JP6268735B2 - 医療用複室容器 - Google Patents

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Description

本発明は、剥離可能にシールされた弱シール部によって容器内部が複数の収容室に区画され、該複数の収容室にそれぞれ内容物を隔離して収容することができる複室容器であって、弱シール性と強シール性に優れ、また、内容物の保存性に優れると共に、耐熱性、透明性、柔軟性、耐衝撃性にも優れた医療用複室容器に関する。
医療分野においては、複数の薬剤成分を混合した状態で生体内に投与することが一般的に行われているが、この場合、複数の薬剤成分は各々別の閉鎖系に保存し、投与直前に混合して投与することが必要とされる場合がある。例えば、輸液の場合、アミノ酸とブドウ糖とを含む液は、メイラード反応による変質が起こりやすいので、各成分を別々の閉鎖系に保存しておき、患者への投与の直前に混合することが多い。この際、混合操作を無菌的に(クローズドシステムで)行うため、また、操作を容易なものとするため、容器内部が複数の収容室に区画された複室容器を用いて、各々の収容室に異なる輸液成分を保存しておき、使用直前に区画された収容室を何らかの手段でクローズドシステム内で連通させて混合する方法が実用化されるようになっている。
このような複室容器の収容室の区画手段としては、使用直前までは安定に各輸液成分を隔離することができ、使用時(混合時)には、例えば複室容器を掴んで押しつけるなどの操作で容易に連通させ得ることが重要であり、このために種々の形態が工夫され提案されている。その中でも、操作性、実用性に富むものは、いわゆる易剥離(イージーピール)性の複室容器であり、具体的には、製造時から輸送ないし保存時においては、比較的安定で剥離しにくく、使用時(混合時)には手又は器具などで容易に剥離され得る程度のシール強度で収容室間を区画するシール部を有し、かつ外界(大気)と容器内部とを遮断するための周縁部では高いシール強度を有する設計とされている。従って、このような複室容器の材料としては、内壁を形成するシール層、即ち、収容室間の区画部では弱シール部となり、周縁部では強シール部となるシール層の材質の選定が重要となる。
なお、ここで、収容室を区画する易剥離部を形成するための弱シール部と、周縁部の強シール部とは、例えば、同一の構成材料において、ヒートシールの温度を変更することにより形成される場合がある。即ち、弱シール部では、比較的低温のヒートシールが行われ、強シール部では、比較的高温のヒートシールが行われる。このようにヒートシール温度を変えることにより、弱シール部と強シール部を同一の構成材料で容易に形成するためには、当該材料のヒートシール温度とシール強度の相関において、ヒートシール温度の上昇に対するシール強度の増加の割合が小さく、ある温度を境にこの増加の割合が大きくなるような材料であることが好ましい。
従来、このような設計思想に基づき、特許文献1にはポリプロピレンとエチレン−ブテンコポリマーの組成物を、特許文献2には、ポリプロピレン系ポリマーとスチレン系熱可塑性エラストマーの組成物を、また、特許文献3には、ポリプロピレン系ポリマーとスチレン系熱可塑性エラストマー及びエチレン−ブテンコポリマーの組成物を、容器内壁面の構成材料とする複室容器が開示されている。これらは、優れた柔軟性、透明性、耐熱性(耐高圧蒸気滅菌性)を示すが、一部の内容物を保存して使用する場合、これらの組成物を内壁面として用いた容器を用いると内容物中の有効成分の濃度が減少するため、内容物の有効成分の保存性において実用に耐えない例があった。
このような内容物の有効成分の保存性を向上させたものとして、例えば、特許文献4には、ガラス転移温度の異なる2種類の環状ポリオレフィンからなる組成物を、内壁面の構成材料とした複室容器が開示されている。
従来、環状ポリオレフィンは優れた透明性と共に、優れた内容物保存性を示すことが知られているが、一方で非常に脆い性質を有しており、例えば特許文献3で開示される組成物と比較すると、耐衝撃性を示すために、複室容器としての耐衝撃性が乏しい問題が内在する。
一方、特許文献5には、環状ポリオレフィンとポリエチレン等の線状ポリオレフィンとの組成物を内壁面の構成材料とする複室容器が開示されている。ここで開示される組成物には、環状ポリオレフィンの耐衝撃性を改良することができるものもあるが、透明性が劣るという問題があった。
また、特許文献6には、複室容器の内壁面の構成材料として、環状オレフィン系樹脂とSEBS、SEBE等のスチレン系熱可塑性エラストマーとの組成物を用いることが開示されているが、本発明者らの検討により、この組成物では透明性が悪く、医療用複室容器としては不適当であることが確認された。
特開平8−131515号公報 特開平8−229100号公報 特開2006−239436号公報 WO2004/080370号パンフレット 特開2000−70331号公報 特開2011−72454号公報
医療用複室容器には、
(1) 取り扱い上要求される優れた柔軟性と耐衝撃性等の機械的強度
(2) 内容物を視認できる高い透明性
(3) 高圧蒸気滅菌等に耐え得る耐熱性
(4) 内容物の有効成分濃度を変化させることなく安定に保存する優れた保存性
(5) 収容室を区画する易剥離部を形成するための弱シール性と、周縁シール部を形成するための強シール性との双方に対応し得る幅広いシール強度
