JP6003582B2 - 透明電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、透明電極の製造方法に関する。より詳しくは、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、電子ペーパー、タッチパネル等の各種分野において好適に用いることができ、特に有機発光素子に用いることのできる透明電極の製造方法に関する。
近年、薄型TV需要の高まりに伴い、液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス・フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なるいずれのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成要素となっている。また、テレビ以外でも、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない構成要素となっている。
従来、透明電極は、ガラスやプラスチックフィルム等の透明基板上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。しかし、ITOに用いられているインジウムはレアメタルであり、かつ価格の高騰により、脱インジウムが望まれている。また、ディスプレイの大画面化、生産性向上に伴い、樹脂基板などのフレキシブル基板(可撓性の透明基板)を用いたロール・トゥ・ロール(roll to roll)の生産技術が所望されている。
ITO透明電極にかえてフレキシブル基板を用いて透明電極を製造するにあたり、従来用いられてきた真空蒸着法やスパッタリング法といった生産性の低い乾式塗布法に代えて、湿式塗布法による製造方法が検討されている。例えば、透明基板上に、金属、金属酸化物、導電性ポリマー等の導電性微粒子を含む分散液を直接塗布し、透明基板を乾燥させ、導電層を形成させる湿式塗布法による透明電極の製造方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、透明基板に分散液を塗布し、乾燥させるという湿式処理には、透明電極の性能低下につながる別の問題がある。具体的には、導電性微粒子を含む分散液を透明基板に塗布した後、塗布膜中の溶媒を取り除く際の温度ムラ、乾燥ムラが原因で、導電層の層厚分布や表面平滑性の低下、コーヒーリングと呼ばれる塗布端部が厚くなる現象や乾燥収縮によるパターニング不良を引き起こすことが知られている。これらの現象が生じた電極を有機EL素子の電極として用いた場合、電極表面抵抗の増加、電流リークといった著しい性能低下につながる。
このような問題に対して、熱風やホットプレートなどを用いた伝導伝熱乾燥の乾燥温度を上げる、あるいは遠赤外線ヒーターなどを用いた輻射伝熱乾燥を行うことで、乾燥速度を増加しムラを低減する方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、基板に樹脂基板を用いる場合、伝導伝熱乾燥では、基板自体が変形するため樹脂材料のTgを超える温度に乾燥温度を上げることでの乾燥処理はできない。また、遠赤外線ヒーターでは、溶媒の吸収領域である波長3.5μm以下の輻射エネルギーが弱い。波長3.5μm以下の輻射エネルギーを増加させると、樹脂基板の吸収領域に相当する波長3.5μm以上の遠赤外線領域の輻射エネルギーも増加してしまい、前述の高温での伝導伝熱乾燥同様、基板の変形を引き起こしてしまう。
ヒーターに用いる遠赤外線の溶媒の吸収領域である波長3.5μm以下の輻射エネルギーが弱いという問題に対しては、3.5μm以上の遠赤外線領域をカットした近赤外線ヒーターを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法は、塗布膜中の溶媒を効率的に乾燥することに主眼が置かれたものであり、基板自体の赤外線吸収による変形防止を考慮したものではなく、とりわけ透明樹脂基板を用いた場合の赤外線乾燥について言及されていない。
また、有機EL素子では、素子内部に残留する水分により、有機機能層が著しく劣化するため、透明電極や透明樹脂基板を高度に乾燥する必要がある。そのため、通常、透明樹脂基板にはガスバリアー層が設置されており、透明樹脂基板自体があらわに変形しない乾燥条件下でも、透明樹脂基板の一部が微小変形することでガスバリアー層が剥離、劣化する場合がある。このような透明電極を有機EL素子に用いると、ガスバリアー機能の低下により有機機能層が劣化し、発光ムラ、さらにはダークスポット発生の要因となる。
このように、透明樹脂基板を用いた有機EL素子用の透明電極は、導電性ポリマー層の層厚分布の高い均一性、平滑性、パターニング形状と、高い乾燥度、さらには高いガスバリアー性が求められる。しかし、従来の乾燥方法では、これらを同時に満たすことは困難である。
特開2012−216550号公報 特開平11−242916号公報 特許第4790092号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、導電性ポリマー層の層厚分布の均一性、平滑性及びパターニング精度を満足し、かつ、導電性ポリマー層の形状の劣化及びガスバリアー層のガスバリアー機能が低下することなく、高度に乾燥することができる透明電極の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程においてガスバリアー層を有する透明樹脂基板の一方の面上に、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含有する導電性ポリマー層形成用組成物を塗布して導電性ポリマー層となる塗布膜を形成し、当該塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、水を除去して乾燥することにより上記課題を解決することができることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.ガスバリアー層を有する透明樹脂基板の一方の面上に、導電性ポリマー層を備える
透明電極の製造方法であって、
(1)前記透明樹脂基板上にポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布乾燥後、改質処理を行ってガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成工程と、
)前記ガスバリアー層を有する透明樹脂基板の一方の面上に、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含有する導電性ポリマー層形成用組成物を塗布して導電性ポリマー層となる塗布膜を形成する導電性ポリマー層形成工程と、
)前記導電性ポリマー層形成工程において形成した塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、前記水を除去して乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする透明電極の製造方法。
2.前記透明樹脂基板が、前記透明樹脂基板のガスバリアー層を有する面上に前記導電性ポリマー層を備えることを特徴とする第1項に記載の透明電極の製造方法。
3.前記導電性ポリマー層形成用組成物が、有機極性溶媒を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の透明電極の製造方法。
4.前記ガスバリアー層を有する透明樹脂基板が、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/m・24h以下であることを特徴とする第1項から第3項のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
5.前記導電性ポリマー層の層厚が、150〜1000nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第4項のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
本発明の上記手段により、導電性ポリマー層の層厚分布の均一性、平滑性及びパターニング精度を満足し、かつ、導電性ポリマー層の形状の劣化及びガスバリアー層のガスバリアー機能が低下することなく、高度に乾燥することができる透明電極の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
すなわち、本発明に係る赤外線ヒーターは、発光スペクトルの極大波長を0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生している。このため、有機EL素子等の高度に乾燥された状態が必要とされる透明電極についても、透明電極に用いられる透明樹脂基板を乾燥させる赤外線ヒーターの発光スペクトルの極大波長を、透明樹脂基板が有する約3.5μm付近の吸収波長から大幅に短波化し、0.9〜1.5μmの範囲内とすることで、透明樹脂基板が変形すること無く乾燥させることができる。
透明電極の概略構成を示す断面図 透明電極の金属導電層のパターン形状を例示する平面図 透明電極の金属導電層のパターン形状を例示する平面図 透明電極の金属導電層のパターン形状を例示する平面図 透明電極の金属導電層のパターン形状を例示する平面図 有機EL素子の概略構成を示す断面図 有機EL素子の製造方法を経時的に説明するための概略的な平面図 有機EL素子の製造方法を経時的に説明するための概略的な平面図 有機EL素子の製造方法を経時的に説明するための概略的な平面図 有機EL素子の製造方法を経時的に説明するための概略的な平面図 有機EL素子の製造方法を経時的に説明するための概略的な平面図 有機EL素子の製造方法を経時的に説明するための概略的な平面図
