JP4360321B2 - 鉄道車両用ブレーキディスクとその締結構造 - Google Patents

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Description

本発明は、主として鉄道車両用ブレーキディスクについて、車輪との締結に使用されるボルトの強度信頼性に優れ、長期間の使用に耐え得ることが可能なブレーキディスクとその締結構造に関するものである。
鉄道車両や自動車及び自動二輪車等の陸上輸送機械の制動装置として、ブロックブレーキ、ドラムブレーキ、ディスクブレーキなどが使用されている。そして、近年では、車両の高速化や大型化に伴い、ディスクブレーキが多用されるようになってきている。
ディスクブレーキとは、ブレーキディスクとブレーキライニングとの摩擦により制動力を得る装置であり、通常、ボルトにより車軸または車輪に取り付けたドーナツ形の円盤状ディスクの摺動面に、ブレーキライニングを押し付けることにより制動力を得、車軸または車輪の回転を制動して車両の速度を制御する。この摺動面を有する円盤状のディスクをブレーキディスクと称する。
このブレーキディスクの中で、鉄道車両用ブレーキディスクには、側ディスクと軸マウントディスクがある。このうち側ディスクとは、車輪の側面に締結されるブレーキディスクであり、軸マウントディスクとは、車軸に締結されるブレーキディスクである。以下、本明細書において、ブレーキディスクと言うときは、側ディスクと軸マウントディスクの両者を指すものとする。
図15は従来型の鉄道車両用側ディスクの形状を示し、(a)はブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)は断面を示す半径方向−軸方向断面図である。同図(a)、(b)に示すように、一般にブレーキディスク1は、片側に摺動面2aを備える摺動部2と、車輪に締結するための締結孔3aを備える締結部3とから構成されている。
図16は従来型の鉄道車両用ブレーキディスクが車輪に取り付けられた状態を模式的に示す半径方向−軸方向断面図である。同図に示すように、ブレーキディスク1は、車輪4の両側面に締結部材であるボルト5とナット(図示せず)によって締結され、一体的に回転するように取付けられている。
そして、ブレーキディスク1の摺動面2aに対向する位置には、摺動面方向に移動可能なブレーキライニング6がそれぞれ取り付けられ、制動時には、ブレーキライニング6がブレーキディスク1側に移動して車輪4の両側面から強く狭圧し、この摩擦力によって車輪4を介して車軸の回転を制動して車両を停止させる。
ところで、新幹線等の高速鉄道車両では、ブレーキディスクの回転速度や慣性力が非常に大きいので、制動中のブレーキディスクの温度上昇は著しく大きくなる。そのため、ブレーキディスクの熱変形がしばしば問題となるが、この熱変形を抑制させる技術として、特許文献1では、予変形を与えてブレーキディスクを締結する技術が提案されている。
実公平5−33789号公報
この特許文献1で提案された技術は、図17に示すように、ブレーキディスク1の摺動面2aと、締結孔3aと接する摺動面側表面3bとフィンが設けられた反摺動面側裏面3cの3つの面2a,3b,3cが、ブレーキディスク1の半径方向に対し、摺動面2a側を上とした時にブレーキディスク1の内周側から外周側にかけて高さが下がるように、図中のθが0.5〜3.5°となるように傾斜させたものである。
そして、このブレーキディスク1をボルトで車輪に締結することによって、摺動面2aと、締結部3の表面3aおよび裏面3cが、予め付与していた傾斜θがなくなる方向に、すなわちブレーキディスク1の半径方向と平行になるように、ブレーキディスク1が予変形を受ける。
この特許文献1で提案された技術によって、予変形が与えられたブレーキディスクでは、繰返し制動による熱変形が抑制される効果がある。このため、現在、新幹線等で使用されている鍛鋼製のブレーキディスクでは、この特許文献1で提案された技術が広く採用されている。
ところで、近年、車両の高速化にともなってブレーキ負荷が増大し、ブレーキディスクと車輪との締結に用いられるボルトの疲労損傷が問題となっている。このことから、ボルトを含むブレーキディスク締結部の疲労信頼性を向上させることが課題となっている。
