JP2014159384A - 1,2−ビス(パーフルオロアルキル)−パーフルオロシクロアルケンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 エチレングリコールアルキルエーテル:芳香族炭化水素が80:20〜20:80(体積比)である混合溶媒中、パーフルオロシクロアルケンと、含フッ素シラン化合物とを、フッ素イオン存在下に接触させて、1,2−ビス(パーフルオロアルキル)−パーフルオロシクロアルケンを製造する。
【選択図】 なし
Description
非特許文献1では、テトラフルオロアレンを環化2量化させて1,2−ビス(ジフルオロメチレン)テトラフルオロシクロブタンを合成し、光塩素化により1,2−ビス(クロロジフルオロメチル)−テトラフルオロシクロブテンに変換、さらに、フッ化銀(II)で塩素をフッ素化することにより、収率25%で1,2−ビス(トリフルオロメチル)−テトラフルオロシクロブテンを得ている。
非特許文献2では、パーフルオロ−2,4−ヘキサジエンに5フッ化アンチモンを100℃で接触させて環化させることにより、40%の収率で1,2−ビス(トリフルオロメチル)−テトラフルオロシクロブテンを得ている。
非特許文献3では、パーフルオロ−1,3−ペンタジエンとテトラフルオロエチレンのカップリング反応で得られるパーフルオロ−2,4−ヘプタジエンを、室温下に5フッ化アンチモン触媒と接触させて環化させることにより、1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテンを収率63%で得ている。
非特許文献4では、パーフルオロシクロヘキセンを550℃に加熱することにより、転化率50%で反応が進行し、1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン20%を得ている。
非特許文献5では、1,2−ビス(トリフルオロメチル)−テトラフルオロベンゼンを三フッ化コバルトにより、芳香環部分をフッ素化して、1,2−ビス(トリフロオロメチル)−オクタフルオロシクロヘキセンを得ている。
非特許文献2と3は、どちらも、パーフルオロアルカジエンを出発原料にし、五フッ化アンチモンをフッ素源とする環化反応により1,2−ビス(トリフルオロメチル)−パーフルオロシクロアルケンを合成しているが、出発原料となる、パーフルオロアルカジエン自体は多段階の合成工程を経なければならず、この方法も工業的な製造法に適しているとは言い難い。
非特許文献4では、パーフルオロシクロヘキセンを550℃という非常に高い温度に曝す必要がある上、原料となるペーフルオロシクロヘキセンが50%も残存してしまうため、非効率的な製造方法であり、工業生産のための方法として採用することはできない。
非特許文献5においては、フッ素化剤である三フッ化コバルトを原料である芳香族化合物に対して大量に使用する必要があり、反応終了後の後処理や廃棄等が煩雑であり、やはり工業生産に適していないものであった。
そして、本発明者の更なる検討の結果、特定の混合溶媒を用いることで、1,2−ビス(パーフルオロアルキル)−パーフルオロシクロアルケンを選択性良く合成することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
前記芳香族炭化水素に、トルエン、キシレンから選択される1種の溶媒を用いるのが好ましい。
構造式3で表される化合物が、1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテンである時に著効が得られる。
ヘキサフルオロシクロブテンは、例えば、Journal of Chemical Society、3830(1952)や、特開平7−112944号公報に記載の方法が知られている。いずれの方法もフッ素樹脂のモノマーとして工業的に使用されている、クロロトリフルオロエチレンを原料にして2量化して1,2−ジクロロヘキサフルオロシクロブタンを合成し、前者は亜鉛によって、後者は金属触媒存在下に水素還元を行うことにより脱塩素化し、ヘキサフルオロシクロブテンに導かれる。
また、Rf 1≠Rf 2の場合、2種の含フッ素シラン化合物を用いることになるが、それぞれの含フッ素シラン化合物の使用量は、通常1〜2当量、より好ましくは1.2〜1.5当量であり、Rf 1SiR1R2R3を添加し、反応を進行させてRf 1SiR1R2R3を消費した後、Rf 2SiR1R2R3を続けて添加し、反応を進行させれば良い。
本発明において、反応溶媒は、エチレングリコールジアルキルエーテル及び芳香族炭化水素以外の溶媒を、本発明の目的を阻害しない範囲で混合することができ、その量は、通常は全反応溶媒中10体積%以下であり、好ましくは全反応溶媒中5体積%以下である。
本発明においてフッ化物の使用量はフッ化物の使用量は、この反応が維持される量であれば良く、原料となるパーフルオロシクロアルケンに対して、通常0.01〜0.3当量、好ましくは0.05〜0.1当量である。使用量が少な過ぎると反応完結に多大な時間を要し、多過ぎる場合は経済的に不利な上、副反応の原因となり得る。
・ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:島津製作所社製、製品名「GC−2010」
カラム:ジーエルサイエンス社製、製品名「TC−1」、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
カラム温度:40℃、10分間保持後、20℃/分で昇温、次いで、250℃、10分間保持
