JP2014208590A - 低転位密度のSiC単結晶ブール及びその形成方法 - Google Patents

低転位密度のSiC単結晶ブール及びその形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成長したSiC単結晶における転位密度の低減を可能とする昇華によるSiC単結晶の製造方法を提供する。【解決手段】昇華法によるSiC単結晶14の成長のための適切な条件が成立した後、窒素ガス原料28に接続されたバルブ26を、1分〜1時間の所定時間開くことにより、所定量の窒素22がチャンバー16に導入され、成長ルツボ6の黒鉛を透過して、窒素が成長結晶界面にドープされる。続いてバルブ26を閉じ、不活性ガス22を導入することにより成長ルツボ6に残存する窒素は迅速に除去される。この操作を複数回繰り返すことで摂動を生じさせる。このSiC単結晶成長工程の活発(sharp)な摂動によって、貫通転位の密度が顕著に低減する。前記の成長ルツボ6への窒素の導入による摂動の代わりに、摂動は、成長ルツボ6内の圧力を変化させること、及び/または成長ルツボ6内の温度を変化させることによっても実現することができる。【選択図】図4

Description

本発明は低転位密度の炭化ケイ素単結晶の昇華成長に関する。
炭化ケイ素は、新世代のSiC及びGaN半導体の開発及び製造に用いられる重要な広バンドギャップ材料である。GaNベースのデバイスがマイクロ周波数で作動するよう意図されるものであるのに対し、SiCベースのデバイスは効率的なパワースイッチを目的としている。他の応用も想定され、出現している。炭化ケイ素はSiC及びGaNのエピタキシャル層を成長させるための格子整合された(lattice-matched)基板材料として用いられる。低欠陥のエピ層及び高品質のデバイスを製造するためには、基板は、転位密度が低いなど、結晶品質が良好でなければならない。
転位は一次元結晶欠陥である。これらは一般的に、結晶格子における転位の格子歪みの規模及び方向、及び、転位線の方向を表すいわゆるバーガースベクトルの値及び方向に基づいて分類される。炭化ケイ素では、転位線が結晶学的c方向に沿って延びる転位を貫通(スレッディング)と呼ぶ。これらは、そのバーガースベクトルが1または2格子パラメータを超えない貫通螺旋転位(TSD)と貫通刃状転位(TED)を含む。マイクロパイプは、バーガースベクトルが大きく、時には数百格子パラメータに達する場合もある中空貫通螺旋転位である。転位線が基底c面に平行な転位は、基底面転位(BPD)と呼ばれる。
SiCの転位密度の測定には、転位に関係するエッチピットを露出させるために、一般的に溶融KOHでのエッチングが採用される。特定の転位の性質は、しばしば、エッチピットの特徴的な形状に基づいて判断することができる。エッチングされたSiC表面(c面)の写真を図1に示す。一般的に、TSDによるエッチピットは六方晶系で、より丸く見えることが多いTEDによるものより幾分大きい。BPDによるエッチピットは、通常、長尺で非対称である。
例として挙げると、代表的な直径7.62cmのPVT成長4H−SiC基板では、TED及びTSD密度は、それぞれ、おおよそ5・10cm−2及び10cm−2であり、BPDの密度は10cm−2あるいは10cm−2と高い場合もある。全体の転位密度は、3・10cm−2と高くなることもある。測定された転位密度は、結晶の品質、及び結晶から抽出されたウェハーがどのようにスライスされるかの両方に依存する。エッチングは、転位線がウェハーの表面を切り取った場合のみ転位を明らかにする。よって、c面(軸上)と平行にスライスされたウェハーは、BPDの低密度を示す傾向がある。
さらに、高度に窒素ドープされたn+SiC基板におけるエッチピットの形状は通常明確なものではない。ほんの一部分は明確に長尺形状であるのでBPDと特定することもできるが、残りの部分はすべて円形に近い。
通常、明確な六角形の転位エッチピットはない。これは、このような結晶においては螺旋転位の発生率が低いことと関連付けられるかもしれない。おそらく、窒素ドープ剤がSiCのエッチング作用に与える影響から来る結果であり、これにより、TSDとTEDとの間の差異が小さくなる。
