JP2014189643A - ポリエステル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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麻由美 松本
Hiroji Kojima
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Abstract

【課題】耐加水分解性、透明性に優れたフィルム用途として好適なポリエステル組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂に対し、リン酸アルカリ金属塩を溶融混合し、下記式(1)〜(3)を満たすポリエステル樹脂組成物を得ることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
7.5 ≦ M1 ≦ 40.0(mol/ton)・・・(1)
1.0 ≦ M2 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(2)
8.5 ≦ P ≦ 43.0(mol/ton)・・・(3)
(M1:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、
M2:Mg,Mn,Ca,Coから選ばれる2価の金属元素含有量、
P:リン元素含有量)
【選択図】なし

Description

本発明は、耐加水分解性の良好なポリエステル組成物の製造方法に関する。
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。
しかし、ポリエステルは加水分解により機械物性が低下するため、長期にわたって使用する場合、或いは湿気のある状態で使用する場合においては、加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。特に、太陽電池用フィルムにおいては、屋外にて20年以上の耐用年数が要求されることから、高い耐加水分解性と耐久性が要求される。
特許文献1にはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のリン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が記載されている。特許文献2、3には無機リン酸塩とリン酸を併用するポリエステルの製造方法が記載されている。
特許文献1に開示のポリエステルの製造方法のように、リン酸金属塩のみでは、初期のCOOH末端基は抑制できるが、加水分解によるCOOH末端基増加量を抑制することは難しく、そのため太陽電池用途のように長期間の耐久性を必要とする用途では十分な耐加水分解性が得られない。
特許文献2に開示のポリエステルの製造方法の場合には、リン酸と無機リン酸塩の比率とその適用量が不適切であるため、無機リン酸塩が異物化しやすく、短期間の耐加水分解性には優れるものの、太陽電池用途などに必要とされる長期にわたる耐加水分解性が不十分であり、異物によるフィルムの機械物性の低下があった。
また、特許文献3に開示のポリエステルの製造方法のように溶融重合にてリン酸アルカリ金属塩を多量に添加する方法では、リン酸アルカリ金属塩中のリン原子により重合触媒の失活が起こるため、その添加量には制限があった。
特開2001−114881号公報 特開2007−277548号公報 WO2011/052290公報
本発明の課題は、上記した従来の技術の問題点を解決し、耐加水分解性に優れたポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、上記課題を解決するため、次の特徴を有するものである。
(1)ポリエステル樹脂に対し、リン酸アルカリ金属塩を溶融混合し、下記式(1)〜(3)を満たすポリエステル樹脂組成物を得ることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法である。
7.5 ≦ M1 ≦ 40.0(mol/ton)・・・(1)
1.0 ≦ M2 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(2)
8.5 ≦ P ≦ 43.0(mol/ton)・・・(3)
(M1:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、M2:Mg,Mn,Ca,Coから選ばれる2価の金属元素含有量、P:リン元素含有量)
本発明により、耐加水分解性、耐久性に優れたポリエステル樹脂組成物を安価に効率的に製造することが出来る。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、2価の金属元素を含有したポリエステル樹脂に対し、リン酸アルカリ金属塩を溶融混練して添加することで、生産性を損なうことなく、リン酸アルカリ金属塩を高濃度に含有させることができる技術である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、主としてジカルボン酸成分とジオール成分からなり、酸成分として85mol%以上が芳香族ジカルボン酸成分であることが好ましく、中でも機械的特性、耐熱性、耐湿熱性の観点から芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸成分またはナフタレンジカルボン酸成分であることが好ましい。また、ジオール成分として、成形性、結晶性、耐加水分解性の点から85mol%以上がエチレングリコールであることが好ましい。
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法において、ポリエステル樹脂に対し、リン酸アルカリ金属塩を添加することが必要である。リン酸アルカリ金属塩を添加することで、本発明のポリエステル樹脂組成物は、優れた耐加水分解性を発揮することが出来る。通常、リン化合物を溶融重合にて多量に添加すると、重合触媒の失活が起こるため、生産性を保ちつつポリエステル樹脂を得ることができない。しかし、本発明においては、溶融重合終了後のポリエステル樹脂に対し、リン酸アルカリ金属塩を溶融混合するため、多量に添加することが可能である。リン酸アルカリ金属塩を多量に含有するポリエステル樹脂組成物を使用することで、より効率的に耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を製造することが可能である。
