JP2014198824A - インクジェット用水性インク、インクジェット記録方法、インクジェット記録物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)少なくとも水、水溶性有機溶剤、顔料、ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子を含有し、前記水溶性有機溶剤の50重量%以上がジオール化合物からなり、かつ前記水溶性有機溶剤の50重量%以上が沸点200℃以下である水性インク。
(2)前記沸点200℃以下の水溶性有機溶剤が、プロピレングリコールと2,3−ブタンジオールの少なくとも一方を含む(1)に記載の水性インク。
【選択図】なし
Description
近年では、家庭用のみならず、例えばディスプレイ、ポスター、掲示板など産業用途にも利用されている。しかし産業用途の場合、多孔性記録媒体では耐光性、耐水性、耐摩耗性のような耐久性に問題があるため、プラスチックフィルムなどの非多孔質記録媒体が使用されており、そのためのインクが開発されてきている。そして、例えば有機溶剤をビヒクルとして使用した溶剤系インクジェットインクや、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクジェットインクが広く用いられてきた。
しかし、溶剤系インクジェットインクは、溶剤を大量に大気中に蒸発させるため、環境負荷の観点から好ましくなく、紫外線硬化型インクジェットインクは、使用するモノマーによっては皮膚感さ性を有することがあり、また、高価な紫外線照射装置をプリンタ本体に組み込む必要があることから適用分野が限られてしまう。
こうした背景もあって、最近では、非多孔質基材に直接印字できる水性インクジェット記録インクが開発されてきている(特許文献1〜2など参照)。
まず、プラスチックフィルムのような非多孔質基材は水性インクの主材料である水を弾きやすいため、ヘッドから吐出されたインク滴が基材上に濡れ広がりにくく、この結果ベタ画像に微細な隙間が発生してしまい、濃度が上がりにくい。
また、非多孔質基材に対して基本的にインクは浸透しないため、基材上のインクは直ぐに乾かなくてはならないが、水性インクの主溶媒である水自体、及び添加剤である水溶性有機溶剤により乾燥性が悪化してしまい、乾燥不良を起こしやすい。このため印字物を重ねた際又は巻き取った際にインクが裏写りしてしまう、いわゆるブロッキングが起こってしまうことがある。
更に、非多孔質基材は非常に光沢があるものが多く、印字した際に印字部と非印字部とで記録物としての一体感を損なわないようにするため、高光沢が得られるインクが求められているが、樹脂がインクに溶け込んでいる溶剤系インクと異なり、粒子が融着して塗膜を形成するため、表面が粗くなりやすく、光沢が損なわれやすい。
更に、画像堅牢性に関しても、耐擦過性、耐エタノール性について十分な性質が得られておらず、より高い性能を要求されているのが実情である。
1) 少なくとも水、水溶性有機溶剤、顔料、ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子を含有し、前記水溶性有機溶剤の50重量%以上がジオール化合物からなり、かつ前記水溶性有機溶剤の50重量%以上が沸点200℃以下であることを特徴とするインクジェット用水性インク。
特に、本発明のインクはプラスチックフィルムなどの非多孔質基材に適用されるときに良好な光沢と画像堅牢性を備えた画像を提供できる。
2) 前記沸点200℃以下の水溶性有機溶剤が、プロピレングリコールと2,3−ブタンジオールの少なくとも一方を含むことを特徴とする1)に記載のインクジェット用水性インク。
3) 前記水溶性有機溶剤として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び沸点200℃以上のラクタム構造を有する水溶性有機溶剤から選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする1)又は2)に記載のインクジェット用水性インク。
4) 前記ラクタム構造を有する水溶性有機溶剤が、1−エチル−2−ピロリドンであることを特徴とする3)に記載のインクジェット用水性インク。
5) 前記水溶性有機溶剤が、沸点が250℃以下の溶剤のみからなることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
6) 前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子が、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有することを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
7) 前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子の塗膜形成時の表面硬度が100N/mm2以上であることを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
8) 更にシリコーン系界面活性剤を含むことを特徴とする1)〜3)及び5)〜7)のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
9) 1)〜8)のいずれかに記載のインクジェット用水性インクを用いて印字することを特徴とするインクジェット記録方法。
10) 印字後に加熱乾燥を行うことを特徴とする9)に記載のインクジェット記録方法。
11) 9)又は10)に記載のインクジェット記録方法により作成されたことを特徴とするインクジェット記録物。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、カーボネート基の高い凝集力により耐水性、耐熱性、耐摩耗性、耐候性に優れており、屋外用途のような過酷な環境において使用される印字物に適している。本発明におけるポリカーボネート系ウレタン樹脂とは、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるものを指す。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールを触媒の存在下でエステル交換反応させることによって得られるものや、ホスゲンとビスフェノールAを反応させて得られるものを使用することができる。
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどを使用することができる。また、前記炭酸エステルと反応させるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの低分子ジオール化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを使用することができる。
これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
