従来から、エンジンにより圧縮機を駆動して作動する空気調和装置が知られている。また、特許文献1に提案されているように、圧縮機を駆動するエンジンの出力軸に連結されて発電する発電機を備えたものも知られている。この空気調和装置では、発電機の出力を使って室外機内の電気機器への電力供給をまかなうだけでなく、空調対象となる部屋の照明やコンセントに電力供給する。これにより、ユーザは、商用電源の供給を受けなくても、発電電力を使って部屋の電気器具等を使用することができる。
このように発電電力を空気調和装置の外部に供給する場合には、発電電力を商用電源と同じ波形の交流電力に変換する必要がある。そのため、空気調和装置は、発電電力を商用電源と同じAC200VあるいはAC100Vの交流電力に変換する電力変換装置を備えている。電力変換装置は、発電電力を入力して一定電圧の直流電力に変換するコンバータと、コンバータの出力する直流電力を商用電源と同じ波形(振幅および周波数)の交流電力に変換するインバータとを備えている。従って、インバータにより変換した交流電力を外部負荷(室外機以外の電気負荷)に供給できるようになっている。
ここで、電力変換装置について図5を用いて説明する。電力変換装置120は、コンバータ130とインバータ140とを備えている。コンバータ130は、発電機30の出力する三相交流電力を入力して直流に変換するコンバータ回路131と、コンバータ回路131の出力電圧が一定の目標電圧に維持されるようにコンバータ回路131を制御するコンバータコントローラ132とから構成される。インバータ140は、コンバータ回路131の出力する電力を入力して交流に変換するインバータ回路141と、インバータ回路141の出力電圧が商用電源と同じ波形となるようにインバータ回路141を制御するインバータコントローラ142とから構成される。
コンバータ回路131は、MOS−FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子S1〜S6をブリッジ接続した3相ブリッジ回路であって、コンバータコントローラ132から出力されるゲート信号にしたがってスイッチング素子S1〜S6のオン/オフ状態が切り替えられて三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ回路131は、2本の直流ライン133,134を介してインバータ回路141と接続されており、変換した直流電力をインバータ回路141に出力する。直流ライン133には、ダイオード135が設けられている。
2本の直流ライン133,134間には、平滑用コンデンサ(電解コンデンサ)150が設けられている。また、直流ライン133,134間の電圧を検出する直流電圧センサ136が設けられている。直流電圧センサ136は、その検出値である直流電圧Vdcをコンバータコントローラ132に出力する。また、直流ライン133,134間には、放電用抵抗素子161と放電用スイッチング素子162とを直列接続した放電回路160が設けられている。
コンバータコントローラ132は、直流電圧Vdcをフィードバックして、直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*と一致するようにデューティ比を設定したゲート信号をコンバータ回路131の各スイッチング素子S1〜S6に出力する。これにより、コンバータ回路131の出力直流電圧が目標直流電圧Vdc*に維持される。
インバータ回路141は、MOS−FETやIGBTなどの半導体スイッチング素子S7〜S10をブリッジ接続したHブリッジ回路であって、インバータコントローラ142から出力されるゲート信号にしたがってスイッチング素子S7〜S10のオン/オフ状態が切り替えられて直流電力を単相交流電力に変換する。上アームとなるスイッチング素子S7と下アームとなるスイッチング素子S8との接続部に交流ライン143が接続され、他方の上アームとなるスイッチング素子S9と下アームとなるスイッチング素子S10との接続部に交流ライン144が接続される。
インバータ回路141の出力側には、フィルタ回路170が設けられている。フィルタ回路170は、交流ライン143、144に直列に設けられるリアクトル171,172と、交流ライン143、144間に設けられるコンデンサ173を備えおり、出力電流のリップルを低減する。
フィルタ回路170の出力が電力変換装置120の出力となる。電力変換装置120の出力端子には、外部負荷Lが接続される。インバータコントローラ142は、交流出力電圧を検出する電圧センサ145の検出値を入力して、交流出力電圧Vacが目標交流電圧Vac*(商用電源と同じ波形電圧)に追従するようにインバータ回路141のスイッチング素子S7〜S10のデューティ比を制御する。
