JP2014175560A - 導電性基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、透明樹脂基板にダメージのない低温で金属細線パターンの焼成を行った場合でも、充分に低抵抗である導電性基板の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る導電性基板の製造方法は、透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷して金属細線パターンを形成する工程と、金属細線パターンに対し、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成する工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性基板の製造方法に関する。より詳しくは、透明樹脂基板にダメージのない低温で金属細線パターンの焼成を行った場合でも、充分に低抵抗である導電性基板の製造方法に関する。
最近では、様々な電子機器に導電性基板が使用されており、機器の高性能化に伴い、導電性基板内の金属細線パターンにも、かなりの高密度化が要求されるようになっている。
金属細線パターンを有する導電性基板の製造方法として、これまでサブトラクティブ法やアディティブ法といった方法が考案され、信頼性の高い手法として広く用いられてきたが、上記いずれの方法を用いる場合でも、微細加工が可能なフォトリソグラフィー工程を使用して、所望の金属細線パターンを形成することが一般的になっている。
フォトリソグラフィー工程では、レジストを基板全面に塗布しプリベークを行った後、フォトマスクを介して紫外線等を照射し、現像によってレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして不要な部分をエッチング除去して、金属細線パターンを形成する。
しかしながら、従来のフォトリソグラフィー工程を用いた金属細線パターンの形成工程においては、パターン形成のための金属膜及びレジストの材料の大部分が無駄になるという問題があった。また、フォトレジスト工程の工程数が多く、スループットが低下するという問題もあった。
そこで近年、金属細線パターンを印刷により製造する試みがなされている。例えば、導電性金属粒子を含むインクを用いて、スクリーン印刷や、インクジェット印刷等の各種印刷法により導電層や絶縁層を形成して導電性基板を製造する方法が多方面で検討されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、銀、金、銅等のナノ粒子を含む金属ナノ粒子分散インク組成物を利用して金属ナノ粒子パターンを印刷描画し、その後、金属ナノ粒子相互の焼成(焼結)を施すことによって、金属細線パターンを有する導電性基板を得ることが可能となっている。
しかしながら、金属ナノ粒子を相互に焼成して金属ナノ粒子パターンの電気的な導通を確保するためには、200℃以上の熱処理が必要であるため、耐熱性の低い安価な樹脂基板に適用することは困難であるという問題があった。一方、ガラス系基板又は金属基板のような耐熱性の高い基板を用いる場合であっても、基板を薄くすると、高温の熱処理によって、基板に反りや歪みが生じるおそれがあるため、薄型化が困難であるという問題があった。
また、金属細線パターンの焼成に赤外線を使用するという手法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの方法においても、充分に低抵抗の導電性基板を得るためには、150℃を超える高温条件での焼成が必要であり、前述の樹脂基板を用いた場合の基板の変形の問題は解決できなかった。一方で、基板の変形のない範囲における低温での焼成においては、充分な低抵抗化の効果が得られなかった。
また、銀からなる金属細線パターンをフラッシュ光で短時間焼成することにより、基板の温度上昇を防止し、樹脂基板を用いた場合の基板の変形を防止する技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、フラッシュ焼成時に、銀細線のアブレーションや細線表面の発泡等による、細線形状の劣化や断線による部分的な導電性不良が頻発する問題があった。また、特許文献3においては、フラッシュ光として赤外線を用いることにも言及されているが、同様の問題があった。
また、金属細線パターンの焼成とは関連しないが、近赤外線(760〜1200nm)を発振するレーザーを利用してラジカル重合によるパターニングを行う際、重合開始剤を近赤外線吸収色素により増感する技術(例えば、特許文献4参照。)や、同じく近赤外線(760〜1200nm)を発振するレーザーを利用して銀塩写真材料をパターニングする際、ハロゲン化銀等の銀塩を近赤外線吸収色素により増感して潜像形成し、その後熱現像する技術(例えば、特許文献5参照。)等が知られている。しかし、これらの技術は金属細線パターンの焼成とは利用する分野が異なる上、パターニングを目的としたものであり、本発明とは本質的に異なる技術である。
ところで、基板にダメージを与えないことを目的に、低い熱処理温で焼成を可能にする金属ナノ粒子分散体の検討も行われている(例えば、特許文献6参照。)。具体的には、銀ナノ粒子の保護分子として、低分子量かつ低沸点の有機化合物を用いることで、100℃以下の温度での焼成を可能にしている。
しかしながら、保護分子に低分子量かつ低沸点の有機化合物を用いることで、焼成後の基板への密着性(接着性)が不十分となり、例えば、ロール・トゥ・ロール・プロセスでの生産に際して、パターニングと焼成とを施した金属細線パターン付きの樹脂基板をロールで巻き取った場合、接触する基板裏面との摩擦で、金属細線パターンが剥がれてしまう等の問題が生じることがあった。
前述のとおり、金属細線パターンを透明樹脂基板上に形成し、低抵抗の導電性基板を得ようとする上で、金属細線パターンの焼成を高温で行うことによって透明樹脂基板の変形等、基板の耐熱性に関する問題があった。一方、焼成を基板にダメージのない低温で行う場合には、所望の低抵抗が得られないという問題があった。
特開2007−332347号公報 特表2010−500475号公報 特表2008−522369号公報 特開2012−48192号公報 特開2005−309117号公報 特開2010−265543号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、透明樹脂基板にダメージのない低温で金属細線パターンの焼成を行った場合でも、充分に低抵抗である導電性基板の製造方法を提供することである。
本発明のその他の課題は、フレキシブルな透明樹脂基板を用いた低抵抗の導電性基板の製造方法を提供することである。さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)等の有機電子素子に適した透明電極用部材として適切な導電性基板の製造方法を提供することも本発明の課題の一つである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷して金属細線パターンを形成する工程と、金属細線パターンに対し、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成する工程と、を有する導電性基板の製造方法により、透明樹脂基板にダメージのない低温で金属細線パターンの焼成を行った場合でも、充分に低抵抗である導電性基板を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.透明樹脂基板上に、金属細線パターンを備える導電性基板の製造方法であって、
前記透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷して前記金属細線パターンを形成する工程と、
前記金属細線パターンに対し、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成する工程と、
を有することを特徴とする導電性基板の製造方法。
2.前記光源のフィラメント温度が、2200〜3200Kの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の導電性基板の製造方法。
3.前記金属細線パターン上に、導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層を備えることを特徴とする第1項又は第2項に記載の導電性基板の製造方法。
4.前記透明樹脂基板の表面に、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/(m・24h)以下であるガスバリアー層を備えることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の導電性基板の製造方法。
本発明の上記手段により、透明樹脂基板にダメージのない低温で金属細線パターンの焼成を行った場合でも、充分に低抵抗である導電性基板の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
一般的に、焼成や乾燥等の加熱を目的として赤外線を使用する場合、遠赤外線と呼ばれるピーク波長4μm以上の長波長赤外線が用いられることがほとんどである。この長波長赤外線は、本発明で使用する透明樹脂基板も加熱する波長領域であり、前述したとおり、基板変形を伴わずに低抵抗化する、金属細線パターンの焼成条件を満足するものではない。
