第1の実施の形態.
まず、本発明の第1の実施の形態における定着装置500を備えた画像形成装置1について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置1の構成を示す図である。
<画像形成装置の構成>
図1に示す画像形成装置1は、電子写真法を用いてカラー画像を形成するプリンタ(電子写真プリンタ)であり、給紙トレイ(媒体収容部)100、媒体繰出し部200、媒体搬送部300、画像形成部400および定着装置(定着部)500を備えている。
給紙トレイ100は、印刷用紙等の媒体101を収容するものであり、画像形成装置1の本体下部に着脱可能に装着されている。給紙トレイ100の内部には、媒体101を載置する媒体戴置板102が、媒体101の幅方向に延在する支軸102aを中心として回動可能に設けられている。
媒体戴置板102の下側には、回動軸103aにより回動可能に支持されたリフトアップレバー103が設けられている。回動軸103aは、画像形成装置1の本体内に設けられたモータ104と連結可能に構成されている。回動軸103aは、給紙トレイ100が画像形成装置1の本体に装着されることによりモータ104と連結され、モータ104の駆動力によりリフトアップレバー103が回動し、リフトアップレバー103の先端部で媒体載置板102を持ち上げ、これにより媒体載置板102が支軸102aを中心として回動(昇降)するようになっている。
給紙トレイ100には、媒体戴置板102上の媒体101が所定の高さまで上昇したことを検知する上昇検知部105が設けられている。上昇検知部105により媒体101が検知された時点でモータ104の回転を停止することで、媒体載置板102の上昇が停止する。給紙トレイ100には、また、媒体101の積載位置を規制するするガイド部材(図示せず)が設けられている。ガイド部材は、媒体の繰出し方向の後端部(図中左端部)と、幅方向の側端部とをガイドする。
給紙トレイ100に隣接して、給紙トレイ100に収容された媒体101を一枚ずつ繰出す媒体繰出し部200が設けられている。媒体繰出し部200は、媒体載置板102上に積載された媒体101の上面に圧接するように設けられたピックアップローラ202と、このピックアップローラ202の繰り出し側(図中右側)に設けられたフィードローラ203およびリタードローラ204からなるローラ対とを有している。ピックアップローラ202、フィードローラ203およびリタードローラ204により、媒体載置板102上に積載された媒体101が1枚ずつ繰出される。
媒体繰出し部200は、また、媒体載置板102上の媒体101の有無を検知する媒体有無検知部205と、媒体101の残量を検知する媒体残量検知部206とを有している。
媒体繰出し部200の繰出し側(図中右上側)には、繰出された媒体101を、画像形成部400まで搬送する媒体搬送部300が設けられている。媒体搬送部300は、媒体101の搬送路に沿って、搬送ローラ対302と、搬送ローラ対304とを備えている。
また、媒体101の搬送路に沿って搬送ローラ対302の上流側には、搬送ローラ対302の駆動タイミングを決定するための媒体センサ301が設けられている。搬送ローラ対302は、媒体センサ301による通過検知から所定時間だけ遅れて回転を開始する。このように回転開始のタイミングを遅らせることで、媒体101を搬送ローラ対302の圧接部に押し込み、媒体101の斜行を矯正する。
さらに、搬送ローラ対304の上流側には、搬送ローラ対304の駆動タイミングを決定するための媒体センサ303が設けられている。搬送ローラ対304は、媒体センサ303による通過検知により直ちに回転を開始し、媒体101を停止させずに送り出す。搬送ローラ対304の下流側には、後述する露光ヘッド433の露光タイミングを決定するため書き込みセンサ305が設けられている。
画像形成部400は、媒体101の搬送路に沿って、ここでは右から左に直列に配列された4つの現像剤像形成部(プロセスユニット)としてのトナー像形成部430K,430Y,430M,430Cと、トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cにより形成されたトナー像を媒体101の表面に転写する転写部460とを有している。
トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cは、それぞれブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのトナー(現像剤)によりトナー像を形成する。トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cは、使用するトナーを除いて共通の構成を有しているため、「トナー像形成部430」と総称して説明する。
トナー像形成部430は、トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム431を有している。感光体ドラム(OPCドラム)431は、導電性の基体の表面に感光層(電荷発生層および電荷輸送層)を設けたドラム状の部材であり、図中時計回りに回転する。
感光体ドラム431の周囲には、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ432と、一様に帯電した感光体ドラム431の表面に光を照射して静電潜像を形成する例えばLED(発光ダイオード)アレイを有する露光装置としての露光ヘッド433と、静電潜像をトナーにより現像する現像剤担持体としての現像ローラ434と、感光体ドラム431の表面に残存したトナーを掻き取るクリーニング部材436とが配置されている。
また、各トナー像形成部430には、現像ローラ434にトナーを供給する供給部材としての供給ローラ435と、この供給ローラ435にトナーを供給する現像剤供給部としてのトナー供給部437(例えばトナーカートリッジ)が備えられている。
転写部460は、媒体101を静電気力により吸着保持して搬送する無端状の転写ベルト461と、転写ベルト461を駆動するためのベルト駆動ローラ462と、このベルト駆動ローラ462と対をなし、転写ベルト461に張力を付与するテンションローラ463とを備えている。
転写部460は、さらに、トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cの各感光体ドラム431に対向配置された4つの転写ローラ464を備えている。各転写ローラ464には、感光体ドラム431に形成されたトナー像をクーロン力により媒体101に転写するための転写電圧が印可される。
転写部460は、さらに、転写ベルト461に付着したトナーを掻き取るクリーニング部材としてのクリーニングブレード465と、クリーニングブレード465により掻き落とされたトナーを収容する廃現像剤収容器としてのトナーボックス466とを備えている。
トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cと転写部460とは、互いに同期して制御され、各感光体ドラム431の表面に形成されたトナー像を、転写ベルト461に静電吸着された媒体101の表面に転写する。
媒体101の搬送路に沿って、画像形成部400(トナー像形成部430および転写部460)の下流側には、定着装置500が設けられている。定着装置500は、媒体101上のトナー像に熱と圧力を加えて、トナー像を融解し、媒体101に定着させるものである。定着装置500の構成については、後述する。
媒体101の搬送路に沿って定着装置500の下流側には、定着が完了した媒体101を排出するための排出ローラ群504と、排出された媒体101を載置するためのスタッカ部505とが設けられている。
図1において、媒体101が定着装置500を通過するときの搬送方向(媒体101の移動方向)を、X方向とする。また、X方向に搬送される媒体101の幅方向を、Y方向とする。Y方向は、感光体ドラム431の回転軸と平行である。また、X方向とY方向に直交する方向を、Z方向とする。
X方向については、媒体101が定着装置500を通過するときの搬送方向を+X方向とし、その反対方向を−X方向とする。Y方向については、+X方向を向いて左手方向を+Y方向とし、右手方向を−Y方向とする。Z方向については、図1の上方向を+Z方向とし、下方向を−Z方向とする。
<定着装置の構成>
次に、本実施の形態1における定着装置500の構成について説明する。図2および図3は、第1の実施の形態における定着装置500の構成を示す断面図および正面図である。図4は、定着装置500の要部を示す斜視図である。図5は、定着装置500のベルト510,520を装着していない状態を示す斜視図である。図6は、定着装置500の一部を拡大して示す斜視図である。
図2に示すように、定着装置500は、ニップ部Nを形成する第1の無端状ベルトとしての定着ベルト510と、第2の無端状ベルトとしての加圧ベルト520とを備える。
定着装置500は、さらに、定着ベルト510の内周面側に設けられた第1の熱源としてのヒータ512、加圧ベルト520の内周面側に設けられた第2の熱源としてのヒータ522、定着ベルト510の内周面側に設けられた第1のローラとしての駆動ローラ511、加圧ベルト520の内周面側に設けられた第2のローラとしての加圧ローラ521、駆動ローラ511とヒータ512との間に設けられた第1の反射部材としての反射板515、および、加圧ローラ521とヒータ522との間に設けられた第2の反射部材としての反射板525を備える。
定着ベルト510の内周面側には、定着ベルト510を駆動させる第1のローラとしての駆動ローラ511が設けられている。定着ベルト510は、駆動ローラ511の周囲に、回転可能に配設されている。但し、定着ベルト510は、張架されているのではなく、張力が作用しないフリーの状態で配設されている。駆動ローラ511は、その軸方向がY方向と平行になるように配置されている。
駆動ローラ511は、ニップ部Nから駆動ローラ511の中心までの距離Dが、ニップ部Nから定着ベルト510の中心までの距離Cよりも短くなるように配置されている。駆動ローラ511は、定着装置500の左右に配置されたブラケット530L,530R(図3および図4)に軸受516を介して回転可能に支持されている。
なお、定着ベルト510の中心とは、次のように定義する。すなわち、定着ベルト510の内周面においてニップ部Nから最も離れたベルト内周面の位置をPとし、ニップ部Nから位置Pまでの距離をBとすると、定着ベルト510の中心は、ニップ部Nの垂直方向(ここではZ方向)にニップ部NからB/2だけ離れた位置にあるものとする。
駆動ローラ511は、回転軸511c(図3)を有し、その端部には、ギア511g(図3)が固定されている。ギア511gには、後述する定着モータ129(図12)の回転が伝達され、これにより駆動ローラ511が所定の方向(図2における時計回り)に回転する。駆動ローラ511の回転により、定着ベルト510は、図2に矢印R1で示す方向に回転する。
定着ベルト510の内周面側には、第1の熱源としてのヒータ512が配置されている。ヒータ512は、例えばハロゲンヒータであるが、これに限定されるものではなく、例えば誘導加熱体等を用いてもよい。
ヒータ512は、駆動ローラ511の軸方向(Y方向)に長い形状、例えば略円筒形状を有している。但し、このような形状に限定されるものではない。ヒータ512は、長手方向の両端において、ブラケット530L,530Rのそれぞれに設けられたヒータ支持部535L,535R(図3)により支持されている。
ヒータ512と駆動ローラ511との間に、第1の反射部材としての反射板515が配置されている。反射板515は、ヒータ512と対向する側に反射面(反射膜、反射層)を有している。なお、反射板515の代わりに、ハロゲンヒータに反射膜を備えた反射膜付きハロゲンヒータを用いてもよい。
