JP5866572B1 - ホイールナットセットの取り付け方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ホイールナットは大きな温度変化・荷重変化にあっても緩むことなく、しかも、弾性限界を越えることなく、頻繁に車軸のハブボルト2に取り付け・取り外しをしても変形しないもので、そのホイールナットは軽量、低価格で、取り付け・取り外し作業が安全で労力を要しないことである。【解決手段】ベースナット20と、トルクナット40とから成り、ベースナット20のハブ側はホイール体押圧部6を有し、その反対面には倍力締結凸部25を具備しており、トルクナット40の側端は六角対角距離を略直径とするボックススパナ止めフランジがあり、ハブ側の面は倍力締結凹部45を有し、その反対面は平面を具備していて、ハブボルト2に対して、始めにベースナット20で所望する軸力PTを発生させた後、トルクナット40を締めてベースナット20をハブボルト2に固着して運用実施することで主要な解決ができる。【選択図】図1

Description

本発明は自動車などの車輪を装着したり交換したりするとき、車軸に取り付け・取り外しするホイールナットの取り付け方法に関する。
ホイールナットは緩むと自動車の走行の安全を阻害するおそれがあり、定期点検等で頻繁に緩み状態の監視を要する重要な部品である。ホイールナットの緩み止めには専らナットをトルクレンチを用いて指定トルクまで確実に締めて軸力を指定量にすることと、均等に締める整備法が普及しているが世界的に事故は無くなっていない。
(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
一方、ナットの構造は数多くが提案され実用化されているが、いずれもボルトの軸力で摩擦力を得て緩みを止めようとするものであった。1985年になるとボルトの曲げ力を利用する物が出て緩みは飛躍的に改善された。
(例えば、特許文献3、非特許文献2参照)。
2014年になって、ボルトの曲げ力は力学的に解析せれ、塑性加工の急速な進歩を取り入れた多段フォーマーによる冷間圧造の発展に伴って構造も変化し、品質と生産能率が画期的なものになってきた。
(例えば、特許文献4、特許文献5、非特許文献1参照)。
本発明は特許文献4で完成した技術を自動車固有の力学環境を取り入れたホイールナットセットに応用したものである。力学環境とはブレーキ装置の脇に配置されるホイールナットは大きな温度変化に呼応して、しかも大量生産を可能に設計したものを指す。
また、ホイールナットのマーケットは新車の販売台数から推定される数量のほかにマニュアルな需要がある。因みに、2014年世界の乗用車の年間販売台数は8500万台であるから、それだけでホイールナットの数は16億個に及ぶ。車種は数え切れないが、ハブボルト2のサイズはほとんど全てが呼び径dで12mmに統一されている。
特許第3981827号公報 特開平6−10935号公報 実公昭50−36123号公報 特許第4087386号公報 特許第5540275号公報
日本機械会学会著、「ヘルツの公式」機械工学便覧A4−109 若林克彦、「絶対に緩まないネジの開発」日本機会学会誌 2013.12 Vol.116 No.1141
本発明が解決しようとする課題は、車軸のハブボルト2に取り付けたホイールナットは大きな温度変化・荷重変化にあっても緩むことなく、しかも、弾性限界を越えることなく、頻繁に車軸のハブボルト2に取り付け・取り外しをしても変形しないホイールナット構造が求められていた。
また、そのホイールナットは軽量、低価格で、取り付け・取り外し作業が安全で労力を要しないことが要求される。
ベースナット20と、トルクナット40とから成り、前記ベースナット20は、外周が正六角柱21でその中央の軸芯にベース雌ねじ22を有し、ハブ側はホイール体押圧部26を有し、その反対面には倍力締結凸部25を具備しており、前記トルクナット40は、外周が正六角柱41で、ハブ側端はボックススパナ止めフランジ44があり、その中央の軸芯にトルク雌ねじ42を有し、ハブ側の面は倍力締結凹部45を有し、その反対面は外周面取り46がある平面を具備しているホイールナットセット10において、
ハブボルト2に対して、始めにベースナット20を当該車両の整備マニュアルに指定されたナット締め付けトルクの半分以下で締め、ハブボルト2に軸力PTを発生させた後、トルクナット40を締めてベースナット20とトルクナット40をハブボルト2に固着するホイールナットセットの取り付け方法を採ることで主要な解決ができる。
