JP2014194232A - ナット、およびこのナットを用いたブレーキディスク付き鉄道車輪 - Google Patents

ナット、およびこのナットを用いたブレーキディスク付き鉄道車輪 Download PDF

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Hirotoshi Kawabe
浩俊 川部
Taizo Makino
泰三 牧野
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Abstract

【課題】ボルトのねじ部の斜面部に生じる応力を低減させ、ボルトの疲労信頼性を向上させることができるナットを提供する。
【解決手段】ボルト2に螺合して被締結部材を締結するナット1は、ねじ穴に沿った高さ方向に直角な幅方向の断面形状が正六角形以上の正多角形または円形であり、その断面形状の最大径eがねじ部の谷径Dとの関係で下記の(1)式を満足する。
0.61<D/e<0.66 ・・・(1)
【選択図】図6

Description

本発明は、ボルトに螺合して被締結部材を締結するナットに関し、特に、鉄道車両の車輪にブレーキディスクを締結するのに適したナット、およびこのナットとボルトによってブレーキディスクが締結されたブレーキディスク付き鉄道車輪に関する。
一般に、鉄道車両や自動車や自動二輪車などの陸上輸送車両においては、その制動装置として、ディスクブレーキ、ブロックブレーキ、ドラムブレーキなどが使用される。近年では、車両の高速化や大型化に伴い、そのうちのディスクブレーキが多用される。ディスクブレーキは、ブレーキディスクとブレーキライニングとの摺動による摩擦により制動力を得る装置であり、通常、ドーナツ形円板状のブレーキディスクがボルトによる締結によって車軸または車輪に取り付けられ、このブレーキディスクの摺動面にブレーキライニングを押し付けることにより制動力を発生させる。これにより、車輪または車軸の回転を制動し、車両の速度を制御する。
例えば、ブレーキディスク付き鉄道車輪の場合、ブレーキディスクは、2枚を一組として個々の摺動面を外向きにした状態で車輪を挟み込むように配置される。これらのブレーキディスクと車輪は、ボルトとナットとの螺合により締め付けられる。これにより、ブレーキディスクは車輪に締結され、ブレーキディスク付き鉄道車輪となる。通常、ボルトの頭部とブレーキディスクとの間、およびナットとブレーキディスクとの間には、それぞれ座金が介装される。
図1は、ディスクブレーキの一例として鉄道車両用のディスクブレーキを構成するブレーキディスク付き車輪の構造を模式的に示す径方向に沿った断面図である。同図に示すように、ブレーキディスク3は、表面3a側を摺動面とするドーナツ形の円板状に形成されている。ブレーキディスクの内周側に車輪との締結部を有する内周締結タイプである。
車輪4は、車軸が圧入されるボス部4a、レールと接触する踏面を含むリム部4b、およびこれらを連結する板部4cから成る。ブレーキディスク3は、2枚を一組として個々の表面3aを外向きにした状態で車輪4の板部4cを挟み込むように配置される。車輪4の板部4cには、ブレーキディスク3の各ボルト穴3cの位置に対応して貫通穴4dが形成されている。ブレーキディスク3の各ボルト穴3cおよび車輪4の貫通穴4dにボルト2が挿通され、各ボルト2にナット1が螺合し締め付けられる。これにより、ブレーキディスク3は、フィン部3bの先端が車輪4の板部4cに圧接した状態で、車輪4に締結される。通常、ボルト2の頭部とブレーキディスク3との間、およびナット1とブレーキディスク3との間には、それぞれ、座金5が介装される。
ここで、新幹線などの高速鉄道車両においては、ブレーキディスク3の回転速度や慣性力が非常に大きいため、制動中のブレーキディスク3の温度上昇が著しくなる。これに起因してブレーキディスク3に熱変形が生じ、締結部材であるボルト2に著大な応力が発生する。そうすると、ボルト2には、長期わたる繰り返し制動の負荷により、応力集中が発生するねじ部の谷底部(以下、「ねじ谷底部」ともいう)にキズが発生するおそれがある。これに加え、ねじ部の斜面部(以下、「ねじ斜面部」ともいう)にキズが発生するおそれがある。
