JP2014162426A - ストラットタワー補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接部の破損を回避することができるようにした、ストラットタワー補強構造を提供する。
【解決手段】車両左右両側に設けられた一対のストラットタワー20,20と、車幅方向に延在する延在部材30と、ストラットタワー20,20のそれぞれと延在部材30とを連結する一対の連結部材10,10とを備え、連結部材10,10によるストラットタワー20,20と延在部材30との間の力の伝達経路に溶接部が形成され、連結部材10,10は、ストラットタワー20,20と延在部材30との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成された屈曲部13を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、ストラットタワーを補強する構造に関するものである。
自動車に装備されるサスペンションには、ストラット(支柱)を備えたものがある。ストラットの上部は、車体の一部を構成するストラットタワー(ストラットハウス)に取り付けられている。
ストラットタワーには、走行時の路面反力が入力されるため、剛性が要求される。特に操舵輪のストラットタワーの場合、剛性を高めることにより、操縦性を向上させることができる。このため、従来の車両には、左右のストラットタワーを相互に連結するストラットタワーバーが装着されたものがある。これにより、両ストラットタワーの剛性が向上し、一方(例えば右方)のストラットタワーの変形量と他方(例えば左方)のストラットタワーの変形量との相違が抑制されて、操縦安定性が確保される。
これに対し、ストラットタワーバーを設けることなく左右のストラットタワーを連結し、サスペンション周りの車体剛性を高める構造が特許文献1に開示されている。
特許文献1の構造は、一方のストラットタワーが一方のガセットを介してカウルトップの一端部に連結され、同様に、他方のストラットタワーが他方のガセットを介してカウルトップの他端部に連結される。各ガセットは、その前部を対応するストラットタワーに溶接で接合され、その後部をカウルトップに溶接で接合される。すなわち、一方及び他方のガセットとカウルトップとは、左右のストラットタワーを連結している。これにより、ストラットタワーバーが装着された場合と同様に、ストラットタワーの変形量の相違が抑制される。
特開2005−75133号公報
ところで、ストラットタワーには、ストラットを通じて路面反力が繰り返し入力される。ストラットタワーへの入力は車体の各溶接部を通って伝達されるため、各溶接部には応力が繰り返し作用する。
しかしながら、溶接部やその周辺(以下、これらをまとめて「溶接部」という)は、応力が繰り返し作用すると破損するおそれがある。さらに、特許文献1の構造のようにガセットとストラットタワーとの間やガセットとカウルトップとの間が溶接で接合される場合、溶接部が破損すると車体剛性を高めることができなくなる。
特許文献1の構造では、ストラットを通じてストラットタワーに路面反力が入力した際の応力が、ガセットとカウルトップやストラットタワーとを接合する溶接部に繰り返し作用し、溶接部が破損してしまうおそれがある。特に、スポット溶接により溶接部が形成される場合には、応力が溶接部に集中し、破損のおそれが高まる。
本発明の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、溶接部の破損を回避することができるようにした、ストラットタワー補強構造を提供することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。
(1)上記の目的を達成するために、本発明のストラットタワー補強構造は、車両左右両側に設けられた一対のストラットタワーと、車幅方向に延在する延在部材と、前記ストラットタワーのそれぞれと前記延在部材とを連結する一対の連結部材とを備え、前記連結部材による前記ストラットタワーと前記延在部材との間の力の伝達経路に溶接部が形成され、前記連結部材は、前記ストラットタワーと前記延在部材との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成された屈曲部を有することを特徴としている。
すなわち、前記ストラットタワーは、前記連結部材を介して前記延在部材により互いに連結されている。
