JP2014162117A - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】テープとしたときに良好な寸法安定性を維持することができ、かつ高い生産性で生産することのできる二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】第一の温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第一延伸工程と、次いで、冷却を行うこと無く、上記第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第二延伸工程と、を経てなり、長さ方向の屈折率nMDと幅方向への屈折率nTDとの差で示される複屈折率Δn(nMD−nTD)が−0.10〜−0.02であり、結晶化パラメーターΔTcgが25〜75℃である二軸配向ポリエステルフィルムを用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、磁気テープなどの磁気記録媒体における支持体として好ましく用いることが可能な二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた熱特性、寸法安定性、機械特性及び表面形態の制御のしやすさ等から各種用途に用いられており、延伸技術により高強度されたものは磁気記録媒体等の支持体として有用であることが知られている。近年、磁気テープ等の磁気記録媒体は、機材の軽量化、小型化、大容量化のため高密度記録化が求められている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録トラックを小さくすることが有効である。
しかしながら、記録トラックを小さくすると、テープ走行時における熱やテープ保管時の温湿度変化によってテープの幅方向が変形し、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題がある。したがって、テープの使用環境及び保管環境での幅方向の寸法安定性といった特性の改善に対する要求がますます強まっている。しかし、テープの幅方向の寸法安定性を高めるために従来の製膜方法で幅方向に高配向化すると、熱収縮が大きくなり製膜性や磁性材料の塗布性が低下するという問題がある。
そこで、特許文献1〜4には、寸法安定性を向上させる手段として、テープの原反であるフィルムを延伸した後に所定の条件でエージングをすることが提案されている。また、特許文献5には、MD(テープの長さ方向に対応する)延伸、TD(テープの幅方向に対応する)延伸、TD延伸の順で逐次延伸し、その際MD延伸とTD延伸に特定の倍率差と、TD1段目延伸温度とTD2段目延伸温度に特定の温度差とを設け、さらに特定の張力下でエージング処理を行うことで、エンタルピー緩和量ΔHeをある範囲内とすることにより寸法安定性を向上させることが提案されている。
しかしながら、特許文献1〜4に開示されたエージング処理によりテープの寸法安定性に対して一定の向上が認められるが、テープの幅方向と長さ方向の分子鎖の配向バランスが悪いため、現在求められている寸法安定性を達成することができない。また、特許文献5に開示された方法によりテープの寸法安定性は著しく改善するが、テープに張力が付加された際に生じるクリープ変形が飽和するまでに多くの時間を要するため、テープの長期的な寸法安定性を維持するには課題が存在する。そして、このような課題を解消すべく予めテープのクリープ変形を飽和させようとすると、フィルムの製造工程において長時間のエージング処理が必要となり生産性が低下することになる。
特開平11−110735号公報 特開2005−346865号公報 特開2009−87470号公報 特開2009−87471号公報 特開2012−67239号公報
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、テープとしたときに良好な寸法安定性を維持することができ、かつ高い生産性で生産することのできる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、第一の温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第一延伸工程と、次いで、冷却を行うことなく、上記第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第二延伸工程と、を経た二軸配向ポリエステルフィルムが、短い時間のエージングでクリープ変形が飽和に達し、それを用いて調製したテープが高い寸法安定性を備えたものになることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第一の温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第一延伸工程と、次いで、冷却を行うこと無く、上記第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第二延伸工程と、を経てなり、長さ方向の屈折率nMDと幅方向への屈折率nTDとの差で示される複屈折率Δn(nMD−nTD)が−0.10〜−0.02であり、結晶化パラメーターΔTcgが25〜75℃である二軸配向ポリエステルフィルムである。
上記第一延伸工程における延伸倍率が、長さ方向に3.1〜4.0倍で幅方向に3.1〜4.0倍であり、上記第二延伸工程における延伸倍率が、長さ方向に1.0〜1.5倍で幅方向に1.1〜1.7倍であり、トータルの幅方向への延伸倍率がトータルの長さ方向への延伸倍率よりも大きいことが好ましい。
上記二軸配向ポリエステルフィルムが、モンタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有することが好ましい。
本発明によれば、テープとしたときに良好な寸法安定性を維持することができ、かつ高い生産性で生産することのできる二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
