JP2014146698A - 複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びにrfidタグ - Google Patents

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Abstract

【課題】500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域に適用可能であり、しかも、この周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が大きく、かつ複素透磁率の損失正接tanδμ、複素誘電率の実部εr’及び複素誘電率の損失正接tanδεが低い複合磁性体及びそれを備えたRFIDタグを提供する。
【解決手段】複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、前記磁性粉体は扁平状であり、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは1以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びにRFIDタグに関し、特に、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域の電磁波を利用するアンテナへの装荷、あるいは、この周波数帯域の電磁波を利用する電子部品を構成する磁性材料として用いて好適な複合磁性体、及び、この複合磁性体を備えたアンテナ、並びに、この複合磁性体を備えたRFIDタグに関するものである。
RFIDタグ(Radio Frequency Identification)は、無線タグとも称され、近距離の無線通信により情報を送受信することのできる無線ICチップである。RFIDシステムとは、この無線ICチップを備えたタグとリーダ、ライタ又はリーダ/ライタ(以下、総称してリーダ/ライタと呼ぶ。)との間でデータの交信を行うシステムであり、工場の生産管理、物流の管理、入退室管理、交通機関の乗車カードや電子マネー等、広く利用されている。
物流管理などの用途では、通信距離が長い方が有利であるため、UHF帯などの、周波数のより高い帯域が用いられている。
RFIDタグの近傍に金属が有ると、磁力線がその金属内を通過する際に渦電流を発生させ、この磁力線の信号エネルギー(RFIDタグから出力される信号のエネルギー)の一部が減衰されて金属に吸収されてしまい、通信に必要なエネルギーを確保することができず、無線通信による情報の送受信ができなかった。
そこでRFIDタグと金属物品との間にプラスチックやゴムなどのスペーサーによって一定の距離を設け、金属の影響を抑える方法が用いられていた。
しかし、この方法では通信距離を長くするためにはスペーサーを厚くする必要があり、RFIDタグが物品から突出し、取り扱い中に周辺の物品に接触して破損してしまう虞があった。
そこで、この問題を解決するために、RFIDタグにおけるダイポールアンテナの金属含有物品への取り付け面に軟磁性材を設けることが提案されている(特許文献1)。
特開2005−309811号公報
しかしながら、上述したRFIDタグでは、通信距離が十分ではなく、さらに、軟磁性材料とスペーサーを併用したRFIDタグであっても、通信距離が十分ではないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域で使用されるRFIDタグに用いて好適な複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びにRFIDタグを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、磁性粉体を絶縁材料中に分散させた複合磁性体における前記磁性粉体の形状を扁平状とし、この複合磁性体の500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下とするか、または、900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが0.5以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下とすれば、この複合磁性体を、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域で使用されるRFIDタグに適用することが可能となり、その結果、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長く取ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、前記磁性粉体は扁平状であり、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは1以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下であることを特徴とする。
本発明の他の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、前記磁性粉体は扁平状であり、900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは0.5以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下であることを特徴とする。
本発明の複合磁性体では、前記磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)2以上であることが好ましい。
前記磁性粉体は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子同士を変形及び融着してなることが好ましい。
また本発明の複合磁性体では、厚みが0.01mm以上かつ2mm以下であることが好ましい。
本発明のアンテナは、本発明の複合磁性体を装荷してなり、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域の電波を、送信、受信または送受信することを特徴とする。
本発明のRFIDタグは、本発明の複合磁性体を備えてなることを特徴とする。
本発明の複合磁性体によれば、磁性粉体を扁平状とし、さらに、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下としたことで、この周波数帯域において複合磁性体を通過する磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。これにより、上記周波数帯域で使用されるRFIDタグに適用された場合に、RFIDタグの周囲に形成される磁場のエネルギー損失を抑えることができ、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長く取ることができる。
本発明のアンテナによれば、本発明の複合磁性体を備えたので、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域におけるRFIDタグに適用された場合に、金属部材による磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長く取ることができる。