また、前記ストラットタワーと前記延在部材との間の力の伝達経路に形成された前記溶接部には、前記連結部材における溶接部はもちろん、前記連結部材と前記ストラットタワーとを接合する溶接部や前記連結部材と前記延在部材とを接合する溶接部も含まれる。
(2)前記溶接部は、スポット溶接により形成されることが好ましい。
(3)前記延在部材は、前記ストラットタワーの車両後方に設けられ、前記連結部材は、前記ストラットタワーに接合された第一フランジ部と、前記延在部材に接合された第二フランジ部と、前記第一フランジ部と前記第二フランジ部とを接続する面部とを有し、前記屈曲部は、前記面部に形成され車両側面視で屈曲していることが好ましい。
(4)前記連結部材は前記ストラットタワーに接合された第一連結部材と前記延在部材に接合された第二連結部材とを有し、前記溶接部は前記第一連結部材と前記第二連結部材との間に形成されることが好ましい。
(5)前記屈曲部は、前記第一連結部材に形成されることが好ましい。
(6)前記延在部材は、カウルトップであることが好ましい。
本発明のストラットタワー補強構造によれば、左右一対のストラットタワーは、連結部材を介して延在部材により互いに連結されているため、ストラットタワーが補強(剛性向上)され、路面からの入力(路面反力)に対する左右のストラットタワーの変形量の相違が抑制される。これにより、車両の操縦安定性を確保することができる。
この補強構造では、路面からの力が伝わり、連結部材によるストラットタワーと延在部材との間の力の伝達経路に形成された溶接部に過剰な応力が作用すれば、溶接部の破損を招くが、ストラットタワーと延在部材とを連結する連結部材は、ストラットタワーと延在部材との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成された屈曲部を有するため、溶接部に作用する応力が吸収されて軽減されることにより、溶接部の破損を回避することができる。
本発明の一実施形態に係るストラットタワー補強構造の全体を示す斜視図である。 図1のA−A矢視断面図である。 図2の領域Bの拡大図である。 ガセット(連結部材)を分解して示す斜視図であり、(a)はアッパガセットパネルを示し、(b)はロアガセットパネルを示す。 本発明の一実施形態に係るストラットタワー補強構造の変形例を示す拡大断面図であり、(a)は第一変形例を示し、(b)は第二変形例を示し、(c)は第三変形例を示し、(d)は第四変形例を示す。
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。本発明のストラットタワー補強構造は、ストラットタワー(「ストラットハウス」,「ストラットハウジング」,「サスペンションタワー」などとも称される)を補強する構造である。このストラットタワーは、ストラット式のサスペンションが装備された自動車(車両)に設けられる。なお、本実施形態では、車両前部の空間(フロントにエンジンを搭載する車両であればエンジンルーム,以下、単に「エンジンルーム」という)に設けられ、前輪に対応するサスペンションのストラットを収容するストラットタワーに着目して説明する。
また、下記の実施形態では、車両の前進方向を前方とし、この逆方向を後方とし、重力の作用方向を下方とし、この逆方向を上方とし、これらの前後方向及び上下方向の何れにも直交する方向を車幅方向とする。なお、車両の前進方向に向いたときの左方を単に左方といい、この逆方向を単に右方という。
〔一実施形態〕
〔構成〕
はじめに、図1を参照して、ストラットタワー補強構造に係る各部材を説明する。
ストラットタワー20は、エンジンルーム1の左右両側にそれぞれ設けられている。つまり、左前輪用のストラットタワー20と右前輪用のストラットタワー20とが対をなして配設されている。これらのストラットタワー20,20は、それぞれ上に凸の形状に形成された車体パネルの一部である。
以下、各ストラットタワー20を基準に、その後方に配置された部材,その前方に配置された部材,その側方に配置された部材の順に説明する。
各ストラットタワー20の後方には、上方から順にカウルトップ(延在部材)30及びダッシュパネル40が設けられている。これらのカウルトップ30及びダッシュパネル40は、何れも車幅方向に延在しており、各左端部が左前輪用のストラットタワー20の後方に位置し、各右端部が右前輪用のストラットタワー20の後方に位置している。
各ストラットタワー20とカウルトップ30の端部との間には、ガセット(連結部材)10が介設されている。これにより、一対のガセット10,10とカウルトップ30とは、一対のストラットタワー20,20を互いに連結している。