幅寸法を測定する際に用いるシート幅測定装置を示す概略図である。
以下、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一実施形態について説明する。なお、本明細書において、幅方向、TD及び横方向は同じ意味で用い、長さ方向、MD及び縦方向は同じ意味で用いる。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気テープの支持体(以下、単にテープとも呼ぶ。)に加工される場合、その幅方向がテープの幅方向となり、その長さ方向がテープの長さ方向になるものとする。
二軸延伸ポリエステルフィルムは、成形により得られたポリエステルフィルムを幅方向及び長さ方向に延伸して調製され、高いヤング率と寸法安定性を備えるものである。ポリエステルフィルムは、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等の酸成分と、ジオール成分とを構成単位(重合単位)とするポリマー(すなわちポリエステル)で構成される。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。これらの中でも、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を好ましく挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。これらの酸成分は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく挙げることができ、エチレングリコール等を特に好ましく挙げることができる。これらのジオール成分は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの重合成分に加えて、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物を用いて共重合させてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸等を、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状となる範囲内で共重合させてもよい。さらに、上記の重合成分に加えて、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸や、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸等を本発明の効果を損なわない程度に共重合させてもよい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)が好ましく、これらの共重合体、変性体、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは、高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーでもよいし、混合等によるポリマーブレンドでもよい。多成分系を構成するポリマーとしては、ポリエステルと相溶するものが好ましく、特にポリエーテルイミド樹脂等が好ましい。ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば、下記一般式で示す繰り返し単位を備えたものを挙げることができる。
Figure 2014162117
(上記一般式中、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族又は脂肪族残基であり、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択される2価の有機基である。)
上記R及びRとしては、それぞれ独立に、例えば下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
Figure 2014162117
(上記式中、nは、2〜20の整数である。)
上記の中でも、本発明においては、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、m−フェニレンジアミン又はp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を備えたポリマーが好ましい。
Figure 2014162117
又は
Figure 2014162117
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
上記のポリエーテルイミドは、「ウルテム(登録商標)」という商品名でSABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem1000」、「Ultem1010」、「Ultem1040」、「Ultem5000」、「Ultem6000」及び「UltemXH6050」シリーズや、「Extem XH」及び「Extem UH」の商品名等で知られている。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム長さ方向の屈折率nMDとフィルム幅方向の屈折率nTDとの差で示される複屈折率Δn(nMD−nTD)が−0.10〜−0.02である。複屈折率は、分子鎖配向度合いの長さ方向と幅方向との差を示しており、負の数が大きくなるほど幅方向に分子鎖が配向していることを表す。複屈折率Δnが上記範囲内であれば、テープとしたときの幅方向の寸法安定性が良好となり、製膜性も安定する。複屈折率は、−0.09〜−0.025の範囲であることが好ましく、−0.07〜−0.03であることがより好ましい。複屈折率Δnは、後述する同時二軸延伸の際のTD延伸倍率によって制御することができる。特にトータルのTD倍率が影響し、トータルのTD倍率が高いほどnTDが大きくなって複屈折率Δnは小さくなる。