更に、本発明のインクは、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートを入れることが好ましい。前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子が、脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有する場合には、耐擦過性及び耐エタノール性が一層向上する。特にイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。また、脂環式ジイソシアネートの割合は全イソシアネート化合物中の60重量%以上が好ましい。
また、前記ウレタン樹脂微粒子を水性媒体中に分散させるにあたり、分散剤を利用した強制乳化型のものを用いることもできるが、塗膜に分散剤が残り強度を下げることがあるため、分子構造中にアニオン性基を有する、いわゆる自己乳化型のものが好ましい。その場合、アニオン性基を酸価が20〜100となる割合で有することが、優れた耐擦過性や耐薬品性を付与する上で好ましい。
前記ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
即ち、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリカーボネートポリオールと前記ポリイソシアネートを、イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。次いで、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて前記中和剤により中和し、その後、鎖延長剤と反応させ、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去するという方法である。
使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、ヒドラジン、N,N′−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類、コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などを使用することができる。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子の最低造膜温度は、必ずしも室温以下でなくても良いが、加熱乾燥を行う場合には、少なくとも印字後に加熱する温度以下であることが望ましく、特に加熱温度よりも十分に低いことが望ましい。例えば加熱温度が60℃の場合には、樹脂の最低造膜温度は0℃〜55℃の範囲が好ましく、25℃〜55℃の範囲がより好ましい。
一般に、最低造膜温度は低い方が造膜性に優れるが、最低造膜温度が低すぎると、樹脂のガラス転移点も低くなり、十分な塗膜強度が得られない。
なお、最低造膜温度とは、樹脂エマルジョンをアルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていったときに透明な連続フィルムが形成される最低の温度のことを指し、最低造膜温度未満の温度領域では、樹脂エマルジョンは白色粉末状となる。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンを膜厚10μmになるようにスライドガラス上に塗布した後、100℃で30分間乾燥して形成した樹脂膜について、微小表面硬度計(FISCHERSCOPE HM2000、フィッシャー社製)を使用し、バーコビッチ圧子に9.8mNの荷重をかけて押し込んだ際の押し込み深さを求め、ISO14577−2002記載のマルテンス硬度として計測する。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子は、他のインク材料と共に、樹脂エマルジョンの形態で添加する。この樹脂エマルジョンには、必要に応じて水溶性有機溶剤、防腐剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を配合してもよい。
本発明のインクはポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子以外の樹脂微粒子を含んでも構わない。その例としては、アクリル樹脂微粒子、ポリオレフィン樹脂微粒子、酢酸ビニル樹脂微粒子、塩化ビニル樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、ポリエーテル系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子などが挙げられる。
本発明で用いる水溶性有機溶媒は50重量%以上がジオール化合物である必要がある。本発明においてジオール化合物とは化学構造式中に2個のOH基を有する化合物を指す。これらジオール化合物はOH基を含まない化合物やOH基を一つしか含まない化合物よりも水分保持力が高く、インクの吐出信頼性に大きく貢献する。
OH基を3個以上含む化合物の場合には、分子間力が強くなりすぎるため沸点が極端に高いものが多く、乾燥性が大きく損なわれてしまう。
ジオール化合物の例としては、エチレングリコール(bp196℃)、プロピレングリコール(bp188℃)、1,2−ブタンジオール(bp194℃)、2,3−ブタンジオール(bp183℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp198℃)、ジエチレングリコール(bp244℃)、トリエチレングリコール(bp287℃)、ジプロピレングリコール(bp230℃)、1,3−プロパンジオール(bp214℃)、1,3−ブタンジオール(bp203℃)、1,4−ブタンジオール(bp230℃)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(bp208℃)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(bp213℃)、1,2−ペンタンジオール(bp206℃)、2,4−ペンタンジオール(bp201℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp250℃)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(bp243℃)、1,2−ヘキサンジオール(bp224℃)、2,5−ヘキサンジオール(bp217℃)などが挙げられる。
上記水溶性有機溶剤を用いることにより、非多孔質基材上において高い乾燥性を有するインクを得ることが可能となる。
また、ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子との相性がよく、より造膜性に優れたインクが得られることから、沸点が200℃以下の水溶性有機溶剤として、プロピレングリコールと2,3−ブタンジオールの少なくとも一方を用いることが好ましい。これにより塗膜の光沢が向上する。
その例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール等の多価アルコール類、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテルなどの多価アルコールアルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルピロリジノン、1−エチル−2−ピロリドンなどの含窒素複素環化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどのオキセタン化合物が挙げられる。