図2は、互いに螺合したボルトとナットのねじ部をボルトの軸方向に沿った断面で拡大した模式図である。同図では、上方にボルト2の頭部が配置され、ナット1の直ぐ上に被締結部材(例:ブレーキディスク)が配置される状態を示している。ここで、ナット1のねじ山のうち、被締結部材側から数えて第1番目、第2番目、第3番目、・・・、第n番目のねじ山を、それぞれ、第1ねじ山、第2ねじ山、第3ねじ山、・・・、第nねじ山とも称する。
一般に、ボルト2のねじ部に作用する応力は、ナット1のねじ山のうちの被締結部材に最も近い第1ねじ山に対応するねじ部において、最も大きくなる。
このような不都合が生じるのを防止する従来技術として、下記のものがある。
特許文献1には、ナットをねじ穴に沿った高さ方向に2つの領域に区分し、非締結部材に近い座面側の領域に存在するねじ山のせん断強さを、非締結部材から遠い側(反座面側)の領域に存在するねじ山のせん断強さよりも低めにしたナットが開示されている。このようなナットは、座面側の領域を軟鋼材で構成するとともに、反座面側の領域を硬鋼材で構成し、両者を接合することにより得られる。また、各領域に互いに異なる熱処理を施すことによっても、得ることができる。同文献に開示されたナットによれば、締結時に座面側領域のねじ山を塑性変形させ、これにより、反座面側領域のねじ山に締結荷重を分散させ、その結果として、ボルトの疲労強度の向上が図れるとされている。
特許文献2には、非締結部材に近い座面側の領域の肉厚を、反座面側の領域の肉厚よりも薄く形成したナットが開示されている。その一例として、ナットの座面側領域では、ねじ穴に沿った高さ方向に直角な幅方向の断面形状が反座面側に向かって広がるように、逆円錐台形状となっている。また、ナットのねじ部には、座面側ほど広がるテーパが形成されている。同文献に開示されたナットによれば、第1ねじ山の剛性が低下し、これに対応するボルトのねじ谷底部において、発生する応力集中を緩和できるとされている。
特開2010−281440号公報 特開2005−188567号公報
しかし、前記特許文献1に開示されたナットでは、上述のとおり、座面側領域のねじ山が塑性変形する。このため、例えば、鉄道車両用のブレーキディスクを締結する際に、ナットの高さが座面側領域の塑性変形に伴って低くなる。すると、ボルトの軸力が低下し、ボルトに過大な応力変動が生じ、ボルトの疲労信頼性が低下するおそれがある。また、2種類の鋼材を溶接してナットを製造する場合、製造に要する手間とコストが大きくならざるを得ない。
また、前記特許文献2に開示されたナットでは、上述のとおり、座面側領域の肉厚が薄くなっている。本発明者がそのようなナットの一形態である後述の図4に示す六角ナットを用いて、詳細は後述するボルトの引張疲労試験を実施したところ、ナットの第1ねじ山から遠ざかった第3ねじ山や第4ねじ山に対応するボルトのねじ斜面部を起点にして、破断が起こっていることがわかった。このため、ボルトのねじ斜面部の応力を低減するという意味では、効果が期待できないと考えられる。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ボルトのねじ部の斜面部に生じる応力を低減させ、ボルトの疲労信頼性を向上させることができるナット、およびこのナットを用いたブレーキディスク付き鉄道車輪を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成するため、鉄道車両用のブレーキディスクと車輪とを締結するためのボルトとナットについて、そのうちのナットの形状に着目し、詳細は後述する数値解析を行った。
その結果、ナットのねじ穴に沿った方向を高さ方向とし、この高さ方向に直角な方向を幅方向としたとき、その幅方向の断面形状の最大径eと、ねじ部の谷径(呼び径)Dとの比「D/e」が大きいほど、ナットの座面側の領域が径方向に大きく変形するため、ボルトに発生する応力が、ナットの第1ねじ山に対応するねじ斜面部に集中せず、それ以外のねじ斜面部に分散することがわかった。さらに、比「D/e」が大き過ぎると、ナットの座面側領域の径方向への変形が著しくなるため、ナットの第1ねじ山と、これに対応するボルトのねじ部との螺合による接触が緩慢になり、場合によっては、第1ねじ山がボルトねじ部から離れ、その結果、第1ねじ山が締結荷重の分担に寄与しなくなることを突き止めた。要するに、ボルトのねじ斜面部に生じる応力を低減させつつ、ボルトの疲労信頼性を向上させるには、比「D/e」に適正な範囲があり、この範囲内のナットを用いるのが有効であることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は下記(I)のナット、および下記(II)のブレーキディスク付き鉄道車輪にある。
