JP2014214366A - プラズマcvd成膜用マスク、プラズマcvd成膜方法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

プラズマcvd成膜用マスク、プラズマcvd成膜方法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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智行 中野
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Abstract

【課題】端部膜厚均一性を高くすることができ、異常放電を抑制でき、且つ洗浄ガスに対する耐食性を有するプラズマCVD成膜用マスクを提供する。
【解決手段】プラズマCVD成膜装置で被成膜物の表面に膜を成膜する際に用いられるプラズマCVD成膜用マスクであり、開口部21及び非開口部22を有するマスク部材2と、前記開口部21を形成する前記非開口部22の端部22eの少なくとも一部に固定され、セラミックコートされた金属部材3と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマCVD成膜用マスク、プラズマCVD成膜方法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機物質を使用した有機エレクトロルミネッセンス(単に、「有機EL」ということもある。)素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されており、活発な研究開発が進められている。有機EL素子は、基板上に形成された第1電極(陽極又は陰極)と、その上に積層された有機発光物質を含有する有機化合物層(単層部又は多層部)すなわち発光層と、この発光層上に積層された第2電極(陰極又は陽極)とを有する薄膜型の素子である。このような有機EL素子に電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注入され、陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られることが知られている。
このように、有機EL素子は薄膜型の素子であるため、1個又は複数個の有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルをバックライト等の面光源として利用した場合には、面光源を備えた装置を容易に薄型にすることができる。また、画素としての有機EL素子を基板上に所定個数形成した有機ELパネルをディスプレイパネルとして用いて表示装置を構成した場合には、視認性が高い、視野角依存性がないなど、液晶表示装置では得られない利点がある。
このような有機EL素子に用いられる有機発光材料等の有機物は水分や酸素等に弱く、これらと接触すると有機EL素子の性能が劣化する。また、電極も酸化により大気中では特性が急激に劣化する。これらの劣化を防止するため、一般的には金属缶や封止ガラス等で形成された封止キャップ缶を素子基板に接着剤にて貼り合せ封止する方法が提案されている。これは、密閉封止空間を有し、封止空間内に不活性ガスを充填し、更に吸湿材を配置したものである。このようにすると、素子表面陰極上は空間を有しているので、素子への外部応力による劣化はない構成となっている。しかしながら、有機EL素子自体は薄いのに封止部材の厚みと吸湿材を配置するための空間の厚みを持つこととなり、全体として厚みのある発光素子となっている。
近年、軽くて割れ難いという特性が評価され、ガラス製の基材や封止部材を用いた有機EL素子からフレキシブルな樹脂基材を用いた有機EL素子の需要が高まってきている。このようなフレキシブルな樹脂基材を用いた有機EL素子に対しては、封止性能をもつ窒化ケイ素膜をプラズマCVDで成膜することにより封止膜が成膜される。なお、封止膜を成膜する際に、マスクを用いたパターン成膜が行われる。プラズマCVDによるパターン成膜では、プロセス上、プラズマ及び熱の影響で寸法の安定性がない。蒸着等で用いられるメタルマスクを使用すると異常放電が懸念される。また、熱によってメタルマスクが伸びてしまい、ここにガスが入り込んで成膜されてしまうことにより(つまり、入り込み影響が出ることにより)、パターン精度が低下するおそれもある。さらに、クリーニングを行うにあたって腐食性のNF3ガスを使用する必要があるため、当該ガスによりメタルマスクが腐食されてしまう。
そのため、プラズマCVDでパターン成膜を行う場合、一般的には、金属製ではなくセラミック製のマスクが使用される。しかしながら、セラミック製のマスクでは細かなマスクパターンを形成することや、メタルマスクのように厚さ寸法を小さくすることは困難である。なお、マスクの厚さ寸法が大きいと、マスクの開口部近傍に形成される封止膜の膜厚が薄くなり、膜厚の均一性が低下する。これらの問題を解決すべく、例えば、特許文献1〜3に記載の発明が提案されている。
特許文献1には、開口部を画成しているフレームと、このフレームによって支持され、開口部の少なくとも一部をカバーしている少なくとも第1マスクパネルと、を備えるシャドーフレームが記載されている。なお、この特許文献1には、フレームをアルミニウム又はセラミックで形成してもよく、第1マスクパネルをセラミックで形成してもよい旨が記載されている。
特許文献2には、マスク開口部の上下端に突起部を設けたパッシベーション層(保護層)成膜用マスクを用いて、CVD法によりパターニング成膜する有機ELパネルの製造方法が記載されている。なお、この特許文献2には、かかるマスクをアルミナやジルコニアなどのセラミックスで形成するとよい旨が記載されている。
特許文献3には、外形が多角形に形成された金属製マスク本体と、少なくとも前記金属製マスク本体の一辺上に配置されたセラミック製のカバーとを備えたプラズマCVD用マスクが記載されている。
特表2008−506993号公報 特開2011−76759号公報 特開2007−308763号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているシャドーフレームは、熱による基板変形を押さえ込むためのものである(用途)から、フレームの厚さ寸法を小さくすることは困難であるという、加工上の問題がある。そのため、開口部近傍に成膜される膜の端部の膜厚の均一性(端部膜厚均一性)が低くなるという問題がある。この場合、成膜された封止膜の態様が好ましいものではなく、不均一となった膜の一部から空気や水が浸入して有機発光材料等の有機物と接触し、性能が劣化してしまう。
また、特許文献2に記載されているパッシベーション層成膜用マスクは、マスク開口部の上下端に突起部を設けることとしているが、セラミックをそのような形状に加工するのは非常に困難で費用もかかるだけでなく、薄くなった端部の強度が低くなるという問題がある。
そして、特許文献3に記載されているプラズマCVD用マスクは、セラミック製のカバーを備えているものの、マスク本体は金属製であるため、プラズマCVDによる成膜時に異常放電するおそれがあるだけでなく、クリーニングを行う際のNF3ガス(洗浄ガス)によって腐食されてしまうおそれがある。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、端部膜厚均一性を高くすることができ、異常放電を抑制でき、且つ洗浄ガスに対する耐食性を有するプラズマCVD成膜用マスク、プラズマCVD成膜方法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを課題とする。
本発明の課題は以下の手段によって達成される。
〔1〕プラズマCVD成膜装置で被成膜物の表面に膜を成膜する際に用いられるプラズマCVD成膜用マスクであり、開口部及び非開口部を有するマスク部材と、前記開口部を形成する前記非開口部の端部の少なくとも一部に固定され、セラミックコートされた金属部材と、を備えることを特徴とするプラズマCVD成膜用マスク。
