JP5635150B2 - 太陽電池の欠陥検査装置及び欠陥検査方法 - Google Patents

太陽電池の欠陥検査装置及び欠陥検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池の欠陥を検査するための欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。
近年の環境意識の高まりとともに、多くの太陽電池が市場に流通するに至っている。このような状況下において、太陽電池の製造工程において太陽電池の高品質化及び生産ラインの効率化を図るため、太陽電池の性能を測定し欠陥のある太陽電池を製造工程で精度良く特定して除去することは重要である。
これまで、様々な欠陥検査装置が市場に投入されている。例えば、特許文献1には、主光源と副光源の2個の光源を用いる太陽電池出力測定装置が開示されている。太陽電池では、複数の太陽電池セルが直列に接続されている場合、その出力電流は、発電量が最も少ない太陽電池セルの電流に制限されることが知られている。
また、非測定対象セルにおいては、太陽電池を通電状態とするため、何らかの方法で発電させる必要がある。そこで、太陽電池の測定対象セルの受光面には主光源による光を照射し、非測定対象セルの受光面には副光源によって主光源より放射照度の高い光を照射し、より大きい電流を生じさせ通電状態にすることで測定対象セル受光面の面内分布が測定できるとしている。
また、特許文献2には、エレクトロルミネッセンス(以下、ELと称する)法による検査装置が開示されている。これは、太陽電池に順電流を流すと発光するという特性に基づいて、クラックを含む欠陥を検知するというものである。
特開2010−238906号公報 特表2006−059615号公報
太陽電池セルを直列接続したストリングあるいはモジュールにおいては、特許文献1で開示されている主光源と副光源の2光源を用いて出力測定を行う場合、非測定対象セルに発生した電圧の合算値が逆極性で測定対象セルに印加される。このため、測定対象セルの等価並列抵抗Rshにリーク電流が流れてしまいストリング及びモジュール出力端では、測定対象セルの発電した電流を正確に測定することができない。また、この電圧は測定対象セルにとっては逆バイアス電圧となるため、直列接続された太陽電池セルの枚数が多いと測定対象セルに負荷がかかる。太陽電池セルは、逆方向に印加する電圧が大きいとダメージを受けるので過度な逆バイアス状態は回避しなければならない。
特許文献2のEL法においては、多結晶型太陽電池セルを検査した場合、製造工程で生じるクラックと結晶粒界の判別が難しく、クラック箇所の特定が困難であるという課題があった。
また、特許文献1では、太陽電池の発電量そのものを例えばレーザ光等の主光源で検出するのであるが、この場合も同様の課題を抱えていた。結晶粒界部では、発電量が低い箇所が多々あり画像化すると暗部になる為、クラックに沿ってできる線状の暗部と区別が困難であった。
本発明は上記事情に鑑み、複数の太陽電池セルが直列に接続された太陽電池において、結晶粒界による暗部を軽減しクラックに沿ってできる線状の暗部のみを際立たせた検査画像を得て高精度で欠陥を判定し、測定対象セルの両端に、非測定対象セルが発電した電圧が印加されて測定精度が低下する現象を回避して高精度で欠陥を判定するとともに、測定対象セルに過大な逆バイアス電圧が印加されてダメージを受ける事態を防止することが可能な太陽電池の欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供することを目的とする。
本発明の太陽電池の欠陥検査装置は、複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の欠陥を検査する装置において、
前記太陽電池セルにおける測定対象セルに第1の放射照度の光を照射する主光源と、
前記測定対象セルと直列に接続された非測定対象セルに第2の放射照度の光を照射する副光源と、
前記第1の放射照度より前記第2の放射照度が高くなるように、前記主光源及び前記副光源の動作を制御する光源制御回路と、
前記太陽電池から出力された電流を与えられ、電圧に変換して出力する電流電圧変換回路と、
前記電流電圧変換回路から出力された前記電圧に含まれるバイアス電流に対応する電圧成分を除去するバイアス電流キャンセル回路と、
前記測定対象セルと直列に接続された前記非測定対象セルの全てにより発生して前記測定対象セルの両端に印加される電圧に対して、等しく且つ逆極性のバイアス電圧を出力するバイアス電圧発生回路と、
前記バイアス電流キャンセル回路からの出力を増幅して出力する出力アンプと、
前記出力アンプからのアナログ形態の出力をディジタルデータに変換して出力する第1のA/D変換回路と、
前記第1のA/D変換回路から出力された前記ディジタルデータに画像処理を行って画像データを出力する画像処理装置と、
前記画像処理装置から出力された前記画像データを与えられて画像表示を行う表示器と、
を備え、
前記バイアス電圧発生回路から出力された前記逆極性のバイアス電圧を、前記複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の両端に印加し、前記測定対象セルの両端の電圧のみが等価的にゼロとなる短絡状態にすることによって、前記測定対象セルにおける短絡電流に基づく検査を行うことを特徴とする。
また、本発明の太陽電池の欠陥検査方法は、前記太陽電池の欠陥検査装置を用いて、複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の欠陥を検査する方法において、
前記主光源及び前記副光源のそれぞれの動作を前記光源制御回路により制御して、前記測定対象セルに前記主光源から前記第1の放射照度の光を照射し、前記非測定対象セルに前記副光源から前記第2の放射照度の光を照射し、前記太陽電池から出力された前記電流に基づいて、前記電流電圧変換回路、前記バイアス電流キャンセル回路、前記バイアス電圧発生回路、前記出力アンプ、前記第1のA/D変換回路、前記画像処理装置、前記表示器を用いて画像表示を行い、
前記バイアス電圧発生回路から出力された前記逆極性のバイアス電圧を、前記複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の両端に印加し、前記測定対象セルの両端の電圧のみが等価的にゼロとなる短絡状態にすることによって、前記測定対象セルにおける短絡電流に基づく検査を行うことを特徴とする。
