JP2014158989A - 塗布装置及び塗布方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、極めて狭い溝部に塗液を塗布する場合においても、塗布欠点が抑制され、高品位な塗布が実現可能である、塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基板を固定するテーブルと、上記テーブルに対向して設けられ、複数個の吐出孔を有する塗布ノズルと、上記テーブルと上記塗布ノズルとを相対移動させる移動手段と、を備え、上記吐出孔は、板状体を貫通することにより形成されており、上記吐出孔の形状は、塗布幅方向に長く開口しており、かつ塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状である、塗布装置を提供する。
【選択図】図3

Description

本発明は、塗布装置及び塗布方法に関する。
多様化するディスプレイの一つとして、大型で薄型軽量化が可能なプラズマディスプレイパネルが知られている。プラズマディスプレイパネルは、赤、緑又は青の蛍光体層を適宜発光させて、フルカラー表示を行うものである。これら蛍光体層は、プラズマディスプレイパネルの構成要素である背面板の溝部に蛍光体粉末を含む蛍光体ペーストを塗布し、乾燥や焼成をすることで形成される。
背面板の溝部は、例えばストライプ状等の隔壁によって形成されるが、ディスプレイの高精細化に伴い、これら溝部の幅が次第に狭小化しつつある。
幅の狭い溝部に蛍光体ペースト等の塗液を塗布する方法としては、吐出孔を有する塗布ノズルを使用し、この塗布ノズルとプラズマディスプレイ用の背面板等の基板とを対向させて相対的に移動させながら吐出孔より塗液を吐出して溝部に充填する方法が主流となっている。このような塗布方法において、塗布性能を高め、塗布欠点を抑制するために、塗布ノズルの吐出孔を所定の直径の円形にしたり(特許文献1)、塗布方向に長く開口した形状にしたり(特許文献2)、また、単に吐出孔を楕円形や長円形にしたり(特許文献3)したものが提案されている。
特開平10−27543号公報 特開2010−167342公報 特開平11−309402号公報
しかしながら、従来の塗布方法では、柱状流となって吐出孔より吐出されている塗液が、塗布ノズルや基板の移動により乱れたり、とぐろを巻いたり、折れ曲がる等の現象を十分に抑制することができず、塗布ムラ、隔壁上部への塗液付着又は混色等の塗布欠点を伴うものであったため、塗布性能をさらに高め、塗布欠点を抑制する新規の塗布技術が切望されているのが現状であった。
そこで本発明は、極めて狭い溝部に塗液を塗布する場合においても、塗布欠点が抑制され、高品位な塗布が実現可能である塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
そこで本発明者らは、塗布装置における吐出孔を特定の形状とすることが、塗布ムラ等の塗布欠点の解消に極めて効果的であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)に記載した塗布装置、塗布方法及びプラズマディスプレイパネルの製造装置を提供する。
(1)基板を固定するテーブルと、上記テーブルに対向して設けられ、複数個の吐出孔を有する塗布ノズルと、上記テーブルと上記塗布ノズルとを相対移動させる移動手段と、を備え、上記吐出孔は、板状体を貫通することにより形成されており、上記吐出孔の形状は、塗布幅方向に長く開口しており、かつ塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状である、塗布装置。
(2) 上記吐出孔は、塗布方向の直線を軸として線対称に開口している、上記(1)に記載の塗布装置。
(3) 上記吐出孔の塗布幅方向の幅Wと、上記基板に形成された溝部の幅Dと、が、W≦Dの関係を満たす、上記(1)又は(2)に記載の塗布装置を用いる塗布方法。
(4) 25℃における粘度が5〜200Pa・sの塗液を塗布する、上記(3)に記載の塗布方法。