(発明が解決しようとする課題)
電力変換装置120に接続されている外部負荷Lの作動が急に停止された場合のように、電力変換装置120の電力負荷が急激に低下すると、コンバータコントローラ132の制御応答遅れによって、供給電力を瞬時に下げることができない。このため、コンバータ回路131の出力側に発生した余剰電力によって平滑用コンデンサ150が充電され、直流ライン133,134間の電圧が上昇する。この直流ライン133,134間の電圧を直流中間電圧と呼ぶ。直流中間電圧は、電力変換装置120を構成する電子部品の耐電圧以下に抑える必要がある。そこで、コンバータコントローラ132は、直流電圧センサ136により検出された直流中間電圧が閾値を超えたときに、放電用スイッチング素子162を一時的にオン状態に切り替えて、放電用抵抗素子161に放電電流を流して余剰電力を消費させる。
しかしながら、発電機30の出力電力が大きく、電力負荷の変動量が大きい場合には、放電する余剰電力量も大きくなり、放電させるための放電用抵抗素子161の容量を大きくする必要がある。このため、放電用抵抗素子161の設置スペースが大きくなり、基板が大型化してしまう。また、コストアップを招いてしまう。
特許文献2には、直流中間電圧の跳ね上がりを抑制する技術が開示されている。この技術は、モータ駆動装置においてモータからの回生電流により直流中間電圧が上昇することを抑制するために、モータ電圧電流位相差が−90°〜+90°の範囲になるようにモータ電圧位相指令値を補正するものである。しかし、この技術では、複雑な制御が必要となる。
本発明は、上記課題に対処するためになされたもので、直流中間電圧の上昇を簡単に抑制することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
上記課題を解決する本発明の特徴は、エンジン(10)の動力によって圧縮機(20)を駆動して冷媒を循環させる室外機(2)と、前記室外機から送られた冷媒により室内を空調する室内機(3)とを備えた空気調和装置において、
前記エンジンの動力によって発電する発電機(30)と、
前記発電機の出力する交流電力を入力して、設定電圧に制御した直流電力に変換する直流電力変換部(130)と、
前記直流電力変換部から出力された直流電力を入力して交流電力に変換し、その変換した交流電力を前記室外機の外部の電気負荷である外部負荷に出力する交流電力変換部(140)と、
前記室外機内に設けられて前記直流電力変換部の出力する直流電力を入力して作動し目標制御量に従って制御される室外機内機器(41)と、
前記直流電力変換部の出力電圧である直流中間電圧を検出する直流中間電圧検出部(136)と、
前記直流中間電圧検出部により検出された直流中間電圧が予め設定した過電圧防止閾値(Vref1)を超えたときに、前記室外機内機器の目標制御量を増加させることにより前記直流中間電圧の上昇を抑制する直流中間電圧上昇抑制手段(S103,S105)とを備えたことにある。
本発明においては、室外機でエンジンの動力によって圧縮機を駆動して冷媒を循環させ、室内機で室外機から送られた冷媒により室内を空調する。このエンジンは、圧縮機を駆動するだけでなく、発電機を駆動する動力源としても使用される。本発明においては、この発電した電力を、室外機の外部の電気負荷である外部負荷で使用することができるように、直流電力変換部と交流電力変換部とを備えている。直流電力変換部は、発電機の出力する交流電力を入力して、設定電圧に制御した直流電力に変換する。交流電力変換部は、直流電力変換部から出力された直流電力を入力して交流電力に変換し、その変換した交流電力を外部負荷に出力する。
交流電力変換部から出力された交流電力を外部で自由に使えるようになると、その電力負荷変動が大きくなる。そして、電力負荷が急に低下した場合には、直流電力変換部の応答遅れによって直流電力変換部の出力側に余剰電力が発生して回路電圧が過剰に上昇してしまうおそれがある。一般に、直流電力変換部の出力側には、平滑用コンデンサが設けられるため、この平滑用コンデンサが充電されて回路電圧が上昇する。そこで、本発明においては、直流中間電圧検出部が直流電力変換部の出力電圧である直流中間電圧を検出する。そして、直流中間電圧が予め設定した過電圧防止閾値を超えたときに、直流中間電圧上昇抑制手段が、室外機内機器の目標制御量を増加させる。この室外機内機器は、室外機内に設けられて直流電力変換部の出力する直流電力を入力して作動し目標制御量に従って制御されるものである。従って、この目標制御量が増加することによって、室外機内機器で上記の余剰電力の少なくとも一部を良好に消費させることができる。このため、直流中間電圧の上昇を簡単に抑制することができる。また、直流中間電圧の上昇を抑制するための放電用抵抗素子を設けた構成の場合には、放電用抵抗素子の容量を大きくする必要がなく、省スペース、低コストにて実施することが可能となる。