を兼ね備える必要があるが、従来において、これらの要求特性をすべて満たす複室容器の内壁面構成材料は提供されておらず、その開発が望まれる。
従って、本発明は、内容物の保存性に優れると共に、耐熱性、耐衝撃性、透明性、弱シール性と強シール性の双方に対応するシール強度多様性を兼ね備える医療用複室容器を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の環状ポリオレフィンと、特定のスチレン系熱可塑性エラストマー、すなわち、スチレン系化合物の重合体ブロックとポリイソブチレンブロックとのブロック共重合体とを含む組成物より構成されるシール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムを、複室容器の形成材料として用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[]を要旨とする。
[1] シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成された容器であって、該シール層が該容器の内壁面を構成すると共に、対向する該内壁面の一部同士を剥離可能にシールすることにより形成された弱シール部によって該容器内部が複数の収容室に区画され、該複数の収容室にそれぞれ内容物が収容される医療用複室容器において、前記シール層が、環状ポリオレフィン(A)70重量%以上95重量%以下と、スチレン系重合体ブロック(b1)とイソブチレン重合体ブロック(b2)とのブロック共重合体(B)5重量%以上30重量%以下とを含む組成物により形成されており、該環状ポリオレフィン(A)が、ノルボルネン環を有する置換および未置換の二環環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体の水素添加物であり、前記多層フィルムが少なくとも前記シール層、外層及び該シール層と外層との間に設けられた中間層を有し、該外層の厚みが140〜330μmであり、高圧蒸気滅菌に耐え得る耐熱性を有すると共に、内容物の有効成分濃度を変化させることなく安定に保存可能な医療用複室容器であることを特徴とする医療用複室容器。
[2] 前記ブロック共重合体(B)のスチレン系重合体ブロック(b1)の含有量が10重量%以上40重量%以下であることを特徴とする[1]に記載の医療用複室容器。
[3] 前記シール層が、前記環状ポリオレフィン(A)含有量が70重量%より多く90重量%以下であり、かつ前記ブロック共重合体(B)含有量が10重量%以上30重量%未満の組成物により形成されていることを特徴とする[1]又は[2]に記載の医療用複室容器。
[4] 前記環状ポリオレフィン(A)が、記式()で表される繰り返し単位を分子中に30モル%以上含むポリマーであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の医療用複室容器。
Figure 0006268735
[5] 前記多層フィルムが、プロピレン系重合体を主成分とするポリマーよりなる外層を有することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の医療用複室容器。
[6] 前記シール層の厚みが10μm以上50μm以下であり、かつ前記多層フィルムの厚みが200μm以上350μm以下であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の医療用複室容器。
本発明によれば、特定の環状ポリオレフィン(A)と、スチレン系重合体ブロック(b1)とイソブチレン重合体ブロック(b2)とのブロック共重合体(B)とを所定の割合で含む組成物を、容器内壁面を構成するシール層の形成材料として用いることにより、内容物の保存性に優れると共に、耐熱性、耐衝撃性、透明性、弱シール性と強シール性の双方に対応するシール強度多様性を兼ね備える医療用複室容器を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明の医療用複室容器(以下、「本発明の複室容器」と称す場合がある。)は、シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成された容器であって、該シール層が該容器の内壁面を構成すると共に、対向する該内壁面の一部同士を剥離可能にシールすることにより形成された弱シール部によって該容器内部が複数の収容室に区画され、該複数の収容室にそれぞれ内容物が収容される医療用複室容器において、前記シール層が、環状ポリオレフィン(A)70重量%以上95重量%以下と、スチレン系重合体ブロック(b1)とイソブチレン重合体ブロック(b2)とのブロック共重合体(B)5重量%以上30重量%以下とを含む組成物により形成されており、該環状ポリオレフィン(A)が、ノルボルネン環を有する置換および未置換の二環環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体の水素添加物であることを特徴とする
下において、本発明の複室容器を構成する多層フィルムを「本発明の多層フィルム」と称し、該多層フィルムのシール層を形成する組成物を「本発明のシール層形成用組成物」と称す場合がある。
[シール層形成用組成物]