加圧ベルト520の内周面側には、加圧ベルト520を駆動させる第2のローラとしての加圧ローラ521が設けられている。加圧ベルト520は、加圧ローラ521の周囲に、回転可能に配設されている。但し、加圧ベルト520は、張架されているのではなく、張力が作用しないフリーの状態で配設されている。
加圧ローラ521は、ニップ部Nから加圧ローラ521の中心までの距離が、ニップ部Nから加圧ベルト520の中心までの距離よりも短くなるように配置されている。
加圧ローラ521は、定着装置500の加圧ローラレバー531L,531R(図3および図4)に、それぞれ軸受526(図6)を介して回転可能に取り付けられている。加圧ローラレバー531L,531Rは、ブラケット530L,530Rに、回動可能に取り付けられている。ここでは、加圧ローラレバー531L,531Rに設けた穴531a(図2)に、ブラケット530L,530Rに設けた円柱状のポスト530aを嵌合させ、各ポスト530aにeリング530eを嵌合させている。
さらに、加圧ローラレバー531L,531Rは、付勢部材としてのスプリング532L,532R(図3および図4)によって、ポスト530aを中心として上方に回動するように付勢されている。スプリング532L,532Rの付勢力により、加圧ローラ521は駆動ローラ511に対して、所定の押圧力で押圧される。
これにより、駆動ローラ511と加圧ローラ521とに挟まれた定着ベルト510と加圧ベルト520の間に、ニップ部Nが形成される。駆動ローラ511の回転により定着ベルト510が矢印R1で示す方向に回転すると、定着ベルト510に追従して、加圧ベルト520が矢印R2で示す方向に回転する。
加圧ベルト520の内周面側には、第2の熱源としてのヒータ522が配置されている。ヒータ522は、例えばハロゲンヒータであるが、これに限定されるものではなく、例えば誘導加熱体等を用いてもよい。
ヒータ522は、加圧ローラ521の軸方向に長い形状、例えば略円筒形状を有している。但し、このような形状に限定されるものではない。ヒータ522は、長手方向の両端において、加圧ローラレバー531L,531Rのそれぞれに設けられたヒータ支持部536(図5、図6)により支持されている。
ヒータ522と加圧ローラ521との間に、第2の反射部材としての反射板525が配置されている。反射板525は、ヒータ522と対向する側に反射面(反射膜、反射層)を有している。なお、反射板525の代わりに、ハロゲンヒータに反射膜を備えた反射膜付きハロゲンヒータを用いてもよい。
図7(A)は、第1の実施の形態における駆動ローラ511および加圧ローラ521の構成を示す斜視図である。図7(B)は、駆動ローラ511および加圧ローラ521の断面構造を示す図である。図7(B)は、図7(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に相当する。
駆動ローラ511は、中空のローラである。駆動ローラ511は、図7(B)に示すように、芯金511aの外周面に弾性層511bを被覆することによって形成される。芯金511aは、例えば、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)等の鉄で形成される。芯金511aは、STKMに限らず、例えば、アルミニウム、無垢の快削鋼(SUM)およびステンレス鋼(SUS)等の金属で形成してもよい。
弾性層511bは、耐熱性を有する樹脂、例えばシリコーンゴムで形成される。ここでは、ゴム硬度がアスカーC硬度75〜85°のソリッドタイプ(発泡性でないもの)のシリコーンゴムを用いる。
加圧ローラ521は、駆動ローラ511と同様の構成を有している。すなわち、加圧ローラ521は、芯金521aと弾性層521bとを有している。芯金521aおよび弾性層521bは、駆動ローラ511の芯金511aおよび弾性層511bと同様に構成されている。
図8(A)は、第1の実施の形態における定着ベルト510および加圧ベルト520の構成を示す斜視図である。図8(B)は、定着ベルト510および加圧ベルト520の断面構造を示す図である。図8(B)は、図8(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に対応する。
定着ベルト510は、最内周側の基材510aと、基材510aの外周面に形成された弾性層510bと、弾性層510bの外周面に形成された離型層510cとを有する。基材510aは、SUS等の弾性を有する金属からなる無端状のベルト部材である。基材510aの厚さは、約40〜70μmの範囲が好ましい。また、基材510aは、適度な剛性と可撓性を有することが好ましい。
弾性層510bは、例えばシリコーンゴムで形成されている。離型層510cは、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂により、チューブの被覆またはコーティング等によって形成されている。なお、弾性層510bを設けない構成、すなわち基材510aの外周面に離型層510cを直接設けた構成も可能である。定着ベルト510の内周面510dには黒色のコーティングが施され、ヒータ512の輻射熱を吸収しやすくなっている。定着ベルト510の内周面510dは、コーティング部510dとも称する。
加圧ベルト520は、定着ベルト510と同様の構成を有している。すなわち、加圧ベルト520は、基材520aと、弾性層520bと、離型層520cと、コーティング部(内周面)520dとを有する。基材520a、弾性層520b、離型層520cおよびコーティング部520dは、それぞれ、定着ベルト510の基材510a、弾性層510b、離型層510cおよびコーティング部510dと同様に構成されている。
図9(A)は、反射板515,525の構成を示す斜視図である。図9(B)は、反射板515,525の断面構造を示す図である。反射板515は、基材515aと、基材515aの表面に形成された反射層515bとを有している。基材515aは、例えばアルミニウム製の板である。また、反射層515bは、基材515aの表面に、例えば高反射アルミニウム膜を蒸着することにより形成される。また、反射率を向上させるために、反射層515bを、銀の蒸着によって形成することもできる。反射層515bは、反射面515bとも称する。
ここで、反射板515は、ヒータ512(ハロゲンランプ)の輻射熱を反射させるものであるため、基材515aの融点はできるだけ高いことが好ましい。そのため、基材515aは、例えば、高融点のステンレス鋼に光輝熱処理(焼鈍)を施して鏡面に近い光沢のある表面を備えたSUS304BA材により形成する。あるいは、ステンレス鋼の表面に、♯700または♯800程度の鏡面研磨を施したものを用いても良い。この場合には、反射層を設ける必要がないため、蒸着は不要であり、光輝熱処理または研磨を施されたステンレス鋼等の表面が反射面となる。
反射板515は、駆動ローラ511の軸方向(Y方向)に長い長尺部材である。反射板515の長手方向両端には、反射板515をブラケット530L,530Rに取り付けるための取付部515tが形成されている。
反射板525は、反射板515と同様の構成を有している。すなわち、反射板525は、基材525aと反射層(反射面)525bとを有している。基材525aおよび反射層525bは、上記の反射板515の基材515aおよび反射層515bと同様に構成されている。また、基材525aをSUS304BA等で形成した場合には、反射層を設けなくてもよい。また、反射板525の長手方向両端には、反射板525を加圧ローラレバー531L,531Rに取り付けるための取付部525tが形成されている。
図10(A)は、反射板515の長手方向(Y方向)に直交する断面形状を示す断面図である。図10(B)は、反射板525の長手方向に直交する断面形状を示す断面図である。図10(C)は、定着ベルト510、駆動ローラ511、ヒータ512および反射板515の位置関係を示す模式図である。
反射板515は、駆動ローラ511の外周面に沿う形状を有している。また、反射板515は、図10(C)に模式的に示すように、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)の上流側における駆動ローラ511の外周とヒータ512の外周との共通接線L1と交差するように配置されている。反射板515は、また、定着ベルト510の回転方向の下流側における駆動ローラ511の外周とヒータ512の外周との共通接線L2と交差するように配置されている。このようにすることで、ヒータ512からの輻射熱のうち、駆動ローラ511に直接伝熱される熱を抑制することができる。
図10(A)に戻り、反射板515は、ヒータ512から放射された輻射熱(光)を定着ベルト510の内周面の所定の領域(後述)に向けて反射する第1の反射部515cおよび第2の反射部515dと、ヒータ512から放射された輻射熱をヒータ512に向けて反射する第3の反射部515eとを有する。第3の反射部515eは、第1の反射部515cと第2の反射部515dとをつなぐように形成されている。
第1の反射部515c、第2の反射部515dおよび第3の反射部515eは、ヒータ512と対向する側(ここでは上側)に、輻射熱(光)を鏡面反射する反射面515b1,515b2,515b3を有している。反射面515b1,515b2,515b3を合わせて、反射面515bと称する。
第3の反射部515eは、その反射面515b3が、ヒータ512と対向するように配置されている。すなわち、第3の反射部515eの反射面515b3は、ヒータ512から放射された輻射熱を、ヒータ512と対向する定着ベルト510の領域A3(図10(C))に向けて反射する。ここでは、反射面515b3は、XY面に略平行に配置されている。
第1の反射部515cは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第3の反射部515eの上流側に配置されている。また、第1の反射部515cは、X方向における第3の反射部515eの上流側の端部に向かって傾斜して配置されている。
また、第1の反射部515cは、その反射面515b1が、定着ベルト510の回転方向においてヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A1(図10(C))に対向するように配置されている。すなわち、第1の反射部515cの反射面515b1は、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)におけるヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A1(図10(C))に向けて反射する。
第2の反射部515dは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第3の反射部515eの下流側に配置されている。また、第2の反射部515dは、X方向における第3の反射部515eの下流側の端部に向かって傾斜して配置されている。
また、第2の反射部515dは、その反射面515b2が、定着ベルト510の回転方向においてヒータ512の上流側で且つニップ部Nの下流側の領域A2(図10(C))に対向するように配置されている。すなわち、第2の反射部515dの反射面515b2は、ヒータ512の輻射熱を、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)におけるヒータ512の上流側で且つニップNの下流側の領域A2(図10(C))に向けて反射する。
このように、ヒータ512から放射された輻射熱を、反射板515により定着ベルト510に向けて反射することで、熱容量の大きい駆動ローラ511に熱が奪われることを防止することができる。さらに、ヒータ512の輻射熱で加熱された定着ベルト510を、その加熱された部分の温度が低下する前にニップNに到達させることができる。従って、ニップ部Nを効率的に加熱することができる。
