上記した空気調和装置においては、必要空調負荷に応じて、エンジンの回転数を変化させることで空調能力を調整している。
エンジンの回転数が高いと、発電機の回転数が増加し、発電機の出力電圧が高くなる。ここで、エンジンのトルク限界等で第1電力変換器を停止させたいときでも、エンジンの回転数が高いと、エンジンで駆動される発電機の出力電圧が高くなり商用電源側の第2電力変換器の出力電圧よりも高くなると、発電機側の電流が補機側に流入する。また第1電力変換器が停止しているとき、発電機側の第1電力変換器の出力電圧は発電機の出力電圧に依存するため、発電機の出力電圧が商用電源側の第2電力変換器の出力電圧よりも高くなると、発電機側の出力電力が補機側に供給されるため、エンジン回転数が増加して発電機の出力電圧が高くなれば、最悪の場合には、補機側に供給される電圧が補機側の最大定格電圧を越え、補機側に絶縁破壊に起こすおそれがある。
かかる事情を考慮し、エンジンの回転数の上限値としては、エンジン本来の回転数の上限値に設定されておらず、発電機の出力電圧が商用電源電圧の下限値よりも高くならないように、エンジンの回転数の上限値が低く抑えられていた。
ところで空気調和装置においては、例えば、気温が低温のときに空気調和機が低温暖房する場合等のように、エンジン排熱の利用性を高めることで空調能力を高めたい場合がある。この場合、エンジン回転数を増加させることにより、低温時における暖房能力等の空調能力を向上させることができるが、上記したように、エンジン回転数の上限値を高くできないため、低温暖房時等のように空調能力を向上させるには限界があった。なお、低温暖房とは、気温がかなり低い場合に行う暖房を意味する。
また、エンジン回転数の上限値が増加したとしても発電機の回転数を低減させる手段として、減速機等をエンジンと発電機との間に設ける手段がある。この場合、減速機により発電機の回転数は低減されるため、エンジン回転数を高めにしたとしても発電機の回転数を低減でき、発電機の出力電圧を抑えることができ、結果として、エンジン回転数の上限値を高めることができる。しかしながら減速機等により発電機の回転数を低減させた場合には、エンジン回転数が低い場合において、発電機の出力電圧が更に低くなるため、発電能力が低下するという問題があった。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、エンジン回転数を高回転領域に増加させるのに有利であり、低温暖房時の暖房能力等の空調能力の向上に有利なエンジン駆動式空気調和装置を提供することを課題とする。
(1)様相1に係るエンジン駆動式空気調和装置は、エンジンと、エンジンにより駆動されるコンプレッサの駆動に伴い循環する冷媒により空調作用を発生させる空調回路と、エンジンにより駆動される発電機と、発電機で発生する交流電圧を直流電圧に変換する第1電力変換器と、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換すると共に第1電力変換器に電気的に繋がる第2電力変換器と、第1電力変換器の出力電力または第2電力変換器の出力電力に基づいて駆動される補機と、前記エンジンのエンジン回転数が所定回転数よりも増加するとき、あるいは、発電機の出力電圧が所定電圧よりも高くなったとき、発電機の永久磁石による電機子の鎖交磁束を弱める弱め磁束制御により発電機の出力電圧を制限電圧値以下に抑える制御手段とを具備することを特徴とする。
エンジンは、ガス燃料を用いるタイプでも、液体燃料を用いるタイプでも良い。空調回路は、コンプレッサの作動により冷媒を圧縮および吸入することにより、冷媒を循環させて空調作用を発生させるものであり、公知の構造が採用される。発電機は、エンジンにより駆動して電気エネルギを生成させるものである。第1電力変換器は、発電機で発生する交流電圧を直流電圧に変換するものである。第2電力変換器は、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換すると共に、第1電力変換器に直流中間を介して電気的に繋がる。補機は空気調和装置用の補機であり、第1電力変換器の出力電力または第2電力変換器の出力電力に基づいて駆動されるものであり、ポンプのモータ、ファンのモータが例示される。
発電機は、永久磁石を有すると共にエンジンからの駆動力により回転するロータと、巻線を有するステータとを備えている。エンジンにより発電機のロータが回転されると、巻線に発電電流が発生する。
発電機側の第1電力変換器の出力側と商用電源側の第2電力変換器の出力側とは、直流電圧によって繋がっている。ここで、エンジン回転数の増加に伴い発電機の回転数が増加し、発電機の出力電圧(発電機の端子電圧)が上昇する。発電機側の第1電力変換器の出力電圧が商用電源側の第2電力変換器の出力電圧よりも高いとき、発電機側の第1電力変換器の出力電力が補機側に供給され、補機が駆動される。これに対して商用電源側の第2電力変換器の出力電圧が発電機側の第1電力変換器の出力電圧よりも高いとき、第2電力変換器の出力電力が補機に供給され、補機が駆動される。