本発明の太陽電池の欠陥検査装置及び欠陥検査方法によれば、複数の太陽電池セルで構成される太陽電池モジュールの欠陥を、太陽電池セルにダメージを与えることなく高精度に画像化して表示し欠陥を判別することができるとともに、太陽電池セルの増加に伴う検査コストの増大を抑制することが可能である。
本発明の実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置の回路構成を示す回路ブロック図である。 本発明の実施の形態1〜4による太陽電池の欠陥検査装置で検査が可能な太陽電池モジュールの一例における外観を示す平面図である。 同実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置において、逆極性のバイアス電圧を求める第1の手法による手順を示すフローチャートである。 同実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置において、逆極性のバイアス電圧を求める際に用いる、太陽電池ストリングの開放電圧Vocsと、短絡電流Iscが得られるときの逆極性のバイアス電圧Vbias=Vocs×(1−1/N)との関係を示すグラフである。 同実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置において、逆極性のバイアス電圧を求める第2の手法による手順を示すフローチャートである。 同実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置における主光源と副光源の配置を示す縦断面図である。 同実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置における主光源の詳細な構成を示す説明図である。 同主光源からのレーザ光が測定対象セル上に走査される軌跡を示す説明図である。 アモルファスシリコン型、結晶シリコン型、CIGS型太陽電池のそれぞれの分光感度を示すグラフである。 本発明の実施の形態2による太陽電池の欠陥検査装置の回路構成を示す回路ブロック図である。 本発明の実施の形態3による太陽電池の欠陥検査装置の回路構成を示す回路ブロック図である。 同実施の形態3による太陽電池の欠陥検査装置における電圧の変化に対する出力電流の変動を示すグラフである。 本発明の実施の形態4による太陽電池の欠陥検査装置の回路構成を示す回路ブロック図である。
以下、本発明の実施の形態による太陽電池の欠陥検査装置及び欠陥検査方法について、図面を参照して説明する。
先ず、太陽電池の欠陥を検査する手法の概要について説明する。
太陽電池は、太陽電池積層体がラミネートされ封止されてモジュール化されており、太陽電池積層体は複数の太陽電池セルが直列に接続されたストリングが複数配置された構造体を有する。
欠陥検査は、直列に接続されたN個の太陽電池セル、即ちストリング単位で行う。より具体的には、それぞれの太陽電池セルを順に測定対象セルとしてレーザ光を照射し、他の全ての非測定対象セルにはLED光を照射する。この状態で、ストリング両端から短絡電流を検出するために、0.1Ω程度の抵抗値の低いシャント抵抗を接続して、測定対象セルに流れる起電流を測定し、測定対象セル内にクラック等の欠陥が存在するか否かの欠陥検査を行う。なお、起電流を検出する手段には、トランスインピーダンスアンプを使用しても良い。
ここで、ストリング全体の電流は、LED光よりも照度の低いレーザ光による測定対象セルの起電流で制限されるため、非測定セルで発生したLED光の照射による起電流と測定対象セルの起電流の差分が、非測定セルのダイオードで消費され非測定セルの両端には電圧が生じることになる。
以上のことから、測定対象セルの両端には、非測定セルで発生した電圧の合算値が逆バイアス電圧として印加され、測定対象セルの両端の電圧はゼロにならない。所謂短絡電流Isc状態とならない。
そこで本実施の形態では、この逆バイアス電圧を相殺し測定対象セルの両端の電位差が等価的にゼロとなるような逆極性の電圧を測定し、これをキャンセル電圧として印加する。この電圧は、太陽電池ストリングで考えると順方向バイアスである。例えば、N個の太陽電池セルが直列に接続された太陽電池ストリングでは、測定対象セルが1個、非測定対象セルがN−1個である。非測定対象セルに照射される各々のLED光の照度が等しい場合、セルの両端電圧のN−1個分の逆バイアス電圧が1個の測定対象セルの両端に印加される。印加される逆バイアス電圧は、太陽電池ストリングの開放電圧Vocsで表すと、Vocs(1−1/N)となる。
よって、外部から太陽電池ストリング両端に、この電圧と同一値で逆極性のバイアス電圧を印加することで逆バイアス電圧が相殺され、測定対象セルの両端の電位差が等価的にゼロになり太陽電池ストリング両端から測定対象セルのみの短絡電流Iscを取り出すことが可能となる。
(1)実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置の構成を示す。
ここで、3個の太陽電池セル101、102及び103が直列に接続された1個のストリングが示されている。しかし、直列に接続された複数の太陽電池セルの数N(Nは2以上の整数)は任意であり限定されない。
この欠陥検査装置は、主光源11と、主光源送りモータ4と、モータ制御回路1と、主光源制御回路2と、副光源12、13及び14と、副光源制御回路3と、センサ5と、電流電圧変換回路6と、イコライザアンプ7と、バイアス電流キャンセル回路8と、アンプ9と、第1A/D変換回路15と、画像処理部16と、表示器17と、バイポーラ電源22Aと、セル間切替タイミング生成回路18と、主光源スキャン振幅検出回路19と、第2A/D変換回路20と、マイクロコンピュータ21とを備えている。ここで、直列に接続された複数の太陽電池セルの数Nは任意であるので、副光源の数は、12、13、14の3つとは限らず、セルの数N個だけ必要となる。
主光源11は、太陽電池セル101〜103におけるいずれか1個、例えば測定対象セル101にレーザ光を照射するレーザ光源である。主光源の具体的な構成については後述する。
主光源送りモータ4は、主光源11をストリングの長手方向に移動させる駆動力を発生させる。これにより、主光源11の副走査が行われる。
モータ制御回路1は、主光源送りモータ4の回転方向及び回転速度を制御する。
主光源制御回路2は、主光源11がレーザ光を発光する動作を制御する。
