JP2014197134A - 電子写真現像剤用キャリア芯材、その製造方法、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤 - Google Patents

電子写真現像剤用キャリア芯材、その製造方法、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤 Download PDF

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Abstract

【課題】長期間に亘って安定して使用することができる電子写真現像剤用キャリア芯材を提供する。
【解決手段】キャリア芯材(11)は、マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含むキャリア芯材(11)であって、キャリア芯材(11)を構成する粒子群の最大高さRzの平均が、2.00μm以上3.50μm以下であり、キャリア芯材(11)を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が、0.70以上1.00以下である。
【選択図】図2

Description

この発明は、電子写真現像剤用キャリア芯材(以下、単に「キャリア芯材」ということもある)、その製造方法、電子写真現像剤用キャリア(以下、単に「キャリア」ということもある)、および電子写真現像剤(以下、単に「現像剤」ということもある)に関するものであり、特に、複写機やMFP(Multifunctional Printer)等に用いられる電子写真現像剤に備えられる電子写真現像剤用キャリア芯材、その製造方法、電子写真現像剤に備えられる電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤に関するものである。
複写機やMFP等においては、電子写真における乾式の現像方式として、トナーのみを現像剤の成分とする一成分系現像剤と、トナーおよびキャリアを現像剤の成分とする二成分系現像剤とがある。いずれの現像方式においても、所定の電荷量に帯電させたトナーを感光体に供給する。そして、感光体上に形成された静電潜像をトナーによって可視化し、これを用紙に転写する。その後、トナーによる可視画像を用紙に定着させ、所望の画像を得る。
ここで、二成分系現像剤における現像について、簡単に説明する。現像器内には、所定量のトナーおよび所定量のキャリアが収容されている。現像器には、S極とN極とが周方向に交互に複数設けられた回転可能なマグネットローラおよびトナーとキャリアとを現像器内で攪拌混合する攪拌ローラが備えられている。磁性粉から構成されるキャリアは、マグネットローラによって担持される。このマグネットローラの磁力により、キャリア粒子による直鎖状の磁気ブラシが形成される。キャリア粒子の表面には、攪拌による摩擦帯電により複数のトナー粒子が付着している。マグネットローラの回転により、この磁気ブラシを感光体に当てるようにして、感光体の表面にトナーを供給する。二成分系現像剤においては、このようにして現像を行う。
トナーについては、用紙への定着により現像器内のトナーが順次消費されていくため、現像器に取り付けられたトナーホッパーから、消費された量に相当する新しいトナーが、現像器内に随時供給される。一方、キャリアについては、現像による消費がなく、寿命に達するまでそのまま用いられる。二成分系現像剤の構成材料であるキャリアには、攪拌による摩擦帯電により効率的にトナーを帯電させるトナー帯電機能や絶縁性、感光体にトナーを適切に搬送して供給するトナー搬送能力等、種々の機能が求められる。
昨今において、上記したキャリアは、そのコア、すなわち、核となる部分を構成するキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆するようにして設けられる樹脂とから構成されている。
ここで、マグネットローラによって担持され、現像器内で撹拌混合されるキャリアの核となるキャリア芯材については、良好な磁気的特性と共に、トナーに対する摩擦帯電性能の向上の観点から、電気的特性が良好であることも望まれる。このような種々の特性が要求されるキャリア芯材の形状に関する技術については、特開2012−168284号公報(特許文献1)、および特開2011−141542号公報(特許文献2)に開示されている。
特開2012−168284号公報 特開2011−141542号公報
特許文献1に開示の静電荷現像用キャリアは、磁性粒子を少なくとも含有し、磁性粒子表面の凹凸の平均間隔Sm、及び、磁性粒子表面の最大高さRyが、3.6μm≦Sm≦8.0μm、且つ、0.5μm≦Ry≦1.0μmであることとしている。特許文献1によると、磁性粒子表面の凹凸の平均間隔Sm、又は、最大高さRyが上記範囲を外れる場合に比較して、画像ムラの発生が抑制されると記載されている。
また、特許文献2に開示の静電潜像現像用キャリアは、表面に凹凸を有する磁性粒子と、磁性粒子の表面に設けられ、導線性の金属ナノ粒子から構成され、表面に磁性粒子の表面の凹凸に添った凹凸を有する導電層と、導電層上に設けられた樹脂層とを有する。そして、特許文献2には、磁性粒子の表面粗さRaが0.1μm以上10μm以下であり、且つ表面粗さSmが0.1μm以上10μm以下であるものが開示されている。
しかし、上記した特許文献1や特許文献2に開示される磁性粒子を有するキャリアについては、昨今における複写機等の画像形成装置には対応できない場合がある。すなわち、非接触現像方式を採用する複写機やハイブリッド型現像方式を採用する複写機、また、1分間に60〜70枚の画像を形成することができるいわゆる高速機の複写機等において、例えば、長期に亘る使用の影響によりコーティングされた樹脂が多く剥がれ落ち、結果としてキャリア飛散等の不具合を引き起こすおそれがある。また、長期に亘る使用における樹脂の剥がれ落ちを考慮し、完全に被覆する等、樹脂の被覆量を増加すると、樹脂の被覆量の増加に伴う画像濃度ムラを引き起こすおそれもある。
この発明の目的は、長期間に亘って安定して使用することができる電子写真現像剤用キャリア芯材を提供することである。
この発明の他の目的は、長期間に亘って安定して使用ことができる電子写真現像剤用キャリア芯材を製造することができる電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、長期間に亘って安定して使用することができる電子写真現像剤用キャリアを提供することである。
この発明のさらに他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質の画像を形成することができる電子写真現像剤を提供することである。
本願発明者らは、長期間に亘って安定して使用することができるキャリア芯材を得るための手段として、まず、基本的特性として良好な磁気的特性を確保すべく、マンガンおよび鉄をコア組成の主成分とすることを考えた。そして、キャリア芯材の粒子表面における凹凸形状の制御の容易性確保等の観点から、微量のストロンチウムを原料として含有させるという着想に至った。
