JP2014196438A - 医療用複室容器 - Google Patents
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Abstract
Description
(1) 取り扱い上要求される優れた柔軟性と耐衝撃性等の機械的強度
(2) 内容物を視認できる高い透明性
(3) 高圧蒸気滅菌等に耐え得る耐熱性
(4) 内容物の有効成分濃度を変化させることなく安定に保存する優れた保存性
(5) 収容室を区画する易剥離部を形成するための弱シール性と、周縁シール部を形成するための強シール性との双方に対応し得る幅広いシール強度
を兼ね備える必要があるが、従来において、これらの要求特性をすべて満たす複室容器の内壁面構成材料は提供されておらず、その開発が望まれる。
上記式(2)中、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表し、RcとRdは互いに結合して環を形成していてもよい。x及びzはそれぞれ1以上の整数、yは0以上の整数である。)
上記式(2)中、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表し、RcとRdは互いに結合して環を形成していてもよい。x及びzはそれぞれ1以上の整数、yは0以上の整数である。)
まず、本発明の医療用複室容器のシール層を形成する、環状ポリオレフィン(A)70重量%以上95重量%以下と、ブロック共重合体(B)5重量%以上30重量%以下とを含む本発明のシール層形成用組成物について説明する。
本発明に係る環状ポリオレフィン(A)は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(以下「ポリマー(1)」と称す場合がある。)及び/又は下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマー(以下「ポリマー(2)」と称す場合がある。)である。
上記式(2)中、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表し、RcとRdは互いに結合して環を形成してもよい。x及びzはそれぞれ1以上の整数、yは0以上の整数である。)
一方、ポリマー(2)はエチレンとノルボルネン系モノマーとの共重合体である。
また、ポリマー(2)としては、例えば三井化学株式会社製の「アペル(登録商標)」、TOPAS Adveaced Polymers社製の「TOPAS(登録商標)」等が挙げられる。
環状ポリオレフィン(A)としては、特にポリマー(1)を用いることがフィルム成膜した際に外観不良を起こしにくいために好ましい。
本発明に係るブロック共重合体(B)は、スチレン系重合体ブロック(b1)と、イソブチレン重合体ブロック(b2)とからなる。
(b1)−(b2)
(b1)−{(b2)−(b1)}p
{(b1)−(b2)}q
(b2)−(b1)−{(b2)−(b1)}p−(b2)
などの構造を有するものが挙げられるが(ただし、pは2〜5の整数、qは2〜5の整数を表す)、これらのうち、(b1)−{(b2)−(b1)}p、特に(b1)−(b2)−(b1)の構造を有するものが、粘着性が少ない点において好ましい。
本発明のシール層形成用組成物は、環状ポリオレフィン(A)を70〜95重量%、ブロック共重合体(B)を5〜30重量%含有する。上記範囲よりも環状ポリオレフィン(A)が少なく、ブロック共重合体(B)が多いと得られる複室容器の内容物の保存性が低下し、逆に、上記範囲よりも環状ポリオレフィン(A)が多く、ブロック共重合体(B)が少ないとシール性、耐衝撃性が低下する。本発明のシール層形成用組成物は好ましくは環状ポリオレフィン(A)を80〜90重量%、ブロック共重合体(B)を20〜10重量%含む。
本発明のシール層形成用組成物は、通常、環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)よりなるが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)以外の成分、例えば酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を含んでいてもよく、これらの添加剤は通常、組成物中に1重量%以下の範囲で含まれる。
本発明のシール層形成用組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)、更に必要に応じて用いられるその他の成分を二軸押出し機により溶融混練する方法が好ましい。
次に本発明の多層フィルムについて説明する。
本発明の多層フィルムの外層を構成するプロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物であり、ここで、「主成分とする」とは、該樹脂組成物中の50重量%より多く占めることを言い、特にプロピレン系重合体は60重量%以上含有されていることが好ましく、一方、その含有量の上限は100重量%である。プロピレン系重合体の含有量が上記下限値以上であるとヒートシール時のフィルムの取り扱い性が良好となる傾向にある。なお、ここでいう「プロピレン系重合体」とは、原料の単量体成分全体に対してプロピレンを50モル%より多く含む重合体を意味する。
密度:0.88〜0.91g/cm3
MFR:1.0〜10dg/min
曲げ弾性率:300〜1500MPa
中間層は、1層のみで構成されてもよいが、外層と接する第1の中間層と、シール層と接する第2の中間層との2層を有することが好ましく、この場合、第1の中間層はプロピレン系重合体よりなり、第2の中間層はエチレン系重合体よりなることが、第1の中間層と外層との接着性、第2の中間層とシール層との接着性、第1の中間層と第2の中間層との接着性の面から好ましい。
MFR:1.0〜7.0dg/min
曲げ弾性率:10〜300MPa 及び/又は デュロ硬度A:70〜95
密度:0.86〜0.93g/cm3
MFR:1.0〜7.0dg/min
