JP2014150742A - 混ぜご飯の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 適度なほぐれ性に優れ、老化現象が抑えられた味覚のよいすし飯などの混ぜご飯を提供する。
【解決手段】 水に浸漬した米を移送するコンベアのような移送手段と、コンベア上の米を高温蒸気で蒸す蒸し装置と、蒸し装置内においてコンベア上の米に温水を供給する散水装置とを備えた炊飯装置において、前記蒸し装置内における蒸し工程中に、炊飯に必要な加水量よりも多い量の温水を注水して米から溶出したアミロースを洗い流して炊飯した米飯と、タピオカ澱粉のエーテル化物及び/又はエステル化物と、すし酢などの調味料を混合する。
【選択図】図13

Description

本発明は混ぜご飯の製造方法に関する。
炊飯は、一般に、米に水を吸収させる吸水工程と、吸水させた米に水を加えて沸騰状態に至らせる立上加熱工程と、沸騰状態を維持して米を炊き続ける沸騰維持工程と、加熱した後に炊飯米を蒸らす蒸らし工程によって行われる。
炊飯中に、白い粘りのある液体であるいわゆる「おねば」が吹き出すことはよく知られた現象である。おねばは、米に含まれていたアミノ酸やデンプンなどのうまみ成分を含んでおり、おねばが蒸らし工程において再度ご飯の表面にコーティングされることでご飯にツヤが生じ、おいしいご飯になると言われている。このことに鑑みて、例えば、特許文献1には、炊飯工程で釜から吹きこぼれるおねばを一時的に貯留し、蒸らし工程で貯留されたおねばを釜内に戻すようにした炊飯装置が開示されている。
一方、特許文献2〜5には連続的に炊飯できる炊飯装置が開示されている。特許文献2や特許文献3に開示された炊飯装置は、蒸気を供給しつつ炊飯するために、コンベヤで移送しながら米粒に1次蒸しを行なう1次蒸し装置と、米粒のアルファ化のために、1次蒸しの後にコンベヤで移送しながら2次蒸しを行なうための2次蒸し装置と、該1次及び2次蒸しを行なう際にコンベヤにより移送される米粒に温水を散水するための散水手段を備えている。これらの装置では、一次蒸し装置や二次蒸し装置において110〜115℃の飽和水蒸気により米粒が加熱され、約80℃の温水が加水のために散水される。
特許文献4や特許文献5に開示された炊飯装置は、それぞれ、第1の蒸気室内に備えられた第1のコンベア手段と、その直下に備えられた第2の蒸気室内に備えられた第2のコンベア手段と、さらにその直下に備えられた3の蒸気室内に備えられた第3のコンベア手段と、前記第1の蒸気室内で1次蒸しを行う1次蒸し手段と、前記第2の蒸気室内で2次蒸しを行う2次蒸し手段と、前記1次蒸し及び前記2次蒸しの間に散水を行う散水手段を備えている。これらの炊飯装置では、第1の蒸気室内にて約140℃、約0.36MPaの過熱水蒸気により、第2の蒸気室内にて約150℃、約0.48MPaの過熱水蒸気により米粒が加熱され、約60〜90℃の温水が加水のために散水される。また、第3の蒸気室内にて3次蒸しが行われる場合もある。
このような連続式の炊飯方法では、100℃以上の高温蒸気が米粒に供給されるので、米粒は直ちに100℃付近に加熱されるが、瞬時に高温に加熱されるので米粒の含水量が急激に低下する。そこで温水を散水して米粒に水分を与えることで炊飯している。このような連続炊飯では、おねばが生じることがなく、おねば中に含まれるうまみ成分は米粒にほぼ保持されたままである。
ところで、このような連続式の炊飯方法(連続炊飯)において加水量を調製して炊飯すると、保存後も硬くならず、糊化度が高く保たれ、一般家庭向けの炊飯器で炊飯されたご飯に比べておいしいご飯が得られることが報告されている(非特許文献1)。これは、炊飯中に加水された水によって、炊飯中に米粒から滲み出たアミロースが洗い流されたことによるものと考えられている。すなわち、炊飯中に溶出されたアミロースを洗い流すことで、いわゆる米の老化現象が抑えられる。
一方、特許文献6(特開2006−087347号公報)には、粳米を炊飯した場合に糯米で炊飯したかのような食感を付与する技術が開示されている。この技術は、ヒドロキシプロピルタピオカ澱粉などのエーテル化処理又はエステル化処理した澱粉を米に混ぜて、炊飯する方法である。アミロース含量に対してアミロペクチン含量が相対的に少ない粳米とエーテル化処理又はエステル化処理した澱粉を混ぜて炊飯することにより、エーテル化処理した澱粉がアミロペクチン様の作用を発揮し、粳米があたかも糯米のような食感を付与するものと考えられる。
また、特許文献7(特開2012−65645号公報)には、所定の特性を有する置換型加工澱粉の分解物を含有する米飯の品質改良剤が開示されている。この品質改良剤を米と混ぜて炊飯するか、炊飯後の米飯と混合することによって、米飯にほぐれ性や老化防止ないし保水性改良効果が付与される。この技術は、置換型加工澱粉の分解物が有する特定範囲の粘性を利用して、米飯、特に粳米にほぐれ性を付与する技術である。つまり、この技術は上記した釜炊きの米飯を利用するものであって、おそらく、置換型加工澱粉の分解物が釜炊きの際に生じるおねばと何らかの相互作用を起こし、ほぐれ性を米飯に与え、粘りが保持されるものと考えられる。また、非特許文献1には炊飯中に滲み出たアミロースを洗い流すと老化が抑えられることが示唆されていることを考慮すれば、当該分解物とアミロースが何らかの相互作用を起こしていることとも合致する。
特開2009−000187号公報 特開平9−107896号公報 特開平9−294678号広報 特開2001−169915号公報 登録実用新案第3142166号公報 特開平9−322725号広報
日本食品科学工学会大会 第59回大会 講演集 2012年8月発行、p204
ところで、連続炊飯で得られた米飯は、糊化度が保たれているため、すし飯のように炊飯後にすし飯用酢やその他の調味料を混ぜると糊化現象が生じやすく、混ぜた後の米飯のほぐれ性が決してよいとは言えなかった。特に、にぎり寿司においては、口の中に入れたときに適度にほぐれる食感が重要視される。