本発明のRFIDタグによれば、本発明の複合磁性体を備えたので、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域において使用された場合に、RFIDタグに近接する金属部材が存在しても、その金属部材による磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長く取ることができる。
開放容器を用いて球状の磁性粒子を含むスラリー及び分散媒体を高速撹拌する様を示す図である。 密閉容器を用いて球状の磁性粒子を含むスラリー及び分散媒体を高速撹拌する様を示す図である。 実施例1の複合磁性体の複素透磁率の実部μr’、複素透磁率の虚部μr”及び複素透磁率の損失正接tanδμを示す図である。 実施例1の複合磁性体の複素誘電率の実部εr’、複素誘電率の虚部εr”及び複素誘電率の損失正接tanδεを示す図である。
本発明の複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びにRFIDタグを実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[複合磁性体]
本実施形態の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、この磁性粉体は扁平状であり、次の(1)の磁気特性を有する。
(1)500MHzから3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下である。
本実施形態の複合磁性体は、次の(2)の磁気特性を有することとしてもよい。
(2)900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが0.5以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下である。
この複合磁性体では、複素透磁率の実部μr’は6以上が好ましく、9以上がより好ましい。また、複素誘電率の実部εr’は30以下が好ましい。
ここで、複素透磁率の実部μr’、複素透磁率の損失正接tanδμ、複素誘電率の実部εr’及び複素誘電率の損失正接tanδεを上記の範囲に限定した理由は、これらの範囲が、複合磁性体において内部を通過する磁力線のエネルギーの減衰を抑制することができる範囲だからである。
μr’が増加するとtanδμも増加するため、tanδμの上限値の兼ね合いから、μr’の上限値は50程度であり、εr’の下限値は実用上1.5程度である。
この複合磁性体の形状は特に限定されず、用途に応じて適宜変更すればよい。
この複合磁性体の厚みは特に限定されないが、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域にてRFIDタグに使用された場合に、薄くて長い通信距離を保てるRFIDタグとするために、0.01mm以上かつ2mm以下にすることが好ましく、0.01mm以上かつ1mm以下にすることがより好ましい。
なお、上記のμr’、εr’、tanδμ及びtanδεはマテリアルアナライザーにて測定した値であるが、測定装置としては、上記の各値がマテリアルアナライザーと同等の精度で測定することのできる装置であればよく、マテリアルアナライザーに限定されない。
「磁性粉体」
本実施形態の磁性粉体を構成する材料としては、磁性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)等の強磁性金属、モリブデン(Mo)等の常磁性金属のうちいずれか1種からなる金属、または、これらのうち少なくとも1種以上を含む合金を用いることができる。
これらの金属または合金は、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)等を含んでいてもよい。
これらの合金としては、二元素系合金、三元素系合金等が挙げられる。
二元素系合金としては、保磁力が70エルステッド(Oe)以下の軟磁性を示すパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金等が挙げられる。
三元素系合金としては、スーパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni−Mo合金、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Si合金等が挙げられる。
これらの合金の中でも、Fe−Ni合金としては、Ni78質量%−Fe22質量%の合金が、扁平状の磁性粉体、例えば、平均厚みが10μm以下、平均長径が20μm以下の平板状の磁性粉体が得られ易く、高透磁率とともに低磁気損失の磁性粉体を得られるので好ましい。
上記の合金に、その合金に含まれない金属元素で、その合金と性質が近い金属(合金に含まれている金属と周期律表で近接している金属)、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、すず(Sn)等の群から1種または2種以上を適宜選択して添加してもよい。
上記の金属元素を合金に添加する場合には、この金属元素の含有率は、この金属元素と合金との合計質量に対して0.1質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、1質量%以上かつ12質量%以下がより好ましく、1質量%以上かつ5質量%以下がさらに好ましい。
ここで、上記の金属元素の含有率を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の含有率が0.1質量%未満では、後述する球状の磁性粒子を扁平状にさせるための十分な塑性変形能を付与することができず、一方、含有率が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、この扁平状の磁性粉体全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
特に、アスペクト比が高くなり、結果として高いμr’の複合磁性体が得られ易い点で、柔らかい金属である、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を1質量%以上かつ12質量%以下、好ましくは1質量%以上かつ5質量%以下含む鉄−ニッケル合金を用いるのが好ましい。
これらの中でも、ニッケル−鉄−亜鉛(Ni−Fe−Zn)合金は、Fe−Ni合金へのZnの添加により、後述する球状の磁性粒子の加工性が高くなるために、大きなアスペクト比を有する扁平状の磁性粉体が得られ易いので好ましい。合金の組成比としては、例えば、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%の合金、Ni76質量%−Fe20質量%−Zn4質量%等を好適に用いることができる。
この磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上かつ1μm以下である。
また、この磁性粉体の平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上かつ10μm以下である。
この磁性粉体の平均厚み及び平均長径は、複数個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径、例えば、100個以上の磁性粉体、好ましくは500個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径を測定し、厚み及び長径各々の平均値を算出することで求めることができる。
