JP2014165005A - 二次電池電極形成用組成物、二次電池電極、及び二次電池 - Google Patents

二次電池電極形成用組成物、二次電池電極、及び二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】活物質や導電助剤の分散性に優れる電極形成用組成物を提供することであって、さらに電解液耐性の高い電極層が得られることで、長期の充放電サイクル特性に優れる二次電池を提供すること。
【解決手段】活物質(A)や導電助剤(B)の少なくとも一方と、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂型分散剤(C)と、シランカップリング剤(D)とを用いた二次電池電極形成用組成物によって解決できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、二次電池電極形成用組成物、及びその組成物を用いて得られる二次電池用電極、及びその電極を用いて得られる二次電池に関する。
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。又、自動車搭載用等の大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型二次電池の実現が望まれている。近年では、資源枯渇や環境問題の観点から、ハイブリッド自動車や電気自動車などのように、二次電池を動力源として使用することが検討されている。
そのような要求に応えるため、リチウムイオン二次電池、アルカリ二次電池などの二次電池の開発、例えば、合材層の形成に使用される合材インキの開発が活発に行われている。また、合材層の下地層の形成に使用される下地層形成用組成物にも関心が集まりつつある。
電極の形成に使用される合材インキや下地層形成用組成物に求められる重要特性としては、粒子である活物質や導電助剤が適度に分散されてなる均一性が挙げられる。
これは合材インキ中の活物質や導電助剤の分散状態や、下地層形成用組成物中の導電助剤の分散状態が、合材層中の活物質や導電助剤の分布状態や粒子間の結着状態、下地層中の導電助剤の分布状態や粒子間の結着状態に関連しており、電極物性に影響し、ひいては電池性能に影響するためである。
そのため、活物質や導電助剤の分散は重要な課題である。とりわけ導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は、ストラクチャーや比表面積が大きいため凝集力が強く、合材インキ中であれ、下地層形成用組成物中であれ、均一混合・分散することが困難である。
そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成されないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、電極材料の性能を十分に引き出せないという問題が生じている。
また、導電助剤だけでなく、合材インキ中の活物質の分散が不十分であると、そのような合材インキから形成される合材層中に部分的凝集が生じる。そして、部分的凝集に起因して電極上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際の電流集中が生じ、部分的な発熱および劣化が促進される等の不具合が生じることがある。
特許文献1〜3には、分散剤として樹脂型分散剤を使用した例が記載されている。これらの樹脂型分散剤を用いると、活物質や導電助剤いずれに対しても分散剤として作用し、各々の粒子が均一に混合された合材インキが得られる。しかし、長期のサイクル特性では電池容量の低下があった。また、電解液耐性は不十分であった。
上記の方法では活物質や導電助剤の粒子が均一に分散された結果、良好な粒子ネットワークが形成される。しかしながら、その結果、電解液に接触した状態の充放電では活物質−活物質間、活物質−導電助剤間、または導電助剤−導電助剤間の粒子間接触を長期にわたって保持しにくくなってしまったものと考えられる。電極下地層形成用組成物についても導電助剤−導電助剤間の粒子接触による導電パス形成に関し、同じ課題を抱えている。
一方で、電極膜の強度や集電体との密着性を高めるために、シラン化合物の利用が知られている。
特許文献4、5では、シランカップリング剤の添加によって膜の強度を向上させた例が記載されている。これらの例では、多量のカップリング剤を添加しなければ十分な効果が得られなかった。また、電解液耐性は不十分であった。
特許文献6〜9では、表面処理によって不可逆容量を抑制し、サイクル特性が向上した例が挙げられている。これらの方法では粒子間接触を形成できるが、表面処理を施すためのプロセスは煩雑になる。例えば、活物質とカップリング剤溶液を混合した後、加熱乾燥によって表面処理を施したり、合材層を有する電極をカップリング剤溶液中に含浸させた後、加熱乾燥したりといった複数の工程が必要になる。工業化の容易性やコストの観点からも、より簡便な方法が求められていた。また、これらの手法を用いても、合材層の電解液耐性が十分とはいえなかった。
また、特許文献10、11では、スラリー混合工程のみでシランカップリング剤を処理する手法が記載されているが、粒子の分散が不十分な状態のため、合材層の電解液耐性は不十分であった。
特開2010−97816 特開2010−97817 特開2011−70908 特開平7−326346 特開平8−96801 特開平8−111243 特開平11−354104 特開2008−235090 特開2002−367610 特開2007−18874 特開2005−293942
本発明の目的は、二次電池を形成するための電極形成用組成物であって、活物質や導電助剤の分散性に優れる電極形成用組成物を提供することである。さらに、電解液耐性の高い合材層または電極下地層(以降、本明細書中では合材層または電極下地層をまとめて電極層と称する場合がある。)を形成させることで、長期の充放電サイクル特性に優れる二次電池用電極を提供することである。
前記課題は、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂型分散剤(C)と、シランカップリング剤(D)とを用い、活物質(A)や導電助剤(B)を分散させた二次電池電極形成用組成物によって解決される。
本発明は、活物質(A)または導電助剤(B)の少なくとも一方と、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂型分散剤(C)と、シランカップリング剤(D)とを含む二次電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明は、シランカップリング剤(D)が、反応性官能基を有する前記二次電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明は、集電体と、合材層もしくは電極下地層の少なくも一層とを具備する電極であって、前記合材層もしくは前記電極下地層が前記二次電池電極形成用組成物から形成されたものである二次電池用電極に関する。
また、本発明は、正極と負極と電解液とを具備する電池であって、前記正極もしくは前記負極の少なくとも一方が前記二次電池用電極である二次電池に関する。
本発明により、活物質や導電助剤の分散性に優れる電極形成用組成物を提供することができた。さらに、電解液耐性の高い合材層または電極下地層を形成でき、長期の充放電サイクル特性に優れる二次電池用電極を提供することができた。
これは、酸性官能基を有する樹脂、または塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂型分散剤を用いることで、活物質や導電助剤の凝集をほぐし均一に分散させ、このような状態でシランカップリング剤を作用させる。このときシランカップリング剤が作用した微細な粒子同士は、より多数の粒子間接触を形成することができ、その結果、非常に強固な粒子間接触を有する電極層が形成できたためであると考えられる。これは、粒子の分散が不十分な状態で作用させた場合に比べ、非常に顕著な効果であり、また、より少量のシランカップリング剤でも効果を得ることができる。このような電極形成用組成物から形成された電極層は電解液耐性も向上したため、長期のサイクル試験において電池性能の向上に寄与したと考えている。
二次電池用の電極は、種々の方法で得ることができる。例えば、金属箔等の集電体の表面に、
(1)活物質と液状媒体とを含有するインキ状組成物(以下、合材インキという)や、
(2)活物質と導電助剤と液状媒体とを含有する合材インキや、
(3)活物質とバインダーと液状媒体とを含有する合材インキや、
(4)活物質と導電助剤とバインダーと液状媒体とを含有する合材インキを、
用いて合材層を形成し、電極を得ることができる。
あるいは、金属箔等の集電体の表面に、導電助剤と液状媒体とを含有する下地層形成用組成物を用い、下地層を形成し、該下地層上に、上記の合材インキ(1)〜(4)やその他の合材インキ用いて合材層を形成し、電極を得ることもできる。
背景技術の点で述べたように、いずれの場合であっても、合材インキや下地層形成用組成物中における活物質や導電助剤の分散状態や、合材層や下地層における活物質や導電助剤の分布状態が電池性能を左右する。
酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂(C)(以降、本明細書中では単に樹脂型分散剤と称する場合がある。)は、活物質や導電助剤の凝集を緩和し分散剤として作用する。また、シランカップリング剤(D)は活物質や導電助剤の表面に吸着し、粒子間接触を付与する。
このように、均一な分散と適度な粒子間接触を両立した合材インキから得られる合材層、または下地層形成用組成物から得られる下地層は、電解液耐性が高く、電池特性が向上する。
従って、本発明の二次電池電極形成用組成物は、活物質を必須とする合材インキとしても、活物質を必須とはしない下地層形成用組成物としても活用できる。
まず、本発明における分散剤である樹脂型分散剤(C)について説明する。樹脂型分散剤(C)は、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる。
<酸性官能基を有する樹脂>
本発明における酸性官能基を有する樹脂は、以下に示すCA1〜CA4の4種が挙げられる。分散性の観点からCA1〜CA3が好ましい。
(1)酸性官能基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(CA1
(2)酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2
(3)酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3
(4)その他の市販の酸性官能基を有する樹脂(CA4
また、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、及び燐酸基が挙げられる。
<酸性官能基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(CA1)>
酸性官能基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(CA1)は、特に限定されるものではないが、特公昭52−24959号公報、特開58−136605号公報、特開平2−604号公報、特開平6−172452号公報、WO2004−049475号公報、特許第3121943号公報、又は特許第3784494号公報等を参考に合成することができる。
以下、具体例を示す。ただしモノマーとはエチレン性不飽和単量体を表す。例えば、スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンのホモポリマー(単独重合体)、又は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデン以外のフッ素を有するモノマー、及びフッ素を有しないその他のモノマーからなる群から選ばれた1種類以上のモノマーと、のコポリマー(共重合体)を、スルホン化することにより得られる。
フッ素を有するモノマーとしては、例えばトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。又、その他のモノマーとは、フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーであり、例えば、エチレン、クロロエチレン、プロピレン、(メタ)アクリル酸アルキル、及びスチレン等が挙げられる。スルホン化は、例えば濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、アミド硫酸、三酸化硫黄、又はトリエチルホスフェート錯体のようなスルホン化剤により、ポリフッ化ビニリデン系樹脂における重合単位中の水素をスルホン酸基に置換することで行われる。
例えば、カルボキシル基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと、カルボキシル基を有するモノマーと、フッ化ビニリデン以外のフッ素を有するモノマー、及びフッ素を有しないその他のモノマーからなる群から選ばれた1種類以上のモノマーと、を共重合することにより、得ることができる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸等の不飽和一塩基酸、並びに、イタコン酸、マレイン酸、及びシトラコン酸等の不飽和二塩基酸(及びそれらのモノエステル)等が挙げられる。
また、フッ素を有するモノマーや、その他のモノマーの例としては、スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂で用いられるものと同じものが挙げられる。
また、市販のカルボキシル基含有ポリフッ化ビニリデン系の樹脂としては、KFポリマーW#9100、W#9200、及びW#9300(クレハ社製)等が挙げられる。
例えば、燐酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと、燐酸基を有するモノマーと、フッ化ビニリデン以外のフッ素を有するモノマー、及びフッ素を有しないその他のモノマーからなる群から選ばれた1種類以上のモノマーと、を共重合することにより、得ることができる。
燐酸基を有するモノマーとしては、アルキレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性アルコキシリン酸(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性アルコキシリン酸ジ(メタ)アクリレート、グリシジル基を含む(メタ)アクリレートとリン酸とを反応させて得られるアダクト体等が挙げられる。
また、フッ素を有するモノマーや、その他のモノマーの例としては、スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂で用いられるものと同じものが挙げられる。
更に、燐酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、水酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂に燐酸化剤である燐酸、五酸化燐、オキシ塩化燐、ポリ燐酸、又はオルト燐酸等を作用させて燐酸エステルとしても得ることができる。
水酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと、水酸基を有するモノマーと、フッ化ビニリデン以外のフッ素を有するモノマー、及びフッ素を有しないその他のモノマーからなる群から選ばれた1種類以上のモノマーと、を共重合することにより、得ることができる。
水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリレート類とアリルエーテル類があり、(メタ)アクリレート類としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート−(メタ)アクリル酸付加物、1,1,1−トリメチロールプロパン又はグリセロールのジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
水酸基を有するアリルエーテル類としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オコチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等が挙げられる。
また、フッ素を有するモノマーや、その他のモノマーの例としては、スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂で用いられるものと同じものが挙げられる。
本発明における酸性官能基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(CA1)の重量平均分子量は、3,000〜1,000,000が好ましい。より好ましくは、5,000〜500,000である。また酸価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは、5〜150mgKOH/gであり、特に好ましくは、5〜100mgKOH/gである。
<酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)>
本発明における酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)を合成する方法としては、例えば、以下の第一工程、第二工程を経る方法が挙げられる。
(第一工程):ラジカル重合にて片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)を得る工程。
(第二工程):第一工程で得られた片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)と、テトラカルボン酸二無水物(b)とを反応させる工程
<酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の第一工程>
第一工程は、下記一般式(1)に示すように分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)の存在下、エチレン性不飽和単量体(m)をラジカル重合して、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)を製造する工程である。分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、エチレン性不飽和単量体(m)が重合したビニル重合体部位(M)の末端に、S原子を介して2つの水酸基が導入されたビニル重合体(a)が合成される。
一般式(1)
(分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s))
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
一般式(1)におけるZは、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)から水酸基とチオール基を除いた残基である。
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)を、目的とするビニル重合体(a)の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(m)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(a)を得ることができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の水酸基とチオール基とを有する化合物(s)を用い、塊状重合又は溶液重合を行う。反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃、反応時間は3〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
重合の際、エチレン性不飽和単量体(m)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、及び2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。
(エチレン性不飽和単量体(m))
エチレン性不飽和単量体(m)としては、以下に示す一般的なエチレン性不飽和単量体が挙げられる。一般的なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂肪族環を有する(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート等のヘテロ環を有する(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;
スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;等のスチレン類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;並びに、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせても良い。