本発明の透明電極1の製造方法は、ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2の一方の面上に、導電性ポリマー層5を備える透明電極1の製造方法であって、(1)ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2の一方の面上に、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含有する導電性ポリマー層形成用組成物を塗布して導電性ポリマー層5となる塗布膜を形成する導電性ポリマー層形成工程と、(2)導電性ポリマー層形成工程において形成した塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、水を除去して乾燥する乾燥工程と、を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、透明樹脂基板2は、透明樹脂基板2のガスバリアー層3を有する面上に導電性ポリマー層5を備えることが、高いガスバリアー性が得られることから好ましい。また、導電性ポリマー層形成用組成物が、有機極性溶媒を含有することが好ましい。これにより、高い透明性と高い導電性を得るために必要十分な量の導電性ポリマー層形成用組成物を透明樹脂基板2上に塗布することができる。
さらに、本発明においては、ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2が、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/m・24h以下であることが好ましい。これにより、透明樹脂基板2を通して素子内部に水分や酸素が拡散することを防止することができる。また、導電性ポリマー層5の層厚は、150〜1000nmの範囲内であることが好ましい。これにより、高い導電性、電極の表面平滑性及び透明性を得ることができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《透明電極の構成及び製造方法》
本発明の透明電極の製造方法は、ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2の一方の面上に、導電性ポリマー層5を備える透明電極1の製造方法であって、
(1)前記ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2の一方の面上に、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含有する導電性ポリマー層形成用組成物を塗布して導電性ポリマー層5となる塗布膜を形成する導電性ポリマー層形成工程と、
(2)前記導電性ポリマー層形成工程において形成した塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、水を除去して乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする。
なお、本発明に係る透明電極1の構成の一例を図1に示す。透明電極1は、ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2及び導電性ポリマー層5を備え、金属導電層4を併用することが好ましい。
また、透明電極1は、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水を含有する導電性ポリマー層形成用組成物を塗布して導電性ポリマー層5となる塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、水を除去して乾燥することで得られる。
透明電極1は、導電性ポリマー層5のみで構成されてもよいが、前述のように、金属導電層4と併用し、導電性ポリマー層5を金属導電層4上に積層することで、低抵抗かつ均一な面抵抗が得られる。
以下において、透明電極1の製造方法の典型的例について、詳細な説明をする。
透明電極1の製造方法は、主に、下記工程(i)〜(iv)を含む態様の製造方法であることが好ましい。
(i)導電性ポリマー層形成用組成物調製工程:
導電性ポリマー、非導電性ポリマー(自己分散型ポリマー等)、水、グリコールエーテル及びその他の有機極性溶媒を混合して導電性ポリマー層形成用組成物を調製する工程。
(ii)金属導電層形成工程:
ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2の一方の面上に、金属導電層4を形成する工程。
(iii)導電性ポリマー層形成工程:
導電性ポリマー層形成用組成物を、金属導電層4上に塗布して導電性ポリマー層5となる塗布膜を形成する工程。
(iv)乾燥工程:
導電性ポリマー層形成工程において形成した塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、水を除去して乾燥する工程。
前記工程(i)の導電性ポリマー層形成用組成物調製工程では、分散安定性の観点から、電気伝導性あるいは誘電率の高い液から順に添加し、混合することが好ましく、導電性ポリマーを撹拌しながら、水、その他の有機極性溶媒を添加し均一になった後、グリコールエーテルを添加する。また、インクジェット方式で印刷する場合に安定に吐出することができるため、酸素、二酸化炭素などの混合液中の溶存気体を減圧下であらかじめ脱気しておくことが好ましい。
前記工程(ii)の金属導電層形成工程では、金属材料からなる細線パターンを透明樹脂基板2上に形成させる。
前記工程(iii)の導電性ポリマー層形成工程では、金属材料からなる細線パターンの金属導電層4が形成された透明樹脂基板2上に、導電性ポリマー層形成用組成物を、例えば、インクジェット方式で印刷することができる。このとき、パターン形成された金属導電層4を完全に被覆してもよいし、一部を被覆又は接触してもよい。
また、金属導電層4の一部を導電性ポリマー層5が被覆又は接触している透明電極1を作製する手段としては、転写フィルムに金属導電層4を上述の方法で形成し、さらに導電性ポリマー層5を積層したものを、透明樹脂基板2に転写する方法が挙げられる。
前記工程(iv)の乾燥工程では、導電性ポリマー層5となる塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する波長制御赤外線ヒーターを用いて加熱し、水を除去して乾燥処理を行う。
乾燥処理の条件として特に制限はないが、赤外線フィラメント及び波長制御フィルターの表面温度により、照射時間を調節することができる。例えば、フィラメント温度600〜1200℃、波長制御フィルター表面温度150℃で、10秒〜30分の乾燥処理をすることができる。これにより、層厚分布の高い均一性、高い表面平滑性及び高いパターニング精度を有する導電性ポリマー層5を得ることができ、さらにこの透明電極1を有機EL素子10に用いることで、有機EL素子10の駆動電圧の低減、発光ムラの低減及び寿命の向上といった効果が得られる。
《透明樹脂基板》
次に透明電極1の各構成について詳細に説明する。
透明樹脂基板2は、導電層を担持しうる板状体であり、透明電極1を得るためには、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が80%以上のものが好ましく用いられる。なお、透明樹脂基板2とは、当該JIS規格に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が50%以上のものをいう。
透明樹脂基板2としては、フレキシブル性に優れており、誘電損失係数が十分小さくて、マイクロ波の吸収が導電層よりも小さい材質であるものが好ましく用いられる。
透明樹脂基板2としては、例えば、樹脂フィルム等が好適に挙げられ、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート又は変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム又は環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル又はポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム及びトリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
上記全光線透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に用いられる透明樹脂基板2として好ましく用いられる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム又はポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
本発明に用いられる透明樹脂基板2には、透明樹脂基板2上に塗布する塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を使用できる。
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理及びレーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体又はエポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには二層以上の構成にしてもよい。
《ガスバリアー層》
有機EL素子などの有機電子素子は、素子内部に微量の水分や酸素が存在すると容易に性能劣化が生じてしまう。樹脂を使用する透明樹脂基板2の場合、透明樹脂基板2を通して素子内部に水分や酸素が拡散することを防止するため、水分や酸素に対して高い遮蔽能を有するガスバリアー層3を形成することが必要である。
本発明に係るガスバリアー層3の組成や構造及びその形成方法には特に制限はなく、シリカ等の無機化合物による層を真空蒸着やCVD法により形成することができる。また、ポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布乾燥後、酸素及び水蒸気を含む窒素雰囲気下で紫外線照射により酸化処理してガスバリアー層3を形成することもできる。
