JP2014198041A - 改変ペプチド繰り返しペプチドを含む融合タンパク質および該融合タンパク質を含むシルク繊維 - Google Patents

改変ペプチド繰り返しペプチドを含む融合タンパク質および該融合タンパク質を含むシルク繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、融合タンパク質に抗菌活性を付与できる抗菌ペプチドを提供することである。本発明の目的はまた、任意のタンパク質(例えば、シルク)に、該タンパク質の機能に加えて抗菌ペプチド由来の抗菌活性を付与したまたは付与できる融合タンパク質を提供することである。本発明の目的はまた、機能性を付与したシルクの製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明により、融合タンパク質に抗菌活性を付与できる、新規ペプチド(抗菌性を有するカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドの繰り返し構造をもつペプチド)が提供された。本発明によりまた、該繰り返しペプチドを有する抗菌活性をもつ融合タンパク質が提供された。本発明によりまた、機能性が付与されたシルクが提供された。
【選択図】図7

Description

本発明は、繰り返し構造を有する新規なペプチドを含む融合タンパク質に関し、より詳しくは、抗菌性を有するカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドの繰り返しペプチドからなる新規なペプチドを含む融合タンパク質および該融合タンパク質を含む抗菌性シルクに関する。本発明はまた、特定の機能を有するペプチドまたはタンパク質が固定化されたシルクに関する。本発明はさらには、機能を有するペプチドまたはタンパク質を組換えカイコに発現させ、シルクに固定化する新規な方法に関する。
近年では、抗生物質に耐性を持った薬剤耐性菌が先進国を中心に蔓延しており、集団感染や院内感染を引き起こしている。特に、メチシリンに耐性を持つメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染例は、国内で年間二万件以上報告されている。感染経路は、複雑であり特定は困難であるが病院内で使用するベッドシーツ、白衣なども感染リスク要因と考えられている。
本発明者らは、これらの問題を解決するため、石橋らにより発明されたカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチド(非特許文献1)を固定化した抗菌繊維を開発した。綿にスペーサーと呼ばれる分子鎖を結合し、その末端のアミノ基を起点としてアミノ酸合成を行い、綿上で9残基の改変ペプチド(X1−Leu−X2−Leu−X3−Ile−X4−Arg−Arg−NH2、X1=ArgまたはAla、X2=Tyr、ArgまたはLeu、X3=ArgまたはAla、X4=GlyまたはArg)を合成した。抗菌試験の結果、MRSAに強い抗菌活性が認められ、繰り返し使用しても活性を維持していることが明らかになった(特許文献1、非特許文献2)。
カイコの繭からとった動物繊維であるシルクは、その優れた特性(例えば、軽くて丈夫、柔らかい、吸湿性が良い、通気性が良い、染色性が良い)から広く用いられている、しかし、タンパク性の繊維であるシルクにおいては、感染リスクの防御だけではなく、保存時に微生物の繁殖を抑制することが求められている。
カイコは蛹になる直前に繭を作る。この繭の主成分はシルクタンパク質である。シルクタンパク質は、約70%がフィブロイン、残りの約30%がセリシンと呼ばれるタンパク質により構成されている。これらシルクタンパク質はカイコの絹糸腺で合成され、絹糸として吐糸される。吐糸された絹糸においては、フィブロインは糸の中心に、セリシンはフィブロインの周りを取り巻くように存在する。フィブロインが水に対して極めて不溶性であるのに対し、セリシンは比較的水に溶けやすいので、繭から生糸を紡ぐ場合、繭を煮沸する等の作業により、可溶性のセリシンは取り除かれ、不溶性のフィブロイン繊維のみが生糸として精練される。但し、数%セリシンを残したものも作られ、それは、100%セリシンを除いたものに比べ光沢が優れる。
カイコがもつシルクタンパク質の優れた合成能力のために、シルクタンパク質と共に組換えタンパク質を繭中に分泌する形質転換カイコ(組換えカイコ)の研究が盛んになされている。カイコでの外来遺伝子発現システムとしては、田村らにより、鱗翅目昆虫Trichoplusia niに由来するDNA型トランスポゾンであるpiggyBacを組み込んだプラスミドベクターをカイコ卵に微量注射することにより、世代を通じて永続的に外来遺伝子が組み込まれた形質転換カイコを作製する方法が報告されている(非特許文献3)。外来遺伝子をpiggyBac法で導入しカイコで発現するようにした場合、カイコのシルクのタンパク質遺伝子は残っているので、導入した遺伝子と内在する遺伝子の両方が発現するようになる。そのため、導入した遺伝子の発現量は、内在性の遺伝子の発現に比較して、遥かに少ない量となる。
例えば、ヒト・コラーゲンとカイコ絹タンパク質との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをカイコのゲノムDNA内に導入し、前記融合タンパク質を繭または絹糸腺内のタンパク質の一部として産生する形質転換カイコが報告されている(特許文献2)。形質転換カイコにより産生されたヒト・コラーゲンとカイコ絹タンパク質の融合タンパク質をその後、分解、例えば、繭のタンパク質をペプシン等のタンパク質分解酵素で処理することにより、コラーゲンを抽出・精製できると記載されている。
また、絹フィブロインと生理活性タンパクであるヒトbFGFとの融合タンパク質をコードする融合ポリヌクレオチドをゲノム中に導入してトランスジェニックカイコを作製し、カイコが吐き出す絹糸中に、前記融合タンパク質を産生する方法が報告されている(特許文献3)。
他には、組換えカイコの作出技術を利用して、フィブロインのH鎖およびL鎖を改変した遺伝子に蛍光タンパク質の遺伝子を結合した融合タンパク質をコードする融合ポリヌクレオチドをもつベクターを、piggyBac法を用いてカイコ卵に注入することにより、蛍光色をもつ絹糸を製造すること(非特許文献3)、特殊なアミノ酸組成をもつペプチド配列を入れたベクターを用いてカルシウム結合能を高めたシルクを製造すること(非特許文献4)が報告されている。
このように、シルクに様々な機能を付与する試みがなされている。
これらの融合タンパク質による生産方法では、目的のタンパク質の生産量が限られること、および融合化により、タンパク質の本来の機能を失うなどの問題が指摘されている。そこで、他の外来遺伝子の発現方法として、例えば、GAL4の標的配列であるUASをプロモーターとする2種類のタイワンカブトムシのディフェンシン遺伝子、フィブロインL鎖由来とディフェンシン由来のシグナル配列をもつトランスジェニックカイコが報告されており、そこでは、フィブロインL鎖のプロモーターとGAL4遺伝子、並びにタイワンカブトムシ由来のディフェンシン遺伝子をもつトランスジェニックカイコが吐糸する繭中に、抗菌タンパク質であるタイワンカブトムシのディフェンシンが存在することが確認されている(特許文献4)。特許文献4では、トランスジェニックカイコに導入されたタイワンカブトムシ由来のディフェンシン遺伝子は、絹糸腺特異的に生産され、絹糸腺細胞においてディフェンシン遺伝子のシグナル配列が認識され、絹糸腺内腔に分泌されて吐糸されることが示されている。しかしながら、特許文献4で示されているのは、トランスジェニックカイコを用いて抗菌タンパク質そのものを発現させることであり、発現した抗菌タンパク質はシルクタンパク質とは別のタンパク質として存在する。従って、シルクには抗菌性は付与されていない。
また、セリシン遺伝子のプロモーターによって発現制御される任意のタンパク質を有するトランスジェニックカイコが報告されている(特許文献5)。これは任意のタンパク質をカイコの中部絹糸腺中に産生させて繭糸として吐糸させるものであるが、上記と同様に、カイコを用いて任意のタンパク質そのものを発現させることであり、発現したタンパク質はシルクタンパク質とは別のタンパク質として存在し、シルクに機能を付与するものではない。
また、ブタリゾチーム遺伝子をカイコ卵に注入して組換えカイコを作出し、リゾチームをカイコの絹糸に蓄積させたことが報告されている(非特許文献5)。しかしながらこれも、シルクタンパク質とは別のタンパク質としてリゾチームを発現させており、シルクには抗菌性は付与されていない。
特開2010−184022号公報 特開2004−16144号公報 特開2006−16323号公報 特開2005−95063号公報 特開2006−137739号公報 特開2006−45067号公報 特開2010−95833号公報
石橋ら、Eur. J. Biochem, 1999 Dec; 266(2):616-23 中村ら、Biomacromolecules, 2011, 12(5):1540-1545 田村ら、Nat. Biotechnol. 18, 81-84, 2000 Naganoら、Acta Biomater. 2011 Mar;7(3):1192-201 土屋、畜産技術 (690), 7-11, 2012-11 小林ら、日本蚕糸学会第76回大会講演要旨集、2006、p62 野村ら、Biotechnol Lett. 2011 May;33(5):1069-73
本発明の目的は、融合タンパク質に抗菌活性を付与できる抗菌ペプチドを提供することである。本発明の目的はまた、任意のタンパク質(例えば、シルク)に、該タンパク質の機能に加えて抗菌ペプチド由来の抗菌活性を付与したまたは付与できる融合タンパク質を提供することである。本発明の目的はまた、抗菌性繊維の製造を含む一般の抗菌用途に用いることができる、抗菌性ペプチドおよび該ペプチド由来の抗菌性をもつ融合タンパク質を提供することである。本発明の別の目的はまた、抗菌性等の機能が付与されたシルクを提供することである。
本発明者らは、カブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドの繰り返し構造をもつペプチドが、融合タンパク質の一部である場合でも抗菌活性を有することを見いだし、本発明を完成した。加えて、本発明者らは、特定の遺伝子組換え技術を用いて任意の機能を有するペプチドまたはタンパク質をカイコに発現させることによりシルクに抗菌性等の任意の機能を付与できることを見出し、本発明を完成した。
一般に、比較的小さなペプチドを、大きな分子量をもち高次元構造をとっているタンパク質との融合タンパク質として発現した場合は、該ペプチド分子が大きな分子量の融合タンパク質に埋没してしまい、ペプチドの機能(生理活性)が得られないということが生じる。一方、ペプチドの導入の仕方が、融合タンパク質において、タンパク質がもつ本来の高次元構造を破壊するような場合は、タンパク質がもっている機能を維持できないという問題が生じる。従って、タンパク質と比較的小さなペプチドとの融合タンパク質において、タンパク質の機能にさらにペプチドの機能を付加することは容易ではない。