尚、直流電力変換部の出力する直流電力を入力して作動する室外機内機器が複数ある場合には、そのうちの少なくとも一つについて目標制御量を増加させるようにすればよい。また、「目標制御量を増加させる」とは、直流中間電圧が過電圧防止閾値を超えていない通常時に比べて目標制御量を増加させることを意味している。
本発明の他の特徴は、前記室外機内機器は、熱交換用ファンを駆動するファンモータ(41)であり、前記直流中間電圧上昇抑制手段は、前記ファンモータの目標制御量を増加させることにある。
本発明においては、直流中間電圧が予め設定した過電圧防止閾値を超えたときに、直流中間電圧上昇抑制手段が、熱交換用ファンを駆動するファンモータの目標制御量を増加させる。このファンモータは、ファンに連結されたモータと、直流電力が供給されてモータを駆動するモータ駆動回路とを含むものである。この場合、目標制御量は、ファンモータの目標回転数であってもよいし、ファンモータの目標電圧(電圧指令値)であってもよい。ファンモータの回転数や駆動電圧は、モータ駆動回路への通電を制御することによって可変することができる。従って、直流中間電圧上昇抑制手段によってファンモータの目標制御量が増加させられることにより、モータ駆動回路からモータに供給される電力が増加して上記の余剰電力を良好に消費させることができる。
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、本発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
以下、本発明の一実施形態に係る空気調和装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る空気調和装置1の概略構成を表す。空気調和装置1は、室外機2と室内機3と備えている。室外機2は、ガスエンジン10と、圧縮機20と、発電機30と、冷媒配管22と、室外熱交換器24と、膨張弁25と、四方切換弁26と、アキュムレータ27と、クラッチ28と、室外ファン40と、エンジン冷却ユニット60と、空調コントローラ100とを備える。室内機3は、室内熱交換器23と、室内ファン50とを備える。室内機3が設けられる部屋には、室内機リモコン70が設けられる。
ガスエンジン10は、ガス配管11からガス燃料の供給を受けて駆動する。このガスエンジン10は、出力軸12を備え、出力軸12からガスエンジン10の駆動力が外部に取り出される。出力軸12には、第1プーリ13および第2プーリ14が出力軸12と同軸的に連結している。ガスエンジン10は、スタータモータ80によって始動するように構成される。
圧縮機20は、同軸配置された第1入力軸211と第2入力軸212を備える。第2入力軸212が回転した場合に圧縮機20が駆動される。第1入力軸211には第3プーリ213が同軸的に連結している。第1プーリ13と第3プーリ213との間にベルトが巻かれている。したがって、ガスエンジン10の出力軸12の回転駆動力は、第1プーリ13および第3プーリ213を介して第1入力軸211に伝達される。
第1入力軸211と第2入力軸212の途中にクラッチ28が取付けられる。クラッチ28は、例えば2枚のクラッチ板が対面配置されるように構成され、それぞれのクラッチ板が接触した接触状態と離間した離間状態とを採り得ることが可能に構成されていてもよい。クラッチ28は、ガスエンジン10と圧縮機20との接続状態を、ガスエンジン10の動力が圧縮機20に伝達される伝達状態と伝達されない遮断状態とに切り替えることができるように作動する。クラッチ28の作動は、空調コントローラ100により制御される。
圧縮機20は、吸入口21aおよび吐出口21bを有する。圧縮機20が駆動した場合、吸入口21aから冷媒配管22中の低圧ガス冷媒を吸入し、吸入した低圧ガス冷媒を内部で圧縮するとともに、圧縮した高圧ガス冷媒を吐出口21bから冷媒配管22に吐出する。
室内熱交換器23および室外熱交換器24は、それぞれ冷媒配管22内の冷媒を導入するとともに、導入した冷媒と周囲空気とを熱交換させる。図1からわかるように、室内熱交換器23と室外熱交換器24とをつなぐ冷媒配管22の途中に膨張弁25が介装される。膨張弁25はそこを通る冷媒配管22内の冷媒を膨張(低圧化)させる。