副光源12、13及び14は、太陽電池セル101〜103における例えば非測定対象セル102及び103にLED光を照射するLED光源である。
副光源制御回路3は、副光源12〜14がLED光を発光する動作を制御する。副光源12〜14は、各太陽電池セル101〜103に対応づけて配置されており、副光源制御回路3は太陽電池セル101〜103に対応付けて副光源12〜14の点灯/消灯を切替制御する。なお、ここでは主光源11を制御する主光源制御回路2と、副光源12〜14を制御する副光源制御回路3とをそれぞれ設けているが、主光源11及び副光源12〜14の動作を1つの光源制御回路で制御してもよい。
センサ5は、主光源11及び副光源12〜14が設けられた後述する光源ユニットに配置されている。そして、主光源11からのレーザ光を検出して検査開始を示す開始信号を出力し、またレーザ光の照射終了を検出して検査終了を示す終了信号を出力する。この開始信号及び終了信号は、マイクロコンピュータ21及び第1A/D変換回路15に供給される。
電流電圧変換回路6は、測定対象セル101で生じた起電流を電圧に変換する。
イコライザアンプ7は、電流電圧変換回路6で生成した電圧の応答を補償する。
バイアス電流キャンセル回路8は、ストリングを流れる起電流のうち不要な起電流成分を除去する。より具体的には、隣接した非測定対象セル102を照射するLED光が漏れ込むことによって測定対象セル101で発電した起電流成分をバイアス電流キャンセル回路8で除去する。また、バイアス電流キャンセル回路8は、測定対象セル101が半田ショートやクラックなどによって短絡している場合に、非測定対象セル102、103から流れ込む起電流を除去することもできる。即ち、バイアス電流キャンセル回路8を設けることで、測定対象セル101に照射されたレーザ光のみによる起電流を正しく検出できるようになる。
アンプ9は、バイアス電流キャンセル回路8からの出力に増幅処理を行う。
第1A/D変換回路15は、バイアス電流キャンセル回路8からのアナログ形態の出力信号をディジタル信号に変換する。また、第1A/D変換回路15には、センサ5からの開始信号、終了信号が出力される。さらに第1A/D変換回路15には、マイクロコンピュータ21から、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーの振り角を制御する駆動信号に同期した信号が与えられる。
画像処理部16は、第1A/D変換回路15の出力信号に基づいて画像処理を行い、表示器17に画像表示させる。これにより、測定対象セル101内にクラック等の欠陥がある場合に、その欠陥の形状が画像として表示器17に表示される。
バイポーラ電源22Aは、測定対象セルの両端電極間において、非測定対象セルにより発生した逆バイアス電圧を相殺した状態で測定対象セルの起電流を測定できるように、逆極性のバイアス電圧を生成して直列接続されたN個の太陽電池セル101〜103の両端に印加する。
セル間切替タイミング生成回路18は、直列に接続されたN個の太陽電池セル間の境界を検出して、副光源12〜14の点灯/消灯を切り替えるタイミング信号を生成する。
主光源スキャン振幅検出回路19は、主光源11からのレーザ光を反射させる、図示されていないMEMSミラーの振り角を検出する。
第2A/D変換回路20は、イコライザアンプ7からの出力を用いて、主光源スキャン振幅検出回路19で検出したMEMSミラーの振り角に応じたアナログ形態の値をディジタルデータに変換してマイクロコンピュータ21に送る。このMEMSミラーの振り角は、即ち主光源11が太陽電池セルの表面上に主走査を行うときの振幅に対応する。
マイクロコンピュータ21は、第2A/D変換回路20の出力信号に応じてMEMSミラーの振り角を制御するための駆動信号を出力する。またマイクロコンピュータ21は、センサ5、セル間切替タイミング生成回路18からの信号を与えられて、モータ制御回路1、主光源制御回路2、副光源制御回路3の動作を制御する。さらに、上述したように第1A/D変換回路15にMEMSミラーの駆動信号に同期した信号を出力する。
このような上記構成を備えた本実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置における動作について説明する。
主光源制御回路2により主光源11の動作が制御され、1個の測定対象セルの表面上に、レーザ光が走査される。
副光源制御回路3により副光源12〜14の動作が制御され、測定対象セルと直列に接続された他の非測定対象セルに対し、それぞれ対応付けられた副光源12〜14からLED光が照射される。
主光源11からのレーザ光がセンサ5により検出されて、検出信号がマイクロコンピュータ21に出力される。
ここで、主光源スキャン振幅検出回路19により、主光源11からのレーザ光を反射させるMEMSミラーの振り角が検出される。
第2A/D変換回路20により、イコライザアンプ7からの出力に基づいて、主光源スキャン振幅検出回路19により検出されたMEMSミラーの振り角に応じたアナログ形態の値がディジタルデータに変換され、マイクロコンピュータ21に出力される。
マイクロコンピュータ21により、第2A/D変換回路20の出力信号に基づいてMEMSミラーの振り角が制御される。これにより、主光源11の主走査が制御される。
そして、レーザ光が走査された測定対象セル101から発生した起電流が、電流電圧変換回路6により電圧に変換される。
イコライザアンプ7により、電流電圧変換回路6で生成した電圧の応答補償が行われる。
バイアス電流キャンセル回路8により、ストリングを流れる起電流のうち不要な起電流成分が除去される。
アンプ9により、バイアス電流キャンセル回路8からの出力に増幅処理が行われ、第1A/D変換回路15、セル間切替タイミング生成回路18、主光源スキャン振幅検出回路19に出力される。
第1A/D変換回路15により、バイアス電流キャンセル回路8からのアナログ形態の出力信号がディジタル信号に変換される。
画像処理部16により、第1A/D変換回路15の出力信号に基づいて画像処理が行われ、表示器17において、測定対象セル101内にクラック等の欠陥がある場合はその欠陥の形状が画像として表示器17に表示される。
現在の測定対象セルの測定が終了すると、隣接する太陽電池セルに測定対象セルが移行する。モータ制御回路1により主光源送りモータ4の動作が制御され、主光源11がストリングの長手方向に移動して副走査が行われる。