カブトムシディフェンシン改変ペプチドの抗菌作用機構は、C末端がアミド化されている改変ペプチド(特定の配列を有する特定の長さのペプチド)の単量体分子が複数標的細胞膜上に集積し、分子間の逆平行βシート構造を形成して細胞膜の透過性を上昇させるというものであり(非特許文献6)、該改変ペプチドをその一部分として含む融合タンパク質が抗菌活性を有する場合があるか否かについては不明であった。しかし、驚くべきことに、本発明者らは、融合タンパク質が複数の前記改変ペプチド部分を直接あるいは数アミノ酸を介してタンデムに含む場合には該融合タンパク質が抗菌活性を有することを見出し、本発明を完成した。
特に、シルクは組換えカイコを用いた組換えタンパク質の発現による機能付加が可能であるので、組換えタンパク質において抗菌性のカブトムシディフェンシン改変ペプチドを発現させることにより、シルクに抗菌活性を付与できると考え本発明の一態様(抗菌シルク)を考案した。
また、驚くべきことに、カブトムシディフェンシン由来の改変ペプチド(以下、単に「改変ペプチド」という場合がある)を繰り返すことにより相乗的な活性の上昇が見られた。抗菌ペプチドを繰り返すことによりその活性が上昇した例は、別の配列を有する抗微生物ペプチドのタンデム2量体が1量体と比較して分子数当たり4倍の活性を有するとの報告(特許文献6)があるが、本発明で用いた改変ペプチドにおいては、タンデム二量体で8倍、三量体で24倍という前例を見ない大幅な抗菌活性の上昇を示した。
また、本発明で用いた改変ペプチドは、融合タンパク質に抗菌活性を付与することができるので、本発明により融合抗菌タンパク質を生産することができる。改変ペプチドを有する融合抗菌タンパク質の抗菌活性を、発現した融合タンパク質の宿主大腸菌への毒性で評価したところ、三量体以上では宿主大腸菌への顕著な毒性が認められた。すなわち改変ペプチドを繰り返すことにより、任意のタンパク質に、融合タンパク質としての抗菌活性を付与することができる。
例えば、シルクを構成するフィブロインL鎖および/またはH鎖に改変ペプチドの繰り返しペプチドを融合したコンストラクト、或いはフィブロインL鎖にEGFPと改変ペプチドの繰り返しペプチドを融合させたコンストラクトを用いて、組換えカイコを作り、抗菌性が付与された組換えシルクの生産ができる。
さらに、シルクに付加機能として改変ペプチド由来の抗菌性を付与する方法としては、上記の融合抗菌タンパク質として発現させてシルクに固定する他、非共有結合的に行うことも可能である。例えば、非特許文献7に記載の、シルクに対して結合活性を示すペプチド(例えば、YN42:SYTFHWHQSWSS(配列番号25))を用いて改変ペプチドの繰り返しペプチドをシルクに固定化し、抗菌性が付与された組換えシルクを生産できる。具体的には、改変ペプチドの繰り返しペプチドとYN42の融合タンパク質を、絹糸腺でカイコに内在するシルクのタンパク質遺伝子と同時に発現させることにより、非共有結合的にシルクに抗菌ペプチドを固定化することができる。
本発明の具体的な態様は、以下の通りである。
(1)以下の式1:
X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、
(ここで、X1は、ArgまたはAlaであり、X2は、Tyr、ArgまたはLeuであり、X3は、ArgまたはAlaであり、X4は、Ile、ValまたはLeuであり、X5は、GlyまたはArgであり、X6は、ArgまたはLysである。)
で表されるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドからなるペプチド単位の少なくとも3単位以上を、場合によりアミノ酸からなるスペーサーを介して、連続して含む融合抗菌タンパク質(ここで、該連続するペプチド単位は同じであっても異なってもよい)。
(2)前記式1で表される配列が、以下の配列番号1〜配列番号24:
配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、または、配列番号24(RLLLRLGRK)
である前記(1)に記載の融合抗菌タンパク質。
(3)前記スペーサーが、アミノ酸数0〜4(好ましくは、2〜3)である、前記(1)または(2)に記載の融合抗菌タンパク質。
(4)前記スペーサーがグリシンおよび/またはプロリンからなる前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
(5)前記連続するペプチド単位が、少なくとも5単位以上である、前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
(6)前記ペプチド単位がすべて同一である前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
(7)前記融合抗菌タンパク質が、フィブロインL鎖および/またはフィブロインH鎖を含む、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
(8)前記融合抗菌タンパク質が、シルクに対して結合活性を示すペプチド配列(例えば、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)、または、QSWSWHWTSHVT(配列番号26))を含む、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
(9)前記融合抗菌タンパク質がカイコから産生される生糸から得られる、前記(7)または(8)に記載の融合抗菌タンパク質。
(10)前記(7)または(8)に記載の融合抗菌タンパク質を含むシルク繊維。
(11)以下の式1:
X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、
(ここで、X1は、ArgまたはAlaであり、X2は、Tyr、ArgまたはLeuであり、X3は、ArgまたはAlaであり、X4は、Ile、ValまたはLeuであり、X5は、GlyまたはArgであり、X6は、ArgまたはLysである。)
で表されるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドをコードするヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列単位の少なくとも3単位以上を、場合によりヌクレオチドからなるスペーサー配列を介して、連続して含む繰り返しヌクレオチド配列(ここで、該連続するヌクレオチド配列単位は同じであっても異なってもよい)、を含むDNA。
(12)前記式1で表される配列が、以下の配列番号1〜配列番号24:
配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、または、配列番号24(RLLLRLGRK)
である、前記(12)に記載のDNA。
(13)前記スペーサー配列が、アミノ酸数0〜4(好ましくは2〜3)のスペーサーをコードするヌクレオチド配列である、前記(11)または(12)に記載のDNA。
(14)前記スペーサー配列が、グリシンおよび/またはプロリンをコードするヌクレオチド配列からなる前記(11)〜(13)のいずれか一つに記載のDNA。
(15)前記連続するヌクレオチド配列単位が、少なくとも5単位以上である、前記(11)〜(14)のいずれか一つに記載のDNA。
(16)前記ヌクレオチド配列単位によりコードされるアミノ酸配列がすべて同一である前記(11)〜(15)のいずれか一つに記載のDNA。
(17)前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)に、フィブロインL鎖プロモーター配列またはフィブロインH鎖プロモーター配列、およびフィブロインL鎖配列またはフィブロインH鎖配列を含む、前記(11)〜(16)のいずれか一つに記載のDNA。
(18)前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)にカイコの絹糸腺において機能する分泌シグナル配列、および該分泌シグナル配列の下流にシルクに対して結合活性を示すペプチド配列(例えば、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26))をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、該分泌シグナル配列の上流(5’側)に酵母のGAL4認識配列であるUAS配列を含む、前記(11)〜(16)のいずれか一つに記載のDNA。
(19)前記(11)〜(18)のいずれか一つに記載のDNAを含むベクター。
(20)前記(17)または(18)に記載のDNAを有し、前記ポリヌクレオチドによりコードされる融合タンパク質を発現する組換えカイコ。
(21)前記(20)に記載の組換えカイコから産生されるシルク繊維。
(22)任意のタンパク質に抗菌性を付与して融合抗菌タンパク質を製造するための方法であって、以下の工程:
a.該タンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流(5’側)または下流(3’側)に繰り返しヌクレオチド配列を融合したDNAを含むベクターを調製する工程、
ここで、該繰り返しヌクレオチド配列は、以下の式1:
X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、
(ここで、X1は、ArgまたはAlaであり、X2は、Tyr、ArgまたはLeuであり、X3は、ArgまたはAlaであり、X4は、Ile、ValまたはLeuであり、X5は、GlyまたはArgであり、X6は、ArgまたはLysである。)
で表されるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドをコードするヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列単位の少なくとも3単位以上(好ましくは5単位以上、さらに好ましくは10単位以上)を、場合によりヌクレオチドからなるスペーサー配列を介して、連続して含む(ここで、該連続するヌクレオチド配列単位は同じであっても異なってもよく、また、前記スペーサー配列は、好ましくはアミノ酸数0〜4(さらに好ましくは2〜3)のスペーサーをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくはグリシンおよび/またはプロリンをコードする配列からなる)、
b.該調製したベクターを、宿主(例えば、イースト、昆虫細胞、植物細胞、動物(哺乳類)細胞、昆虫(例えば、カイコ)、植物、動物等、但し、細菌、糸状菌は除く)に導入し、該タンパク質と連続する上記ペプチドからなる融合タンパク質を発現させる工程、および
c.発現した融合タンパク質を回収する工程、
からなる融合抗菌タンパク質の製造方法。
(23)前記式1で表される配列が、以下の配列番号1〜配列番号24:
配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、または、配列番号24(RLLLRLGRK)
である、前記(22)に記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
(24)前記連続するヌクレオチド配列単位によりコードされるアミノ酸配列がすべて同一である前記(22)または(23)に記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