(5) 上記(1)又は(2)に記載の塗布装置を備える、プラズマディスプレイパネルの製造装置。
本発明の塗布装置及び塗布方法によれば、極めて狭い溝部に塗液を塗布する場合においても、塗布欠点を効果的に抑制しつつ、高品位な塗布を達成することができる。
本発明の一実施態様に係る塗液の塗布装置の概略斜視図である。 図1に示した装置における塗布ノズル30のY方向における縦断面図である。 図1に示した装置における塗布ノズル30の底面図である。 基板へ塗液を塗布している様子を表す模式図である。 円形の吐出孔の形状での塗布直後の様相を示す模式図である。 塗布方向に長い長円形の吐出孔の形状での塗布直後の様相を示す模式図である。 図3に示す本発明に係る塗布ノズルの吐出孔の形状での塗布直後の様相を示す模式図である。 素ガラス基板上への塗液の塗布直後の様相を基板下面より撮影した写真である。 素ガラス基板上への塗液の塗布直後の様相を基板下面から見た模式図である。 本発明に係る塗布ノズルの吐出孔の拡大図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の塗布装置は、基板を固定するテーブルと、上記テーブルに対向して設けられ、複数個の吐出孔を有する塗布ノズルと、上記テーブルと上記塗布ノズルとを相対移動させる移動手段と、を備え、上記吐出孔は、板状体を貫通することにより形成されており、上記吐出孔の形状は、塗布幅方向に長く開口しており、かつ塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状であることを特徴とする。
本発明の塗布装置は、基板に所定量の塗液を、一定方向に塗布するために用いられる。塗布対象物である基板は、例えばプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」)用の背面板であればその表面にストライプ状の隔壁が形成されているが、本発明の塗布装置は、そのような隔壁間の溝部に塗液を塗布するために、好適に用いることができる。すなわち、本発明の塗布装置は、PDP用背面板に塗液である赤、緑又は青の蛍光体粉末を含む蛍光体ペーストを塗布するために、好適に用いることができる。
まず、本発明の塗布装置の全体構成、特にPDP用背面板のような、複数の溝部を有する凹凸基板へ塗液を塗布する場合の塗布装置の全体構成の例について説明する。図1は、本発明の一実施態様に係る塗布装置1の全体斜視図、図2は、塗布装置1における塗液の補給と吐出に係る部分の構成と、塗布ノズルの断面構造を示した模式図である。
図1において、基板9はテーブル2の上に載置され、テーブル2に設けた吸着装置(図示略)により吸着されて、固定される。テーブル2はその中心を軸として、回転位置決めを可能とするθ軸部材3(破線で示す)により支持されている。このθ軸部材3は、Y方向の位置決めを可能にするY軸調整部4に搭載され、Y軸調整部4は、X軸搬送部5に設けられた一対のY軸ガイドレール4a,4bに沿って機台6のY方向に移動する。X軸搬送部5は、機台6に設けられた一対のX軸ガイドレール5a,5bに沿って機台6のX方向に移動する。このX方向及びY方向は、互いに直交するように調整されている。X軸搬送部5は基板9に塗液を一定方向に塗布するための相対移動手段であって、塗布動作においてテーブル2をX方向に移動させる。
機台6の中央部上方には、X軸搬送部5によって移動されるテーブル2が通過するように、門型の支持台7が、X軸と直交する形で設けられている。支持台7のX軸方向奥側(以下、「下流側」)側面のY軸方向両サイド付近には、テーブル2の面に対して垂直方向に移動するZ軸移動部8a,8bが設けられ、Z軸移動部8a,8bには、塗液を吐出する塗布ノズル30が機台6のY方向中央を基準にして取り付けられる。塗布ノズル30は着脱式で、テーブル2のX方向に直交するように、Z軸移動部8a,8bに設けたチャック(図示略)により固定される。