〔2〕前記マスク部材の非開口部がセラミック製であることを特徴とする〔1〕に記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔3〕前記セラミックコートが、原子層堆積法によるアルミナコートであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔4〕前記端部は、前記プラズマCVD成膜装置の電極に対向する一側面から、前記プラズマCVDによって成膜される基材に対向する他側面に向けて、当該開口部の開口寸法が小さくなるように傾斜が設けられていることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔5〕前記金属部材の厚さ寸法が50〜500μmであり、前記マスク部材の厚さ寸法が2〜6mmであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔6〕前記非開口部の端部から前記金属部材の開口側の端部までの長さ寸法が1〜10mmであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔7〕前記非開口部への前記金属部材の固定に接着剤を用いる場合は、その貼付け代が5〜10mmであることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔8〕前記プラズマCVD法で行う成膜がデポアップ方式であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
〔9〕〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスクを用いて被成膜物の表面にプラズマCVD法にて封止膜を成膜することを特徴とするプラズマCVD成膜方法。
〔10〕前記封止膜の成膜がロールツーロール搬送で行われることを特徴とする〔9〕に記載のプラズマCVD成膜方法。
〔11〕〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスクを用いて封止膜が成膜されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明によれば、開口部近傍に成膜される膜の端部膜厚の均一性を高くすることができ、異常放電を抑制でき、且つ洗浄ガスに対する耐食性を有するプラズマCVD成膜用マスク、プラズマCVD成膜方法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るプラズマCVD成膜用マスクを電極が配置される方向から見た平面図である。 図1のA−A線拡大断面図である。 本発明の一実施形態に係る有機EL素子の構成を説明する概略断面図である。 有機EL素子を製造する製造装置の概略構成図である。 No.1に係るマスクの構成を説明する平面図である。 No.2に係るマスクの構成を説明する平面図である。 No.3に係るマスクの構成を説明する平面図である。 No.4に係るマスクの構成を説明する平面図である。 No.5に係るマスクの構成を説明する平面図である。 No.6に係るマスクの構成を説明する平面図である。 No.7に係るマスクの構成を説明する平面図である。
以下、適宜図面を参照して、本発明に係るプラズマCVD成膜用マスク、プラズマCVD成膜方法、及び有機エレクトロルミネッセンス素子の一実施形態について説明する。
[プラズマCVD成膜用マスク]
本実施形態に係るプラズマCVD成膜用マスク(以下、単にマスクという。)は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)成膜装置で被成膜物の表面に膜(層)を成膜(形成)する際に、当該膜を所定の形状とするために用いられる。
ここで、プラズマCVD成膜装置とは、プラズマCVD法により成膜する装置をいう。また、プラズマCVD法とは、原料ガスをプラズマで分解して化学的に活性なラジカルやイオンを生成して基板上で反応させ、膜を形成する方法をいう。
また、被成膜物とは、後記する基材や、当該基材上に電極層や一層以上の有機EL層などを形成した有機ELパネル(有機EL素子)などが挙げられる。
図1に示すように、かかるマスク1は、開口部21及び非開口部22を有するマスク部材2と、この開口部21を形成する前記非開口部22の端部22eの少なくとも一部に固定され、セラミックコートされた金属部材3と、を備えている。なお、金属部材3を被覆するセラミックコート31(図2参照)は、金属部材3の全表面に形成するのが好ましい。このようにすると、より確実に異常放電を抑制することができるだけでなく、クリーニングを行う際のNF3ガス(洗浄ガス)によって腐食されず、洗浄ガスに対する耐食性に優れる。
マスク部材2は、開口部21及び非開口部22を有しており、これらによって所定のマスクパターンを形成している。つまり、マスク部材2は、被成膜物が開口部21によってプラズマCVD成膜装置の電極(図示せず)と面することのできる部分に膜を成膜させる一方で、被成膜物が非開口部22によってプラズマCVD成膜装置の電極と面しないようにしている部分(マスクしている部分)には膜を成膜させないようにしている。なお、図1においては、開口部21を単純な矩形として示しているが、所望する任意の形状とすることができることは言うまでもなく、このような場合には、当該任意の形状にて膜を成膜することができる。
マスク部材2の非開口部22は、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウムなどのセラミック製とするのが好ましい。セラミック製のマスク部材2とすれば、腐食性のNF3ガスを使用してクリーニングを行っても、当該ガスにより腐食されることはない。また、セラミックは硬さが高く、耐熱性にも優れているので、セラミック製のマスク1を用いてデポアップ方式にてプラズマCVD法を行った場合であっても、熱や自重によってマスク部材2が撓んだり、歪んだりしない。そのため、かかるマスク部材2は、被成膜物との密着不良が生じ難く、端部膜厚均一性が低下するのを防止することができる。
なお、デポアップ方式とは、被成膜物の下方に電極を設け、下向きとなった被成膜物の表面に成膜する方式をいう(かかる方式はフェイスダウン方式とも呼ばれている。)。デポアップ方式では、被成膜物の下方に電極を設ける関係上、被成膜物と電極との間に所定の空間ができてしまうので、被成膜物を保持するための部材が必要となる。そこで、そのような部材としてセラミック製のマスク1を用いると、当該マスク1は前記したように撓んだり、歪んだりしないので、被成膜物を適切に保持しつつ、所定の形状の膜を成膜することが可能となる。
ただし、マスク部材2をセラミック製とすると、硬さは高い反面、脆性破壊し易いものとなるため、端部22eの厚さ寸法を金属製のマスクのように小さくすることができない。そのため、端部22eの厚みの影響を受けて、端部22e近傍における端部膜厚均一性が低下してしまう。つまり、端部22eの厚さ寸法が大きいと成膜時にガスがスムーズに流れないなどの現象が起き、端部22e近傍に形成される膜の端部の膜厚が薄くなってしまう。かかる現象は、端部22eの厚さ寸法が大きいほど顕著になる。
また、前記したように、マスク部材2をセラミック製とすると、硬さは高い反面、脆性破壊し易い。従って、端部膜厚均一性を高めるために端部22eの厚さ寸法を小さくすると、端部22eに欠けが生じ易くなる。端部22eに欠けが生じると、成膜される膜の形状が変わってしまうおそれがある。
そこで、本発明では前記したように、開口部21を形成する非開口部22の端部22eの少なくとも一部に、セラミックコートされた金属部材3を固定している。
かかる金属部材3は、金属製であるため、脆性破壊し難く、延性に優れており、その厚さ寸法を端部22eよりも小さくすることができる。そのため、成膜時にガスをスムーズに流すことができるなどの理由により、端部膜厚均一性を高めることができる。
金属部材3は、例えば、42アロイ、36インバー、スーパーインバー、インコネル等の低熱線膨張部材などで形成するとよい。これらの金属を用いれば容易に厚さ寸法を小さくすることができる。金属部材3の厚さ寸法t3(図2参照)は、例えば、50〜500μmとするとよい。金属部材3の厚さ寸法t3がこの範囲にあると、ある程度の強度を確保することができるのでハンドリング性に優れたものとすることができるとともに、成膜時にガスをスムーズに流すことができるなどの理由により、より確実に端部膜厚均一性を高めることができる。
なお、マスク部材2の厚さ寸法t2(図2参照)は、例えば、2〜6mmとするとよい。マスク部材2の厚さ寸法t2がこの範囲にあるとハンドリング時の破損が生じ難くなる。また、マスク部材2の厚さ寸法t2がこの範囲にあると、デポアップ方式で成膜する場合であっても熱や自重によって撓んだり、歪んだりしないので、被成膜物を好適に保持することができる。
