JP2014189498A - 乳酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不純物の含有量が少なく(好ましくは、不純物選択率が40%以下)、かつ、それにより煩雑な精製工程を必要とすることがなく、さらに、従来よりも低温度/低圧力の反応条件下において、グリセリンから従来と同様30%以上の高収率で目的物である乳酸を得ることができる方法を提供する。
【解決手段】乳酸の製造方法は、グリセリンを原料とし、鉄族元素、貴金属元素、白金族元素および卑金属元素のいずれかに属する活性元素のいずれか1種以上を含む触媒の存在下、かつ、アルカリ性の条件下でグリセリンを水熱反応させることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】乳酸の製造方法は、グリセリンを原料とし、鉄族元素、貴金属元素、白金族元素および卑金属元素のいずれかに属する活性元素のいずれか1種以上を含む触媒の存在下、かつ、アルカリ性の条件下でグリセリンを水熱反応させることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、グリセリンを原料として、ポリ乳酸の原料となる乳酸を製造する方法に関する。
近年、地球温暖化への懸念から、植物油を原料として製造されるバイオディーゼル燃料の生産量がヨーロッパを中心として増加している。バイオディーゼル燃料は植物油脂とアルコールをエステル交換して得られる脂肪酸エステルであり、石油系ディーゼル燃料の代替燃料として使用できる。しかも、バイオディーゼル燃料は植物由来であることから、カーボンニュートラルな燃料であると考えられて注目を集めている。
しかしながら、バイオディーゼル燃料を製造する過程で約1/10重量のグリセリンが副生成されることから、その有効利用方法が求められている。
近年、グリセリンを効率的に乳酸に転換する方法が報告された。乳酸からは、バイオプラスチックの一種であるポリ乳酸を製造することができる。バイオプラスチックとは、石油ではなく植物を原料として製造されたプラスチックでありカーボンニュートラルとして注目を集めている。
特許文献1には、グリセリンを乳酸に転換する方法が報告されている。特許文献1によると、グリセリンを水酸化ナトリウムのような強力なアルカリ性の物質と共に高温高圧の水中で反応させることによって乳酸に転換できることが記されている。この方法によると、乳酸は乳酸ナトリウム水溶液の状態で得ることができる。
上記の方法によって製造された乳酸には、不純物としてギ酸、酢酸などの有機酸類およびメタノール、エチレングリコールなどのアルコール類が含まれている。そのため、目的物である乳酸を得るためにはさらに煩雑な精製工程を経る必要があり、また、不純物含有量が高いことに起因して収率が低いという問題があった。
特許文献1に記載された方法により乳酸を製造するためには、280〜350℃、7〜15MPaという高温かつ高圧の条件下に反応を行う必要があり、このような苛酷な反応条件が不純物生成の増加に関連していると考えられる。
また、上記のような反応条件で乳酸を製造するため、それに耐える高強度の耐圧性反応容器が必要であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、不純物の含有量が少なく(好ましくは、不純物選択率が40%以下)、かつ、それにより煩雑な精製工程を必要とすることがなく、さらに、従来よりも低温度/低圧力の反応条件下において、グリセリンから従来と同様30%以上の高収率で目的物である乳酸を得ることができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる従来技術の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の活性元素を含む触媒を使えば、グリセリンをアルカリ性の物質と共に水熱反応させることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、グリセリンを原料とし、特定の活性元素を含む触媒の存在下、かつ、アルカリ性の条件下でグリセリンを水熱反応させることを特徴とする乳酸の製造方法に関するものである。
本発明において、乳酸の原料となるグリセリンは、いかなる由来のものであってもよいが、例えば、動物または植物の油脂のアルコールによるエステル交換によりバイオディーゼル燃料である脂肪酸エステルを得る際に副生物として生成してくるグリセリンが挙げられる。このような由来のグリセリンを原料とすれば、バイオディーゼル燃料だけでなくバイオプラスチックの普及も促進し、循環型社会の形成に貢献することが期待される。
本発明において用いられる触媒は、本発明により規定される条件下に触媒作用を有すれば、いかなる形態のものであってもよいが、例えば、特定の活性元素の単体からなる触媒、あるいは特定の活性元素がアルミナやシリカや炭素などの不活性な担体に担持された触媒、あるいは活性元素がイオンとして水中に溶解した触媒などが挙げられる。
また、本発明において用いられる特定の活性元素は、他の金属元素と混合して合金状態になっていても良いし、あるいは酸素や硫酸などと化学的に結合し酸化物や硫酸化物のような化合物状態となっていても良く特に限定されるものではない。
特定の活性元素は、鉄族元素、貴金属元素、白金族元素および卑金属元素のいずれかに属するものであり、鉄族元素としては、Fe、Ni、Coが挙げられ、貴金属元素としては、Cu、Ag、Auが挙げられ、白金族元素としては、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptが挙げられ、卑金属元素としては、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Biが挙げられる。これらの活性元素は、単独種として存在していてもよいし、あるいは、これらの複数種を組み合わせたものとして存在していてもよい。