ここで、当該車両の整備マニュアルに指定されたナット締め付けトルクとは、市販車両の全てに備えられている整備マニュアルで指定されたナット締め付けトルク数値を言い、数値が上限と下限の範囲で示されたものでは、中央値を指定されたナット締め付けトルク数値とする。また、少量市販車両などで車両の整備マニュアルが存在しない場合は、同格の車両のハブボルトサイズ、本数、が同じものの数値で代用する。
車軸のハブボルト2に取り付けた本発明のホイールナットは、2個の部品であるベースナット20とトルクナット40にすることによって、ナットセットとしたから、ハブボルト2とベースナット20とトルクナット40の3個の部品同志で固着することができた。
従来は、高い指定トルクまで締めると軸力PTは降伏点近くになり、それで緩みを防止していたのに対して、本発明では軸力PTは降伏点の50%以下で止め、緩み防止は部品同志で固着することで確実な緩み防止が出来る。詳細は図によって後述する。
従って、大きな温度変化・荷重変化にあっても緩むことなく、しかも、弾性限界を越えることなく、頻繁に車軸のハブボルト2に取り付け・取り外しをしても「へたる」ことのないホイールナット構造ができた。
この構造を用いたホイールナットセットは、取り付け方法の工夫で作業が安全で労力を要しないものになった。
は本発明のホイールナットセットの実施例1で、〔図3〕のA―A断面図である。 は本発明のホイールナットセットの実施例1で、〔図3〕のB―B断面図である。 は本発明のホイールナットセットの実施例1で、〔図1〕の右側面図である。 は本発明のホイールナットセットの実施例2で、〔図2〕相当の断面図である。 は本発明のホイールナットセットの実施例3で、〔図2〕相当の断面図である。 は本発明のホイールナットセットの実施例4である。 は本発明のホイールナットセットの実施例5である。 は本発明のホイールナットセットの実施例6である。 は従来のサービスツールとして普及しているボックススパナの部分断面図である。 は本発明のホイールナットセットの緩み止め作用を示す尺度誇張的断面図である。 は本発明のベースナットの締め付けトルクと緩みの関係を示すグラフである。 は本発明のホイールナットセットの倍力締結部の詳細図で、(a)は倍力締結凸部の右側面図、(b)は倍力締結凹部を含むトルクナットの断面図である。 は本発明のベースナットのひっかかり率を示す尺度誇張的断面図で、(a)は中間加工品、(b)は仕上がり品である。 は楔の緩み止め原理を示す図である。 は本発明のトルクナットに錠前機能を付加した部分断面図である。 は本発明の廉価版ホイールナットセット実施例7の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のホイールナットセットの緩み止め作用原理を〔図10〕で説明する。
〔図10〕は構造を簡明にするため、ねじを大きく表してガタ(現場用語クリアランスのこと)を明瞭にしている。
〔図10〕は、ベースナット20はホイール体5を軸力PTで締めている。それにトルクナット40を締めて傾斜カム60に凹円筒部62があたり、カム面押力PAが発生した状態である。カム面押力PAはベクトル分解すると、ハブボルト芯線直角力PBとトルクナット偏押力Pになる。
ハブボルト芯線直角力PBと同じ大きさで方向が逆向きの反力ベースナットの直角押力PCは強い力でベースナット20をハブボルト2に押し付けるからベースナット20のガタは無くなり、軸力PTは不変に保持される。
カム面押力PAの反力はトルクナット40に時計まわりのトルクナット・ハブボルトに掛かるモーメントMとなり、その支点はトルクナット左端のハブボルト押力PDとトルクナット右端のハブボルト押力PEでトルクナット40自体右にγだけ傾いてガタは無くなる。PDとPEはハブボルト2を曲げる力であり、ハブボルト2の曲げ応力となる。
トルクナット・ハブボルトに掛かるモーメントMの大きさは、大略トルクナット偏押力Pと仮想接触円の半径RAの積である。
トルクナット40は締めれば締めるほど傾斜カム60をカム傾斜角θに沿って昇っていくが、ベースナット20と密着してしまうと連れ回りを起こすことがある。それを回避するために、高さ2分の1ピッチ程度の傾斜保持ストッパー43を設けておくのがよい。