四方切換弁26にはそれぞれ独立した2つの通路が内部に形成される。この四方切換弁26は、暖房接続状態と冷房接続状態とを選択的に切り換えることができるように構成される。四方切換弁26が暖房接続状態であるときは、圧縮機20の吐出口21bと室内熱交換器23とが四方切換弁26に形成された一方の通路で連通され、圧縮機20の吸入口21aと室外熱交換器24とが四方切換弁26に形成された他方の通路で連通される。一方、四方切換弁26が冷房接続状態であるときは、圧縮機20の吐出口21bと室外熱交換器24とが四方切換弁26に形成された一方の通路で連通され、圧縮機20の吸入口21aと室内熱交換器23とが四方切換弁26に形成された他方の通路で連通される。暖房運転時に四方切換弁26は暖房接続状態とされ、冷房運転時に四方切換弁26は冷房接続状態とされる。
次に、この空気調和装置1の空調運転(暖房運転、冷房運転)について簡単に説明する。まず、暖房運転について説明する。圧縮機20がガスエンジン10により駆動されると、吸入口21aから低圧ガス冷媒が圧縮機20に吸入されるとともに吸入された低圧ガス冷媒が圧縮される。そして圧縮された高圧ガス冷媒が吐出口21bから吐出される。吐出口21bから吐出された高圧ガス冷媒は四方切換弁26を経由して室内熱交換器23に導入される。室内熱交換器23に導入された高圧ガス冷媒は室内熱交換器23内を流通する間に室内空気に熱を吐き出して凝縮する。このとき高圧ガス冷媒から吐き出された熱によって室内空気が暖められて、室内暖房される。
室内空気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化して室内熱交換器23から排出される。そして、膨張弁25で膨張することにより蒸発しやすいように低圧化された後に室外熱交換器24に導入される。室外熱交換器24に導入された冷媒は室外熱交換器24内を流通する間に外気の熱を奪って蒸発する。
外気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化して室外熱交換器24から排出され、四方切換弁26を経由してアキュムレータ27に供給される。アキュムレータ27では冷媒が液冷媒と低圧のガス冷媒とに分離される。そして、低圧ガス冷媒のみが圧縮機20の吸入口21aから圧縮機20に帰還する。
次に、冷房運転について説明する。圧縮機20がガスエンジン10により駆動されると、圧縮機20の吐出口21bから高圧ガス冷媒が吐出される。吐出口21bから吐出された高圧ガス冷媒は四方切換弁26を経由して室外熱交換器24に導入される。室外熱交換器24に導入された高圧ガス冷媒は室外熱交換器24内を流通する間に外気に熱を吐き出して凝縮する。
外気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化して室外熱交換器24から排出される。そして、膨張弁25で膨張することにより蒸発しやすいように低圧化された後に室内熱交換器23に導入される。室内熱交換器23に導入された冷媒は室内熱交換器23内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされて、室内冷房される。
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化して室内熱交換器23から排出され、四方切換弁26を経由してアキュムレータ27に供給される。そして、低圧ガス冷媒のみが圧縮機20の吸入口21aから圧縮機20に帰還する。
室内ファン50は、室内熱交換器23に送風することによって室内熱交換器23内を流れる冷媒と室内空気との間の熱交換を促進させる。室外ファン40は室外熱交換器24に送風することによって室外熱交換器24内を流れる冷媒と外気との間の熱交換を促進させる。なお、室外ファン40は後述するラジエータ61にも送風する。
発電機30は入力軸31を有する。入力軸31には第4プーリ32が同軸的に連結している。第2プーリ14と第4プーリ32との間にベルトが巻き付けられる。したがって、ガスエンジン10の出力軸12の回転は、第2プーリ14および第4プーリ32を介して発電機30の入力軸31に伝達される。入力軸31が回転駆動することにより、発電機30で発電される。
エンジン冷却ユニット60は、ラジエータ61、冷却水ポンプ62および冷却水配管63を備える。冷却水ポンプ62は冷却水配管63の途中に介装される。冷却水ポンプ62が駆動することによって冷却水配管63内を冷却水が流れる。冷却水配管63は、内部の冷却水がガスエンジン10を冷却することができるようにガスエンジン10に接続される。また、冷却水配管63は、ラジエータ61内を流れることができるようにラジエータ61にも接続される。このラジエータ61は、図1からわかるように室外ファン40に対面して配置される。したがって、室外ファン40はラジエータ61にも送風する。室外ファン40が駆動してラジエータ61に送風されることで、ラジエータ61内を流れる冷却水が冷却される。
