JP2014162912A - 水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗膜からポリマーが溶解することにより、当該塗膜と海水との摩擦抵抗を低減させる効果、すなわちトムズ効果を発現し、当該トムズ効果の持続性に優れ、例えば、船底塗料などに好適に用いることができる水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子、および当該水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有する船底塗料を提供すること。
【解決手段】水中において摩擦抵抗を低減させるために用いられる樹脂粒子であって、分子量が50万以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子、および水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有することを特徴とする船底塗料。
【選択図】なし

Description

本発明は、水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、船底塗料などに好適に用いることができる水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子に関する。
船底防汚塗料は、一般に、当該船底防汚塗料で形成された塗膜から防汚剤が徐々に海水中に溶解することにより、船底に海中生物が付着することを防止するために用いられている。毒性が少なく、長期にわたって海中生物の付着による汚染を防ぐことができる防汚船底塗料組成物として、ヒドロキシプロピルセルロースを含む防汚船底塗料組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記防汚船底塗料組成物は、毒性が小さく、長期間にわたって海中生物の付着による汚染を防ぐという効果を奏するものとされている。
しかし、近年、船底と海水との摩擦抵抗を低減させることによって船舶が航行する際の燃費を低減させるために、船底に塗布された塗膜からポリマーが溶解することにより、当該塗膜と海水との摩擦抵抗を低減させる効果、すなわちトムズ効果を発現し、当該トムズ効果の持続性に優れ、例えば、船底塗料などに好適に用いることができる水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の開発が望まれている。
特開2010−132831号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、塗膜からポリマーが溶解することにより、当該塗膜と海水との摩擦抵抗を低減させる効果、すなわちトムズ効果を発現し、当該トムズ効果の持続性に優れ、例えば、船底塗料などに好適に用いることができる水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子、および当該水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有する船底塗料を提供することを課題とする。
本発明は、水中において摩擦抵抗を低減させるために用いられる樹脂粒子であって、分子量が50万以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子、および前記水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有することを特徴とする船底塗料に関する。
本発明によれば、塗膜からポリマーが溶解することにより、当該塗膜と海水との摩擦抵抗を低減させる効果、すなわちトムズ効果を発現し、当該トムズ効果の持続性に優れ、例えば、船底塗料などに好適に用いることができる水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子が提供される。また、本発明の船底塗料は、前記水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有するので、当該船底塗料で形成された塗膜からポリマーが徐々に溶解し、塗膜と海水との摩擦抵抗を長期間にわたって低減させることができるという優れた効果を奏する。
本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子は、前記したように、水中において摩擦抵抗を低減させるために用いられる樹脂粒子であり、分子量が50万以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする。
アルカリ可溶性樹脂は、得られるポリマーにアルカリ可溶性を付与するモノマー(以下、便宜上、アルカリ可溶性モノマーともいう)を含有するモノマー成分を重合させることによって調製することができる。
アルカリ可溶性樹脂のなかでは、アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーが好ましい。
アルカリ可溶性モノマー単位は、モノマー単位が酸性の官能基またはその塩を有し、アルカリ性溶液中で増粘作用を呈するモノマー単位を意味する。
酸性の官能基としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)、リン酸基(−PO)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。酸性の官能基の塩は、酸性の官能基をアルカリ性化合物などで中和することによって形成させることができる。塩としては、例えば、酸性の官能基のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。酸性の官能基およびその塩のなかでは、他の酸基含有モノマーと比べて親水性が低く、重合時の安定性が高いことから、カルボキシル基およびその塩が好ましい。
なお、アルカリ可溶性モノマー単位は、酸性の官能基を有するモノマー単位のみからなり、酸性の官能基の塩を有するモノマー単位が存在していなくてもよい。また、アルカリ可溶性モノマー単位は、酸性の官能基の塩を有するモノマー単位のみからなり、酸性の官能基を有するモノマー単位が存在していなくてもよい。さらに、アルカリ可溶性モノマー単位は、酸性の官能基を有するモノマー単位および酸性の官能基の塩を有するモノマー単位の双方を含んでいてもよい。
アルカリ可溶性モノマー単位は、アルカリ可溶性モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって形成することができる。アルカリ可溶性モノマー単位に存在する酸性の官能基の塩は、酸性の官能基を有し、アルカリ性溶液中で増粘作用を呈するモノマーを重合させた後、得られたポリマーのアルカリ可溶性モノマー単位に含まれている酸を中和することによって形成することができるが、あらかじめ酸性の官能基を中和させておいたモノマーを用いてポリマーを形成することもできる。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーは、アルカリ性溶液と接触したとき、当該ポリマーのアルカリ可溶性モノマー単位が有する酸性の官能基がイオン化した状態で存在する。例えば、カルボキシル基(−COOH)は、水酸化ナトリウムなどの塩基により、陰イオン(−COO)として存在する。当該陰イオン(−COO)は、負の電荷を帯びていることから、アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーは、電気的な反発によってアルカリ性溶液中に拡散するので、当該アルカリ性溶液の粘度が高くなる。
