本発明は太陽電池の欠陥検査装置に関する。
近年、エネルギー問題や環境意識の高まりから、太陽電池の技術開発が急速に進められている。太陽エネルギーを有効に利用するため、太陽電池そのものの性能を検査し、欠陥のある太陽電池やその欠陥部位を製造工程で特定し、太陽電池の開発や製造に反映させることは重要である。
従来、太陽電池の検査方法としては、太陽電池受光面に発光ダイオードやレーザなどの指向性の強い光源からの光(光ビーム)を局所的に照射し、起電流成分に基づいて欠陥や不良を検査する方法が知られている。特許文献1は、そのような検査装置の一例である。
太陽電池を検査装置で検査し、その結果を、表示装置に画像として表示することも有用である。この場合には、前記光ビームによる太陽電池(セル)の走査(検査)開始を的確に知得することが要求される。
特許公報第5015341号
上述のように、光ビームによる太陽電池セルの走査開始時刻を的確に知得する必要が有る。この知得のために各種の手段を用いることが考えられるが、そのいずれの場合においても、必ずしも的確に走査開始時刻を知得できるとは言いがたかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、太陽電池を光ビームで検査するに当たり、光ビームが太陽電池(セル)の検査を開始する時刻を的確に把握して、例えば、検査結果を表示装置に画像として正確に表示したりすることができるようにすることにある。
上記の課題を解決するために、本発明は、
複数の太陽電池セルが直列に接続されたストリングを有する太陽電池の欠陥を検査する太陽電池の欠陥検査装置であって、
検査対象とする前記ストリングをセットした状態において前記ストリングの少なくとも一端側に位置し且つ受光面を矩形とした感光素子を有するスタートセンサと、光ビームを射出する主光源と、を備え、前記主光源を主走査手段により前記ストリングの幅方向に沿って往復偏向させて前記光ビームに往復走査させる主走査を行わせると共に、前記主光源を副走査手段により長手方向へ移動させて前記光ビームに副走査を行わせ、前記主走査と前記副走査の協働によって前記光ビームにより前記スタートセンサと前記太陽電池セルとを連続的に走査させて主副走査を実行する、検査ユニットと、
前記スタートセンサからのセンサ出力に基づいて、前記光ビームの実駆動周波数、前記光ビームが最大振幅点に至る時刻、及び、前記光ビームによる前記ストリングの走査開始点を検出し、前記各太陽電池セルから出力される発電信号に基づいて、前記各太陽電池セルの形状との関係で前記各太陽電池セルの発電特性を示す画像データを演算する、画像処理装置と、
前記画像処理装置からの前記画像データを表示する表示装置と、
を備えるものとして構成される。
さらに、本発明は、
複数の太陽電池セルが直列に接続されたストリングを有する太陽電池の欠陥を検査する太陽電池の欠陥検査装置であって、
検査対象とする前記ストリングをセットした状態において前記ストリングの少なくとも一端側に位置するスタートセンサと、光ビームを射出する主光源と、を備え、前記主光源を主走査手段により前記ストリングの幅方向に沿って往復偏向させて前記光ビームに往復走査させる主走査を行わせると共に、前記主光源を副走査手段により長手方向へ移動させて前記光ビームに副走査を行わせ、前記主走査と前記副走査の協働によって前記光ビームにより前記スタートセンサと前記太陽電池セルとを連続的に走査させて主副走査を実行する、検査ユニットと、
前記検査ユニットにおける前記主走査手段に、主走査信号として複数の矩形波状のパルスを有する駆動信号を加える、主走査手段駆動回路と、
前記駆動信号の周波数と、前記各パルスの状態変化時刻から予め決めた一定時間としてのオフセット時間後として得られる前記光ビームの最大振幅点に至る時刻と、前記スタートセンサの出力に基づいて得た前記光ビームの走査位相情報と、に基づいて、前記光ビームによる前記ストリングの走査開始点を検出し、前記各太陽電池セルから出力される発電信号に基づいて、前記各太陽電池セルの形状との関係で前記各太陽電池セルの発電特性を示す画像データを演算する、画像処理装置と、
前記画像処理装置からの前記画像データを表示する表示装置と、
を備えるものとして構成される。
本発明によれば、光ビームによる太陽電池セルの検査開始を的確に知得することができる。
本発明の一実施形態に係る太陽電池の欠陥検査装置1の概略構成を示すブロック図。
一例としての代表的な太陽電池モジュールとの関係で前記実施形態を説明する平面説明図。
(a),(b),(c)はそれぞれ主光源と副光源の配置の一例を示す断面説明図。
(a),(b)はそれぞれ光源ユニット(検査ユニット)の一部を示す斜視図及びそのIV(b)−IV(b)線に沿った断面図。
主光源の詳細な構成を示す説明図。
1つのストリング群SGにおけるあるストリングS1の両端のスタートセンサを光ビームが走査する様子を示した説明図。
(a)は前述の図6の一部としてのストリングS1を示す図、(b)はレーザ光がスタートセンサを走査する様子の詳細図、(c)はそれによって得られる出力を示す図。
(a)は従来の砲弾型のセンサをレーザ光が走査する場合の平面説明図、(b)はそれによる出力を示す出力波形図。
(a)は本実施形態にかかる矩形のセンサをレーザ光が走査する場合の平面説明図、(b)はそれによる出力を示す出力波形図。
(a),(b),(c)はそれぞれ本実施形態としてのスタートセンサの説明図であり、(a)は全体の縦断説明図、(b)はマスクを省略した平面図、(c)はマスク自体の平面図。
本願発明の異なる実施形態を説明する図であり、レーザ光がスタートセンサを走査する様子を示す平面説明図。
図11の実施形態において、(a)はMEMSミラーに加える駆動信号、(b)はMEMSミラーの位相を示す図、(c)はスタートセンサから得られる出力信号を示す図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る太陽電池の欠陥検査装置1の概略構成を示すブロック図である。図1の欠陥検査装置1は、太陽電池モジュールの欠陥検査を行うものである。ここで、太陽電池モジュールとは、太陽電池マトリクスをラミネートして封止したものである。太陽電池マトリクスとは、複数の太陽電池セルを直列接続したストリングを複数並べた構造体である。
図1には、3つの太陽電池セルC,C,Cを直列接続したストリングSが図示されているが、直列接続する太陽電池セルの数には特に制限はない。
図1の欠陥検査装置1は、複数の太陽電池セルCが直列接続されたストリングSごとに欠陥検査を行う。より具体的には、各ストリングS内の個々の太陽電池セルCを順に測定対象セルとしてレーザ光を照射し、他のすべての非測定対象セルCにLED光を照射した状態で測定対象セルに流れる起電流を計測して、測定対象セル内にクラック(欠陥)が存在するか否かの欠陥検査を行う。
図1の欠陥検査装置1は、主光源3と、主光源送りモータ4と、モータ制御回路5と、主光源制御回路6と、副光源7,7,・・・と、副光源制御回路8と、スタートセンサ9a,9bと、電流電圧変換回路10と、イコライザアンプ11と、バイアス電流キャンセル回路12と、第1A/D変換回路13と、画像処理部14と、表示装置15と、バイポーラ電源16と、セル間切替タイミング生成回路17と、主光源/スキャン 振幅/周波数 検出回路18と、第2A/D変換回路19と、マイクロコンピュータ20とを備えている。
主光源3は、測定対象セルCにレーザ光を照射するレーザ光源である。主光源3の具体的な構成については後述する。主光源送りモータ(副走査手段)4は、主光源3をストリングSの長手方向に移動させる駆動力を発生する。モータ制御回路5は、主光源送りモータ4の回転方向および回転速度を制御する。主光源制御回路6は、主光源3からレーザ光を発光する制御を行う。
副光源7は、非測定対象セルにLED光を照射するLED光源である。副光源制御回路8は、副光源7からLED光を発光する制御を行う。副光源7は、ストリング内の各セルCに対応づけて設けられており、副光源制御回路8は各セルCごとに副光源の点灯/消灯を切替制御する。
検査対象とする太陽電池(ストリングS)をセットした状態において、ストリングSの両端に位置することになるスタートセンサ9a,9bは、後述する光源ユニット(検査ユニット)22の一部を構成するものである。スタートセンサ9a,9bからの信号はマイクロコンピュータ20に供給される。且つ、検査開始側のスタートセンサ9aからの信号は第1のA/D変換回路13に、供給される。スタートセンサ9aからの信号がマイクロコンピュータ20に供給されることにより、マイクロコンピュータ20は、図1からもわかるように、他の回路からの入力にも基づいて、モータ制御回路5、主光源制御回路6、副光源制御回路7を制御することになる。スタートセンサ9aからの信号が第1のA/D変換回路に供給されることにより、画像処理部14との協働により、追って詳しく述べるように、レーザ光LBによるストリングS(太陽電池セルC)の走査開始点をより正確に把握して、太陽電池セルCの欠陥を示す画像(太陽電池セルCの平面形状との関係で欠陥を表示した画像)をより正確なものとして作成、表示できるようになる。つまり、簡単には、スタートセンサ9a,9bからの信号がマイクロコンピュータ20に供給されることにより、太陽電池セルCの走査開始終了点、レーザ光LBの実駆動周波数及びレーザ光LBが端点にくる時刻を計測器側で検出して、最終的に、より正確な画像を表示可能としている。
電流電圧変換回路10は、測定対象セルで生じた起電流を電圧に変換する。イコライザアンプ11は、電流電圧変換回路10で生成した電圧のゲイン調整を行う。
バイアス電流キャンセル回路12は、ストリングSを流れる起電流のうち不要な起電流成分を除去する。より具体的には、測定対象セルに入り込む、隣接した非測定対象セルからのLED光による起電流成分をバイアス電流キャンセル回路で除去する。また、バイアス電流キャンセル回路12は、非測定対象セルの不良による短絡電流を除去することもできる。バイアス電流キャンセル回路12を設けることで、測定対象セルに照射されたレーザ光のみによる起電流に基づく電圧を正しく検出できるようになる。
第1A/D変換回路13は、バイアス電流キャンセル回路12の出力信号をA/D変換する。画像処理部14は、第1A/D変換回路13の出力信号に基づいて画像処理を行って、表示装置15に表示させる。これにより、測定対象セル内にクラックがあれば、そのクラックの形状が画像として表示装置に表示される。