なお、非開口部22の端部22eは、図2に示すように、プラズマCVD成膜装置の電極に対向する一側面22aから、プラズマCVD成膜装置によって成膜される被成膜物に対向する他側面22bに向けて、当該開口部21の開口寸法が小さくなるように傾斜させる(テーパさせる)のが好ましい。つまり、図2に示す開口寸法s1、s2が、s1>s2の関係となるように傾斜させるのが好ましい。このようにすると、成膜時に電極側から供給されるガスが傾斜により、被成膜物に向けてスムーズに流れるようになる。そのため、端部膜厚均一性をより高めることができる。また、端部22eの厚さ寸法t2eは、テーパ加工により欠けない程度の厚さとすればよく、特定の数値範囲に限定されない。
図1に戻って説明を続ける。前記した金属部材3は、かかる端部22eの任意の一部に固定することができ、端部22eの全部に固定することもできる。本発明では、この金属部材3をセラミックコートで被覆することにより、プラズマCVD成膜装置で成膜する際に、金属に反応して生じる異常放電を防止することができる。また、腐食性のNF3ガスを使用してクリーニングを行っても、当該ガスによる腐食を防止することができる。
金属部材3を被覆するセラミックコートは、原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法によるアルミナコートであるのが好ましい。アルミナ溶射等にてアルミナコートする場合と比較すると、成膜時の温度を低くすることができるので、熱で金属部材3が撓んでしまうのを防ぐことができる。
なお、ALD法は、原料ガスを切り替えて1原子層ずつ被着物(本発明においては金属部材3)の表面に吸着させ、これを反応させることで成膜する方法である。反応の活性化手段の違いにより、熱ALD法とプラズマALD法に分けることができる。
熱ALD法は、プラズマを発生させることなく、加熱された金属部材3に、成膜のための原料となるガスを供給することにより成膜するものである。
プラズマALD法は、熱ALDの方式に加えてプラズマを発生させ、反応をさらに促進させて成膜するものである。なお、プラズマALD法は熱ALD法よりも低温プロセス域において緻密でバリア性の良い膜を形成することができる。熱で撓むおそれが少なく、緻密でバリア性の良い膜を形成できることから、金属部材3にセラミックコートを成膜する手法としてはプラズマALD法によるのが好ましいが、熱ALD法によるものであっても何ら問題なく使用することができる。
かかる金属部材3は、非開口部22の端部22eから金属部材3の開口側の端部3eまでの長さ寸法s3を1〜10mmとするとよい。かかる長さ寸法s3がこの範囲にあると、成膜時にガスをスムーズに流すことができるので、端部膜厚均一性を高めることができる。また、長さ寸法s3が適切であるので、製造が容易であるとともに、十分な強度を確保することができるためハンドリング性に優れたものとすることができる。さらに、成膜時に熱の影響を受けても金属部材3が撓んだり、歪んだりし難いので、入り込み影響を抑制することができる。なお、長さ寸法s3は2mmを超え10mm以下とするのが好ましい。
また、非開口部22への金属部材3の固定は、任意の方法で行うことができる。例えば、東亜合成(株)製アロンセラミックDなどの接着剤を用いてこれらを固定することができる。この場合、その貼付け代は5〜10mmとするのが好ましい。貼付け代がこの範囲にあると、接着剤による接着が強固に行われる。
また、非開口部22への金属部材3の固定の他の態様として、例えば、マスク部材2の他側面22bに1つ以上の雌ねじ部(図示せず)を設け、金属部材3における当該雌ねじ部と合致する位置に穴部を(図示せず)を設け、当該穴部を介して雄ねじ(図示せず)により螺着してもよい。なお、この場合、用いる雄ねじの表面を、金属部材3と同じようにセラミックコートするのが好ましい。また、ねじを用いる場合、耐熱性樹脂であるピーク材で形成したものを使用することもできる。
非開口部22への金属部材3の固定の更なる他の態様としては、例えば、締まりばめ、嵌合、ブローチ加工、ステーキング、ろう付け、溶接、リベット打ち、キー係合、又はその他の適切な固定法によって固定することができる。
以上に説明した本実施形態に係るマスク1は、マスク部材2の開口部21を形成する非開口部22の端部22eにセラミックコートした金属部材3を固定している。そのため、マスク1は、マスク部材2の開口部21近傍に成膜される膜の端部膜厚均一性を高くすることができるだけでなく、異常放電を抑制することができ、更に洗浄ガスに対する耐食性も備えている。特に、非開口部22の端部22eから金属部材3の開口側の端部3eまでの長さ寸法s3が適切である場合には、入り込み影響を殆ど無くすことができる。
よって、前記したように、デポアップ方式のプラズマCVD成膜装置によって成膜する際に被成膜物を好適に保持しつつ、所定の形状に膜を成膜することができる。
また、マスク1はプラズマCVD法に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などの成膜方法においても好適に使用することができる。
なお、以上の説明では、デポアップ方式のプラズマCVD成膜装置でマスク1を使用して成膜する場合について説明したが、デポダウン方式のプラズマCVD成膜装置であってもこれと同様に好適に使用することができる。なお、デポダウン方式とは、被成膜物の上方に成膜装置の電極を設け、上向きとなった被成膜物の表面に成膜する方式をいう(かかる方式はフェイスアップ方式とも呼ばれている。)。
[プラズマCVD成膜方法と有機EL素子]
次に、本実施形態に係るマスク1を用いて被成膜物の表面にプラズマCVD法にて封止膜を成膜するプラズマCVD成膜方法について説明する。かかるマスク1を用いたプラズマCVD法による封止膜の成膜は、例えば、ロールツーロール搬送で有機EL素子を製造する際に好適に適用される。なお、ロールツーロール搬送で有機EL素子を製造すると生産性が高く好ましい。
以下、有機EL素子を製造する場合を例に本実施形態に係るプラズマCVD成膜方法を説明するが、説明の便宜上、プラズマCVD成膜方法について詳細に説明する前に、本実施形態に係るマスク1を用いて封止膜が成膜された有機EL素子について説明する。
(有機EL素子)
図3に示すように、有機EL素子10は、基材11と、第1の電極層12と、有機EL層13と、第2の電極層14と、を備えている。そして、これらの層を封止するように、マスク1を用いたプラズマCVD法によって成膜された封止膜15を備えている。以下、これらの層について順に説明する。
(基材)
基材11は、基板、透明基板などとも呼ばれ、有機EL素子10の基体となる部材である。基材11は、長尺帯状であって可撓性を有する合成樹脂、好ましくは透明樹脂フィルムが用いられる。
基材11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン(登録商標)、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等で形成することができる。
この基材11には、第1の電極層12が形成される面及び/又はその裏面に、ガスの通過を妨げるガスバリア膜(図示省略)を形成するのが好ましい。ガスバリア膜は、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が挙げられる。ガスバリア膜の特性としては、水蒸気透過度が0.01g/m2・day・atm以下であることが好ましい。さらには、酸素透過度10-3ml/m2/day以下、水蒸気透過度10-5g/m2/day以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
ガスバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。ガスバリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができるが、特開2004−68143号に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
(第1の電極層)
第1の電極層12は、電源が接続されて、例えば、陽極として機能する。このような第1の電極層12としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23・ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。第1の電極層12はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィ法で所望の形状のパターンを形成してもよく、或いはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、前記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。或いは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式など湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(第2の電極層)