セル間切替タイミング生成回路18により、ストリング内の太陽電池セル間の境界が検出され、副光源12〜14の点灯/消灯を切り替えるタイミング信号が生成されてマイクロコンピュータ21に出力される。マイクロコンピュータ21からの指示に基づき、副光源制御回路3により動作を制御された副光源12〜14から、測定対象セルと直列に接続された他の非測定対象セルにLED光が照射され、同様に測定対象セルに対する測定が行われる。
ここで、バイポーラ電源22Aは、測定対象セルの両端電極間にかかる非測定対象セルにおいて発生した逆バイアス電圧を相殺して両端電極間の電位差がほぼゼロとなる状態、即ち短絡電流Iscを取り出すことが可能な状態で測定対象セルの起電流を測定できるように、逆極性のバイアス電圧を発生させる。この逆極性のバイアス電圧は、太陽電池の欠陥検査を開始する前に予め以下のような手順で求めておく。尚、説明に使用する太陽電池は、ストリングを組み合わせて作成したモジュールである。
先ず、図2に代表的な太陽電池モジュール201の構成例を示す。この例では、10個の太陽電池セルが直列接続されて一列を形成して一つのストリングを形成している。このようなストリングがストリングAからストリングFまで6列分配置されている。
隣接するストリングAとB、CとD、EとFの図中下端部は接続され、ストリングBとC、DとFの図中上端部が接続されている。欠陥検査時には、ストリング2列分に主光源と副光源の光を照射する。従って、1度の検査に使用する太陽電池の合計セル枚数は、20枚(N=2×10)になる。
図3のフローチャートに本実施の形態1において逆極性のバイアス電圧を求める第1の手法における手順を示す。この第1の手法では、直列に接続された1個の測定対象セル、N−1個の非測定対象セルの全てにLED光を照射し、いずれの太陽電池セルを測定対象セルとする場合にも共通に用いる逆極性のバイアス電圧を求める。
ステップS11として、副光源12〜14を全点灯し、N個全ての太陽電池セルにLED光を照射する。このとき、バイポーラ電源22Aから出力したバイアス電圧が零であると、ストリング2列の両端は短絡、所謂ストリングでのIsc状態である。
ステップS12として、この逆バイアス電圧を相殺するような逆極性のバイアス電圧を求めるため、所定の値から掃引していく処理を行う。
図4に、逆極性のバイアス電圧を求める際に開始時に印加する開始電圧Vstart、電流Iがゼロとなるときの開放電圧Vocs(太陽電池ストリング2列分の開放電圧に等しい)、両端電圧がゼロとなる短絡電流Iscを得る逆極性のバイアス電圧Vocs(1−1/N)との関係を示す。先ず、所定の開始電圧Vstartを発生させてN個の太陽電池セルの両端に印加する。
ステップS13において、開始電圧Vstartから徐々に掃引を行っていき、それぞれにおける太陽電池ストリング2列分の起電流Iを測定する。そして、ステップS14において、起電流Iの符号を判定し極性が反転したなら、ステップS15で掃引を停止する。
ステップS16として、副光源12〜14から全太陽電池セルに対するLED光の照射を停止する。
ステップS17として、電流Iが極性反転したゼロ(A)近傍の電流Iと、バイアス電圧Vbiasの値とに基づいて、Iがゼロ(A)となるときのバイアス電圧Vbias(0)を求める。これが、太陽電池ストリング2列分の開放電圧Vocsになる。
ステップS18として、求めた開放電圧Vocsに基づき、検査時に印加すべきバイアス電圧を求める。即ち、検査時にはN個の全太陽電池セルにおいて1個の測定対象セルを除くN−1個の非測定対象セルにLED光が照射される。そこで、検査時にN個の太陽電池セルの両端に印加すべき逆極性のバイアス電圧は、Vocs(1−1/N)となる。このような逆極性のバイアス電圧Vbiasが印加された状態で、測定対象セルに主光源11からレーザ光が照射されると測定対象セルのみの短絡電流Iscが取り出される。
あるいは、例えば1SUN(100mW/cm)の10%以上の放射照度のLED光を照射したときに得られる開放電圧Vocsを測定する。この電圧に、(1−1/N)を乗算した電圧を求める。得られた電圧を逆極性とすることで、逆極性のバイアス電圧Vocs(1−1/N)が求まる。
このようにして求めた逆極性のバイアス電圧が、検査時にバイポーラ電源22Aから出力されて2列の太陽電池ストリング(N個の太陽電池セル)の両端に印加される。
あるいは、図5のフローチャートに、本実施の形態1において逆極性のバイアス電圧を求める第2の手法における手順を示す。
使用に伴う劣化により、各々の太陽電池セルに対応して配置された副光源12〜14に放射照度のばらつきが生じてくると、各々の太陽電池セルにおける発電量にばらつきが生じる。このような場合には、直列に接続されたN個の太陽電池セルにおいて、いずれかの太陽電池セルを測定対象セルとするかにより、両端電圧をゼロにするための逆極性のバイアス電圧が異なってくる。
そこで、この第2の手法では、直列に接続されたN個の太陽電池セル毎に逆極性のバイアス電圧を求める。
ステップS21として、直列に接続された太陽電池セルの個数Nを設定する。
ステップS22として、1個の測定対象セルに、主光源11からのレーザ光と同一の放射照度のLED光を、副光源13から照射する。
ステップS23として、N−1個の非測定対象セルに、副光源12、14からLED光を照射する。ここで、副光源12、14からのLED光は、主光源11からのレーザ光よりも高く設定される。これは、レーザ光と等価な副光源の照射により測定対象セルで生じた起電流が直列接続された太陽電池セル全体を流れて電流経路を形成し外部から取り出すことができるようにする必要があるためである。これにより、1個の測定対象セルの両端にN−1個分の非測定対象セルによる逆バイアス電圧が発生する。
ステップS24として、この逆バイアス電圧を相殺するような電圧を直列接続されたN個の太陽電池セルの両端に印加する。上記第1の手法と同様に、所定の開始電圧Vstartから徐々に掃引を行っていき、ステップS25において測定対象セルの起電流Iを測定する。そして、ステップS26において起電流Iの符号を判定し極性が反転したなら、ステップS27で掃引を停止する。
ステップS28として、電流Iが極性反転したゼロ(A)近傍の電流Iと、バイアス電圧Vbiasの値に基づいて、Iがゼロ(A)となるときのバイアス電圧Vbias(0)を求める。太陽電池ストリング両端に、この電圧を印加した場合、測定対象セルはVoc状態である。
