JP2019127465A - 1h,2h−パーフルオロシクロアルケンの製造方法 - Google Patents

1h,2h−パーフルオロシクロアルケンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する方法を提供する。【解決手段】下記式(I)(式中、nは1以上3以下の整数を表す。)で示される1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する方法であり、非水溶性溶媒の存在下で、下記式(II)(式中、nは1以上3以下の整数を表す。)で示される1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを1級アルキルアミンと接触させる反応工程を含む、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法に関するものである。
フッ素化炭化水素は、半導体装置等の製造工程において使用されるエッチングガスおよび化学気相蒸着(CVD)装置用のガス、発泡剤、含フッ素医薬中間体、並びにフッ素系溶剤等として有用である。
特に、高純度化された1H,2H−パーフルオロシクロアルケンは、半導体装置等の製造工程において使用されるエッチングガスおよびCVD装置用のガスとして好適に使用することができる。
1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法としては、幾つかの方法が開示されている。
例えば、特許文献1においては、60℃の温度条件下で、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを2M水酸化カリウム水溶液と接触させることにより、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(1H,2H−パーフルオロシクロペンテン)が得られることが報告されている。
特許文献2においては、150〜170℃の温度条件下で、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のルイス塩基と反応させることで、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(1H,2H−パーフルオロシクロペンテン)が得られることが報告されている。
特許文献3においては、1,2−ジクロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンの2つの塩素原子を、銅、またはニッケルなどの遷移金属触媒の存在下で、水素により還元することにより、幾つかの生成物の中の1つとして、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(1H,2H−パーフルオロシクロペンテン)が得られることが報告されている。
特許文献4においては、1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロシクロブタンを、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物と、塩化カルシウム等の脱水剤との混合物と接触させることにより、3,3,4,4−テトラフルオロシクロブテン(1H,2H−パーフルオロシクロブテン)が得られることが報告されている。
非特許文献1においては、テトラフルオロエチレンとアセチレンとを密閉容器に充填して225℃に加温することで、3,3,4,4−テトラフルオロシクロブテン(1H,2H−パーフルオロシクロブテン)が得られることが報告されている。
非特許文献2においては、ヘキサフルオロシクロブテンを、還元剤である水素化リチウムアルミニウムと接触させることで、3,3,4,4−テトラフルオロシクロブテン(1H,2H−パーフルオロシクロブテン)が得られることが報告されている。
非特許文献3においては、デカフルオロシクロヘキセンを、水素化リチウムアルミニウムと接触させることで、幾つかの生成物の中の1つとして、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロシクロヘキセン(1H,2H−パーフルオロシクロヘキセン)が得られることが報告されている。
国際公開第2008/081804号 中国特許出願公開第105330513号明細書 特開2000−86548号公報 特開2006−225298号公報
J.L.Anderson et al,Fluorodienes.I.Synthesis from cyclobutenes,Journal of American Chemical Society,1961.1.1,Vol.83,p.382−385 G.Fuller et al,Some Isomeric Hexafluorocyclobutanes and Pentafluorocyclobutenes,Journal of Chemical Society,1961,p.3198−3203 D.E.M.Evans et al,Fluorocyclohexanes. Part VIII. Lithium aluminium hydride reduction of decafluorocyclohexene,Journal of Chemical Society,1963,p.4828−4834
ここで、特にエッチングガス等の半導体装置製造用ガスとして使用する高純度の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する場合、異性体の副生を良好に抑制することが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテン以外に、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンが副生し得ることが分かっている。