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(m)の中でも、メチル
(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートを使用するのが好ましい。これら使用すると、活物質や導電助剤への吸着と溶媒親和性とを両立することができ、分散剤として好ましい。さらに、必要に応じて、以下に示す単量体を併用しても良い。
エチレン性不飽和単量体(m)の一つとして、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を併用しても良い。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸二量体、アクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)、及びメタクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)等から1種又は2種以上を選択することができる。
また、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体をエチレン性不飽和単量体(m)として併用しても良い。水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3、又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、及びグリセロール(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、及びN−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド類;
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、及び2−(又は3−、又は4−)ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;
並びに、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、及び2−(又は3−、又は4−)ヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
また、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド類、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類、及びヒドロキシアルキルアリルエーテル類にアルキレンオキサイド又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明で用いる水酸基を有するエチレン性不飽和単量体として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド、並びに、これらの2種以上を併用しても良い。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトン、並びに、これらの2種以上の併用系が用いられる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも良い。
本発明においては、更に上記に例示したエチレン性不飽和単量体(m)と共に、ブロックイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体、オキセタン基を有するエチレン性不飽和単量体、及びt−ブチル基を有するエチレン性不飽和単量体の少なくとも1つから選ばれるエチレン性不飽和単量体用いて、ビニル重合体(a)を製造しても良い。
ブロックイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、カレンズMOI−BM、及びカレンズMOI−BP(昭和電工製)等が挙げられる。オキセタン基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ETERNACOLL OXMA(宇部興産製)等が挙げられる。t−ブチル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、t−ブチルメタクリレート、及びt−ブチルアクリレート等が挙げられる。
本発明においては、ビニル重合体(a)に不飽和結合を導入しても良い。不飽和結合を導入する方法としては、ビニル重合体(a)中に水酸基を導入し、後からイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させる方法、ビニル重合体(a)中にカルボキシル基を導入し、後からエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させる方法、ビニル重合体(a)中にエポキシ基を導入し、後からカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させる方法が挙げられる。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、カレンズMOI(昭和電工製 2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、及びカレンズAOI(昭和電工製 2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート)等が、挙げられる。エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、及びサイクロマーM100(ダイセル化学工業製 3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
本発明における、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜10,000が好ましい。ビニル重合体(a)の重量平均分子量は、エチレン性不飽和単量体(m)に対する分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)の使用重量、反応温度、反応時間、必要に応じて使用する重合開始剤の使用重量、必要に応じて使用する重合溶剤の種類、及び重合時のエチレン性不飽和単量体(m)濃度により調整することが容易である。
<酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の第二工程>
酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)を得るための第二工程は、下記一般式(2)に示すように、第一の工程で得られた片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)と、テトラカルボン酸二無水物(b)とを反応させる工程である。
一般式(2)
片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)のモル比をαA2、テトラカルボン酸二無水物(b)のモル比をβA2とすると、理論上、αA2=βA2では、分子量が無限大に大きくなるので、αA2>βA2あるいはαA2<βA2として、αA2/βA2の比率を変えて、目的とする分子量にコントロールすることが多い。例えば、αA2=βA2+1の場合、両末端が水酸基となり、それ以上分子量が大きくならず、酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2−1)が得られる。一方、βA2=αA2+1の場合、両末端が酸無水物基となり、これを加水分解して、末端をカルボキシル基とした酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2−2)が得られる。
(テトラカルボン酸二無水物(b))
本発明に使用するテトラカルボン酸二無水物(b)は、下記一般式(3)〜(5)で表され、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)と反応して主鎖を形成する。本発明のXは、テトラカルボン酸二無水物(b)が片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)と反応した後の反応残基である。
一般式(3)
一般式(4)
一般式(5)
は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCHCHOCO−、−SO−、−C(CF−、下記一般式(6)または下記一般式(7)のいずれかで表される。
一般式(6)
一般式(7)
本発明で用いるテトラカルボン酸二無水物(b)としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、及びビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;
並びに、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、及び3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
本発明で使用されるテトラカルボン酸二無水物(b)は上記に例示した化合物に限らず、2つのカルボン酸無水物基を有していればどのような構造をしていても良い。これらは単独で用いても、併用しても良い。更に、本発明に好ましく使用されるものは、一般式(3)〜(5)で表されるような、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。また、分子中にカルボン酸無水物基を1つ有する化合物や3つ以上有する化合物を併用しても良い。
本発明で用いることのできる酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の第二の工程で用いられる触媒としては、公知の触媒を使用することができる。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、及び1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノネン等が挙げられる。
本発明で用いることのできる酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になる等の問題を回避するために、溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用しても良い。
本発明で用いることのできる酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)は、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)、テトラカルボン酸二無水物(b)を反応させることで得られる。テトラカルボン酸二無水物(b)中の酸無水物基とビニル重合体(a)中の水酸基とのモル比は、ビニル重合体(a)のモル比をαA2、テトラカルボン酸二無水物(b)のモル比をβA2とすると、βA2/αA2=0.3〜1.2が、好ましく、更に好ましくはβA2/αA2=0.5〜1.0、最も好ましくはβA2/αA2=0.6〜0.8である。βA2/αA2>1で反応させる場合は、残存する酸無水物基を必要量の水で加水分解しても良い。
酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の第二の工程の反応温度は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではカルボキシル基がエステル化反応してしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが理想であるが、ポリエステル(c)の酸価が5〜200の範囲に入ったとき、又は、水酸基価が20〜200の範囲に入った時に反応を止めてもよい。
本発明における酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜25,000、より好ましくは5,000〜15,000である。また酸価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは、5〜150mgKOH/gであり、特に好ましくは、5〜100mgKOH/gである。
<酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)>
酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)は、下記一般式(8)で表される。その製造方法は、例えば、モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合して片末端に水酸基を有するポリエステル(c)を製造する第一工程と、該片末端に水酸基を有するポリエステル(c)と、テトラカルボン酸二無水物(b)を反応させる第二工程とからなる方法が挙げられる。
一般式(8)
は4価のテトラカルボン酸化合物残基であり、Xはラクトン残基であり、Xはモノアルコール残基であり、mは2又は3であり、nは、1〜50の整数であり、tは(4−m)である。
<酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の第一工程>
<モノアルコール>
酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の製造に用いることのできるモノアルコールとしては、水酸基を一つ有する化合物であれば、特に限定されない。脂肪族モノアルコールとしては、例えば、好ましくは炭素原子数1〜30(より好ましくは炭素原子数1〜25)の直鎖状若しくは分岐状の置換若しくは非置換の飽和脂肪族モノアルコール、あるいは炭素原子数1〜30(より好ましくは炭素原子数1〜25)の置換若しくは非置換の飽和脂環式モノアルコールを挙げることができる。飽和脂肪族モノアルコール又は飽和脂環式モノアルコールの置換基としては、例えば、カルボキシル基を挙げることができる。
脂肪族モノアルコールを例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコール等を挙げることができる。脂環式モノアルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等を挙げることができる。
脂肪族モノアルコールとしては、分岐脂肪族モノアルコールが好ましく、例えば、2−エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、及び2−ヘキシルデカノール等の炭素原子数8〜20のものが好ましい。
前記モノアルコールとしては、炭素原子数6〜30(より好ましくは炭素原子数6〜25)の置換若しくは非置換の芳香族モノアルコール、例えば、フェノール又はクミルフェノールを用いても良い。また、炭素原子数1〜6の脂肪族基部分を有し、炭素原子数6〜10の芳香族基で置換された飽和脂肪族モノアルコール、例えば、ベンジルアルコールを用いても良い。
更に、前記モノアルコールとして、片末端に水酸基を有するモノアルキレングリコールモノエーテル又は片末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールモノエーテルを用いても良い。これらのモノアルキレングリコールモノエーテル又はポリアルキレングリコールモノエーテルとしては、好ましくは、モノ若しくはポリエチレングリコール又はモノ若しくはポリプロピレングリコールの炭素原子数1〜8のアルキルモノエーテルを挙げることができ、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
更に、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の製造において、モノアルコールとして、エチレン性不飽和二重結合1つ又はそれ以上を有するモノアルコールを用いても良い。前記エチレン性不飽和二重結合の例としては、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を挙げることができ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
前記のエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合1つ、2つ、又は3つ以上を有する不飽和モノアルコール化合物を用いることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が1つのモノアルコールとしては、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜8のヒドロキシアルキルエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
エチレン性不飽和二重結合の数が2つのモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、又はグリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が3つのモノアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5つのモノアルコールとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを挙げることができる。
前記で例示した脂肪族モノアルコール、芳香族モノアルコール、及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールの水酸基を開始基として、アルキレンオキサイドを付加重合して得られるアルコール、すなわち、片末端をエーテル化又はエステル化したポリアルキレングリコールも、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の製造に用いても良い。付加重合に用いるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又は1,2−、1,4−、2,3−若しくは1,3−ブチレンオキサイド、あるいはこれらの2種以上の混合物を用いることができる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。アルキレンオキサイドの付加数は、一分子中、通常1〜300、好ましくは2〜250、特に好ましくは5〜100である。
アルキレンオキサイドの付加は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で行うことができる。こうして得られる付加重合生成物の市販品としては、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、又は日本油脂社製ブレンマーシリーズ等がある。
具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、及び10APB−500B等がある。
酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の製造に用いることができるモノアルコールは、上記例示に限定されることなく、水酸基を一つ有する化合物であればいかなる化合物も用いることができ、又、単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。
上記モノアルコールのうち、例えば4−メチル−2−ペンタノール、イソペンタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、若しくは2−ヘキシルデカノール等の分岐脂肪族モノアルコール、又は片末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールを用いることで、結晶性が低下し、室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
(ラクトン)
前記モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合することによって、片末端に水酸基を有するポリエステル(c)を得ることができる。前記開環重合に用いることができるラクトンは、好ましくは4員環〜10員環、より好ましくは5員環〜7員環のラクトンであり、環構成炭素原子は、置換されているかあるいは非置換であることができる。環構成炭素原子の置換基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基を挙げることができる。又、環内にエチレン結合1つ又はそれ以上を含む不飽和ラクトン、又は芳香族化合物(例えば、ベンゼン)との縮合ラクトンも用いることができる。
好適なラクトンとして、具体的には、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトンを挙げることができ、このうちδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、又はアルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。アルキル置換基としては、例えば、炭素原子数1〜4のアルキル基、特には、メチル基又はエチル基を挙げることができ、これらのアルキル置換基1つ又はそれ以上で置換されていることができる。