リン酸アルカリ金属塩としては、特に限定しないが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムが挙げられる。その中でもリン酸ナトリウム塩が好ましく、さらにリン酸二水素ナトリウムが耐加水分解性の点から好ましい。
また本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、得られたポリエステル樹脂組成物が下記式(1)〜(3)を満たすことが必要である。
7.5 ≦ M1 ≦ 40.0(mol/ton)・・・(1)
1.0 ≦ M2 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(2)
8.5 ≦ P ≦ 43.0(mol/ton)・・・(3)
ここで、M1は溶融混合にて得られたポリエステル樹脂組成物中に含まれるLi、Na、Kから選ばれる1価の金属元素含有量であり、耐加水分解性の点からNaであることが好ましい。また、含有量の下限は7.5mol/ton以上であることが必要である。好ましくは10.0mol/ton以上であり、さらに好ましくは15.0mol/ton以上である。含有量の上限は40.0mol/ton以下である必要があり、好ましくは30.0mol/ton以下、さらに好ましくは20.0mol/ton以下である。上記範囲にすることで、生産性を損なうことなく、耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
M2は溶融混合にて得られたポリエステル樹脂組成物中に含まれるMg、Mn、Ca、Coから選ばれる2価の金属元素含有量であり、耐加水分解性の点からMn、Caであることが好ましい。また元素含有量の下限は1.0mol/ton以上であることが必要であり、好ましくは2.0mol/ton以上である。含有量の上限は4.0mol/ton以下であることが必要であり、好ましくは3.5mol/ton以下である。上記範囲にすることで、耐熱性を損なうことなく耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
Pは溶融混合にて得られたポリエステル樹脂組成物中に含まれるリン含有量である。含有量の下限は8.5mol/ton以上であることが必要であり、好ましくは12.0mol/ton以上、さらに好ましくは15.0mol/ton以上である。また含有量の上限は43.0mol/ton以下であることが必要であり、好ましくは30.0mol/ton以下、さらに好ましくは23.0mol/ton以下である。上記範囲にすることで、耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、溶融混合してリン酸アルカリ金属塩を添加する方法としては、1軸押出機または2軸押出機にて実施することが好ましい。さらに、ベント付押出機にて実施することが好ましい。ベント付押出機にて溶融混合することで、リン酸アルカリ金属塩を溶解および分散している溶媒をすばやく除去することが可能であり、ポリエステルの分解を抑制することができる。また、リン酸アルカリ金属塩の添加方法に制限はないが、水またはグリコール成分の溶液またはスラリーとして添加することが均一分散性の点から好ましい。さらにポリマー分解抑制の点から、溶媒は水であることが好ましく、分散性の点から、溶解させた状態で添加することが一層好ましい。
1軸押出機または2軸押出機において、溶融混練押出する際の溶融温度は、ポリエステルの流動性や熱劣化を抑制する観点から、200℃以上320℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは220℃以上300℃以下である。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法で得られたポリエステル樹脂組成物Aと、任意のポリエステル樹脂組成物Bを溶融混合することで、長期耐湿熱性を有するポリエステル樹脂組成物を製造することが可能である。この得られたポリエステル樹脂組成物は、下記式(4)〜(6)を満たし、かつ伸度保持率が50%以上であることが好ましい。
0.8 ≦ M1 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(4)
1.0 ≦ M2 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(5)
1.8 ≦ P ≦ 7.0(mol/ton)・・・(6)
ここで、M1はポリエステル樹脂組成物Aとポリエステル樹脂組成物Bを溶融混合し得られたポリエステル樹脂組成物中に含まれるLi、Na、Kから選ばれる1価の金属元素含有量であり、耐加水分解性の点からNaであることが好ましい。また、含有量の下限は0.8mol/ton以上であることが好ましく、より好ましくは1.0mol/ton以上であり、さらに好ましくは1.5mol/ton以上である。含有量の上限は4.0mol/ton以下であることが好ましく、より好ましくは3.0mol/ton以下、さらに好ましくは2.0mol/ton以下である。上記範囲にすることで、耐熱性を損なうことなく、耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
M2はポリエステル樹脂組成物Aとポリエステル樹脂組成物Bを溶融混合し、得られたポリエステル樹脂組成物中に含まれるMg、Mn、Ca、Coから選ばれる2価の金属元素含有量であり、耐加水分解性の点からMn、Caであることが好ましい。また含有量の下限は1.0mol/ton以上であることが好ましく、より好ましくは2.0mol/ton以上である。含有量の上限は4.0mol/ton以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mol/ton以下である。上記範囲にすることで、耐熱性を損なうことなく耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
はポリエステル樹脂組成物Aとポリエステル樹脂組成物Bを溶融混合し得られたポリエステル樹脂組成物中に含まれるリン含有量である。含有量の下限は1.8mol/ton以上であることが好ましく、より好ましくは2.0mol/ton以上、さらに好ましくは3.5mol/ton以上である。また含有量の上限は7.0mol/ton以下であることが好ましく、より好ましくは6.0mol/ton以下、さらに好ましくは5.0mol/ton以下である。上記範囲にすることで、耐加水分解性の優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