また、特許文献3、4および非特許文献3に記載の製造方法においても、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケン以外の異性体が副生する恐れがある。
一方で、工業的実用性の観点から、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造は温和な条件で行なうことが求められるが、特許文献2に記載の製造方法は、密閉容器中でN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を沸点以上の高温に加温するため、耐圧性の反応器を必要とし、さらに、上記アミド化合物等の分解に伴う酸(ギ酸、酢酸等)の発生により、設備を傷める恐れがあることから、温和な条件下での製造方法であるとは言い難い。
また、非特許文献1に記載の製造方法も、225℃の高温条件下で反応を行なう必要があり、温和な条件下で目的物である1H,2H−パーフルオロシクロブテンを製造することが困難であった。
さらに、非特許文献2および3に記載の製造方法においても、強力な還元剤である水素化リチウムアルミニウムを用いるため、温和な条件下で目的物である1H,2H−パーフルオロシクロブテンを製造することは困難であると考えられる。
以上から、上記従来技術においては、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する点において改善の余地があった。
そこで、本発明は、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、非水溶性溶媒の存在下で所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを1級アルキルアミンと接触させれば、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法は、下記式(I):
Figure 2019127465
(式中、nは1以上3以下の整数を表す。)
で示される1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する方法であり、非水溶性溶媒の存在下で、下記式(II):
Figure 2019127465
(式中、nは1以上3以下の整数を表す。)
で示される1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを1級アルキルアミンと接触させる反応工程を含むことを特徴とする。このように、非水溶性溶媒の存在下で所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを1級アルキルアミンと接触させれば、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができる。なお、上記式(I)におけるnが表す1以上3以下の整数は、上記式(II)におけるnが表す1以上3以下の整数と同じである。
ここで、本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法は、前記1級アルキルアミンの炭素数が6以下であることが好ましい。炭素数が6以下である1級アルキルアミンを用いれば、反応工程で得られる反応生成物から1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを容易に回収することができる。
また、本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法は、前記非水溶性溶媒の沸点が、前記1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの沸点よりも20℃以上高いことが好ましい。1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの沸点よりも20℃以上高い沸点を有する非水溶性溶媒を用いれば、反応工程で得られる反応生成物に含まれている1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを蒸留により容易に精製することができる。なお、本明細書中において、各物質の「沸点」は、圧力1atmの条件下における当該物質の沸点を指す。
本発明によれば、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができる。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法)
本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法は、下記式(I):
Figure 2019127465
(式中、nは1以上3以下の整数を表す。)
で示される1H,2H−パーフルオロシクロアルケン(以下、「目的物」と称することがある。)を製造する方法であり、非水溶性溶媒の存在下で所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカン(以下、「出発原料」と称することがある。)を1級アルキルアミンと接触させる反応工程を含み、任意にその他の工程を更に含む。本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法によれば、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができる。
なお、本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法により得られる上記式(I)で示される目的物としては、nが1である場合の1H,2H−パーフルオロシクロブテン(沸点:51℃)、nが2である場合の1H,2H−パーフルオロシクロペンテン(沸点:77℃)、および、nが3である場合の1H,2H−パーフルオロシクロヘキセン(沸点:86℃)などを挙げることができる。中でも、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンの工業的な入手の容易さの観点から、目的物は1H,2H−パーフルオロシクロブテン、および1H,2H−パーフルオロシクロペンテンであることが好ましく、1H,2H−パーフルオロシクロペンテンであることがより好ましい。