(25)前記融合DNAが、前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)に、フィブロインL鎖プロモーター配列またはフィブロインH鎖プロモーター配列、およびフィブロインL鎖配列またはフィブロインH鎖配列を含む融合DNAであり、かつ、前記ベクターが該融合DNAに加えて昆虫由来のトランスポゾン配列を含む、前記(22)〜(24)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
(26)前記融合DNAが、前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)にカイコの絹糸腺において機能する分泌シグナル配列、および該分泌シグナル配列の下流にシルクに対して結合活性を示すペプチド配列(例えば、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)、または、QSWSWHWTSHVT(配列番号26))をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、該分泌シグナル配列の上流(5’側)に酵母のGAL4認識配列であるUAS配列をさらに含む融合DNAであり、そして前記ベクターが該融合DNAに加えて昆虫由来のトランスポゾン配列を含む、前記(22)〜(24)のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
(27)前記(25)または(26)に記載の融合抗菌タンパク質の製造方法を用いて抗菌活性を有するシルク繊維を製造する方法であって、
前記工程bが、さらに以下の工程:
b−1.前記融合DNAを有するカイコ卵を製造する工程、および
b−2:該カイコ卵から生じたカイコの中から、融合タンパク質を発現する組換えカイコを選択する工程、
を含み、かつ、前記工程cが、選択された組換えカイコが吐糸した絹糸から、融合タンパク質を回収する工程である、シルク繊維の製造方法。
(28)以下の工程(i)および(ii)を含む任意のタンパク質が結合したシルクの製造方法:
(i)カイコ中部絹糸腺において機能する分泌シグナル配列をコードするDNA、該分泌シグナルをコードするDANの下流に、機能的に結合したQSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドをコードするDNA、および該ペプチド配列をコードするDNAの下流に、機能的に結合した任意のタンパク質をコードするDNAを有するトランスジェニックカイコであって、上記ペプチド配列および該任意のタンパク質からなる融合タンパク質を繭糸に分泌するトランスジェニックカイコを製造する工程、
(ii)製造されたトランスジェニックカイコから、該融合タンパク質およびフィブロインを含むシルクを回収する工程。
(29)前記ペプチドが、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドである、前記(28)に記載の製造方法。
(30)前記分泌シグナル配列がセリシン1シグナルペプチドまたはセリシン2シグナルペプチドを含む、前記(28)または(29)に記載の製造方法。
(31)前記分泌シグナル配列の上流に、機能的に結合した標的プロモーターをコードするDNAを含む、前記(28)〜(30)のいずれか一つに記載の製造方法。
(32)前記標的プロモーターが、GALの認識配列UAS配列である、前記(31)に記載の製造方法。
(33)カイコ絹糸腺において機能する分泌シグナル配列をコードするDNAの下流に、機能的に結合したQSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドをコードするDNA、および該ペプチド配列をコードするDNAの下流に、機能的に結合した任意のタンパク質をコードするDNAを有するトランスジェニックカイコであって、上記ペプチド配列および該任意のタンパク質からなる融合タンパク質を繭糸に分泌するトランスジェニックカイコ。
(34)前記ペプチドが、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドである、前記(33)に記載のトランスジェニックカイコ。
(35)前記分泌シグナル配列がセリシン1シグナルペプチドまたはセリシン2シグナルペプチドを含む、前記(33)または(34)に記載のトランスジェニックカイコ。
(36)QSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドおよび任意のタンパク質からなる融合タンパク質が非共有結合的に結合したシルク。
(37)前記ペプチドが、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドである、前記(36)に記載のシルク。
(38)前記(28)〜(32)のいずれか一つに記載の方法により製造されたシルク。
本発明によれば、任意のタンパク質(例えば、シルク)に抗菌活性を付与することができる。そのようなタンパク質は抗菌性素材として有用である。また本発明の一態様によれば、組換えカイコを用いて機能性、例えば抗菌性が付与されたシルクを生産することが可能である。
ペプチドAからなるペプチド単位を連続して含む繰り返しペプチドを大腸菌で発現させたものを電気泳動した結果である。9AMnは、メチオニンをスペーサーとしてペプチド単位を結合したものである。9AGGMnは、グリシン2残基とメチオニンをスペーサーとしてペプチド単位を結合したものである。上段の数字は、ペプチド単位の繰り返し数を示す。0は、改変ペプチドをもたないプラスミドのみを導入した対照である。IPTGの添加により矢印に示したタンパク質の発現が誘導されているが、n=3以上においてはタンパク質の誘導は見られない。誘導後の全タンパク質の増加率を下に示す。n=3以上においてはタンパク質量が減少している。 実施例で用いた配列1のDNA配列およびアミノ酸配列である。 実施例で用いた配列2のDNA配列およびアミノ酸配列である。 実施例で用いた配列3のDNA配列およびアミノ酸配列である。 実施例で用いた配列4のDNA配列およびアミノ酸配列である。 実施例で用いた融合タンパク質のデザインを模式的に示した図である。 本発明の方法を用いて作製した組換えカイコについて、フィブロインL鎖プロモーターを用いたカイコ後部絹糸腺におけるフィブロイン融合型改変ペプチド繰り返しペプチドの発現を調べた結果である。明視野像と蛍光像を撮影し、EGFPの発現を示す緑色の蛍光像が得られた。 本発明の方法を用いて作製した組換えカイコについて、後部絹糸腺、中部絹糸腺発現プロモーターGAL4系統と交配することによって発現誘導されるUAS-改変ペプチド繰り返しペプチドの発現を調べた結果である。明視野像と蛍光像を撮影し、EGFPの発現を示す緑色の蛍光像が得られた。 本発明の方法を用いて作製した抗菌性組換えシルクを乾燥不充分で保存した時の変色を確認した結果である。得られた繭を8M尿素溶液で洗浄することによりセリシン層を除去し、乾燥不十分な状況で約1年保存した。対照では茶色く変色が見られたのに対して、組換えシルクでは変色は見られなかった。 実施例で用いた配列5のDNA配列およびアミノ酸配列である。 本発明の方法を用いて作製した配列5のタンパク質を固定化した抗菌性シルクを乾燥不充分で保存した時の変色を確認した結果である。a、繭を煮繭することによりセリシン層を除去し、乾燥不十分な状態で1ヶ月保存した。対照では茶色く変色が見られたが、抗菌シルクでは変色が見られなかった。bは、同様に煮繭してセリシン層を除去した繭にaの対照繭上に存在した微生物を接種した実験である。乾燥不十分な状態で1ヶ月保存した後、矢印部分の対照繭のみに変色が見られた。 実施例で用いた配列6のDNA配列およびアミノ酸配列である。 実施例で用いた配列7のDNA配列およびアミノ酸配列である。 配列6の融合タンパク質のフィブロインゲルおよびシルク繊維との結合を確認した結果である。フィブロインゲルは洗浄後も強い蛍光を発しているが、シルク繊維には蛍光はほとんど見られない。 配列6および7の融合タンパク質の絹糸腺での発現をウエスタンブロティングにより確認した結果である。絹糸腺試料を8M尿素溶液で溶解し、SDS−PAGEを行った後にPVDF膜に転写し、抗EGFP抗体で検出した。シフェラーゼ発現系統1−1〜3では約66kDa、セルラーゼ発現系統3−1〜2においては約70kDaの予想される大きさのバンドが見られた。 本発明で得られたシルクのルシフェラーゼ活性を確認した結果である。対照系統およびルシフェラーゼ発現系統1−1〜3の繭片を、ルシフェラーゼ定量システムの基質溶液に添加し、発光量を測定した。ルシフェラーゼ発現系統の繭片にはルシフェラーゼ活性が認められた。 本発明で得られたシルクのセルラーゼ活性を確認した結果である。対照系統およびセルラーゼ発現系統3−1〜2の繭片のセルラーゼ活性を経時的に測定した。繭1gあたりの還元糖生成量を測定し、対照の値を差し引いた値として示した。セルラーゼ発現系統の繭にはセルラーゼ活性が認められた。 本発明で得られたシルクの安定性を確認した結果である。対照、ルシフェラーゼ発現系統1−1〜3およびセルラーゼ発現系統3−1〜2の繭片を水、0.4%Na2CO3溶液、8M尿素溶液で洗浄した後の蛍光観察像である。いずれの組換え繭片も蛍光を発しており、洗浄後にも融合タンパク質が保持されていることが示された。
以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
本明細書において「タンパク質」なる用語は、特に断りがない限り、タンパク質を構成するアミノ酸長は特に制限されず、一般にペプチドと言われる長さのものも含む意味で用いられる。
本発明で用いるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドは、カブトムシディフェンシより得られた9残基の改変ペプチドであり、薬剤耐性細菌を含む広範な細菌、糸状菌、原虫、ガン細胞等に対して強い細胞毒性を示す。改変ペプチドは、具体的は以下の式:X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、(ここで、X1=ArgまたはAla、X2=Tyr、ArgまたはLeu、X3=ArgまたはAla、X4=Ile、ValまたはLeu、X5=GlyまたはArg、X6=ArgまたはLysである。)で表される配列であり、より具体的には、以下の配列番号1〜配列番号24で表される配列(アミノ酸は一文字表記で示す):配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、および、配列番号24(RLLLRLGRK)である。
本発明においては、これらの配列の少なくとも1以上が用いられて、ペプチド単位が連続して繰り返された繰り返しペプチドまたはそれをコードするヌクレオチド配列を構成する。
本発明の一態様において、任意のタンパク質(長さは制限されず、一般にペプチドと言われるものも含む)と、上記改変ペプチドからなるペプチド単位が連続して繰り返された繰り返しペプチドを有する融合抗菌タンパク質が提供される。ペプチド単位は、少なくとも3単位以上、好ましくは5単位以上、さらに好ましくは10単位以上繰り返される。繰り返されるペプチド単位の上限は、特に制限がなく、発現性に問題がなくかつ目的のタンパク質の機能を不当に害さない限り制限されない。
繰り返されるペプチド単位を構成する個々のペプチド単位は、上記したペプチドから選ばれる限り特に制限はなく、同じペプチド単位が繰り返されても、異なるペプチド単位が繰り返されても良いが、好ましくは、同じペプチド単位が繰り返される。