ここで、エンジン回転数が所定回転数よりも増加するとき、あるいは、発電機の出力電圧が所定電圧よりも高くなるとき、制御手段は、発電機の永久磁石による電機子の鎖交磁束を弱める弱め磁束制御を実施し、発電機の出力電圧(発電機出力電圧)を制限電圧値以下に抑える。従って、発電機側の第1電力変換器の出力電圧が商用電源側の第2電力変換器の出力電圧よりも高くなるようなときであっても、発電機側の出力電圧が制限電圧値以下に抑えられる。従って、発電機側の第1電力変換器の高い出力電力が補機側に供給されることが抑えられる。
このため補機の絶縁破壊が抑えられ、補機の保護性が高められる。このようにエンジン回転数を所定回転数よりも高く設定した場合であっても、補機の保護性が確保されるため、空調運転においてエンジン回転数の上限値を高めることができる。従ってエンジンを高い回転数領域で駆動させつつ空調を行うことができ、空調能力(暖房能力または冷房能力)を高めることができる。
上記した発電機は、d軸方向とq軸方向との間の磁気抵抗の差から、d軸インダクタンス(Ld)とq軸インダクタンスとが異なる突極性を有する発電機となる。この発電機において、負のd軸電流(id)を流すことでd軸方向の磁束を減少させることができる。ひいては、発電機に搭載されている永久磁石による電機子の鎖交磁束を打ち消し、発電機の出力電圧(発電機の端子電圧)を制限電圧値以下に抑えることができ、結果として、直流中間部(第1電力変換器と第2電力変換器との接続部)に回生される発電機誘起電圧を制限電圧値以下に抑えることができる。従って、制御手段は、エンジンのエンジン回転数が所定回転数よりも増加するとき、あるいは、発電機の出力電圧が所定電圧よりも高くなるとき、発電機におけるd軸電流を増加させることが好ましい。
第1電力変換器が停止しているとき(図2に示す実施例によれば、半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値を制御していない状態のとき)、発電機側の第1電力変換器の出力電圧は発電機の出力電圧に依存している。故に、発電機の出力電圧が商用電源側の第2電力変換器の出力電圧よりも高いときには、発電機側の出力電流は補機に流入する。このとき最悪の場合、補機の最大定格電圧を超え、絶縁破壊等の損傷を補機に発生させるおそれがある。
そこで上記した制限電圧値とは、第1電力変換器が停止しているとき、発電機の出力電圧が補機に供給されると、絶縁破壊等の損傷を補機に発生させるおそれがあるときにおける発電機の出力電圧と定義される。
弱め磁束制御を実施する基準となるエンジン回転数の所定回転数としては、一般的には、第1電力変換器が停止しているとき、そのエンジン回転数で駆動するエンジンで回転される発電機の出力電圧が補機に給電されると、絶縁破壊等の損傷を補機に発生させるおそれがある回転数をいい、エンジン駆動式空気調和装置の種類、エンジン、発電機、補機側の回路等に応じて適宜設定される。当該所定回転数としては例えば2000〜4000rpmの範囲から適宜設定され、2000rpm、2200rpm、2400rpm、2600rpm、2800rpm、3000rpm、3500rpm等が例示される。エンジン回転数が当該回転数を越えると、補機の絶縁破壊等を抑えるべく、発電機に対して弱め磁束制御を行い、発電機の出力電圧を制限電圧値以下に抑える。
(2)様相2に係るエンジン駆動式空気調和装置は、エンジンと、エンジンにより駆動されるコンプレッサの駆動に伴い循環する冷媒により空調作用を発生させる空調回路と、エンジンにより駆動される発電機と、発電機で発生する交流電圧を直流電圧に変換する第1電力変換器と、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換すると共に第1電力変換器に電気的に繋がる第2電力変換器と、第1電力変換器の出力電力または第2電力変換器の出力電力に基づいて駆動される補機と、第2電力変換器の出力電圧によって補機を駆動する必要がある場合で且つ発電機の出力電圧が商用電源の最低電圧より高くなるとき、発電機の永久磁石による電機子の鎖交磁束を弱める弱め磁束制御により発電機の出力電圧を制限電圧値以下に抑える制御手段とを具備することを特徴とする。弱め磁束制御については、様相1の記載を準用することができる。
第2電力変換器の出力電圧によって補機を駆動する必要がある場合とは、エンジンの空調負荷が大きいときが例示される。従って、エンジンの空調負荷が大きいとき等のように、第2電力変換器の出力電圧によって補機を駆動する必要がある場合において、発電機の出力電圧が補機に供給されると、絶縁破壊等の損傷を補機に発生させるおそれがあるときには、制御手段は、発電機に対して弱め磁束制御を実施し、発電機の永久磁石による電機子の鎖交磁束を弱め、発電機の出力電圧を制限電圧値以下とする。本様相によれば、制御手段は、発電機におけるd軸電流を増加させることにより、発電機の出力電圧を制限電圧値以下に抑えることができる。
様相1によれば、エンジン回転数が所定回転数よりも増加するとき、あるいは、発電機の出力電圧が所定電圧よりも高くなるとき、制御手段は、弱め磁束制御により発電機の出力電圧(発電機の端子電圧)を制限電圧値以下に抑える。このため発電機側の第1電力変換器が停止しているとき等であっても、発電機の高い出力電圧が補機側に供給されることが抑えられる。よって補機側を保護できる。
