JP2014172936A - 無機/有機複合化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無機塩あるいは無機酸化物の塩2と、少なくともポリビニルアルコール3を含む有機高分子が、水を含む溶媒1中で共存する状態で、当該無機塩あるいは無機酸化物の塩を、プロトンを解離することのできる固体状の酸と、あるいは、水酸化物イオンを解離することのできる固体状のアルカリと、接触させて中和することによって、無機/有機複合化合物を製造する。
【選択図】図1
Description
この無機/有機複合化合物は、ポリビニルアルコールを主成分とする有機高分子と無機酸化物が分子レベルで化合した複合化合物であって、無機酸化物の性質を反映して、低価格にもかかわらず化学的安定性や耐熱性に優れ、さまざまな分野に適用可能な工業材料である。
これらの方法では、不要塩は中和反応の結果として必ず生成する。中和する酸あるいはアルカリが一般的な塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの水溶液である場合、生成した不要塩は原料液中に溶解した状態となり、原料液から除去するのは簡単ではない。従って、溶媒を除去して無機/有機複合化合物を成形体とした後に成形体から不要塩を取り除く操作を行なうのが従来の標準的製法である。
この不要塩を取り除く操作は、成形体を熱水で洗浄するなどの方法によって実行可能であるが、その操作は製造工程を複雑化し、また場合によっては洗浄操作を行えないケースもある。例えば、何か他の材料の表面上に原料液を塗布して無機/有機複合化合物の塗膜を形成しようとする場合、組み合わせる他の材料が熱水洗浄できない材料であるか、あるいは洗浄できない状況にある場合、使用できないことになってしまう。
非特許文献1の方法は、ポリビニルアルコールが共存している状態で中和操作を行なっておらず、中和後に生成したタングステン酸をポリビニルアルコールと混合しているため、混合する時にはタングステン酸は既に失活してしまっている。従って、この方法では、前記の無機/有機複合化合物と同様のものは得られない。
さらにまた、無機/有機複合化合物の無機酸化物成分がジルコン酸化合物である場合、原料液中和工程のゲル化を防止し、そのために中和操作を成形後に行う必要がないことを特徴とする無機/有機複合化合物の製造方法を提供することを目的としている。
本発明において、水酸化物イオンを解離することのできる固体状のアルカリとして、例えば、四級アンモニウム基を固定したものが使用できる。
さらに具体的には、プロトンを解離することのできる固体状の酸、あるいは、水酸化物イオンを解離することのできる固体のアルカリとして、イオン交換樹脂を使用することができる。
本発明により製造される無機/有機複合化合物は、固体電解質あるいは触媒として使用することができる。
本発明の製造方法によって、無機/有機複合化合物を成形体の形にした後に洗浄操作によって不要な塩を取り除くことが困難である用途においても、適用することができるようになる。
また、本発明によれば、原料液に過剰の酸あるいはアルカリが存在しないため、酸あるいはアルカリに耐えられない他の部材と共存した状態で使用することも可能になる。
図1は、複合化合物の製造工程の第1実施形態を概略的に示すシステム図である。
先ず、原料として、ステップ1で水を含む溶媒を、ステップ2で珪酸塩、タングステン酸塩などの無機酸化物の塩を、ステップ3でポリビニルアルコールを、それぞれ準備し、ステップ4でこれらの原料を混合して、水を含む溶媒中で無機酸化物の塩とポリビニルアルコールが共存する原料溶液を得る。
珪酸塩、タングステン酸塩などの無機酸化物の塩は、水に溶解するものであれば、どのような種類のものでもよく、酸素や金属イオンの比率、含水率も、どのようなものでもよい。
生産上の実際的な時間範囲の中で、原料溶液中の溶媒を飛ばして無機/有機複合化合物の成形体の製造を効率的に行えるようにするためには、原料溶液は、ポリビニルアルコール濃度にして、5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であることが望ましい。
中和後の原料液は、ステップ7でろ過等の操作により、この固体状の酸(塩)を原料液から分離する。この時点で原料液は不要な塩が取り除かれている。
その後、ステップ8で溶媒を除去し、ステップ9で複合化合物成形体を得る。
中和後の原料液は、ステップ7でろ過等の操作により、この固体状のアルカリ(塩)を原料液から分離する。この時点で原料液は不要塩が取り除かれている。
