以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法を適用して製造されたスプレー機構付き合成樹脂製容器1の側面図である。この容器1は、スプレー機構10と、図3や図4に示す容器本体20と、容器本体20を覆う熱収縮性を有するシュリンクフィルム30とを備えている。図1及び図2において斜線部分はシュリンクフィルム30の意匠部分を示している。容器1には、例えば各種薬剤等の液体を収容することができる。収容物の種類は特に限定されない。
スプレー機構10は、従来から周知の構造のものであり、容器1に収容された液体を霧状にして噴射することができるように構成されている。図2にも示すように、スプレー機構10は、キャップ部11と、キャップ部11に一体に設けられたボディ部12と、トリガー13と、噴射口14とを備えている。
キャップ部11は、後述する容器本体20のネジ口部21を覆う筒状に形成されたものである。キャップ部11の内周面には、ネジ口部21に螺合するネジ(図示せず)が形成されている。ボディ部12には、キャップ部11よりも下方へ延びて容器本体20内に達する吸入管(図示せず)が設けられている。また、ボディ部12には、ポンプ(図示せず)が内臓されており、このポンプによって吸入管から液体が吸入される。トリガー13は、ポンプを動作させるものであり、使用者が例えば人差し指(もしくは、人差し指と中指)を掛けることができるようにボディ部12から下方へ湾曲しながら延びている。噴射口14は、ボディ部12の正面に配置されている。
尚、この実施形態の説明では、容器1の正面側(前側ともいう)とは、噴射口14の開口する側をいい、背面側(後側ともいう)とは、噴射口14の開口する側とは反対側をいい、左側とは、容器1を背面側から見たときに左となる側をいい、右側とは、容器1を背面側から見たときに右となる側をいうものとする。
容器本体20は、例えば900ml以上、好ましくは1000ml以上の収容量を持った大容量タイプであり、容器本体20の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を挙げることができる。また、これらの中でも特に好ましいのが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートであり、詳細は後述するが、これらはインジェクションブロー成形によって得られ、さらにポリエチレンテレフタレートは比較的安価で、耐薬品性も高く、しかも容器本体20の薄肉成形が可能で、ポリプロピレンや、ポリエチレンに比べて樹脂そのものの特性である比熱が小さいため、後述するシュリンクフィルム30を熱収縮させる際に容器本体20の温度を上げるのに要する熱量が少なくて済み、少ないエネルギー量でシュリンクフィルム30を加工できる利点があるため、特に好ましい。
図3や図4に示すように、容器本体20は、ネジ部21aを有するネジ口部21と、ネジ口部21から容器本体20の底壁25側へ延びる首部22と、首部22から拡径しながら容器本体20の底壁25側へ延びる肩部23と、肩部23から容器本体20の底壁25まで延びる胴部24とを有している。これらネジ口部21、首部22、肩部23、胴部24及び底壁25は、一体成形されている。
ネジ口部21は略円筒状であり、その外周面に螺旋状に延びる突条からなるネジ部21aが形成されている。このネジ部21aに上記スプレー機構10のキャップ部11が螺合する。
首部22は、上下方向に延びている。首部22の上端部には、水平方向に延びる上面部22aが設けられている。つまり、容器本体20において首部22の上面部22aよりも上の領域(図3や図4に符号Aで示す領域)がネジ口部21である。
図3に示すように、首部22の上部には、正面側へ膨出する膨出部22bが形成されている。膨出部22bは、正面側へ向かって尖るように形成されており、容器本体20の左右両側へ行くほど膨出量が少なくなるように形成されている。
首部22の膨出部22bよりも下側の部分は、図3に示す側面視では容器本体20の下方に向かって前後方向に徐々に拡大する一方、図4に示す背面視では容器本体20の幅が徐々に狭くなった(絞られた)後、拡大するように形成されている。
