JP2014151338A - 低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被覆剤の被覆率を10〜40質量%とし、被覆剤の組成を、質量%で、金属炭酸塩(CO2換算値):10〜30%、金属フッ化物(F換算値):2〜13%、TiO2:1〜7%、Si、Si合金及びSi酸化物のうち少なくとも1種(Si換算値):1.9〜11.7%、Ni及び/又はNi合金(Ni換算値):0.5〜3.5%、Mo及び/又はMo合金(Mo換算値):0.11〜0.45%、B、B合金及びB酸化物のうち少なくとも1種(B換算値):0.02〜0.25%、Ti及び/又はTi合金(Ti換算値):0.2〜1.0%、Al、Al合金、Mg及びMg合金のうち少なくとも1種(Al換算値又はMg換算値):0.2〜1.8%、Mn及び/又はMn合金(Mn換算値):1〜7%、Fe:3〜11%にする。
【選択図】なし
Description
鋼心線の種類は、母材や溶接条件などに応じて適宜選択することができるが、例えば引張強さが550MPa以上の高張力鋼を溶接する場合は、製造面とコスト面から、軟鋼心線を用いることが好ましい。本実施形態の低水素系被覆アーク溶接棒に使用する軟鋼心線の具体例としては、JIS G3503に規定されているSWRY 11などが挙げられる。
被覆アーク溶接棒の被覆剤の被覆率(%)は、(被覆剤の質量(質量%)/溶接棒全質量(質量%))×100により算出される。被覆率が10質量%未満であると、シールド不足となり、溶接金属中のN量及び水素量が増加し、溶接金属の靭性及び耐割れ性が低下する。一方、被覆率が40質量%を超えると、アーク長が長くなり、アーク切れが発生する。よって、本実施形態の低水素系被覆アーク溶接棒においては、被覆剤の被覆率は10〜40質量%とする。
金属炭酸塩は、溶接中に分解してCO2を発生し、シールド効果によって、溶接金属中のN量及び水素量を低減させることができる成分である。しかしながら、金属炭酸塩含有量が10質量%未満では、その効果が得られず、また、30質量%を超えると、スパッタが多発するようになる。よって、金属炭酸塩含有量は、CO2換算値で、10〜30質量%とする。
金属フッ化物は、耐気孔性を維持するために不可欠の成分であり、また、スラグ剤としても作用する。しかしながら、金属フッ化物含有量が2質量%未満では、耐気孔性が劣化し、また13質量%を超えると、アークが不安定となって立向上進溶接が困難となる。よって、金属フッ化物含有量は、F換算値で、2〜13質量%とする。
TiO2は、全姿勢、特に立向溶接での作業性を維持するためのスラグ剤として添加されるが、その含有量が1質量%未満では立向上進溶接が困難となり、また、7質量%を超えると、粘性が過多となって耐気孔性が劣化する。よって、TiO2含有量は1〜7質量%とする。
Siは、金属又は合金の形態で添加されると、脱酸作用により溶接金属中の酸素と反応してSiO2を生成し、このSiO2は、粘結剤やスラグ造滓剤として作用する。また、Si酸化物の形態で添加されても、同様に粘結剤やスラグ造滓剤として作用する。
Ni及びNi合金は、溶接金属の耐力向上及び低温靭性の改善に極めて有効な成分である。しかしながら、Ni及びNi合金の総含有量が0.5質量%未満では、その効果が不十分となり、また、3.5質量%を超えると、高温割れ(凝固割れ)が発生しやすくなる。よって、Ni及びNi合金の総含有量は、Ni換算値で、0.5〜3.5質量%とする。
Mo及びMo合金は、溶接金属の焼き入れ性を確保する効果がある。しかしながら、Mo及びMo合金の総含有量が0.11質量%未満では、その効果が得られず、また、0.45質量%を超えると、溶接金属の焼入れ性が大幅に上昇し、靭性が低下する。よって、Mo及びMo合金の総含有量は、Mo換算値で、0.11〜0.45質量%とする。
B、B合金及びB酸化物は、旧γ粒界に偏析し、粒界フェライトの発生を抑制することによって、溶接金属の靭性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの総含有量が、B換算で、0.02質量%未満であると、溶接金属の靭性を向上させる効果が十分に得られない。一方、B、B合金及びB酸化物の総含有量が、B換算で、0.25質量%を超えると、溶接金属の耐高温割れ性が劣化する。よって、B、B合金及びB酸化物の総含有量は、B換算値で、0.02〜0.25質量%とする。
Ti及びTi合金は、溶接金属中で酸化物又は固溶体として存在するが、酸化物による旧γ粒内のアシキュラーフェライトの核として、溶接金属の靭性向上に寄与する。即ち、被覆剤にTi及びTi合金が添加されていると、旧γ粒内において、Ti酸化物を核としてアシキュラーフェライトが生成する。このアシキュラーフェライトは、組織の微細化に寄与し、溶接金属の靭性を向上させる作用がある。
Al及びAl合金、並びにMg及びMg合金は、強脱酸剤であり、溶接金属の酸素量を低減し、靭性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの総含有量が、0.2質量%未満の場合、酸素量低減の効果が不十分となる。一方、Al及びAl合金、並びにMg及びMg合金の総含有量が1.8質量%を超えると、スパッタが多く発生し、溶接作業性が劣化する。