磁性粉体の大きさが上記範囲よりも大きいと、この磁性粉体を用いた複合磁性体をRFIDタグに用いた場合に、上記複合磁性体がRFIDタグに設けられたアンテナと金属部材との間の磁気シールドになり、かつ磁性粉体そのものも金属であることから、この磁性粉体の中を渦電流が流れる。これにより、アンテナにより形成される磁力線の信号エネルギーの一部が熱エネルギーに変化し、磁気信号の減衰が生じる場合があるので、好ましくない。
また、平均厚みが0.01μm未満であると、後述する製造上困難であり、取り扱いも難しくなるので好ましくなく、また、平均厚みが10μmを超えると、粒子同士の融着に起因する厚みのばらつきが生じ、tanδμ、tanδεが増加するので好ましくない。
ここで、磁性粉体の平均長径が0.05μm未満では、磁性粉体自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しくなる。その結果、配向が良好でありかつ複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。
一方、この磁性粉体の平均長径が20μmを超えると、絶縁材料中での粒子の分散が不安定になり易くなり、さらには、磁性粉体の間隙が小さくなり過ぎる等により、磁性粉体間の間隙に絶縁材料が進入し難くなる。その結果、気孔が生成され易くなり、所望のμr’が得られない虞があるので好ましくない。
この磁性粉体の平均アスペクト比(長さ/厚み)は2以上かつ20以下であることが好ましく、より好ましくは3以上かつ10以下であり、さらに好ましくは3以上かつ5未満である。
ここで、この磁性粉体の形状が、平均アスペクト比(長さ/厚み)が2以上の扁平状が好ましい理由は、次のとおりである。
磁性粉体における反磁界の大きさは、粉体の形状に依存する。例えば、磁性粉体が球状の場合には、反磁界が等方的に存在するので、得られる透磁率も等方的となり、高周波領域で優れた磁気特性を得ることは困難である。一方、磁性粉体が扁平状の場合には、扁平状の一面に平行な方向の反磁界が、扁平状の垂直方向の反磁界に対して格段に小さくなり、したがって、得られるμr’が大きくなるので、好ましい。
一方、平均アスペクト比が大きくなると、磁性粉体自体の機械的強度が低下する虞がある。そこで、磁性粉体が所望の機械的強度を確保するためには、平均アスペクト比は15以下が好ましく、実用的には20程度が上限となる。
さらに、平均アスペクト比が20を超えると、磁性粉体の形状が扁平すぎることで、磁性体同士の間が狭くなり、この間に絶縁性材料が進入し難い空間が形成され易くなる。その結果、複合磁性体中に気泡が生じ易くなり、この気泡の存在によりμr’が低下するので好ましくない。
また、アスペクト比が5未満の場合には、透磁率の値はある程度高くかつtanδμが小さくなるので、通信距離をより長くする複合磁性体が得られるため好ましい。
したがって、平均アスペクト比は2以上かつ20以下であることが好ましく、3以上かつ15以下であることがより好ましく、3以上かつ5未満であることがさらに好ましい。
この磁性粉体の平均アスペクト比(長径/厚み)も、上記の平均厚み及び平均長径と同様、複数個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径、例えば、100個以上の磁性粉体、好ましくは500個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径を測定し、厚み及び長径各々の平均値を算出することで求めることができる。
本実施形態の磁性粉体は、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子同士が接触し変形して融着することにより得られるものが好ましい。
この過程を経ることにより、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子は、平均厚みが0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.05μm以上かつ20μm以下、平均アスペクト比(長さ/厚み)が2以上の扁平状の磁性粉体となる。
ここで、球状粒子の平均粒子径を3μm以下としたのは、平均粒子径を3μm以下とすることで球状粒子の表面が高活性となり、また、粒子同士の親和性も高くなり、その結果、粒子同士の変形及び融着が促進し、扁平状の磁性粉体が形成され易くなるからである。
「絶縁材料」
本実施形態の絶縁材料としては、機械的強度が高く、吸湿性が低く、形状加工性に優れていることが好ましい。上記絶縁材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
なかでも、熱硬化性樹脂としては、機械的強度及び形状加工性に優れているエポキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ABS樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記の絶縁材料に熱可塑性エラストマーを添加してもよい。熱可塑性エラストマーを添加することにより、複合磁性体の機械的強度や形状加工性を向上させることができる。したがって、熱可塑性エラストマーが添加された複合磁性体は、靭性、柔軟性、変形性により優れたものとなる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整して実施すればよい。
[複合磁性体の製造方法]
本実施形態の複合磁性体の製造方法は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて機械的応力(機械的なせん断エネルギー)を加えながら撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えている。
以下、各工程について詳細に説明する。
(第1の工程)
まず、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子を、界面活性剤を含む溶液中に分散させてスラリーとする。
磁性粒子の組成は、上記の磁性粉体の組成と全く同様である。
球状の磁性粒子の作製方法は、特に限定されず、液相還元法、アトマイズ法等の公知の方法で合成したものを用いることができるが、特に、平均粒子径が3μm以下の球状粒子を合成することを考慮すると、液相還元法を用いることが好ましい。
界面活性剤としては、磁性粒子の表面と相性の良い窒素、リン、イオウ等の元素を含有している界面活性剤が好ましく、例えば、窒素含有ブロックコポリマー、燐酸塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
この界面活性剤を溶解させる溶媒としては、磁性粒子に含まれる金属元素の酸化を防止する必要があることから、有機溶媒が好ましく、特に、キシレン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の非極性有機溶媒が好ましい。
次いで、このスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、このスラリー及び分散媒体の合計の体積が容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする。