この点、特許文献1で提案されたブレーキディスクは、予変形のないブレーキディスクと比較して、ブレーキライニングの押付けに起因してボルトに発生する繰返し応力が低くなるので、ブレーキディスク締結部の疲労信頼性を確保するのに役立っている。
しかしながら、最近の高速化にともなうブレーキ負荷の増大に対応するために、ブレーキディスク締結部の疲労信頼性をさらに向上させることが望まれている。
本発明が解決しようとする問題点は、最近の車両の高速化にともなうブレーキ負荷の増大に対応するためには、ブレーキディスク締結部の疲労信頼性のさらなる向上が必要であるという点である。
発明者らは、ブレーキディスクの締結に使用されるボルトについて、使用時に生じる様々な負荷状態を想定して疲労試験を行い、ボルトの疲労特性について研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1)ボルトの疲労寿命は、締結孔に施した面取りの縁部(以下、「面取り縁」と言う。)とボルトとの芯ずれが小さく、面取り縁の直径が大きいほど、ボルトの疲労寿命は長くなる。
(2)予変形を付与したブレーキディスクの場合、締結孔の面取り縁とボルトの芯ずれが大きくなるが、この芯ずれを小さくするには、締結孔の面取り中心位置を、締結孔の中心位置より半径方向の外周側に位置させることが有効である。
(3)制動中におけるボルト位置のずれによる、締結孔の面取り縁とボルトの芯ずれを小さくするには、ボルトの軸部と締結孔内面との間に弾性体を挿入することが有効である。
本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、以上の知見に基づいてなされたものであり、
ブレーキディスク締結部の疲労信頼性のさらなる向上を図るべく、締結孔の面取り縁とボルトとの芯ずれを小さくして、ボルトの疲労寿命を向上させるために、
摺動部の内周側に締結部を備えたブレーキディスクにおいて、
前記摺動部の摺動面と、前記締結部の摺動面側表面と反摺動面側裏面が、半径方向内側から半径方向外側に向かって、0.5〜3.5°の傾斜角で、反摺動面側に傾斜していると共に、
前記締結部には、ブレーキディスクと同心円状に、少なくとも前記摺動面側表面に面取りが施された複数の締結孔が設けられ、
前記締結孔に施された摺動面側表面の面取りの中心位置直径と、締結孔の中心位置直径との差δが、前記傾斜角をθ、締結孔に施す面取り角をψ、締結孔の内径をd、締結孔に施す面取り量の平均値をCとした場合に、
0.5d・tanθ’・tan(ψ/2)〜1.5d・tanθ’・tan(ψ/2)
但し、θ’=tan−1((d・tanθ+2x・tan(ψ/2)・tanθ)/d)
x=C・cos(ψ/2)
の範囲にあることを最も主要な特徴としている。ここで面取り量の平均値Cは、より具体的には、ブレーキディスク半径方向の内周側と外周側の面取り量の平均値をさすものとする。
また、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造は、
前記の本発明のブレーキディスクをボルトとナットで車輪に締結するにあたり、
前記ボルトの軸部と前記締結孔との間に、ブレーキディスク、車輪およびボルト、ナットのいずれよりもヤング率の低い弾性体または粘弾性体を挿入したことを最も主要な特徴としている。
本発明では、鉄道車両用ブレーキディスクに関して、締結孔の面取り縁とボルトの芯ずれを小さくすることで、ブレーキディスク締結部の疲労信頼性を向上させることができるので、新幹線等の車両の高速化にともなって制動負荷が増大しても、ブレーキディスク締結部の疲労損傷による不具合を防止することができるという利点がある。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図14を用いて説明する。
A)ボルトの疲労寿命と締結孔の面取り縁との関係について