各ストラットタワー20の前方には、車輪(ここでは前輪)の上方を覆うフェンダーシールドパネル50が設けられている。
各ストラットタワー20の車幅方向外側には、エンジンルーム1の側壁の一部であるアッパインナフレームパネル60が設けられ、また、各ストラットタワー20の車幅方向内側には、車体前部の骨格構造であるフロントサイドメンバ70が設けられている。
上記したストラットタワー20及びその周辺部材10,30,40,50,60,70は、車幅方向中心を挟んで左右対称に設けられているため、以下の説明では、一方(ここでは左方)の構成に着目し、図1のA−A矢視断面を示す図2を参照して説明する。ここでは、ストラットタワー20及びその前後に配置された周辺部材10,30,40,50について説明する。
ストラットタワー20は、サスペンション2のストラット2aやスプリング2b(何れも二点鎖線で示す)を覆うように突設されたパネル部材である。このストラットタワー20は、その先端側に設けられた上面パネル21とその基端側に設けられた側面パネル22とを有する。なお、ストラットタワー20の先端側とは、ストラットタワー20が突出している側(上側)であり、この逆側(下側)が基端側である。
上面パネル21には、ストラット2aやスプリング2bの上端に装備されたスプリングサポート3(二点鎖線で示す)が取り付けられる。この上面パネル21の周縁部21a(図2では前側の周縁部に符号を付す)には、側面パネル22が溶着されている。
側面パネル22は、ストラット2aやスプリング2bの周囲を囲繞し、上下に延在している。この側面パネル22は、その上縁部22a(図2では後側の上縁部に符号を付す)が上面パネル21の周縁部21aに溶着され、その下縁部22b(図2では後側の下縁部に符号を付す)がダッシュパネル40及びフェンダーシールドパネル50のそれぞれに溶着されている。この下縁部22bでは、前側にフェンダーシールドパネル50が溶着され、後側にダッシュパネル40が溶着される。さらに、上縁部22aの後側はガセット10と溶着されるが、これについての詳細は後述する。
上記したように、ストラットタワー20にはサスペンション2を支持するスプリングサポート3が取り付けられるため、走行時の路面反力が入力されると、ストラットタワー20は変形し、カウルトップ30に対して相対的に変位する。
次に、ストラットタワー20の後方に配置される部材を、カウルトップ30,ダッシュパネル40,ガセット10の順に説明する。
カウルトップ30は、ストラットタワー20から離隔して設けられる。このカウルトップ30は、アッパパネル31とインナパネル32とロアパネル33とを有し、複数のパネルが接合された骨格部材である。
アッパパネル31は、カウルトップ30の上部に配置され、ウィンドウシールド(図示略)を支持し、その後部31aがインナパネル32の上部32aと溶着されている。
インナパネル32は、カウルトップ30の後部に配置され、エンジンルーム1の上部と車室9とを隔てている。このインナパネル32の下部32bは、その前側にロアパネル33の後部33aが溶着され、その後側にダッシュパネル40の上部40aが溶着されている。
ロアパネル33は、カウルトップ30の下部に配置されるとともにインナパネル32の下部32bよりも前方に配置されており、その上部33bがデッキガーニッシュ(図示略)などのフロントウィンドウの下端周辺に設けられた部材を支持している。
また、ロアパネル33は、その後部33a及び上部33bが何れもフランジ状に形成されており、後部33aと上部33bとを接続する本体部33cが断面L字型(アングル型)に形成されている。この本体部33cは、ガセット10が溶着され、ここでは、後部33aから前方に延びて上方に折れ曲がって上部33bに至る断面形状となっている。
ダッシュパネル40は、上下に延びるように設けられ、その上部40aが上記したようにカウルトップ30のインナパネル32における下部32bに溶着され、その中間部40bがストラットタワー20の側面パネル22における下縁部22bに溶着されている。このダッシュパネル40は、エンジンルーム1の下部と車室9とを隔てる隔壁として機能する。
ガセット10は、ストラットタワー20の上面パネル21及び側面パネル22とカウルトップ30のロアパネル33とを連結するパネル部材であり、アッパガセットパネル(第二連結部材)11とロアガセットパネル(第一連結部材)12とを有する。これらのガセットパネル11,12のそれぞれは、何れも一枚のパネルをプレス加工して形成することができる。
