JP6172313B2 - ポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法 - Google Patents
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しかし、ポリエチレンテレフタレートは加水分解により機械物性が低下するため、長期にわたって使用する場合、或いは湿気のある状態で使用する場合においては加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。特に、太陽電池フロントシート用フィルムにおいては、屋外にて20年以上の耐用年数と光学特性が要求されることから、高い耐加水分解性、伸度保持率、光学特性が必要である。
しかし、直重法で製造するに際しては、微量ではあるが白色異物が生成し、フィッシュアイの原因になることから、光学用途への適用が困難である。
特許文献2には、異物が少ないポリエチレンテレフタレートの製造方法について記載されているが、開示されているのは異物(フィッシュアイ)が8平方センチメートルあたり30個以上含有する技術であり、光学用途に用いるには不十分である。
本発明の製造方法で得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、テレフタル酸およびエチレングリコールから製造されるポリエチレンテレフタレートである。該ポリエチレンテレフタレート組成物は、全ジカルボン酸成分の98mol%以上がテレフタル酸であり、全グリコール成分の98mol%以上がエチレングリコールであることが機械特性、耐加水分解性、耐熱性の点から必要である。
ポリエチレンテレフタレート組成物中の白色異物は、リン元素、およびアルカリ金属元素を含有しており、フィルムにした場合に異物(フィッシュアイ)となるため、その含有量はポリエチレンテレフタレート組成物に対して体積分率で1ppm以下であることが必要であり、さらには0.5ppm以下、特に0ppmであることが好ましい。
ΔCOOHを50eq/ton以下とするには、ポリエチレンテレフタレート組成物のカルボン酸末端基をできるだけ低減することが有効ではあるが、リン酸/リン酸アルカリ金属塩のような緩衝剤等により分解反応速度を抑制することが耐加水分解性の点から重要である。
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、助触媒を含有することが、耐加水分解性の点から好ましい。助触媒としては、酢酸マンガン、水酸化マンガンなどのマンガン化合物、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物の少なくとも1種以上であることが耐熱性、耐加水分解性の点から好ましい。このような助触媒を添加する場合は、ポリエチレンテレフタレート組成物中のアルカリ金属元素の0.5倍モルと助触媒金属元素の1.0倍モルの和(M)と、リン元素(P)のモル比(M/P)が1.00以上1.20以下になるようにすることが、耐加水分解性、耐熱性の点から好ましい。
重縮合反応触媒としては、公知の化合物を使用することができ、例えば、三酸化アンチモン、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができ、なかでも重縮合反応性、耐熱性の点から三酸化アンチモンであることが好ましい。
エステル化反応釜でエチレンテレフタレート低重合体を溶融後、テレフタル酸とエチレングリコールのスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸のモル比が1.15)を3.5時間かけて添加し、水を留出させながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、重合反応釜に移行し、ポリエチレンテレフタレート組成物100重量部に対して、助触媒として酢酸マンガン4水和物エチレングリコール溶液(5重量%)を酢酸マンガン4水和物として0.07重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.03重量部となるように添加する。ここで、テレフタル酸に対して0.1モル倍以上0.5モル倍以下のエチレングリコールを添加すると、助触媒により効率的に未反応のカルボン酸末端基のエステル化が進行し、耐加水分解性を向上させることができる。助触媒の添加量としては、助触媒に含まれる金属成分であるマンガン元素のモル量とリン酸二水素ナトリウム2水和物に含まれるアルカリ金属成分であるナトリウム元素の0.5倍モル量の和(M)とリン元素のモル量(P)の比(M/P)が1.00以上1.20未満となるようにすることで、耐加水分解性が向上する。
ポリマー0.1gをo−クロロフェノール10mlに160℃、20分で溶解し、25℃で測定した。
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)にて定量を行った。
未延伸シートサンプルを採取し、Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))。
ポリマーチップ0.5gをモノエタノールアミン中でアミン分解し、遊離したジエチレングリコールをガスクロマトグラフィーで測定した。なお、数値はポリマ中のジエチレングリコールの重量%である。
ポリマーのストランドもしくはチップを黒色台紙に5g計量し、オーツカ光学株式会社製ENV−Bを用いて白色異物をマーキングした。マーキングした白色異物について、SEM観察を行い、最大直径が50μm以上の白色異物についてSEM−EDXにて元素分析を行った。
リン元素、及びアルカリ金属元素が検出された白色異物について個数をカウントし、最大直径から球相当体積を算出し、ポリエチレンテレフタレート組成物に対する白色異物総体積の体積分率を算出した。
但し、ポリエチレンテレフタレート組成物の比重は1.35g/cm3とする。
ポリエチレンテレフタレート組成物のチップを155℃、水蒸気中で4時間処理した。
測定装置:PRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製)
カルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)は処理前後のサンプルで評価を行った。
偏光板を用いて、ポリエチレンテレフタレート組成物の二軸延伸フィルム(厚み50μm)のA4サイズあたりのフィッシュアイをマーキングし、SEM−EDXによりリン元素、及びアルカリ金属元素の有無を確認した。リン元素、及びアルカリ金属元素を含むフィッシュアイの個数が0個/A4のフィルムを合格とした。
ビスヒドロキシエチレンテレフタレート114重量部(PET100重量部相当)があらかじめ仕込まれたエステル化反応装置(ES缶)にテレフタル酸86重量部、エチレングリコール37重量部からなるスラリーをスネークポンプにて3.5時間かけて供給し、反応物の温度を245℃〜255℃にコントロールしながらエステル化反応を行った。