まず、本発明の医療用複室容器のシール層を形成する、環状ポリオレフィン(A)70重量%以上95重量%以下と、ブロック共重合体(B)5重量%以上30重量%以下とを含む本発明のシール層形成用組成物について説明する。
<環状ポリオレフィン(A)>
本発明に係る環状ポリオレフィン(A)は、ノルボルネン環を有する置換および未置換の二環環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体の水素添加物(以下「ポリマー(1)」と称す場合がある。)である
リマー(1)は不飽和環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体の水素添加物であり、該不飽和環状オレフィンモノマーは、ノルボルネン環を有する置換および未置換の二環環状オレフィンモノマー(以下、ノルボルネン系モノマーと記載することがある。)が挙げられる。製造適性及び内容物適性の観点から、中でもノルボルネン系モノマーが好適に用いられる
リマー(1)を構成するノルボルネン系モノマーとしてより具体的には、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどの二環シクロオレフィン;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三環シクロオレフィン;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環シクロオレフィン;トリシクロペンタジエンなどの五環シクロオレフィン;ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環シクロオレフィンなどが挙げられる。また、ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖又はエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物等を用いることも可能である。
ポリマー(1)の製造方法は特に限定されることなく、公知の種々の製造方法が採用可能である。ポリマー(1)は、例えば、前記の不飽和環状オレフィンモノマーであるノルボルネン系モノマーを開環重合した後、生成した重合体が有するオレフィン性不飽和結合部分を水素化することによって製造することができる。該開環重合は、例えば、不飽和環状オレフィンモノマーを、遷移金属化合物又は白金族金属化合物と有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物を含む触媒系において、必要に応じて脂肪族又は芳香族の第三級アミン等の添加剤の存在下に、−20℃〜100℃の範囲内の温度、0.01〜50kg/cmGの範囲内の圧力で行うことができる。また該水素化は、通常の水素化触媒の存在下で行うことができる。
ポリマー(1)としては、下記式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、より具体的には、分子中に下記式(3)で表されるものが30モル%以上含まれることが好ましい。
Figure 0006268735
状ポリオレフィン(A)の数平均分子量又は極限粘度数は、特に限定されることなく目的等に応じて適宜好適なものを採用することができるが、一般的には、数平均分子量が10000〜500000の範囲内であるか、又はデカリン中135℃で測定した極限粘度数が0.01〜20dL/gの範囲内であることが好ましい。環状ポリオレフィン(A)の数平均分子量又は極限粘度数が上記上限値以下であると成形性の観点から好ましく、上記下限値以上であると靭性の観点から好ましい。
このような環状ポリオレフィン(A)は市販品として入手可能であり、ポリマー(1)としては、例えば、日本ゼオン(株)製の商品名「Zeonex(登録商標)」、「Zeonor(登録商標)」、JSR(株)製の商品名「ARTON(登録商標)」等が挙げられる
発明において、環状ポリオレフィン(A)としては、ポリマー(1)の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい
状ポリオレフィン(A)としては、特にポリマー(1)を用いることがフィルム成膜した際に外観不良を起こしにくいために好ましい。
<ブロック共重合体(B)>
本発明に係るブロック共重合体(B)は、スチレン系重合体ブロック(b1)と、イソブチレン重合体ブロック(b2)とからなる。
スチレン系重合体ブロック(b1)を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、(o−、m−、p)−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−クロロメチルスチレンが好ましく用いられ、さらにスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレンが好ましく用いられ、最も好ましくはスチレンが用いられる。これらのスチレン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、スチレン系重合体ブロック(b1)は、ポリスチレンブロックであることが好ましい。
一方、イソブチレン重合体ブロック(b2)はイソブチレンの重合体よりなる。
