第1の実施の形態
<画像形成装置の構成>
まず、本発明の第1の実施の形態における定着装置500を備えた画像形成装置1について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の構成を示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真法を用いてカラー画像を形成するプリンタであり、給紙トレイ(媒体収容部)100、媒体繰出し部200、媒体搬送部300、画像形成部400および定着装置(定着部)500を備えている。
給紙トレイ100は、印刷用紙等の媒体101を収容するものであり、画像形成装置1の本体下部に着脱可能に装着されている。給紙トレイ100の内部には、媒体101を載置する媒体載置板102が、媒体101の幅方向に延在する支軸102aを中心として回動可能に設けられている。
媒体載置板102の下側には、回動軸103aにより回動可能に支持されたリフトアップレバー103が設けられている。回動軸103aは、画像形成装置1の本体内に設けられたモータ104と連結可能に構成されている。回動軸103aは、給紙トレイ100が画像形成装置1の本体に装着されることによりモータ104と連結され、モータ104の駆動力によりリフトアップレバー103が回動し、リフトアップレバー103の先端部で媒体載置板102を持ち上げ、これにより媒体載置板102が支軸102aを中心として回動(昇降)するようになっている。
給紙トレイ100には、媒体載置板102上の媒体101が所定の高さまで上昇したことを検知する上昇検知部105が設けられている。上昇検知部105により媒体101が検知された時点でモータ104の回転を停止することで、媒体載置板102の上昇が停止する。給紙トレイ100には、また、媒体101の積載位置を規制するするガイド部材(図示せず)が設けられている。ガイド部材は、媒体101の繰出し方向の後端部(図中左端部)と、幅方向の側端部とをガイドする。
給紙トレイ100に隣接して、給紙トレイ100に収容された媒体101を一枚ずつ繰出す媒体繰出し部200が設けられている。媒体繰出し部200は、媒体載置板102上に積載された媒体101の上面に圧接するように設けられたピックアップローラ202と、このピックアップローラ202の繰り出し側(図中右側)に設けられたフィードローラ203およびリタードローラ204からなるローラ対とを有している。ピックアップローラ202、フィードローラ203およびリタードローラ204により、媒体載置板102上に積載された媒体101が1枚ずつ繰出される。
媒体繰出し部200は、また、媒体載置板102上の媒体101の有無を検知する媒体有無検知部205と、媒体101の残量を検知する媒体残量検知部206とを有している。
媒体繰出し部200の繰出し側(図中右上側)には、繰出された媒体101を、画像形成部400まで搬送する媒体搬送部300が設けられている。媒体搬送部300は、媒体101の搬送路に沿って、搬送ローラ対302と、搬送ローラ対304とを備えている。
また、媒体101の搬送路に沿って搬送ローラ対302の上流側には、搬送ローラ対302の駆動タイミングを決定するための媒体センサ301が設けられている。搬送ローラ対302は、媒体センサ301による通過検知から所定時間だけ遅れて回転を開始する。このように回転開始のタイミングを遅らせることで、媒体101を搬送ローラ対302の圧接部に押し込み、媒体101の斜行を矯正する。
さらに、搬送ローラ対304の上流側には、搬送ローラ対304の駆動タイミングを決定するための媒体センサ303が設けられている。搬送ローラ対304は、媒体センサ303による通過検知により直ちに回転を開始し、媒体101を停止させずに送り出す。搬送ローラ対304の下流側には、後述する露光ヘッド433の露光タイミングを決定するため書き込みセンサ305が設けられている。
画像形成部400は、媒体101の搬送路に沿って、ここでは右から左に直列に配列された4つの現像剤像形成部(プロセスユニット)としてのトナー像形成部430K,430Y,430M,430Cと、トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cにより形成されたトナー像(現像剤像)を媒体101の表面に転写する転写部460とを有している。
トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cは、それぞれブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのトナー(現像剤)によりトナー像を形成する。トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cは、使用するトナーを除いて共通の構成を有しているため、「トナー像形成部430」と総称して説明する。
トナー像形成部430は、トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム431を有している。感光体ドラム(OPCドラム)431は、導電性の基体の表面に感光層(電荷発生層および電荷輸送層)を設けたドラム状の部材であり、図中時計回りに回転する。
感光体ドラム431の周囲には、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ432と、一様に帯電した感光体ドラム431の表面に光を照射して静電潜像を形成する例えばLED(発光ダイオード)アレイを有する露光装置としての露光ヘッド433と、静電潜像をトナーにより現像する現像剤担持体としての現像ローラ434と、感光体ドラム431の表面に残存したトナーを掻き取るクリーニング部材436とが配置されている。
また、各トナー像形成部430には、現像ローラ434にトナーを供給する供給部材としての供給ローラ435と、この供給ローラ435にトナーを供給する現像剤供給部としてのトナー供給部437(例えばトナーカートリッジ)が備えられている。
転写部460は、媒体101を静電気力により吸着保持して搬送する無端状の転写ベルト461と、転写ベルト461を駆動するためのベルト駆動ローラ462と、このベルト駆動ローラ462と対をなし、転写ベルト461に張力を付与するテンションローラ463とを備えている。
転写部460は、さらに、トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cの各感光体ドラム431に対向配置された4つの転写ローラ464を備えている。各転写ローラ464には、感光体ドラム431に形成されたトナー像をクーロン力により媒体101に転写するための転写電圧が印加される。
転写部460は、さらに、転写ベルト461に付着したトナーを掻き取るクリーニング部材としてのクリーニングブレード465と、クリーニングブレード465により掻き落とされたトナーを収容する廃現像剤収容器としてのトナーボックス466とを備えている。
トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cと転写部460とは、互いに同期して制御され、各感光体ドラム431の表面に形成されたトナー像を、転写ベルト461に静電吸着された媒体101の表面に転写する。
媒体101の搬送路に沿って、画像形成部400(トナー像形成部430および転写部460)の下流側には、定着装置500が設けられている。定着装置500は、媒体101上のトナー像に熱と圧力を加えて、トナー像を融解し、媒体101に定着させるものである。定着装置500の構成については、後述する。
媒体101の搬送路に沿って定着装置500の下流側には、定着が完了した媒体101を排出するための排出ローラ群504と、排出された媒体101を載置するためのスタッカ部505とが設けられている。
<定着装置の構成>
次に、この実施の形態1における定着装置500の構成について説明する。図2は、第1の実施の形態における定着装置500の構成を示す断面図である。図3は、定着装置500の構成要素の配置を説明するための模式図である。図4は、定着装置500の要部を示す斜視図である。図5は、定着装置500のベルト510,520を装着していない状態を示す斜視図である。図6は、定着装置500の一部を示す斜視図である。図7は、定着装置500の一部を拡大して示す斜視図である。
図2に示すように、定着装置500は、2つの無端状ベルト、すなわち、ベルト(第1のベルト)としての定着ベルト510と、ニップ形成部(第2のベルト)としての加圧ベルト520とを備えている。定着ベルト510と加圧ベルト520との間に、未定着のトナー像を媒体101に定着させるためのニップ部Nが形成される。
定着ベルト510の内側(内周面側)の領域には、第1の部材(第1のローラ)としての駆動ローラ511と、第2の部材(第2のローラ)としての従動ローラ513とが配置されている。また、駆動ローラ511と従動ローラ513との間には、第5のローラ(第5の部材)としての補助ローラ514が配置されている。これらのローラは、媒体101の搬送方向(以下、媒体搬送方向F)に沿って、従動ローラ513、補助ローラ514および駆動ローラ511の順に配列されている。
加圧ベルト520の内側(内周面側)の領域には、第3の部材(第3のローラ)としての加圧ローラ521と、第4の部材(第4のローラ)としての従動加圧ローラ523とが配置されている。また、加圧ローラ521と従動加圧ローラ523との間には、第6の部材(第6のローラ)としての補助加圧ローラ524が配置されている。これらのローラは、媒体搬送方向Fに沿って、従動加圧ローラ523、補助加圧ローラ524および加圧ローラ521の順に配列されている。
定着ベルト510の内側の領域に配置された駆動ローラ511、従動ローラ513および補助ローラ514は、それぞれ、加圧ベルト520の内側の領域に配置された加圧ローラ521、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に対向している。
定着ベルト510の内側の領域には、加熱部材(第1の加熱部材)としてのヒータ512が設けられている。同様に、加圧ベルト520の内側には、第2の加熱部材としてのヒータ522が設けられている。
図3に示すように、定着ベルト510は、ニップ部Nから媒体搬送方向Fに直交する方向(図中上下方向)に所定の距離M1だけ離れた位置(最大外径位置P1と称する)において、媒体搬送方向Fにおける外径が最大になる。駆動ローラ511、従動ローラ513および補助ローラ514は、ニップ部Nから各ローラの中心軸(回転中心)までの距離C1,C3が、上記の距離M1よりも短くなるように配置されている。定着ベルト510は、駆動ローラ511、従動ローラ513および補助ローラ514に張架されるのではなく、張力が発生しない状態(フリー状態)に保たれている。
ヒータ512は、定着ベルト510の最大外径位置P1(ニップ部Nから距離M1の位置)を基準として、ニップ部Nとは反対の側に配置されている。また、ヒータ512は、定着ベルト510の内周面に対してより広範囲に熱を照射できるよう、媒体搬送方向Fにおいて従動ローラ513と補助ローラ514との間に配設されている。
ヒータ512と駆動ローラ511との間には、反射板515が配置されている。反射板515は、駆動ローラ511をヒータ512の熱照射から防護すると共に、ヒータ512から駆動ローラ511の方向に照射された熱を定着ベルト510の内周面に向けて反射することにより、定着ベルト510に熱を供給する機能を有する。
ヒータ512と従動ローラ513および補助ローラ514との間には、反射板は存在しない。そのため、ヒータ512から照射された熱は、従動ローラ513および補助ローラ514に直接照射される。また、定着装置500には、定着ベルト510の表面温度を検出する温度センサ518(図2)が備えられている。温度センサ518は、例えば、接触型または非接触型のサーミスタであり、定着ベルト510に対向するように配置されている。
また、加圧ベルト520は、ニップ部Nから媒体搬送方向Fに直交する方向(図中上下方向)に所定の距離M2だけ離れた位置(最大外径位置P2と称する)において、媒体搬送方向Fにおける外径が最大になる。加圧ローラ521、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、ニップ部Nから各ローラ中心までの距離C2,C4が、上記の距離M2よりも短くなるように配置されている。加圧ベルト520は、定着ベルト510と同様、張力が発生しないフリー状態に保たれている。
ヒータ522は、加圧ベルト520の最大外径位置P2(ニップ部Nから距離M2の位置)を基準として、ニップ部Nとは反対の側に配置されている。また、ヒータ522は、加圧ベルト520の内周面に対してより広範囲に熱を照射できるよう、媒体搬送方向Fにおいて従動加圧ローラ523と補助加圧ローラ524との間に配設されている。
ヒータ522と加圧ローラ521との間には、反射板525が配置されている。反射板525は、加圧ローラ521をヒータ522の熱照射から防護すると共に、ヒータ522から加圧ローラ521の方向に照射された熱を加圧ベルト520の内周面に向けて反射することにより、加圧ベルト520に熱を供給する機能を有する。
ヒータ522と従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524との間には、反射板は存在しない。そのため、ヒータ522から照射された熱は、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に直接照射される。また、定着装置500には、加圧ベルト520の表面温度を検出する温度センサ528が備えられている。温度センサ528は、例えば、接触型または非接触型のサーミスタであり、加圧ベルト520に対向するように配置されている。