首部22における絞られた部位によりも下側の所定領域は、下に向けて拡径するように湾曲しながら滑らかに延びる湾曲面部22cで構成されている。湾曲面部22cは、首部22の周方向全周に亘っている。従って、首部22の下側の断面は、図3に示すように容器本体20の前後方向に大きくなるとともに、図4に示すように容器本体20の左右方向にも大きくなっている。
首部22の下端部には上記肩部23が連なることになるが、この首部22と肩部23との境界は、首部22の周長が所定の長さとなった部位に設定されている。すなわち、首部22の湾曲面部22cよりも上側で、かつ、膨出部22bよりも下側の最小周長はこの実施形態では、90mm以上180mm以下の範囲に設定されている。この数値は、容器1を持ってスプレー機構10を操作する際に、首部22に中指、薬指、小指を掛けるとともに、手のひらを首部22にまわすようにして首部22を握ることに基づいて設定している。首部22の周長が90mmよりも短いと、一般的な成人が上記のようにして首部22を握った際、首部22が細すぎることになり、容器1を安定させることが困難になるとともに、内容量が少なくなってしまう。一方、首部22の周長が180mmよりも長いと、指や手のひらが首部22に十分にまわりきらずに首部22を握るのが困難になる。
湾曲面部22cは、当該湾曲面部22cよりも上側の領域に比べて周長が長くなるが、この湾曲面部22cの周長が、その上側の領域に比べて30%以上長くなったところが首部22と肩部23との境界である。つまり、容器本体20において首部22の上面部22aと、首部22と肩部23との境界との間の領域(図3や図4に符号Bで示す領域)が首部22である。
ネジ口部21を含む首部22の上下方向の寸法は、50mm以上100mm以下が好ましい。ネジ口部21〜首部22の上下方向の寸法が50mmよりも短いと、一般的な成人が手で握るには握る範囲が狭すぎる(少なくとも2本の指が掛かりにくくなる)ことになり容器1が安定しなくなる。また、ネジ口部21〜首部22の上下方向の寸法が100mmよりも長いと、手で握った際に手からはみ出る部分が多くなって容器1が安定にし難くなるとともに大容量に対応するには不利になる。
尚、首部22を手で握った際、首部22の膨出部22bが例えば中指と薬指との間に位置するようにすることで、首部22が手の中で上下方向に滑りにくくなる。この場合、中指の一部がスプレー機構10のキャップ部11に掛かることになる。首部22の握り方は使用者によって異なる場合があるので、上記した握り方に限られるものではない。
肩部23は、上記首部22の湾曲面部22cの下端に連なり、下方へ向かって湾曲面部22cよりも大きく拡大しながら延びている。この肩部23も湾曲面部22cと同様に、容器本体20の前後方向及び容器本体20の左右方向に拡大している。肩部23の前後方向の寸法は、左右方向の寸法よりも長く設定されている。
肩部23と胴部24との境界は、肩部23の周長が殆ど変化しなくなった箇所に設定されている。つまり、容器本体20において首部22と肩部23との境界と、肩部23の周長が殆ど変化しなくなった箇所との間の領域(図3や図4に符号Cで示す領域)が肩部23である。肩部23の上下方向の寸法は、首部22の上下方向の寸法よりも短く設定されている。
胴部24の前後方向の寸法は、左右方向の寸法よりも長く設定されており、全体として前後方向に長い長円形に近い断面を有している。胴部24の最大周長は、首部22の湾曲面部22cと膨出部22bとの間の部位の最小周長よりも長く、具体的には、2倍以上に設定されている。これにより、首部22の最小周長を上記範囲内に収まるように短めにしておきながら、胴部24の最大周長を長くして内容積を大きくすることが可能になる。胴部24の最大周長は、200mm以上が好ましく、例えば300mm以上500mm以下に設定するのがより好ましい。胴部24の上下方向の寸法は、首部22の上下方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、内容積が大きくなる。