室内機リモコン70は、空気調和装置1の運転の開始および停止の指示や、空調条件等の設定を行うことができるように構成される。そして、設定された条件が空調コントローラ100に受信できるように、室内機リモコン70が空調コントローラ100と通信可能に構成される。空調コントローラ100は、室内機リモコン70で設定された条件や、室外機2に備えられている各種センサからの情報に基づいて室外機2の作動を制御する。また、室内機リモコン70は、室内ファン50の作動を制御する。
空気調和装置1の運転を開始させる場合、ユーザが室内機リモコン70の起動スイッチを押圧操作(オン操作)して、空調起動信号を空調コントローラ100に送信する。これにより、空調コントローラ100はスタータモータ80を駆動する。空調コントローラ100は、スタータモータ80の駆動回路(図示略)を内蔵しており、この駆動回路からスタータモータ80に駆動電力を供給する。スタータモータ80の駆動によってガスエンジン10が始動する。ガスエンジン10が一旦始動すれば、その後はガス燃料の供給によりガスエンジン10の駆動が継続されるため、空調コントローラ100は、スタータモータ80の作動を停止させる。また、空調コントローラ100は、ガスエンジン10が始動された後に、ガスエンジン10と圧縮機20との接続状態が伝達状態となるようにクラッチ28を作動させる。これによりガスエンジン10に動力伝達可能に連結された圧縮機20が駆動される。圧縮機20が駆動することによって、冷媒配管22中を冷媒が循環して空調運転が開始される。また、ガスエンジン10が始動されると、ガスエンジン10に動力伝達可能に連結された発電機30も作動して発電を開始する。空調コントローラ100は、空調負荷に応じてガスエンジン10の回転数を制御する。
次に、空気調和装置1の電力供給系統について説明する。空気調和装置1の室外機2は、商用電源から供給される交流電力だけでなく、発電機30によって発電された電力によっても作動することができるように構成されている。従って、商用電源からの電力供給の有無にかかわらず、発電電力により室外機2の動作を継続することができる。また、発電電力を室内機3に設けられた電気機器(例えば、室内ファン50、以下、室内機負荷L1と呼ぶ)や、空気調和装置1以外の電気機器(以下、ユーザ負荷L2と呼ぶ)にも供給できるように外部電力出力機能を有する。以下、室内機負荷L1とユーザ負荷L2とをあわせて外部負荷Lと呼ぶ。
また、空気調和装置1においては、クラッチ28の接続状態を伝達状態と遮断状態とに切り替えることにより、自立空調モードと自立発電モードとに切り替えることができる。自立空調モードにおいては、クラッチ28が伝達状態に維持され、空調動作を行いながら、室外機2内の電気機器および外部負荷Lに発電電力を供給する。従って、商用電源からの電力供給が停止した場合でも空気調和装置1を自立運転させることができる。また、自立発電モードにおいては、クラッチ28が遮断状態に維持され、発電機30のみがガスエンジン10により駆動される。従って、空調動作を停止させた状態で、大きな電力を外部負荷Lに供給することができる。
図2は、空気調和装置1の電力供給系統を概略的に表した図である。室外機2は、商用電力入力部110と、電力変換装置120と、交流系統切替スイッチ111と、充電器112と、バッテリ113と、商用系統コンバータ114と、自立電力外部出力部116を備えている。
商用電力入力部110は、商用電源5から供給された交流電力(商用電力と呼ぶ)を室外機2に取り込む受電盤であって、受電した商用電力を交流系統切替スイッチ111と商用系統コンバータ114とに供給する。
電力変換装置120は、発電機30の発電した電力を入力し、入力した発電電力を商用電源5の電圧波形と同じ波形の交流電力に変換する。電力変換装置120は、図3に示すように、コンバータ130と、インバータ140と、平滑用コンデンサ150と、放電回路160と、フィルタ回路170とを備えている。各回路は、従来技術について説明したもの(図5)と同一であるため、図面に図5のものと同一の符号を付して説明を省略する。尚、放電用抵抗素子161については、従来例のものに比べて小さな容量となっている。
コンバータ130は、発電機30の出力する発電電力を直流に変換してインバータ140に供給するとともに、室外ファンモータユニット41およびポンプモータユニット65に供給する。コンバータ130によって変換された直流電力を自立直流電力と呼ぶ。インバータ140は、自立直流電力を入力して商用電源5と同じ電圧波形となる交流電力に変換する。電力変換装置120によって変換された交流電力を自立電力と呼ぶ。