さらに、これらのエッチピットはわずかに非対称になる傾向がある。これは、ピッツバーグにおける2005年炭化ケイ素及び関連材料に関する国際会議のP.J.ウェルマン氏他による「高密度p−型ドープSiC対高密度n−型ドープSiCにおける基底転位力学」において示唆されたように、これらの転位における基底成分を示しているのかもしれないし、単に、エッチング中に不純物によって誘発される不均一性を反映しているのかもしれない。その結果、これらの種類のサンプルに溶融KOHエッチング方法を施すことによって、異なるタイプの転位を明確に分別することは困難である。しかし、この困難性は、総合転位密度の測定に影響を与えるものではない。
4H−SiCのホモエピタキシーのためには、規則的なステップフローを実現し、3Cポリタイプの核形成を排除するために、4H−SiC基板は、一般的に、そのc面の方向を4度〜8度ずらす。その結果、ほとんどの貫通欠陥と一部分のBPDが、基板を貫通してエピ層に至る。BPDの大部分は、基板とエピタキシャル層との間の界面でTEDに変換される。加えて、種々のタイプの転位とステップフローとの間の相互作用の結果、新たな欠陥が基板−エピタキシャル層界面に出現することがある。これらのエピタキシャル層欠陥は、ピッツバーグにおける2005年炭化ケイ素及び関連材料に関する国際会議のX.ジャン氏他による「4H−SiCエピ層におけるキャロット欠陥の構造」、及びJ.電子材料(J. Electronic Mat.)、24巻(1995)、295頁のJ.A.パウエル氏他による「炭化ケイ素エピタキシャルフィルムの表面形態学」において報告されているように、デバイスの性能に有害であり、いわゆるコメットと三角形を含んでいる。これらの欠陥の正確な性質はまだ完全には理解されていないが、基板における転位と密接な関係があると考えられている。
図2A及び図2Bは、それぞれ、コメット欠陥と三角形欠陥を含むエピタキシャル表面の拡大写真である。これらの写真は溶融KOHでエッチングされたサンプルで撮影されたものである。従って、これらの表面はまた、転位関連のエッチピットも多く含んでいる。これらの図からわかるように、コメット欠陥及び三角形欠陥の両方は、転位によって境界をつけられている。特に、コメット(彗星)は一端がTSDで境界となっており、他端がBPDで境界となっている。三角形は2つ以上のBPDで境界がつけられている。
SiC成長及びエピタキシーの当業者には周知なように、Solid-State Electron誌第42巻(1998)、2157頁のP.D.ノイデック氏他による「4H−SiCのp+n接合整流器における初期螺旋転位に関係する破壊減損」及びMaterial Science Forum誌第353−356巻(2001)、727頁のH.レンデンマン氏他による「4.5kV PiN及び2.5kV JBSダイオードの長期作動」で報告されている通り、マイクロパイプ及び転位は、SiC製のデバイスの効率性及び信頼性に有害な影響を与える。参考資料のMRS公報、第30巻、4月号(2005)、280頁のJ.J.スマケリス氏他による「マイクロ波及びパワーデバイスの炭化ケイ素材料のバルク結晶成長、エピタキシー、及び欠陥低減」には、基板からエピ層に伝播するマイクロパイプ、TSD、TED、
及びBPDによるデバイス限界に関して述べられている。
要約すると、SiC基板における転位密度の低減は、エピタキシャル層における有害な欠陥の存在を最小限にし、デバイスの特性の改良を実現するために非常に重要であるということである。
昇華によるSiC単結晶の成長に用いられる最も一般的な技術は、物理的気相輸送(PVT)である。PVTシステム2の概略図を図3に示す。昇華原料物質4として機能する多結晶SiC結晶粒が黒鉛成長ルツボ6の底部に載置され、SiC種結晶8が、ルツボ6の黒鉛蓋または天部10に取り付けられている。充填されたルツボ6は、抵抗加熱器(抵抗加熱)またはRFコイル12(誘導加熱)によって、2000〜2400℃の間の成長温度まで加熱される。ルツボ6内部では、ヘリウムやアルゴンなどの低圧(1〜200Torr)不活性ガスの存在下で、昇華原料物質4と種結晶8との間に温度差が確立され、そこで、原料物質4の温度は、種結晶8の温度より高くなる。これらの条件下において、原料物質4が昇華して、ルツボ6の内部を、SiC、SiC、Siなどのシリコン及