得られた二軸延伸フィルムは、白色異物起因のフィッシュアイが0個/A4であり、太陽電池フロントシート用途等に供しても問題ないレベルであった。
酢酸マンガン4水和物添加後に、エチレングリコールを11重量部(テレフタル成分に対して0.35モル倍相当)を添加する以外は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物、および二軸延伸フィルムを得た。結果を表1および表2に示す。
得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、エチレングリコールを添加した結果、カルボン酸末端基が21eq/ton、ΔCOOHが35eq/tと実施例1に比べて耐加水分解性が向上しており、二軸延伸フィルムも太陽電池フロントシート用途等に供しても問題ないレベルであった。
リン酸アルカリ金属化合物の種類および添加量、周速、リン酸アルカリ金属化合物エチレングリコール溶液の濃度、固有粘度を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物、二軸延伸フィルムを製膜した。結果を表1および表2に示す。
リン酸二水素ナトリウム2水和物エチレングリコール溶液の濃度を5mmol/Lとし、リン酸二水素ナトリウム2水和物エチレングリコール溶液の添加方法を、テレフタル酸との混合スラリーとしてエステル化反応中に3.5時間かけて、周速25m/sで攪拌しているところに添加するように変更する以外は実施例2と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。結果を表1および表2に示す。
得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、ΔCOOHが37eq/ton、白色異物も0ppmと本発明の範囲内であり、太陽電池フロントシート用途等に供しても問題ないレベルであった。
リン酸二水素ナトリウム2水和物エチレングリコール溶液を2.5mmol/L、12.5mmol/Lの2種類の濃度で調整する。2.5mmol/Lの溶液はテレフタル酸と混合スラリーとして周速25m/sで攪拌しているところに3.5時間かけて添加し、もう一方の12.5mmol/Lの溶液は、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート114重量部(PET100重量部相当)を重合缶に移行したあとに、実施例2と同様にして添加してエチレンテレフタレート組成物を得た。結果を表1および表2に示す。
得られたエチレンテレフタレート組成物は、ΔCOOHが36eq/ton、白色異物も0ppmと本発明の範囲内であり、太陽電池フロントシート用途等に供しても問題ないレベルであった。
リン酸アルカリ金属化合物の添加量と添加方法、リン酸の添加量、助触媒である酢酸マンガンの添加量、固有粘度を変更する以外は実施例2と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物、及び二軸延伸フィルムを得た。結果を表1および表2に示す。
実施例9においては、リン酸の添加量を変更した結果、リン酸/リン酸二水素ナトリウム2水和物のモル比が1.47に増加したことにより、ΔCOOHが41eq/tonと実施例2と比較して耐加水分解性が低下する傾向にあるが、本発明の範囲内であり、太陽電池フロントシート用途等に供しても問題ないレベルであった。
実施例16においては、固有粘度を0.68dl/gに変更したことにより、重合反応が長くなり、ジエチレングリコール量が1.4重量%、カルボン酸末端基量が22eq/tonと増加する傾向にあるが、本発明の範囲内であり、太陽電池フロントシート用途等に供しても問題ないレベルであった。
比較例8においては、リン酸二水素ナトリウムが3.5mol/tonと本発明の上限を越えているため、リン酸/リン酸二水素ナトリウム2水和物のモル比が0.56と低減し、ΔCOOHが74eq/ton、白色異物が1.4ppmと本発明の範囲外となり、二軸延伸フィルムのフィッシュアイも5個/A4と耐加水分解性、光学特性ともに不十分であった。
リン酸二水素ナトリウム2水和物エチレングリコール溶液の濃度を1mmol/Lとする以外は実施例6と同様にしてエステル化反応を行ったが、リン酸二水素ナトリウム2水和物エチレングリコール溶液濃度が本発明の範囲の下限以下と薄く、エチレングリコールの量がテレフタル酸対比で5.75モル倍と過剰になったため、精留塔温度の制御が不可となり、ポリエチレンテレフタレート組成物が得られなかった。結果を表1および表2に示す。
Claims (5)
- リン元素を1.7mol/ton以上4.8mol/ton以下含有し、かつ固有粘度が0.60dl/g以上0.70dl/g未満であるポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法であって、エチレンテレフタレートの低重合体にテレフタル酸、およびエチレングリコールを供給し、エステル化反応を経て重縮合反応を行う、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法において、エステル化反応開始前から重縮合反応を開始するまでにリン酸アルカリ金属化合物を2.0mmol/リットル以上30mmol/リットル以下のエチレングリコール溶液で、ポリエチレンテレフタレート組成物に対してアルカリ金属として1.0mol/ton以上3.0mol/ton以下となるように添加することを特徴とするポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
- リン酸アルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液をテレフタル酸と混合して添加することを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
- リン酸アルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液を周速3.0m/s以上30m/s以下で攪拌しているエチレンテレフタレート低重合体に添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
- リン酸アルカリ金属化合物に対して、リン酸を0.8倍モル以上1.4倍モル以下添加する請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
- 助触媒として添加するマンガン元素、カルシウム元素およびマグネシウム元素の総モル量と、アルカリ金属元素のモル量の0.5モル倍の和(M)とリン元素のモル量(P)のモル比(M/P)が1.00〜1.20になるように添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。
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