このうち、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び沸点200℃以上のラクタム構造を有する水溶性有機溶剤から選ばれた少なくとの一つを添加することにより、特に非多孔質基材上での画像光沢性、耐擦過性、耐エタノール性において優れた品質を得ることが可能となり、更には沸点200℃以上のラクタム構造を有する水溶性有機溶剤として1−エチル−2−ピロリドンを添加した場合に、良好な画像品質が得られる。
なお、沸点が250℃を越える水溶性有機溶剤を含まないようにすると、乾燥性が更に向上するため効果的である。
顔料としては無機顔料と有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、及びコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。
また、顔料をマイクロカプセルに包含させて水中に分散可能なものとしたもの、即ち、顔料粒子を含有させた樹脂微粒子であっても良い。この場合、インクに配合される顔料がすべて樹脂微粒子に封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、該顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて顔料を分散させる場合には、従来公知のものを適宜選択して使用することができ、例えば、高分子分散剤、水溶性界面活性剤などが挙げられる。
インク中の顔料の添加量は、0.1〜10重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜10重量%程度である。一般に顔料濃度が高くなると画像濃度が上がり画質が向上するが、定着性、吐出安定性、目詰まり等の信頼性に対しては悪影響が出易くなる。
界面活性剤は、記録媒体への濡れ性を確保する目的で添加する。インク中の界面活性剤の添加量は、0.1〜5重量%が好ましい。0.1重量%未満では、基材への濡れ性が充分でなくなるため、画像品質が劣化し、5重量%を超えると泡立ちやすくなることによる不吐出が発生する。
界面活性剤の種類は特に限定されず、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能であるが、色材の分散安定性と画像品質との関係から、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等のノニオン系の界面活性剤、シリコーン系の界面活性剤が望ましく用いられる。
また、シリコーン系界面活性剤とその他の界面活性剤を併用することも可能であり、その例として、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
これらのフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
本発明のインクには、上記した成分の他に、必要に応じて、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などのその他の成分を含んでも構わない。
防腐防黴剤としては、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ぺンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコ−ル酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリト−ル、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、任意の物質を使用できる。その例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、第4級アンモニウム水酸化物やジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン、水酸化アンモニウム、第4級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録方法は、少なくともインクに刺激(エネルギー)を印加して飛翔させ、記録媒体上に画像を形成する画像形成工程を有し、必要に応じて加熱乾燥工程などのその他の工程を有する。
画像形成工程については公知の種々のインクジェット記録方法を適用することができ、例えば、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録方法や、ライン化されたヘッドを用い、ある枚葉の印刷用紙に画像記録を行うインクジェット記録方法が挙げられる。
画像形成工程におけるインク飛翔手段としては一般に記録ヘッドが用いられる。記録ヘッドの駆動方式には特に限定はなく、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いてもよいし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いてもよい。
加熱温度は、インク中に含まれる水溶性有機溶媒の種類や量及び添加するポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンの最低造膜温度に応じて変更することができ、更に印刷する基材の種類に応じても変更することができる。加熱温度は乾燥性や造膜温度の観点から高いことが好ましいが、加熱温度が高すぎると、印刷する基材がダメージを受けたり、インクヘッドまで暖まってしまって不吐出が生じる可能性があるため好ましくない。
本発明のインクを用いて記録を行うことができるインクジェット記録装置について、図面を参照しながら説明する。なお、紙を用いる場合について説明するが、その他の多孔質基材や非多孔質基材に対しても同様に記録可能である。また、インクジェット記録装置には、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)、ライン型ヘッドを備えたライン型などがあるが、図1は、シリアル型インクジェット記録装置の一例を示す概略図である。
このインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した給紙トレイ102と、排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ200の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。111は上カバー、112は前カバーの前面である。
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135)を搭載している。サブタンク135には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部104に装填されたインクカートリッジ200から、インクが供給されて補充される。
この給紙部から給紙された基材142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、基材142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる基材142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる基材142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられ、また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
