JP2014146698A - 複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びにrfidタグ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、前記磁性粉体は扁平状であり、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは1以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下である。
【選択図】図1
Description
そこでRFIDタグと金属物品との間にプラスチックやゴムなどのスペーサーによって一定の距離を設け、金属の影響を抑える方法が用いられていた。
前記磁性粉体は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子同士を変形及び融着してなることが好ましい。
また本発明の複合磁性体では、厚みが0.01mm以上かつ2mm以下であることが好ましい。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、この磁性粉体は扁平状であり、次の(1)の磁気特性を有する。
(1)500MHzから3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが1以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下である。
(2)900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμが0.5以下、複素誘電率の実部εr’が50以下、複素誘電率の損失正接tanδεが1以下である。
ここで、複素透磁率の実部μr’、複素透磁率の損失正接tanδμ、複素誘電率の実部εr’及び複素誘電率の損失正接tanδεを上記の範囲に限定した理由は、これらの範囲が、複合磁性体において内部を通過する磁力線のエネルギーの減衰を抑制することができる範囲だからである。
μr’が増加するとtanδμも増加するため、tanδμの上限値の兼ね合いから、μr’の上限値は50程度であり、εr’の下限値は実用上1.5程度である。
この複合磁性体の厚みは特に限定されないが、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域にてRFIDタグに使用された場合に、薄くて長い通信距離を保てるRFIDタグとするために、0.01mm以上かつ2mm以下にすることが好ましく、0.01mm以上かつ1mm以下にすることがより好ましい。
なお、上記のμr’、εr’、tanδμ及びtanδεはマテリアルアナライザーにて測定した値であるが、測定装置としては、上記の各値がマテリアルアナライザーと同等の精度で測定することのできる装置であればよく、マテリアルアナライザーに限定されない。
本実施形態の磁性粉体を構成する材料としては、磁性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)等の強磁性金属、モリブデン(Mo)等の常磁性金属のうちいずれか1種からなる金属、または、これらのうち少なくとも1種以上を含む合金を用いることができる。
これらの金属または合金は、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)等を含んでいてもよい。
二元素系合金としては、保磁力が70エルステッド(Oe)以下の軟磁性を示すパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金等が挙げられる。
三元素系合金としては、スーパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni−Mo合金、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Si合金等が挙げられる。
ここで、上記の金属元素の含有率を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の含有率が0.1質量%未満では、後述する球状の磁性粒子を扁平状にさせるための十分な塑性変形能を付与することができず、一方、含有率が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、この扁平状の磁性粉体全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
また、この磁性粉体の平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上かつ10μm以下である。
この磁性粉体の平均厚み及び平均長径は、複数個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径、例えば、100個以上の磁性粉体、好ましくは500個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径を測定し、厚み及び長径各々の平均値を算出することで求めることができる。
また、平均厚みが0.01μm未満であると、後述する製造上困難であり、取り扱いも難しくなるので好ましくなく、また、平均厚みが10μmを超えると、粒子同士の融着に起因する厚みのばらつきが生じ、tanδμ、tanδεが増加するので好ましくない。
一方、この磁性粉体の平均長径が20μmを超えると、絶縁材料中での粒子の分散が不安定になり易くなり、さらには、磁性粉体の間隙が小さくなり過ぎる等により、磁性粉体間の間隙に絶縁材料が進入し難くなる。その結果、気孔が生成され易くなり、所望のμr’が得られない虞があるので好ましくない。
ここで、この磁性粉体の形状が、平均アスペクト比(長さ/厚み)が2以上の扁平状が好ましい理由は、次のとおりである。