上記本発明において、アルカリ性の条件にするために用いられるアルカリ性物質としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素の水酸化物が挙げられる。
上記本発明の方法を実施するための形態としては、連続式、回分式、半回分式のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。回分式を採用して本発明を実施する場合には、触媒は、原料と共に一括して反応装置に仕込めば良い。また、連続式を採用して本発明を実施する場合には、反応装置に予め触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料と共に触媒を連続的に供給すれば良い。触媒は、固定床、流動床、懸濁床などのいずれの形態であっても良い。
上記触媒の使用量は、触媒の種類、反応条件などに応じて適宜決定すれば良い。
反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるが、通常は反応時間または滞留時間は0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間程度とすれば良い。触媒の使用量を多くすれば、反応時間を短くすることができる。
本発明による方法は、水熱条件下に行われるものであるが、その際の反応温度や反応圧力などのより詳細な諸条件は、触媒の種類や使用量に応じて適宜決定すれば良い。触媒の使用により、反応温度を通常200〜260℃程度に抑えることができる。反応圧力は、反応器内の水が全て蒸発して無くならないように、反応温度に対する水の飽和蒸気圧以上の圧力とすれば良い。通常は1.6〜5.0MPa程度である。このような温度、圧力範囲においても効率的に反応を進行させることができる。
WO2007/001043(特許文献1)に記載された方法により乳酸を製造するためには、280〜350℃、7〜15MPaという高温かつ高圧の反応条件が要求されるため、高強度の耐圧性反応容器が必要であった。
これに対して、本発明の方法では、特定の活性元素を含む触媒の存在下に反応を行っているので、従来よりも低温度/低圧力の反応条件下に高収率で目的物である乳酸を得ることができる。
反応溶媒である水とグリセリンのモル比は通常1〜50(水/グリセリン;mol/mol)程度であり、好ましくは2〜40程度であり、より好ましくは3〜30程度とすれば良い。
WO2007/001043(特許文献1)に記載された方法により乳酸を製造する場合、その反応には高いアルカリ性の反応条件が要求されるため、反応器には、高価な耐腐食性の材質が必要であった。
本発明では、アルカリ性物質とグリセリンのモル比は通常0.2〜20(アルカリ性物質/グリセリン;mol/mol)程度であり、好ましくは0.5〜10程度であり、より好ましくは1.0〜5程度とすればよい。このように従来の方法に比べて、より低いアルカリ性の反応条件とすることができる。
得られる乳酸は、これらの金属元素による乳酸塩水溶液として得ることができる。
本発明の方法は、いずれの活性元素を含む触媒を用いて水熱条件下に反応を行っても乳酸を得ることができるが、使用する触媒によって、グリセリンから乳酸を生成させるための最適な反応条件は異なる。最適な反応条件を選ぶことによって、より効率的にグリセリンから乳酸を生成させることができる。
このようにして得られた乳酸は、ギ酸や酢酸などの有機酸類およびメタノールやエタノールなどのアルコール類からなる不純物の含有量が少なく、また、収率も高い。さらに、活性元素からなる触媒を使用しない場合に比べて、比較的低温度かつ低圧力の反応条件でグリセリンから乳酸を製造することができる。したがって、本発明によると、不純物の含有量が少なく、かつ、より低温度/低圧力の反応条件でグリセリンから乳酸を製造することができる。
本発明の乳酸の製造方法では、グリセリンを原料とし、鉄族元素、貴金属元素、白金族元素および卑金属元素のいずれかに属する活性元素のいずれか1種以上を含む触媒の存在下、かつ、アルカリ性の条件下でグリセリンを水熱反応させる。これにより、高い収率でグリセリンから乳酸を得ることができる。本発明により得られた乳酸には、ギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの不純物の含有量が少ない。従って、乳酸の精製工程におけるエネルギー的な負担を低減させることができる。
また上記により、本発明の方法によると、低コストでグリセリンから乳酸を得ることができる。
上記の効果は、本反応に活性な元素を見出したこと、および、各元素に適した反応条件を見出したことによって得られたものである。例えば、TiやVやAsなど本反応に対して不活性な元素も存在する。数多くの実験により、鉄族元素または貴金属元素または白金族元素または卑金属元素に属する元素が本反応に有益な活性を示すことを見出し、更に、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Ru、Pd、Pt、Zn、Hg、Pb、Sn、Biが本反応に特に有益な活性を示すことを見出した。
また、数多くの実験により、反応温度200〜260℃程度、反応溶媒である水とグリセリンのモル比3〜30(水/グリセリン;mol/mol)、アルカリ性物質とグリセリンのモル比1.0〜5(アルカリ性物質/グリセリン;mol/mol)が本反応に特に好ましい反応条件であることを見出した。
高温、高圧の反応には、強度が強く、肉厚の大きくかつ耐食性の高い反応容器が必要とされるが、反応温度、反応圧力を低下させることで、従来よりも強度が弱く、肉厚が小さくかつ耐食性の低い反応容器でも良くなり、反応装置のイニシャルコストを大幅に低減することができる。