交流系統切替スイッチ111は、2入力1出力形式の切替スイッチで、商用電源5から供給される商用電力と、電力変換装置120から出力される自立電力とを入力し、何れか一方の電力を選択して充電器112に出力する。この交流系統切替スイッチ111は、商用電力を優先使用し商用電力の供給が停電したときに自動的に自立電力に切り替わるスイッチであってもよいし、あるいは、自立電力を優先使用し自立電力の供給が停電したときに自動的に商用電力に切り替わるスイッチであってもよい。また、オペレータが手動で商用電力と自立電力とを切り替えるものでもよい。
充電器112は、入力した交流電力を使ってバッテリ113を充電する。バッテリ113は、空調コントローラ100に直流電力を供給する。空調コントローラ100は、図示しないマイコン、入出力インターフェース、電源回路、駆動回路等を主要部として備えており、バッテリ113から電源回路に電力供給を受ける。空調コントローラ100は、このバッテリ113の出力電力を使って、スタータモータ80、電磁弁26(四方切換弁26等)、クラッチ28を作動させる。従って、室外機2は、バッテリ113の電力によってガスエンジン10を起動させて空調運転および発電を開始できるようになっている。
商用系統コンバータ114は、交流の商用電力を直流に変換する整流回路で、例えば、ダイオードブリッジ回路にて構成される。商用系統コンバータ114は、商用電力が電圧変動の少ない安定した交流電力であるため、常に一定電圧となる直流電力を出力することができる。商用系統コンバータ114の出力する直流電力を商用直流電力と呼ぶ。商用直流電力の電圧値は、コンバータ130の出力する自立直流電力の電圧値よりも低く設定されている。商用系統コンバータ114の出力する商用直流電力と、コンバータ130の出力する自立直流電力とは、共通の電力ライン115を介して室外機2の電気機器である室外ファンモータユニット41およびポンプモータユニット65に供給される。この場合、商用直流電力の電圧値が自立直流電力の電圧値よりも低くなるように設定されているため、コンバータ130が自立直流電力を出力している場合には、自動的に自立直流電力が室外ファンモータユニット41およびポンプモータユニット65に供給される。一方、コンバータ130が自立直流電力を出力していない場合には、自動的に商用直流電力が室外ファンモータユニット41およびポンプモータユニット65に供給される。
室外ファンモータユニット41は、図3に示すように、室外ファン40を駆動するファンモータ42と、ファンモータ42に交流電力を供給するモータドライバであるインバータ回路43とを備えている。インバータ回路43は、MOS−FETやIGBTなどの半導体スイッチング素子S11〜S16をブリッジ接続した3相ブリッジ回路である。ファンモータ42には、回転数センサ44が設けられている。回転数センサ44は、ファンモータ42の回転数Nf(室外ファン40の回転数に相当する)を表す検出信号を空調コントローラ100に出力する。空調コントローラ100は、回転数センサ44により検出されたモータ回転数Nfが、空調負荷に応じて設定された目標モータ回転数Nf*に追従するようにインバータ回路43の各スイッチング素子S11〜S16のデューティ比を制御する。尚、図3は、インバータ回路43から自立直流電力が室外ファンモータユニット41およびポンプモータユニット65に供給される場合の回路を表している。
ポンプモータユニット65は、図3に示すように、冷却水ポンプ62を駆動するポンプモータ66と、ポンプモータ66に交流電力を供給するモータドライバであるインバータ回路67とを備えている。インバータ回路67は、MOS−FETやIGBTなどの半導体スイッチング素子S21〜S26をブリッジ接続した3相ブリッジ回路である。ポンプモータ66には、回転数センサ68が設けられている。回転数センサ68は、ポンプモータ66の回転数Npを表す検出信号を空調コントローラ100に出力する。空調コントローラ100は、回転数センサ68により検出されたモータ回転数Npが、空調負荷に応じて設定された目標モータ回転数Np*に追従するようにインバータ回路67の各スイッチング素子S21〜S26のデューティ比を制御する。
自立電力外部出力部116は、電力変換装置120の出力する自立電力を入力し自立電力を室外機2の外部へ供給するための電力出力盤、あるいは、電力出力端子である。室外機2の外部には、配電盤200が設けられる。この配電盤200には、自立切替スイッチ210が設けられる。自立切替スイッチ210は、2入力1出力形式の切替スイッチで、一方の入力端子が商用電源5に接続され、他方の入力端子が自立電力外部出力部116に接続される。従って、自立切替スイッチ210は、商用電源5から供給される商用電力と、電力変換装置120から出力される自立電力とを入力し、何れか一方の電力を選択して出力する。