ブロック共重合体(B)は、スチレン系重合体ブロック(b1)(以下において「(b1)」と記す。)とイソブチレン重合体ブロック(b2)(以下において「(b2)」と記す。)とを有するものであればよく、その組み合わせによって、
(b1)−(b2)
(b1)−{(b2)−(b1)}
{(b1)−(b2)}
(b2)−(b1)−{(b2)−(b1)}−(b2)
などの構造を有するものが挙げられるが(ただし、pは2〜5の整数、qは2〜5の整数を表す)、これらのうち、(b1)−{(b2)−(b1)}、特に(b1)−(b2)−(b1)の構造を有するものが、粘着性が少ない点において好ましい。
また、ブロック共重合体(B)の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
ブロック共重合体(B)のスチレン系重合体ブロック(b1)の含有量は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、更に好ましくは20重量%以上であり、一方、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは35重量%以下である。ブロック共重合体(B)のスチレン系重合体ブロック(b1)の含有量が上記下限値以上であると、形成されるシール層の透明性が良好となる傾向にあり、上記上限値以下であると形成されるシール層の耐衝撃性が向上する傾向にある。
尚、本発明において、ブロック共重合体(B)におけるスチレン系重合体ブロック(b1)の含有量や共重合体ブロックの構造は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定し、J.C.Randall,J.Polym.Sci.Polym.Phs.Ed.,Vol.13,901(1975)を参考にして信号を帰属することにより求めることができる。
また、ブロック共重合体(B)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは50000以上であり、一方、好ましくは200000以下、より好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下である。ブロック共重合体(B)のMwが上記下限値以上であることにより、形成されるシール層の機械強度、耐熱性、成形性が良好なものとなる傾向にあり、上記上限値以下であることにより、加工時の溶融粘度が下がり、成形性が良好なものとなる傾向にある。
ブロック共重合体(B)の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、上記のGPCにより測定されるポリスチレン換算のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。Mw/Mnが上記上限値以下であると、成形性や耐熱性、透明性などに優れるシール層を形成し易いために好ましい。
本発明におけるブロック共重合体(B)は、前述のスチレン化合物とイソブチレンをリビング重合することにより製造することができる。このリビング重合は、代表的には、ハロゲンやアルコキシ基等を有する開始剤を使用し、ルイス酸の添加によりカチオンを発生させるリビングカチオン重合が好ましい。
本発明において、ブロック共重合体(B)は、1種を単独で用いてもよく、分子量やモノマー構成、ブロック構成の異なるものを2種以上併用してもよい。
<環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)の含有量>
本発明のシール層形成用組成物は、環状ポリオレフィン(A)を70〜95重量%、ブロック共重合体(B)を5〜30重量%含有する。上記範囲よりも環状ポリオレフィン(A)が少なく、ブロック共重合体(B)が多いと得られる複室容器の内容物の保存性が低下し、逆に、上記範囲よりも環状ポリオレフィン(A)が多く、ブロック共重合体(B)が少ないとシール性、耐衝撃性が低下する。本発明のシール層形成用組成物は好ましくは環状ポリオレフィン(A)を80〜90重量%、ブロック共重合体(B)を20〜10重量%含む。
<その他の成分>
本発明のシール層形成用組成物は、通常、環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)よりなるが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)以外の成分、例えば酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を含んでいてもよく、これらの添加剤は通常、組成物中に1重量%以下の範囲で含まれる。
<シール層形成用組成物の製造方法>
本発明のシール層形成用組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、環状ポリオレフィン(A)とブロック共重合体(B)、更に必要に応じて用いられるその他の成分を二軸押出し機により溶融混練する方法が好ましい。
[多層フィルム]
次に本発明の多層フィルムについて説明する。
本発明の多層フィルムは、少なくとも前記シール層形成用組成物で形成されるシール層を有し、好ましくは、プロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物よりなる外層、即ち、本発明の複室容器の外壁面を形成する層を有し、より好ましくは、この外層とシール層との間に中間層を有する。