また、トルクナット40の締め付け力管理は、傾斜保持ストッパー43に当るまで締めるとする方式が安定した品質を得やすい。
〔図11〕によって、本発明の効果を説明する。
従来のホイールナットは、複数本を均一に手締めしてはいるが、ボルトの軸力で摩擦力を得て緩みを止めようとするから、90〜120Nmの締め付けトルクを指定していた。これは弾性限界軸力PUの80%程度である。
締め付け時では弾性域で問題は無いが、大きな温度変化・荷重変化を受けると弾性域を飛び出し塑性域に入ってしまうことがある。
ホイール体5は鋼であることが多いが、アルミ材のような軽合金を用いることもある。ハブボルト2とベースナット20とトルクナット40は鋼であるから、線膨張係数の差がストレスになる。ホイール体5の温度変化は、100℃程度である。
本発明では、緩みには自信があるから締め付けトルクを40Nmに下げて試験しているが緩みは起こっていない。
締め付けトルクを下げることは、労力において大差が生じ、ホイール体5の取り付け・取り外し作業を女性でも出来るようになる。
〔図14〕によって、楔の緩み止め原理を説明する。
いま、楔角βの楔70に栓71をfなる力で押し込んだとする。楔70には面押し力qが発生し、qによってfに逆らう方向に摩擦力uが発生する。上下のuから合成摩擦力r ができる。その大きさは〔数1〜数3〕のとおりである。
〔数1〕 f=2q・sin(β/2)
〔数2〕 u=μq
〔数3〕 r=2μq・cos(β/2)
ここで、合成摩擦力rと楔へ押し込む力fの比を摩擦抗力倍率Bとすると
〔数4〕 B=r/f=μ/tan(β/2)
Bは抜けにくさ、つまり緩みにくさを示す量となる。
因みに、摩擦係数μ=0.1として、モールステーパ(吸い付くように固着する)の楔角β=3°では、摩擦抗力倍率B=3.81である。けして緩まないテーパーピンの楔角β=1.145°では、摩擦抗力倍率B=10.01である。
逆にB=1の楔角βは5.71°と計算され、それよりも大きい楔角βではいくら強いfなる力で押し込んでも固着しない。
本発明では、具体的に、呼び径(ボルトの外径)d=12mmで、ねじのピッチp=1.25mmとp=1.5mmを実施しているが、ここでは後者について述べる。
合成傾斜角δは有効径の螺旋角α=2.48°とカム傾斜角θ=10°から〔数5〕で計算すると
Figure 0005866572
δ=0.4373°となる。β=2・δであるから、B=13.10である。
傾斜角θ=15°であれば、δ=0.6648°、B=8.62である。実験ではこの範囲での好結果を確認した。
古い技術を振り返ると、テーパーピンのテーパ(1:50)は、長年の試行錯誤から唯一の値になった貴重なデータで、摩擦抗力倍率B=10近傍が緩み止めとして好適であることが推測できる。
以下、実施例を説明する。
〔実施例1〕
〔図1〕は本発明のホイールナットセットの第1実施例で、〔図3〕のA−A断面図であり、〔図2〕は本発明のホイールナットセットの第1実施例で、〔図3〕のB−B断面図であり、〔図3〕は本発明のホイールナットセットの第1実施例で、〔図1〕の右側面図である。
ハブ4は車軸芯1を中心に回転し、ハブ4には5本若しくは4本のハブボルト2がハブボルト芯線3だけ離れた位置に等角度間隔で植わっている。ホイールナットセット10はホイール体5をハブ4に取り付け・取り外しする物である。
ホイールナットセット10はベースナット20と、トルクナット40とから成り、前記ベースナット20は、外周が正六角柱21でその中央の軸芯にベース雌ねじ22を有し、ハブ側はホイール体押圧部26を有し、その反対面には倍力締結凸部25を具備しており、
前記トルクナット40は、外周が正六角柱41で、ハブ側端は六角対角距離を略直径とするボックススパナ止めフランジ44があり、その中央の軸芯にトルク雌ねじ42を有し、ハブ側の面は倍力締結凹部45を有し、その反対面は外周面取り46がある平面を具備していて、
ハブボルト2に対して、始めにベースナット20を所定のトルクで締め、所望する軸力PTを発生させた後、トルクナット40を締めてベースナット20とトルクナット40をハブボルト2に固着して運用実施し、トルクナット40を緩めて固着から開放できる構造になっている。
〔図1〜図3〕ではホイール体5とハブ4の間には、車軸隙間7があるのでホイール体5を車軸芯1を中心に回転さすためホイールテーパ6とベースナット20のナットテーパ23とで位置決めする方式を採っている。