分散媒体としては、球状の磁性粒子よりも硬度が高いことが必要であり、例えば、アルミニウム、鋼(スチール)、ステンレススチール、鉛等の金属球、アルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア等の金属酸化物あるいは無機酸化物からなる球状焼結体、窒化ケイ素等の無機窒化物からなる球状焼結体、炭化ケイ素等の無機炭化物からなる球状焼結体、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等からなるビーズと称される球状粒子が挙げられ、中でも、比重6以上のジルコニア、鋼(スチール)、ステンレススチール等が効率の点から好ましい。
球状の磁性粒子への機械的応力の付加は、分散媒体の衝突の際に、球状の磁性粒子が、分散媒体と分散媒体の間、または分散媒体と密閉容器の内壁との間に挟まれることで与えられる衝撃によって行われる。そのため、分散媒体同士あるいは分散媒体と容器の壁との衝突回数が増加するにつれて、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が向上する。
このように、分散媒体の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する個数が増加し、衝突回数も多くなり、変形及び融着性も向上する。その一方で、分散媒体の平均粒径が小さすぎると、この分散媒体をスラリーから分離することが困難となる。したがって、分散媒体の平均粒径は、少なくとも0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上であることが必要である。
また、分散媒体の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することから、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
密閉可能な容器としては、ディスク、スクリュー、羽根、ピン等の一軸回転体を高速回転することで、分散媒体をスラリーとともに高速回転する密閉容器が好ましい。
この密閉容器は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
なお、上記の密閉可能な容器に、スラリーを容器内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリーを密閉容器内に循環するようにしてもかまわない。この場合、予め分散媒体を密閉容器内に収納しておき、球状の磁性粒子と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリーを流入口から投入して容器内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリーを再度密閉容器内へ投入するようにすればよい。
ここでは、スラリー及び分散媒体の上記の密閉容器内への充填量を、密閉容器内の体積と同一とする。換言すれば、スラリー及び分散媒体を、密閉容器内に隙間なく充填する。
ここで、スラリー及び分散媒体を、密閉容器内に隙間なく充填する理由は、次のとおりである。
図1は、上部が開放された開放容器1に投入された球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4を、一軸回転体5により高速回転することで高速撹拌する様を示す図である。
この図では、一軸回転体5が高速で回転すると、スラリー3及び分散媒体4の液面は、遠心力により中心軸近傍が低く、周縁部が高いすり鉢状となる。
一軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、すり鉢状の空間に逃げていくので、開放容器1内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に伝搬される機械的応力は不均一なものとなり、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく要因となる。
また、すり鉢状の空間の底部近傍(中心軸近傍)で扁平状となった磁性粉体は、分散媒体と共にすり鉢状の空間に放出されて不規則な衝撃を受けることとなり、割れや欠け等が生じる虞がある。このような磁性粉体の厚みのばらつきや割れや欠けは、tanδμ、tanδεが増加する要因となっている。
図2は、密閉容器11に投入された球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4を、一軸回転体5により高速回転することで高速撹拌する様を示す図である。
この図では、一軸回転体5が高速で回転しても、密閉容器11内が球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4により満たされているので、開放容器1に見られるようなすり鉢状の空間が生じる虞は無い。したがって、一軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、密閉容器11内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に均一に伝搬され、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく虞は無い。また、扁平状となった磁性粉体は、不規則な衝撃を受けることもなく、割れや欠け等が生じる虞もない。
一軸回転体5の回転数は、密閉容器11の大きさにより決定される。例えば、内径が120mmの密閉容器11の場合、球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4の一軸回転体5の径方向の外周端5a付近の流速が5m/秒以上となるように、一軸回転体5の回転数を設定することが好ましく、この外周端5a付近の流速が8m/秒以上となるように、一軸回転体5の回転数を設定することがより好ましい。
一方、外周端5a付近の流速が15m/sを超えると、エネルギーが大きすぎるために平板状になった粒子を破壊してしまう虞があるので、外周端5a付近の流速は15m/s以下であることが好ましい。
なお、密閉容器11の内容積が小さいと、得られた扁平状の磁性粉体に球状の磁性粒子2が残留する虞がある。残留した球状の磁性粒子2は、球状の磁性粒子2同士の接触、または球状の磁性粒子2と扁平状の磁性粉体との接触により、tanδμ、tanδεを増加させたり、扁平状の磁性粉体の配向を阻害したりする虞がある。したがって、扁平状の磁性粉体は、磁性粉体全体量の90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、球状の磁性粒子については、実質的に含まないことが望ましい。
ここで、密閉容器11の内容積が小さい場合に球状の磁性粒子2が残留する理由は、密閉容器11の角や回転体5と密閉容器11との接合部といった機械的応力が十分に伝わらないデッドスペースが相対的に大きくなるからと考えられる。そこで、密閉容器11の内容積を大きくすると、相対的にデッドスペースが小さくなり、よって、球状粒子2に機械的応力が十分に伝わり、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が向上し、その結果、球状の磁性粒子2の残留が少なくなり、実質的に球状の磁性粒子2がなくなる。
このように、実質的に球状の磁性粒子2が残留しなくなる密閉容器11の体積は、1L以上が好ましく、より好ましくは5L以上である。
以上により、球状の磁性粒子同士は、一軸回転体5により加えられた機械的応力により変形及び融着し、扁平状の磁性粉体となる。