また、第1の反射部515cおよび第2の反射部515dの反射面515b1,515b2によって、定着ベルト510を、回転方向(矢印R1)におけるニップ部Nの上流側から下流側に亘って広範囲に加熱するため、定着ベルト510の熱分布のムラを低減することができる。加えて、反射板515に反射面515bを設けているため、ヒータ512から放射された輻射熱を効率的に定着ベルト510に向けて反射し、反射板515自体に熱が奪われることを抑制することができる。
また、反射板525は、ニップ部Nを挟んで、反射板515と上下対称に構成されている。すなわち、反射板525は、第1の反射部525c、第2の反射部525dおよび第3の反射部525eを有している。第1の反射部525c、第2の反射部525dおよび第3の反射部525eは、ヒータ522と対向する側に、輻射熱(光)を鏡面反射する反射面525b1,525b2,525b3を有している。反射面525b1,525b2,525b3を合わせて、反射面525bと称する。
第3の反射部525eの反射面525b3は、ヒータ522から放射された輻射熱を、ヒータ522と対向する加圧ベルト520の領域に向けて反射する。第1の反射部525cの反射面525b1は、ヒータ522から放射された輻射熱を、加圧ベルト520の回転方向におけるヒータ522の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域に向けて反射する。第2の反射部525dの反射面525b2は、ヒータ522から放射された輻射熱を、加圧ベルト520の回転方向におけるヒータ522の上流側で且つニップNの下流側の領域に向かって反射する。
図3に示すように、定着ベルト510および加圧ベルト520の幅方向(Y方向)両側には、定着ベルト510および加圧ベルト520の寄りを規制して、斜行を矯正するための規制部材としての一対のべルトカイド537L,537Rが配設されている。
図11(a)、(b)および(c)は、一方のベルトガイド537Lの形状を示す正面図、左側面図、および上面図である。ベルトガイド537Lは、上記のブラケット530Lに、ねじによって固定される。
ベルトガイド537Lは、定着ベルト510および加圧ベルト520の端部に当接することにより、各ベルトの幅方向の移動を規制するベルト規制部としてのガイド面537a(図11(A)にハッチングで示す)を有している。このガイド面537aは、XZ面と平行な平面である。言い換えると、ガイド面537aは、媒体搬送方向(X方向)と平行に延在し、且つ定着ベルト510と加圧ベルト520との間を通る媒体101の搬送面(ニップ部Nを含む)に対して垂直な平面である。
このガイド面537aは、定着ベルト510と加圧ベルト520との間のニップ部N(図2)よりも所定距離だけ上流側の位置から、当該ニップ部Nよりも所定距離だけ下流側の位置まで達している。
ベルトガイド537Lは、ガイド面537aの−X方向(媒体搬送方向の下流側)および+X方向(媒体搬送方向の上流側)に隣接して、傾斜部としての傾斜面537d,537eを有している。ベルトガイド537Lは、さらに、ガイド面537aの+Y方向(上側)および−Y方向(下側)に隣接して、傾斜部としての傾斜面537b,537cを有している。
各傾斜面537b,537c,537d,537eは、ガイド面537aから遠ざかるほど、定着ベルト510および加圧ベルト520の端面からのY方向距離(定着ベルト510および加圧ベルト520の幅方向の距離)が広がる方向に傾斜している。言い換えると、各傾斜面537b,537c,537d,537eは、ガイド面537aがベルト側に出っ張った状態となる方向に傾斜している。各傾斜面537b,537c,537d,537eは、角度θ1,θ2,θ3,θ4のテーパを有している。角度θ1,θ2,θ3,θ4は、定着ベルト510および加圧ベルト520の剛性によるねじれが生じても、各傾斜面537b,537c,537d,537eがベルト端部に接触しないような角度に設定されている。ここでは、角度θ1,θ2,θ3,θ4は、例えば5°に設定されている。
ベルトガイド537Lのガイド面537aは、ニップ部Nの媒体搬送方向の上流側の始点よりも更に上流側から始まり、ニップ部Nの媒体搬送方向の下流側の終点よりも更に下流側で終了するよう形成される。より具体的には、ガイド面537aは、媒体搬送方向の上流側における駆動ローラ511の外周と加圧ローラ521の外周との共通接線よりもさらに上流側まで達する。また、ガイド面537aは、媒体搬送方向の下流側における駆動ローラ511の外周と加圧ローラ521の外周との共通接線よりもさらに下流側まで達する。
ベルトガイド537Lのガイド面537aは、図2に示されているように、Z方向(すなわち、ニップ部Nを含む媒体101の搬送面に垂直な方向)において、駆動ローラ511の回転中心511aと加圧ローラ521の回転中心521aとの間のニップ部Nに対向する位置に形成されるのが好ましい。
ガイド面537aの+X方向(媒体搬送方向の下流側)に隣接する傾斜面537eは、ガイド面537aから+X方向に延びる面であって、+X方向に進むにつれて、定着ベルト510および加圧ベルト520の各端部からのY方向距離(ベルト幅方向の距離)が増加するような傾斜を有している。
ガイド面537aの−X方向(媒体搬送方向の上流側)に隣接する傾斜面537dは、ガイド面537aから−X方向に延びる面であって、−X方向に進むにつれて、定着ベルト510および加圧ベルト520の各端部からのY方向距離が増加するような傾斜を有している。
ガイド面537aの+Z方向(上側)に隣接する傾斜面537bは、ガイド面537aから+Z方向(駆動ローラ511が配置されている側)に延びる面であって、+Z方向に進むにつれて、定着ベルト510および加圧ベルト520の各端部からのY方向距離が増加するような傾斜を有している。
ガイド面537aの−Z方向(下側)に隣接する傾斜面537cは、ガイド面537aから−Z方向(加圧ローラ521が配置されている側)に延びる面であって、−Z方向に進むにつれて、定着ベルト510および加圧ベルト520の各端部からのY方向距離が増加するような傾斜を有している。
ベルトガイド537Lには、また、駆動ローラ511および加圧ローラ521の各軸を逃がすための長孔541,542が形成されている。各長孔541,542の内周縁には、面取り加工550が施されている。なお、面取り加工550に替えて、R面(曲面)を形成してもよい。
また、ベルトガイド537Lには、ねじを止めるための貫通穴を有する凹部555が形成されている。凹部555は、ねじの頭部がガイド面537aおよび各傾斜面537b,537c,537d,537eから突出しないような深さを有している。
ベルトガイド537Lは、定着ベルト510および加圧ベルト520が接触する部分であるとともに、定着装置500で使用されることから、高い摺動性に加えて高い耐熱性が求められる。そのため、ベルトガイド537Lは、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)などの高機能樹脂で形成される。
また、ベルトガイド537は、図11(D)に示すように、定着ベルト510および加圧ベルト520に向き合う面に、反射膜537gを有している。この反射膜537gは、上述したPPS等の樹脂からなる基材537fの表面に、アルミニウムまたは銀を蒸着することにより形成される。
ベルトガイド537Rは、XZ面(図3に示した基準面A)に対して、ベルトガイド537Lと対称に構成されている。
<画像形成装置の制御系>
次に、画像形成装置1の制御系について説明する。図12は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1の制御部は、制御部110と、I/F(インタフェース)制御部111と、受信メモリ112と、画像データ編集メモリ113と、操作部114と、センサ群115と、帯電ローラ用電源116と、現像ローラ用電源117と、供給ローラ用電源118と、転写ローラ用電源119と、ヘッド制御部120と、ヒータ制御部121,122と、定着駆動制御部128と、搬送制御部130と、駆動制御部131と、ベルト駆動制御部134とを備える。
制御部110は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等を有して構成されている。制御部110は、上位装置からI/F制御部111を介して印刷データおよび制御コマンドを受信し、画像形成装置1の印刷動作を行う。
受信メモリ112は、上位装置からI/F制御部111を介して入力された印刷データを一時的に記憶する。画像データ編集メモリ113は、受信メモリ112に記憶した印刷データを受け取ると共に、その印刷データを編集処理することによって形成された画像データ、すなわちイメージデータを記録する。
操作部114は、画像形成装置1の状態を表示するための表示部(例えばLED)および操作者が指示を入力するための操作部(例えばスイッチ)を備える。センサ群115は、画像形成装置1の動作状態を監視するための各種センサ、例えば媒体位置センサ、温湿度センサ、および濃度センサ等を含む。
帯電ローラ用電源116は、制御部110の制御により、帯電ローラ432に、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させるための帯電電圧を印加する。現像ローラ用電源117は、制御部110の制御により、現像ローラ434に、感光体ドラム431の表面の静電潜像を現像するための現像電圧を印加する。
供給ローラ用電源118は、制御部110の制御により、供給ローラ435に、トナーを現像ローラ434に供給するための供給電圧を印加する。転写ローラ用電源119は、制御部110の制御により、転写ローラ464に、感光体ドラム431のトナー像を媒体101に転写するための転写電圧を印加する。
ヘッド制御部120は、画像データ編集メモリ113に記録されたイメージデータを露光ヘッド433に送り、露光ヘッド433を発光制御する。
ヒータ制御部(定着制御部)121は、温度調節回路を有し、定着装置500内に設けた温度センサ(例えばサーミスタ)125の出力信号に基づき、ヒータ用電源123からヒータ512(図2)に所定の電流を供給する。
ヒータ制御部(定着制御部)122は、温度調節回路を有し、定着装置500内に設けた温度センサ(例えばサーミスタ)126の出力信号に基づき、ヒータ用電源124からヒータ522(図2)に所定の電流を供給する。
定着駆動制御部128は、定着装置500の駆動ローラ511(図2)を回転させるため、定着モータ129を回転させる。
搬送制御部130は、媒体101を搬送するため、搬送モータ132の回転を制御し、図1に示したピックアップローラ202、フィードローラ203、搬送ローラ対302,304を回転させる。ベルト駆動制御部134は、転写ベルト461を駆動するため、ベルトモータ135の回転を制御して、ベルト駆動ローラ462を回転させる。なお、排出ローラ群504は、定着モータ129からの回転伝達によって回転する。
駆動制御部131は、各トナー像形成部430の感光体ドラム431、現像ローラ434、供給ローラ435等を回転させるための駆動モータ133を回転させる。
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1の基本動作について説明する。画像形成装置1の制御部110は、上位装置からI/F制御部111を介して印刷コマンドと印刷データを受信すると、画像形成(印刷)動作を開始する。制御部110は、受信メモリ112に印刷データを一時的に記録し、記録した印刷データを編集処理してイメージデータを生成し、画像データ編集メモリ113に記録する。