一方、安価で汎用用途に入手可能なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の透明樹脂基板の赤外吸収域と重ならない波長である2.5μm以下の領域にピーク波長を有する近赤外線は、遠赤外線とは異なり、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコン等に用いられるのが一般的であった。理由として、ウィーンの変位則が示すとおり、短波長を輻射するためのフィラメントの温度が非常に高温である必要があることから、近赤外光源を熱源として使用するための高出力のランプの設計が困難であったことが一因となっている。近年においては、高出力の近赤外照射装置が実用化され、その用途が拡大しているが、本質的に近赤外領域に大きな吸収を持たない金属粒子や金属ナノ粒子の焼成には有効に用いることができていないのが現状である。
本発明者は、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素を金属ナノ粒子分散物と併用することにより、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内の近赤外光源で、透明樹脂基板上の金属細線パターンを、透明樹脂基板を変形させることなく焼成し、低抵抗の導電性基板を製造できることを見出した。
金属ナノ粒子分散物と赤外吸収色素とを併用することで、近赤外線での焼成が可能になった機構の詳細は明らかではないが、赤外吸収色素の光熱変換効果による発熱が、金属ナノ粒子の焼成に有効に機能しているものと推定している。
本発明に係る導電性基板の一例を示す概略断面図
本発明の導電性基板の製造方法は、透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷して金属細線パターンを形成する工程と、金属細線パターンに対し、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成する工程と、を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、光源のフィラメント温度が、2200〜3200Kの範囲内であることが、表面比抵抗を低減した導電性基板を提供することができることから好ましい。
また、金属細線パターン上に、導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層を備えることが、導電性基板を面電極としての用途に適用する点から、また、導電性基板の表面を平滑化する点から好ましい。
また、透明樹脂基板の表面に、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10−3g/(m・24h)以下であるガスバリアー層を備えることが、透明樹脂基板を通して、素子内部に水分や酸素が拡散することを防止することができることから好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
[導電性基板の構成]
本発明に係る導電性基板は、主に、透明樹脂基板、金属細線パターンから構成され、透明樹脂基板上に、金属細線パターンが形成されている。
また、導電性基板は、金属細線パターン上に、導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層を備えていることが好ましい。
さらに、本発明に係る導電性基板を、水分や酸素を嫌う有機層を有する有機EL素子等の有機電子素子の透明電極として使用することを想定する場合は、上記構成に加えて、透明樹脂基板の表面に、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10−3g/(m・24h)以下であるであるガスバリアー層を備えていることが更に好ましい。
図1には、その一例として、透明樹脂基板2上に、ガスバリアー層4、金属細線パターン6、導電性ポリマー層8を備えた導電性基板1を示している。
[導電性基板の製造方法]
本発明に係る導電性基板の製造方法は、主に、
(1)透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷して金属細線パターンを形成する工程と、
(2)金属細線パターンに対し、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成する工程と
を有している。
以下、各工程について説明する。
(1)金属細線パターンを形成する工程
金属細線パターンを形成する工程では、透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷する。
印刷法としては特に制限はなく、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の公知の印刷方式により、金属細線パターンを形成することができる。
各印刷方式は、一般的に電極パターン形成に使われる手法が本発明に関しても適用可能である。具体的な例として、グラビア印刷法については特開2009−295980号公報、特開2009−259826号公報、特開2009−96189号公報、特開2009−90662号公報記載の方法等が、フレキソ印刷法については特開2004−268319号公報、特開2003−168560号公報記載の方法等が、スクリーン印刷法については特開2010−34161号公報、特開2010−10245号公報、特開2009−302345号公報記載の方法等が、インクジェット印刷法については特開2012−212784号公報、特開2008−294391号公報記載の方法等が例として挙げられる。
(2)金属細線パターンを焼成する工程
金属細線パターンを焼成する工程では、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射することで行う。
光源のフィラメント温度を1800〜3600Kの範囲内とすることにより、樹脂基板等の有機物の吸収が比較的少ない1000nm(1μm)付近の波長を主体とする近赤外光を照射することが可能になる。フィラメント温度と放射する赤外線の極大波長の関係は、ウィーンの変位則:[極大波長(nm)]=2.898/[黒体温度(K)]×10で近似することができる。
光源のフィラメント温度の範囲は、2200〜3200Kの範囲内であることがより好ましい。
フィラメントの温度範囲が上記範囲であること以外は、近赤外光照射条件は任意であり、光照射時間は1ミリ秒〜10秒の範囲内であることが好ましく、10ミリ秒〜1秒の範囲内で行うことがより好ましい。また、光照射回数は1回でも複数回でもよく、1〜10回の範囲内で行うのが好ましい。これらの好ましい条件範囲で近赤外光照射を行うことにより、基板にダメージを与えることなく金属細線パターンを焼成し、高い導電性を得ることができる。
基板に対する近赤外光の照射は、金属細線パターンが印刷されている表側から照射することが好ましいが、基板が透明体である場合には、裏側から照射してもよいし、両側から照射してもよい。
本発明の近赤外光照射は大気中で行ってもよいが、必要に応じ、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。
また、近赤外光照射時の基板温度は、基板の耐熱温度や、金属ナノ粒子分散物を含有するインクの分散媒の沸点、蒸気圧、雰囲気ガスの種類や圧力、インクの分散性や酸化性等の熱的挙動等を考慮して決定すればよく、0〜200℃の範囲内であることが好ましい。特に、PET等の耐熱性の低い基板を用いることを前提とした場合には、0〜100℃の範囲内であることがより好ましい。なお、近赤外光照射を行う前に、金属細線パターン形成後の基板をあらかじめ加熱処理しておいてもよい。
近赤外光照射装置は任意であるが、具体的な装置としては、アドフォス社のNIR等を挙げることができる。
以下、導電性基板の各部材の構成や特性等について説明する。
[透明樹脂基板(2)]
本発明に係る透明樹脂基板は、金属細線パターンを形成し、保持する機能を有しており、可視光領域で透明な樹脂基板等を用途に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明に係る透明樹脂基板の透明性は、用途によって任意に選択することができるが、透明性が高いほど透明電極等への適用も可能となり、用途拡大の点から好ましい。
透明樹脂基板として、例えば、透明樹脂板や透明樹脂フィルム等を用いることが好ましく、中でも、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から、透明樹脂フィルムを用いることがより好ましい。
本発明に係る透明樹脂基板の全光線透過率は、70%以上、好ましくは80%以上である。全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定することができる。
透明樹脂フィルムの材料や形状、構造、厚さ等には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
透明樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視光領域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムとして好ましく適用することができる。
中でも、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム等の二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート樹脂フィルムであることがより好ましい。
[金属細線パターン(6)]