ポリシラザン化合物の塗布方法は、任意の適切な方法を選択することができ、例えば、塗布方法として、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法又はドクターコート法等の各種印刷方法に加えて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法及びインクジェット印刷法等の各種塗布方法を用いることができる。ガスバリアー層3をパターン状に形成することが好ましい場合には、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法及びインクジェット印刷法を用いることが好ましい。
なお、本発明で用いられるポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H及びN−H等を有するSiO、Si及び両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
また、樹脂基板に形成させるガスバリアー層3としては、特に、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものがよく、下記一般式(1)で表されるものを好ましく用いることができる。
Figure 0006003582
一般式(1)中、R、R及びRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。
パーヒドロポリシラザンは、R、R及びRの全てが水素原子であり、オルガノポリシラザンは、R、R及びRのいずれかがアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基である。得られるガスバリアー層3としての緻密性から、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
本発明に係るガスバリアー層3は一層でもよいが、二層以上の積層構造を有していてもよい。積層構造を有する場合には、無機化合物の積層構造であってもよいし、無機化合物と有機化合物のハイブリッド被膜として形成してもよい。また、ガスバリアー層3の間に応力緩和層を挟んでもよい。また、透明樹脂基板2に対して導電層を有する側の面にガスバリアー層3を備える場合について示したが、一例であってこれに限定するものではない。具体的には、ガスバリアー層3は、導電層を有する側の反対側の面に備える構成であってもよいし、導電層を有する側と反対側の面の両面に備える構成であってもよい。
単層の場合でも積層した場合でも一つのガスバリアー層3の層厚は、30〜1000nmが好ましく、更に好ましくは30〜500nm、特に好ましくは90〜500nmである。30nm以上とすると層厚均一性が良好となり、優れたガスバリアー性能が得られる。また、1000nm以下にすると、屈曲によるクラックが急激に入ることが極めて少なくなり、成膜時の内部応力の増大をとどめて、欠陥の生成を防止することができる。
本発明におけるガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、0〜1×10−3g/m・24hの範囲内であることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、0〜1×10−3ml/m・24h・atm(1atmは、1.01325×10Paである)の範囲内であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、0〜1×10−3g/m・24hの範囲内であることが好ましい。
本発明に係るガスバリアー層3を形成する前に、透明樹脂基板2との接着性を向上するために、シランカップリング剤などを用いて透明樹脂基板2の表面に前処理を施すこともできる。
《金属導電層》
金属導電層4は金属材料から構成される層であり、一定のパターン状を呈している。金属導電層4は、透明樹脂基板2上に、例えば、金属材料の細線パターンにより形成されている。金属導電層4は、金属粒子の細線が、図2A〜図2Cに示すとおりにストライプ状に形成されてもよいし、図2Dに示すとおりに格子状に形成されてもよい。
金属材料としては、導電性を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、コバルト、ニッケル又はクロム等の金属の他に合金でもよい。
特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属微粒子又は金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は導電性の観点から銀又は銅が好ましく、より好ましくは銀である。
金属導電層4は、透明電極1を形成するために、透明樹脂基板2上に開口部を有するパターン状に形成される。開口部とは、透明樹脂基板2上に金属材料を有さない部分であり透光性窓部である。
金属導電層4のパターン形状には特に制限はないが、例えば、ストライプ状(図2A〜図2C参照)、格子状(図2D参照)、あるいはランダムな網目状であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。
開口率とは、光不透過の金属導電層4がパターン状に形成されて全体に占める割合である。例えば、金属導電層4がストライプ状あるいは格子状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。
パターンの線幅は10〜200μmが好ましい。細線の線幅を10μm以上にすることで、最適な導電性を得ることができる。また、200μm以下にすることで、透明性を得ることができる。細線の高さは、0.1〜10μmが好ましい。細線の高さが0.1μm以上にすることで、最適な導電性を得ることができる。また、10μm以下にすることで、有機電子デバイスの形成において、電流リークや有機機能層の層厚分布不良を抑制することができる。
金属導電層4がストライプ状又は格子状の電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知の方法が利用できる。
例えば、公知のフォトリソグラフィー法によって形成できる。具体的には、透明樹脂基板2上の全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1あるいは2以上の物理的又は化学的形成手法を用いて金属導電層4を形成するか、あるいは、金属箔を接着剤で透明樹脂基板2に積層した後、公知のフォトリソグラフィー法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状あるいは格子状に加工できる。
別の方法としては、金属微粒子を含有するインクを用いて、凸版、凹版、孔版印刷、あるいはインクジェット方式により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクを用いて、凸版、凹版、孔版印刷、あるいはインクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別の方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]及び実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
更に、別の方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を透明樹脂基板2に塗布して乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
金属ナノワイヤとしては、一つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの目付け量は0.005〜0.5g/mが好ましく、0.01〜0.2g/mがより好ましい。
金属ナノワイヤに用いられる金属としては、銅、鉄、コバルト、金又は銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と一種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
金属ナノワイヤの製造方法には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。
例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837、Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
また、金属材料からなる細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、透明電極1を大面積化するには20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
また、金属材料からなる細線部はフィルム基板にダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、金属材料からなる細線部を高導電化するため、特に好ましい。
《導電性ポリマー層》
導電性ポリマー層5は、透明樹脂基板2上の一方の面上に形成する。また、導電性ポリマー層5は、金属細線からなる金属導電層4上に積層され、金属導電層4と併用して透明電極1を形成することができる。例えば、図1に示すように、導電性ポリマー層5は、凹凸がない平滑な状態で形成され、金属導電層4の表面及び金属導電層4間から露出する透明樹脂基板2の表面を被覆している。これにより、透明電極1の高い透明性と高い導電性が両立でき、さらに電極面内の均一性を得ることができる。