磁性粉体における反磁界の大きさは、粉体の形状に依存する。例えば、磁性粉体が球状の場合には、反磁界が等方的に存在するので、得られる透磁率も等方的となり、高周波領域で優れた磁気特性を得ることは困難である。一方、磁性粉体が扁平状の場合には、扁平状の一面に平行な方向の反磁界が、扁平状の垂直方向の反磁界に対して格段に小さくなり、したがって、得られるμr’が大きくなるので、好ましい。
さらに、平均アスペクト比が20を超えると、磁性粉体の形状が扁平すぎることで、磁性体同士の間が狭くなり、この間に絶縁性材料が進入し難い空間が形成され易くなる。その結果、複合磁性体中に気泡が生じ易くなり、この気泡の存在によりμr’が低下するので好ましくない。
また、アスペクト比が5未満の場合には、透磁率の値はある程度高くかつtanδμが小さくなるので、通信距離をより長くする複合磁性体が得られるため好ましい。
したがって、平均アスペクト比は2以上かつ20以下であることが好ましく、3以上かつ15以下であることがより好ましく、3以上かつ5未満であることがさらに好ましい。
この過程を経ることにより、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子は、平均厚みが0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.05μm以上かつ20μm以下、平均アスペクト比(長さ/厚み)が2以上の扁平状の磁性粉体となる。
本実施形態の絶縁材料としては、機械的強度が高く、吸湿性が低く、形状加工性に優れていることが好ましい。上記絶縁材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整して実施すればよい。
本実施形態の複合磁性体の製造方法は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて機械的応力(機械的なせん断エネルギー)を加えながら撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えている。
(第1の工程)
まず、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子を、界面活性剤を含む溶液中に分散させてスラリーとする。
球状の磁性粒子の作製方法は、特に限定されず、液相還元法、アトマイズ法等の公知の方法で合成したものを用いることができるが、特に、平均粒子径が3μm以下の球状粒子を合成することを考慮すると、液相還元法を用いることが好ましい。
この界面活性剤を溶解させる溶媒としては、磁性粒子に含まれる金属元素の酸化を防止する必要があることから、有機溶媒が好ましく、特に、キシレン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の非極性有機溶媒が好ましい。
このように、分散媒体の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する個数が増加し、衝突回数も多くなり、変形及び融着性も向上する。その一方で、分散媒体の平均粒径が小さすぎると、この分散媒体をスラリーから分離することが困難となる。したがって、分散媒体の平均粒径は、少なくとも0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上であることが必要である。
また、分散媒体の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することから、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
この密閉容器は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
なお、上記の密閉可能な容器に、スラリーを容器内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリーを密閉容器内に循環するようにしてもかまわない。この場合、予め分散媒体を密閉容器内に収納しておき、球状の磁性粒子と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリーを流入口から投入して容器内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリーを再度密閉容器内へ投入するようにすればよい。
ここで、スラリー及び分散媒体を、密閉容器内に隙間なく充填する理由は、次のとおりである。
この図では、一軸回転体5が高速で回転すると、スラリー3及び分散媒体4の液面は、遠心力により中心軸近傍が低く、周縁部が高いすり鉢状となる。
一軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、すり鉢状の空間に逃げていくので、開放容器1内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に伝搬される機械的応力は不均一なものとなり、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく要因となる。
また、すり鉢状の空間の底部近傍(中心軸近傍)で扁平状となった磁性粉体は、分散媒体と共にすり鉢状の空間に放出されて不規則な衝撃を受けることとなり、割れや欠け等が生じる虞がある。このような磁性粉体の厚みのばらつきや割れや欠けは、tanδμ、tanδεが増加する要因となっている。
この図では、一軸回転体5が高速で回転しても、密閉容器11内が球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4により満たされているので、開放容器1に見られるようなすり鉢状の空間が生じる虞は無い。したがって、一軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、密閉容器11内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に均一に伝搬され、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく虞は無い。また、扁平状となった磁性粉体は、不規則な衝撃を受けることもなく、割れや欠け等が生じる虞もない。