Mn及びMn合金は、溶接金属の強度の確保と脱酸を目的として添加する。また、Mn及びMn合金は、靭性が優れた溶接金属を得るためにも重要な成分である。しかしながら、Mn及びMn合金の総含有量が1質量%未満の場合、溶接金属の強度が低下し、靭性も劣化する。一方、Mn及びMn合金の総含有量が7質量%を超えると、溶接金属の焼入れ性が増えて、靭性が低下する。
Feは、スラグ形成剤及びアーク安定剤として作用する。しかしながら、Fe含有量が3質量%未満の場合、スラグ発生量が過多となり、スラグ巻込などの溶接欠陥が発生しやすくなる。また、Fe含有量が11質量%を超えると、前述した必須合金成分を目的とする量まで添加することが難しくなる。よって、Fe含有量は3〜11質量%とする。なお、Fe成分は、鉄粉やFe系合金の形態で、被覆剤に添加される。
Ni、Ti及びBは、溶接金属の低温靭性の向上に有効な元素である。また、Mo及びMnは、溶接金属の強度の向上に有効な元素である。そして、本発明者は、溶接金属の強度と低温靭性の両方を向上させるために、これらの元素の配合バランスについて鋭意検討を行った。その結果、Ni、Ti及びBの総含有量と、Mo及びMnの総含有量との比を特定の範囲にすることにより、溶接金属の低温靭性と強度とが改善されるだけではなく、溶接金属の耐高温割れ性及びスラグ剥離性についても良好な結果が得られることを見出した。
被覆剤は、前述した各成分の他に、粘結剤として、澱粉、パルプ及びセルロースなどの有機物、ケイ酸カリウム及びケイ酸ナトリウムなどの無機物を含有していてもよい。これらの粘結剤の含有量は、作業性改善の観点から、被覆剤全質量あたり、0.2〜4.0質量%とすることが好ましい。ただし、マイカ、タルク及びセリサイトなどの結晶水を含有するケイ酸塩は、溶接金属中の水素量を増加させるために、実質的には含有しないことが望ましい。
本実施形態の低水素系被覆アーク溶接棒を製造する際は、通常の溶接棒塗装機により、鋼心線の周囲に、前述した組成の被覆剤を、被覆率が10〜40質量%となるように被覆塗装する。その際、作業性の観点から、被覆剤に、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウムに代表される水ガラスなどの粘結剤を含有させることが好ましい。その後、被覆剤で被覆された鋼心線を350〜550℃で焼成することにより、被覆剤中の水分を除去し、低水素系被覆アーク溶接棒とする。なお、鋼心線には、前述したようにJIS G3503に規定されているSWRY 11などを用いることができる。
実施例及び比較例の各被覆アーク溶接棒について、下記表2に示す成分組成(残部はFe及び不可避的不純物)の鋼板を母材とし、下記表3に示す条件にて溶接を行い、得られた溶接金属の機械的性質及び化学成分を、下記表4に示す試験方法により調べた。その際、機械的性質については、0.2%耐力が460MPa以上、引張強さが560MPa以上及び−60℃における吸収エネルギーが47J以上のものを合格とした。
実施例及び比較例の被覆アーク溶接棒について、上記表2に示す組成の鋼板を母材とし、下記表5に示す条件にて立向上進溶接を行い、溶接作業性として、「ビード円滑性」、「等脚性」及び「ビードのなじみ」を評価した。
実施例及び比較例の被覆アーク溶接棒について、上記表2に示す組成の鋼板を母材とし、下記表6に示す条件にてすみ肉溶接を行い、溶接作業性として、「スラグ剥離性」、「スパッタ発生性」及び「耐気孔性」を評価した。
実施例及び比較例の被覆アーク溶接棒について、上記表2に示す組成の鋼板を母材とし、下記表7に示す条件にて溶接を行い、得られた溶接金属の耐高温割れ性をC形ジグ拘束突合せ溶接割れ試験によって評価した。その際、「割れ率(%)」は、溶接ビード長さ(クレータ部10mmを除く)に対する割れ亀裂長さの割合(=割れ亀裂長/溶接ビード長)とし、10%以下を合格とした。
Claims (3)
- 鋼心線を被覆剤で被覆した低水素系被覆アーク溶接棒であって、
前記被覆剤の被覆率が溶接棒全質量あたり10〜40質量%であり、
前記被覆剤は、該被覆剤全質量あたり、
金属炭酸塩(CO2換算値):10〜30質量%、
金属フッ化物(F換算値):2〜13質量%、
TiO2:1〜7質量%、
Si、Si合金及びSi酸化物からなる群から選択される少なくとも1種(Si換算値):合計で1.9〜11.7質量%、
Ni及び/又はNi合金(Ni換算値):合計で0.5〜3.5質量%、
Mo及び/又はMo合金(Mo換算値):合計で0.11〜0.45質量%、
B、B合金及びB酸化物からなる群から選択される少なくとも1種(B換算値):合計で0.02〜0.25質量%、
Ti及び/又はTi合金(Ti換算値):合計で0.2〜1.0質量%、
Al、Al合金、Mg及びMg合金からなる群から選択される少なくとも1種(Al換算値又はMg換算値):合計で0.2〜1.8質量、
Mn及び/又はMn合金(Mn換算値):1〜7質量%、
Fe:3〜11質量%
を含有する低水素系被覆アーク溶接棒。 - 引張強さが550MPa以上の高張力鋼の溶接に用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の低水素系被覆アーク溶接棒。
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