導電性ポリマー層5の乾燥層厚は、30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、150nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。また、より高い平滑性と透明度の両立性を必要とする場合において300〜600nmの範囲内である事が更に好ましい。
導電性ポリマー層5となる塗布膜は、導電性ポリマー層形成用組成物を透明樹脂基板2上に塗布することにより形成する。導電性ポリマー層形成組成物は、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含む。導電性ポリマー層形成組成物に含まれる非導電性ポリマーは、水系溶媒に分散可能なポリマーであって、解離性基を含有し、かつガラス転移温度が25〜80℃の自己分散型ポリマーを含む。これにより、高い透明性と高い導電性とを両立し、さらに高温高湿度下での性能変動の少ない透明電極1が得られる。
また、前述の導電性ポリマーと非導電性ポリマーを含む導電性ポリマー層形成用組成物は、平均粒径が10〜300μmの範囲内のポリマー粒子から構成されており、50〜200μmの範囲内であることがより好ましい。ガラス転移温度が25〜80℃の自己分散型ポリマーを含むことで、導電性ポリマー層形成用組成物を塗布、乾燥して平滑性が高い透明電極1を得ることができる。導電性ポリマー層形成用組成物の平均粒径は、ホモジナイザー、超音波分散機(US分散機)又はボールミル等を用いた分散技術、逆浸透膜、限外ろ過膜又は精密ろ過膜を用いた粒子の分級等を用いることができる。ホモジナイザー、超音波分散機(US分散機)又はボールミル等を用いた分散技術はいずれも高温になると粒子の増大が起こりやすくなるため、分散中の温度は3〜50℃が好ましく、より好ましくは5〜30℃である。分級は必要に応じて使用する膜を選択すれば特に限定はない。
また、導電性ポリマー層形成用組成物中の自己分散型ポリマー粒子と導電性ポリマー粒子は、各々の粒子が独立に分散された状態になっていて粒径が各々の粒径の和になっていても良く、組成の異なる粒子同士が凝集していてもよい。また、分散操作中に組成の異なる粒子同士が一部混合した状態になっていても良く、完全に混合し粒子を形成しても良い。
また、導電性ポリマー層形成用組成物は、水を含み、グリコールエーテル及びその他の有機極性溶媒を含むことが好ましい。さらに、導電性ポリマー層5は、インクジェット方式により形成されることが好ましい。これにより、高い透明性と高い導電性とを得るために必要十分な量の導電性ポリマー層形成用組成物を透明樹脂基板2上に印刷することができる。特に、金属導電層4上へ導電性ポリマー層5を積層する場合、インクジェット方式により塗設し、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて、水、グリコールエーテル及びその他の有機極性溶媒を除去して乾燥することで、導電性ポリマー層5の安定した層厚分布、高い表面平滑性、高いパターニング精度を得ることができる。
導電性ポリマー層5を形成するための導電性ポリマー層形成用組成物について詳細に説明する。
(1)導電性ポリマー
本願において、「導電性」とは、電気が流れる状態を指し、JIS K 7194の「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が1×10Ω/□より低いことをいう。
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
(1.1)π共役系導電性高分子
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類又はポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性及び安定性等の観点からポリチオフェン類又はポリアニリン類が好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
(1.1.1)π共役系導電性高分子前駆体モノマー
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類又はその誘導体、チオフェン類又はその誘導体、アニリン類又はその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸及び3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
(1.2)ポリアニオン
本発明に係る導電性ポリマーに用いられるポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基又はスルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基又はカルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸及びポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、二種以上の共重合体であってもよい。
また、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するポリアニオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)又はカルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルを有するフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。さらに、これらフッ素化ポリアニオンは、前述の非フッ素化ポリアニオンと併用することが、正孔注入機能を付加した透明電極1を一体形成することができ、素子効率及び生産性の観点から望ましい。
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒への溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有しないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法及びアニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それにあらかじめ溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調製される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤、酸化触媒及び溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。ポリアニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法及び限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリアニオンの比率、「π共役系導電性高分子」:「ポリアニオン」は質量比で1:1〜20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜10の範囲である。
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリアニオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Chem.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤である。安価でかつ取扱い易い酸化剤、例えば、FeCl、Fe(ClO、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)、アンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム又は四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン又はバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、ラウリル硫酸等の炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、メタンスルホン酸又はドデカンスルホン酸等の炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、2−エチルヘキシルカルボン酸等の脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、トリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸等の脂肪族パーフルオロカルボン酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、ベンゼセンスルホン酸等の芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。
例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした材料も好ましく用いることができる。
(2.1)非導電性ポリマー:解離性基含有自己分散型ポリマー
本発明に係る導電性ポリマー層形成組成物は、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含有することを特徴とする。
すなわち、導電性ポリマー層5の構成材料として、上記導電性ポリマーに加えてバインダー樹脂として非導電性ポリマーが使用される。
なお、本願において、「非導電性」とは、電気が流れない状態を指し、JIS K 7194の「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が1×10Ω/□以上であることをいう。
非導電性ポリマーとしては、水系溶剤に分散可能なポリマーであって、解離性基を含有しかつガラス転移温度が25〜80℃の自己分散型ポリマーが使用される。