その後、ステップ8で溶媒を除去し、ステップ9で複合化合物成形体を得る。
例えば、ステップ4で作製した原料液に、あるいは、ステップ7の操作で得られる中和後の原料液に、適宜添加物を混入させることによって、複合化合物中にその添加物を導入することなどのバリエーションも可能である。
珪酸とは、SiO2を基本単位とし、それがH2Oを含んでいる化合物であり、一般式SiO2・xH2Oで表せるものであるが、本発明における珪酸化合物は、珪酸及びその誘導体、あるいは、珪酸を主体とした化合物全般のことを示す。
タングステン酸とは、WO3を基本単位とし、それがH2Oを含んでいる化合物であり、一般式WO3・xH2Oで表せるものであるが、本発明におけるタングステン酸化合物は、タングステン酸及びその誘導体、あるいは、タングステン酸を主体とした化合物全般のことを示す。
ジルコン酸とは、ZrO2を基本単位とし、それがH2Oを含んでいる化合物であり、一般式ZrO2・xH2Oで表せるものであるが、本発明におけるジルコン酸化合物とは、ジルコン酸及びその誘導体、あるいは、ジルコン酸を主体とした化合物全般のことを示す。
例えば、珪酸、タングステン酸、ジルコン酸の塩や水酸化物も、SiO2,WO3,ZrO2を基本単位としたものであり、塩や水酸化物を基本とした誘導体、あるいは、誘導体を主体とした化合物も、本発明における珪酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物に含まれる。
このポリビニルアルコールは、完全なものである必要がなく、本質的にポリビニルアルコールとして機能するものであれば、使用することができる。例えば、ヒドロキシル基の一部が他の基で置換されているもの、一部分に他のポリマーが共重合されているものも、ポリビニルアルコールとして機能することができる。
また、本発明の反応過程でポリビニルアルコールを経由すれば、同様な効果が得られるので、ポリビニルアルコールの原料となるポリ酢酸ビニルなどを出発原料とすることができる。
ポリビニルアルコールに添加する他のポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、メチルセルロース等の糖鎖系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、エポキシ樹脂系ポリマーなどが挙げられる。
複合化合物は、化合物であって、ポリビニルアルコールと無機化合物との物理的な混合による混合物とは区別される。即ち、混合物と異なり、複合化合物においては各構成成分の化学的性質は複合化後は必ずしも保持されない。例えば、本発明の場合、複合化合物の構成成分であるポリビニルアルコールは、単独では水溶性(熱水溶解性)であるが、珪酸化合物、タングステン酸化合物又はジルコン酸化合物との複合化合物形成後は、熱水には基本的に溶解しない。このように、複合化後に化学的性質が変化していることにより、これらは、物理的な混合による混合物とは異なる複合化合物であると言うことができる。
一方、無機化合物が多すぎると、柔軟性が損なわれ、脆性の点で問題が生じる。
従って、複合化合物における無機化合物を、各基本単位であるSiO2、WO3、ZrO2のみの質量に換算した場合に、その質量の総和のポリビニルアルコール質量に対する質量比が0.01〜1になるように、制御するのが好ましい。
また、珪酸化合物、タングステン酸化合物、及びジルコン酸化合物は、組み合わせて使用することができる。
敷衍すれば、本発明の溶媒としては、反応に関与する最低限の水があれば、他の溶媒があっても起こり得るので、水とともに共存できる溶媒は数限りなくあり、これらが水とともに存在していてもよいのである。即ち、溶媒とは、溶質である珪酸塩、タングステン酸塩、ジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩、及びポリビニルアルコール以外の、原料溶液中の全ての成分のことである。例えば、砂糖が溶けていれば、砂糖も溶媒の一員となるので、実質的に水と共存し得る液体(溶解している固体も含めて)と認められる、あらゆる物質が溶媒になり得る。
酸としては、固体状の基体にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基などを固定したものが使用でき、酸の強さの点からスルホン酸基が固定されたものが最も好ましい。
アルカリとしては、固体状の基体に四級アンモニウム基を固定したものが使用できる。
また、固体状の酸や固体状のアルカリとして、従来イオン交換樹脂として使用されているものを適用することができる。