バイポーラ電源16は、測定対象セルの両端電極間に電圧が印可されない状態で測定対象セルの起電流を測定できるように、ストリングSに付与する逆起電圧を生成する。
セル間切替タイミング生成回路17は、ストリングS内のセルC間の境界を検出して、副光源7の点灯/消灯を切り替えるタイミング信号を生成する。
主光源/スキャン 振幅/周波数 検出回路18は、主光源3からのレーザ光を反射させる図1では不図示のMEMSミラーの振り角を検出する。
第2A/D変換回路19は、主光源/スキャン 振幅/周波数 検出回路18で検出したMEMSミラーの振り角に応じた値をA/D変換してマイクロコンピュータ20に送る。マイクロコンピュータ20は、第2A/D変換回路19の出力信号に応じてMEMSミラーの振り角を調整する。
本実施形態では、図2からわかるように、2つのストリングS(S1,S2)を直列に繋いで1つのストリング群SGとしている。これは、例えばストリングS1中のある太陽電池セルCの検査に当たりその太陽電池セルCから得られる検査出力(発電信号)をストリングS1,S2の端子T1,T2間から得るためである。同様に、ストリングS2中のある太陽電池セルCの検査出力も端子T1,T2から得られることになる。
前述のように、検査対象とする1つのストリングS1(S2)の検査の始まり(光ビームによる走査の開始時刻)を検出するために、前記スタートセンサ9aが用いられる。前記スタートセンサ9a,9bからの出力に基づき、ストリングの検査開始が、マイクロコンピュータ20と、第1のA/D変換回路13及び画像処理部14と、により検出される。
前記スタートセンサ9a,9bは、前にも簡単に述べたように、副光源と同様に、計測器側(図4(a)、光源ユニット22の筐体22a)に固定されるものであるが、以下に説明する図2等では、技術的な理解を早めるべく、ストリングS1,S2等との関係で平面的な位置がわかるように、それらと一緒に平面説明図に図示している。よって、例えば、図2においては、スタートセンサ9a,9bは図中一番左のストリングS1の上下両端に図示されているが、検査の進行につれて光源ユニット(検査ユニット)22が図中右方向に移動すれば、それとともにスタートセンサ9a,9bも右方向に移動し、例えば図中に2点鎖線で示すように左から2番目のストリングS2の上下両端に移動することになる。
つまり、本実施形態では、図2からわかるように、検査対象とする太陽電池モジュールMが検査装置にセットされた状態において、各ストリングS(S1,S2)の始端つまり検査が開始される側と、各ストリングSの終端つまり検査が終了する側とに、フォトダイオードあるいはその他の光感応素子によるスタートセンサ9a,9bが配設されることになる。ストリングS1はY1方向に、ストリングS2はY2方向に、それぞれ検査が開始される。ストリングS1の検査が終わったら、光源ユニット(検査ユニット)22をX方向に1列分だけ横移動させ、ストリングS2の検査が行われる。
より詳しくは、スタートセンサ9a,9bは、1つのストリング群SGを構成する互いに接続された2つのストリングS1,S2のうちの検査対象とするストリングの両端に配置されることになる。太陽電池の欠陥検査に使用されるレーザ光(光ビーム)LBは、各ストリングS1,S2のスキャンの前に、開始側のスタートセンサ9a上をも、例えば、5−12回程度スキャンすることになる。当該レーザ光LBは2つの端点(最大振幅点)間で振られている(例えば図6参照)。主光源のスキャン振幅と周波数は主光源/スキャン 振幅/周波数 検出回路18で検出される。つまり、前記2つの端点間での振れがレーザ光の振れ幅であり、所定時間当たりの振れの回数が周波数を示す。而して、レーザ光が開始側のスタートセンサ9aをスキャンすることにより、このスタートセンサ9aから検出出力が得られる。この出力に基づいて、最終的に、各太陽電池セルCの走査開始(検査開始)点を検出できる。つまり、各太陽電池セルCの画像処理の開始ポイントを知り得る。
以下にこのことをさらに詳細に説明する。
図2は代表的な太陽電池モジュールMの一例を示す図である。図2の例では、10個の太陽電池セルCがY方向(長手方向)に直列接続されてストリングS(S1,S2)を形成し、それらのストリングS1,S2のX方向(幅方向)に隣り合う2つのものの一端部同士が接続されて、2列分の計20個の太陽電池セルCが直列接続されて一つのストリング群SGを構成している。各ストリングS1,S2の各両端には先に簡単に説明したスタートセンサ9a,9bが配置されている。このスタートセンサ9a,9bは、主光源3からのレーザ光を検知する受光素子(例えばフォトダイオード)を含んでいる。
本実施形態に係る欠陥検査装置では、先にも簡単に述べたように、各ストリング群SGにおけるストリングS1,S2を個別に検査するが、各ストリングS1,S2の検査結果はストリング群SG毎に出力する。つまりストリング群SGを構成する各ストリングS1,S2の検査においては、それぞれのストリングS1,S2における個々の太陽電池セルCに順にレーザ光を照射して、前記端子T1,T2から出力される起電流(発電信号)を測定し、その測定結果を画像処理して表示装置15に表示する。これにより、最終的に各セルCのクラック(欠陥)の有無が画像として表示される。
より詳細には、測定対象セルCに流れる起電流の大きさは、欠陥の有無で変化するため、起電流の大きさに応じて画像を変えることで、セルC内の欠陥部分を画像として表現できる。
上述したように、例えばあるストリング群SGにおけるストリングS1を検査するときには、このストリングS1内の測定対象セル以外のすべての太陽電池セルと、ストリングS2の全てのセルCには、LED光が照射されるが、LED光の照射強度は、レーザ光の照射強度よりも高くする必要がある。その理由は、測定対象セルで生じた起電流がストリングS内を流れるように電流経路を形成する必要があるためである。
なお、図2において、例えば、左端のストリング群SGにおけるストリングS1は方向Y1に沿って副走査され、ストリングS2は方向Y2に沿って副走査される。よって、ストリングS1においてはスタートセンサ9aが走査開始側のスタートセンサとなり、ストリングS2においてはスタートセンサ9bが検査開始側のスタートセンサとなる。
図3(a),(b),(c)は主光源と副光源の配置の一例を示す図である。図示のように、主光源3と副光源7を内蔵する光源ユニット(検査ユニット)22による各ストリングSの欠陥検査は次のように行われる。各ストリング群SGは、図2からわかるように、隣り合う2つのストリングS1,S2からなり、各ストリングはそれぞれ10個の太陽電池セルCからなる。よって、例えば、光源ユニット22は図3(a)に示される位置に移動して静止し、この状態で主光源3が光源ユニット22の筐体の溝24内をY(Y1)方向(図2において上から下へ)に移動して、当該ストリングS1の10個の太陽電池セルの検査が行われ、その後、光源ユニット22はX方向(幅方向)に移動して図3(b)の位置を採り、隣り合うストリングS2の検査態勢を採る。この状態で主光源3が再び筐体の溝内をY(Y2)方向に(図2において下から上へ)移動して残りの1列、10個の太陽電池セルを検査する。これにより、ストリング群SG(ストリングS1,S2)の検査が行われる。これを繰り返して、他のストリング群SG(ストリングS1,S2)も検査が行われる。図3(c)は最後のストリング群SG(ストリングS2)を検査している状態を示す。
なお、図3(a),(b),(c)では、検査するストリング群SG(ストリングユニットS1,S2)を切り替えるために光源ユニット22が移動する例を示しているが、これに代えて、光源ユニット22を固定状態とし、太陽電池モジュールMをX方向(幅方向)に移動可能としてもよい。
光源ユニット(検査ユニット)22は筐体22aを有し、これは互いに区画された平行する3本の溝部24,24A、24Bを備える。筐体22aが、上述の図3(a),(b),(c)からわかるように、Y方向、つまり、ストリングSの長手方向に延びる。前述のところからもわかるように、この筐体22aは、その内部に、Y方向(長手方向)に伸び且つX方向(幅方向)に並ぶ3列の溝部24,24A、24Bを有し、各溝部の間には遮光板11,11が設けられている。この遮光板11は、隣の溝部内の副光源からのLED光が入り込まないようにするためのものである。
前述のところからもわかるように、図3(a)等に示すように、中央の溝部24には主光源3がY方向(長手方向)に沿って往復移動可能に配置されている。これは図4(a),(b)からもわかる。つまり、図4(a)に示す中央の溝部24内には、主光源3がY方向(Y1,Y2)に移動可能に設けられている。つまり、主光源3が、図4(b)中左端位置の主光源3Aと右端位置の主光源3Bとの間で、移動可能に設けられている。この図4(b)からわかるように、この溝部24内のほぼ両端に位置するように、前記左端位置と前記右端位置との内側に前記スタートセンサ9a,9bが図示しない任意の手段により支持されている。
さらに、特に図3(a)等からわかるように、主光源3の上方両側には副光源7、7がストリングS1,S2の長手方向に沿って2列に固定状態に配置されている。これら副光源7,7は、その上方に配置される太陽電池セルCの中央に向かって、斜め上方にLED光を照射する。つまり、この副光源7は、検査対象のストリングS1(S2)におけるセルのうちの検査対象とするセル以外のセルを照射するものである。
図3(a)において、両側の溝部24A、24Bにもそれぞれ、ストリングS1,S2の長手方向に沿って副光源7A、7Bが設けられている。これらの溝部24A,24Bの副光源7A、7Bはいずれも、ストリングS1,S2を構成する各セルCに対応づけて設けられており、各セルCに対応する副光源7A,7Bを個別に点灯/消灯できるようになっている。
図3(a)において、前述のように、光源ユニット22における主光源3は、中央の溝部24内で、溝に沿って、Y方向(長手方向)に往復移動可能とされており、その移動方向制御は主光源送りモータ(副走査手段)4が行う。主光源3と向かい合わせに位置するセルCが測定対象セルであり、このセルCに対して主光源3がレーザ光を照射している間は、ストリングS1における他のすべてのセルC及びストリングS2の全てのセルには、光源ユニット22の中央の溝部24の副光源7、7からLED光が照射され、同じストリング群SGのうちの他のストリングS2のすべてのセルCには、両側の溝部24A,24Bのうちの一方の溝部24Aの副光源7AからLED光が照射される。光源ユニット22がX方向(幅方向)に移動して、図3(b)の位置を採った場合には、それに合わせて、LED光を照射する副光源も、7Aから7Bに切り替わり、ストリングS2のセルCを照射する。
