JP7049000B1 - 樹脂エマルション及び樹脂エマルションの製造方法 - Google Patents

樹脂エマルション及び樹脂エマルションの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】造膜性が良好であり、耐水性に優れた皮膜を形成することが可能な樹脂エマルションを提供する。【解決手段】樹脂粒子を含有する樹脂エマルションであって、樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、重合体粒子を覆う架橋反応性高分子で形成された保護層とを含み、架橋反応性高分子は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含むとともに、その構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を1~50質量%含み、架橋反応性高分子のガラス転移温度から樹脂粒子の最低造膜温度を減じて求められるΔTが1℃以上であり、かつ、樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料について測定される25℃での表面張力が40mN/m未満である樹脂エマルションを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂エマルション及び樹脂エマルションの製造方法に関する。
従来から塗料には、塗料を塗布する対象物である基材の保護、基材への機能性の付与、及び基材への美観の付与等の様々な使用目的がある。基材の保護としては、例えば、防食、防腐、防黴、防蟻、防汚、防水、殺菌、耐薬品、及び耐火等が挙げられる。基材に付与する機能としては、例えば、制振、遮熱、撥水、蛍光、蓄光、迷彩、及び有害化学物質吸着等が挙げられる。基材に付与する美観としては、例えば、平滑化、光沢付与、彩色、模様、意匠、触感、及び景観創出等が挙げられる。
塗料は、基材に塗膜を形成することによって、様々な使用目的を達成する。基材の保護及び基材への機能性付与の用途において、塗膜は、外部からの様々な攻撃に耐えうる強度を有する必要がある。例えば、耐水性及び耐光性等に代表される耐候性や、外部からの飛散物に対する耐チッピング性及び耐衝撃性等が塗膜に求められることが多い。
例えば、特許文献1には、耐チッピング性等に優れ、高い防錆性を発揮する塗膜を形成することが可能な防錆塗料用水性樹脂組成物に関する発明が開示されている。特許文献1には、塗膜の耐チッピング性は、塗膜の伸び率、破断強度、及びヤング率等を測定することにより評価することができることが記載されている。
また、特許文献2には、優れた制振性能等を有する制振性塗料及び制振性接着剤に関する発明が開示されており、一般に塗料や接着剤のヤング率が大きいほど薄膜で効果的に良い制振効果が得られることが記載されている。上述の特許文献1及び2に記載されているように、ヤング率は、皮膜の性能を評価するパラメータとして好適に用いうるといえる。なお、本明細書において、皮膜とは、エマルション、塗料、接着剤、インク、粘着剤、コーティング剤、及び液状樹脂組成物等の膜形成能を有する材料(皮膜形成材料)から形成される膜をいう。
さらに、特許文献3には、水系エマルション粒子の芯部分(コア部)及び最外殻部分(シェル部)のそれぞれをなす共重合体のガラス転移温度(Tg)が特定の条件範囲にコントロールされた共重合体エマルションを用いることで、耐候性に優れた塗膜を形成できる上塗り塗料組成物が提案されている。
特開2012-021135号公報 特開平6-239978号公報 特開2003-226835号公報
近年、地球環境への影響や人の健康への配慮から、揮発性有機溶剤の含有量が少なく、環境負荷の低減された水系の塗料や粘着剤が求められている。しかし、有機溶剤系の塗料や粘着剤を水系に変更しようとすると、水分や湿気の多い条件下で皮膜が白化してしまうことがあり、水系の皮膜形成材料においては、皮膜の耐水性について改善の余地が残されている。
上述の特許文献3に記載された上塗り塗料組成物によれば、耐候性に優れた皮膜を形成できることから、この特許文献3に開示された技術により、耐水性に優れた皮膜を形成できる水系の皮膜形成材料の提供が可能になると考えられる。しかし、水系の皮膜形成材料、特に樹脂エマルションにおいては、皮膜の耐水性のさらなる向上が求められることがある。さらに、特許文献3に開示された上塗り塗料組成物では、エマルションが用いられているものの、テキサノールといった造膜助剤も併用された上で、皮膜の形成及び評価が行われていることから、造膜性が良好なエマルションの提供は産業上有用といえる。
そこで本発明は、造膜性に優れるとともに、耐水性に優れた皮膜を形成することが可能な樹脂エマルションを提供しようとするものである。
本発明は、樹脂粒子を含有する樹脂エマルションであって、前記樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、前記重合体粒子を覆う前記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含み、前記架橋反応性高分子は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含むとともに、その構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、前記架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含み、前記架橋反応性高分子のガラス転移温度(Tg)から前記樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)を減じて求められるΔTが1℃以上であり、かつ、前記樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料について測定される25℃での表面張力が40mN/m未満である樹脂エマルションを提供する。
また、本発明は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含む架橋反応性高分子であって、前記反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、前記架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含む前記架橋反応性高分子の水性液に、エチレン性不飽和単量体を含む単量体成分を添加してソープフリーマイクロエマルション重合を行い、前記エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体粒子と、前記重合体粒子を覆う前記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む樹脂粒子を合成する工程を含む樹脂エマルションの製造方法を提供する。
本発明によれば、造膜性に優れるとともに、耐水性に優れた皮膜を形成することが可能な樹脂エマルションを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
<樹脂エマルション>
本発明の一実施形態の樹脂エマルション(以下、単に「樹脂エマルション」と記載することがある。)は、樹脂粒子を含有する。この樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、その重合体粒子を覆う架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む。その架橋反応性高分子は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含むとともに、その構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含む。この樹脂エマルションは、架橋反応性高分子のガラス転移温度(Tg)から樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)を減じて求められるΔTが1℃以上である。なおかつ、この樹脂エマルションは、当該樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料について測定される25℃での表面張力が40mN/m未満である。
一般的な従来の水系樹脂エマルションは、粒子形態がいわゆる単一型であるかコア・シェル型であるかに関わらず、樹脂粒子の周囲に、樹脂粒子に対して数質量%乃至十数質量%程度の乳化剤又は分散剤の層が存在することによって、安定な分散状態を保つことが可能であるものが多い。一方、本発明の一実施形態の樹脂エマルションにおける樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、その重合体粒子を覆う上記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む。この保護層をなす架橋反応性高分子は、重合体粒子を形成する単量体成分を取り囲み、その状態で当該単量体成分が重合したことで重合体粒子を覆っているものであり、かつ、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を1~50質量%含むものである。そのため、保護層(架橋反応性高分子層)は、乳化剤や分散剤のように、樹脂エマルション中で樹脂粒子を分散させる機能を有することが可能となる。これにより、樹脂エマルションは、樹脂粒子を分散させるための乳化剤や分散剤によらずとも、安定な分散状態を保つことが可能である。
上記樹脂エマルションは、樹脂粒子が重合体粒子とそれを覆う保護層(架橋反応性高分子層)とを含む点でいわゆるコア・シェル型のような形態をとっている。しかし、樹脂粒子の最外層をなす保護層は、従来の一般的なコア・シェル型粒子におけるシェル部とは異なる。すなわち、従来の一般的なコア・シェル型粒子では、コア部を形成するモノマー成分が重合されてコア粒子となった後、そのコア粒子の周囲にシェル部を形成するモノマー成分が重合される。これに対し、本発明の一実施形態の樹脂エマルションにおける樹脂粒子は、上述の通り、保護層をなす架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、その重合体粒子を覆う架橋反応性高分子の層(保護層)とを含む。このような樹脂粒子は、具体的には、後述する製造方法でより好適に得られる。上述のような保護層は、従来の一般的なコア・シェル型粒子におけるシェル部とは異なり、樹脂粒子の分散性を高める機能を有することが可能であるとともに、以下に述べるように、上記のΔT及び表面張力を満たしやすいものである。
また、この樹脂エマルションは、保護層によって良好な分散安定性を有することに加えて、ΔT(架橋反応性高分子のTg-樹脂粒子のMFT)が1℃以上であり、かつ、上記の不揮発分濃度10質量%における25℃での表面張力が40mN/m未満である。そのため、この樹脂エマルションは、基材に対して良好な濡れ性を有し、それにより、優れた造膜性を発揮することが可能であり、かつ、皮膜欠損の少ない耐水性に優れた皮膜を形成することが可能である。
水系エマルションにおいては、一般に、当該エマルションによる皮膜は、樹脂粒子同士が融着することによって形成される。その際、粒子界面に存在する最外層の樹脂分が、皮膜の形成に大きく関与する傾向にある。具体的には、皮膜の形成にはTg以外の様々な要因が関与するが、樹脂粒子における最外層のTgより高い温度とすることで、粒子間での融着が進行し、皮膜が形成される傾向にある。これは、上記のΔTの観点からみると、最外層のTg-樹脂粒子のMFTが0℃未満であることに相当する。これに対して、本発明の一実施形態の樹脂エマルションは、ΔTが1℃以上であるため、最外層である保護層をなす架橋反応性高分子のTgよりも低い温度でも皮膜を形成することが可能である。これにより、従来では造膜助剤を必要とするようなTgをもつ樹脂であっても、造膜助剤を使用することなく均質な皮膜を形成することが可能であり、それにより、環境負荷の低減により貢献することも可能である。また、この樹脂エマルションは、上記のΔTが1℃以上であることに加え、表面張力が低いことで良好な濡れ性を有することから、優れた造膜性を発揮することが可能である。この優れた造膜性を有することにより、樹脂エマルションは、耐水性に優れた皮膜を形成することも可能となる。