次いで、この扁平状の磁性粉体を分散媒体及び溶媒から分離する。
分離方法は、扁平状の磁性粉体を作製した後のスラリーから溶媒を除去することができれば特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥、フリーズドライ等が挙げられるが、乾燥効率の点で真空乾燥が好ましい。また、乾燥効率を高めるために、乾燥工程の前に、固液分離等の手法によりある程度の溶媒を除去してもよい。固液分離の方法としては、フィルタープレス、吸引ろ過等のろ過操作、あるいはデカンター、遠心分離機による遠心分離操作等、通常の方法を用いればよい。
(第2の工程)
上述の扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合してスラリーとし、このスラリーを成形材料とする。
ここで、樹脂としては、液状の樹脂が好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
絶縁材料として熱硬化性樹脂を用いる場合、硬化剤の種類や添加量については、使用する熱硬化性樹脂の種類や量に応じて適宜調整すればよい。
硬化剤としては、上記の熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ基同士の縮合反応を促進させて、複合磁性体の成形時における硬化不良による気孔の発生を防止する点で第3アミンが好ましい。
第3アミンとしては、例えば、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化剤の添加量としては、官能基の縮合反応を促進させる点を考慮すると、熱硬化性樹脂と第3アミンとの合計の質量に対して0.5質量%以上かつ3質量%以下、添加させればよい。
絶縁材料として熱可塑性樹脂を用いる場合、硬化剤は不要である。
また、溶媒としては、上記の樹脂を溶解させることができるものであればよく、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
得られたスラリーの粘度は0.1Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下である。
ここで、粘度が0.1Pa・s未満の場合には、流動性が大きくなりすぎて乾燥工程での生産性が悪くなり、一方、粘度が10Pa・sを超えると、粘性が高すぎて磁性粉体の配向が起こり難くなり、その結果、複合磁性体中における磁性粉体の配向性が低下してしまうので、好ましくない。
分散混合方法としては、特に制限はないが、遊星ミル、機械的応力を加えることができるサンドミル、ボールミル等の攪拌装置を用いることが好ましい。
(第3の工程)
上記の成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する。
成形方法としては、公知の成形方法、例えば、プレス法、ドクターブレード法、射出成形法等が好適である。この成形方法を用いて任意の形状のシート状またはフィルム状に成形することにより、ドライフィルムを作製することができる。
複合磁性体が積層体の場合には、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形することが望ましい。
上記の成形材料は、粘度調整を行う必要がある場合には、溶媒を揮発させて濃縮後に成形を行う。必要があれば、成形材料を基材上に塗布した後、乾燥前に磁場の配向により扁平状の磁性粉体をシートまたはフィルムと平行な方向に配向する配向処理を行えばよい。
熱処理または焼成の条件としては、還元性雰囲気中または真空中にて、熱処理またはホットプレスが好適である。これにより、本実施形態の複合磁性体が得られる。
上記の乾燥工程で得られた成形体の気孔率をさらに減少させたい場合には、上記の乾燥工程後に、成形体をプレスする工程を施すことが好ましい。プレス装置は公知のものを適宜用いればよい。
また、プレス装置で成形体に圧力を加える際に、絶縁材料として樹脂を用いる場合には、効果的に気孔を減少させるために樹脂の軟化温度以上かつ硬化開始温度以下の温度範囲で圧力を加えることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂を使用した場合には、樹脂の軟化温度以上の温度で圧力を加えて、樹脂同士を融着させる必要がある。
プレス時の圧力は、成形材料の種類に応じて適宜調整すればよいが、5MPa〜20MPa程度の圧力を加えるのが好ましい。
なお、扁平状の磁性粉体と熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂とを加熱混錬により混合分散したものを成形することによっても、本実施形態の複合磁性体が得られる。
加熱混練方法としては、公知の方法、例えば、加圧ニーダー、2軸式ニーダー、ブラストミル等で混合分散した混練物を作製することができる。この混練物の成形方法としては、公知の方法、例えば、加熱プレス成形、押出成形、射出成形等で成形体を作製することができる。これらの方法の中でも、扁平状の磁性粉体を樹脂中に配向させるためには、平面状に引き伸ばす加熱プレス成形が好ましい。引き伸ばす際の粘度調整のために、可塑剤の添加、扁平状の磁性粉体の表面処理を行うことも好ましい。必要があれば、加熱して流動性を維持した状態で、磁場の配向により扁平状の磁性粉体を配向する処理を行うことが好ましい。
本実施形態の複合磁性体の製造方法によれば、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、このスラリー及び分散媒体の合計の体積量が、この容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを分散媒体と共に密閉状態にて機械的応力(機械的なせん断エネルギー)を加えながら撹拌し、球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、この扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする第2の工程と、この成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えたので、所望の扁平形状の磁性粉体を容易に得ることができるとともに、この扁平状の磁性粉体を所望の含有量で樹脂中に均一に分散させて複合磁性体を製造することができる。これにより、(1)500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下の扁平状の複合磁性体、または、(2)900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが0.5以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下の扁平状の複合磁性体、を容易に作製することができる。
[アンテナ]
本実施形態のアンテナは、上記の複合磁性体をアンテナ導体に装荷し、かつ500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信するアンテナである。
このアンテナとしては、RFIDタグに用いられるアンテナであればよく、特に限定されず、例えばダイポールアンテナ等が挙げられる。
このアンテナに上記の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、公知の方法で装荷させればよい。
ここで、「装荷」とは、アンテナ導体に複合磁性体を接触あるいは近づけることである。