(I)ボルトに螺合して被締結部材を締結するナットであって、
ねじ穴に沿った高さ方向に直角な幅方向の断面形状の最大径eがねじ部の谷径Dとの関係で下記の(1)式を満足すること特徴とするナットである。
0.61<D/e<0.66 ・・・(1)
上記のナットは、前記断面形状が正六角形以上の正多角形であったり、前記断面形状が円形であったりすることが好ましい。
また、上記のナットは、締付け工具によって掴まれる掴み部が形成されており、この掴み部は、前記ねじ部のねじ山のうちの前記被締結部材側から数えて第3番目のねじ山を超えた領域に形成されていることが好ましい。
(II)上記(I)のナットとボルトによって鉄道車輪にブレーキディスクを締結したことを特徴とするブレーキディスク付き鉄道車輪である。
本発明のナット、およびこのナットを用いたブレーキディスク付き鉄道車輪によれば、ナットの断面形状を規定することにより、ボルトのねじ部の斜面部に生じる応力を低減させつつ、ボルトの疲労信頼性を向上させることができる。
ディスクブレーキの一例として鉄道車両用のディスクブレーキを構成するブレーキディスク付き車輪の構造を模式的に示す径方向に沿った断面図である。 互いに螺合したボルトとナットのねじ部をボルトの軸方向に沿った断面で拡大した模式図である。 ボルトの引張疲労試験の状態を示す模式図である。 六角ナットの形状を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ示す。 従来のナットを用いた場合のボルトの引張疲労試験結果を示す図である。 有限要素法による数値解析を行ったボルトおよびナットの軸対称モデルの一例を示す図であり、同図(a)は比「D/e」が0.57のナットを用いた場合のモデルAを、同図(b)は比「D/e」が0.64のナットを用いた場合のモデルBをそれぞれ示す。 図6に示す各モデルの数値解析結果としてナットの径方向変形量の分布を表す図であり、同図(a)はモデルAの結果を、同図(b)はモデルBの結果をそれぞれ示す。 図6に示す各モデルの数値解析結果としてボルトのねじ斜面部に生じる応力特異場の強さの分布を示す図である。 ナットの比「D/e」とボルトのねじ斜面部の応力特異場強さの最大値との関係を示す図である。 ナットの比「D/e」ごとにボルトのねじ斜面部に生じる応力特異場の強さの分布を示す図である。 掴み部が形成されたナットの一例を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ示す。 実施例の試験で本発明例として製作した十二角ナットの形状を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ示す。 本発明例のナットおよび従来のナットをそれぞれ用いた場合のボルトの引張疲労試験結果を示す図である。
以下に、本発明のナット、およびこれを用いたブレーキディスク付き鉄道車輪について、その実施形態を詳述する。
本発明者は、まず、従来のナットによる疲労特性を確認するため、鉄道車輪へのブレーキディスクの締結で慣用される六角ナットを用いてボルトの引張疲労試験を実施した。
図3は、ボルトの引張疲労試験の状態を示す模式図である。図4は、六角ナットの形状を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ示す。図5は、従来のナットを用いた場合のボルトの引張疲労試験結果を示す図である。
ここでのボルトの引張疲労試験は、以下のようにして行った。図3に示すように、ボルト2とナット1を螺合させ、ボルト2の頭部を可動の治具12によって保持するとともに、ナット1を固定の治具11によって保持し、この状態でボルト保持治具12をボルト2の軸方向に振動させ、これにより、ボルト2に繰り返しの引張荷重を与えた(図3中の白抜き矢印参照)。引張荷重は、平均荷重を186kNとし、その荷重振幅を種々変更した。