前記繰り返しペプチドは、各ペプチド単位が直接結合されても、場合によりスペーサーを介して結合してもよいが、好ましくはスペーサーを介して結合する。
スペーサーを介して結合する場合は、スペーサーの長さは特に制限がなく、繰り返し構造に基づく抗菌性を発揮できる限りいずれの長さを用いることができるが、好ましくは必要以上に長くなく、例えば、アミノ酸数が10以下、より好ましくは0〜4、さらに好ましくは2〜3である。また、スペーサーを構成するアミン酸は特に制限がないが、好ましくはグリシンおよび/またはプロリンからなる。
さらに、好ましいスペーサーの長さやスペーサーを構成するアミノ酸は、繰り返しペプチド配列の種類や配列の繰り返し数によって、適宜選択できる。
改変ペプチドと一緒になって融合抗菌タンパク質を構成するタンパク質は、その種類や大きさは特に制限されず、一般にペプチドと言われる大きさのものも含まれる。
改変ペプチド繰り返しペプチドをその一部分として含む融合タンパク質は、単独で、あるいは他の材料と混合されて抗菌剤あるいは抗菌性を有するタンパク質材料として使用できる。
カブトムシディフェンシン改変ペプチドは大腸菌等の細菌類や糸状菌に対して抗菌性を有するが、哺乳類や昆虫等の多くの真核細胞生物又はそれら由来の細胞に対しては抗菌性を示さない。従って、前記改変ペプチド繰り返しペプチドをその一部分として含む融合タンパク質をコードするDNAを前記真核細胞生物由来の細胞に公知の方法またはそれに適宜修正を加えた方法で形質転換して形質転換細胞を作製することにより、あるいは、前記改変ペプチド繰り返しペプチドをその一部分として含む融合タンパク質をコードするDNAを公知の方法またはそれに適宜修正を加えた方法で前記真核細胞生物に導入して形質転換生物を作製することにより、前記改変ペプチド繰り返しペプチドをその一部分として含む融合タンパク質を前記形質転換細胞又は前記形質転換生物から得ることができる。
改変ペプチド繰り返しペプチドとともに融合タンパク質を構成するタンパク質(ペプチドを含む)そのものが、タンパク質或いは素材として有用である場合は、その用途において、抗菌特性を付与できる。このようなタンパク質としては、例えば、シルクをあげることができるがこれに制限されない。
また、改変ペプチド繰り返しペプチドとともに融合タンパク質を構成するタンパク質(ペプチドを含む)が特定の機能を有する場合は、その機能を利用して、融合タンパク質の抗菌特性を利用できる。例えば、タンパク質またはペプチドが、特定の物質との結合活性を有する場合は、融合タンパク質を用いて、特定の物質に抗菌性を付与できる。そのようなタンパク質の例としては、シルクとの結合活性をもつ非特許文献7に記載されている特定の配列を有するペプチドをあげることができる。
本発明の一態様において、前記融合抗菌タンパク質は、フィブロインL鎖またはフィブロインH鎖、或いはその両方の鎖を含む。それにより、シルクに改変ペプチド由来の抗菌性を付加できる。このような融合抗菌タンパク質であるフィブロインは、シルク繊維の全部または一部を構成でき、そのいずれの場合も本発明の範囲である。シルク繊維の一部を構成する場合は、例えば、後述する組換えカイコでの発現により、内在性のフィブロインと同時に発現させて生糸から得られるシルク繊維の一部となる他、融合抗菌タンパク質であるフィブロインを他のシルクと混合して抗菌活性をもつシルク繊維とする場合のいずれも含む。
本発明の他の一態様において、前記融合抗菌タンパク質は、シルクに対して結合活性を示すペプチド配列、例えば、配列番号27(QSWS)に示される配列を含む配列、好ましくは、配列番号25(SYTFHWHQSWSS)、または、配列番号26(QSWSWHWTSHVT)で示されるペプチド配列を含む。
このような抗菌活性をもつシルクへの結合能を有する融合タンパク質は、シルクに抗菌特性を付与でき、また、シルク繊維の一部を構成するが、そのようなシルク繊維も本発明の範囲である。シルク繊維の一部を構成する場合は、例えば、後述する組換えカイコでの発現により、内在性のフィブロインと同時に発現させて生糸から得られるシルク繊維の一部となる。
本発明の別の一態様において、任意のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と、上記改変ペプチドをコードするヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列単位が連続して繰り返された繰り返しヌクレオチド配列が融合されたDNAが提供される。繰り返されるヌクレオチド配列単位は、少なくとも3単位以上、好ましくは5単位以上、さらに好ましくは10単位上、繰り返される。繰り返されるヌクレオチド配列単位の上限は、特に制限がなく、発現性に問題がなくかつ目的のタンパク質の機能を不当に害さない限り制限されない。
繰り返されるヌクレオチド配列単位を構成する個々のヌクレオチド配列は、上記したペプチドから選ばれるペプチドをコードする限り特に制限はなく、同じ配列単位が繰り返されても、異なる配列単位が繰り返されても良いが、好ましくは、同じ配列単位が繰り返される。
前記繰り返しヌクレオチド配列は、各配列単位が直接結合されても、場合によりスペーサー配列を介して結合してもよいが、好ましくはスペーサー配列を介して結合する。
スペーサー配列を介して結合する場合は、その長さは特に制限はなく、発現された融合タンパク質が繰り返し構造に基づく抗菌性を発揮できる限りいずれの長さを用いることができるが、好ましくは、必要以上に長くなく、例えば、アミノ酸数10以下、好ましくはアミノ酸数0〜4、さらに好ましくは2〜3のスペーサーをコードするヌクレオチド配列である。また、スペーサー配列を構成するヌクレオチドは特に制限がないが、好ましくはグリシンおよび/またはプロリンをコードするヌクレオチド配列からなる。
さらに、好ましいスペーサーの長さやスペーサーを構成するヌクレオチドは、繰り返し配列の種類や配列の繰り返し数によって、適宜選択できる。
前記繰り返しヌクレオチド配列と一緒になって融合DNAを構成するヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質は、その種類や大きさは特に制限されず、一般にペプチドと言われる大きさのものも含まれる。
また、上記融合抗菌タンパク質においてタンパク質について記載した内容が、融合DNAにおいては、発現において特段の事情がない限り、そのタンパク質をコードするヌクレオチドとしてそのまま適用できる。
本発明の一態様において、前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)にフィブロインL鎖プロモーター配列およびフィブロインL鎖配列を含む融合DNA、および/または前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)にフィブロインH鎖プロモーター配列およびフィブロインH鎖配列を含む融合DNAが提供される。前記繰り返しヌクレオチド配列の場所は、融合タンパク質の分泌及びフィブロインH鎖とL鎖の結合に影響を与えないように、フィブロインのシグナルペプチドの下流が望ましい。
このような融合DNAを組換えカイコに導入して発現させることにより、抗菌活性が付与されたフィブロインを提供でき、それを用いて抗菌性シルク繊維が提供される。
本発明の他の一態様において、前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)に、カイコの絹糸腺において機能する分泌シグナル配列および該分泌シグナルの下流にシルクに対して結合活性を示すペプチド配列(例えば、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)、または、QSWSWHWTSHVT(配列番号26))をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、該分泌シグナル配列の上流(5’側)に酵母のGAL4認識配列であるUAS配列をさらに含む、融合DNAが提供される。
このような融合DNAを組換えカイコに導入して発現させることにより、抗菌活性が付与された生糸を得ることができ、それを用いて抗菌性シルク繊維が提供される。
本発明のさらに他の一態様において、上記融合DNAを含むベクターが提供される。ベクターには、上記の融合DNAに加えて、ベクターを宿主に導入した後に融合タンパク質を発現するための、宿主に応じた発現システムを含む。種々の発現システムが当業者に公知であり、それらのシステムを本発明の上記融合DNAと適宜組み合わせて用いることができ、それらも本発明の範囲である。
本発明のさらに別の一つの態様は、任意のタンパク質に抗菌性を付与して融合抗菌タンパク質を製造するための方法である。本発明の製造方法は、上記した本発明の融合DNAを含むベクターを用いて、ベクターを宿主、例えば、イースト、昆虫細胞、植物細胞、動物(哺乳類)細胞、昆虫(例えば、カイコ)、植物、動物等(但し、細菌、糸状菌は除く)に導入し、融合タンパク質を発現させ、発現した融合タンパク質を回収する、ことを含む。
ベクターの宿主への導入、その後の融合DNAの発現、さらには発現した融合タンパク質回収、のそれぞれの方法は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、本発明の製造方法にそれらを組み合わせた方法も本発明の範囲である。
本発明の一つの態様において、任意のタンパク質が非共有結合的に結合したシルクが提供され、任意のタンパク質が特定の機能を有する場合は、該機能が付与されたシルクが提供される。シルクに提供される機能は、機能をもつタンパク質がカイコにおいて発現が可能であれば特に制限がない。これに限定されないが、例えば、抗菌活性、特定の酵素活性、特定の化学特性(例えば蛍光色)をあげることができる。
このようなシルクは、QSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドと機能を持った任意のタンパク質からなる融合タンパク質、および該融合タンパク質が非共有結合的に結合したシルクであるが、好ましくは、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドと機能を持った任意のタンパク質からなる融合タンパク質、および該融合タンパク質が非共有結合的に結合したシルクである。このようなシルクは、上記配列が有するシルクに対する結合活性に基づき任意のタンパク質が有する機能を持つことができる。
本発明の一つの態様において、トランスジェニックカイコを用いた任意の機能(例えば、抗菌性)が付与されたシルクの製造方法が提供される。このような製造方法は、上記配列(配列番号25〜27)を含むペプチドと機能を持った任意のタンパク質をコードする融合DNAを含むベクターを用いて、ベクターをカイコに導入し、融合タンパク質を発現させ、該融合タンパク質が結合したシルクを回収する、ことを含む。
ベクターの宿主への導入、その後の融合DNAの発現、さらには発現した融合タンパク質回収、のそれぞれの方法は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、本発明の製造方法にそれらを組み合わせた方法も本発明の範囲である。
以下、組換えカイコを用いた方法を例として、本発明の融合抗菌タンパク質の製造方法を詳細に説明するが、本発明の融合DNAや方法を用いる宿主やその工程は、これらに限定されるのもではない。
カイコに導入した外来遺伝子の発現制御系としては、例えば、カイコの内在性の分泌シグナルをもつ遺伝子を用いる方法や、酵母のGAL4/UASシステムを用いる方法がある。