制御部110は、また、搬送制御部130により搬送モータ132を駆動させる。これにより、ホッピングローラ202およびフィードローラ203が回転し、用紙カセット102に収納された媒体101を一枚ずつ搬送路に送り出す。さらに搬送ローラ対302,304が、媒体101を、搬送路に沿って画像形成部400まで搬送する。
画像形成部400では、ベルト駆動ローラ462により回転する転写ベルト461が、媒体101を吸着保持して搬送する。媒体101は、トナー像形成ユニット430K,430Y,430M,430Cの順に通過する。
制御部110は、各トナー像形成ユニット430K,430Y,430M,430Cにおいて、各色のトナー像の形成を行う。すなわち、制御部110は、各トナー像形成ユニット430の帯電ローラ431、現像ローラ434および供給ローラ435に対し、帯電ローラ用電源116、現像ローラ用電源117および供給ローラ用電源118から、帯電電圧、現像電圧および供給電圧をそれぞれ印加する。
制御部110は、また、駆動制御部131により駆動モータ133を回転させ、感光体ドラム431を回転させる。感光体ドラム431の回転に伴って、帯電ローラ432、現像ローラ434および供給ローラ435も回転する。帯電ローラ432は、その帯電電圧により、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させる。
制御部110は、さらに、画像データ編集メモリ113に記録されているイメージデータに基づき、ヘッド制御部120を発光制御する。ヘッド制御部120は、露光ヘッド433により、一様に帯電された感光体ドラム431の表面を露光し、静電潜像を形成する。
感光体ドラム431の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ434に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム431の表面にトナー像が形成される。トナー像が形成された感光体ドラム431が回転し、トナー像が転写ベルト461の表面に接近すると、制御部110は、転写ローラ用電源119から転写ローラ464に転写電圧を印加する。これにより、感光体ドラム431の表面に形成されたトナー像が、転写ベルト461上の媒体101に転写される。媒体101に転写されなかったトナーは、クリーニングブレード436によって掻き取られる。
このように、各トナー像形成ユニット430K,430Y,430M,430Cで形成された各色のトナー像が媒体101に順次転写され、互いに重ね合される。各色のトナー像が転写された媒体101は、転写ベルト461によってさらに搬送され、媒体案内部材506(図1)に案内されて、定着装置500に到達する。
定着装置500では、後述するように定着ベルト510および加圧ベルト520が既に回転し、ヒータ制御部121,122によって定着装置500のヒータ512,522が加熱され、所定の定着温度に達している。定着装置500に搬送された媒体101は、定着ベルト510および加圧ベルト520によって加圧されると共に加熱され、トナー像が媒体101に定着される。定着動作の詳細については、後述する。
トナー像が定着した媒体101は、排出ローラ群504により、画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部505上に積載される。これにより、媒体101へのカラー画像の形成が完了する。
<定着装置の動作>
次に、本実施の形態の定着装置500の動作について説明する。画像形成装置1の電源が投入されると、まず、定着装置500のウォームアップ動作を行う。すなわち、制御部110は、ヒータ512およびヒータ522の発熱を開始する前に、定着モータ129(図12)を駆動して、駆動ローラ511を回転させ、定着ベルト510および加圧ベルト520の回転を開始する。
定着モータ129(図12)の回転は、駆動ローラ511の回転軸511cに固定されたギア511g(図3)を介して、駆動ローラ511に伝達される。これにより、駆動ローラ511が、媒体101を+X方向に搬送する方向(図2における時計回り)に回転する。駆動ローラ511の回転に伴い、定着ベルト510は、駆動ローラ511との間に発生する摩擦力により、図2に矢印R1で示す方向に回転する。
定着ベルト510が回転すると、駆動ローラ511と加圧ローラ521との間で形成されるニップ部Nにおいて、定着ベルト510の回転が加圧ベルト520に伝達される。これにより、加圧ベルト520は、定着ベルト510と同速度で、図2に矢印R2で示す方向に回転する。定着ベルト510の回転方向(矢印R1)および加圧ベルト520の回転方向(矢印R2)は、ニップ部Nでの移動方向が+X方向となる回転方向である。
このようにして定着ベルト510および加圧ベルト520の回転を開始した後に、制御部110は、ヒータ制御部121,122により、ヒータ512,522の発熱を開始する。
すなわち、本実施の形態では、定着ベルト510および加圧ベルト520を停止した状態では、ヒータ512,522の発熱を開始しない。これは、定着ベルト510および加圧ベルト520が薄い金属製のベルトであり、熱容量が非常に小さく熱伝導性が高いため、定着ベルト510および加圧ベルト520を停止した状態でヒータ512,522の発熱を開始すると、定着ベルト510および加圧ベルト520の温度が急激に上昇するためである。
すなわち、電源投入後のウォームアップ動作において、定着ベルト510および加圧ベルト520の回転開始後にヒータ512,522の発熱を開始することで、定着ベルト510および加圧ベルト520の弾性層510b,520bおよび離型層(表面層)510c,520cを、温度の急上昇に伴う損傷から保護している。
また、画像形成装置1の電源が既に投入されていて、待機状態(例えばスタンバイモード)から復帰する場合には、画像形成装置1における画像形成動作の開始に伴い、制御部110が定着モータ129を駆動して駆動ローラ511を回転させ、定着ベルト510および加圧ベルト520の回転を開始する。さらに、定着ベルト510および加圧ベルト520の回転開始後に、ヒータ制御部121,122により、ヒータ512,522の発熱を開始する。これにより、電源投入後のウォームアップ動作と同様に、定着ベルト510および加圧ベルト520を温度の急上昇に伴う損傷から保護することができる。
ヒータ512は、ヒータ用電源123(図12)からの電流供給により発熱し、輻射熱により、定着ベルト510を内周面側から加熱する。加熱された定着ベルト510の表面温度は、温度センサ125によって検出され、ヒータ制御部(温度調節回路)121に入力される。ヒータ制御部121は、検出された定着ベルト510の表面温度に基づいてヒータ512への電流供給を制御し、定着ベルト510の表面温度を所定の定着温度に保つ。
同様に、ヒータ522も、ヒータ用電源124(図12)からの電流供給により発熱し、輻射熱により、加圧ベルト520を内周面側から加熱する。加熱された加圧ベルト520の表面温度は、温度センサ126によって検出され、ヒータ制御部(温度調節回路)122に入力される。ヒータ制御部122は、検出された加圧ベルト520の表面温度に基づいてヒータ522への電流供給を制御し、加圧ベルト520の表面温度を定着温度に保つ。なお、ここで説明した温度制御に限らず、定着側(ヒータ512側)のみで温度制御を行うことも可能である。
図13は、定着装置500の基本構成および作用を説明するための模式図である。ヒータ512は、その全周から光(輻射熱)を放射する。ヒータ512から放射された光の一部は、定着ベルト510の内周面(コーティング部510d)に直接照射され、これにより定着ベルト510が加熱される。
一方、ヒータ512から放射された光の一部は、駆動ローラ511側(つまりニップ部N側)にも進行する。しかしながら、ヒータ512と駆動ローラ511との間には、反射板515が配設されているため、ヒータ512から駆動ローラ511に向けて進んだ光は反射板515によって反射される。そのため、ヒータ512から放射された光は、駆動ローラ511に直接照射されることなく、反射板515で反射されて定着ベルト510の内周面に照射される。すなわち、ヒータ512から放射された光は、効率よく定着ベルト510の加熱に利用される。
同様に、ヒータ522は、その全周から光(輻射熱)を放射する。ヒータ522から放射された光の一部は、加圧ベルト520の内周面(コーティング部520d)に直接照射され、これにより加圧ベルト520が加熱される。
一方、ヒータ522から放射された光の一部は、加圧ローラ521側(つまりニップ部N側)にも進行する。しかしながら、ヒータ522と加圧ローラ521との間には、反射板525が配設されているため、ヒータ522から加圧ローラ521に向けて進んだ光は反射板525によって反射される。そのため、ヒータ522から放射された光は、加圧ローラ521に直接照射されることなく、反射板525で反射されて加圧ベルト520に照射される。すなわち、ヒータ522から放射された光は、効率よく加圧ベルト520の加熱に利用される。
そして、温度センサ125,126およびヒータ制御部121,122により、定着ベルト510および加圧ベルト520の表面温度が所定の温度(定着温度)で維持されると、制御部110は、定着装置500が定着動作可能な状態になったと判断する。
なお、定着ベルト510および加圧ベルト520は、上述したニップ部N以外の領域では弛んだ状態(ピンと張っていない状態)にある。定着ベルト510および加圧ベルト520は、基材510a,520a(図7)が剛性を有しているため、ニップ部N以外の領域が弛んでいる状態を維持しながら回転する。
その後、画像形成部400においてトナー像が転写された媒体101が、定着装置500に導入される。
図14は、駆動ローラ511と加圧ローラ521とに挟まれた定着ベルト510と加圧ベルト520との間のニップ部Nを拡大して示す模式図である。ここでは、駆動ローラ511と加圧ローラ521とは、略同一の材料で構成され、略同一の外径を有している。「略同一」とは、加工精度等の寸法誤差を考慮して、設計値の±10%以内にあることである。
このように駆動ローラ511と加圧ローラ521とを、材料および外径とも略同一とすることにより、加圧により駆動ローラ511と加圧ローラ521とが同じように弾性変形する。そのため、図14に示したように、略ストレート形状のニップ部Nを形成することができる。ニップ部Nをストレート形状とすることにより、定着ベルト510および加圧ベルト520には、各ベルトを屈曲させるような応力が作用しない。
媒体101は、図14に矢印Fで示すように、定着ベルト510と加圧ベルト520との間のニップ部Nに進入する。ニップ部Nでは、定着温度に加熱された定着ベルト510と加圧ベルト520とが、媒体101を挟み込んで加熱および加圧する。これにより、媒体101の表面のトナーが溶融し、媒体101に定着する。
定着装置500の定着動作が終了すると(すなわち画像形成装置1の画像形成動作が終了すると)、制御部110は、ヒータ512,522の発熱を停止する。その後、所定の時間が経過したのち、定着モータ129を停止して駆動ローラ511の回転を停止し、定着ベルト510および加圧ベルト520の回転を停止する。
なお、ヒータ512,522の発熱停止後から所定時間後に定着ベルト510および加圧ベルト520の回転を停止するのは、定着ベルト510および加圧ベルト520を熱による損傷から防止するためである。定着ベルト510および加圧ベルト520の回転の回転停止により、定着装置500による定着動作が完了する。
ここで、定着装置500におけるベルトガイド537L,537Rの作用について説明する。図15は、定着ユニット500を組み立てた際の、駆動ローラ511、ベルトガイド537L、ベルトガイド537R、定着ベルト510および加圧ベルト520の位置関係を示す正面図(A)および上面図(B)である。