<反応工程>
反応工程では、出発原料である下記式(II):
Figure 2019127465
(式中、nは1以上3以下の整数を表す。)
で示される1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを非水溶性溶媒の存在下で1級アルキルアミンと接触させることにより、出発原料と1級アルキルアミンとを反応させて、出発原料からフッ化水素(HF)を脱離することで、目的物を生成させる。
<<1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカン>>
出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンは、公知の方法により合成することができる。
例えば、上記式(II)において、nが1である場合の1H,1H,2H−パーフルオロシクロブタンは、特開2004−182671号公報および特開2007−106726号公報に記載の方法に従って合成することができる。
また、nが2である場合の1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは、特開2000−226346号公報および特開2000−247912号公報に記載の方法に従って合成することができる。
さらに、nが3である場合の1H,1H,2H−パーフルオロシクロヘキサンは、非特許文献3に記載の方法に従って合成することができる。
なお、工業的な入手の容易さの観点からは、出発原料として1H,1H,2H−パーフルオロシクロブタン、および1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンを用いることが好ましく、1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンを用いることがより好ましい。
<<1級アルキルアミン>>
1級アルキルアミンとしては、特に限定されることはないが、例えば、1級アルキルモノアミン、および1級アルキルジアミンなどを用いることができる。具体的に、1級アルキルモノアミンとしては、メチルアミン(炭素数1の1級アルキルモノアミン);エチルアミン(炭素数2の1級アルキルモノアミン);n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン等の炭素数3の1級アルキルモノアミン;n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロブチルアミン等の炭素数4の1級アルキルモノアミン;n−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ネオペンチルアミン等の炭素数5の1級アルキルモノアミン;n−ヘキシルアミン、イソヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンなどの炭素数6の1級アルキルモノアミン;などが挙げられる。また、1級アルキルジアミンとしては、エチレンジアミン等の炭素数2の1級アルキルジアミン;1,3−プロパンジアミン等の炭素数3の1級アルキルジアミン;1,4−ブタンジアミン等の炭素数4の1級アルキルジアミン;などが挙げられる。そして、反応工程に使用する1級アルキルアミンは、炭素数3以上の1級アルキルアミンであることが好ましく、炭素数6以下の1級アルキルアミンであることが好ましく、炭素数5以下の1級アルキルアミンであることがより好ましく、炭素数4以下の1級アルキルアミンであることが更に好ましい。炭素数3以上の1級アルキルアミンであれば、沸点が十分に高いため、取り扱いが容易である。一方、炭素数が6以下の1級アルキルアミンを用いれば、反応工程において生成する1級アルキルアミン−フッ化水素塩、および未反応の1級アルキルアミンを酸で中和した際に生成する塩の水への溶解性を高め、反応工程で得られる反応生成物から1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを容易に回収することができる。
反応工程における1級アルキルアミンの使用量としては、出発原料に対する1級アルキルアミン中のアミノ基換算で、1.1モル当量以上であることが好ましく、1.5モル当量以上であることがより好ましく、3モル当量以下であることが好ましく、2.5モル当量以下であることがより好ましい。1級アルキルアミンの使用量が、上記下限以上であれば、反応工程後に出発原料が残存することを防止するとともに、反応工程に要する時間を短縮することができる。一方、1級アルキルアミンの使用量が上記上限以下であれば、非水溶性溶媒、出発原料および1級アルキルアミンの混合物の粘度を低く抑え、攪拌を容易にするとともに、未反応の1級アルキルアミンが大量に残存することを抑制し、反応工程の後に未反応の1級アルキルアミンを中和するために必要とする酸の使用量を少なくすることができる。
<<非水溶性溶媒>>
本発明で使用する非水溶性溶媒は、20℃の水に対する溶解度が1.5質量%以下の溶媒であり、非水溶性溶媒を同体積の水と混合した際、速やかに有機層と水層との2つの層に分離可能な溶媒である。
