的には、渡り線Ub、Vb、Wbは、それぞれ溝部74D〜74Fの両側の外壁部72、72に当接する2つの当接部(Ub1・Ub2、Vb1・Vb2、Wb1・Wb2)と、これら2つの当接部(Ub1・Ub2、Vb1・Vb2、Wb1・Wb2)の間において外壁部72の外側から内側に突出した平面視V字型の突出部Ub3、Vb3、Wb3とを有する。この突出部Ub3、Vb3、Wb3は、例えばそれぞれの溝部74D〜74Fの両側の外壁部72、72を支点に変形させられたものである。
図10に示すように、この突出部Ub3、Vb3、Wb3は、それぞれ溝部74D〜74Fを通過しており、その一部が外壁部72の内周面(線)を延長した線L1よりも内側に位置している。より具体的には、一例として突出部Ub3について説明すると、突出部Ub3の屈曲部分の外側端部Ub31および内側端部Ub32が、外壁部72の内周面(線)を延長した線L1よりも内側に位置している。
なお、溝部74D〜74Fは、平面視において、それぞれ歯部54Aと歯部54Iとの間、歯部54Bと歯部54Dとの間、歯部54Cと歯部54Hの間に位置している。なお、図10に記載した位置(X)〜(Z)と、図6に記載した位置(X)〜(Z)とは対応している。
このように、リード線81G〜81Iが突出部Ub3、Vb3、Wb3を有するので、リード線81G〜81Iが突出部を有さない場合に比べてリード線81G〜81Iの必要長が長くなり、リード線81G〜81Iの緩みが取り除かれる。例えば、リード線81G〜81Iが緩んでいる状態のときに、渡り線Ub、Vb、Wbを外壁部72の外側から内側に変形(塑性変形)させて突出部Ub3、Vb3、Wb3を形成すれば、緩んでいたリード線81G〜81Iが張った状態となり、リード線81G〜81Iの緩みが取り除かれる。また、リード線81G〜81Iの緩み量が大きい場合、加える力を大きくするだけで突出部Ub3、Vb3、Wb3を大きくできるので、リード線81G〜81Iの緩み量が大きい場合でもリード線81G〜81Iの緩みが確実に防止される。
図11に示すように、リード線81G〜81Iのそれぞれにおけるコイル巻回部52Aと第1溝部74Aとの間の部分、コイル巻回部52Bと第1溝部74Bとの間の部分、コイル巻回部52Cと第1溝部74Cとの間の部分(以下、リード線81G〜81Iにおけるコイル巻回部52A〜52Cと第1溝部74A〜74Cとの間の部分と称する)は、下インシュレータ70の外壁部72の内側において各コイル巻回部52A〜52Cに向かって凸状に変形(塑性変形)している(以下、変形部分を凸状部90A〜90Cとする)。リード線81G〜81Iにおけるコイル巻回部52A〜52Cと第1溝部74A〜74Cとの間の部分は、下インシュレータ70の外壁部72の内周面に沿って(内周面に接触するように)配置される。
ここで、一例として図14を参照して凸状部90Aについて説明すると、凸状部90Aの一部は、第1溝部74Aの端部74A1から垂直に下ろした線L2よりも、コイル巻回部52I側(図14において線L2よりも右側)に位置している。また、渡り線Ubは、第1溝部74Aからコイル巻回部52I側(図14中の右方向)に延在しているので、渡り線Ubの延在方向と凸状部90Aの凸の向きは同じ向きである(コイル巻回部52I側を向いている)。なお、凸状部90Aは、例えばコイル巻回部52Aと第1溝部74Aの端部74A1を支点に変形させられたものである。なお、凸状部90B、90Cは、凸状部90Aと同様の構成である。
このように、リード線81G〜81Iが凸状部90A〜90Cを有するので、リード線81G〜81Iが凸状部を有さない場合に比べて、リード線81G〜81Iの必要長が長くなり、リード線81G〜81Iの緩みが取り除かれる。例えば、リード線81G〜81Iが緩んでいる状態のときに、リード線81G〜81Iにおけるコイル巻回部52A〜52Cと第1溝部74A〜74Cとの間の部分を各コイル巻回部52A〜52Cに向かって凸状に変形(塑性変形)させてやれば、緩んでいたリード線81G〜81Iが張った状態となり、リード線81G〜81Iの緩みが取り除かれる。また、第1溝部74A〜74Cが、各コイル巻回部52A〜52Cの中心線L3(図14参照)よりも、コイル巻回部52H、52F、52D側にあるので、リード線81G〜81Iにおけるコイル巻回部52A〜52Cと第1溝部74A〜74Cとの間の部分を各コイル巻回部52A〜52Cに向かって凸状に変形させやすい。
[本実施形態のモータ及び圧縮機の特徴]
本実施形態のモータ20及び圧縮機1には、以下のような特徴がある。