アルカリ可溶性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロイルオキシプロピオン酸、メタクリロイルオキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレートなどのスルホン酸基を有するモノマー;モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−メタクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー、およびこれらのモノマーのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルカリ可溶性モノマー単位を形成するモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アルカリ可溶性モノマーのなかでは、他のモノマーとの重合性に優れていることから、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらの塩が好ましい。
会合性モノマー単位は、側鎖に疎水基を有し、当該疎水基により、複数のポリマーを会合させる性質を有するモノマー単位をいう。また、会合性モノマーは、側鎖に疎水基を有し、当該疎水基により、複数のポリマーを会合させる性質を有するモノマーをいう。前記疎水基としては、例えば、式(I):
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキレン基、nは10〜300の整数、Xは直接結合、−C(=O)−基または−C(=O)NH−基、R2は炭素数6〜30の炭化水素基を示す)
で表わされる基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(I)で表わされる基において、R1としては、例えば、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピレン基[−CH2CH(CH3)−]、ブチレン基[−CH2CH(CH2CH3)−]などが挙げられる。これらの基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの基のなかでは、エチレン基が好ましい。
式(I)で表わされる基において、R2は、炭素数6〜30の炭化水素基である。R2は、疎水性の官能基であることから、水中に分散しているポリマーは、当該R2が有する疎水性によって会合するが、疎水性基間の会合は、比較的弱い結合である。炭化水素基としては、例えば、直鎖または分岐鎖を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、前記炭化水素基は、本発明の目的が阻害されない範囲内で、置換基を有していてもよい。直鎖アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。分岐アルキル基としては、例えば、3−メチルヘキシル基、4,4−ジエチルオクチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。シクロアルキル基としては、例えば、シクロオクチル基、コレスタニル基、ラノスタニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルキルアリール基としては、例えば、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、ノニルフェニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R2のなかは、ポリマー同士の会合性を高める観点から、好ましくは炭素数8〜30の炭化水素基、より好ましくは炭素数8〜30のアルキル基、さらに好ましくは炭素数12〜20のアルキル基、さらに一層好ましくは炭素数16〜20のアルキル基、特に好ましくは炭素数18のアルキル基である。
式(I)で表わされる基において、Xは、直接結合、−C(=O)−基または−C(=O)NH−である。
式(I)で表わされる基において、nは、10〜300の整数である。nは、10〜100の整数であることが好ましく、20〜80の整数であることがより好ましく、40〜60の整数であることがさらに好ましく、45〜55の整数であることがさらに一層好ましい。
式(I)で表わされる基において、式:(R1−O)で表わされる基は、R2基の移動の自由度を高め、ポリマー同士の会合性を高める性質を有する。
会合性モノマー単位のなかでは、式(II):
(式中、R2、Xおよびnは前記と同じ)
で表わされるモノマー単位が好ましい。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーの原料として用いられるモノマー成分には、アルカリ可溶性モノマーおよび会合性モノマーと重合する他のモノマー(以下、他のモノマーという)が含まれていてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、クロロメチルスチレンなどのスチレン系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−モノメチルアクリルアミド、N−モノメチルメタクリルアミド、N−モノエチルアクリルアミド、N−モノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系重合性モノマー;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数1〜8のアルコールとのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのシクロヘキシル基含有モノマー;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;ポリエチレングリコールアクリルエステル、ポリエチレングリコールメタクリルエステルなどのポリエチレングリコール鎖含有モノマー;酢酸ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;N−ビニルピロリドン、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどの塩基性重合性モノマー;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどの架橋性(メタ)アクリルアミド系重合性モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシランなどのケイ素原子に直結する官能基を有する加水分解性ケイ素基含有重合性モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有重合性モノマー;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有重合性モノマー;アクリル酸−2−アジリジニルエチル、メタクリル酸−2−アジリジニルエチル、アクロイルアジリジン、メタクロイルアジリジンなどのアジリジン基含有重合性モノマー;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有重合性モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーの原料として用いられるモノマー成分には、架橋性モノマーが含まれていてもよい。架橋性モノマーとしては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸と、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールとのエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;メチレンアクリルアミド、メチレンメタアクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド系モノマー;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレートなどのアリル系モノマー;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルカリ可溶性モノマー、会合性モノマーおよび他のモノマーは、いずれも商業的に容易に入手することができるが、適宜、調製してもよい。会合性モノマーは、例えば、特開2001−240630号公報などに記載の方法に基づいて調製してもよい。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーは、例えば、アクリル酸に基づく単位、式(II)において、R2が−C1735基であり、Xが−C(=O)−基であり、nが50の整数である単位、およびアクリル酸メチルに基づく単位を有するとき、式:
で表わされる。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーの原料として用いられるモノマー成分におけるアルカリ可溶性モノマーの含有率は、アルカリ可溶性を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上であり、重合安定性を高める観点から、好ましくは69モル%以下、より好ましくは64モル%以下である。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーの原料として用いられるモノマー成分における会合性モノマー単位の含有率は、トムズ効果を高める観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上であり、重合性を向上させる観点から、好ましくは2モル%以下、より好ましくは1.5モル%以下である。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーの原料として用いられるモノマー成分における他のモノマーの量は、アルカリ可溶性モノマーおよび会合性モノマーの残部であるが、重合安定性を高める観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上であり、アルカリ可溶性を向上させる観点から、好ましくは79モル%以下、より好ましくは74モル%以下である。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーは、アルカリ可溶性モノマー、会合性モノマーおよび必要により他のモノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得ることができる。モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、逆相乳化重合法、非水分散重合法(NAD重合法)、懸濁重合法、逆相懸濁重合法などが挙げられる。これらの重合方法のなかでは、高分子量のポリマーを高濃度で得ることができることから、乳化重合法および逆相乳化重合法が好ましい。モノマー成分を乳化重合させる方法としては、例えば、モノマー成分を溶解させた水溶液と乳化剤とを混合し、プレエマルションを調製した後、重合開始剤を当該プレエマルションに添加することによって重合させることができる。
なお、前記逆相乳化重合は、通常、疎水性媒体に界面活性剤を溶解させた油相を連続相として用い、モノマー成分の水溶液に重合開始剤を加えた水相を油層に添加し、油相乳化させ、乳化状態を保ちながらモノマーを重合させることによって行なうことができる。疎水性媒体としては、通常、常温で液体であり、不活性の炭化水素化合物、置換炭化水素などの非極性有機溶媒、植物油、動物油などが用いられる。疎水性媒体としては、例えば、ベンゼン、トルエン、n−パラフィン、イソパラフィン、ナフサ、ケロシン、鉱物油などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。乳化剤および重合開始剤としては、以下に例示する乳化剤および重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は、水溶性および油溶性のうち、いずれか一方または双方を用いることができるが、水溶性重合開始剤を用いることが好ましい。逆相懸濁重合の際には、必要により、例えば、連鎖移動剤、キレート化剤、緩衝剤などの添加剤を用いてもよい。
アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーを乳化重合法によって調製する場合、モノマー成分の乳化重合は、通常、水性媒体中で行なうことができる。水性媒体としては、例えば、水、水および水との親和性に優れている有機溶媒からなる混合溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒なかでは、水が好ましい。
モノマー成分を乳化重合させる際には、乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩などのアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどのアルキルスルホネート;アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテートなどの脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアニオン性界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセリンモノラウレートなどの脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレン−オキシプロピレンポリマー;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのノニオン性界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカチオン性界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの両性界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性物;アクリル酸系水溶性高分子化合物、メタクリル酸系水溶性高分子化合物;ヒドロキシエチルアクリル酸系水溶性高分子化合物、ヒドロキシエチルメタアクリル酸系水溶性高分子化合物;ヒドロキシプロピルアクリル酸系水溶性高分子化合物、ヒドロキシプロピルメタクリル酸系水溶性高分子化合物;ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの高分子界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
乳化剤のなかでは、反応性乳化剤および非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましく、環境面から非ノニルフェニル型の乳化剤がより好ましい。
モノマー成分を乳化重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる性質を有するものであればよい。重合開始剤のなかでは、モノマー成分を乳化重合させる場合には、水溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などの水溶性アゾ化合物;過酸化水素などの熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、tert−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
モノマー成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、通常、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1質量部である。