そこで、特許文献7に記載の澱粉分解物を連続炊飯で得られた米飯に適用してすし飯を得ることも考えられるが、連続式の炊飯方法により炊飯した米飯は、アミロースが洗い流されているので、当該澱粉分解物をそのまま適用しても効果が得られるとは考えにくい。
一方、特許文献6に記載のエーテル化又はエステル化されたデンプンを用いた場合には、連続炊飯で得られた米飯はアミロース含量が少ないので、特許文献6に記載されたように糯米のような食感になってしまい、却ってほぐれ性が悪くなると考えられた。
そこで、本願発明者等は、連続式の炊飯方法により得られる老化防止効果をすし飯にも付与すべく、鋭意努力したところ、連続式の炊飯方法において加水量を調整してアミロースを十分に洗い流し、特許文献6に記載されたエーテル化及び/又はエステル化された澱粉を用いたところ、上記予想に反して適度なほぐれ性と老化防止性が付与され、食感にも優れたすし飯が提供されることが見いだされ、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、連続式の炊飯方法により、適度なほぐれ性を備え、食感にも優れた老化しにくいすし飯に代表される混ぜご飯を提供することを目的とする。
本発明に係る混ぜご飯の製造方法は、連続式炊飯により米飯を得る工程と、当該米飯とエーテル化又はエステル化されたタピオカ澱粉と調味料とを混合する工程を有する。
本発明によると、老化が抑制され、常温保存又は低温保存してもおいしさを維持したすし飯などの混ぜご飯が提供される。
図1は本発明の一実施例である炊飯方法に用いた炊飯装置の概略図である。 図2は図1の炊飯装置における加水状態と流出したアミロース量との関係を示すグラフである。 図3は図1の炊飯装置で炊飯した米飯(白米)の表面色と市販の炊飯器で炊飯した米飯(白米)における表面色の経時変化を示すグラフである。 図4は図1の炊飯装置で炊飯した米飯(白米)の弾粘性と市販の炊飯器で炊飯した米飯(白米)における弾粘性の経時変化を示すグラフである。(a)は硬さの経時変化を、(b)は粘りの経時変化を示す。 図5は図1の炊飯装置で炊飯した米飯(白米)の官能検査の結果と市販の炊飯器で炊飯した米飯(白米)の官能検査の結果を対比した図である。 図6は図1の炊飯装置における加水状態と流出したアミロース量との関係を示すグラフである。 図7は図1の炊飯装置で炊飯した米飯(白米)の硬さの経時変化を示すグラフである。 図8は図1の炊飯装置で炊飯した米飯(白米)の粘りの経時変化を示すグラフである。 図9は図1の炊飯装置で炊飯して得られたすし飯(タピオカ加工澱粉未使用)の硬さの経時変化を示すグラフである。 図10は図1の炊飯装置で炊飯して得られたすし飯(タピオカ加工澱粉未使用)の粘りの経時変化を示すグラフである。 図11はタピオカ加工澱粉の添加効果を示す図であって、硬さの経時変化を示すグラフである。 図12はタピオカ加工澱粉の添加効果を示す図であって、粘りの経時変化を示す図である。 図13はタピオカ加工澱粉の添加効果を示す図であって、官能検査の結果を示す図である。 図14はタピオカ加工澱粉の添加効果を示す図であって、硬さの経時変化を示す図である。 図15はタピオカ加工澱粉の添加効果を示す図であって、粘りの経時変化を示す図である、 図16はタピオカ加工澱粉による効果を示す図であって、官能検査の結果を示す図である。
本発明の混ぜご飯の製造方法は、吸水させた米に水を加えて加熱する工程を含む炊飯方法であって、前記水を加えて加熱する工程において米から溶出したアミロースを洗い流す工程を含む炊飯方法により米飯を得る工程と、前記工程で得られた米飯に調味料とタピオカ澱粉のエーテル化物及び/又はアセチル化物を添加する工程を有する。
(1)米飯の準備
調味料を混ぜる米飯は、吸水させた米に水を加えて加熱する工程を含む炊飯方法であって、前記水を加えて加熱する工程において米から溶出したアミロースを洗い流す工程を含む炊飯方法により得られる。当該米飯は、高温蒸気による蒸し工程を含み、当該蒸し工程において温水による加水を行う連続式の炊飯方法により容易に実施できる。つまり、蒸し工程を伴う連続式の炊飯方法において、炊飯に通常必要な加水量よりも多い量の温水を注水して、蒸し工程において米から溶出したアミロースを洗い流すことで得られる。
当該連続式の炊飯は、吸水させた米を移送するコンベアのような移送手段と、移送手段であるコンベア上の米を高温蒸気で蒸す蒸し装置と、蒸し装置内においてコンベア上の米に温水を供給する散水装置とを備えた炊飯装置により実施され得る。蒸し装置は高温蒸気が供給される蒸気室を備え、当該蒸気室内においてコンベア上を移動する米を蒸す装置である。また、蒸し装置は、コンベア上を移動する米に加水するための温水を散水(又は注水)する散水装置を有する。このような炊飯装置であれば、如何なる構造のものでもよく、1ラインのコンベア上で蒸し工程を行う炊飯装置(例えば図1に示す炊飯装置)や、複数ラインのコンベア上で蒸し工程を行う炊飯装置(例えば、特許文献2〜5に開示された炊飯装置)が利用され得る。
本発明に係る炊飯方法では、蒸し工程において、蒸し工程で米の表面に溶出したアミロースを洗い流すために、炊飯に通常必要な加水量よりも多い量の温水が注水される。炊飯に通常必要な加水量は、釜で炊くバッチ式の場合、一般的には米の分量の10〜20%増しの量、つまり、米の分量の110〜120%の量である。連続式の場合にはそれよりも多くなり、米の分量の130〜160%の加水量が目安であって、炊飯前の吸水量、吸水時間や吸水時の温度、炊飯で得られたご飯の柔らかさなどによって適宜設定される。温水の量は、蒸し工程で米の表面に溶出されるアミロースの一部を洗い流すことができる量であればよく、溶出されるアミロースの全量を洗い流す必要はない。すなわち、散水装置から注水された温水がコンベア下に落ちることが必要であり、通常の炊飯のごとく供給された蒸気が冷却されて滴下する程度の加水量では不十分である。米粒の表面に残るアミロース量が多くなり、老化の進行を遅らせることができないおそれがある。具体的には、必要な加水量の1.1倍であり、1.5倍であり、2倍であり、2.5倍であり、3倍であり得るが、好ましくは1.5倍、望ましくは2倍以上である。注水量は散水装置からの流出速度によって決まるので、実際にはその流出速度を増やすことで注水量が調整される。通常必要とされる加水量は、設備の大きさ(処理能力)によっても異なるが、その一例を示すと、1分当たりの処理能力が米0.5kgである炊飯装置の場合、約0.65〜0.8L/minである。従って、本発明においては、それよりも多い水量が必要であって、当該装置では少なくとも約0.72L/min以上の加水量、好ましくは0.8L/minよりも多く、さらに望ましくは1.0L/min以上の加水量が必要である。