次に、定着装置500の各ローラおよびヒータの支持構造について説明する。図4に示すように、定着装置500は、定着ベルト510および加圧ベルト520の幅方向両側に、支持部材としての一対のブラケット530を有している。図4および図6に示すように、駆動ローラ511のシャフトの両端は、各ブラケット530に、軸受516を介して回転可能に取り付けられている。従動ローラ513および補助ローラ514の各シャフトの両端は、各ブラケット530に軸受517を介して回転可能に取り付けられている。なお、従動ローラ513および補助ローラ514は、ここでは一体形状の軸受517で支持しているが、それぞれ別々の軸受で支持してもよい。
図5〜図7に示すように、ヒータ512は、その長手方向の両端部において、各ブラケット530に設けられたヒータ支持部535により支持されている。ヒータ512は、ここではハロゲンランプとするが、ハロゲンランプに限らず、誘導加熱体等を用いても良い。
図8は、加圧ローラ521、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の支持構造を示す斜視図である。加圧ローラ521は、そのシャフトの両端(図8では一端のみ示す)において、可動支持部材としての一対の加圧ローラレバー531に、軸受526を介して回転可能に取り付けられている。加圧ローラレバー531は、各ブラケット530(図5)に、揺動軸531a(図8に一点鎖線で示す)を中心として揺動可能に取り付けられている。
加圧ローラレバー531は、付勢部材としてのスプリング532によって、加圧ローラ521が駆動ローラ511に接近する方向に揺動するように付勢されている。これにより、加圧ローラ521は、定着ベルト510および加圧ベルト520を介して、駆動ローラ511に押し当てられる。
図7に示すように、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、それぞれのシャフトの両端(図7には各一端のみ示す)において、共通の軸受527に回転可能に取り付けられている。この軸受527は、上述した従動ローラ513および補助ローラ514に対して接近/離間する方向に摺動可能に、ブラケット530に支持されている。
従動加圧ローラ523は、付勢部材としてのスプリング534によって従動ローラ513に向けて付勢されている。補助加圧ローラ524は、付勢部材としてのスプリング533によって補助ローラ514に向けて付勢されている。つまり、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、それぞれ別々のスプリング533,534によって付勢され、従動ローラ513および補助ローラ514にそれぞれ加圧(押圧)されている。なお、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、ここでは一体形状の軸受527で支持しているが、それぞれ独立した軸受で支持しても良い。
ヒータ522(図5)は、その長手方向の両端部において、加圧ローラレバー531に設けられたヒータ支持部536(図8)により支持されている。ヒータ522は、ここではハロゲンランプとするが、ハロゲンランプに限らず、誘導加熱体等を用いても良い。
上記のスプリング532,533,534の付勢力により、図3に示すように、駆動ローラ511と加圧ローラ521との間にニップ部N1が形成され、補助ローラ514と補助加圧ローラ524との間にニップ部N2が形成され、従動ローラ513と従動加圧ローラ523との間にニップ部N3が形成される。
これらのニップ部N1,N2,N3は、側面視(図2)で、媒体搬送方向Fに対して略平行な同一直線上に位置している。各ニップ部N1,N2,N3の間の部分(中間部)では、定着ベルト510および加圧ベルト520の剛性と可撓性によってニップ部が形成される。
すなわち、本実施の形態では、パッド方式(例えば特許文献1参照)のようにニップ部で湾曲した媒体搬送路を形成するのではなく、各ローラ対を同一水平ライン上に配置して、ストレートの媒体搬送部を形成している。
<各ローラおよび各ベルトの構成>
次に、各ローラおよび各ベルトの詳細について説明する。
図9(A)は、第1の実施の形態における駆動ローラ511および加圧ローラ521の構成を示す斜視図である。図9(B)は、駆動ローラ511および加圧ローラ521の断面構造を示す図である。図9(B)は、図9(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に相当する。
駆動ローラ511は、中空形状のローラである。駆動ローラ511は、図9(B)に示すように、芯金511aの表面に弾性層511bを被覆することによって形成される。芯金511aは、ここではSTKM(機械構造用炭素鋼鋼管)で形成する。但し、STKMに限らず、例えば、アルミニウム、無垢の快削鋼(SUM)およびステンレス鋼(SUS)等の金属で形成してもよい。
弾性層511bは、耐熱性を有する樹脂、例えばシリコーンゴムで形成される。ここでは、ゴム硬度がアスカーC硬度50〜85°のソリッドタイプ(発泡性でないもの)のシリコーンゴムを用いる。なお、弾性層511bは、駆動ローラ511による定着ベルト510の搬送力を高めるために設けられている。
加圧ローラ521は、駆動ローラ511と同様の構成を有している。すなわち、加圧ローラ521は、芯金521aと弾性層521bとを有している。芯金521aは、ここではSTKMで形成するが、アルミニウム、SUMおよびステンレス鋼等の金属で形成してもよい。弾性層521bは、例えばシリコーンゴム等の耐熱性を有する樹脂で形成され、ここではゴム硬度がアスカーC硬度50〜85°のソリッドタイプのシリコーンゴムを用いる。
このように、相対する駆動ローラ511と加圧ローラ521とが同様の構成を有し、従って同じ熱膨張量を示すため、定着ベルト510および加圧ベルト520にストレスを与えずに、ストレートのニップ部N1(図3)を形成することができる。
図10(A)は、第1の実施の形態における定着ベルト510および加圧ベルト520の構成を示す斜視図である。図10(B)は、定着ベルト510および加圧ベルト520の断面構造を示す図である。図10(B)は、図10(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に対応する。
定着ベルト510は、最内周側の基材510aと、基材510aの表面に形成された弾性層510bと、弾性層510bの表面に形成された離型層510cとを有する。基材510aは、SUS等の弾性を有する金属からなる無端状のベルト部材である。基材510aの厚さは、約40〜70μmの範囲が好ましい。また、基材510aは、適度な剛性と可撓性を有することが好ましい。
弾性層510bは、例えばシリコーンゴムで形成されている。離型層510cは、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂により、チューブの被覆またはコーティング等によって形成されている。なお、弾性層510bを設けずに、基材510aの表面に離型層510cを直接設けた構成も可能である。定着ベルト510の内周面510dには黒色のコーティングが施され、ヒータ512から照射された熱を吸収しやすくなっている。定着ベルト510の内周面510dは、コーティング部510dとも称する。