モノマー成分を乳化重合させる際には、必要により、連鎖移動剤を適量で用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、四塩化炭素、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタンなどのハロゲン置換アルカン;n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸ドデシルなどのモノチオグリコール酸アルキルなどのチオエステル;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;α−メチルスチレンダイマー、ターピノール、テルピネン、ジペンテンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、モノマー成分を重合させる際には、必要により、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどのキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウムなどの分散剤、無機塩などを用いてもよい。また、モノマー成分、重合開始剤などを溶媒に添加する方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
乳化重合の際の重合温度は、特に限定されないが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃である。乳化重合時間は、特に限定されないが、好ましくは3〜15時間である。モノマー成分を乳化させる際には、必要により、親水性溶媒、添加剤などを添加してもよい。
以上のようにして、モノマー成分を重合させることにより、アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーが得られる。なお、アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーを乳化重合法によって調製した場合には、当該ポリマーは、エマルション粒子として得ることができる。当該エマルション粒子は、本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子として用いることができる。
また、前記モノマー成分として、加水分解性ビニルモノマーを含有するモノマー成分を重合させることにより、アルカリ可溶性樹脂を調製した場合には、トムズ効果を長期間にわたって持続させることができる。
加水分解性ビニルモノマーは、加水分解により水溶性ビニルモノマーとなるビニルモノマーを意味する。水溶性ビニルモノマーは、25℃の水100gに100g以上溶解する性質を有するビニルモノマーを意味する。
加水分解性ビニルモノマーとしては、例えば、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報、特許第3648553号公報などに記載されているビニルモノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。加水分解性ビニルモノマーの具体例としては、カルボキシ(塩)基、スルホ(塩)基、アミノ基、カルバモイル基、アンモニオ基、モノ−アルキルアンモニオ基、ジ−アルキルアンモニオ基またはトリ−アルキルアンモニオ基を有するビニルモノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。加水分解性ビニルモノマーのなかでは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましく、アルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸アルキルエステルがさらに一層好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
加水分解性ビニルモノマーを含有するモノマー成分のなかでは、トムズ効果を長期間維持させる観点から、アクリル酸メチル1〜99質量%、アクリル酸および/またはメタクリル酸1〜99質量%、および必要により他のモノマーを含有するモノマー成分が好ましい。前記他のモノマーとしては、前記他のモノマーとして例示したものを用いることができる。
モノマー成分として、加水分解性ビニルモノマーを含有するモノマー成分を用いる場合、前記アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有するポリマーと同様にしてアルカリ可溶性樹脂を調製することができる。また、加水分解性ビニルモノマーを含有するモノマー成分を乳化重合させた場合には、樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子として用いることができる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、酸基を有するモノマーを必須とするモノマー成分を多段重合法によって乳化重合させることによって調製することができる。より具体的には、前記アルカリ可溶性樹脂は、例えば、酸基を有するモノマー(a−1)20〜90質量%およびエステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a−2)10〜80質量%を含むモノマー成分Aを重合させた後、酸基を有するモノマー(b−1)20〜90質量%、エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−2)5〜80質量%およびエステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−3)0〜75質量%を含むモノマー成分Bを重合させることによって調製することができる。
酸基を有するモノマー(a−1)および酸基を有するモノマー(b−1)は、いずれも、アルカリ可溶性モノマー(ポリマーをアルカリ可溶性とするモノマー)と呼ばれる。酸基を有するモノマー(a−1)および酸基を有するモノマー(b−1)を用いることにより、アルカリ可溶性樹脂に酸基を導入することができる。ポリマーが有する酸基は、アルカリの存在下では、イオン化した状態で存在することとなる。例えば、カルボキシル基(−COOH)は、水酸化ナトリウムなどの塩基によって、陰イオン(−COO−)として存在する。陰イオンが負の電荷を帯びていることにより、ポリマーは、電気的な反発によって膨潤または拡散することにより、増粘性を高めることができる。
エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−2)は、疎水性モノマー(ポリマーに疎水性を付与するモノマー)と呼ばれる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−2)を用いることにより、ポリマーに疎水性の官能基を導入することができる。疎水性の官能基を有するポリマーは、疎水基同士が会合することにより、ポリマーの増粘性を向上させることができる。
酸基を有するモノマー(a−1)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー:ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタアクリレートなどのスルホン酸基を有するモノマー:モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−メタクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー、これらのモノマーのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーのなかでは、カルボキシル基含有モノマーが好ましい。カルボキシル基含有モノマーにおけるカルボキシル基の数は、1個であってもよく、複数個であってもよい。カルボキシル基含有モノマーは、前記したものと同様のものを例示することができる。