上記のように、複屈折率Δnを負の値とすることによりフィルム幅方向の強度が向上して、テープに加工された際の幅方向の寸法変化が抑制される。そのため、磁気テープとして用いた際にサーボ書き込み時やデータ書き込み時のテープ幅と読み出し時のテープ幅とがほぼ一定となり、読み出しエラーの発生を抑制することができる。しかしその一方で、フィルム幅方向の強度を向上させた結果、フィルム長さ方向の伸度が増加して、フィルムをテープ幅にスリットした際にテープ側面の断面が変形しやすくなる傾向がある。そこで、本発明のフィルムに結晶核剤を添加することが好ましい。フィルムに添加された結晶核剤は、後述する同時二軸延伸やエージング処理の際に、フィルムに含まれる分子鎖の結晶化を促進してフィルム長さ方向の伸度が増加するのを抑制するので、フィルムをテープ幅にスリットした際にテープ側面の断面が変形するのを抑制する。
結晶核剤としては、例えば、モンタン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。また、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウムなどのカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル金属塩、ジベンジルソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビドールなどの多価アルコール誘導体なども好ましく例示される。本発明のポリエステルに適用する場合、中でも、モンタン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましく、特に、モンタン酸ナトリウムが相溶性や本発明の効果を発現する上で好ましい。
フィルム中の結晶核剤の含有量は、0.2〜1質量%が好ましい。さらに好ましい含有量は0.2〜0.7質量%であり、より好ましくは0.3〜0.5質量%である。この結晶核剤の含有量として、0.1質量%未満では効果が十分ではなく、一方、1質量%を超えると結晶化が進行しすぎて、フィルム延伸性が不良になったり、表面特性が不良となったりすることがある。また、結晶化の促進度合いは下記で説明する結晶化パラメータΔTcgが25〜75℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは40〜70℃の範囲である。
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムとしての厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、磁気テープ用途として用いる場合には1〜7μm程度が好ましい。この厚さが1μm以上であることにより、磁気テープとした際に良好な電磁変換特性を得ることができる。また、この厚さが7μm以下であることにより、1巻あたりのテープの長さを十分にとることが可能になるので、磁気テープの小型化や高容量化を図ることができる。こうした用途の場合、厚さの下限は、2μmであることがより好ましく、3μmであることがさらに好ましい。また、厚さの上限は、6.5μmであることがより好ましく、6μmであることがさらに好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、第一の温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第一延伸工程と、次いで、冷却を行うことなく、上記第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸工程と、を経て調製される点が重要なポイントである。従来、長さ方向への延伸を行った後に幅方向への延伸を行う逐次二軸延伸法により、二軸配向ポリエステルフィルムが調製されており、こうして得られたフィルムは、長さ方向や幅方向への高い強度を備え、テープ用として広く用いられてきた。
ところで、フィルムにおいては、一般的に、張力が付加された際に、その張力の方向に引き延ばされるクリープ変形を生じることが知られている。そして、リールに巻き取られた状態の磁気テープには常に張力が付加された状態にあるので、特に、高湿度下にて保管される場合にはクリープ変形を生じやすい状態にあるといえる。こうしたクリープ変形が磁気テープに生じるとテープの幅方向のトラック幅を一定に保つことができなくなり、読み出し時のエラーにつながることになる。そのため、テープ用のフィルムの調製においては、延伸処理が完了した後に、ガラス転移点よりも10〜20℃程度低い温度にて張力を付加した状態でフィルムを保管することによって、クリープ変形をある程度飽和させるエージング処理が施される。こうした処理を経ることにより、クリープ変形が抑制されて磁気テープとしての要求性能を満たすことになるが、通常、エージング処理には多くの時間を要するため、生産性を低下させる要因の一つとなっていた。
このような状況のもと、本発明者らは、磁気テープの幅方向の寸法安定性を向上させることのできるフィルムの製造プロセスの検討を続けた結果、フィルムの幅方向及び長さ方向に対して同時に延伸を行う工程を、冷却工程を経ることなく、異なる温度で2回行うことによって、フィルムのクリープ変形が飽和に達するまでの時間を著しく短縮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の二次配向ポリエステルフィルムによれば、より短い時間のエージング処理を施すだけで、クリープ変形の飽和した、高い寸法安定性をもつ磁気テープ用の支持体(すなわちテープ)を調製することが可能になる。次に、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの調製手順の一例について述べる。