また、胴部24の周方向の一部には、内容物の量を外部から視認することができる視認用窓部24aが設けられている。この実施形態では、視認用窓部24aは、容器1の背面側に位置しており、胴部24の上端近傍から下端近傍に亘って連続して延びている。
容器本体20の外表面には、シュリンクフィルム30で該容器本体20を覆う際に熱収縮するシュリンクフィルム30の滑り性を向上させるための滑り性向上処理が施されている。滑り性向上処理が施されている部分は、この実施形態では、首部22と肩部23の外表面であり、図3及び図4において細かい点を描いた領域である(符号26で示す)。滑り性向上処理は、少なくとも首部22の外表面に施されていればよく、肩部22や胴部24の外表面にも施すようにしてもよい。
すなわち、後述するスチーム式シュリンク炉を使用してシュリンクフィルム30を熱収縮させる際に、水蒸気がシュリンクフィルム30と容器本体20の外表面との間に入ることがある。このとき、シュリンクフィルム30と容器本体20の外表面とが平滑面同士であって滑り性向上処理が施されていない場合には、シュリンクフィルム30と容器本体20の外表面との間に水分(又は水蒸気)が介在して両者が密着してしまい、シュリンクフィルム30が熱収縮する過程で容器本体20の外表面に貼り付いた状態となり、さらに容器本体20とフィルム30との間に空気が閉じ込められてシュリンクフィルム30にシワを発生させる原因となる。このことは、上述のように周長差が大きい容器本体20を覆う際に特に顕著に現れる。
この実施形態では、滑り性向上処理により、シュリンクフィルム30と容器本体20の外表面との間に水分(又は水蒸気)が存在していても、シュリンクフィルム30が容器本体20の外表面に対して滑りやすくなるような処理を施すことでシュリンクフィルム30にシワが発生するのを抑制している。
具体的には、滑り性向上処理としては、例えば、容器本体20の成形時に成形型を用いてシボを形成するシボ加工処理、容器本体20の成形後に外表面に対して行うフレーム処理、コロナ放電処理等を挙げることができる。これらの処理を施すことで、容器本体20の外表面に凹部及び凸部またはそれらのうち、一方が少なくとも形成されることになるので、シュリンクフィルム30との接触面積が小さくなる。
上記シボ加工処理を施す場合、成形型の成形面に対してエッチングによる化学処理や、サンドブラスト、鏡面仕上げにしない研磨処理等の物理的処理によって凹凸模様を形成するのが好ましい。この成形面の凹凸模様が容器本体20の外表面に転写されることで滑り性向上処理が施されることになる。金型の成形面に対してサンドブラストを行う場合、150番手よりも粗い砂を用いるのが好ましく、100番手以上の粗さの砂を用いるのがより好ましい。
成形型の成形面に形成する凹凸は、Rz(μm)で5以上100以下が好ましく、より好ましくは、10以上80以下である。尚、Rzの上限値は、上記した値に限定されるものではなく、シュリンクラベル(フィルム30)表面に浮き上がる凹凸が目立たなくなる目安の値であり、外観形状(デザイン性)を考慮して適宜設定すればよい。
粗い凹凸を形成する場合には、エッチングが有効である。このような範囲にある凹凸を成形面に形成することで、容器本体20の外表面に滑り性向上処理を確実に施すことができる。
シュリンクフィルム30は、高収縮性を持つフィルムを基材とし、それに印刷層を形成するのが好ましいが、容器本体20の形状を考慮した上、要求される特性や用途、耐久性等に応じて適宜材料選択すればよい。シュリンクフィルム30の基材の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等からなるフィルムを基材とするのが好ましい。
図5に示すように、シュリンクフィルム30は筒状に成形されている。シュリンクフィルム30には、容器本体20の視認用窓部24aに対応する部位に、透光性を有する透光部31が設けられている。シュリンクフィルム30を熱収縮させた際に、透光部31が容器本体20の視認用窓部24aと一致するようになっている。透光部31は、無色透明であってもよいし、半透明であってもよい。また、透光部31は、通常の使用環境で太陽光や照明の光を通すことができればよいので、例えば薄く着色されていてもよい。