さらに、長期に亘っての安定した使用の確保に際し、後に樹脂によって被覆されるキャリア芯材において、キャリア芯材の粒子表面の露出度合いについて着目した。すなわち、樹脂によるキャリア芯材の粒子表面の被覆面積が少なく、キャリア芯材の露出面積が大きすぎると、キャリア芯材自身の抵抗が低下し、キャリア飛散を引き起こす要因となる。一方、完全な被覆等、キャリア芯材の露出面積が小さすぎると、摩擦帯電によって帯電した電荷がリークしにくくなり、結果としてトナーへの帯電付与能力の低下を招き、メモリ画像を引き起こす要因となる。もちろん、キャリア芯材の粒子表面に被覆させた樹脂については、できるだけ剥がれ落ちないことが好ましい。すなわち、キャリア芯材の粒子表面に対する樹脂の結着性が良好であることが好ましい。
ここで、本願発明者らは、樹脂によってある程度の面積が被覆されるキャリア芯材の粒子表面において、その凹凸形状に着目し、特に、凹凸形状を形作るグレイン、すなわち、いわゆる結晶粒の山部分と谷部分との差、およびグレイン間の山部分の傾斜の急峻度合いについて着目した。具体的には、キャリア芯材の粒子表面において、グレインの山部分と谷部分との差の指標となる最大高さRz、およびグレイン間の山部分の傾斜の急峻度合いの指標となる二乗平均平方根傾斜角RΔqに着目した。そして、これら最大高さRz、および二乗平均平方根傾斜角RΔqについて鋭意検討し、以下の構成とした。
すなわち、この発明の一つの局面においては、電子写真現像剤用キャリア芯材は、マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材であって、電子写真現像剤用キャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRzの平均が、2.00μm以上3.50μm以下であり、電子写真現像剤用キャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が、0.70以上1.00以下である。
このような電子写真現像剤用キャリア芯材は、キャリア芯材の粒子表面に適切な凹凸形状が形成されているため、長期間に亘って安定して使用することができる。
また、電子写真現像剤用キャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が、0.72以上0.86以下であるよう構成してもよい。このように構成することにより、キャリア飛散およびコート剥離の観点において、優れたものとすることができる。
ここで、本願発明者らは、上記した構成のキャリア芯材を製造するに際し、一つの形態として、以下の構成とすることを導出した。まず、原料をスラリー化するスラリー化工程において、スラリー原料の体積粒径、特に粒度分布における90%の粒径を示す体積粒径D90の値が、焼成工程等によって最終的に得られるキャリア芯材の粒子群の最大高さRz、および粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqに影響を与えることに着目した。そして、スラリー原料の体積粒径D90の値をある値以上に規定した。
さらに本願発明者らは、焼成工程について、焼成によるフェライト化および焼結の過程において、キャリア芯材の粒子表面の凹凸形状の制御の観点から、ストロンチウムを微量添加し、焼成工程において一部ストロンチウムフェライトを合成することを考え、マグネトプランバイト型、すなわち、六方晶系の結晶構造の形成の促進を図ることを考えた。そして、キャリア芯材の粒子表面の凹凸形状について、粒子群の最大高さRzの平均、および粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均を上記した範囲とするために、焼成工程において、比較的温度が低く、酸素濃度が高い雰囲気で焼成を行う第一の焼成工程と、比較的温度が高く、酸素濃度が低い雰囲気で焼成を行う第二の焼成工程との二段階焼成を行うことにすれば良いという着想に至った。
すなわち、この発明の他の局面においては、電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法は、マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料をスラリー化するスラリー化工程と、スラリー化工程の後に、得られた混合物の造粒を行う造粒工程と、造粒工程により得られた造粒物を焼成する焼成工程とを備え、焼成工程は、酸素濃度を10.0%以上とした雰囲気下において600℃以上900℃以下で0.5時間以上1.5時間以下の保持時間で焼成を行う第一の焼成工程と、酸素濃度を1.0%よりも多く5.0%よりも少なくした雰囲気下において1200℃以上で0.5時間以上3.0時間以下の保持時間で焼成を行う第二の焼成工程とを含み、スラリー化工程は、マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料の混合スラリーの体積粒径D90を15.0μm以上とするようスラリー化する工程である。
このようなキャリア芯材の製造方法によれば、キャリア芯材の粒子表面に適切な凹凸形状が形成され、長期間に亘って安定して使用することができるキャリア芯材を得ることができる。
また、第一の焼成工程と第二の焼成工程との間に、室温まで冷却を行う冷却工程を含むよう構成してもよい。
また、この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤用キャリアは、電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、上記したいずれかの電子写真現像剤用キャリア芯材と、電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える。
このような電子写真現像剤用キャリア芯材は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を備えるため、長期間に亘って安定して使用することができる。
この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤は、電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、上記した電子写真現像剤用キャリアと、電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える。
このような電子写真現像剤は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリアを備えるため、長期間に亘って安定して使用することができる。
この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、キャリア芯材の粒子表面に適切な凹凸形状が形成されているため、長期間に亘って安定して使用することができる。
また、この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法は、長期間に亘って安定して使用することができる電子写真現像剤用キャリア芯材を製造することができる。
また、この発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、長期間に亘って安定して使用することができる。