発明者らは、研究の初期段階において、その中心部に面取りの無いボルト孔9aを設けた、縦断面がコ字状の2個で対をなす治具9の、一方のボルト孔9aからボルト5の軸部5aを貫通させ、他方のボルト孔9aを貫通した軸部5aに平座金8を介してナット7を締め付けて図2に示すようにセットし、疲労試験を行った。試験に供したボルト5のねじ部5bの外径は26mm、ねじピッチは2mmで、疲労試験の条件は、平均荷重が170kN、荷重振幅は50kN、周波数は10Hzである。
その結果、ボルト5が破断するまでの繰返し数、すなわち疲労寿命は、極めてばらつきが大きいことが判明した。また、ボルト5は全てねじ部5bのナット7とのかかりに近い側のねじ底から破断していた。破断したボルト5について、破面上の起点Bの位置、平座金8と治具9との接触状況、平座金8とナット7との接触状況を調査した結果、破面上の起点Bの位置は、図3(a)に示すように、ボルト5と治具9のボルト孔9aとの芯ずれが大きく最小すき間量δ1が小さい場合、ボルト5とボルト孔9aの内周が近い側に分布することが分かった。なお、本発明において、最小すき間量δ1とは、図3(b)に示すように、ボルト5のねじ部5bの外周と、ボルト孔9aの内周面とのすき間量の最小値をいう。
そして、ボルト5の中心とボルト孔9aの中心との芯ずれ量δ2と疲労寿命との関係を整理すると、図4に示すように、芯ずれ量δ2が大きいほど、疲労寿命が短くなる傾向が得られた。以上より、ボルト5とボルト孔9aの内周が近づくほど、疲労強度の観点では厳しくなる傾向となっていると考えられる。なお、芯ずれ量δ2は、図4(b)に示すように、ボルト孔9aの内径とボルト5のねじ部5bの外径との差の半分の値から、前記最小すき間量δ1を引いた値に相当する。
前記結果が得られた理由を考察するため、ボルト5のねじ部5b、ナット7、平座金8をモデル化して有限要素法による応力解析を行った。疲労破壊の起点Bは、ボルト5のねじ底R上であるため、当該ねじ底R部分の発生応力を精度良く評価するためには、相当細かく要素を分割する必要がある。ここでは、解析能力に起因した要素数の制約から、軸対称要素によるモデルを作成した。そして、図5に示すように、平座金8の拘束位置を、内周寄り、中間、外周寄りに変化させて、ボルト5に軸力を与える解析を行った。
このモデルで、平座金8の拘束位置は、疲労試験時には、縦断面がコ字状の治具9のボルト孔9aを設けた内側面と接触する面に相当し、この拘束位置の内周側端部が、ボルト孔縁に相当する。また、上記と同じ平座金8の拘束位置は、ブレーキディスク1を締結して使用されている状態では、ブレーキディスク1における締結部3の表面3bと接触する面に相当し、この拘束位置の内周側端部が、ブレーキディスク1の締結孔3aの面取り縁3aaに相当する。したがって、以下の説明では、疲労試験時のボルト孔縁と、ブレーキディスク締結時の締結孔面取り縁とは、ボルトの疲労強度への影響という意味では、物理的に同じとみなしている。
その結果、図6に示すように、前記拘束位置が外周寄りになるほど、ボルト5のねじ底Rの発生応力が低くなることが分かった。これは、解析で得られた50倍の変形を示した図7のように、拘束位置が外周寄りになるほど((b)図参照)、ナット7が開く方向に変形していることから、図8に模式的に示すように、ボルト5のかかりの一山目に集中していた荷重が、二山目以降にシフトして均一化され、その結果、一山目のねじ底の最大応力が低減されたためであると考えられる。
上記解析では、軸対称要素を用いているため、設定した拘束位置は同一円周上で一定であり、ボルト5とボルト孔9aとが芯ずれして、拘束位置が円周方向位置によって変化する場合と厳密には異なる。そこで、上記解析を忠実に再現した条件で疲労試験を行い、その結果と上記芯ずれした場合の疲労試験結果とを比較した。
疲労試験治具9のボルト孔9aの内径を、前記解析で使用したモデルの拘束位置と同じ3種類とし、ボルト5とボルト孔9aが芯ずれを起こさないようにして、疲労試験を行った。そして、得られた疲労寿命を、ボルト5のねじ部5bの外周と、ボルト孔9aの内周との最小すき間量δ1で整理し、図9を得た。
これより、前記最小すき間量δ1が大きいほど、疲労寿命が長くなることが分かる。図9中には、既に図4で示したデータについても、ボルト5の外周とボルト孔9aの内周との最小すき間量で再整理してプロットしている。