より具体的には、主光源3が隣のストリングS2側に移動すると、図1に示したセル間切替タイミング生成回路17がストリングS1,S2間の境界を検出し、これにより、副光源7A、7Bの点灯/消灯が切り替わる。つまり、副光源7Aが消灯し、副光源7Bが点灯する。
図5は主光源3の詳細な構成を示す図である。図示のように、主光源3は、レーザ光源32と、レーザ光源32からのレーザ光を反射させるMEMSミラー(主走査手段、偏向手段)33とを有する。MEMSミラー33は、その中心軸の回りに所定の周波数で振動(揺動回転)しており、これにより、レーザ光の反射角度が所定の周波数で切り替えられる。つまり、光ビームがストリングS1,S2の幅方向に往復動(往復偏向)して、主走査としての往復走査をすることになる。また、主光源3は前述のようにストリングS1,S2の長手方向に移動し光ビームによる副走査を行うこととなる。前記主走査と前記副走査により、光ビームがスタートセンサ9a及び太陽電池セル上に連続するカーブ(波形)を描く主副走査が行われる。
図6は、レーザ光LBが、1つのストリング群SG(ストリングS1,S2)と各ストリングS1,S2の両端のスタートセンサ9a,9bを光ビームが走査する様子を示した説明図である。図6からわかるように、先ずストリングS1についてみれば、光ビームは図中上下に主走査しながら、Y1方向へ、つまり、図中上の列においては右端から左方向へ副走査し、ストリングS1と両端のスタートセンサ9a,9bを主副走査する。ストリングS1の主副走査が終わったら光源ユニット(検査ユニット)22は図中下方へ移動する。この移動に伴ってスタートセンサ9a,9bも図中に想像線で示すスタートセンサ9a,9bの位置へ移動する。この後、前記と同様に、スタートセンサ9a,9bとストリングS2を、Y2方向へ、つまり、右端から左方向へ副走査する。このようにスタートセンサ9a,9bの走査により各ストリングSの前記走査開始時点、走査終了時点が検出される。
而して、図6においては、光ビームの描く波形をピッチの詰まったサイン波形状のものとして示しているが、サイン波状の波形に限ることなく、各種の矩形状の波形やその他の任意の波形とすることができる。
上述のように、MEMSミラー33で反射するレーザ光が測定対象セルに照射される。つまり、前記走査開始時点から走査終了時点との間においては、前記主副走査における前記各ストリングS1,S2の各太陽電池セルCの前記光ビームでの走査による、各太陽電池セルから出力される発電特性に応じた発電信号に基づいて各太陽電池セルCの欠陥の有無が検査される。
図6において、前述のように、各ストリングS1,S2のY方向(長手方向)両側には順次スタートセンサ9a,9bが位置することになる。これにより、同じく前述のようにレーザ光がスタートセンサ9a,9bを走査することにより、ストリング群SG(ストリングS1)の検査開始終了が知得される。より詳しくは、スタートセンサ9a,9bの走査によりストリングS1の図6中右方向Y1への検査開始及び走査終了が知得され、終了検知後に光源ユニット22は図6中下側、つまりX方向(幅方向)に移動して次のストリングS2の検査が行われる。
より詳しくは、図6では、主光源3からのレーザ光LBの軌跡を矢印で示している。図5に示すように、MEMSミラー33は一定の振れ角α、αで振動する。このため、図6に示すように、レーザ光は、ストリングS1の測定対象セルをX方向を高速にスキャンしながら、主光源のY1方向(右側)への移動に伴ってY1方向(右側)に移動する。MEMSミラー33の振れ角の制御は、図1の主光源/スキャン 振幅/周波数 検出回路18によって行われる。なお、この図6からわかるように、レーザ光は例えばsine駆動されながらX方向(幅方向)に振幅を繰り返している。
図6において、上述のように、主光源3がストリングS1の図6中右側の端部に達すると、右端のスタートセンサ9bからの出力に基づいて、マイクロコンピュータ20は、主光源送りモータ4に主光源3の進行方向を今度は左方向へ切り替えるように指示するとともに、副光源制御回路8に対して副光源7の点灯/消灯の切替を指示する。また、マイクロコンピュータ20は、光源ユニット22を図中下向きのX方向(幅方向)に1セル分移動させる制御も行う。
以上の動作が繰り返されて、X方向(幅方向)に隣り合う次のストリング群SG(ストリングS1,S2)の検査が順次行われ、やがて検査が終了する。スタートセンサ9a,9bの構造については追って詳しく述べる。
副光源7としてLED光源を用いる理由は、指向性の高いものを比較的安価に入手できることと、白熱電球やキセノンランプと比べて熱の発生が少ないことと、光源を小型化できることと、単色光であること等による。
太陽電池はその種類ごとに分光感度が異なっている。結晶シリコン型とCIGS型の太陽電池では、900nm〜1000nmの発光波長の光に対して最も感度が高い。
そこで、本実施形態では、870nm〜1000nm程度の発光波長を持つLED光源を用いることにした。より具体的には、安価でかつ省スペースという観点から、940nm程度の発光波長を持つGaAs発光ダイオードまたは870nm程度の発光波長を持つGaAlAs発光ダイオードを用いることにした。
上述したように、非測定対象セルにはLED光が照射され、測定対象セルにはレーザ光が照射されるが、LED光の照射強度がレーザ光の照射強度よりも十分に高くないと、レーザ光の照射により測定対象セルで生じた起電流を、同じストリング内の非測定対象セルを介して外部に取り出せなくなる。よって、LED光の照射強度は、レーザ光の照射強度よりも十分に高くする必要がある。
一方、測定対象セルに照射されるレーザ光の照射強度(レーザパワー)によって、画像処理後のクラックの見え方が変わってくる。
本発明者が、発光波長630nmの赤色レーザを用いてレーザパワーを20mWとして欠陥検査を行ったところ、セル表面上の傷や汚れは検出できるものの、30μm以下の微細なクラックを検出するには、太陽電池セル表面での光吸収率を考慮すると不十分であることがわかった。波長630nmの赤色レーザの場合、約70%のレーザ光が太陽電池セル表面から3μm程度の浅いところで吸収されてしまう。
したがって、マイクロクラックや微細貫通クラックを検出するには、太陽電池セルのより深くまでレーザ光を浸透させる必要がある。
そこで、本発明者は、レーザパワーを種々に変化させて、レーザパワーの最適化を図る手法を採用した。
レーザパワーを上げるほど、小さなクラックまで検出可能となる。現状、セルタイプの太陽電池の場合、レーザパワーを70mWにすると、マイクロクラックまで検出できることを確認している。
レーザ光の発光波長は、可視光の中では長波長であり、入手性がよくスポット径の調整がしやすいという観点で、本実施形態では、発光波長が660nmの赤色レーザを用いることにした。図7(a),(b),(c)を参照して前記したスタートセンサ9a,9bの役割をより詳しく説明する。
簡単には、本実施形態では、検査開始側のスタートセンサ9aを、図7(b)からわかるように、光ビームが描く走査線の図中上下方向において上側に寄った位置に配置している。つまり、スタートセンサ9aを、光ビームの主走査における両側の端点(最大振幅点)の中央よりも一端側に寄った位置にくるようにしている。これにより、このスタートセンサ9aから、図7(c)に示すように、例えば、パルスP0とP1との幅と、パルスP1とP2との幅とが異なる出力波形が得られる。これにより、スタートセンサ9aからの出力を以下に述べるような処理をすることにより、所期の情報を得られる。
より詳しくは、図7(a)は前述の図6の一部としてのストリングS1を示す図である。図7(a)では、図示を簡略化するため、スキャンするレーザ光がスタートセンサ9aを図中上下方向に1回しか横切っていないものとして示しているが、実際は図中上下方向に複数回横切っている。レーザ光がsine駆動されてスタートセンサ9aを繰り返し横切る態様の詳細は図7(b)に例示される。この例示ではレーザ光が図中上下に往復動して都合6回、つまり、6つの走査線S0−S5がスタートセンサ9aを横切る(走査する)場合を示している。レーザ光が6回スタートセンサ9aを横切ることにより図7(c)に示すように6つのパルスP0−P5が検出される。これらのパルスP0−P5の隣り合うものの同士の中間点から端点つまりsineカーブにおける最大振幅点PMO0−PMO4がわかる。これらの端点の情報が画像解析に有効に用いられる。
即ち、前記端点の情報をもとに、上記スタートセンサ9aからの出力を解析することにより、MEMSミラー33の実駆動周波数及びレーザ光が端点に来る時刻を計測器側で検出することができる。これにより、レーザ光による太陽電池セルの走査によって得られる画像の起点を定めることができる。つまり、レーザ光による太陽電池セルの走査によって得られる画像の起点を第1のA/D変換回路13により取り込み、画像処理部14にて検出することができる。これにより、太陽電池モジュールMの発電信号をセルCの形状として画面上に表示することができる。つまり、各太陽電池セルCの発電特性を各太陽電池セルCの形状との関係で画面に表示することができる。また、レーザ光による太陽電池セルの走査開始時刻を得ることができる。これに基づき、それ以前の信号(ノイズや光の反射に起因する太陽電池信号等)を意図的にカットすることも可能となる。
次に、スタートセンサ9a,9b自体の受光部分の構造及びスタートセンサ9a,9bへ照射する好ましいレーザ光について説明する。
スタートセンサとして汎用の砲弾型のセンサS0を用いると、レーザ光がセンサの端部を走査する時に、検出信号が乱れるのが避けられない。つまり、追って詳述するが、図8(a)からわかるように、光ビームは砲弾型のセンサS0を走査するときは、センサS0上を走査する光ビームの軌跡長さはそれぞれ異なるものとなるのが避けられない。このため、図8(b)からわかるように、センサS0からの出力パルスの幅がそれぞれ異なるものとなり、前記sineカーブの端点の位置が把握しにくい。
この点に着目し、本実施形態では、センサとしてフラット型のものを用い、且つ、センサの受光面の直前に拡散板を設けることで、検出信号の乱れを可及的に抑制するようにしている。これにより、センサS1からより安定した検出信号が得られるようになる。加えて、このようにフラット型のセンサS1を用いることにより、センサとしての高さを低くすることができ、装置全体の小型化が可能である。また、矩形状の開口を有するマスクを用いたので、センサの受光面をより厳密に矩形状として、出力信号をより精度の高いものとすることができる。