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素ガス
スプリット比:100/1
検出器:FID
GC部分:ヒューレットパッカード社製、製品名「HP−6890」
カラム:ジーエルサイエンス社製、製品名「Inert Cap−1」、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm
カラム温度:40℃、10分間保持後、20℃/分で昇温、次いで、240℃、10分間保持
MS部分:ヒューレットパッカード社製、製品名「5973 NETWORK」
検出器 EI型(加速電圧:70eV)
・19F−NMR測定
日本電子社製、製品名「JNM−ECA400」、400MHz
滴下ロート及びジムロート型コンデンサーを付したガラス製反応器に、乾燥エチレングリコールジメチルエーテル84mlと乾燥トルエン36mlとを仕込み、窒素雰囲気下においた。さらに、オクタフルオロシクロペンテン21.2g(日本ゼオン社製)、及びフッ化セシウム1.5gを仕込んだ。反応器を−40℃に冷却し、滴下ロートからトリフルオロメチルトリメチルシラン31.3g(Apollo Scientific社製)を45分間かけて滴下した。滴下終了後、反応器を−40℃に維持しながら3時間攪拌した。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィー、及びガスクロマトグラフィー質量分析計にて分析したところ、オクタフルオロシクロペンテン0.4面積%、1−トリフルオロメチルヘプタフルオロシクロペンテン23.9面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン61.6面積%の他、C8F16及びC9F18が、それぞれ8.2面積%及び5.9面積%生成していた。
反応液はテフロン(登録商標)製孔径0.1μmのフィルターを通して、固形分を加圧ろ過した。ろ液を蒸留塔(東科精機社製:KS型)にて精留し、目的物である1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン17.1g(沸点:64℃、収率54.8%)を得た。
19F−NMR(CF3CO2H、CDCl3):δ −15.2(3F×2)、36.1(2F×2)、58.0(2F×1)
GC−MS(EI−MS):m/z 293、243、193,155、124,93,69
実施例1において、溶媒を、乾燥エチレングリコールジメチルエーテル36ml及び乾燥トルエン84mlに変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィー、及びガスクロマトグラフィー質量分析計にて分析したところ、オクタフルオロシクロペンテン11.2面積%、1−トリフルオロメチルヘプタフルオロシクロペンテン13.3面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン68.4面積%の他、C8F16及びC9F18が、それぞれ6.7面積%及び0.4面積%生成していた。
実施例1において、溶媒を、乾燥エチレングリコールジメチルエーテル60ml及び乾燥トルエン60mlに変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、オクタフルオロシクロペンテン11.2面積%、1−トリフルオロメチルヘプタフルオロシクロペンテン12.8面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン65.9面積%の他、C8F16及びC9F18が、それぞれ7.0面積%及び3.1面積%生成していた。
実施例1において、乾燥トルエンを乾燥キシレンに変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、オクタフルオロシクロペンテン1.9面積%、1−トリフルオロメチルヘプタフルオロシクロペンテン23.0面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン60.2面積%の他、C8F16及びC9F18が、それぞれ7.6面積%及び7.3面積%生成していた。
滴下ロート及びジムロート型コンデンサーを付したガラス製反応器に、乾燥エチレングリコールジメチルエーテル60mlと乾燥トルエン60mlとを仕込み、窒素雰囲気下に置いた後、反応器を−40℃に冷却した。反応器内にヘキサフルオロシクロブテン16.2g(シンクエスト社製)をシリンダーからチューブを介して吹きこんだ。さらに、フッ化セシウム1.5gを仕込み、滴下ロートからトリフルオロメチルトリメチルシラン31.3gを40分間かけて滴下した。滴下終了後、反応器を−40℃に維持しながら2.5時間攪拌した。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、ヘキサフルオロシクロブテン1.4面積%、1−トリフルオロメチルペンタフルオロシクロブテン24.5面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−テトラフルオロシクロブテン68.0面積%の他、C7F12が6.1面積%生成していた。
反応液はテフロン(登録商標)製孔径0.1μmのフィルターを通して、固形分を加圧ろ過した。ろ液を蒸留塔(東科精機社製:KS型)にて精留し、目的物である1,2−ビス(トリフルオロメチル)−テトラフルオロシクロブテンが 15.0g(沸点:36℃、収率57%)得られた。
19F−NMR(CF3CO2H,CDCl3):δ −12.4(3F×2)、39.1(2F×2)