<外層>
本発明の多層フィルムの外層を構成するプロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物であり、ここで、「主成分とする」とは、該樹脂組成物中の50重量%より多く占めることを言い、特にプロピレン系重合体は60重量%以上含有されていることが好ましく、一方、その含有量の上限は100重量%である。プロピレン系重合体の含有量が上記下限値以上であるとヒートシール時のフィルムの取り扱い性が良好となる傾向にある。なお、ここでいう「プロピレン系重合体」とは、原料の単量体成分全体に対してプロピレンを50モル%より多く含む重合体を意味する。
また、外層を構成する樹脂組成物はプロピレン系重合体以外の成分を含んでいてもよく、例えば、スチレン系エラストマー及び/又はその水添物等が含まれていてもよい。このスチレン系エラストマーとしてはスチレン重合体ブロックと共役ジェン重合体ブロックとを有するものであり、この共役ジエン重合体ブロックとしては、ブタジエン、イソプレン等に由来するものが挙げられる。スチレン系エラストマー及び/又はその水添物を用いる場合、その含有量は、プロピレン系重合体とスチレン系エラストマー及び/又はその水添物との合計に対し、10〜40重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。
ここで、外層を構成する樹脂組成物は以下の物性を有するものであることが好ましい。
密度:0.88〜0.91g/cm
MFR:1.0〜10dg/min
曲げ弾性率:300〜1500MPa
外層を構成する樹脂組成物の密度(ISO 1183)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると透明性が良好となる傾向にある。また、MFR(ISO 1133(測定温度230℃、荷重21.2N))が前記範囲であると、成形性の観点で好ましい。更に、曲げ弾性率(ISO 178)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると耐衝撃性や柔軟性が良好となる傾向にある。
<中間層>
中間層は、1層のみで構成されてもよいが、外層と接する第1の中間層と、シール層と接する第2の中間層との2層を有することが好ましく、この場合、第1の中間層はプロピレン系重合体よりなり、第2の中間層はエチレン系重合体よりなることが、第1の中間層と外層との接着性、第2の中間層とシール層との接着性、第1の中間層と第2の中間層との接着性の面から好ましい。
第1の中間層を構成するプロピレン系重合体は以下の物性を有するものであることが好ましい。
MFR:1.0〜7.0dg/min
曲げ弾性率:10〜300MPa 及び/又は デュロ硬度A:70〜95
第1の中間層を構成するプロピレン系重合体のMFR(ISO 1133(測定温度230℃、荷重21.2N))が前記範囲であると成形性の観点で好ましい。特に、前記下限値以上であると、Tダイ成形において好ましく、一方、前記上限値以下であると、水冷インフレーション成形において好ましい。また、曲げ弾性率(ISO 178)及び/又はデュロ硬度A(ISO 7619)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性が良好となる傾向にある。
一方、第2の中間層を構成するエチレン系重合体は、以下の物性を有するもの、特に低密度ポリエチレンが好ましい。
密度:0.86〜0.93g/cm
MFR:1.0〜7.0dg/min
第2の中間層を構成するエチレン系重合体の密度(ISO 1183)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性が良好となる傾向にある。また、MFR(ISO 1133(測定温度190℃、荷重21.2N))が前記範囲であると成形性の観点で好ましい。特に、前記下限値以上であると、Tダイ成形において好ましく、一方、前記上限値以下であると、水冷インフレーション成形において好ましい。
<その他の層>
本発明の多層フィルムは、内層、中間層、外層の他、必要に応じて更に任意の層を有していてもよい。
即ち、内層、中間層及び外層は、直接接触していても、あるいはこれらの層の間に接着層が存在してもよい。また、外層の上(複室容器とした際に外壁側となる部分)に更に最外層としてヒートシール性を向上させるためのポリエステルからなる層、特に脂環式ポリエステルからなる層やガスバリア性を向上させるためのシリカ及び/又はアルミナを蒸着させたポリエステルからなる層等の他の層を有していてもよい。
接着層は、シール層と中間層、或いは中間層と外層等、異なる中間層間に位置してこれらを結合する接着剤又は接着性樹脂の層である。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤などが挙げられ、接着性樹脂としてはポリオレフィン、それを無水マレイン酸等の酸で変性した酸変性ポリオレフィン、エチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体などが挙げられる。
<製造方法>