上述したように、ニップ部N(図2)はフリーニップであるため、製造誤差や組み立て誤差等により、駆動ローラ511と加圧ローラ521との平行度がずれている場合がある。
図16(A)〜(F)は、ベルトガイド537Lと、定着ベルト510および加圧ベルト520との当接部の近傍を示す図である。図16(A)、(C)および(E)は、上面図である。図16(B)、(D)および(F)は、正面図である。
図16(A)および(B)は、定着ベルト510と加圧ベルト520とが、互いの平行度のずれにより、ベルトガイド537L,537Rに突き当たっている状態を示す。図16(C)および(D)は、定着ベルト510と加圧ベルト520とが、平行度を保っているが、軸方向に位置ずれしていることにより、ベルトガイド537L,537Rに突き当たっている状態を示す。図16(E)および(F)は、定着ベルト510および加圧ベルト520が、平行度を保ち、なお且つ各ベルトの両端部がベルトガイド537L,537Rの各ガイド537a(図11参照)に軽く触れるか触れない程度でガイドされて回転している状態(すなわち適正な状態)を示している。なお、図16では、ベルトガイド537Rは示されていない。
図16(A)および(B)に示すように、駆動ローラ511と加圧ローラ521との平行度がずれている状態、あるいは、図16(A)および(B)に示すように、駆動ローラ511と加圧ローラ521との軸方向位置がずれている状態で、駆動ローラ511が回転を開始すると、定着ベルト510および加圧ベルト520は、駆動ローラ511および加圧ローラ521との間に生じている圧力に従って、それぞれバランスを取るように変位する。
すなわち、回転を始めた各ベルト510,520は、それぞれの両端部をベルトガイド537Lおよびベルトガイド537Rの各ガイド面537aに突き当てた状態で左右(X方向)に移動しながら、徐々に、図16(E)および(F)に示す適正な状態に移行し、その状態が維持される。つまり、ベルトガイド537L,537Rの作用により、駆動ローラ511の回転開始後に、定着ベルト510の加圧ベルト520の適正な回転状態が得られる。
なお、ベルトガイド537L,537Rは、ガイド面537aの周囲に傾斜面537b,537c,537d,537eが形成されており、ニップ部Nの近傍(定着ベルト510と加圧ベルト520とが合流している部分)以外で定着ベルト510および加圧ベルト520の端部がベルトガイド537L,537Rに接触しないようにしている。そのため、定着ベルト510および加圧ベルト520の平行度が比較的大きくずれたとしても、定着ベルト510および加圧ベルト520の端部がベルトガイド537L,537Rに強く押し当てられることによる損傷を防止することができる。
図17は、本実施の形態の定着装置500において、反射板515,525を設けた場合と、反射板515,525を設けなかった場合のそれぞれについて、上述したウォームアップ動作に要した時間(ウォームアップ時間と称する)を計測した結果を示す。ウォームアップ時間とは、ヒータ512,522の発熱開始後、温度センサ125,126により測定された定着ベルト510および加圧ベルト520の表面温度が所定の定着温度に達するまでの時間を言う。図17において、縦軸はウォームアップ時間(秒)を示し、横軸は反射板515,525の有無を示す。
図17から、反射板515,525を設けた場合には、反射板515,525を設けなかった場合に対して、ウォームアップ時間を約30%短縮できることが分かる。
つまり、本実施の形態では、熱容量の大きい各ローラ(ここでは駆動ローラ511および加圧ローラ521)に光を照射せず、その光を反射板515,525で反射して定着ベルト510および加圧ベルト520に照射している。そのため、ヒータ512,522の熱が、熱容量の大きい各ローラに奪われることがなく、効率よく定着ベルト510および加圧ベルト520を加熱することができる。その結果、定着ベルト510および加圧ベルト520に接する媒体を、効率よく加熱することができる。これにより、定着装置500の熱効率を向上することができ、また、ウォームアップ時間を短縮することができる。
<第1の実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、定着ベルト510の内周面側において、駆動ローラ511とヒータ512との間に反射板515を配置したため、ヒータ512から放射されて駆動ローラ511に向かう光(輻射熱)を反射板515で反射し、定着ベルト510の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の加熱に有効に利用することができる。
同様に、加圧ベルト520の内周面側において、加圧ローラ521とヒータ522との間に反射板525を配置したため、ヒータ522から放射されて駆動ローラ521に向かう光(輻射熱)を反射板525で反射し、加圧ベルト520の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ522から放射された輻射熱を、加圧ベルト520の加熱に有効に利用することができる。
すなわち、ヒータ512,522のエネルギー効率を向上することができ、また、ウォームアップ時間を短縮することができる。
さらに、反射板515の第1の反射部515cによって、定着ベルト510の回転方向におけるヒータ512よりも下流側の領域が加熱されるため、定着ベルト510と搬送される媒体101とが接する直前まで定着ベルト510を加熱することができ、安定した定着性を得ることができる。反射板525の第1の反射部525cについても同様である。
また、反射板515の第2の反射部515dによって、定着ベルト510の回転方向におけるヒータ512よりも上流側(すなわち媒体101の搬送方向における下流側)の領域が加熱されるため、トナー像が媒体101に定着した後に定着ベルト510が冷却されることによって生じるオフセット等の画像不良を低減することができる。反射板525の第2の反射部525dについても同様である。
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図18は、第2の実施の形態の定着装置500Aを示す図である。図19は、定着装置500Aの各構成要素の位置関係を示す模式図である。図20は、定着装置500Aの一部を拡大して示す斜視図である。図21は、定着装置500Aの別の一部を拡大して示す斜視図である。
<定着装置の構成>
まず、本実施の形態の定着装置500Aの各ベルトおよび各ローラについて説明する。本実施の形態の定着装置500Aは、第1の無端状ベルトとしての定着ベルト510と、第2の無端状ベルトとしての且つ加圧ベルト520とを有している。定着ベルト510および加圧ベルト520の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
定着ベルト510の内周面側には、媒体101の搬送方向(X方向)の下流側から順に、第1のローラとしての駆動ローラ511と、第3のローラとしての補助ローラ514と、第5のローラとしての従動ローラ513とが配置されている。
加圧ベルト520の内周面側には、媒体101の搬送方向(X方向)の下流側から順に、第2のローラとしての加圧ローラ521と、第4のローラとしての補助加圧ローラ524と、第6のローラとしての従動加圧ローラ523とが配置されている。
定着ベルト510の内周面側に配置された駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513は、それぞれ、加圧ベルト520の内周面側の領域に配置された加圧ローラ521、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523に対向している。
図19に示すように、駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513は、ニップ部Nから各ローラの中心軸(回転中心)までの距離Dが、ニップ部Nから定着ベルト510の中心までの距離Cよりも短くなるように配置されている。定着ベルト510は、駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513に張架されているのではなく、張力が発生しない状態(フリー状態)に保たれている。
図20に示すように、駆動ローラ511は、そのシャフトの両端(図には一端のみ示す)において、ブラケット530L,530Rに、軸受516を介して回転可能に取り付けられている。補助ローラ514および従動ローラ513は、それぞれのシャフトの両端(図には各一端のみ示す)において、ブラケット530L,530Rに、軸受517を介して回転可能に取り付けられている。なお、補助ローラ514および従動ローラ513は、一体形状の軸受517で支持しているが、それぞれ別々の軸受で支持してもよい。
加圧ローラ521、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523は、ニップ部Nから各ローラ中心までの距離が、ニップ部Nから加圧ベルト520の中心までの距離よりも短くなるように配置されている。加圧ベルト520は、定着ベルト510と同様、張力が発生しないフリー状態に保たれている。
図22は、加圧ローラ521、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523の支持構造を示す斜視図である。図22に示すように、加圧ローラ521は、そのシャフトの両端において、加圧ローラレバー531L,531R(図には加圧ローラレバー531Rのみ示す)に、軸受526を介して回転可能に取り付けられている。加圧ローラレバー531L,531Rは、穴531aをブラケット530L,530Rのポスト530a(図18)に嵌合させ、ポスト530aを中心として回動可能に支持されている。
加圧ローラレバー531L,531Rは、付勢部材としてのスプリング532L,532Rによって、加圧ローラ521が駆動ローラ511に接近する方向に回動するように付勢されている。これにより、加圧ローラ521は、定着ベルト510および加圧ベルト520を介して、駆動ローラ511に押し当てられる。
図21に示すように、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523は、それぞれのシャフトの両端において、共通の軸受527に回転可能に取り付けられている。この軸受527は、上述した補助ローラ514および従動ローラ513に対して接近/離間する方向に摺動可能に、ブラケット530に支持されている。
従動加圧ローラ523は、付勢部材としてのスプリング533によって従動ローラ513に向けて付勢されている。補助加圧ローラ524は、付勢部材としてのスプリング534によって補助ローラ514に向けて付勢されている。つまり、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、それぞれスプリング533,534の付勢力によって、従動ローラ513および補助ローラ514にそれぞれ加圧(押圧)されている。なお、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、一体形状の軸受527で支持しているが、それぞれ独立した軸受で支持しても良い。
以上のように構成されているため、本実施の形態の定着装置500Aでは、駆動ローラ511と加圧ローラ521からなる第1のローラ対、補助ローラ514と補助加圧ローラ524からなる第2のローラ対、および従動ローラ513と従動加圧ローラ523からなる第3のローラ対によって、定着ベルト510と加圧ベルト520とが挟持され、両ベルト510,520の間にニップ部Nが形成される。