前者の例としては、例えば、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNA(例えば、フィブロインH鎖またはL鎖遺伝子、セリシン1またはセリシン2遺伝子)のプロモーター配列のあとに、任意のタンパク質をコードするDNAと改変ペプチドの繰り返しペプチドをコードするDNAを繋いだ融合DNAをカイコに導入することにより、目的の融合抗菌タンパク質を組換えカイコの絹糸腺内に発現できる。
また、任意のタンパク質に加えてマーカーとなるタンパク質(例えば、EGFP等の蛍光タンパク質)をコードするDNAを加えることもでき、それによりマーカーを用いて発現を確認することができる。
さらには、融合タンパク質の末端に特定のアミノ酸配列をもつTagが発現するように、TagをコードするDNAを加えることもできる。これに限定されないが、例えば、His−Tagをあげることができ、これにより、発現した融合タンパク質の回収・精製が容易となる。
融合DNAのカイコへの導入は、カイコの形質転換のために使用することができる昆虫用のベクターを用いて行う。昆虫用のベクターであれば特に制限なく用いることができるが、例えば、昆虫由来DNA型トランスポゾンを組み込んだベクター(例えば、piggyBac、mariner、minos)、AcNPVベクターまたはバキュロウィルスベクターをあげることができ、piggyBacが好ましい。
組換えカイコの作製において、piggyBac法を用いる場合は、田村らの方法(非特許文献3)に準じて行うことができる。例えば、トランスポゾンの逆位末端反復配列の間に上記融合DNAを挿入したベクターを、トランスポゾン転移酵素をコードするDNAを有するベクター(ヘルパーベクター)とともにカイコ卵に注入する。カイコ卵への注入方法等の一連の操作は、当業者にとって公知であり、公知の方法をそのまま用いて、または適宜変更を加えて用いて行うことができる。
本発明の製造方法に従い、組換えカイコに生産させた融合タンパク質は、カイコの繭から回収することができる。繭からの融合タンパク質の回収は、目的の融合タンパク質の性質に従い、常法を用いて、当業者が適宜変更を加えて行うことができる。例えば、融合タンパク質の性質によって煮繭や高温での操糸等の操作が好ましくない場合は、例えば、特許文献7に記載の低温かつ真空浸透処理等の改良法を用いて行うことができる。
本発明の製造方法に従い、組換えカイコに抗菌活性が付与されたシルクを生産させた場合は、常法、或いは例えば上記改良法を用いて、繭から生糸を生産でき、抗菌性をもったシルク繊維を生産することができる。このようなシルク繊維は、機能性シルクとして抗菌活性が求められる用途に有用である。
以下、本発明の別の態様として、組換えカイコを用いた方法を例として機能を付与したシルクの製造方法を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるのもではない。
カイコに導入した外来遺伝子の発現制御系としては、例えば、カイコの内在性の分泌シグナルをもつ遺伝子を用いる方法、酵母のGAL4/UASシステムを用いる方法、或いはこれらを組み合わせた方法がある。
例えば、GAL4の認識配列であるUASおよびその下流の中部絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNA(セリシン1またはセリシン2遺伝子)からなるプロモーター配列のあとに、シルクへの結合活性をもつペプチドをコードするDNAと機能を持った任意のタンパク質をコードするDNAを繋いだ融合DNAをカイコに導入することにより、シルク結合性の融合タンパク質を組換えカイコの絹糸腺内に発現できる。
また、任意のタンパク質に加えてマーカーとなるタンパク質(例えば、EGFP等の蛍光タンパク質)をコードするDNAを加えることもでき、それによりマーカーを用いて発現を確認することができる。なお、シルクに機能として蛍光色を付与する場合は、EGFP等の蛍光タンパク質が任意のタンパク質でもある。
また、融合DNAのカイコへの導入および組換えカイコの作製は、上記と同様に行うことができる。
本発明の製造方法に従い、組換えカイコに生産させた融合タンパク質は、フィブロインとともにカイコで発現され、一緒になって絹糸としてカイコの繭から回収することができる。繭からの絹糸の回収およびシルクの調製は、常法を用いて当業者が適宜変更を加えて行うことができる。例えば、煮繭により行うことができる。フィブロインと同時に絹糸腺で発現される融合タンパク質はシルクに非共有結合的に十分に結合しているので、煮繭等の操作によってシルクから離れることがない。このようにして、本発明の製造方法に従い特定の機能が付与されたシルクが生産できる。
なお、本発明の機能性シルクの製造方法では、機能性タンパク質がフィブロインとの融合タンパク質として発現されるのではないので、機能性タンパク質の活性がフィブロイン繊維の立体障害により阻害されるのを防ぐことができ、種々の機能性タンパク質を用いて、シルクに新しい機能を付与できるという特徴を有する。特には、より高い自由度が必要な酵素や抗体をシルクに固定するのに有用である。また、任意のタンパク質をフィブロインとの融合タンパク質として発現した場合は、発現量は一般に比較的少量であるが、そのような懸念もない。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:改変ペプチド多量体の抗菌活性
改変ペプチドの一つであるペプチドA(配列番号1:RLYLRIGRR)の単量体、二量体、および三量体を、JITSUBO株式会社(東京)に依頼して合成した。以下にそれぞれの配列を示す。
peptideA単量体:RLYLRIGRR-NH2(配列番号1)
peptideA二量体:RLYLRIGRRRLYLRIGRR-NH2(配列番号28)
peptideA三量体:RLYLRIGRRRLYLRIGRRRLYLRIGRR-NH2(配列番号29)
それぞれのペプチド(peptideAの単量体、二量体および三量体)について、黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する抗菌活性を測定した。抗菌活性の測定は以下の手法で行った。
用いた菌種:
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌) NBRC 12732、および
Escherichia coli (大腸菌) NBRC 3972
培地および生理食塩水:
ニュートリエント(NB)培地(Difco Nutrient Broth)、
NB寒天培地は、NB培地に寒天粉末1.5%を加え、高圧蒸気殺菌したものを用いた。
生理食塩水は、0.85%塩化ナトリウム(精製水) を高圧蒸気殺菌したものを用いた。
手順:
平板寒天培地の保存菌株から、NB培地に1白金耳移植し、37℃で一晩培養した。培養した菌100μlを新しいNB培地5 mlに加え、37℃で3時間振盪培養した。培養液を、吸光度600 nm= 0.01 (菌濃度 1×104個/ml)になるように、生理食塩水で希釈調整し試験菌液とした。次いで、96ウェルマイクロプレートに、適当な濃度の、それぞれのペプチドの試料液を入れ、精製水で2倍希釈系列を作成した。試料液全体量は20μl。対照区には精製水20μlを入れた。(ウェル中の最終ペプチド濃度は最高で100μg/ml)。ウェルに試験菌液180μlを加え、37℃で18時間±1時間培養した。培養した各サンプルの菌数を10倍希釈法により希釈系列を作成し、各希釈系列のサンプルから200μlをNB寒天培地に塗抹し、37℃で一晩培養した。培養後のコロニー数をコロニーカウンターで測定し、サンプル中の生菌数を算定した。
結果を以下の表1に示す。黄色ブドウ球菌に対しては、PeptideA単量体に比べ、二量体で8倍、三量体では24倍、大腸菌に対しては、PeptideA単量体に比べ、二量体で8倍、三量体では12倍の強い抗菌活性を示した。ペプチドの繰り返しにより相乗的な活性上昇を示したことから、繰り返し構造が極めて有効であることが示された。
実施例2:改変ペプチド多量体融合タンパク質の大腸菌における発現
大腸菌で毒性の高いペプチドを発現させるシステムとして高い実績を持つpET31ベクター系(Novagen)を使用し、KSIタンパク質(ケステロイド異性化酵素)との融合タンパク質としての発現を行った。KSIタンパク質は溶解性が低く、抗菌ペプチドの活性を抑制できることが知られている。
PeptideAの単量体、および多量体を発現する配列を作製した。具体的には、メチオニンをスペーサーとしたPeptideAの繰り返し配列(9AMn)、およびグリシン2残基とメチオニンをスペーサーとしたPeptideAの繰り返し配列(9AGGMn)を作製した、それぞれ以下の配列をもつ合成オリゴDNAを用いた。
9AMS(センス鎖): 5’-CGTCTGTATCTGCGTATTGGCCGTCGTATG-3’(配列番号30)、
9AMAS(アンチセンス鎖): 5’-ACGACGGCCAATACGCAGATACAGACGCAT-3’ (配列番号31)、および
9AGGMS(センス鎖): 5’-CGTCTGTATCTGCGTATTGGCCGTCGTGGCGGCATG-3(配列番号32)
9AGGMAS(アンチセンス鎖):5’-GCCGCCACGACGGCCAATACGCAGATACAGACGCAT-3’(配列番号33)
これらのオリゴDNAをTE緩衝液に100μMの濃度に溶解し、20μLのオリゴDNA溶液と20μLのアニーリング緩衝液(400 mM Tris-HCl, 100 mM MgCl2, 500 mM NaCl, pH 8.0)を混合し、99℃10分加熱した後に、15分以上かけて30℃まで冷却してアニーリングを行った。反応溶液をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出し、エタノール沈殿を行い、アニール断片を得た。アニーリングさせた単位を、20μLのTE緩衝液に溶解し、2.5μLの本溶液と10μLのH2O、12.5μLライゲーション溶液I(タカラ)と混合し、16℃で20時間ライゲーションすることにより作製した。
これらの操作を複数回繰り返し、断片をアガロース電気泳動ゲルから切り出し、精製した。精製した断片をpET31ベクターのAlwNI部位に挿入した。挿入プラスミドで大腸菌DH5αを形質転換し、得られた単コロニーからプラスミドを抽出し、その配列をDNAシークエンサーにより確認した。その結果、繰り返し回数は、9AMnについては、n=1, 2, 3, 4, 6、9AGGMnについては、n=1, 3, 5,のクローンを得た。
これらのプラスミドを宿主大腸菌BLR(DE3)pLysSに導入した。これらの導入した菌を37℃で一晩培養し、IPTGを添加することにより発現を誘導した。融合タンパク質の抗菌活性は、発現誘導後の宿主大腸菌への毒性で評価した。スペーサーのアミノ酸残基数に関わらず、n=1、2では発現が見られたが、n=3以上では明瞭なバンドの発現が見られなかった。また、n=3以上では誘導後に大腸菌のタンパク質量が低下し、融合タンパク質の発現誘導により菌体に対する毒性を示した。結果を図1に示す。矢印は誘導された融合タンパク質を示す。