前記モノアルコール1モルに対する前記ラクトンの付加モル数は、1〜50モル、好ましくは、3〜20モル、最も好ましくは4〜16モルである。前記ラクトンは、上記例示に限定されることなく用いることができ、又、単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用することで結晶性が低下し、室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
前記モノアルコールと前記ラクトンとの開環重合は、公知方法、例えば、脱水管及びコンデンサを接続した反応器に、前記モノアルコール、前記ラクトン、及び重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。前記モノアルコールとして低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。又、前記モノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
前記開環重合用の重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、及びベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及びテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;
トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;ナトリウムアルコラート、及びカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;トリエチルアミン、及びトリフェニルアミン等の三級アミン類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、及びジオクチル錫オキシド等の有機錫化合物;アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;
テトラ−n−ブチルチタネート、前記ダイマー、テトライソブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、及びジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン等の有機チタネート化合物;並びに、塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。
前記開環重合反応は、無溶剤で実施するか、又は適当な脱水有機溶媒を使用しても良い。前記開環重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま本発明の電極形成用組成物の一部として使用しても良い。
前記開環重合反応は、好ましくは100℃から220℃、より好ましくは110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅く、210℃を超えるとラクトンの付加反応以外の副反応、例えばラクトン付加体のラクトンモノマーへの分解、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用する場合に使用されるラジカル重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましく、これらを単独で用いても、2種以上を併用しても良い。使用量は、好ましくは0.01%〜6%、より好ましくは0.05%〜1.0%である。
<酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の第二工程>
本発明で用いる酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)は、前記の第一工程で得られた片末端に水酸基を有するポリエステル(c)の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物(b)とを反応させる第二工程を経て得ることが好ましい。
本発明で用いる酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)を得るために用いられるテトラカルボン酸二無水物(b)としては、本発明で用いられる酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)を得る際に用いられる、テトラカルボン酸二無水物(b)と同じものを用いることができる。
前記一般式(8)におけるXは、テトラカルボン酸二無水物(b)が、片末端に水酸基を有するポリエステル(c)の水酸基と反応した後の反応残基であり、一般式(3)〜(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物が反応した後の残基である。
前記一般式(8)において、nは好ましくは1〜50の整数、より好ましくは2〜20の整数、最も好ましくは4〜16の整数である。また、前記一般式(8)において、nおよびtの少なくとも一方が2以上である場合、前記一般式(8)に存在する複数のXおよびXは、それぞれが全て同じ基であるか、複数種の基を含んでも良い。
が、ヘキサメチレン基、ペンタメチレン基、又はアルキル置換されたヘキサメチレン基等が挙げられ、Xは、炭素原子数8〜20の脂肪族アルキル基、又は分子量200〜1500の末端エーテル若しくはエステルポリオキシアルキレン(アルキレン部分の炭素原子数が2〜4)基等が挙げられる。
第二工程における反応比率は、片末端に水酸基を有するポリエステル(c)の水酸基のモル数αA3に対する、テトラカルボン酸二無水物(b)の無水環のモル数βA3の比率、すなわちαA3/βA3が、好ましくは0.5<αA3/βA3<1.2、更に好ましくは0.7<αA3/βA3<1.1、最も好ましくはαA3/β3A=1である。αA3/βA3<1で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解して使用しても良い。
第二工程において、触媒を用いても良い。触媒としては、3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及び1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノネン等を挙げることができる。
第二工程ともに無溶剤で行ってもよいし、適当な脱水有機溶媒を使用しても良い。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま本発明の電極形成用組成物の一部として使用しても良い。
反応温度は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではハーフエステル化したものが、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
本発明における酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜25,000、より好ましくは5,000〜15,000である。また酸価は、5〜200mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは、5〜150mgKOH/gであり、特に好ましくは、5〜100mgKOH/gである。
酸性官能基を有する樹脂は、上記記載のCA1〜CA3のみに限定されるものでなく、これら以外のポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの酸性官能基を有する樹脂は2種類以上を併用することもできる。
<その他の市販の酸性官能基を有する樹脂(C4A)>
市販の酸性官能基を有する樹脂(C4A)としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用しても良い。
ビックケミー社製の酸性官能基を有する樹脂としては、 Anti−Terra−U、U100、203、204、205、Disperbyk−101、102、106、107、110、111、140、142、170、171、174、180、2001、BYK−P104、P104S、P105、9076、及び220S等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の酸性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE3000、21000、26000、36000、36600、41000、41090、43000、44000、及び53095等が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の酸性官能基を有する樹脂としては、EFKA4510、4530、5010、5044、5244、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、及び5071等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の酸性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPN411、及びアジスパーPA111等が挙げられる。
ELEMENTIS社製の酸性官能基を有する樹脂としては、NuosperseFX−504、600、605、FA620、2008、FA−196、及びFA−601等が挙げられる。
ライオン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ポリティA−550、及びポリティPS−1900等が挙げられる。
楠本化成社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン2150、KS−860、KS−873SN、1831、1860、PW−36、DA−1200、DA−703−50、DA−7301、DA−325、DA−375、及びDA−234等が挙げられる。
BASFジャパン製の酸性官能基を有する樹脂としては、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、52J、57J、60J、61J、62J、63J、70J、HPD−96J、501J、354J、6610、PDX−6102B、7100、390、711、511、7001、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630、352J、252D、538J7640、7641、631、790、780、及び7610等が挙げられる。
三菱レイヨン製の酸性官能基を有する樹脂としては、ダイヤナールBR−60、64、73、77、79、83、87、88、90、93、102、106、113、及び116等が挙げられる。
<塩基性官能基を有する樹脂>
本発明における塩基性官能基を有する樹脂は、以下に示すCB1〜CB3の3種が挙げられる。分散性の観点からCB1およびCB2が好ましい。
(1)塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1
(2)塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2
(3)その他の市販の塩基性官能基を有する樹脂(CB3
また、好ましい塩基性官能基としては、1〜3級のアミノ基が挙げられる。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1)>
本発明における塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1)を合成する方法としては、例えば、以下の2種の方法によって合成される(CB1−1)と(CB1−2)が挙げられる。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)>
本発明における塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を合成する方法としては、例えば、以下の第一工程、第二工程、及び第三工程を経る方法が挙げられる。
(第一工程):ラジカル重合にて片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)を得る工程。
(第二工程):第一工程で得られた片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させて、ウレタンプレポリマー(e)を得る工程。
(第三工程):第二工程で得られたウレタンプレポリマー(e)と、ポリアミン(f)とを反応させて、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得る工程。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の第一工程>
塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第一工程は、本発明の酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)を合成する際の第一工程と同様であり、一般式(1)に示す工程を経る。また、用いることのできる材料も同様である。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の第二工程>
(ポリイソシアネート(d))
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第二工程で用いるポリイソシアネート(d)とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。分子内に2つのイソシアネート基を有する化合物としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族含有ジイソシアネート、脂肪族含有ジイソシアネート、芳香脂肪族含有ジイソシアネート、及び脂環族含有ジイソシアネート、これらジイソシアネートのニ量体(ウレトジオン)、これらジイソシアネートの三量体(イソシアヌレート)とモノアルコールとの反応物、及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応物(両末端イソシアネートのウレタンプレポリマー)等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。またこれらを単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。
芳香族含有ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
脂肪族含有ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族含有ジイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族含有ジイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
1分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、芳香族系ポリイソシアネ−ト、脂肪族系ポリイソシアネ−ト、芳香族−脂肪族系ポリイソシアネ−ト、及び脂環族系ポリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、及び上記ジイソシアネートのビウレット体等のジイソシアネートの三量体、上記ジイソシアネートのポリオールアダクト体、二種以上の上記ジイソシアネートの共重合体、芳香族系トリイソシアネート、並びに、ポリメリック型の芳香族系イソシアネートオリゴマー等が挙げられる。
具体的には、トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、HDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する場合がある。)アダクト体、TDIのTMPアダクト体、及びTDI/HDIコポリマー等のジイソシアネート変性物;2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、及び4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等の芳香族系トリイソシア
ネート並びに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(別名MDIオリゴマー)等のポリメリック型芳香族系イソシアネートオリゴマー等が挙げられる。
本発明に用いられるポリイソシアネート(d)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)が好ましい。
(ウレタンプレポリマー(e))
本発明における塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための構成要素であるウレタンプレポリマー(e)は、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)の水酸基と、ポリイソシアネート(d)のイソシアネート基と、を反応して得られる。
ウレタンプレポリマー(e)の合成時には、公知の触媒を使用することができ、例えば三級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等を挙げることができる。
三級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)等を挙げることができる。
有機金属系化合物としては錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2−エチルヘキサン酸錫等を挙げることができる。
非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、及び鉄アセチルアセトネート等の鉄系、安息香酸コバルト、及び2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系、ナフテン酸亜鉛、及び2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系、並びに、ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系を挙げることができる。
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、及び2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。上記3級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等の触媒は、単独で使用しても良く、併用しても良い。
ウレタンプレポリマー(e)合成時に用いる有機金属化合物触媒は、後述のポリアミン(f)との更なる反応においても、該反応を著しく促進する。
ウレタンプレポリマー(e)の合成時には公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使
用は反応制御を容易にする役割を果たす。
ウレタンプレポリマー(e)の合成時に使用される溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。
ウレタンプレポリマー(e)の溶解性、溶剤の沸点等、アミンの溶解性の点から特に酢酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、又はこれらの混合溶剤が好ましい。
また、溶剤を使用した場合のウレタンプレポリマー反応系内の濃度は、ウレタンプレポリマーの固形分濃度に換算して、反応制御の観点から、好ましくは30〜95重量%であり、粘度制御の観点から、さらに好ましくは40〜90重量%である。
片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)の水酸基と、ポリイソシアネート(d)のイソシアネート基とを反応させてウレタンプレポリマー(e)をつくるウレタン化反応は、種々の方法が可能である。
(1)全量仕込みで反応する方法
(2)片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)及び必要に応じて、溶剤をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(d)を滴下した後、必要に応じて触媒を添加する方法
に大別されるが、反応を精密に制御する場合は(2)が好ましい。
ウレタンプレポリマー(e)を得る反応の温度は120℃以下が好ましい。更に好ましくは50〜110℃である。110℃より高くなると反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得られなくなる。ウレタン化反応は、触媒の存在下、50〜110℃で1〜20時間行うのが好ましい。