これより、ボルト孔9aの内径を変化させた場合と、ボルト孔9aの内径が一定で芯ずれした場合で、両者はほぼ一致していることが分かる。以上より、ボルト孔9aの内径変化による疲労寿命の変化、芯ずれによる疲労寿命の低下という結果は、どちらもボルト5の外周とボルト孔9aの内周が近づくと、ボルト5のねじ底Rの発生応力が高くなるためであると結論付けられる。
B)ブレーキディスク締結孔の面取り形状について
発明者らは、前述のA)で得られた新たな知見を、前記特許文献1の予変形を付与したブレーキディスクの締結部の疲労信頼性向上に活用することを検討した。
予変形を付与したブレーキディスク1では、締結部3の表面3bに0.5〜3.5度の傾斜が与えられているので、締結孔3aの面取り部分は、図10(b)に示すように、ブレーキディスク1の外周側より内周側の方で大きくなる。このため、図11に示すように、ボルト5による締結後、ボルト5の軸中心と、締結孔3aの面取り縁3aaの中心とが芯ずれを起こしている。
前述のように、この芯ずれの解消と、締結孔3aの面取り量の拡大ができれば、ボルト5の疲労寿命が延び、ブレーキディスク1の締結部3の疲労信頼性が向上する。ただし、締結孔3aの面取り量の拡大は、平座金8とブレーキディスク1との接触面積が減少することにつながるので、締結時の初期に芯ずれがなくても、使用中にボルト5の位置がずれ、新たな芯ずれが生じるおそれがある。
そこで、本発明では、平座金8とブレーキディスク1との接触面積を減少させないことを前提に、締結時初期の芯ずれを解消することを検討した。その結果、図12に示すように、締結孔3aの面取りの中心位置直径D2、すなわち各締結孔3aの面取りの中心位置を結んだ円の直径(ブレーキディスク1の中心と締結孔3aの面取りの中心位置との2倍に相当する)を、締結孔3aの中心位置直径D1、すなわち各締結孔3aの中心位置を結んだ円の直径(ブレーキディスク1の中心と締結孔3aの中心位置との2倍に相当する)に対し、δだけ大きくすることが、芯ずれの解消に有効であることが分かった。
図12は、締結孔3aの面取り中心位置をずらす前(破線で示した図)と、ずらした後(実線で示した図)の形状を示したものである。
図12中のy1とy3は、面取りの中心をδ/2(直径でδ)ずらしたことから、y1=y3=δ/2で表される。
また、図12中のy2は、y1と、面取りの中心をずらす前の形状で面取りの中心(=締結孔の中心)に対し対称位置であるため、y2=y1=δ/2で表される。
以上より、y2+y3=δが得られる。
また、このy2+y3に相当する部分は、締結孔3aの面取り角をψ、締結孔3aの内径をdとした場合、図13より、図中のθ’を用いて幾何学的に、y2+y3=d・tanθ’・tan(ψ/2)で表される。
したがって、締結孔3aの面取りの中心位置直径D2の、締結孔3aの中心位置直径D1に対する拡大量δは、d・tanθ’・tan(ψ/2)とすれば良い。
ここで、θ’は、図13に基づき、予変形による傾斜角をθ、締結孔3aの面取り量(ブレーキディスク半径方向の内周側と外周側の平均)をCとした場合、下記の手順で導出される。まず、図13中で、GN=C・cos(ψ/2)=xより、EG=x・tan(ψ/2)となる。また、∠GEFはθであるので、FG=x・tan(ψ/2)・tanθとなる。そして、EKとFJは平行であるため、FG=JKで、∠JFI=θとなる。従って、IJ=FJ・tanθ=d・tanθとなる。また、HI=x・tan(ψ/2)・tanθである。
以上より、HK=HI+IJ+JKであるから、HK=d・tanθ+2x・tan(ψ/2)・tanθとなる。
図13において、LMとGKは平行であるため、GL=KMで、また、GN=HM=xより、LN=HKとなる。
ここで、LN=d・tanθ’より、前記HKを得る式から、d・tanθ’=d・tanθ+2x・tan(ψ/2)・tanθとなる。
以上より、θ’は、tan−1((d・tanθ+2x・tan(ψ/2)・tanθ)/d)となる。