以下に実施例を示し、本発明の方法による反応の特徴を一層明確にする。ただし、本発明の方法は、実施例の範囲に限定されるものではない。
(反応装置)
図1は、本発明の乳酸の製造方法を実施するための反応装置の構成の一例を示す図である。
図1は、本発明の乳酸の製造方法を実施するための反応装置の構成の一例を示す図である。
本発明の実施例に使用される反応装置は、高圧反応器(1)を有しており、その容積は300mLである。この高圧反応器(1)は、その内部に反応液および触媒を仕込み、これらを仕込んだ後に、密閉した状態とし加熱により高圧になっても耐えることができるようになっている。
高圧反応器(1)内には、反応器内の反応液を攪拌することができるように攪拌機(3)が設置されており、また、反応器(1)内の温度を測定する温度計(4)および反応器(1)内の圧力を測定する圧力計(5)が設けられている。
また、高圧反応器(1)の周囲には、高圧反応器(1)を加熱するためのヒータ(2)が設けられている。
(反応生成物の測定)
上記反応装置における反応後の反応液中の反応生成物は、液体クロマトグラフィーによって定量分析した。
上記反応装置における反応後の反応液中の反応生成物は、液体クロマトグラフィーによって定量分析した。
(転化率、選択率および収率)
グリセリン転化率、乳酸選択率、不純物選択率および乳酸収率は、それぞれ次の式に基づいて算出した。
グリセリン転化率、乳酸選択率、不純物選択率および乳酸収率は、それぞれ次の式に基づいて算出した。
グリセリン転化率(%)=(1−B/A)×100
乳酸選択率(%)=(C/(A−B))×100
不純物選択率(%)=(D/(A−B))×100
乳酸収率(%)=(C/A)×100
(乳酸収率(%)=グリセリン転化率×乳酸選択率/100)
式中、
A = 仕込みグリセリンの重量
B = 反応後のグリセリンの残存重量
C = 生成した乳酸の重量
D = 生成した不純物の総重量
である。
乳酸選択率(%)=(C/(A−B))×100
不純物選択率(%)=(D/(A−B))×100
乳酸収率(%)=(C/A)×100
(乳酸収率(%)=グリセリン転化率×乳酸選択率/100)
式中、
A = 仕込みグリセリンの重量
B = 反応後のグリセリンの残存重量
C = 生成した乳酸の重量
D = 生成した不純物の総重量
である。
(無触媒または不活性な元素を使用した場合)
(比較例1:触媒なし)
触媒を使用せずに乳酸生成を行った。図1に示す高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム30g(0.75mol)、水90g(5.0mol)を仕込んで密封した。撹拌下で240℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
(比較例1:触媒なし)
触媒を使用せずに乳酸生成を行った。図1に示す高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム30g(0.75mol)、水90g(5.0mol)を仕込んで密封した。撹拌下で240℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は12.1%で、乳酸選択率は61.2%、乳酸収率は7.4%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は38.8%であった。
(比較例2:触媒なし)
反応温度を260℃に上げた以外は、比較例1と同じ条件で反応を行った。
反応温度を260℃に上げた以外は、比較例1と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は24.3%で、乳酸選択率は54.8%、乳酸収率は13.3%、不純物選択率は45.2%であった。
(比較例3:触媒なし)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)に下げて、反応温度を280℃に上げた以外は、比較例1と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)に下げて、反応温度を280℃に上げた以外は、比較例1と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は69.6%で、乳酸選択率は51.5%、乳酸収率は35.8%、不純物選択率は48.5%であった。
(比較例4:触媒なし)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)に下げて、反応温度を300℃に上げた以外は、比較例1と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)に下げて、反応温度を300℃に上げた以外は、比較例1と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は90.7%で、乳酸選択率は49.4%、乳酸収率は44.8%、不純物選択率は50.6%であった。
(比較例5:不活性な元素触媒)
本反応に対して不活性な元素の効果を確かめるため、酸化チタン(IV)を触媒として用いた。酸化チタン(IV)は市販の試薬(キシダ化学社製、TiO2粉末、特級、純度99.5%)を使用した。
