第1の実施の形態.
<画像形成装置の構成>
図1は、本実施の形態の定着装置10を備えた画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法を用いてカラー画像を形成するものである。なお、ここでは、カラー画像を形成する画像形成装置1について説明するが、単色の画像を形成するものであってもよい。
画像形成装置1は、印刷用紙等の媒体2を積載状態で収容する媒体収容部としての給紙カセット40を備えている。給紙カセット40は、例えば、画像形成装置1の本体下部に着脱可能に取り付けられている。
また、給紙カセット40に載置された媒体2の先端に当接する位置に、給紙手段としてのフィードローラ41が配置されている。フィードローラ41が図中反時計回りに回転することにより、給紙カセット40に載置された媒体2を上から順に搬送路に送り出す。
給紙カセット40から送り出された媒体2の搬送路に沿って、搬送手段としてのレジストローラ対43と搬送ローラ対44とが配置されている。レジストローラ対43は、フィードローラ41から送り出された媒体2の斜行(スキュー)を矯正して搬送する。搬送ローラ対44は、レジストローラ対43から搬送された媒体2を、次に説明するプロセスユニット20Y,20M,20C,20Kに搬送する。
プロセスユニット(画像形成ユニット)20K,20Y,20M,20Cは、媒体の搬送路に沿って、ここでは図中右から左に一列に配置されている。プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cは、それぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのトナー(現像剤)を用いてトナー像(現像剤像)を形成するものである。プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cは、トナーを除き共通の構成を有しているため、「プロセスユニット20」と総称して説明する。
プロセスユニット20は、潜像担持体としての感光体ドラム21を有している。感光体ドラム21は、一方向(ここでは図中時計回り方向)に回転する。感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21の回転方向に沿って、帯電部材としての帯電ローラ22と、露光部としての露光ヘッド23と、現像剤担持体としての現像ローラ24と、クリーニング部材としてのクリーニングブレード28とが配置されている。なお、これらのうち、露光ヘッド23は、画像形成装置1の上部カバーに取り付けられている。
また、現像ローラ24に対向するように、現像剤供給部材としての供給ローラ25が設けられており、供給ローラ25の上方には現像剤収容体としてのトナーカートリッジ26が設けられている。現像ローラ24、供給ローラ25およびトナーカートリッジ26を含むユニットは、現像ユニット27とも称する。
感光体ドラム21は、略円筒状の部材であり、導電性支持体の表面に感光層(電荷発生層および電荷輸送層)を有している。帯電ローラ22は、感光体ドラム21に当接するように配置され、感光体ドラム21の回転に追従して回転する。帯電ローラ22には、一定の帯電電圧が付与されており、感光体ドラム21の表面(感光層)を一様に帯電させる。
露光ヘッド23は、例えばLED(発光ダイオード)等の発光素子を一列に配列した発光素子アレイと、レンズ要素を一列に配列したレンズアレイとを有している。露光ヘッド23は、帯電ローラ22によって一様に帯電した感光体ドラム21の表面に光を照射して、静電潜像を形成する。
現像ローラ24は、感光体ドラム21に対向配置され、感光体ドラム21とは逆方向に(対向部での表面の移動方向が互いに同方向となるように)回転する。現像ローラ24には一定の現像電圧が付与されており、感光体ドラム21の表面の静電潜像をトナーにより現像して、トナー像(現像剤像)を形成する。供給ローラ25は、現像ローラ24に対向配置され、現像ローラ24とは同方向に(対向部での表面の移動方向が互いに逆方向となるように)回転する。また、供給ローラ25には、現像ローラ24に現像剤を供給するための供給電圧が付与されている。トナーカートリッジ26は、プロセスユニット20の本体に着脱可能に取り付けられ、現像ローラ24および供給ローラ25に現像剤を補給する。クリーニングブレード28は、感光体ドラム21の表面に当接するように配置され、感光体ドラム21の表面に残る転写残トナーを掻き落とす。
なお、ここでは、静電潜像担持体として感光体ドラムを用いているが、感光体ドラムの代わりにベルトを用いてもよい。
プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cの下側には、転写ユニット30が設けられている。転写ユニット30は、無端状ベルトである転写ベルト31と、転写ベルト31が張架された一対のローラである駆動ローラ32および従動ローラ33とを備えている。駆動ローラ32は、図中反時計回りに回転して、転写ベルト31を走行させる。従動ローラ33は、転写ベルト31に一定の張力を付与する。転写ベルト31は、表面に媒体2を静電吸着により保持し、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cに沿って搬送する。
転写ユニット30は、さらに、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cの各感光体ドラム21に対向配置された4つの転写ローラ34(転写部材)を有している。転写ローラ34は、転写ベルト31を介して、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cの各感光体ドラム21に押圧されている。転写ローラ34には転写電圧が付与されており、この転写電圧により、感光体ドラム21上に形成されたトナー像を媒体2に転写する。
媒体の搬送路に沿ってプロセスユニット20K,20Y,20M,20Cの下流側に、定着装置10が配置されている。定着装置10は、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cにおいてトナー像が転写された媒体2を加熱および加圧して、トナー像を媒体2に定着させる。定着装置10の構成については、後述する。
媒体2の搬送路に沿って定着装置10の下流側に、排出ローラ群46,47が設けられている。排出ローラ群46,47は、定着装置10において定着が完了した媒体2を排出口48から排出する。画像形成装置1の上部カバーには、排出口48から排出された媒体2を載置するスタッカ部49が設けられている。
<定着装置の構成>
図2は、定着装置10の構成を示す図である。図2に示すように、定着装置10は、無端状ベルトである定着ベルト11を有している。定着ベルト11は、矢印R1で示す方向(図中時計回り方向)に回転走行する。定着ベルト11の内周面側には、ニップ部Nを形成するためのニップ形成部材15と、ニップ形成部材15の前後で定着ベルト11の回転走行を案内するベルトガイド部材14A,14B(ベルト当接部材)と、定着ベルト11を内周面側から加熱する発熱体としてのハロゲンヒータ13A,13Bとが設けられている。