加圧ベルト520は、定着ベルト510と同様の構成を有している。すなわち、加圧ベルト520は、基材520aと、弾性層520bと、離型層520cと、コーティング部(内周面)520dとを有する。基材520a、弾性層520b、離型層520cおよびコーティング部520dは、それぞれ、定着ベルト510の基材510a、弾性層510b、離型層510cおよびコーティング部510dと同様に構成されている。
図11(A)は、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の構成を示す図である。図11(B)は、図11(A)に示した各ローラの断面構造を示す図であり、図11(A)に破線Bで囲んだ部分の断面図に相当する。ここでは、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、いずれも同じ構成を有している。
従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、中実または中空形状のローラである。本実施の形態では、いずれも中実のローラとする。従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の外径は、駆動ローラ511および加圧ローラ521の外径(例えば12mm)よりも小さい。
従動ローラ513は、例えばSUMやSUSなどで形成される金属ローラ(金属シャフト)である。SUMで形成した場合には、表面に無電解ニッケルメッキを施す。
従動ローラ513を構成する金属シャフトの表面には、黒色塗装またはコーティングからなる表層(熱吸収層)513aを形成することが好ましい。黒色塗装としては、例えばオキツモ株式会社製の黒色耐熱性塗料や、黒色テフロン(登録商標)コーティングを用いることができる。表層513aの厚さは、例えば10μm以下(一例としては、10μm)である。また、金属シャフトをSUSで形成した場合には、その金属シャフトの表面を黒化処理(酸化被膜を生成する処理)することにより、表層513aを形成することができる。なお、表層513aは、黒色に限らず、ヒータ512から照射された熱を吸収することができれば、例えばグレーでもよい。
補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、従動ローラ513と同様、SUMやSUSなどで形成される金属ローラ(金属シャフト)である。また、金属ローラの表面に、黒色塗装またはコーティングからなる表層(熱吸収層)514a,523a,524aを形成することが好ましい。表層514b,523b,524bは、従動ローラ513の表層513bと同様に形成される。
相対する従動ローラ513と従動加圧ローラ523とが同様の構成を有し、補助ローラ514と補助加圧ローラ524とが同様の構成を有しているため、定着ベルト510および加圧ベルト520にストレスを与えずに、ストレートのニップ部N2,N3(図3)を形成することができる。
なお、ここでは、駆動ローラ511と従動ローラ513との間に補助ローラ514を設け、加圧ローラ521と従動加圧ローラ523との間に補助加圧ローラ524を設けているが、補助ローラ514および補助加圧ローラ524を設けない構成も可能である。これについては、図18および図19を参照して後述する。
図12(A)は、反射板515,525の構成を示す斜視図である。図12(B)は、反射板515,525の断面構造を示す図である。図12(A)に示すように、反射板515は、駆動ローラ511の軸方向と平行な方向に長い長尺形状を有している。また、反射板515の長手方向両端には、反射板515をブラケット530に取り付けるための取付部515tが形成されている。
また、反射板515は、媒体搬送方向Fと平行な水平部515Aと、水平部515Aの媒体搬送方向Fの上流側の端部から斜め下方に(すなわちニップ部Nに向けて)傾斜する傾斜部515Bとを有している。ただし、反射板515の形状は、このような形状に限定されるものではなく、ヒータ512から駆動ローラ511に向けて照射された熱を遮り、定着ベルト510の内周面に向けて反射する形状であればよい。
図12(B)に示すように、反射板515は、基材515aと、基材515aの表面に形成された反射層515bとを有している。基材515aは、例えばアルミニウム製の板である。また、反射層515bは、基材515aの表面に、例えば高反射アルミニウム膜を蒸着することにより形成される。また、反射率を向上させるために、反射層515bを、銀の蒸着によって形成することもできる。反射層515bは、反射面515bとも称する。
ここで、反射板515は、ヒータ512(ハロゲンランプ)の熱照射を反射させるものであるため、基材515aの融点はできるだけ高いことが好ましい。そのため、基材515aは、例えば、高融点のステンレス鋼に光輝熱処理(焼鈍)を施して鏡面に近い光沢のある表面を備えたSUS304BA材により形成しても良い。あるいは、ステンレス鋼の表面に、♯700または♯800程度の鏡面研磨を施したものを用いても良い。この場合には、反射層を設ける必要がないため、蒸着は不要であり、光輝熱処理または研磨を施されたステンレス鋼等の表面が反射面となる。
反射板525は、ニップ部N(図2,3)に対して、反射板515と対称な形状を有している。すなわち、反射板525は、加圧ローラ521の軸方向と平行な方向に長く、長手方向両端に取付部525tを有している。また、反射板525は、媒体搬送方向Fと平行な水平部525Aと、水平部525Aの媒体搬送方向Fの上流側の端部から斜め上方に(すなわちニップ部Nに向けて)傾斜する傾斜部525Bとを有している。但し、このような形状に限定されるものではなく、ヒータ522から加圧ローラ521に向けて照射された熱を遮り、加圧ベルト520の内周面に向けて反射する形状であればよい。
また、図12(B)に示すように、反射板525は、基材525aと反射層525bとを有している。基材525aおよび反射層525bは、上記の反射板515の基材515aおよび反射層515bと同様に構成されている。基材525aをSUS304BA等で形成した場合には、反射層を設けなくてもよい。
反射板515は、図3に示したように、ヒータ512の中心から駆動ローラ511の外径に引いた2本の接線をまたぐように延在している。また、反射板515は、ヒータ512から従動ローラ513および補助ローラ514に向かう熱を遮らないように構成されている。すなわち、反射板515と定着ベルト510の内周面との間には、熱照射を通過させる部分(開口部515C)が形成される。
同様に、反射板525は、ヒータ522の中心から加圧ローラ521の外周に引いた2本の接線をまたぐように延在している。また、反射板525は、ヒータ522から従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に向かう熱を遮らないように構成されている。すなわち、反射板525と加圧ベルト520の内周面との間には、熱照射を通過させる部分(開口部525C)が形成される。