本実施形態においては、Y軸調整部4、Y軸ガイドレール4a,4b、X軸搬送部5、X軸ガイドレール5a,5b、支持台7及びZ軸移動部8a,8b等が、テーブル2と塗布ノズル30とを3次元的に相対移動させるための移動手段に相当するものである。
図2は、図1に示した塗布ノズル30のY方向における縦断面図を示している。塗布ノズル30は、塗液35を吐出するノズル部32とフタ部31とからなり、内部に塗液を溜めるための塗液溜り部37、塗液溜り部37内に塗液35を補給するための入口となる塗液ポート33、塗液溜り部37にある空間部での吐出制御用気体の供給と排出をするための通路となる気体通過口34を有する。ノズル部32は、板状体の部材であり、塗布ノズル30の幅方向に直線状に配列された複数の吐出孔36が形成されている。なお、吐出孔36は、いずれも板状体であるノズル部32を貫通して形成されている。
本発明の塗布装置における吐出孔は、「塗布幅方向に長く開口して」いることを必要とするが、これは、吐出孔が貫通した板状体をその上方向から観察した場合における吐出孔の形状が、塗布幅方向、すなわち塗布ノズルの長手方向に長く開口していることをいう。より具体的には、上方向から観察した吐出孔の幅が、塗布幅方向において最大となっていることをいう。図3は、図1に示した塗布ノズル30を、その上方向であるZ方向から見た場合の、塗布ノズル30の底面図(一部)を示す。吐出孔36は、塗布幅方向に長く開口している。
また、本発明の塗布装置における吐出孔は、「塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状である」ことを必要とするが、これは、吐出孔が貫通した板状体をその上方向から観察した場合における吐出孔の塗布方向進行側の縁の形状が、塗布幅方向に延伸した略直線状であることをいう。ここで塗布方向進行側とは、塗液が塗布される一定方向における、塗布動作の終点側をいう。図3の吐出孔36は、塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状である。
なお、本発明の塗布装置における吐出孔は、「板状体を貫通することにより形成されて」いることを必要とするが、これは吐出孔が、一括成形した後に所望の形状に加工された板状のものを貫通して形成されていることをいう。
本発明の塗布装置における、板状体を貫通することにより形成された吐出孔を特定の形状とすることで、蛍光体ペーストのような粘度が高い塗液であっても、塗液を押し出す際に吐出孔が変形することなく、また、吐出孔から出てくる柱状流の挙動が乱れたりとぐろを巻いたりすることがなく、さらに、塗布幅方向にも柱状流が折れ曲がりにくいことから、塗布ムラや隔壁上部付着、混色等の塗布欠点を抑制することができ、容易に高品位な塗布を実現することができる。
本発明の塗布装置を用いて、PDP用背面板のような複数の溝部を有する凹凸基板へ塗液を塗布する場合においては、狭い溝部に確実に塗液を塗布するため、吐出孔の塗布幅方向の幅Wと、基板に形成された溝部の幅Dとが、W≦Dの関係を満たすことが好ましい。「吐出孔の塗布幅方向の幅W」とは、吐出孔が貫通した板状体をその上方向から観察した場合における、吐出孔の塗布幅方向における幅をいう。また「基板に形成された溝部の幅D」とは、例えばストライプ状の隔壁が形成されたPDP用背面板のような基板の場合には、基板に隔壁が形成された面を上方向から観察した場合における、一の隔壁と、これに隣接する他の隔壁との間隔をいう。
図1に示す支持台7の塗布ノズル上方には、塗液溜り部37における塗液35の液面高さを検出するための、塗液量検出手段38が取り付けられており、液面高さを計測することができるように構成されている。
塗布ノズル30は、基板9のサイズに合わせて選択されるが、本実施形態においては、基板9に形成された全ての溝部に対して1回の塗布動作で塗液を付与できるよう、溝に対応した数及びピッチで、吐出孔36が略一直線状に配列されている。すなわち、本実施形態はPDP用背面板に塗液である蛍光体ペーストを塗布する装置であるので、塗布ノズル30は、赤、緑又は青のいずれかの蛍光体粉末を含む塗液が塗布される溝に対応した数及びピッチの吐出孔36を有している。