温水の温度は約60〜90℃であり、当業者により適宜設定される。また、蒸し工程に使われる高温蒸気の温度も約90〜150℃であり、当業者により適宜設定される。温水の温度や高温蒸気の温度や圧力、洗米条件や炊飯前の浸漬条件など、温水の注水量以外の炊飯条件は従来の炊飯条件とほぼ同じであり、本発明に用いられる炊飯方法は、従来の炊飯条件よりも、注水量を多くして蒸し工程の途中で米の表面に溶出されたアミロースを洗い流すことに特徴がある。
アミロースを洗い流すために必要な過剰量の注水は、蒸し工程の間であればいずれのタイミングで行ってもよい。例えば、蒸し工程において均等な量で注水を行ってもよく、蒸し工程のある時期において注水量を多くしてもよい。具体的には、例えば、蒸し工程の開始直後からしばらくの間、すなわち、蒸し工程の初期の段階で注水量を多くして、その後の工程において注水量を少なくする。連続炊飯において、アミロースが溶出される時期やそのメカニズムは詳細には不明であるが、蒸し工程の初期の段階で多くのアミロース量が検出されたことに基づく(実施例参照)。おそらく、蒸し工程の開始直後に米の温度が高くなり、このときにアミロースが溶出されるものと想像される。すなわち、蒸し工程の初期段階で注水量を多くすれば、米の表面に溶出されるアミロースが効果的に洗い流されるから、おいしい米でありながら老化が抑えられると想像される。初期の段階とは、例えば、炊飯開始後10分後までの間であり、8分後までの間であり得る。しかしながら、過剰量の加水によりアミロースを洗い流せる限り、上記のごとく蒸し工程において均等に温水を注水しても差し支えなく、また、蒸し工程の終期の段階で注水量を多くしても差し支えないのは言うまでもない。もっとも、過剰量の注水時期は、アミロースの溶出状況(例えば、溶出時期や溶出量)や米飯の炊きあがり状態によって、適宜設定することができる。
当該炊飯方法は、蒸し工程において溶出されるアミロースを温水で洗い流すことを特徴とするものであって、洗い流された液(廃液)中には、米の中に含まれるデンプンのうちアミロースが検出され、アミロペクチンはほとんど検出されなかった事実から生み出されたものである。当該炊飯方法において過剰量の温水が注水されるといえども、米に含まれる全てのアミロースが溶出されるものではなく、当該炊飯方法は、米に含まれる全てのアミロースを溶出させて洗い流す方法でも、また、溶出した全てのアミロースを洗い流す方法でもないのは言うまでもない。さらに、米から溶出されたアミロペクチンを洗い流すことなくアミロースのみを選択的に洗い流す方法でもなく、アミロペクチンが洗い流される場合も含む。
当該炊飯方法は、上記蒸し工程中に加水を行う連続式の炊飯方法にのみ適用される方法ではなく、釜を利用したバッチ式の炊飯方法にも適用し得る。本明細書において、バッチ式の炊飯方法とは釜を使用して炊飯する方法を意味し、炊飯器による炊飯のように一つの釜を利用して炊飯する方法や、連ねて配置された複数の釜を利用して連続的に炊飯する方法を意味する。このようなバッチ式の炊飯方法として、例えば、吸水させた米に水を加えて沸騰状態に至らせる立上加熱工程において、当該工程中のある時期に加熱された水を捨て、当該立上加熱途中の米を温水で洗浄した後、再び所定量の水又は温水を加えて沸騰状態に至らせる方法が例示される。また、沸騰状態を維持して米を炊き続ける沸騰維持工程において、当該工程途中にある米を取り出して温水又は冷水で洗浄した後、再び加熱、炊飯を続ける方法が例示される。
このように本発明に用いられる米飯の炊飯方法は、炊飯途中において米から溶出したアミロースを洗い流す工程を含むので、炊飯後の米の表面に付着するアミロース量が減少して、米の老化が抑制される。この結果、室温保存や冷蔵保存した後も老化によるパサパサ感や黄変が少なく、おいしさが保たれたご飯が提供される。従って、炊飯しようとする米が低アミロース米といったアミロース含量が少ない米かどうかを問うことなく、老化の起こりにくい米飯が得られる。
(2)混ぜご飯の調製
次いで上記で得た米飯と各種の調味料とを混ぜて混ぜご飯とする。調味料は、混ぜご飯として使用される調味料であればよい。本発明において、調味料とはご飯に種々の味付けをするための食材であって、例えば、食用酢であり、砂糖であり、塩であり、しょうゆであり、酒であり、みりんであり、2種以上を混合した調味料でもあり得る。例えば、食用酢に塩やグルタミン酸などのいわゆるうま味調味料を混合した合わせ酢が例示される。本発明においては、調味料としては、食用酢、さらには、食用酢に塩などを加えた合わせ酢が好ましい。酢飯とすることにより、酢飯の味覚に重要な適度なさばき感が付与されるからである。調味料は、粉末状の調味料であり、液状の調味料でもあり得る。好ましくは液状の調味料である。ご飯との混ざりがよく、均一に混合されやすいからである。また、後述するように、連続式の炊飯方法では、コンベアなどの搬送装置上で、調味料を噴霧することができるからである。
調味料は、いわゆる混ぜご飯の素と称されるように、種々の具材を含む調味料でもよい。例えば、具材は、いわゆる「ばら寿司」に用いられるたけのこ、しいたけ、にんじんであり得る。また、具材は、ワカメや鯖のほぐし身でもあり得る。