また、この発明に係る電子写真現像剤は、長期間に亘って安定して使用することができる。
この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真である。 この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示す概略断面図である。 この発明の一実施形態に係るキャリアの外観を示す概略断面図である。 この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。 焼成工程における温度と時間との概略的な関係を示すグラフである。 比較例2に係るキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真である。 比較例4に係るキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真である。 キャリア芯材の粒子表面を示す概略図である。 キャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRzの平均とキャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均との関係を示すグラフである。 最大高さRzの平均の値が高いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。 最大高さRzの平均の値が低いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。 二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均の値が高いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。 二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均の値が低いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材について説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真である。図2は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を示す断面図である。図2における断面は、理解の容易の観点から、図1に示すキャリア芯材を概略的に示したものである。
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材11については、その外形形状が、略球形状である。この発明の一実施形態に係るキャリア芯材11の粒径は、約35.0μmであり、適当な粒度分布を有している。上記した粒径は、体積平均粒径を意味する。この粒径については、要求される現像剤の特性や製造工程における歩留まり等により任意に設定される。
ここで、キャリア芯材11の表面12には、微小の凹凸形状が形成されている。具体的には、キャリア芯材11の表面12には、その一部が凹んだ形状である凹部13と、凹部13に対して相対的に外径側に突出した形状である凸部14とが形成されている。なお、図2においては、微小の凹凸形状は、理解の容易の観点から、誇張して図示している。
ここで、キャリア芯材11は、マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含むキャリア芯材11であって、キャリア芯材11を構成する粒子群の最大高さRzの平均が、2.00μm以上3.50μm以下であり、キャリア芯材11を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が、0.70以上1.00以下である。
このようなキャリア芯材11は、キャリア芯材11の粒子表面に適切な凹凸形状、具体的には例えば、グレインにおける適度な山部分と谷部分との差、適度な急峻度合いの山部分の傾斜等が形成されているため、後にその表面を樹脂で被覆する際に、被覆された樹脂が長期に亘る使用において剥がれ落ちるおそれを低くすることができる。すなわち、キャリア芯材の粒子表面に対する樹脂の結着性を良好にすることができる。また、ある程度のキャリア芯材の露出面積を確保して適度に電荷をリークさせることができると共に、長期に亘る使用における帯電量を維持できるだけの樹脂による被覆面積を確保することができる。したがって、長期間に亘って安定して使用することができる。これについては、後述する。
図3は、この発明の一実施形態に係るキャリアを示す概略断面図である。図3を参照して、この発明の一実施形態に係るキャリア15についても、キャリア芯材11と同様に、その外形形状が、略球形状である。キャリア15は、キャリア芯材11の表面12に薄く樹脂16をコーティング、すなわち被覆したものであり、その粒径についても、キャリア芯材11とほとんど変化は無い。キャリア15の表面17については、キャリア芯材11と異なり、樹脂16でほとんどの領域が被覆されているが、一部の領域18において、キャリア芯材11そのものの表面12が露出している構成である。
この発明の一実施形態に係る現像剤は、上記した図3に示すキャリア15と、図示しないトナーとから構成されている。トナーの外形形状についても、略球形状である。トナーは、スチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂を主成分とするものであり、所定量の顔料やワックス等が配合されている。このようなトナーは、例えば、粉砕法や重合法によって製造される。トナーの粒径は、例えば、キャリア15の粒径の7分の1程度の5.0μm程度のものが使用される。また、トナーとキャリア15の配合比についても、要求される現像剤の特性等に応じて、任意に設定される。このような現像剤は、所定量のキャリア15とトナーとを適当な混合器で混合することにより製造される。
次に、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法について説明する。図4は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。以下、図4に沿って、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の製造方法について説明する。
まず、鉄を含む原料と、マンガンを含む原料と、ストロンチウムを含む原料とを準備する。そして、準備した原料を、要求される特性に応じて、適当な配合比で配合し、これを混合する(図4(A))。ここで、適当な配合比とは、最終的に得られるキャリア芯材において、鉄の含有量、マンガンの含有量、およびストロンチウムの含有量が狙いとされるものとなるような配合比である。