また塗布ノズル30は、吐出孔36の数を減らして、複数回の塗布動作で基板一枚への塗布を完了するものであっても構わない。つまり、短尺型の塗布ノズルであったり、吐出孔のピッチを拡げたものであったりしてもよい。また、赤、緑又は青の3色の塗液を同時に塗布する構成にしても構わない。
次に、塗布ノズル30への塗液の補給に係る部分について説明する。塗布ノズル30には、塗液溜り部37に塗液を補給するための配管が塗液ポート33に接続され、この配管の反対側先は、塗液の補給を制御する開閉バルブ10を介して、塗液を貯蔵する塗液容器12が接続されている。塗液容器12には、塗液を押し出して塗布ノズル30に補給するための吐出制御用気体を供給する配管が接続され、この配管の反対側先は、減圧弁23を介して、吐出制御用気体源13に接続されている。減圧弁23は、吐出制御用気体源13の吐出制御用気体を、塗液の補給に必要な圧力に調整することができる。
次に、塗布ノズル30からの塗液の吐出に係る部分について説明する。塗布ノズル30内の塗液溜り部37にある空間部に開口し、吐出制御用気体の供給と排出をするための通路となる気体通過口34には、配管が接続され、この配管の反対側先は、吐出バルブ11に接続されている。吐出バルブ11は三方弁となっており、一方が減圧弁22を介して吐出制御用気体源13に接続する配管に接続し、もう一方は大気に開放されている。減圧弁22は、吐出制御用気体源13の吐出制御用気体を塗布ノズル30からの塗液の吐出に必要な圧力に調整することができる。吐出バルブ11は、塗布ノズル30内の塗液溜り部37にある空間部が、吐出制御用気体源13又は大気のどちらと連通するかを切り換えることができる。
図1及び図2に示す塗布装置1において塗布を実施する場合はまず、塗液容器12から塗布ノズル30の塗液溜り部37に塗液を補給する。塗布ノズル30への塗液の補給は、開閉バルブ10を開くことにより行われ、補給が完了した後には開閉バルブ10を閉じる。
このとき塗液は、塗布ノズル30の塗液溜り部37に、空間部を残す形で所定量に貯えられる。塗液溜り部37の塗液の量は、吐出毎に、空間部への吐出制御用気体の供給を開始してから、空間部に吐出制御用気体が充填されて吐出孔36より塗液を吐出するまでの時間を均一にするために、一定に保つ必要がある。すなわち、塗液を吐出した後は、常に空間部の容積が所定量になるまで塗液を塗液溜り部37に補給する必要がある。そのため、本発明に係る塗液の塗布装置1においては、塗布ノズル30内の塗液量を検出する塗液量検出手段38を有することが好ましく、塗液の汚染を防ぐために、非接触であることがより好ましい。非接触の塗液量検出手段38としては、例えば、レーザー式、超音波式又は重量検知式等、非接触で検出できるセンサが挙げられる。
次に、基板搭載に移る。テーブル2を支持台7のX軸方向手前側(上流側)端部に移動し、テーブル面のほぼ中央に、外部移載機等により塗布する基板9を搭載し、吸着固定する。この動作は塗布ノズル30への塗液補給と並行して行うことが可能である。
次に、基板位置決めを行う。テーブル2を移動させて、カメラ17及び19にて基板9の位置を計測し、さらにカメラ18にて基板9の基準溝を観測して、溝の中心位置を判断し、テーブル2をY軸方向に移動することで、塗布ノズル30の基準孔と基板9の基準溝中心とのY軸方向の位置を合わせる。なお、塗布ノズル30の基準孔は、カメラ20により、予め計測しておく。カメラ17、19及び18は、支持台7のY軸方向に独立して移動可能なY1搬送部14、Y3搬送部16及びY2搬送部15にそれぞれ取り付けられている。このY1〜Y3搬送部は一対のガイドレール7a,7bによって、Y方向に移動した場合においてもテーブル面からの高さが一定になるよう調整されている。なお、これらのカメラは複数組設けられていてもよい。
基板位置決めが終わると、塗液塗布の動作に移る。塗布ノズル30の塗液溜り部37への塗液補給が完了していることを確認し(未完の場合は待ち)、さらに、塗布ノズル30の下面をクリーナー21にて清掃した後に、テーブル2をX軸方向に沿って基板9の位置決め位置から下流方向すなわち塗布方向進行側に予めプログラムした速度で移動させる。X軸座標が、あらかじめ設定された塗液の吐出開始位置になったら塗布ノズル30から塗液を吐出し、吐出停止位置になれば吐出を停止することで塗布を行う。