本発明に係る金属細線パターンは、透明樹脂基板上に、開口部を有してパターン状に形成されている。
金属細線パターンは、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物からなり、当該組成物を印刷法により透明樹脂基板上にパターニングし、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて赤外線を照射し、焼成することで形成される。
金属細線パターンの形状としては、特に制限はなく、例えば、パターン形状がストライプ状、又は正方格子、ハニカム格子等のメッシュ状に形成されていてもよい。
開口部の比率(開口率)は、透明性の観点から、80%以上であることが好ましい。
開口率とは、単位面積当たりで金属細線パターンが存在しない開口部の面積比率を意味し、例えば、金属細線パターンが、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状にパターン形成されている場合の開口率は90%である。
金属細線パターンの線幅は、10〜200μmの範囲内であることが好ましい。金属細線パターンの線幅が10μm以上であれば、所望の導電性が得られ、200μm以下であれば、透明電極として用いる場合に十分な透明性を得ることができる。
金属細線パターンの高さは、0.1〜5μmの範囲内であることが好ましい。金属細線パターンの高さが0.1μm以上であれば、所望の導電性が得られ、5μm以下であれば、有機電子素子に用いる場合に、その凹凸差が有機機能層の層厚分布に与える影響を軽減することができる。
(1)金属ナノ粒子分散物
本発明に係る金属ナノ粒子分散物は、水、アルコール、炭化水素等の分散媒中に、金属ナノ粒子を含有するが、必要に応じて、バインダー、金属を分散させるための分散剤等を含んでもよい。
金属ナノ粒子としては、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属又はそれらの合金を用いることができるが、導電性及び安定性の観点から、銀を含んでいることが好ましい。
金属ナノ粒子の平均粒径は、1〜100nmの範囲内であることが好ましく、1〜50nmの範囲内であることがより好ましく、1〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
金属ナノ粒子の平均粒径は、金属ナノ粒子の電子顕微鏡観察から、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる金属ナノ粒子をランダムに200個以上観察し、各金属ナノ粒子の粒径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。ここで、粒径とは、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる金属ナノ粒子の外縁を2本の平行線で挟んだ距離の内最小の距離を指す。なお、平均粒径を測定する際、明らかに金属ナノ粒子の側面等を表しているものは測定しない。
金属ナノ粒子分散物の製造方法としては、これまでに多くの提案がなされており、例えば、特開2010−265543号公報、特開2011−68936号公報、特開2012−162767号公報、特開2012−144796号公報、特開2012−144795号公報、特開2012−52225号公報、特開2008−214591号公報、特開2007−200775号公報、特開2006−193594号公報、特開2012−119132号公報、特開2011−153362号公報、特表2009−515023号公報等の公報に詳細に記載されている。
(2)赤外吸収色素
本発明に係る赤外吸収色素は、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である公知の赤外吸収色素から任意に選択することができる。色素の構造分類としては、シアニン色素、オキソノール色素、フェニレンジアミン色素、金属錯体色素等が好ましく用いることができる。
具体的には、例えば、下記に示す赤外吸収色素や、それらの類似構造のものが好ましく用いられる。
Figure 2014175560
また、その他の具体的としては、例えば、特開2005−258451号公報、特開2002−365792号公報、特開2000−206680号公報、特開平10−268512号公報等に記載の光吸収色素や、特開2008−208214号公報、特開2008−184484号公報等に記載の近赤外線吸収材料、特開2012−117030号公報に記載の近赤外光吸収色素化合物、等の中で、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内のものが挙げられる。
これらの赤外吸収色素は、金属ナノ粒子分散物中に、溶解あるいは分散して混合させることで、金属ナノ粒子分散物を含有するインク組成物に近赤外領域の吸収を持たせることができる。
これらの赤外吸収色素の添加量は任意であるが、インク組成物の吸収極大波長における吸光度が0.1〜3.0の範囲内となる添加量であることが好ましい。
(3)金属細線パターンの特性
(3.1)表面比抵抗
金属細線パターンを1枚の導電性膜とみなした場合の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、有機EL素子等の有機電子素子に適した透明電極として用いることを鑑みると、10Ω/□以下であることがより好ましく、有機EL素子等の大面積化の観点から、5Ω/□以下であることが更に好ましい。
表面比抵抗は、例えば、JIS K 6911−1995、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また、市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することもできる。
(3.2)表面粗さRa
金属細線パターンの表面は、平滑であることが好ましい。例えば、金属細線パターンの表面粗さRaは、200nm以下であることが好ましい。
Raの値は、JIS B 0601:1994に規定される表面粗さであり、本発明においては、下記のように測定した値である。
本発明において規定されるRaは、金属細線パターンの細線上のRaを測定したものであり、金属細線パターンの細線に対して、平行に長さ10μmの直線上のRaを測定したものである。
Raの測定には、市販の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用い、以下の方法で測定する。
AFMとして、セイコーインスツル社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上に試料をセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。
ピエゾスキャナーは、XY20〜150μm、Z25μmが走査可能なものを使用する。
カンチレバーは、セイコーインスツル社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜30nmのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。
測定は、CCDカメラを用いて、金属細線パターンの細線と測定エリアとが、平行又は垂直となるように、探針の先が細線の幅手方向の中心部上に配置されるように調整し、細線の中心部10μm×10μmを走査周波数0.1Hzで測定した。測定後、細線に平行に0.9μmおきに10か所、長さ10μmの線を引き、その線上のRaを算出し、その平均値をRaの値とする。
[導電性ポリマー層(8)]
本発明に係る導電性基板は、透明樹脂基板上に形成されている金属細線パターン上に、更に導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層が形成されていることが好ましい態様である。
なお、本発明において、導電性とは、電気が流れる状態を指し、JIS K 7194−1994の「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が1×10Ω/□より低いことをいう。
また、導電性ポリマー層は、第2ドーパントとして水溶性有機化合物、バインダー材料として樹脂成分、塗布助剤として各種添加剤、等を含んでいてもよい。
導電性ポリマー層の乾燥層厚は、30〜2000nmの範囲内であることが好ましい。なお、導電性の点からは50nm以上であることがより好ましく、本発明の導電性基板を有機電子素子に用いる場合には、本発明に係る金属細線パターンの凹凸差を平滑化し、有機機能層の層厚分布への影響を軽減する観点から、60nm以上であることが更に好ましい。また、透明性の点から、600nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましい。
(1)導電性ポリマー
導電性ポリマーとしては、π共役系導電性ポリマーとポリアニオンとを含む導電性ポリマーであることが、製膜時のシート抵抗が低いことから好ましい。このような導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性ポリマーを形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で、化学酸化重合することによって容易に製造できる。