この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を構成する鉄原料については、金属鉄またはその酸化物であればよい。具体的には、常温常圧下で安定に存在するFeやFe、Feなどが好適に用いられる。また、マンガン原料については、金属マンガンまたはその酸化物であればよい。具体的には、常温常圧下で安定に存在する金属Mn、MnO、Mn、Mn、MnCOが好適に使用される。また、ストロンチウムを含む原料としては、金属ストロンチウムまたはその酸化物が好適に用いられる。具体的には、例えば、炭酸塩であるSrCO等が挙げられる。なお、上記原料(鉄原料、マンガン原料、ストロンチウム原料等)をそれぞれ、若しくは目的の組成になるように混合した原料を仮焼して粉砕し原料として用いても良い。
次に、混合した原料のスラリー化を行う(図4(B))。すなわち、これらの原料を、キャリア芯材の狙いとする組成に合わせて秤量し、混合してスラリー原料とする。
ここで、スラリー化については、スラリー原料の体積粒径において、粒度分布における90%の粒径を示す体積粒径D90が15μm以上とするよう調整する。この調整については、例えば、スラリー化した原料を湿式ボールミルや湿式ビーズミル等で粉砕することにより行い、粉砕時における粉砕強度、粉砕時間、粉砕回数等を制御して体積粒径D90の値の調整を行う。
なお、この発明に係るキャリア芯材を製造する際の製造工程においては、後述する焼成工程の一部において、還元反応を進めるため、上述したスラリー原料へ、さらに還元剤を添加してもよい。還元剤としては、カーボン粉末やポリカルボン酸系有機物、ポリアクリル酸系有機物、マレイン酸、酢酸、ポリビニルアルコール(PVA(polyvinyl alcohol))系有機物、及びそれらの混合物が好適に用いられる。
ここで、上述したスラリー原料に水を加え混合攪拌して、固形分濃度を40重量%以上、好ましくは50重量%以上とする。スラリー原料の固形分濃度が50重量%以上であれば、造粒ペレットの強度を保つことができるので好ましい。
次に、スラリー化した原料について、造粒を行う(図4(C))。上記混合攪拌して得られたスラリーの造粒は、噴霧乾燥機を用いて行う。
噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃程度とすればよい。これにより、概ね、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得ることができる。得られた造粒粉は製品の最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し、この時点で粒度調整することが望ましい。
その後、造粒した造粒物について、焼成を行う。ここで、焼成工程は、酸素濃度を10.0%以上とした雰囲気下において600℃以上900℃以下で0.5時間以上1.5時間以下の保持時間で焼成を行う第一の焼成工程(図4(D))と、第一の焼成工程と第二の焼成工程との間に、室温まで冷却を行う冷却工程(図4(E))と、冷却工程の後に、酸素濃度を1.0%よりも多く5.0%よりも少なくした雰囲気下において1200℃以上で0.5時間以上3.0時間以下の保持時間で焼成を行う第二の焼成工程(図4(F))とを含む。
ここで、焼成工程について、図5を用いて説明する。図5は、焼成工程における温度と時間との概略的な関係を示すグラフである。図5中、縦軸は、温度を示し、横軸は、時間を示す。図5を参照して、まず、第一の焼成工程について説明する。時間Tにおいて、室温である温度A、例えば25℃程度から昇温を開始する。そして、時間Tにおいて所定の焼成温度A、具体的には例えば、700℃に達すると、時間Tから時間Tまで温度Aを維持する。その後、時間Tから時間Tにかけて温度Aから温度Aまで、冷却を行う。
そして、時間Tから時間Tにかけて温度Aを維持する。その後、温度Aから昇温を再開し、時間Tにおいて焼成温度Aによりも高い所定の焼成温度A、具体的には例えば、1260℃に達すると、時間Tから時間Tまで温度Aを維持する。その後、時間Tから時間Tにかけて温度Aから温度Aまで、冷却を行う。このようにして焼成を行う。
具体的には、第一の焼成工程において、得られた造粒粉を、600℃以上900℃以下に加熱した炉に投入し、0.5時間以上1.5時間以下保持する。このとき、焼成炉内の酸素濃度は、フェライト化の反応が良好に進行する条件である10.0%以上とすればよく、具体的には、20.0%程度となるよう導入ガスの酸素濃度を調整し、フロー状態下で焼成を行う。第一の焼成工程における酸素濃度を10.0%も少なくした場合、後に得られるキャリア芯材の粒子群の最大高さRzの平均が過度に小さくなる傾向がある。また、焼成温度を600℃よりも低くした場合、十分な焼成を行うことができず、一方、焼成温度を900℃よりも高くした場合、後に得られるキャリア芯材の粒子群の最大高さRzの平均が過度に小さくなる傾向がある。
また、第二の焼成工程において、第一の焼成工程で得られた焼成粉を、1200℃以上に加熱した炉に投入し、1.5時間以上3.0時間以下保持する。このとき、焼成炉内の酸素濃度は、還元反応がある程度進行する条件である1.0%よりも多く5.0%よりも少なくした雰囲気とすればよく、具体的には、1.5〜3.0%程度となるよう導入ガスの酸素濃度を調整し、フロー状態下で焼成を行う。第二の焼成工程における酸素濃度を1.0%以下とした場合、および5.0%以上とした場合、後に得られるキャリア芯材の粒子群の最大高さRzの平均および二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が過度に小さくなる傾向がある。また、焼成温度を1200℃よりも低くした場合、後に得られるキャリア芯材の粒子群の最大高さRzの平均が過度に小さくなる傾向がある。
なお、冷却過程においては、必要に応じて行われ、不要であれば、特に行わなくともよい。すなわち、第一の焼成工程に引き続き、焼成温度を下げずにそのまま第二の焼成温度となるよう炉内の温度を引き上げ、酸素濃度を低くして、第二の焼成工程を行うようにしてもよい。
得られた焼成物は、さらにこの段階で粒度調整をすることが望ましい。例えば、焼成物をハンマーミル等で粗解粒する。すなわち、焼成を行った粒状物について、解粒を行う(図4(G))。その後、振動ふるいなどで分級を行う。すなわち、解粒した粒状物について、分級を行う(図4(H))。こうすることにより、所望の粒径を持ったキャリア芯材の粒子を得ることができる。
次に、分級した粒状物について、酸化を行う(図4(I))。すなわち、この段階で得られたキャリア芯材の粒子表面を熱処理(酸化処理)する。
具体的には、酸素濃度10.0〜100.0%の雰囲気下において、200〜700℃で0.1〜24.0時間保持して、目的とするキャリア芯材を得る。より好ましくは、250〜600℃で0.5〜20.0時間、さらに好ましくは、300〜550℃で1.0時間〜12.0時間である。このようにして、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する。なお、このような酸化処理工程については、必要に応じて任意に行われるものである。