水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーとは、ミセル形成を補助する界面活性剤や乳化剤等を含まず、ポリマー単体で水系溶媒に分散可能なものである。「水系溶媒に分散可能」とは、水系溶媒中に凝集せずに非導電性ポリマーからなるコロイド粒子が分散している状況であることをいう。
コロイド粒子の大きさは、一般的に0.001〜1μm(1〜1000nm)程度である。粒子の大きさとしては、3〜500nmが好ましく、より好ましくは5〜300nmで、さらに好ましくは10〜200nmである。上記のコロイド粒子については、光散乱光度計により測定することができる。
また、上記水系溶媒としては、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)のみならず、酸、アルカリ又は塩等を含む水溶液、含水の有機溶媒、さらには親水性の有機溶媒であることを意味し、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)、メタノール又はエタノール等のアルコール系溶媒若しくは水とアルコールの混合溶媒等が挙げられる。
本発明に係る解離性基含有自己分散型ポリマーは透明であることが好ましい。
また、解離性基含有自己分散型ポリマーとしては、フィルムを形成する媒体であれば、特に限定はない。また、透明電極1表面へのブリードアウト(染み出し)、後述する有機EL素子10を積層した場合の素子性能に問題がなければ特に限定はないが、ポリマー分散液中に界面活性剤(乳化剤)や造膜温度をコントロールする可塑剤等は含まないことが好ましい。
解離性基含有自己分散型ポリマーの分散液のpHは、別途相溶させる導電性ポリマーを含む溶液と分離しない範囲であることが望ましく、分散の際の温度において、0.1〜11.0が好ましく、より好ましくは3.0〜9.0で、さらに好ましくは4.0〜7.0である。
本発明に係る解離性基含有自己分散型ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が25〜80℃の範囲内であり、好ましくは30〜75℃の範囲内であり、より好ましくは50〜70℃の範囲内である。
ガラス転移温度が25℃以上にすることで、優れた塗布膜の造膜性及び透明電極1の表面平滑性が得られ、高温下で行われる透明電極1、有機EL素子10の環境試験における塗布膜の変形及び素子性能の悪化を抑制することができる。また、ガラス転移温度を80℃以下とすることで、導電性ポリマーと自己分散型ポリマーを含む導電性ポリマー層5は、優れた均質性、表面平滑性及び素子性能が得られる。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度10℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めることができる。
解離性基含有自己分散型ポリマーに使用される解離性基としては、スルホン酸及びその塩、カルボン酸及びその塩又はリン酸及びその塩等のアニオン性基及びアンモニウム塩等のカチオン性基等が挙げられる。特に限定はないが、導電性高分子溶液との相溶性の観点から、アニオン性基が好ましい。
解離性基の量は、自己分散型ポリマーが水系溶媒に分散可能であれば良く、可能な限り少ない方が、工程適性的に乾燥負荷が低減されるため好ましい。また、アニオン性基又はカチオン性基に使用されるカウンター種に特に限定はないが、透明電極1又は有機EL素子10を積層した場合の性能の観点から、疎水性で少量であることが好ましい。
解離性基含有自己分散型ポリマーの主骨格としては、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン−ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアクリレート−ポリエステル、ポリアクリレート−ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン−ポリカーボネート、ポリウレタン−ポリエーテル、ポリウレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリアクリレート、シリコーン、シリコーン−ポリウレタン、シリコーン−ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン−ポリアクリレート及びポリフルオロオレフィン−ポリビニルエーテル等が挙げられる。また、これらの骨格をベースに、さらに他のモノマーを使用した共重合でもよい。これらの中でエステル骨格を有するポリエステル樹脂エマルジョン、ポリエステル−アクリル樹脂エマルジョン又はエチレン骨格を有するポリエチレン樹脂エマルジョンが好ましい。
市販品としては、ヨドゾールAD−176、AD−137(アクリル樹脂:ヘンケルジャパン社製)、バイロナールMD−1200、MD−1500(ポリエステル樹脂:東洋紡社製)、プラスコートRZ105及びプラスコートZ561(ポリエステル樹脂:互応化学社製)などを用いることができる。上記水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマー分散液は一種でも複数種でも使用することができる。
解離性基含有自己分散型ポリマーの使用量は、導電性ポリマーに対して50〜1000質量%が好ましく、より好ましくは100〜900質量%で、さらに好ましくは200〜800質量%である。
(2.2)非導電性ポリマー:水溶性バインダー樹脂
また、本発明に於いて非導電性ポリマーとしては、下記一般式(2)で表される構造単位を含む水溶性バインダー樹脂も使用される。
Figure 0006003582
一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基を表し、Qは−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子又はアルキル基を表し、Aは置換または無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)xCHCHRb−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を示し、xは平均繰り返しユニット数を表す。
こうした樹脂は導電性ポリマーと容易に混合可能で、また、該水溶性バインダー樹脂を併用することにより、導電性、透明性を低下させることなく、導電性ポリマー含有層の膜厚を上げることが可能となる。
水溶性バインダー樹脂とは、水溶性のバインダー樹脂であり、水溶性バインダー樹脂が、25℃の水100gに0.001g以上溶解するバインダー樹脂を意味する。前記溶解は、ヘイズメーター、濁度計で測定することができる。
水溶性バインダー樹脂としては透明であることが好ましい。
水溶性バインダー樹脂は、前記一般式(2)で表される構造単位を含む構造を有することが好ましい。前記一般式(2)で表されるホモポリマーであってもよいし、他の成分を共重合されていてもよい。他の成分を共重合する場合は、前記一般式(2)で表される構造単位を10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することがより好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
また、水溶性バインダー樹脂は、導電性ポリマー含有層中に40質量%以上、95質量%以下含まれていることが好ましく、50質量%以上、90質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の水溶性バインダー樹脂の数平均分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、さらに好ましくは5000〜100000の範囲内である。
本発明の水溶性バインダー樹脂の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、バインダー樹脂が溶解すれば特に限りはなく、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、CHCl(ジクロロメタン)が好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
水溶性バインダー樹脂の使用量は、導電性ポリマーに対して50〜1000質量%が好ましく、より好ましくは100〜900質量%で、さらに好ましくは200〜800質量%である。
以下に、水溶性バインダー樹脂の具体的な合成例を記載する。
<水溶性バインダー樹脂の合成>
300ml三ツ口フラスコにTHF200mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(10.0g、86.2mmol、分子量116.12)、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル:2.8g、17.2mmol、分子量164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、2000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量22100、分子量分布1.42の水溶性バインダー樹脂を9.0g(収率90%)得た。
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
<GPC測定条件>
装置:Waters2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
得られた水溶性バインダー樹脂を純水に溶解し、固形分20%の水溶性バインダー樹脂水溶液を調製した。
なお、導電性ポリマー層形成用組成物には一定の添加剤が添加されてもよい。