GC−MS(EI−MS):m/z 262、243、212
実施例1において、オクタフルオロシクロペンテンをデカフルオロシクロヘキセン26.2g(P&Mインベスト社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィー、及びガスクロマトグラフィー質量分析計にて分析したところ、デカフルオロシクロヘキセン5.5面積%、1−トリフルオロメチルノナフルオロシクロヘキセン14.9面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−オクタフルオロシクロヘキセン58.1面積%の他、C9F14及びC10F16が、それぞれ14.3面積%及び7.2面積%生成していた。
反応液はテフロン(登録商標)製孔径0.1μmのフィルターを通して、固形分を加圧ろ過した。ろ液を蒸留塔(東科精機製:KS型)にて精留し、目的物である1,2−ビス(トリフルオロメチル)−オクタフルオロシクロヘキセンが 17.6g(沸点:89℃、収率48.6%)得られた。
19F−NMR(CF3CO2H、CDCl3):δ −18.27(3F×2)、35.53(2F×2)、59.55(2F×2)
GC−MS(EI−MS):m/z 293、243、224、155、69
滴下ロート及びジムロート型コンデンサーを付したガラス製反応器に、乾燥エチレングリコールジメチルエーテル60mlと乾燥トルエン0mlとを仕込み、窒素雰囲気下に置いた後、反応器を−40℃に冷却した。反応器内にヘキサフルオロシクロブテン16.2g(SynQuest社製)をシリンダーからチューブを介して吹きこんだ。さらに、フッ化セシウム1.5gを仕込み、滴下ロートからトリフルオロメチルトリメチルシラン15.6gを20分間かけて滴下した。滴下終了後、反応器を−40℃に維持しながら1時間攪拌した。その後、ペンタフルオロエチルトリメチルシラン23.0g(Fluorochem社製)を滴下ロートから25分間かけて滴下した。滴下終了後、反応器を−40℃に維持しながら時間撹拌を2時間継続した。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、ヘキサフルオロシクロブテン0.1面積%、1−トリフルオロメチルペンタフルオロシクロブテン7.4面積%、1,2−ビス(トリフルオロメチル)−テトラフルオロシクロブテン5.4面積%、1,2−ビス(ペンタフルオロエチル)−テトラフルオロシクロブテン8.3面積%、及び1−トリフルオロメチル−2−ペンタフルオロエチルテトラフルオロシクロブテン65.8面積%の他、C9F16及びC10F18が、それぞれ10.1面積%及び2.9面積%生成していた。
反応液はテフロン(登録商標)製孔径0.1μmのフィルターを通して、固形分を加圧ろ過した。ろ液を蒸留塔(東科精機製:KS型)にて精留し、目的物である1−トリフルオロメチル−2−ペンタフルオロエチル−テトラフルオロシクロブテンが18.5g(沸点:67℃、収率59.2%)得られた。
19F−NMR(CF3CO2H、CDCl3):δ −13.5(3F)、8.8(3F)、38.8(2F)、39.3(2F),39.7(2F)
GC−MS(EI−MS):m/z 293、243、193、69
実施例1において、乾燥トルエンを添加せず、乾燥エチレングリコールジメチルエーテルを2倍体積量に変更して反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、オクタフルオロシクロペンテン5.7面積%、1−トリフルオロメチルヘプタフルオロシクロペンテン12.4面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン22.5面積%の他、C8F16、C9F18、及びC10F20が、それぞれ27.1面積%、18.4面積%、及び13.9面積%生成していた。
乾燥エチレングリコールジメチルエーテル、及び乾燥トルエンをそれぞれ90ml、及び10mlに変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。反応器内の内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、オクタフルオロシクロペンテン14.2面積%、1−トリフルオロメチルヘプタフルオロシクロペンテン20.2面積%、及び1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテン25.1面積%の他、C8F16、C9F18、及びC10F20が、それぞれ25.8面積%、8.8面積%、及び5.9面積%生成していた。
Claims (4)
- エチレングリコールアルキルエーテル:芳香族炭化水素が80:20〜20:80(体積比)である混合溶媒中、下記構造式1で表されるパーフルオロシクロアルケンと、構造式2で表される含フッ素シラン化合物とを、フッ素イオン存在下に接触させて、構造式3で表される1,2−ビス(パーフルオロアルキル)−パーフルオロシクロアルケンを製造する方法。
- エチレングリコールジアルキルエーテルが、エチレングリコールジメチルエーテルである請求項1に記載の製造方法。
- 芳香族炭化水素が、トルエン及び/又はキシレンである請求項1又は2に記載の製造方法。
- 構造式3で表される化合物が、1,2−ビス(トリフルオロメチル)−ヘキサフルオロシクロペンテンである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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