非水溶性溶媒としては、例えば、ベンゼン(沸点:80.1℃)、トルエン(沸点:110.6℃)、o−キシレン(沸点:144℃)、m−キシレン(沸点:139℃)、p−キシレン(沸点:138℃)、1,3,5−トリメチルベンゼン(沸点:165℃)、クロロベンゼン(沸点:131℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:180.5℃)、m−ジクロロベンゼン(沸点:173℃)、p−ジクロロベンゼン(沸点:174℃)、ベンゾトリフルオリド(沸点:102℃)、アニソール(沸点:154℃)等の芳香族炭化水素;シクロペンチルメチルエーテル(沸点:106℃)、ジ−n−ブチルエーテル(沸点:142℃)、ジイソブチルエーテル(沸点:122℃)、ジ−n−ペンチルエーテル(沸点:186℃)、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)(沸点:102℃)、デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタン(沸点:100℃)等のエーテル;酢酸n−プロピル(沸点:102℃)、酢酸n−ブチル(沸点:126℃)、酢酸sec−ブチル(沸点:112℃)、酢酸t−ブチル(沸点:96℃)、酢酸n−ぺンチル(沸点:149℃)、酢酸n−ヘキシル(沸点:169℃)、プロピオン酸n−ブチル(沸点:145℃)、プロピオン酸イソペンチル(沸点:161℃)等のエステル;などを挙げることができる。中でも、安定性の観点からは、芳香族炭化水素またはエーテルを用いることが好ましく、芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。なお、上述した非水溶性溶媒は、1種類を単独で、または複数種類を任意の割合で混合して使用することができる。また、蒸留により目的物を容易に精製する観点からは、非水溶性溶媒は、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの沸点を考慮して、適宜選択される。具体的には、非水溶性溶媒の沸点は、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの沸点よりも20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。非水溶性溶媒の沸点が、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの沸点よりも20℃以上高ければ、反応工程で得られる反応生成物から目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを蒸留により容易に精製することができる。なお、本明細書中において、「非水溶性溶媒の沸点」は、複数種類の非水溶性溶媒を使用する場合、当該複数種類の非水溶性溶媒の沸点のうち、最も低い沸点を指す。
非水溶性溶媒の使用量は、出発原料の単位質量当たりの溶媒の体積比(mL/g)で、1.0mL/g以上であることが好ましく、2.0mL/g以上であることがより好ましく、3.5mL/g以下であることが好ましい。非水溶性溶媒の使用量が上記下限以上であれば、非水溶性溶媒、出発原料および1級アルキルアミンの混合物の粘度を低く抑え、攪拌を容易にすることで、反応工程に要する時間を短縮することができる。一方、溶媒の使用量が上記上限以下であれば、出発原料と1級アルキルアミンとの接触効率を高め、反応工程に要する時間を短縮することができる。
<<反応条件>>
反応条件としては、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内で反応温度の値を一定に保ちながら反応工程を行なってもよいし、当該範囲内で反応温度の値を任意に変更しながら反応工程を行なってもよい。そして、反応工程の初期は発熱を伴うことから、反応工程の開始後に低温の初期条件で反応を所定の時間行なった後に、常温以上の主条件で更に反応を行なうことが好ましい。
[初期条件]
具体的に、初期条件の温度は0℃以上10℃以下であることが好ましい。初期条件の反応温度が0℃以上であれば、発熱を抑制しつつ、反応を開始することができる。一方、初期条件の反応温度が10℃以下であれば、異性体の副生を更に良好に抑制することができる。初期条件で反応を行なう時間は、攪拌機の能力および反応実施の規模等にもよるが、10分以上60分以下であることが好ましい。初期条件で反応を行なう時間が10分以上であれば、発熱による温度上昇を抑え、異性体の副生を更に良好に抑制することができる。一方、初期条件で反応を行なう時間が60分以下であれば、反応工程に要する時間を短縮することができる。
[主条件]
そして、主条件の温度は、20℃以上であることが好ましく、100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが更に好ましい。主条件の反応温度が20℃以上であれば、出発原料を目的物に効率良く変換し、反応工程に要する時間を短縮することができる。一方、主条件の反応温度が100℃以下であれば、異性体の副生を更に良好に抑制することができる。主条件で反応を行なう時間は、攪拌機の能力および反応実施の規模等にもよるが、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、20時間以下であることが好ましく、10時間以下であることがより好ましい。主条件で反応を行なう時間が1時間以上であれば、目的物の収率を十分に高く確保することができる。一方、主条件で反応を行なう時間が20時間以下であれば、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケンへの1級アルキルアミンの付加反応等の好ましくない副反応を抑制することができる。
<<反応実施の形態>>
反応実施の形態としては、例えば、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカン、および非水溶性溶媒を反応器に仕込み、反応器内の内容物を攪拌機により撹拌させながら、1級アルキルアミンを反応器内に滴下し、撹拌を継続する方法を取ることができる。ここで、反応器および攪拌機としては、既知のものを用いることができる。なお、反応器内の温度は、氷浴、ウォーターバス、およびオイルバス等の既知の装置を用いることにより、「反応条件」の項で上述した範囲内で設定することができる。また、上記操作により得られた反応生成物中の未反応の出発原料の残存量は、ガスクロマトグラフィー等の測定方法により確認することができる。当該測定方法により、出発原料が消費されたことを確認できたら、撹拌を停止して、例えば、反応器内の反応生成物を後述する後処理工程等のその他の工程に供することができる。