そして、ステップS29として、求めた電圧Vbias(0)に基づき、検査時に印加すべきバイアス電圧を求める。主光源11が照射されたときのストリングを構成するセルそれぞれの開放電圧Vocの平均的な値をVofsとすると、求めるべきバイアス電圧は、Vbias(0)−Vofsとなる。
このようなステップS22からS29までの処理を、ステップS30としてN個の太陽電池セルを順に測定対象セルとした場合について同様に行い、それぞれの測定対象セルを測定する際に両端に印加すべき逆極性のバイアス電圧を求める。
ステップS31として、全ての副光源12〜14からのLED光の照射を停止する。
本実施の形態1による太陽電池の欠陥検査装置は、図2に示された各ストリングA〜F内の個々の太陽電池セルを順に測定対象セルとしてレーザ光を照射して起電流を測定し、その測定結果を画像処理して表示器17に表示する。これにより、各セルのクラック等の欠陥の有無が画像として表示され、欠陥の有無を簡易かつ迅速に把握することができる。
より詳細には、測定対象セルに流れる起電流の大きさは、欠陥の有無で変化する。このため、起電流の大きさに応じて画像を変えることで、セル内の欠陥部分を画像として表現することができる。
上述したように、直列に接続された太陽電池セルにおいて測定対象セル以外の他の全ての太陽電池セルには、LED光が照射される。図2に示された例では、隣接する接続されたストリングA及びB、ストリングC及びD、ストリングE及びF内の測定対象セル以外の全ての太陽電池セルにLED光が照射される。
図6に、本実施の形態1における主光源11と副光源12〜14及び副光源204Aと204Bの配置を示す。以下、図1に従い、主光源11の斜め上方にある副光源は、12〜14の3つで説明する。図示されていないローラ上に設けられた載置台202に、受光面を下方に向けて太陽電池モジュール201が載置される。載置台202は、ガラスや透明樹脂等、光源ユニットからの光が太陽電池モジュール201の受光面に照射されるように光透過性を有する材料から成る。あるいは、載置台202を枠体とし、太陽電池モジュール201の周囲を枠体に載置してもよい。
また、外光の影響を抑制し、かつ光源ユニットからのレーザ光等が外部へ漏れ出るのを防ぐため、さらにレーザ光が非測定対象セルに照射されたりLED光が測定対象セルに照射されるのを防ぐため、太陽電池モジュール201を覆うような遮光カバー203を載置台202の上部に設けておくことが望ましい。
図6(a)から図6(b)、図6(c)に順次示されたように、主光源11及び副光源12〜14を有する光源ユニットが太陽電池モジュール201の各ストリングA〜Fを横切るように、矢印Xで示された搬送方向に移動することで、各ストリングA〜F内の太陽電池セルが順に測定対象セルとなり欠陥検査が行われていく。
なお、図6に示された例では、主光源11及び副光源12〜14を有する光源ユニットが太陽電池モジュール201の搬送方向に移動する。しかし、光源ユニットの位置を固定し、太陽電池モジュール201を搬送方向に移動させて欠陥検査を行ってもよい。
光源ユニットは、ストリングA〜Fの長手方向、即ち図6の紙面に垂直な方向に延在するように形成された3列の溝部を有し、各溝部の間には遮光板31が設けられている。この遮光板31は、中央の溝部内の主光源11に対し、左右に隣接する溝部内の副光源204A、204BからのLED光が入り込まないようにするためのものである。
中央の溝部の底面上に主光源11が配置され、主光源11の斜め上方には副光源12〜14がストリングの長手方向に沿って図中左右2列に配置されており、ストリングA〜Fのそれぞれを構成する太陽電池セルの枚数と同じ数だけ必要である。これら副光源12〜14は、その上方に配置される各ストリングA〜F内の太陽電池セルに向かって、斜め上方にLED光を照射する。そして、各太陽電池セルに対応する副光源12〜14を個別に点灯/消灯することができる。
左右両側の溝部に設けられた副光源204A、204Bは、それぞれストリングA〜Fの長手方向に沿って各太陽電池セルに対応づけて一列分の個数配置されている。そして、各太陽電池ストリングに対応する副光源204A、204Bを個別に点灯/消灯することができる。
主光源11は、中央の溝部に沿って、ストリングA〜Fの長手方向に移動可能であり、その移動方向制御は主光源送りモータ4が行う。主光源11は、測定対象セルとなる太陽電池セルに対応した位置に移動される。主光源11が測定対象セルにレーザ光を照射している間、測定対象セルと同一ストリング内の非測定対象セルには、光源ユニット中央の溝の副光源12〜14のうち測定対象セル斜め下にある副光源を除き、LED光が照射される。測定対象セルと直列接続された隣接する他のストリング内の全ての太陽電池セルには、両側の溝のうち一方の副光源204A又は204BからLED光が照射される。より具体的には、主光源11が測定対象セルのあるストリング内を移動すると、図1に示されたセル間切替タイミング生成回路18が太陽電池セル間の境界を検出し、この結果に基づいて副光源12〜14の点灯/消灯が切り替わる。
測定対象セルが他の列に移動し、これに伴い主光源11が隣のストリングに移動すると、それに合わせて副光源12〜14のLED照射動作も切り替わる。
図6(a)に示された例では、測定対象セルがストリングFに含まれ、測定対象セルに主光源11からレーザ光が照射され、ストリングFにおける非測定対象セルに副光源12〜14からLED光が照射される。このストリングFと直列に接続されたストリングEにおける全ての非測定対象セルに、副光源204AからLED光が照射される。
図6(b)に示された例では、測定対象セルがストリングEに含まれ、測定対象セルに主光源11からレーザ光が照射され、ストリングEにおける非測定対象セルに副光源12〜14からLED光が照射される。このストリングEと直列に接続されたストリングFにおける全ての非測定対象セルに、副光源204BからLED光が照射される。
図6(c)に示された例では、測定対象セルがストリングAに含まれ、測定対象セルに主光源11からレーザ光が照射され、ストリングAにおける非測定対象セルに副光源12〜14からLED光が照射される。このストリングAと直列に接続されたストリングBにおける全ての非測定対象セルに、副光源204BからLED光が照射される。
図7に、主光源11の詳細な構成を示す。図示されたように、主光源11は、レーザ光源32と、レーザ光源32からのレーザ光を反射させるMEMSミラー33とを有する。MEMSミラー33は、その中心軸回りに所定の周波数で回動しており、これにより、レーザ光の反射角度が所定の周波数で切り替わる。MEMSミラー33で反射されたレーザ光が測定対象セル34に照射されて、主走査が行われる。