さらに、本発明では、調味料の他に、タピオカ澱粉の加工物が用いられる。このタピオカ加工澱粉は、エステル化処理やエーテル化処理によりタピオカ澱粉が有する水酸基に種々の官能基が付与された澱粉である。例えばアセチル化されたタピオカ澱粉であり、ヒドロキシプロピルやヒドロキシエチルでエーテル化された澱粉であり得る。例えば、特許文献6に開示されたタピオカ加工澱粉が使用される。市販品として、例えば、日本食品化工株式会社製の商品名「MT−01」(アセチル化物)、松谷化学工業株式会社製の商品名「ゆり8」(エーテル化物)が挙げられる。
本発明に係る混ぜご飯は、前記方法で炊飯された米飯に調味料とタピオカ加工澱粉を混ぜ合わせることで得られる。混ぜ合わせは如何なる方法でもよく、混合器を用いた機械的方法であり、しゃもじで混ぜる手作業による方法であり得る。また、上記連続式の炊飯装置において、炊飯後において、炊飯されたご米飯が運ばれるコンベアなどの搬送装置の上方から、調味料とタピオカ加工澱粉を噴霧する方法も例示される。また、調味料とタピオカ澱粉はそれぞれ順不同で米飯に混ぜ合わせてもよく、タピオカ澱粉と混合した調味料を炊飯された米飯に混ぜ合わせてもよい。混ぜ合わせる時期も適宜当業者により定められ、出来上がり直後の米飯と混ぜてもよく、炊飯後しばらく放置して、いわゆるあら熱が取れた米飯と混ぜてもよい。
タピオカ加工澱粉は使用前にアルファ化しておくことが望ましい。アルファ化されていないと、タピオカ加工澱粉の水溶液も老化し、それを混ぜた混ぜご飯の味覚や老化に対して悪影響を与えるおそれがあるからである。もっとも、タピオカ加工澱粉の使用量が少なく、タピオカ加工澱粉による老化の影響が少ない場合には、アルファ化されていないタピオカ加工澱粉を用いることもできる。アルファ化は、当業者により容易に実施され、例えば90℃の熱水中で加熱することやタピオカ加工澱粉を分散した液体の調味料、例えば合わせ酢を90℃で加熱することなどにより行われる。
混ぜ合わせるタピオカ加工澱粉の量は、所望するさばき感や粘り感などにより適宜決めることができる。炊飯された米飯に対する混合量の下限は、質量比で、例えば、0.001%であり、0.01%であり、0.05%であり、0.1%であり得る。混ぜるタピオカ加工澱粉量が少ないと粘り気が強く感じられるなど食感が悪くなり、おいしいと感じられなくなる。そして、0.001%未満ではタピオカ加工澱粉を混ぜる効果が得られない。また、その上限は、質量比で、例えば20%であり、10%であり、5%であり、2%であり得る。好ましくは、炊飯された米飯に対して、0.01%以上2%以下である。混ぜるタピオカ加工澱粉量が多すぎると、さばき感が悪くなりもっちりとしすぎてしまう。特にすし飯にはさばき感が悪くなるので、すし飯としては非常に不味いものとなる。なお、米飯に混ぜ合わせる調味料の量は、当業者により適宜定めればよい。
こうして得られた混ぜご飯は、適度なさばき感があり、適度な粘り気を有する。また、老化現象が抑えられるので、室温保存や冷蔵保存した後も老化によるパサパサ感や黄変が少なく、おいしさが保たれたまぜご飯が提供される。
次に下記実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されることがないのは言うまでもない。
〔実験1:従来の炊飯よりも加水量を増した連続炊飯〕
図1に示す連続式の炊飯装置(処理能力:米0.5kg/min)を用いて炊飯を行い、一般家庭で汎用されている炊飯器(IHジャー炊飯器:Panasonic SR-SU105)による炊飯との比較を行った。図1に示す炊飯装置1は、米を移送するコンベア2と、高温蒸気による蒸し工程を行う蒸気室3と、蒸気室3内にてコンベア2上を移動する米にその上方から温水を注水する散水装置4を備えている。その他に、当該炊飯装置1は、高温の蒸気を供給する蒸気供給手段と、温水を供給する温水供給手段を備えているが、これらの手段は図示されていない。散水装置4は、蒸気室3内にコンベア2の移動方向において4箇所に備えられ、蒸気室2内のコンベア長を4つの区画に区分した各区画に配置されている(図1の加水1〜4の時間帯を参照)。また、コンベア2の幅方向には、各区画においてコンベア2上を移動する米に均等に温水が注水されるように、複数の散水装置4が適宜配置されている。コンベア2は高温蒸気が供給される収容室5内に収められ、収容室5内に供給された高温蒸気はコンベア2の下方から蒸気室3内に供給される。
(炊飯条件)
連続式の炊飯方式(連続炊飯)では、米の加熱時間(蒸気室入口から蒸気室出口までの移動時間)を22分(炊飯開始から投入した全ての米(仕込み量1kg)が炊きあがるまでの時間が26分)となるように設定した。また、高温蒸気の温度や加水温度を調整し、炊きあがりが炊飯器と同程度の硬さになるように加水量を通常の1.6倍(当該炊飯時間では、通常時の加水量は米量の130%=0.66L/minである。以下同じ。)に設定した。その上で、米の上方から注水された温水がコンベアの下方に流れ落ちるように調整した。具体的には、蒸気室入口方の散水装置から蒸気室出口方に向かって順に0.35L/min、0.25L/min、0.25L/min、0.2L/min(全量で1.05L/min)とした。加水温度は約90℃、蒸気温度は約125℃、蒸気室内温度は99〜100℃であった。
試料である白米(平成22年滋賀県産こしひかり(無洗米、歩留90%に搗精))を質量比で1.5倍量の水道水に1時間浸漬した後、水を切り、上記炊飯装置に投入した。蒸気室出口から出てきた米飯を密閉式の容器(商品名「タッパーウェア」)に採り、蓋の裏から水滴が米飯に落ちないようにキッチン用ペーバーを米飯の上に載せて軽く蓋をし、室温で30分間蒸らしを行った。なお、試料白米は水分14.6%、タンパク質6.5%、アミロース含量18%であった(近赤外分光法、株式会社ケツト科学研究所KettAN800)。
比較として、市販の炊飯器を用いて炊飯を行った。上記と同様にして水道水に浸漬した精米を、浸漬水とともに自動炊飯を行った(エコモード、炊飯所要時間約43分)。炊飯完了後は、連続炊飯の場合と同様にして、室温で30分間蒸らしを行った。
(水分含量の測定)
105℃常圧乾燥法により水分含量を測定した。加熱開始から48時間経過まで米飯を加熱し、乾燥後の質量が最小になった値から水分含量を求めた。
(アミロースの流出量)