塗布ノズル30からの塗液の吐出は、塗布ノズル30と吐出制御用気体源13が連通するように吐出バルブ11を切り換えて、塗布ノズル30の塗液溜り部37内の空間部に吐出制御用気体を供給することにより、吐出孔36から塗液35を押し出すことで行われる。また、塗布ノズル30からの塗液の吐出の停止は、吐出バルブ11を切り換えて塗液溜り部37内の空間部が大気に開放されるようにすることで、吐出制御用気体の供給を停止し、空間部から吐出制御用気体を排出することで行われる。
塗布を終了すると、基板排出に移る。基板9の排出はテーブル2を下流端に移動し、吸着した基板9の固定を解除し、外部移載機等により取り出す。基板9を排出した時点で一連の動作が終了する。連続して基板に塗布する場合は、塗液の補給から開始する。
基板への塗布が一旦終了し、次の塗布を開始するまでの間のインターバルには、塗布ノズル30への塗液の補給や、塗布が終了した基板の排出、次の基板の搭載、基板と塗布ノズル30の位置決め等を行う。インターバルが終了した後は、次の基板の塗布を行う。以後、塗布を繰り返す限り、この動作を繰り返す。
なお、本実施形態においては、コンピュータ等にて構成される制御部25と、サーボモーター等で構成される移動駆動部28が設けられている。制御部25は、移動制御部27を有し、移動制御部27は移動駆動部28を介して塗布装置の動作を制御し、基板9と塗布ノズル30とを、X方向に相対移動させる。また制御部25は、塗布条件を入力表示する表示部を備えた供給制御部26を有し、塗布ノズル30内の塗液量検出手段38、開閉バルブ10及び吐出バルブ11等を制御することで、塗布ノズル30への塗液の補給、塗布ノズルからの塗液の吐出を制御する。
図1及び図2に示すような塗布装置1による基板9への塗布の一連の工程は、塗布ノズル30の塗液溜り部37に塗液を補給する工程と、塗布ノズル30と基板9とを相対的に移動しながら基板9へ塗液を吐出して塗布する工程とを有する。枚葉の基板に1度に塗布したり、基板を複数回に分けて塗布したりするような、所定の長さの塗液の塗布を複数回行う場合には、この2つの工程を交互に繰り返すことが好ましい。なぜなら、塗液溜り部内にある空間部に吐出制御用気体を供給し、その圧力で塗液を吐出孔より吐出する塗布ノズルには、所定の長さの塗布で使用した塗液の量と同量の塗液を塗液溜り部へ補給する必要があるため、生産性を考えれば、塗液溜り部への塗液の補給と、基板への塗布は交互に繰り返すことが好ましいからである。
なお、上述した態様は、塗布ノズルを固定し、テーブル(基板)を移動することで塗液を基板に塗布する態様であったが、塗布ノズルを移動し、テーブル(基板)を固定することで塗液を基板に塗布しても、同様の効果が得られる。
次に、基板への塗液の塗布の様子について説明する。図4は基板へ塗液を塗布している様子を模式的に表した概略斜視図である。基板に塗液を塗布する際、塗布ノズルと基板との間隙は、例えば50〜500μm程度に保たれる。この狭い間隙において、吐出孔から吐出された塗液である蛍光体ペーストは、図4に示すように、柱状の蛍光体ペースト流(柱状流42)の状態で基板上に到達して塗布される。
吐出孔から吐出されて基板に塗布される塗液の様相について以下に詳しく説明する。図5、図6及び図7(a)は、吐出孔36の形状別で、基板へ塗液が塗布された直後の様相を基板の断面から見た模式図であり、一つの吐出孔に注目して、塗液が吐出孔36から吐出されて基板上の隔壁41間の狭い溝部の底に到達して塗布される様相を模式的に示したものである。なお、各図における塗布ノズルの吐出孔36の形状は、図5が円形であり、図6は塗布方向に長い長円形、図7(a)は図3に示す本発明に係る塗布ノズルの吐出孔36の形状である。また、図7(b)は、図7(a)における基板へ塗液が塗布された直後の様相を塗布方向と平行となる側面から見た模式図である。