本発明において、金属元素含有量とリン元素含有量を好ましい範囲にすることで、太陽電池等に要求される長期耐加水分解性の良好なポリエステルフィルムを得ることができる。耐加水分解性は伸度保持率にて評価する。
本発明における伸度保持率の測定とは、本発明のポリエステル樹脂Aと、ポリエステル樹脂組成物Bを重量比1:9で配合し、150℃で5時間乾燥後、押出機に供給した。押出温度280℃でTダイから吐出させ、キャスティングドラム(20℃)にて急冷し、静電印加法にてシート化、このシートを縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍で延伸した後、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、210℃で熱処理を3秒間施して得た2軸延伸フィルムを測定する。この2軸延伸フィルムを湿熱処理(125℃、100%RH、60時間)後、伸度保持率を算出する。伸度保持率は、処理前後のフィルム伸度を測定し、処理前のサンプルに対する処理後サンプルの伸度を百分率で表したものである。この伸度保持率が大きい値であるほど、耐加水分解性および耐久性に優れている。本発明において、この伸度保持率が50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60%以上、特に70%以上が好ましい。
フィルムの伸度は、ASTM−d882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて、下記(1)〜(4)の条件にて測定する。
(1)測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
(2)試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
(3)引張速度:200mm/分
(4)測定環境:23℃、65%RH
本発明において得られたポリエステル樹脂組成物は、乾燥を経て、通常の押出機、Tダイにて押出し、2軸延伸することで、長期耐加水分解性が良好なポリエステルフィルムを製造することができる。得られたポリエステルフィルムは長期耐加水分解性が良好であるため、太陽電池等の用途に好適である。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
なお、物性の測定方法は次の方法に従って行った。
(1)固有粘度(IV)
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
(2)COOH末端基量
次の文献に記載されたMauliceの方法により測定した。
M.J.Maulice, F.Huizinga “Anal. Chim. Acta” Vol.22, p−363(1960) 。
(3)ポリマー中のアルカリ金属含有量
原子吸光法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)にて定量を行った。
(4)ポリマー中のリン量及び2価金属元素量
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
(5)伸度保持率の算出
本発明のポリエステル樹脂Aと、ポリエステル樹脂組成物Bを重量比1:9で配合し、150℃で5時間乾燥後、押出機に供給した。押出温度280℃でTダイから吐出させ、キャスティングドラム(20℃)にて急冷し、静電印加法にてシート化、このシートを縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍で延伸した後、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、210℃で熱処理を3秒間施して得た2軸延伸フィルムを測定する。この2軸延伸フィルムを湿熱処理(125℃、100%RH、60時間)後、伸度保持率を算出する。伸度保持率は、処理前後のフィルム伸度を測定し、処理前のサンプルに対する処理後サンプルの伸度を百分率で表したものである。
フィルムの伸度は、ASTM−d882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて、下記(1)〜(4)の条件にて測定する。
(1)測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
(2)試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
(3)引張速度:200mm/分
(4)測定環境:23℃、65%RH
(参考例1)ポリエステル樹脂Tの製造方法
予めエステル化反応装置にビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部(PET100重量部相当)を仕込んだ反応系内の温度を245〜255℃に保ちつつ、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部からなるスラリーをスネークポンプにて反応系内に供給し、エステル化反応を進めて水を留出させた。エステル化反応率が95%に到達した段階で、エステル化反応を終了した。得られたエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を留出装置の付いた重合装置に仕込み、酢酸マンガン四水和物0.07重量部、三酸化アンチモン0.03重量部、リン酸0.019重量部を添加した。重合装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から真空へ徐々に減圧し、エチレングリコールを留出させた。目標トルクに到達した時点で反応を終了とし、反応系内を窒素にて常圧にし、重合装置下部から溶融ポリマーをストランド状に吐出した。吐出されたポリマーを水槽にて急冷し、カッターを用いてチップ状にした。このポリエステルチップを160℃で6時間乾燥、結晶化させ、その後220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、固有粘度0.80、COOH末端基10.5eq/tonのポリエステル樹脂Tを得た。