片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)とポリイソシアネート(d)の配合比は、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)のモル比率を整数αB1とした時、ポリイソシアネート(d)のモル比率βB1を、βB1=αB1+1とすると、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(e)が得られる。αB1の最小が1なので、配合モル比率βB1/αB1は2以下となる。
ポリイソシアネート(d)をさらに増やした場合、ウレタンプレポリマー(e)と過剰のポリイソシアネート(d)の混合物中のイソシアネート基すべてを、ポリアミン(f)と反応するように設計すれば過剰のポリイソシアネート(d)を本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の中に取り込むことが可能である。本発明のウレタンプレポリマー(e)を合成する場合、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)を残さないために、過剰のポリイソシアネートを配合することが好ましい。
従って、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a)に対するポリイソシアネート(d)の配合モル比は、ウレタンプレポリマー(e)の生産性の観点から、1.01〜3.00が好ましく、最終合成物である塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の吸着部位と溶剤親和性部位のバランスの観点から、1.30〜2.30がより好ましく、1.50〜2.00が最も好ましい。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の第三工程>
(ポリアミン(f))
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第三工程で用いるポリアミン(f)としては、少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、ウレタンプレポリマー(e)のイソシアネート基と反応しウレア結合を生成するために用いられる。このようなポリアミン(f)として、各種ジアミンが挙げられる。
二つの一級アミノ基有するジアミンとしては、公知のものを使用することができ、具体的には、
エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、
フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
又、二つの二級アミノ基を有するジアミンとしては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミンとしては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルア
ミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
本発明のポリアミン(f)は少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、ポリアミン(f)が、両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物であっても良い。このような化合物としては、以下のものが挙げることができ、具体的には、
メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N‘−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N’−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
2つの1級アミノ基と1つの3級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
また、2つの1級アミノ基と1つの2級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、最終合成物である塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の吸着部位と溶剤親和性部位のバランスの観点から、好ましい。
さらに、本発明のポリアミン(f)としては、2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体も使用しても良い。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体や2−オキサゾリドンの開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、前述したエチレン性不飽和単量体(m)で例示したものが挙げられる。
さらに、本発明で用いるポリアミン(f)に対して、さらにモノアミンを併用しても良い。モノアミンとしては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1つ有するモノアミン化合物であり、モノアミンは、ポリイソシアネート(d)とポリアミン(f)の反応において高分子量化し過ぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミンは、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
モノアミンとしては、従来公知のものが使用でき、具体的には、アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
中でも、剛直性のない脂肪族アミンで第二級アミノ基のみを有するモノアミン化合物は、分散性も良好であり好ましい。
第二級アミノ基のみを有する脂肪族モノアミン化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、及び3−ピロリジノール等が挙げられる。
また、三級アミノ基は、イソシアネート基と反応する活性水素を有していないため、一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンは、モノアミンとして使用することができる。
一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンとしては、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、及びN,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミン;並びに、
N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン等の二級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミンを挙げることができる。
これらのモノアミン化合物は、一種類又は二種類以上混合して用いてもよい。なお、一級アミノ基とイソシアネート基が反応した後のウレア結合の活性水素は、反応性が低く、本発明の分散剤の重合条件では、それ以上イソシアネート基と反応し、分子量が大きくなることはない。
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第三工程において、ウレタンプレポリマー(e)と、ポリアミン(f)によるウレア反応は、以下2つの方法に大別される。
(1)ウレタンプレポリマー(e)溶液をフラスコに仕込み、ポリアミン(f)を滴下する方法、
(2)ポリアミン(f)、及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、ウレタンプレポリマー(e)溶液を滴下する方法。
安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、操作が容易な(1)の方法が好ましい。本発明のウレア反応の温度は、100℃以下が好ましい。更に好ましくは70℃以下である。70℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。100℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得ることは難しい。
また、ウレタンプレポリマー(e)、及びポリアミン(f)、さらに必要に応じて添加されるモノアミンとの配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。
反応の終点は、滴定に因るイソシアネート%測定、IR測定によるイソシアネートピークの消失により判断する。
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。また、得られた重合体のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜70mgKOH/g、さらに好ましくは10〜50mgKOH/gである。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)>
一方、本発明における塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を合成する方法としては、以下の第一工程、第二工程、第三工程、及び第四工程を経る方法が挙げられる。
(第一工程):ラジカル重合にて片末端に1つまたは2つの水酸基を有するビニル重合体(a)を得る工程。
(第二工程):第一工程で得られた片末端に1つまたは2つの水酸基を有するビニル重合体(a)を、水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(g)等と反応させ、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)を得る工程。
(第三工程):第二工程で得られた片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)とポリアミン(f)とを反応させ、アミノ基を有するビニル重合体(h)を得る工程。
(第四工程):第三工程で得られたアミノ基を有するビニル重合体(h)とポリイソシアネート(d)とを反応させて、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得る工程。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)の第一工程>
塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第一工程は、分子内に1つ又は2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(m)をラジカル重合することで得ることができる。分子内に1つ又は2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、S原子を介してビニル重合体(a)が合成される。その分子量は、エチレン性不飽和単量体(m)に対する、分子内に1つ又は2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)の使用量によって調整することが容易であり、その結果、溶剤への親和性も好適に調整することができる。
分子内に1つ又は2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)として例えば、1−メルカプトエタノール、及び2−メルカプトエタノール等の分子内に1つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物;並びに、前述した、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)を挙げることができる。本発明では、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)であることが好ましく、さらに好ましくは3−メルカプト−1,2−プロパンジオールである。
塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第一工程で用いるエチレン性不飽和単量体(m)は、前述した、酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)を合成する際の第一工程で用いるエチレン性不飽和単量体(m)と同様のものを用いることができる。またその他にも、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類を用いても良い。
1つ又は2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(s)は、エチレン性不飽和単量体(m)100重量部に対して、0.8〜30重量部を用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましい。より好ましくは1.5〜15重量部、さらに好ましくは2〜9重量部、特に好ましくは5〜9重量部である。
溶液重合の場合に用いることのできる溶媒としては、酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の合成において挙げたものと同様のものを用いることができる。
反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。40℃未満では、十分に重合が進行せず、150℃を超えると、高分子量化が進む等、分子量のコントロールが困難になる。重合の際に重合開始剤を使用しても良い、用いることのできる重合開始剤としては、前述した酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)の第一工程にて用いられるものと同様のものが挙げられる。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)の第二工程>
(水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(g))
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第二工程で用いられる、水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(g)としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。さらに、第二工程において、水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(g)として、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる場合には、前述した、ウレタンプレポリマー(e)の合成時において用いられる公知の触媒を使用することができる。
また、水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(g)を重合する際には、ラジカル重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で、(メタ)アクリロイル基を有する化合物100重量%に対して、0.01重量%〜6重量%、好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%の範囲で用いる。
また、片末端に1つまたは2つの水酸基を有するビニル重合体(a)に対して、二塩基酸無水物基を1つ有する化合物を反応させ、片末端にカルボキシル基を有するビニル重合体を得、次いで、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシが開環して得られた水酸基に対して、水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(g)を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)は片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有する。
二塩基酸無水物基を1つ有する化合物としては、二塩基酸無水物基を1つ有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキセン1−2−ジカルボン酸無水物、ジシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、アントラセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及びアントラセン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。又、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、複素環、芳香環、及びハロゲン等の置換基を有する前記ニ塩基酸無水物も挙げられる。
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,2−グリシドキシエチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート、及び4,5−エポキシペンチルアクリレート等が挙げられる。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)の第三工程>
(アミノ基を有するビニル重合体(h))
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第三工程は、第二工程で得られた片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の(メタ)アクリロイル基とポリアミン(f)のアミノ基とを反応させ、アミノ基を有するビニル重合体(h)を得る。これはアミノ基が(メタ)アクリロイル基に対して付加する反応であり、一般にMichael付加反応と呼ばれている。片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)及びポリアミン(f)の配合を調整することにより、イソシアネート基と反応しうるアミノ基を有するビニル重合体(h)が得られる。
塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第三工程で用いられる、ポリアミン(f)は、分子内に1つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物と、分子内に2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物がある。1つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物としては、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第三工程で述べたモノアミンで例示したものが挙げられる。
2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物としては、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第三工程で述べた、ポリアミン(f)で例示したものが挙げられる。
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第三工程における反応の例としては、下記一般式(9)〜(12)が挙げられる。
例えば、下記一般式(9)のように、片末端に1つの(メタ)アクリロイル基を有する重合体(a)の分子1個に対し、ポリアミン(f)の例としてモノアミン分子1個を反応させた場合、一級及び/または二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の分子1個が得られる。
一般式(9)
は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Xはモノアミンの内、一級及び/または二級アミノ基を除いた部分であり、Rは水素原子、またはメチル基、Rは水素原子、またはアルキル基である。
例えば、下記一般式(10)のように、片末端に1つの(メタ)アクリロイル基を有する重合体(a)の分子1個に対し、一級アミノ基を2つ有するポリアミン(f)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基1つと二級アミノ基1つとを有するビニル重合体(h)の分子1個が得られる。
一般式(10)
は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Xはポリアミン(f)の内、2つの一級アミノ基を除いた部分であり、Rは水素原子、またはメチル基である。
例えば、下記一般式(11)のように、片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有する重合体(a)の分子1個に対し、一級アミノ基1つと二級アミノ基1つを有するポリアミン(f)の分子2個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基4つを有するビニル重合体(h)の分子1個が得られる。