上記のような導電性ポリマーは市販もされており、本発明においては市販材料も好ましく用いることができる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSS)が、Heraeus社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT/PSSの483095又は560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学工業社からORMECONシリーズとして市販されている。
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性ポリマーとポリアニオンとの比率(π共役系導電性ポリマー:ポリアニオン)は、質量比で1:1〜20の範囲内であることが好ましく、導電性、分散性の観点から、1:2〜10の範囲内であることがより好ましい。
導電性ポリマー層の形成方法としては、任意の適切な方法を選択することができ、例えば、塗布方法として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の各種塗布法を用いることができる。
導電性ポリマー層は、基板上に上記塗布法を用いて成膜した後、温風乾燥や赤外線乾燥等の公知の加熱乾燥法や自然乾燥等により、乾燥して形成することができる。
加熱乾燥する場合の温度は、使用する基板に応じて適宜選択することができるが、樹脂フィルム基板の場合には、一般に200℃以下の温度で実施することが好ましい。特に、PET等の耐熱性の低い基板を用いることを前提とした場合には、0〜100℃の範囲内であることがより好ましい。
赤外線乾燥を用いる場合には、導電性ポリマー層を選択的に加熱するために、基板の吸収が少ない赤外線領域を選択することが好ましい。例えば、基板がPETフィルムやPENフィルムの場合には、800〜1500nmの近赤外線を用いることが好ましい。又は、迅速に加熱乾燥するために、水の吸収極大が存在する3μm近傍の赤外線領域を選択することも好ましい。
(2)π共役系導電性ポリマー
本発明に用いられるπ共役系導電性ポリマーとしては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類又はポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点、及び金属ナノ粒子への吸着の容易さから、ポリチオフェン類又はポリアニリン類が好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。
π共役系導電性ポリマーの形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
(3)ポリアニオン
本発明に用いられるポリアニオンは、π共役系導電性ポリマーを溶媒に可溶化させる可溶化ポリマーである。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性ポリマーに対するドーパントとして機能し、π共役系導電性ポリマーの導電性と耐熱性とを向上させる。
ポリアニオンは、遊離酸状態の酸性ポリマーであり、アニオン基を有するモノマーの重合体、又はアニオン基を有するモノマーとアニオン基を有しないモノマーとの共重合体である。遊離酸は、一部が中和された塩の形をとっていてもよい。
ポリアニオンとしては、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル又はこれらの共重合体であって、少なくともアニオン基を含むものが挙げられる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性ポリマーへの化学酸化ドープが起こり得る官能基であればよく、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性ポリマーへのドープ効果の観点から、スルホ基、一置換硫酸エステル基又はカルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、ポリアニオンは、化合物内に更にフッ素原子(F)を有していてもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子(株)製)等を挙げることができる。
(4)第2ドーパント
本発明に係る導電性ポリマー層には、導電性ポリマーの導電性を高める効果を有する第2ドーパントを添加することができる。
第2ドーパントとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール又はジエチレングリコールが好ましい。カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
(5)樹脂成分
本発明に係る導電性ポリマー層は、少なくともπ共役系導電性ポリマーとポリアニオンとを含んでなる導電性ポリマー以外に、成膜性や膜強度を確保するために、透明な樹脂成分や添加剤を含んでいてもよい。
透明な樹脂成分としては、導電性ポリマーと相溶又は混合分散可能であれば特に制限されず、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂やこれらの共重合体等が挙げられる。
中でも、水系溶剤に均一分散可能な水分散性バインダー、又は水溶性バインダーから形成されることが、高い透明性と導電性を保持したまま、高い表面平滑性が得られる点から好ましい。
(5.1)水分散性バインダー
水系溶剤に均一分散可能な水分散性バインダーとは、水系溶剤に均一分散可能なものであり、水系溶剤中に凝集せずにバインダーからなるコロイド粒子が分散している状態であることを意味する。コロイド粒子の大きさ(平均粒径)は、一般的に0.001〜1μm(1〜1000nm)程度である。
コロイド粒子の平均粒径は、光散乱光度計により測定することができる。
また、上記水系溶剤とは、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)のみならず、酸、アルカリ、塩等を含む水溶液、含水の有機溶媒、更には親水性の有機溶媒等の溶媒であることを意味し、例えば、純水(蒸留水、脱イオン水を含む。)、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、水とアルコールの混合溶媒等が挙げられる。
水分散性バインダーは、透明であることが好ましい。
水分散性バインダーとしては、フィルムを形成する媒体であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂エマルジョン、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
アクリル系樹脂エマルジョンは、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸−スチレンの重合体又はその他のモノマーとの共重合体からなる。また、酸部分がリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩と対塩を形成したアニオン性、窒素原子を有するモノマーとの共重合体からなり、窒素原子が塩酸塩等を形成したカチオン性があるが、好ましくはアニオン性である。
水性ウレタン樹脂としては、水分散型ウレタン樹脂、アイオノマー型水性ウレタン樹脂(アニオン性)等が挙げられる。水分散型ウレタン樹脂には、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂があり、好ましくはポリエステル系ウレタン樹脂である。アイオノマー型水性ウレタン樹脂には、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等があり、好ましくはポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂である。
水性ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分とポリオール成分とから合成される。多塩基酸成分とは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸等であり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、特に好適に用いることのできる多塩基酸成分としては、工業的に多量に生産されており、安価であること等から、テレフタル酸とイソフタル酸が特に好ましい。
ポリオール成分として代表的なものを挙げれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール等であり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、特に好適に用いることのできるポリオール成分としては、工業的に量産されているので安価であり、しかも樹脂被膜の耐溶剤性や耐候性が向上する等、諸性能にバランスがとれていることから、エチレングリコール、プロピレングリコール又はネオペンチルグリコールが特に好ましい。
上記水分散性バインダーは、1種でも複数種でも使用することができる。
水系溶媒に分散可能な水分散性バインダーの使用量は、透明性と導電性の観点から、好ましくは導電性ポリマーに対して、50〜1000質量%の範囲内であり、より好しくは100〜900質量%の範囲内であり、更に好ましくは200〜800質量%の範囲内である。
(5.2)水溶性バインダー
水溶性バインダーとしては、下記一般式(1)で表される構造単位を含む水溶性バインダーであることが好ましい。
Figure 2014175560