このようにして、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する。すなわち、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の製造方法は、マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料をスラリー化するスラリー化工程と、スラリー化工程の後に、得られた混合物の造粒を行う造粒工程と、造粒工程により得られた造粒物を焼成する焼成工程とを備え、焼成工程は、酸素濃度を10.0%以上とした雰囲気下において600℃以上900℃以下で0.5時間以上1.5時間以下の保持時間で焼成を行う第一の焼成工程と、酸素濃度を1.0%よりも多く5.0%よりも少なくした雰囲気下において1200℃以上で0.5時間以上3.0時間以下の保持時間で焼成を行う第二の焼成工程とを含み、スラリー化工程は、マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料の混合スラリーの体積粒径D90を15.0μm以上とするようスラリー化する工程である。
このようなキャリア芯材の製造方法によれば、キャリア芯材の粒子表面に適切な凹凸形状が形成され、長期間に亘って安定して使用することができるキャリア芯材を得ることができる。
また、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材は、マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料をスラリー化するスラリー化工程と、スラリー化工程の後に、得られた混合物の造粒を行い、得られた造粒物を焼成して得られ、焼成は、酸素濃度を10.0%以上とした雰囲気下において600℃以上900℃以下で0.5時間以上1.5時間以下の保持時間で焼成を行う第一の焼成工程と、酸素濃度を1.0%よりも多く5.0%よりも少なくした雰囲気下において1200℃以上で0.5時間以上3.0時間以下の保持時間で焼成を行う第二の焼成工程とを行い、スラリー化は、マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料の混合スラリーの体積粒径D90を15.0μm以上とするようスラリー化する。
このようなキャリア芯材は、キャリア芯材の粒子表面に適切な凹凸形状が形成されているため、長期間に亘って安定して使用することができる。
次に、このようにして得られたキャリア芯材に対して、樹脂により被覆を行う(図4(J))。具体的には、得られたこの発明に係るキャリア芯材をシリコーン系樹脂やアクリル樹脂等で被覆する。このようにして。この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアを得る。シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等の被覆方法は、公知の手法により行うことができる。すなわち、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアは、電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、上記したいずれかの電子写真現像剤用キャリア芯材と、電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える。
このような電子写真現像剤用キャリアは、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を備えるため、長期間に亘って安定して高い帯電性能を維持することができる。
次に、このようにして得られたキャリアとトナーとを所定量ずつ混合する(図4(K))。具体的には、上記した製造方法で得られたこの発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアと、適宜な公知のトナーとを混合する。このようにして、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤を得ることができる。混合は、例えば、ボールミル等、任意の混合器を用いる。この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤は、電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、上記した電子写真現像剤用キャリアと、電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える。
このような電子写真現像剤は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリアを備えるため、長期間の使用においても安定して良好な画質の画像を形成することができる。
(実施例1)
水5kg中にFe(平均粒径:0.6μm)を10.75kg、Mn(平均粒径:2μm)を5.70kg、炭酸ストロンチウムを190g加え、還元剤としてカーボンブラックを45g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g、バインダーとしてポリビニルアルコールを33g添加して混合物とした。このときの固形分濃度を測定した結果、77重量%であった。この混合物を、湿式ビーズミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。このとき、粉砕強度、時間、回数等を制御し、スラリー中の体積粒径D90の値を、15.8μmとなるように調整した。ここで、体積粒径D90の測定については、レーザー回折式粒度分布測定装置は、日機装株式会社製のマイクロトラック、Model9320−X100を用いた。
このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は、ふるいにより除去した。
この造粒粉について、焼成を行った。この場合、第一の焼成工程として、酸素濃度を20.0%とした雰囲気下の電気炉に投入し、700℃で0.5時間焼成した。その後、常温まで冷却した。そして、第二の焼成工程として、酸素濃度を1.5%とした雰囲気下の電気炉に投入し、1200℃で2.0時間焼成した。その後、常温まで冷却した。得られた焼成物に対して、330℃で加熱し、大気下で1.0時間保持することにより酸化処理を施した。得られた焼成物を解粒後にふるいを用いて分級し、平均粒径を34.0μmとした。このようにして、実施例1に係るキャリア芯材を得た。
なお、得られたキャリア芯材の組成については、Mn1.07Fe1.92Sr0.01で表されるものである。以下、全ての実施例、比較例の組成についても、同様である。
次に、このようにして得られた実施例1に係るキャリア芯材について、シリコーン樹脂750重量部と、(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン15重量部とを、溶媒としてのトルエン750重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いて作製したキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱して、実施例1に係る樹脂コーティングキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして、樹脂コーティングキャリアを得た。