樹脂エマルションにおける良好な分散安定性、並びに特定のΔT及び表面張力は、上述の通り、保護層に起因するところが大きい。換言すれば、上記の特定のΔT及び表面張力を満たす構成の保護層とすることができる。このような保護層を含む樹脂粒子は、後述する樹脂エマルションの製造方法によって好適に製造されうる。具体的には、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を1~50質量%含む架橋反応性高分子の水性液中でエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分をソープフリーマイクロエマルション重合により重合させる。これにより、架橋反応性高分子に取り囲まれた上記単量体成分が重合した重合体粒子とそれを覆う架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む樹脂粒子を得ることが可能である。この保護層(架橋反応性高分子層)によって、上記の特定のΔT及び表面張力を満たしやすくなる。架橋反応性高分子が、重合体粒子を形成する単量体成分を取り囲み、重合体粒子を覆う保護層を形成しやすいことから、上記重合の際、上記架橋反応性高分子が有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位におけるカルボキシ基の一部又は全部が中和されていることが好ましい。これにより、架橋反応性高分子が、上記水性液中に一部溶解したり、親水性が高まったりするようになることで、重合体粒子を形成する単量体成分を取り囲みやすくなる。
以下、樹脂エマルションについて、上記の特定のΔT及び表面張力を満たしやすい観点や、耐水性に優れた皮膜を形成することが可能で造膜性に優れた樹脂エマルションが得られやすい観点等から、好ましい構成を説明する。
上記のΔTの上限及び表面張力の下限は特に限定されない。上記のΔTは、2℃以上であることが好ましく、3℃以上であることがより好ましく、4℃以上であることがさらに好ましく、また、上限は例えば100℃以下とすることができる。上記の表面張力は、39.9mN/m以下であることが好ましく、39.5mN/m以下であることがより好ましく、また、下限は例えば22.5mN/m以上とすることができる。
架橋反応性高分子のTgは、上記ΔTが1℃以上となる条件であれば特に限定されるものではなく、樹脂エマルションの用途に応じて、適宜決めることができる。樹脂エマルションの一態様において、各種コーティング用途により好適な樹脂エマルションが得られる観点から、架橋反応性高分子のTgは、-50~80℃であることが好ましい。耐ブロッキング性が良好な皮膜が得られやすい観点から、架橋反応性高分子のTgは、-50℃以上であることが好ましく、-30℃以上であることがより好ましく、-10℃以上であることがさらに好ましい。一方、造膜性がより良好な樹脂エマルションが得られやすい観点から、架橋反応性高分子のTgは、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。
重合体粒子のTgも、特に限定されず、樹脂エマルションの用途に応じて、適宜決めることができる。樹脂エマルションの一態様において、造膜性と皮膜強度の観点から、重合体粒子のTgは、-100~250℃であることが好ましく、-60~180℃であることがより好ましく、-40~110℃であることがさらに好ましい。
本明細書において、架橋反応性高分子及び重合体粒子等のポリマーのガラス転移温度(Tg)は、当該ポリマーが単独重合体(ホモポリマー)である場合には、示差走査熱量測定(DSC)による値をとることができる。また、当該ポリマーが共重合体である場合には、上記単独重合体のTgを用いて、以下のFOX式(1)から求められる理論値をとることができる。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・W/Tg ・・・(1)
上記式(1)中、Tgは、n種の単量体成分(単量体1~n)の重合体(共重合体)のガラス転移温度(単位:K)を表す。W、W、・・・Wは、n種の単量体成分の総量に対する各単量体(1、2、・・・n)の質量分率を表し、Tg、Tg、・・・Tgは、各単量体(1、2、・・・n)の単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を表す。例えば、後述する実施例で使用した単量体等を例に挙げると、その単量体の単独重合体のガラス転移温度は次の通りであり、それらの値を後述する実施例及び比較例で製造した樹脂粒子のTgの理論値の算出に用いた。
n-ブチルアクリレート(BA):-55℃
n-ブチルメタクリレート(BMA):20℃
メチルメタクリレート(MMA):105℃
エチルアクリレート(EA):-22℃
アクリル酸(AAc):105℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):-15℃
スチレン(ST):100℃
ジアセトンアクリルアミド(DAAM):77℃
樹脂粒子のMFTは、上記ΔTが1℃以上となる条件であればよい。すなわち、樹脂粒子のMFTは、架橋反応性高分子のTgよりも1℃以上低ければよい(樹脂粒子のMFT≦架橋反応性高分子のTg-1℃)。樹脂エマルションの一態様において、造膜性により優れる観点から、樹脂粒子のMFTは、60℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)は、JIS(日本産業規格;以下単に「JIS」と記載する。) K6828-2:2003の規定に準じて測定される値をとることができる。具体的には、造膜助剤を含有していない状態の樹脂エマルションについて測定されるMFTの値を、樹脂エマルションにおける樹脂粒子のMFTとすることができる。
本明細書において、樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料の25℃での表面張力は、JIS K2241:2017の6.3.3の規定に準じて、ウィルヘルミー法(ウィルヘルミー表面張力計)により測定される値をとることができる。樹脂エマルションの25℃での表面張力として、不揮発分濃度が10質量%のエマルション試料の値をとるのは、樹脂エマルションに含有されうる添加剤の影響を緩和するためである。測定対象である樹脂エマルションの不揮発分が10質量%を超える場合、例えば、当該樹脂エマルションに脱イオン水(イオン交換水)を添加することで当該樹脂エマルションの不揮発分を10質量%に調整し、エマルション試料を得ることができる。また、測定対象の樹脂エマルションの不揮発分が10質量%未満である場合、例えば、樹脂エマルション中の水性媒体を一部除去するなどして、当該樹脂エマルションの不揮発分を10質量%に調整し、エマルション試料を得ることができる。樹脂エマルションの不揮発分は、JIS K6828-1:2003の規定に準じて、乾燥温度140℃、乾燥時間0.5時間の条件で測定される値をとることができる。なお、本明細書において、不揮発分を固形分と記載することもある。
樹脂エマルションは、上述した保護層によって、樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料の25℃でのラメラ長が3.06mm以上である構成を有することが可能である。このラメラ長は、3.07mm以上であることがより好ましく、3.08mm以上であることがさらに好ましく、また、樹脂エマルションの消泡性が良好となる観点、及び皮膜欠損を抑制する観点から、4.00mm以下であることが好ましい。
ラメラ長は、表面張力に関係し、液体膜がどれだけ伸びるかということを示す指標である。ラメラ長の測定方法は、JIS K2241:2017の6.3.2の規定に準じたリング法によるデュヌイ表面張力計を用いて測定される値をとることができる。具体的には、測定対象の液体(上記エマルション試料等)に対して平行に吊り上げた金属リング(白金環)を、液中にいったん沈め、次に、リングを鉛直方向に徐々に引き離していく。このとき、リングと液面との間に形成された液体膜により、リングを引き下げる力が働く。この力は、最大値(つまり、表面張力)を示した後に、引き上げ量の増加に伴い徐々に減少し、最終的に液体膜が破壊された時点でゼロとなる。ここで、リングを引き下げる力が最大値を示してから液体膜が破壊されるまでのリングの移動距離を、ラメラ長と定義する。なお、これらリングの「引き上げ」や「引下げ」は、測定対象の液体に対する相対的な移動を表すものである。例えば、リングを固定して、測定対象の液体を載せたステージを移動させてもよい。
樹脂エマルションについて測定される平均粒子径、すなわち、樹脂粒子の平均粒子径は、10~200nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましく、30~80nmであることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法によって測定される体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(D50;メディアン径)を意味する。動的光散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて、平均粒子径を測定することができる。
樹脂エマルションは、後記の「樹脂エマルションの製造方法」で述べるように、乳化剤を使用せずとも製造可能であり、乳化剤不使用で製造された場合でも、平均粒子径が200nm以下であることを満たすことができる。樹脂エマルションは、保護層により良好な分散安定性を有することから、乳化剤、界面活性剤、及び分散剤を含有せずとも、また、微粒子であるにも関わらず、凝集することなく安定な分散状態を保つことが可能であり、それにより、造膜性にも優れる。
[樹脂粒子]
樹脂エマルションにおける樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、重合体粒子を覆う架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む。
本明細書において、エチレン性不飽和単量体とは、分子中に、重合性二重結合を少なくとも1つ有する、ラジカル重合可能な単量体を意味する。重合性二重結合としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及び3-ブテニル基等を挙げることができるが、ラジカル重合しうる重合性二重結合を有する基であれば、これらに限定されない。
(重合体粒子)
重合体粒子は、樹脂粒子におけるコア部分である。重合体粒子は、1種のエチレン性不飽和単量体が重合した重合体(単独重合体)の粒子でもよく、すなわち、1種のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(単独重合体)の粒子でもよい。重合体粒子は、2種以上のエチレン性不飽和単量体が重合(共重合)した重合体(共重合体)の粒子であることが好ましく、すなわち、2種以上のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体(共重合体)の粒子であることが好ましい。また、重合体粒子の粒子形態は、単一型(単一層)及びコア・シェル型(複層)のいずれであってもよい。
本明細書において、「構造単位」とは、樹脂(重合体)を形成する単量体の単位を意味する。「(単量体に)由来する構造単位」とは、例えば、当該単量体における重合性二重結合(C=C)が開裂して単結合(-C-C-)となった構造単位等が挙げられる。また、本明細書においては、単独重合及び共重合を特に区別することなく単に「重合」と記載することがある。
重合体粒子に用いるエチレン性不飽和単量体の種類及びその量は、樹脂エマルションの用途に応じて、適宜決めることができるが、エチレン性不飽和単量体は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。この場合、重合体粒子は、重合体粒子の全質量を基準として、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を50質量%以上(50~100質量%)含むことが好ましい。この重合体粒子の全質量を基準とした(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。上記含有量は、重合体粒子に使用された単量体成分の総質量に対する、重合体粒子に使用された(メタ)アクリル酸エステルの質量の割合で求めることができる。また、上記含有量は、重合体粒子に(メタ)アクリル酸エステルが2種以上用いられている場合には、その2種以上の合計の含有量を意味する。
また、重合安定性及び分散安定性の観点から、重合体粒子を構成する重合体(共重合体)の溶解度パラメータ(SP値)が11.0以下となるような、エチレン性不飽和単量体の種類及び量とすることが好ましい。ここで、SP値とは、下記式(2)より算出される凝集エネルギー密度の平方根で定義される物性値である。
δ(SP値)=(ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・(2)