融合タンパク質の発現が見られたn=0,1,2についてKSI融合タンパク質を精製し、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性試験を行ったが、いずれも抗菌活性は見られなかった。一方、極めて不溶性であり抗菌ペプチドの活性を抑制しうるKSIタンパク質との融合においても、n=3以上では菌体に対する毒性が見られたことから、改変ペプチドを繰り返して融合タンパク質として発現させることが細菌に対する抗菌効果として極めて有効であることが明らかになった。また、そのような改変ペプチドのペプチド単位を繰り返して有する融合タンパク質が、細菌に対して顕著な抗菌活性をもつことが明らかとなった。
実施例3:改変ペプチドの繰り返しペプチドを有する融合タンパク質(シルク)の発現
3−1:DNAの調製
改変ペプチドの繰り返しペプチドをコードする下記に記載のDNA(配列1〜配列4)を調製した。
配列1:配列1は、カイコのフィブロインL鎖プロモーターによって調節されるフィブロイン融合型繰り返しペプチドであり、フィブロインプロモーター(約650bp)の下流にフィブロインL鎖(726bp)と改変ペプチド(RLYLRIGRK:配列番号13)の繰り返しペプチド(171bp)をリンカー配列(G4S3)で融合させたキメラタンパク質である。そのC末端には発現を蛍光によってモニターできるようにEGFP(720bp)を融合させてある。配列1のDNA配列(配列番号34)と、配列1によりコードされるアミノ酸配列(配列番号35)を図2に示す。
配列2:配列2は、カイコの任意のプロモーターによって発現するGAL4により調節される繰り返しペプチドである。GAL4認識配列であるUAS(381bp)の下流にカイコのセリシン1シグナルペプチドを含む23アミノ酸をコードする配列(69bp)をN末端に融合させたEGFP(725bp)と改変ペプチド(RLYLRIGRK:配列番号13)の繰り返しペプチド(171bp)をリンカー配列(G4S3)で結合したキメラタンパク質である。配列2のDNA配列(配列番号36)と、配列2によりコードされるアミノ酸配列(配列番号37)を図3に示す。
配列3:配列3は、カイコのフィブロインL鎖プロモーターによって調節されるフィブロイン融合型繰り返しペプチドである。配列3は、フィブロインプロモーター(約650bp)の下流にフィブロインL鎖(741bp)と改変ペプチド(RLYLRIGRR:配列番号1)の繰り返しペプチド(360bp)を融合させたキメラタンパク質である。そのC末端にはHis-tag(18bp)を融合させてある。配列3のDNA配列(配列番号38)と、配列3によりコードされるアミノ酸配列(配列番号39)を図4に示す。
配列4:配列4は、カイコのフィブロインH鎖プロモーターによって調節されるフィブロイン融合型繰り返しペプチドである。配列4は、フィブロインプロモーター(約1130bp)の下流にイントロン(971bp 図中括弧内の配列)を含むフィブロインH鎖(1620bp)と改変ペプチド(RLYLRIGRR:配列番号1)の繰り返しペプチド(360bp)を融合させたキメラタンパク質である。そのC末端にはHis-tag(18bp)を融合させてある。配列4のDNA配列(配列番号40)と、配列3によりコードされるアミノ酸配列(配列番号41)を図5に示す。
それぞれの配列は、以下のようにして作製した。
配列1:配列1は以下の方法で作製した。
改変ペプチドの5回繰り返しペプチドをコードするOr9A3Gx5配列を含むベクターをSacI/SalIで消化し、pSLfa1180ベクターに挿入した。N末端側にリンカー配列(G4S)x3を融合するために、以下の配列のオリゴDNAをSpeI/SacIサイトに挿入し、G4S3-Or9A3Gx5を作製した。
5’-ACTAGTGGTGGAGGCGGTTCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGTGGCGGATCGGAGCTC-3’(配列番号42)
次いで、G4S3-Or9A3Gx5のC末端にEGFPを挿入するために、5’末端にSalI、3’末端にSpeI サイトを付加したプライマーを用いてEGFP配列を増幅した。次にこの断片をSalI/SpeIサイトに挿入し、リンカー−繰り返しペプチド−EGFP配列(G4S3-Or9A3Gx5-EGFP配列)を得た。
G4S3-Or9A3Gx5-EGFPを、フィブロインL鎖遺伝子(フィブロインL鎖プロモーターおよびフィブロインL鎖)をもつ、pBac[Lp-LORF, 3xP3-DsRed]ベクターのSpeIサイトに挿入して、配列1を有するトランスフォーメーションベクター(FibL-Or9A3Gx5-EGFP)を作製した。
配列2:配列2は以下の方法で作製した。
配列2(セリシンシグナル-YN42-EGFP-G4S3-Or9A3Gx5-FLAG配列)は制限酵素サイトを付加したプライマーを用いたPCRでそれぞれ増幅し、pSLfa1180ベクターに順次、挿入して作製した。
以下が、XbaI/NdeIサイトを付加したセリシン1のシグナルペプチド配列(配列番号43)である。
5’-TCTAGAATGCGTTTCGTTCTGTGCTGCACTTTGATTGCGTTGGCTGCGCTCAGCGTAAAAGCTCATATG-3’(配列番号43)
以下が、NdeI/XhoIサイトを付加したシルクに対して結合活性を有するペプチド配列(YN42ペプチド配列:SYTFHWHQSWSS(配列番号25))をコードするヌクレオチド配列(配列番号44)である。
5’-CATATGAGCTACACATTCCACTGGCACCAAAGCTGGAGTTCACTCGAG-3’(配列番号44)
また、EGFPには、XhoI/BglIIサイトを付加した。リンカー配列(G4S3)には、BglII/SacIサイトを付加した。改変ペプチドの5回繰り返しペプチドをコードするOr9A3Gx5配列には、SacI/SalIサイトを付加した。FLAGタグには、SalI/SpeIサイトを付加した。
作製したpSLfa1180-セリシンシグナル-YN42-EGFP-G4S3-Or9A3Gx5-FLAGをXbaI/SpeI で消化して得られた断片、1167bpを、pBacMCS[UAS-SV40, 3xP3T toH]のBlnIサイトに挿入し、配列2を有するトランスフォーメーションベクター(SBP-EGFP-Or9A3Gx5)を作製した。
配列3:配列3は以下の方法で作製した。
改変ペプチドの10回繰り返しペプチドをコードするAd9A3Gx10配列を作製し、これをフィブロインL鎖遺伝子(フィブロインL鎖プロモーター、およびびフィブロインL鎖)をもつ、pBac[Lp-LORF, 3xP3-DsRed]ベクターのSpeIサイトに挿入し、配列3を有するトランスフォーメーションベクター(FibL-Ad9A3Gx10)を作製した。
配列4:配列4は以下の方法で作製した。
改変ペプチドの10回繰り返しペプチドをコードするAd9A3Gx10配列を作製し、これをフィブロインH鎖遺伝子(フィブロインH鎖プロモーター、イントロンおよびフィブロインH鎖)をもつ、pHC-EGFPHisベクターのBamHI/SalIサイトに挿入し、配列4を有するトランスフォーメーションベクター(FibH-Ad9A3Gx10)を作製した。
それぞれの融合タンパク質(配列)のデザインを模式的に図6に示す。
下記表2に示すように、配列1、3および4は、後部絹糸腺特異的な分泌シグナルであるフィブロインH鎖遺伝子またはL鎖遺伝子のプロモーター配列を用いた、フィブロイン鎖融合型(抗菌ペプチドとフィブロインの融合タンパク質)の発現であり、一方、配列2は、中部絹糸腺特異的な分泌シグナルであるセリシン1遺伝子のプロモーター配列を用いた、分泌型(シルク結合性ペプチドと抗菌ペプチドの融合タンパク質)の発現である。
3−2:遺伝子組換えカイコの作製
配列1、2、3および4を、カイコゲノムDNA中に組み込んだ組み換えカイコを以下のようにして作出した。
上記のようにして、配列1および2をpiggyBacベクターに挿入したプラスミドDNAを作出した。なお、このプラスミドDNAは遺伝子導入マーカーとして3xP3プロモーターの下流に蛍光タンパク質遺伝子を組み込んである。また、上記のようにして、配列3をpiggyBacベクターに挿入したプラスミドDNAを、配列4をpHCベクターに挿入したプラスミドDNAを作出した。
次いで、各配列をもつプラスミドDNAを、ヘルパープラスミドDNAと転移酵素のmRANとともにカイコの胚へマイクロインジェクションした。インジェクションを施したG0個体を飼育し、正常発生し、成虫になった個体を交配した。得られたG1個体の胚から、遺伝子が導入された個体をマーカー遺伝子の発現を指標にスクリーニングし、組換え個体を得た。
3−3:改変ペプチド繰り返しペプチド遺伝子の発現
5齢3日目から5日目のカイコの後部絹糸腺からtotal RNAを抽出し、内在性のフィブロイン(L鎖あるいはH鎖)に対する抗菌性ペプチドのRNA量を調べた。結果を以下の表3に示す。それぞれの系統の中で、発現量が比較的高い系統を表に示した。いずれの系統も絹糸腺内における組換えタンパク質の発現を確認することができた。
また、フィブロインL鎖およびH鎖プロモーターを用いたカイコ後部絹糸腺におけるフィブロイン融合型改変ペプチド繰り返しペプチド(配列3および配列4)の発現を、絹糸腺をヒスチジンタグに対する免疫染色で確認したところ、発現が確認できた。
3−4:組換えタンパク質の検出
融合タンパク質の発現を確認するために、組換えカイコの繭からシルクを得て、EGFPの蛍光を確認した。なお、シルクは、特許文献7に記載のEGFPが蛍光を失わない条件で精練した。
配列1を導入した組換えカイコについて、フィブロインL鎖プロモーターを用いたカイコ後部絹糸腺におけるフィブロイン融合型改変ペプチド繰り返しペプチドの発現を調べた結果を図7に示す。組換え個体の生産するシルクにはGFPの蛍光が見られた。
また、後部絹糸腺、中部絹糸腺発現プロモーターGAL4系統と交配することによって発現誘導されるUAS-改変ペプチド繰り返しペプチド(配列2)の発現を調べた結果、シルクに蛍光があることが確認できた。結果を図8に示す。すなわち、シルクに結合活性を有するペプチド(YN42)およびEGFPと融合させた繰り返しペプチドを絹糸腺で発現させることにより、EGFPの蛍光を発するシルクを得ることができた。このことからこのペプチドを用いることにより、シルクに繰り返しペプチドを固定化できることが明らかになった。さらには、シルクに結合活性をもつペプチドを有するタンパク質を、絹糸腺で内在性のシルクタンパク質と同時に発現させることにより、非共有結合的にシルクに機能性タンパク質を固定化することが可能であることが判った。
3−5:融合タンパク質を含むシルクの抗菌活性
作出した組換えカイコの生産したシルクの抗菌活性試験は、日本工業規格の「JIS L 1902繊維製品の抗菌性試験方法および抗菌効果」に定められた菌転写法を改変して行った。対象菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)を用いた。繭は煮繭しセリシンを除去し、真綿とした。約1 cm角に切った真綿をオートクレーブで滅菌し、クリーンベンチ内で一時間乾燥させた。2%アガロースプレートを作製したシャーレを逆さにし、蓋側を底にして、乾燥させた真綿をアガロースに触れないように置いた。室温で20時間保管することにより、試料の湿度を平衡化させた。黄色ブドウ球菌は対数増殖期のものをOD600=0.01となるようにNB培地で希釈し、0.45μmの孔径を持つUltrafreeに200μL入れ、13,000回転で5分間遠心することにより膜上に菌体を集めた。滅菌した真綿にこの菌体をすりつけることにより転写し、アガロース入りのシャーレ中、室温で2時間置いた。真綿を20 mlの生理食塩水中で10秒間ボルテックスにより撹拌し、菌を洗い出した。洗い出された菌をNBプレート上に植菌し、コロニー数を計測した。