び炭素を担持した揮発性分子種からなる蒸気で満たす。これらの種は、温度勾配の作用で、昇華原料物質4から種結晶8の方向に気相を介して拡散する。種結晶8の方が低温であるため、種結晶8での蒸気の凝縮及びそこでのSiC単結晶14の成長を引き起こす過飽和状態が作り出される。
Nature誌430巻(2004)、1009頁のナカムラ氏他による参考資料「最高品質の炭化ケイ素単結晶」は、繰り返しa表面成長(RAF)を用いた、おおよそ100cm−2の非常に低い転位密度のSiC結晶成長を開示している。この手順は、複数回の昇華成長工程を含んでいる。各工程で、成長方向は90度回転させられる。転位密度の大幅な低減が見られるものの、RAF工程は大量生産の助けとはならず、これまで、SiC結晶成長の分野で知られる団体や組織が、自主的に成果を再現したり、確認したりしたことはない。
SiC結晶における転位の総粒子数は、2つのグループに分けることができる。種にもともと存在する転位と、成長中に発生する転位である。成長中の転位は、粒子及び原料や黒鉛部分から放出される汚染物質による成長界面の汚染が原因と考えられる。急な温度勾配が、過度の熱弾性応力や転位の発生を招くことがある。
成長中の転位の発生を排除または低減するために、従来の確立された方法を、PVT昇華成長工程に適用することができる。これらの方法には、成長成分の純度を上げること;上昇した温度での黒鉛内容物及びソースの脱ガス及び真空焼成;温度勾配の緩和がある。
参考文献であるピッツバーグにおける2005年炭化ケイ素及び関連材料に関する国際会議のP.J.ウェルマン氏他による「高密度p−型ドープSiC対高密度n−型ドープSiCにおける基底転位力学」は、窒素による過剰補償を用いたアルミニウムでドープされたp−型SiCの成長中のn−型層の組み込みと、その後の結晶による総転位におけるBPDの一部の研究を報告している。研究の焦点は、p−型とn−型のドープSiCの比較と、BPDに対する効果である。当該参考文献は、挿入されたn−型層においてBPD比率が増加することと、その後に比率(fraction)が減少することを報告している。全体的なレベルに対する転位密度の効果は報告されていない。さらに、前述したように、観察されたエッチピット形態におけるp−型とn−型のSiCとの間の相違は、必ずしも転位
の性質に対応しない。エッチング挙動は、種々の不純物によって修正することが可能である。種から成長結晶への貫通転位の伝播を最小限にするために適用できる周知技術はない。
Solid-State Electron誌第42巻(1998)、2157頁「4H−SiCのp+n接合整流器における初期螺旋転位に関係する破壊減損」 Material Science Forum誌第353−356巻(2001)、727頁「4.5kV PiN及び2.5kV JBSダイオードの長期作動」 2005年炭化ケイ素及び関連材料に関する国際会議「高密度p−型ドープSiC対高密度n−型ドープSiCにおける基底転位力学」P.J.ウェルマン氏他
従って、昇華によって成長したSiC単結晶における転位密度を低減すること、つまり、種から成長結晶への成長中の貫通転位の伝播を最小限にすることが好ましい。
本発明の低転位密度のSiC単結晶ブールを形成する方法は、成長したSiC単結晶ブールの貫通転位密度が、SiC単結晶ブール成長中の貫通転位から基底面転位への変換により、ブールの最初の成長部分からブールの最後の成長部分にかけて実質的に低下するように、温度の変更と、温度勾配の変更と、雰囲気ガスの組成及び圧力の変更とを行いつつ、SiC単結晶種上にSiC単結晶ブールを昇華成長させるステップを含む。
好適には、前記雰囲気ガスは、不活性ガス、水素、窒素、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