(参考例2)ポリエステル樹脂Uの製造方法
添加するリン酸の量を0.098重量部と変更した以外は参考例1と同様の手法によって、固有粘度0.80、COOH末端基14.2eq/tonのポリエステル樹脂Uを得た。
(参考例3)ポリエステル樹脂Vの製造方法
添加する酢酸マンガン四水和物の量を0.029重量部と変更した以外は参考例1と同様の手法によって、固有粘度0.80、COOH末端基11.3eq/tonのポリエステル樹脂Vを得た。
(参考例4)ポリエステル樹脂Wの製造方法
添加する酢酸マンガン四水和物の量を0.025重量部と変更した以外は参考例1と同様の手法によって、固有粘度0.80、COOH末端基10.2eq/tonのポリエステル樹脂Wを得た。
(参考例5)ポリエステル樹脂Xの製造方法
添加する酢酸マンガン四水和物の量を0.098重量部と変更した以外は参考例1と同様の手法によって、固有粘度0.80、COOH末端基12.5eq/tonのポリエステル樹脂Xを得た。
(参考例6)ポリエステル樹脂Yの製造方法
酢酸マンガン四水和物を添加しなかった以外は参考例1と同様の手法によって、固有粘度0.80、COOH末端基11.0eq/tonのポリエステル樹脂Yを得た。
(参考例7)ポリエステル樹脂Zの製造方法
添加する酢酸マンガン四水和物の量を0.12重量部と変更した以外は参考例1と同様の手法によって、固有粘度0.80、COOH末端基13.1eq/tonのポリエステル樹脂Zを得た。
(実施例1)
ポリエステル樹脂V100重量部に対し、リン酸二水素ナトリウム0.2重量部(10重量%水溶液)の配合比でベント付2軸押出機に供給し、温度280度で溶融押し出しをした。吐出したストランド状ポリマーを水中で冷却し、ペレタイザーにてカット、ペレット状のポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物Aとポリエステル樹脂組成物Tを1:9重量比で混合し、150℃で5時間乾燥後、押出機に供給した。押出温度280℃でTダイから吐出させ、キャスティングドラム(20℃)にて急冷し、静電印加法にてシート化した。このシートを縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍で延伸した後、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、210℃で熱処理を3秒行うことで、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属元素含有量及び伸度保持率を表1に示す。
実施例1にて得られたポリエステル樹脂組成物は、十分な伸度保持率を有しており、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
(実施例2〜7、比較例1〜3)
溶融混合するリン酸二水素ナトリウムの添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステル樹脂組成物、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表1に示す。
実施例2〜7にて得られたポリエステル樹脂組成物は、十分な伸度保持率を有しており、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
比較例1にて得られたポリエステル樹脂組成物は、添加したリン酸アルカリ金属塩の量が少量であったため、十分な伸度保持率が得られなかった。
比較例2にて得られたポリエステル樹脂組成物は、添加したリン酸アルカリ金属塩量が多く、異物化したため、十分な伸度保持率が得られなかった。
比較例3にて得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸アルカリ金属塩を添加していないため、十分な伸度保持率が得られなかった。
(実施例8、9)
リン酸アルカリ金属塩を溶融混合するポリエステル樹脂を変更し、ポリエステル樹脂Aと混合するポリエステル樹脂を変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステル樹脂組成物、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表1に示す。
実施例8、9にて得られたポリエステル組成物は、十分な伸度保持率を有しており、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
Figure 2014189643
(実施例10〜13)
溶融混合するリン酸アルカリ金属塩の種類を変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステル樹脂組成物、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表2に示す。
実施例10〜13にて得られたポリエステル樹脂組成物は、実施例1と比べ、伸度保持率が低下する傾向であったが、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
Figure 2014189643
(実施例14〜17)
溶融混合するリン酸二水素ナトリウムの溶解状態を変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステル樹脂組成物、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表3に示す。
実施例14、16にて得られたポリエステル樹脂組成物は、エチレングリコールを溶媒として用いたため、溶媒の除去に時間を要し、実施例1と比べ、伸度保持率が低下する傾向であったが、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
実施例15にて得られたポリエステル樹脂組成物は、十分な伸度保持率を有しており、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
実施例17にて得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸二水素ナトリウムを粉体で添加したため、微細な異物核となり、伸度保持率が低下する傾向であったが、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
(実施例18)