上記式(2)に示されるように、SP値は、その分子構造からFedorsの推算法により算出されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算される。すなわち、物質の各官能基の凝集エネルギー密度の合計ΣEcohと、モル分子容の合計ΣVより、上記式(2)のように定義することができる。凝集エネルギーの単位はJ/molの場合が多いが、本明細書では、J/molの単位のSP値を4.19の係数で除してcal/molを用いた。原子団、基固有の凝集エネルギー、モル分子容の定数は「R.F.Fedors, Polym. Eng. Sci., 14 [2], 147-154(1974)」に記載の数値を用いることができる。共重合体のSP値は、共重合体中のそれぞれの繰り返し単位(エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位)の単独(各単独のエチレン性不飽和単量体)でのSP値をもとに、その使用量の比率(モル比)を用いて算出することができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」との文言には、「アクリル」及び「メタクリル」の両方の文言が含まれることを意味する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との文言には、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方の文言が含まれることを意味する。以下の単量体の説明において、特に断りのない限り、当該説明中の単量体は、いずれも1種又は2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、並びにそれら以外の他の(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。この(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、1~22であることが好ましく、1~16であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルの具体例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、及びナフチルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、及びナフチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、及び[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
他の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;2-クロロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、及びパーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、及び3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体;2-スルホエチル(メタ)アクリレート、及び3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート;2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基又はアリール基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
重合体粒子は、上述の(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子であってもよい。この場合、重合体粒子は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。
他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸系単量体、スチレン系単量体、窒素原子を有する不飽和単量体、ビニル系単量体、不飽和アルコール、ビニルエーテル系単量体、ビニルエステル系単量体、エポキシ基を有する不飽和単量体、及びスルホン酸基を有する不飽和単量体等を挙げることができる。
不飽和カルボン酸系単量体には、不飽和カルボン酸、並びにその無水物及びモノエステルが含まれる。不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びシトラコン酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、及び無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、及びイタコン酸モノブチルエステル等の不飽和カルボン酸のモノエステルを挙げることができる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-エチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、o-,m-,p-ヒドロキシスチレン、o-,m-,p-メトキシスチレン、o-,m-,p-エトキシスチレン、o-,m-,p-クロロスチレン、o-,m-,p-ブロモスチレン、o-,m-,p-フルオロスチレン、及びo-,m-,p-クロロメチルスチレン等を挙げることができる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
窒素原子を有する不飽和単量体としては、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアノ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-[2-ジメチルアミノエチル](メタ)アクリルアミド、N-[3-ジメチルアミノプロピル](メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、及び4-メタクリロイルモルホリン等のアクリルアミド系単量体;N-ビニルアセトアミド、及びN-ビニル-N-メチルアセトアミド等のビニル基を有するアセトアミド系単量体;N-ビニル-2-ピロリドン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-ビニル-2-オキサゾリン、及び2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のビニル基を有する含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。
ビニル系単量体としては、例えば、塩化ビニル及びフッ化ビニル等が挙げられる。不飽和アルコールとしては、例えば、ビニルアルコール及びアリルアルコール等が挙げられる。ビニルエーテル系単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、及びジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニル等が挙げられる。エポキシ基を有する不飽和単量体としては、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。スルホン酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
さらに、重合体粒子を形成する単量体成分には、エチレン性不飽和単量体として、重合性二重結合を2以上有する単量体(以下、「多官能モノマー」という。)を用いることも可能である。多官能モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びグリセリンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;並びにジアリルフタレート等が挙げられる。
また、重合体粒子を形成する単量体成分には、エチレン性不飽和単量体として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を用いることも可能である。
(保護層)
樹脂エマルションにおける樹脂粒子は、上述の重合体粒子を覆う保護層を含む。保護層は、架橋反応性高分子の存在下、架橋反応性高分子に取り囲まれた単量体成分が重合したことで当該単量体成分が重合した重合体粒子を覆うこととなった架橋反応性高分子の層である。架橋反応性高分子は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含むとともに、その構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含む。カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、架橋反応性高分子に使用された単量体成分の総質量に対する、架橋反応性高分子に使用されたカルボキシ基含有重合性単量体の質量の割合で求めることができる。また、上記含有量は、当該単量体に該当する単量体が2種以上用いられている場合には、その2種以上の合計の含有量を意味する。
カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を1~50質量%含む架橋反応性高分子の水性液(好ましくは中和された架橋反応性高分子の水性液)中で重合体粒子を形成する単量体成分を重合させることにより、重合体粒子を覆い、安定な分散状態を保つことが可能な保護層を得ることが可能である。この観点から、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、架橋反応性高分子の全質量を基準として、2~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。また、架橋反応性高分子は、上記水性液中に一部溶解したり、親水性が高まったりするようになることで、重合体粒子を形成する単量体成分を取り囲みやすくなることから、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位におけるカルボキシ基の一部又は全部が中和されているものであることが好ましい。
架橋反応性高分子における反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位は、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位のみで構成されていてもよいし、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位と、それ以外の反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位とから構成されていてもよい。
架橋反応性高分子は、架橋反応性高分子の全質量を基準として、上記カルボキシ基含有重合性単量体を1~50質量%含むことから、上記カルボキシ基含有重合性単量体以外の重合性単量体に由来する構造単位を50~99質量%含むことができる。カルボキシ基含有重合性単量体以外の重合性単量体としては、上記カルボキシ基含有重合性単量体以外の反応性基含有重合性単量体(以下、「他の反応性基含有重合性単量体」と記載することがある。)、及び反応性基含有重合性単量体以外の重合性単量体(以下、「他の重合性単量体」と記載することがある。)を挙げることができる。架橋反応性高分子を形成する単量体成分には、他の反応性基含有重合性単量体、及び他の重合性単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
本明細書において、重合性単量体とは、分子中に、重合性二重結合及び重合性三重結合等の重合性不飽和結合を少なくとも1つ有する、ラジカル重合可能な単量体を意味する。重合性不飽和結合としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、3-ブテニル基、及びエチニル基等を挙げることができるが、ラジカル重合しうる重合性不飽和結合を有する基であれば、これらに限定されない。
反応性基含有重合性単量体は、重合性不飽和結合と、重合性不飽和結合以外の反応性基とを有する重合性単量体であって、重合後の架橋反応性高分子に反応性基を含有させる単量体であればよい。反応性基含有重合性単量体には、架橋剤が有する官能基と反応可能な反応性基を有する単量体を好適に用いることができる。したがって、反応性基含有重合性単量体は、皮膜を得る際に使用されうる架橋剤が有する官能基の種類に応じて架橋反応性を示しうるものである。使用する架橋剤の種類に応じて架橋反応性を示しうる観点から、反応性基を有する重合性単量体(反応性基含有重合性単量体)を広く用いることができるものとする。
反応性基としてカルボキシ基を有する反応性基含有重合性単量体、すなわち、カルボキシ基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びシトラコン酸等の不飽和カルボン酸;並びにマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、及びイタコン酸モノブチルエステル等の不飽和カルボン酸のモノエステル;を挙げることができる。また、カルボキシ基含有重合性単量体としては、水に溶解した際にカルボキシ基を生じるものでもよく、例えば、無水マレイン酸、及びイタコン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物も挙げられる。カルボキシ基含有重合性単量体のなかでも、不飽和カルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