当該添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤及び染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。
(3)溶媒
導電性ポリマー層5を形成するための導電性ポリマー層形成用組成物は、水を含み、グリコールエーテル及びその他の有機極性溶媒を含むことがより好ましい。水を含むことにより、非導電性ポリマーを溶媒中に分散させることができる。
また、グリコールエーテルを含むことにより、導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層形成用組成物の表面張力を、非導電性ポリマーの分散安定性を損なうことなく、効果的に低下させることができ、インクジェットの安定した吐出性と、透明樹脂基板2上での必要十分な濡れ性を得ることができる。
また、有機極性溶媒を含有することにより、非導電性ポリマーの分散安定性を損なうことなく、導電性ポリマー層形成用組成物を安定に保ち、インクジェット方式により安定して吐出することができる。
グリコールエーテルとしては、上記観点から、水に可溶であり、かつ表面張力40mN/m以下が好ましく、35mN/m以下がさらに好ましく、30mN/m以下が特に好ましい。
グリコールエーテルの添加量は、導電性ポリマー層形成用組成物の表面張力から決めることができ、導電性ポリマー層形成用組成物の総質量に対して5〜30%の範囲が好ましい。5%以上にすることで、表面張力の低下効果が高く、透明樹脂基板2に対する組成物の最適な濡れ性が得られる。また、30%以下にすることで、導電性ポリマー層形成用組成物の安定な分散性及びインクジェット印刷の塗布均一性が得られる。
グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル及びトリプロピレングリコールアルキルエーテルなどがあげられ、導電性ポリマー層形成用組成物の粘度、表面張力及び導電性ポリマー層形成用組成物の分散安定性の観点から、エチレングリコールモノアルキルエーテル又はプロピレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
また、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルなどがあげられ、エチレングリコールモノブチルエーテル又はプロピレングリコールモノプロピルエーテルが特に好ましい。
その他の有機極性溶媒としては、誘電率が25以上のものを、好ましくは30以上、より好ましくは40以上のものを用いることができ、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類又は炭化水素類等の有機溶媒を用いることができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。赤外線ヒーターによる乾燥除去性、導電性ポリマー層形成用組成物の安定性、インクジェット印刷における吐出性、さらには導電性ポリマー層5の導電性等の観点から、プロピレングリコール、エチレングリコール又はジメチルスルホキシドが特に好ましい。
有機極性溶媒の添加量は、導電性ポリマー層形成用組成物の安定性の観点から決めることができ、導電性ポリマー層形成用組成物の総質量に対し、5〜40%の範囲内が好ましい。5%以上にすることで、導電性ポリマー層形成用組成物の安定化効果が得られる。40%以下にすることで、導電性ポリマー層形成用組成物の適した表面張力が得られ、透明樹脂基板2に対する最適な濡れ性が得られる。
溶媒の誘電率は、例えば、液体用誘電率計Model−871(日本ルフト社製)を用いて測定することができる。
また、導電性ポリマーと非導電性ポリマーとの比率は、導電性ポリマーを100質量部としたとき、非導電性ポリマーが30〜900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、非導電性ポリマーの導電性増強効果、透明性の観点から、非導電性ポリマーが100質量部以上であることがより好ましい。
導電性ポリマーと非導電性ポリマーとを含有する導電性ポリマー層5は、非導電性ポリマーを含むことにより、高い導電性と高い透明性を両立することができる。このような構造を有する導電性ポリマー層5を形成することで、金属又は金属酸化物細線、あるいは導電性ポリマー層単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
《赤外線ヒーター》
本発明に係る赤外線ヒーターは、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する機能を有することを特徴とする。発光スペクトルの極大波長を、透明樹脂基板2が有する約3.5μm付近の吸収波長から大幅に短波化することで、透明樹脂基板2が変形すること無く乾燥させることができる。
ウィーンの変位則より、放射される赤外線スペクトルの極大波長は、フィラメントの温度と相関する。本発明に係る赤外線ヒーターの要件である発光スペクトルの極大波長を0.9〜1.5μmの範囲内とするためには、赤外線ヒーターのフィラメント温度は、3000℃〜1600℃の範囲となる。
通常の赤外線ランプは、フィラメント及びフィラメントを保護するチューブの耐熱性の観点から、フィラメント温度を1200℃以下で用いることが一般的である。これに対してチューブの形状及びチューブを支持する構造体の形状並びに冷却機能を最適化することで、高温のフィラメント温度を維持可能であることが米国特許第7820991号明細書等で知られており、本発明ではこれらの高温フィラメント温度領域において発生する赤外線を利用している。発光スペクトルの極大波長0.9〜1.5μmの範囲内で赤外線を発生可能な赤外線ヒーターの詳細については、前述の米国特許第7820991号明細書に記載されている。
赤外線の発光スペクトルの極大波長が0.9μm以上の場合、乾燥後の透明電極1を用いて有機EL素子10を作製した際に、ダークスポットが発生する可能性を抑えられる他、発光を均一にすることができ、発光寿命の劣化が起こりにくいことがわかっている。この原因は明確ではないが、スペクトルの極大波長が0.9μm以上にすることで、フィラメントの温度を高温にすることがなく、透明樹脂基板2が変形することがないため、透明樹脂基板2上のガスバリアー層3に生じる欠陥を抑制することができると考えられる。
また、逆に極大波長が1.5μm以下の場合、ダークスポットの発生や、発光寿命の劣化等が生じにくくなる。この原因も明らかではないが、1.5μm以下にすることで、導電性ポリマー層5を十分乾燥することができるためであると考えられる。
《透明電極の特性》
本発明において、透明電極1は、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
また、本発明に係る透明電極1における導電性ポリマー層5の電気抵抗値としては、表面抵抗率として1000Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましい。さらには、電流駆動型オプトエレクトロニクスデバイスに適用するためには、50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることが特に好ましい。10Ω/□以下であると各種オプトエレクトロニクスデバイスにおいて、透明電極1として機能することができて好ましい。
前記表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
本発明に係る透明電極1の厚さには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に10μm以下であることが好ましく、厚さが薄くなるほど透明性や柔軟性が向上するためより好ましい。
《有機EL素子の構成及びその製造方法》
有機EL素子や有機薄膜太陽電池素子などの有機電子素子は、基本的に、第1の電極、第2の電極及び有機機能層を備え、第2の電極が第1の電極に対向配置され、有機機能層が第1の電極と第2の電極との間に設けられた構成を有する。
例えば、有機EL素子10では、図3に示すように、本発明に係る透明電極1を陽極として用いることが好ましく、有機機能層14(発光層など)、対電極16(陰極)については有機EL素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。
有機EL素子10の素子構成としては、例えば、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極又は陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極等の各種の構成のものを挙げることができる。
例えば、図3に示すとおり、有機EL素子10は、透明樹脂基板2、金属導電層4及び導電性ポリマー層5を有する透明電極1を備えている。
透明樹脂基板2の側縁部には取出電極12が形成されている。取出電極12は金属導電層4及び導電性ポリマー層5と接触しており、これらの部材と電気的に導通している。透明電極1の導電性ポリマー層5上には有機機能層14が形成されている。有機機能層14は正孔輸送層、発光層、正孔阻止層及び電子輸送層等を有している。有機機能層14上には対電極16が形成されている。対電極16は、透明電極1と対向する電極であって透明電極1とは反対の極性を有している。
有機EL素子10では、取出電極12の一部が露出した状態で封止部材18により封止され、封止部材18が透明電極1や有機機能層14を被覆・保護している。
有機機能層14に使用できる発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、リン光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。
有機機能層14は、上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布及び転写等の方法が挙げられる。この有機機能層14の厚さは、0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