菌転写法による抗菌活性では、菌減少値=log(対照の菌数)−log(試料の菌数)≧0で抗菌効果ありと評価する。結果を以下の表4に示す。いずれの組換えカイコの生産した抗菌ペプチド融合シルクも、菌減少値>0となり、抗菌活性を示した。これらの結果より、改変ペプチドの5回および10回繰り返し構造を融合させたシルクおよび5回繰り返し構造をシルク結合ペプチドで固定化したシルクは抗菌活性を示した。
3−6:融合タンパク質を含むシルクの抗菌作用
シルク(セリシンが除去された繭)は、乾燥不充分で保存すると変色を起こす。シルクの変色の一因は、微生物が生産するチロシナーゼによるチロシン残基の酸化による。そこで、変色に対する実施例3により作製した組換えシルクの抗菌作用を確認した。
組換えカイコから得られた繭からセリシンを除去したシルクを得た。
得られたシルク(FibL-Ad9A3Gx10(配列3)および FibH-Ad9A3Gx10(配列4)の組換えシルク)を乾燥不充分な状態で、常温にて約1年間保存した。対照としては、通常のカイコから得られた真綿(セリシン除去繭)を用いた(白/C)。結果を図9に示す。対照の真綿表面は茶色く変色したが、本発明の組換えシルクは変色が起こらず白のままであった。これにより、組換えシルクでは、微生物の繁殖が抑制されていることが判った。
実施例4:シルク結合性ペプチドを用いた抗菌性シルクの製造
4−1:組換えシルクの製造
カブトムシディフェンシン由来ペプチドをコードする下記に記載のDNA(配列5)を調製した。
配列5:配列5は、カイコの任意のプロモーターによって発現するGAL4により調節されるタイワンカブトムシディフェンシンの成熟ペプチド部分(mDef)である。GAL4認識配列であるUAS(381bp)の下流にカイコのセリシン1シグナルペプチドを含む23アミノ酸をコードする配列(69bp)をN末端に融合させたEGFP(725bp)とディフェンシンの成熟ペプチド部分(LTCDLLSFEAKGFAANHSLCAAHCLAIGRKGGACQNGVCVCRR:配列番号45)をリンカー配列(G4S3)で結合したキメラタンパク質である。配列5のDNA配列(配列番号46)と、配列5によりコードされるアミノ酸配列(配列番号47)を図10に示す。
配列5(セリシンシグナル-YN42-EGFP-G4S3-mDef)は、配列2と同様にして、Or9A3Gx5配列の代わりにmDef配列を用いて作製した。
次いで、配列2と同様にして、組換えカイコを作製し、mDef遺伝子を発現させ、組換えシルクを得た。発現を調べた結果、シルクに蛍光があることが確認できた。すなわち、シルクに結合活性を有するペプチド(YN42)とEGFPを含む融合タンパク質を、絹糸腺で、内在性のシルクタンパク質と同時発現させることにより、EGFPの蛍光を発するシルク(蛍光という機能を付加したシルク)を得ることができた。
このことから、シルクに結合活性をもつペプチドと任意のタンパク質からな融合タンパク質を、絹糸腺で、内在性シルクタンパク質と同時に発現させることにより、非共有結合的に、シルクに機能性タンパク質を固定化できることが判った。
4−2:抗菌性を付与したシルクの抗菌作用
実施例3−6と同様にして、抗菌性を付与したシルクの抗菌作用を確認した。
組換えカイコから得られたシルク真綿(セリシン除去繭)(SBP-EGFP-mDef(配列5)の組換えシルク)を乾燥不充分な状態で、常温にて約1ヶ月間保存した。対照としては、通常のカイコから得られた真綿(セリシン除去繭)を用いた(白/C)。結果を図11aに示す。対照真綿表面は茶色く変色したが、本発明の組換えシルク真綿は変色が起こらず白のままであった。また、保存後の対照真綿表面および本発明のシルク真綿表面の常在菌を確認したとろ、対照真綿表面には多種の常在菌が確認されたが、本発明の組換えシルク真綿表面上の菌は種類が少なかった。結果を表5に示す。
さらに、対照真綿の表面に発生した菌を採取し、それを、新しい対照真綿および本発明のシルク(SBP-EGFP-mDef(配列5)の組換えシルク)に接種し、同様に、乾燥不充分な状態で、常温にて30日間保存した。結果を図11bに示す。対照真綿は変色した(矢印部分)が、本発明の組換えシルクは変色が起こらなかった。これにより、本発明の方法により、シルクに抗菌性の機能が付与されていることが判った
実施例5:シルク結合性ペプチド(YN42)とルシフェラーゼ融合タンパク質のシルク繊維への結合
ベクターに以下のコンストラクト(SBP(YN42)-EGFP-(G4S)3-Rluc)を挿入し、大腸菌に、融合タンパク質(YN42-EGFP-ルシフェラーゼ)を発現させた。具体的には以下のようにして行った。
発現ベクターpET22のNdeI、SacI間に上記の断片を挿入し、大腸菌BL21(DE3)の形質転換を行った。大腸菌を培養し、IPTGを培地中に加えることにより誘導を行った。発現したタンパク質は不溶性画分に回収されたため、不溶性画分を8M尿素を含むトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で溶解し、0.1Mアルギニンを含むトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析することにより、融合タンパク質を含む溶液を得た。溶液を遠心し上清に回収された大腸菌で発現させた融合タンパク質をフィブロインゲルまたはシルク繊維と混合し、次いで、遠心により上清を除き、さらにミリQ水で洗浄した。
ゲルまたは繊維に吸着した画分および吸着されなかった画分(素通り画分)の蛍光を観察したところ、融合タンパク質は、フィブロインゲルの場合は、ゲルと共に吸着画分に観察されたが、シルク繊維の場合は、繊維への吸着(結合)はほとんどみられなかった。すなわち、シルク結合性ペプチド配列を含む融合タンパク質は、フィブロインゲルに対してシルクよりはるかに強い結合性を示した。このことは、ゲル状のフィブロイン(カイコの絹糸腺の中でもフィブロインはゲル状であることが知られている)に対する結合がより有効であることを示している。結果を図14に示す。
実施例6:フィブロイン結合ペプチドを用いた機能性シルクの製造
6−1:組換えカイコの作製
実施例3の配列2と同様にして、抗菌ペプチド配列の代わりに、シロアリセルラーゼA18またはウミシイタケルシフェラーゼを用いて、それぞれの酵素をコードするDNA(シロアリセルラーゼA18(配列6);ウミシイタケルシフェラーゼ(配列7))を調製した。配列6のDNA配列(配列番号48)と、配列6によりコードされるアミノ酸配列(配列番号47)を図12に示す。配列7のDNA配列(配列番号50)と、配列7によりコードされるアミノ酸配列(配列番号51)を図13に示す。
次いで、配列2と同様にして、それぞれの酵素を含む融合タンパク質を組換えカイコに発現させ、酵素活性が付与されたシルクを作製した。
上記のようにして得られた組換えカイコの絹糸腺を摘出し、8M尿素で溶解した。これらの試料を電気泳動後、EGFP抗体を用いたウエスタンブロティングにより、ルシフェラーゼ発現系統(3系統)およびセルラーゼ発現系統(2系統)における組換えタンパク質の発現を確認した。結果を図15に示す。
6−2:組換えシルクの酵素活性の測定
上記のようにして作製した組換えカイコから得られた繭を用いて、セルラーゼ活性またはルシフェラーゼ活性を測定した。
ルシフェラーゼ活性は、プロメガ社のデュアルルシフェラーゼ定量システム、またはウミシイタケルシフェラーゼ定量システムを用いて測定した。繭を細かく裁断し、25μLの基質溶液を加え、マイクロテック・ニチオン社製、Lumicounter 700を用いて発光量を測定した。結果を図16に示す。ルシフェラーゼ発現系統の繭にはルシフェラーゼ活性が確認された。
セルラーゼ活性は、細かく裁断した乾燥繭を1 mlの0.2%(w/v)カルボキシメチルセルロース(in 0.1M, pH5.5 AcNa buffer)に添加し,37℃上下回転(15rpm)条件でインキュベートし、各時間に50μLを採取、還元糖量を計測した。還元糖量は、TZE(テトラゾリウムブルー試薬)800 μLを添加し100℃で5分加熱後、660 nmの吸光度を測定することにより定量した。結果を図17に示す。セルラーゼ発現系統の繭にはセルラーゼ活性が確認された。
6−3:機能性シルクの安定性
上記のようにして得られた繭(機能性付与シルク)における、シルク結合性ペプチドをもつ融合タンパク質のシルクへの結合安定性を検討した。具体的は、繭を、水、0.4% Na2CO3溶液、8M尿素溶液を入れた容器に、この順番にて入れ、それぞれ、室温にて1時間ずつ、ボルテックスミキサーで洗浄した。その後、繭に残っている蛍光を確認した。結果は、いずれの組換えシルクにおいても蛍光が保持されており、シルク結合性ペプチドをもつ融合タンパク質がシルクに保持されていることが判った。結果を図18に示す。すなわち、本発明の方法により、シルクに安定的に機能を付与できることが判った。
上記の記載は、本発明の目的および対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更および置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
本発明により提供される融合抗菌タンパク質は、機能性タンパク質として有用である。また、本発明により提供される抗菌シルク繊維は、抗菌性が望まれる種々の繊維製品に利用できる。

Claims (38)

  1. 以下の式1:
    X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、
    (ここで、X1は、ArgまたはAlaであり、X2は、Tyr、ArgまたはLeuであり、X3は、ArgまたはAlaであり、X4は、Ile、ValまたはLeuであり、X5は、GlyまたはArgであり、X6は、ArgまたはLysである。)
    で表されるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドからなるペプチド単位の少なくとも3単位以上を、場合によりアミノ酸からなるスペーサーを介して、連続して含む融合抗菌タンパク質(ここで、該連続するペプチド単位は同じであっても異なってもよい)。
  2. 前記式1で表される配列が、以下の配列番号1〜配列番号24:
    配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、または、配列番号24(RLLLRLGRK)
    である請求項1に記載の融合抗菌性タンパク質。
  3. 前記スペーサーのアミノ酸数が0〜4である請求項1または2に記載の融合抗菌タンパク質。
  4. 前記スペーサーがグリシンおよび/またはプロリンからなる請求項1〜3のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
  5. 前記連続するペプチド単位が、少なくとも5単位以上である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
  6. 前記ペプチド単位がすべて同一である請求項1〜5のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
  7. 前記融合抗菌タンパク質が、フィブロインL鎖および/またはフィブロインH鎖を含む、請求項1〜6のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