反応性基含有重合性単量体が有する好適な反応性基としては、カルボキシ基含有重合性単量体が有するカルボキシ基のほか、例えば、カルボニル基、リン酸基、リン酸エステル基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、及びアルコキシシリル基等を挙げることができる。これらの反応性基のうちの1種又は2種以上が反応性基含有重合性単量体に含まれていてもよい。また、架橋反応性高分子は、反応性基含有重合性単量体に由来する上記反応性基のうちの1種又は2種以上を有することができ、上記反応性基のうちの2種以上を有することが好ましい。これにより、樹脂エマルション(それにおける架橋反応性高分子)を変更することなく、樹脂エマルションの用途に応じて、その使用時において様々な架橋剤を選択しうることから、様々な用途に好適に利用しうる汎用性の高い樹脂エマルションとすることができる。上記反応性基のなかでも、カルボキシ基のほか、カルボニル基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。架橋反応性高分子は、カルボキシ基のほか、カルボニル基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、少なくともカルボニル基を有することがより好ましい。
反応性基としてカルボニル基を有する反応性基含有重合性単量体としては、例えば、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、及びアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
反応性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する反応性基含有重合性単量体としては、例えば、2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
反応性基として水酸基を有する反応性基含有重合性単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、及び[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
反応性基としてグリシジル基を有する反応性基含有重合性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
反応性基としてイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する反応性基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル、及び2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
反応性基としてアルコキシシリル基を有する反応性基含有重合性単量体としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を挙げることができる。
反応性基含有重合性単量体としては、前述の重合体粒子に用いられるエチレン性不飽和単量体の説明で挙げた具体例のうち、上述した反応性基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることもできる。
カルボキシ基含有重合性単量体以外の反応性基含有重合性単量体(他の反応性基含有重合性単量体)は、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
架橋反応性高分子の形成に用いうる反応性基含有重合性単量体以外の重合性単量体(他の重合性単量体)としては、前述の重合体粒子に用いられるエチレン性不飽和単量体の説明で挙げた具体例のうち、上述した反応性基を有しないエチレン性不飽和単量体を用いることができる。そのなかでも、前述の(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸アリールエステル等)、並びにスチレン系単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
架橋反応性高分子は、反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位とともに、カルボキシ基含有重合性単量体以外の反応性基含有重合性単量体(他の反応性基含有重合性単量体)に由来する構造単位をさらに含むことが好ましい。また、架橋反応性高分子は、カルボキシ基含有重合性単量体を含む反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位とともに、反応性基含有重合性単量体以外の重合性単量体(他の重合性単量体;反応性基非含有の重合性単量体)に由来する構造単位をさらに含むことが好ましい。さらに、架橋反応性高分子は、カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位と、他の反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位と、他の重合性単量体に由来する構造単位とを含むことがより好ましい。
架橋反応性高分子は、架橋反応性高分子の全質量を基準として、反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を5~50質量%、及び反応性基含有重合性単量体以外の重合性単量体(他の重合性単量体)に由来する構造単位を50~95質量%含むことがより好ましい。架橋反応性高分子の全質量を基準とした反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。架橋反応性高分子の全質量を基準とした、他の重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、60~95質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることがさらに好ましい。上記の単量体に由来する構造単位の含有量は、架橋反応性高分子に使用された単量体成分の総質量に対する、架橋反応性高分子に使用された当該単量体(反応性基含有重合性単量体又は他の重合性単量体)の質量の割合で求めることができる。また、上記の各単量体の含有量は、当該単量体に該当する単量体が2種以上用いられている場合には、その2種以上の合計の含有量を意味する。
架橋反応性高分子は、架橋反応性高分子の全質量を基準として、カルボキシ基含有重合性単量体以外の反応性基含有重合性単量体(他の反応性基含有重合性単量体)に由来する構造単位を0~49質量%含むことが好ましい。架橋反応性高分子の全質量を基準とした上記他の反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、3~38質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることがさらに好ましい。上記の他の反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位の含有量は、架橋反応性高分子に使用された単量体成分の総質量に対する、架橋反応性高分子に使用された当該他の反応性基含有重合性単量体の質量の割合で求めることができる。また、上記の他の反応性基含有重合性単量体の含有量は、当該単量体に該当する単量体が2種以上用いられている場合には、その2種以上の合計の含有量を意味する。
重合体粒子及び架橋反応性高分子(保護層)の総質量に占める、架橋反応性高分子の質量の割合は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。
樹脂粒子の含有量は、特に限定されない。樹脂エマルションの一態様において、樹脂粒子の含有量は、樹脂エマルションの全質量を基準として、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。樹脂粒子の質量は、上記の重合体粒子及び架橋反応性高分子(保護層)の総質量で求めることができ、また、それぞれに使用された単量体成分の質量に基づいて求めることができる。
樹脂エマルションは、架橋剤を含有しない場合、及び架橋剤とともに用いられない場合でも、上述の通り、造膜性に優れることから、樹脂粒子同士の融着によって、耐水性に優れた皮膜を形成することが可能である。具体的には、樹脂エマルションを用いて皮膜を形成する際に、樹脂エマルションを含む液を塗工した後、樹脂粒子の保護層をなす架橋反応性高分子のTgよりも高い温度条件下で乾燥させることが好ましい。それにより、粒子間での融着が進行し、耐水性に優れた皮膜を形成することが可能である。
[架橋剤]
樹脂エマルションは、架橋反応性高分子(保護層)が有する反応性基と反応可能な架橋剤をさらに含有するもの、又はその架橋剤とともに用いられるものであることが好ましい。これにより、樹脂エマルションを用いて皮膜を形成する際に、樹脂粒子の保護層をなす架橋反応性高分子が有する反応性基含有重合性単量体に由来する反応性基と架橋剤とを反応させることができる。それにより、皮膜に三次元網目構造を形成することが可能となり、保護層を硬化させて、機械的性質(引張強さ及び引張伸び)並びに耐久性がより向上した皮膜を得ることが可能である。
架橋剤としては、保護層である架橋反応性高分子が有する反応性基と反応しうる官能基を2以上有する架橋剤を好適に用いることができる。例えば、架橋反応性高分子が反応性基として有するカルボキシ基に対して架橋剤を反応させる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、多官能エポキシ化合物;多官能カルボジイミド化合物;メチロールメラミン等のメラミン系架橋剤;多官能オキサゾリン化合物;並びに多価金属等を挙げることができる。
また同様に、上記反応性基にカルボニル基が含まれる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、例えば、多官能ヒドラジド化合物、及びポリアミン等を挙げることできる。上記反応性基にリン酸基又はリン酸エステル基が含まれる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、例えば、水酸基を多く有する化合物(例えばポリオール)等を挙げることができる。上記反応性基に水酸基が含まれる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、そのブロック化イソシアネート化合物、及び酸無水物等を挙げることができる。上記反応性基にグリシジル基が含まれる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、例えば、多官能カルボキシ基含有化合物、ポリアミン、及び酸無水物等を挙げることができる。上記反応性基にイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基が含まれる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、例えば、ポリオール、ポリアミン、及びポリカルボン酸化合物等を挙げることができる。上記反応性基にアルコキシシリル基が含まれる場合に好適に使用しうる架橋剤としては、例えば、ポリアルコキシシリル基化合物等を挙げることができる。上記の架橋剤の1種又は2種以上を用いることができる。
上述の通り、架橋反応性高分子は、カルボキシ基を有するとともに、少なくともカルボニル基を有することがより好ましいことから、架橋剤として、多官能ヒドラジド化合物を用いることがより好ましい。多官能ヒドラジド化合物としては、入手の容易さ等の観点から、ジカルボン酸ジヒドラジドを好適に用いることができる。ジカルボン酸ジヒドラジドとしては、例えば、しゅう酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、及びセバシン酸ジヒドラジド等の炭素原子数が2~18の飽和脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド;並びにマレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、及びイタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド等を挙げることができる。これらのなかでも、飽和脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジドが好ましく、アジピン酸ジヒドラジドがより好ましい。架橋剤と反応性基含有重合性単量体の組み合わせに関し、架橋剤は、ジカルボン酸ジヒドラジドを含み、反応性基含有重合性単量体は、ジアセトンアクリルアミドを含むことがさらに好ましい。