上記したようにエンジン回転数の上限値を増加させたとしても補機側を保護できるため、空調運転におけるエンジン回転数の上限値を増加させることができる。故に、エンジンを高い回転数領域で駆動させつつ空調を行うことができ、空調能力(暖房能力または冷房能力)を高めることができ、このため、低温時における暖房能力(低温暖房)等のように空調能力を増加させることができる。
様相2によれば、第2電力変換器の出力電圧によって補機を駆動する必要がある場合で且つ発電機の出力電圧が商用電源の最低電圧より高くなるとき、制御手段は、弱め磁束制御により発電機の出力電圧(発電機の端子電圧)を制限電圧値以下に抑える。このためエンジンの空調負荷が大きいとき等であっても、発電機の高い出力電圧が補機側に供給されることが抑えられる。よって補機側を保護できる。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図7を参照して説明する。図1は、本実施形態の空気調和装置の構成図を示す。図1に示すように、空気調和装置は、室外機10、室内機30、及び室外機10と室内機30とを循環する冷媒循環通路1より構成される。室外機10は、圧縮機13(13A,13B)を駆動するためのガスエンジンで形成したスタータ機能付きのエンジン11と、ガス状の冷媒と液状の冷媒とを完全に分離するアキュムレータ12と、空調のために冷媒の熱交換を行う室外熱交換器14とを有する。エンジン11の駆動シャフトには発電機52のロータの駆動シャフトが接続されている。発電機52は、ロータに永久磁石をもつ同期モータで形成されている。室内機30は、室内空気と冷媒とで熱交換を行う室内熱交換器31と、冷媒を膨張させる膨張弁32とを有する。圧縮機13は、ガス状の冷媒を吸い込み、圧縮し、高圧のガス状の冷媒として吐出する。室外熱交換器14は冷媒とエンジン冷却水との間で熱交換するものであり、冷房時にはエンジン冷却水が室外熱交換器14に流れないように、暖房時にはエンジン冷却水が室外熱交換器14を流れるようになっている。
ここで、空気調和装置で室内を冷房するときの作用を説明する。図1の矢印は冷房時における冷媒の流れを示す。ガス状の燃料によりエンジン11は駆動し、圧縮機13A、13Bを駆動させる。圧縮機13A、13Bは、アキュムレータ12のガス状の冷媒を吸引ポート12aから流路1xに吸引して圧縮室で圧縮し、高温高圧状態の冷媒ガスとして流路1a側に吐出する。吐出された冷媒は、オイルセパレータ19において、冷媒からオイルが分離される。オイルが分離された冷媒は、四方弁17に至り、四方弁17のポート17aから流路1bを介して室外熱交換器14に流入する。高温高圧のガス状冷媒は、室外熱交換器14で冷却されて凝縮し、液化される。液化された冷媒は、流路1c、フィルタドライヤ22、ボールバルブ23A、流路1d、ストレーナ31nを経由して膨張弁32に至り、膨張弁32において膨張されて低温となる。低温となった冷媒は、ストレーナ31mを経て室内熱交換器31に至り、室内熱交換器31で蒸発され、室内空気を冷却する。次に冷媒は、流路1e、バルブ23B、流路1f、四方弁17のポート17c、ポート17b、二重管熱交換器18、流路1hを経て、アキュムレータ12の帰還ポート12cに戻される。このように帰還された冷媒は、アキュムレータ12において、液状の冷媒とガス状の冷媒とに分離された状態で収納される。
次に、室内を暖房するときの作用を説明する。ガス状の燃料によりエンジン11が駆動し、圧縮機13A、13Bを駆動する。圧縮機13A、13Bは、アキュムレータ12のガス状の冷媒を吸引ポート12aから吸引して圧縮室において圧縮し、高温高圧状態のガスとして流路1a側に吐出する。吐出されたガス状の冷媒は、オイルセパレータ19において、冷媒からオイルが分離される。オイルが分離された冷媒は、四方弁17のポート17c、流路1f、バルブ23B、流路1eを介して室内熱交換器31に流入する。高温高圧の冷媒は、室内熱交換器31で凝縮して液化し、凝縮熱を室内に放出して室内空気を加熱する。これにより室内が暖房される。次に冷媒は、ストレーナ31mを経て膨張弁32で膨張され、ストレーナ31n、流路1d、バルブ23A,フィルタドライヤ22、流路1cを経て、室外熱交換器14に至る。そして、流路1b、四方弁17のポート17a,17b、二重熱交換器18、流路1hを経てアキュムレータ12の帰還ポート12cに戻る。
上記した空調運転において、空調負荷に応じてエンジン11の回転数は変化する。エンジン11の駆動力に余力があるとき、エンジン11に接続された発電機52により発電が行なわれる。室外機10用の補機として、室外熱交換機14に送風する第1送風機16、エンジン11を冷却するための冷却水ポンプ21が設けられている。また、室内機用の補機として、室内熱交換器31に送風する第2送風機33,34が設けられている。エンジン11が駆動している限り、コンプレッサ13(13A,13B)が駆動するため、空調作用が発揮される。
図2はエンジン駆動式空気調和装置の電気系統を示す。エンジン駆動式空気調和装置は、ガス燃料で駆動されるガスエンジンで形成されたエンジン11と、空調作用を発生させる空調回路(図1参照)と、エンジン11により駆動される発電機52と、発電機52で発生する三相の交流電圧を直流電圧に変換すると共に半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値の調整により直流電圧を昇圧(昇降圧)させ得るコンバータ50(第1電力変換器)と、商用電源41で発生する三相の交流電圧(R相,S相,T相)を直流電圧に変換すると共にコンバータ50の出力側に電気的に繋がる第2電力変換器40と、コンバータ50の出力電力または第2電力変換器40の出力電力に基づいて駆動される補機90と、補機90を駆動させるためのインバータ60とを備えている。