  8. 前記融合抗菌タンパク質が、シルクに対して結合活性を示すペプチド配列であるSYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)を含む、請求項1〜6のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質。
  9. 前記融合抗菌タンパク質がカイコから産生される生糸から得られる、請求項7または8に記載の融合抗菌タンパク質。
  10. 請求項7または8に記載の融合抗菌タンパク質を含むシルク繊維。

  11. 以下の式1:
    X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、
    (ここで、X1は、ArgまたはAlaであり、X2は、Tyr、ArgまたはLeuであり、X3は、ArgまたはAlaであり、X4は、Ile、ValまたはLeuであり、X5は、GlyまたはArgであり、X6は、ArgまたはLysである。)
    で表されるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドをコードするヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列単位の少なくとも3単位以上を、場合によりヌクレオチドからなるスペーサー配列を介して、連続して含む繰り返しヌクレオチド配列(ここで、該連続するヌクレオチド配列単位は同じであっても異なってもよい)、を含むDNA。
  12. 前記式1で表される配列が、以下の配列番号1〜配列番号24:
    配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、または、配列番号24(RLLLRLGRK)
    である、請求項11に記載のDNA。
  13. 前記スペーサー配列が、アミノ酸数0〜4のスペーサーをコードするヌクレオチド配列である、請求項11または12に記載のDNA。
  14. 前記スペーサー配列が、グリシンおよび/またはプロリンをコードするヌクレオチド配列からなる請求項11〜13のいずれか一つに記載のDNA。
  15. 前記連続するヌクレオチド配列単位が、少なくとも5単位以上である、請求項11〜14のいずれか一つに記載のDNA。
  16. 前記ヌクレオチド配列単位によりコードされるアミノ酸配列がすべて同一である、請求項11〜15のいずれか一つに記載のDNA。
  17. 前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)に、フィブロインL鎖プロモーター配列またはフィブロインH鎖プロモーター配列、およびフィブロインL鎖配列またはフィブロインH鎖配列を含む、請求項11〜16のいずれか一つに記載のDNA。
  18. 前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)にカイコの絹糸腺において機能する分泌シグナル配列、および該分泌シグナル配列の下流にシルクに対して結合活性を示すペプチド配列であるSYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、該分泌シグナル配列の上流(5’側)に酵母のGAL4認識配列であるUAS配列を含む、請求項11〜16のいずれか一つに記載のDNA。
  19. 請求項11〜18のいずれか一つに記載のDNAを含むベクター。
  20. 請求項17または18に記載のDNAを有し、前記ポリヌクレオチドによりコードされる融合タンパク質を発現する組換えカイコ。
  21. 請求項20に記載の組換えカイコから産生されるシルク繊維。
  22. タンパク質に抗菌性を付与して融合抗菌タンパク質を製造するための方法であって、以下の工程:
    a.該タンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流(5’側)または下流(3’側)に繰り返しヌクレオチド配列を融合したDNAを含むベクターを調製する工程、
    ここで、該繰り返しヌクレオチド配列は、以下の式1:
    X1−Leu−X2−Leu−X3−X4−X5−Arg−X6、
    (ここで、X1は、ArgまたはAlaであり、X2は、Tyr、ArgまたはLeuであり、X3は、ArgまたはAlaであり、X4は、Ile、ValまたはLeuであり、X5は、GlyまたはArgであり、X6は、ArgまたはLysである。)
    で表されるカブトムシディフェンシン由来の改変ペプチドをコードするヌクレオチド配列からなるヌクレオチド配列単位の少なくとも3単位以上を、場合によりヌクレオチドからなるスペーサー配列を介して、連続して含む(ここで、該連続するヌクレオチド配列単位は同じであっても異なってもよい)、
    b.該調製したベクターを、宿主(但し、細菌、糸状菌は除く)に導入し、該タンパク質と連続する上記ペプチドからなる融合タンパク質を発現させる工程、および
    c.発現した融合タンパク質を回収する工程、
    からなる融合抗菌タンパク質の製造方法。
  23. 前記式1で表される配列が、以下の配列番号1〜配列番号24:
    配列番号1(RLYLRIGRR)、配列番号2(RLRLRIGRR)、配列番号3(ALYLAIRRR)、配列番号4(RLLLRIGRR)、配列番号5(RLYLRVGRR)、配列番号6(RLRLRVGRR)、配列番号7(ALYLAVRRR)、配列番号8(RLLLRVGRR)、配列番号9(RLYLRLGRR)、配列番号10(RLRLRLGRR)、配列番号11(ALYLALRRR)、配列番号12(RLLLRLGRR)、配列番号13(RLYLRIGRK)、配列番号14(RLRLRIGRK)、配列番号15(ALYLAIRRK)、配列番号16(RLLLRIGRK)、配列番号17(RLYLRVGRK)、配列番号18(RLRLRVGRK)、配列番号19(ALYLAVRRK)、配列番号20(RLLLRVGRK)、配列番号21(RLYLRLGRK)、配列番号22(RLRLRLGRK)、配列番号23(ALYLALRRK)、または、配列番号24(RLLLRLGRK)、
    である、請求項22に記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
  24. 前記連続するヌクレオチド配列単位によりコードされるアミノ酸配列がすべて同一である、請求項22または23に記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
  25. 前記融合DNAが、前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)に、フィブロインL鎖プロモーター配列またはフィブロインH鎖プロモーター配列、およびフィブロインL鎖配列またはフィブロインH鎖配列を含む融合DNAであり、かつ、前記ベクターが該融合DNAに加えて昆虫由来のトランスポゾン配列を含む、請求項22〜24のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
  26. 前記融合DNAが、前記繰り返しヌクレオチド配列の上流(5’側)にカイコの絹糸腺において機能する分泌シグナル配列、および該分泌シグナル配列の下流にシルクに対して結合活性を示すペプチド配列SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)コードするヌクレオチド配列を含み、かつ、該分泌シグナル配列の上流(5’側)に酵母のGAL4認識配列であるUAS配列をさらに含む融合DNAであり、そして前記ベクターが該融合DNAに加えて昆虫由来のトランスポゾン配列を含む、請求項22〜24のいずれか一つに記載の融合抗菌タンパク質の製造方法。
  27. 請求項25または26に記載の融合抗菌タンパク質の製造方法を用いて抗菌活性を有するシルク繊維を製造する方法であって、
    前記工程bが、さらに以下の工程:
    b−1.前記融合DNAを有するカイコ卵を製造する工程、および
    b−2:該カイコ卵から生じたカイコの中から、融合タンパク質を発現する組換えカイコを選択する工程、
    を含み、かつ、前記工程cが、選択された組換えカイコが吐糸した絹糸から、融合タンパク質を回収する工程である、シルク繊維の製造方法。
  28. 以下の工程(i)および(ii)を含む任意のタンパク質が結合したシルクの製造方法:
    (i)カイコ中部絹糸腺において機能する分泌シグナル配列をコードするDNA、該分泌シグナルをコードするDANの下流に、機能的に結合したQSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドをコードするDNA、および該ペプチド配列をコードするDNAの下流に、機能的に結合した任意のタンパク質をコードするDNAを有するトランスジェニックカイコであって、上記ペプチド配列および該任意のタンパク質からなる融合タンパク質を繭糸に分泌するトランスジェニックカイコを製造する工程、
    (ii)製造されたトランスジェニックカイコから、該融合タンパク質およびフィブロインを含むシルクを回収する工程。
  29. 前記ペプチドが、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドである、請求項28に記載の製造方法。
  30. 前記分泌シグナル配列がセリシン1シグナルペプチドまたはセリシン2シグナルペプチドを含む、請求項28または29に記載の製造方法。
  31. 前記分泌シグナル配列の上流に、機能的に結合した標的プロモーターをコードするDNAを含む、請求項28〜30のいずれか一つに記載の製造方法。
  32. 前記標的プロモーターが、GALの認識配列UAS配列である、請求項31に記載の製造方法。
  33. カイコ絹糸腺において機能する分泌シグナル配列をコードするDNAの下流に、機能的に結合したQSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドをコードするDNA、および該ペプチド配列をコードするDNAの下流に、機能的に結合した任意のタンパク質をコードするDNAを有するトランスジェニックカイコであって、上記ペプチド配列および該任意のタンパク質からなる融合タンパク質を繭糸に分泌するトランスジェニックカイコ。
  34. 前記ペプチドが、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドである、請求項33に記載のトランスジェニックカイコ。
  35. 前記分泌シグナル配列がセリシン1シグナルペプチドまたはセリシン2シグナルペプチドを含む、請求項33または34に記載のトランスジェニックカイコ。
  36. QSWS(配列番号27)からなる配列を含むペプチドおよび任意のタンパク質からなる融合タンパク質が非共有結合的に結合したシルク。
  37. 前記ペプチドが、SYTFHWHQSWSS(配列番号25)またはQSWSWHWTSHVT(配列番号26)ならなる配列を含むペプチドである、請求項36に記載のシルク。
  38. 請求項28〜32のいずれか一つに記載の方法により製造されたシルク。
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