本発明の多層フィルムは、内層、中間層、外層の他、必要に応じて更に任意の層を有していてもよい。
即ち、内層、中間層及び外層は、直接接触していても、あるいはこれらの層の間に接着層が存在してもよい。また、外層の上(複室容器とした際に外壁側となる部分)に更に最外層としてヒートシール性を向上させるためのポリエステルからなる層、特に脂環式ポリエステルからなる層やガスバリア性を向上させるためのシリカ及び/又はアルミナを蒸着させたポリエステルからなる層等の他の層を有していてもよい。
本発明の多層フィルムの製造方法としては、上記の各層を積層一体化できる方法であればどのような方法であってもよく、例えば、ドライラミネーション、押出ラミネーション、共押出ラミネーション(Tダイ法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法)、ヒートラミネーションなど、あるいはこれらの方法を組み合わせたラミネーション法を例示できる。これらの中でも多層フィルム全体の透明性を得る観点、内層の密閉性を得る観点から、特に好ましいのは水冷インフレーション法である。
本発明の多層フィルムのシール層の厚みは5〜50μmが好ましく、特に10〜30μmであることが好ましい。シール層の厚みが上記下限値以上であるとシール強度の安定性の観点で好ましく、上記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性の点で好ましい。
本発明の多層フィルムを用いて、本発明の複室容器を製造する方法としては、真空成形、圧空成形などのシート成形法(熱成形法)、多層共押出ブロー成形などのブロー成形法、あるいは所定の形状に切断した枚葉形態の多層フィルム同士の周縁部を熱融着(強溶着)又は接着剤で接着して袋状物を作製する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
この弱シール部を形成する際の熱融着温度は、シール層形成用組成物の成分組成やシール層及び多層フィルム全体の厚み等によっても異なるが、通常140〜160℃程度であり、容易に剥離可能な弱シール部のヒートシール強度としては、後述の実施例の項に記載される方法で測定される剥離強度として、10N/10mm以下、特に0.1〜5N/10mmであることが好ましい。
弱シール部のヒートシール強度が大き過ぎるとこの弱シール部を容易に剥離させることができず、小さ過ぎると意図しないときに加えられた小さな衝撃で弱シール部が剥離してしまい、使用直前まで収容室を区画するという目的を達成し得ない。
強シール部のヒートシール強度が小さ過ぎると、複室容器として必要とされる強度を満足し得ない。強シール部のヒートシール強度は大きい程好ましいが、その上限は通常60N/10mm程度である。
本発明の複室容器の収容室に収容する薬剤等の内容物については特に制限はないが、本発明の複室容器の優れた保存性等から、本発明の複室容器は、例えば、蛋白質含有薬剤、ヒアルロン酸含有薬剤、ビタミン類含有薬剤、微量元素含有薬剤、ラジカル捕捉剤含有薬剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩酸ニカルジピン、シクロスポリン、ミダゾラム、プロポフォール、ベンゾジアゼピン、脂溶性薬剤、ペプチドなどを収容する複室容器として好適に用いることができる。
三菱化学(株)製プロピレン系重合体「ゼラス(登録商標)7023」と三菱化学(株)製スチレン系エラストマー「ゼラス(登録商標)MC704」の樹脂組成物
ゼラス7023:ゼラスMC704=60:40(重量比)
ゼラス7023:[密度(ISO 1183)]=0.89g/cm3
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]
=2.0dg/min
[曲げ弾性率(ISO 178)]=300MPa
ゼラスMC704:[密度(ISO 1183)]=0.89g/cm3
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]
=1.7dg/min
[デュロ硬度A(ISO 7619)]=86
三菱化学(株)製プロピレン系重合体「ゼラス(登録商標)RT406A−6」
[密度(ISO 1183)]=0.89g/cm3
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]
=2.4dg/min
[デュロ硬度A(ISO 7619)]=85
<第2の中間層形成材料>
JPE社製低密度ポリエチレン「カーネル(登録商標)KM284」
[密度(ISO 1183)]=0.921g/cm3
[MFR(ISO 1133 (190℃、21.2N))]
=2.5dg/min
(A−1):日本ゼオン社製「Zeonor(登録商標)1020R」
前記式(3)で表されるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を分子全体の85モル%含むポリマー(1)
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]=2.0g/min
(B−1):カネカ社製ブロック共重合体(B)「SIBSTAR(登録商標)103T」
ポリスチレンブロック含有量が30重量%で、Mw=111000、Mn=82100のポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体
<多層フィルムの作製>
(A−1)と(B−1)とを(A−1):(B−1)=85:15(重量比)の割合で二軸押出し機により溶融混練することによりシール層形成用組成物を製造した。
このシール層形成用組成物と、外層形成材料、第1の中間層形成材料、及び第2の中間層形成材料を用いて、水冷インフレーション成形機(スクリュー径40mm、L/D=28の押出し機を5つ備えた5層水冷インフレーション成形機)により、外層/第1の中間層−1/第1の中間層−2/第2の中間層/シール層の多層フィルム(以下、「多層フィルムA」という。)を、ダイス温度230℃で成形した。
各層のシリンダー温度と厚みは表−1に示す通りである。