本発明の製造方法により製造された透明電極1を用いた有機EL素子10は、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることができ、特に、均一にムラなく発光させることができるため、照明用途で用いることが好ましい。
本発明の製造方法により製造した透明電極1は高い導電性と透明性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池及び無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイス、電磁波シールド及びタッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、透明電極表面の平滑性が厳しく求められる有機EL素子や有機薄膜太陽電池素子の透明電極として特に好ましく用いることができる。
続いて、図4を参照しながら本発明に係る有機EL素子10の製造方法について説明する。
はじめに、透明基板2上にITOを蒸着し、これをフォトリソグラフィー法により所定形状にパターニングし、取出電極12を形成する(図4A参照)。
その後、取出電極12と一部が重なるように、金属導電層4をパターニング形成する(図4B参照)。
その後、導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水等を含む導電性ポリマー層形成用組成物を調製し、当該組成物を、金属導電層4の上に塗布して、波長制御赤外線ヒーターにて乾燥させ導電性ポリマー層5を形成し、金属導電層4を導電性ポリマー層5で被覆する(図4C参照)。
その後、導電性ポリマー層5(透明電極1)上に、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層及び電子輸送層等を有する有機発光層14を形成する(図4D参照)。
その後、有機機能層14を被覆するように対電極16を形成し(図4E参照)、透明電極1及び有機機能層14を完全に被覆するように封止部材18にてこれら部材を封止する(図4F参照)。
以上の工程により有機EL素子10が製造される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
〔実施例1〕
《透明電極(サンプル)の作製》
以下の方法で透明電極No.101〜144を作製した。
(1)透明樹脂基板の作製
(1.1)透明樹脂基板の平滑化
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製)の下引き加工をしていない面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材:OPSTAR Z7501を、塗布、乾燥後の平均層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間乾燥させ、その後空気雰囲気下において高圧水銀ランプ使用して硬化条件1.0J/cmで硬化を行い、透明樹脂基板2を平滑化した。
(1.2)ガスバリアー層の形成
次に、透明樹脂基板2上にガスバリアー層3を以下に示す条件で形成した。
(1.2.1)ガスバリアー層形成用塗布液の塗布
パーヒドロポリシラザン(PHPS、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液(ガスバリアー層塗布液)をワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)層厚が、0.30μmとなるように透明樹脂基板2に塗布した。
(1.2.2)乾燥及び除湿処理
(第一工程;乾燥処理)
ガスバリアー層形成用塗布液を塗布した透明樹脂基板2を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間、乾燥処理を行った。
(第二工程;除湿処理)
第一工程において乾燥処理を行った透明樹脂基板2をさらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
(1.2.3)改質処理
第二工程において除湿処理を行った透明樹脂基板2を、下記の装置を用いて下記の条件で改質処理を行い、ガスバリアー層3を形成した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス Xe
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
上記のようにしてガスバリアー層3を有する透明電極用の透明樹脂基板2を作製した。
なお、ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/m・24h以下であることを確認している。
(2)金属導電層の形成
上記で得られたガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2の、ガスバリアー層3を有する面上に、以下の方法で透明電極No.123〜144の金属導電層4を形成した。具体的には、透明樹脂基板2上に、グラビア印刷試験機K303MULTICOATER(RK Print Coat Instruments Ltd製)を用い、銀ナノインク(TEC−PR−030:Inktec社製)を、50μm幅、1mmピッチのメッシュパターンにて、図4Bに示すように、金属細線パターンからなる金属導電層4を形成した。金属導電層4を形成した透明樹脂基板2に対して、120℃、30分の熱処理を行った。金属導電層4のパターンを、高輝度非接触3次元表面形状粗さ計WYKO NT9100(日本ビーコ社製)で測定したところ、パターンの幅は60μm、平均高さ500nmであった。
(3)導電性ポリマー層の形成
(3.1)導電性ポリマー層形成用組成物の調製
透明導電性ポリマー Clevios PH750(Heraeus社製 1.08%液)と、解離性基含有自己分散型ポリマー プラスコートZ−561(互応化学工業社製 25%液)とを、それぞれ固形分比15:85で混合した。この混合物70質量部と、ジメチルスルホキシド 15質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル 12質量部を混合し、最後に水を加えて100質量部として、導電性ポリマー層形成用組成物を調製した。
(3.2)導電性ポリマー層の形成
ガスバリアー層3を有する透明電極1用の透明樹脂基板2上に、前述の導電性ポリマー層形成用組成物を用いて、図4Cに示すように、インクジェット印刷により導電性ポリマー層5を塗設した。なお、導電性ポリマー層5の層厚は、表1に記載の層厚とした。これを、表1に記載の乾燥方式(ホットプレート又は赤外線ヒーター)、乾燥条件にて、乾燥処理を行い、透明電極No.101〜144の試料を得た。具体的には、透明電極No.101〜122については、透明樹脂基板2上に金属導電層4を形成させることなく導電性ポリマー層5を形成した。一方、透明電極No.123〜144については、透明樹脂基板2上に金属導電層4を形成した後、金属導電層4の上に導電性ポリマー層5を形成した。
なお、インクジェット印刷は、インクジェットヘッド(コニカミノルタIJ社製)を取り付けた卓上型ロボット Shotmaster−300(武蔵エンジニアリング社製)を用い、インクジェット評価装置EB150(コニカミノルタIJ社製)にて制御した。
乾燥方式は以下に示すとおりである。
HP:ホットプレートによる伝導伝熱乾燥(MH-180CS、アズワン株式会社製)
IR−1:通常の赤外線ヒーターによる輻射伝熱乾燥(IR照射装置 アルティメットヒーター/カーボン 明々工業株式会社製)
IR−2:本発明に用いる赤外線ヒーターによる輻射伝熱乾燥(IR照射装置 LW−NIR120mit HB−25−250、ADPHOS社製)
フィラメント温度は、非接触式温度計(IR-AHS 株式会社チノー製)にて測定した。
また、透明電極No.115において、解離性基含有自己分散型ポリマー プラスコートZ−561を水溶性バインダー樹脂に変更した他は同様にして、透明電極No.116を作成した。さらに、透明電極No.137において、解離性基含有自己分散型ポリマー プラスコートZ−561を前記水溶性バインダー樹脂に変更した他は同様にして、透明電極No.138を作成した。
《サンプルの評価》
得られた透明電極No.101〜144の乾燥性、塗布膜の膜厚分布、透明樹脂基板2の安定性について、下記のように評価した。
(1)乾燥性
塗布膜の乾燥性について、塗布膜表面を触診し、下記基準で評価した。
○:べたつきが無く、さらさらしている
△:べたつきがある
×:塗布膜が剥離し、溶媒が残っている
(2)膜厚分布
塗布膜の膜厚分布(平滑性)について、表面を目視観察し、干渉縞についての下記の基準で評価した。
◎:干渉縞が無い
○:干渉縞がほとんど無い
△:弱い干渉縞がある
×:強い干渉縞がある
(3)透明樹脂基板2の安定性
乾燥処理による透明樹脂基板2のダメージ評価として、透明樹脂基板2の変形について下記の基準で評価した。
○:変形無し
△:僅かに反りがあるが、透明樹脂基板2を自由に曲げられる
×:強い反りがあり、反りの部分で透明樹脂基板2が曲がらない
××:透明樹脂基板2の一部が溶融、変形している。
Figure 0006003582
《まとめ》
表1に示すとおり、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて乾燥を行った本発明に係る透明電極No.111〜121及び133〜143は、比較例の透明電極No.101〜110、122〜132及び144に対して、塗布膜の乾燥性、膜厚分布の均一性及び基板安定性のいずれも優れていた。
〔実施例2〕
《有機EL素子(サンプル)の作製》
実施例1で作製した透明電極No.101〜144を用いて、以下の方法で、それぞれ対応する有機EL素子No.201〜244及び245を作製した。