一方、外周端5a付近の流速が15m/sを超えると、エネルギーが大きすぎるために平板状になった粒子を破壊してしまう虞があるので、外周端5a付近の流速は15m/s以下であることが好ましい。
このように、実質的に球状の磁性粒子2が残留しなくなる密閉容器11の体積は、1L以上が好ましく、より好ましくは5L以上である。
以上により、球状の磁性粒子同士は、一軸回転体5により加えられた機械的応力により変形及び融着し、扁平状の磁性粉体となる。
分離方法は、扁平状の磁性粉体を作製した後のスラリーから溶媒を除去することができれば特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥、フリーズドライ等が挙げられるが、乾燥効率の点で真空乾燥が好ましい。また、乾燥効率を高めるために、乾燥工程の前に、固液分離等の手法によりある程度の溶媒を除去してもよい。固液分離の方法としては、フィルタープレス、吸引ろ過等のろ過操作、あるいはデカンター、遠心分離機による遠心分離操作等、通常の方法を用いればよい。
上述の扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合してスラリーとし、このスラリーを成形材料とする。
ここで、樹脂としては、液状の樹脂が好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
硬化剤としては、上記の熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ基同士の縮合反応を促進させて、複合磁性体の成形時における硬化不良による気孔の発生を防止する点で第3アミンが好ましい。
硬化剤の添加量としては、官能基の縮合反応を促進させる点を考慮すると、熱硬化性樹脂と第3アミンとの合計の質量に対して0.5質量%以上かつ3質量%以下、添加させればよい。
絶縁材料として熱可塑性樹脂を用いる場合、硬化剤は不要である。
ここで、粘度が0.1Pa・s未満の場合には、流動性が大きくなりすぎて乾燥工程での生産性が悪くなり、一方、粘度が106Pa・sを超えると、粘性が高すぎて磁性粉体の配向が起こり難くなり、その結果、複合磁性体中における磁性粉体の配向性が低下してしまうので、好ましくない。
上記の成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する。
成形方法としては、公知の成形方法、例えば、プレス法、ドクターブレード法、射出成形法等が好適である。この成形方法を用いて任意の形状のシート状またはフィルム状に成形することにより、ドライフィルムを作製することができる。
複合磁性体が積層体の場合には、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形することが望ましい。
上記の成形材料は、粘度調整を行う必要がある場合には、溶媒を揮発させて濃縮後に成形を行う。必要があれば、成形材料を基材上に塗布した後、乾燥前に磁場の配向により扁平状の磁性粉体をシートまたはフィルムと平行な方向に配向する配向処理を行えばよい。
熱処理または焼成の条件としては、還元性雰囲気中または真空中にて、熱処理またはホットプレスが好適である。これにより、本実施形態の複合磁性体が得られる。
また、プレス装置で成形体に圧力を加える際に、絶縁材料として樹脂を用いる場合には、効果的に気孔を減少させるために樹脂の軟化温度以上かつ硬化開始温度以下の温度範囲で圧力を加えることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂を使用した場合には、樹脂の軟化温度以上の温度で圧力を加えて、樹脂同士を融着させる必要がある。
プレス時の圧力は、成形材料の種類に応じて適宜調整すればよいが、5MPa〜20MPa程度の圧力を加えるのが好ましい。
加熱混練方法としては、公知の方法、例えば、加圧ニーダー、2軸式ニーダー、ブラストミル等で混合分散した混練物を作製することができる。この混練物の成形方法としては、公知の方法、例えば、加熱プレス成形、押出成形、射出成形等で成形体を作製することができる。これらの方法の中でも、扁平状の磁性粉体を樹脂中に配向させるためには、平面状に引き伸ばす加熱プレス成形が好ましい。引き伸ばす際の粘度調整のために、可塑剤の添加、扁平状の磁性粉体の表面処理を行うことも好ましい。必要があれば、加熱して流動性を維持した状態で、磁場の配向により扁平状の磁性粉体を配向する処理を行うことが好ましい。
本実施形態のアンテナは、上記の複合磁性体をアンテナ導体に装荷し、かつ500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信するアンテナである。
このアンテナとしては、RFIDタグに用いられるアンテナであればよく、特に限定されず、例えばダイポールアンテナ等が挙げられる。
このアンテナに上記の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、公知の方法で装荷させればよい。
ここで、「装荷」とは、アンテナ導体に複合磁性体を接触あるいは近づけることである。
本実施形態のRFIDタグは、上記の複合磁性体を備えている。
上記の複合磁性体は、公知の形態及び方法によりRFIDタグに実装させればよい。
このRFIDタグの構造としては、例えば、裏面シート、アンテナとICチップを含む基体シート、上記複合磁性体、及び表面シートが順次積層され、熱圧着または接着剤等によって相互に固着させた構造があげられる。
本実施形態の通信装置は、上記の複合磁性体を備えている。