さらに、本発明の低転位密度のSiC単結晶ブールは、異なる格子パラメータを有する、連続して成長したブールの隣接する層と、SiC単結晶ブール成長中の貫通転位から基底面転位への変換により、ブールの最初の成長部分からブールの最後の成長部分にかけて実質的に低下する貫通転位密度とのうち少なくとも一方を有する。
好適には、前記低転位密度のSiC単結晶ブールは、4Hポリタイプ又は6Hポリタイプである。
本発明による結晶成長方法の一実施例は、(a)成長ルツボの内部に、種結晶と原料物質を、間隔を空けた関係で載置するステップ、(b)結晶の成長のための開始条件を前記成長ルツボで確立するステップ、(c)前記結晶の成長中、前記成長ルツボにおけるガス、前記成長ルツボにおける圧力、及び前記成長ルツボにおける温度のうち少なくとも一つの成長条件を前記成長ルツボ内で間欠的に複数回変更するステップを含み、
前記開始条件は、(1)前記成長ルツボ内における適切なガス、(2)前記成長ルツボ内におけるガスの適切な圧力、(3)前記原料物質が昇華し、前記成長ルツボにおける温度勾配を介して種結晶に輸送され、そこに前記昇華した原料物質が凝結するような前記成長ルツボにおける適切な温度からなる。
この方法において、前記成長条件のうち少なくとも一つを間欠的に変更する各例は、前記少なくとも一つの成長条件をその開始成長条件から変更し、その後、前記変更された成長条件を、所定時間の後その開始成長条件に戻すことを含むことができる。この所定時間は、間欠的変更の各例で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
前記ステップ(b)における適切なガスは、ヘリウム、アルゴン、及び水素のうち少なくとも1つを含むことができる。前記ステップ(c)におけるガスの変更は、前記ステップ(b)の適切なガスに窒素を加えることである。
前記ステップ(b)における適切な気圧は、1Torr〜200Torrの第1圧力である。前記ステップ(c)における圧力変更は、前記気圧を前記第1圧力から1Torr〜200Torrの第2圧力に増加することを含むことができる。
前記ステップ(b)における適切な温度は、2000℃〜2400℃の間の第1温度である。前記ステップ(c)における温度変更は、前記温度を前記第1温度から2000℃〜2400℃の間の第2温度に上げるまたは下げることを含むことができる。
前記成長ルツボは、前記ガスが導入されるチャンバーの内部に設けることができる。前記成長ルツボは、制限はされないが、多孔性黒鉛などの、前記ガスに対して透過性をもつ材料を含むことができる。チャンバーは溶融シリカを含むことができる。
SiCのPVT結晶成長方法の別の実施例は、(a)内部に、SiC多結晶性原料物質とSiC種結晶を間隔を空けた関係で配置させた成長ルツボを準備するステップ、(b)前記SiC原料物質と前記SiC種結晶との間に温度勾配が生じるように前記成長ルツボの内部を加熱するステップ、ここで、前記SiC原料物質が昇華温度まで加熱されて、前記温度勾配は、昇華されたSiC原料物質がSiC種結晶に輸送されて、そこで前記昇華されたSiC原料物質が前記SiC種結晶上に凝結して成長結晶を形成するに十分なものであり、(c)前記昇華原料物質の前記SiC種結晶への輸送と、前記昇華原料物質の前記SiC種結晶上での凝結とを容易にするために、前記成長ルツボへガスを流入させるステップ、(d)前記昇華原料物質の前記SiC種結晶への輸送の間と前記昇華原料物質の前記SiC種結晶上での凝結の間において、複数回、前記成長ルツボへ流入するガスの混
合物、前記成長ルツボにおける圧力、及び、前記成長ルツボにおける温度勾配の最低または最高温度の少なくとも一方を含む成長条件の少なくとも1つを、開始成長条件から変更し、その後、前記変更された成長条件を前記開始成長条件に戻すことを行うステップを含み、前記変更の各々は1分〜1時間の時間間隔で行われる。
前記成長ルツボへ流入するガスの混合物における変更の開始は、前記ステップ(c)のガスに、前記成長結晶の導電性の増加、前記成長結晶の可視色の変化、または前記成長結晶の格子パラメータの変化のうち少なくとも1つを引き起こす別のガスを添加するステップを含むことができる。前記成長ルツボへ流入するガスの混合物における変更の終了は、前記別のガスを前記ステップ(c)のガス流から除去するステップを含むことができる。