シュリンクフィルム30の端部には、パートコート処理を施すようにしてもよい。パートコート処理とは、ヒートシール性を高めるために容器本体20の外表面と接触する部分に感熱接着剤を塗布することによって構成されるものであり、シュリンクフィルム30の端部の滑りを抑制することができる。パートコート処理を施すことで、熱収縮時にシュリンクフィルム30の端部がずり上がるのを抑制することができる。パートコート処理は、仕上がりや容器1の廃棄時のシュリンクフィルム30の取り外しやすさを考慮するとシュリンクフィルム30の端部以外の部分には施さない方が好ましい。
シュリンクフィルム30の基材の材料としては、上記以外にも、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は1種のみ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、同種又は異種の樹脂を積層して積層フィルムとしてシュリンクフィルム30を構成してもよい。透明性が要求される場合には、特にポリエステル系フィルムが好ましい。
シュリンクフィルム30は、単層フィルムからなる単層構造であってもよいし、複数のフィルム層を積層した積層フィルムからなる積層構造であってもよい。積層構造の場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層してもよいし、同系の樹脂からなるフィルム層を積層してもよい。積層フィルムの場合、ポリエステル系樹脂を外層とし、ポリオレフィン系樹脂又はポリスチレン系樹脂を内層とした積層フィルムや、環状オレフィン樹脂を外層とし、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を内層とした積層フィルムであってもよい。
シュリンクフィルム30は、高いシュリンク特性を発揮させる観点から、1軸、2軸または多軸に配向したフィルムであることが好ましい。シュリンクフィルム30が積層フィルムの場合には、積層フィルム中の少なくとも1層のフィルム層が配向していることが好ましい。シュリンクフィルムとしては、特に1軸または2軸配向フィルムが好ましく、より好ましくは、1軸方向に強く配向しているフィルムである。
シュリンクフィルム30に配向を施す方法としては、長手方向、即ち、シュリンクフィルム30の製造ラインの流れ方向(縦方向又はMD方向)及び幅方向、即ち、長手方向と直交する方向(横方向又はTD方向)の2軸延伸、長手方向又は幅方向の1軸延伸等を用いることができる。延伸方式としては、ロール方式、テンター方式、チューブ方式等を用いることができる。
シュリンクフィルム30の製造方法としては特に限定されないが、例えば溶融製膜または溶液製膜等の方法を用いることができる。シュリンクフィルム30の表面には、例えば、コロナ放電処理やプライマー処理等の表面処理を施してもよい。積層構造のシュリンクフィルム30を作製する場合には、例えば、共押出法、ドライラミネート法等の方法を用いることが可能である。
シュリンクフィルム30の主配向方向の、90℃、10秒における熱収縮率は、特に限定されないが、15〜90%が好ましく、より好ましくは20〜85%である。主配向方向と直交する方向の熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、−3〜15%が好ましい。なお、上記「主配向方向」とは主に延伸処理が施された方向(最も熱収縮率が大きい方向)であり、一般的には長手方向又は幅方向であり、例えば、幅方向に実質的に1軸延伸されたフィルムの場合には幅方向である。
シュリンクフィルム30が透明フィルムの場合、シュリンクフィルム30のヘイズ値(%)(JIS K 7105準拠)は、10%未満が好ましく、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満である。ヘイズ値が10%以上の場合には、シュリンクフィルム30を通して印刷を見せる場合に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。