配電盤200は、自立切替スイッチ210の出力に接続される室内機負荷ライン接続用端子221とユーザ負荷ライン接続用端子222とを備えている。従って、自立切替スイッチ210で選択された電力を外部負荷Lである室内機負荷L1およびユーザ負荷L2に供給できるようになっている。この自立切替スイッチ210は、商用電力を優先使用し商用電力の供給が停止したとき(停電時)に自動的に自立電力に切り替わるスイッチであってもよいし、あるいは、自立電力を優先使用し自立電力の供給が停止したときに自動的に商用電力に切り替わるスイッチであってもよい。また、オペレータが手動で商用電力と自立電力とを切り替えるものでもよい。
このように室外機2で自立電力を発電するように構成したシステムにおいては、空気調和装置1内の電気機器だけでなく、家庭、オフィス、工場等で使用される複数の電気機器(ユーザ負荷L2)の電源として自立電力を利用できる。このため、発電機30の出力容量の増大が図られる。ユーザ負荷L2は、ユーザが任意に使用する電気機器であるため、その電力負荷の変動が大きい。従って、ユーザ負荷L2の作動が急に停止された場合のように、電力変換装置120の電力負荷が急激に低下すると、コンバータコントローラ132の制御応答遅れによって、供給電力を瞬時に下げることができず、余剰電力によってコンデンサ150が充電されて直流中間電圧が過剰に上昇するおそれがある。このとき、コンバータコントローラ132は、放電用スイッチング素子162をオンして放電用抵抗素子161にて余剰電力を消費させるが、大きな余剰電力に対応するためには。放電用抵抗素子161を大容量にする必要があり、上述した問題が生じる。
そこで、本実施形態においては、空調コントローラ100が室外ファンモータユニット41の回転数制御の態様を変更することにより直流中間電圧の上昇を抑制する。図4は、空調コントローラ100に実行するファンモータ制御ルーチンを表す。ファンモータ制御ルーチンは、室外機2によって自立電力が外部に供給されている期間において、空調コントローラ100に設けられたマイコンにより所定の短い演算周期にて実施される。この場合、電力変換装置120が作動中であって、コンバータ131回路から室外ファンモータユニット41およびポンプモータユニット65に自立直流電力が供給される状態となっている。
本ルーチンが起動すると、空調コントローラ100は、ステップS101において、直流電圧センサ136により検出される直流中間電圧Vdcを読み込む。続いて、ステップS102において、フラグFが「0」であるか否かを判断する。このフラグFは、直流中間電圧の上昇を抑制する回転数増加モードの実行中であるか否かを表すフラグであり、F=1により回転数増加モードを表し、F=0により通常モードを表す。フラグFは、本ルーチンの起動時においては、「0」に設定されている。従って、空調コントローラ100は、その処理をステップS103に進める。
空調コントローラ100は、ステップS103において、直流中間電圧Vdcが直流中間電圧の過剰上昇を判定する第1判定閾値Vref1よりも大きいか否かを判断する。空調コントローラ100は、直流中間電圧Vdcが第1判定閾値Vref1以下であると判定した場合には(S103:No)、ステップS106において、回転数センサ44により検出されたモータ回転数Nf(実モータ回転数Nfと呼ぶ)を読み込む。続いて、ステップS107において、空調負荷に応じて設定される目標モータ回転数Nf*と実モータ回転数Nfとの偏差ΔNf(Nf*−Nf)を演算し、ステップS108において、偏差ΔNfに基づいて偏差ΔNfをゼロに近づけるフィードバック制御(例えば、PI演算やPID演算)によりファンモータ指令電圧Vf*を演算する。続いて、空調コントローラ100は、ステップS109において、PWM制御によりファンモータ指令電圧Vf*に対応したゲート信号をインバータ回路43のスイッチング素子S11〜S16に出力する。これにより、実モータ回転数Nfが目標モータ回転数Nf*に追従するようにファンモータ42に供給される電圧が制御される。