ハロゲンヒータ13A,13Bと、ニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bとの間には、ハロゲンヒータ13から放射された光(熱)を定着ベルト11に向けて反射する反射部材12が設けられている。
定着ベルト11の外周面側には、定着ベルト11を介してニップ形成部材15に押し当てられる加圧ローラ16(加圧部材)が設けられている。加圧ローラ16は、矢印R2で示す方向(図中反時計回り方向)に回転する。定着ベルト11を介してニップ形成部材15と加圧ローラ16とが当接する部分が、ニップ部Nとなる。このニップ部Nには、矢印A1で示すように図中右側から媒体2が挿入され、定着ベルト11と加圧ローラ16との間を通過する。なお、以下では、図2に示すように定着ベルト11の下方に加圧ローラ16が設けられているものとして説明する。
媒体2の進行方向において、定着ベルト11と加圧ローラ16との間のニップ部Nの上流側(媒体挿入側)には、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cから定着装置10に搬送されてきた媒体2をニップ部Nに案内する媒体ガイド部材(例えばガイド板)17が設けられている。
また、媒体2の進行方向において、定着ベルト11と加圧ローラ16との間のニップ部Nの下流側(媒体排出側)には、ニップ部Nを通過した媒体2を定着ベルト11から確実に分離させる分離部材18が配置されている。
定着ベルト11の外周面に対向するように、定着ベルト11の温度を検出する第1の温度検出手段としてのベルト温度センサ51が設けられている。ここでは、ベルト温度センサ51は、定着ベルト11の最上部に対向するように配置されている。また、ベルトガイド部材14A,14Bの一方には、当該ベルトガイド部材の温度を検出する第2の温度検出手段としての部材温度センサ52が設けられている。
定着ベルト11は、薄肉で可撓性と耐熱性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。より具体的には、定着ベルト11は、内周側の基材と、基材の表面に形成された離型層とを有している。
基材は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料、またはポリイミド(PI)等の樹脂材料で形成されている。離型層は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等で形成されている。また、基材と離型層との間に、シリコンゴム、発泡性シリコンゴム、またはフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
定着ベルト11の厚さは、例えば、30〜200μmである。定着ベルト11は、定着装置10に装着する前の状態で、内径が約30〜40mmの円形状を有している。なお、定着ベルト11は、ニップ形成部材15と加圧ローラ16との間で挟持され、さらにベルトガイド部材14A,14Bに案内されて、張力が発生しない状態(フリー状態)に保たれている。
加圧ローラ16は、金属製のシャフトである芯金161と、芯金161の表面に設けられた弾性層162と、弾性層162の表面に設けられた離型層163とを有している。弾性層162は、発泡性シリコンゴム、シリコンゴム、またはフッ素ゴム等で形成されている。離型層163は、PFAまたはPTFE等で形成されている。
加圧ローラ16は、後述するコイルバネにより、定着ベルト11を介してニップ形成部材15に押圧されている。加圧ローラ16と定着ベルト11とが圧接する箇所では、加圧ローラ16の弾性層162が押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ16は、後述する駆動モータ84の駆動力によって回転する。加圧ローラ16が回転すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト11に伝達され、定着ベルト11が従動回転する。
ここでは、加圧ローラ16を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。加圧ローラ16を中空のローラとした場合、加圧ローラ16の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。
加圧ローラ16が弾性層を有さない場合、熱容量が小さくなって定着性は向上するが、ニップ部Nで未定着トナーを加圧する際にベルト表面の微小な凹凸が媒体に転写され、画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。そのため、加圧ローラ16には、厚さ100μm以上の弾性層162を設けることが望ましい。これにより、弾性層162の弾性変形によって微小な凹凸を吸収することができ、光沢ムラの発生を回避することができる。弾性層162はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ16の内部に加熱源を設けない場合は、スポンジゴムが望ましい。スポンジゴムを用いることで断熱性が高くなり、定着ベルト11の熱が加圧ローラ16に奪われにくくなるためである。
ハロゲンヒータ13A,13Bは、それぞれの両端部が定着装置10の側板101(図7)に固定されている。ハロゲンヒータ13A,13Bは、画像形成装置1のヒータ制御部81により制御されて発熱する。ヒータ制御部81は、ベルト温度センサ51によって検出した定着ベルト11の表面温度に基づいて、ハロゲンヒータ13A,13Bの出力を制御する。このようなハロゲンヒータ13A,13Bの出力制御によって、定着ベルト11の温度(定着温度)を所望の温度に設定している。なお、加熱源としては、ハロゲンヒータに限らず、例えば、抵抗発熱体、またはカーボンヒータ等を用いてもよい。
図3(A)および(B)は、ニップ形成部材15の形状を示す側面図および斜視図である。ニップ形成部材15は、加圧ローラ16の加圧力を受けてニップ部Nの形状を決定するものであり、定着ベルト11の幅方向すなわち加圧ローラ16の軸方向に長い長尺形状を有している。ニップ形成部材15は、基材151と、弾性層152と、表層153とを有している。
基材151は、ニップ形成部材15の全体を支える部分であり、その両端部が定着装置10の側板101(図7)に固定されている。基材151は、加圧ローラ16からの圧力による撓みを防止するため、高剛性を有する部材で形成されている。ここでは、基材151は、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。基材151は、図3(A)に示すように、長手方向に直交する断面において、加圧ローラ16に近づくほど(図中下側ほど)幅が広がる略台形状の上側台形部151aと、上側台形部151aの下側に連続して形成され、上側台形部151aよりも傾斜面の勾配が緩い略台形状の下側台形部151bと、下側台形部151bの下側に連続して形成され、幅が一定の底部151cとを有している。このような断面形状により、基材151の断面係数を大きくし、機械的強度を向上させている。また、基材151の底部151cの下面は、加圧ローラ16の外周面に沿った曲面で構成されている。