シュリンクフィルム30の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは12μm以上80μm以下、さらに好ましくは15μm以上60μm以下である。
シュリンクフィルム30は、例えば東洋紡績株式会社製「スペースクリーン S7042」、「SV−808」、三菱樹脂株式会社製「LX−10S」、「LX−61S」(以上、ポリエステル系フィルム)、シーアイ化成株式会社製「ボンセット」、グンゼ株式会社製「GMLS」(以上、ポリスチレン系フィルム)、グンゼ株式会社製「FL」(ポリオレフィン系フィルム)、三菱樹脂株式会社製「エコロージュ」(ポリ乳酸系フィルム)、三菱樹脂株式会社製「DL」、グンゼ株式会社製「HGS」(以上、表層がポリエステル系樹脂、中心層がポリスチレン系樹脂の積層フィルム)等を挙げることができる。
シュリンクフィルム30は、少なくとも片面側に印刷層が設けられている。印刷層は、シュリンクフィルム30の全面に設けなくてもよく、一部分にのみ設けてもよい。印刷層は、アンカーコート層などの他の層を介さずに直接設けてもよい。尚、必要に応じて、印刷層を、アンカーコート層を介してシュリンクフィルム30上に設けてもよい。
印刷層は、例えば、単色、複数色による塗り分け、グラデーションカラー、図、写真、文字等のうち、1種のみからなる意匠、または、これらを2種以上組み合わせた意匠で構成することができる。印刷層は、カラー印刷層であってもよいし、白黒印刷層であってもよい。印刷層の表面には、耐磨耗性や滑り性を与える保護印刷層(透明メジウム保護印刷層や白色保護印刷層等)を設けてもよい。印刷層は、内容物に関する表示、使用上の注意事項をはじめとし、各種装飾を構成するものであってもよい。また、印刷層のインキや顔料は特に限定されない。
シュリンクフィルム30には、印刷層の他にも、接着剤層、紫外線防止層、アンカーコート層、プライマーコート層、不織布、紙等の層を必要に応じて設けてもよい。
シュリンクフィルム30の印刷層は、シュリンクフィルム30の内側になるように設けてもよいし、外側になるように設けてもよい。
印刷層を形成する樹脂の主成分としては、例えばアクリル系樹脂が好ましい。これにより、安全性を高めることができる。また、印刷層は、所定量のウレタンアクリル系樹脂を含有するものであってもよい。これにより、シュリンクフィルム30の基材との密着性が良好になるとともに、適度な柔軟性を持たせることもできる。
本実施形態では、シュリンクフィルム30を筒状に形成しているが、巻き付けるように形成してもよい。デザイン性や容器本体20の形状に対する追従性に優れる観点からは、筒状のシュリンクフィルム30が好ましく、特に内側に印刷層を有する方が好ましい。
また、シュリンクフィルム30には、容器1の使用後(廃棄時)にシュリンクフィルム30を破るためのミシン目を構成する多数の孔32が形成されている。この孔32は、シュリンクフィルム30の収縮時にシュリンクフィルム30と容器本体20の外表面との間から空気を抜くための空気抜き孔として機能する。
次に、上記のように構成された容器1を製造する場合について図8のフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップS1において容器本体20を構成する樹脂材料をインジェクション成形(プリフォーム)して図6に示すような筒状の中間成形体40を得る。このインジェクション成形工程では、図示しないが、従来の射出成形機と射出成形用成形型とを用いる。射出成形用成形型から得られた中間成形体40は、容器本体20のネジ口部21となるネジ口部構成部分41と、容器本体20の首部22となる首部構成部分42と、容器本体20の肩部23となる肩部構成部分43と、容器本体20の胴部24となる胴部構成部分44と、底壁25となる底壁構成部分45とを有している。符号41aは、ネジ山となる部分である。