このアンテナでは、本実施形態の500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下の扁平状の複合磁性体を装荷したので、この周波数帯域におけるアンテナ効率が高くなる。
[RFIDタグ]
本実施形態のRFIDタグは、上記の複合磁性体を備えている。
上記の複合磁性体は、公知の形態及び方法によりRFIDタグに実装させればよい。
このRFIDタグの構造としては、例えば、裏面シート、アンテナとICチップを含む基体シート、上記複合磁性体、及び表面シートが順次積層され、熱圧着または接着剤等によって相互に固着させた構造があげられる。
このように、RFIDタグに上記複合磁性体を設けることにより、アンテナの複合磁性体側に金属部材が存在しても、電磁波のエネルギーが金属部材により吸収されることなく、磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長くとることができる。
[通信装置]
本実施形態の通信装置は、上記の複合磁性体を備えている。
通信装置は、RFIDタグを内蔵させて使用できるものであれば特に限定されず、例えば、携帯電話機、携帯用情報端末、多機能携帯用情報端末等の情報端末機器等が挙げられる。上記の複合磁性体を通信装置に配設させる方法は特に限定されず、公知の方法により配設させればよい。例えば、アンテナを有するRFIDタグと金属部材との間に上記複合磁性体を設けた構造が挙げられる。
このように、RFIDタグ中のアンテナと金属部材の間に、上記複合磁性体を介在させることにより、電磁波のエネルギーが通信装置中の金属部材により吸収されるのを抑え、磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、通信装置とリーダ/ライタとの通信距離を長くとることができる。
本実施形態の複合磁性体によれば、磁性粉体を扁平状とし、その磁気特性を、(1)500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下、(2)900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが0.5以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下、のいずれかとしたので、上記の各周波数帯域において複合磁性体を通過する磁力線の吸収を抑えることができ、例えば信号通信に使用される磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。
上記の磁性粉体の厚みを0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径を0.05μ以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)を2以上とした場合には、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素誘電率の実部εr’が50以下の複合磁性体を得ることができる。
上記の磁性粉体を、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を含む鉄−ニッケル合金とした場合には、高いμr’の複合磁性体を得ることができる。
上記の磁性粉体が、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子同士を変形及び融着されることにより得られた磁性粉体であれば、アスペクト比が高い、すなわち高いμr’の複合磁性体を得ることができる。
上記の複合磁性体の厚みが0.01mm以上かつ2mm以下である場合には、薄くて通信距離が長いRFIDタグを得ることができる。
本実施形態の複合磁性体の製造方法によれば、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、このスラリー及び分散媒体の合計の体積量が容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、この扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする第2の工程と、この成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を有するので、磁性粉体の厚みのばらつきが極めて小さく、tanδμ、tanδεの低い扁平状の複合磁性体を容易に得ることができる。また、得られた扁平状の磁性粉体は、不規則な衝撃を受けることもなく、割れや欠け等が生じる虞もない。
さらに、密閉容器の体積が1L以上のものを用いて磁性粉体を製造すると、球状の磁性粒子を実質的に含まない扁平状の複合磁性体が得られるので、よりμr’が大きい扁平状の複合磁性体を得ることができる。
本実施形態のアンテナによれば、本実施形態の複合磁性体を装荷してなるので、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域において使用されるRFIDタグに適用された時に、金属部材による磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長く取ることができる。
本実施形態のRFIDタグによれば、本実施形態の複合磁性体を備えたので、RFIDタグに内蔵されたアンテナの複合磁性体側に金属部材が存在しても、複合磁性体がヨークのように作用し、その金属部材による磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、RFIDタグとリーダ/ライタとの通信距離を長くとることができる。
また、アンテナを金属部材から離間させるためのスペーサーを用いなくても通信距離が十分長いため、スペーサーを備えた従来のRFIDタグと比較して厚みを薄くすることができる。
本実施形態の通信装置によれば、RFIDタグと本実施形態の複合磁性体とを備えたので、RFIDタグから出力される電磁波のエネルギーが金属部材により吸収されるのを抑え、磁力線の信号エネルギーの減衰を抑制することができる。その結果、通信装置とリーダ/ライタとの通信距離を長くとることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平均粒径0.3μmの球状の磁性粒子200gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマーを溶解したキシレン800gに混合し、スラリーを作製した。
次いで、密閉容器として、図2に示すような循環密閉型で容器体積が5Lのサンドミル(ウルトラアペックスミルUAM−5(寿工業社製))を用い、この密閉容器内に、分散媒体として平均粒径50μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入し、密閉容器内を満たした。
この状態で、一軸回転体の径方向の外周端付近の流速が10m/秒以上となるような回転数で攪拌し、平均厚みが0.2μm、平均長径が0.7μm、平均アスペクト比が3.5の扁平状の磁性粉体を作製した。
「第2の工程」
次いで、得られた扁平状の磁性粉体を乾燥して溶媒を散逸させた後、この扁平状の磁性粉体の所定量を、ポリスチレン樹脂をトルエンに溶解して得られる樹脂溶液に添加して撹拌混合した。
次いで、得られた扁平状の磁性粉体を乾燥して溶媒を散逸させた後、この扁平状の磁性粉体の所定量を、ポリスチレン樹脂をトルエンに溶解して得られる樹脂溶液に添加して撹拌混合した。ここでは、磁性粉体とポリスチレン樹脂との合計の体積中に、磁性粉体が40体積%となるように混合した。