通信装置は、RFIDタグを内蔵させて使用できるものであれば特に限定されず、例えば、携帯電話機、携帯用情報端末、多機能携帯用情報端末等の情報端末機器等が挙げられる。上記の複合磁性体を通信装置に配設させる方法は特に限定されず、公知の方法により配設させればよい。例えば、アンテナを有するRFIDタグと金属部材との間に上記複合磁性体を設けた構造が挙げられる。
上記の複合磁性体の厚みが0.01mm以上かつ2mm以下である場合には、薄くて通信距離が長いRFIDタグを得ることができる。
また、アンテナを金属部材から離間させるためのスペーサーを用いなくても通信距離が十分長いため、スペーサーを備えた従来のRFIDタグと比較して厚みを薄くすることができる。
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平均粒径0.3μmの球状の磁性粒子200gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマーを溶解したキシレン800gに混合し、スラリーを作製した。
次いで、密閉容器として、図2に示すような循環密閉型で容器体積が5Lのサンドミル(ウルトラアペックスミルUAM−5(寿工業社製))を用い、この密閉容器内に、分散媒体として平均粒径50μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入し、密閉容器内を満たした。
次いで、得られた扁平状の磁性粉体を乾燥して溶媒を散逸させた後、この扁平状の磁性粉体の所定量を、ポリスチレン樹脂をトルエンに溶解して得られる樹脂溶液に添加して撹拌混合した。
このようにして得られた混合物を、ドクターブレード法により100mm角、厚み600μmの正方形状のフィルムに成形した。
次いで、このフィルムを大気中、80℃にて20分間乾燥し、厚みが100μmのドライフィルムとし、その後、このドライフィルムを所定の枚数重ねて、減圧プレス装置にてプレス焼成を行った。プレス条件は、常圧のまま90℃まで20分で昇温させ、その後2MPaの圧力を加えて10分間保持し、実施例1の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
また、この走査型電子顕微鏡像(SEM像)の視野内では、扁平状の磁性粉体しか認められず、球状の磁性粒子や、厚み、長さまたはアスペクト比が、この扁平状の磁性粉体から外れた磁性粒子は、実質的に認められなかった。
ICチップが接続されたダイポールアンテナを有する基体シート、実施例1の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を順次積層させて固着させることにより、実施例1のRFIDタグを得た。
RFIDタグの複合磁性体側に金属板を重ね合わせた状態で、リーダ/ライタ(Impinj社製、Speedway Revolution)及びアンテナ(Yeon Technology社製、YAP-100LR)を用いて通信距離(電力伝送及び信号通信が可能な距離)を測定した。その結果、実施例1のRFIDタグの通信距離は216cmであった。
[複合磁性体の作製]
実施例1の複合磁性体の作製の第3工程において、積層させるドライフィルムの枚数を減らしてプレス焼成を行った以外は実施例1と同様にして、実施例2の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは0.2mmであった。
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例2(縦60mm、横30mm、厚み0.2mm)の複合磁性体を用いた以外は全く同様にして、実施例2のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、18cmであった。
[複合磁性体の作製]
実施例1の複合磁性体の作製の第3工程において、積層させるドライフィルムの枚数を減らしてプレス焼成を行った以外は実施例1と同様にして、実施例3の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは0.5mmであった。
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例3(縦60mm、横30mm、厚み0.5mm)の複合磁性体を用いた以外は全く同様にして、実施例4のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、77cmであった。
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平均粒径0.3μmの球状の磁性粒子の替わりに、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%のNi−Fe−Zn合金からなる平均粒径0.25μmの球状の磁性粒子を用いた以外は、実施例1の第1の工程と同様にして、実施例4の磁性粉体を得た。
得られた磁性粉体は、平均厚みが0.3μm、平均長径が2.0μm、平均アスペクト比が6.7の扁平状であった。
この扁平状の磁性粉体を用い、実施例1の第2及び第3の工程と同様にして、実施例4の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の950MHzにおけるμr’、μr”、tanδμ、εr’、εr”及びtanδεを、実施例1と同様にして測定した。その結果、μr’は10.6、μr”は4.03、tanδμは0.379、εr’は26.3、εr”は11.7、tanδεは0.445であった。
また、この走査型電子顕微鏡像(SEM像)の視野内では、扁平状の磁性粉体しか認められず、球状の磁性粒子や、厚み、長さまたはアスペクト比が上記の扁平状の磁性粉体から外れた磁性粒子は認められなかった。