以下にこのことを詳細に説明する。
上述のように、レーザ光方式による太陽電池の欠陥検査装置は、検査開始信号としてフォトセンサによる信号検出を行っている。フォトセンサ自体の形状としては、基板実装型、砲弾型などの様々な形状がある。レーザ光を直接センサに入力させる方式では、太陽電池の欠陥検査装置においてはレーザ光がスキャン方向(X方向)と垂直方向(Y方向)にサーボによって移動しているため、センサの真ん中と端部では、たとえスキャンが等速で行われているとしても、レーザ光がセンサに当たっている時間にばらつきが生じてしまう。また、フォトセンサの回りに金属部分が存在する場合には、その金属部分でレーザ光が反射して、いわゆる誤検出をしてしまう。このような問題を解決すべくなされたのが本実施形態である。
このことを、前にも簡単に説明したが、図8(a),(b)と図9(a),(b)を用いてより詳しく説明する。
図8(a),(b)は従来の砲弾型のセンサS0をレーザ光が走査する場合を示し、図9(a),(b)は本実施形態にかかる矩形のセンサS1をレーザ光が走査する場合を示す。
図8(a)において、偏向手段により往復動するレーザ光の軌跡を、振れ幅を3分割して、A,B,Cの3つの領域に分ける。領域Bはレーザ光がセンサS0を走査する領域、領域A,Cはレーザ光がセンサS0を走査していない領域である。各領域A,B,Cを通るレーザ光を、レーザ光a10−a60、b10−b60,c10−c60と呼ぶ。これらのレーザ光a10−a60、b10−b60,c10−c60によるセンサS0の出力は図8(b)に示される。この図8(b)からわかるように、センサS0を走査するレーザ光b10−b60の軌跡としての長さがばらばらである。つまり、レーザ光がセンサS0上を通過する時間がばらばらである。このため、センサS0の出力からレーザ光の端点(最大振幅点)を認識するのが実際上著しく困難である。
これに着目し、本実施形態では、図9(a)に示すように、センサS1の受光面を矩形のものとした。つまり、センサの前面に拡散板を付設し、且つ、矩形の開口を有するマスクを用いた。これにより、図9(b)からわかるように、レーザ光b11−b61がセンサS1上を通過する時間が一定となり、端点を認識するのが実際上容易且つ高精度で行える。
つまり、本実施形態は、スタートセンサによるレーザ光の取り込み信号が不安定で、画像が乱れ、測定毎にスタート信号が変化するのを防ぎ、ソフト側にて検出しやすくするため、センサの受光面の形状を最適形状としている。つまり、センサ回りに工夫を凝らすことにより、取り込み信号をシャープなものとし、ソフト側にて検出処理し易くしたものである。
具体的には、先にも簡単に述べたように、
− センサの形状を、砲弾型でなく、平らな形状のセンサとし、
− 前記センサの上方に、拡散板を具備させることにより、レーザ光を拡散させて、均一な光でセンサを照射するようにし、
− さらに、前記拡散板の上方に、矩形の開口を有するマスクを用いることにより、拡散板における前記光ビームの受光領域を定める。つまり、前記開口により、センサ(拡散板)における実質的な受光面の形状、大きさを最適なものとする。つまり、マスクの開口の形状、大きさを種々変えて、つまり拡散板の受光面の形状、大きさを種々変えて実験をして、得られるセンサ信号の違いを検証することにより、マスクの開口つまり前記受光面の形状、大きさとして最適なものを得た。
図10(a),(b),(c)はそれぞれ本実施形態としてのスタートセンサ9a,9bの説明図であり、(a)は全体の縦断説明図、(b)はマスクを省略した平面図、(c)はマスク自体の平面図である。即ち、図10(a)からわかるように、レーザ光LBを受光するスタートセンサ9a,9bは、基台41を備え、この基台41表面に形成した溝41a内に平坦なセンサ本体42が収納されている。このセンサ本体42の上方に拡散板43が配置されている。この拡散板43の上方にはマスク44が配置されている。このマスク44は上述のように開口44aを備える。図10(b)のマスク44を除去した状態の平面図からわかるように、レーザ光LBはマスク44の開口44aを通って拡散板43に至り、そこで拡散したのちにセンサ本体42を照射する。
本実施形態では、マスクとして図10(c)に示すマスク44を用いたが、それは本発明者が行った実験結果によるものである。つまり、本発明者は、拡散板もマスクも用いない場合、拡散板は用いるもののマスクは用いない場合、拡散板を用い且つマスクとして各種マスクを用いた場合についての実験を行った。マスクの開口は、縦型スリット、横型スリット、矩形スリットとした。その結果としての各種の出力から、図10(c)の場合、つまり、矩形の開口44aを有するマスク44を用いた場合が最適であるのがわかった。
図11及び図12(a)−(c)は、本願発明の異なる実施形態を説明する図である。
先に説明した実施形態の装置においては、例えば図7(a),(b),(c)からわかるように、光ビーム(レーザ光)が端点(最大振幅点PM00、PM01、・・・)へ来る時刻をスタートセンサ(フォトセンサ)9a,9bからの出力に基づいて検出していた。しかし、以下に説明する異なる実施形態では、前記時刻をスタートセンサ(フォトセンサ)9a,9bからの出力に基づいて検出するのに代え、前記時刻を、マイクロコンピュータ(主走査手段駆動回路)20からMEMSミラー(主走査手段)33へ加える駆動信号(制御信号)に基づいて、前記駆動信号との関係で、オフセット時間が一定で、予め計算した決められた時刻、として検出することができるようにしている。このため、図1に示すように、マイクロコンピュータ20から、前記駆動信号を第1のA/D変換回路13を介して画像処理部14にも加えるようにしている。これにより、画像処理部14で前記の処理が行われる。
より詳しくは、図11は、一例として、レーザ光(走査線S0−S3)がスタートセンサ(フォトセンサ)9a(9b)を2周期分だけ走査する場合を示している。この図11は、先に説明した図7(b)の一部と同等の内容を示す図である。この走査により、レーザ光(走査線S0−S3)は、端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02を通過する。
上記のような走査は図12(a)に示す駆動信号をマイクロコンピュータ20(図1)から主光源3(MEMSミラー33)に加えることによりなされる。この印加によりMEMSミラー33は図12(b)に示すミラー位相をとって駆動される。
つまり、図12(a)の駆動信号をMEMSミラー33に加えることにより、図12(b)からわかるように、その駆動信号との関係で、状態がLからHへ変化した時刻から一定のオフセット時間t1後に端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02の時刻となる。このオフセット時間t1は、実験等によって、予め算出し、設定したものであるため、前記端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02に至る時刻は、前記駆動信号のとの関係で確定したものとして得られる。つまり、前記端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02に至る時刻は、前記駆動信号の立ち上がり時刻から予め決定されたオフセット時間t1後の確定したものとして得られる。このようにして得られる端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02の時刻情報を用いることにより、各ストリングS1,S2の検査結果を画像としてより正確なものとして表示することが可能である。
このことをより詳しく説明する。先に説明した図7(a),(b),(c)等に示される実施形態では、スタートセンサ(光感応素子)9a(9b)を使用して、MEMSミラー(スキャナミラー)33の振動に起因する光ビームの往復走査によって得られる往復信号の中間点を計算し、レーザ光が端点に来る時刻[スキャナミラーの位相が90°,−90°(270°)となる時刻]を検知する方式を採用している。しかしながら、この方式では、レーザ光が端点にくる時刻を的確に把握できない場合も考えられる。それは以下の理由による。光感応素子は、自己に入力される光信号のレベル(レーザパワー)によって、応答性が同じでない場合もある。このため、前記方式を採用している場合には、入力されるレーザパワーに応じ、光感応素子の応答性に起因してオフセット時間がばらつくこともある。このため、レーザ光が端点に至る時間が一定ではなくなり、検出位相がずれてしまうこともある。このため、光感応素子の出力に基づいてセンサの検査結果を画像とした場合には、センサの発電特性をその正しい位置関係で把握、表示することができなくなることもありうる。
これに着目し、本実施形態では、前記端点の時刻を光感応素子(感光素子)の出力から求めるのに代え、MEMSミラー33へ加える駆動信号を基準とし、駆動信号との関係で一定のオフセット時間後にレーザ光が前記端点に来るように、各種のパラメータを予め設定している。つまり、前記MEMSミラー33への前記駆動信号の印加後の、予め算出・設定した一定のオフセット時間t1後に、レーザ光が前記端点にくるようにしている。つまり、MEMSミラー33への駆動信号の印加時刻から、前記一定時間後に、必然的に、MEMSミラー33の位相が90°,−90°(270°)となるように予め設定している。前記端点の時刻は、マイクロコンピュータ20からMEMSミラー33へ加える駆動信号を第1のA/D変換回路13を介して画像処理部14に加えることにより、画像処理部14において知得される。さらに、このようにして得られる端点の時刻を基にして、画像処理部14が、スタートセンサ9a(9b)からの出力(図12(c))を参照しながら、MEMSミラー33の位相(走査位相情報)を算出し、算出した位相との関係で、セルCからの出力を解析することにより、セルCから取得した発電特性のデータを、セルC(ストリングS1,S2)の幾何学的位置(平面形状)との関係を保って画像化する。
つまり、先の実施形態と同様に本実施形態においても、スタートセンサ(光感応素子)9a(9b)が光ビームによって走査される。その結果、図12(c)に示すように、スタートセンサ9a(9b)から出力が得られる。この出力によって、光ビームが現在90°,−90°のどちら側の位相に動いているかを、画像処理部14が検出する。つまり、スタートセンサ9a(9b)の出力を第1のA/D変換回路13に取り込み、画像処理部14で処理することにより、光ビームが現在90°,−90°のどちら側の位相に動いているかを検出可能である。この図12(c)は先に説明した図7(c)に対応するものである。なお、図12(b)において、ラインLN1とLN2に挟まれた部分が、レーザ光がスタートセンサ9a(9b)を走査(照射)する時間を示している。