従動ローラ513および補助ローラ514の熱伝導率は、定着ベルト510の熱伝導率よりも高く設定されている。このように設定することで、従動ローラ513および補助ローラ514に蓄熱された熱が、効率良く定着ベルト510に供給(伝達)されるためである。
特に、従動ローラ513および補助ローラ514の熱伝導率を、定着ベルト510の熱伝導率の3倍以上とすることにより、従動ローラ513および補助ローラ514に蓄熱された熱を、より効率良く定着ベルト510に供給することができる。ここでは、従動ローラ513および補助ローラ514をアルミニウム(熱伝導率:約236W/(m・K))で形成し、定着ベルト510をステンレス(熱伝導率:約21W/(m・K))で形成する。
同様に、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の熱伝導率は、加圧ベルト520の熱伝導率よりも高く設定されている。このように設定することで、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に蓄熱された熱が、効率良く加圧ベルト520に供給されるためである。
特に、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の熱伝導率を、加圧ベルト520の熱伝導率の3倍以上とすることにより、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に蓄熱された熱を、より効率良く加圧ベルト520に供給することができる。ここでは、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524をアルミニウム(熱伝導率:約236W/(m・K))で形成し、加圧ベルト520をステンレス(熱伝導率:約21W/(m・K))で形成する。
この実施の形態では、定着ベルト510および加圧ベルト520の厚さを40〜70μmとし、幅を168mmとしている。また、駆動ローラ511および加圧ローラ521の外径を12mmとし、長さ(軸方向の寸法)を166mmとしている。また、従動ローラ513、従動加圧ローラ523、補助ローラ514および補助加圧ローラ524の外径を8mmとし、長さを166mmとしている。また、図3に示したニップ部Nから定着ベルト510の最大外径位置P1までの距離M1と、ニップ部Nから加圧ベルト520の最大外径位置P2までの距離M2を、いずれも12.68 mmとしている。
なお、定着ベルト510および加圧ベルト520の蛇行(スキュー)を抑制するためには、駆動ローラ511、従動ローラ513および補助ローラ514の長さが定着ベルト510の幅よりも小さく、加圧ローラ521、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の長さが加圧ベルト520の幅よりも小さいことが好ましい。
<画像形成装置の制御系>
次に、画像形成装置1の制御系について説明する。図13は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1の制御部は、制御部110と、I/F(インタフェース)制御部111と、受信メモリ112と、画像データ編集メモリ113と、操作部114と、センサ群115と、帯電ローラ用電源116と、現像ローラ用電源117と、供給ローラ用電源118と、転写ローラ用電源119と、ヘッド制御部120と、ヒータ制御部121,122と、定着駆動制御部128と、搬送制御部130と、駆動制御部131と、ベルト駆動制御部134とを備える。
制御部110は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等を有して構成されている。制御部110は、上位装置からI/F制御部111を介して印刷データおよび制御コマンドを受信し、画像形成装置1の印刷動作を行う。
受信メモリ112は、上位装置からI/F制御部111を介して入力された印刷データを一時的に記憶する。画像データ編集メモリ113は、受信メモリ112に記憶した印刷データを受け取ると共に、その印刷データを編集処理することによって形成された画像データ、すなわちイメージデータを記録する。操作部114は、画像形成装置1の状態を表示するための表示部(例えばLED)および操作者が指示を入力するための操作部(例えばスイッチ)を備える。センサ群115は、画像形成装置1の動作状態を監視するための各種センサ、例えば媒体位置センサ、温湿度センサ、および濃度センサ等を含む。
帯電ローラ用電源116は、帯電ローラ432に、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させるための帯電電圧を印加する。現像ローラ用電源117は、現像ローラ434に、感光体ドラム431の表面の静電潜像を現像するための現像電圧を印加する。供給ローラ用電源118は、供給ローラ435に、トナーを現像ローラ434に供給するための供給電圧を印加する。転写ローラ用電源119は、転写ローラ464に、感光体ドラム431のトナー像を媒体101に転写するための転写電圧を印加する。ヘッド制御部120は、画像データ編集メモリ113に記録されたイメージデータを露光ヘッド433に送り、露光ヘッド433を発光制御する。
ヒータ制御部(定着制御部)121は、温度調節回路を有し、定着装置500の温度センサ518の出力信号に基づき、ヒータ用電源123からヒータ512に電流を供給する。ヒータ制御部(定着制御部)122は、温度調節回路を有し、温度センサ528の出力信号に基づき、ヒータ用電源124からヒータ522に電流を供給する。
定着駆動制御部128は、定着装置500の駆動ローラ511(図2)を回転させるため、定着モータ129を回転させる。搬送制御部130は、搬送モータ132の回転を制御し、図1に示したピックアップローラ202、フィードローラ203、搬送ローラ対302,304を回転させる。ベルト駆動制御部134は、ベルトモータ135の回転を制御して、ベルト駆動ローラ462を回転させる。なお、排出ローラ群504は、定着モータ129からの回転伝達によって回転する。
駆動制御部131は、各トナー像形成部430の感光体ドラム431、現像ローラ434、供給ローラ435等を回転させるための駆動モータ133を回転させる。
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1の基本動作について、図1および図13を参照して説明する。画像形成装置1の制御部110は、上位装置からI/F制御部111を介して印刷コマンドと印刷データを受信すると、画像形成(印刷)動作を開始する。制御部110は、受信メモリ112に印刷データを一時的に記録し、記録した印刷データを編集処理してイメージデータを生成し、画像データ編集メモリ113に記録する。
制御部110は、また、搬送制御部130により搬送モータ132を駆動させる。これにより、ピックアップローラ202およびフィードローラ203が回転し、給紙トレイ100に収納された媒体101を一枚ずつ搬送路に送り出す。さらに搬送ローラ対302,304が、媒体101を、搬送路に沿って画像形成部400まで搬送する。