ホイール体押圧部26はハブ側から外周にかけて単調に太くなるナットテーパ23から成り、テーパ楔角βは60°である。
〔図2〕では、ボックススパナ止めフランジ44が見える断面である。〔図9〕のボックススパナ(乗用車サービスツール)35は、ボックス体31の六角孔が深いのでトルクナット40にはボックススパナ止めフランジ44を設けないとベースナット20を一緒に回してしまう危険性があるからである。レバーハンドル32は軽量化からあまり長くはできないので、パイプ材を挿して操作したり、体重をかけたりしていたが、本発明では操作トルクを減じることが可能である。
〔実施例2〕
〔図4〕は、本発明のホイールナットセットの実施例2で、〔図2〕相当の断面図である。ベースナット20にもテーパ端フランジ37を設けた例である。ボックススパナ(乗用車サービスツール)35は、ホイール体5に接することがなく傷つけることも無い。
ハブボルト2の呼び径(ボルトの外径)dは12mmで標準二面幅は19mmであるが、この方式ではサイズアップした21mmを採ることもある。二面幅が異なればトルクナット40のボックススパナ止めフランジ44は設けなくともよい。
〔実施例3〕
〔図5〕は、本発明のホイールナットセットの実施例3で、〔図2〕相当の断面図である。トルクナット40の外側にキャップ47を溶接して、所謂袋ナットにしてハブボルト2を保護した。袋ナットはクロームメッキを施して光沢を持たせ美的要素が大きい。
ベースナット20とトルクナット40の表面処理は、ベースナット20は安価な亜鉛メッキ処理でもよい。
〔実施例4〕
〔図6〕は本発明のホイールナットセットの実施例4である。
この方式では、車軸隙間7はなく、ホイール体5はハブ4でセンターリングする。二重センターリングにならないようにホイール体押圧部26は、ハブボルト芯線3上に中心をもつ球半径Rの球面24にした。
〔図6〕ではホイール体5は90°テーパ28に球半径Rの球面24が接し、反対側は球面隙間8が目立つように誇張して描いた。
〔実施例5〕
〔図7〕は本発明のホイールナットセットの実施例5である。
この方式は、ホイール体5はアルミ合金などの軽合金材であり、しかも〔実施例1〕と同様にホイール体5とハブ4の間には、車軸隙間7があるので、ホイール体押圧部26は中央に位置決めノックピン12を有し、広く平坦な平座13が要求される。
また、相方のホイール体5も平坦度要求から座ぐり9をすることになる。
〔実施例6〕
〔図8〕は本発明のホイールナットセットの実施例6である。
この方式は、ホイール体5はアルミ合金などの軽合金材であり、しかも〔実施例4〕と同様にホイール体5とハブ4の間には車軸隙間7はなく、ホイール体5はハブ4でセンターリングする。二重センターリングにならないようにホイール体押圧部26は緩衝材27を嵌め込み、相方のホイール体5をばか孔30にした。
緩衝材27はアルミ合金などの軟金属若しくは熱硬化性樹脂材で、「へたり」はある程度覚悟して、定期点検整備に委ねる思想の構造である。
〔図12〕は本発明のホイールナットセットの倍力締結部の詳細図で、(a)は倍力締結凸部の右側面図、(b)は倍力締結凹部を含むトルクナットのA−O−B断面図である。
(b)図のベースナット20とトルクナット40は、ハブボルト芯線3を基線として、ハブボルト2を外した状態を描いている。
トルクナット40の左端には倍力締結凹部45を備えている。一般に凹部はテーパ逃がしとするところ、トルクナット40には必要条件としてボックススパナ止めフランジ44を設けるから、開口部33の広げ強度が大きいので、円筒型(凹み、逃がし)34とすることができる。円筒型は自動車の軽量化、省資材化になる。
本発明のトルクナット40の開口部33は、開口部面取り半径RKが施してあり、 開口部角度εはカム傾斜角θよりやや大きくなければならない。2点鎖線で示した仮想接触円64はほぼ開口部33付近になり、仮想接触円の半径RAは円筒型(凹み、逃がし)34の半径とみてよい。
トルクナット40は締めこむに従って、前記のように時計廻りにトルクナットの傾き角γは大きくなり、ガタはとれ動きにくくなる。
ベースナット20の倍力締結凸部25は、ボルト軸に略直角で仮想接触円の半径RAに対して同心で隙間sだけ小さい半径RBBが半円周以上あり、残る部分にはRBBよりもさらに小さい半径RCCが前記仮想接触円RAに接し、かつ半径RBBと連続したリブ状の傾斜カム60を有している。