ボルト2および従来のナット1としては、呼び径がM26のものを用い、そのナット1には、JIS B 1181で規定された六角ナットを用いた。このため、そのナット1は、ねじ穴に沿った高さ方向に直角な幅方向の断面形状が正六角形であり、その断面形状の最大径eとねじ部の谷径(呼び径)Dとの比「D/e」が0.57であった(図4参照)。特に、そのナット1のねじ部には、座面側ほど広がるテーパ(テーパ率6/100)が形成されていた。要するに、ここでの従来のナット1は、前記特許文献2に開示されたナットに相当するものである。
このような従来のナットを用いた場合、その大半が、ボルトのねじ底部を起点にして破断が起こっていることがわかった。ただし、引張荷重を186kN±50kNとしたとき、すなわち荷重振幅が50kNのとき(図5中の丸枠で囲った点)、ボルトのねじ底部ではなく、ナットの第3ねじ山に対応するボルトのねじ斜面部を起点にして、破断が起こっていることがわかった。
次に、ブレーキディスク付き鉄道車輪のブレーキディスクに繰り返しブレーキを負荷する際にボルトに発生する応力変動を明らかにするため、ナットの形状寸法を種々変更し、有限要素法(FEM)による数値解析を行った。
図6は、有限要素法による数値解析を行ったボルトおよびナットの軸対称モデルの一例を示す図であり、同図(a)は比「D/e」が0.57のナットを用いた場合のモデルAを、同図(b)は比「D/e」が0.64のナットを用いた場合のモデルBをそれぞれ示す。同図では、左方にボルト2の頭部が配置される状態を示している。同図に示すモデルA、Bのいずれのボルト2およびナット1も、前記図5に示す疲労試験結果を導いたものと同じ、呼び径がM26のものを想定し、いずれのボルト2も同じ形状寸法とした。
ただし、いずれのナット1も、幅方向の断面形状を高さ方向の全域にわたって同じ円形としたが、その断面形状の最大径eを互いに異ならせた。すなわち、JIS B 1181で規定された六角ナットの最大径から算出した比「D/e」は、0.53〜0.61の範囲内であるところ、モデルAのナット1の比「D/e」は0.57であってそのJIS規格の範囲内であるのに対し、モデルBのナット1の比「D/e」は0.64であってそのJIS規格の範囲から外れるものとした。要するに、ここでのモデルAのナット1は、前記図3に示す慣用の六角ナットを想定したものである。
モデルA、Bの数値解析は、以下のような境界条件で行った。図6に示すように、ボルト2とナット1とを螺合させた状態で、ナット1の座面側の端面に、締結部材であるブレーキディスクの座面3dを接触させた。さらに、図6中にローラー支持を意味する2個丸付き三角印で示すように、ボルト2の中心軸を、この中心軸方向の移動を許容しつつ、この中心軸の直角方向の移動を拘束するとともに、ブレーキディスクの座面3dを拘束した。そして、ボルト2の頭部側の端に、繰り返しの引張荷重を与えた(図6中の白抜き矢印参照)。引張荷重は186kN±50kNとし、これを10サイクル繰り返し負荷した。この荷重は、前記図5に示す疲労試験結果で、ナットの第3ねじ山に対応するボルトのねじ斜面部を起点にして破断が起きたときの荷重である。
図7は、図6に示す各モデルの数値解析結果としてナットの径方向変形量の分布を表す図であり、同図(a)はモデルAの結果を、同図(b)はモデルBの結果をそれぞれ示す。同図では、上方にボルトの頭部が配置され、ナットのねじ山のうちで最も座面側に近い第1ねじ山が最も上に配置された状態を示している。また、同図では、最終サイクル(10回目のサイクル)の186kN+50kNの引張荷重を負荷した時点において、ナットの径方向の弾性ひずみの大きさを濃淡で表示している。
図7に示すように、モデルAとBでナットの変形量を比較すると、モデルB(比「D/e」=0.64)の方がモデルA(比「D/e」=0.57)よりもナットの座面側で大きく変形することがわかった。
図8は、図6に示す各モデルの数値解析結果としてボルトのねじ斜面部に生じる応力特異場の強さの分布を示す図である。図8に示すように、モデルAとBでナットの各ねじ山に対応するボルトのねじ斜面部の応力特異場強さを比較すると、ナットの座面側のねじ山(第1ねじ山〜第3ねじ山)に対応するボルトのねじ斜面部において、モデルB(比「D/e」=0.64)の方がモデルA(比「D/e」=0.57)よりも応力特異場強さが小さくなることがわかった。