第1、第2、第3のローラ対のニップ部は、側面視(図18および図19)で、媒体101の搬送面に対して略平行な略ストレート形状を有している。ニップ部Nをストレート形状とすることにより、定着ベルト510および加圧ベルト520には、各ベルトを屈曲させるような応力が作用しない。
図23(A)は、第2の実施の形態における従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の構成を示す図である。図23(B)は、図23(A)に示した各ローラの断面構造を示す図である。図23(B)は、図23(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に相当する。ここでは、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、いずれも同じ構成を有している。
従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、駆動ローラ511および加圧ローラ521よりも小径(例えば外径8mm程度)のローラである。
従動ローラ513は、芯金513aの外周面に弾性層513bを被覆して形成される。芯金513aは、例えば、快削鋼(SUM)やステンレス鋼(SUS)などの金属で形成される。弾性層513bは、耐熱性を有する樹脂、例えばシリコーンゴムにより形成される。ここでは、ゴム硬度がアスカーC硬度75〜85°のシリコーンゴムを用いる。
補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、従動ローラ513と同様の構成を有している。すなわち、補助ローラ514は、芯金514aと弾性層514bとを有している。芯金514aおよび弾性層514bは、従動ローラ513の芯金513aおよび弾性層513bと同様に構成されている。従動加圧ローラ523は、芯金523aと弾性層523bとを有している。芯金523aおよび弾性層523bは、従動ローラ513の芯金513aおよび弾性層513bと同様に構成されている。補助加圧ローラ524は、芯金524aと弾性層524bとを有している。芯金524aおよび弾性層524bは、従動ローラ513の芯金513aおよび弾性層513bと同様に構成されている。
次に、本実施の形態の定着装置500Aのヒータ512,522および反射板515,525について説明する。定着ベルト510の内周面側の領域には、第1の熱源としてのヒータ512が設けられている。ヒータ512は、例えばハロゲンヒータであるが、誘導加熱体等を用いても良い。ヒータ512の構成および支持構造は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
同様に、加圧ベルト520の内周面側には、第2の熱源としてのヒータ522が設けられている。ヒータ522は、例えばハロゲンヒータであるが、誘導加熱体等を用いても良い。ヒータ522の構成および支持構造は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
定着ベルト510の内周面側において、ヒータ512と、駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513との間には、第1の反射部材としての反射板615が設けられている。反射板615は、ヒータ512と対向する側に反射面(反射膜)を有している。なお、反射板615の代わりに、ハロゲンヒータに反射膜を備えた反射膜付ハロゲンヒータを使用しても良い。
加圧ベルト520の内周面側において、ヒータ522と、加圧ローラ521、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523との間には、第2の反射部材としての反射板625が設けられている。反射板625は、ヒータ522と対向する側に反射面(反射膜)を有している。なお、反射板625の代わりに、ハロゲンヒータに反射膜を備えた反射膜付ハロゲンヒータを使用しても良い。
図24(A)は、反射板615の構成を示す図である。図24(B)は、反射板625の構成を示す図である。図25は、定着装置500Aの基本構成および作用を説明するための模式図である。
図24(A)に示す反射板615は、駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513の外周面に沿う形状を有している。また、反射板615は、媒体101の搬送方向の上流側における従動ローラ513の外周とヒータ512の外周との共通接線L1(図19)と交わるよう形成される。また、反射板615は、駆動ローラ511の媒体搬送方向下流側の外周とヒータ512の媒体搬送方向下流側の外周との共通接線L2(図19)と交わるよう形成される。
また、反射板615は、ヒータ512からの輻射熱を定着ベルト510の内周面の所定の領域(後述)に向けて反射する第1の反射部615cおよび第2の反射部615dと、ヒータ512からの輻射熱をヒータ512に向けて反射する第3の反射部615eおよび第4の反射部615fとを有している。媒体搬送方向に沿って、第1の反射部615c、第3の反射部615e、第4の反射部615fおよび第2の反射部615dの順に配置されている。
第1の反射部615c、第2の反射部615d、第3の反射部615eおよび第4の反射部615fは、ヒータ512と対向する側(ここでは上側)に、輻射熱(光)を鏡面反射する反射面615b1,615b2,615b3,615b4を有している。反射面615b1,615b2,615b3,615b4を合わせて、反射面615bと称する。
第3の反射部615eは、その反射面615b3が、ヒータ512と対向するように配置されている。すなわち、第3の反射部615eの反射面615b3は、ヒータ512から放射された輻射熱を、ヒータ512と対向する定着ベルト510の領域A3(図25)に向けて反射する。ここでは、反射面615b3は、XY面に略平行に配置されている。
第4の反射部615fは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第3の反射部615eの下流側に配置されている。また、第4の反射部615fは、X方向における第3の反射部615eの下流側の端部に向かって傾斜して配置されている。第4の反射部615fは、その反射面615b4が、ヒータ512と対向するように配置されている。すなわち、反射部615fの反射面615b4は、ヒータ512から放射された輻射熱を、ヒータ512と対向する定着ベルト510の領域A3’(図25)に向けて反射する。
第1の反射部615cは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第3の反射部615eの上流側に配置されている。また、第1の反射部615cは、X方向における第3の反射部615eの上流側の端部に向かって傾斜して配置されている。
また、第1の反射部615cは、その反射面615b1が、定着ベルト510の回転方向においてヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A1(図25)に対向するように配置されている。すなわち、第1の反射部615cの反射面615b1は、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)におけるヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A1(図25)に向けて反射する。
第2の反射部615dは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第4の反射部615fの下流側に配置されている。第2の反射部615dおよび第4の反射部615fは、X方向における第2の反射部615dの上流側の端部に向かって第4の反射部615fが傾斜するように配置されている。
また、第2の反射部615dは、その反射面615b2が、定着ベルト510の回転方向においてヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A2(図25)に対向するように配置されている。すなわち、第2の反射部615dの反射面615b2は、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)におけるヒータ512の上流側で且つニップ部Nの下流側の領域A2(図25)に向けて反射する。ここでは、反射面615b2は、XY面に略平行に配置されている。
このように、ヒータ512から放射された輻射熱を、反射板615により定着ベルト510に向けて反射することで、熱容量の大きい各ローラ511,514,513に熱が奪われることを防止することができる。さらに、ヒータ512の輻射熱で加熱した定着ベルト510を、その加熱された部分の温度が低下する前にニップNに到達させることができる。従って、ニップ部Nを効率的に加熱することができる。
また、第1の反射部615cおよび第2の反射部615dの反射面615b1,615b2によって、定着ベルト510を、回転方向(矢印R1)におけるニップ部Nの上流側から下流側に亘って広範囲に加熱するため、定着ベルト510の熱分布のムラを低減することができる。加えて、反射板615に反射面615bを設けているため、ヒータ512から放射された輻射熱を効率的に定着ベルト510に向けて反射し、反射板615自体に熱が奪われることを抑制することができる。
図24(B)に示す反射板625は、ニップ部Nを挟んで、反射板615と上下対称に構成されている。すなわち、反射板625は、媒体搬送方向に沿って、第1の反射部625c、第3の反射部625e、第4の反射部625fおよび第2の反射部625dを有している。第1の反射部625c、第2の反射部625d、第3の反射部625eおよび第4の反射部625fは、ヒータ522と対向する側に、反射面625b1,625b2,625b3,625b4を有している。反射面625b1,625b2,625b3,625b4を合わせて、反射面625bと称する。
図26(a)、(b)および(c)は、一方のベルトガイド537Lの形状を示す正面図、左側面図、および上面図である。なお、他方のベルトガイド537Rは、XZ面(図3に示した基準面A)に対して、ベルトガイド537Lと対称な形状を有している。
第2の実施の形態のベルトガイド537L,537RのX方向寸法は、第1の実施の形態のベルトガイド537L,537R(図11)よりも長い。また、第2の実施の形態のベルトガイド537L,537Rは、従動ローラ513および従動加圧ローラ523の各軸を逃がすための長孔543と、補助ローラ514および補助加圧ローラ524の各軸を逃がすための長孔544とを有している。また、各長孔543,544の内周には、面取り加工550が施されている。
これらの点を除き、第2の実施の形態におけるベルトガイド537L,537Rは、第1の実施の形態で説明したベルトガイド537L,537R(図11)と同様の構成を有する。また、第2の実施の形態におけるベルトガイド537L,537Rは、第1の実施の形態で説明したベルトガイド537L,537R(図11)と同様の作用を奏する。また、第2の実施の形態におけるベルトガイド537L,537Rは、定着ベルト510および加圧ベルト520に向き合う面に、反射膜537g(図11(D))を有している。
<ヒータおよび反射板の作用>
図25に示すように、ヒータ512の全周から放射された光(輻射熱)の一部は、定着ベルト510の内周面(コーティング部510d)に直接照射され、これにより定着ベルト510が加熱される。