第2の電極層14は、電源が接続されて、例えば、陰極として機能する。このような第2の電極層14としては、仕事関数の小さい(4eV未満)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。第2の電極層14はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、第2の電極層14としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極(第1の電極層12)又は陰極(第2の電極層14)のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、第2の電極層14に前記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、第1の電極層12の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の第2の電極層14(陰極)を作製することができ、これを応用することで第1の電極層12(陽極)と第2の電極層14(陰極)の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(有機EL層)
有機EL層13は、陽極から注入される正孔と、陰極から注入される電子とが再結合することによって発光する発光層(図示省略)を含んでいる。有機EL層13は、この発光層のほかに電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層(陽極バッファー層)、電子注入層(陰極バッファー層)、正孔阻止層、電子阻止層など(いずれも図示省略)を適宜選択して積層させることができる。
有機EL層13の構成例として、以下のものが挙げられる。
(1)発光層
(2)正孔輸送層/発光層
(3)発光層/電子輸送層
(4)正孔輸送層/発光層/電子輸送層
(5)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層
(6)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層
(7)陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層
(8)正孔輸送層/陽極バッファー層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層
(9)陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層
(発光層)
発光層は、前記したように、陽極から注入される正孔と、陰極から注入される電子とが再結合することによって発光する層である。発光層は、単層でもよいが複数の発光層を用いて多層とすることもできる。多層とする場合、当該発光層間に非発光性の中間層を有してもよい。また、前記層構成のうち、発光層を含む有機化合物層を1つの発光ユニットとし、複数の発光ユニットを積層することが可能である。当該複数の積層された発光ユニットにおいては、発光ユニット間に非発光性の中間層を有していてもよく、さらに中間層は電荷発生層を含んでいてもよい。なお、発光層が多層の場合は、積層する数に合わせて蒸着ユニットや塗布・乾燥部のユニットを配設する必要がある。
発光層は、例えば、青色発光層、緑色発光層、及び赤色発光層から選択される少なくとも1つからなる。青色発光層、緑色発光層、及び赤色発光の3つを積層することで、白色素子の作製が可能である。発光層を積層する場合の積層順については特に制限はない。本発明においては、少なくとも一つの青発光層が、全発光層中最も陽極に近い位置に設けられていることが好ましい。また、発光層を4層以上設ける場合には、陽極に近い順から、例えば、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層/赤色発光層のように青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を順に積層することが、輝度安定性を高める上で好ましい。
発光層の膜厚の総和は特に制限はないが、膜の均質性、発光に必要な電圧等を考慮し、通常2nm〜5μm、好ましくは2〜200nmの範囲で選ばれる。さらに10〜20nmの範囲にあるのが好ましい。膜厚を20nm以下にすると電圧面のみならず、駆動電流に対する発光色の安定性が向上する効果があり好ましい。個々の発光層の膜厚は、好ましくは2〜100nmの範囲で選ばれ、2〜20nmの範囲にあるのがさらに好ましい。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については特に制限はないが、3発光層中、青発光層(複数層ある場合はその総和)が最も厚いことが好ましい。
発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある発光スペクトルの異なる少なくとも3層以上の層を含む。3層以上であれば、特に制限はない。4層より多い場合には、同一の発光スペクトルを有する層が複数層あってもよい。発光極大波長が430〜480nmにある層を青発光層、510〜550nmにある層を緑発光層、600〜640nmの範囲にある層を赤発光層と言う。また、前記の極大波長を維持する範囲において、各発光層には複数の発光性化合物を混合してもよい。例えば、青発光層に、極大波長430〜480nmの青発光性化合物と、同510〜550nmの緑発光性化合物を混合して用いてもよい。
発光層に使用できる材料(発光材料)は特に限定はなく、例えば、株式会社 東レリサーチセンター フラットパネルディスプレイの最新動向 ELディスプレイの現状と最新技術動向 228〜332頁に記載されている如き各種材料が挙げられる。
なお、本発明に係る有機EL素子10においては、低分子の発光材料であっても好適に使用することができる。低分子の発光材料とは、重量平均分子量で5000以下の発光材料をいい、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下の発光材料をいう。また、重量平均分子量が5000よりも大きい高分子の発光材料も好適に使用することができる。
有機EL素子10中の有機EL層13を構成している発光層には、発光層の発光効率を高くするために公知のホスト化合物と公知のリン光性化合物(リン光発光性化合物とも言う)を含有することが好ましい。
ホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。ホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用もできる。
これらのホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、尚且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。公知のホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等に記載の化合物が挙げられる。
複数の発光層を有する場合、これら各層のホスト化合物の50質量%以上が同一の化合物であることが、有機EL層13全体に渡って均質な膜性状を得やすいことから好ましく、さらにはホスト化合物のリン光発光エネルギーが2.9eV以上であることが、ドーパントからのエネルギー移動を効率的に抑制し、高輝度を得る上で有利となることからより好ましい。リン光発光エネルギーとは、ホスト化合物を基材上に100nmの厚さで蒸着膜として形成し、そのフォトルミネッセンスを測定し、そのリン光発光の0−0バンドのピークエネルギーを言う。
ホスト化合物は、有機EL素子10の経時での劣化(輝度低下、膜性状の劣化)、光源としての市場ニーズ等を考慮し、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。即ち、輝度と耐久性の両方を満足するためには、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。Tgは、さらに好ましくは100℃以上である。