モノマー成分Aにおける酸基を有するモノマー(a−1)の含有率は、親水性を向上させる観点から、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、重合反応性および得られるポリマーの安定性を向上させる観点から、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、さらに一層好ましくは70質量%以下である。
エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a−2)としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a−2)のなかでは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。
モノマー成分Aにおけるモノマー(a−2)の含有率は、ポリマーの安定性を向上させる観点から、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに一層好ましくは30質量%以上であり、ポリマーの親水性を向上させる観点から、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらに一層好ましくは60質量%以下である。
酸基を有するモノマー(b−1)としては、酸基を有するモノマー(a−1)と同様のものを例示することができる。酸基を有するモノマー(b−1)は、酸基を有するモノマー(a−1)と同一であってもよく、異なっていてもよい。好ましい酸基を有するモノマー(b−1)は、酸基を有するモノマー(a−1)と同様である。
モノマー成分Bにおける酸基を有するモノマー(b−1)の含有率は、ポリマーの親水性を向上させる観点から、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに一層好ましくは40質量%以上であり、重合反応性および得られるポリマーの安定性を向上させる観点から、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、さらに一層好ましくは70質量%以下である。
エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数8以上のアルコールとのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
モノマー成分Bにおけるエステル部位における炭化水素基の炭素原子数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−2)の含有率は、トムズ効果を発現させる観点から、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに一層好ましくは25質量%以上であり、ポリマーの疎水性を抑制する観点から、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらに一層好ましくは60質量%以下である。
エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−3)としては、エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a−2)と同様のものを例示することができる。好ましいエステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−3)は、エステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a−2)と同様である。
モノマー成分Bにおけるエステル部位における炭化水素基の炭素原子数が4以下の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b−3)の含有率は、ポリマーの安定性を向上させる観点から、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに一層好ましくは25質量%以上であり、ポリマーの溶解性を向上させ、トムズ効果を十分に発現させる観点から、75質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに一層好ましくは55質量%以下である。
なお、モノマー成分Bを重合させる際には、モノマー(b−1)、モノマー(b−2)およびモノマー(b−3)以外のモノマーとして、モノマー(b−4)を含有させてもよい。モノマー(b−4)としては、例えば、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数5〜7のアルコールとのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
酸基を有するモノマー(a−1)および(b−1)がいずれも(メタ)アクリル酸である場合、乳化重合の安定性が向上することから好ましい。
モノマー成分Bにおけるモノマー(b−4)の含有率は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、さらに一層好ましくは0〜5質量%である。なお、モノマー成分Bにモノマー(b−4)が含まれていなくてもよい。
モノマー成分Aとモノマー成分Bとの質量比(モノマー成分A/モノマー成分B)は、本発明の水溶性を高める観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは25/75以上であり、トムズ効果を十分に発現させる観点から、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに一層好ましくは30/70以下である。
また、アルカリ可溶性樹脂を調製する際に用いられる各モノマーの量は、各モノマー成分AおよびBにおけるモノマーのモル比によって規定することができる。
モノマー成分Aにおけるモノマー(a−1)の含有率は、ポリマーの親水性を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、さらに一層好ましくは35モル%、特に好ましくは40モル%以上であり、ポリマーの安定性を向上させる観点から、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下、さらに一層好ましくは55モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。
モノマー成分Aにおけるモノマー(a−2)の含有率は、ポリマーの安定性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、さらに一層好ましくは45モル%、特に好ましくは50モル%以上であり、ポリマーの親水性を向上させる観点から、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下、さらに一層好ましくは65モル%以下、特に好ましくは55モル%以下である。
モノマー成分Bにおけるモノマー(b−1)の含有率は、トムズ効果を十分に発現させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、さらに一層好ましくは35モル%、特に好ましくは40モル%以上であり、重合反応性および得られるポリマーの安定性を向上させる観点から、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下、さらに一層好ましくは55モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。
モノマー成分Bにおけるモノマー(b−2)の含有率は、トムズ効果を十分に発現させる観点から、好ましくは0.2モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、さらに好ましくは1モル%以上、さらに一層好ましくは1.5モル%以下、特に好ましくは3モル%以上であり、ポリマーの疎水性を抑制する観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、さらに一層好ましくは10モル%以下、特に好ましくは8モル%以下である。