中間成形体40を成形する成形型の成形面には、中間成形体40の首部構成部分42と肩部構成部分43を成形する部位に、シボ加工が施されている。これにより、中間成形体40の首部構成部分42と肩部構成部分43の外表面に凹凸模様が形成される。凹凸模様の形成範囲は、図6において細かい点を描いた範囲である。この凹凸模様の形成は、容器本体20の滑り性向上処理を構成するものであり、滑り性向上処理の一次処理である。
インジェクション成形時に凹凸模様を形成することで、凹凸模様を確実に形成できるので、その後のブロー成形を経ても、外表面の凹凸模様が消えにくく、凹凸模様を明確に残すことが可能になる。特に、この手法は、ブロー成形時のブロー比率が小さい箇所であってブロー成形時のシボ転写が弱い部位に効果的であり、本発明に係る容器本体20の場合であれば、容器本体20の各部位のうち、周長の短い部位(首部22から肩部23の一部分の範囲)で極めて高い効果が得られ、十分な滑り向上効果が発揮される。本実施形態では、容器本体20の少なくとも首部22にシボ加工が施される。
尚、図6のA’で示す領域は図3のAで示す領域に相当し、また、図6のB’で示す領域は図3のBで示す領域に相当し、また、図6のC’で示す領域は図3のCで示す領域に相当し、また、図6のD’で示す領域は図3のDで示す領域に相当する。
その後、ステップS2に進み、加熱された中間成形体40をブロー成形する。このブロー成形工程では、容器本体20を成形するためのブロー成形型(図示せず)を用意し、このブロー成形型の内部に中間成形体40を入れて加熱しながら中間成形体40の内部に高圧空気を吹き込む。
ブロー成形型の成形面には、容器本体20の首部22と肩部23を成形する部位に、シボ加工が施されている。これにより、容器本体20の首部22と肩部23の外表面に凹凸模様が形成される。この凹凸模様の形成は、容器本体20の滑り性向上処理を構成するものであり、滑り性向上処理の二次処理である。この二次処理を経て滑り性向上処理が完成する。以上がインジェクションブロー成形法であり、本発明の容器本体成形工程である。
しかる後、ステップS3に進み、図7に示すように容器本体20にシュリンクフィルム30を装着する。この工程は、例えば図示しない搬送コンベアによって多数の容器本体20を搬送しながら、その搬送途中でシュリンクフィルム30を各容器本体20に被せるようにして連続的に行うことができる。
次いで、ステップS4に進み、シュリンクフィルム30を熱収縮させるシュリンク処理工程(本発明のフィルム被覆工程)に移る。シュリンク処理工程は、図示しないスチーム式シュリンク炉を使用する。上記搬送コンベアは、スチーム式シュリンク炉の加熱室内まで容器本体20及びシュリンクフィルム30を搬送することができるようになっている。
加熱室内には、水蒸気を生成する水蒸気生成装置が設けられている。加熱室内を通過する容器本体20及びシュリンクフィルム30には水蒸気が接触することになり、これにより容器本体20及びシュリンクフィルム30が加熱される。水蒸気による加熱温度は、65℃〜100℃の範囲で適宜設定するのが好ましい。また、過熱水蒸気を用いてシュリンク処理を行ってもよい。過熱水蒸気の温度は、例えば150℃〜200℃に設定することができる。
シュリンクフィルム30が加熱されると収縮し始める。このとき、容器本体20の首部22の最小周長が胴部24の最大周長の1/2以下であり、周長の差が大きいので、シュリンクフィルム30における首部22に対応する部位の収縮率が胴部24に対応する部位に比べて大きくなる。シュリンクフィルム30における首部22に対応する部位が収縮する際、少なくとも首部22の外表面に凹凸を形成することによって滑り性向上処理が施されていて接触面積が小さくなっているので、シュリンクフィルム30と首部22の外表面との間に水分(又は水蒸気)が存在していても、シュリンクフィルム30が外表面に貼り付いてしまうことはなく、収縮時のシュリンクフィルム30が外表面上を滑りやすくなる。さらに、容器本体20とシュリンクフィルム30との間に空気が閉じ込められずにスムーズに空気が抜けるようになる。これにより、収縮後のシュリンクフィルム30にシワ等ができにくく、きれいな状態となる。