図14に、締結孔3aの面取りの中心位置直径D2の、締結孔3aの中心位置直径D1に対する拡大量δと、ボルト5の中心と締結孔3aの面取り縁3aaの中心との芯ずれ量δ2との関係を示す。これより、前記の拡大量δを、0.5d・tanθ’・tan(ψ/2)〜1.5d・tanθ’・tan(ψ/2)の範囲とすると、芯ずれ量δ2は、締結孔3aの面取りと締結孔3aが同心である場合の初期芯ずれ量に対し、50%以上低減されることが分かる。
この芯ずれ抑制による効果として、図4より、例えば芯ずれ量δ2を2mmから1mmに変更すれば、寿命にして約2倍に増加することが期待される。
C)ボルトの軸部と締結孔との隙間への弾性体の挿入について
ボルト5の軸部5aの直径は、締結孔3aの内径より0.5mmから5mm小さく、制動負荷の繰返しによって、ブレーキディスク1が熱膨張・熱収縮を繰返すために、ボルト位置の締結孔位置に対するずれが生じ、芯ずれによるボルト5の疲労寿命低下を引き起すおそれがあった。
発明者らは、前記制動負荷の繰返しに起因するボルト位置変化による芯ずれを解消することについて検討した。その結果、ボルト5の軸部5aと締結孔3aとの隙間へ、ブレーキディスク1、車輪4、およびボルト5より、ヤング率の低い弾性体または粘弾性体を挿入することが、制動負荷の繰返しに起因するボルト位置変化による芯ずれの解消に有効であることが分かった。
なお、挿入する弾性体または粘弾性体のヤング率を、ブレーキディスク1、車輪4、およびボルト5より低く設定したのは、もしヤング率が同等以上であれば、ボルト5の軸部5aの接触部分にフレッティング疲労による損傷が生じるおそれがあり、これを避けるためである。
本発明のブレーキディスク1は以上の検討に基づいてなされたものであり、図1に示したように、摺動部2の摺動面2aと、締結部3の表面3bと裏面3cが、半径方向内側から半径方向外側に向かって、0.5〜3.5°の傾斜角θで、反摺動面側に傾斜し、締結部3に設けられた複数の締結孔3aの面取りの中心位置直径D2と、締結孔3aの中心位置直径D1との差δが、0.5d・tanθ’・tan(ψ/2)〜1.5d・tanθ’・tan(ψ/2)の範囲にある構成である。
また、本発明のブレーキディスクの締結構造は、図1(d)に示したように、本発明のブレーキディスク1をボルト5とナットで車輪4に締結する際に、ボルト5の軸部5aと締結孔3aとの隙間へ、弾性体または粘弾性体10を挿入した構成である。この弾性体または粘弾性体10の形状は、図1では、例として断面が円形のOリング状の形状を示し、車輪4およびブレーキディスク1の両方の締結孔3aに挿入しているが、ボルト5とボルト孔内周面との金属接触を防ぐことができれば、どのような形状でも良く、車輪4またはブレーキディスク1の片方の締結孔3aのみに挿入しても良い。
また、弾性体または粘弾性体10は、例えば銅、アルミニウム合金、樹脂等のシート状のものであっても良いし、樹脂をボルト5または締結孔3a、あるいは、ボルト5と締結孔3aの内周にコーティングしたものでも良い。
なお、本発明のブレーキディスク1において、前記傾斜角θを0.5〜3.5°と規定したのは、特許文献1に記載のように、0.5°未満では、片面入熱による変形が生じて効果がないため、3.5°を超えると、車輪への取り付け時にボルト5に作用する応力が大きくなりすぎるからである。
以下、本発明の実施例について説明する。
下記表1に示す形状・構成のブレーキディスクを以下のようにして製作した。
表1中の本発明例A〜G、比較例H〜Lにおいて、ブレーキディスクは、低合金鋼の鋼塊を熱間鍛造し、熱処理した後、機械加工して製作したものである。ボルトは、低合金鋼の圧延材を冷間鍛造し、熱処理した後、機械加工し、ねじ部を転造して製作したものである。車輪は、高炭素鋼の鋼塊を熱間鍛造し、熱間圧延した後、熱処理し、機械加工して製作したものである。この製作方法は、全て現在使用されているブレーキディスク、ボルト、車輪の製作方法と同じである。
Figure 0004360321
表1中の本発明例A〜Cは、予変形の角度θを変化させたものである。また、表1中の本発明例D,Eは締結孔面取りの中心位置直径の、ボルト孔中心位置直径に対する拡大量δを変化させたものである。さらに、表1中の本発明例F,Gは、ボルト軸部と締結孔との隙間に弾性体を挿入し、そのヤング率を変化させたものである。