画像形成部400では、ベルト駆動ローラ462により回転する転写ベルト461が、媒体101を吸着保持して搬送する。媒体101は、トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cの順に通過する。
制御部110は、各トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cにおいて、各色のトナー像の形成を行う。すなわち、制御部110は、各トナー像形成部430の帯電ローラ432、現像ローラ434および供給ローラ435に対し、帯電ローラ用電源116、現像ローラ用電源117および供給ローラ用電源118から、帯電電圧、現像電圧および供給電圧をそれぞれ印加する。
制御部110は、また、駆動制御部131により駆動モータ133を回転させ、感光体ドラム431を回転させる。感光体ドラム431の回転に伴って、帯電ローラ432、現像ローラ434および供給ローラ435も回転する。帯電ローラ432は、その帯電電圧により、感光体ドラム431の表面を一様に帯電させる。
制御部110は、さらに、画像データ編集メモリ113に記録されているイメージデータに基づき、ヘッド制御部120を発光制御する。ヘッド制御部120は、露光ヘッド433により、感光体ドラム431の表面に光を照射し、静電潜像を形成する。
感光体ドラム431の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ434に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム431の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム431が回転し、トナー像が転写ベルト461の表面に接近すると、制御部110は、転写ローラ用電源119から転写ローラ464に転写電圧を印加する。これにより、感光体ドラム431の表面に形成されたトナー像が、転写ベルト461上の媒体101に転写される。媒体101に転写されなかったトナーは、クリーニング部材436によって掻き取られる。
このように、各トナー像形成部430K,430Y,430M,430Cで形成された各色のトナー像が媒体101に順次転写され、互いに重ね合される。各色のトナー像が転写された媒体101は、転写ベルト461によってさらに搬送され、媒体案内部材506に案内されて、定着装置500に到達する。
定着装置500では、後述するように定着ベルト510および加圧ベルト520が既に回転し、ヒータ制御部121,122によって定着装置500のヒータ512,522が加熱され、所定の定着温度に達している。定着装置500に搬送された媒体101は、定着ベルト510と加圧ベルト520との間のニップ部で加圧および加熱され、トナー像が媒体101に定着される。
トナー像が定着した媒体101は、排出ローラ群504により、画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部505上に積載される。これにより、媒体101へのカラー画像の形成が完了する。
<定着装置の動作>
次に、本実施の形態の定着装置500の動作について、図2,図3および図13を参照して説明する。定着装置500では、画像形成装置1における画像形成動作の開始に伴い、駆動ローラ511の回転が開始される。具体的には、定着駆動制御部128が定着モータ129を回転させ、定着モータ129の回転が、駆動ローラ511の軸部の一端に設けられたギア511g(図7)を介して駆動ローラ511に伝達される。これにより、駆動ローラ511は、媒体101を搬送する方向(図2における時計回り)に回転する。定着ベルト510は、駆動ローラ511との間に発生する摩擦力により、図2に矢印R1で示す方向に回転する。
定着ベルト510が回転すると、従動ローラ513および補助ローラ514は、定着ベルト510の回転に追従して、媒体101を搬送する方向(図2における時計回り)に回転する。また、駆動ローラ511と加圧ローラ521との間に形成されるニップ部において、定着ベルト510の回転が加圧ベルト520に伝達される。これにより、加圧ベルト520は、定着ベルト510と同速度で、媒体101を搬送する方向(図2に矢印R2で示す方向)に回転する。
加圧ベルト520の回転は、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に伝達され、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、媒体101を搬送する方向(図2における反時計回り)に回転する。
定着ベルト510および加圧ベルト520は、上述したニップ部N以外の領域では弛んだ状態(ピンと張っていない状態)にある。定着ベルト510および加圧ベルト520は、基材510a,520a(図10(B))の剛性により、ニップ部N以外の領域が弛んでいる状態を維持しながら回転することができる。
ヒータ制御部121は、ヒータ用電源123からヒータ512に電流を供給し、ヒータ512を発熱させる。ヒータ512から照射された熱は、定着ベルト510の内周面に入射して定着ベルト510を加熱する。ヒータ512から照射された熱は、また、従動ローラ513および補助ローラ514に入射して、これら従動ローラ513および補助ローラ514を介して熱伝達により定着ベルト510を加熱する。
定着ベルト510の表面温度は、温度センサ518によって検出され、ヒータ制御部121に入力される。ヒータ制御部121は、温度センサ518の検出温度に基づいてヒータ512への電流供給を制御し、定着ベルト510の表面温度を所定の定着温度に保つ。
同様に、ヒータ制御部122は、ヒータ用電源124からヒータ522に電流を供給し、ヒータ522を発熱させる。ヒータ522から照射された熱は、加圧ベルト520の内周面に入射して加圧ベルト520を加熱する。ヒータ522から照射された熱は、また、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524に入射して、これら従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524を介して熱伝達により加圧ベルト520を加熱する。
加圧ベルト520の表面温度は、温度センサ528によって検出され、ヒータ制御部122に入力される。ヒータ制御部122は、温度センサ528の検出温度に基づいてヒータ522への電流供給を制御し、加圧ベルト520の表面温度を定着温度に保つ。なお、ここで説明した温度制御に限らず、定着側(ヒータ512側)のみで温度制御を行うことも可能である。
なお、ヒータ512,522の発熱温度は、ハロゲンランプの場合、例えば600〜800℃である。定着ベルト510および加圧ベルト520は、ヒータ512,522からの熱の直接照射、反射板515,525で反射された熱の照射、並びに従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524からの熱伝達により、約200℃に加熱される。