図8に、主光源11からのレーザ光の軌跡を矢印で示す。図示されたように、MEMSミラー33が一定の振れ角で振動することで、レーザ光が測定対象セルの図中上下方向に主走査される。そして、主光源送りモータ4により主光源11がストリングの長手方向に移動されることで、レーザ光が矢印で示された図中右方向に副走査される。MEMSミラー33の振れ角の制御は、上述したように主光源スキャン振幅検出回路19の振れ角の検出に基づくマイクロコンピュータ21からの駆動信号によって行われる。
光源ユニットは、ストリングの長手方向に延在しており、その両側にセンサ5が配置されている。センサ5は、主光源11からのレーザ光を検知する受光素子、例えばフォトトランジスタを含んでいる。
主光源11からのレーザ光がセンサ5により検出されると、検出信号がマイクロコンピュータ21に出力される。マイクロコンピュータ21は検査の開始を認識する。そしてマイクロコンピュータ21は、主光源送りモータ4に主光源11の進行方向を切り替えるように指示するとともに、副光源制御回路3に対して副光源12〜14の点灯/消灯の切替を指示する。また、マイクロコンピュータ21は、光源ユニットを搬送方向であるX方向に1セル分移動させる制御も行う。
なお副光源12〜14としてLED光源を用いる理由は、指向性の高いものを比較的安価に入手できることと、白熱電球やキセノンランプと比べて熱の発生が少ないことと、光源を小型化できることと、単色光であること等による。
ところで、太陽電池は種類毎に分光感度が異なっている。図9に、代表的な太陽電池の分光感度を示す。図示のように、結晶シリコン型とCIGS型の太陽電池では、900nm〜1000nmの発光波長の光に対して最も感度が高い。
そこで本実施の形態1では、870nm〜1000nm程度の発光波長を持つLED光源を用いることにした。より具体的には、安価でかつ省スペースという観点から、940nm程度の発光波長を持つGaAs発光ダイオードまたは870nm程度の発光波長を持つGaAlAs発光ダイオードを用いる。
なお、レーザ光の発光波長は可視光の中では長波長であり、入手性がよくスポット径の調整がしやすいという観点に基づいて、本実施の形態1では発光波長が660nmの赤色レーザを用いることにした。
本実施の形態1によれば、測定対象セルの両端に、非測定対象セルが発電した電圧が逆バイアス電圧として印加されて測定精度が低下する現象を回避して高精度で欠陥を判定するとともに、測定対象セルに過大な逆バイアス電圧が印加されてダメージ受ける事態を防止することが可能である。
(2)実施の形態2
図10に、本発明の実施の形態2による太陽電池の欠陥検査装置の構成を示す。なお、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
上記実施の形態1では、バイポーラ電源22Aによりアナログ形態の逆極性のバイアス電圧を直接発生し、直列接続されたN個の太陽電池セルの両端に印加する。
これに対し本実施の形態2では、バイポーラ電源22BがD/A変換回路22a及び出力アンプ22bを有し、さらにマイクロコンピュータ21から与えられたデータに基づいてアナログ形態の逆極性のバイアス電圧を発生させる点で上記実施の形態1と相違する。
図示されていないメモリに逆極性のバイアス電圧に対応するディジタルデータが予め記憶されており、マイクロコンピュータ21がこのディジタルデータを読み出してD/A変換回路22aに与える。D/A変換回路22aは、ディジタルデータをアナログ形態の電圧に変換して出力する。この変換された電圧が出力アンプ22bに与えられて増幅され、逆極性のバイアス電圧として出力されて、N個の太陽電池セルの両端に印加される。
なお、逆極性のバイアス電圧を求める手法は、上記実施の形態1において説明した上記第1の手法〜第3の手法のいずれかを用いることができる。
本実施の形態2においても上記実施の形態1と同様に、測定対象セルの両端に、非測定対象セルが発電した電圧が逆バイアス電圧として印加されて測定精度が低下する現象を回避して高精度で欠陥を判定するとともに、測定対象セルに過大な逆バイアス電圧が印加されてダメージを受ける事態を防止することが可能である。
さらに本実施の形態2によれば、バイポーラ電源22Bが発生すべき逆極性のバイアス電圧に対応するディジタルデータをメモリに格納しマイクロコンピュータ21により読み出すことで、データの保存が可能である。
(3)実施の形態3
図11に、本発明の実施の形態3による太陽電池の欠陥検査装置の構成を示す。なお、上記実施の形態1、2と同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施の形態3におけるバイポーラ電源22Cは、上記実施の形態2におけるバイポーラ電源22BにおけるD/A変換回路22aと出力アンプ22bとの間にローパスフィルタ22cが接続されたものに相当する。
図12を用いて、D/A変換回路22aから出力されたアナログ形態の電圧に、ローパスフィルタ22cを用いて高周波の電圧リップル成分を除去して出力する理由について説明する。
測定対象セルと非測定対象セルとが直列に接続された太陽電池セルの開放電圧Vocsを求める際に、上述したようにバイアス電圧を掃引する処理を行う。太陽電池セルの両端に印加される電圧の増加に伴い、流れる電流Iが徐々に減少していく。
しかしながら、図12のグラフから明らかなように、太陽電池の定電流領域を超えて開放電圧Vocsに近い領域では、ごく僅かな電圧の変化に対する電流の変化の傾きが急峻である。よって、僅かに電圧△vが変化した場合にも電流の変化△iは大きなものとなる。
このため、出力アンプ22bの入力信号に僅かな電圧リップル△vが存在した場合、電流電圧変換回路6で検出した電流が電圧リップル△vと同一周期で変動してより大きな電流の変化△iとなる。この結果、電流iがゼロとなるポイントにおける開放電圧Vocsを正確に求めることができなくなる。
そこで本実施の形態3では、バイポーラ電源22CにおいてD/A変換回路22aから出力されたアナログ形態の電圧にローパスフィルタ22cを用いて高周波の電圧リップル成分を除去して出力アンプ22bに与えることで、開放電圧Vocsに基づいてバイアス電圧Vbiasを正確に求めることを可能としている。