一方、表1中の比較例H〜Lは、全て、本発明に対し、予変形の角度θ、締結孔面取りの中心位置直径の、ボルト孔中心位置直径に対する拡大量δ、ボルト軸部と締結孔との隙間に挿入した弾性体のヤング率のいずれかが、本発明の範囲から逸脱するものである。
前記したブレーキディスクとその車輪、ボルト、ナット、平座金からなる締結構造について、締結部の強度評価のため、実際に高速回転させて摺動面にブレーキライニングを押し当てて繰返し制動させるブレーキ耐久試験を行った。その結果を、下記表2に示す。なお、表2には、締結孔面取りの中心位置直径の、ボルト孔中心位置直径に対する拡大量δの下限値および上限値も併せて示した。
Figure 0004360321
しかしながら、ボルトの初期締付け軸力を150kNとして、ブレーキ初速を300km/hとした制動を100回繰返しても、ボルトが破断するものはなかった。このため、ブレーキ耐久試験後、ボルトを取り外し、図2に示す要領で疲労試験を行った。この時、ボルトとナットとのかみ合わせの位置は、ブレーキ耐久試験時の位置と同じになるようにした。また、疲労試験時には、ボルトの中心と治具のボルト孔との中心で芯ずれが起こらないようにし、弾性体または粘弾性体を挿入したものは、疲労試験時にも弾性体または粘弾性体とボルト軸部が接触し続けるようにした。
まず、条件1として、平均荷重170kN、荷重振幅40kN、周波数10Hz、室温、大気中で試験したところ、表2に示すように、本発明例では2×106 回の繰返し数に対し、全て未破断であった。一方、比較例では全て破断した。破断した比較例の内、比較例L以外は全てねじ部で破断し、比較例Lのみが軸部の弾性体または粘弾性体との接触部にて破断していた。
さらに、条件1で未破断であった本発明例について、条件2として、平均荷重170kN、荷重振幅45kN、周波数10Hz、室温、大気中で疲労試験した。その結果、表2に示すように、本発明例FおよびGは、2×106 回の繰返し数に対し、未破断であったのに対し、本発明例A〜Eはねじ部にて破断した。
以下に、前記実施例の試験結果から得られた理由について説明する。
a)条件1の疲労試験による不具合について
比較例Hは、ブレーキディスクの予変形の傾斜角θが0°、すなわち予変形が付与されていなかったため、制動試験中にブレーキディスクが変形し、ライニングの押し付けに起因してボルトに発生する繰返し応力が大きくなり、制動試験中の疲労損傷の蓄積が大きくなったものと考えられる。
比較例Iは、ブレーキディスクの予変形の傾斜角θが4°と大きすぎたため、締結時にブレーキディスクの予変形をつぶすために、ボルトに発生する曲げ応力が著大となり、ボルトの疲労強度が低下し、制動試験中の疲労損傷の蓄積が大きくなったものと考えられる。
比較例Jは、面取り中心位置直径の、締結孔中心位置直径に対する拡大量δが小さすぎたため、ボルトと締結孔面取り縁との芯ずれが大きくなり、ボルトねじ部に発生する応力が増大し、制動試験中の疲労損傷の増大を引き起こしたものと考えられる。
比較例Kは、比較例Jとは逆に、面取り中心位置直径の、ボルト孔中心位置直径に対する拡大量δが大きすぎたため、ボルトと締結孔面取り縁との芯ずれが大きくなり、ボルトねじ部に発生する応力が増大し、制動試験中の疲労損傷の増大を引き起こしたものと考えられる。
b)条件2の疲労試験による不具合について
本発明例A〜Eは、締結孔とボルト軸部との間に、弾性体または粘弾性体を挿入していなかったために、制動試験中にボルト位置がずれ、ボルトと締結孔面取り縁との芯ずれが生じ、ボルトねじ部に発生する応力が増大し、制動試験中に疲労損傷の増大を引き起こしたものと考えられる。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
以上の本発明は、鉄道車両用のブレーキディスクに限らず、自動車や自動二輪車等のブレーキディスクであっても適用できる。