前記別のガスは窒素であっても良い。前記ステップ(c)のガスは、ヘリウム、アルゴン、水素のうち少なくとも1つを含む。
前記成長ルツボに流入するガスの圧力における変更の開始は、第1ガス圧力から第2ガス圧力への前記流入ガスの圧力の増減である。前記成長ルツボに流入する圧力における変更の終了は、前記第2ガス圧力から前記第1ガス圧力への前記流入ガスの圧力の増加または減少を含むことができる。各ガス圧力は、1Torr〜200Torrであることが好ましい。
前記成長ルツボにおける温度勾配の最低または最高温度の少なくとも一方のうち、少なくとも一つにおける変更の開始は、前記最低温度、前記最高温度、またはその両方の温度の上昇を含むことができる。前記成長ルツボにおける温度勾配の最低または最高温度の少なくとも一方のうち、少なくとも一つにおける変更の終了は、前記変更開始時の温度に戻すための、前記最低温度、前記最高温度、またはその両方の温度の低減を含むことができる。
前記温度勾配は、10℃〜50℃の間、または25℃〜50℃の間とすることができる。前記温度勾配の最低温度は2000℃であり、前記温度勾配の最高温度は2400℃とすることができる。
水酸化カリウムでエッチングされたSiC表面(c−面)の拡大写真であり、貫通螺旋転位(TSD)、貫通刃状転位(TED)、及び基底面転位(BPD)を示している。
コメット欠陥を含む水酸化カリウムでエッチングされたエピタキシャル表面の拡大写真である。 三角形欠陥を含む水酸化カリウムでエッチングされたエピタキシャル表面の拡大写真である。
昇華によるSiC単結晶の成長のための物理的気相輸送(PVT)システムの概略図である。
本発明の実施形態による昇華によるSiC単結晶の摂動成長のためのPVTシステムの概略図である。
本発明の実施例によるSiC単結晶の摂動成長のための方法のフローチャートである。
開示された方法により成長したブールの断面図である。
図6のブールから得られた二番目に成長するウェハーの拡大写真である。
図6のブールから得られた最後に成長するウェハーの拡大写真である。
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しており、同じ参照番号は同じ要素に対応している。
SiC単結晶成長工程の活発(sharp)な摂動によって、貫通転位の密度が顕著に低減することがわかっている。このような摂動を誘発する望ましい方法の一つは、成長中における段階的なドーピングである。
段階的ドーピングは、連続して成長した結晶の隣接する層どうしが、わずかに異なる格子パラメータを有する状態を作り出す。その結果、横方向の応力成分が作り出されて、それが、その応力を回避あるいは排除するために、各貫通転位に、強制的に、その転位線の方向を変更させる。好ましくは、各転位線の方向は90℃変わる、つまり、貫通からの転位が基底となる。従って、転位が、近傍に位置する異符号の転位と交差する可能性が増加する。さらに、このように形成された基底面転位は、もはや、さらなる結晶成長の方向(c方向)には広がらない。SiC単結晶成長中に複数回行われる段階的ドーピングは、転位密度を大幅に低減することがわかっている。
図4はSiC単結晶の摂動成長のためのシステムの非制限的な一実施例の概略図である。図4においては、炭化ケイ素のPVT昇華成長が黒鉛蓋10で密閉された黒鉛成長ルツボ6で行われる。ルツボ6及び蓋10は、コネチカット州ダンベリーにある、登録商標をUCAR(R)(登録番号1008278号)とするユニオン・カーバイド社製の「ATJ」などの高密度、微小粒子で低孔隙率の黒鉛や、それに類似するもので作られていることが好ましい。成長ルツボ6には、SiC多結晶原料物質4と単結晶SiC種結晶8が充填されている。原料物質4はルツボ6の下部に載置され、種結晶8はルツボ6の頂部に載置されており、好ましくは蓋10に取り付けられている。原料物質4は薄壁の黒鉛原料ルツボ5に入れても良く、このルツボ5は適切及び/または望ましい方法でルツボ6の内部壁及び底部から間隔を空けて載置しても良い(図示の通り)。しかし、これは発明を限定するものと解釈すべきものではない。なぜなら、図3に示すように、原料物質4をルツボ6の底部に載置できることも想定できるからである。