一般式(11)
は、片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Xは、ポリアミン(f)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、Rは水素原子、又はメチル基であり、Rは、アルキル基を表す。
例えば、下記一般式(12)のように、片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の分子n個に対し、一級アミノ基2つまたは二級アミノ基2つを有するポリアミン(f)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基2つと二級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)の分子1個、または二級アミノ基2つと三級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)の分子1個が得られる。
一般式(12)
は、片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Xは、ポリアミン(f)の内、一級アミノ基または二級アミノ基を除いた部分であり、Rは水素原子、又はメチル基であり、Rは水素原子、またはアルキル基であり、nは正の整数である。
理論上としたのは、上記一般式(9)〜(12)は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もある。そのため、一部、予想とは異なる構造のアミノ基を有するビニル重合体(h)が得られる場合もあるが、上記付加反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造のアミノ基を有するビニル重合体(h)が得られ、その後の反応や、分散剤としての機能に問題はない。
片末端に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)と、ポリアミン(f)と、からアミノ基を有するビニル重合体(h)を得るためのMichael付加反応は、以下2つの方法に大別される。
(1)全量仕込みで反応する方法、
(2)ポリアミン(f)及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)溶液を滴下する方法。
安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、反応制御(分子設計制御)が容易な(2)の方法が好ましい。
本発明のMichael付加反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難である。
また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)と、ポリアミン(f)の配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。反応の終点は、滴定に因るアミン%測定により判断する。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)の第四工程>
塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第四工程は、アミノ基を有するビニル重合体(h)の一級又は二級のアミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(d)のイソシアネート基を反応して得られる。アミノ基を有するビニル重合体(h)の一級又は二級のアミノ基は、反応させるポリイソシアネート(d)の量を調整することにより、一部又は全部がウレア結合を形成し、残りは分散剤中にアミノ基として存在する。
また、アミノ基を有するビニル重合体(h)が一級又は二級のアミノ基以外にも三級アミノ基を有している場合は、該三級アミノ基はイソシアネート基と反応せずそのまま分散剤中に残る。
塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第四工程において、用いられるポリイソシアネート(d)としては、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−1)を得るための第二工程で用いるポリイソシアネート(d)と同様のものを用いることができる。
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第四工程における反応の例としては、下記一般式(13)〜(15)が挙げられる。
例えば、下記一般式(13)のように、一級及び/または二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の分子2個に対し、ポリイソシアネート(d)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級及び/または二級アミノ基が、イソシアネート基と反応して、ウレア結合を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)が得られる。
一般式(13)
は、一級及び/または二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の前駆体である、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分である。Xは一級及び/または二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の前駆体である、モノアミンの内、一級及び/または二級アミノ基を除いた部分である。Xはポリイソシアネート(d)の内、イソシアネート基を除いた部分である。Rは水素原子、またはメチル基である。
例えば、下記一般式(14)のように、一級アミノ基1つと二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の分子2個に対し、ポリイソシアネート(d2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、二級アミノ基2つとウレア結合2つとを有するポリビニル系樹脂(CB1−2)が得られる。
一般式(14)
は、一級アミノ基1つと二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の前駆体である、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分である。Xは一級アミノ基1つと二級アミノ基1つを有するビニル重合体(h)の前駆体である、一級アミノ基を2つ有するポリアミン(f)の内、一級アミノ基を除いた部分である。Xはポリイソシアネート(d)の内、イソシアネート基を除いた部分である。Rは水素原子、またはメチル基である。
例えば、下記一般式(15)のように、一級アミノ基2つと二級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)または、二級アミノ基2つと三級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)のいずれかの分子n+1個に対し、ポリイソシアネート(d)の分子n個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基または二級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、1級アミノ基2つと二級アミノ基2n+2n個とウレア結合2n個を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)または、二級アミノ基2つと三級アミノ基2n+2n個とウレア結合2n個を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)が得られる。
一般式(15)
は一級アミノ基2つと二級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)または、二級アミノ基2つと三級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)いずれかの前駆体である、片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分である。Xは一級アミノ基2つと二級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)または、二級アミノ基2つと三級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)いずれかの前駆体である、一級アミノ基2つまたは二級アミノ基2つを有するポリアミン(f)の内、アミノ基を除いた部分である。Xはポリイソシアネート(d)の内、イソシアネート基を除いた部分である。Xは一級アミノ基2つと二級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)または、二級アミノ基2つと三級アミノ基2n個とを有するビニル重合体(h)いずれかのうち、アミノ基を有する部位を除いた部分である。Rは水素原子またはアルキル基である。nおよびnはそれぞれ独立に正の整数である。
理論上としたのは、上記3例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もある。そのため、一部、予想とは異なる構造のポリビニル系樹脂(CB1−2)が得られる場合もあるが、上記反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)が得られ、分散剤としての機能に問題はない。
アミノ基を有するビニル重合体(h)とポリイソシアネート(d)との反応は以下の2つの方法に大別される。
(1)全量仕込みで反応する場合。
(2)アミノ基を有するビニル重合体(h)溶液をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(d)を滴下する方法。
反応を精密にする場合は(2)が好ましい。
本発明のウレア化反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する分散剤を得ることは難しい。
また、アミノ基を有するビニル重合体(h)に対するポリイソシアネート(d)の配合当量比は、アミノ基を有するビニル重合体(h)のアミノ基(一級及び二級アミノ基)当量をγB1、ポリイソシアネート(d)のイソシアネート基当量をδB1とすると、δB1/γB1は0.25〜1.00で、イソシアネート基の全てをアミノ基と反応させるとことが好ましく、0.35〜0.9がより好ましく、0.5〜0.8が最も好ましい。
前記配合当量比が0.25より小さいと、最終製品であるポリビニル系樹脂(CB1−2)中のウレア結合の量が少なくなり、分散性が悪くなる場合がある。又、配合当量比が1.00より大きいと、反応活性が高いイソシアネート基が残り、水等と反応し、高分子量化して粘度が高くなることがあり、好ましくない。又、前記配合当量が、1.00であると、例えば、2つのアミノ基を有するビニル重合体(h)と2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート(d)との反応では、理論上、分子量が無限大となるため、分子量制御が困難である場合がある。
更に、三級アミノ基、及びウレア結合に加えて一級及び/又は二級アミノ基が、分散剤骨格中に存在すると、吸着性と溶剤親和性部位とのバランスが良くなり、好ましい。このように、アミノ基を有するビニル重合体(h)とポリイソシアネート(d)との反応比を変えることによって、ポリビニル系樹脂(CB1−2)の分子量やアミノ基(一級、二級、及び/又は三級)並びにウレア結合の量を調整することができる。
本発明の塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。また、得られた重合体のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜70mgKOH/g、さらに好ましくは10〜50mgKOH/gである。
<塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)>
本発明における塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を合成する方法としては、例えば、以下の第一工程、第二工程、及び第三工程を経る方法が挙げられる。
(第一工程):(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールを開始剤としてラクトン及び/またはラクチドを開環重合して、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル重合体(c)を得る工程。
(第二工程):第一工程で得られた片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル重合体(c)とポリアミン(f)とを反応させ、アミノ基を有するエステル重合体(h)を得る工程。
(第三工程):第三工程で得られたアミノ基を有するエステル重合体(h)とポリイソシアネート(d)とを反応させて、塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得る工程。
<塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)の第一工程>
((メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール)
本発明の塩基性官能基を有するポリエステル樹脂を得るための第一工程において、開始剤として用いられる、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる、水酸基の反応性の観点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
(ラクトン及び/またはラクチド)
一方、ラクトン及び/またはラクチドとしては、特に限定されるものではない。ラクトンとしては、例えば、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)を得るために用いられるラクトンと同様のものを用いることができる。
また、ラクチドとしては、下記一般式(16)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
一般式(16)
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9のアルキル基である。
特に好ましいラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。
前記ラクトン及びラクチドは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。ラクトンとラクチドとでは、溶媒親和性の観点から、ラクトンを用いるのが好ましい。
開始剤である(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール1モルに対するラクトン及び/またはラクチドの重合モル数は、3〜60モルの範囲が好ましく、更には10〜40モルが好ましく、最も好ましくは15〜30モルである。
前記開環重合における重合触媒は、公知のものを使用することができる。例えば、酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)を得るために用いられる重合触媒と同様のものを用いることができる。
ラクトン及び/又はラクチドの開環重合温度は、100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅い場合があり、220℃を超えるとラクトン及び/又はラクチドの付加反応以外の副反応、例えば、ラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい場合がある。
(ラジカル重合禁止剤)
(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールを開始剤として重合する際には、ラジカル重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で、(メタ)アクリロイル基を有するアルコール100重量%に対して、0.01重量%〜6重量%、好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%の範囲で用いる。
本発明において、塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を合成する方法の例として挙げた第一工程は、例えば、以下3つのような別の工程でも良い。
(1)(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端に水酸基を有するエステル重合体に、水酸基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させる方法。
(2)(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端に水酸基を有するエステル重合体に、二塩基酸無水物基を一つ有する化合物を反応させ、片末端にカルボキシル基を有するエステル重合体を得、次いで、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシが開環して得られた水酸基に対して、水酸基と反応し得る基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させる方法。
(3)(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸を開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にカルボキシル基を有するエステル重合体を得、次いで、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られた水酸基に対して、水酸基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させる方法。
(2)及び(3)の場合、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル重合体(c)は片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有する。
((メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコール)
(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールとしては、水酸基を一個有する化合物であればいかなる化合物を用いても良い。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、及びパラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環含有モノアルコール;並びに、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
水酸基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
二塩基酸無水物基を一つ有する化合物としては、特に制限はなく、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第二工程で例示したものと同様のものを用いることができる。
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,2−グリシドキシエチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート、及び4,5−エポキシペンチルアクリレート等が挙げられる。
((メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸)
(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸は、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸等が挙げられる。
<塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)の第二工程>
(アミノ基を有するエステル重合体(h))