弾性層152は、ニップ形成部材15と加圧ローラ16との間の圧力分布を、軸方向に渡って均一化するものである。ここでは、弾性層152は、耐熱性の高いゴム材料、例えばソリッド(発泡体でない)のシリコンゴム、スポンジ状シリコンゴムまたはフッ素ゴム等で形成される。弾性層152は、基材151上に成形してもよいし、接着により基材151(より具体的には、底部151cの下面)に固定してもよい。弾性層152の厚さは、例えば0.5〜1.0mmである。
表層153は、定着ベルト11の内周面との摩擦負荷を低減させる作用を有する部分である。表層153は、耐熱性が高く表面摩擦抵抗が低い樹脂材料、例えば、ソリッドのシリコン系樹脂またはフッ素系樹脂等を、弾性層152上に塗布することにより形成される。なお、樹脂材料を塗布する代わりに、低摩擦かつ耐熱性を有するシート状の部材を接着等により固定してもよい。
図4は、ベルトガイド部材14A,14Bの形状を示す斜視図である。ベルトガイド部材14A,14Bは、いずれもニップ形成部材15の長手方向と平行な方向に長い長尺部材であり、それぞれの両端部が定着装置10の側板101に固定されている。
本実施の形態のように薄い定着ベルト11を用いる場合、回転走行中の定着ベルト11がニップ部Nの上流側または下流側でばたつくと、上流側では、定着ベルト11が媒体2上の未定着トナーに接触し、下流側では、定着ベルト11からのトナーの分離が不均一になり、印刷画像に乱れが生じる可能性がある。そのため、ニップ部Nの上流側または下流側にベルトガイド部材14A,14Bを設け、ニップ部Nを通過する前後の定着ベルト11の走行を安定させている。
ベルトガイド部材14A,14Bは、長手方向に直交する断面において、例えば略円弧状に延在する形状を有している。なお、必ずしも略円弧状である必要はなく、ニップ部Nの上流側と下流側で定着ベルト11のばたつきを抑制できる形状であればよい。ベルトガイド部材14A,14Bは、ここでは、ニップ部Nの中心に対して互いに対称な形状を有している。
ベルトガイド部材14A,14Bは、熱容量を小さくして熱伝達性を改善するために、板厚が薄いことが望ましい。本実施の形態では、ベルトガイド部材14A,14Bは、耐熱性を有する材料で形成されている。例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、LCP(液晶ポリマー)である。ベルトガイド部材14A,14Bの板厚は、例えば2mm程度である。
また、ベルトガイド部材14A,14Bは、いずれも長手方向両端に、ベルトガイド部材14A,14Bを定着装置10の側板101(図7)に取り付けるための円弧状の取り付け片141を有している。
図2に戻り、ハロゲンヒータ13A,13Bと、ニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bとの間に、反射部材12が設けられている。反射部材12は、ハロゲンヒータ13A,13Bによって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。高融点の金属材料は、例えば、アルミニウムやステンレス等である。
反射部材12は、ハロゲンヒータ13A,13Bからニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bに向かう方向に放射された光(輻射熱)を、定着ベルト11の内周面に向けて反射する。これにより、定着ベルト11に到達する光量を多くすることができ、定着ベルト11を効率良く加熱することができる。
ここでは、反射部材12は、ニップ部Nの中央に対応する部分が最も上方(すなわちハロゲンヒータ13A,13B側)に位置し、当該中央部分の両側が下方(すなわち加圧ローラ16側)に窪み、その2つの窪み部分のさらに両側が上方に(すなわちハロゲンヒータ13A,13B側)に突出する形状を有している。
言い換えると、反射部材12は、ニップ形成部材15の基材151の上端面と両側面(傾斜面)に沿う頂部120および傾斜部121,122を有している。反射部材12は、また、傾斜部121,122の各下端部からそれぞれ水平に延在する底部123,124と、底部123,124の各終端部から斜め上方に延在する傾斜部125,126と、傾斜部125,126の各上端部から水平に延在する突出部127,128とを有している。
反射部材12の底部123および傾斜部125は、ベルトガイド部材14Aの内周面に対向し、反射部材12の底部124および傾斜部126は、ベルトガイド部材14Bの内周面に対向する。また、反射部材12の突出部127は、ベルトガイド部材14Aの上端部(定着ベルト11の回転方向における上流側の端部)に対向し、突出部128は、ベルトガイド部材14Bの上端部(定着ベルト11の回転方向における下流側の端部)に対向する。
反射部材12をこのような形状とすることにより、反射部材12、ハロゲンヒータ13A,13B、ニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bを、定着ベルト11の内周面側の限られたスペースに効率よく配置することができる。なお、反射部材12の形状は、図2に示した形状に限定されるものではなく、例えば平板状であってもよい。
また、本実施の形態では、反射部材12に孔12A(熱伝達部)を設け、ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された光の一部を、ベルトガイド部材14Aまたは14B(ここではベルトガイド部材14A)に伝達させる。孔12Aは、反射部材12の上面(ハロゲンヒータ13A,13B側の面)から下面(ベルトガイド部材14A,14B)までを貫通する貫通孔(穴)である。反射部材12の孔12A以外の部分は、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱を反射する反射部となる。
図5(A)は、反射部材12の一構成例を示す斜視図である。図5(A)では、ニップ部Nを通過する媒体2の進行方向を、矢印A1で示している。この構成例では、反射部材12のニップ部Nよりも上流側の底部123および傾斜部125に、複数の孔12Aが形成されている。各孔12Aは、反射部材12の長手方向に延在するスリット状に形成されている。なお、反射部材12の底部123および傾斜部125は、ベルトガイド部材14Aに対向している部分である。