「第3の工程」
このようにして得られた混合物を、ドクターブレード法により100mm角、厚み600μmの正方形状のフィルムに成形した。
次いで、このフィルムを大気中、80℃にて20分間乾燥し、厚みが100μmのドライフィルムとし、その後、このドライフィルムを所定の枚数重ねて、減圧プレス装置にてプレス焼成を行った。プレス条件は、常圧のまま90℃まで20分で昇温させ、その後2MPaの圧力を加えて10分間保持し、実施例1の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の100MHzから3GHzにおける複素透磁率の実部μr’、複素透磁率の虚部μr”、 複素透磁率の損失正接tanδμ、複素誘電率の実部εr’、複素透磁率の虚部εr”、tanδεをマテリアルアナライザーE4991A型(Agilent Technologies社製)にて測定した。複素透磁率の実部μr’、複素透磁率の虚部μr”及び複素透磁率の損失正接tanδμの測定結果を図3に、複素誘電率の実部εr’、複素誘電率の虚部εr”及び複素誘電率の損失正接tanδεの測定結果を図4に、それぞれ示す。
図3及び図4に示すように、950MHzにおけるμr’は6.8、μr”は0.79、tanδμは0.116、εr’は16.1、εr”は1.07、tanδεは0.066であった。
この複合磁性体中の磁性粉体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体50個の平均の厚みは0.2μm、平均長径は0.7μmであり、個々のアスペクト比の平均値は3.5であった。
また、この走査型電子顕微鏡像(SEM像)の視野内では、扁平状の磁性粉体しか認められず、球状の磁性粒子や、厚み、長さまたはアスペクト比が、この扁平状の磁性粉体から外れた磁性粒子は、実質的に認められなかった。
[RFIDタグの作製]
ICチップが接続されたダイポールアンテナを有する基体シート、実施例1の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を順次積層させて固着させることにより、実施例1のRFIDタグを得た。
[RFIDタグの評価]
RFIDタグの複合磁性体側に金属板を重ね合わせた状態で、リーダ/ライタ(Impinj社製、Speedway Revolution)及びアンテナ(Yeon Technology社製、YAP-100LR)を用いて通信距離(電力伝送及び信号通信が可能な距離)を測定した。その結果、実施例1のRFIDタグの通信距離は216cmであった。
[実施例2]
[複合磁性体の作製]
実施例1の複合磁性体の作製の第3工程において、積層させるドライフィルムの枚数を減らしてプレス焼成を行った以外は実施例1と同様にして、実施例2の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは0.2mmであった。
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例2(縦60mm、横30mm、厚み0.2mm)の複合磁性体を用いた以外は全く同様にして、実施例2のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、18cmであった。
[実施例3]
[複合磁性体の作製]
実施例1の複合磁性体の作製の第3工程において、積層させるドライフィルムの枚数を減らしてプレス焼成を行った以外は実施例1と同様にして、実施例3の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは0.5mmであった。
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例3(縦60mm、横30mm、厚み0.5mm)の複合磁性体を用いた以外は全く同様にして、実施例4のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、77cmであった。
[実施例4]
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平均粒径0.3μmの球状の磁性粒子の替わりに、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%のNi−Fe−Zn合金からなる平均粒径0.25μmの球状の磁性粒子を用いた以外は、実施例1の第1の工程と同様にして、実施例4の磁性粉体を得た。
得られた磁性粉体は、平均厚みが0.3μm、平均長径が2.0μm、平均アスペクト比が6.7の扁平状であった。
「第2及び第3の工程」
この扁平状の磁性粉体を用い、実施例1の第2及び第3の工程と同様にして、実施例4の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の950MHzにおけるμr’、μr”、tanδμ、εr’、εr”及びtanδεを、実施例1と同様にして測定した。その結果、μr’は10.6、μr”は4.03、tanδμは0.379、εr’は26.3、εr”は11.7、tanδεは0.445であった。
この複合磁性体中の磁性粉体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体50個の平均の厚みは0.3μm、平均長径は2.0μmであり、個々のアスペクト比の平均値は6.7であった。
また、この走査型電子顕微鏡像(SEM像)の視野内では、扁平状の磁性粉体しか認められず、球状の磁性粒子や、厚み、長さまたはアスペクト比が上記の扁平状の磁性粉体から外れた磁性粒子は認められなかった。
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例4の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を用いた以外は全く同様にして、実施例2のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、108cmであった。
[実施例5]
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
一軸回転体の径方向の外周端付近の流速が12m/秒以上となるような回転数で攪拌した以外は、実施例1の第1の工程と同様にして、実施例5の磁性粉体を得た。
得られた磁性粉体は、平均厚みが0.3μm、平均長径が1.4μm、平均アスペクト比が4.7の扁平状であった。
「第2及び第3の工程」
この扁平状の磁性粉体を用い、実施例1の第2及び第3の工程と同様にして、実施例5の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の950MHzにおけるμr’、μr”、tanδμ、εr’、εr”及びtanδεを、実施例1と同様にして測定した。その結果、μr’は8.8、μr”は2.5、tanδμは0.287、εr’は25.7、εr”は9.3、tanδεは0.360であった。
この複合磁性体中の磁性粉体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体50個の平均の厚みは0.3μm、平均長径は1.4μmであり、個々のアスペクト比の平均値は4.7であった。