本発明の多層フィルムの製造方法としては、上記の各層を積層一体化できる方法であればどのような方法であってもよく、例えば、ドライラミネーション、押出ラミネーション、共押出ラミネーション(Tダイ法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法)、ヒートラミネーションなど、あるいはこれらの方法を組み合わせたラミネーション法を例示できる。これらの中でも多層フィルム全体の透明性を得る観点、内層の密閉性を得る観点から、特に好ましいのは水冷インフレーション法である。
<各層及び多層フィルムの厚み>
本発明の多層フィルムのシール層の厚みは5〜50μmが好ましく、特に10〜30μmであることが好ましい。シール層の厚みが上記下限値以上であるとシール強度の安定性の観点で好ましく、上記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性の点で好ましい。
また、本発明の多層フィルムの外層の厚みは140μm〜330μmが好ましく、特に150〜250μmであることが好ましい。外層は、主として多層フィルムの機械的強度、ヒートシール性の向上等を担うものであるが、外層の厚みが上記下限値以上であると、機械的強度の観点で好ましく、上記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性の点で好ましい。
また、本発明の多層フィルムが中間層を有する場合、中間層の厚みは5μm〜200μmが好ましく、特に10〜150μmであることが好ましい。中間層は外層とシール層との接着性を確保するために設けられるものであり、上記下限値以上であると、この目的を達成するために好ましく、また、フィルム全体の柔軟性の点でも好ましく、一方、上記上限値以下であると、ヒートシール性の観点でも好ましい。
この中間層が前述の第1の中間層と第2の中間層とで構成される場合、第1の中間層の厚みは5〜145μmが好ましく、特に10〜130μmであることが好ましく、また、第2の中間層の厚みは5〜145μmが好ましく、特に10〜130μmであることが好ましい。第1の中間層の厚みが、上記下限値以上であると、フィルム全体の柔軟性で好ましく、一方、上記上限値以下であると、ヒートシール性の点で有利である。また、第2の中間層の厚みが、上記下限値以上であると、内層との接着性の点で好ましく、一方、上記上限値以下であると、ヒートシール性の点で有利である。
特に、本発明の多層フィルムは、その厚み比は、(シール層):(外層)=1:30〜1:3であることが好ましい。
なお、前述の接着剤層を更に有する場合、その厚さは多層フィルムの全体の仕様や用いる接着剤の種類、接着層に必要とされる接着性等に応じて適宜決定される。
本発明の多層フィルムに必要に応じて設けられるその他の層の厚みについても、その形成目的に応じて適宜決定されるが、本発明の多層フィルムの厚み(多層フィルムを構成する各層の合計の厚み)は、150〜350μm以下が好ましく、特に180〜300μmであることがより好ましい。多層フィルムの厚みが上記下限値以上であると、シール層等、必要な層の厚みを十分に確保することができるために好ましく、シール性、機械的強度、その他の要求特性の観点から好ましい。多層フィルムの厚みが上記上限値以下であると、薄肉、軽量化の観点で好ましく、また、コスト、取り扱い性、加工性の点でも有利である。
[複室容器の製造方法]
本発明の多層フィルムを用いて、本発明の複室容器を製造する方法としては、真空成形、圧空成形などのシート成形法(熱成形法)、多層共押出ブロー成形などのブロー成形法、あるいは所定の形状に切断した枚葉形態の多層フィルム同士の周縁部を熱融着(強溶着)又は接着剤で接着して袋状物を作製する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
このようにして本発明の複室容器を製造するに当たり、容器内部を複数の収容室に区画する弱シール部は、ヒートシール温度を制御したバーシール等を用いて、対向する容器内壁面の一部同士を熱融着することにより形成することができる。
この弱シール部を形成する際の熱融着温度は、シール層形成用組成物の成分組成やシール層及び多層フィルム全体の厚み等によっても異なるが、通常140〜160℃程度であり、容易に剥離可能な弱シール部のヒートシール強度としては、後述の実施例の項に記載される方法で測定される剥離強度として、10N/10mm以下、特に0.1〜5N/10mmであることが好ましい。
弱シール部のヒートシール強度が大き過ぎるとこの弱シール部を容易に剥離させることができず、小さ過ぎると意図しないときに加えられた小さな衝撃で弱シール部が剥離してしまい、使用直前まで収容室を区画するという目的を達成し得ない。
一方、例えば、所定の形状に切断した枚葉形態の多層フィルム同士の周縁部を熱融着して強シール部を形成する場合の熱融着温度は、シール層形成用組成物の成分組成やシール層及び多層フィルム全体の厚み等によっても異なるが、通常180〜220℃程度であり、外界(外気)と容器内部とを遮断するための強シール部のヒートシール強度としては、後述の実施例の項に記載される方法で測定される剥離強度として、20N/10mm以上、特に25N/10mm以上であることが好ましい。
強シール部のヒートシール強度が小さ過ぎると、複室容器として必要とされる強度を満足し得ない。強シール部のヒートシール強度は大きい程好ましいが、その上限は通常60N/10mm程度である。
特に、弱シール部と強シール部のヒートシール温度のコントロールを容易とするために、弱シール部を形成する際の熱融着温度に対して強シール部を形成する場合の熱融着温度は10℃以上高い温度であることが好ましい。