図5(B)は、反射部材12の別の構成例を示す斜視図である。この構成例では、反射部材12のニップ部Nよりも上流側の底部123および傾斜部125に、複数の略円形の孔12Aが形成されている。図5(A)および(B)のいずれの構成例においても、孔12Aは、反射部材12の長手方向に亘って略均等に分布している。
図5(A)および(B)のいずれの場合も、ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された光の一部が、反射部材12の底部123および傾斜部125に形成された複数の孔12Aを介して、ベルトガイド部材14Aに伝達される。これにより、定着ベルト11のうちニップ部Nの上流側に位置する部分(すなわちニップ部Nに到達する直前の部分)が、ベルトガイド部材14Aを介して加熱される。
なお、ここでは、反射部材12に孔12A(穴)を形成したが、反射部材12の一部が光を透過するようにしてもよい。例えば、孔12Aにガラス等の光透過部材を埋め込んでもよい。
図6(A)は、ニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bの取り付け構造を説明するための斜視図である。図6(B)および(C)は、図6(A)に矢印6Bで示す方向、および矢印6Cで示す方向からそれぞれ見た図である。なお、図6(C)では、ベルトガイド部材14A,14Bを省略している。
ニップ形成部材15の長手方向両端には、ニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bを保持するフランジ19がそれぞれ設けられている。図6(A)〜(C)では、一方のフランジ19のみ示すが、他方のフランジ19も同様に構成されている。図6(B)に示すように、フランジ19は、大径部192を定着装置10の側板101に当接させて固定されている。
フランジ19は、反射部材12、ハロゲンヒータ13A,13B、ニップ形成部材15およびベルトガイド部材14A,14Bの取り付け片141を囲むように環状に形成されている。フランジ19は、ニップ形成部材15に対応する位置に開口191を有するC字状に形成されており、この開口191にニップ形成部材15が係合する。
定着ベルト11(図6では省略されている)は、ニップ形成部材15の長手方向において、2つのフランジ19の間に位置している。定着ベルト11に寄り(ニップ形成部材15の長手方向における変位)が生じた場合には、定着ベルト11の幅方向端部がフランジ109と当接することにより、寄りが規制される。
図7は、定着装置10の一方の側板101を示す模式図である。定着装置10の側板101には、ニップ形成部材15の端部が嵌合する嵌合穴102と、ベルトガイド部材14A,14Bの各取り付け片141が嵌合する嵌合穴103,104と、反射部材12の端部が嵌合する嵌合穴105とが形成されている。
嵌合穴102はニップ形成部材15の断面形状と略同一の穴形状を有している。嵌合穴103,104は、ベルトガイド部材14A,14Bの円弧状の取り付け片141の断面形状と略同一の穴形状を有している。嵌合穴105は、反射部材12の断面形状と略同一の穴形状を有している。
定着装置10の側板101には、また、フランジ109を固定するための2つのねじを螺合させるためのねじ穴107,108が形成されている。また、側板101の上部には、ハロゲンヒータ13A,13Bの端部を取り付けるコネクタ106が配設されている。
なお、側板101の下部には、上下(すなわち加圧ローラ16が定着ベルト11に接近または離間する方向)に長い溝部110が形成されている。この溝部110には、上述した加圧ローラ16を回転可能に支持する軸受113を保持する軸受ブロック111が、上下に移動可能に取り付けられている。軸受ブロック111は、コイルスプリング112により上方(すなわち加圧ローラ16が定着ベルト11に接近する方向)に付勢されている。
なお、図7には一方の側板101を示したが、他方の側板101は、定着ベルト11の幅方向中央に対して、図7に示した側板101と対称な形状を有している。
図8は、ベルト温度センサ51および部材温度センサ52の配置を示す図である。ベルト温度センサ51および部材温度センサ52は、例えばサーミスタである。ベルト温度センサ51は、定着ベルト11の外周面から一定の間隔をあけた位置に配置されている。部材温度センサ52は、ベルトガイド部材14A,14Bの一方(または両方)に設けられている。なお、図8では、ベルトガイド部材14A,14Bの両方に部材温度センサ52が設けられた状態を示している。
部材温度センサ52をベルトガイド部材14Aまたはベルトガイド部材14Bの上面(反射部材12側の面)に配置する場合には、反射部材12の孔12Aの配置に基づいて、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱を直接受けない位置に、部材温度センサ52を配置することが望ましい。
例えば、反射部材12の隣り合う孔12Aの間隔を広めに設定し、当該隣り合う孔12Aの間に対向する位置に部材温度センサ52を配置してもよい。また、ベルトガイド部材14Aの長手方向端部(すなわち反射部材12の孔12Aに対向しない部分)に部材温度センサ52を配置してもよい。また、部材温度センサ52を、ベルトガイド部材14Aまたはベルトガイド部材14Bの内部に配置してもよい。
定着動作時のハロゲンヒータ13A,13Bの制御は、主としてベルト温度センサ51の検出温度に基づいて行い、異常高温の検出等を、部材温度センサ52の検出温度に基づいて行う。部材温度センサ52は、耐熱温度以下での管理が必要なベルトガイド部材14A,14Bの温度を直接検出できるという利点がある。
図9は、部材温度センサ52の配置の他の例を示す図である。図9に示した例では、ベルトガイド部材14A,14Bの一方(ここではベルトガイド部材14)に部材温度センサ52A(第2の温度検出手段)を設け、さらに、ニップ形成部材15に部材温度センサ52B(第3の温度検出手段)を設けている。このように部材温度センサ52A,52Bを配置することで、ベルトガイド部材14およびニップ形成部材15の温度を直接検出することができるため、異常高温の検出等をより正確に行うことができる。
部材温度センサ52(52A,52B)は、定着ベルト11の内周面側に設けられた各部材の定着動作中あるいは予熱待機モードでの温度を考慮し、耐熱温度に最も近い温度まで昇温する部分、若しくは最も高い温度まで昇温する部分の温度を測定可能な位置に配置することが望ましい。
なお、部材温度センサ52(52A,52B)の配置はこれらの例に限定されるものではなく、安定して温度測定を行うことができる配置であればよい。また、ベルトガイド部材に複数の部材温度センサを取り付けて、ベルトガイド部材内の温度むらの状態を把握するために用いてもよい。
また、定着ベルト11の幅方向両端部(媒体2に接触しない部分)とハロゲンヒータ13A,13Bとの間に、ハロゲンヒータ13A,13Bからの熱を遮蔽する遮蔽部材を設けてもよい。これにより、連続印刷時の定着ベルト11の幅方向両端部(非通紙領域)における過昇温を抑制し、定着ベルト11の熱による劣化や損傷を防止することができる。