コンベアの下方に流れ出た液(米飯洗浄液=廃液)を投入開始4分後から1分経過ごとに15秒間採取し、その液を直接、還元糖量及び全糖量の測定に用いた。還元糖量は、ソモジーネルソン法(Nelson N、A photometric adaptation of the somogyi method for the determination of glucose、Journal of Biological Chemistry、153(2009)、375-380)により、全糖量をフェノール硫酸法(Dubois,M.et al.、Colorimetric method for determination of sugars and related substances.、Anal Chem.、28(1956),350-356)により求めた。参考として、改めて炊飯した際に生じた廃液を、炊飯開始6分後、10分後、14分後、18分後に採取し、採取した廃液を凍結乾燥することで固形物量を測定した。その結果を図2に示した。なお、注水は図2に示す時間帯に行われた。また、図2の経過時間毎に示された3つの棒は左から廃液中の全糖量、固形物重量、還元糖量を示す。
(保存試験)
上記で得られた米飯について、保存試験を行い、下記(2)〜(5)の項目について評価した。100gずつに小分けした米飯をそれぞれ食品用のラップに包み、5℃の冷蔵庫内(冷蔵保存)及び約25℃の室温下(室温保存)で保存した米飯をそれぞれ試験試料とした。なお、炊飯器による米飯は釜に触れない中心部分から採取された。
(1)表面色の測定
小分けされた米飯をできるだけ米粒同士の隙間がなくなるように広げ、ラップの上から分光測色計(KONICAMINOLTA CM-700d)により測定を行った。測定はSCE方式、測定径8mmで行い、結果はL(明度)、a(赤−緑方向)、b(黄−青方向)で表した。また白色度(WI、ASTEM E 3113-73に基づく計算式(WI=0.847Z-3Y)による)についても比較した。測定は各条件で3個ずつ試料をつくり、10回の測定値の平均値を求めた。その結果を図3に示す。
(2)糊化度
糊化度は、BAP法(βアミラーゼ-プルラナーゼ法:貝沼ら、「βアミラーゼ-プルラナーゼ(BAP)系を用いた澱粉の糊化度、老化度の新測定法」、J. Jap. Soc. Starch Science、28(4)、235-240)に一部修正を加えた試験方法で測定した。酵素として、ダイズβ−アミラーゼ(長瀬産業製、粗酵素標品5IU/mg)、プルラナーゼ(林原生物化学研究所製、crude 2IU/mg)を用いた。プルラナーゼ170mg、β−アミラーゼ17mgを0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)100mlに溶解後、遠心分離し上清を酵素液とした。
試料米飯0.3gに蒸留水8mlを加えてガラスホモジナイザーにより分散を行い(10回程度)、その2mlを0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)で25mlに希釈して、試料用サンプルとした。それとは別に、その2mlに0.2mlの10N水酸化ナトリウム溶液を加えて、50℃で5分間温浴して完全に糊化させた。その後、1mlの2N酢酸を加えてpHを6.0に調整し、さらに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)で25mlに希釈して、完全糊化試料とした。希釈した後の溶液の2mlに、それぞれ2.5mlの0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)と0.5mlの酵素溶液を加え、撹拌後、37℃の恒温水槽で30分間酵素反応を行った。酵素溶液に替わりに加熱により失活させた酵素溶液を加えて反応した液を対照とした。反応後、沸騰水中で酵素を失活させた。その後、溶液中の還元糖量をソモジーネルソン法(同上)により、全糖量をフェノール硫酸法(同上)により求め、以下の式より糊化度を算出した。その結果を表1に示した。
糊化度(%)=試料の分解率/完全糊化試料の分解率×100
ただし、分解率(%)=(生成還元糖量−ブランクの還元糖量)/全糖量×100
(糖量はいずれもmaltose当量)
また、糊化度は、別に測定した試料の水分含量を用いて補正した。
(3)物性
物性として粘弾性を測定した。硬さ粘り計(SATAKE、RHS1A、ロードセルA&D社 LC-205-K020)を用いて測定した。装置の操作手順に従い、8gの試料米飯を専用金属製シャーレに採り、18.5kgfで裏表10秒ずつプレスを行って米飯を固めた。固めた米飯を試料台に置き、13.3mm/secのスピードでプランジャー円柱(直径24mm)を二回のクリープ動作で動かして測定した。測定は7回ずつ行った。その結果を図4に示した。
(4)官能検査
炊飯方法の違いによる食味の差を比較するために、炊飯当日の米飯及び5℃で1日間冷蔵保存した米飯について官能検査を行った。
蒸らし後に約25℃に冷ました米飯を炊飯当日の試料とした。冷蔵保存したものを官能検査2時間前に取り出し、常温に戻して冷蔵保存後の試料とした。16〜20名の一般モニターに試料米飯を食してもらい、外観、香り(2点比較法による識別及び嗜好)、食感、味、総合評価(評点法による識別及び嗜好)について評価してもらった。また、外観及び香りについては2点比較の検定表により、食感、味、総合評価については、Mann-Whitney's Utestにより比較検定を行った。その結果を表2及び図5に示した。
〔評価〕
(水分含量)
試料とした米飯の水分含量は、連続炊飯では約63%、炊飯器では約62%であり、わずかに連続炊飯の水分含量が炊飯器のそれよりも高い傾向にあったが、ほぼ同じような炊飯状態に炊飯できた。
(アミロースの流出量)