モノマー成分Bにおけるモノマー(b−3)の含有率は、ポリマーの安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、さらに一層好ましくは25モル%、特に好ましくは30モル%以上であり、トムズ効果を十分に発現させる観点から、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下、さらに一層好ましくは55モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。
モノマー成分Bにおけるモノマー(b−4)の含有率は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、さらに一層好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
モノマー成分Aとモノマー成分Bとのモル比(モノマー成分A/モノマー成分B)は、本発明の水溶性を高める観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは25/75以上であり、トムズ効果を十分に発現させる観点から、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに一層好ましくは30/70以下である。
モノマー成分Aおよびモノマー成分Bは、多段重合法によって乳化重合させることができる。その際、モノマー成分Aおよびモノマー成分Bは、同じ反応系内で連続して乳化重合させることが好ましく、モノマー成分Aを先に乳化重合させ、その後にモノマー成分B重合させることがより好ましい。
モノマー成分Aおよびモノマー成分Bを乳化重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の種類、その量および添加方法は、前記と同様であればよい。
モノマー成分Aおよびモノマー成分Bの重合反応時間は、それぞれ、好ましくは0.1〜12時間、より好ましくは0.2〜10時間、さらに好ましくは、0.3〜8時間である。また、モノマー成分Aおよびモノマー成分Bの重合反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃、さらに一層好ましくは65〜75℃である。
モノマー成分Aおよびモノマー成分Bには、必要により、連鎖移動剤を適量で用いてもよい。連鎖移動剤としては、前記したものを例示することができる。
また、モノマー成分Aとして室温の純水に対して溶解度が10%以下で、アルカリ可溶性ポリマーを形成するモノマー成分を用い、当該モノマー成分を乳化重合または逆相乳化重合させることによって得られたエマルション粒子を調製した後に、モノマー成分Bとしてアルカリ不溶性ポリマーを形成するモノマー成分を用い、当該モノマー成分を乳化重合または逆相乳化重合させることにより、シェルとしてアルカリ不溶性ポリマーを形成させることができる。このコア−シェルの複合構造を有するエマルション粒子は、コアを形成するアルカリ可溶性ポリマーがシェルのアルカリ不溶性ポリマーで被覆されているので、コアのアルカリ可溶性ポリマーが徐々にエマルション粒子からアルカリ水溶液中に溶解することから、トムズ効果の持続性を高めることができる。このコア−シェルの複合構造を有するエマルション粒子は、コアの部分とシェルの部分とが境界部分で明確に分離していなくてもよく、コアの部分とシェルの部分との境界部分で組成が徐々に変化していてもよい。
以上のようにして、アルカリ可溶性樹脂を得ることができる。また、アルカリ可溶性樹脂を乳化重合法によって調製した場合には、当該アルカリ可溶性樹脂は、エマルション粒子の形態で得ることができる。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、トムズ効果を持続して発現させる観点から、50万以上、より好ましくは100万以上であり、アルカリ可溶性を向上させる観点から、好ましくは1000万以下である。なお、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
アルカリ可溶性樹脂の平均粒子径は、トムズ効果を十分に発現させるとともに形成される塗膜の表面平滑性を高める観点から、1μm以下、好ましくは500nm以下であり、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。なお、アルカリ可溶性樹脂の平均粒子径は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子には、前記アルカリ可溶性樹脂粒子が用いられる。本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子は、pHが6〜9であるアルカリ水溶液と接触したとき、アルカリ可溶性を呈する。アルカリ水溶液のpHは、トムズ効果を十分に発現させる観点から、好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは7.5〜8.5である。
本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を塗料に含有させ、当該塗料を用いて塗膜を形成させた場合には、当該塗膜が海水と接触したときに塗膜から水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子が徐々に海水中に溶解するので、当該塗膜と海水との摩擦抵抗を低減させ、トムズ効果を持続して発現させることができる。
したがって、本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子は、例えば、船底塗料などの塗料に好適に用いることができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、特別の記載がない限り、以下の実施例および比較例において、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例および比較例において、物性は以下の測定方法に基づいて調べた。
<pHの測定>
(株)堀場製作所製、pHメータ(型番:F−23)を用い、樹脂エマルションのpHを25℃で測定した。
<平均粒子径の測定>
大塚電子(株)製、動的光散乱粒子径測定装置(型番:FPAR1000)を用い、樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率が0.1質量%となるように脱イオン水で希釈した後にエマルション粒子の平均粒子径を測定した。
<重量平均分子量の測定>
溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、固形分濃度が0.2質量%となるように樹脂エマルションを希釈してサンプルを調製した。その後、東ソー(株)製、GPC装置(型番:HLC−8120GPC)を用い、以下の条件で樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子のポリマーの重量平均分子量を測定した。
・カラム:東ソー(株)製、型番:TSKgel GMHXL
・カラム温度:40℃
・溶媒流速:1.0mL/min
・検出器:示差屈折計
<不揮発分量の測定>
アルミニウム製の皿にエマルション粒子約1gを載せ、150℃の熱風乾燥機中で20分間乾燥させ、乾燥前後のエマルション粒子の質量を求め、式:
[不揮発分量(質量%)]=[(乾燥後の質量)÷(乾燥前の質量)]×100
に基づいて求めた。
製造例1(アルカリ可溶性モノマー単位および会合性モノマー単位を有する水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の調製)
撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフラスコ内に、イオン交換水115部、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:ハイテノールLA−10〕1.5部を入れた。フラスコの内温を68℃に調整し、撹拌しながら、緩やかに窒素ガスをフラスコ内に流し、フラスコ内を完全に窒素ガス置換した。
次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩1.5部をイオン交換水(92部)に溶解させることにより、水溶液を調製した。
一方、モノマー成分として、メタクリル酸40部、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルのエステル結合物(エチレンオキサイド50モル付加物)10部およびアクリル酸エチル50部を前記水溶液と混合し、撹拌することにより、プレエマルションを作製した。因みに、メタクリル酸はアルカリ可溶性モノマーであり、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルは会合性モノマーであり、アクリル酸エチルは他のモノマーである。
次に、前記モノマー成分を含むプレエマルションのうちの5質量%をフラスコ内に添加し、5分間撹拌した後、亜硫酸水素ナトリウム0.017部をフラスコ内に入れた。別途、過硫酸アンモニウム(0.23部)とイオン交換水23部とを混合し、重合開始剤水溶液を調製した。この重合開始剤水溶液のうちの5質量%を前記フラスコ内に入れ、20分間撹拌し、初期重合を行なった。フラスコの内温を72℃に保ち、残りのプレエマルションおよび重合開始剤水溶液を2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、イオン交換水8部で滴下槽を洗浄した後、フラスコ内に入れた。フラスコの内温を72℃に保ち、さらに1時間撹拌を続けた後、冷却することにより重合反応を完了させ、樹脂エマルションを得た。
得られた樹脂エマルションにおける不揮発分量は30質量%であり、エマルション粒子の平均粒子径は70nmであり、エマルション粒子を構成しているポリマーの重量平均分子量は250万であった。得られたエマルション粒子を水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子として用い、得られた樹脂エマルションを水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液として用いた。
製造例2(アルカリ可溶性モノマー単位を有する水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の調製)
モノマー成分として、メタクリル酸40部およびアクリル酸エチル60部を用い、実施例1と同様の方法でモノマー成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルションを得た。
得られた樹脂エマルションにおける不揮発分量は30質量%であり、エマルション粒子の平均粒子径は50nmであり、エマルション粒子を構成しているポリマーの重量平均分子量は300万であった。得られたエマルション粒子を水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子として用い、得られた樹脂エマルションを水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液として用いた。
製造例3(アルカリ可溶性モノマー単位を有する水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の調製)
脱イオン水30部、モノマー成分としてメタクリル酸20部およびアクリル酸エチル30重量部に25%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHが7.5の水相を調製した。
一方、シクロヘキサン150部、ソルビタンモノオレート(HLB:4.8)5部およびオレイン酸ポリグリコールエステル(HLB:12.8)3部を混合することによって油相を調製した。
次に、前記で得られた水相と油相とを超音波ホモジナイザーで2分間混合することによって乳化させた後、撹拌機、温度計および不活性ガス導入口を備えた反応容器内に入れ、反応容器内を60分間窒素ガス置換した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン塩酸塩)0.1部を1%濃度となるように脱イオン水に溶解させた水溶液を反応容器内に添加し、反応容器のジャケット温度を50℃に調整し、10時間重合反応を行なった。その後、シクロヘキサン50部を反応容器内に添加し、不揮発分量を30質量%に調整することにより、樹脂エマルションを得た。
得られた樹脂エマルションにおけるエマルション粒子の平均粒子径は200nmであり、エマルション粒子を構成しているポリマーの重量平均分子量は150万であった。得られたエマルション粒子を水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子として用い、得られた樹脂エマルションを水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液として用いた。
比較製造例1(アルカリ可溶性モノマー単位を有する低分子量の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の調製)
実施例1において、連鎖移動剤としてチオグリコール−2−エチルヘキシル0.5部をプレエマルションに添加したこと以外は、実施例1と同様の方法でモノマー成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルションを得た。
得られた樹脂エマルションにおける不揮発分量は30質量%であり、エマルション粒子の平均粒子径は60nmであり、エマルション粒子を構成しているポリマーの重量平均分子量は6万であった。得られたエマルション粒子を水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子として用い、得られた樹脂エマルションを水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液として用いた。
調製例1(水系バインダーの調製)
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水101.0部を仕込んだ。
一方、滴下ロートにポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液12部、脱イオン水5.8部、モノマー成分として2−エチルヘキシルアクリレート26部、シクロヘキシルメタクリレート70部、アクリル酸2部およびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕2部を添加することにより、プレエマルションを調製した。
前記で得られたプレエマルションのうち、モノマー成分全量のうち5質量%にあたる5.9部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌下で80℃まで昇温した。昇温後、5%過硫酸カリウム水溶液6部をフラスコ内に添加して重合を開始し、反応温度80℃で10分間維持し、初期反応を終了した。
初期反応の終了後、反応系内を80℃に維持しながら、前記プレエマルションの残部を120分間にわたってフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、脱イオン水5gで滴下ロートを洗浄し、得られた洗浄液をフラスコ内に添加した。その後、フラスコ内の内温を80℃で30分間維持し、撹拌することにより、反応混合物を得た。
前記で得られた反応混合物を室温まで冷却した後、100メッシュ(JISメッシュ)の金網で濾過することにより、不揮発分量が40.0質量%の樹脂エマルションを得た。前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している樹脂の計算上のガラス転移温度は25℃であった。この樹脂エマルションを水系バインダーとして用いた。