本発明の複室容器は、通常、容器内部を2分するように線状の弱シール部が設けられ、2つの収容室が設けられた複室容器として提供されるが、これに限らず、複数の弱シール部により、容器内部を3室以上に区画したものであってもよい。
[複室容器の内容物]
本発明の複室容器の収容室に収容する薬剤等の内容物については特に制限はないが、本発明の複室容器の優れた保存性等から、本発明の複室容器は、例えば、蛋白質含有薬剤、ヒアルロン酸含有薬剤、ビタミン類含有薬剤、微量元素含有薬剤、ラジカル捕捉剤含有薬剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩酸ニカルジピン、シクロスポリン、ミダゾラム、プロポフォール、ベンゾジアゼピン、脂溶性薬剤、ペプチドなどを収容する複室容器として好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
なお、以下の実施例で用いた多層フィルム形成材料の詳細は以下の通りである。
<外層形成材料>
三菱化学(株)製プロピレン系重合体「ゼラス(登録商標)7023」と三菱化学(株)製スチレン系エラストマー「ゼラス(登録商標)MC704」の樹脂組成物
ゼラス7023:ゼラスMC704=60:40(重量比)
ゼラス7023:[密度(ISO 1183)]=0.89g/cm
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]
=2.0dg/min
[曲げ弾性率(ISO 178)]=300MPa
ゼラスMC704:[密度(ISO 1183)]=0.89g/cm
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]
=1.7dg/min
[デュロ硬度A(ISO 7619)]=86
<第1の中間層形成材料>
三菱化学(株)製プロピレン系重合体「ゼラス(登録商標)RT406A−6」
[密度(ISO 1183)]=0.89g/cm
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]
=2.4dg/min
[デュロ硬度A(ISO 7619)]=85
<第2の中間層形成材料>
JPE社製低密度ポリエチレン「カーネル(登録商標)KM284」
[密度(ISO 1183)]=0.921g/cm
[MFR(ISO 1133 (190℃、21.2N))]
=2.5dg/min
<環状ポリオレフィン(A)>
(A−1):日本ゼオン社製「Zeonor(登録商標)1020R」
前記式(3)で表されるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を分子全体の85モル%含むポリマー(1)
[MFR(ISO 1133 (230℃、21.2N))]=2.0g/min
<ブロック共重合体(B)>
(B−1):カネカ社製ブロック共重合体(B)「SIBSTAR(登録商標)103T」
ポリスチレンブロック含有量が30重量%で、Mw=111000、Mn=82100のポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体
[実施例1]
<多層フィルムの作製>
(A−1)と(B−1)とを(A−1):(B−1)=85:15(重量比)の割合で二軸押出し機により溶融混練することによりシール層形成用組成物を製造した。
このシール層形成用組成物と、外層形成材料、第1の中間層形成材料、及び第2の中間層形成材料を用いて、水冷インフレーション成形機(スクリュー径40mm、L/D=28の押出し機を5つ備えた5層水冷インフレーション成形機)により、外層/第1の中間層−1/第1の中間層−2/第2の中間層/シール層の多層フィルム(以下、「多層フィルムA」という。)を、ダイス温度230℃で成形した。
各層のシリンダー温度と厚みは表−1に示す通りである。
Figure 0006268735
<剥離強度試験>
多層フィルムA(150mm×150mm)2枚を、シール層を内側にして重ね、ヒートシール温度を変更したバーシールを施し、ヒートシール温度とシール強度との関係を調べた。
まず、インパルス式シール機を用いて周囲3辺をシールして袋状の容器を作製した。この容器に内容液として水を封入し、110℃にて高圧蒸気滅菌を実施した。滅菌後の多層フィルムのバーシール部より10mm×100mmの短冊状の試験片を切り出し、shimadzu社製 小型卓上試験機「EZ−test」を用いて引っ張り速度300mm/分にて180°引っ張り試験を実施し、ヒートシール温度と剥離強度との関係を表−2に示した。
判断指標として、弱シール部(イージーピール可能領域)の剥離強度は10N/10mm以下、製袋に必要な強シール部の剥離強度を20N/10mm以上を目安とした。
Figure 0006268735
表−2より、作製された多層フィルムは、ヒートシール温度を変更することにより、弱シール部及び強シール部に必要な剥離強度をともに満たすことがわかった。また、その際、弱シール部となるヒートシール温度は155℃、強シール部となるヒートシール温度は210℃と、ヒートシール温度差が大きく、ヒートシール温度のコントロール性にも優れることが分かる。
<脂溶性ビタミン安定性試験>