3 主光源
9a,9b スタートセンサ
15 表示装置
22 光源ユニット(検査ユニット)
32 レーザ光源
43 拡散板
44 マスク
44a 開口
S1,S2 ストリング
C 太陽電池セル
本発明は太陽電池の欠陥検査装置に関する。
近年、エネルギー問題や環境意識の高まりから、太陽電池の技術開発が急速に進められている。太陽エネルギーを有効に利用するため、太陽電池そのものの性能を検査し、欠陥のある太陽電池やその欠陥部位を製造工程で特定し、太陽電池の開発や製造に反映させることは重要である。
従来、太陽電池の検査方法としては、太陽電池受光面に発光ダイオードやレーザなどの指向性の強い光源からの光(光ビーム)を局所的に照射し、起電流成分に基づいて欠陥や不良を検査する方法が知られている。特許文献1は、そのような検査装置の一例である。
太陽電池を検査装置で検査し、その結果を、表示装置に画像として表示することも有用である。この場合には、前記光ビームによる太陽電池(セル)の走査(検査)開始を的確に知得することが要求される。
特許公報第5015341号
上述のように、光ビームによる太陽電池セルの走査開始時刻を的確に知得する必要が有る。この知得のために各種の手段を用いることが考えられるが、そのいずれの場合においても、必ずしも的確に走査開始時刻を知得できるとは言いがたかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、太陽電池を光ビームで検査するに当たり、光ビームが太陽電池(セル)の検査を開始する時刻を的確に把握して、例えば、検査結果を表示装置に画像として正確に表示したりすることができるようにすることにある。
上記の課題を解決するために、本発明は、
複数の太陽電池セルが直列に接続されたストリングを有する太陽電池の欠陥を検査する太陽電池の欠陥検査装置であって、
検査対象とする前記ストリングをセットした状態において前記ストリングの少なくとも一端側に位置し且つ受光面を矩形とした感光素子を有するスタートセンサと、光ビームを射出する主光源と、を備え、前記主光源を主走査手段により前記ストリングの幅方向に沿って往復偏向させて前記光ビームに往復走査させる主走査を行わせると共に、前記主光源を副走査手段により長手方向へ移動させて前記光ビームに副走査を行わせ、前記主走査と前記副走査の協働によって前記光ビームにより前記スタートセンサと前記太陽電池セルとを連続的に走査させて主副走査を実行する、検査ユニットと、
前記スタートセンサからのセンサ出力に基づいて、前記光ビームの実駆動周波数、前記光ビームが最大振幅点に至る時刻、及び、前記光ビームによる前記ストリングの走査開始点を検出し、前記各太陽電池セルから出力される発電信号に基づいて、前記各太陽電池セルの形状との関係で前記各太陽電池セルの発電特性を示す画像データを演算する、画像処理装置と、
前記画像処理装置からの前記画像データを表示する表示装置と、
を備えるものとして構成される。
さらに、本発明は、
複数の太陽電池セルが直列に接続されたストリングを有する太陽電池の欠陥を検査する太陽電池の欠陥検査装置であって、
検査対象とする前記ストリングをセットした状態において前記ストリングの少なくとも一端側に位置するスタートセンサと、光ビームを射出する主光源と、を備え、前記主光源を主走査手段により前記ストリングの幅方向に沿って往復偏向させて前記光ビームに往復走査させる主走査を行わせると共に、前記主光源を副走査手段により長手方向へ移動させて前記光ビームに副走査を行わせ、前記主走査と前記副走査の協働によって前記光ビームにより前記スタートセンサと前記太陽電池セルとを連続的に走査させて主副走査を実行する、検査ユニットと、
前記検査ユニットにおける前記主走査手段に、主走査信号として複数の矩形波状のパルスを有する駆動信号を加える、主走査手段駆動回路と、
前記駆動信号の周波数と、前記各パルスの状態変化時刻から予め決めた一定時間としてのオフセット時間後として得られる前記光ビームの最大振幅点に至る時刻と、前記スタートセンサの出力に基づいて得た前記光ビームの走査位相情報と、に基づいて、前記光ビームによる前記ストリングの走査開始点を検出し、前記各太陽電池セルから出力される発電信号に基づいて、前記各太陽電池セルの形状との関係で前記各太陽電池セルの発電特性を示す画像データを演算する、画像処理装置と、
前記画像処理装置からの前記画像データを表示する表示装置と、
を備えるものとして構成される。
本発明によれば、光ビームによる太陽電池セルの検査開始を的確に知得することができる。
本発明の一実施形態に係る太陽電池の欠陥検査装置1の概略構成を示すブロック図。
一例としての代表的な太陽電池モジュールとの関係で前記実施形態を説明する平面説明図。
(a),(b),(c)はそれぞれ主光源と副光源の配置の一例を示す断面説明図。
(a),(b)はそれぞれ光源ユニット(検査ユニット)の一部を示す斜視図及びそのIV(b)−IV(b)線に沿った断面図。
主光源の詳細な構成を示す説明図。
1つのストリング群SGにおけるあるストリングS1の両端のスタートセンサを光ビームが走査する様子を示した説明図。
(a)は前述の図6の一部としてのストリングS1を示す図、(b)はレーザ光がスタートセンサを走査する様子の詳細図、(c)はそれによって得られる出力を示す図。
(a)は従来の砲弾型のセンサをレーザ光が走査する場合の平面説明図、(b)はそれによる出力を示す出力波形図。
(a)は本実施形態にかかる矩形のセンサをレーザ光が走査する場合の平面説明図、(b)はそれによる出力を示す出力波形図。
(a),(b),(c)はそれぞれ本実施形態としてのスタートセンサの説明図であり、(a)は全体の縦断説明図、(b)はマスクを省略した平面図、(c)はマスク自体の平面図。
本願発明の異なる実施形態を説明する図であり、レーザ光がスタートセンサを走査する様子を示す平面説明図。
図11の実施形態において、(a)はMEMSミラーに加える駆動信号、(b)はMEMSミラーの位相を示す図、(c)はスタートセンサから得られる出力信号を示す図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る太陽電池の欠陥検査装置1の概略構成を示すブロック図である。図1の欠陥検査装置1は、太陽電池モジュールの欠陥検査を行うものである。ここで、太陽電池モジュールとは、太陽電池マトリクスをラミネートして封止したものである。太陽電池マトリクスとは、複数の太陽電池セルを直列接続したストリングを複数並べた構造体である。
図1には、3つの太陽電池セルC,C,Cを直列接続したストリングSが図示されているが、直列接続する太陽電池セルの数には特に制限はない。
図1の欠陥検査装置1は、複数の太陽電池セルCが直列接続されたストリングSごとに欠陥検査を行う。より具体的には、各ストリングS内の個々の太陽電池セルCを順に測定対象セルとしてレーザ光を照射し、他のすべての非測定対象セルCにLED光を照射した状態で測定対象セルに流れる起電流を計測して、測定対象セル内にクラック(欠陥)が存在するか否かの欠陥検査を行う。
図1の欠陥検査装置1は、主光源3と、主光源送りモータ4と、モータ制御回路5と、主光源制御回路6と、副光源7,7,・・・と、副光源制御回路8と、スタートセンサ9a,9bと、電流電圧変換回路10と、イコライザアンプ11と、バイアス電流キャンセル回路12と、第1A/D変換回路13と、画像処理部14と、表示装置15と、バイポーラ電源16と、セル間切替タイミング生成回路17と、主光源スキャン振幅検出回路18と、第2A/D変換回路19と、マイクロコンピュータ20とを備えている。
主光源3は、測定対象セルCにレーザ光を照射するレーザ光源である。主光源3の具体的な構成については後述する。主光源送りモータ(副走査手段)4は、主光源3をストリングSの長手方向に移動させる駆動力を発生する。モータ制御回路5は、主光源送りモータ4の回転方向および回転速度を制御する。主光源制御回路6は、主光源3からレーザ光を発光する制御を行う。
副光源7は、非測定対象セルにLED光を照射するLED光源である。副光源制御回路8は、副光源7からLED光を発光する制御を行う。副光源7は、ストリング内の各セルCに対応づけて設けられており、副光源制御回路8は各セルCごとに副光源の点灯/消灯を切替制御する。
検査対象とする太陽電池(ストリングS)をセットした状態において、ストリングSの両端に位置することになるスタートセンサ9a,9bは、後述する光源ユニット(検査ユニット)22の一部を構成するものである。スタートセンサ9a,9bからの信号はマイクロコンピュータ20に供給される。且つ、検査開始側のスタートセンサ9aからの信号は第1のA/D変換回路13に、供給される。スタートセンサ9aからの信号がマイクロコンピュータ20に供給されることにより、マイクロコンピュータ20は、図1からもわかるように、他の回路からの入力にも基づいて、モータ制御回路5、主光源制御回路6、副光源制御回路7を制御することになる。スタートセンサ9aからの信号が第1のA/D変換回路に供給されることにより、画像処理部14との協働により、追って詳しく述べるように、レーザ光LBによるストリングS(太陽電池セルC)の走査開始点をより正確に把握して、太陽電池セルCの欠陥を示す画像(太陽電池セルCの平面形状との関係で欠陥を表示した画像)をより正確なものとして作成、表示できるようになる。つまり、簡単には、スタートセンサ9a,9bからの信号がマイクロコンピュータ20に供給されることにより、太陽電池セルCの走査開始終了点、レーザ光LBの実駆動周波数及びレーザ光LBが端点にくる時刻を計測器側で検出して、最終的に、より正確な画像を表示可能としている。
電流電圧変換回路10は、測定対象セルで生じた起電流を電圧に変換する。イコライザアンプ11は、電流電圧変換回路10で生成した電圧のゲイン調整を行う。
バイアス電流キャンセル回路12は、ストリングSを流れる起電流のうち不要な起電流成分を除去する。より具体的には、測定対象セルに入り込む、隣接した非測定対象セルからのLED光による起電流成分をバイアス電流キャンセル回路で除去する。また、バイアス電流キャンセル回路12は、非測定対象セルの不良による短絡電流を除去することもできる。バイアス電流キャンセル回路12を設けることで、測定対象セルに照射されたレーザ光のみによる起電流に基づく電圧を正しく検出できるようになる。