前記したように空調回路は、エンジン11の駆動シャフトにより駆動されるコンプレッサ13(13A,13B)をもち、コンプレッサ13(13A,13B)の駆動により冷媒を循環させることにより空調作用を発生させる。発電機52は、巻線を有するステータと、巻線と鎖交すると共にステータに対して回転する永久磁石を有するロータとを備えている。ロータはエンジン11により回転駆動され、ステータの巻線の内部を回転し、発電を行う。
補機90としては、上記した空調回路(図1参照)で使用されている第1送風機16または冷却水ポンプ21等が相当する。図2に示すように、エンジン11と発電機52との間には、エンジン11の回転速度を増速(変速)して発電機52に伝達する増速機(変速機)59が設けられている。
図2において、コンバータ50は、発電機52で発生する三相の交流電圧を直流電圧に変換するためのものであり、半導体スイッチング素子50a(例えばIGBT)と、環流用のダイオード50cとの組を複数(6組)を備えている。コンバータ50の出力側には、平滑用のコンデンサ50dが接続されている。
図2に示すように、商用電源41側の第2電力変換器40は、商用電源41で発生する交流電圧(R相,S相,T相)を全波整流して直流電圧に変換するため、順変換用の複数個(6個)のダイオード42を備えている。第2電力変換器40の出力側には、平滑用のコンデンサ50dが接続されている。
インバータ60(PWMインバータ)は、直流電圧を交流電圧に変換して補機90を駆動させるものである。インバータ60は、第2電力変換器40からの直流電圧またはコンバータ50からの直流電圧を交流電圧に変換するため半導体スイッチング素子60a(例えばIGBT)と、環流用のダイオード60cとを備えている組を6組有する。インバータ60には補機90が接続されている。モータコントローラ73がインバータ60に接続されており、インバータ60における半導体スイッチング素子60aのスイッチングを制御し、補機90に供給される電圧をPWM制御する。
図2に示すように、エンジン11の出力シャフトには発電機52のロータが増速機59を介して接続されている。発電機52から導出された3本の交流電線53には、コンバータ50が接続されている。交流電線53の3本のうち2本には、これの電流値を検出するためのカレントトランス(電流センサ)51が取り付けられている。コンバータ50の出力側には、第2電力変換器40に接続された直流電線54が2本導出されている。一方の直流電線54には、これの電流値を検出するためのカレントトランス(電流センサ)56が取り付けられている。直流電線54,54とインバータ60とを繋ぐ電線58a,58bが設けられている。電線58aには、これの電流値を検知するためのカレントトランス(電流センサ)57が取り付けられている。
交流電圧を発生させる商用電源41の電圧が第2電力変換器40に入力される。コンバータ50から導出されている直流電線54は、第2電力変換器40から出力している直流電線2本と、直流中間部54xを介して接続されている。従って発電機52側のコンバータ50の出力側と商用電源41側の第2電力変換器40の出力側とは、直流中間部54x,54pを介して直流電圧によって繋がっている。直流電線54はインバータ60に接続されている。この直流電線54,54には、電圧センサ55が接続されている。第1電力変換器であるコンバータ50の出力側の直流電線54には、電流センサ56が接続されている。
制御装置(制御手段)7は、メインコントローラ70と、演算装置71と、ドライブ回路72と、モータコントローラ73とを備えており、発電機52に対して弱め磁束制御を実施することができる。演算装置71は、電カレントトランス(電流センサ)51で検知した電流から位相を演算し、発電機52の回転数を求める。ドライブ回路72は、コンバータ50の半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値の信号を出力する。演算装置71およびドライブ回路72はコンバータコントローラ75を形成する。本実施形態では、制御装置(制御手段)7が発電機52に対して弱め磁束制御を実施するときの基準は、発電機52の出力電圧が制限電圧値V1(V1:350V)を越えるときである。なお制限電圧値V1は350Vとされているが、これはあくまでも例示であり、350Vに限定されるものではない。
モータコントローラ73は、インバータ60を制御して補機90を制御する。カレントトランス(電流センサ)51の信号は、演算装置71で演算され、ドライブ回路72を介してコンバータ50に入力される。これによりコンバータ50の半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値を制御し、発電機52の出力電圧を電圧値Vx(350V,制限電圧値V1と同じ電圧)に昇圧させることができる。この結果、昇圧された電圧値Vxが商用電源41側の第2電力変換器40の出力電圧(257〜314V)よりも高くなり、商用電源41からの電流流入を抑えて発電機52の発電電力を使用することができる。なお電圧値Vxは350Vとされているが、これは例示であり、制限電圧値V1と同様に異なっていても良い。