図5に示すように、吐出孔36の形状が円形である場合、柱状流42の断面形状は概ね吐出孔の形状を保って円形のままとなるが、その断面積が小さいために、塗布動作のときの塗布ノズルや基板の移動等で発生する随伴流によって、柱状流の挙動が乱れやすくなり不安定になる。特に、フルハイビジョン用の背面板に蛍光体ペーストを塗布するような場合、断面積が小さいために柱状流も細くなり、挙動が乱れやすい。また、細い柱状流は、とぐろを巻きやすい。そのため、隔壁の上部に塗液が付着する隔壁上部付着や、隣り合う別の溝部に塗液を塗布して異なる塗液が混入する混色等の塗布欠点が発生しやすい。さらに、基板が、塗布方向に延びるストライプ状の主隔壁とこれに直交する補助隔壁で仕切られる、格子状のセル構造である場合は、とぐろの巻き方で塗布方向のセル毎に充填量のばらつきが生じ、塗布ムラが発生する。柱状流の乱れやとぐろを抑制するには、柱状流を太く、つまり吐出孔を大きくすればよいが、吐出孔の断面形状が丸い場合は、大きくすることにより柱状流と隔壁の距離が近づき、柱状流の僅かな乱れやとぐろによって、蛍光体ペーストの隔壁上部への付着が発生しやすくなる。つまり、円形の吐出孔の場合は、柱状流のとぐろ抑制と、隔壁上部への塗液の付着抑制を両立することができないのである。
また、吐出孔の断面形状を丸い場合に比べて塗布方向に長く開口したものにすると、吐出孔の断面積を大きくすることが可能となるため、吐出孔から吐出する塗液の柱状流を安定的に形成できる。しかし、塗布方向に比べて塗布幅方向が短い吐出孔の形状となることから、図6に示すように、塗布ノズルと基板との間にある柱状流42が、塗布幅方向に折れ曲がりやすくなり、塗液が隔壁上部に付着したり、混色したりする等の塗布欠点が発生している。
また、塗布方向に長く塗布幅方向に短い吐出孔の形状であると、概ねその形状を保った塗布直後の塗液と基板とは、僅かに接触しているだけの状態となるため、塗液が隔壁間の溝部内に濡れ広がる前に塗布幅方向に倒れて、隔壁の上部に塗液が付着する場合がある。特に、基板が主隔壁とこれに直交する補助隔壁を有するセル構造である場合は、塗液は補助隔壁を乗り越えて塗布されるため、補助隔壁上部で塗液が倒れると、隔壁の上部に塗液が付着しやすく、塗布欠点になりやすい。
このように、塗布ノズルの吐出孔の形状を、塗布方向に長く開口した形状とした場合、円形のものに比べて塗布欠点の抑制効果は見られるものの、依然として隔壁上部付着や混色等の塗布欠点が発生してしまう。
しかしながら、本発明に係る吐出孔の形状を有する塗布ノズルを用いると、蛍光体ペーストの隔壁上部への付着や混色等の塗布欠点を大幅に抑制することができる。
本発明に係る吐出孔の形状を有する塗布ノズルは、吐出孔が塗布幅方向に長く開口することで、吐出孔の断面積を大きくできるため、図7(a)及び(b)に示すように、塗布ノズルと基板との間にある柱状流42がいずれの方向にも折れ曲がったりすることなく、安定して塗布できる。また、吐出孔の塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状であることで、概ねその形状を保った塗布直後の塗液と基板とは、略一直線状となっている吐出孔の縁の幅で接触するため、隔壁の上部に塗液が付着することなく、溝部内に濡れ広がることができる。さらに、吐出孔が塗布幅方向に長く開口した形状では、塗布直後の塗液と基板が略一直線状となっている吐出孔の縁の幅で接触しているため、柱状流が安定して塗布幅方向に折れ曲がりにくく、柱状流と隔壁の距離が近づいても、隔壁上部への付着や混色が発生しにくい。
次に、図8には、素ガラス基板上への塗液43の塗布直後の様相を、塗布されている面と反対側から撮影したものを、図9には、吐出孔の形状別での図8における塗布直後の塗液43の様相の模式図を示していて、(a)は塗布ノズルの吐出孔の形状が円形、(b)は塗布方向に長い長円形、(c)は本発明に係る塗布ノズルの吐出孔の形状の場合のものである。