空調コントローラ100は、ステップS109の処理を実行すると本ルーチンを一旦終了する。そして、所定の短い演算周期にて本ルーチンを繰り返す。こうした処理を繰り返しているうちに、ユーザ負荷L2の作動が急に停止された場合のように、電力変換装置120の電力負荷が急激に低下すると、コンバータコントローラ132の制御応答遅れによって、余剰電力が発生してコンデンサ150が充電されて直流中間電圧が急上昇する。これにより、直流中間電圧Vdcが第1判定閾値Vref1を超過すると、空調コントローラ100は、ステップS103において、「Yes」と判定して、その処理をステップS104に進める。空調コントローラ100は、ステップS104において、フラグFを「1」に設定する。続いて、空調コントローラ100は、ステップS105において、空調負荷に応じて設定される目標モータ回転数Nf*を増加補正する。この場合、空調負荷に応じて設定される目標モータ回転数Nf*に増加係数α(>1)を乗算した値を新たな目標モータ回転数Nf*に設定する(Nf*←Nf*×α)。従って、通常モードに比べて高い目標モータ回転数Nf*が設定されることになる。そして、空調コントローラ100は、その処理をステップS106に進める。これにより、増加補正された目標モータ回転数Nf*に基づく回転数フィードバック制御によりファンモータ指令電圧Vf*が設定される。従って、ファンモータ42への電力供給量が増加する。こうして、電力変換装置120に発生した余剰電力を、ファンモータ42の電力供給量増加により低減することができる。これにより、直流中間電圧の上昇を抑制することができる。
空調コントローラ100は、所定の演算周期にて本ルーチンを繰り返す。この場合、フラグFが「1」に設定されているため、空調コントローラ100は、ステップS102において、「No」と判定し、その処理をステップS110に進める。空調コントローラ100は、ステップS110において、直流中間電圧Vdcが第2判定閾値Vref2よりも小さいか否かを判断する。この第2判定閾値Vref2は、制御のハンチングを防止するために設けたもので、第1判定閾値Vref1よりも小さな値に設定されている。空調コントローラ100は、直流中間電圧Vdcが第2判定閾値Vref2以上である場合には、その処理をステップS105に進める。従って、増加補正された目標モータ回転数Nf*に基づく回転数フィードバック制御が継続される。
こうした処理が繰り返されて、直流中間電圧Vdcが第2判定閾値Vref2よりも小さくなると(S110:Yes)、空調コントローラ100は、ステップS111において、フラグFを「0」に戻す。そして、その処理をステップS106に進める。従って、ステップS105の処理がスキップされるため、目標モータ回転数Nf*の増加補正が行われず、通常の目標モータ回転数Nf*に基づく回転数フィードバック制御によりファンモータ指令電圧Vf*が設定される。
以上説明した本実施形態の空気調和装置1によれば、自立電力を外部負荷Lに供給しているときに、その電力負荷(電力使用量)が急激に減少して直流中間電圧が上昇した場合には、ファンモータ42の制御量を増加補正するため、電力変換装置20で発生した余剰電力をファンモータ42で消費させることができる。しかも、ファンモータ42は、コンバータ回路131から自立直流電力が供給される負荷であるため、効率よく余剰電力を消費することができる。これにより、直流中間電圧の上昇を良好に抑制することができ、放電回路160の放電用抵抗素子161の容量を大きくしなくてすむ。この結果、放電用抵抗素子161の設置スペースを小さくし、基板の小型化を図ることができる。
また、直流中間電圧の上昇を抑制するにあたっては、ファンモータ42の目標制御量を一時的に増加補正するだけで実施することができるため、大幅なコストアップを招くことなく簡単に実施することができる。
以上、本実施形態に係る空気調和装置1について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、直流中間電圧の上昇が検出されたときにファンモータ42の目標制御量を増加させているが、それに加えて、あるいは、それに代えて、室外機2に設けられたポンプモータユニット65のポンプモータ66の目標制御量(目標モータ回転数Np*)を増加させるようにしてもよい。また、直流中間電圧の上昇が検出されたときに目標制御量を補正する対象は、ファンモータ42やポンプモータ66に限るものではない。
また、本実施形態においては、直流中間電圧の過剰上昇を抑制するために、ステップS105において、目標制御量に所定の増加係数αを乗算しているが、それに代えて、例えば、目標制御量を通常値よりも一定量だけ増加させるようにしてもよい。また、目標制御量を、予め設定した直流中間電圧上昇防止用固定値(例えば、最大値)に設定するようにしてもよい。また、目標制御量の増加補正は、モータの目標回転数を増加させるものに限らず、最終的なモータ指令電圧を増加補正するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、ガスエンジン20にて圧縮機20および発電機30を駆動するが、エンジンの形式はガス燃料の供給を受けるものに限るものではなく、ガソリン等の液体燃料の供給を受けるものであってもよい。