原料物質4及び種結晶8が充填された成長ルツボ6は、好ましくは溶融シリカ製の密閉チャンバー16に載置される。ルツボ6を成長温度まで加熱する手段は、好ましくは水冷式であるチャンバー16との作動関係で設けられている。加熱手段は、RFコイル12、或いは、チャンバー16内に配置された抵抗ヒータまたはRFコイル(不図示)、といった任意の適切な及び/又は好ましい方法で実現することができる。
昇華成長を開始するためには、ルツボ6は、アルゴンやヘリウムガスのような不活性ガス22が存在する状態で、圧力が1〜200Torrのルツボ4内で、加熱手段によって好ましくは2000℃〜2400℃の間の成長温度まで加熱される。この条件下で、原料物質4が昇華して、ルツボ6の内部をSi、Si2C及びSiC2揮発性分子を含有する蒸気で満たす。SiC単結晶14の成長中、原料物質4の温度は、種結晶8の温度よりも高く維持される。その結果、蒸気は、原料物質4から種結晶8の方向へ輸送される。種結晶8に到達した後、蒸気はそこで凝縮して、種結晶8上でのSiC単結晶14の成長を引き起こす。
単結晶14の成長中、不活性ガス22が、先ずチャンバー16の入口24を通過することによって成長ルツボ4に供給される。チャンバー20内の不活性ガス22は、原料である成長ルツボ4を透過して、その内部に至る。
成長ルツボ4内でSiC単結晶14の成長のための適切な条件が成立した後、窒素ガス原料28に接続されたバルブ26が、好ましくは1分〜1時間の所定時間の間開く。バルブ26の開放によって、所定量の窒素がチャンバー16、そして成長ルツボ6に入ることが可能になる。黒鉛は、アルゴンやヘリウムや窒素などのガスに対して高い透過性を有している。従って、バルブ26が開くと、ほとんど即座に窒素が成長結晶界面に出現する。チャンバー16及び成長ルツボ6内のガス圧力を制御するために、質量流制御装置(MFC)(図外)を用いることができ、不活性ガス22からチャンバー16への流れに対する窒素の追加または削減に応じて成長ルツボ6内での窒素ガスの圧力に不測の変化が生じるのを防ぐ。
窒素は、SiCの導電性の増加、結晶の色のグリーンへの視覚的変化、及び格子パラメータのわずかな変化を生じさせるSiCにおける周知のドナーである。
バルブ26を閉じた後、SiC単結晶14の成長は、従来の成長工程のように、1〜200Torrの不活性ガス22の流れが存在するときに成長ルツボ6において継続する。バルブ26を閉じると、チャンバー16及び成長ルツボ6に残存する窒素は、入口24を介してチャンバー16に導入され、出口30を介してチャンバー16から出る不活性ガス22の流れによって迅速に除去される。
不活性ガス22の流れが存在する際の乱れのない(undisturbed)成長が適切な時間間隔、例えば数時間続いた後、バルブ26は再び同じ、あるいは異なる所定時間にわたって開かれ、窒素がチャンバー16、そして成長ルツボ6に再度流入する。上述した段階的な窒素ドーピングサイクルは、SiC単結晶14の成長の間、複数回繰り返される。
窒素を成長ルツボ6に間欠的に導入することによるSiC単結晶のPVT成長の方法を、図5のフローチャートに示す。ここで、当該方法は、開始ステップ40から、アルゴンまたはヘリウムガスの流れが1〜200Torrの成長雰囲気におけるSiC単結晶のPVT成長が生じるステップ42まで進むことによって始まる。
そして、この方法は、この成長雰囲気に窒素が導入されるステップ44に進む。SiC単結晶成長工程の開始においてステップ42及び44が同時に行われることも想定でき、その場合、初期の成長雰囲気は、窒素とアルゴンまたはヘリウムの組合せを含むことができる。あるいは、SiC単結晶の初期成長は、アルゴンまたはヘリウムのみの成長雰囲気において生じてもよく、SiC単結晶成長の開始後適切な時間に、窒素が成長雰囲気に導入されても良い。