<画像形成装置の制御系>
次に、画像形成装置1の制御系について説明する。図10は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1の制御部は、制御部70と、I/F(インタフェース)制御部71と、受信メモリ72と、画像データ編集メモリ73と、操作部74と、センサ群75と、帯電ローラ用電源76と、現像ローラ用電源77と、供給ローラ用電源78と、転写ローラ用電源79と、ヘッド制御部80と、ヒータ制御部81と、駆動制御部83と、定着駆動制御部85と、搬送制御部87と、ベルト駆動制御部89とを備える。
制御部70は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等を有して構成されている。制御部70は、上位装置からI/F制御部71を介して印刷データおよび制御コマンドを受信し、画像形成装置1の印刷動作を行う。
受信メモリ72は、上位装置からI/F制御部71を介して入力された印刷データを一時的に記憶する。画像データ編集メモリ73は、受信メモリ72に記憶した印刷データを受け取ると共に、その印刷データを編集処理することによって形成された画像データ、すなわちイメージデータを記録する。操作部74は、画像形成装置1の状態を表示するための表示部(例えばLED)および操作者が指示を入力するための操作部(例えばスイッチ)を備える。センサ群75は、画像形成装置1の動作状態を監視するための各種センサ、例えば媒体位置センサ、温湿度センサ、および濃度センサ等を含む。
帯電ローラ用電源76は、帯電ローラ22に、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させるための帯電電圧を印加する。現像ローラ用電源77は、現像ローラ24に、感光体ドラム21の表面の静電潜像を現像するための現像電圧を印加する。供給ローラ用電源78は、供給ローラ25に、トナーを現像ローラ24に供給するための供給電圧を印加する。転写ローラ用電源79は、転写ローラ34に、感光体ドラム21のトナー像を媒体2に転写するための転写電圧を印加する。ヘッド制御部80は、画像データ編集メモリ73に記録されたイメージデータを露光ヘッド23に送り、露光ヘッド23を発光制御する。
ヒータ制御部(定着制御部)81は、温度調節回路を有し、主としてベルト温度センサ51からの信号に基づき、ヒータ用電源82からハロゲンヒータ13A,13Bに電流を供給する。
駆動制御部83は、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cの各感光体ドラム21、現像ローラ24、供給ローラ25等を回転させるための駆動モータ84の回転を制御する。
定着駆動制御部85は、定着装置10の加圧ローラ16(図2)を回転させるための定着モータ86の回転を制御する。搬送制御部87は、図1に示したフィードローラ41、レジストローラ対43および搬送ローラ対44を回転させるための搬送モータ88の回転を制御する。ベルト駆動制御部89は、転写ベルト31を走行させる駆動ローラ32を回転させるためのベルトモータ90の回転を制御する。なお、排出ローラ群46,47は、定着モータ86からの回転伝達によって回転する。
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1の画像形成(印刷)の基本動作について、図1および図10を参照して説明する。画像形成装置1の電源が投入された状態で、画像形成装置1の制御部70は、上位装置からI/F制御部71を介して印刷コマンドと印刷データを受信する。制御部70は、受信メモリ72に印刷データを一時的に記録し、記録した印刷データを編集処理してイメージデータを生成し、画像データ編集メモリ73に記録する。
制御部70は、また、搬送制御部87により搬送モータ88を回転させる。これにより、フィードローラ41が回転し、給紙カセット40に収納された媒体2を一枚ずつ搬送路に送り出す。搬送路に送り出された媒体2は、レジストローラ対43によってスキューを矯正されながら搬送され、さらに搬送ローラ対44によって転写ベルト31上まで搬送される。
制御部70は、また、ベルト駆動制御部89によりベルトモータ90を回転させる。これにより、駆動ローラ32が回転して、転写ベルト31が走行する。転写ベルト31は、搬送ローラ対44によって搬送された媒体2を吸着保持して、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cの順に搬送する。
制御部70は、プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cにおいて、各色のトナー像の形成を行う。すなわち、制御部70は、各プロセスユニット20の帯電ローラ22、現像ローラ24および供給ローラ25に対し、帯電ローラ用電源76、現像ローラ用電源77および供給ローラ用電源78から、帯電電圧、現像電圧および供給電圧をそれぞれ印加する。
制御部70は、また、駆動制御部83により駆動モータ84を回転させ、感光体ドラム21を回転させる。感光体ドラム21の回転に伴って、帯電ローラ22、現像ローラ24および供給ローラ25も回転する。帯電ローラ22は、その帯電電圧により、感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる。
制御部70は、さらに、画像データ編集メモリ73に記録されているイメージデータに基づき、ヘッド制御部80を発光制御する。ヘッド制御部80は、露光ヘッド23により、感光体ドラム21の表面に光を照射し、静電潜像を形成する。
感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ24に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム21の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム21が回転し、トナー像が転写ベルト31の表面に接近すると、制御部70は、転写ローラ用電源79から転写ローラ34に転写電圧を印加する。これにより、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像が、転写ベルト31上の媒体2に転写される。媒体2に転写されなかったトナーは、クリーニングブレード28によって掻き取られる。
このように、各プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cで形成された各色のトナー像が媒体2に順次転写され、互いに重ね合される。各色のトナー像が転写された媒体2は、転写ベルト31によってさらに搬送され、定着装置10に到達する。
定着装置10では、次に説明する定着動作により、トナー像が媒体2に定着する。トナー像が定着した媒体2は、排出ローラ群46,47により、排出口48から外部に排出され、スタッカ部49上に積載される。これにより、媒体2へのカラー画像の形成が完了する。