本反応に対して不活性な元素の効果を確かめるため、酸化チタン(IV)を触媒として用いた。酸化チタン(IV)は市販の試薬(キシダ化学社製、TiO2粉末、特級、純度99.5%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム30g(0.75mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で240℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は10.1%で、乳酸選択率は47.6%、乳酸収率は4.8%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は52.4%であった。
(比較例6:不活性な元素触媒)
本反応に対して不活性な元素の効果を確かめるため、触媒を酸化バナジウム(V)に替えて反応を行った。酸化バナジウム(V)は市販の試薬(キシダ化学社製、V2O5粉末、特級、純度99%)を使用した。触媒の種類を変えた以外は、比較例5と同じ条件で反応を行った。
本反応に対して不活性な元素の効果を確かめるため、触媒を酸化バナジウム(V)に替えて反応を行った。酸化バナジウム(V)は市販の試薬(キシダ化学社製、V2O5粉末、特級、純度99%)を使用した。触媒の種類を変えた以外は、比較例5と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は15.2%で、乳酸選択率は39.3%、乳酸収率は6.0%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は60.7%であった。
(比較例7:不活性な元素触媒)
本反応に対して不活性な元素の効果を確かめるため、触媒を酸化砒素(V)に替えて反応を行った。酸化砒素(V)は市販の試薬(キシダ化学社製、As2O5粉末、化学用、純度90%)を使用した。触媒の種類を変えた以外は、比較例5と同じ条件で反応を行った。
本反応に対して不活性な元素の効果を確かめるため、触媒を酸化砒素(V)に替えて反応を行った。酸化砒素(V)は市販の試薬(キシダ化学社製、As2O5粉末、化学用、純度90%)を使用した。触媒の種類を変えた以外は、比較例5と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は11.8%で、乳酸選択率は41.8%、乳酸収率は4.9%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は58.2%であった。
(触媒を使用しない場合のまとめ)
上記の比較例を実施した結果を下記の表1にまとめる。
上記の比較例を実施した結果を下記の表1にまとめる。
触媒を使用しない場合、高いグリセリン転化率を得るためには280〜300℃の反応温度が必要である。240〜260℃の反応温度ではグリセリンはほとんど転化しない。また、不純物が多く生成されるため、乳酸選択率および乳酸収率は低い。
また、TiやVやAsのような元素は本反応に対して不活性であることが分かった。これらの元素を触媒として使用しても、グリセリン転化率や乳酸選択率の向上は望めないことが分かった。
(鉄族元素の触媒効果)
(実施例1:鉄族化合物NiO)
鉄属元素化合物の効果を確かめるため、酸化ニッケル(II)を触媒として用いた。酸化ニッケル(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、NiO、化学用、粉末、純度98%)を使用した。
(実施例1:鉄族化合物NiO)
鉄属元素化合物の効果を確かめるため、酸化ニッケル(II)を触媒として用いた。酸化ニッケル(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、NiO、化学用、粉末、純度98%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で200℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は81.7%で、乳酸選択率は73.8%、乳酸収率は60.3%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は26.2%であった。
(実施例2:鉄族化合物NiO)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げた以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げた以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は86.2%で、乳酸選択率は64.0%、乳酸収率は55.2%、不純物選択率は36.0%であった。
(実施例3:鉄族化合物NiO)
反応温度を220℃に上げた以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
反応温度を220℃に上げた以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は93.1%で、乳酸選択率は68.3%、乳酸収率は63.6%、不純物選択率は31.7%であった。
(実施例4:鉄族化合物NiO)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例1と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は98.4%で、乳酸選択率は76.0%、乳酸収率は74.8%、不純物選択率は24.0%であった。
(実施例5:鉄族Ni)
触媒をニッケルに替えて反応を行った。ニッケルは市販の試薬(キシダ化学社製、Ni粉末、特級、75μm、純度99.9%)を使用した。