<その他の工程>
本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法は、上述した反応工程以外にも、任意のその他の工程を含んでいてもよい。例えば、本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法は、反応工程の後に目的物を回収および/または精製するための後処理工程を更に含み得る。
より具体的に、本発明の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法では、上述した反応工程の後に、後処理工程として、(1)塩除去工程、(2)酸処理工程、および(3)精製工程を実施することができる。なお、使用する出発原料および1級アルキルアミンの量および種類、求められる目的物の精製度、並びに反応実施の規模等に応じて、上記3工程のうちの少なくとも1つの工程の実施を省略してもよい。さらに、上記3工程以外の任意の工程を実施してもよい。
<<塩除去工程>>
塩除去工程では、まず、反応工程終了後の反応生成物に水を添加して攪拌する。上述した反応工程では、反応により1級アルキルアミンと出発原料由来のフッ化水素との塩が生成し、反応生成物中に存在するが、塩除去工程で水を添加して攪拌することより、当該塩が水に溶解して、反応生成物中から除去され、目的物を含む有機相と、当該塩を含む水相とが形成される。ここで、塩除去工程に使用し得る水としては、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。攪拌後暫く静置することで、有機相と水相とが2層に分離したら、水相のみを除去して、目的物を含む有機相を取得する。なお、得られた有機相に乾燥剤を添加することで、有機相中に含まれる水を除去することもできる。乾燥剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等を用いることができる。
<<酸処理工程>>
酸処理工程では、まず、上述した反応生成物または有機相に酸を添加して、未反応の1級アルキルアミンを中和し、生じた塩を有機相から除去して、水相へ移行させる。なお、酸としては、希塩酸、希硫酸、希硝酸等を用いることができる。そして、未反応の1級アルキルアミンを中和した後、有機相に飽和重層水、飽和食塩水等の飽和水溶液を添加して攪拌することで、余剰の酸を有機相から除去することができる。攪拌後暫く静置することで、有機相と水相とが2層に分離したら、水相のみを除去して、目的物を含む有機相を取得することができる。なお、得られた有機相に乾燥剤を添加することで、有機相中に含まれる水を除去することもできる。乾燥剤としては、「塩除去工程」の項で上述した乾燥剤を用いることができる。
<<精製工程>>
精製工程は、上述した反応生成物または有機相から、目的物を高純度に精製して回収できれば、特に限定されないが、通常は、既知の蒸留塔を用いて反応生成物または有機相を蒸留することにより行なう。なお、精製工程を複数回繰り返して実施することにより、更に高純度化された目的物を得ることも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は、以下の通りである。
測定装置:HP−6890(アジレント社製)
測定カラム:ジーエルサイエンス社製「Inert Cap−1」(長さ:60m、内径:0.25mm、膜厚:1.5μm)
カラム温度:40℃で10分間保持し、次いで、20℃/分で昇温し、その後、240℃で10分間保持
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
スプリット比:100/1
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)(温度:250℃、検出限界:1ppm)
(実施例1)
撹拌機、および滴下ロートを付した容量300mLの丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン(日本ゼオン製「ゼオローラ−H」)39.2g(0.2mol)、および非水溶性溶媒としてのトルエン(沸点:110.6℃)100mLを仕込み、反応器を氷浴に浸し、滴下ロートから1級アルキルアミンとしてのn−ブチルアミン30.8g(0.42mol)を約20分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応生成物を30分間継続して撹拌した。その後、氷浴を除去して、室温(23℃)で、3時間撹拌した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテン(沸点:77℃)の生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例2)
撹拌機、および滴下ロートを付した容量200ml丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン(日本ゼオン製「ゼオローラ−H」)19.6g(0.1mol)、および非水溶性溶媒としてのトルエン50mlを仕込み、反応器を氷浴に浸し、滴下ロートから1級アルキルアミンとしてのn−プロピルアミン12.4g(0.21mol)を約10分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応生成物を30分間継続して攪拌した。その後、氷浴を除去して、室温(23℃)で5時間撹拌した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例3)
実施例2において、1級アルキルアミンをn−プロピルアミン12.4g(0.21mol)からsec−ブチルアミン15.4g(0.21mol)に変更し、室温(23℃)での反応時間を8時間に変更したこと以外は、実施例2と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例4)