本発明の塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第二工程は、第一工程で得られた片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル重合体(c)の(メタ)アクリロイル基とポリアミン(f)のアミノ基とを反応させ、アミノ基を有するエステル重合体(h)を得る。これはアミノ基が(メタ)アクリロイル基に対して付加する反応であり、一般にMichael付加反応と呼ばれている。片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル重合体(c)及びポリアミン(f)の配合を調整することにより、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を有するエステル重合体(h)が得られる。
塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第二工程で用いられる、ポリアミン(f)は、分子内に1つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第三工程で用いられるポリアミン(f)と同様のものを用いることができる。
本発明の塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第二工程におけるMichael付加反応は、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第三工程と同様の反応である。従って、例えば、上記一般式(9)〜(12)のような反応が挙げられる。
上記の一般式(9)〜(12)において、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(a)を、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル重合体(c)に、ポリアミン(f)をポリアミン(f)に、それぞれ変更すれば、アミノ基を有するビニル重合体(h)の代わりに、アミノ基を有するエステル重合体(h)が得られる。
塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第二工程における反応の方法、反応条件、及び終点判断についても、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第三工程と同様に行うことができる。
<塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)の第三工程>
塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第三工程は、第二工程で得られたアミノ基を有するエステル重合体(h)の一級又は二級のアミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(d)のイソシアネート基を反応して得られる。アミノ基を有するエステル重合体(h)の一級又は二級のアミノ基は、反応させるポリイソシアネート(d)の量を調整することにより、一部又は全部がウレア結合を形成し、残りは分散剤中にアミノ基として存在する。
塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第三工程で用いられる、ポリイソシアネート(d)は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第四工程で用いられるポリイソシアネート(d)と同様のものを用いることができる。
本発明の塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第三工程におけるアミノ基とイソシアネート基との反応は、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第四工程と同様の反応である。従って、例えば、上記一般式(13)〜(15)のような反応が挙げられる。
上記の一般式(13)〜(15)において、アミノ基を有するビニル重合体(h)を、アミノ基を有するエステル重合体(h)に、ポリイソシアネート(d)をポリイソシアネート(d)に、それぞれ変更すれば、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)の代わりに、塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)が得られる。
塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)を得るための第三工程における反応の方法、反応条件、及びアミノ基を有するエステル重合体(h)に対するポリイソシアネート(d)の配合比についても、塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1−2)を得るための第四工程と同様に行うことができる。
更に、塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。また、得られた重合体のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜70mgKOH/g、さらに好ましくは10〜50mgKOH/gである。
塩基性官能基を有する樹脂は、上記記載のCB1、CB2のみに限定されるものでなく、これら以外のポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの塩基性官能基を有する樹脂は2種類以上を併用することもできる。
<その他の市販の塩基性官能基を有する樹脂(CB3)>
市販の塩基性官能基を有する樹脂(CB3)としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用しても良い。
ビックケミー社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、Disperbyk−108、109、112、116、130、161、162、163、164、166、167、168、180、182、183、184、185、2000、2001、2050、2070、2150、及びBYK−9077等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、20000、24000SC、24000GR、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、37500、38500、及び39000等が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、EFKA4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4500、4550、4560、4570、4580、及び4800等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPB711、アジスパーPB821、及びアジスパーPB822等が挙げられる。
楠本化成社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン1850、1860、及びDA−1401等が挙げられる。
共栄社化学製の塩基性官能基を有する樹脂としては、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17等が挙げられる。
<非イオン性樹脂>
本発明における非イオン性樹脂は、以下に示すCC1〜CC3の3種が挙げられる。分散性の観点からCC2およびCC3が好ましい。
(1)ポリビニルアルコール樹脂(CC1
(2)ポリビニルアセタール樹脂(CC2
(3)ポリビニルアミド系樹脂(CC3
<ポリビニルアルコール樹脂(CC1)>
本発明に用いるポリビニルアルコール樹脂(CC1)の製法については特に制限はなく、公知の方法で合成されたポリビニルアルコール樹脂および市販のものも使用することができる。
本発明において使用されるポリビニルアルコール樹脂(CC1)の製造方法としては、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化する方法が挙げられる。ビニルエステルの例としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
または、t−ブチルビニルエーテルやトリメチルシリルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等のようなビニルエーテルを用いて、これらの単独重合体あるいは共重合体の分解によってもポリビニルアルコールを得ることができる。
また、ポリビニルエステルやポリビニルエーテルを重合する際に、その他のモノマーを共重合させた変性ポリビニルアルコール樹脂であっても良い。その他のモノマーとして挙げられるのは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、またはイタコン酸等の不飽和カルボン酸類およびこれらのエステルである不飽和カルボン酸エステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;等を挙げることができる。
変性ポリビニルアルコール樹脂においてその他のモノマーによる変性量は、変性ポリビニルアルコール樹脂を構成する全モノマーのうち、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル% 以下である。
ポリビニルエステルをけん化してポリビニルアルコール樹脂(CC1)を得る際に用いられるけん化触媒としては、アルカリ触媒および酸触媒が挙げられ、従来から公知のものを使用することができる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、ナトリウムメチラートなどが挙げられる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、P−トルエンスルホン酸などが挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂(CC1)のけん化度としては、70モル%以上が好ましく、より好ましくは、80モル%以上である。
市販のポリビニルアルコール樹脂(CC1)としては、特に制限されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用しても良い。
日本合成化学社製のポリビニルアルコール樹脂としては、ゴーセノールNH−26、NH−18、NM−14、AH−17、A−300、GM−14L、GL−05、及びKL−05等が挙げられる。
電気化学工業社製のポリビニルアルコール樹脂としては、デンカポバールK−05、K−17C、K−24E、H−12、B−05、及びB−17等が挙げられる。
クラレ社製のポリビニルアルコール樹脂としては、POVAL PVA−103、105、117、205、217、405及び420等が挙げられる。
<ポリビニルアセタール樹脂(CC2)>
本発明に用いるポリビニルアセタール樹脂(CC2)の製法については特に制限はなく、公知の方法で合成されたポリビニルアセタール樹脂および市販のものも使用することができる。
本発明において使用されるポリビニルアセタール樹脂(CC2)の製造方法としては、例えば、前記ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒド類を反応させてアセタール化する方法が挙げられる。上記アセタール化に用いるアルデヒド類としては、例えば、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド類;
ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の芳香族アルデヒド類が挙げられる。これ等のアルデヒドは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。特に、アセタール化反応に優れるn−ブチルアルデヒドが好ましい。
アセタール化に用いられる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれを用いても良い、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸が好ましい。
本発明の方法によって得られるポリビニルアセタール樹脂(CC2)のアセタール化度は、好ましくは40〜80モル%、さらに好ましくは50〜80モル%である。また、ビニルエステル単位の残存量は0.1〜20モル%、ビニルアルコール単位の残存量は10 〜45モル%がそれぞれ好ましい。なお、上記したアセタール化度、ビニルエステル単位の残存、ビニルアルコール単位の残存量は、全ビニルモノマー単位に対する割合である。
市販のポリビニルアセタール樹脂(CC2)としては、特に制限されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用しても良い。
積水化学工業社製のポリビニルアセタール樹脂としては、エスレックBL−1、BL−10、BM−1、BM−S、BH−3、BH−S、BX−L、BX−1、KS−10、及びKS−5等が挙げられる。
電気化学工業社製のポリビニルアセタール樹脂としては、デンカブチラール#3000−1、#3000−K、及び#4000−2等が挙げられる。
クラレ社製のポリビニルアセタール樹脂としては、MOWITAL B16H、B20H、B30T、B30H、B30HH、B45M、及びB60T等が挙げられる。
<ポリビニルアミド系樹脂(CC3)>
本発明における、ポリビニルアミド系樹脂(CC3)としては、特に限定はされないが、例えば、ポリビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンのグラフト共重合体、及びビニルピロリドンとエチレン性不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。
ビニルピロリドンと共重合できるエチレン性不飽和単量体としては、α−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリル酸、硫酸ビニルナトリウム、塩化ビニル、ビニルピロリジン、トリメチルシロキシビニルシラン、プロピオン酸ビニル、ビニルカプロラクタム、メチルビニルケトン等が挙げられる。
また、前記ビニルアミド系樹脂を、有機酸、又は無機酸で処理した酸変性物等も用いることができる。
前記ビニルアミド系樹脂の中でも、特に、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−1−ブテン共重合体、若しくはビニルピロリドン−スチレン共重合体等のほぼ中性のビニルアミド樹脂、または、有機酸、若しくは無機酸で処理したポリビニルピロリドンの酸変性物が好ましい。
市販のポリビニルピロリドン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用しても良い。
BASF社製のポリビニルピロリドンとしては、Luvitec K−17、K−30及びK−90等が挙げられる。
ISPジャパン社製のポリビニルピロリドンとしては、K−15、K−30、及びK−120等が挙げられる。
日本触媒社製のポリビニルピロリドンとしては、K−30、K−85及びK−90等が挙げられる。
<シランカップリング剤(D)>
次に、本発明におけるシランカップリング剤(D)について説明する。本発明で用いるシランカップリング剤(D)は、下記一般式(17)で表される。
一般式(17)
は、−CH、−C、−(CHCH、−CH(CH)CH、−(CHCH、−CHCH(CH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−OCH、−OC、−OC、−(CHCF、−CH=CH、−CHCH=CH、−C、−C−CH=CH、−CCOOC(CH)=CH、−CCOOCH=CH、−CNH、−CNHCNH、−CNHC、−CN=C(CH)C、−CNHCNHCH−C−CH=CH、−CSH、−CNCO、−CNHCONH、−CNHCOOC、−CNHCHCH=CH、−CNHCNHCHCH=CH、−CNHCNHCHCOOH、−CNHCOCH=CHCOOH、−CS(CHCOOH、および下記一般式(18)〜(22)のいずれかで示される置換基を表す。
一般式(18)
一般式(19)
一般式(20)
一般式(21)
一般式(22)
一般式(17)〜(20)におけるX〜X20はそれぞれ独立に、−Cl、−CH、−OCH、−OC、−OC、または−OCOCHを表す。
これらの中でも、本発明においては、反応性官能基を有するシランカップリングが好ましく、反応性官能基としてはアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、ウレイド基、カルボキシル基などが挙げられるが、好ましくはアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、一般式(18)〜(20)で表される官能基などである。
具体的な構造として挙げられるのは、一般式(17)におけるYが−OCH、−OC、−CH=CH、−CHCH=CH、−C−CH=CH、−CCOOC(CH)=CH、−CCOOCH=CH、−CNH、−CNHCNH、−CNHC、−CNHCNHCH−C−CH=CH、−CSH、−CNCO、−CNHCONH、−CNHCHCH=CH、−CNHCNHCHCH=CH、−CNHCNHCHCOOH、−CNHCOCH=CHCOOH、−CS(CHCOOH、および一般式(18)〜(22)である。
さらに、一般式(17)〜(20)におけるX〜X20がそれぞれ独立に−CH、−OCH、および−OCのいずれかである場合がより好ましい。
次に、本発明の用いる活物質(A)および導電助剤(B)について説明する。前述の通り、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材層を形成する合材インキ、および下地層を形成する下地層形成用組成物、いずれの用途でも使用できる。
<活物質(A)>
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiFe、LiFe、LiWO、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
これら活物質(A)の大きさは、0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。そして、合材インキ中の活物質(A)の分散粒径は、0.5〜20μmであることが好ましい。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
<導電助剤(B)>
次に、導電助剤である炭素材料(B)について説明する。
本発明における導電助剤である炭素材料(B)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m/g以上、1500m/g以下、好ましくは50m/g以上、1500m/g以下、更に好ましくは100m/g以上、1500m/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
導電助剤である炭素材料(B)の合材インキ中の分散粒径は、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。又、導電助剤としての炭素材料の分散粒径が2μmを超える組成物を用いた場合には、合材塗膜の材料分布のバラつき、電極の抵抗分布のバラつき等の不具合が生じる場合がある。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
本発明の電池用組成物に用いても良い液状媒体(以降、本明細書中では溶剤または溶媒と称する場合がある)としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類が挙げられる。
これらの中でも、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。比誘電率は、溶剤の極性の強さを表す指標のひとつであり、浅原ほか編「溶剤ハンドブック」((株)講談社サイエンティフィク、1990年)等に記載されている。
例えば、メチルアルコール(比誘電率:33.1)、エチルアルコール(23.8)、2−プロパノール(18.3)、1−ブタノール(17.1)、1,2−エタンジオール(38.66)、1,2−プロパンジオール(32.0)、1,3−プロパンジオール(35.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、ジエチレングリコール(31.69)、2−メトキシエタノール(16.93)、2−エトキシエタノール(29.6)、2−アミノエタノール(37.7)、アセトン(20.7)、メチルエチルケトン(18.51)、ホルムアミド(111.0)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.71)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)、N−メチルピロリドン(32.0)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(29.6)、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)、アセトニトリル(37.5)、プロピオニトリル(29.7)等が挙げられるが、これらに限定されない。