次に、ベルトコンベアの下方に流れ出た廃液を採取して、その廃液中に含まれる糖分を測定したところ、図2に示すような結果となった。図2から理解されるように、炊飯中に生じる廃液は全ての時間帯で糖分を含んでいた。廃液中の還元糖量は検出限界以下であり、廃液中の糖分は多糖類(非還元糖類)であった。また、図には示さないが、廃液にヨウ素試薬を加えた呈色反応では、アミロースの呈色に特徴的な青色を呈し、アミロースとアミロペクチンが存在する場合に示す赤紫色の呈色は示さなかった。また、廃液中の固形物量と全糖類(非還元糖類)の量はほぼ一致することから、廃液中の固形物量はほぼデンプン(アミロース)であると言える。これらのことより、廃液中の非還元糖類のほとんどはアミロースであって、実施例1の炊飯条件では炊飯中に溶出されるアミロースが注水中に洗い流されたと結論づけられる。この点は、廃液中の固形物が示すゲル濾過分析による分子量分布からも確認されている(結果は図示せず。)。また、図2より、アミロースの溶出量は炊飯開始6分後から急上昇し、8分後に溶出のピークとなっており、この時間帯におけるアミロースの溶出量は他の時間帯に比べて多いと推定される。なお、4分後から5分後に掛けてのアミロースの溶出量は少ないが、このことはこの時間帯では米に吸収される温水量が多いためであると考えられる。一方、炊飯器による炊飯は閉鎖系で行われるので、炊飯過程で溶出されたアミロースはおねばとなって米飯に残るものと考えられる。
次に連続炊飯による米飯と炊飯器による米飯を比較した場合、次の結果が得られた。
(1)表面色
米飯の明度(L)は、炊飯当日、翌日には有意差がみられないものの、連続炊飯による米飯の方がわずかに高く、4日後、7日後になると連続炊飯による米飯の方が有意に高かった。また、赤み−緑を表すa値は連続炊飯による米飯の方がわずかに大きかったが、黄色みを表すb値は連続炊飯による米飯の方が有意に小さかった。明度、a値及びb値から計算される白色度(WI)は連続炊飯による米飯の方が有意に高くなった。また、炊飯当日の米飯を目視で見たところ、後述するように連続炊飯による米飯の方がやや白く、炊飯器による米飯の方がやや黄みがかっていた(比較を示す画像は示さず。)。これらのことから、視覚から看取される老化度(白色度の変化)は、アミロースの洗浄を行った連続炊飯の方が小さいと言える。
(2)糊化度
冷蔵保存すると、炊飯当日では連続炊飯の場合も炊飯器による場合もいずれもほぼ100%であった糊化度は、炊飯翌日(1日後)には連続炊飯では84.5%、炊飯器では79.7%となり、両者には差がみられた。さらに、保存日数が経つにつれ両者の差が開き、連続炊飯では糊化度の低下が抑えられることが明らかになった。
(3)物性(弾粘性)
炊飯当日の硬さは連続炊飯、炊飯器ともにほぼ同値であり、同じくらいの硬さに炊けていることが確認できた。常温で保存した場合、連続炊飯、炊飯器のいずれの米飯も硬さに大きな変化はみられなかった。一方、冷蔵保存した場合、炊飯器の米飯では1日後に5.3kgf、2日後に6.8kgf、3日後に7.5kgfと急激に硬さが上昇したが、連続炊飯の米飯でも硬さの上昇がみられたが、炊飯器に比べると穏やかな上昇であった。
粘りは、炊飯当日は炊飯器の米飯の方が連続炊飯の米飯よりも大きかった。冷蔵保存では炊飯器の米飯では急激な粘りの低下がみられた。そのため、炊飯翌日にはほぼ同値となり、2日後には連続炊飯の米飯の方が炊飯器の米飯よりも粘りは大きくなった。一方、常温保存時には、炊飯翌日には連続炊飯の場合、炊飯器の場合ともに粘りの上昇がみられたが、3日後には同値となった。
硬さや粘りの経時変化から、冷蔵保存による老化に伴う硬さの上昇及び粘りの減少は、炊飯器による炊飯よりも連続炊飯の方が穏やかであることが明らかとなった。また、炊飯当日では炊飯器の米飯の粘りが連続炊飯の米飯の粘りよりも大きかったことは、いわゆるおねばが炊飯器の米飯に付着していることと符合する。
(4)官能試験
「白さ」について、炊飯当日又は冷蔵保存後のいずれにおいても、連続炊飯による米飯は炊飯器による米飯に比べて有意(p<0.05)に白いと評価された。「光沢」については有意な差はなかったが、冷蔵保存後の米飯において連続炊飯による米飯の方が、光沢があると答えた人が多かった。「外観」についても有意な差はないものの、連続炊飯による米飯の方がおいしそうと評価した人が多かった。
「香り」については、炊飯当日では炊飯器の米飯の方が有意(p<0.05)に強いと評価され、その傾向は翌日の飯でも同様であった。しかし、「香りの嗜好性」では、結果はほぼ半々に分かれ、香りが強いからといって好まれるという訳ではなく、老化との関係は見られなかった。
「食感」については、炊飯当日及び冷蔵保存後のいずれにおいても連続炊飯の米飯は有意(p<0.01)に柔らかいと評価された。また、保存後の連続炊飯の米飯は粘りが有意に強く(p<0.05)、食感の総合評価でも有意に好まれ(p<0.01)、連続炊飯による米飯では老化が抑えられ、好ましい食感が保持されていると言える。さらに、冷蔵保存後の連続炊飯の米飯は、外観、食感、風味をあわせた総合評価でも有意に好まれた(p<0.05)。
このように、炊飯中に溶出されるアミロースを洗い流す連続炊飯では、アミロースを洗い流さない炊飯器による炊飯に比べて老化が抑えられ、冷蔵保存した場合でも光沢や柔らかさが比較的良好に保たれることが確認された。
〔実験2:加水量の増加による影響〕
連続式の炊飯方法により、加水量をさらに多くして米飯を炊飯した。加水量を除く炊飯条件は実験1と同様の条件とし、実験1とほぼ同様に加水量を設定した実験例1、それよりもやや多い実験例2、さらにそれよりも多い実験例3の3段階の加水量を設定した。具体的には、加それぞれ蒸気室入口方の散水装置から蒸気室出口方に向かって順に、実験例1の加水量は0.35L/min、0.26L/min、0.25L/min、0.2L/min(全注水量=1.05L/min、通常時の約1.6倍)、実験例2のそれは0.43L/min、0.35L/min、0.35L/min、0.25L/min(全注水量=1.38L/min、通常時の約2.1倍)、実験例3のそれは0.50L/min、0.45L/min、0.45L/min、0.30L/min(全注水量=1.70L/min、通常時の約2.7倍)であった。