本発明を構成するブレーキディスクおよびその締結構造を示した図で、(a)は鉄道車両用ブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)は鉄道車両用ブレーキディスクの断面の1/2を示す半径方向−軸方向断面図、(c)は(a)図のB部すなわち締結孔の面取り部分の拡大図、(d)はブレーキディスクにボルトを装着した時の締結孔付近の構造を示す図である。 ボルトの疲労試験状況を示す模式図である。 (a)は疲労試験したボルトの破面上の起点位置の分布を示す図、(b)はボルトとボルト孔との芯ずれと破壊起点の周方向位置を説明する図である。 (a)はボルトとボルト孔との芯ずれ量と、疲労試験の破断繰返し数との関係を示す図、(b)は芯ずれ量の定義を説明する図である。 ボルトの有限要素法の解析モデルおよび条件を示す図である。 ボルトの有限要素法による解析結果として得られたねじ底最大応力を示した図である。 ボルトの有限要素法による解析結果として得られたナットの変形図を示した図で、(a)は拘束範囲が内周寄りの場合、(b)は拘束範囲が外周寄りの場合を示した図である。 平座金の負荷座面の拘束範囲を変化させた時に、各ねじ山が負担する荷重の変化を模式的に示した図である。 ボルトねじ部外周−ボルト孔外周間の最小すき間量と疲労試験の破断繰返し数との関係を示す図である。 (a)は予変形を付与した従来型ブレーキディスクの断面の1/2を示す半径方向−軸方向断面図、(b)は(a)図のB部拡大図である。 予変形を付与した従来型ブレーキディスクにボルトを装着した時の締結孔付近の構造を示す図で、(a)は正面図、(b)は面取り縁の中心とボルトの軸中心とのずれを説明する平面図である。 締結孔面取り中心をずらす前後のブレーキディスク締結孔付近の構造を示す図である。 (a)は締結孔と締結孔面取り縁との芯ずれを解消したブレーキディスク締結孔付近の構造を示す図、(b)は(a)の要部を拡大して示す概略図である。 締結孔面取り縁とボルトとの芯ずれ量と、面取り中心位置直径の締結孔中心位置直径に対する拡大量との関係を示した図である。 従来型の鉄道車両用ブレーキディスクの形状を示す図であり、(a)は鉄道車両用ブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)は鉄道車両用ブレーキディスクの断面の1/2を示す半径方向−軸方向断面図である。 従来型の鉄道車両用ブレーキディスクが車輪と締結された様子を模式的に表した半径方向−軸方向断面図である。 特許文献1で提案された鉄道車両用ブレーキディスクの断面の1/2を示す半径方向−軸方向断面図である。
符号の説明
1 ブレーキディスク
2 摺動部
2a 摺動面
3 締結部
3a 締結孔
3aa 面取り縁
3b 表面
3c 裏面
4 車輪
5 ボルト
5a 軸部
5b ねじ部
6 ブレーキライニング
7 ナット
8 平座金
9 治具
9a ボルト孔
10 弾性体または粘弾性体

Claims (2)

  1. 摺動部の内周側に締結部を備えたブレーキディスクにおいて、
    前記摺動部の摺動面と、前記締結部の摺動面側表面と反摺動面側裏面が、半径方向内側から半径方向外側に向かって、0.5〜3.5°の傾斜角で、反摺動面側に傾斜していると共に、
    前記締結部には、ブレーキディスクと同心円状に、少なくとも前記摺動面側表面に面取りが施された複数の締結孔が設けられ、
    前記締結孔に施された摺動面側表面の面取りの中心位置直径と、締結孔の中心位置直径との差δが、前記傾斜角をθ、締結孔に施す面取り角をψ、締結孔の内径をd、締結孔に施す面取り量の平均値をCとした場合に、
    0.5d・tanθ’・tan(ψ/2)〜1.5d・tanθ’・tan(ψ/2)
    但し、θ’=tan−1((d・tanθ+2x・tan(ψ/2)・tanθ)/d)
    x=C・cos(ψ/2)
    の範囲にあることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
  2. 請求項1に記載のブレーキディスクをボルトとナットで車輪に締結するにあたり、
    前記ボルトの軸部と前記締結孔との間に、ブレーキディスク、車輪およびボルト、ナットのいずれよりもヤング率の低い弾性体または粘弾性体を挿入したことを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造。
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