以下、図2の領域Bを拡大して示す図3と各ガセットパネル11,12を取り出して示す図4を参照して、ガセット10の詳細を説明する。このガセット10は、車両上面視(図示略)では屈曲しておらず、車両側面視で屈曲している。なお、図3及び図4では、スポット溶接により形成された溶接部を*印で示す。
アッパガセットパネル11は、車幅方向に沿った一つの折れ目f1が設けられ、断面L字型のパネルである。このアッパガセットパネル11は、車幅方向を長手方向とし、図3及び図4(a)に示すようにアッパフランジ部(第二フランジ部)11aとアッパ面部11bとを有する。これらのアッパフランジ部11aとアッパ面部11bとの境界部分に折れ目f1が設けられており、ここでは、折れ目f1がアッパフランジ部11aに対してアッパ面部11bを下方に傾斜させている。
アッパフランジ部11aは、カウルトップ30に接合される部分であり、具体的には、図3に示すようにカウルトップ30のロアパネル33における本体部33cにスポット溶接で接合されるフランジ部である。すなわち、アッパフランジ部11aと本体部33cとの間には溶接部が形成されている。なお、図4(a)には、アッパフランジ部11aに接合されるカウルトップ30の接合縁部を二点鎖線で示す。
アッパ面部11bは、ロアガセットパネル12にスポット溶接で接合される面部である。すなわち、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12との間には溶接部が形成される。
ロアガセットパネル12は、車幅方向に沿った二つの折れ目f2,f3が設けられたパネルである。このロアガセットパネル12は、車幅方向を長手方向とし、図3及び図4(b)に示すロアフランジ部(第一フランジ部)12aとロア面部12bと、図4(b)に示す側壁部12cとを有する。ロアフランジ部12a及びロア面部12bは車幅方向に沿って設けられ、これに直交する方向に沿って側壁部12cが設けられる。
以下、ロアガセットパネル12について、ロアフランジ部12a,ロア面部12b,側壁部12cの順に説明する。
ロアフランジ部12aは、ストラットタワー20と接合される部分であり、具体的には、図3に示すようにストラットタワー20の上面パネル21における周縁部21a及び側面パネル22における上縁部22aにスポット溶接で接合されるフランジ部である。言い換えれば、上面パネル21の周縁部21aと側面パネル22の上縁部22aとが重ね合わされた箇所に、ロアフランジ12aが溶着される。このため、ロアフランジ部12aとストラットタワー20との間には溶接部が形成される。なお、図4(b)には、ロアフランジ部12aに接合されるストラットタワー20の接合縁部を二点鎖線で示す。
ロア面部12bは、上方から順に、第一面部121,第二面部122及び第三面部123を有し、ストラットタワー20とカウルトップ30との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成された屈曲部13が形成されている。
第一面部121は、アッパガセットパネル11と接合される面部であり、具体的には、アッパガセットパネル11のアッパ面部11bとスポット溶接により形成された溶接部で接合される面部である。
ロア面部12bでは、第一面部121と第二面部122との境界部分に折れ目f2が設けられ、また、第二面部122と第三面部123との境界部分に折れ目f3が設けられている。つまり、ロア面部12bでは、二つの折れ目f2,f3が三つの面部121,122,123を区画している。
詳細には、第一面部121に対して第二面部122が一方(ここでは後方)に傾斜するように折れ目f2が設けられ、第二面部122に対して第三面部123が他方(ここでは前方)に傾斜するように折れ目f3が設けられる。逆に言えば、折れ目f2が、第一面部121に対して第二面部122を後方に傾斜させ、折れ目f3が、第二面部122に対して第三面部123を前方に傾斜させている。このように、折れ目f2,f3は、互いに逆方向にロア面部12bを折り曲げている。
折れ目f2,f3は、ストラットタワー20とカウルトップ30とを単に連結する従来のガセット(図3中に二点鎖線でその一部を示す)には形成されず、ストラットタワー20とカウルトップ30との相対変位に応じてガセット10を弾性変形させるために設けられている。
このように、ストラットタワー20とカウルトップ30との相対変位に応じて弾性するように形成された屈曲部13は、折れ目f2,f3及びその周辺の面部121,122,123により形成される。この屈曲部13は、車両側面視で屈曲している。