ここで、コンバータ50の制御について発電機52の出力電圧が高めになれば、コンバータ50の半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値が小さくなる。発電機52の出力電圧が低めになれば、コンバータ50の半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値が大きくなる。このように制御装置7はコンバータ50の半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ値を制御する。この結果、通常運転時には、コンバータ50の半導体スイッチング素子50aによるデューティ制御により、直流中間部54xにおける直流中間電圧が電圧値Vx(350V)となるように、コンバータ50により直流中間部54xの直流中間電圧が一定に制御される。このため通常運転時には、発電機52の出力電圧(発電機52の出力電圧)は、弱め磁束制御の基準となる制限電圧値V1(V1:350V)を越えず、基本的には、制限電圧値V1の電圧値と同値である。このようなエンジン回転数領域(発電機回転数領域)でエンジン11は駆動される。このため、コンバータコントローラ75は発電機52に対して弱め磁束制御を実行しない。この場合、補機90が必要とする必要負荷電力に応じて、制御装置7のコンバータコントローラ75は、ドライブ回路72を介してコンバータ50の半導体スイッチング素子ング素子50aのオン・デューティ比を制御し、これにより直流中間電圧は電圧値Vx(350V)に一定に維持されるように発電機52の出力電圧が制御される。
これに対して、エンジン回転数が高くなり、ひいては発電機52の回転数が高くなり、発電機52の出力電圧(発電機52の端子電圧)が直流中間電圧で制限電圧値V1(350V)を越えるようなエンジン高回転数領域では、コンバータコントローラ75は、発電機52に対して、ベクトル制御を用いた弱め磁束制御を実行する。弱め磁束制御では、制御装置7により、発電機52は、負のd軸電流(id)を増加させるように制御される。故にd軸電機子反作用による減磁効果が発電機52において得られる。即ち、発電機52の永久磁石による磁束が減磁効果によって消される方向に、発電機52の電機子鎖交磁束が減少され、ひいては発電機52の出力電圧の上昇が抑えられる。従って、直流中間部54xの直流中間電圧は、弱め磁束制御により制限電圧値V1(V1:350V)またはそれ以下に維持される。
また、空調負荷が重たく、エンジン11のトルクに余裕がない場合等のように、発電機52による発電を停止させたいものの、空調を優先的に継続する必要があり、エンジン11を停止させることができない場合がある。かかる異常時の場合には、商用電源41側の第2電力変換器40の出力電力で補機90の消費電力を補う。この場合には、発電機52側のコンバータ50の出力電圧を降圧させ、商用電源41側の第2電力変換器40の出力電圧(257〜314V)よりも低くする必要がある。このためメインコントローラ70は、コンバータ50の半導体スイッチング素子50aのオン・デューティ比を制御し、発電機52側のコンバータ50の出力電圧をV2(230V)程度まで降下させる。この場合、エンジン回転数が大きくなると、発電機52側のコンバータ50の出力電圧が電圧値V2を越えてしまう。それを回避するためメインコントローラ70は弱め磁束制御を行う。
発電機52の発電特性を示す図3を用い、更に説明を加える。図3では、縦軸の左軸は発電機52の出力電圧[V]を示す。縦軸の右軸は発電機52の発電機電流[A]を示す。横軸の下軸はエンジン11および発電機52の回転数[rpm]を示す。特性線W1は、商用電源41側の第2電力変換器40の出力電圧の最低電圧に相当する電圧を示す。特性線W2(W2a,W2b)は、エンジン11回転数に依存する発電機52の出力電圧を示す。特性線W4は発電機52の出力電流を示す。図3において、特性線W2(W2a,W2b)に示すように、エンジン回転数が増加して発電機52の回転数が増加して発電機52の出力電圧が増加すれば、特性線W4に示すように、発電機52の出力電流は次第に減少する。ここで、発電機52のコイルをリアクトルとし、コンバータ50の半導体スイッチング素子50aのスイッチング量(オン・デューティ値)により、発電機52の出力電圧は適宜、昇圧または降圧される。従ってコンバータ50は、発電機52の出力電圧に対して昇圧回路、昇降圧回路として働き、発電機52側のコンバータ50の出力電圧は特性線W1を高圧側に越えることができる。
ここで、図3において、特性線W2aは、通常時に弱め磁束制御する場合を示す。特性線W2aによれば、通常時においてエンジン回転数が所定回転数N3よりも増加し、発電機回転数が増加し、発電機52の出力電圧が制限電圧値V1(V1:350V)を高圧側に越えるようなときにおいて、弱め磁束制御が実施される。従って、エンジン回転数が所定回転数N3よりも増加するときであっても、発電機52の出力電圧は、弱め磁束制御により制限電圧値V1(V1:350V)に一定制御される。