トルクナットの傾き角γを保つため、傾斜カム60の後方にはねじのピッチpの2分の1程度の高さの傾斜保持ストッパー43を設けている。
〔図13〕は本発明のベースナットのひっかかり率を示す尺度誇張的断面図で、(a)は中間加工品、(b)は仕上がり品である。まず、ひっかかり率とは、実体のひっかかり高さを基準ひっかかり高さで除して%で表したものである。
ベースナット20は大量生産に対応して、自動でフープ材を切断して、冷間圧造機(多段フォーマー)で加工し、ベントタップによりベース雌ねじ22を塑性加工して形状を仕上げる。この後、表面処理を施して完成する。
(a)は多段フォーマーの最終段で、まさにシェービング加工をする状態を表している。 雌ねじ両端の転造加工前内径寸法DTは前工程で加工されており、シェービング径 DSTは雌ねじ中央の転造加工前内径寸法になり、多少の抜きカス52がでる。
(b)はベントタップ工程でベース雌ねじ22を塑性転造加工して、雌ねじ両端の仕上が り内径寸法DDのひっかかり率が25〜45%で、雌ねじ中央の仕上がり内径寸法 DDDのひっかかり率が70〜85%にした。両端の口から3分の1の線51は大 略3等分の目安である。
ベースナット20は軸力PTに耐える必要があるが、過剰な強度があり、ハブボルト芯線3への同芯度はひっかかり率に無関係で、軽量化にも省資材化にもなる。
この発明の主な目的は、加工にあって、ベントタップ工程でタップのベント部を通りやすいこと、ベントタップの寿命を延ばすことにある。
〔図11〕は本発明のベースナットの締め付けトルクと緩みの関係を示すグラフで前述の発明の効果を数値的に補完するものである。
この図は、横軸に締め付けトルク(Nm)、縦軸に軸力比(%)を採っている。軸力比とは、軸力PTを弾性限界軸力PU除して百分率にしたものである。締め付けトルク(Nm)は呼び径(ボルトの外径)dが12mmの実施例、66は弾性限界(降伏点)で、その軸力が弾性限界軸力PU(kN)である。
締め付けトルクと軸力とは弾性限界(降伏点)まで正比例し、比例定数をトルク係数と呼び、厳密には個々の仕様によって異なる。正比例するこの範囲は弾性域である。弾性限界(降伏点)を越えると塑性域になり、永久変形いわゆる「へたり」がおこり、極限は破壊に至る。
破壊する部材は、最も弱いハブボルト2になる。
従来のホイールナットは、軸力PTを降伏点の80%程度の高い締め付けトルクを指定したのに対して、本発明ではその半分以下で試作・試験をして緩みは認められなかった。
〔図11〕で従来・本発明のマークの尾が上に長く、下に短いのは温度変化、特に高温によって「へたり」が生じるためである。
〔図15〕は本発明のトルクナットに錠前機能を付加した部分断面図である。盗難防止として複数あるハブボルト2の1本に普通のボックススパナでは取り外すことの出来ない錠前機能をもたせ、鍵ボックススパナでのみ取り外すことを可能とする装置が要求されている。
トルクナット40の外周が円筒48で外径はベースナット20の対角距離とすれば普通のボックススパナがベースナット20に掛かることはなく、トルク雌ねじ42の外周部にはスプライン型錠前49を設けて、スプラインを個々に幅、深さを変えたものにすれば複数のユニークなものが出来る。
〔実施例7〕
〔図15〕は本発明の廉価版ホイールナットセットの断面図である。
〔実施例1〕に対して、ベースナット20とトルクナット40の倍力締結部の凹凸を交換するとともに、トルクナット40の正六角柱41をサイズダウンし、ボックススパナ止めフランジ44を廃止した試作をし、試験したところ緩みがないことが分かった。
本構造は一且軸力PTで締まったベースナット20をトルクナット40の味噌擂り運動で傾けることになり躊躇したが、緩み止めの基本は「こじて」ガタをとること、摩擦抗力倍率Bを満足させることを叶えているので廉価版ホイールナットセットとして提供した。
以上、従来のようにホイール体5を強い力で挟みその摩擦力で緩みを防止しようとしたのに対して、本発明の実施の形態ではベースナット20とトルクナット40とハブボルト2が部品同志で固着することで、弱い力でも確実な緩み防止が出来ることを実証してみせ、または発展的可能性を示唆した。
本発明は比較的簡単に試作・試験ができる。また、物が小さいこともあって廉価にそれができた。しかし、自動車用の大量生産となると、設備費用は大変大きなものになる。