第1A/D変換回路13は、バイアス電流キャンセル回路12の出力信号をA/D変換する。画像処理部14は、第1A/D変換回路13の出力信号に基づいて画像処理を行って、表示装置15に表示させる。これにより、測定対象セル内にクラックがあれば、そのクラックの形状が画像として表示装置に表示される。
バイポーラ電源16は、測定対象セルの両端電極間に電圧が印可されない状態で測定対象セルの起電流を測定できるように、ストリングSに付与する逆起電圧を生成する。
セル間切替タイミング生成回路17は、ストリングS内のセルC間の境界を検出して、副光源7の点灯/消灯を切り替えるタイミング信号を生成する。
主光源スキャン振幅検出回路18は、主光源3からのレーザ光を反射させる図1では不図示のMEMSミラーの振り角を検出する。
第2A/D変換回路19は、主光源スキャン振幅検出回路18で検出したMEMSミラーの振り角に応じた値をA/D変換してマイクロコンピュータ20に送る。マイクロコンピュータ20は、第2A/D変換回路19の出力信号に応じてMEMSミラーの振り角を調整する。
本実施形態では、図2からわかるように、2つのストリングS(S1,S2)を直列に繋いで1つのストリング群SGとしている。これは、例えばストリングS1中のある太陽電池セルCの検査に当たりその太陽電池セルCから得られる検査出力(発電信号)をストリングS1,S2の端子T1,T2間から得るためである。同様に、ストリングS2中のある太陽電池セルCの検査出力も端子T1,T2から得られることになる。
前述のように、検査対象とする1つのストリングS1(S2)の検査の始まり(光ビームによる走査の開始時刻)を検出するために、前記スタートセンサ9aが用いられる。前記スタートセンサ9a,9bからの出力に基づき、ストリングの検査開始が、マイクロコンピュータ20と、第1のA/D変換回路13及び画像処理部14と、により検出される。
前記スタートセンサ9a,9bは、前にも簡単に述べたように、副光源と同様に、計測器側(図4(a)、光源ユニット22の筐体22a)に固定されるものであるが、以下に説明する図2等では、技術的な理解を早めるべく、ストリングS1,S2等との関係で平面的な位置がわかるように、それらと一緒に平面説明図に図示している。よって、例えば、図2においては、スタートセンサ9a,9bは図中一番左のストリングS1の上下両端に図示されているが、検査の進行につれて光源ユニット(検査ユニット)22が図中右方向に移動すれば、それとともにスタートセンサ9a,9bも右方向に移動し、例えば図中に2点鎖線で示すように左から2番目のストリングS2の上下両端に移動することになる。
つまり、本実施形態では、図2からわかるように、検査対象とする太陽電池モジュールMが検査装置にセットされた状態において、各ストリングS(S1,S2)の始端つまり検査が開始される側と、各ストリングSの終端つまり検査が終了する側とに、フォトダイオードあるいはその他の光感応素子によるスタートセンサ9a,9bが配設されることになる。ストリングS1はY1方向に、ストリングS2はY2方向に、それぞれ検査が開始される。ストリングS1の検査が終わったら、光源ユニット(検査ユニット)22をX方向に1列分だけ横移動させ、ストリングS2の検査が行われる。
より詳しくは、スタートセンサ9a,9bは、1つのストリング群SGを構成する互いに接続された2つのストリングS1,S2のうちの検査対象とするストリングの両端に配置されることになる。太陽電池の欠陥検査に使用されるレーザ光(光ビーム)LBは、各ストリングS1,S2のスキャンの前に、開始側のスタートセンサ9a上をも、例えば、5−12回程度スキャンすることになる。当該レーザ光LBは2つの端点(最大振幅点)間で振られている(例えば図6参照)。主光源のスキャン振幅は主光源スキャン振幅検出回路18で検出される。つまり、前記2つの端点間での振れがレーザ光の振れ幅であり、所定時間当たりの振れの回数が周波数を示す。而して、レーザ光が開始側のスタートセンサ9aをスキャンすることにより、このスタートセンサ9aから検出出力が得られる。この出力に基づいて、最終的に、各太陽電池セルCの走査開始(検査開始)点を検出できる。つまり、各太陽電池セルCの画像処理の開始ポイントを知り得る。
以下にこのことをさらに詳細に説明する。
図2は代表的な太陽電池モジュールMの一例を示す図である。図2の例では、10個の太陽電池セルCがY方向(長手方向)に直列接続されてストリングS(S1,S2)を形成し、それらのストリングS1,S2のX方向(幅方向)に隣り合う2つのものの一端部同士が接続されて、2列分の計20個の太陽電池セルCが直列接続されて一つのストリング群SGを構成している。各ストリングS1,S2の各両端には先に簡単に説明したスタートセンサ9a,9bが配置されている。このスタートセンサ9a,9bは、主光源3からのレーザ光を検知する受光素子(例えばフォトダイオード)を含んでいる。
本実施形態に係る欠陥検査装置では、先にも簡単に述べたように、各ストリング群SGにおけるストリングS1,S2を個別に検査するが、各ストリングS1,S2の検査結果はストリング群SG毎に出力する。つまりストリング群SGを構成する各ストリングS1,S2の検査においては、それぞれのストリングS1,S2における個々の太陽電池セルCに順にレーザ光を照射して、前記端子T1,T2から出力される起電流(発電信号)を測定し、その測定結果を画像処理して表示装置15に表示する。これにより、最終的に各セルCのクラック(欠陥)の有無が画像として表示される。
より詳細には、測定対象セルCに流れる起電流の大きさは、欠陥の有無で変化するため、起電流の大きさに応じて画像を変えることで、セルC内の欠陥部分を画像として表現できる。
上述したように、例えばあるストリング群SGにおけるストリングS1を検査するときには、このストリングS1内の測定対象セル以外のすべての太陽電池セルと、ストリングS2の全てのセルCには、LED光が照射されるが、LED光の照射強度は、レーザ光の照射強度よりも高くする必要がある。その理由は、測定対象セルで生じた起電流がストリングS内を流れるように電流経路を形成する必要があるためである。
なお、図2において、例えば、左端のストリング群SGにおけるストリングS1は方向Y1に沿って副走査され、ストリングS2は方向Y2に沿って副走査される。よって、ストリングS1においてはスタートセンサ9aが走査開始側のスタートセンサとなり、ストリングS2においてはスタートセンサ9bが検査開始側のスタートセンサとなる。
図3(a),(b),(c)は主光源と副光源の配置の一例を示す図である。図示のように、主光源3と副光源7を内蔵する光源ユニット(検査ユニット)22による各ストリングSの欠陥検査は次のように行われる。各ストリング群SGは、図2からわかるように、隣り合う2つのストリングS1,S2からなり、各ストリングはそれぞれ10個の太陽電池セルCからなる。よって、例えば、光源ユニット22は図3(a)に示される位置に移動して静止し、この状態で主光源3が光源ユニット22の筐体の溝24内をY(Y1)方向(図2において上から下へ)に移動して、当該ストリングS1の10個の太陽電池セルの検査が行われ、その後、光源ユニット22はX方向(幅方向)に移動して図3(b)の位置を採り、隣り合うストリングS2の検査態勢を採る。この状態で主光源3が再び筐体の溝内をY(Y2)方向に(図2において下から上へ)移動して残りの1列、10個の太陽電池セルを検査する。これにより、ストリング群SG(ストリングS1,S2)の検査が行われる。これを繰り返して、他のストリング群SG(ストリングS1,S2)も検査が行われる。図3(c)は最後のストリング群SG(ストリングS2)を検査している状態を示す。
なお、図3(a),(b),(c)では、検査するストリング群SG(ストリングユニットS1,S2)を切り替えるために光源ユニット22が移動する例を示しているが、これに代えて、光源ユニット22を固定状態とし、太陽電池モジュールMをX方向(幅方向)に移動可能としてもよい。
光源ユニット(検査ユニット)22は筐体22aを有し、これは互いに区画された平行する3本の溝部24,24A、24Bを備える。筐体22aが、上述の図3(a),(b),(c)からわかるように、Y方向、つまり、ストリングSの長手方向に延びる。前述のところからもわかるように、この筐体22aは、その内部に、Y方向(長手方向)に伸び且つX方向(幅方向)に並ぶ3列の溝部24,24A、24Bを有し、各溝部の間には遮光板11,11が設けられている。この遮光板11は、隣の溝部内の副光源からのLED光が入り込まないようにするためのものである。
前述のところからもわかるように、図3(a)等に示すように、中央の溝部24には主光源3がY方向(長手方向)に沿って往復移動可能に配置されている。これは図4(a),(b)からもわかる。つまり、図4(a)に示す中央の溝部24内には、主光源3がY方向(Y1,Y2)に移動可能に設けられている。つまり、主光源3が、図4(b)中左端位置の主光源3Aと右端位置の主光源3Bとの間で、移動可能に設けられている。この図4(b)からわかるように、この溝部24内のほぼ両端に位置するように、前記左端位置と前記右端位置との内側に前記スタートセンサ9a,9bが図示しない任意の手段により支持されている。
さらに、特に図3(a)等からわかるように、主光源3の上方両側には副光源7、7がストリングS1,S2の長手方向に沿って2列に固定状態に配置されている。これら副光源7,7は、その上方に配置される太陽電池セルCの中央に向かって、斜め上方にLED光を照射する。つまり、この副光源7は、検査対象のストリングS1(S2)におけるセルのうちの検査対象とするセル以外のセルを照射するものである。
図3(a)において、両側の溝部24A、24Bにもそれぞれ、ストリングS1,S2の長手方向に沿って副光源7A、7Bが設けられている。これらの溝部24A,24Bの副光源7A、7Bはいずれも、ストリングS1,S2を構成する各セルCに対応づけて設けられており、各セルCに対応する副光源7A,7Bを個別に点灯/消灯できるようになっている。