実施例2において、1級アルキルアミンをn−プロピルアミン12.4g(0.21mol)からイソプロピルアミン12.4g(0.21mol)に変更し、室温(23℃)での反応時間を4時間に変更したこと以外は、実施例2と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例5)
実施例2において、1級アルキルアミンをn−プロピルアミン12.4g(0.21mol)からn−ヘキシルアミン21.2g(0.21mol)に変更したこと以外は、実施例2と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例6)
実施例2において、1級アルキルアミンをn−プロピルアミン12.4g(0.21mol)からシクロヘキシルアミン21.2g(0.21mol)に変更したこと以外は、実施例2と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例7)
実施例2において、1級アルキルアミンをn−プロピルアミン12.4g(0.21mol)からエチレンジアミン7.21g(0.12mol、アミノ基換算で0.24mol)に変更し、室温(23℃)での反応時間を6時間に変更したこと以外は、実施例2と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例8)
実施例1において、溶媒をトルエンからp−キシレン(沸点:138℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例9)
実施例1において、溶媒をトルエンから1,3,5−トリメチルベンゼン(沸点:165℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例10)
実施例1において、溶媒をトルエンからクロロベンゼン(沸点:131℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例11)
実施例1において、溶媒をトルエンからアニソール(沸点:154℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例12)
実施例1において、溶媒をトルエンからベンゾトリフルオリド(沸点:102℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例13)
実施例1において、溶媒をトルエンからシクロペンチルメチルエーテル(沸点:106℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例14)
実施例1において、溶媒をトルエンからジ−n−ブチルエーテル(沸点:142℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例15)
実施例1において、溶媒をトルエンから酢酸n−ブチル(沸点:126℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例16)
実施例1において、溶媒をトルエンからデカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタン(3M社製「HFE−7300」、沸点:100℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(実施例17)
実施例2において、出発原料を1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン19.6g(0.1mol)から1H,1H,2H−パーフルオロシクロブタン14.6g(0.1mol)に変更したこと以外は、実施例2と同様に反応を実施した。撹拌停止後、反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロブタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロブテン(沸点:51℃)の生成が検出された。また、異性体である2H,3H−パーフルオロシクロブテンの副生は検出されなかった(検出限界以下)。
(比較例1)
撹拌機を付した容量200ml丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン19.6g(0.1mol)、および2mol/Lの水酸化カリウム水溶液100mlを仕込み、反応器を氷浴に浸し、30分間撹拌を継続した。その後、氷浴を除去して、室温(23℃)で、4.5時間撹拌した。撹拌を停止し、静置後、内容物の下層をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンと異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンとが、検出ピーク面積値で、90.5:9.5の割合で生成していることが確認された。
(比較例2)
撹拌機を付した容量200ml丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン19.6g(0.1mol)、トルエン50mL、および2mol/Lの水酸化カリウム水溶液100mlを仕込み、反応器を氷浴に浸し、30分間撹拌を継続した。その後、氷浴を除去して、室温(23℃)で、9.5時間撹拌した。撹拌を停止し、静置後、内容物の上層をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンと異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンとが、検出ピーク面積値で、91.5:8.5の割合で生成していることが確認された。
(比較例3)