ベントせず溶融混合した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステル樹脂組成物、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表3に示す。
実施例18にて得られたポリエステル樹脂組成物は、加水分解が進行したため、伸度保持率が低下する傾向であったが、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
(比較例4)
予めエステル化反応装置にビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部(PET100重量部相当)を仕込んだ反応系内の温度を245〜255℃に保ちつつ、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部からなるスラリーをスネークポンプにて反応系内に供給し、エステル化反応を進めて水を留出させた。エステル化反応率が95%に到達した段階で、エステル化反応を終了した。得られたエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を留出装置の付いた重合装置に仕込み、酢酸マンガン四水和物0.07重量部、三酸化アンチモン0.03重量部、リン酸0.019重量部、リン酸二水素ナトリウム0.2重量部を添加した。重合装置内温度を90分かけて235℃から290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から真空へ徐々に減圧し、エチレングリコールを留出させた。目標トルクに到達した時点で反応を終了とし、反応系内を窒素にて常圧にし、重合装置下部から溶融ポリマーをストランド状に吐出した。吐出されたポリマーを水槽にて急冷し、カッターを用いてチップ状にし、ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物Aとポリエステル樹脂組成物Vを1:9重量比の混合し、150℃で5時間乾燥後、押出機に供給した。押出温度280℃でTダイから吐出させ、キャスティングドラム(20℃)にて急冷し、静電印加法にてシート化した。このシートを縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍で延伸した後、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、210℃で熱処理を3秒行うことで、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表3に示す。
比較例4にて得られたポリエステル樹脂組成物は、溶融重合にて多量にリン化合物を添加したため、重合反応が遅延した。そのため、十分な伸度保持率が得られなかった。
(実施例19〜20、比較例5〜6)
リン酸アルカリ金属塩を溶融混合するポリエステル樹脂を変更し、ポリエステル樹脂Aと混合するポリエステル樹脂を変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステル樹脂組成物、2軸延伸フィルムを得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の金属含有量及び伸度保持率を表3に示す。
実施例19、20にて得られたポリエステル樹脂組成物は、十分な伸度保持率を有しており、太陽電池用途等に供しても問題のないレベルであった。
比較例5にて得られたポリエステル樹脂組成物は、2価の金属を含有していないため、十分な伸度保持率が得られなかった。
比較例6にて得られたポリエステル樹脂組成物は、金属量が多く耐熱性が低下したため、十分な伸度保持率が得られなかった。
Figure 2014189643
本発明によれば、耐加水分解性の良好なポリエステル原料を安価で効率よく生産することが出来る。さらにこれをフィルムとすることで、磁材用途、コンデンサーなどの電気材料用途、包装用途など様々な用途に使用でき、特に長期の耐加水分解性、耐久性が要求される太陽電池用フィルムに好適に利用することが可能となる。

Claims (4)

  1. ポリエステル樹脂に対し、リン酸アルカリ金属塩を溶融混合し、下記式(1)〜(3)を満たすポリエステル樹脂組成物を得ることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    7.5 ≦ M1 ≦ 40.0(mol/ton)・・・(1)
    1.0 ≦ M2 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(2)
    8.5 ≦ P ≦ 43.0(mol/ton)・・・(3)
    (M1:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、
    M2:Mg,Mn,Ca,Coから選ばれる2価の金属元素含有量、
    P:リン元素含有量)
  2. リン酸アルカリ金属塩を水またはグリコール成分の溶液またはスラリーとし、かつ、溶融混合をベント付押出し機で行なうことを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  3. リン酸アルカリ金属塩がリン酸ナトリウム塩であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項で製造したポリエステル樹脂組成物Aと、ポリエステル樹脂組成物Bを溶融混合し、得られたポリエステル樹脂組成物が、下記式(4)〜(6)を満たし、かつ伸度保持率が50%以上であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    0.8 ≦ M1 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(4)
    1.0 ≦ M2 ≦ 4.0(mol/ton)・・・(5)
    1.8 ≦ P ≦ 7.0(mol/ton)・・・(6)
    (M1:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、
    M2:Mg,Mn,Ca,Coから選ばれる2価の金属元素含有量、
    :リン元素含有量)
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