本実施形態のモータ20では、下インシュレータ70の外壁部72(壁部)の外側に配置されたリード線81G〜81I(渡り線Ub、Vb、Wb)が、2つの当接部(Ub1・Ub2、Vb1・Vb2、Wb1・Wb2)の間において溝部74D〜74Fから外壁部72の内側に突出した突出部Ub3、Vb3、Wb3を有するので、リード線81G〜81Iが突出部を有さない場合に比べてリード線81G〜81Iの必要長を長くでき、リード線81G〜81Iの緩みを取り除くことができる。また、突出部Ub3、Vb3、Wb3の数や溝部74D〜74Fから外壁部72の内側に突出する部分の長さを調整することで、リード線81G〜81Iの緩み量が大きい場合でもリード線81G〜81Iの緩みを確実に防止できる。また、溝部74D〜74Fの両側の外壁部72、72を支点としてリード線81G〜81Iを変形させているので、リード線81G〜81Iを容易に変形させることができる。また、従来からある下インシュレータ70の溝部74D〜74Fを利用しているので、既存のモータ20に本発明を適用できる。
また、本実施形態のモータ20では、図14に示すように、リード線81G〜81Iのそれぞれにおけるコイル巻回部52A〜52Cと第1溝部74A〜74Cとの間の部分が、下インシュレータ70の外壁部72の内側においてコイル巻回部52A〜52Cに向かって凸状であるので、凸状でない場合に比べてリード線81G〜81Iの必要長を長くでき、リード線81G〜81Iの緩みを取り除くことができる。特に、このモータ20では、外壁部72の内側においてリード線81G〜81Iの必要長を長くしているので、外壁部72の内側においてリード線81G〜81Iが緩んでいる場合に効果が高い。
また、本実施形態のモータ20では、図7に示すように、リード線81G〜81Iが2つのコイル巻回部の間(コイル巻回部52Aとコイル巻回部52Hとの間、コイル巻回部52Bとコイル巻回部52Fとの間、コイル巻回部52Cとコイル巻回部52Dとの間)を通過するように巻線が巻かれたモータ、すなわちリード線81G〜81Iが緩みやすいモータにおいて、リード線81G〜81Iの緩みを取り除くことができる。
また、本実施形態の圧縮機1では、リード線81G〜81Iの緩みを取り除くことができるモータ20を備えた圧縮機を提供できる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
[変形例]
上記実施形態では、図10に示すように、リード線81G〜81I(渡り線Ub、Vb、Wb)がそれぞれ突出部Ub3、Vb3、Wb3を有するが、突出部は、リード線81G〜81Iの少なくとも1つにあればよい。
また、上記実施形態では、図11に示すように、リード線81G〜81Iがそれぞれ凸状部90A〜90Cを有するが、凸状部90A〜90Cは、リード線81G〜81Iの少なくとも1つにあればよい。また、凸状部90A〜90Cはなくてもよい。
また、上記実施形態では、突出部Ub3、Vb3、Wb3及び凸状部90A〜90Cがリード線81G〜81Iに形成されるが、その他のリード線81A〜81F、82A〜83Iに形成されてもよい。
例えば、リード線81D〜81Fは、上記したとおり、コイル巻回部52D〜52Fの一端52(巻き始め)から、一旦、下インシュレータ70側に引き出されて渡り線Ua、Va、Waを形成した後、リード線が結束される上インシュレータ60側に引き出されているので、引き出される長さが長い。したがって、リード線81D〜81Fも、リード線81G〜81Iと同様、緩むおそれがある。そのため、リード線81D〜81Fの渡り線Ua、Va、Waに、上記した突出部Ub3、Vb3、Wb3と同様の突出部を形成した場合でも、リード線81G〜81Iと同様の効果が得られる。また、リード線81D〜81Fに、上記した凸状部90A〜90Cと同様の凸状部を形成した場合でも、リード線81G〜81Iと同様の効果が得られる。
また、上記実施形態では、突出部Ub3における屈曲部分の外側端部Ub31および内側端部Ub32が、下インシュレータ70の外壁部72の内周面(線)を延長した線L1よりも内側に位置しているが、それに限られるものではない。したがって、突出部Ub3における屈曲部分の外側端部Ub31のみが線L1よりも内側に位置してもよいし、外側端部Ub31および内側端部Ub32がともに線L1よりも外側に位置していてもよい。なお、突出部Vb3、Wb3についても同様である。
また、上記実施形態では、図10に示すように、突出部Ub3、Vb3、Wb3は、それぞれ溝部74D〜74Fに形成されるが、その他の溝部74に形成されてもよい。また、突出部Ub3、Vb3、Wb3がそれぞれ複数の溝部74に形成されてもよい。