リン光性化合物(リン光発光性化合物)とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。先に説明したホスト化合物と合わせ使用することで、より発光効率の高い有機EL素子10とすることができる。
本発明におけるリン光性化合物は、リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
リン光性化合物の発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光性化合物は、有機EL素子10の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。リン光性化合物としては、好ましくは元素の周期表で8族−10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
本発明の有機EL素子10や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタオプティクス社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
本発明で言うところの白色素子とは、2°視野角正面輝度を上記方法により測定した際に、1000cd/m2でのCIE1931表色系における色度がX=0.33±0.07、Y=0.33±0.07の領域内にあることを言う。
本発明の有機EL素子10の発光の室温における外部取り出し量子効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子10外部に発光した光子数/有機EL素子10に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子10からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子10の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
本発明の有機EL素子10は、発光層で発生した光を効率よく取り出すために以下に示す方法を併用することが好ましい。一般的に、有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光の内15%から20%程度の光しか取り出せないと言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435号明細書)、基材に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)、基材と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)、基材と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などがある。
本発明においては、これらの方法を有機EL素子10と組み合わせて用いることができるが、基材と発光層の間に基材よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、或いは基材、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基材と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。本発明においては、これらの手段を組み合わせることにより、さらに高輝度或いは耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また、さらに1.35以下であることが好ましい。低屈折率媒質の厚みは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基材内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。全反射を起こす界面若しくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光の内、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては前述のとおり、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
さらに、本発明の有機EL素子10は、発光層で発生した光を効率よく取り出すために、基材の光取り出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、或いは、所謂集光シートと組み合わせたりすることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することができる。これにより、特定方向上の輝度を高めることができる。マイクロレンズアレイの例としては、基材の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。また、発光素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
発光層は、真空の成膜室内に任意の蒸着源を配置して実施される蒸着法により形成可能である。蒸着法としては、例えば、スパッタ法、マスク蒸着法、フォトリソパターニング法などがある。また、発光層は、発光層形成用塗布液を塗布し、乾燥することでも形成可能である。前記したように、発光層は、電極又は電子注入層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層である。発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
ここで、発光層形成用塗布液を塗布する湿式塗布機としては、例えば、ダイコート方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェット方式、メイヤーバー方式、キャップコート法、スプレー塗布法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等に用いる塗布機が使用可能である。また、これらの湿式塗布機の使用は有機化合物層の材料に応じて適宜選択可能である。
(正孔輸送層(正孔注入層、電子阻止層))
正孔輸送層は、正孔を有効な再結合領域まで移動させる役割と、エネルギー障壁として電子をブロックして局所的に留め発光を強める役割を果たす。正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。これらについては、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」に詳細に記載されている。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、及び導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような所謂p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号、特開2000−196140号、特開2001−102175号、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)などに記載されたものが挙げられる。このようなp性の高い正孔輸送層を用いると、より低消費電力の有機EL素子を作製することができるため好ましい。
(電子輸送層(電子注入層、正孔阻止層))
電子輸送層は、電子を有効な再結合領域まで移動させる役割と、エネルギー障壁として正孔をブロックして局所的に留め発光を強める役割を果たす。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料(電子輸送材料)からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も含まれる。電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。これらについては、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」に詳細に記載されている。