次にこのようにして得られた実施例1に係るキャリアと粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、実施例1に係る二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/トナーおよびキャリアの重量=5/100となるように調整した。すなわち、トナーを5重量%、キャリアを95重量%の割合で混合した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして、現像剤を得た。
得られた現像剤について、実機評価を行った。キャリア芯材の製造工程におけるパラメータ、および実機評価等について、表1、および表2に示す。
(実施例2)
第二の焼成工程における焼成温度を1300℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係るキャリア芯材を得た。
(実施例3)
第二の焼成工程における焼成温度を1230℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3に係るキャリア芯材を得た。なお、図1は、実施例3に係るキャリア芯材に相当する。なお、図1に示すレーザー顕微鏡写真は、キャリア芯材を3000倍に拡大したものである。以下、図6、図7に示すレーザー顕微鏡写真についても、同様である。
(実施例4)
スラリー化工程において体積粒径D90を18.8μmとした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例4に係るキャリア芯材を得た。
(実施例5)
スラリー化工程において体積粒径D90を16.9μmとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5に係るキャリア芯材を得た。
(実施例6)
第一の焼成工程における酸素濃度を10.0%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6に係るキャリア芯材を得た。
(実施例7)
第一の焼成工程における焼成温度を850℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7に係るキャリア芯材を得た。
(実施例8)
第二の焼成工程における酸素濃度を3.0%とした以外は、実施例5と同様の方法で、実施例8に係るキャリア芯材を得た。
(比較例1)
スラリー化工程において体積粒径D90を12.0μmとした以外は、実施例3と同様の方法で、比較例1に係るキャリア芯材を得た。
(比較例2)
スラリー化工程において体積粒径D90を8.5μmとした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例2に係るキャリア芯材を得た。なお、この場合に得られたキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真を、図6に示す。
(比較例3)
スラリー化工程において体積粒径D90を16.5μmとし、第一の焼成工程における焼成温度を500℃とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例3に係るキャリア芯材を得た。
(比較例4)
スラリー化工程において体積粒径D90を18.6μmとし、第一の焼成工程における焼成温度を1000℃とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例3に係るキャリア芯材を得た。なお、この場合に得られたキャリア芯材の外観を示すレーザー顕微鏡写真を、図7に示す。
(比較例5)
第二の焼成工程における焼成温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5に係るキャリア芯材を得た。
(比較例6)
第一の焼成工程における酸素濃度を5.0%とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例6に係るキャリア芯材を得た。
(比較例7)
スラリー化工程において体積粒径D90を17.1μmとし、第一の焼成工程における酸素濃度を7.0%とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例7に係るキャリア芯材を得た。
(比較例8)
第一および第二の焼成工程における酸素濃度をそれぞれ5.0%とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例8に係るキャリア芯材を得た。
(比較例9)
スラリー化工程において体積粒径D90を20.2μmとし、第一の焼成工程における焼成温度を1200℃とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例9に係るキャリア芯材を得た。
(比較例10)
Fe(平均粒径:0.6μm)を10.75kg、Mn(平均粒径:2μm)を5.70kg、炭酸ストロンチウムを190g、カーボンブラック45gを十分に混合し、平均粒子径D50が2.1μmになるように粉砕した。得られた混合物を、800℃で4.0時間仮焼し、得られた仮焼粉、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g、バインダーとしてポリビニルアルコール33gを水5kgに分散し、湿式ビーズミルにより粉砕処理し、スラリーの平均粒子径D50が2.1μm、体積粒径D90が15.8μmとなるように調整した。酸素濃度1.5%の電気炉に投入し、1300℃で一段階焼成し比較例10に係るキャリア芯材を得た。なお、この製造方法については、上記した特許文献1に記載の方法に準じたものである。
(比較例11)
Fe(平均粒径:0.6μm)を10.75kg、Mn(平均粒径:2μm)を5.70kg、炭酸ストロンチウムを190g、カーボンブラック45gを十分に混合し、得られた混合物を、800℃で4.0時間仮焼し、その後平均粒子径D50が1.4μmになるように粉砕した。得られた粉砕粉を水5kgに分散し、スプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。この造粒粉を、第一の焼成工程として、酸素濃度20.0%の電気炉に投入し1200℃で3.0時間焼成した。次いで、第二の焼成工程として、得られた焼成物をさらに酸素濃度1.5%の電気炉に投入し、1200℃で2.0時間焼成し、比較例11に係るキャリア芯材を得た。なお、この製造方法については、上記した特許文献2に記載の方法に準じたものである。
(比較例12)
第二の焼成工程における酸素濃度を0.5%とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例12に係るキャリア芯材を得た。なお、この製造方法については、特開2013−25204号公報に記載の方法に準じたものである。
(比較例13)
第二の焼成工程における酸素濃度を5.0%とした以外は、実施例5と同様の方法で、比較例13に係るキャリア芯材を得た。
なお、参考までに、表1中には、キャリア芯材を構成する粒子群の要素の平均長さRSm、キャリア芯材を構成する粒子群の算術表面粗さRaも示している。