これに対して、図3において、特性線W2bは、上記した異常時において弱め磁束制御する場合を示す。特性線W2bによれば、異常時においてエンジン回転数が所定回転数N2よりも増加し、発電機回転数が増加するとき、弱め磁束制御が実施される。従って、エンジン回転数が所定回転数N2よりも増加するときであっても、コンバータ50の出力電圧は制限電圧値V2を越えることなく、制限電圧値V2(V2:230V)に一定制御される。
以下、弱め磁束制御について説明を更に加える。図4はベクトル制御における基本ベクトル図をd軸およびq軸の線図として示す。図4において、d軸(d-axis)はψa,υdを示す。q軸(q-axis)はωψa(ωψa=ω・ψa),υqを示す。図4から理解できるように、ω・ψaのベクトル、ω・Lq・iqのベクトル、ω・Ld・idのベクトルにより、発電機52の出力電圧(発電機52の端子間電圧)Voが規定される。図4に示すように、ω・Ld・idのベクトルAはω・ψaのベクトルBと逆向きである。従ってエンジン11の回転数が増加し、発電機52の角速度ωが速くなり、ω・ψaのベクトルBが大きくなったとしても、ω・Ld・idのベクトルAを大きくすれば、発電機52の出力電圧Voを減少させることができる。Ldは固定値であるため、d軸電流idを増加すれば良いことがわかる。
ここで、電圧方程式を数1に示す。
υa 、υb 、υc は発電機52の各相の電機子電圧を示す。ia ,ib ,ic は、発電機52の各相の電機子電流を示す。υd,υq は、発電機52の電機子電圧のd軸(d-axis)成分,q軸(q-axis)成分を示す。id,iqは、発電機52の電機子電流のd軸成分,q軸成分を示す。Raは、発電機52の電機子巻線抵抗であり、簡易的に0とみなし得る。Ld,Lq は、発電機52のステータの巻線におけるd軸インダクタンス,q軸インダクタンスを示す。p は微分演算子(p=d/dt)を示す。ω は、発電機52の電機子角速度を示す。Ψa は、発電機52の永久磁石の電機子鎖交磁束を示す。Ψo は、発電機52の永久磁石の全電機子鎖交磁束を示す。
弱め磁束制御を実行する制御システムの図を図5に示す。図5に示すように、制御システムは、直流電圧最適制御64と、トルク演算部63と、ベクトル電流制御アルゴリズム65、推定アルゴリズム66と、3相/2相・静止/回転変換67と、2相/3相・静止/回転変換62と、発電機52を制御する発電機制御61を備える。
直流電圧最適制御64は、トルク計算部63及びベクトル電流制御アルゴリズム65と接続している。トルク計算部63は、ベクトル電流アルゴリズム65及び推定アルゴリズム66とに接続されている。
直流電圧最適制御64について説明する。直流電圧最適制御64には、商用電源41の商用電流流入値 I0(n) 、コンバータ50の出力電圧の直流電圧実測値 Vdc(n) 、直流電圧指令初期値 Vdc(0) が入力される。(n) は処理時点のサンプル値である。なお、Vdc(n)はセンサ55で測定される。Idc(n)はセンサ57で測定される。
次に、トルク計算部63について説明する。トルク計算部63には、直流電圧最適制御64より、負荷(モータ90)の直流電圧指令値Vdc* が入力される。また、トルク計算部63には、負荷(モータ90)側の直流電流実測値 Idc(n) が入力される。(n) は処理時点のサンプル値を示す。ここで、Idc(n) は、負荷であるモータ90側の直流電流実測値であり、モータ90側の直流カレントトランス(電流センサ)57により測定される。また、推定アルゴリズム66より、発電機52の回転子角速度ωm(n)が入力される。これらの値より、トルク計算部63は数2を用いて発電機52からの取り出し出力P(M)を算出する。
次に、トルク計算部63は数3を用いてiq を求める。ここで、T*はトルクである。Pn は極対数である。Ψa は発電機52の電機子鎖交磁束であり、固定値である。(Ld−Lq)は固定値である。トルク計算部63はIq* として出力する。Iq*はPI制御され、υq(発電機52の電機子電圧のq軸(q-axis)成分)が求められる。更にυqは2相/3相・静止/回転変換62に入力される。
発電機52からの出力電流は、数4に示すような発電機52の限界電流Ia による制限を常に加えられている。
ここで、Ie は、相電流実効値である。a,bは、同期モータで構成された発電機52のモータ特性より決定される係数である。すなわち、発電機52が過度に加熱することを防止するために、発電機52からの出力電流を制限しているのである。
ここで、数4の意味は、得られたidとiqの自乗和の平方根 √(id2+iq2)が、√3(a・ω+b)よりも大きいときには、√3(a・ω+b)で決定されるIa に基づいてid,iqを決定することである。
次に、ベクトル電流制御アルゴリズム65について説明する。ベクトル電流制御アルゴリズム65には、直流電圧最適制御64より、直流電圧指令値Vdc* が入力される。また、トルク計算部63より、Iq* がベクトル電流制御アルゴリズム65に入力される。また、推定アルゴリズム66より、発電機52の回転子角速度ωm(n)がベクトル電流制御アルゴリズム65に入力される。そして、ベクトル電流制御アルゴリズム65は、数5に基づいて、d軸電流id*を求める。