従来、単層の電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)、又は電子輸送層を複数層とする場合において、発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層の材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層の材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層の材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料としても例示されるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層の材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層の材料として用いることができる。
電子輸送層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、電子輸送層に不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに、本発明においては、電子輸送層にカリウムやカリウム化合物などを含有させてもよい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層のn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
電子注入層(陰極バッファー層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
正孔阻止層は、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層は、電子輸送層に記載したものを用いて具現することができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。正孔阻止層の膜厚は、好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
(封止膜)
図3に示すように、封止膜15は、基材11から第1の電極層12、有機EL層13、第2の電極層14を覆うようにして所定の形状で成膜され、これらを封止する。
なお、前記したように、本実施形態に係るマスク1は、この封止膜15をプラズマCVD成膜装置にて成膜する際に好適に用いることができるが、前記したいずれの層を成膜する場合であっても、用いることができる。
封止膜15は、基材11のガスバリア膜で記載した材料及び方法を用いるのが好ましい。
(ロールツーロール搬送での製造)
以上に説明した、本実施形態に係るマスク1を用いて製造される有機EL素子10は、そのほとんどの工程を前記したロールツーロール搬送で行うことができる。以下、図4を参照して、ロールツーロール搬送にて有機EL素子10を製造する様子を説明する。なお、図4は、有機EL素子を製造する一連の製造装置100の構成例を示す模式図である。
製造装置100は、第1の電極層12(陽極)が形成された可撓性の帯状基材ロール11c(以下、単に「ロール11c」という)から基材11を巻き出す巻き出し室110と、基材11の搬送方向に直行する方向の位置ずれを起こさない機構、搬送方向への移動距離補正機構等が配置された搬送補助室120と、を備えている。
また、製造装置100は、基材11に対し、有機EL層13などの各機能層を構成する材料を蒸着する第1成膜室130と、前記の搬送補助室120と同様の構成を備える搬送補助室140と、前記第1成膜室130において形成された機能層上にさらに別の機能層を形成する第2成膜室150と、を備えている。
さらに、製造装置100は、前記の搬送補助室120、140と同様の構成を備える搬送補助室160と、基材11上に形成された有機EL層13などの各機能層を封止する封止膜15を成膜する封止膜成膜室170と、を備えている。
また、製造装置100は、前記の搬送補助室120、140、160と同様の構成を備える搬送補助室180と、封止膜15が成膜されて得られた有機ELシート11e(有機EL素子10)をロール11dに巻き取る巻取り室190と、を備えている。
なお、ここでは、説明の簡略化のために、機能層を形成する室数を第1成膜室130及び第2成膜室150の2室としている。ただし、これは、形成する機能層の層数や種類に応じて適宜変更可能である。また、これらの室では、デポアップ方式にて各機能層が形成されている。そのため、封止膜成膜室170でもデポアップ方式のプラズマCVD成膜装置171にて封止膜15を成膜するようにしている。なお、一般的に、プラズマCVD法による成膜においては、デポダウン方式の方が、効率が良いとされているが、デポダウン方式にて成膜する場合は、有機ELシート11eを反転させる必要がある。製造装置100に有機ELシート11eを反転させる反転機構を設けることができる場合は、当該シートを反転させてデポダウン方式にて封止膜15を成膜するとよい。なお、ここでは、そのような反転機構を備えず、デポアップ方式にて各機能層を形成し、そのままデポアップ方式で封止膜15を成膜している。なお、ロールツーロール搬送の場合、基材11の反転機構を設置することが困難であり、デポアップ方式にて各機能層を形成した後にそのままデポアップ方式で封止膜15を成膜することが望ましい。
前記した各室110〜190内は、本実施形態においては、当該室内で行われる処理に応じて、雰囲気が制御されている。具体的には、機能層の形成が行われる第1成膜室130及び第2成膜室150は、真空になっている。また、基材11の搬送が行われる補助搬送室120、140、160、180、封止膜成膜室170、さらに、巻き出し室110及び巻き取り室190は、真空になっている。
ロール11cから巻き出される基材11は、各室110〜190を経由してロール11dに巻き取られるまで複数のロールにより進行方向が変えられると共に、適度な張力が付与されている。複数のロールの設置数や設置位置等は任意に設定することができる。
巻き出し室110に備えられるロール11cの巻き芯、及び、巻き取り室190に備えられるロール11dの巻き芯は、基材11を巻き取った際に変形することがなく、100℃程度の雰囲気に晒された場合でも変形しないものが好ましい。また、巻き芯は、製造装置100への着脱や減圧室等への移送時に、発塵しないことが好ましい。さらに、巻き芯の表面部分のうちで、基材11の接する部分は平滑であることが好ましく、具体的には表面粗さRaが30nm以下、Rtが100nm以下であることが好ましい。巻き芯の材質としては、ガラス繊維強化プラスチックやステンレスであることが好ましい。
さらに、基材11の巻き芯の軸方向両端部には、巻き出しや巻き取りの際の、コア上のウェブ表面と、この上に重なるウェブの背面が強く擦りあうことを防止するために、ナーリング加工(エンボス加工ともいう)を施してもよい。この高さは、例えば2μmから50μm程度とすることが好ましい。
以下、順に説明する。まず、基材11が、巻き出し室110に設置されたロール11cから巻き出される。なお、既に説明しているように、この基材11には予め陽極(第1の電極層12)パターニングが施されていてもよい。
ロール11cから巻き出された基材11は、搬送補助室120を経由して、第1成膜室130に搬送される。そして、搬送された基材11は第1成膜室130内の所定位置で停止され、第1成膜室130内で機能層の形成(即ち成膜)が行われる。
機能層の形成は、図4に示すように、第1成膜室130内の所定の位置に、機能層を形成するための蒸着材料が放出される蒸着源131と、この蒸着源131と基材11との間に、所望のパターンの機能層を形成するための、微調整可能なパターン形成用マスク132(以下、「マスク132」という)とが配置される。また、基材11を挟んでマスク132と対向する位置に、蒸着中の基材11の温度を維持するための温度調整プレート133が配置される。なお、このマスク132は、本実施形態に係るマスク1であってもよい。
基材11上への蒸着は、以下のようにして行われる。即ち、まず、蒸着源131は予め決められた蒸着割合で蒸着材料が放出されるように調整されて維持され、意図せず基材11に付着しないよう、シャッタ(図示せず)等により遮断されている。基材11には、図示しないアライメントマークが設けられる等により目印が付されている。そして、第1成膜室130には、その目印が読み込まれるカメラ(図示せず)等が設置されている。これにより、基材11は、カメラがアライメントマークを読み込むことができる所定の位置まで任意の速度で搬送された後、停止する。
次いで、カメラによってアライメントマークが読み取られ、マスク132がアライメントマークの位置に合うように微調整される。その後、温度調整プレート133が基材11に近づいて密着接触しつつ、マスク132も基材11に近づき、密着接触又はわずかに間隙を設けた位置で停止する。