架橋剤の使用量は、樹脂エマルションにおける樹脂粒子100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。また、架橋剤の使用量は、架橋反応性高分子(保護層)が有する反応性基に対して、0.01~3モル当量であることが好ましく、0.1~2モル当量であることがより好ましく、0.5~1.5モル当量であることがさらに好ましい。
[水性媒体]
樹脂エマルションは、分散質である前述の樹脂粒子の分散媒として、水性媒体を含有することができる。水性媒体は、少なくとも水を含む液状媒体であり、水のみを使用してもよいし、水、及び水と混じり合うことができる有機溶剤のうちの1種又は2種以上を含む混合溶剤を用いてもよい。水には、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、及びN-メチルピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されない。水性媒体としては、水を主成分として用いることが好ましく、水性媒体の全質量を基準として、水を50~100質量%用いることがより好ましい。
水性媒体の含有量は、特に限定されない。樹脂エマルションの一態様において、水性媒体の含有量は、樹脂エマルションの全質量を基準として、50~90質量%であることが好ましく、55~85質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることがさらに好ましい。
前述の通り、樹脂エマルションは、樹脂粒子の最外層をなす保護層が架橋反応性高分子であるため、乳化剤を含有せずとも、安定な分散状態を保つことが可能である。そのため、樹脂エマルションは、乳化剤を実質的に含有しないものであってもよい。具体的には、乳化剤の含有量は、樹脂エマルションの全質量を基準として、0.5質量%未満に制限されていることが好ましく、0.05質量%未満に制限されていることがより好ましく、0.01質量%未満に制限されていることがさらに好ましい。このよう範囲で乳化剤の含有量が制限されていることで、より耐水性に優れた皮膜を形成しやすい樹脂エマルションを得ることが可能となる。なお、用途に応じて、樹脂エマルションには、種々の乳化剤、界面活性剤、又は分散剤を配合してもよい。
また、樹脂エマルションは、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、顔料及び染料等の着色剤、金属化合物、可塑剤、発泡剤、滑剤、ゲル化剤、造膜助剤、凍結防止剤、架橋剤、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、防黴剤、殺菌剤、防錆剤、難燃剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、帯電防止剤、及びブロッキング防止剤等を挙げることができる。
樹脂エマルションは、造膜性に優れ、また、耐水性に優れた皮膜を形成可能であることから、例えば、塗料、インク、接着剤、粘着剤、及びコーティング剤等の皮膜形成材料に好適に利用されうる。樹脂エマルションを用いて皮膜を形成する際には、皮膜を設ける対象物である基材に、樹脂エマルションや、樹脂エマルションを含む皮膜形成材料を塗布し、乾燥させることで皮膜を形成することができる。塗布方法は、特に限定されず、例えば、ロールコート法、バーコート法、スクリーンコート法、ダイコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、及びスプレーコート法等を挙げることができる。上記基材も特に限定されず、例えば、各種プラスチック、木材、ガラス、金属、及び紙等を挙げることができる。
<樹脂エマルションの製造方法>
上述した樹脂エマルションは、以下に述べる本発明の一実施形態の樹脂エマルションの製造方法によって得られたものであることが好ましい。以下に述べる樹脂エマルションの製造方法において用いられる用語は、いずれも、前述の本発明の一実施形態の樹脂エマルションの説明で挙げた用語と同様に説明されるものである。
その樹脂エマルションの製造方法は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含む架橋反応性高分子の水性液に、エチレン性不飽和単量体を含む単量体成分を添加してソープフリーマイクロエマルション重合を行う工程を含む。この工程において、上記水性液には、上記反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含む架橋反応性高分子の水性液を用いる。また、上記工程において、上記ソープフリーマイクロエマルション重合により、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体粒子と、重合体粒子を覆う架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む樹脂粒子を合成することができる。この樹脂エマルションの製造方法により、前述の本発明の一実施形態の樹脂エマルションを製造することが可能である。
本明細書において、「ソープフリー」とは、乳化剤、界面活性剤、及び分散剤を使用しないことを意味する。また、「マイクロエマルション重合」とは、単量体を油相成分としてマイクロエマルションを作製し、重合反応を行う重合方法を意味する。「マイクロエマルション」とは、ミセルの直径が100nm程度以下と小さく、強い撹拌を要せず容易に形成されるものをいう。
架橋反応性高分子と、重合体粒子を形成するためのエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分との比率は、架橋反応性高分子及び当該単量体成分の総質量に対して、架橋反応性高分子の質量の割合が20~80質量%の範囲となる比率とすることが好ましい。この割合は、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。架橋反応性高分子の質量は、当該架橋反応性高分子に使用された反応性基含有重合性単量体を含む単量体成分の総質量に基づいて求めることができる。重合体粒子の質量は、当該重合体粒子に使用されたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分の総質量に基づいて求めることができる。
ソープフリーマイクロエマルション重合を行う際には、水溶性重合開始剤及び油溶性重合開始剤等の重合開始剤を用いることができる。本製造方法では、重合安定性の観点、及び得られる樹脂エマルションから形成される皮膜の耐水性に優れる観点から、ソープフリーマイクロエマルション重合を、油溶性重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。これにより、架橋反応性高分子の水性液に分散したモノマー滴(重合体粒子を形成する、エチレン性不飽和単量体を含む単量体成分の油相滴)に溶解した油溶性重合開始剤からラジカルを発生させることができる。このラジカルにより重合を進行させることができ、油相中でラジカルが発生することによる一種の懸濁重合を行うことができる。
油溶性重合開始剤には、油溶性であり、かつ、油相中でラジカルを発生させる重合開始剤を使用することができる。油溶性重合開始剤としては、例えば、油溶性有機過酸化物や油溶性アゾ化合物等を用いることができる。油溶性有機過酸化物としては、例えば、4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキサイド等を挙げることができる。
油溶性アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等を挙げることができる。上記の油溶性重合開始剤の1種又は2種以上を用いることができる。上記の油溶性重合開始剤のなかでも、油溶性アゾ化合物を用いることが好ましい。
油溶性重合開始剤の使用量は、重合体粒子の合成に使用する、エチレン性不飽和単量体を含む単量体成分100質量部に対して、0.01~3.0質量部であることが好ましく、0.03~2.0質量部であることがより好ましく、0.1~1.0質量部であることがさらに好ましい。
ソープフリーマイクロエマルション重合を行う際には、重合体粒子を形成するための単量体成分を架橋反応性高分子の水性液に添加し、混合してマイクロエマルションを作製し、重合反応を行うことができる。この際、重合開始剤として好適な油溶性重合開始剤を用いる場合には、好ましくはマイクロエマルションに油溶性重合開始剤を含有させることができる。すなわち、上記単量体成分及び油溶性重合開始剤を含むマイクロエマルションを用いることが好ましい。架橋反応性高分子の水性液への単量体成分や重合開始剤の添加方法は特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、及び多段添加法等の方法を採ることができ、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
ソープフリーマイクロエマルション重合の際の重合温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、40~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、55~85℃であることがさらに好ましい。また、この際の重合時間は、1~24時間が好ましく、3~12時間がより好ましく、5~10時間がさらに好ましい。
本発明の一実施形態の樹脂エマルションの製造方法は、上記の樹脂粒子を合成する工程の前に、架橋反応性高分子の水性液を得る工程をさらに含んでいてもよい。架橋反応性高分子は溶剤を用いなくても合成可能であるが、好適には、次のようにして架橋反応性高分子の水性液を得ることができる。架橋反応性高分子の水性液を得る工程は、溶剤中で、カルボキシ基含有重合性単量体を含む反応性基含有重合性単量体を含有する単量体成分を重合させて架橋反応性高分子を合成した後、塩基性物質による中和後に水相に反転乳化して、架橋反応性高分子の水性液を得ることを含む工程であることが好ましい。
上記の溶剤には、非反応性の溶剤を好適に用いることができる。溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等の脂肪族炭化水素;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、及びベヘニルアルコール等の炭素原子数8以上(より好ましくは8~22)の高級アルコール;酢酸エチル、酢酸プロピル、及び酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルイソブチルケトン、及びメチルブチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。溶剤の1種又は2種以上を用いることができる。溶剤を除去して、架橋反応性高分子の水性液を得ることが好ましいことから、沸点が100℃未満の溶剤、又は水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましい。
溶剤の使用量は、架橋反応性高分子の合成に使用する、反応性基含有重合性単量体を含む単量体成分100質量部に対して、0~300質量部であることが好ましく、30~200質量部であることがより好ましく、50~150質量部であることがさらに好ましい。
上記のように溶剤中で反応性基含有重合性単量体を含有する単量体成分を重合させる場合、この重合は、油溶性重合開始剤の存在下で行うことができる。油溶性重合開始剤には、上記の油溶性有機過酸化物や油溶性アゾ化合物等を用いることができる。架橋反応性高分子を得る際の油溶性重合開始剤の使用量は、架橋反応性高分子の合成に使用する、反応性基含有重合性単量体を含む単量体成分100質量部に対して、0.01~3.0質量部であることが好ましく、0.03~2.0質量部であることがより好ましく、0.1~1.0質量部であることがさらに好ましい。
架橋反応性高分子の合成後に中和に使用する塩基性物質としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びジメチルアミノエタノール等のアミン類;1-アミノ-2-プロパノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミノアルコール類;並びに水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。塩基性物質は、水溶液の形態で用いることが好ましい。塩基性物質の使用量は、架橋反応性高分子の水性液のpHが5.0~9.0、より好ましくは5.5~8.5、さらに好ましくは6.0~8.0の範囲内となる量とすることができる。