触媒をニッケルに替えて反応を行った。ニッケルは市販の試薬(キシダ化学社製、Ni粉末、特級、75μm、純度99.9%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で240℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は87.6%で、乳酸選択率は67.3%、乳酸収率は59.0%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は32.7%であった。
(実施例6;鉄族化合物CoO)
触媒を酸化コバルトに替えた以外は、実施例5と同じ条件で反応を行った。酸化コバルトは市販の試薬(キシダ化学社製、CoO、化学用、38μm、純度75%)を使用した。
触媒を酸化コバルトに替えた以外は、実施例5と同じ条件で反応を行った。酸化コバルトは市販の試薬(キシダ化学社製、CoO、化学用、38μm、純度75%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は74.8%で、乳酸選択率は68.5%、乳酸収率は51.2%、不純物選択率は31.5%であった。
(実施例7:鉄族Fe)
触媒を鉄に替えた条件以外は、実施例5と同じ条件で反応を行った。鉄は市販の試薬(キシダ化学社製、Fe、粉末、特級、150μm、純度99.5%)を使用した。
触媒を鉄に替えた条件以外は、実施例5と同じ条件で反応を行った。鉄は市販の試薬(キシダ化学社製、Fe、粉末、特級、150μm、純度99.5%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は52.7%で、乳酸選択率は65.2%、乳酸収率は34.4%、不純物選択率は34.8%であった。
(実施例8:鉄族化合物FeO)
触媒を酸化鉄(II)に替えた以外は、実施例5と同じ条件で反応を行った。酸化鉄(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、FeO、化学用、粉末、純度60%)を使用した。
触媒を酸化鉄(II)に替えた以外は、実施例5と同じ条件で反応を行った。酸化鉄(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、FeO、化学用、粉末、純度60%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は66.2%で、乳酸選択率は60.4%、乳酸収率は40.0%、不純物選択率は39.6%であった。
(鉄族元素の触媒効果のまとめ)
鉄族元素を触媒に使用した実施例の結果を表2にまとめる。
鉄族元素を触媒に使用した実施例の結果を表2にまとめる。
200〜240℃の低い反応温度でグリセリン転化率は50〜95%程度と高く、しかも、乳酸選択率は60〜75%程度、乳酸収率も35〜75%程度と高かった。触媒を使用しない場合と比較すると、低い反応温度にもかかわらず高いグリセリン転化率で、しかも、高い選択率で乳酸を生成することができた。
(貴金属元素の触媒効果)
(実施例9:貴金属Ag)
貴金属元素の効果を確かめるため、銀を触媒として用いた。銀は市販の試薬(キシダ化学社製、Ag粉末、特級、45μm、純度99%)を使用した。
(実施例9:貴金属Ag)
貴金属元素の効果を確かめるため、銀を触媒として用いた。銀は市販の試薬(キシダ化学社製、Ag粉末、特級、45μm、純度99%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で220℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は51.7%で、乳酸選択率は69.4%、乳酸収率は35.9%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は30.6%であった。
(実施例10:貴金属Ag)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げた以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げた以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は60.3%で、乳酸選択率は83.0%、乳酸収率は50.0%、不純物選択率は17.0%であった。
(実施例11:貴金属Ag)
水酸化ナトリウムの仕込み量を40g(1.0mol)に上げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
水酸化ナトリウムの仕込み量を40g(1.0mol)に上げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は74.0%で、乳酸選択率は86.2%、乳酸収率は63.8%、不純物選択率は13.8%であった。
(実施例12:貴金属Ag)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウムの仕込み量を30g(0.75mol)に上げて、反応温度を260℃に上げた以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウムの仕込み量を30g(0.75mol)に上げて、反応温度を260℃に上げた以外は、実施例9と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は83.5%で、乳酸選択率は78.1%、乳酸収率は65.2%、不純物選択率は21.9%であった。
(実施例13:貴金属化合物AgNO3)
触媒を硝酸銀(I)に替えて反応を行った。硝酸銀(I)は市販の試薬(キシダ化学社製、AgNO3、特級、純度99.8%)を使用した。