まず、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムを調製する。ポリエステルフィルムを調製するには、例えば、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出させた後、冷却固化させてシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。また、ポリエステルフィルムの表面性を制御し、易滑性、耐摩耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、不活性粒子を添加することが好ましい。不活性粒子としては、無機又は有機粒子が挙げられ、一例として、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子や、ポリアクリル酸類、スチレン系樹脂、各種熱硬化樹脂、シリコーン、ポリイミド類等を構成成分とする有機粒子や、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)等を挙げることができる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の各種添加剤を用いてもよい。また、上述の結晶核剤を用いる場合には、この時点で添加してもよい。
続いて、上記シートを第一の温度で幅方向及び長さ方向に同時二軸延伸し、その後さらに冷却工程を経ることなく、第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向に同時二軸延伸する。なお、便宜上、最初の同時二軸延伸を「第一延伸工程」と呼び、二回目の同時二軸延伸を「第二延伸工程」と呼ぶ。これら2回の同時二軸延伸工程を経た後、熱処理を行う。このような2回の同時二軸延伸工程を経ることにより、クリープ変形が早期に飽和し、寸法安定性の優れたフィルムとなることは既に述べた通りである。
上記第一の温度(すなわち第一延伸工程における温度)は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度Tgを目安として決めることができる。第一の温度としては、Tg−30℃〜Tg+15℃の範囲を好ましく挙げることができ、Tg−25℃〜Tg+10℃をより好ましく挙げることができる。上記範囲よりも延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、第2延伸工程での再延伸性が低下して高倍率に安定して延伸することが困難となる。また、上記範囲よりも延伸温度が高い場合には、特にエッジ部分が結晶化して延伸時の破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に配向が進まず、製造したフィルムのヤング率が低下してしまう。
第一延伸工程における延伸倍率としては、長さ方向に3.1〜4.0倍、幅方向に3.1〜4.0倍であることを好ましく挙げることができ、長さ方向に3.3〜3.7倍、幅方向に3.3〜3.7倍であることをより好ましく挙げることができる。
第二延伸工程における温度は上記第一の温度よりも高く、Tg+40℃〜Tg+120℃の温度範囲が好ましく、さらに好ましくはTg+60℃〜Tg+100℃である。第2温度が上記の範囲を外れる場合には、熱量不足や結晶化の進みすぎによって、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、十分に配向を高めることができずヤング率が低下してしまう。
第ニ延伸工程における延伸倍率としては、長さ方向に1.0〜1.5倍、幅方向に1.1〜1.7倍であることを好ましく挙げることができ、長さ方向に1.0〜1.3倍、幅方向に1.3〜1.6倍であることをより好ましく挙げることができる。
続いて、第一延伸工程及び第二延伸工程を経た延伸フィルムを緊張下又は幅方向に弛緩しながら熱処理(ヒートセット処理、以下HS処理とも呼ぶ。)する。HS処理の際の温度としては、ポリマーの種類によっても異なるが、170〜210℃であることを好ましく挙げることができ、180〜200℃であることをより好ましく挙げることができ、185〜195℃であることをさらに好ましく挙げることができる。HS処理の時間としては0.5〜10秒程度を挙げることができ、HS処理における弛緩率としては0〜2%程度を挙げることができる。HS処理後は、フィルムを把持しているクリップを開放することでフィルムへの張力を低減させながら室温へ急冷する。その後、フィルムエッジを除去し、ロールに巻き取る。
本発明の寸法安定性の効果をさらに高めるために、ロールに巻き取った後のフィルムに張力をかけて搬送させて、熱風オーブン内でエージング処理することが好ましい。エージング処理の際の雰囲気温度は、Tg(ガラス転移点)−60〜Tg−22℃が好ましく、Tg−50〜Tg−25℃がより好ましく、Tg−40〜Tg−28℃がさらに好ましい。なお、エージング処理を行う際は、巻き返して巻芯側と表層側とを入れ替えてさらにエージング処理を行い、これを繰り返して行うことが好ましい。巻き返しを繰り返すことでロールの巻芯部分と表層部分との間の物性ムラが低減され、保存安定性をさらに高めることができる。エージング処理における張力としては、8〜16MPaが好ましく例示され、9〜15MPaがより好ましく例示され、10〜14MPaがさらに好ましく例示される。エージング処理の張力が大きすぎると長さ方向へ分子鎖が延びる傾向があり平面性を悪化させる原因となり、エージング処理の張力が小さすぎるとクリープ変形の飽和が進みにくくなる。エージング処理は、分子鎖の歪みをとって緊張度合いを高め、クリープ変形の飽和を進めて寸法安定性を向上させる。エージング処理時間としては、24〜240時間の範囲が好ましく、より好ましくは48〜168時間の範囲、さらに好ましくは72〜150時間の範囲である。
本願は、上記のように、第一の温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行い、次いで、冷却を行うことなく、上記第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行うことで、短い時間のエージングでクリープ変形が飽和に達し、高い寸法安定性を備えた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