基板上に塗布された塗液は、塗布中の柱状流の挙動が安定していれば、塗布方向にほぼ一直線に塗布されるが、挙動が乱れ、とぐろを巻いたり蛇行したりすると、基板上の塗液もその挙動の乱れをそのまま反映した様相を示す。図8は、吐出孔の形状が円形のものを用いたときの、素ガラス基板上への塗液の塗布直後の様相を撮影したものであるが、円形の吐出孔では塗布が不安定となり、素ガラス基板上の塗液は、とぐろを巻いたように乱れた状態で塗布されているのがわかる。図9(a)は、図8における円形の吐出孔による素ガラス基板上への塗液の塗布直後の様相を模式的に示したものである。
図9(b)は、塗布方向に長く開口した吐出孔の形状の塗布ノズルで塗布したときの様相であるが、図9(a)の円形を用いたときとは異なり、とぐろを巻くような様相は見られないものの、塗布幅方向に塗液が振れながら塗布されており、塗布幅方向に柱状流が規則的に折れ曲がって、振れながら塗布していることを示唆する様相となっている。
一方、図9(c)の、本発明に係る塗布ノズルの吐出孔の形状を用いた場合の素ガラス基板上の塗布直後の塗液の様相は、塗布中の柱状流の挙動が安定していることを示すように、塗布方向でほぼ一直線になっている。
このように、本発明に係る吐出孔の形状を有する塗布ノズルを用いると、柱状流が折れ曲がったりとぐろを巻いたりすることなく安定するため、基板の隔壁上部への塗液の付着、混色、塗布ムラ等の塗布欠点を発生することなく塗液を塗布することができる。
ここで、塗布ノズルの吐出孔は、塗布方向の直線を軸として線対称に開口していることが好ましい。なぜなら、吐出直後の柱状流の断面形状は概ね吐出孔の形状を保ち、柱状流も塗布方向の直線を軸とした線対称形状となるため、基板に到達した柱状流が特定の方向に傾いたり折れ曲がったりしにくくなり、確実に塗布欠点を抑制できるからである。
次に、図10に、本発明に係る塗布ノズルにおける吐出孔の形状の拡大図を示す。
吐出孔の形状は、図3における吐出孔36を拡大した図10(a)に示すような塗布幅方向に長く開口した長円形のほかに、図10(b)長方形、(c)三角形(d)五角形等の多角形のものや、(e)のような円形における塗布方向進行側にあたる一部分を切り落としたような形状であってもよく、塗布幅方向に長く開口しており、かつ、吐出孔の塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状であれば、いかなる形状でもよい。しかしながら、塗布速度をより速くして生産性を向上させる場合は、吐出孔の断面積が大きく吐出孔からの塗液の吐出量が多くなる、長円形や長方形が好ましい。そして、吐出孔は、機械加工、放電加工又はレーザー加工等を用いて形成することができるが、長円形であれば、円形吐出孔の加工法を応用して加工できるため、より好ましい。なお、本発明において長円形とは、円を中心で二分割し、その分割した半円を分割線に対して直交する方向に離間させ、離間させた円弧の端部同士を直線で結んだ形状のことである。また、長方形の場合は更に、図10(f)に示すように長方形の四隅を円弧にした形にすれば、吐出孔の加工もしやすく、好ましい。
本発明に係る塗布ノズルは、図2に示すように、板状体の部材を貫通することで吐出孔が形成されているが、これは蛍光体ペーストのような粘度が高い塗液を押し出す際にも、吐出孔が変形することなく吐出できるからである。なお、本発明において板状体とは、一括成形された後に所望の形状に加工された板状のものをいう。複数の部材を張り合わせることで吐出孔を形成したり、張り合わせた面に沿って貫通して吐出孔を形成したような塗布ノズルでは、塗液を押し出すために塗布ノズル内の塗液溜り部37にある空間部に加えられる高い圧力により、張り合わせた部材が押し広げられて変形し、それにより吐出孔も変形してしまう。吐出孔が変形すると、変形前の吐出孔の形状での柱状流が形成できないため、安定性のある柱状流が得られず、塗布欠点を抑制する効果も得ることができなくなる。
なお、本発明に係る塗布装置を用いて、25℃における粘度が5〜200Pa・sの塗液を塗布することは、前述の塗布ムラや塗布欠点の抑制効果がより顕在化するため、好適である。