触媒を硝酸銀(I)に替えて反応を行った。硝酸銀(I)は市販の試薬(キシダ化学社製、AgNO3、特級、純度99.8%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム40g(1.0mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で260℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は70.0%で、乳酸選択率は64.4%、乳酸収率は45.1%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は35.6%であった。
(実施例14:貴金属Cu)
触媒を銅に替えた以外は、実施例13と同じ条件で反応を行った。銅は市販の試薬(キシダ化学社製、Cu粉末、特級、45μm、純度97%)を使用した。
触媒を銅に替えた以外は、実施例13と同じ条件で反応を行った。銅は市販の試薬(キシダ化学社製、Cu粉末、特級、45μm、純度97%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は63.2%で、乳酸選択率は76.9%、乳酸収率は48.6%、不純物選択率は23.1%であった。
(実施例15:貴金属化合物CuOの効果)
触媒を酸化銅(II)に替えた以外は、実施例13と同じ条件で反応を行った。酸化銅(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、CuO、特製、45μm、純度99%)を使用した。
触媒を酸化銅(II)に替えた以外は、実施例13と同じ条件で反応を行った。酸化銅(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、CuO、特製、45μm、純度99%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は79.7%で、乳酸選択率は72.1%、乳酸収率は57.5%、不純物選択率は27.9%であった。
(貴金属元素の触媒効果のまとめ)
貴金属元素を触媒に使用した実施例の結果を表3にまとめる。
貴金属元素を触媒に使用した実施例の結果を表3にまとめる。
220〜260℃の低い反応温度でグリセリン転化率は50〜85%程度と高く、しかも、乳酸選択率は70〜85%程度、乳酸収率も35〜65%程度と高かった。触媒を使用しない場合と比較すると、低い反応温度にもかかわらず高いグリセリン転化率で、しかも、高い選択率で乳酸を生成することができた。また、鉄族元素と比較すると、若干高い反応温度が必要であるが乳酸選択率はより高い。
(白金族元素の触媒効果)
(実施例16:白金族Pd/C)
白金族元素の効果を確かめるため、炭素上にパラジウムが担持されているパラジウムカーボンを触媒として反応を行った。パラジウムカーボンは市販の試薬(キシダ化学社製、Pd/C、パラジウム含有率10%)を使用した。
(実施例16:白金族Pd/C)
白金族元素の効果を確かめるため、炭素上にパラジウムが担持されているパラジウムカーボンを触媒として反応を行った。パラジウムカーボンは市販の試薬(キシダ化学社製、Pd/C、パラジウム含有率10%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)水90g(5.0mol)、および上記触媒10gを仕込んで密封した。撹拌下で200℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は78.8%で、乳酸選択率は65.2%、乳酸収率は51.4%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は34.8%であった。
(実施例17:白金族Pd/C)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げた以外は、実施例16と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げた以外は、実施例16と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は90.4%で、乳酸選択率は78.3%、乳酸収率は70.8%、不純物選択率は21.7%であった。
(実施例18:白金族Pd/C)
反応温度を220℃に上げた以外は、実施例16と同じ条件で反応を行った。
反応温度を220℃に上げた以外は、実施例16と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は95.1%で、乳酸選択率は69.5%、乳酸収率は66.1%、不純物選択率は30.5%であった。
(実施例19:白金族Pd/C)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例16と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例16と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は98.6%で、乳酸選択率は61.0%、乳酸収率は60.1%、不純物選択率は39.0%であった。
(実施例20:白金族Pt/C)
触媒を炭素上に白金が担持されている白金炭素に替えて反応を行った。白金炭素は市販の試薬(キシダ化学社製、Pt/C、元素分析用、白金含有率50%)を使用した。
触媒を炭素上に白金が担持されている白金炭素に替えて反応を行った。白金炭素は市販の試薬(キシダ化学社製、Pt/C、元素分析用、白金含有率50%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒10gを仕込んで密封した。撹拌下で240℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は86.9%で、乳酸選択率は58.6%、乳酸収率は50.9%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は41.4%であった。