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Qは、−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表す。Raは、水素原子又はアルキル基を表す。Aは、置換又は無置換のアルキレン基又は−(CHCHRbO)CHCHRb−を表す。Rbは、水素原子又はアルキル基を表す。xは、平均繰り返しユニット数を表す。
水溶性バインダーは、導電性ポリマーと容易に混合可能で、また、前述の第2ドーパントのような効果も有するため、当該水溶性バインダーを併用することにより、導電性及び透明性を低下させることなく、導電性ポリマー層の層厚を増加させることが可能となる。
なお、本発明において、水溶性バインダーとは、水溶性のバインダーであることを意味し、水溶性とは、水溶性バインダーが、25℃の水100gに0.001g以上溶解することを意味する。上記溶解の度合いは、ヘイズメーター又は濁度計で測定することができる。
水溶性バインダーは、透明であることが好ましい。
水溶性バインダーは、一般式(1)で表される構造単位を含む構造を有することが好ましい。また、一般式(1)で表されるホモポリマーであってもよいし、他の成分を共重合されていてもよい。他の成分を共重合する場合は、一般式(1)で表される構造単位を10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することがより好ましく、50モル%以上含有することが更に好ましい。
また、水溶性バインダーは、導電性ポリマー含有層中に40〜95質量%の範囲内で含まれていることが好ましく、50〜90質量%の範囲内であることが更に好ましい。
水溶性バインダーの数平均分子量は、3000〜2000000の範囲内が好ましく、より好ましくは4000〜500000の範囲内、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
水溶性バインダーの数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、バインダーが溶解すれば特に限りはなく、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)又はCHClが好ましく、より好ましくはTHF又はDMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが、40℃が好ましい。
[ガスバリアー層(4)]
有機EL素子等の有機電子素子は、素子内部に微量の水分や酸素が存在すると容易に性能劣化が生ずる。基板として樹脂基板を使用する場合には、樹脂基板を通して素子内部に水分や酸素が拡散することを防止するため、水分や酸素に対して高い遮蔽能を有するガスバリアー層を形成することが有効である。
本発明に係るガスバリアー層の組成や構造及びその形成方法には特に制限はなく、シリカ等の無機化合物による膜を真空蒸着やCVD法により形成することができる。また、ポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布乾燥後、酸素及び水蒸気を含む窒素雰囲気下で紫外線照射により酸化処理してガスバリアー層を形成することもできる。
本発明で用いられるポリシラザン化合物とは、ケイ素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
樹脂基板を用いる場合には、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものがよく、下記一般式(2)で表されるものを好ましく用いることができる。
Figure 2014175560
一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。
一般式(2)で表されるポリシラザン化合物としては、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザン、R、R及びRのいずれか少なくとも一つがアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基であるオルガノポリシラザン等が挙げられるが、得られるガスバリアー膜としての緻密性の観点から、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
ポリシラザン化合物の塗布方法は、任意の適切な方法を選択することができ、例えば、塗布方法として、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の各種印刷方法に加えて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。
ガスバリアー層をパターン状に形成することが好ましい場合には、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法又はインクジェット印刷法を用いることが好ましい。
本発明において、ガスバリアー層は1層でもよいし、2層以上の積層構造を有していてもよい。積層構造を有する場合には、無機化合物の積層構造であってもよいし、無機化合物と有機化合物のハイブリッド被膜として形成してもよい。また、ガスバリアー層の間に応力緩和層を挟んでもよい。
単層又は複数層を積層した場合でも、一つのガスバリアー層の層厚は、30〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜500nmの範囲内、更に好ましくは90〜500nmの範囲内である。30nm以上とすると、層層厚均一性が良好となり、優れたガスバリアー性能が得られる。1000nm以下にすると、屈曲によるクラックが急激に入ることが極めて少なくなり、成膜時の内部応力の増大をとどめて、欠陥の生成を防止することができる。
本発明におけるガスバリアー層のガスバリアー性としては、JIS K 7129:1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、さらには、JIS K 7126:1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/(m・24h・atm)以下(1atmは、1.01325×10Paである。)、及び水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることがより好ましい。
本発明においては、ガスバリアー層を形成する前に、基板との接着性を向上するために、シランカップリング剤等を用いて基板の表面に前処理を施すこともできる。
[アンカー層]
本発明に係る導電性基板は、必要に応じて、金属細線パターンの透明樹脂基板、あるいはガスバリアー層への密着性を向上させるために、又はパターニング適性を向上させて良好な金属細線パターンを得るために、透明樹脂基板上又はガスバリアー層上に、アンカー層を形成することが好ましい。
アンカー層は、主に無機化合物からなり、多孔質状を呈している。
ここでいう無機化合物とは、一般に理解されているように有機化合物以外の化合物であり、具体的には、単純な一部の炭素化合物と、炭素以外の元素で構成される化合物である。
アンカー層を構成する無機化合物の代表的な例として、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、スズ、バリウム、タンタル等の金属を少なくとも1種含む各種金属酸化物や、炭化物、窒化物、ホウ化物等を挙げることができるが、少なくとも1種の透明な金属酸化物を含み構成されることが好ましい。
多孔質の程度としては、窒素吸着法(BET1点法)で測定される比表面積が、1.0×10〜1.0×10cm−1の範囲内であることが好ましい。
上記BET1点法を用いた比表面積の測定は、比表面積測定装置フローソーブII2300(島津製作所製)を使用して行った。吸着ガスは、窒素/ヘリウムの30/70モル比混合ガスを用いた。
試料量は、アンカー層形成後の基板の面積として、0.5〜25cmの範囲内で、測定におけるガス吸着量の上・下限の範囲内に入るよう、試料ごとに調整する。
サンプルの前処理として、試料室減圧後、90℃で60分間、120℃で60分間の熱処理を行った後に、測定を実施する。
比表面積は、アンカー層の体積当たりの表面積であり、測定で得られた表面積の値を、アンカー層の体積、すなわちサンプル面積(cm)とアンカー層の層厚(cm)との積で除することで求められる。
本発明で用いられるアンカー層の比表面積は、金属細線パターンの透明樹脂基板への密着性の向上、シート抵抗の低抵抗化、及び金属細線パターンを形成する金属成分のアンカー層内の充填量を確保するために、1.0×10cm−1以上であることが好ましく、また、アンカー層自体の機械的強度を維持するために、1.0×10cm−1以下であることが好ましい。さらには、1.0×10〜1.0×10cm−1の範囲内であることがより好ましい。
アンカー層の透明性は、用途によって任意に選択することができるが、透明性が高いほど透明電極等への適用も可能となり、用途拡大の観点で好ましい。アンカー層の全光線透過率は、70%以上、好ましくは80%以上であることが望ましい。
アンカー層を用いる場合には、その層厚は0.1〜30μmの範囲内であることが好ましく、0.2〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.3〜5μmの範囲内であることが更に好ましい。アンカー層の層厚が0.1μm以上の場合には、金属細線パターンの密着性をより好ましく維持することができ、30μm以下の場合には、アンカー層に起因した透明性(ヘイズ)の劣化を抑制することができる。