このインクジェット記録装置においては、給紙部から基材142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された基材142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト157が帯電されており、基材142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。
そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している基材142にインク滴を吐出して1行分を記録し、基材142を所定量搬送した後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は基材142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、基材142を、排紙トレイ103に排紙する。
本発明のインクジェット記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有する。
前記記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることも出来るが、本発明のインクは非多孔質基材に適用されるときに特に良好な光沢と画像堅牢性を備えた画像を提供することができる。
前記非多孔質基材としては、透明又は有色のポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチック素材からなるもので、木材パルプ紙、和紙、合成パルプ紙、合成繊維紙などの紙成分を含まないものが代表例である。しかし、本発明のインクは、その他の非多孔質基材、及び普通紙や無機物コート多孔質媒体などの従来用いられてきた多孔質媒体に対しても十分な性能を示す。
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物)1500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g及びN−メチルピロリドン(NMP)1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次いで、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを1445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を2.6g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
次いで、反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加・混合したものの中から4340gを抜き出して、強攪拌しつつ水5400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次いで、氷1500gを投入し、35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30重量%となるように溶媒を留去して、体積平均粒径が25nmのポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンAを得た。
このエマルジョンAをスライドガラス上に膜厚10μmとなるように塗布し、100℃30分で乾燥して樹脂フィルムを成形した。そして、微小表面硬度計(FISCHERSCOPE HM2000、フィッシャー製)を用い、ビッカース圧子を9.8mNの荷重をかけて押し込んだ際のマルテンス硬度を測定した結果、120N/mm2であった。
前記エマルジョンAの製造における4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いた点以外は同様にして、体積平均粒径が20nmのポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンBを得た。
このエマルジョンBについて、同様に塗膜強度を測定したところ、マルテンス硬度は、88N/mm2であった。
前記エマルジョンAの製造における4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの代わりに、イソホロンジイソシアネートとドデカメチレンジイソシアネートの混合物(モル比6:4)を用いた点以外は同様にして、体積平均粒径が30nmのポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンCを得た。
このエマルジョンCについて、同様に塗膜強度を測定したところ、マルテンス硬度は、105N/mm2であった。
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール)で7時間循環分散して、顔料分散液1を得た。
<顔料分散液1処方>
・カーボンブラック顔料 15部
(三菱カーボンブラック♯2300、三菱化学社製)
・アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂社製) 2部
・イオン交換水 83部
顔料分散液1の作製におけるカーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3(HOSTAJET CYAN BG−PT、クラリアント社製)に変えた点以外は同様にして、顔料分散液2を作製した。
顔料分散液1の作製におけるカーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122(HOSTAJET MAGENTA E−PT、クラリアント社製)に変えた点以外は同様にして、顔料分散液3を作製した。
顔料分散液1の作製におけるカーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74(Fast Yellow 7413、山陽色素社製)に変えた点以外は同様にして、顔料分散液4を作製した。
上記顔料分散液1を含む下記処方の材料を混合攪拌した後、0.2μmポリプロピレンフィルターで濾過して実施例1のインクを作製した。
<インク処方>
・顔料分散液1 20部
・ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンA 15部
・界面活性剤CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH 2部
・プロピレングリコール(bp188℃) 20部
・3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(bp240℃) 15部
・防腐防黴剤 プロキセルLV(アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 27.9部
インク処方を表1の実施例及び表2の比較例の各欄に示すように変えた点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜19及び比較例1〜10の各インクを作製した。