ここで、上記の応力特異場の強さとは、応力特異場パラメータを用いた強度評価基準に基づき、ボルトのねじ斜面部とナットのねじ山との接触における特異場近傍の応力を、下記の(a)式で近似したときのΔHのことである。同式からわかるように、応力特異場の強さΔHは、ボルトのねじ斜面部の表面下1mmの応力に相当する。
Δσ(r)=ΔH/rλ ・・・(a)
ただし、上記(a)式中の各記号の意味は次のとおりである。
Δσ(r):ボルトのねじ斜面部の応力の変動分、
r:ボルトのねじ山斜面(特異点)からの距離、
ΔH:ボルトのねじ斜面部の応力特異場強さの変動分、および
λ:特異性の指数。
引き続き、上記モデルA、Bのナットを変形し、比「D/e」の値をさらに変更したナットのモデルで数値解析を行った。
図9は、ナットの比「D/e」とボルトのねじ斜面部の応力特異場強さの最大値との関係を示す図である。図10は、ナットの比「D/e」ごとにボルトのねじ斜面部に生じる応力特異場の強さの分布を示す図である。図9に示すように、比「D/e」が0.70であるナットの場合、ナットの第1ねじ山と、これに螺合するボルトのねじ部において、ナットの第1ねじ山がボルトねじ部から離れ、ナットとしての機能を果たせないことがわかった。このため、ナットの断面形状は、その比「D/e」が少なくとも0.70未満の範囲でなければならないと考えられる。
もっとも、図9に示すように、ナットの比「D/e」を上記モデルBの0.64からさらに大きくして0.70に近づけていくと、比「D/e」が0.66であるときを境に、応力特異場強さの最大値がほぼ一定となった。さらに、図10に示すように、比「D/e」が0.66を超えると、ナットの第1ねじ山に対応するボルトねじ斜面部の応力特異場強さが、第4ねじ山に対応するボルトねじ斜面部の応力特異場強さを下回った。ここで、上述したように、ボルトは、ナットの第3ねじ山や第4ねじ山に対応するねじ斜面部でも破断することが確認されているため、第1ねじ山に対応するボルトねじ斜面部の応力特異場強さの最大値が、第4ねじ山に対応するボルトねじ斜面部の応力特異場強さの最大値より小さくなると、締結荷重の分担が第2ねじ山以降にシフトし、第1ねじ山がねじ山としての機能を果たさなくなる。そのため、ナットの比「D/e」は、0.66未満とするのが望ましい。
また、比「D/e」の下限については、以下の方法より決定できる。まず、前記図5に示す疲労試験結果において、未破断(前記図5中の右向き矢印を付した点)となった荷重186kN±45kNにおける応力特異場の強さを、上記モデルAの応力特異場強さの最大値291MPa・mm、ボルトがねじ斜面部で破断した荷重振幅50kN、およびボルトが未破断となった荷重振幅45kNを用い、下記の(b)式から求める。
ΔH45=ΔH50×45/50 ・・・(b)
ただし、上記(a)式中の各記号の意味は次のとおりである。
ΔH45:荷重振幅45kNのときのボルトのねじ斜面部の応力特異場強さ、および
ΔH50:荷重振幅50kNのときのボルトのねじ斜面部の応力特異場強さ。
次に、前記図9に示す結果から、ナットの比「D/e」が0.66未満の範囲において、比「D/e」とボルトねじ斜面部の応力特異場強さの最大値ΔHmaxとの関係式(近似式)を導出する。この関係式は下記の(c)式で表される。
ΔHmax=−1136.4×(D/e)+949.8 ・・・(c)
そして、上記(c)式を用いて、ΔHmaxが上記(b)式のΔH45となるように比「D/e」を算出すると、その比「D/e」は約0.61となるため、この比「D/e」=0.61を下限と決定する。比「D/e」が0.61以下になると、ナットの座面側のねじ山に対応するボルトのねじ斜面部において、応力特異場強さの低減が不十分となる。
以上のことから、本発明は、ナットの断面形状の最大径eがねじ部の谷径Dとの関係で下記の(1)式を満足するように、ナットの断面形状を定めたものであり、これにより、ボルトのねじ斜面部に生じる応力を低減させつつ、ボルトの疲労信頼性を向上させることができる。
0.61<D/e<0.66 ・・・(1)
ここで、上記の数値解析では、ナットの断面形状は円形であって、ナットの高さ方向の全域にわたって同じ寸法形状としているが、円形に限らず、その全部の領域、または座面側を除く一部の領域を正六角形以上の正多角形に変更することができる。正六角形以上の正多角形であれば、円形とほぼ同様の数値解析結果が得られ、特に、正十二角形であれば、円形の数値解析結果と遜色はない。