次に、磁気テープの調製方法の一例について説明する。まず、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを例えば0.1〜3m幅にスリットしてテープとし、速度20〜300m/分、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面(A面)に磁性塗料及び非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布する。ここで用いられる磁性塗料や非磁性塗料は公知のものを各種用いることができる。なお、上層に磁性塗料を厚さ0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚さ0.5〜1.5μmで塗布することを例示できる。その後、磁性塗料及び非磁性塗料が塗布された支持体(テープ)を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面(B面)にバックコートを例えば厚さ0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。ここで用いられるバックコートは公知のものを各種用いることができる。なお、カレンダー処理としては、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行うことを例示できる。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
このようにして得られた磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO4やLTO5等))や映像等のデジタル画像の記録用途等に好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げることにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の内容に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において、PETとはポリエチレンテレフタレートを意味し、PEIとはポリエーテルイミドを意味し、PENとはポリエチレンナフタレートを意味する。
[評価方法]
後述の実施例及び比較例を評価する際に用いた各試験条件は次の通りである。
(1)ヤング率
ASTMD882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
・測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
・試料サイズ:フィルム幅方向のヤング率測定
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
・引張り速度:1mm/分
・測定環境:温度23℃、湿度65%RH
・測定回数:5回
(2)複屈折率Δn
複屈折率Δn(nMD−nTD)は、JIS−K7142(2008年)に従って、下記測定器及び測定条件にて測定した。
・装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ製)
・光源:ナトリウムD線
・測定温度:25℃
・測定温度:65%RH
・マウント液:ヨウ化メチレン、硫黄ヨウ化メチレン
平均屈折率n_bar=((nMD+nTD+nZD)/3)
複屈折率Δn=(nMD−nTD)
nMD:フィルム長さ方向の屈折率
nTD:フィルム幅方向の屈折率
(3)結晶化パラメータΔTcg
試料であるフィルム10mgをDSC装置(示差走査熱量計装置;パーキンエルマー社製、DSCII型)にセットし、300℃の温度で5分間試料を溶融させた後、液体窒素中で急冷した。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知した。その後さらに昇温を続け、ガラス状態からの結晶化発熱ピーク温度をもって冷結晶化温度Tccとした。そして、ΔTcg=Tcc−Tgの式により結晶化パラメータΔTcgを算出した。
(4)湿度膨張係数
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とする。
・測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50
(湿度発生器:アルバック理工製湿度雰囲気調節装置HC−1)
・試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
・荷重:0.5g
・測定回数:3回
・測定温度:30℃
・測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し時間40分で80%RHまで昇温し、80%RHで6時間保持したあと支持体幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出する。
・湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/12.6)/(80−40)}
(5)幅寸法安定性
[評価用磁気テープの調製]
1m幅にスリットしたフィルム(すなわち支持体)を張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面(A面)に下記組成の磁性塗料及び非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層を磁性塗料で塗布厚0.2μmとし、下層を非磁性塗料で塗布厚0.9μmとした。)し、磁気配向させ、100℃にて乾燥させた。次いで、反対側の表面(B面)に下記組成のバックコートを塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×10N/mでカレンダー処理した後、テープ原反として巻き取った。このテープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットしてパンケーキとし、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで評価用のカセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
[Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)]
[長軸長:0.09μm、軸比:6、保持力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁比:146Am/kg(146emu/g)、BET比表面積:53m/g、X線粒径:15nm]
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
[幅寸法の測定]
カセットテープのカートリッジからテープを切り出し、図1のように作製したシート幅測定装置に設置し、所定の張力がサンプルにかかるように荷重を調節した。このシート幅測定装置を下記恒温恒湿槽内へ設置し、所定の時間放置した後に幅寸法測定を行った。図1に示すシート幅測定装置は、レーザーを用いて幅方向の寸法を測定する装置で、磁気テープ9(すなわちサンプル)をフリーロール5〜8上にセットしつつ荷重検出器3に固定し、端部に荷重4(分銅)を吊す。この磁気テープ9にレーザー光10を照射すると、レーザー発振器1から磁気テープ9の幅方向に線状に発振されたレーザー光10が磁気テープ9の部分だけ遮られて受光部2に入り、その遮られたレーザーの幅が磁気テープ9の幅として測定されることになる。3回の測定結果の平均値を幅寸法とした。
・測定装置:株式会社アヤハエンジニアリング製シート幅測定装置
・レーザー発振器1、受光部2:レーザー寸法測定機キーエンス社製LS−5040
・荷重検出器3:ロードセル NMB社製CBE1−10K
・恒温恒湿槽:株式会社カトー製SE−25VL−A
・荷重4:分銅
・試料サイズ:幅1/2インチ×長さ250mm
・保持時間:5時間
・測定回数:3回
[幅寸法変化率の測定;寸法安定性]
2つの条件でそれぞれ幅寸法(l、l)を測定し、次式にて寸法変化率を算出した。この測定を2回繰り返し、1回目の幅寸法変化率を「幅寸法変化率(1)」とし、2回目の幅寸法変化率を「幅寸法変化率(2)」とした。クリープ変形が早期に飽和する寸法安定性の高いテープの場合、特に幅寸法変化率(2)が小さくなる。このようなテープとなるフィルムは、製造工程におけるエージング時間を短縮することができるので好ましいことになる。
具体的には、まず、下記A条件で24時間経過後にlを測定し、その後下記B条件で24時間経過後にlを測定した。測定に際しては、テープカートリッジの初めから30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定した。この測定を2回行い、1回目の幅寸法変化率を「幅寸法変化率(1)」とし、2回目の幅寸法変化率を「幅寸法変化率(2)」として、それぞれ下記基準で評価した。下記基準のうち、×が不合格となる。
A条件:10℃10%RH 張力0.8N
B条件:29℃80%RH 張力0.5N
幅寸法変化率(ppm)=10×((l−l)/l
・幅寸法変化率(1)の評価基準
◎:幅寸法変化率の最大値が500ppm未満
○:幅寸法変化率の最大値が500ppm以上600ppm未満
△:幅寸法変化率の最大値が600ppm以上700ppm未満
×:幅寸法変化率の最大値が700ppm以上
・幅寸法変化率(2)の評価基準
◎:幅寸法変化率の最大値が400ppm未満
○:幅寸法変化率の最大値が400ppm以上500ppm未満
△:幅寸法変化率の最大値が500ppm以上600ppm未満
×:幅寸法変化率の最大値が600ppm以上
(6)塗布性
上記(3)で作製したカセットテープについて、塗布ムラ又は塗布抜けを目視で確認した上で、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて24時間走行させ、磁性層の剥がれを確認して下記の基準によりテープの磁性層の塗布性を評価した。
◎:ムラ、塗布抜け及び剥がれが全く無く、塗布性良好である
○:ムラ、塗布抜け及び剥がれがほぼ無く、塗布性に問題ない
△:ムラ、塗布抜け及び剥がれが時々発生し、塗布性に若干問題あり
×:ムラ、塗布抜け及び剥がれが頻発しており、塗布性に問題あり
(7)エラーレート
上記(3)で作製したカセットテープについて、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて23℃50%RHの環境で記録及び再生(記録波長0.55μm)することでエラーレートの発生状況を評価した。エラーレートは、ドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)を用いて次式にて算出し、下記基準で評価した。下記基準のうち、×が不合格となる。
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
◎:エラーレートが1.0×10−6未満
○:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満
△:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満
×:エラーレートが1.0×10−4以上
(8)製膜性
フィルムの製膜性について、下記の基準で評価した。
◎:フィルム破れの発生が全く無く、安定製膜である
○:フィルム破れの発生がほとんどなく、安定製膜が可能である
△:フィルム破れが時々発生し、製膜安定性が若干低い
×:フィルム破断が多数発生し、製膜安定性が低い
[参考例1]
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム・4水和物0.1質量部及び三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出させつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルを5質量%含むエチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで、余剰のエチレングリコールを留出させながら、反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにして、エステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後に、反応内容物を重合装置へ移行した。