アンカー層の組成としては、主に無機化合物からなることを除き特に限定されるものではなく、例えば、特開2007−169604号公報に記載の組成等も好ましく用いることができる。
なお、アンカー層の組成が「主に無機化合物からなる」とは、アンカー層を構成する全ての材料のうち、70質量%以上、好ましく80質量%以上、より好ましくは90質量%以上が無機化合物材料から構成されていることを意味する。
アンカー層を構成する無機化合物材料の比率が高いほど、本発明に係る金属細線パターンの密着性をより好ましく維持することができる。
アンカー層では、例えば、アンカー層を構成する無機化合物材料間の結着性やアンカー層と基板との結着性を向上する等の目的で、有機化合物が含有されてもよい。その場合、アンカー層を構成する有機化合物材料の比率としては、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。有機化合物材料の比率を30質量%以下に抑えることで、金属細線パターンの密着性をより好ましく維持することができる。
アンカー層の形成方法としては、任意の適切な方法を選択することができ、例えば、塗布方法として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の各種塗布法を用いることができる。
アンカー層をパターン状に形成することが好ましい場合には、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法又はインクジェット印刷法を用いることが好ましい。
アンカー層は、基板上に上記塗布法を用いて成膜した後、温風乾燥や赤外線乾燥等の公知の加熱乾燥法や自然乾燥等により乾燥して形成することができる。加熱乾燥する場合の温度は、使用する基板に応じて適宜選択することができるが、樹脂フィルム基板の場合には、一般に200℃以下の温度で実施することが好ましい。特に、PET等の耐熱性の低い基板を用いることを前提とした場合には、100℃以下の温度で実施することがより好ましい。
アンカー層を形成する前に、基板又はガスバリアー層との接着性を向上させるために、シランカップリング剤等を用いて、基板又はガスバリアー層の表面に前処理を施すこともできる。
[有機電子素子]
本発明に係る有機電子素子は、本発明の方法で製造された導電性基板と有機機能層とを有する。
例えば、本発明の方法で形成された透明な導電性基板を第1電極部として、この第1電極部の上に有機機能層を形成し、更にこの有機機能層の上に対向配置された第2電極部を形成することによって、有機電子素子を得ることができる。
有機機能層としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層等、特に限定なく挙げることができるが、本発明は、有機機能層が薄膜で、かつ電流駆動系のものである有機発光層、有機光電変換層を有する層である場合において、特に有効である。
以下、本発明の有機電子素子が、有機EL素子及び有機光電変換素子である場合のその構成要素について説明する。
(1)有機EL素子
(1.1)有機機能層の構成
本発明において、有機機能層として少なくとも有機発光層を有する有機EL素子は、有機発光層に加えて、正孔(ホール)注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロック層、電子ブロック層等の発光を制御する層を有機発光層と併用しても良い。
本発明の透明電極上の導電性ポリマー層は、正孔注入層として働くことも可能であるので、正孔注入層を兼ねることも可能だが、独立に正孔注入層を設けてもよい。
有機EL素子の構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)(第1電極部)/発光層/電子輸送層/(第2電極部)
(ii)(第1電極部)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第2電極部)
(iii)(第1電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/(第2電極部)
(iv)(第1電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/(第2電極部)
(v)(第1電極部)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/(第2電極部)
ここで、有機発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲内にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも3層の有機発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、更に有機発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、あるいは各種蛍光色素、希土類金属錯体、リン光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物の中から選択される発光材料を90〜99.5質量%、ドーピング材料を0.5〜10質量%の範囲内で含むようにすることも好ましい。
有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写等の方法が挙げられる。
(1.2)電極
本発明に係る導電性基板は、上記の第1電極部又は第2電極部で使用されるが、第1電極部が本発明の透明な導電性基板であり、かつ陽極であることが好ましい態様である。
第2電極部(陰極)は、導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第2電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する。)、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性、酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく、安定な金属である第2金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
第2電極部は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
また、第2電極部としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲内で選ばれる。
第2電極部の導電材として金属材料を用いれば、第2電極部側に進行してきた光は、第2電極部で反射されて第1電極部側に戻る。第2電極部の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となり、より取り出しの効率が向上する。
(2)有機光電変換素子
有機光電変換素子は、第1電極部、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層及びn型半導体層)を有する光電変換層(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ。)、第2電極部が積層された構造を有することが好ましい。
本発明の導電性基板は、少なくとも入射光側に用いられる。
光電変換層と第2電極部との間に電子輸送層等の中間層を有してもよい。
(2.1)光電変換層
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成していることが好ましい。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子とのペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、又はこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体、又はこれらの混合物を挙げることができる。
特に、ポリチオフェン及びそのオリゴマーの中でも、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン等のオリゴマーを好適に用いることができる。
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリン等が挙げられ、更には特開2006−36755号公報等の置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p.7246等の縮環チオフェン構造を有するポリマー、国際公開第2008/000664号、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p.1981等のチオフェン共重合体等を挙げることができる。
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、シングルウォールナノチューブ(SWNT)等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、更にポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号公報に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
これらのπ共役系材料の中でも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、ペンタセン類がより好ましい。