そして、蒸着源131のシャッタが開にされ、基材11上に有機EL層13などの機能層がパターン状に形成される。このとき、決められた膜厚になるように蒸着時間等を制御し、決められた膜厚になった時点でシャッタが閉とされる。その後、マスク132が基材11から離間して基準位置に戻されつつ、温度調整プレート133も基材11から離間して基準位置に戻される。その後、基材11の搬送が再開される。
搬送が再開されると、基材11は、搬送補助室140を経由して第2成膜室150まで搬送される。そして、第2成膜室150において、第1成膜室130における成膜と同様にして金属蒸着が行われ、陰極(第2の電極層14)が形成される。即ち、基材11に対して、陰極形成という処理が行われる。
陰極の形成は、図4に示すように、第2成膜室150内の所定の位置に、機能層を形成するための金属材料が放出される蒸着源151と、この蒸着源151と基材11との間に、所望のパターンの陰極を形成するための、微調整可能なパターン形成用マスク152(以下、「マスク152」という)とが配置される。また、基材11を挟んでマスク152と対向する位置に、蒸着中の基材11の温度を維持するための温度調整プレート153が配置される。なお、このマスク152は、本実施形態に係るマスク1であってもよい。
その後、機能層及び陰極が形成された基材11は、搬送補助室160を経由して封止膜成膜室170に送られる。封止膜成膜室170においては、基材11が搬送されながら、第1の電極層12、有機EL層13、第2の電極層15を覆うようにして封止膜15が成膜される(図3参照)。
封止膜15の成膜は、図4に示すように、封止膜成膜室170内の所定の位置に、封止膜15を成膜するプラズマCVD成膜装置の電極171と、この電極171と各機能層が形成された基材11(被成膜物)と、の間に、所望の形状のパターンの封止膜15を形成するための、微調整可能なパターン形成用マスク172(以下、「マスク172」という)が配置されている。また、基材11を挟んだマスク172と対向する位置に、成膜中の基材11の温度を維持するための温度調整プレート173が配置される。なお、このマスク172は、本実施形態に係るマスク1であるのが好ましい。以下の説明では、マスク172として本実施形態に係るマスク1を用いた態様について説明する。
基材11上への封止膜15の成膜は、以下のようにして行われる。即ち、まず、反応場内に予め決められた割合でキャリアガスと原料ガスを混合して導入し、基材11を温度調整プレート173で加熱し、電極171にて高周波を印加して、ガスをプラズマ化して活性化させ、基板11上に封止膜15を成膜する。また、基材11には、図示しないアライメントマークが設けられる等により目印が付されている。そして、封止膜成膜室170には、その目印が読み込まれるカメラ(図示せず)等が設置されている。これにより、基材11は、カメラがアライメントマークを読み込むことができる所定の位置まで任意の速度で搬送された後、停止する。
次いで、カメラによってアライメントマークが読み取られ、マスク1(マスク172)がアライメントマークの位置に合うように微調整される。その後、温度調整プレート173が基材11に近づいて密着接触しつつ、マスク1(マスク172)も基材11に近づき、密着接触又はわずかに間隙を設けた位置で停止する。
そして、電極171に電圧を印加して放電を開始し、前記したようにして基材11上に封止膜15がパターン状に成膜される。このとき、決められた膜厚になるように成膜時間等を制御し、決められた膜厚になった時点で放電とガスの供給を終了する。その後、マスク1が基材11から離間して基準位置に戻されつつ、温度調整プレート173も基材11から離間して基準位置に戻される。その後、基材11の搬送が再開される。
このようにして有機ELシート11e(有機EL素子10)が得られる。そして、得られた有機ELシート11eは、搬送補助室180を経由して巻き取り室190に搬送され、ロール11dに巻き取られる。最後に、必要に応じてロール11dから巻き出し、所定の大きさに切断することで、有機EL素子10が得られる。この有機EL素子10は、封止膜15を成膜する際に本実施形態に係るマスク1を用いている。
かかるマスク1は、セラミック製の非開口部22にセラミックコートした金属部材3を固定しているので、金属部材3の厚さ寸法t3を小さくすることができるから、当該金属部材3の端部3e近傍の端部膜厚均一性を高くすることができる。
また、マスク1は、セラミック製の非開口部22にセラミックコートした金属部材3を固定しているので、プラズマCVD成膜装置で成膜した場合であっても、成膜時のプラズマに起因する異常放電を抑制することができる。
そして、所定量又は所定期間、有機EL素子10を製造したら、設備の保全や有機EL素子10への異物混入防止のため、腐食性のNF3ガスを使用して封止成膜室170内のクリーニングを行うが、金属部材3はセラミックコートされているので、NF3ガスによって腐食されない。なお、図示してないがNF3ガスによるクリーニングの際は基材11にガスが接触しないような隔離機構を有し、マスクや電極等をクリーニングする。
以上の説明ではロールツーロール搬送で有機EL素子10を製造する場合について説明したが、有機ELシート11eが得られた後に、断裁処理等して枚葉の状態とするロールツーシート搬送でも同様に有機EL素子10を製造することができる。
次に、本発明の要件を満たし、所望の効果が確認された実施例と、そうでない比較例とにより、本発明の内容を具体的に説明する。
[1]プラズマCVD成膜用マスクの作製
以下の条件で、No.1〜6に係るプラズマCVD成膜用マスク(以下、単にマスクという。)を作製した。なお、いずれのマスクも図5〜11に示すように、2つの矩形状の開口部を設けた。また、No.3〜7に係るマスクは、接着剤(東亜合成(株)製、アロンセラミックD)を用いてマスク部材と金属部材を固定した。
(1)No.1に係るマスク(図5参照)
マスク部材:アルミナ製(厚さ寸法3mm)
金属部材 :なし
(2)No.2に係るマスク(図6参照)
マスク部材:なし
金属部材 :42アロイ製(厚さ寸法300μm)
ALD法によるアルミナコート無し
(3)No.3に係るマスク(図7参照)
マスク部材:アルミナ製(厚さ寸法3mm)
金属部材 :42アロイ製(厚さ寸法300μm)
ALD法によるアルミナコート有り(厚さ50nm)
マスク部材と金属部材の貼付け代8mm
マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法5mm
(4)No.4に係るマスク(図8参照)
マスク部材:アルミナ製(厚さ寸法3mm)
金属部材 :42アロイ製(厚さ寸法300μm)
ALD法によるアルミナコート無し
マスク部材と金属部材の貼付け代8mm
マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法5mm
(5)No.5に係るマスク(図9参照)
マスク部材:アルミナ製(厚さ寸法3mm)
金属部材 :42アロイ製(厚さ寸法300μm)
ALD法によるアルミナコート有り(厚さ50nm)
マスク部材と金属部材の貼付け代2mm
マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法5mm
(6)No.6に係るマスク(図10参照)
マスク部材:アルミナ製(厚さ寸法3mm)
金属部材 :42アロイ製(厚さ寸法300μm)
ALD法によるアルミナコート有り(厚さ50nm)
マスク部材と金属部材の貼付け代8mm
マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法2mm以下
(7)No.7に係るマスク(図11参照)
マスク部材:アルミナ製(厚さ寸法3mm)
金属部材 :42アロイ製(厚さ寸法300μm)
ALD法によるアルミナコート有り(厚さ50nm)
マスク部材と金属部材の貼付け代8mm
マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法12mm以上
以上の条件で作製したNo.1〜7に係るマスクを用いて、以下の条件で基材の表面に封止膜として適用し得る窒化珪素膜を、デポアップ方式のプラズマCVD成膜装置によって成膜した。なお、基材は、幅が1000mm、厚さが100μmの長尺なPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いた。また、窒化珪素膜の膜厚は50nmとした。
窒化珪素膜は、基材に対面するように設けられた電極と、この電極にプラズマ励起電力を供給する高周波電源と、基材を保持する保持部材に対してバイアス電力を供給するバイアス電源と、電極に向けてキャリアガスや原料ガスを供給するガス供給手段と、を備えたプラズマCVD成膜装置で成膜した。