もっとも、ナットの座面側を除く領域、すなわち反座面側の領域の断面形状が円形であったり、正六角形を超える正多角形であったりすると、トルクレンチなどの締付け工具によって掴むことができないため、締結が困難になり得る。この場合、ナットの反座面側の領域に、締付け工具によって掴まれる掴み部を形成すればよい。掴み部としては、例えば、ナットの反座面側の断面形状を正六角形に形成するのが実用的である。この掴み部は、ナットのねじ部のねじ山のうちの第3ねじ山を超えた領域に形成することが好ましい。前記図8、図10に示す応力特異場強さの分布において、第3ねじ山を超えた領域では、比「D/e」を0.61超え0.66未満の範囲で変更しても、その応力特異場強さがほとんど変わらないため、その領域はナットの断面形状の影響を受けないと考えられるからである。
図11は、掴み部が形成されたナットの一例を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ示す。同図に示すナット1は、座面側領域の断面形状が円形であり、第4ねじ山を超えた領域の断面形状が、掴み部となるように正六角形となっている。
本発明の効果を確認するため、本発明例として図12に示す十二角ナットを製作し、このナットを用いて、前記図3に示すものと同様の条件でボルトの引張疲労試験を実施した。引張荷重は、平均荷重を186kNとし、その荷重振幅を55kN、60kNおよび65kNの3水準に変更した。いずれの荷重の周波数も7Hzとした。その疲労試験結果を、前記図5に示す疲労試験結果と比較した。
図12は、実施例の試験で本発明例として製作した十二角ナットの形状を模式的に示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ示す。本発明例のナット1は、比「D/e」が0.64で本発明の規定範囲を満足するものであって、前記図6(b)に示すモデルBのナットに相当する。なお、比較のために、前記図5に示す疲労試験結果を導いた従来のナット(慣用の六角ナット)は、上述のとおり、比「D/e」が0.57で本発明の規定範囲を下回るものであって、前記図6(a)に示すモデルAのナットに相当する。
図13は、本発明例のナットおよび従来のナットをそれぞれ用いた場合のボルトの引張疲労試験結果を示す図である。同図に示すように、本発明例のナットを用いた場合、従来のナットを用いた場合と比較して、疲労限度が荷重振幅で一割程度向上した。さらに、本発明例のナットを用いた場合、破断したものは全て、ボルトのねじ底部を起点にして破断が起こっていた。このことから、本発明例のナットを用いることで、ボルトのねじ斜面部の疲労強度が向上することがわかった。
本発明のナットは、ボルトに螺合して被締結部材を締結するのに有用であり、特に、ブレーキディスク付き鉄道車輪における車輪へのブレーキディスクの締結に有効に利用できる。
1:ナット、 2:ボルト、
3:ブレーキディスク、 3a:表面、 3b:フィン部、
3c:ボルト穴、 3d:ブレーキディスクの座面、
4:車輪、 4a:ボス部、 4b:リム部、 4c:板部、
4d:貫通穴、 5:座金、
12:ボルト保持治具、 11:ナット保持治具

Claims (5)

  1. ボルトに螺合して被締結部材を締結するナットであって、
    ねじ穴に沿った高さ方向に直角な幅方向の断面形状の最大径eがねじ部の谷径Dとの関係で下記の(1)式を満足すること特徴とするナット。
    0.61<D/e<0.66 ・・・(1)
  2. 前記断面形状が正六角形以上の正多角形であること特徴とする請求項1に記載のナット。
  3. 前記断面形状が円形であること特徴とする請求項1に記載のナット。
  4. 締付け工具によって掴まれる掴み部が形成されており、この掴み部は、前記ねじ部のねじ山のうちの前記被締結部材側から数えて第3番目のねじ山を超えた領域に形成されていること特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のナット。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のナットとボルトによって鉄道車輪にブレーキディスクを締結したことを特徴とするブレーキディスク付き鉄道車輪。
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