架橋反応性高分子を得る際の重合には、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、及びα-メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。連鎖移動剤の1種又は2種以上を用いることができる。
架橋反応性高分子を得る際の重合温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、40~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、55~85℃であることがさらに好ましい。また、この際の重合時間は、1~24時間が好ましく、3~12時間がより好ましく、5~10時間がさらに好ましい。
反転乳化の際に使用する水相には、前述の水性媒体と同様の液状媒体を用いることができ、少なくとも脱イオン水を用いることが好ましい。反転乳化により、架橋反応性高分子の水性液を得ることができる。得られる水性液は、架橋反応性高分子が分散している水分散液でもよいし、架橋反応性高分子が溶解している水溶液でもよいし、水中に架橋反応性高分子の一部が分散し、かつ他の一部が溶解している形態でもよい。
架橋反応性高分子の水性液を得る工程は、上記の反転乳化の後に、溶剤を除去することを含むことが好ましい。架橋反応性高分子、溶剤、及び水を含有する液を、例えば、減圧、加熱、又はそれらの両方の処理を行うことで、溶剤を除去することが可能である。溶剤を除去する際の温度は、40~90℃であることが好ましく、40~80℃であることがより好ましく、50~70℃であることがさらに好ましい。減圧条件は、-0.45~0.75MPa程度とすることが好ましい。
前述の架橋剤を含有する樹脂エマルションを製造する場合には、上記のソープフリーマイクロエマルション重合を行って樹脂粒子を合成した後のエマルションに架橋剤を添加すればよい。架橋剤は、水溶液又は水分散液の形態で用いることが好ましい。ソープフリーマイクロエマルション重合後のエマルションに架橋剤を添加する際には、重合後のエマルションを室温(例えば5~35℃の範囲)程度に冷却してから、架橋剤を添加することが好ましい。また、架橋剤は、樹脂エマルションの使用時に添加されてもよい。
以上詳述した通り、本技術は、以下の構成をとることが可能である。
[1]樹脂粒子を含有する樹脂エマルションであって、
前記樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、前記重合体粒子を覆う前記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含み、
前記架橋反応性高分子は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含むとともに、その構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、前記架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含み、
前記架橋反応性高分子のガラス転移温度(Tg)から前記樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)を減じて求められるΔTが1℃以上であり、かつ、
前記樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料について測定される25℃での表面張力が40mN/m未満である樹脂エマルション。
[2]前記エマルション試料の25℃でのラメラ長が3.06mm以上である上記[1]に記載の樹脂エマルション。
[3]前記樹脂粒子の平均粒子径が10~200nmである上記[1]又は[2]に記載の樹脂エマルション。
[4]前記架橋反応性高分子は、前記カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位における前記カルボキシ基の一部又は全部が中和されているものである上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[5]前記架橋反応性高分子は、前記反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、前記カルボキシ基含有重合性単量体以外の反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位をさらに含む上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[6]前記架橋反応性高分子は、前記反応性基含有重合性単量体以外の重合性単量体に由来する構造単位をさらに含む上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[7]前記エチレン性不飽和単量体は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含み、前記重合体粒子は、前記重合体粒子の全質量を基準として、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を50質量%以上含む上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[8]前記重合体粒子及び前記架橋反応性高分子の総質量に占める前記架橋反応性高分子の質量の割合は20~80質量%である上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[9]前記樹脂エマルションは、前記架橋反応性高分子が有する前記反応性基と反応可能な架橋剤をさらに含有するもの、又は前記架橋剤とともに用いられるものである上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[10]前記架橋剤はジカルボン酸ジヒドラジドを含み、前記反応性基含有重合性単量体はジアセトンアクリルアミドを含む上記[9]に記載の樹脂エマルション。
[11]乳化剤の含有量が、前記樹脂エマルションの全質量を基準として、0.5質量%未満に制限されている上記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂エマルション。
[12]反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含む架橋反応性高分子であって、前記反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、前記架橋反応性高分子の全質量を基準として、1~50質量%含む前記架橋反応性高分子の水性液に、エチレン性不飽和単量体を含む単量体成分を添加してソープフリーマイクロエマルション重合を行い、前記エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体粒子と、前記重合体粒子を覆う前記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む樹脂粒子を合成する工程を含む樹脂エマルションの製造方法。
[13]前記ソープフリーマイクロエマルション重合を油溶性重合開始剤の存在下で行う上記[12]に記載の樹脂エマルションの製造方法。
[14]前記樹脂粒子を合成する工程の前に、前記架橋反応性高分子の水性液を得る工程をさらに含み、前記架橋反応性高分子の水性液を得る工程は、溶剤中で、前記カルボキシ基含有重合性単量体を含む前記反応性基含有重合性単量体を含有する単量体成分を重合させて前記架橋反応性高分子を合成した後、塩基性物質による中和後に水相に反転乳化して、前記架橋反応性高分子の水性液を得ることを含む上記[12]又は[13]に記載の樹脂エマルションの製造方法。
[15]前記架橋反応性高分子の水性液を得る工程は、前記反転乳化の後に、前記溶剤を除去することを含む上記[14]に記載の樹脂エマルションの製造方法。
以下、実施例及び比較例を挙げて、前述の一実施形態のさらなる具体例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<架橋反応性高分子の製造>
(製造例A1)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、酢酸ブチル100.6質量部と、n-ブチルアクリレート(以下、BA)49.0質量部、メチルメタクリレート(以下、MMA)35.0質量部、アクリル酸(以下、AAc)10.0質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEA)1.0質量部、及びジアセトンアクリルアミド(以下、DAAM)5.0質量部からなる単量体成分(合計100.0質量部;そのうち反応性基含有重合性単量体はAAc、HEA、及びDAAMで合計16.0質量部)と、N-ドデシルメルカプタン(以下、L-SH)1.0質量部とを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら50℃に昇温した。
アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)0.4質量部を上記フラスコ内に添加して直ちに85℃まで昇温し、フラスコ内の液温を85℃に維持しながら、3時間重合した。その後、上記フラスコ内の液に、25質量%アンモニア水12.0質量部及び脱イオン水40.0質量部からなる溶液を30分かけて添加して中和を行い、フラスコ内の液のpHを8.0に調整した。この液を30分撹拌した後、脱イオン水240.0質量部を1時間かけて添加し、連続相を水(水相)に反転乳化させた。次に、上記フラスコ内の液温を50~70℃の範囲内とし、-0.45~0.75MPaの減圧下で酢酸ブチルを水とともに留去した。このようにして、固形分が30.0質量%である半透明液体として、架橋反応性高分子の水性液(A1)を得た。
(製造例A2)
製造例A1で使用したBA49.0質量部及びMMA35.0質量部を、BA35.0質量部及びMMA49.0質量部に変更したこと以外は、製造例A1と同様の方法により、固形分が30.0質量%である半透明液体として、架橋反応性高分子の水性液(A2)を得た。
(製造例A3)
製造例A1で使用したBA49.0質量部及びMMA35.0質量部を、BA25.0質量部及びMMA59.0質量部に変更したこと以外は、製造例A1と同様の方法により、固形分が30.0質量%である半透明液体として、架橋反応性高分子の水性液(A3)を得た。
(製造例A4)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、酢酸ブチル100.6質量部と、BA49.0質量部、MMA15.0質量部、スチレン(以下、ST)15.0質量部、AAc15.0質量部、HEA1.0質量部、及びDAAM5.0質量部からなる単量体成分(合計100.0質量部)と、L-SH2.0質量部とを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら50℃に昇温した。
AIBN0.4質量部を上記フラスコ内に添加して直ちに85℃まで昇温し、フラスコ内の液温を85℃に維持しながら、3時間重合した。その後、上記フラスコ内の液に、25質量%アンモニア水18.0質量部と脱イオン水40.0質量部からなる溶液を30分かけて添加して中和を行い、フラスコ内の液のpHを8.0に調整した。この液を30分撹拌した後、脱イオン水234.0質量部を1時間かけて添加し、連続相を水(水相)に反転乳化させた。次に、上記フラスコ内の液温を50~70℃の範囲内とし、-0.45~0.75MPaの減圧下で酢酸ブチルを水とともに留去した。このようにして、固形分が30.0質量%である乳白色液体として、架橋反応性高分子の水性液(A4)を得た。
(製造例A5)
製造例A4で使用した単量体のうち、ST15.0質量部をシクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMA)15.0質量部に変更したこと、及び製造例A4で使用したL-SHの使用量(2.0質量部)を1.5質量部に変更したこと以外は、製造例A4と同様の方法により、架橋反応性高分子の水性液(A5)を得た。得られた架橋反応性高分子の水性液(A5)は、固形分が30.0質量%である乳白色液体であった。
(製造例A6)
製造例A4において、重合時に使用した単量体成分、及びL-SHの使用量、並びに反転乳化時に使用した25質量%アンモニア水及び脱イオン水のそれぞれの使用量を変更したこと以外は、製造例A4と同様の方法により、架橋反応性高分子の水性液(A6)を得た。得られた架橋反応性高分子の水性液(A6)は、固形分が30.0質量%である半透明液体であった。製造例A6では、製造例A4で使用した単量体成分(合計100.0質量部)を、MMA42.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(以下、2EHA)40.0質量部、AAc12.0質量部、HEA1.0質量部、及びDAAM5.0質量部からなる単量体成分(合計100.0質量部)に変更した。また、製造例A4で使用したL-SHの使用量(2.0質量部)を1.0質量部に変更した。さらに、製造例A4において、反転乳化時に使用した25質量%アンモニア水18.0質量部及び脱イオン水234.0質量部を、それぞれ、25質量%アンモニア水15.0質量部及び脱イオン水237.0質量部に変更した。