また、この走査型電子顕微鏡像(SEM像)の視野内では、扁平状の磁性粉体しか認められず、球状の磁性粒子や、厚み、長さまたはアスペクト比が上記の扁平状の磁性粉体から外れた磁性粒子は認められなかった。
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例5の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を用いた以外は全く同様にして、実施例5のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、158cmであった。
[実施例6]
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
一軸回転体の径方向の外周端付近の流速が8m/秒以上となるような回転数で攪拌した以外は、実施例1の第1の工程と同様にして、実施例6の磁性粉体を得た。
得られた磁性粉体は、平均厚みが0.3μm、平均長径が0.5μm、平均アスペクト比が1.7の扁平状であった。
「第2及び第3の工程」
この扁平状の磁性粉体を用い、実施例1の第2及び第3の工程と同様にして、実施例6の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の950MHzにおけるμr’、μr”、tanδμ、εr’、εr”及びtanδεを、実施例1と同様にして測定した。その結果、μr’は3.4、μr”は1.2、tanδμは0.34、εr’は15.1、εr”は1.9、tanδεは0.130であった。
この複合磁性体中の磁性粉体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体50個の平均の厚みは0.3μm、平均長径は0.5μmであり、個々のアスペクト比の平均値は1.7であった。
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例6の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を用いた以外は全く同様にして、実施例6のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、77cmであった。
[比較例1]
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、市販の磁性シート(FX2930、森宮電機株式会社製)(縦60mm、横30mm、厚み0.5mm)を用いた以外は全く同様にして、比較例1のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、28cmであった。
この磁性シートの500MHzから3GHzにおけるμr’、μr”、tanδμをマテリアルアナライザーE4991A型(Agilent Technologies社製)にて測定したところ、950MHzにおけるμr’は12.7、μr”は12.6、tanδμは0.997であった。
[比較例2]
ICチップが接続されたダイポールアンテナを有する基体シートのみを、比較例3のRFIDタグとした。実施例1と同様にして通信距離を測定したが、通信距離を0cmにしても、通信しなかった。
なお、比較例3のRFIDタグのみで金属板を重ねずに測定した通信距離は83cmであり、実施例1、2の通信距離は、比較例2のRFIDタグのみの通信距離をも大きく上回る通信距離であった。
以上の実施例の結果から、複合磁性体において、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは1以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下とすることで、RFIDタグの通信距離を大きく向上させることができることが確認された。
また、複合磁性体を構成する扁平状の磁性粉体のアスペクト比を適切な範囲に制御することで、RFIDタグの通信距離をさらに長くすることができる。具体的には、アスペクト比が3.5(実施例1)、4.7(実施例5)である磁性粉体を用いたRFIDタグは、アスペクト比が1.7(実施例6)、6.7(実施例4)である磁性粉体を用いたRFIDタグよりも顕著に長い通信距離を実現した。これらの結果から、アスペクト比と通信距離からなるデータ列を内挿して両者の関係を推定すると、RFIDタグにおいて150cm以上の通信距離が得られる磁性粉体のアスペクト比は、3以上5未満の範囲である。
また、実施例1〜6の結果から、複合磁性体の厚みは1mmあれば十分に長い通信距離を得ることができる。さらに実施例1〜3の結果から、複合磁性体を薄くするほどRFIDタグの通信距離が短くなるが、0.2mm厚でも18cmの通信距離が得られていることから、0.01mm厚の複合磁性体のシートであっても数cmの通信距離は得られるものと推定される。
また、市販の磁性シートを用いた比較例1のRFIDタグと、実施例1〜3のRFIDタグとの比較から、実施例の複合磁性体のシートは、市販の磁性シートの半分程度の厚みで同等の性能を発揮することがわかる。すなわち、実施例の複合磁性体を用いることで、RFIDタグの薄型化を実現することができる。
1 開放容器
2 球状の磁性粒子
3 スラリー
4 分散媒体
5 一軸回転体
5a 外周端
11 密閉容器

Claims (7)

  1. 磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、
    前記磁性粉体は扁平状であり、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは1以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下であることを特徴とする複合磁性体。
  2. 磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、
    前記磁性粉体は扁平状であり、900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは0.5以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下であることを特徴とする複合磁性体。
  3. 前記磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は2以上であることを特徴とする請求項1または2記載の複合磁性体。
  4. 前記磁性粉体は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子同士を変形及び融着してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の複合磁性体。
  5. 厚みが0.01mm以上かつ2mm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の複合磁性体。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項記載の複合磁性体を装荷してなり、
    500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域の電波を、送信、受信または送受信することを特徴とするアンテナ。
  7. 請求項1ないし5のいずれか1項記載の複合磁性体を備えてなることを特徴とするRFIDタグ。
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