撹拌機、および滴下ロートを付した容量200ml丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン(日本ゼオン製「ゼオローラ−H」)19.6g(0.1mol)、および非水溶性溶媒としてのトルエン50mlを仕込み、反応器を氷浴に浸した。滴下ロートから、複素環式アミンであるピリジン16.6g(0.21mol)を約15分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応生成物を30分間継続して撹拌した。その後、氷浴を除去して、反応器をオイルバスに浸漬して50℃で、10時間撹拌した。反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンが検出され、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンの生成は検出されなかった(検出限界以下)。
(比較例4)
撹拌機、および滴下ロートを付した容量200ml丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタン(日本ゼオン製「ゼオローラ−H」)19.6g(0.1mol)、および非水溶性溶媒としてのトルエン50mlを仕込み、反応器を氷浴に浸した。滴下ロートから、3級アルキルアミンであるトリエチルアミン21.3g(0.21mol)を約20分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応生成物を30分間継続して撹拌した。その後、氷浴を除去して、反応器をオイルバスに浸漬して80℃で、9時間撹拌した。反応生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロペンタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロペンテンと異性体である2H,3H−パーフルオロシクロペンテンとが、検出ピーク面積値で、95.8:4.2の割合で生成していることが確認された。
(比較例5)
撹拌機を付した容量200ml丸底ガラス反応器に、出発原料としての1H,1H,2H−パーフルオロシクロブタン14.6g(0.1mol)、および2mol/Lの水酸化カリウム水溶液100mlを仕込み、反応器を氷浴に浸し、30分間撹拌を継続した。その後、氷浴を除去して、室温(23℃)で、4.5時間撹拌した。撹拌を停止し、静置後、2層に分離した内容物のうちの下層をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、出発原料である1H,1H,2H−パーフルオロシクロブタンは消失し(検出限界以下)、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロブテンと異性体である2H,3H−パーフルオロシクロブテンとが、検出ピーク面積値で、91.9:8.1の割合で生成していることが確認された。
以上の結果より、非水溶性溶媒の存在下で所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを1級アルキルアミンと接触させる工程を含む実施例1〜17の製造方法によれば、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができることがわかる。
一方、所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを、1級アルキルアミンではなく、アルカリ金属水酸化物である水酸化カリウムと接触させた比較例1、2、および5の製造方法では、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造できるものの、異性体の副生を良好に抑制する点に劣ることがわかる。
また、所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを、1級アルキルアミンではなく、複素環式アミンであるピリジンと接触させた比較例3の製造方法では、目的物である1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができないことがわかる。
さらに、所定の1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを、1級アルキルアミンではなく、3級アルキルアミンであるトリエチルアミンと接触させた比較例4の製造方法では、温和な条件下で1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造できるものの、異性体の副生を良好に抑制する点に劣ることがわかる。
本発明によれば、温和な条件下で、且つ、異性体の副生を良好に抑制しつつ、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造することができる。

Claims (3)

  1. 下記式(I):
    Figure 2019127465
    (式中、nは1以上3以下の整数を表す。)
    で示される1H,2H−パーフルオロシクロアルケンを製造する方法であり、
    非水溶性溶媒の存在下で、下記式(II):
    Figure 2019127465
    (式中、nは1以上3以下の整数を表す。)
    で示される1H,1H,2H−パーフルオロシクロアルカンを1級アルキルアミンと接触させる反応工程を含む、1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法。
  2. 前記1級アルキルアミンの炭素数が6以下である、請求項1に記載の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法。
  3. 前記非水溶性溶媒の沸点が、前記1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの沸点よりも20℃以上高い、請求項1または2に記載の1H,2H−パーフルオロシクロアルケンの製造方法。
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