製造例A1~A6で製造した架橋反応性高分子の水性液の製造条件について、その製造過程における重合、中和、反転乳化、及び溶剤除去の各段階に分けて表1に示す。
Figure 0007049000000001
<樹脂エマルションの製造>
(実施例1)
n-ブチルアクリレート(BA)25.0質量部及びメチルメタクリレート(MMA)25.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部からなる単量体混合液を調製した。一方、撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、架橋反応性高分子の水性液(A1)166.7質量部(固形分50.0質量部)及び脱イオン水47.1質量部を仕込んだ。上記フラスコ内を窒素雰囲気下に撹拌しながら、フラスコ内に、上記単量体混合液を30分かけて添加した。続いて、上記フラスコ内の液温を70℃に昇温し、8時間かけて重合反応(ソープフリーマイクロエマルション重合)を行った。得られた樹脂エマルションは、乳化剤を使用していないにも関わらず、安定な分散状態を保っていた。このことから、マイクロエマルション重合で使用した単量体成分が重合した重合体粒子と、それを覆う架橋反応性高分子からなる保護層とを含む樹脂粒子を含有する樹脂エマルションが得られたことが認められる。
その後、得られた樹脂エマルションを室温(25℃)まで冷却した後、その樹脂エマルションに、架橋剤として5質量%アジピン酸ジヒドラジド(ADH)水溶液25.8質量部(ADHとして1.3質量部)を添加した。このようにして、実施例1の常温架橋性のアクリル系樹脂エマルション(アクリル系樹脂組成物)を得た。得られた樹脂エマルションの固形分は35.0質量%であった。
(実施例2~9)
実施例1で使用した架橋反応性高分子の水性液及び単量体成分の種類及び使用量、並びに5質量%ADH水溶液の使用量を表2(表2-1及び表2-2)に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2~9の常温架橋性のアクリル系樹脂エマルション(アクリル系樹脂組成物)を得た。得られた樹脂エマルションはいずれも、固形分が35.0質量%であった。
なお、実施例2の製造条件は、実施例1で使用した単量体成分(合計50.0質量部)を、BA25.0質量部、MMA20.0質量部、及びST5.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例3の製造条件は、実施例1で使用した単量体成分(合計50.0質量部)を、BA18.0質量部及びMMA32.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例4の製造条件は、実施例1で使用した単量体成分(合計50.0質量部)を、MMA24.5質量部及びエチルアクリレート(以下、EA)25.5質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例5の製造条件は、実施例1で使用した単量体成分(合計50.0質量部)を、MMA6.0質量部及びn-ブチルメタクリレート(以下、BMA)44.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例6の製造条件は、実施例1で使用した架橋反応性高分子の水性液(A1)を、架橋反応性高分子の水性液(A2)に変更したこと、並びに実施例1で使用した単量体成分(合計50.0質量部)を、BA18.0質量部及びMMA32.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例7の製造条件は、実施例1で使用した架橋反応性高分子の水性液(A1)を、架橋反応性高分子の水性液(A3)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例8の製造条件は、実施例1で使用した架橋反応性高分子の水性液(A1)を、架橋反応性高分子の水性液(A3)に変更したこと、並びに実施例1で使用した単量体成分(合計50.0質量部)を、BA13.0質量部及びMMA37.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1の製造条件と同様である。
実施例9の製造条件は、実施例6で使用した、架橋反応性高分子の水性液(A2)、脱イオン水、及び5質量%ADH水溶液の各使用量を、それぞれ、83.3質量部、72.2質量部、及び12.9質量部(ADHとして0.65質量部)に変更したこと以外は、実施例6の製造条件と同様である。
(比較例1)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水116.2質量部及び反応性アニオン乳化剤としてアリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩(商品名「アクアロンKH-10」、第一工業製薬株式会社製;以下の反応性アニオン乳化剤も同じである。)0.8質量部を仕込み、撹拌しながら液温を80℃まで昇温させた。一方、上記フラスコとは別に、BA25.0質量部及びMMA25.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)、並びに反応性アニオン乳化剤3.6質量部、及び脱イオン水25.0質量部を、ホモディスパーで乳化させ、1段階目の単量体乳化液を調製した。
次に、上記フラスコ内の液温を80℃に維持しながら、そのフラスコ内に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液1.0質量部を添加し、直ちに、調製した1段階目の単量体乳化液を滴下ロートから1時間かけて均一に滴下し、これと同時に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液10.0質量部を、1時間かけて均一に滴下した。さらに1時間重合した後に1段階目の乳化重合液を得た。
続けて、予め調製した2段階目の単量体乳化液と1質量%過硫酸アンモニウム水溶液10質量部とを同時に、1時間かけて上記1段階目の乳化重合液に滴下した。2段階目の単量体乳化液には、BA24.5質量部、MMA17.5質量部、AAc5.0質量部、HEA0.5質量部、及びDAAM2.5質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)、並びにL-SH0.5質量部、反応性アニオン乳化剤3.6質量部、及び脱イオン水24.4質量部からなる単量体乳化液を使用した。滴下終了後の重合液を80℃で3時間維持した後、室温(25℃)まで冷却し、重合液に25質量%アンモニア水3.2質量部を添加して中和したところ、重合液が増粘及び凝集し、樹脂エマルションを得ることができなかった。
上記の通り、比較例1では、実施例1における重合体粒子に使用した単量体成分の種類及び使用量と同等の1段階目の単量体乳化液、並びに実施例1における架橋反応性高分子に使用した単量体成分の種類及び使用量と同等の2段階目の単量体乳化液を使用して、2段階乳化重合を行ったが、樹脂エマルションを得ることはできなかった。
(比較例2)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水116.2質量部及び反応性アニオン乳化剤0.8質量部を仕込み、撹拌しながら液温を80℃まで昇温させた。一方、上記フラスコとは別に、BA25.0質量部及びMMA25.0質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)、並びに反応性アニオン乳化剤3.6質量部、及び脱イオン水25.0質量部を、ホモディスパーで乳化させ、1段階目の単量体乳化液を調製した。
次に、上記フラスコ内の液温を80℃に維持しながら、そのフラスコ内に、10質量%過硫酸アンモニウム1.0質量部を添加し、直ちに、調製した1段階目の単量体乳化液を滴下ロートから1時間かけて均一に滴下し、これと同時に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液10質量部を、1時間かけて均一に滴下した。さらに1時間重合した後に1段階目の乳化重合液とした。
続けて、予め調製した2段階目の単量体乳化液と1質量%過硫酸アンモニウム水溶液10質量部とを同時に、1時間かけて上記1段階目の乳化重合液に滴下した。2段階目の単量体乳化液には、BA25.0質量部、MMA20.0質量部、AAc2.0質量部、HEA0.5質量部、及びDAAM2.5質量部からなる単量体成分(合計50.0質量部)、並びにL-SH0.5質量部、反応性アニオン乳化剤3.6質量部、及び脱イオン水24.4質量部からなる単量体乳化液を使用した。滴下終了後の重合液を80℃で3時間維持した後、室温(約25℃)まで冷却し、重合液に25質量%アンモニア水1.7質量部を添加して中和した後、5質量%ADH水溶液20.6質量部を添加し、比較例1のエマルション型の常温架橋性のアクリル系樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は35.0質量%であった。
(比較例3~6)
比較例2において、1段階目及び2段階目に使用した各単量体成分の種類及び使用量を表3に示す通りとしたこと以外は、比較例1と同様の方法により、比較例3~6のエマルション型の常温架橋性のアクリル系樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物はいずれも、固形分が35.0質量%であった。
<評価>
上記の実施例及び比較例で得た各樹脂組成物について、以下に述べる方法にて、平均粒子径、樹脂粒子の最低造膜温度(MFT;℃)、並びに不揮発分10質量%としたときの25℃での表面張力及びラメラ長を測定した。また、上記の実施例及び比較例で得た各樹脂組成物を用いて作製した皮膜について、以下に述べる方法にて、耐水性の評価及び引張試験を行った。それらの結果を表2(表2-1及び表2-2)及び表3に示す。なお、これらの表には、前述したFOX式(1)に基づき算出したガラス転移温度(Tg)も示した。また、実施例においては、前述した式(2)に基づき算出した重合体粒子のSP値、架橋反応性高分子のTg、重合体粒子のTg、及び最外層である架橋反応性高分子のTg-MFT=ΔTの値を示し、比較例においては、1段階目の重合物のTg、2段階目の重合物のTg、及び最外層である2段階目の重合物のTg-MFT=ΔTの値を示した。
(平均粒子径)
製造できた各樹脂組成物について、樹脂粒子の動的光散乱法による平均粒子径(nm)を測定した。具体的には、動的光散乱法を利用した粒度分布測定装置(商品名「濃厚系粒径アナライザー FPAR-1000」、大塚電子株式会社製)を用いて体積基準の粒度分布を測定し、累積50%となる粒子径(D50;メディアン径)を平均粒子径として求めた。
(樹脂粒子の最低造膜温度)
製造できた各樹脂組成物について、造膜試験機(株式会社井元製作所製)を用いて、JIS K6828-2:2003の規定に準じて、最低造膜温度(MFT;℃)を測定した。MFTの測定は、樹脂のTgを考慮して下限を0℃とし、0℃において造膜可能であったものは、MFTを0℃未満(MFT<0)とした。
(表面張力)
製造できた各樹脂組成物について、不揮発分濃度を10質量%に調整したときの25℃での表面張力を測定した。具体的には、樹脂組成物(固形分35.0質量%)をイオン交換水で希釈して、不揮発分濃度を10質量%に調整した試料を用意した。次いで、その試料について、JIS K2241:2017の6.3.3の規定に準じたウィルヘルミー法により、表面張力計(商品名「DY-300」、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃における表面張力を測定した。測定は同一試料に対して5回以上行った。得られた数値の標準偏差と平均値の関係が標準偏差≦平均値×0.02を満たさない場合は試料の調整から再度行い、標準偏差≦平均値×0.02を満たすまで試験を繰り返した。
(ラメラ長)
製造できた各樹脂組成物について、表面張力の測定に用いた試料と同様に、不揮発分濃度を10質量%に調整した試料を用意し、その試料について、JIS K2241:2017の6.3.2の規定に準じたデュヌイ法により、白金リングを使用した表面張力計(商品名「DY-300」、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃におけるラメラ長を測定した。具体的には、測定対象である試料に対して平行に吊り上げた金属リング(白金リング)を、液中にいったん沈め、次に、リングを鉛直方向に徐々に引き離していく試験を行った。このとき、リングと試料液面との間に形成された液体膜によって生じたリングを引き下げる力が、最大値(つまり、表面張力)を示してから、リングの引き上げ量の増加に伴い最終的に液体膜が破壊されるまでのリングの移動距離を、ラメラ長(mm)として測定した。ラメラ長の測定は、リングの上昇速度(ステージ下降速度)を0.10mm毎秒の条件で行い、同じ試料に対して5回以上行った。得られた測定値の標準偏差と平均値の関係が標準偏差≦平均値×0.02を満たさない場合は試料の調整から再度行い、標準偏差≦平均値×0.02を満たすまで試験を繰り返し、このときの平均値をラメラ長とした。