成膜ガスは、シランガス(SiH4)、アンモニアガス(NH3)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を用いた。これらのガスの供給量は、シランガスが100sccm、アンモニアガスが200sccm、窒素ガスが500sccm、水素ガスが500sccmとした。また、成膜圧力は50Paとした。
電極には、高周波電源から周波数13.5MHzで3000Wのプラズマ励起電力を供給した。さらに、保持部材には、バイアス電源から500Wのバイアス電力を供給した。また、成膜中は、保持部材の温度を110℃に調整した。
No.1〜7に係るマスクを用いて、以上の条件で基材の表面に成膜した窒化珪素膜について、端部膜厚均一性、異常放電、入り込み影響、マスクの洗浄ガスに対する耐食性、及び耐久性を評価した。これらの評価は次のようにして行った。
(端部膜厚均一性)
成膜した窒化珪素膜の端部を触針式表面形状測定器で測定し、平均膜厚から±3%に入ったところまでの長さを測定した。そして、その長さが0.15mm以下を良好(○)、0.15mmを超えるものを不良(×)と評価した。
(異常放電)
異常放電(Vpp異常)は、成膜した窒化珪素膜や基材の表面を目視観察し、焦げやその他の確認し得る異常な状態がない場合を異常放電無し(○)、異常な状態があった場合を異常放電有り(×)と評価した。なお、Vppとは、高周波電力の交流成分のピークからピークまでの一周期分の電圧のことである。一般的にVppは、プラズマ処理室内に励起されたプラズマの状態、例えばプラズマ密度の変化に伴い変動を起す。そのため、このVppを常時測定することでプラズマ処理中のプラズマ状態を正確に検出することが可能である(特開2005−277270号公報参考)。つまり、Vppのトレンドを常時確認し、異常放電が起こった場合には異常値として把握する。
(入り込み影響)
成膜した窒化珪素膜の端部を触針式表面形状測定器で測定し、金属部材の非開口部の端部から、当該非開口部の下方に膜の端部がどの程度入り込んで成膜されているか、その長さを測定した。そして、第2非開口部の端部の下方に入り込んで成膜されている長さが、0.2mm以下のものを良好(○)、0.2mmを超えているものを不良(×)と評価した。
(洗浄ガスに対する耐食性)
洗浄ガスに対する耐食性はマスクに対してNF3ガスを500sccm流し、目視確認により金属部材に腐食が確認されなかったものを優良(○)、腐食が確認されたものを不良(×)と評価した。
(耐久性)
耐久性は、成膜後のマスクを目視確認し、マスク部材と金属部材が全く剥離しておらず、金属部材に撓みや歪みが生じていないものを優良(○)、マスク部材と金属部材の剥離が微小なサイズで確認されたか、金属部材に微小なサイズの撓みや歪みが確認されたが、成膜に支障をきたさないと判断されたものを良(△)、マスク部材と金属部材の剥離が大きなサイズで確認されたか、金属部材に大きなサイズの撓みや歪みが確認され、成膜に支障をきたすと判断されたものを不良(×)と評価した。
これらの評価結果を表1に示す。
Figure 2014214366
表1に示すとおり、No.3、5に係るマスクを用いて成膜した場合、これらのマスクはいずれも本発明の要件を満たしていたので、良い評価を得ることができた(実施例)。従って、これらのマスクは有機EL素子の封止膜をデポアップ方式のプラズマCVD法にて成膜する際に好適に用いられ得ることが確認された。特に、No.3に係るマスクは、全ての評価結果が優良(○)であり、これらの中でも好ましい態様であることが確認された。
これに対し、No.1、2、4、6、7に係るマスクを用いて成膜した場合、これらのマスクはいずれも本発明の要件のうちの少なくとも一つを満たしていなかったので、良い評価を得ることができなかった(比較例)。
具体的には、No.1に係るマスクは、アルミナ製のマスク部材のみであったため、開口部の端部の厚さ寸法を金属部材のように小さくすることができなかった。そのため、マスク部材の端部の厚みの影響を受け、端部膜厚均一性が劣る結果となった。これは、マスク部材の端部の厚さ寸法が大きかったために、成膜時にガスがスムーズに流れなかったためと推察された。
No.2に係るマスクは、アルミナコート(セラミックコート)していない金属部材のみのマスクであったため、プラズマCVDによる成膜時に異常放電を生じることが確認された。また、成膜時の熱影響により金属部材の撓みや歪みが発生し、入り込み影響も劣っていた。また、アルミナコートされていないので、NF3ガスによって腐食されただけでなく、耐久性も劣っていた。
No.4に係るマスクは、アルミナコート(セラミックコート)していない金属部材をマスク部材に固定していたため、No.2に係るマスクと同じように、プラズマCVDによる成膜時に異常放電を生じることが確認された。また、アルミナコートされていないので、NF3ガスによって腐食されただけでなく、耐久性も劣っていた。
No.6に係るマスクは、マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法が2mm以下だったので、マスク部材の端部の厚みの影響を受け、成膜時にガスをスムーズに流すことが困難となった。そのため、端部膜厚均一性が低下した。
No.7に係るマスクは、マスク部材の端部から金属部材の開口側の端部までの長さ寸法が12mm以上だったので、成膜時の熱の影響により金属部材が撓んだり、歪んだりしたため、端部膜厚均一性が劣る結果となった。また、金属部材が撓んだり、歪んだりしたため、入り込み影響も劣っていた。
1 マスク(プラズマCVD成膜用マスク)
2 マスク部材
21 開口部
22 非開口部
22e (非開口部の)端部
3 金属部材
31 セラミックコート
3e (金属部材の)端部

Claims (11)

  1. プラズマCVD成膜装置で被成膜物の表面に膜を成膜する際に用いられるプラズマCVD成膜用マスクであり、
    開口部及び非開口部を有するマスク部材と、
    前記開口部を形成する前記非開口部の端部の少なくとも一部に固定され、セラミックコートされた金属部材と、
    を備えることを特徴とするプラズマCVD成膜用マスク。
  2. 前記マスク部材の非開口部がセラミック製であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  3. 前記セラミックコートが、原子層堆積法によるアルミナコートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  4. 前記端部は、前記プラズマCVD成膜装置の電極に対向する一側面から、前記プラズマCVDによって成膜される基材に対向する他側面に向けて、当該開口部の開口寸法が小さくなるように傾斜が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  5. 前記金属部材の厚さ寸法が50〜500μmであり、
    前記マスク部材の厚さ寸法が2〜6mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  6. 前記非開口部の端部から前記金属部材の開口側の端部までの長さ寸法が1〜10mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  7. 前記非開口部への前記金属部材の固定に接着剤を用いる場合は、その貼付け代が5〜10mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  8. 前記プラズマCVD法で行う成膜がデポアップ方式であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスク。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスクを用いて被成膜物の表面にプラズマCVD法にて封止膜を成膜することを特徴とするプラズマCVD成膜方法。
  10. 前記封止膜の成膜がロールツーロール搬送で行われることを特徴とする請求項9に記載のプラズマCVD成膜方法。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマCVD成膜用マスクを用いて封止膜が成膜されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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