<乾燥性>
各インクをインクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、グロスコート紙(王子製紙社製OKトップコート+)に対してベタ画像を印刷した後、25℃で所定の時間乾燥させた。乾燥後のベタ部に1kgの荷重を加えて濾紙を押し当て、濾紙へのインクの転写の具合に基づいて、下記の基準で乾燥性を評価した。
ランク3.5以上が合格ラインである。
〔評価基準〕
ランク5 :25℃10分の乾燥条件で濾紙への転写がなくなる。
ランク4 :25℃20分の乾燥条件で濾紙への転写がなくなる。
ランク3.5:25℃30分の乾燥条件で濾紙への転写がなくなる。
ランク3 :25℃45分の乾燥条件で濾紙への転写がなくなる。
ランク2 :25℃60分の乾燥条件で濾紙への転写がなくなる。
ランク1 :25℃60分の乾燥条件でも濾紙への転写がなくならない。
各インクをインクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、PVCフィルム(ローランドディジー社製、DGS−210−WH)に対してベタ画像を印刷した後、80℃で1時間乾燥させた。次いで、画像のベタ部の60°光沢度を光沢度計(BYK Gardener社製、4501)により測定した。
60°光沢度80以上が合格ラインである。
各インクをインクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、PVCフィルム(ローランドディジー社製、DGS−210−WH)に対してベタ画像を印刷した後、80℃で1時間乾燥させた。次いで、画像のベタ部を乾いた木綿(カナキン3号)で400gの加重をかけて擦過し、目視で塗膜異常が確認された際の擦過数を調べた。60以上が合格ラインである。
各インクをインクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、PVCフィルム(ローランドディジー社製、DGS−210−WH)に対してベタ画像を印刷した後、80℃で1時間乾燥させた。次いで、綿棒をエタノールの50重量%水溶液に含浸させ、画像のベタ部を擦過し、目視で塗膜異常が確認された際の擦過数を調べた。30以上が合格ラインである。
各インクを、覆蓋手段を有するインクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、ヘッドを覆蓋した状態で温度30℃、湿度15%RHで1週間放置した後、ノズルチェックパターンを印字し、不吐出、噴射乱れの発生率(%)を調べた。
10%以下が合格ラインである。
各インクを、インクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、PVCフィルム(ローランドディジー社製、DGS−210−WH)、PPフィルム(東洋紡社製、P2161)、PETフィルム(東洋紡社製、E5100)の3種類の基材に対しベタ画像を印刷し、十分に乾燥させた。
画像のベタ部に対し、布粘着テープ(ニチバン社製123LW−50)を使用した碁盤目剥離試験により、試験升目100個について剥がれ具合を評価した。
試験升目100個中の剥がれたもの5個以下が合格ラインである。
また、実施例1〜6、9〜13に示されるように、プロピレングリコールと2,3−ブタンジオールの少なくとも一方を多く含むことにより、吐出信頼性に優れた結果が得られた。更に、実施例1〜4に示されるように、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び沸点200℃以上のラクタム構造を有する水溶性有機溶剤から選ばれた少なくとも1つを含むことにより、特に耐擦過性と耐エタノール性に優れた結果が得られた。
また、実施例1〜4、7〜10、12〜16に示されるように脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有するポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子を含むことにより、特に耐擦過性と耐エタノール性に優れた結果が得られた。
また、実施例17〜19に示されるように、リコーン系界面活性剤を含むことにより、良好な密着性を保持したまま特に画像光沢度に優れた結果が得られた。
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 デンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
Claims (11)
- 少なくとも水、水溶性有機溶剤、顔料、ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子を含有し、前記水溶性有機溶剤の50重量%以上がジオール化合物からなり、かつ前記水溶性有機溶剤の50重量%以上が沸点200℃以下であることを特徴とするインクジェット用水性インク。
- 前記沸点200℃以下の水溶性有機溶剤が、プロピレングリコールと2,3−ブタンジオールの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用水性インク。
- 前記水溶性有機溶剤として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び沸点200℃以上のラクタム構造を有する水溶性有機溶剤から選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用水性インク。
- 前記ラクタム構造を有する水溶性有機溶剤が、1−エチル−2−ピロリドンであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用水性インク。
- 前記水溶性有機溶剤が、沸点が250℃以下の溶剤のみからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
- 前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子が、少なくとも1種の脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
- 前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂微粒子の塗膜形成時の表面硬度が100N/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
- 更にシリコーン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜3及び5〜7のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用水性インクを用いて印字することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 印字後に加熱乾燥を行うことを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項9又は10に記載のインクジェット記録方法により作成されたことを特徴とするインクジェット記録物。
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