(耐水性)
製造できた各樹脂組成物を用いて皮膜を作製し、その皮膜の耐水性を評価した。具体的には、基材としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)板に、樹脂組成物を100μm厚さ/wetで塗布し、50℃で3時間乾燥させて、PMMA板に皮膜を形成した。このPMMA板に設けられた皮膜を耐水性試験用の試料とした。この試料を40℃の温水中に5時間浸漬して耐水性試験を行った。色彩色差計(商品名「CR-400」、コニカミノルタジャパン株式会社製)を用いて、耐水性試験前の試料における皮膜表面を基準とした、耐水性試験後の試料における皮膜表面の色差(ΔE ab;以下、ΔE)を測定した。ΔEの値が小さいほど、耐水性に優れた皮膜であることを表す。
(引張試験)
製造できた各樹脂組成物を用いて皮膜を作製し、その皮膜について引張試験を行った。具体的には、樹脂組成物を、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で1週間乾燥させ、短冊状(長さ約60mm、幅約10mm、厚さ約0.7mm)の皮膜試料を作製した。その皮膜試料について、引張試験機(商品名「テンシロン万能試験機 RTG-1210」、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、23℃、引張速度2mm/分、チャック間距離20mmの条件にて引張試験を行い、引張強さ(破断強度;MPa)及び引張伸び(破断伸度;%)を測定した。また、引張試験により得られた応力-ひずみ曲線から、引張弾性率(ヤング率;MPa)を求めた。
Figure 0007049000000002
Figure 0007049000000003
Figure 0007049000000004
表2に示す通り、実施例1~9のアクリル系樹脂エマルション(樹脂組成物)は、架橋反応性高分子のTgから樹脂粒子のMFTを減じて求めたΔTが1℃以上であり、かつ、不揮発分濃度が10質量%のときの25℃での表面張力が40mN/m未満であった。また、実施例1~9のアクリル系樹脂エマルションは、造膜性が良好であるとともに耐水性に優れた皮膜を形成することが可能であることが認められた。
これに対し、実施例で使用した単量体成分と概ね同等程度の単量体成分を用いて2段階乳化重合により得られた比較例2~6のエマルション型樹脂組成物は、表3に示す通り、不揮発分濃度が10質量%のときの25℃での表面張力が40mN/mを超え、比較例3~6のエマルション型樹脂組成物についてはさらにΔTが1℃未満であった。また、比較例2~4のエマルション型樹脂組成物は、耐水性に優れた皮膜を形成することができず、比較例5及び6のエマルション型樹脂組成物は、造膜性に劣ることが確認された。
以上の結果から、実施例では、架橋反応性高分子の水性液中でソープフリーマイクロエマルション重合により重合体粒子を合成したことで、重合体粒子とそれを取り囲む架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む樹脂粒子が得られたと認められる。そして、その樹脂粒子における保護層によって、上記のΔTが1℃以上であり、かつ、上記の表面張力が40mN/m未満を満たしたと推察される。
なお、以下に述べる試験例の通りに製造する場合にも、ΔTが1℃以上であり、かつ、不揮発分濃度が10質量%のときの25℃での表面張力が40mN/m未満であり、造膜性に優れ、耐水性に優れた皮膜を形成可能な樹脂エマルションを得ることができる。
(試験例B1)実施例1で用いた架橋反応性高分子の水性液(A1)を、製造例A4~A6で製造した架橋反応性高分子の水性液(A4)~(A6)にそれぞれ変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B2)製造例A1で使用した単量体成分を、BA49.0質量部、MMA35.0質量部、AAc10.0質量部、及びDAAM6.0質量部からなる単量体成分に変更すること以外は、製造例A1と同様の方法により製造する架橋反応性高分子の水性液を、架橋反応性高分子の水性液(A1)の代わりに用いること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B3)実施例1における重合体粒子の形成に用いた単量体成分を、BA20.0質量部、MMA25.0質量部、及びエチレングリコールジメタクリレート5.0質量部からなる単量体成分に変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B4)実施例1における重合体粒子の形成に用いた単量体成分を、MMA37.5質量部、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.5質量部からなる単量体成分に変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B5)実施例1で使用した架橋反応性高分子の水性液(A1)の使用量166.7質量部(固形分50.0質量部)を55.7質量部(固形分16.7質量部)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B6)実施例1で使用した架橋反応性高分子の水性液(A1)の使用量166.7質量部(固形分50.0質量部)を333.3質量部(固形分100.0質量部)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B7)実施例1で架橋剤として用いた5質量%ADH水溶液25.8質量部を、ポリイソシアネート系架橋剤の水分散液(商品名「タケネート WD-725」、三井化学株式会社製;固形分25質量%)12.0質量部(固形分3質量部)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B8)実施例1で架橋剤として用いた5質量%ADH水溶液25.8質量部を、多官能カルボジイミド系架橋剤の水溶液(商品名「カルボジライト V-02」、日清紡ケミカル株式会社製;固形分50質量%)10.0質量部(固形分5.0質量部)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法により製造する。
(試験例B9)実施例1における5質量%ADH水溶液を使用しないこと以外は、実施例1と同様の方法により製造する。

Claims (14)

  1. 樹脂粒子を含有する樹脂エマルションであって、
    前記樹脂粒子は、架橋反応性高分子に取り囲まれたエチレン性不飽和単量体を含む単量体成分が重合した重合体粒子と、前記重合体粒子を覆う前記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含む、マイクロエマルション重合物であるとともに、前記樹脂粒子の平均粒子径が30~80nmであり
    前記架橋反応性高分子は、反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含むとともに、その構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、前記架橋反応性高分子の全質量を基準として、5~20質量%含み、
    前記架橋反応性高分子のガラス転移温度(Tg)から前記樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)を減じて求められるΔTが1℃以上であり、かつ、
    前記樹脂エマルションの不揮発分濃度を10質量%に調整したエマルション試料であって、界面活性剤を含有しない前記エマルション試料について測定される25℃での表面張力が40mN/m未満であり、
    乳化剤、界面活性剤、及び分散剤を含有しない樹脂エマルション。
  2. 前記エマルション試料の25℃でのラメラ長が3.06mm以上である請求項1に記載の樹脂エマルション。
  3. 前記架橋反応性高分子は、前記カルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位における前記カルボキシ基の一部又は全部が中和されているものである請求項1又は2に記載の樹脂エマルション。
  4. 前記架橋反応性高分子は、前記反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、前記カルボキシ基含有重合性単量体以外の反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位をさらに含む請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂エマルション。
  5. 前記架橋反応性高分子は、前記反応性基含有重合性単量体以外の重合性単量体に由来する構造単位をさらに含む請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂エマルション。
  6. 前記エチレン性不飽和単量体は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含み、
    前記重合体粒子は、前記重合体粒子の全質量を基準として、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を50質量%以上含む請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂エマルション。
  7. 前記重合体粒子及び前記架橋反応性高分子の総質量に占める前記架橋反応性高分子の質量の割合は20~80質量%である請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂エマルション。
  8. 前記樹脂エマルションは、前記架橋反応性高分子が有する前記反応性基と反応可能な架橋剤をさらに含有するもの、又は前記架橋剤とともに用いられるものである請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂エマルション。
  9. 前記架橋剤はジカルボン酸ジヒドラジドを含み、
    前記反応性基含有重合性単量体はジアセトンアクリルアミドを含む請求項に記載の樹脂エマルション。
  10. 反応性基を有する反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位を含む架橋反応性高分子であって、前記反応性基含有重合性単量体に由来する構造単位として、カルボキシ基を有するカルボキシ基含有重合性単量体に由来する構造単位を、前記架橋反応性高分子の全質量を基準として、5~20質量%含む前記架橋反応性高分子の水性液に、
    エチレン性不飽和単量体を含む単量体成分を添加し、混合してマイクロエマルションを得た後に、乳化剤、界面活性剤、及び分散剤を使用せずにマイクロエマルション重合を行い、前記エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体粒子と、前記重合体粒子を覆う前記架橋反応性高分子で形成された保護層とを含むマイクロエマルション重合物である樹脂粒子を合成し、前記樹脂粒子の平均粒子径が30~80nmであり、乳化剤、界面活性剤、及び分散剤を含有しない樹脂エマルションを得る工程を含む樹脂エマルションの製造方法。
  11. 記マイクロエマルション重合を油溶性重合開始剤の存在下で行う請求項10に記載の樹脂エマルションの製造方法。
  12. 前記マイクロエマルションを得るに当たり、水を含有せずに前記単量体成分及び前記油溶性重合開始剤を含有する混合液を、前記架橋反応性高分子の水性液に添加する請求項11に記載の樹脂エマルションの製造方法。
  13. 前記樹脂粒子を合成して前記樹脂エマルションを得る工程の前に、前記架橋反応性高分子の水性液を得る工程をさらに含み、
    前記架橋反応性高分子の水性液を得る工程は、溶剤中で、前記カルボキシ基含有重合性単量体を含む前記反応性基含有重合性単量体を含有する単量体成分を重合させて前記架橋反応性高分子を合成した後、塩基性物質による中和後に水相に反転乳化して、前記架橋反応性高分子の水性液を得ることを含む請求項1012のいずれか1項に記載の樹脂エマルションの製造方法。
  14. 前記架橋反応性高分子の水性液を得る工程は、前記反転乳化の後に、前記溶剤を除去することを含む請求項13に記載の樹脂エマルションの製造方法。
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