とりわけ、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、更に好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用することが、活物質や導電助剤の分散性に優れており好ましい。
また、溶剤の選択は、活物質との反応性、及びバインダー樹脂に対する溶解性等を鑑みつつ行う。分散性が高く、活物質との反応性が低く、バインダー樹脂の溶解性の高い溶剤を選択することが好ましい。
更に、環境負荷軽減や経済的有利性等から、電極製造工程において排出される溶剤を回収・再利用する場合は、混合溶剤ではなく、単一溶剤での使用が好ましい。
これら、比誘電率、活物質との反応性、及びバインダー樹脂の溶解性を満たし、単一使用での汎用性を有する溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系非プロトン性の非水系溶剤の使用が好ましい。
<合材インキ>
本発明の二次電池電極形成用組成物の好適な態様の1つである活物質を必須とする合材インキについて説明する。合材インキは、正極合材インキまたは負極合材インキがあり、既に説明したように、それぞれ下記(1)〜(4)に示すような種々の態様がある。
(1)活物質(A)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)と液状媒体とを含有する合材インキ。
(2)前記(1)に導電助剤(B)をさらに含有する合材インキ。
(3)前記(1)にバインダーをさらに含有する合材インキ。
(4)前記(1)に導電助剤(B)とバインダーとをさらに含有する合材インキ。
本発明の合材インキは、バインダーをさらに含有することもできる。本発明の中のバインダーとは、活物質や導電助剤などといった粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
本発明の電極形成用組成物に用いられるバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。これらバインダーを単独で用いても、2種以上併用してもよい。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
また、本発明の合材インキにおいては、合材インキの粘度を制御する目的や、合材層の皮膜形成を補助する目的でこれらのバインダーを単独使用または2種以上併用することもできる。
さらに、合材インキには、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
塗工方法によるが、固形分30〜90重量%の範囲で、合材インキの粘度は、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
塗工可能な粘度範囲内において、活物質(A)はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質(A)の割合は、80重量%以上、99重量%以下が好ましい。
本発明の合材インキが導電助剤(B)を含む場合、合材インキ固形分に占める導電助剤(B)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
また、本発明において、合材インキ中に占める樹脂型分散剤(C)の割合は、活物質(A)と導電助剤(B)の重量の合計に対して0.1〜15重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
また、本発明において、合材インキ中に占めるシランカップリング剤(D)の割合は、活物質(A)と導電助剤(B)の重量の合計に対して0.001〜5.0重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.003〜1.0重量%、さらに好ましくは0.005〜0.10重量%である。
また、本発明の合材インキがバインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜8重量%である。
このような合材インキは、種々の方法で得ることができる。本発明の合材インキを作製する手法について、前述の(4)である、活物質(A)、導電助剤(B)、樹脂型分散剤(C)、シランカップリング剤(D)および液状媒体を含有する合材インキ、を例として説明する。例えば、
(4−1) 活物質(A)と樹脂型分散剤(C)と液状媒体とを含有する活物質分散体を得、該分散体に導電助剤(B)とシランカップリング剤(D)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。
導電助剤(B)とシランカップリング剤(D)とバインダーは、いずれの順で添加してもよい。また、予め2つ以上の材料を混合してから、前記の活物質分散体に添加してもよい。
(4−2) 導電助剤(B)と樹脂型分散剤(C)と液状媒体と含有する導電助剤分散体を得、該分散体に活物質(A)とシランカップリング剤(D)バインダーとを加え、合材インキを得ることができる。
活物質(A)とシランカップリング剤(D)とバインダーは、いずれの順で添加してもよい。また、予め2つ以上の材料を混合してから、前記の導電助剤分散体に添加してもよい。
(4−3) 活物質(A)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)とバインダーと液状媒体と含有する活物質分散体を得、該分散体に導電助剤(B)を加え、合材インキを得ることができる。
(4−4) 導電助剤(B)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)とバインダーと液状媒体と含有する導電助剤分散体を得、該分散体に活物質(A)を加え、合材インキを得ることができる。
(4−5) 活物質(A)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)と液状媒体とを含有する活物質分散体を得、一方で導電助剤(B)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)と液状媒体とを含有する導電助剤分散体を得、該活物質分散体と該導電助剤分散体とバインダーとを混合して合材インキを得ることができる。
(4−6) 活物質(A)と導電助剤(B)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)とバインダーと液状媒体をほとんど同時に混合し、合材インキを得ることができる。
(分散機・混合機)
合材インキを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
<電極下地層形成用組成物>
前述の通り、本発明の二次電池電極形成用組成物は、電極下地層形成用組成物(以降、本明細書では電極下地層インキと称する場合がある)としても使用できる。
下地層形成用組成物は、導電助剤(B)と樹脂型分散剤(C)とシランカップリング剤(D)と液状媒体とを含有する。さらにバインダーを含有することもできる。
本発明の電極下地層インキにおいて、電極下地層インキ固形分に占める導電助剤(B)の割合は、5〜95重量%であることが好ましい。より好ましくは10〜90重量%である。
また、本発明において、電極下地層インキ中に占める樹脂型分散剤(C)の割合は、導電助剤(B)の重量に対して0.5〜100重量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜30重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
また、本発明において、電極下地層インキ中に占めるシランカップリング剤(D)の割合は、導電助剤(B)の重量に対して0.001〜10.0重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.003〜5.0重量%、さらに好ましくは0.005〜2.0重量%、最も好ましくは0.005〜0.1重量%である。
また、本発明の電極下地層インキがバインダーを含む場合、電極下地層インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜90重量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜80重量%。さらに好ましく10〜70重量%である。
電極下地層インキを得る際に用いられる装置としては合材インキで用いられるものと同じものが使用できる。また、電極下地層インキの適正粘度は、電極下地層インキの塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
<電極>
本発明の二次電池電極形成用組成物のうち合材インキを、集電体上に塗工・乾燥し、合材層を形成し、二次電池用電極を得ることができる。あるいは、本発明の二次電池電極形成用組成物のうち下地層形成用組成物を、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、該下地層上に、合材層を設け、二次電池用電極を得ることもできる。下地層上に設ける合材層は、前述した本発明の合材インキ(1)〜(4)を用いて形成してもよいし、他の合材インキを用いて形成することもできる。
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
集電体上に合材インキや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。また、下地層を具備する場合には下地層と合材層との厚みの合計は、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウ二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh等が挙げられるがこれらに限定されない。
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「重量部」を表す。また、酸性官能基を有する樹脂および塩基性官能基を有する樹脂の重合平均分子量(Mw)は、装置としてHLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。酸性官能基を有する樹脂における酸価は、JIS K 0070の電位差滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算した値である。酸価滴定が困難である場合は、以下の方法で酸価を算出した。特許第3784494号公報に準じ、FT−IRによって酸性官能基の導入を確認した。次に、吸収強度の比が単位重量当たりの官能基数の比と一致するとし、樹脂骨格に由来する吸収(764cm−1付近)強度と、酸性官能基に該当する吸収(スルホン酸基の場合は1180cm−1付近、カルボン酸基の場合は1750cm−1付近、リン酸基は940cm−1付近)の強度変化量の比から単位重量当たりの酸性官能基数を算出し、これを、酸価に換算した。また、塩基性官能基を有する樹脂におけるアミン価は、ASTM D 2074の方法に準拠して測定した全アミン価(mgKOH/g)である。
<酸性官能基を有する樹脂の調製>
<酸性官能基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(CA1)>
[スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−1)の合成]
スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂の調製は、特許第3784494号公報に準じた。即ち、1Lのセパラブルフラスコ中でポリフッ化ビニリデン系樹脂100gをクロロホルム400mLに分散させ、攪拌しながらクロロスルホン酸100mLを滴下した後に、2時間加熱還流させた。その後、反応液を氷水中に注ぎ、固形物を濾別し、水洗、乾燥を経て、重量平均分子量約10,000のスルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−1)を得た。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、公知の方法で合成した1,1−ジフルオロエチレンのホモポリマーを使用した。酸価は9mgKOH/gであった。
[燐酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−2)の合成]
特開平6−172452号公報に準じて、水酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を合成した。即ち、2Lのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、酢酸エチル2.5g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート4g、フッ化ビニリデン396g、2−ヒドロキシエチルアクリレート4gを仕込み、28℃で47時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後、80℃で20時間乾燥して重合体を得た。
次に、窒素ガス導入管及び、コンデンサをつけた1Lのセパラブルフラスコ中で上記の水酸基含有ポリフッ化ビニリデン系樹脂100gをクロロホルム400mLに分散させ、窒素下で攪拌しながらオルトリン酸換算含有量116%のポリリン酸100gを混合した後、2時間加熱還流させた。その後、反応液を氷水中に注ぎ、固形物を濾別し、水洗、乾燥を経て、重量平均分子量約10,000の燐酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−2)を得た。酸価は11mgKOH/gであった。
<酸性官能基を有するポリビニル系樹脂(CA2)>
[カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−1)の合成]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルメタクリレート100部とベンジルメタクリレート100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール12部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。ピロメリット酸二無水物19部、N−メチル−2−ピロリドン231部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、固形分50%のカルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−1)溶液を得た。得られたポリビニル系樹脂(A2−1)の重量平均分子量(Mw)は8,500、酸価は43mgKOH/gであった。
[カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)の合成]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート180部とメタクリル酸20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール12部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。ピロメリット酸二無水物19部、N−メチル−2−ピロリドン231部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、固形分50%のカルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)溶液を得た。得られたポリビニル系樹脂(A2−2)の重量平均分子量(Mw)は8,600、酸価は93mgKOH/gであった。
<酸性官能基を有するポリエステル系樹脂(CA3)>
[カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−1)の合成]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、及び攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、及び触媒としてジブチル錫オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、ピロメリット酸二無水物36.6部を加え、120℃で2時間反応させカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−1)を得た。得られたポリエステル系樹脂(A3−1)は、常温で白色ワックス状固体であり、重量平均分子量(Mw)は2,500、酸価は49mgKOH/gであった。
[カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−2)の合成]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、及び攪拌機を備えた反応容器に、メトキシPEG400(片末端メトキシ化ポリエチレングリコール;分子量400)111.4部、ε−カプロラクトン127.1部、δ−バレロラクトン111.5部、及び触媒としてジブチル錫オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物41.0部を加え、120℃で2時間反応させカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−2)を得た。得られたポリエステル系樹脂(A3−2)は、常温で淡黄色透明液体であり、重量平均分子量(Mw)は4,800、酸価は43mgKOH/gであった。
<その他の市販の酸性官能基を有する樹脂(CA4)>
A4−1:Disperbyk−111(ビックケミー社製);酸性官能基を有する樹脂、酸価129mgKOH/g。
<塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(CB1)>
[アミノ基を有するポリビニル系樹脂(B1−1)の合成]
<ビニル重合体(a1−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルメタクリレート500部と、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール28部と、N−メチル−2−ピロリドン528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4800の、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(a1−1)の固形分50%溶液を得た。
<ポリビニル系樹脂(B1−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(a1−1)の固形分50%溶液1056部と、イソホロンジイソシアネート115.1部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.12gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン25.5部と、ジn−ブチルアミン16.7部と、N−メチル−2−ピロリドン492.0部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、アミノ基を有するポリビニル系樹脂(B1−1)の淡黄色透明溶液を得た。得られたポリビニル系樹脂(B1−1)の重量平均分子量は21600であり、アミン価17.4mgKOH/gであった。
[アミノ基を有するポリビニル系樹脂(B1−2)の合成]
<片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体(a3−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート400部とブチルアクリレート100部、N−メチル−2−ピロリドン100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール27.5部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、N−メチル−2−ピロリドン427部を加えて希釈したのち、乾燥空気流下で2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート32.6部、ジブチル錫ジラウレート1部、メチルハイドロキノン0.3部を加え、さらに2時間加熱攪拌し、更に、固形分50重量%に調整して、重量平均分子量4500の、片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体(a3−1)の固形分50重量%溶液を得た。
<ポリビニル系樹脂(B1−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン27.8部と、N−メチル−2−ピロリドン184部を仕込み、50℃に加熱してビニル重合体(a3−1)の固形分50重量%溶液700部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート15.7部、N−メチル−2−ピロリドン121部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量15200、アミン価94mgKOH/gの塩基性官能基を有するポリビニル系樹脂(B1−2)の固形分30重量%溶液を得た。
<塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(CB2)>
[アミノ基を有するポリエステル系樹脂(B2−1)の合成]
<片末端にアクリロイル基を有するエステル重合体(c2−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、4−ヒドロキシブチルアクリレート20.8部とε−カプロラクトン379部、触媒としてジブチル錫オキシド0.1部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部を仕込み、乾燥空気流下で120℃で4時間加熱、撹拌し固形分測定により95%が反応したことを確認し反応を終了し、N−メチル−2−ピロリドン171部を加えて希釈し、更に、固形分70重量%に調整して、重量平均分子量6500の、片末端にアクリロイ基を有するエステル重合体(c2−1)の固形分70重量%溶液を得た。
<ポリエステル系樹脂(B2−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン18.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してエステル重合体(c2−1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート16.0部、N−メチル−2−ピロリドン112部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/gの塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(B2−1)の固形分30重量%溶液を得た。
[アミノ基を有するポリエステル系樹脂(B2−2)の合成]
<ポリエステル系樹脂(B2−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、メチルイミノビスプロピルアミン23.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してエステル重合体(c2−1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート18.3部、N−メチル−2−ピロリドン207部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量27000、アミン価41mgKOH/gの塩基性官能基を有するポリエステル系樹脂(B2−2)の固形分30重量%溶液を得た。
<その他の市販の塩基性官能基を有する樹脂(CB3)>
B3−1:アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製);アミノ基を有する樹脂、アミン化10mgKOH/g。
<非イオン性樹脂>
<ポリビニルアルコール樹脂(CC1)>
C1−1:クラレポバール420(クラレ社製);ポリビニルアルコール樹脂、けん化度79モル%。
<ポリビニルアセタール樹脂(CC2)>
C2−1:エスレックBX−1(積水化学工業社製);ポリビニルアセタール樹脂、アセタール化度66モル%、ビニルアルコール単位33モル%、
<ポリビニルアミド系樹脂(CC3)>
C3−1:PVP K−30(ISPジャパン社製);ポリビニルピロリドン、重量平均分子量約40,000〜80,000。
実施例および比較例で用いた、シランカップリング剤を表1に示した。
<分散体>
[実施例1]
導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−1)を固形分換算で0.5部、表1記載のシランカップリング剤S−01 0.1部 更に、分散体中の固形分が10重量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンを添加して固形分を調整し、ミキサーに入れて混合した。次いでサンドミルに入れて分散を行い、分散体1を得た。
[実施例2〜7]
表2に示す導電助剤、樹脂型分散剤、及びシランカップリング剤をそれぞれ使用して、実施例1と同様の方法で、実施例2〜7の分散体2〜7をそれぞれ得た。
[比較例1]
デンカブラックHS−100をSuper−P Liに、スルホン酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−1)をカルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−1)にそれぞれ変更し、シランカップリング剤S−01添加しなかった以外は実施例1と同様の方法で、分散体8を得た。
[比較例2]
シランカップリング剤S−01を、表1記載のシランカップリング剤S−06に変更し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−1)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で分散体9を得た。
[比較例3]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−1)をアミノ基を有するポリエステル系樹脂(B2−1)に変更し、シランカップリング剤S−01を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で分散体10を得た。
(分散体の分散度判定)
分散体における導電助剤の分散度判定には、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用い、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)を求めた。
分散体の評価結果を表2に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一な分散体であることを示している。


HS−100:アセチレンブラック(電気化学工業社製)
Super−P Li:ファーネスブラック(TIMCAL社製)
表2に示すように、樹脂型分散剤(C)を用いた分散体は、導電助剤の分散性に優れ、均一に導電助剤が分散された分散体であることが確認できた。
<正極合材インキ、負極合材インキ>
[実施例8]
実施例1で調製した分散体1 50部(導電助剤として5部)に対して、正極活物質としてLiFePO 90部、バインダー(KFポリマーW1100:クレハ社製、ポリフッ化ビニリデン)4.7部を混合し、合材インキの固形分が60%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極合材インキ1を調製した。
[実施例16、17、19、20、22、25、比較例4、5、10]
表3に示した材料を使用した以外は実施例8と同様にして、正極合材インキ9、10、12、13、15、18、21、22および負極合材インキ4をそれぞれ得た。
[実施例28]
分散体1 50部を30部に、LiFePO 90部を負極活物質として人造黒鉛93部に、バインダー4.7部を3.82部に変更した以外は実施例8と同様にして負極合材インキ1を得た。
[実施例9]
正極活物質としてLiFePO 90部、デンカブラックHS−100 5部、カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)を0.25部、表1記載のシランカップリング剤S−06を0.05部、バインダー(KFポリマーW1100:クレハ社製、ポリフッ化ビニリデン)4.70部を混合し、合材インキの固形分が60%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極合材インキ2を得た。
[実施例10]
シランカップリング剤S−06 0.05部を0.10部に、バインダー4.70部を4.65部に変更した以外は、実施例9と同様にして正極合材インキ3を得た。
[実施例11]
カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)を燐酸基を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂(A1−2)に、シランカップリング剤S−06 0.05部を0.08部に、バインダー4.70部を4.67部に変更した以外は、実施例9と同様にして正極合材インキ4を得た。
[実施例12]
シランカップリング剤S−06 0.05部を0.06部に、バインダー4.70部を4.69部に変更した以外は、実施例9と同様にして正極合材インキ5を得た。
[実施例13]
カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)をカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−2)に、シランカップリング剤S−06 0.05部を0.03部に、バインダー4.70部を4.72部に変更した以外は、実施例9と同様にして正極合材インキ6を得た。
[実施例14]
シランカップリング剤S−06 0.05部を0.01部に、バインダー4.70部を4.74部に変更した以外は、実施例9と同様にして正極合材インキ7を得た。
[実施例15]
シランカップリング剤S−06 0.05部を0.005部に、バインダー4.70部を4.745部に変更した以外は、実施例9と同様にして正極合材インキ8を得た。
[実施例18、21、23、24、26、29]
表3に示した材料を使用した以外は実施例9と同様にして、正極合材インキ11、14、16、17、19および負極合材インキ2をそれぞれ得た。
[実施例27]
カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)0.25部をカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−1)0.15部及びポリビニルアセタール樹脂(C2−1)0.10部に、シランカップリング剤S−06をシランカップリング剤S−04にそれぞれ変更した以外は実施例9と同様にして、正極合材インキ20を得た。
[比較例6]
LiFePOをLiCoOに、カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)をカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂(A3−1)に、バインダー4.70部を4.75部にそれぞれ変更し、シランカップリング剤S−06を添加しなかった以外は実施例9と同様にして、正極合材インキ23を得た。
[比較例7]
シランカップリング剤S−06をシランカップリング剤S−01に、バインダー4.70部を4.95部に変更し、カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)を添加しなかった以外は実施例9と同様にして、正極合材インキ24を得た。
[比較例8]
LiFePOをLiNi1/3Mn1/3Co1/3に、シランカップリング剤S−06をシランカップリング剤S−04に、バインダー4.70部を4.95部にそれぞれ変更し、カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)を添加しなかった以外は実施例9と同様にして正極合材インキ25を得た。
[比較例9]
LiFePO 90部を人造黒鉛93部に、デンカブラックHS−100 5部を3部に、カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−2)0.25部をアミノ基を有するポリエステル系樹脂(B2−1)0.15部に、バインダー4.7部を3.85部にそれぞれ変更し、シランカップリング剤S−06を添加しなかった以外は実施例9と同様にして負極合材インキ3を得た。
(合材インキの分散度判定)
正極合材インキおよび負極合材インキの分散度は、グラインドゲージによる判定(JISK5600−2−5に準ず)より求めた。合材インキの分散度評価結果を表3に示した。
<正極、負極>
そして、この正極合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を作製した。
また、負極合材インキの場合は、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが80μmとなるよう調整し、さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが70μmとなる負極を作製した。
(電極の電解液耐性)
得られた正極または負極を、直径16mmに打ち抜き、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒に浸漬させ、60℃で1週間保管した。その後、電極を取り出し、浸漬前後の合材層の重量変化から、合材層崩壊の程度を判定した。重量変化が小さいほど、合材層の電解液耐性が高い。評価結果を表3に示した。
◎:「浸漬前後の重量変化が4%未満。」
○:「浸漬前後の重量変化が4%以上、8%未満。」
△:「浸漬前後の重量変化が8%以上、15%未満。」
×:「浸漬前後の重量変化が15%以上。」
<コイン型電池>
次に、得られた正極または負極を、直径16mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔を対極とした。作用極、対極、作用極と対極の間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)、および電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるコイン型電池を作製した。コイン型電池はアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、コイン型電池作製後、所定の電池特性評価を行った。
(サイクル特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
使用する活物質がLiFePOの場合は、充電電流1.0mAにて充電終止電圧4.2Vまで定電流充電を続けた。電池の電圧が4.2Vに達した後、放電電流1.0mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして50サイクルの充電・放電を繰り返し、「放電容量維持率=50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量」とし、放電容量維持率によって以下のように判定した。評価結果を表3に示した。
◎:「放電容量維持率が95%以上。特に優れている。」
○:「放電容量維持率が90%以上、95%未満。問題なし。」
△:「放電容量維持率が80%以上、90%未満。使用可能。」
×:「放電容量維持率が80%未満。実用上問題あり、使用不可。」
また、使用する活物質が、LiCoOの場合は、充電電流1.6mA、充電終止電圧4.3V、放電電流1.6mA,放電終止電圧2.8Vとした以外は、LiFePOの場合と同様にサイクル特性を測定出来る。
また、使用する活物質が、LiMnの場合は、充電電流1.0 mA、充電終止電圧4.3V、放電電流1.0mA,放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様にサイクル特性を測定出来る。
また、使用する活物質が、LiNi1/3Mn1/3Co1/3の場合は、充電電流1.9mA、充電終止電圧4.3V、放電電流1.9mA,放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様にサイクル特性を測定出来る。
また、使用する活物質が人造黒鉛の場合は、充電電流1.8mA、充電終止電圧0.1V、放電電流1.8mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様にサイクル特性を測定出来る。
また、使用する活物質が、LiTi12の場合は、充電電流1.0mA、充電終止電圧1.0V、放電電流1.0mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiFePOの場合と同様にサイクル特性を測定出来る。

LFP:LiFePO
LCO:LiCoO
LMO:LiMn
NMC:LiNi1/3Mn1/3Co1/3
LTO:LiTi12
表3に示すように、実施例8〜29の本発明における二次電池電極形成用組成物は導電助剤と活物質の分散性に優れた均一な組成物であることが確認できた。
ただし、樹脂型分散剤(C)のみを用いて形成された合材インキは、各々の粒子が均一に分散しているものの、合材層を形成したときに粒子間接触が保持できず、合材層の耐電解液性やサイクル特性が低下し、十分な電池特性が得られなかったと考えられる。
一方、シランカップリング剤(D)のみを用いて形成された合材インキは、粒度が大きく、凝集物が残っていた。そのため、合材層中に部分的凝集が生じ、それに起因した抵抗分布や電流集中によって、劣化が促進されたと考えられる。
これらに対して、本発明の二次電池電極形成用組成物から形成された合材層を有する二次電池用電極は、電解液耐性やサイクル特性に優れることが明らかとなった。
本発明の二次電池電極形成用組成物を用いた二次電池用電極または二次電池において、電解液耐性やサイクル特性が向上したことについて、以下のように推察している。酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂型分散剤を用いることで、活物質や導電助剤の分散性を向上させる。そして、活物質や導電助剤の凝集がほぐれ、均一に粒子が分散された状態において、シランカップリング剤が活物質や導電助剤に効率的に吸着するため、シランカップリング剤による表面処理で粒子間接触が強くなったと推察している。また驚くべきことに、強固な粒子間接触を保持した合材層は電解液に対する耐性が向上し、これにより長期のサイクル特性が向上したと考えている。
<電極下地層インキ>
[実施例30]
実施例1で調製した分散体1 20部と、バインダー(KFポリマーW1100:クレハ社製、ポリフッ化ビニリデン)のN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)20部を混合し、電極下地層インキを得た。
上記電極下地層インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、厚みが5μmとなるように下地層を形成させた。次いで、上記下地層上に実施例25の正極合材インキ18を塗布し、前述の正極と同様にして、下地層を有する二次電池用正極を得た。
[実施例31]
導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)100部、カルボキシル基を有するポリビニル系樹脂(A2−1)5.0部、表1記載のシランカップリング剤S−04 0.05部 N−メチル−2−ピロリドン895部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、分散体11を得た。分散体と同様にして分散度を測定したところ、粒度は0.502μmであった。
分散体1を分散体11に変更した以外は実施例30と同様にして電極下地層インキを得、所定の電池特性評価を行った。
[実施例32、比較例11、12]
表4に示した分散体および合材インキをそれぞれ用いて、実施例30と同様にして、下地層を有する二次電池用正極、および下地層を有する二次電池用負極をそれぞれ得、前述の正極および負極と同様にしてコイン型電池を作成し、所定の電池特性評価を行った。
表4に示したように、本発明の合材層と本発明の電極下地層を有する二次電池用電極では良好な結果が得られた。また、本発明の電極下地層を有する二次用電極は電解液耐性が高く、サイクル特性においても良好な結果であった(実施例32)。これは、下地層が高い電解液耐性を有することで、充放電サイクル評価においても導電性や、合材層との接触を保持したため、下地層の無い場合(比較例9)に比べて電池特性が向上されたと推察している。一方、比較例11では、下地層の無い場合(実施例25)に比べて電池特性が低下した結果であった。これについては、下地層の耐電解液性が十分でないため、充放電サイクル評価中に徐々に下地層の崩壊が起こり、合材層と集電体の接触が得られなくなったため、電池特性の低下を引き起こしたと考えられる。

Claims (4)

  1. 活物質(A)または導電助剤(B)の少なくとも一方と、酸性官能基を有する樹脂、塩基性官能基を有する樹脂、および非イオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂型分散剤(C)と、シランカップリング剤(D)とを含む二次電池電極形成用組成物。
  2. シランカップリング剤(D)が、反応性官能基を有する請求項1記載の二次電池電極形成用組成物。
  3. 集電体と、合材層もしくは電極下地層の少なくも一層とを具備する電極であって、前記合材層もしくは前記電極下地層が請求項1または2記載の二次電池電極形成用組成物から形成されたものである二次電池用電極。
  4. 正極と負極と電解液とを具備する電池であって、前記正極もしくは前記負極の少なくとも一方が請求項3記載の二次電池用電極である二次電池。
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