その後、この方法は、ステップ46に進み、成長雰囲気への窒素の導入は終了される。
ステップ48では、SiC単結晶の成長が完了したかどうか判断される。完了したと判断された場合は、停止ステップ50へ進む。そうでない場合は、ステップ42に戻る。その後、ステップ42〜48は、ステップ48において、SiC単結晶の成長が完了するまで、適切な及び/または望ましい回数だけ繰り返され、停止ステップ50へ進む。
本方法では、成長雰囲気への窒素の導入は、当業者が適切及び/または望ましいと考えるならば、定期的な間隔(規則的な間隔)、または任意の間隔(不規則な間隔)のどちらで行われてもよい。さらに、窒素が存在する場合の結晶成長の各間隔は、窒素が存在する場合の結晶成長の他の間隔と同じ継続時間であってもよいし、異なる継続時間であってもよい。同様に、成長雰囲気において窒素が存在しない場合の結晶成長の各間隔も、雰囲気に窒素が存在しない場合の結晶成長の他の間隔と同じ継続時間であってもよいし、異なる継続時間であってもよい。
SiC単結晶成長工程は、上述した実施例に従って実行された。1回の成長工程で、30Torrの純粋ヘリウムの雰囲気において6H−SiC単結晶ブール(Boule)が成長した。種結晶温度及び原料物質温度は、それぞれ、2090℃及び2130℃であった。単結晶の成長中、界面は、窒素を成長雰囲気に入れることによって、また同時にチャンバーの総気圧を30Torr〜50Torrに増加させることによって摂動された。この段階的な摂動は2回繰り返された。
2回目の成長工程では、窒素ガスが間欠的に導入される成長雰囲気において、6H−SiC単結晶ブールが成長した。特に、ブールは、毎分248標準立方センチメートル(sccm)の流量で10Torrのヘリウム雰囲気において、種結晶温度2140℃及び原料物質材料温度2190℃で成長した。種結晶の厚さは、約1.5ミリメートルであった。原料は多結晶質SiC粉体であった。200時間の成長工程中、約20時間ごとに、5sccmで1分間の窒素パルスを成長雰囲気に導入した。ブールの断面を作成し、顕微鏡で調べた。図6は、ブール断面の写真である。この写真は、窒素が成長雰囲気に導入された回数に対応する2本の水平線を示している。この工程では、全体で10パルスの窒素が、成長雰囲気に、定期的にまたは間欠的に導入された。このブールからできたウェハーは
スライスされ、溶融KOHでエッチングされた。エッチングされたウェハー2番と17番を顕微鏡で調べた。顕微鏡で見た2番と7番のウェハーの写真を、それぞれ、図7A及び図7Bに示す。ここからわかるように、17番ウェハーの転位密度は、2番ウェハーに較べて、かなり低減している。2番ウェハーがブール成長の最初にあるのに対し、17番ウェハーはブール成長の終わり近くにあることが認められる。2番ウェハー及び17番ウェハーに示されているエッチピットに関係している転位の性質を確かめることは困難であるが、精査の結果、その大半は貫通型、つまり、TSDまたはTEDのいずれかであることがわかった。これは、ブールがそのc軸に平行にスライスされており、BPDがほとんど見られない筈なので、予測されないことではない。従って、観察されたエッチングされた
ピット密度の低減は、TSD及び/またはTEDの低減を示すものである。
要約すると、本件で開示されているものは、成長条件における段階的な定期的変化によって、成長が定期的または間欠的に摂動されるSiC昇華結晶成長工程である。また、本件は、成長の定期的または間欠的摂動がドーピングレベルの段階的な変化によって引き起こされるSiC昇華結晶成長工程も開示している。成長雰囲気は、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスであり、ドープ剤(ドーパント)はガスまたは蒸気、望ましくは窒素ガスであることが好ましい。成長雰囲気はまた、不活性ガスと水素との混合物であってもよい。