ここで、キャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRz、キャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔq、キャリア芯材を構成する粒子群の要素の平均長さRSm、キャリア芯材を構成する粒子群の算術表面粗さRaについては、以下のように測定した。
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−X100、株式会社キーエンス製)を用い、150倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず表面の平坦な粘着テープにキャリア芯材の粒子を固定し、150倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整し、オート撮影機能を用いてキャリア芯材の粒子表面の3次元形状を取り込んだ。
各パラメータの測定には、装置付属のソフトウェアVK−H1XAを用いて行った。まず、前処理として、得られたキャリア芯材の粒子表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。図8は、キャリア芯材の粒子表面を示す概略図である。具体的には、キャリア芯材21の粒子表面22の中央部分に長さ15.0μmの水平方向に延びる線分23を引き、その上下に4本間隔で10本ずつ平行線を追加した場合の線分上にあたる粗さ曲線を、計21本分取り出した。図8において、上側の10本の線分24a、下側の10本の線分24bを簡略的に示している。
次に、取り出した粗さ曲線は、キャリア芯材が略球形状であり、バックグラウンドとして一定の曲率を持っているため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合のカットオフ値λsを、0.25μm、カットオフ値λcを0.08mmとした。
最大高さRzについては、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。
二乗平均平方根傾斜角RΔqについては、粗さ曲線を以下の数1に示す式にあてはめて算出した。
ここで、数1の式中、dRn/dXnは、基準長さ15.0μmにおけるn番目の山または谷の局部傾斜を示し、基本的には以下の数2に示す7点公式によって求められる。
ここで、得られた二乗平均平方根傾斜角RΔqについては、その値が大きいほど、傾斜が大きいことを示すものである。
算術平均粗さRaについては、粗さ曲線の絶対値の平均を示したものであり、以下の数3に示す式によって求められる。
ここで、1rは、粗さ曲線の長さを示す。
要素の平均長さRSmについては、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さの平均値を算出することによって求められる。
これら最大高さRz、二乗平均平方根傾斜角RΔq、算術平均粗さRa、要素の平均長さRSmの測定については、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
また、解析に用いるキャリア芯材の平均粒子径については、32.0〜34.0μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
なお、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
実機評価については、以下のように行った。上記した方法で得られた各実施例、比較例に係る現像剤を用い、セットする現像剤の量を500gとした。また、評価機としては、現像域で交流バイアスを印加するよう改良したデジタル反転現像方式を採用する70枚機(70cpm)相当のものを評価機として使用した。
キャリア飛散の評価については、以下のように行った。白紙を1000枚印刷し、1000枚目の用紙における黒点の数を目視で判断した。黒点が見られない場合を「◎」(優秀)、発見された黒点の数が1〜5個の場合を「○」(良好)、発見された黒点の数が6〜10個の場合を「△」(やや劣悪)、発見された黒点の数が11個以上の場合を「×」(劣悪)と判断した。
また、コート剥離の評価については、以下のように行った。キャリア飛散の測定前後のキャリアについて、JIS G1211「鉄及び鋼中の炭素定量方法」(2001年度版)に基づいて炭素量を定量し、次の式から減少率を算出した。
炭素量減少率(%)=試験前/試験後×100
算出された炭素量減少率について、1%未満の場合を「◎」(優秀)、1〜3%の場合を「○」(良好)、4〜10%の場合を「△」(やや劣悪)、11%以上の場合を「×」(劣悪)と判断した。
画像濃度ムラについては、以下のように行った。ベタ画像を1000枚印刷し、1000枚目の用紙の所定の10か所を画像濃度測定計で測定し、測定値の最大値と最小値との差(最大値−最小値)から画像濃度ムラを評価した。差が0.3未満の場合を「◎」(優秀)、差が0.3〜0.5の場合を「○」(良好)、差が0.6〜1の場合を「△」(やや劣悪)、差が1.1以上の場合を「×」(劣悪)と判断した。
なお、上記した実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例13について、横軸にキャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRzの平均、縦軸にキャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均を取り、プロットしたグラフを、参考までに図9に示す。図9中、実施例を黒菱形印、比較例を黒四角印で示している。
表1および表2を参照して、実施例1〜実施例8の場合、キャリア飛散、コート剥離、画像濃度ムラの各パラメータについて、いずれも「◎」(優秀)の評価か「〇」(良好)の評価である。
これに対し、比較例1〜比較例13については、少なくとも上記した各パラメータのうちの一つが「△」(やや劣悪)か「×」(劣悪)を含む評価である。
ここで、上記したキャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRz、およびキャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqについては、それらの数値が高い場合、低い場合について、以下のような現象が生じていると考えられる。
図10は、最大高さRzの平均の値が高いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。図10を参照して、最大高さRzの平均の値が高いキャリア芯材31aにおいては、キャリア芯材31aの粒子表面32aに形成される山部分を構成する複数の凸部34a間に位置する谷部分を構成する凹部33aと被覆される樹脂36aとの間に、空洞35aが発生してしまう傾向が顕著となる。そうすると、樹脂36aとキャリア芯材31aの粒子表面32aとの結着性の低下が生じ、長期間の使用により、樹脂36aが剥がれ落ちやすくなると考えられる。一方、図11は、最大高さRzの平均の値が低いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。図11を参照して、最大高さRzの平均の値が低いキャリア芯材31bにおいては、粒子表面32bに形成される山部分を構成する凸部34bと谷部分を構成する凹部33bとの高低差がなく、樹脂36bを被覆した場合のいわゆる引っ掛かり部分が少なくなり結着性の低下が生じ、長期間の使用により、樹脂36bが剥がれ落ちやすくなると考えられる。また、この場合、樹脂36bによりキャリア芯材31bの粒子表面32bを完全に被覆する傾向が強くなり、電荷のリークが生じ難く、画像的な不具合を招きかねやすい傾向となる。