比較として、実験1と同様に市販の炊飯器を用いて炊飯を行った。加水率は、水分含量及び炊き増え率が連続炊飯の場合とほぼ同じになるように加水量を調製し、通常の炊飯よりも加水量を多くした比較例1(加水比1.4)とさらにそれよりも加水量を多くした比較例2(加水比1.65)の2種類の加水量を設定した。
また、得られた実験例1と実験例2の米飯(白米)に対して、質量比で10%の合わせ酢(砂糖、塩を溶かした米酢)を混ぜて、すし飯を得た。得られた米飯及びすし飯について保存試験を行った。
(水分含量)
実験1と同様にして、米飯(白米)の水分含量を測定した。
(アミロースの流出量)
実験1と同様にしてコンベアの下方に流れ出た廃液を採取して、その廃液中に含まれる糖分を測定した。測定は実験例1と実験例2の米飯(白米)について行った。
(保存試験)
上記で得られた米飯(実験例1〜3、比較例1〜2)及びすし飯(実験例1〜3、比較例1、2)について、物性(粘弾性:硬さ及び粘り)の変化を調べた。100gずつに小分けした米飯をそれぞれ食品用のラップに包み、5℃の冷蔵庫内(冷蔵保存)で保存した米飯をそれぞれ試験試料とした。物性の測定は、実験1と同様にして行った。
〔評価〕
(水分含量)
試料とした米飯の水分含量は、実験例1では63.7%、実験例2では65.2%、実験例3では65.5%、比較例1では60.9%、比較例2では63.1%であった。また、炊き増え率は、実施例1では2.3倍、実施例2では2.4倍、実施例3では2.5倍、比較例1では2.3倍、比較例2では2.4倍であり、連続炊飯による米飯は、炊飯器による米飯とほぼ同様の炊飯状態であった。
(アミロースの流出量)
アミロースの流出量を図6に示した。図6に示すように、加水量を増やすと糖類の流出量が多くなった。糖類中のほとんどがアミロースであったことから、加水量を多くすることで、より多くのアミロースが洗い流されることが示された。
(物性:弾粘性)
白米の硬さの経時変化を図7に、白米の粘りの経時変化を図8に、すし飯の経時硬さの変化を図9に、すし飯の粘りの経時変化を図10に示した。白米を冷蔵保存した場合、連続炊飯により炊飯された米飯では、加水量を増やすにつれて硬さの上昇が抑えられた。粘りについて、炊飯器により炊飯された米飯(白米)は、加水量を増した場合でも、実施例1と同様に冷蔵保存することにより急激に粘りがなくなった。連続炊飯による米飯(白米)では、炊飯器による炊飯に比べて初期の急激な減少が抑えられ、加水量を増すことにより粘りの減少がさらに抑制された。
すし飯を冷蔵保存した場合、硬さについては、ほぼ白米を冷蔵保存した場合と同様の傾向であり、連続炊飯により炊飯された米飯の硬さ上昇は、加水量を増すと硬さの上昇が抑制され、老化しにくいことが示された。
粘りについても、炊飯器の場合には粘りの急激な減少が見られる場合もあったが、連続炊飯により炊飯された米飯の粘りはそのような急激な変化が抑制された。また、白米の場合と同様に、連続炊飯することにより、粘りの変化が抑制されていた。
以上のことから、加水量を増加させ、炊飯途中で米粒の表面に出て来たアミロースを十分に流すことにより、老化現象がさらに抑制されることが確認された。また、すし飯にすると、炊飯中の加水量を増すことによる老化現象の抑制はより顕著に表れることが確認された。しかしながら、図10に示すように、加水量を増加した場合にはすし飯に粘りが現れた。その結果、さばき感が悪くなり食感が低下した。
〔実験3:タピオカ加工澱粉の添加効果〕
1.米飯(白米)の準備
炊飯条件は、加水量以外は実験1と同様の条件とし、実験2の実験例2と同様の加水量を設定した(実験例4)。すなわち、加水量はそれぞれ蒸気室入口方の散水装置から蒸気室出口方に向かって順に、実験例4は0.43L/min、0.35L/min、0.35L/min、0.25L/minであった(全注水量=1.38L/min、通常時の約2.1倍)。また、実験2と同様に炊飯器による炊飯も行った(比較例3)。当該連続炊飯による米飯の水分含量は約66%、炊き増え率は約2.5倍であり、炊飯器による米飯の水分含量は約64%、炊き増え率は約2.4倍であった。連続炊飯による米飯は、炊飯器による米飯の炊飯状態とほぼ同様であった。
2.すし飯の調製
実験例4の米飯及び比較例3の米飯に、タピオカ加工澱粉を混ぜたすし酢を混ぜ、すし飯(混ぜご飯)を調製した。実験2で使用した合わせ酢にタピオカ加工澱粉(アセチル化タピオカ澱粉:日本食品化工株式会社製、MT−01)を2w/v%となるように分散し、90℃で10分間加熱後、室温に冷却して用いた。炊飯した米飯(白米)に対して質量比で10%の溶液(タピオカ加工澱粉を含む合わせ酢)を混ぜて、すし飯を得た。また、比較として、タピオカ加工澱粉の2w/v%水溶液を90℃で10分間加熱後、室温に冷却した水溶液及びタピオカ加工澱粉を含まない合わせ酢をそれぞれ同様にして、すし飯を得た。得られた各すし飯について、下記に示す保存試験を行った。なお、米飯に対して10%の水を混ぜたものを対照とした。
3.保存試験
上記で調製されたすし飯について保存試験を行い、物性(粘弾性)及び官能試験による味覚の変化を調べた。100gずつに小分けした米飯をそれぞれ食品用のラップに包み、10℃の冷蔵庫内(冷蔵保存)で保存した米飯をそれぞれ試験試料とした。物性の測定は、実施例1と同様にして行った。官能試験は、5人のパネラーに下記の評価項目について5段階評価で採点してもらい、その平均点を求めた。
(官能試験)
10℃で24時間、48時間、72時間冷蔵保存したすし飯を5名のパネラーに試食してもらい、次の項目について7段階評価で評価してもらった。項目は、a)つや(なし:1点→あり:7点)、b)褐変(なし:1点→あり7点)、c)透明感(白っぽい:1点→透明感がある:7点)、d)つぶ表面(べちゃべちゃ:1点→パサパサ:7点)、e)粘着(ほぐれにくい:1点→ほぐれやすい:7点、f)硬さ(硬い:1点→柔らかい:7点)、g)弾力(なし:1点→あり:7点)、h)粘り(なし:1点→あり:7点)、f)食感(ぼそぼそ:1点→なめらか:7点)とし、炊飯器で炊飯した飯に10%の水を混ぜたものとの対比で行い、それと同等であれば4点として評価してもらった