次に、本発明の実施の形態に従って、プラズマディスプレイ背面板に塗液を塗布した場合の実施例を示す。
(実施例1)
図1に示した塗液の塗布装置を用い、基板の溝部に赤、緑、青の蛍光体ペーストを塗布した。なお、塗布ノズルには、塗布幅方向の幅W=105μm、塗布方向の長さL=75μmの吐出孔が96個、吐出孔ピッチ=480μmで設けられているものを用いた。基板には、ピッチ160μm、高さ120μm、幅40μmの隔壁が塗布方向に伸びるように5761本形成されており、隔壁間の狭い溝部が5760本であった(赤、緑、青各色1920本)。また、塗布方向の隔壁と略直交する方向(図1におけるY方向)には横隔壁が480μmピッチで形成されていた。各色の蛍光体ペーストの粘度は600Pa・sに調整した。
具体的には、まず、赤色蛍光体ペーストを所定の溝部に塗布した。塗布ノズルの先端面と隔壁上端の距離(以下、塗布クリアランス)は160μmにセットした。そして、塗布ノズルを図1におけるX方向(塗布方向)に走行させながら96個の吐出孔から蛍光体ペーストを吐出して溝部に塗布した。その後、図1におけるY方向に口金を46.08mm移動させ、2回目の塗布を行った。これを20回繰り返して、蛍光体ペーストを所定位置に1920本を塗布した。塗布終了後、塗布面を上にして80℃で40分乾燥した。次に、赤色蛍光体を塗布した隣の溝部に緑色蛍光体ペーストを同様に塗布して乾燥し、更に緑色蛍光体を塗布した隣の溝部に青色蛍光体ペーストを塗布して乾燥した。
この基板に対して紫外線ランプで紫外線を照射して目視で観察したところ、塗布ムラ(輝度ムラ)は無かった。また、顕微鏡で観察したところ、隔壁上部への蛍光体の付着も無く、塗布品位が良好なプラズマディスプレイ用背面板が得られた。
本発明の塗布装置は、プラズマディスプレイ用の背面板における隔壁間の狭い溝部に塗液を塗布する場合において、蛍光体ペーストの隔壁上部への付着、混色、塗布ムラ等の塗布欠点を発生させず、高品位に塗布することを可能とするものであり、フルハイビジョンやクアッドフルハイビジョン用の背面板等に塗液を塗布する場合において特に好適に用いられる。またこれに限らず、液晶ディスプレイ用カラーフィルターや有機ELにおける塗液の塗布に用いる塗布装置等にも応用することができる。
1 塗布装置
2 テーブル
3 θ軸部材
4 Y軸調整部
4a、4b Y軸ガイドレール
5 X軸搬送部
5a、5b X軸ガイドレール
6 機台
7 支持台
7a、7b ガイドレール
8a、8b Z軸移動部
9 基板
10 開閉バルブ
11 吐出バルブ
12 塗液容器
13 吐出制御用気体源
14 Y1搬送部
15 Y2搬送部
16 Y3搬送部
17 カメラ
18 カメラ
19 カメラ
20 カメラ
21 クリーナー
22 減圧弁
23 減圧弁
25 制御部
26 供給制御部
27 移動制御部
28 移動駆動部
30 塗布ノズル
31 フタ部
32 ノズル部
33 塗液ポート
34 気体通過口
35 塗液
36 吐出孔
37 塗液溜り部
38 塗液量検出手段
41 隔壁
42 柱状流
43 塗液

Claims (5)

  1. 基板を固定するテーブルと、前記テーブルに対向して設けられ、複数個の吐出孔を有する塗布ノズルと、前記テーブルと前記塗布ノズルとを相対移動させる移動手段と、を備え、前記吐出孔は、板状体を貫通することにより形成されており、前記吐出孔の形状は、塗布幅方向に長く開口しており、かつ塗布方向進行側の縁が、塗布幅方向に延伸した直線状である、塗布装置。
  2. 前記吐出孔は、塗布方向の直線を軸として線対称に開口している、請求項1記載の塗布装置。
  3. 前記吐出孔の塗布幅方向の幅Wと、前記基板に形成された溝部の幅Dと、が、W≦Dの関係を満たす、請求項1又は2記載の塗布装置を用いる塗布方法。
  4. 25℃における粘度が5〜200Pa・sの塗液を塗布する、請求項3記載の塗布方法。
  5. 請求項1又は2記載の塗布装置を備える、プラズマディスプレイパネルの製造装置。
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