上記のアッパ面部11b及びロア面部12bは、アッパフランジ部11aとロアフランジ部12aとを接続している。
図4(b)に示すように、側壁部12cは、ロアガセットパネル12が取り付けられた状態でロアフランジ部12a及びロア面部12bの一端から車両後方に延びる壁部である。
この側壁部12cの下部は、ストラットタワー20及びアッパインナフレームパネル60(図1参照)にスポット溶接で接合され、側壁部12cの下部とストラットタワー20及びアッパインナフレームパネル60との間には溶接部が形成される。これによりストラットハウス20の補強(車幅方向の剛性向上)がされている。
ガセット10及びその周辺に形成された上記の溶接部についてまとめると、アッパガセットパネル11とカウルトップ30との間と、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12との間と、ロアガセットパネル12とストラットタワー20との間のそれぞれに溶接部が形成される。言い換えれば、各溶接部は、ガセット10によるストラットタワー20とカウルトップ30との間の力の伝達経路に形成されている。
ガセット10を取り付ける場合、はじめに、アッパガセットパネル11とカウルトップ30とが溶着され、また、ロアガセットパネル12とストラットタワー20とが溶着される。次に、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12とが溶着される。
なお、図4に示すように、アッパガセットパネル11のアッパフランジ部11a及びアッパ面部11b並びにロアガセットパネル12のロアフランジ部12a及びロア面部12bのそれぞれに形成される溶接部は、車幅方向に間隔をおいて複数設けられる。
〔作用及び効果〕
本実施形態のストラットタワー補強構造は上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
車両走行時に路面反力がサスペンション2を通じてストラットタワー20に入力されると、ストラットタワー20は変形する。しかしながら、ストラットタワー20は、ガセット10を介してカウルトップ30に連結されているため、変形が抑制される。また、カウルトップ30には各ストラットタワー20がそれぞれガセット10を介して連結されているため、一対のストラットタワー20,20では変形量の相違が抑制される。
ただし、ストラットタワー20は抑制されながらも変形するため、このときのガセット10では、折り目f2,f3が接近したり離隔したりする。言い換えれば、第一面部121と第二面部122とがなす角度を小さくしたり大きくしたりするとともに、第二面部122と第三面部123とがなす角度を小さくしたり大きくしたりする。これにより、ガセット10を伝達する力が吸収される。つまり、ガセット10を伝達する力は、折り目f2,f3により形成される屈曲部13が弾性変形することにより一部が吸収され、残りの力はカウルトップ30に伝達される。
したがって、それぞれに対応するガセット10,10を介してカウルトップ30により互いに連結され左右一対のストラットタワー20,20は、特に車幅方向への変形が抑制されるようにストラットタワー20,20が補強(剛性向上)され、路面からの入力(路面反力)に対する左右のストラットタワー20,20の変形量の相違が抑制される。言い換えれば、所謂ストラットタワーバーによる補強と同様に、一対のストラットタワー20,20が補強される。したがって、各ストラットタワー20に取り付けられたサスペンション2の姿勢を保持することができ、延いては、車両の操縦安定性を確保することができる。
一方、路面からの力が伝わり、ガセット10によるストラットタワー20とカウルトップ30との間の力の伝達経路に形成された溶接部に過剰な応力が作用すれば、溶接部の破損を招くが、ストラットタワー20とカウルトップ30とを連結するガセット10は、ストラットタワー20とカウルトップ30との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成された屈曲部13を有するため、溶接部に作用する応力が吸収されて軽減されることにより、溶接部の破損を回避することができる。
具体的には、アッパガセットパネル11とカウルトップ30との間と、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12との間と、ロアガセットパネル12とストラットタワー20との間のそれぞれに設けられた溶接部の破損を回避することができる。