調製例2(溶剤系バインダー)
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコ内に、炭化水素系溶剤〔シェル社製、商品名:LAWS、脂肪族炭化水素系化合物の含有率が約70容量%の炭化水素系有機溶媒〕50部を入れ、フラスコの内温を100℃にまで昇温した。その後、スチレン37部、イソブチルメタクリレート40部、2−エチルヘキシルアクリレート17.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、メタクリル酸5部、炭化水素系溶剤〔シェル社製、商品名:LAWS、脂肪族炭化水素系化合物の含有率が約70容量%の炭化水素系有機溶媒〕50部およびベンゾイルパーオキサイド10部からなる混合物を4時間にわたってフラスコ内に滴下し、滴下終了後も同温で8時間重合反応させた。この段階で得られたポリマーの計算上のガラス転移温度は35℃であった。
次に、メチルメタクリレート10部、エチルアクリレート8部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート32部からなるモノマー成分、炭化水素系溶剤〔シェル社製、商品名:LAWS、脂肪族炭化水素系化合物の含有率が約70容量%の炭化水素系有機溶媒〕50部およびベンゾイルパーオキサイド2部を4時間にわたってフラスコ内に滴下し、滴下終了後、さらに8時間重合反応させた。2段目の滴下で得られたポリマーの計算上のガラス転移温度が48℃であり、ポリマー全体の平均ガラス転移温度が39℃であり、不揮発分量が50.0質量%の溶剤系バインダーを得た。前記で得られた溶剤系バインダーに含まれている樹脂粒子の平均粒子径は300nmであった。
実施例1(塗料の製造)
製造例1で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液100部、調製例1で得られた水系バインダー100部および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、商品名:CS−12〕30部を混合することにより、塗料を得た。
実施例2(塗料の製造)
実施例1において、製造例1で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液100部の代わりに製造例2で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液100部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして塗料を得た。
実施例3(塗料の製造)
調製例2で得られた溶剤系バインダー100部と当該溶剤系バインダー用の硬化剤〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名:バーノックDN−990S、弱溶剤可溶型ポリイソシアネート、不揮発分量:100質量%、イソシアネート基含有率(NCO%):17.5質量%〕8.9部とを混合し、撹拌した後、製造例3で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液100部を混合することにより、塗料を得た。
比較例1
比較製造例1で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液100部を25%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、pHを8に調整した後、実施例1と同様にして塗料を得た。
比較例2
製造例1で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液のpHを25%水酸化ナトリウム水溶液で8に調整することにより、当該水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を溶解させてゲル化させた。このゲル化した溶液は、粘度が高いため、塗料に用いることができなかった。
比較例3
実施例1において、製造例1で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。
比較例4
実施例3において、製造例3で得られた水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子の分散液を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして塗料を調製した。
次に、各実施例または各比較例で得られた塗料の物性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
〔水抵抗性〕
浸漬方法により、乾燥膜厚が100μmとなるように直径2cm、長さ100cmの鉄製細管の内面に低摩擦抵抗塗料を塗布し、50℃の温度で1時間乾燥させた後、130℃の温度で2時間乾燥させた。この鉄製細管を垂直に固定し、当該鉄製細管の上部に滴下ロートを装着し、ロート上部から疑似海水(pH8の5%食塩水、pHは水酸化ナトリウムによって調節、以下同様)2000mLを流し、疑似海水全量が流れ落ちるまでに要する時間を測定し、その時間を水抵抗性の初期値とした。
次に、試験後の鉄製細管を疑似海水が入った水槽に1カ月間浸漬した後、前記と同様にして水抵抗性試験を行ない、その結果を水抵抗の1カ月後の値とした。
前記で求められた水抵抗性の初期値および水抵抗の1カ月後の値それぞれについて、摩擦低減材粒子が使用されていない比較例3を基準にし、式:
[水抵抗性]
={[比較例3の水抵抗(秒)]−[各実施例または各比較例の水抵抗(秒)]}×100
に基づいて水抵抗性を評価した。
〔表面平滑性〕
各実施例または各比較例で得られた塗料を黒色のアクリル樹脂板上に乾燥後の膜厚が100μmとなるように塗布し、50℃で1時間乾燥させた後、130℃で2時間乾燥させた。このアクリル樹脂板を疑似海水が入った水層に浸漬し、50℃に加温しながら撹拌機で撹拌を2週間続けた。その後、アクリル樹脂板を疑似海水から取り出した。
光沢計〔日本電色(株)製、形式:VZ−2000〕を用い、アクリル樹脂版を疑似海水に浸漬する前後の当該アクリル樹脂板の表面の光沢値を光源の入射角が60°となるように調整して測定し、疑似海水に浸漬する前後の光沢値から式:
[光沢保持率(GR%)]=[浸漬後の光沢値]÷[浸漬前の光沢値]
に基づいて光沢保持率を算出し、以下の評価基準に基づいて表面平滑性を評価した。
[評価基準]
3点:光沢保持率が80%以上
2点:光沢保持率が60%以上80%未満
1点:光沢保持率が40%以上60%未満
0点:光沢保持率が40%未満
表1に示された結果から、各実施例で得られた塗料は、本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子が用いられていることから、水抵抗性が小さく、塗膜と海水との摩擦抵抗を低減させる効果、すなわちトムズ効果に優れており、当該トムズ効果が長期間にわたって維持されることがわかる。
したがって、本発明の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子は、例えば、船底塗料などの塗料に使用することが期待されるものである。

Claims (2)

  1. 水中において摩擦抵抗を低減させるために用いられる樹脂粒子であって、分子量が50万以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子。
  2. 請求項1に記載の水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有することを特徴とする船底塗料。
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