<定着装置の動作>
次に、本実施の形態の定着装置10の動作について、図2および図10を参照して説明する。画像形成装置1の電源が投入されると、制御部70は、定着駆動制御部85により定着モータ86を回転させ、加圧ローラ16を図2に矢印R2で示す方向に回転させる。定着ベルト11は、加圧ローラ16との摩擦力によって、図2に矢印R1で示す方向に従動回転する。また、制御部70は、ベルト温度センサ51によって検出された定着ベルト11の温度に基づき、ヒータ制御部81によりハロゲンヒータ13A,13Bに電力を供給(通電)して発熱させる。
ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された熱(光)のうち、定着ベルト11の内周面に向かう熱は、定着ベルト11の内周面に入射して定着ベルト11を加熱する。ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された熱のうち、反射部材12に向かう熱は、反射部材12の表面で反射される。反射部材12の表面で反射された光は、定着ベルト11の内周面に入射して定着ベルト11を加熱する。
このとき、ハロゲンヒータ13A,13Bから反射部材12に入射した熱の一部は、反射部材12の孔12Aを通過し、ベルトガイド部材14Aに入射してベルトガイド部材14Aを加熱する。
定着ベルト11の表面温度は、ベルト温度センサ51によって検出され、ヒータ制御部81に入力される。ヒータ制御部81は、ベルト温度センサ51の検出温度に基づいてハロゲンヒータ13A,13Bへの電流供給を制御し、定着ベルト11の表面温度を所定の定着温度に保つ。
プロセスユニット20K,20Y,20M,20Cによりトナー像が転写された媒体2は、図2に矢印A1で示すように、媒体ガイド部材17(図2)によって案内され、圧接状態にある定着ベルト11と加圧ローラ16とのニップ部Nに侵入する。
そして、ハロゲンヒータ13A,13Bによって加熱された定着ベルト11の熱と、定着ベルト11と加圧ローラ16との間の加圧力とによって、媒体2の表面にトナー像が定着する。トナー像が定着した媒体2は、図2に矢印A2で示すようにニップ部Nから搬出される。このとき、媒体2の先端が分離部材18の先端に接触することにより、媒体2が定着ベルト11から確実に分離される。ニップ部Nから排出された媒体2は、上述したように排出ローラ群46,47によって排出される。
本実施の形態では、反射部材12によって、ベルトガイド部材14A,14Bおよびニップ形成部材15をハロゲンヒータ13A,13Bの熱から保護している。そのため、連続印刷を行った場合であっても、ベルトガイド部材14A,14Bおよびニップ形成部材15の過昇温を防止し、それぞれの耐熱温度以下に保つことができる。
さらに、本実施の形態では、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱の一部を、反射部材12に設けた孔12Aを介してベルトガイド部材14Aに伝達している。そのため、ニップ部Nの上流側において、ベルトガイド部材14Aに接触する定着ベルト11の温度低下を抑制することができる。
すなわち、ニップ部Nの上流側では、定着ベルト11が媒体2に接触し、定着ベルト11の熱が媒体2に奪われるが、ベルトガイド部材14Aから定着ベルト11に熱が補給されるため、定着ベルト11の温度低下を抑制することができる。そのため、ニップ部Nでの十分な定着温度を確保し、安定した定着動作を実現することができる。
なお、反射部材12の孔12Aの大きさ、個数および配置間隔は、ベルトガイド部材14Aにある程度の熱を供給して定着ベルト11の温度低下を抑制する一方、ベルトガイド部材14A自体の過昇温を防止するように決定される。
また、本実施の形態では、制御部70は、ベルト温度センサ51に基づくハロゲンヒータ13A,13Bの制御に加えて、部材温度センサ52で検出される温度が所定値を超えた場合(異常高温と判断した場合)には、ヒータ制御部81を介してハロゲンヒータ13A,13Bへの通電を停止するか、あるいは、加圧ローラ16の回転速度を低下させて、ベルトガイド部材14A,14Bやニップ形成部材15の過昇温を防止する。これにより、ベルトガイド部材14A,14Bやニップ形成部材15を確実に耐熱温度以下に保つようにしている。
また、本実施の形態では、画像形成(印刷ジョブ)の終了後に、定着ベルト11の温度上昇を防止するための「ジョブ後回転」を行っている。すなわち、ハロゲンヒータ13A,13Bは通電停止後もある程度の熱を放射するため、画像形成が終了してすぐに定着ベルト11の動作を全て停止すると、定着ベルト11の温度が上昇し過ぎる可能性がある。そこで、本実施の形態では、画像形成が終了した後も定着ベルト11の回転を続ける「ジョブ後回転」を行う。
ジョブ後回転に関し、本実施の形態では、定着ベルト11の設定温度として、定着制御温度H(定着動作を行う際の定着ベルト11の温度)よりも低い、ベルト停止設定温度bを設けている。
まず、画像形成が終了した段階で、ハロゲンヒータ13A,13Bへの通電を停止する。そののち、ベルト温度センサ51で検出した定着ベルト11の温度がベルト停止設定温度b以上である場合は、制御部70は、加圧ローラ16の回転を継続する。これにより、定着ベルト11は、加圧ローラ16に追従して回転を続ける。ベルト温度センサ51で検出した定着ベルト11の温度がベルト停止設定温度bよりも低くなった時点で、制御部70は加圧ローラ16の回転を停止する。これにより、定着ベルト11の回転も停止する。
ベルト停止設定温度bは、定着ベルト11の熱損傷が生じない温度(定着ベルト11の耐熱温度に基づいて設定された所定温度)に設定される。定着動作時(通常運転時)のベルト温度センサ51の検出温度は、例えば130℃〜180℃である。これに対し、ベルト停止設定温度bは、画像形成が終了した段階でのベルト温度センサ51の検出温度に対して−20℃〜−30℃の範囲に設定される。例えば、画像形成が終了した段階での検出温度が180℃の場合には、ベルト停止設定温度bは、例えば150℃〜160℃の範囲内に設定される。なお、ベルト停止設定温度bは、ベルト温度センサ51の検出温度に基づく温度ではなくてもよく、例えば120℃以下の温度としてもよい。
また、本実施の形態では、上記のように定着ベルト11の回転を停止したのち、さらに定着ベルト11の温度が一定値まで低下しないと、画像形成装置1のスリープモード(省電力モード)への移行を禁止する。ここでは、ベルト停止設定温度bよりもさらに低い、スリープ移行設定温度aを設けている。
制御部70は、ベルト温度センサ51で検出した定着ベルト11の温度がスリープ移行設定温度a以上である場合は、画像形成装置1のスリープモードへの移行を禁止し、ベルト温度センサ51で検出した定着ベルト11の温度がスリープ移行設定温度aより低くなった時点で、画像形成装置1のスリープモードへの移行を許可する。スリープ移行設定温度aは、例えば60℃〜70℃の範囲内に設定される。