スポット溶接により形成された各溶接部には、ストラットタワー20とカウルトップ30との間で力が伝達される際に応力が集中するが、この応力は屈曲部13により吸収されて軽減される。これにより、各溶接部の破損を効果的に回避することができる。
ガセット10には、面部11b,12bに車両側面視で屈曲した屈曲部13が形成されているため、ストラットタワー20とカウルトップ30との間に伝達される力のうち上下方向成分の力を効率よく吸収することができる。
一方、屈曲部13が車両側面視で屈曲しているため、面部11b,12bを有するガセット10の断面二次モーメントを確保することができる。言い換えれば、車幅方向に沿った形状が維持されるようにガセット10の剛性を確保することができる。これにより、ストラットタワー20の車幅方向への変形を抑制することができる。
ガセット10は、カウルトップ30に接合されたアッパガセットパネル11とストラットタワー20に接合されたロアガセットパネル12とを有するため、ガセット10を取り付ける場合に、アッパガセットパネル11及びロアガセットパネル12が接合された後に、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12とが接合されれば、ガセットパネル11,12を撓ませて接合することができ、ガセット10,ストラットタワー20及びカウルトップ30の製造誤差を吸収しつつ、ストラットタワー20を補強することができる。
屈曲部13がガセット10のロアガセットパネル12に形成されているため、ストラットタワー20の変形による力が、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12との間に形成された溶接部に伝達される前に吸収され、係る溶接部の破損を効果的に回避することができる。
ガセット10を取り付ける場合、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12とを最後に溶接するため、この溶接部を形成するときには周囲に種々の部材が配設されている。このため、例えば溶接アームや溶接棒が入れ難く、溶接部を形成し難いおそれがある。このような際には、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12との間に設けられる溶接部の数を、アッパガセットパネル11とカウルトップ30との間やロアガセットパネル12とストラットタワー20との間の溶接部の数より少なくしてもよい。これによれば、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12との間に設けられる溶接部に更に応力が集中することになるが、屈曲部13より溶接部にかかる応力が吸収されて、破損を効果的に回避することができる。
〔変形例〕
次に、図5を参照して本発明の一実施形態に係る変形例について説明する。本変形例の第一変形例〜第四変形例に係るストラットタワー補強構造は、ガセットの形状が上述のガセット10の形状と異なる。さらに、第四変形例では、ストラットタワー及びカウルトップの形状又は位置関係が上述のストラットタワー20及びカウルトップ30の形状又は位置関係も異なる。なお、図5(a)〜(d)はそれぞれ図3に対応した箇所を示す断面図である。
以下の説明では、構成の異なる点を説明する。なお、ここで説明する点を除いては、上述の一実施形態の構成と同様の構成となっている。同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
第一変形例のガセット10Aは、図5(a)に示すように、ロアガセットパネル12Aに屈曲部13Aが形成されるのに加えて、アッパガセットパネル11Aにも屈曲部13Bが形成されている。これらの屈曲部13A,13Bの形状は、それぞれストラットタワー20とカウルトップ30との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成されていれば、任意の形状を採用することができる。図5(a)では、ロアガセットパネル12Aに車幅方向に沿う二つの折れ目f3A,f4Aを有する形状に屈曲部13Aが形成され、アッパガセットパネル11Aに車幅方向に沿う二つの折れ目f1A,f2Aを有する形状に屈曲部13Bが形成されたものを例示している。ここでは、折れ目f3A,f4Aがロアガセットパネル12Aを互いに逆方向に折り曲げており、折れ目f1A,f2Aもまたアッパガセットパネル11Aを互いに逆方向に折り曲げている。