また、ITO電極を比較例として用いるために、ガスバリアー層3を有する透明電極1用の透明樹脂基板2上のガスバリアー層3側の面にITOをスパッタリングにより150nmの厚さで設置した後、110℃で24時間のアニールを行い、通常のITOパターニングで行われるフォトリソグラフィーの手法を用いて、所定のパターンにパターニングを行い、比較例サンプル用のITO電極を作製した。
(1)有機機能層の形成
透明電極1上に、下記のようにして、有機機能層14(正孔輸送層、発光層、正孔阻止層及び電子輸送層)を形成した。なお、有機機能層14は蒸着により形成した。市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
(1.1)正孔輸送層の形成
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、図4Dに示すように、導電性ポリマー層5を覆うように透明電極1上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
(1.2)発光層の形成
次に、以下の手順で発光層を設けた。
(1.1)で形成した正孔輸送層上に、化合物2が13質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%の濃度になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層を覆うように共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色リン光発光層を形成した。
次いで、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%の濃度になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で、形成した緑赤色リン光発光層を覆うように共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色リン光発光層を形成した。
(1.3)正孔阻止層の形成
さらに、(1.2)で形成した発光層上に、化合物6を蒸着し厚さ5nmの正孔阻止層を形成した。
(1.4)電子輸送層の形成
引き続き、(1.3)形成した正孔阻止層上に、CsFを層厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
Figure 0006003582
(2)第2電極(対電極16)の形成
図4Eに示すように、形成した電子輸送層(有機機能層14)の上に、Alを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ100nmの対電極16(陰極)を形成した。
(3)封止部材の形成
形成した対電極16の上に、ポリエチレンテレフタレートを基板とし、Alを厚さ300nmで蒸着した封止部材18を形成した。具体的には、図4Fに示すように、接着剤を塗った可撓性の封止部材18を対電極16の上に貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させて封止した。封止部材18の外側に露出した取出電極12及びAlをそれぞれ透明電極1(アノード)及び対電極16(カソード)の外部取り出し端子とし、有機EL素子No.201〜244を作製した。
(4)基準有機EL素子のアノード電極の形成
有機EL素子No.213の作製において、アノード電極として、透明電極113を、下記の方法に従って形成したITOパターン電極からなるアノード電極に変更した以外は同様にして有機EL素子を作製し、これを基準有機EL素子(有機EL素子No.245)とした。
具体的には、ガスバリアー層3を有する透明樹脂基板2上に、陽極としてITO(インジウム−スズの複合酸化物)を110nmの厚さで成膜してパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明樹脂基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行って、アノード電極を作製した。
《サンプルの評価》
作製した有機EL素子No.201〜245の電力効率、発光均一性(発光ムラ)、発光寿命及びダークスポットを下記のように評価した。
(1)電力効率
分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて、有機EL素子No.201〜244及び基準有機EL素子(有機EL素子No.245)について、正面輝度及び輝度角度依存性を測定し、正面輝度が1000cd/mとなる駆動電圧、電流から電力効率(lm/W)を測定した。
次いで、基準有機EL素子(有機EL素子No.245)の電力効率を100%とする相対電力効率を求め、下記の基準に従って、電力効率の評価を行った。評価結果を表2に示す。
◎:相対電力効率が、150%以上である
○:相対電力効率が、100%以上、150%未満である
△:相対電力効率が、80%以上、100%未満である
×:相対電力効率が、50%以上、80%未満である
××:相対電力効率が、50%未満である
(2)発光均一性
KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させた。1000cd/mで発光させた有機EL素子No.201〜245について、50倍の顕微鏡で各々の発光輝度ムラを観察し、下記の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
さらに、有機EL素子No.201〜245をオーブンにて60%RH、80℃、5時間加熱したのち、再び前記23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間以上調湿した後、同様に発光均一性を観察した。
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:ほとんど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面にわたって発光ムラが見られ、許容できない
××:発光面の周辺部のみ輝度高く、中央部の発光が明らかに弱い
(3)発光寿命
得られた有機EL素子の、初期の輝度を5000cd/mで連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。前述のアノード電極をITOとした基準有機EL素子(有機EL素子No.245)に対する比率を求め、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
◎:150%以上
○:100〜150%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
(4)ダークスポット
バリアー機能低下の評価として、作製した各有機EL素子を、オーブンにて60%RH、温度80℃の条件下で10時間加熱したのち、23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間温調した後、ダークスポットの発生度(数、大きさ)により、以下の基準で評価した。
◎:微小ダークスポット(0〜0.5mm径)が10個以下
○:微小ダークスポットが30個以下、小径ダークスポット(0.5〜1mm径)が10個以下
△:小径ダークスポットが10個以上、大径ダークスポット(1mm以上)が5個以下
×:大径ダークスポットが6個以上。
Figure 0006003582
《まとめ》
表2に示すとおり、波長制御赤外線ヒーターにて乾燥を行った透明電極1を用いた有機EL素子No.211〜221及び233〜243は、比較例の有機EL素子No.201〜210及び222〜232、244及び245に対して、電力効率、発光均一性、発光寿命のいずれにも優れている。また、劣化試験によるダークスポット発生が少なく、ガスバリアー層3の機能を損なうことなく透明電極1を作製できることがわかる。
1 透明電極
2 透明樹脂基板
3 ガスバリアー層
5 導電性ポリマー層

Claims (5)

  1. ガスバリアー層を有する透明樹脂基板の一方の面上に、導電性ポリマー層を備える透明電極の製造方法であって、
    (1)前記透明樹脂基板上にポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布乾燥後、改質処理を行ってガスバリアー層を形成するガスバリアー層形成工程と、
    )前記ガスバリアー層を有する透明樹脂基板の一方の面上に、少なくとも導電性ポリマーと、非導電性ポリマーと、水とを含有する導電性ポリマー層形成用組成物を塗布して導電性ポリマー層となる塗布膜を形成する導電性ポリマー層形成工程と、
    )前記導電性ポリマー層形成工程において形成した塗布膜を、発光スペクトルの極大波長が0.9〜1.5μmの範囲内にある赤外線を発生する赤外線ヒーターを用いて加熱し、前記水を除去して乾燥する乾燥工程と、
    を有することを特徴とする透明電極の製造方法。
  2. 前記透明樹脂基板が、前記透明樹脂基板のガスバリアー層を有する面上に前記導電性ポリマー層を備えることを特徴とする請求項1に記載の透明電極の製造方法。
  3. 前記導電性ポリマー層形成用組成物が、有機極性溶媒を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明電極の製造方法。
  4. 前記ガスバリアー層を有する透明樹脂基板が、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10−3g/m・24h以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
  5. 前記導電性ポリマー層の層厚が、150〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
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