プロトンあるいは水酸化物イオン伝導性であることにより、従来の固体電解質と同様に、燃料電池、電解装置、センサー、電池、エレクトロクロミックデバイス、除湿機に応用することができる。
さらに、この原料溶液に、水に浸された状態のプロトン化した(酸型化した)イオン交換樹脂(アンバーライト2000CT-NA)100ccを加え、撹拌しながらpH2となるまで中和した。
その後、この原料溶液をポリエステルのメッシュで濾過し、イオン交換樹脂を取り除いた。中和反応において起こることは、イオン交換樹脂のプロトンとタングステン酸ナトリウムのナトリウムが交換するだけであるから、イオン交換樹脂除去後には、この原料液中には中和で生成する塩は含まれない。
その後、台座の上に生成した膜を剥離した。
複合化が十分に進行していなければ、この膜は水に溶解するか、水中で劣化してしまうはずであるので、この結果は、所望の無機/有機複合化合物が得られていることを示している。
さらに、この原料溶液に、水に浸された状態のプロトン化した(酸型化した)イオン交換樹脂(アンバーライト2000CT-NA)100ccを加え、撹拌しながらpH2となるまで中和した。
その後、この原料溶液をポリエステルのメッシュで濾過し、イオン交換樹脂を取り除いた。中和反応において起こることは、イオン交換樹脂のプロトンとタングステン酸ナトリウム及び珪酸ナトリウムのナトリウムが交換するだけであるから、イオン交換樹脂除去後にはこの原料液中には中和で生成する塩は含まれない。
その後、台座の上に生成した膜を剥離した。
複合化が十分に進行していなければ、この膜は水に溶解するか、水中で劣化してしまうはずであるので、この結果は、所望の無機/有機複合化合物が得られていることを示している。
さらに、この原料溶液に、水に浸された状態の水酸化物イオン型化した(アルカリ型化した)イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−900)60ccを加え、撹拌しながらpH9となるまで中和した。イオン交換樹脂を用いた本中和工程においては、従来法で見られたようなゲル化は発生しなかった。
その後、この原料溶液をポリエステルのメッシュで濾過し、イオン交換樹脂を取り除いた。中和反応において起こることは、イオン交換樹脂の水酸化物イオンと四酢酸ジルコニウムの酢酸イオンが交換するだけであるから、イオン交換樹脂除去後には、この原料液中には中和で生成する塩は含まれない。
その後、台座の上に生成した膜を剥離した。
複合化が十分に進行していなければ、この膜は水に溶解するか、水中で劣化してしまうはずであるので、この結果は、所望の無機/有機複合化合物が得られていることを示している。
従って、本発明の無機/有機複合化合物の製造方法は、産業上の利用可能性を有する。
Claims (7)
- 無機塩あるいは無機酸化物の塩と、少なくともポリビニルアルコールを含む有機高分子が、水を含む溶媒中で共存する状態で、当該無機塩あるいは無機酸化物の塩を、プロトンを解離することのできる固体状の酸と、あるいは、水酸化物イオンを解離することのできる固体状のアルカリと、接触させて中和する工程を有して、無機/有機複合化合物を製造する
無機/有機複合化合物の製造方法。 - 前記プロトンを解離することのできる固体状の酸が、スルホン酸基を固定した固体である請求項1に記載の無機/有機複合化合物の製造方法。
- 前記水酸化物イオンを解離することのできる固体状のアルカリが、四級アンモニウム基を固定した固体である請求項1に記載の無機/有機複合化合物の製造方法。
- 前記プロトンを解離することのできる固体状の酸、あるいは、前記水酸化物イオンを解離することのできる固体状のアルカリが、イオン交換樹脂である、請求項1に記載の無機/有機複合化合物の製造方法。
- 前記無機酸化物の塩が、少なくとも珪酸塩、タングステン酸塩のいずれかを含み、前記無機/有機複合化合物が、少なくとも珪酸化合物、タングステン酸化合物のいずれかを含む請求項1に記載の無機/有機複合化合物の製造方法。
- 前記無機酸化物の塩が、少なくともジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩のいずれかを含み、前記無機/有機複合化合物が、少なくともジルコン酸化合物を含む請求項1に記載の無機/有機複合化合物の製造方法。
- 前記無機/有機複合化合物が、固体電解質、触媒のいずれかとして使用される請求項1に記載の無機/有機複合化合物の製造方法。
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