図3(a)において、前述のように、光源ユニット22における主光源3は、中央の溝部24内で、溝に沿って、Y方向(長手方向)に往復移動可能とされており、その移動方向制御は主光源送りモータ(副走査手段)4が行う。主光源3と向かい合わせに位置するセルCが測定対象セルであり、このセルCに対して主光源3がレーザ光を照射している間は、ストリングS1における他のすべてのセルC及びストリングS2の全てのセルには、光源ユニット22の中央の溝部24の副光源7、7からLED光が照射され、同じストリング群SGのうちの他のストリングS2のすべてのセルCには、両側の溝部24A,24Bのうちの一方の溝部24Aの副光源7AからLED光が照射される。光源ユニット22がX方向(幅方向)に移動して、図3(b)の位置を採った場合には、それに合わせて、LED光を照射する副光源も、7Aから7Bに切り替わり、ストリングS2のセルCを照射する。
より具体的には、主光源3が隣のストリングS2側に移動すると、図1に示したセル間切替タイミング生成回路17がストリングS1,S2間の境界を検出し、これにより、副光源7A、7Bの点灯/消灯が切り替わる。つまり、副光源7Aが消灯し、副光源7Bが点灯する。
図5は主光源3の詳細な構成を示す図である。図示のように、主光源3は、レーザ光源32と、レーザ光源32からのレーザ光を反射させるMEMSミラー(主走査手段、偏向手段)33とを有する。MEMSミラー33は、その中心軸の回りに所定の周波数で振動(揺動回転)しており、これにより、レーザ光の反射角度が所定の周波数で切り替えられる。つまり、光ビームがストリングS1,S2の幅方向に往復動(往復偏向)して、主走査としての往復走査をすることになる。また、主光源3は前述のようにストリングS1,S2の長手方向に移動し光ビームによる副走査を行うこととなる。前記主走査と前記副走査により、光ビームがスタートセンサ9a及び太陽電池セル上に連続するカーブ(波形)を描く主副走査が行われる。
図6は、レーザ光LBが、1つのストリング群SG(ストリングS1,S2)と各ストリングS1,S2の両端のスタートセンサ9a,9bを光ビームが走査する様子を示した説明図である。図6からわかるように、先ずストリングS1についてみれば、光ビームは図中上下に主走査しながら、Y1方向へ、つまり、図中上の列においては右端から左方向へ副走査し、ストリングS1と両端のスタートセンサ9a,9bを主副走査する。ストリングS1の主副走査が終わったら光源ユニット(検査ユニット)22は図中下方へ移動する。この移動に伴ってスタートセンサ9a,9bも図中に想像線で示すスタートセンサ9a,9bの位置へ移動する。この後、前記と同様に、スタートセンサ9a,9bとストリングS2を、Y2方向へ、つまり、右端から左方向へ副走査する。このようにスタートセンサ9a,9bの走査により各ストリングSの前記走査開始時点、走査終了時点が検出される。
而して、図6においては、光ビームの描く波形をピッチの詰まったサイン波形状のものとして示しているが、サイン波状の波形に限ることなく、各種の矩形状の波形やその他の任意の波形とすることができる。
上述のように、MEMSミラー33で反射するレーザ光が測定対象セルに照射される。つまり、前記走査開始時点から走査終了時点との間においては、前記主副走査における前記各ストリングS1,S2の各太陽電池セルCの前記光ビームでの走査による、各太陽電池セルから出力される発電特性に応じた発電信号に基づいて各太陽電池セルCの欠陥の有無が検査される。
図6において、前述のように、各ストリングS1,S2のY方向(長手方向)両側には順次スタートセンサ9a,9bが位置することになる。これにより、同じく前述のようにレーザ光がスタートセンサ9a,9bを走査することにより、ストリング群SG(ストリングS1)の検査開始終了が知得される。より詳しくは、スタートセンサ9a,9bの走査によりストリングS1の図6中右方向Y1への検査開始及び走査終了が知得され、終了検知後に光源ユニット22は図6中下側、つまりX方向(幅方向)に移動して次のストリングS2の検査が行われる。
より詳しくは、図6では、主光源3からのレーザ光LBの軌跡を矢印で示している。図5に示すように、MEMSミラー33は一定の振れ角α、αで振動する。このため、図6に示すように、レーザ光は、ストリングS1の測定対象セルをX方向を高速にスキャンしながら、主光源のY1方向(右側)への移動に伴ってY1方向(右側)に移動する。MEMSミラー33の振れ角の制御は、図1の主光源スキャン振幅検出回路18によって行われる。なお、この図6からわかるように、レーザ光は例えばsine駆動されながらX方向(幅方向)に振幅を繰り返している。
図6において、上述のように、主光源3がストリングS1の図6中右側の端部に達すると、右端のスタートセンサ9bからの出力に基づいて、マイクロコンピュータ20は、主光源送りモータ4に主光源3の進行方向を今度は左方向へ切り替えるように指示するとともに、副光源制御回路8に対して副光源7の点灯/消灯の切替を指示する。また、マイクロコンピュータ20は、光源ユニット22を図中下向きのX方向(幅方向)に1セル分移動させる制御も行う。
以上の動作が繰り返されて、X方向(幅方向)に隣り合う次のストリング群SG(ストリングS1,S2)の検査が順次行われ、やがて検査が終了する。スタートセンサ9a,9bの構造については追って詳しく述べる。
副光源7としてLED光源を用いる理由は、指向性の高いものを比較的安価に入手できることと、白熱電球やキセノンランプと比べて熱の発生が少ないことと、光源を小型化できることと、単色光であること等による。
太陽電池はその種類ごとに分光感度が異なっている。結晶シリコン型とCIGS型の太陽電池では、900nm〜1000nmの発光波長の光に対して最も感度が高い。
そこで、本実施形態では、870nm〜1000nm程度の発光波長を持つLED光源を用いることにした。より具体的には、安価でかつ省スペースという観点から、940nm程度の発光波長を持つGaAs発光ダイオードまたは870nm程度の発光波長を持つGaAlAs発光ダイオードを用いることにした。
上述したように、非測定対象セルにはLED光が照射され、測定対象セルにはレーザ光が照射されるが、LED光の照射強度がレーザ光の照射強度よりも十分に高くないと、レーザ光の照射により測定対象セルで生じた起電流を、同じストリング内の非測定対象セルを介して外部に取り出せなくなる。よって、LED光の照射強度は、レーザ光の照射強度よりも十分に高くする必要がある。
レーザ光の発光波長は、可視光の中では長波長であり、入手性がよくスポット径の調整がしやすいという観点で、本実施形態では、発光波長が660nmの赤色レーザを用いることにした。図7(a),(b),(c)を参照して前記したスタートセンサ9a,9bの役割をより詳しく説明する。
簡単には、本実施形態では、検査開始側のスタートセンサ9aを、図7(b)からわかるように、光ビームが描く走査線の図中上下方向において上側に寄った位置に配置している。つまり、スタートセンサ9aを、光ビームの主走査における両側の端点(最大振幅点)の中央よりも一端側に寄った位置にくるようにしている。これにより、このスタートセンサ9aから、図7(c)に示すように、例えば、パルスP0とP1との幅と、パルスP1とP2との幅とが異なる出力波形が得られる。これにより、スタートセンサ9aからの出力を以下に述べるような処理をすることにより、所期の情報を得られる。
より詳しくは、図7(a)は前述の図6の一部としてのストリングS1を示す図である。図7(a)では、図示を簡略化するため、スキャンするレーザ光がスタートセンサ9aを図中上下方向に1回しか横切っていないものとして示しているが、実際は図中上下方向に複数回横切っている。レーザ光がsine駆動されてスタートセンサ9aを繰り返し横切る態様の詳細は図7(b)に例示される。この例示ではレーザ光が図中上下に往復動して都合6回、つまり、6つの走査線S0−S5がスタートセンサ9aを横切る(走査する)場合を示している。レーザ光が6回スタートセンサ9aを横切ることにより図7(c)に示すように6つのパルスP0−P5が検出される。これらのパルスP0−P5の隣り合うものの同士の中間点から端点つまりsineカーブにおける最大振幅点PMO0−PMO4がわかる。これらの端点の情報が画像解析に有効に用いられる。
即ち、前記端点の情報をもとに、上記スタートセンサ9aからの出力を解析することにより、MEMSミラー33の実駆動周波数及びレーザ光が端点に来る時刻を計測器側で検出することができる。これにより、レーザ光による太陽電池セルの走査によって得られる画像の起点を定めることができる。つまり、レーザ光による太陽電池セルの走査によって得られる画像の起点を第1のA/D変換回路13により取り込み、画像処理部14にて検出することができる。これにより、太陽電池モジュールMの発電信号をセルCの形状として画面上に表示することができる。つまり、各太陽電池セルCの発電特性を各太陽電池セルCの形状との関係で画面に表示することができる。また、レーザ光による太陽電池セルの走査開始時刻を得ることができる。これに基づき、それ以前の信号(ノイズや光の反射に起因する太陽電池信号等)を意図的にカットすることも可能となる。
次に、スタートセンサ9a,9b自体の受光部分の構造及びスタートセンサ9a,9bへ照射する好ましいレーザ光について説明する。
スタートセンサとして汎用の砲弾型のセンサS0を用いると、レーザ光がセンサの端部を走査する時に、検出信号が乱れるのが避けられない。つまり、追って詳述するが、図8(a)からわかるように、光ビームは砲弾型のセンサS0を走査するときは、センサS0上を走査する光ビームの軌跡長さはそれぞれ異なるものとなるのが避けられない。このため、図8(b)からわかるように、センサS0からの出力パルスの幅がそれぞれ異なるものとなり、前記sineカーブの端点の位置が把握しにくい。
この点に着目し、本実施形態では、センサとしてフラット型のものを用い、且つ、センサの受光面の直前に拡散板を設けることで、検出信号の乱れを可及的に抑制するようにしている。これにより、センサS1からより安定した検出信号が得られるようになる。加えて、このようにフラット型のセンサS1を用いることにより、センサとしての高さを低くすることができ、装置全体の小型化が可能である。また、矩形状の開口を有するマスクを用いたので、センサの受光面をより厳密に矩形状として、出力信号をより精度の高いものとすることができる。
以下にこのことを詳細に説明する。
上述のように、レーザ光方式による太陽電池の欠陥検査装置は、検査開始信号としてフォトセンサによる信号検出を行っている。フォトセンサ自体の形状としては、基板実装型、砲弾型などの様々な形状がある。レーザ光を直接センサに入力させる方式では、太陽電池の欠陥検査装置においてはレーザ光がスキャン方向(X方向)と垂直方向(Y方向)にサーボによって移動しているため、センサの真ん中と端部では、たとえスキャンが等速で行われているとしても、レーザ光がセンサに当たっている時間にばらつきが生じてしまう。また、フォトセンサの回りに金属部分が存在する場合には、その金属部分でレーザ光が反射して、いわゆる誤検出をしてしまう。このような問題を解決すべくなされたのが本実施形態である。