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例4の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を用いた以外は全く同様にして、実施例2のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、108cmであった。
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
一軸回転体の径方向の外周端付近の流速が12m/秒以上となるような回転数で攪拌した以外は、実施例1の第1の工程と同様にして、実施例5の磁性粉体を得た。
得られた磁性粉体は、平均厚みが0.3μm、平均長径が1.4μm、平均アスペクト比が4.7の扁平状であった。
この扁平状の磁性粉体を用い、実施例1の第2及び第3の工程と同様にして、実施例5の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の950MHzにおけるμr’、μr”、tanδμ、εr’、εr”及びtanδεを、実施例1と同様にして測定した。その結果、μr’は8.8、μr”は2.5、tanδμは0.287、εr’は25.7、εr”は9.3、tanδεは0.360であった。
また、この走査型電子顕微鏡像(SEM像)の視野内では、扁平状の磁性粉体しか認められず、球状の磁性粒子や、厚み、長さまたはアスペクト比が上記の扁平状の磁性粉体から外れた磁性粒子は認められなかった。
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例5の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を用いた以外は全く同様にして、実施例5のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、158cmであった。
[複合磁性体の作製]
「第1の工程」
一軸回転体の径方向の外周端付近の流速が8m/秒以上となるような回転数で攪拌した以外は、実施例1の第1の工程と同様にして、実施例6の磁性粉体を得た。
得られた磁性粉体は、平均厚みが0.3μm、平均長径が0.5μm、平均アスペクト比が1.7の扁平状であった。
この扁平状の磁性粉体を用い、実施例1の第2及び第3の工程と同様にして、実施例6の複合磁性体を得た。この複合磁性体の厚みは1mmであった。
この複合磁性体の950MHzにおけるμr’、μr”、tanδμ、εr’、εr”及びtanδεを、実施例1と同様にして測定した。その結果、μr’は3.4、μr”は1.2、tanδμは0.34、εr’は15.1、εr”は1.9、tanδεは0.130であった。
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、実施例6の複合磁性体(縦60mm、横30mm、厚み1mm)を用いた以外は全く同様にして、実施例6のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、77cmであった。
[RFIDタグの作製]
実施例1のRFIDタグの作製において、実施例1の複合磁性体を用いる替わりに、市販の磁性シート(FX2930、森宮電機株式会社製)(縦60mm、横30mm、厚み0.5mm)を用いた以外は全く同様にして、比較例1のRFIDタグを得た。実施例1と同様にして通信距離を測定した結果、28cmであった。
ICチップが接続されたダイポールアンテナを有する基体シートのみを、比較例3のRFIDタグとした。実施例1と同様にして通信距離を測定したが、通信距離を0cmにしても、通信しなかった。
なお、比較例3のRFIDタグのみで金属板を重ねずに測定した通信距離は83cmであり、実施例1、2の通信距離は、比較例2のRFIDタグのみの通信距離をも大きく上回る通信距離であった。
2 球状の磁性粒子
3 スラリー
4 分散媒体
5 一軸回転体
5a 外周端
11 密閉容器
Claims (7)
- 磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、
前記磁性粉体は扁平状であり、500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは1以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下であることを特徴とする複合磁性体。 - 磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、
前記磁性粉体は扁平状であり、900MHzから1GHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1.5以上、複素透磁率の損失正接tanδμは0.5以下、複素誘電率の実部εr’は50以下、複素誘電率の損失正接tanδεは1以下であることを特徴とする複合磁性体。 - 前記磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は2以上であることを特徴とする請求項1または2記載の複合磁性体。
- 前記磁性粉体は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子同士を変形及び融着してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の複合磁性体。
- 厚みが0.01mm以上かつ2mm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の複合磁性体。
- 請求項1ないし5のいずれか1項記載の複合磁性体を装荷してなり、
500MHzを超えて3GHzまでの周波数帯域の電波を、送信、受信または送受信することを特徴とするアンテナ。 - 請求項1ないし5のいずれか1項記載の複合磁性体を備えてなることを特徴とするRFIDタグ。
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