一方、ヒータ512から放射された光の一部は、駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513の側にも進行する。しかしながら、ヒータ512と各ローラ511,514,513との間には、反射板615が配設されているため、ヒータ512から各ローラ511,514,513に向けて進んだ光は反射板615によって反射される。すなわち、ヒータ512から放射された光は、各ローラ511,514,513に直接照射されることなく、反射板615で反射されて定着ベルト510の内周面に照射される。これにより、ヒータ512から放射された光は、効率よく定着ベルト510の加熱に利用される。
同様に、ヒータ522の全周から放射された光(輻射熱)の一部は、加圧ベルト520の内周面(コーティング部520d)に直接照射され、これにより加圧ベルト520が加熱される。
一方、ヒータ522から放射された光の一部は、加圧ローラ511、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523の側にも進行する。しかしながら、ヒータ522と各ローラ521,524,523との間には、反射板625が配設されているため、ヒータ522から各ローラ521,524,523に向けて進んだ光は反射板625によって反射される。すなわち、ヒータ522から放射された光は、各ローラ521,524,523に直接照射されることなく、反射板625で反射されて加圧ベルト520に照射される。これにより、ヒータ522から放射された光は、効率よく加圧ベルト520の加熱に利用される。
<第2の実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態では、定着ベルト510の内周面側において、駆動ローラ511、補助ローラ514および従動ローラ513とヒータ512との間に反射板615を配置したことにより、ヒータ512から放射されて各ローラ511,514,513に向かう光(輻射熱)を反射板615で反射し、定着ベルト510の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の加熱に有効に利用することができる。
同様に、加圧ベルト520の内周面側において、加圧ローラ521、補助加圧ローラ524および従動加圧ローラ523とヒータ522との間に反射板625を配置したことにより、ヒータ522から放射されて各ローラ521,524,523に向かう光(輻射熱)を反射板625で反射し、加圧ベルト520の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ522から放射された輻射熱を、加圧ベルト520の加熱に有効に利用することができる。
すなわち、第1の実施の形態と同様、ヒータ512,522のエネルギー効率を向上することができ、また、定着装置500Aのウォームアップ時間を短縮することができる。
第3の実施の形態.
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の定着装置500Bは、第2の実施の形態で説明した定着装置500A(図18)の補助ローラ514および補助加圧ローラ524を設けないものである。図27は、第3の実施の形態における定着装置500Bの基本構成および作用を説明するための模式図である。
<定着装置の構成>
第3の実施の形態の定着装置500Bは、第2の実施の形態の定着装置500Aの補助ローラ514および補助加圧ローラ524(図18)を有さない。また、駆動ローラ511と従動ローラ513との距離、および加圧ローラ521と従動加圧ローラ523との距離は、第2の実施の形態よりも短い。さらに、駆動ローラ511と加圧ローラ521からなるローラ対、および従動ローラ513と従動加圧ローラ523からなるローラ対によって形成されるニップ部の総長さは、第2の実施の形態よりも短い。
図28(A)は、第3の実施の形態の反射板715の構成を示す図である。図28(B)は、反射板725の構成を示す図である。
図28(A)に示す反射板715は、駆動ローラ511および従動ローラ513の外周面に沿う形状を有している。また、反射板715は、媒体101の搬送方向における従動ローラ513の上流側の外周とヒータ512の外周との共通接線と交わるよう形成される。また、反射板615は、媒体101の搬送方向における駆動ローラ511の外周とヒータ512の外周との共通接線と交わるよう形成される。
また、反射板715は、ヒータ512からの輻射熱を定着ベルト510の内周面の所定の領域(後述)に向けて反射する第1の反射部715cおよび第2の反射部715bと、ヒータ512からの輻射熱をヒータ512に向けて反射する第3の反射部715eとを有している。媒体搬送方向に沿って、第1の反射部715c、第3の反射部715eおよび第2の反射部715bの順に配置されている。
第1の反射部715c、第2の反射部715dおよび第3の反射部715eは、ヒータ512と対向する側(ここでは上側)に、反射面715b1,715b2,715b3を有している。反射面715b1,715b2,715b3を合わせて、反射面715bと称する。
第3の反射部715eは、その反射面715b3が、ヒータ512と対向するように配置されている。すなわち、第3の反射部715eの反射面715b3は、ヒータ512から放射された輻射熱を、ヒータ512と対向する定着ベルト510の領域A3(図27)に向けて反射する。ここでは、反射面715b3は、XY面に対して傾斜して配置されている。
第1の反射部715cは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第3の反射部715eの上流側に配置されている。また、第1の反射部715cおよび第3の反射部715eは、X方向における第1の反射部715cの下流側の端部に向かって第3の反射部715eが傾斜するように配置されている。
また、第1の反射部715cは、その反射面715b1が、定着ベルト510の回転方向においてヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A1(図27)に対向するように配置されている。すなわち、第1の反射部715cの反射面715b1は、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)におけるヒータ512の下流側で且つニップ部Nの上流側の領域A1(図27)に向けて反射する。ここでは、第1の反射部715cの反射面715b1は、XY面に対して平行に配置されている。
第2の反射部715dは、X方向(媒体101の搬送方向)において、第3の反射部715eの下流側に配置されている。また、第2の反射部715dおよび第3の反射部715eは、X方向における第2の反射部715dの上流側の端部に向かって第3の反射部715eが傾斜するように配置されている。
また、第2の反射部715dは、その反射面715b2が、定着ベルト510の回転方向においてヒータ512の上流側で且つニップ部Nの下流側の領域A2(図27)に対向するように配置されている。すなわち、第2の反射部715dの反射面715b2は、定着ベルト510の回転方向(矢印R1)におけるヒータ512の上流側で且つニップ部Nの下流側の領域A2(図27)に向けて反射する。ここでは、第2の反射部715dの反射面715b2は、XY面に対して平行に配置されている。
このように、ヒータ512から放射された輻射熱を、反射板715により定着ベルト510に向けて反射することで、熱容量の大きい各ローラ511,513に熱が奪われることを防止することができる。さらに、ヒータ512の輻射熱で加熱した定着ベルト510を、その加熱された部分の温度が低下する前にニップNに到達させることができる。従って、ニップ部Nを効率的に加熱することができる。
また、第1の反射部715cおよび第2の反射部715dの反射面715b1,715b2によって、定着ベルト510を、回転方向(矢印R1)におけるニップ部Nの上流側から下流側に亘って広範囲に加熱するため、定着ベルト510の熱分布のムラを低減することができる。加えて、反射板715に反射面715bを設けているため、ヒータ512から放射された輻射熱を効率的に定着ベルト510に向けて反射し、反射板715自体に熱が奪われることを抑制することができる。
図28(B)に示す反射板725は、ニップ部Nを挟んで、反射板715と上下対称に構成されている。すなわち、反射板725は、媒体搬送方向に沿って、第1の反射部725c、第3の反射部725eおよび第2の反射部725dを有している。第1の反射部725c、第2の反射部725dおよび第3の反射部725eは、ヒータ522と対向する側に、反射面725b1,725b2,725b3を有している。反射面725b1,725b2,725b3を合わせて、反射面725bとする。
<第3の実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態では、定着ベルト510の内周面側において、駆動ローラ511および従動ローラ513とヒータ512との間に反射板715を配置したことにより、ヒータ512から放射されて各ローラ511,513に向かう光(輻射熱)を反射板715で反射し、定着ベルト510の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の加熱に有効に利用することができる。
同様に、加圧ベルト520の内周面側において、加圧ローラ521および従動加圧ローラ523とヒータ522との間に反射板725を配置したことにより、ヒータ522から放射されて各ローラ521,523に向かう光(輻射熱)を反射板725で反射し、加圧ベルト520の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ522から放射された輻射熱を、加圧ベルト520の加熱に有効に利用することができる。
すなわち、第1および第2の実施の形態と同様、ヒータ512,522のエネルギー効率を向上することができ、また、定着装置500Bのウォームアップ時間を短縮することができる。
なお、上述した第2および第3の実施の形態では、定着ベルト510の内周面側に駆動ローラ511の他に1つまたは2つのローラを設け、加圧ベルト520の内周面側に加圧ローラ521の他に1つまたは2つのローラを設けた。しかしながら、定着ベルト510の内周面側および加圧ベルト520の内周面側に設けるローラの数は、さらに多くてもよい。例えば、複数組の補助ローラ514および補助加圧ローラ524を用いてもよい。
第4の実施の形態
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態の定着装置500Cは、第1の実施の形態で説明した定着装置500の加圧ローラ521側に、加圧ベルト520、ヒータ522および反射板525(図2)を設けないものである。
図29は、第4の実施の形態の定着装置500Cの基本構成および作用を説明するための模式図である。定着ベルト510、駆動ローラ511、ヒータ512、反射板515および加圧ローラ521の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
第4の実施の形態の定着装置500Cでは、ヒータ512が放射する光(輻射熱)によって定着ベルト510が加熱される。加熱された定着ベルト510と、加圧ローラ521との間のニップ部において、媒体101が加熱および加圧され、トナー像が媒体101に定着する。
本発明の第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、駆動ローラ511とヒータ512との間に反射板515を配置したことにより、ヒータ512から放射されて駆動ローラ511に向かう光(輻射熱)を反射板515で反射し、定着ベルト510の内周面に照射することができる。すなわち、ヒータ512から放射された輻射熱を、定着ベルト510の加熱に有効に利用することができる。すなわち、ヒータ512,522のエネルギー効率を向上することができ、また、定着装置500Bのウォームアップ時間を短縮することができる。
第5の実施の形態.