このことを、前にも簡単に説明したが、図8(a),(b)と図9(a),(b)を用いてより詳しく説明する。
図8(a),(b)は従来の砲弾型のセンサS0をレーザ光が走査する場合を示し、図9(a),(b)は本実施形態にかかる矩形のセンサS1をレーザ光が走査する場合を示す。
図8(a)において、偏向手段により往復動するレーザ光の軌跡を、振れ幅を3分割して、A,B,Cの3つの領域に分ける。領域Bはレーザ光がセンサS0を走査する領域、領域A,Cはレーザ光がセンサS0を走査していない領域である。各領域A,B,Cを通るレーザ光を、レーザ光a10−a60、b10−b60,c10−c60と呼ぶ。これらのレーザ光a10−a60、b10−b60,c10−c60によるセンサS0の出力は図8(b)に示される。この図8(b)からわかるように、センサS0を走査するレーザ光b10−b60の軌跡としての長さがばらばらである。つまり、レーザ光がセンサS0上を通過する時間がばらばらである。このため、センサS0の出力からレーザ光の端点(最大振幅点)を認識するのが実際上著しく困難である。
これに着目し、本実施形態では、図9(a)に示すように、センサS1の受光面を矩形のものとした。つまり、センサの前面に拡散板を付設し、且つ、矩形の開口を有するマスクを用いた。これにより、図9(b)からわかるように、レーザ光b11−b61がセンサS1上を通過する時間が一定となり、端点を認識するのが実際上容易且つ高精度で行える。
つまり、本実施形態は、スタートセンサによるレーザ光の取り込み信号が不安定で、画像が乱れ、測定毎にスタート信号が変化するのを防ぎ、ソフト側にて検出しやすくするため、センサの受光面の形状を最適形状としている。つまり、センサ回りに工夫を凝らすことにより、取り込み信号をシャープなものとし、ソフト側にて検出処理し易くしたものである。
具体的には、先にも簡単に述べたように、
− センサの形状を、砲弾型でなく、平らな形状のセンサとし、
− 前記センサの上方に、拡散板を具備させることにより、レーザ光を拡散させて、均一な光でセンサを照射するようにし、
− さらに、前記拡散板の上方に、矩形の開口を有するマスクを用いることにより、拡散板における前記光ビームの受光領域を定める。つまり、前記開口により、センサ(拡散板)における実質的な受光面の形状、大きさを最適なものとする。つまり、マスクの開口の形状、大きさを種々変えて、つまり拡散板の受光面の形状、大きさを種々変えて実験をして、得られるセンサ信号の違いを検証することにより、マスクの開口つまり前記受光面の形状、大きさとして最適なものを得た。
図10(a),(b),(c)はそれぞれ本実施形態としてのスタートセンサ9a,9bの説明図であり、(a)は全体の縦断説明図、(b)はマスクを省略した平面図、(c)はマスク自体の平面図である。即ち、図10(a)からわかるように、レーザ光LBを受光するスタートセンサ9a,9bは、基台41を備え、この基台41表面に形成した溝41a内に平坦なセンサ本体42が収納されている。このセンサ本体42の上方に拡散板43が配置されている。この拡散板43の上方にはマスク44が配置されている。このマスク44は上述のように開口44aを備える。図10(b)のマスク44を除去した状態の平面図からわかるように、レーザ光LBはマスク44の開口44aを通って拡散板43に至り、そこで拡散したのちにセンサ本体42を照射する。
本実施形態では、マスクとして図10(c)に示すマスク44を用いたが、それは本発明者が行った実験結果によるものである。つまり、本発明者は、拡散板もマスクも用いない場合、拡散板は用いるもののマスクは用いない場合、拡散板を用い且つマスクとして各種マスクを用いた場合についての実験を行った。マスクの開口は、縦型スリット、横型スリット、矩形スリットとした。その結果としての各種の出力から、図10(c)の場合、つまり、矩形の開口44aを有するマスク44を用いた場合が最適であるのがわかった。
図11及び図12(a)−(c)は、本願発明の異なる実施形態を説明する図である。
先に説明した実施形態の装置においては、例えば図7(a),(b),(c)からわかるように、光ビーム(レーザ光)が端点(最大振幅点PM00、PM01、・・・)へ来る時刻をスタートセンサ(フォトセンサ)9a,9bからの出力に基づいて検出していた。しかし、以下に説明する異なる実施形態では、前記時刻をスタートセンサ(フォトセンサ)9a,9bからの出力に基づいて検出するのに代え、前記時刻を、マイクロコンピュータ(主走査手段駆動回路)20からMEMSミラー(主走査手段)33へ加える駆動信号(制御信号)に基づいて、前記駆動信号との関係で、オフセット時間が一定で、予め計算した決められた時刻、として検出することができるようにしている。このため、図1に示すように、マイクロコンピュータ20から、前記駆動信号を第1のA/D変換回路13を介して画像処理部14にも加えるようにしている。これにより、画像処理部14で前記の処理が行われる。
より詳しくは、図11は、一例として、レーザ光(走査線S0−S3)がスタートセンサ(フォトセンサ)9a(9b)を2周期分だけ走査する場合を示している。この図11は、先に説明した図7(b)の一部と同等の内容を示す図である。この走査により、レーザ光(走査線S0−S3)は、端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02を通過する。
上記のような走査は図12(a)に示す駆動信号をマイクロコンピュータ20(図1)から主光源3(MEMSミラー33)に加えることによりなされる。この印加によりMEMSミラー33は図12(b)に示すミラー位相をとって駆動される。
つまり、図12(a)の駆動信号をMEMSミラー33に加えることにより、図12(b)からわかるように、その駆動信号との関係で、状態がLからHへ変化した時刻から一定のオフセット時間t1後に端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02の時刻となる。このオフセット時間t1は、実験等によって、予め算出し、設定したものであるため、前記端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02に至る時刻は、前記駆動信号のとの関係で確定したものとして得られる。つまり、前記端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02に至る時刻は、前記駆動信号の立ち上がり時刻から予め決定されたオフセット時間t1後の確定したものとして得られる。このようにして得られる端点(最大振幅点)PM00、PM01、PM02の時刻情報を用いることにより、各ストリングS1,S2の検査結果を画像としてより正確なものとして表示することが可能である。
このことをより詳しく説明する。先に説明した図7(a),(b),(c)等に示される実施形態では、スタートセンサ(光感応素子)9a(9b)を使用して、MEMSミラー(スキャナミラー)33の振動に起因する光ビームの往復走査によって得られる往復信号の中間点を計算し、レーザ光が端点に来る時刻[スキャナミラーの位相が90°,−90°(270°)となる時刻]を検知する方式を採用している。しかしながら、この方式では、レーザ光が端点にくる時刻を的確に把握できない場合も考えられる。それは以下の理由による。光感応素子は、自己に入力される光信号のレベル(レーザパワー)によって、応答性が同じでない場合もある。このため、前記方式を採用している場合には、入力されるレーザパワーに応じ、光感応素子の応答性に起因してオフセット時間がばらつくこともある。このため、レーザ光が端点に至る時間が一定ではなくなり、検出位相がずれてしまうこともある。このため、光感応素子の出力に基づいてセンサの検査結果を画像とした場合には、センサの発電特性をその正しい位置関係で把握、表示することができなくなることもありうる。
これに着目し、本実施形態では、前記端点の時刻を光感応素子(感光素子)の出力から求めるのに代え、MEMSミラー33へ加える駆動信号を基準とし、駆動信号との関係で一定のオフセット時間後にレーザ光が前記端点に来るように、各種のパラメータを予め設定している。つまり、前記MEMSミラー33への前記駆動信号の印加後の、予め算出・設定した一定のオフセット時間t1後に、レーザ光が前記端点にくるようにしている。つまり、MEMSミラー33への駆動信号の印加時刻から、前記一定時間後に、必然的に、MEMSミラー33の位相が90°,−90°(270°)となるように予め設定している。前記端点の時刻は、マイクロコンピュータ20からMEMSミラー33へ加える駆動信号を第1のA/D変換回路13を介して画像処理部14に加えることにより、画像処理部14において知得される。さらに、このようにして得られる端点の時刻を基にして、画像処理部14が、スタートセンサ9a(9b)からの出力(図12(c))を参照しながら、MEMSミラー33の位相(走査位相情報)を算出し、算出した位相との関係で、セルCからの出力を解析することにより、セルCから取得した発電特性のデータを、セルC(ストリングS1,S2)の幾何学的位置(平面形状)との関係を保って画像化する。
つまり、先の実施形態と同様に本実施形態においても、スタートセンサ(光感応素子)9a(9b)が光ビームによって走査される。その結果、図12(c)に示すように、スタートセンサ9a(9b)から出力が得られる。この出力によって、光ビームが現在90°,−90°のどちら側の位相に動いているかを、画像処理部14が検出する。つまり、スタートセンサ9a(9b)の出力を第1のA/D変換回路13に取り込み、画像処理部14で処理することにより、光ビームが現在90°,−90°のどちら側の位相に動いているかを検出可能である。この図12(c)は先に説明した図7(c)に対応するものである。なお、図12(b)において、ラインLN1とLN2に挟まれた部分が、レーザ光がスタートセンサ9a(9b)を走査(照射)する時間を示している。
3 主光源
9a,9b スタートセンサ
15 表示装置
22 光源ユニット(検査ユニット)
32 レーザ光源
43 拡散板
44 マスク
44a 開口
S1,S2 ストリング
C 太陽電池セル