本発明は自動車産業で求められている、安全設計、軽量化、コストダウン、作業性を改善するものであるから、利用される可能性はたかい。
1 車軸芯
2 ハブボルト
3 ハブボルト芯線
4 ハブ
5 ホイール体
6 ホイールテーパ
7 車軸隙間
8 球面隙間
9 座ぐり
10 ホイールナットセット
12 位置決めノックピン
13 平座
20 ベースナット
21 正六角柱
22 ベース雌ねじ
23 ナットテーパ
24 球面
25 倍力締結凸部
26 ホイール体押圧部
27 緩衝材
28 90°テーパ
29 位置決めノック孔
30 ばか孔
31 ボックス体
32 レバーハンドル
33 開口部
34 円筒型(凹み、逃がし)
35 ボックススパナ(乗用車サービスツール)
37 テーパ端フランジ
40 トルクナット
41 正六角柱
42 トルク雌ねじ
43 傾斜保持ストッパー
44 ボックススパナ止めフランジ
45 倍力締結凹部
46 外周面取り
47 キャップ
48 円筒
49 スプライン型錠前
51 口から3分の1の線
52 抜きカス
60 傾斜カム
61 ボルト外径(呼び径d)
62 凹円筒部
64 仮想接触円
66 弾性限界(降伏点)
70 楔
71 栓
d 呼び径(ボルトの外径)
dd 雌ねじ内径の基準寸法(雄ねじ谷径の基準寸法と同じ)
f 楔へ押し込む力
p ねじのピッチ
q 面押し力
r 合成摩擦力
s 隙間
u 摩擦力
B 摩擦抗力倍率
DD 雌ねじ両端の仕上がり内径寸法
DDD 雌ねじ中央の仕上がり内径寸法
DST シェービング径(雌ねじ中央の転造加工前内径寸法)
DT 雌ねじ両端の転造加工前内径寸法
M トルクナット・ハブボルトに掛かるモーメント
P トルクナット偏押力
PA カム面押力(ヘルツ面圧の基礎ベクトル)
PB ハブボルト芯線直角力
PC ベースナットの直角押力(PBと同じ大きさで方向が逆向き)
PD トルクナット左端のハブボルト押力(PBと同じ大きさ)
PE トルクナット右端のハブボルト押力(PDと同じ大きさで方向が逆向き)
PT 軸力
PU 弾性限界軸力
Q ボルト抗力
R 球半径
RA 仮想接触円の半径
RBB RAよりも隙間sだけ小さい半径
RCC 半径RBBよりもさらに小さい半径
RK 開口部面取り半径
α 有効径の螺旋角
β 楔角
γ トルクナットの傾き角
δ 合成傾斜角
θ カム傾斜角
ε 開口部角度
μ 摩擦係数

Claims (2)

  1. ホイールを車軸に取り付ける方法であって、
    ベースナット20と、トルクナット40とから成り、前記ベースナット20は、外周が正六角柱21でその中央の軸芯にベース雌ねじ22を有し、ハブ側はホイール体押圧部26を有し、その反対面には倍力締結凸部25を具備しており、前記トルクナット40は、外周が正六角柱41で、ハブ側端はボックススパナ止めフランジ44があり、その中央の軸芯にトルク雌ねじ42を有し、ハブ側の面は倍力締結凹部45を有し、その反対面は外周面取り46がある平面を具備しているホイールナットセット10において、
    ハブボルト2に対して、始めにベースナット20を当該車両の整備マニュアルに指定されたナット締め付けトルクの半分以下で締め、ハブボルト2に軸力PTを発生させた後、トルクナット40を締めてベースナット20とトルクナット40をハブボルト2に固着するホイールナットセットの取り付け方法
  2. ホイールを車軸に取り付ける方法であって、
    ベースナット20と、トルクナット40とから成り、前記ベースナット20は、外周が正六角柱21でその中央の軸芯にベース雌ねじ22を有し、ハブ側はホイール体押圧部26を有し、その反対面には倍力締結凹部45を具備しており、前記トルクナット40は、外周が正六角柱41で、その正六角柱41の対角距離は、ベースナット20の外周の正六角柱21よりサイズダウンして設け、その中央の軸芯にトルク雌ねじ42を有し、ハブ側の面は倍力締結凸部25を有し、その反対面は外周面取り46がある平面を具備しているホイールナットセット10において、
    ハブボルト2に対して、始めにベースナット20を当該車両の整備マニュアルに指定されたナット締め付けトルクの半分以下で締め、ハブボルト2に軸力PTを発生させた後、トルクナット40を締めてベースナット20とトルクナット40をハブボルト2に固着するホイールナットセットの取り付け方法
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