また又は或いは、成長ルツボ6への窒素の導入による摂動の代わりに、摂動は、成長ルツボ6内の圧力を変化させること、及び/または成長ルツボ6内の温度を変化させることによっても実現することができる。例えば、ルツボ6内でSiC単結晶14の成長のための適切な条件を確立した後、ルツボ6内の温度を、100℃以下、好ましくは、10℃〜50℃だけ、より好ましくは、25℃〜50℃だけ高める又は低めることによって、その成長条件における摂動を引き起こすことができる。摂動インターバルの間に温度を高め又は低め、その温度を開始温度に戻すことによる摂動は、ルツボ6におけるSiC単結晶14の成長中に複数回の規則的な及び/または不規則な時間インターバルで起こることが可能である。各摂動間隔の継続時間は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また又は或いは、ルツボ6内のSiC単結晶14の成長のための適切な条件を確立した後、ルツボ6内の圧力を、100Torr以下、好ましくは2Torr〜50Torr、より好ましくは、5Torr〜20Torrの幅で増大又は低下させることによって、その成長条件における摂動を引き起こすことができる。ルツボ6内の圧力を増大又は低下させ、その圧力を開始状態に戻すことによる摂動は、ルツボ6におけるSiC単結晶14の成長中に複数回の規則的な及び/または不規則な時間インターバルで起こることが可能である。各摂動間隔の継続時間は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ここまで、成長ルツボ6内の成長雰囲気、成長圧力、または成長温度を変更することによる成長条件の摂動を別々に述べた。しかし、成長条件の摂動は、SiC単結晶14の成長中、ルツボ6内の雰囲気、圧力、及び/または温度のいずれか2つ以上を変更することによって実現することもできる。例えば、制限されるものではないが、一定の電力が加熱手段に維持されていれば、成長圧力が低減すると、種結晶8及び原料物質14の温度はこれに対応して増加する。同様に、ルツボ6内の温度の上昇により、ルツボ6内の圧力も増加する。よって、パラメータ(温度及び圧力)の一方が意図的に調整され、他方が自然に変化することが可能である。あるいは、圧力を一定に維持したまま、温度を調整することもできる。さらに、摂動を実現するために、温度と圧力の両方を同時に調整してもよい。従って、ルツボ6内の雰囲気、圧力、及び/または温度の一つあるいは複数を変更することによって摂動を実現することも想定範囲内である。
PVTによるSiC単結晶の摂動成長が、SiC単結晶基板、特に、パワースイッチ半導体デバイスに用いられる4H−SiC基板に関して、転位密度の低減と、結晶品質の改善をもたらすことが理解されるであろう。
本発明を、好適な実施例に関して述べてきた。自明な改変及び変更は、前述の詳細な説明を読み、理解すれば、他者にも可能である。本発明は、添付の請求の範囲またはそれに相当するものの範囲内に属する限り、このようなあらゆる改変及び変更を含むものであると解釈されることを意図するものである。

Claims (4)

  1. 低転位密度のSiC単結晶ブールを形成する方法であって、
    成長したSiC単結晶ブールの貫通転位密度が、SiC単結晶ブール成長中の貫通転位から基底面転位への変換により、ブールの最初の成長部分からブールの最後の成長部分にかけて実質的に低下するように、温度の変更と、温度勾配の変更と、雰囲気ガスの組成及び圧力の変更とを行いつつ、SiC単結晶種上にSiC単結晶ブールを昇華成長させるステップを含む方法。
  2. 前記雰囲気ガスは、不活性ガス、水素、窒素、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
  3. 異なる格子パラメータを有する、連続して成長したブールの隣接する層と、
    SiC単結晶ブール成長中の貫通転位から基底面転位への変換により、ブールの最初の成長部分からブールの最後の成長部分にかけて実質的に低下する貫通転位密度と
    のうち少なくとも一方を有する低転位密度のSiC単結晶ブール。
  4. 4Hポリタイプ又は6Hポリタイプである請求項3に記載のSiC単結晶ブール。
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