〔評価〕
(物性:弾粘性)
硬さの変化を図11に、粘りの変化を図12に示した。硬さについては、連続炊飯による実験例4の米飯は、合わせ酢だけを混ぜた場合、澱粉だけを混ぜた場合、澱粉と合わせ酢を混ぜた場合のいずれの場合も、炊飯器による比較例3の米飯に比べて、硬さの上昇が抑えられていた。特に、実験例4の米飯に酢だけを混ぜた場合と、実験例4の澱粉に澱粉と合わせ酢を混ぜた場合を比較すると、酢だけを混ぜた場合に比べて、澱粉と合わせ酢を混ぜた場合の方が、硬さの上昇が抑えられていた。
粘りについても、硬さと同様に、連続炊飯による場合は、合わせ酢だけを混ぜた場合、澱粉だけを混ぜた場合、澱粉と合わせ酢を混ぜた場合のいずれの場合も、炊飯器による比較例3の米飯に比べて、適度な粘りであって、粘りの変化が少なかった。
(官能試験)
その結果を図13に示した。官能試験によると、保存時間が経過するにつれ、結着性や粘りにおいて、対照よりも評価が高くなり、全体的な食感も良好に保たれていた。以上のことから、タピオカ澱粉と合わせ酢を用いると、すし飯がおいしく冷蔵保存できることが示された。
1.米飯(白米)の準備
炊飯条件は実験1と同様の条件とし、実験1の実験例1及び実験例2とそれぞれ同量の加水量を設定した(実験例5及び6)。すなわち、加水量はそれぞれ蒸気室入口方の散水装置から蒸気室出口方に向かって順に、実験例4は0.35L/min、0.26L/min、0.25L/min、0.2L/min(全注水量=1.05L/min、通常時の約1.6倍)、実験例5は0.43L/min、0.35L/min、0.35L/min、0.25L/min(全注水量=1.38L/min、通常時の約2.1倍)であった。実験例5の米飯の水分含量は約64%、炊き増え率は約2.3倍であり、実験例6の米飯の水分含量は約65%、炊き増え率は約2.5倍であった。
2.すし飯の調製
実施例5及び実施例6の米飯に、実施例1の実験3と同様の条件で、タピオカ加工澱粉を混ぜたすし酢を混ぜ、すし飯を調製した。また、比較として、タピオカ加工澱粉を含まない合わせ酢を混ぜ、すし飯を調製した。得られたすし飯について、下記に示す保存試験を行った。なお、米飯に対して10%の水を混ぜたものを対照とした。
3.保存試験
上記で調製された混ぜご飯について、実施例1の実験3と同様の条件で保存試験を行い、物性(粘弾性)及び官能試験による味覚の変化を調べた。物性の測定は、実施例1と同様にして行った。官能試験は、9名のパネラーに下記の評価項目について5段階評価で採点してもらい、その平均点を求めた。
(官能試験)
10℃で24時間、48時間、72時間冷蔵保存した混ぜご飯を9名のパネラーに試食してもらい、次の項目について5段階評価で評価してもらった。項目は、a)てり(なし:1点→あり:5点)、b)透明感(白濁している:1点→透明感がある:5点)、c)硬さ(硬い:1点→柔らかい:5点)、d)粘り(弱い:1点→強い:5点)、e)ほぐれ(ほぐれにくい:1点→ほぐれやすい:5点)、f)おいしさ(問題があって食べられない:1点、やや問題があり食べにくい:2点、問題があるが食べられる:3点、やや問題があるが食べられる:4点、問題なく食べられる:5点)とし、炊飯しただけの米飯(対照)との対比で行い、それと同等であれば3点として評価してもらった。なお、おいしさについては、対照も含めて上記5段階で絶対評価を行った。
〔評価〕
(物性:弾粘性)
硬さの変化を図14に、粘りの変化を図15に示した。硬さについて、実施例4のすし飯及び実施例5のすし飯のいずれにおいても、タピオカ加工澱粉の使用ですし飯の硬さの上昇が抑えられていた。また、粘りについても同様のことが言え、加水量に関係なく、タピオカ加工澱粉の使用ですし飯自体の粘りが低下し、さばき性がよくなることが確認された。また、加水量の少ない実験例5の白米に酢を添加すると粘りの低下が1日後から顕著にみられるが、加水量を増やした実験例6では、酢を加えても粘りの低下は緩やかであり、さらに酢と澱粉を加えると、炊飯当日から適度な粘りがあり、その粘りが3日間ほとんど変化なく保たれた。
(官能試験)
その結果を図16に示した。官能試験においても、タピオカ加工澱粉を混ぜたすし飯はほぐれ(さばき性)がよく、物性試験と同様の効果が得られることが確認された。
なお、実験4において、合わせ酢とタピオカ加工澱粉をそれぞれ個別に混ぜることとし、その順序を入れ替えた場合について物性の経時変化を測定したところ、いずれの場合も物性変化は実験4と同様の傾向が得られた。この結果より、タピオカ加工澱粉を混ぜた合わせ酢を混ぜても、合わせ酢、タピオカ加工澱粉の順序で混ぜても、タピオカ加工澱粉、合わせ酢の順序で混ぜてもよいと言える。

Claims (5)

  1. 吸水させた米に水を加えて加熱する工程を含む炊飯方法であって、前記水を加えて加熱する工程において米から溶出したアミロースを洗い流す工程を含む炊飯方法により、米飯を得る工程と、
    前記工程で得られた米飯に、調味料とタピオカ加工澱粉を混合する工程を有する混ぜご飯の製造方法。
  2. 高温蒸気による蒸し工程を含み、当該蒸し工程において温水による加水を行う連続式の炊飯方法であって、前記蒸し工程において、炊飯に通常必要な加水量よりも多い量の温水を注水して、米から溶出したアミロースを洗い流す工程を含む炊飯方法により、米飯を得る工程と、
    前記工程で得られた米飯に、調味料とタピオカ加工澱粉を混合する工程を有する混ぜご飯の製造方法。
  3. 前記蒸し工程の初期段階における温水の注水量を、その後の蒸し工程における温水の注水量よりも多くすることを特徴とする請求項2に記載の混ぜご飯の製造方法。
  4. 前記タピオカ加工澱粉は、タピオカ澱粉のエーテル化物及び/又はエステル化物である請求項1〜3の何れか1項に記載の混ぜご飯の製造方法。
  5. 前記調味料は、すし飯用の調味料である請求項1〜4の何れか1項に記載の混ぜご飯の製造方法。
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