(実施例21:白金族Ru/C)
触媒を、炭素上にルテニウムが担持されてなるルテニウムカーボンに替えた以外は、実施例20と同じ条件で反応を行った。ルテニウムカーボンは市販の試薬(キシダ化学社製、Ru/C、ルテニウム含有率5%)を使用した。
触媒を、炭素上にルテニウムが担持されてなるルテニウムカーボンに替えた以外は、実施例20と同じ条件で反応を行った。ルテニウムカーボンは市販の試薬(キシダ化学社製、Ru/C、ルテニウム含有率5%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は94.4%で、乳酸選択率は63.7%、乳酸収率は60.1%、不純物選択率は36.3%であった。
(白金族元素の触媒効果のまとめ)
白金族元素を触媒に使用した実施例の結果を表4にまとめる。
白金族元素を触媒に使用した実施例の結果を表4にまとめる。
200〜240℃の低い反応温度でもグリセリン転化率は80〜95%程度と高く、しかも、乳酸選択率は60〜75%程度、乳酸収率も50〜70%程度と高かった。触媒を使用しない場合と比較すると、低い反応温度にもかかわらず高いグリセリン転化率で、しかも、高い選択率で乳酸を生成することができた。また、貴金属元素と比較すると、より低い反応温度で高いグリセリン転化率を得ることができるが、乳酸選択率は若干低かった。
(卑金属元素の効果)
(実施例22:卑金属ZnO)
卑金属元素の効果を確かめるため、酸化亜鉛を触媒として反応を行った。酸化亜鉛は市販の試薬(キシダ化学社製、ZnO、特級、純度99.5%)を使用した。
(実施例22:卑金属ZnO)
卑金属元素の効果を確かめるため、酸化亜鉛を触媒として反応を行った。酸化亜鉛は市販の試薬(キシダ化学社製、ZnO、特級、純度99.5%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム20g(0.5mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で200℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は49.2%で、乳酸選択率は82.7%、乳酸収率は40.7%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は17.3%であった。
(実施例23:卑金属ZnO)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例22と同じ条件で反応を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例22と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は58.4%で、乳酸選択率は83.8%、乳酸収率は48.9%、不純物選択率は16.2%であった。
(実施例24:卑金属ZnO)
水酸化ナトリウムの仕込み量を40.0g(1.0mol)に上げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例22と同じ条件で反応を行った。
水酸化ナトリウムの仕込み量を40.0g(1.0mol)に上げて、反応温度を240℃に上げた以外は、実施例22と同じ条件で反応を行った。
その結果、グリセリンの転化率は74.4%で、乳酸選択率は79.1%、乳酸収率は58.9%、不純物選択率は20.9%であった。
(実施例25:卑金属ZnO)
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウムの仕込み量を30.0g(0.75mol)に上げて、反応温度を260℃に上げた以外は、実施例22と同じ条件で実験を行った。
グリセリンの仕込み量を23.0g(0.25mol)に下げて、水酸化ナトリウムの仕込み量を30.0g(0.75mol)に上げて、反応温度を260℃に上げた以外は、実施例22と同じ条件で実験を行った。
その結果、グリセリンの転化率は85.1%で、乳酸選択率は70.7%、乳酸収率は60.2%、不純物選択率は29.3%であった。
(実施例26:卑金属Zn)
触媒を亜鉛に替えて反応を行った。亜鉛は市販の試薬(キシダ化学社製、Zn粉末、特級、純度90%)を使用した。
触媒を亜鉛に替えて反応を行った。亜鉛は市販の試薬(キシダ化学社製、Zn粉末、特級、純度90%)を使用した。
高圧反応器(1)に、グリセリン46.0g(0.5mol)、水酸化ナトリウム40g(1.0mol)、水90g(5.0mol)、および上記触媒25gを仕込んで密封した。撹拌下で260℃に加熱して5時間にわたり本反応条件における飽和蒸気圧力で保持して反応を行った。その後、冷却して開封し、反応生成物を液体クロマトグラフィーで分析した。
その結果、グリセリンの転化率は74.0%で、乳酸選択率は80.6%、乳酸収率は59.6%であった。一方、不純物であるギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを合わせた不純物選択率は19.4%であった。
(実施例27:卑金属Sn)
触媒を錫に替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。錫は市販の試薬(キシダ化学社製、特級、粒径75μm、純度99%)を使用した。