このように、一実施形態で上述のロアガセットパネル12にだけ屈曲部13が設けられるものに限らず、アッパガセットパネル11Aにも屈曲部13Bが設けられていてもよい。
第一変形例のガセット10Aを用いたストラットタワー補強構造によれば、上述した一実施形態の効果に加えて、カウルトップ30に伝達された力の反力を吸収することができるため、確実に各溶接部の破損を回避することができる。
図5(b)に示すように、第二変形例のガセット10Bは、第一変形例のガセット10Aに対してロアガセットパネル12Bのみが異なる。このロアガセットパネル12Bには、ストラットタワー20とカウルトップ30とを単に連結するガセットの一部の形状をなしており、屈曲部が形成されていない。なお、図5(b)には、ロアガセットパネル12Bにストラットタワー20とカウルトップ30とを単に連結するための折れ目f3Bが形成されたものを示している。
この場合、アッパガセットパネル11Aに形成された屈曲部13Bは、アッパガセット11Aとロアガセット12Bとの間に形成された溶接部の接合力よりも小さな力で弾性変形するように構成される。
このように、アッパガセットパネル12Bにのみ屈曲部13Bが設けられていてもよい。
第二変形例のガセット10Bを用いたストラットタワー補強構造によれば、ストラットタワー20の変形による力が、アッパガセット11Aとロアガセット12Bとの間に形成された溶接部に伝達される前には吸収されないものの、カウルトップ30に伝達された力の反力を吸収することができるため、各溶接部の破損を回避することができる。このため、上述した一実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
第三変形例のガセット10Cは、図5(c)に示すように、アッパガセットパネル11Cとロアガセットパネル12Cとが協働して屈曲部13Cを形成している。つまり、屈曲部13Cは、アッパガセットパネル11C及びロアガセットパネル12Cに跨って形成されている。
第一変形例及び第二変形例で上述のように、屈曲部13Cの形状は、ストラットタワー20とカウルトップ30との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成されていれば、任意の形状を採用することができる。
図5(c)では、折れ目f1Cが上述の一実施形態における折れ目f3と同様に設けられ、屈曲部13Cが、ストラットタワー20とカウルトップ30とを単に連結するガセットパネル(二点鎖線で示す)よりも前方に膨出するような形状であり、車両側面視が半円形状に形成されたものを例示している。
第三変形例のガセット10Cを用いたストラットタワー補強構造によれば、上述した一実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
第四変形例では、図5(d)に示すように、ストラットタワー20Aとカウルトップ30Aとの距離が、上述のストラットタワー20とカウルトップ30との距離よりも近い。ここでは、ロアガセットパネル12Dが溶着されるストラットタワー20Aの箇所と、アッパガセットパネル11Dが溶着されるカウルトップ30Aの箇所とが、上下に離隔するとともに車両前後方向の位置が略同じであるものを例示する。ただし、ストラットタワーの形状又は位置とカウルトップの形状又は位置とは、互いに離隔していれば種々の形状又は位置を採用することができる。
この第四変形例のガセット10Dでは、カウルトップ30Aにスポット溶接で接合されるアッパガセットパネル11Dが鉛直方向に沿って車幅方向に延びる平板状に形成され、ストラットタワー20Aにスポット溶接で接合されるロアガセットパネル12Dに屈曲部13Dが形成されている。上述のように屈曲部13Dの形状には任意の形状を採用することができるが、図5(d)には、三つの折れ目f1D,f2D,f3Dを有する形状の屈曲部13Dを例示する。ここでは、折れ目f1D,f2Dがロアガセットパネル12Dを互いに逆方向に折り曲げられ形成されており、また、折れ目f2D,f3Dがロアガセットパネル12Dを互いに逆方向に折り曲げられ形成されているものを示す。
なお、屈曲部13Dは、ロアガセットパネル12Dに設けられるものに限らず、上述の第一変形例のようにガセットパネル11D,12Dのそれぞれに設けられてもよいし、第二変形例のようにアッパガセットパネル11Dにのみ設けられてもよいし、第三変形例のようにガセットパネル11D,12Dに跨るように形成されていてもよい。