多層フィルムA(150mm×150mm)2枚を、シール層を内側にして重ね、ヒートシール温度を変更したバーシールを施し、ヒートシール温度とシール強度との関係を調べた。
まず、インパルス式シール機を用いて周囲3辺をシールして袋状の容器を作製した。この容器に内容液として水を封入し、110℃にて高圧蒸気滅菌を実施した。滅菌後の多層フィルムのバーシール部より10mm×100mmの短冊状の試験片を切り出し、shimadzu社製 小型卓上試験機「EZ−test」を用いて引っ張り速度300mm/分にて180°引っ張り試験を実施し、ヒートシール温度と剥離強度との関係を表−2に示した。
判断指標として、弱シール部(イージーピール可能領域)の剥離強度は10N/10mm以下、製袋に必要な強シール部の剥離強度を20N/10mm以上を目安とした。
多層フィルムAの薬剤吸着抑制性能を評価するため、対象薬剤として脂溶性ビタミンを用いて実験を実施した。また、薬剤吸着抑制性能の比較のため、ガラスアンプル及びポリプロピレン(日本ポリプロ社製)を用いたポリプロピレン(PP)製射出成形容器を用いて同様に試験を実施した。
ガラスアンプルと内表面積が同一となるよう、インパルス式シール機を用い、2枚の多層フィルムAをシール層を内側として重ね、周囲を袋状にシールし、環状ポリオレフィン製射出成形薬液排出ポートをヒートシールして容器(実施例1の容器)を作製した。また、PP製射出成形容器についても内表面積が同一となるように同様に作製した。
各々の容器に、脂溶性ビタミン(レチノールパルミチン酸エステル、トコフェロール酢酸エステル、エルゴカルシフェロール又はフィトナジオン)を充填し、110℃にて高圧蒸気滅菌を実施した後、アルミ蒸着フィルム包装袋(全光線透過率0%、酸素透過度0.3cc/m2・day・atm)に、三菱ガス株式会社製エージレス2個とエージレスアイ1個と共に封入した状態で、40℃、75%RHの環境下にて保管した。保管開始時(初期)、1ヶ月、2ヶ月及び3ヶ月後における容器内の脂溶性ビタミン濃度を高速液体クロマトグラフィで測定し、充填時の濃度に対する割合を残存率として求め、結果を表−3に示した。
多層フィルムAの医薬品容器としての適性を、日局16、プラスチック製容器試験法記載の漏れ試験により確認した。
多層フィルムAと環状ポリオレフィン製射出成形薬液排出ポートを用い、上記の脂溶性ビタミン安定性試験におけると同様にして内容液量が500mLとなる容器を作製した。
本容器に内容液として注射用水を500mL充填し、110℃で高圧蒸気滅菌を実施した後、24時間以上放置後、日局16、プラスチック製容器試験法記載の漏れ試験を実施したところ、内容液の漏れは発生しなかった。
多層フィルムAについて、ISO 14782に基づいて、全光線透過率及び拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。ヘーズの値が小さいものほど、全光線透過率が大きいものほど透明性に優れたものと評価される。
[ヘーズ]=〔[拡散透過率]/[全光線透過率]〕×100
その結果、全光線透過率は88%、ヘーズは26%であり、多層フィルムAは医療用複室容器に要求される透明性を十分に満たすものであった。
Claims (7)
- シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成された容器であって、該シール層が該容器の内壁面を構成すると共に、対向する該内壁面の一部同士を剥離可能にシールすることにより形成された弱シール部によって該容器内部が複数の収容室に区画され、該複数の収容室にそれぞれ内容物が収容される医療用複室容器において、
前記シール層が、環状ポリオレフィン(A)70重量%以上95重量%以下と、スチレン系重合体ブロック(b1)とイソブチレン重合体ブロック(b2)とのブロック共重合体(B)5重量%以上30重量%以下とを含む組成物により形成されており、
該環状ポリオレフィン(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー及び/又は下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることを特徴とする医療用複室容器。
上記式(2)中、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は有機基を表し、RcとRdは互いに結合して環を形成していてもよい。x及びzはそれぞれ1以上の整数、yは0以上の整数である。) - 前記ブロック共重合体(B)のスチレン系重合体ブロック(b1)の含有量が10重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の医療用複室容器。
- 前記シール層が、前記環状ポリオレフィン(A)含有量が70重量%より多く90重量%以下であり、かつ前記ブロック共重合体(B)含有量が10重量%以上30重量%未満の組成物により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用複室容器。
- 前記環状ポリオレフィン(A)が、前記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
- 前記多層フィルムが、プロピレン系重合体を主成分とするポリマーよりなる外層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
- 前記シール層の厚みが5〜50μmであり、かつ前記多層フィルムの厚みが150〜350μmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
- 前記多層フィルムが少なくとも前記シール層、外層及び該シール層と外層との間に設けられた中間層を有し、該外層の厚みが140〜330μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
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