シュリンクフィルム30が収縮する際には、シュリンクフィルム30に孔32を設けているので、シュリンクフィルム30と容器本体20との間の空気を孔32からスムーズに抜くことができる。これにより、シュリンクフィルム30がより一層きれいに収縮するようになる。以上の工程を経ることで容器1が得られる。
上記のようにして得られた容器1を使用する場合には、容器本体20の首部22の最小周長を胴部24の最大周長の1/2以下に設定しているので、使用者が首部22を握りやすい。これにより、大容量で重い容器1を安定して長時間に亘って持つことができるようになる。
また、容器1の内容物の量は、視認用窓部24a及び透光部31を通して外部から見ることができる。
以上説明したように、この実施形態に係る容器1の製造方法によれば、使用者が握りやすいように首部22の周長を短くしても、胴部24の周長を長くして大容量化を図ることができる。そして、シュリンクフィルム30が容器本体20の首部22から胴部24までを覆うものなので、デザインの異なる多種の容器1を低コストで準備できる。さらに、容器本体20の首部22の外表面に滑り性向上処理を施したので、容器本体20をシュリンクフィルム30によってきれいに、かつ、歩留まり良く覆うことができる。
また、凹凸の形成によって滑り性向上処理を施すようにしたので、簡単な方法でシュリンクフィルム30の滑り性を向上させることができる。
また、容器本体20の胴部24に滑り性向上処理を施さない視認用窓部24aを設け、シュリンクフィルム30における容器本体20の視認用窓部24aを覆う部位が透光性を有しているので、使用者が内容物の量を外部から把握することができ、利便性を向上できる。
また、シュリンクフィルム30に孔32を形成して空気を抜くことができるようにしたので、シュリンクフィルム30をより一層きれいに収縮させることができ、見栄えを良好にできるとともに、歩留まりを向上できる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
表1では、比較例と本発明の実施例1〜6についてシュリンクフィルム30を収縮させた状態(仕上り状態)についての評価を示している。
表1中、「製法」欄における「I」とは、インジェクションブロー成形で金型にはシボ加工なしの場合であり、「II」とは、インジェクションブロー成形でブロー金型にのみ全体にシボ加工をしている場合であり、「III」とは、インジェクションブロー成形でインジェクション金型の一部(容器本体20の首部22相当箇所)にシボ加工し、ブロー金型の全体にシボ加工している場合であり、「IV」とは、「I」の製法で得た容器本体20に直接サンドブラスト加工を行った場合であり、「V」とは、多層式ダイレクトブロー成形法である。
表1中、「仕上り」欄における「××」とは、シュリンクフィルムにシワが発生した不良品の発生率が10%以上の場合であり、「○」とは、同発生率が1%以上3%未満の場合であり、「◎」とは、同発生率が1%未満の場合である。
また、容器本体の表面粗さRz(μm)の測定器は、表面粗さ測定器「サーフコム130A(東京精密社製)」を用い、接触式で先端半径は2μm、材質はダイヤモンド、測定力は0.75mNである。Rzは、測定区間5mmの凹凸平均値(測定器が選んだ高い点10点、低い点10点の平均値)である。
表1からも明らかなように、比較例では、金型にシボ加工を施さずに、かつ、容器本体にもサンドブラスト加工を施していないので、実施例1〜6に比べて不良品の発生率が高い。これは、Rz(μm)が1.5程度の低い値であって容器本体の外表面に滑り性がなく、容器本体フィルムとの間から空気がスムーズに抜けずに、フィルムにシワが発生し易くなるためである。
一方、実施例1〜6では、比較例に比べてRz(μm)の値が大きいので、容器本体とフィルムとの間に空気が閉じ込められずにスムーズに空気が抜けていき、フィルムへのシワの発生などがなく、きれいに仕上がっている。また、実施例5と6を比較すると、実施例6の方がスチーム出力を小さくしているが、仕上がりを見ると不良品の発生率が3%未満であるので、歩留まりは良好である。