このように定着ベルト510および加圧ベルト520が加熱され、表面温度が定着温度に維持された状態で、媒体101が定着装置500に導入される。媒体101は、図3に示したように、従動ローラ513と従動加圧ローラ523とに挟まれたニップ部N3、補助ローラ514と補助加圧ローラ524とに挟まれたニップ部N2、および、駆動ローラ511と加圧ローラ521とに挟まれたニップ部N1を順に通過する。媒体101が各ニップ部N3,N2,N1を通過することにより、トナーが十分に加圧・加熱されて媒体101の表面に定着する。
次に、ヒータ512,522による定着ベルト510および加圧ベルト520の加熱について説明する。
図14は、ヒータ512,522による定着ベルト510および加圧ベルト520の加熱を説明するための図である。図14では、ヒータ512,522から照射(放射)される熱を、矢印で模式的に示している。ヒータ512から照射された熱は放射状に進む。そのうち、ヒータ512から駆動ローラ511に向かう熱は、反射板515によって反射されて定着ベルト510の内周面に照射される。
図14にクロスハッチングで示した領域S1は、ヒータ512から照射された熱が反射板515によって遮蔽される領域である。定着ベルト510の内側の領域において、領域S1以外の部分には、ヒータ512からの熱が照射される。すなわち、定着ベルト510の内周面、従動ローラ513および補助ローラ514は、ヒータ512からの熱照射を受ける。
従動ローラ513および補助ローラ514は、ヒータ512からの熱照射によって加熱されながら回転する。そして、ニップ部において、従動ローラ513および補助ローラ514から定着ベルト510に熱が伝達される。すなわち、定着ベルト510は、ヒータ512の熱照射によって加熱されるだけでなく、従動ローラ513および補助ローラ514から伝達される熱によっても加熱される。
同様に、ヒータ522から照射された熱は放射状に進み、ヒータ522から加圧ローラ521に向かう熱は、反射板525によって反射されて加圧ベルト520の内周面に照射される。図14にクロスハッチングで示した領域S2は、ヒータ522から照射された熱が反射板525によって遮蔽される領域である。加圧ベルト520の内側の領域において、領域S2以外の部分には、ヒータ522からの熱が照射される。すなわち、加圧ベルト520の内周面、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、ヒータ522の熱照射を受ける。
従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、ヒータ522の熱照射によって加熱されながら回転する。そして、ニップ部において、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524から加圧ベルト520に熱が伝達される。すなわち、加圧ベルト520は、ヒータ522の熱照射によって加熱されるだけでなく、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524から伝達される熱によっても加熱される。
ニップ部では、定着ベルト510および加圧ベルト520から媒体101に、トナー像の定着に必要な熱が移動する。一方、定着ベルト510および加圧ベルト520は、厚さが40〜70μmと薄く、熱容量が小さいため、熱が媒体101に奪われることにより、定着ベルト510および加圧ベルト520に残る熱が不足する可能性がある。定着ベルト510および加圧ベルト520の熱が不足すると、定着不良の原因となる。
これに対し、本実施の形態では、ニップ部において、従動ローラ513および補助ローラ514から定着ベルト510に熱が供給されるため、定着ベルト510から媒体101に奪われた熱を、従動ローラ513および補助ローラ514から定着ベルト510に供給される熱によって補うことができる。同様に、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524から加圧ベルト520に熱が供給されるため、加圧ベルト520から媒体101に奪われた熱を、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524から加圧ベルト520に供給される熱によって補うことができる。そのため、定着ベルト510および加圧ベルト520の温度低下(およびそれに伴う定着不良)を防止し、安定した定着を行うことが可能となる。
また、一般に、熱容量の大きいローラがベルトに接触している構成では、ベルトの熱がローラに奪われるため、ベルトの昇温に時間を要する傾向がある。しかしながら、本実施の形態では、従動ローラ513および補助ローラ514から定着ベルト510に熱が供給され、また、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524から加圧ベルト520に熱が供給されるため、定着ベルト510および加圧ベルト520の昇温に要する時間を短縮することができる。
ここで、従動ローラ513および補助ローラ514から定着ベルト510への熱伝達、並びに、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524から加圧ベルト520への熱伝達について、さらに説明する。
上記のように、従動ローラ513および補助ローラ514の熱容量は、いずれも定着ベルト510の熱容量よりも大きく、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524の熱容量は、いずれも加圧ベルト520の熱容量よりも大きい。
図15は、従動ローラ513から定着ベルト510への熱伝達を説明するための模式図であり、従動ローラ513の軸方向に直交する断面図である。説明の便宜上、ここでは、従動ローラ513は中空形状(後述する図17参照)とし、外径をr1とし、肉厚をt1とする。
従動ローラ513および定着ベルト510はどちらも金属であるため、従動ローラ513の軸方向と平行な直線で、互いに線接触する。図15では、定着ベルト510と従動ローラ513との接触部である直線は、点で表される。この点を、点P0とする。
従動ローラ513から定着ベルト510への熱供給(熱伝達)は、定着ベルト510の回転方向において、点P0を中心とする距離Lの範囲で行われる。距離Lに対応する従動ローラ513の中心角度を、θとする。点P0と中心として上流側に距離L/2だけ離れた位置を点P1とし、下流側に距離L/2だけ離れた位置を点P2とする。
ここで、紙面に直交する方向の単位長さを考え、定着ベルト510の厚さをt0で表すと、定着ベルト510の被加熱部分の体積Vbは、以下の式(1)で表される。
Vb=L×t0 ・・・(1)