反応内容物の移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分間とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合反応を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした。)を示した。そこで反応系を窒素パージして常圧に戻すことで重縮合反応を停止させ、反応物を冷水にストランド状に吐出させてから直ちにこれをカッティングして、固有粘度0.62のPETペレットXを得た。
[参考例2]
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて調製したPETペレットXを98質量部と、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ(0.3)を得た。
[参考例3]
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例1にて調製したPETペレットXを98質量部と、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ(0.8)を得た。
[参考例4]
温度300℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、参考例1で得られたPETペレットXの50質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI「Ultem1010」のペレット50質量部とを供給し、スクリュー回転数を毎分300回転として溶融押出してストランド状に吐出させて温度25℃の水で冷却した後、直ちにこれをカッティングしてブレンドチップ(I)を得た。
[参考例5]
温度300℃に加熱されたニーディングパドル混練部を1箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、参考例1で得られたPETペレットXの98.5質量%とクリアントジャパン社製モンタン酸ナトリウムからなる結晶核剤「リコモンNaV101」1.5質量%を供給し、スクリュー回転数を毎分200回転として溶融押出してストランド状に吐出させて温度25℃の水で冷却した後、直ちにこれをカッティングしてブレンドチップ(II)を得た。
[参考例6]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100質量部とエチレングリコール60質量部との混合物に、酢酸マンガン・4水和物0.03質量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024質量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042質量部(2mmol%に相当する。)を添加した。その後、引き続きエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023質量部を添加した。次いで、反応内容物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下にて重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートが示す値を所定の値とした。)を示した。そこで反応系を窒素パージして常圧に戻すことで重縮合反応を停止させ、反応物を冷水にストランド状に吐出させてから直ちにこれをカッティングして、固有粘度0.65のPENペレットX’を得た。
[参考例7]
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例6にて調製したPENペレットX’を98質量部と、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットZ’(0.3)を得た。
[参考例8]
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、参考例6にて調製したPENペレットX’を98質量部と、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.65のPENペレットZ’(0.8)を得た。
[参考例9]
温度300℃に加熱されたニーディングパドル混練部を1箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、参考例6で得られたPENペレットX’の98.5質量%とクリアントジャパン社製モンタン酸ナトリウムからなる結晶核剤「リコモンNaV101」1.5質量%を供給し、スクリュー回転数を毎分200回転として溶融押出してストランド状に吐出させて温度25℃の水で冷却した後、直ちにこれをカッティングしてブレンドチップ(III)を得た。
[実施例1]
押出機E、F2台を用い、295℃に加熱された押出機Eには、PETペレットX77質量部、PETペレットZ(0.3)3質量部およびブレンドチップ(II)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX79質量部と、PETペレットZ(0.8)1質量部とブレンドチップ(II)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。2層積層すべくTダイ中でこれらを合流させ(積層比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながらB面側がキャストドラムに接触するように密着冷却固化させ、積層未延伸フィルムを得た。