ここで、Vdc* は、コンバータ50の出力電圧の直流電圧指令値であり、Vdc(I0=0) である。Vdc(0) は、直流電圧指令値の初期値である。Vdc* については、初期値を282Vと、I0(n) の目標値との偏差を加算する形で、I0(n)=0となるように、PI制御する。ただし、Vdc*=282〜320Vとする。I0(n)はカレントトランス(電流センサ)56により測定される。
ベクトル電流制御アルゴリズム65は、Id*を出力し、Id*をPI制御し、υd(発電機52の電機子電圧のd軸(d-axis)成分)を求める。υdは2相/3相・静止/回転変換62に入力される。前述したようにυdも2相/3相・静止/回転変換62に入力される。これに基づいて、2相/3相・静止/回転変換62は、発電機52の各相の電機子電圧υa 、υb 、υc を求める。υa 、υb 、υcは発電機制御61に入力され、電機子をもつ発電機52の各相の電機子電流ia ,ib ,icが求められる。
ここで図2から理解できるように、カレントトランス(電流センサ)51により電機子電流ia,icが計測されている。電機子電流ia,icは、3相/2相・静止/回転変換67に入力され、電機子電流のd軸成分id(n)、電機子電流のq軸成分iq(n)として変換される。3相/2相・静止/回転変換67より変換された電機子電流のd軸成分id(n)、電機子電流のq軸成分iq(n)は、PI制御前のId*、Iq* にフィードバックされる。ここで、入力Id*、Iq* に対して出力id(n)、iq(n)の偏差がゼロになるようにフィードバック制御される。
ここで、数5に示す式において、電機子巻線抵抗Raを実質的に0として展開すると、発電機出力電圧Voをあらわす数6の式が得られる。
数6に示す式6によれば、発電機出力電圧Voを減少させるためには、発電機52におけるd軸インダクタンスLdは固定値であるため、発電機52における電機子電流のd軸電流idを減少させることが有効であることがわかる。
図6は、エンジン11および発電機52の回転数が高くなく、発電機52の電機子の角速度ωが高くない場合におけるベクトル図(弱め磁束制御が実施されていない)を示す。ω・ψaのベクトル、ω・Lq・iqのベクトル、ω・Ld・idのベクトルにより、発電機52の出力電圧(発電機52の端子電圧)Voが電圧値Vx(Vx:350V)として規定されている。
これに対して図7は、エンジン11の回転数が高くなり、発電機52の回転数が高くなり、発電機52の電機子の角速度ωが速くなった場合におけるベクトル図(弱め磁束制御が実施されている)を示す。エンジン11の回転数が高くなり、発電機52の回転数が高くなり、電機子の角速度ωが速くなると、角速度ωが増加するため、図7から理解できるように、ω・ψaのベクトルが大きくなり、本来的には発電機52の出力電圧(発電機52の端子電圧)Voが増加し、制限電圧値V1(V1:350V)よりも大きくなるはずである。
しかしながら本実施形態によれば、エンジン11の回転数が高くなり、発電機52の回転数が高くなり、角速度ωが角速度所定値よりも増加するときには、制御装置7により弱め磁束制御が実行され、発電機52における電機子電流のd軸電流id(負の方向)が増加されている。これにより発電機52においてd軸方向の磁束を減少させることができる。ひいては、発電機52に搭載されている永久磁石による電機子の鎖交磁束が打ち消され、発電機52の出力電圧(発電機52の出力電圧)Voを制限電圧値V1(V1:350V)に抑えることができる。
なお、発電機52における電機子の負のd軸電流(id)を更に増加させれば、発電機52の出力電圧(発電機52の出力電圧)Voを更に低下させて、制限電圧値V1(V1:350V)未満に抑えることができる。
以上説明したように本実施形態によれば、前述したようにエンジン11のエンジン回転数が増加すると、発電機52の回転数が増加し、発電機52の出力電圧が上昇する。ここで、コンバータ50の出力電圧(直流電圧)が第2電力変換器40の出力電圧(直流電圧)よりも高い場合、発電機52側のコンバータ50の出力電力(直流電力)がインバータ60に供給され、インバータ60により三相の交流電圧に変換され、補機90に供給され、補機90が駆動される。これに対して、商用電源41側の第2電力変換器40の出力電圧(直流電圧)がコンバータ50の出力電圧(直流電圧)よりも高い場合、第2電力変換器40の出力電力(直流電力)がインバータ60に供給され、インバータ60により三相の交流電圧に変換され、補機90に供給され、補機90が駆動される。
ところでエンジン11の回転数を増加させる必要がある場合がある。例えば、低温暖房時等のように暖房能力を高めるとき等のように空調能力を高めたいときである。この場合、エンジン11の回転数を増加させて高回転数領域(例えば2200rpm以上)とさせるため、それに応じてコンプレッサ13(13A,13B)が駆動し、高い空調能力が発揮される。この場合、エンジン11の回転数が所定回転数よりも増加し、発電機52の回転数が増加し、発電機52の出力電圧が上昇して高くなる。この場合、発電機52側のコンバータ50の出力電圧が商用電源41側の第2電力変換器40の出力電圧よりも高くなるため、コンバータ50の出力電力がインバータ60を介して交流電圧に変換され、補機90が駆動される。