逆極性のバイアス電圧を求める手法は、上記実施の形態1において説明した上記第1の手法〜第3の手法のいずれかを用いることができる。
本実施の形態3においても上記実施の形態1、2と同様に、測定対象セルの両端に、非測定対象セルが発電した電圧が逆バイアス電圧として印加されて測定精度が低下する現象を回避して高精度で欠陥を判定するとともに、測定対象セルに過大な逆バイアス電圧が印加されてダメージを受ける事態を防止することが可能である。
さらに本実施の形態3によれば、D/A変換回路22aからの出力電圧に含まれる高周波の電圧リップル成分をローパスフィルタ22cで除去することで、測定精度を向上させることができる。
(4)実施の形態4
本発明の実施の形態4による太陽電池の欠陥検査装置について説明する。なお、上記実施の形態1〜3と重複する説明は省略する。
本実施の形態4は、上記実施の形態1〜3のいずれかによる太陽電池の欠陥検査装置と同様の構成を備えている。上記実施の形態1〜3では、非測定対象セルにより生じて測定対象セルの両端に印加される逆バイアス電圧を相殺するため、この両端の電圧がゼロとなるような逆極性のバイアス電圧を求めて印加する。これにより、測定対象セルから最大となる短絡電流Iscを取り出している。
一方、本実施の形態4では、測定対象セルの両端電圧がゼロとなるときの逆極性のバイアス電圧に、さらに逆方向に太陽電池セル1枚のVoc以下の範囲内で逆極性のオフセット電圧を加えて印加する点に特徴がある。
一般に、太陽電池の欠陥には結晶欠陥とクラックとが含まれる。結晶欠陥は太陽電池の製造前の段階から存在し、クラックは製造時に発生したものである。この2種類の欠陥を区別し、クラックのみを容易に判別したい場合がある。
このようなクラックのみを容易に判別できるように画像表示するには、結晶欠陥部とその周囲との間で画像変化が小さくなるように薄く表示し、目立たないようにする必要がある。
そこで、本実施の形態4では上述したように、バイポーラ電源22A〜22Cから、測定対象セルの両端電圧がゼロとなるときの逆極性のバイアス電圧に、さらに逆方向に太陽電池セル1枚のVoc以下の範囲内で逆極性のオフセット電圧を加えた電圧を発生させて両端に印加する。このような電圧を測定対象セルの両端に印加することで、結晶粒界におけるキャリアの再結合が少なくなり、起電流の変化が小さくなり、画像化しても目立たなくなる。この結果、クラックのみを容易に判別することが可能となる。
ここで、太陽電池セルのうち単結晶型セルでは結晶欠陥が殆ど存在しない。このため、上記実施の形態1〜3と同様に、測定対象セルの両端電圧がゼロとなるときの逆極性のバイアス電圧を用いてもクラックを容易に判別することができる。
一方、多結晶型セルでは結晶欠陥が多く存在する。このような場合は、本実施の形態4に従って、測定対象セルの両端電圧がゼロとなるときの逆極性のバイアス電圧に、上述した逆極性に太陽電池セル1枚のVoc以下の範囲内のオフセット電圧を加えたものを印加することで、クラックの容易な判別が可能である。
なお、逆極性のオフセット電圧の値を決定する際には、表示器17に表示された画像を見るか、あるいは起電流波形を観測しながら最適な電圧を設定すればよい。
また、結晶欠陥を容易に判別したい場合には、測定対象セルの両端電圧がゼロとなるときの逆極性のバイアス電圧から、順方向に所定のオフセット電圧を差し引いたものを発生させて両端に印加すればよい。
本実施の形態4によれば、測定対象セルの両端電圧がゼロとなるときの逆極性のバイアス電圧に、逆極性のオフセット電圧を加えた電圧を両端に印加することでクラックを容易に判別することができ、あるいは正極性のオフセット電圧を差し引いた電圧を印加することで結晶欠陥を容易判別することが可能である。
(5)実施の形態5
本発明の実施の形態5による太陽電池の欠陥検査装置について説明する。なお、上記実施の形態1〜4と重複する説明は省略する。
上記実施の形態1〜4では、直列に接続された複数の太陽電池セルにおける1個の測定対象セルに対して測定を行う。これに対し本実施の形態5では、1個の太陽電池セルに対して測定を行う点で相違する。
本実施の形態5は、図13に示されたように、1個の測定対象セル101に対してレーザ光を照射する光源41と、光源41の動作を制御する光源制御回路42を備えている。
1個の太陽電池においても、領域において発電量にバラツキが存在する。そこで、測定対象セル101に光源41からレーザ光を走査しながら表示器17に表示された画像を観察し、最も欠陥が明確に判別できるようなバイアス電圧を求める。求めたバイアス電圧をバイポーラ電源22Aから発生して測定対象セル101の両端に印加し、画像を観察する。これにより、本実施の形態5によれば発電量のバラツキが原因となり生じる起電流のばらつきを平準化させて、最適な状態で欠陥検査を行うことができる。
本発明の幾つかの実施の形態について説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上記実施の形態1〜5ではバイポーラ電源22A、22B、22Cにより、非測定対象セルにより発生して測定対象セルの両端に印加される逆バイアス電圧を相殺するための逆極性のバイアス電圧を出力している。しかし、必ずしもバイポーラ電源を用いる必要はなくバイアス電圧発生回路により逆極性のバイアス電圧を出力してもよい。
1 モータ制御回路
2 主光源制御回路
3 副光源制御回路
4 主光源送りモータ
5 センサ
6 電流電圧変換回路
7 イコライザアンプ
8 バイアス電流キャンセル回路
11 主光源
12、13、14、204A、204B 副光源
15 第1A/D変換回路
16 画像処理部
17 表示器
18 セル間切替タイミング生成回路
19 主光源スキャン振幅検出回路
20 第2A/D変換回路
21 マイクロコンピュータ
22A、22B、22C バイポーラ電源
22a D/A変換回路
22b 出力アンプ
22c ローパスフィルタ
41 光源
42 光源制御回路

Claims (10)

  1. 複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の欠陥を検査する装置において、
    前記太陽電池セルにおける測定対象セルに第1の放射照度の光を照射する主光源と、
    前記測定対象セルと直列に接続された非測定対象セルに第2の放射照度の光を照射する副光源と、
    前記第1の放射照度より前記第2の放射照度が高くなるように、前記主光源及び前記副光源の動作を制御する光源制御回路と、