また、本実施の形態の画像形成装置1は、予熱待機モード(スタンバイモード)を有している。予熱待機モードでは、定着ベルト11の温度を検出するベルト温度センサ51、およびベルトガイド部材14A,14Bの一方(ここではベルトガイド部材14Aとする)に設けた部材温度センサ52の検出温度が所定温度に維持されるように、ハロゲンヒータ13A,13Bの制御を行う。
すなわち、画像形成装置1が予熱待機モードにあるときには、加圧ローラ16の回転を停止した状態で、ハロゲンヒータ13A,13Bに通電して発熱させる。そのため、ベルト温度センサ51で検出した定着ベルト11の温度が上述したベルト停止設定温度b以下となるように、制御部70がヒータ制御部81を介してハロゲンヒータ13A,13Bを制御する。
加えて、制御部70は、部材温度センサ52で検出したベルトガイド部材14Aの温度が、上記のベルト停止設定温度b以下で、且つベルトガイド部材14Aの耐熱温度に基づいて設定された所定温度以下となる範囲で、できるだけ高温で発熱するように、ヒータ制御部81を介してハロゲンヒータ13A,13Bを制御する。ベルトガイド部材14Aの耐熱温度は、例えば250〜300℃の範囲内であり、ベルトガイド部材14Aを構成する樹脂(例えばPPS)の種類によって決定される。
また、図9に示した例のように、ベルトガイド部材14Aおよびニップ形成部材15にそれぞれ部材温度センサ52A,52Bを設けた場合には、部材温度センサ52A,52Bで検出したベルトガイド部材14Aとニップ形成部材15の温度が、上記のベルト停止設定温度b以下で、且つベルトガイド部材14Aの耐熱温度およびニップ形成部材15の耐熱温度に基づいて設定された所定温度以下となる範囲で、できるだけ高温で発熱するようにハロゲンヒータ13A,13Bを制御する。
予熱待機モードでは、ハロゲンヒータ13A,13Bによって定着ベルト11が加熱され、定着ベルト11からの熱伝達によってベルトガイド部材14A,14B、ニップ形成部材15および加圧ローラ16が加熱(予熱)される。
このような予熱待機モードを設けていない場合、印刷開始時にハロゲンヒータ13A,13Bによって定着ベルト11を加熱しても、定着ベルト11の熱が、まだ温度が十分に上昇していないベルトガイド部材14A,14Bや加圧ローラ16等に奪われる可能性がある。
これに対し、予熱待機状態から印刷を開始した場合には、ベルトガイド部材14A,14B、ニップ形成部材15および加圧ローラ16の温度が上昇しているため、定着ベルト11からこれらに奪われる熱が少なくて済む。このように、印刷開始直後の定着ベルト11の温度低下を抑制できるため、定着不良を抑制し、光沢の低下等の問題を解消することができる。
<第1の実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、ハロゲンヒータ13A,13B(発熱体)とベルトガイド部材14A,14B(ベルト当接部材)との間に反射部材12を設け、この反射部材12が熱を反射する反射部(孔12A以外の部分)と、ベルトガイド部材14Aに熱を伝達する伝達部(孔12A)を有している。ハロゲンヒータ13A,13Bの熱によりベルトガイド部材14Aが加熱されるため、ベルトガイド部材14Aに接触している定着ベルト11の温度低下を抑制することができる。これにより、ニップ部での十分な定着温度を確保することができ、安定した定着動作を行うことができる。
特に、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの上流側に孔12Aを設け、これによりベルトガイド部材14Aに熱を伝達するようにしたため、ニップ部Nに到達する直前の定着ベルト11に熱を補給することができる。そのため、定着ベルト11の熱が媒体2との接触によって奪われたとしても、ベルトガイド部材14からの熱によって補うことができる。
また、反射部材12に設けた孔12Aを利用して、ハロゲンヒータ13A,13Bからの熱をベルトガイド部材14Aに伝達するため、構成が簡単である。また、孔12Aの大きさや配置間隔を調整することによって、ベルトガイド部材14Aの加熱状態を制御することができる。
また、反射部材12のうち、ベルトガイド部材14Aに対向する部分(底部123と傾斜部125)に孔12Aを設けているため、ハロゲンヒータ13A,13Bからの熱を、効率よくベルトガイド部材14Aに伝達することができる。
また、複数の孔12Aが反射部材12の長手方向(定着ベルト11の幅方向)に亘って形成されているため、ベルトガイド部材14Aを均一に加熱することができる。
第2の実施の形態.
図11(A)および(B)は、本発明の第2の実施の形態における反射部材12の構成例を示す斜視図である。第2の実施の形態は、反射部材12の構成を除き、第1の実施の形態と同様である。
上述した第1の実施の形態では、反射部材12のうち、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの上流側に、伝達部としての孔12Aを設けていた。これに対し、本実施の形態では、反射部材12のうち、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの下流側に、伝達部としての孔12Aを設けている。
図11(A)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの下流側の底部124および傾斜部126に、スリット状の複数の孔12Aを設けている。孔12A(スリット)の長手方向は、例えば、反射部材12の長手方向と平行な方向である。また、図11(B)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの下流側の底部124および傾斜部126に、略円形の複数の孔12Aを設けている。図11(A)および(B)のいずれにおいても、孔12Aは、反射部材12の長手方向に亘って略均等に分布している。
図11(A)および(B)のいずれの構成例においても、図2に示したベルトガイド部材14A,14Bのうち、ニップ部Nの下流側のベルトガイド部材14Bに、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱を伝達することができる。
このように構成されているため、本実施の形態では、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱によりベルトガイド部材14Bを加熱し、ベルトガイド部材14Bに接触している定着ベルト11の温度低下を抑制することができる。これにより、安定した定着動作を行うことができる。
特に、本実施の形態では、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの下流側に孔12Aを設け、これによりベルトガイド部材14Bに熱を伝達するため、ニップ部Nを通過した後の定着ベルト11の温度低下を抑制することができる。
第3の実施の形態.