一方、従動ローラ513において、定着ベルト510の被加熱部分(体積Vb)に熱が移動する部分(加熱に寄与する部分)は、図15において点a,b,c,dで囲まれた部分であり、その体積Vaは、以下の式(2)で表される。
Va={r12×π−(r1−t1)2×π}×θ/360 ・・・(2)
また、θは微小角度であるため、距離Lと角度θとの間には、以下の式(3)が成立する。
L≒2π×r1×θ/360 ・・・(3)
従動ローラ513によって定着ベルト510を十分に加熱するためには、従動ローラ513の加熱部分の体積Vaが、定着ベルト510の被加熱部分の体積Vbよりも大きいこと、すなわち、以下の式(4)が成立することが好ましい。
Va>Vb ・・・(4)
式(4)に、式(1)、(2)、(3)をそれぞれ代入すると、以下の式(5)が得られる。
{r12×π−(r1−t1)2×π}×θ/360>2π×r1×θ/360×t0
・・・(5)
この式(5)を整理すると、以下の式(6)が得られる。
r12−(r1−t1)2>2r1×t0 ・・・(6)
すなわち、厚さt0の定着ベルト510を十分に加熱するためには、従動ローラ513の半径r1および肉厚t1と定着ベルト510の厚さt0とが、上記の式(6)を満足することが好ましい。つまり、従動ローラ513の熱容量が定着ベルト510の熱容量よりも大きいとは、上記の式(6)を満足することをいう。
なお、ここでは、従動ローラ513が肉厚t1の中空形状である場合について説明したが、図16に示すように、従動ローラ153が中実である場合は、上記の式(6)において、t1=r1としたものと考えることができる。上記の式(6)において、t1=r1を代入すると、以下の式(7)が得られる。
r1>2×t0 ・・・(7)
すなわち、中実の従動ローラ513を用いて、厚さt0の定着ベルト510を十分に加熱するためには、従動ローラ513の半径r1と定着ベルト510の厚さt0とが、上記の式(7)を満足することが好ましい。つまり、中実の従動ローラ513を用いた場合、従動ローラ513の熱容量が定着ベルト510の熱容量よりも大きいとは、上記の式(7)を満足することをいう。
ここでは、従動ローラ513と定着ベルト510との関係について説明したが、補助ローラ514と定着ベルト510との関係も同様である。また、従動加圧ローラ523と加圧ベルト520との関係、および補助加圧ローラ524と加圧ベルト520との関係も同様である。
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、ヒータ512の熱照射により定着ベルト510を加熱すると共に、従動ローラ513を加熱して、従動ローラ513から定着ベルト510に熱を供給するように構成したため、定着ベルト510を効率よく加熱することができる。これにより、定着ベルト510の温度低下に伴う定着不良を低減して、安定した定着性能を確保すると共に、定着装置500のウォームアップに要する時間を短縮することができる。
また、ヒータ522の熱照射により加圧ベルト520を加熱すると共に、従動加圧ローラ523を加熱して、従動加圧ローラ523から加圧ベルト520に熱を供給するように構成したため、加圧ベルト520を効率よく加熱することができる。これにより、加圧ベルト520の温度低下に伴う定着不良を低減し、安定した定着性能を確保すると共に、定着装置500のウォームアップに要する時間を短縮することができる。
また、従動ローラ513および従動加圧ローラ523(または、更に補助ローラ514および補助加圧ローラ524)を金属ローラで構成することにより、ヒータ512,522(例えばハロゲンランプ)からの熱照射を直接受けることができ、極めて短い時間で熱を蓄えることができる。そのため、ニップ部における定着ベルト510および加圧ベルト520の温度を所望の高温(定着温度)に保つことが可能になる。
また、従動ローラ513および従動加圧ローラ523(または、更に補助ローラ514および補助加圧ローラ524)の表面に黒色塗装またはコーティングを施すことにより、ヒータ512,522の熱の吸収効率を高め、定着ベルト510および加圧ベルト520をさらに効率よく加熱することができる。
また、従動ローラ513および従動加圧ローラ523(または、更に補助ローラ514および補助加圧ローラ524)の熱伝導率を、定着ベルト510および加圧ベルト520の熱伝導率よりも高くすることにより、各ローラに蓄積された熱を定着ベルト510および加圧ベルト520に効率よく供給することができる。
<変形例>
図17は、定着装置500の他の構成例を示す図である。図17に示した定着装置500Aは、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524を中空形状とした点で、第1の実施の形態の定着装置500と異なっている。
この場合、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、例えば、外径が8mm、厚さt1(図15参照)が1mmのアルミニウム製のパイプで構成される。これら従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524は、ヒータ512,522から照射される熱により加熱されて、ニップ部において定着ベルト510および加圧ベルト520に熱を供給する。他の構成は、第1の実施の形態の定着装置500と同様である。
図18は、定着装置500の別の構成例を示す図である。図18に示した定着装置500Bは、補助ローラ514および補助加圧ローラ524を有さない点で、第1の実施の形態の定着装置500と異なっている。
これら従動ローラ513および従動加圧ローラ523は、ヒータ512,522から照射される熱により加熱されて、ニップ部において定着ベルト510および加圧ベルト520に熱を供給する。他の構成は、第1の実施の形態の定着装置500と同様である。
図19は、定着装置500のさらに別の構成例を示す図である。図19に示した定着装置500Cは、図18に示した定着装置500Bにおいて、従動ローラ513、補助ローラ514、従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524を、中空形状としたものである。他の構成は、図18に示した定着装置500Bと同様である。
図17〜図19に示した構成例においても、従動ローラ513および補助ローラ514(図18の場合は従動ローラ513のみ)から定着ベルト510への熱供給、並びに従動加圧ローラ523および補助加圧ローラ524(図18の場合は従動加圧ローラ523のみ)から加圧ベルト520への熱供給により、定着ベルト510および加圧ベルト520を効率よく加熱することができる。
なお、定着ベルト510の内側に配設するローラの数、および加圧ベルト520の内側に配設するローラの数は、図2および図17〜図19に示した例に限定されるものではない。
本発明は、電子写真方式を利用して媒体に画像を形成するプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置の定着装置に利用することができる。