触媒を錫に替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。錫は市販の試薬(キシダ化学社製、特級、粒径75μm、純度99%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は59.5%で、乳酸選択率は85.3%、乳酸収率は50.8%、不純物選択率は14.7%であった。
(実施例28:卑金属Pb)
触媒を鉛に替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。鉛は市販の試薬(キシダ化学社製、特級、粒径75μm、純度99.5%)を使用した。
触媒を鉛に替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。鉛は市販の試薬(キシダ化学社製、特級、粒径75μm、純度99.5%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は72.1%で、乳酸選択率は68.4%、乳酸収率は49.3%、不純物選択率は31.6%であった。
(実施例29:卑金属HgO)
触媒を酸化水銀に替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。酸化水銀(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、HgO、1級、純度98%)を使用した。
触媒を酸化水銀に替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。酸化水銀(II)は市販の試薬(キシダ化学社製、HgO、1級、純度98%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は62.2%で、乳酸選択率は69.8%、乳酸収率は43.4%、不純物選択率は30.2%であった。
(実施例30:卑金属Bi)
触媒をビスマスに替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。ビスマスは市販の試薬(キシダ化学社製、Bi、粉末、純度99%)を使用した。
触媒をビスマスに替えた以外は、実施例26と同じ条件で反応を行った。ビスマスは市販の試薬(キシダ化学社製、Bi、粉末、純度99%)を使用した。
その結果、グリセリンの転化率は53.9%で、乳酸選択率は66.2%、乳酸収率は35.7%、不純物選択率は33.8%であった。
(卑金属元素の触媒効果のまとめ)
卑金属元素を触媒に使用した実施例の結果を表5にまとめる。
卑金属元素を触媒に使用した実施例の結果を表5にまとめる。
200〜260℃の低い反応温度でもグリセリン転化率は50〜85%程度と高く、しかも、乳酸選択率は65〜85%程度、乳酸収率も35〜60%程度と高かった。触媒を使用しない場合と比較すると、低い反応温度にもかかわらず高いグリセリン転化率で、しかも、高い選択率で乳酸を生成することができた。
図2は、本発明の乳酸の製造方法によって得られた乳酸収率を示す図である。
図2の200〜260℃の温度範囲において、以上の本発明の方法に合致する実施例1〜30が比較例1〜4と比較して高い収率で乳酸を得ることができることを示す。
図2によると、銀(Ag)を触媒として用いた実施例10〜12、パラジウム(Pd/C)を触媒として用いた実施例17〜20および亜鉛(ZnO)を触媒として用いた実施例22〜25が、従来法の触媒を用いていない比較例1〜4の場合と比較して、より低温の反応条件で30%以上の乳酸収率を得ることができたことが明らかである。
また、比較例の中で比較例4の場合に最も良好な乳酸収率が得られているが(44.8%)、同程度の乳酸が得られている実施例22、23では、不純物選択率がそれぞれ17.3%および16.2%と非常に低いのに対して、比較例4では、不純物選択率が50.6%と非常に大きな値になっている点で、本発明に合致する実施例の方が良好な結果が得られることが理解され得る。
なお、図2には、図面を見やすくするため、同じ触媒を用いて異なる温度条件で反応を行っている実施例10〜12、17〜20および22〜25および比較例1〜4の結果のみをグラフに表示しているが、他の実施例の場合も、グラフで示した場合と同程度の低温領域(200〜260℃)において30%以上の良好な乳酸収率が得られることは上記の各表中に示した数値から明らかである。
1 高圧反応器
2 ヒータ
3 攪拌機
4 温度計
5 圧力計
2 ヒータ
3 攪拌機
4 温度計
5 圧力計
本発明において用いられる触媒は、本発明により規定される条件下に触媒作用を有すれば、いかなる形態のものであってもよいが、例えば、特定の活性元素の単体からなる触媒、あるいは特定の活性元素がアルミナやシリカや炭素などの不活性な担体に担持された触媒などが挙げられる。
Claims (4)
- グリセリンを原料とし、鉄族元素、貴金属元素、白金族元素および卑金属元素のいずれかに属する活性元素のいずれか1種以上を含む触媒の存在下、かつ、アルカリ性の条件下でグリセリンを水熱反応させることを特徴とする乳酸の製造方法。
- 前記活性元素は、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Ru、Pd、Pt、Zn、Hg、Pb、SnおよびBiからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の乳酸の製造方法。
- 反応溶媒である水とグリセリンのモル比が1〜50(水/グリセリン;mol/mol)であり、アルカリ性物質とグリセリンのモル比が0.2〜20(アルカリ性物質/グリセリン;mol/mol)である、請求項1または2に記載の乳酸の製造方法。
- 前記水熱反応を200〜260℃の温度で行う、請求項1〜3のいずれかに記載の乳酸の製造方法。
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