図12(A)および(B)は、本発明の第3の実施の形態における反射部材12の構成例を示す斜視図である。第3の実施の形態は、反射部材12の構成を除き、第1の実施の形態と同様である。
上述した第1の実施の形態では、反射部材12のうち、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの上流側に、伝達部としての孔12Aを設けていた。また、上述した第2の実施の形態では、反射部材12のうち、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの下流側に、伝達部としての孔12Aを設けていた。これに対し、本実施の形態では、反射部材12のうち、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの上流側と下流側の両方に、伝達部としての孔12Aを設けている。
図12(A)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの上流側の底部123および傾斜部125、並びにニップ部Nの下流側の底部124および傾斜部126に、スリット状の複数の孔12Aを設けている。孔12A(スリット)の長手方向は、例えば、反射部材12の長手方向と平行な方向である。
また、図12(B)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの上流側の底部123および傾斜部125、並びにニップ部Nの下流側の底部124および傾斜部126に、略円形の複数の孔12Aを設けている。図12(A)および(B)のいずれにおいても、孔12Aは、反射部材12の長手方向に亘って略均等に分布している。
図12(A)および(B)のいずれの構成例においても、図2に示したベルトガイド部材14A,14Bの両方に、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱を伝達することができる。
このように構成されているため、本実施の形態では、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱によりベルトガイド部材14A,14Bを加熱し、ベルトガイド部材14A,14Bに接触している定着ベルト11の温度低下を抑制することができる。これにより、安定した定着動作を行うことができる。
特に、本実施の形態では、定着ベルト11の回転方向においてニップ部Nの上流側と下流側の両方に孔12Aを設け、これによりベルトガイド部材14A,14Bの両方に熱を伝達するため、ニップ部Nに到達する直前の定着ベルト11の温度低下(特に媒体2との接触により熱を奪われることによる温度低下)を抑制し、さらに、ニップ部Nを通過した後の定着ベルト11の温度低下も抑制することができる。
第4の実施の形態.
図13は、本発明の第4の実施の形態における反射部材12の構成例を示す斜視図である。第4の実施の形態は、反射部材12の構成を除き、第1の実施の形態と同様である。
上述した第1〜第3の実施の形態では、反射部材12に伝熱部としての孔12Aを設けていた。これに対し、本実施の形態では、反射部材12に伝熱部としての黒色塗装を施して、黒体輻射を利用して、ベルトガイド部材14A,14Bの少なくとも一方に熱を伝達している。
図13(A)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの上流側の底部123および傾斜部125のハロゲンヒータ13A,13B側(上面)に、熱吸収部としての黒色塗装61を施している。また、底部123および傾斜部125のベルトガイド部材14A側(下面)に、熱放射部としての黒色塗装62を施している。黒色塗装61,62は、例えば黒色テフロン(登録商標)コーティング等である。
反射部材12の底部123および傾斜部125の上面の黒色塗装61は、ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された熱を吸収するため、反射部材12の底部123および傾斜部125は加熱される。そして、反射部材12の底部123および傾斜部125が加熱されると、その下面の黒色塗装62の黒体輻射作用により、ベルトガイド部材14Aに向けて熱が放射される。従って、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱をベルトガイド部材14Aに伝達することができる。
図13(B)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの下流側の底部124および傾斜部126のハロゲンヒータ13A,13B側(上面)に、黒色塗装61を施している。また、底部124および傾斜部126のベルトガイド部材14B側(下面)に、黒色塗装62(伝熱部)を施している。黒色塗装61,62は、例えば黒色テフロンコーティング等である。
反射部材12の底部124および傾斜部126の上面の黒色塗装61は、ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された熱を吸収するため、反射部材12の底部124および傾斜部126は加熱される。そして、反射部材12の底部124および傾斜部126が加熱されると、その下面の黒色塗装62の黒体輻射作用により、ベルトガイド部材14Bに向けて熱が放射される。従って、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱をベルトガイド部材14Bに伝達することができる。
図13(C)に示す構成例では、反射部材12のうち、ニップ部Nの上流側の底部123および傾斜部125、並びにニップ部Nの下流側の底部124および傾斜部126のハロゲンヒータ13A,13B側(上面)に、黒色塗装61が施されている。また、底部123,124および傾斜部125,126のベルトガイド部材14A,14B側(下面)に、黒色塗装62(伝熱部)が施されている。黒色塗装61,62は、例えば黒色テフロンコーティング等である。
反射部材12の底部123,124および傾斜部125,126の上面の黒色塗装61は、ハロゲンヒータ13A,13Bから放射された熱を吸収するため、反射部材12の底部123,124および傾斜部125,126は加熱される。そして、反射部材12の底部123,124および傾斜部125,126が加熱されると、その下面の黒色塗装62の黒体輻射作用により、ベルトガイド部材14A,14Bに向けて熱が放射される。従って、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱をベルトガイド部材14A,14Bに伝達することができる。
このように、本実施の形態では、反射部材12に黒色塗装61,62を施すことにより、反射部材12に孔12Aを設けた場合(第1〜第3の実施の形態)と同様に、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱をベルトガイド部材14A,14Bに伝達することができる。これにより、定着ベルト11の温度低下を抑制し、安定した定着動作を実現することができる。
なお、ここでは反射部材12に黒色塗装61,62を施したが、黒色塗装61,62に限らず、ハロゲンヒータ13A,13Bの熱を吸収して反射部材12に伝達し、さらにベルトガイド部材14A,14Bに向けて放射することができるものであればよい。
また、本実施の形態の黒色塗装61,62と、第1〜第3の実施の形態で説明した孔12Aとを適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明は、例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ、MFP(MultiFunctionPeripheral)等の画像形成装置およびその定着装置に適用することができる。