図12は、二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均の値が高いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。図12を参照して、二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均の値が高いキャリア芯材31cにおいては、キャリア芯材31cの粒子表面32cに形成される山部分を構成する複数の凸部34c間に位置する谷部分を構成する凹部33cと被覆される樹脂36cとの間に、空洞35cが発生してしまう傾向が顕著となる。そうすると、樹脂36cとキャリア芯材31cの粒子表面32cとの結着性の低下が生じ、長期間の使用により、樹脂36cが剥がれ落ちやすくなると考えられる。一方、図13は、二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均の値が低いキャリア芯材の表面に被覆される樹脂の状態を示す概念図である。図13を参照して、二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均の値が低いキャリア芯材31dにおいては、樹脂36dを被覆した場合のいわゆる引っ掛かり部分が少なくなり結着性の低下が生じ、長期間の使用により、樹脂36dが剥がれ落ちやすくなると考えられる。また、この場合も、樹脂36dによりキャリア芯材31dの粒子表面32dを完全に被覆する傾向が強くなり、電荷のリークが生じ難く、画像的な不具合を招きかねやすい傾向となる。なお、図12、図13に示す上下二つの点線は、それぞれにおいて同じ高さを示している。
なお、スラリー原料の真円度については、二乗平均平方根傾斜角RΔqの値が必要以上に低くなることを抑制するためにも、2.0μm以上とすることが好ましい。こうすることにより、実機評価の観点から、少なくとも上記した3つの評価項目のうちのいずれか1つを優秀なものとすることができる。なお、スラリー原料の真円度について、実施例1は、1.3μm、実施例2は、1.3μm、実施例3は、1.3μm、実施例4は、1.8μm、実施例5は、2.2μm、実施例6は、2.2μm、実施例7は、1.8μm、実施例8は、2.2μmであった。
ここで、スラリー原料の真円度の測定方法については、以下の通りである。湿式粉砕したスラリーを10倍に希釈し、プレパラート上に希釈スラリーを滴下する。希釈スラリーを滴下したプレパラートを、ホットプレート等を用いて120℃以下に加熱し、十分に水分を蒸発させた。プレパラート上の残留物を粘着テープで回収し、SEM(日立製作所製、S−4700形)で画像撮影した。倍率は30000倍とした。得られた画像を画像解析ソフト(メディアサイバネティクス社製、image−proplus7.0)を用い、以下の式から真円度を算出した。なお、100粒子の平均値を代表値とした。
真円度=(周囲長)/面積/4/π
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤は、長期間に亘って使用される複写機等に適用される場合に、有効に利用される。
11,21,31a,31b,31c,31d キャリア芯材、12,17,22,32a,32b,32c,32d 表面、13,33a,33b,33c 凹部、14,34a,34b,34c 凸部、15 キャリア、16,36a,36b,36c,36d 樹脂、18 領域、23,24a,24b 線分、35a,35c 空洞。

Claims (6)

  1. マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材であって、
    前記電子写真現像剤用キャリア芯材を構成する粒子群の最大高さRzの平均が、2.00μm以上3.50μm以下であり、
    前記電子写真現像剤用キャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が、0.70以上1.00以下である、電子写真現像剤用キャリア芯材。
  2. 前記電子写真現像剤用キャリア芯材を構成する粒子群の二乗平均平方根傾斜角RΔqの平均が、0.72以上0.86以下である、請求項1に記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
  3. マンガン、鉄、およびストロンチウムをコア組成として含む電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、
    マンガンを含む原料、鉄を含む原料、およびストロンチウムを含む原料をスラリー化するスラリー化工程と、
    前記スラリー化工程の後に、得られた混合物の造粒を行う造粒工程と、
    前記造粒工程により得られた造粒物を焼成する焼成工程とを備え、
    前記焼成工程は、酸素濃度を10.0%以上とした雰囲気下において600℃以上900℃以下で0.5時間以上1.5時間以下の保持時間で焼成を行う第一の焼成工程と、酸素濃度を1.0%よりも多く5.0%よりも少なくした雰囲気下において1200℃以上で0.5時間以上3.0時間以下の保持時間で焼成を行う第二の焼成工程とを含み、
    前記スラリー化工程は、前記マンガンを含む原料、前記鉄を含む原料、および前記ストロンチウムを含む原料の混合スラリーの体積粒径D90を15.0μm以上とするようスラリー化する工程である、電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法。
  4. 前記第一の焼成工程と前記第二の焼成工程との間に、室温まで冷却を行う冷却工程を含む、請求項3に記載の電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法。
  5. 電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、
    請求項1または2に記載の電子写真現像剤用キャリア芯材と、
    前記電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える、電子写真現像剤用キャリア。
  6. 電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、
    請求項5に記載の電子写真現像剤用キャリアと、
    前記電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える、電子写真現像剤。
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