ペンタセン類の例としては、国際公開第2003/16599号、国際公開第2003/28125号、米国特許第6690029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No.14,4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123,p.9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008),No.9,2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
これらの中でも、後者のプレカーサータイプを好ましく用いることができる。これは、プレカーサータイプが、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、上記各層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、より一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
また、p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱、光、放射線、化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも、熱によって化学構造変化を起こす化合物が好ましい。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む。)等を例示することができる。
本発明の光電変換素子を、太陽電池等の光電変換デバイスとして用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層(タンデム型)して利用してもよい。
また、光電変換デバイスは、環境中の酸素、水分等で劣化しないように、公知の手法によって封止することが好ましい。
[実施例1]
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
《インク組成物1〜8の作製》
金属ナノ粒子分散物として、バンドー化学(株)製銀ナノ粒子分散液FlowMetal SR6010を20g測りとり、表1に示す赤外吸収色素を添加後、24時間室温(25℃)で撹拌し、インク組成物1〜8を得た。
Figure 2014175560
Figure 2014175560
《導電性基板1A〜8Aの作製》
(金属細線パターンの形成)
両面にハードコート層(JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材:OPSTAR Z7501を、塗布、乾燥後の平均層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間乾燥させ、その後空気雰囲気下において高圧水銀ランプを使用して、硬化条件1.0J/cmで硬化して形成した層)を設けた厚さ110μm、大きさ180mm×180mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に、上記インク組成物1〜8を用いて、50μm幅、1.0mmピッチの直角交差の格子パターンを、パターニングエリアが50mm×50mmとなるよう、インクジェットプリンタでパターニングした。インクジェットヘッドは、コニカミノルタIJ(株)製のKM512S(液滴サイズ4pL)を用い、走査方向解像度3600dpiの条件で出射することで、格子パターンの縦ラインを描画し、さらに基板を90度回転させて同様の描画を行うことで、直角交差の格子パターンを形成した。
パターニング後のPETフィルムを、80℃で2分間乾燥して、導電性基板1A〜8Aを作製した。
《ガスバリアー層を有する導電性基板1B〜8Bの作製》
(1)透明樹脂基板の平滑化
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製)の下引き加工をしていない面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材:OPSTAR Z7501を、塗布、乾燥後の平均層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間乾燥させ、その後空気雰囲気下において高圧水銀ランプを使用して、硬化条件1.0J/cmで硬化を行い、透明樹脂基板を平滑化した。
(2)ガスバリアー層の形成
次に、透明樹脂基板上に、以下に示す条件でガスバリアー層を形成した。
(2.1)ガスバリアー層形成用塗布液の塗布
パーヒドロポリシラザン(PHPS、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液(ガスバリアー層塗布液)をワイヤーバーにて、乾燥後の(平均)層厚が0.30μmとなるように透明樹脂基板に塗布した。
(2.2)乾燥及び除湿処理
(第1工程;乾燥処理)
ガスバリアー層形成用塗布液を塗布した透明樹脂基板を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間、乾燥処理を行った。
(第2工程;除湿処理)
第1工程において乾燥処理を行った透明樹脂基板を、更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
(2.3)改質処理
第2工程において除湿処理を行った透明樹脂基板を、下記の装置を用いて、下記の条件で改質処理を行った。改質処理時の露点温度は、−8℃で実施した。
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス Xe
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源との距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
上記のようにして、ガスバリアー層を有する透明樹脂基板を作製した。
なお、ガスバリアー層を有する透明樹脂基板は、JIS K 7129:1992に準拠した方法で、温度25±0.5℃及び相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/(m・24h)以下であることを確認した。
このガスバリアー層を有する透明樹脂基板上に、導電性基板1A〜8Aの作製と同様にして、金属細線パターンをパターニングし、導電性基板1B〜8Bを作製した。
《ガスバリアー層及びアンカー層を有する導電性基板1C〜8Cの作製》
(1)バインダー成分含有液BD−1の調製
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン306.84g、チタンテトライソプロポキシド266.87gを2−エトキシエタノール257.26gに溶解したものに、濃硝酸100.68g、水31.61g、2−エトキシエタノール36.75gの混合液を滴下し、30℃で4時間反応させ、固形分濃度30質量%のバインダー成分含有液BD−1()を調製した。
(2)酸化物凝集体粒子分散液OD−1の調製
特開2007−169604号公報の段落0064に記載の調製方法を参考にして、2個以上の粒子が結合したケイ素系酸化物凝集体粒子のみを15質量%含む、酸化物凝集体粒子分散液OD−1を調製した。
(3)アンカー層塗工液−1の調製
360gの酸化物凝集体粒子分散液OD−1を撹拌しながら、シクロヘキサノン620g、20gのバインダー成分含有液BD−1を順次滴下し、室温(25℃)にて1時間撹拌することにより、固形分濃度6質量%のアンカー層塗工液−1を調製した。
(4)アンカー層の形成
導電性基板1B〜8Bの作製と同様にして、ガスバリアー層を有する透明樹脂基板を作製し、その上に、アンカー層塗工液−1を、乾燥後の平均層厚が0.8μmになるように、ワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で1分間加熱後、60℃で3日間エージングを行い、アンカー層とガスバリアー層を有する透明樹脂基板を作製した。アンカー層の比表面積は、1.2×10cm−1であった。
次いで、このアンカー層とガスバリアー層とを有する透明樹脂基板上に、導電性基板1A〜8Aの作製と同様にして、金属細線パターンをパターニングし、導電性基板1C〜8Cを作製した。
《導電性基板の焼成》
上記で作製した導電性基板1A〜8A、1B〜8B及び1C〜8Cを、IR照射装置(LW−NIR120mit HB−25−250、ADPHOS社製)を用いて焼成した。焼成の際には、エミッターへの電圧を調整することにより、フィラメント温度が1750K,1820K,2250K,3150K,3580K又は3700Kになるよう調整し、それぞれのフィラメント温度で焼成を行った。フィラメント温度は、ハザマ測器株式会社製放射温度計IS12−Sで測定した。焼成時間は0.5秒、エミッター表面と導電性基板との距離は9cmとした。
《導電性基板の評価》
(1)基板ダメージの評価
作製した各導電性基板について、焼成後の基板の変形の程度を下記基準で目視評価した。
○:基板に変形が見られない
△:基板に若干のうねり、あるいは反りが見られる
×:基板の変形が大きく、表面比抵抗の測定が不能
評価結果を表2及び3に示す。
(2)表面比抵抗の測定
作製した各導電性基板について、ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて、導電性基板の表面比抵抗を四端子法で測定した。