    前記太陽電池から出力された電流を与えられ、電圧に変換して出力する電流電圧変換回路と、
    前記電流電圧変換回路から出力された前記電圧に含まれるバイアス電流に対応する電圧成分を除去するバイアス電流キャンセル回路と、
    前記測定対象セルと直列に接続された前記非測定対象セルの全てにより発生して前記測定対象セルの両端に印加される電圧に対して、等しく且つ逆極性のバイアス電圧を出力するバイアス電圧発生回路と、
    前記バイアス電流キャンセル回路からの出力を増幅して出力する出力アンプと、
    前記出力アンプからのアナログ形態の出力をディジタルデータに変換して出力する第1のA/D変換回路と、
    前記第1のA/D変換回路から出力された前記ディジタルデータに画像処理を行って画像データを出力する画像処理装置と、
    前記画像処理装置から出力された前記画像データを与えられて画像表示を行う表示器と、
    を備え、
    前記バイアス電圧発生回路から出力された前記逆極性のバイアス電圧を、前記複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の両端に印加し、前記測定対象セルの両端の電圧のみが等価的にゼロとなる短絡状態にすることによって、前記測定対象セルにおける短絡電流に基づく検査を行うことを特徴とする太陽電池の欠陥検査装置。
  2. 前記電流電圧変換回路から出力されたアナログ形態の前記電圧をディジタルデータに変換して出力する第2のA/D変換回路と、
    前記第2のA/D変換回路により変換された前記ディジタルデータに基づいて、前記逆極性のバイアス電圧に対応したディジタルデータを出力するマイクロコンピュータと、
    をさらに備え、
    前記バイアス電圧発生回路は、前記マイクロコンピュータから出力された前記ディジタルデータに基づいて、前記逆極性のバイアス電圧を出力することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の欠陥検査装置。
  3. 前記バイアス電圧発生回路は、
    前記マイクロコンピュータから出力された前記ディジタルデータをアナログ形態の電圧に変換して出力するD/A変換回路と、
    前記D/A変換回路から出力された前記アナログ形態の電圧に含まれる高周波成分を除去して出力するローパスフィルタと、
    前記ローパスフィルタからの出力を増幅して前記逆極性のバイアス電圧を出力する出力アンプと、
    を有することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池の欠陥検査装置。
  4. 前記バイアス電圧発生回路は、前記測定対象セルと、前記測定対象セルに直列に接続された前記非測定対象セルの全てに、前記第2の放射照度の光を前記副光源から照射したときに、直列に接続された全ての前記太陽電池セルの両端に発生する開放電圧に基づいて設定された前記逆極性のバイアス電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽電池の欠陥検査装置。
  5. 前記バイアス電圧発生回路は、前記測定対象セルに、前記第1の放射照度の光を前記主光源から照射し、前記非測定対象セルに、前記第2の放射照度の光を前記副光源から照射したときに、直列に接続された全ての前記太陽電池セルの両端に発生する開放電圧に基づいて設定された前記逆極性のバイアス電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽電池の欠陥検査装置。
  6. 前記バイアス電圧発生回路は、前記非測定対象セルにより発生して前記測定対象セルの両端に印加される前記電圧を相殺する逆極性の電圧に、逆極性の第1のオフセット電圧を加えた電圧、あるいは前記逆極性の電圧から正極性の第2のオフセット電圧を差し引いた電圧を前記逆極性のバイアス電圧として出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽電池の欠陥検査装置。
  7. 請求項1に記載された太陽電池の欠陥検査装置を用いて、複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の欠陥を検査する方法において、
    前記主光源及び前記副光源のそれぞれの動作を前記光源制御回路により制御して、前記測定対象セルに前記主光源から前記第1の放射照度の光を照射し、前記非測定対象セルに前記副光源から前記第2の放射照度の光を照射し、前記太陽電池から出力された前記電流に基づいて、前記電流電圧変換回路、前記バイアス電流キャンセル回路、前記バイアス電圧発生回路、前記出力アンプ、前記第1のA/D変換回路、前記画像処理装置、前記表示器を用いて画像表示を行い、
    前記バイアス電圧発生回路から出力された前記逆極性のバイアス電圧を、前記複数の太陽電池セルが直列接続された太陽電池の両端に印加し、前記測定対象セルの両端の電圧のみが等価的にゼロとなる短絡状態にすることによって、前記測定対象セルにおける短絡電流に基づく検査を行うことを特徴とする太陽電池の欠陥検査方法。
  8. 前記逆極性のバイアス電圧は、前記測定対象セルと、前記測定対象セルに直列に接続された前記非測定対象セルの全てに、前記第2の放射照度の光を前記副光源から照射したときに、直列に接続された全ての前記太陽電池セルの両端に発生する開放電圧に基づいて設定されたことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の欠陥検査方法
  9. 前記逆極性のバイアス電圧は、前記測定対象セルに、前記第1の放射照度の光を前記主光源から照射し、前記非測定対象セルに、前記第2の放射照度の光を前記副光源から照射したときに、直列に接続された全ての前記太陽電池セルの両端に発生する開放電圧に基づいて設定されたことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の欠陥検査方法
  10. 前記逆極性のバイアス電圧は、前記非測定対象セルにより発生して前記測定対象セルの両端に印加される前記電圧を相殺する逆極性の電圧に、逆極性の第1のオフセット電圧を加えた電圧、あるいは前記逆極性の電圧から第2のオフセット電圧を差し引いた電圧として設定されたことを特徴とする請求項に記載の太陽電池の欠陥検査方法
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