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態の定着装置は、各ローラの構成が、上述した各実施の形態の定着装置500,500A、500B,500Cと異なるものである。
<定着装置の構成>
図30(A)は、第5の実施の形態における駆動ローラ511および加圧ローラ521の構成を示す斜視図である。図30(B)は、駆動ローラ511および加圧ローラ521の断面構造を示す図である。図30(B)は、図30(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に相当する。
図30(A)に示す駆動ローラ511は、中空のローラである。駆動ローラ511は、図30(B)に示すように、芯金511aの外周面に弾性層511dを被覆することによって形成される。
芯金511aは、第1の実施の形態で説明したように、例えば、STKM、アルミニウム、無垢の快削鋼(SUM)およびステンレス鋼(SUS)等の金属で形成される。一方、弾性層511dは、第1の実施の形態の弾性層511bとは異なり、耐熱性および断熱性を有する弾性材料、例えば発泡シリコーンゴムで形成される。弾性層511dは、断熱層511dとも称する。
加圧ローラ521は、駆動ローラ511と同様の構成を有している。すなわち、加圧ローラ521は、芯金521aと弾性層(断熱層)521dとを有している。芯金521aおよび弾性層521dは、駆動ローラ511の芯金511aおよび弾性層511dと同様に構成されている。
図31(A)は、第5の実施の形態における従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の構成を示す図である。図31(B)は、図31(A)に示した各ローラの断面構造を示す図である。図31(B)は、図31(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に相当する。
従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、駆動ローラ511および加圧ローラ521よりも小径(例えば外径8mm程度)のローラである。
従動ローラ513は、芯金513aの外周面に、弾性層513dを被覆して形成される。芯金513aは、第1の実施の形態で説明したように、例えば、快削鋼(SUM)やステンレス鋼(SUS)などの金属で形成される。一方、弾性層513dは、第1の実施の形態の弾性層513bとは異なり、耐熱性および断熱性を有する弾性材料、例えば発泡性のシリコーンゴムにより形成される。弾性層513dは、断熱層513dとも称する。
補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、従動ローラ513と同様の構成を有している。すなわち、補助ローラ514は、芯金514aと弾性層(断熱層)514dとを有している。芯金514aおよび弾性層514dは、従動ローラ513の芯金513aおよび弾性層513dと同様に構成されている。従動加圧ローラ523は、芯金523aと弾性層(断熱層)523dとを有している。芯金523aおよび弾性層523dは、従動ローラ513の芯金513aおよび弾性層513dと同様に構成されている。補助加圧ローラ524は、芯金524aと弾性層(断熱層)524dとを有している。芯金524aおよび弾性層524dは、従動ローラ513の芯金513aおよび弾性層513bと同様に構成されている。
本実施の形態における断熱層を有するローラは、上述した各実施の形態の定着装置500,500A,500B,500Cにおいて、特に、媒体搬送方向の上流側のローラとして用いることが望ましい。
例えば、第2の実施の形態の定着装置500A(図18)は、駆動ローラ511と加圧ローラ521からなるローラ対、従動ローラ513と従動加圧ローラ523からなるローラ対、および、補助ローラ514と補助加圧ローラ524からなるローラ対(すなわち3つのローラ対)を有する。この場合、媒体搬送方向の再上流側に配置されている従動ローラ513および従動加圧ローラ523を、本実施の形態の断熱層513d,523dを有する従動ローラ513および従動加圧ローラ523(図31)で構成することが望ましい。
また、ニップ部を形成する全てのローラを、本実施の形態の断熱層を有するローラで構成することが、熱効率向上の観点から最も望ましい。すなわち、補助ローラ514および補助加圧ローラ524を、断熱層514d,524dを有する補助ローラ514および補助加圧ローラ524(図31)で構成し、駆動ローラ511および加圧ローラ521を、断熱層511d,521dを有する駆動ローラ511および加圧ローラ521(図30)で構成することが最も望ましい。
<定着装置の作用>
定着装置では、定着ベルト510および加圧ベルト520が薄い金属製のベルトであり、熱容量が非常に小さく熱伝導性が高いため、ヒータ512,522の発熱により急激に温度が上昇し、熱が蓄えられる。一方、定着ベルト510および加圧ベルト520は、駆動ローラ511と加圧ローラ521からなるローラ対、従動ローラ513と従動加圧ローラ523からなるローラ対、および補助ローラ514と補助加圧ローラ524からなるローラ対に接触しながら移動するため、定着ベルト510および加圧ベルト520に蓄えられた熱が各ローラ側に移動する。
本実施の形態では、駆動ローラ511、加圧ローラ521、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524を、発泡性シリコーンゴムのような断熱層を有するローラで構成することにより、定着ベルト510および加圧ベルト520に蓄えられた熱が各ローラに伝達されにくくなる。ヒータ512,522の熱を、有効に定着ベルト510および加圧ベルト520の加熱に利用することができる。
図32は、第2の実施の形態で説明した定着装置500A(図18)の各ローラ(駆動ローラ511、加圧ローラ521、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524)の材質を5通りに変えた場合のウォームアップ時間の計測結果を示す。なお、「ウォームアップ時間」は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
図32において、縦軸はウォームアップ時間(秒)を示す。横軸は、各ローラの材質を変えた実験例1,2,3,4,5を示す。実験例1は、各ローラに弾性層を設けず、芯金(金属ローラ)の表面にめっきを施した場合である。実験例2は、各ローラに弾性層を設けず、芯金の表面に黒色塗装(オキツモ株式会社製)を施した場合である。実験例3は、各ローラの弾性層を、第1の実施の形態で説明したソリッドタイプのシリコーンゴムで構成した場合である。実験例4は、各ローラの弾性層を、本実施の形態の発泡性のシリコーンゴム(すなわち断熱層)で構成した場合である。実験例5は、各ローラの弾性層を、液状のシリコーンゴムで構成した場合である。
図32では、本実施の形態の発泡性のシリコーンゴムを用いた実験例4では、ソリッドタイプのシリコーンゴムを用いた実験例3を基準として、ウォームアップ時間が20%程度短縮されるという効果が確認された。これに対し、金属ローラにめっきや黒色塗装を施した実験例1,2および液状のシリコーンゴムを用いた実験例5では、ソリッドタイプのシリコーンゴムを用いた実験例3よりもウォームアップ時間が長くなるという結果が得られた。
以上説明したように、本発明の第5の実施の形態では、駆動ローラ511、加圧ローラ521、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524を、断熱性を有するローラ(例えば発泡性シリコーンゴム)で構成することにより、定着ベルト510および加圧ベルト520に蓄熱された熱が各ローラに奪われることを抑制することができる。その結果、ヒータ512,525の熱を、より有効に、定着ベルト510および加圧ベルト520の加熱に利用することができる。
また、定着ベルト510および加圧ベルト520の温度は、ニップ部を形成する複数のローラ対のうち、最上流側のローラ対に接触するときに最も高温であるため、少なくとも、最上流側のローラ対(従動ローラ513および従動加圧ローラ523)が断熱性を有するローラで構成されていれば、効果的に熱の利用効率を向上させることができる。
上記の各実施の形態では、電子写真プリンタの定着装置について説明したが、本発明は、例えば、電子写真方式を利用して媒体に画像を形成する画像形成装置(例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ、複合機等)の定着装置に利用することができる。