第四変形例のガセット10Dを用いたストラットタワー補強構造によれば、上述した一実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の一実施形態では、ガセット10をストラットタワー20の上面パネル21における周縁部21a及び側面パネル22における上縁部22aに溶着したものを説明したが、ガセット10のストラットタワー20への溶着箇所は任意であり、例えばガセット10をストラットタワー20の上面パネル21にだけ溶着してもよいし側面パネル22にだけ溶着してもよい。同様に、ガセット10をカウルトップ30のロアパネル33に溶着したものを説明したが、ガセット10のカウルトップ30への溶着箇所は任意である。ただし、ストラットタワー20とカウルトップ30とを接続する長さは短くなるに従って力が効率よく伝達されるため、この接続長が短くなるようなガセット10の溶着箇所を設定することが好ましい。
上述の一実施形態では、ガセット10が、アッパガセットパネル11とロアガセットパネル12とが接合されたものを示したが、ガセット10が一枚のパネルで形成されていてもよい。この場合、ガセット10とストラットタワー20及びカウルトップ30との間のそれぞれに形成された溶接部への応力が屈曲部13により軽減されることにより、各溶接部の破損を回避することができる。また、簡素な構成とすることができる。
上述の一実施形態では、ガセット10をカウルトップ30に溶着したものを説明したが、ガセット10をダッシュパネル(延在部材)40に接続してもよい。
上述の一実施形態では、溶接部がスポット溶接により形成されるものを示したが、溶接部は隅肉溶接などの他の溶接方法により形成されていてもよい。
1 エンジンルーム
2 サスペンション装置
2a ストラット
10 ガセット(連結部材)
11 アッパガセットパネル(第二連結部材)
11a アッパフランジ部(第二フランジ部)
11b アッパ面部
12 ロアガセットパネル(第一連結部材)
12a ロアフランジ部(第一フランジ部)
12b ロア面部
12c 側壁部
13 屈曲部
20 ストラットタワー(延在部材)
21 上面パネル
21a 周縁部
22 側面パネル
22a 上縁部
30 カウルトップ(延在部材)
31 アッパパネル
32 インナパネル
33 ロアパネル
33c 本体部
40 ダッシュパネル
50 フェンダーシールドパネル
60 アッパインナフレームパネル
70 フロントサイドメンバ
1 折れ目
2 折れ目
3 折れ目
* 溶接部

Claims (6)

  1. 車両左右両側に設けられた一対のストラットタワーと、
    車幅方向に延在する延在部材と、
    前記ストラットタワーのそれぞれと前記延在部材とを連結する一対の連結部材とを備え、
    前記連結部材による前記ストラットタワーと前記延在部材との間の力の伝達経路に溶接部が形成され、
    前記連結部材は、前記ストラットタワーと前記延在部材との相対変位に応じて弾性変形するように屈曲形成された屈曲部を有する
    ことを特徴とする、ストラットタワー補強構造。
  2. 前記溶接部は、スポット溶接により形成された
    ことを特徴とする、請求項1記載のストラットタワー補強構造。
  3. 前記延在部材は、
    前記ストラットタワーの車両後方に設けられ、
    前記連結部材は、
    前記ストラットタワーに接合された第一フランジ部と、
    前記延在部材に接合された第二フランジ部と、
    前記第一フランジ部と前記第二フランジ部とを接続する面部とを有し、
    前記屈曲部は、
    前記面部に形成され、車両側面視で屈曲している
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載のストラットタワー補強構造。
  4. 前記連結部材は、
    前記ストラットタワーに接合された第一連結部材と、
    前記延在部材に接合された第二連結部材とを有し、
    前記溶接部は、前記第一連結部材と前記第二連結部材との間に形成された
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のストラットタワー補強構造。
  5. 前記屈曲部は、前記第一連結部材に形成された
    ことを特徴とする、請求項4記載のストラットタワー補強構造。
  6. 前記延在部材は、カウルトップである
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のストラットタワー補強構造。
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