測定結果を表2及び3に示す。なお、表2及び3中、測定器の検出範囲外の高抵抗の場合は「O.R」と記した。また、基板変形が大きく、表面比抵抗の測定が不能の場合、「測定不能」と記した。
Figure 2014175560
Figure 2014175560
(3)まとめ
表2から明らかなように、フィラメント温度が1750Kの場合では、基板ダメージがないものの、表面比抵抗が全て170Ω/□以上と高く、実用的に許容できる表面比抵抗値150Ω/□を超える結果となった。また、フィラメント温度が3700Kの場合では、基板ダメージが大きく、表面比抵抗は測定不能であった。
また、表3から明らかなように、フィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である場合、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素を有する導電性基板1A〜6A,1B〜6B及び1C〜6Cは、同条件の赤外吸収色素を有さない導電性基板7A,8A,7B,8B,7C及び8Cと比較して、基板ダメージの点では差が見られなかったが、表面比抵抗を大きく低減させることができた。
以上から、金属ナノ粒子分散物と吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を用いて金属細線パターンを形成し、該金属細線パターンに、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成することが、基板ダメージを抑え、表面比抵抗を低減させることに有用であることが確認できた。
[実施例2]
《導電性基板の加熱焼成》
実施例1で作製した導電性基板1A〜8Aについて、赤外線照射による焼成に代えて、ヤマト科学株式会社製クリーンオーブンDT−410を用いて、100℃で60分の焼成を行ったところ、いずれのサンプルも表面比抵抗は測定器の検出範囲外の高抵抗であった。また、温度を110℃に高めて60分の焼成を行ったところ、いずれのサンプルも基板の変形が大きく、表面比抵抗の測定が不能であった。
[実施例3]
《導電性ポリマー層を有する導電性基板1CP〜7CPの作製》
実施例1で作製した導電性基板1C〜7Cを、実施例1と同様にしてフィラメント温度3150Kで0.5秒焼成した後、金属細線パターン上に、金属細線パターンの印刷領域に合わせて、下記のように調製した導電性ポリマー液を、アプリケーターコーターを用いて、乾燥平均層厚が500nmとなるように塗布し、金属細線パターンの印刷領域と同じになるよう不要な周辺部分を拭き取り、クリーンオーブンで乾燥処理(110℃で60分間の熱処理)を施して導電性ポリマー層を形成し、導電性基板1CP〜7CPを作製した。
<導電性ポリマー液>
CLEVIOS PH510 1.60g
(Heraeus社製、固形分濃度1.89質量%)
プラスコートZ−561(互応化学工業社製、固形分濃度25質量%) 0.32g
プロピレングリコール 0.10g
《有機EL素子1EL〜7ELの作製》
上記、導電性基板1CP〜7CPを第1電極部(陽極)に用いて、有機EL素子1EL〜7ELを以下の手順でそれぞれ作製した。
導電性基板1CP〜7CPを市販の真空蒸着装置内にセットし、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各有機機能層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
まず、真空度1×10−4Paまで減圧した後、下記α−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
次いで、下記Ir−1が13質量%、下記Ir−14が3.7質量%の濃度になるように、Ir−1、Ir−14及び下記化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が622nm、層厚10nmの緑赤色リン光発光層を形成した。
次いで、下記E−66が10質量%になるように、E−66及び化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が471nm、層厚15nmの青色リン光発光層を形成した。
その後、下記M−1を膜厚5nmに蒸着して正孔ブロック層を形成し、さらにCsFを層厚比で10%になるようにM−1と共蒸着し、層厚45nmの電子輸送層を形成した。
Figure 2014175560
形成した電子輸送層の上に、第1電極部用外部取り出し端子及び50mm×50mmの第2電極部(陰極)形成用材料として、Alを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの第2電極部を形成した。
さらに、第1電極部及び第2電極部の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き第2電極部の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上にAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光領域50mm×50mmの有機EL素子1EL〜7ELを作製した。
接着剤として、2液性エポキシ配合樹脂(スリーボンド社製)2016Bと2103とを100:3の割合で配合したものを用いた。
《有機EL素子の評価》
(1)発光ムラの評価
作製した各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加し、輝度が1000cd/mになるよう発光させ、発光状態を下記基準で目視評価した。
◎:完全に均一発光しており、全く問題ない
○:ほぼ均一発光しており、実用的に問題ない
△:部分的に発光ムラが見られ、実用的に許容できない
×:全面に渡って発光ムラが見られ、全く許容できない
評価結果を表4に示す。
Figure 2014175560
(2)まとめ
表4から明らかなように、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素を有する導電性基板1CP〜6CPを用いて作製した有機EL素子1EL〜6ELは、同条件の赤外吸収色素を有さない導電性基板7CPを用いた有機EL素子7ELと比較して、発光ムラがなく、均一に発光させることができた。
以上から、本発明に係る導電性基板の製造方法を用いて作製された導電性基板が、有機EL素子の透明電極として適用可能であることが確認できた。
[実施例4]
実施例1で作製した導電性基板5C、7C及び8Cを、IR照射装置(LW−NIR120mit HB−25−250、ADPHOS社製)を用いて焼成した。焼成の際には、エミッターへの電圧を調整することにより、フィラメント温度が1750K又は3150Kになるように調整し、それぞれのフィラメント温度で焼成を行った。フィラメント温度は、ハザマ測器株式会社製放射温度計IS12−Sで測定した。焼成時間は0.5秒、エミッター表面と導電性基板との距離は9cmとした。
焼成後の導電性基板の銀細線パターン上に、スコッチテープを貼り付けた後、直ちに該スコッチテープを剥がし、銀細線パターンの剥離の有無を、下記基準で目視評価した。
◎:全く剥離がなく、問題ない
○:スコッチテープ貼り付け面の銀細線パターンが90%以上残留している
△:スコッチテープ貼り付け面の銀細線パターンが20%以上、90%未満残留している
×:スコッチテープ貼り付け面の銀細線パターンの残留が20%未満
評価結果を表5に示す。
Figure 2014175560
表5から明らかなように、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素を有し、フィラメント温度3150Kで焼成した導電性基板5Cが、接着性において優れていることが確認された。
1 導電性基板
2 透明樹脂基板
4 ガスバリアー層
6 金属細線パターン
8 導電性ポリマー層

Claims (4)

  1. 透明樹脂基板上に、金属細線パターンを備える導電性基板の製造方法であって、
    前記透明樹脂基板上に、金属ナノ粒子分散物と、吸収極大波長が900〜1200nmの範囲内である赤外吸収色素とを含有するインク組成物を、印刷法によりパターン印刷して前記金属細線パターンを形成する工程と、
    前記金属細線パターンに対し、光源のフィラメント温度が1800〜3600Kの範囲内である赤外光源を用いて、赤外線を照射し、焼成する工程と、
    を有することを特徴とする導電性基板の製造方法。
  2. 前記光源のフィラメント温度が、2200〜3200Kの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の導電性基板の製造方法。
  3. 前記金属細線パターン上に、導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性基板の製造方法。
  4. 前記透明樹脂基板の表面に、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/(m・24h)以下であるガスバリアー層を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の導電性基板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114390424A (zh) * 2021-09-02 2022-04-22 苏州清听声学科技有限公司 一种定向发声屏绝缘层丝印制作方法

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