多層フィルムAの薬剤吸着抑制性能を評価するため、対象薬剤として脂溶性ビタミンを用いて実験を実施した。また、薬剤吸着抑制性能の比較のため、ガラスアンプル及びポリプロピレン(日本ポリプロ社製)を用いたポリプロピレン(PP)製射出成形容器を用いて同様に試験を実施した。
ガラスアンプルと内表面積が同一となるよう、インパルス式シール機を用い、2枚の多層フィルムAをシール層を内側として重ね、周囲を袋状にシールし、環状ポリオレフィン製射出成形薬液排出ポートをヒートシールして容器(実施例1の容器)を作製した。また、PP製射出成形容器についても内表面積が同一となるように同様に作製した。
各々の容器に、脂溶性ビタミン(レチノールパルミチン酸エステル、トコフェロール酢酸エステル、エルゴカルシフェロール又はフィトナジオン)を充填し、110℃にて高圧蒸気滅菌を実施した後、アルミ蒸着フィルム包装袋(全光線透過率0%、酸素透過度0.3cc/m・day・atm)に、三菱ガス株式会社製エージレス2個とエージレスアイ1個と共に封入した状態で、40℃、75%RHの環境下にて保管した。保管開始時(初期)、1ヶ月、2ヶ月及び3ヶ月後における容器内の脂溶性ビタミン濃度を高速液体クロマトグラフィで測定し、充填時の濃度に対する割合を残存率として求め、結果を表−3に示した。
Figure 0006268735
表−3より、実施例1の容器は、対照容器であるガラスアンプル及びPP製射出成形容器と同等、或いはPP製射出成形容器よりも良好な薬剤吸着抑制性能を有し、保存性に優れることが分かる。
<容器機能試験>
多層フィルムAの医薬品容器としての適性を、日局16、プラスチック製容器試験法記載の漏れ試験により確認した。
多層フィルムAと環状ポリオレフィン製射出成形薬液排出ポートを用い、上記の脂溶性ビタミン安定性試験におけると同様にして内容液量が500mLとなる容器を作製した。
本容器に内容液として注射用水を500mL充填し、110℃で高圧蒸気滅菌を実施した後、24時間以上放置後、日局16、プラスチック製容器試験法記載の漏れ試験を実施したところ、内容液の漏れは発生しなかった。
<透明性の評価>
多層フィルムAについて、ISO 14782に基づいて、全光線透過率及び拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。ヘーズの値が小さいものほど、全光線透過率が大きいものほど透明性に優れたものと評価される。
[ヘーズ]=〔[拡散透過率]/[全光線透過率]〕×100
その結果、全光線透過率は88%、ヘーズは26%であり、多層フィルムAは医療用複室容器に要求される透明性を十分に満たすものであった。

Claims (6)

  1. シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成された容器であって、該シール層が該容器の内壁面を構成すると共に、対向する該内壁面の一部同士を剥離可能にシールすることにより形成された弱シール部によって該容器内部が複数の収容室に区画され、該複数の収容室にそれぞれ内容物が収容される医療用複室容器において、
    前記シール層が、環状ポリオレフィン(A)70重量%以上95重量%以下と、スチレン系重合体ブロック(b1)とイソブチレン重合体ブロック(b2)とのブロック共重合体(B)5重量%以上30重量%以下とを含む組成物により形成されており、
    該環状ポリオレフィン(A)が、ノルボルネン環を有する置換および未置換の二環環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体の水素添加物であり、
    前記多層フィルムが少なくとも前記シール層、外層及び該シール層と外層との間に設けられた中間層を有し、該外層の厚みが140〜330μmであり、
    高圧蒸気滅菌に耐え得る耐熱性を有すると共に、内容物の有効成分濃度を変化させることなく安定に保存可能な医療用複室容器であることを特徴とする医療用複室容器。
  2. 前記ブロック共重合体(B)のスチレン系重合体ブロック(b1)の含有量が10重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の医療用複室容器。
  3. 前記シール層が、前記環状ポリオレフィン(A)含有量が70重量%より多く90重量%以下であり、かつ前記ブロック共重合体(B)含有量が10重量%以上30重量%未満の組成物により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用複室容器。
  4. 前記環状ポリオレフィン(A)が、記式()で表される繰り返し単位を分子中に30モル%以上含むポリマーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
    Figure 0006268735
  5. 前記多層フィルムが、プロピレン系重合体を主成分とするポリマーよりなる外層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
  6. 前記シール層の厚みが5〜50μmであり、かつ前記多層フィルムの厚みが150〜350μmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療用複室容器。
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