この点について本実施形態によれば、エンジン11の回転数が所定回転数よりも増加して発電機52の回転数が増加するとき、あるいは、発電機52の出力電圧が商用電源41の電源電圧(下限値)よりも高くなるとき、制御装置7は、弱め磁束制御により、発電機52の出力電圧を抑制して補機90の過電圧を抑制する。これにより発電機52からの出力電圧が高くなっても、補機90の過電圧を抑制する。このため、エンジン11の回転数の上限値を増加させることができる。ひいては発電機52の回転数の上限値を増加させることができる。このため、コンバータ50の半導体スイッチング素子50a等が動作していないときであっても、発電機52で発電された高い発電電圧がインバータ60側および補機90側に供給されることが抑制される。このためインバータ60の半導体スイッチング素子60a、補機90等の絶縁破壊が抑えられ、インバータ60および補機90の保護性が高められる。この結果、エンジン回転数の上限値を従来よりも増加させて高くすることができ、従って、低温暖房等に適するように空調能力を高めることができる利点が得られる。本実施形態によれば、上記したようにインバータ60の半導体スイッチング素子60a、補機90等の絶縁破壊が抑えられるため、発電機52の回転数の上限値を高くすることができ、エンジン回転数の上限値も同様に高くすることができる。
ところで、エンジン駆動式空調装置においては、部分負荷効率の向上のため、コンプレッサ13の回転数を段階的に変化させることにしている。この必要性から、エンジン回転数の下限値を低くしてエンジン回転数範囲を低回転方向へも拡大させることが要請されている。
しかしながら空調運転時においてエンジン回転数を低くすると、必然的に発電機52の回転数が低くなり、発電機52からの出力電圧が低くなる。この場合、図3の特性によれば、同一電力を得るためには、発電機52から出力電流が増加するため、発熱ロスが増加したり、エンジン11のトルクが増加し、最悪の場合、エンジン11の停止を誘発させるおそれがある。このため従来では、空調運転時においてエンジン回転数の下限値を低くするには、限界がある。これに対して、エンジン11と発電機52との間に設けられた増速機59の増速機59の増速比を高く設定すれば、発電機52の回転数が低くなることを抑制できる。しかし、この場合には、エンジン11の回転数が高くなった場合に、発電機52の出力電圧が高くなり過ぎるという問題がある。
この点について本実施形態によれば、前述したようにエンジン回転数の上限値を増加させるときであっても、弱め磁束制御により発電機52側のコンバータ50の出力電圧を低減させることができる。このため、発電機52側のコンバータ50の高い出力電力が補機90側に供給されることが抑えられる。故に、インパー60の半導体スイッチング素子60a、補機90を絶縁破壊させるおそれが抑えられ、エンジン回転数の上限値、発電機52の回転数の上限値を高くすることができる利点が得られる。従って、発電機52の回転数を高めるべく、エンジン11と発電機52との間に設けられた増速機59の増速比を高く設定することができる。
このように増速機59の増速比を高く設定すれば、エンジン11のエンジン回転数が低いときであっても、発電機52の回転数が高くなり、発電機52から必要な出力電圧が得られる。従って、エンジン回転数の下限値を従来よりも低下させることができる。結果としてエンジン回転数範囲を高回転領域および低回転領域の双方に拡大することができ、空気調和制御の範囲を広げることができる利点が得られる。
なお、第2電力変換器40とコンバータ50との間に遮断スイッチを設け、前記エンジン11のエンジン回転数が所定回転数よりも増加するとき、あるいは、発電機52の出力電圧が商用電源41の電圧よりも高くなるとき、遮断スイッチをオフとし、発電機52側のコンバータ50の出力電力が補機90側に供給されることを抑える方式も考えられる。この場合には、エンジン11が高回転領域となると、発電機52の発電システムを利用できない不具合がある。しかし本実施形態によれば、弱め磁束制御により発電機52側からインバータ60への流入電流を防止するため、エンジン11の全回転数範囲において発電機52を有効利用することができる。更に、遮断スイッチ等の部品追加が必要ない。
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。上記した実施形態1によれば、エンジン11と発電機52との間には増速機59が設けられているが、エンジン11と発電機52のロータとが直結しており、増速機59が設けられていない場合でも良い。上記した実施形態1によれば、第1電力変換器であるコンバータ50は昇圧機能を有するが、昇圧機能を有しないものとしても良い。弱め磁束制御における制限電圧値V1は350Vとされているが、これに限定されるものではない。V2は230Vにされているが、これに限定されるものではない。
11はエンジン、13はコンプレッサ、52は同期モータで形成された発電機、50はコンバータ(第1電力変換器)、40は第2電力変換器、90は補機、60はインバータ、59は増速機、7は制御装置、70はメインコントローラ、71は演算部、73はモータコントローラを示す。