この積層未延伸フィルム同時2軸延伸テンターに導き、温度90℃にて、長さ方向及び幅方向について同時に、それぞれ3.50倍及び3.65倍延伸した。この延伸工程における昇温速度は1℃/秒以下とした。続いて、冷却工程を経ることなく、温度190℃で長さ方向及び幅方向について同時に、それぞれ1.20倍及び1.35倍に再延伸した。その後、温度215℃で5.5秒間熱処理後、温度160度で幅方向に1.75%の弛緩処理を行った。その後、25℃にて均一に冷却し、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを雰囲気温度50℃の熱風オーブン内にセットし、張力11MPa、搬送速度10m/分で走行させながら120時間エージング処理を実施した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表3に示すように、寸法安定性、塗布性、エラーレート及び製膜安定性に優れた特性を備えていた。
[実施例2〜6]
表1の通りに製膜条件を変更した以外は実施例1と同様に、実施例2〜6の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
[実施例7]
押出機E、F2台を用い、295℃に加熱された押出機Eには、PETペレットX97質量部とPETペレットZ(0.3)3質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX99質量部とPETペレットZ(0.8)1質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給したことと表1の通り製膜条件を変更したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
[実施例8]
押出機E、F2台を用い、295℃に加熱された押出機Eには、PETペレットX67質量部、PETペレットZ(0.3)3質量部、ブレンドチップ(I)10質量部およびブレンドチップ(II)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX69質量部、PETペレットZ(0.8)1質量部、ブレンドチップ(I)10質量部およびブレンドチップ(II)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給したことと表1の通り製膜条件を変更したこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
[実施例9]
実施例1で用いたPETペレットX、PETペレットZ(0.3)、PETペレットZ(0.8)およびブレンドチップ(II)を、それぞれPENペレットX’、PENペレットZ’(0.3)、PENペレットZ’(0.8)およびブレンドチップ(III)に変更して積層未延伸フィルムを得たこと以外は実施例1と同様に二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
[比較例1]
表1の通りに製膜条件を変更した以外は実施例1と同様に、比較例1の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
[比較例2]
1回目の同時二軸延伸を行った後、70℃まで冷却し、次いで2回目の同時二軸延伸を行ったこと以外は実施例1と同様に、比較例2の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
[比較例3]
得られた積層未延伸フィルムを同時二軸延伸ではなく、下記の手順に従って逐次延伸を行ったこと以外は実施例1と同様に、比較例3の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。延伸手順は、積層未延伸フィルムを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長さ方向に3.3倍延伸を行い(MD延伸)、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの幅方向両端をクリップで把持しながらテンター内の85℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(1回目TD延伸)、さらに続いて190℃の温度の加熱ゾーンで幅方向に1.4倍延伸した(2回目TD延伸)。その後、テンター内の熱処理ゾーンで190℃の温度で5秒間の熱処理を施した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 2014162117
Figure 2014162117
Figure 2014162117
1 レーザー発振器
2 受光部
3 荷重検出器
4 荷重
5 フリーロール
6 フリーロール
7 フリーロール
8 フリーロール
9 磁気テープ
10 レーザー光

Claims (3)

  1. 第一の温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第一延伸工程と、次いで、冷却を行うことなく、前記第一の温度よりも高い温度で幅方向及び長さ方向への同時二軸延伸を行う第二延伸工程と、を経てなり、長さ方向の屈折率nMDと幅方向の屈折率nTDとの差で示される複屈折率Δn(nMD−nTD)が−0.10〜−0.02であり、結晶化パラメーターΔTcgが25〜75℃である二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. 前記第一延伸工程における延伸倍率が、長さ方向に3.1〜4.0倍で幅方向に3.1〜4.0倍であり、上記第二延伸工程における延伸倍率が、長さ方向に1.0〜1.5倍で幅方向に1.1〜1.7倍であり、トータルの幅方向への延伸倍率がトータルの長さ方向への延伸倍率よりも大きい、請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. 結晶核剤として、モンタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有する、請求項1又は2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
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