また、上記実施形態では、図14に示すように、凸状部90Aが第1溝部74Aの端部74A1から垂直に下ろした線L2よりもコイル巻回部52I側に位置するが、そうでなくてもよい。なお、凸状部90B、90Cも同様である。
また、上記実施形態では、リード線81G〜81Iは、2つのコイル巻回部の間(それぞれコイル巻回部52Aとコイル巻回部52Hとの間、コイル巻回部52Bとコイル巻回部52Fとの間、コイル巻回部52Cとコイル巻回部52Dとの間)を通過するように巻線が巻かれているが、それに限られるものではない。例えば、リード線81G〜81Iが、それぞれコイル巻回部52A〜52Cに巻き締められるように(歯部54A〜54Cに巻き回される巻線によってリード線81G〜81Iが固定されるように)巻かれたものであってもよい。
また、上記実施形態では、渡り線Ub、Vb、Wbが下インシュレータ70の外壁部72の外側を渡るが、上インシュレータ60の外壁部62の外側を渡ってもよい。したがって、突出部Ub3、Vb3、Wb3が上インシュレータ60の外壁部62に形成された溝部の間に形成されてもよい。また、3つの第1溝部が上インシュレータ60の外壁部62に形成されており、リード線81G〜81Iにおけるそれらの第1溝部とコイル巻回部52A〜52Cとの間の部分が、上インシュレータ60の外壁部62の内側においてコイル巻回部52A〜52Cに向かって凸状であってもよい。
また、上記実施形態では、コア51が環状に配列された9つの歯部54G〜54Iを有し、9つの歯部54G〜54Iのそれぞれにコイル巻回部52A〜52Iが形成されるモータ20に本発明を適用した。しかし、コアが環状に配列された6つの歯部を有し、6つの歯部のそれぞれにコイル巻回部が形成されるモータに本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、冷媒としてCO2を使用したが、冷媒はCO2に限られない。例えば、R410、R32、R22であってもよい。
また、上記実施形態では、1シリンダ型ロータリー圧縮機に本発明を適用したが、2シリンダ型ロータリー圧縮機に本発明を適用してもよい。また、例えば、スクロール圧縮機、レシプロ圧縮機、スクリュー圧縮機に本発明を適用してもよい。
本発明を利用すれば、リード線の緩みを取り除くことができる。
1 圧縮機
20 モータ
51 コア
52A〜52I コイル巻回部
54A〜54I 歯部
60、70 インシュレータ
61、71 突出部
62、72 外壁部(壁部)
74 溝部
74A〜74C 第1溝部
81G〜81I リード線
Ub1・Ub2、Vb1・Vb2、Wb1・Wb2 2つの当接部
Ub3、Vb3、Wb3 突出部

Claims (4)

  1. 環状に配列された複数の歯部を有するコアと、
    前記歯部にそれぞれ積層される複数の突出部及び前記複数の突出部の径方向外側に配置される環状の壁部を有するインシュレータと、
    前記歯部及び当該歯部に積層された突出部に巻き回されたコイル巻回部とを備え、
    前記壁部には、前記コイル巻回部に接続されたリード線を通過させる溝部が形成されており、
    前記壁部の外側に配置されたリード線は、
    前記溝部の両側の壁部にそれぞれ当接する2つの当接部と、
    前記2つの当接部の間において前記溝部から前記壁部の内側に突出した突出部とを有していることを特徴とするモータ。
  2. 前記溝部は、前記コイル巻回部の径方向外側に対応した位置且つ前記コアの軸方向において前記コイル巻回部から離れた位置に配置された第1溝部を含んでおり、
    前記コイル巻回部に接続されたリード線は、前記第1溝部から前記壁部の外側に引き出されるものであって、
    前記リード線における前記コイル巻回部と前記第1溝部との間の部分が、前記壁部の内側において前記コイル巻回部に向かって凸状であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  3. 前記コイル巻回部に接続されたリード線は、隣接する2つの前記歯部及び当該歯部に積層された突出部にそれぞれ巻き回された2つのコイル巻回部の間を通過した後で、前記壁部の外側に引き出されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
  4. 請求項1−3のいずれかに記載のモータを備えることを特徴とする圧縮機。
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