以下に、図示した実施形態に基づいて、本発明による移動足場について説明する。本発明による移動足場は、この移動足場を原理的に示す図1,図2、および、図3,図4に示すように、軌条Rあるいは路盤Bで転動する車輪11を有して移動可能とする台車たるトロ台車1と、このトロ台車1上で昇降して人の立ち入りを許容する作業床2とを備える構成とされ、地下鉄のトンネルT内に導入されて、たとえば、トンネルTの内壁(符示せず)の剥れを補修するなどの一時的部分的な作業のための足場、つまり、作業足場を形成するのに向くとしている。
ちなみに、図1,図2に示す移動足場は、本発明の一実施形態による移動足場であり、図3,図4に示す移動足場は、本発明の他の実施形態による移動足場である。
本発明にあって、移動足場の所望の場所(目的地)への移動は、トロ台車1の移動、つまり、トロ台車1が有する車輪11の軌条Rあるいは路盤Bに沿っての転動で実現されるとし、その際のトロ台車1に作用する外力は、人力によるとする。
トロ台車1を人力で移動する、つまり、トロ台車1を移動させるための動力を利用する駆動機構を有しないことで、移動足場における製品コストの低廉化に寄与すると共に、移動足場における全体重量の低減化を可能にして、各構成部材に分解されたときの人手による搬送を容易にし、また、移動足場の短時間での分解組立を容易にし得るようにしている。
すなわち、移動のための動力を利用する駆動機構を有する移動足場の分解組立にあっては、この動力を利用する駆動機構を構成する、たとえば、電気系統などを確実に分離接続するためには、精緻な作業が要請される傾向になり、短時間での移動足場の分解組立を容易になし得なくなる危惧があるが、本発明にあっては、動力を利用する駆動機構を有しない分、移動足場における短時間での分解組立を容易になし得ることになる。
トロ台車1は、この移動足場における基台を構成する部分とされ、作業床2を始めとする各構成部材からの荷重を受けるのに十分な機械的強度を有する限りには、任意に形成されて良いが、好ましくは、このトロ台車1の人手による搬送を困難にしないように形成されるのが良い。ちなみに、本発明の移動足場にあっては、トロ台車1を始めとして、後述する作業床2および伸縮脚Sの各構成部材が人手による搬送を許容するとしている。
トロ台車1における車輪11は、トロ台車1をトンネルT内に導入した際の位置が所望の場所から離れているときにその所望の場所へ移動する際に、あるいは、作業場所の変更のために移動する際に利用される。
そして、車輪11は、軌条Rを転動するのを基本とするが、本発明が意図するところからすれば、軌条Rを転動せずに軌条Rを敷設させる路盤Bを走行するとしても良いことはもちろんである。また、車輪11は、図示しないが、軌条Rを転動するためには、軌条Rからの横方向への脱輪を阻止するフランジを有するなど周知の構造に形成される。
作業床2は、トロ台車1との間に分離可能に設ける伸縮脚Sの人力による伸縮で昇降される構成とされ、伸縮脚Sは、図1,図2に示す実施形態では、トロ台車1に分離可能に立設する下段脚3と、作業床2に分離可能に連結する上段脚4とを有する構成とされる。
そして、伸縮脚Sを構成する下段脚3と上段脚4は、互い相対移動を可能にするように連結され、つまり、図示するところでは、下段脚3の内側に上段脚4が出没する構成とされ、しかも、上段脚4は、下段脚3に沿って昇降可能としている。ちなみに、伸縮脚Sの伸縮動作が保障される限りには、上記と逆に、上段脚4の内側に下段脚3が出没する構成とされても良い。
図1,図2に示す実施形態の伸縮脚Sに対して、図3,図4に示す実施形態の伸縮脚Sは、トロ台車1に分離可能に立設する下段脚3と、作業床2に分離可能に連結する上段脚4と、下段脚3に連結すると共に上段脚4に連結して下段脚3および上段脚4に対して昇降可能とする中段脚5とを有する構成とされる。
そして、下段脚3と中段脚5、および、上段脚4と中段脚5は、互いの間で相対移動を可能にするように連結され、つまり、図示するところでは、下段脚3の内側に中段脚5が出没する構成とされ、この中段脚5の内側に上段脚4が出没する構成とされ、さらに、中段脚5は、下段脚3に沿って昇降可能とし、上段脚4は、中段脚5に沿って昇降可能としている。
伸縮脚Sが、図1,図2に示すいわゆる二段構成とされる場合と、図3,図4に示すいわゆる三段構成とされる場合とでは、下段脚3と上段脚4の高さ寸法を同じにする場合に、中段脚5の有る無しで作業床2の、特に、最上昇位置が異なるのは当然であるが、この移動足場を利用する状況は、あらかじめ判明しているので、伸縮脚Sにおいて、中段脚5の要不要は、事前に検討されることになる。
ところで、本発明にあって、作業床2の所望の高さへの昇降は、作業員がする高所作業の高さ位置に合わせるように昇降されるとし、また、作業床2をトロ台車1上で所望の高さ位置まで上昇させるのについては、動力を利用する昇降機構を利用しない、つまり、人力によって上昇されるとしている。
そして、移動足場にあって、作業床2の昇降に動力を利用する昇降機構を利用しないから、作業床2の昇降のための動力を利用する昇降機構を有しない分、移動足場における製品コストの低廉化に寄与すると共に、移動足場における全体重量の低減化を可能にして、各構成部材に分解されたときの人手による搬送を一層容易にし、また、移動足場の短時間での分解組立を一層容易にし得ることになる。
すなわち、作業床2の昇降のための動力を利用する昇降機構を有する移動足場の分解組立にあっては、動力を利用する昇降機構を構成する、たとえば、ラックアンドピニオン機構などを確実に分離連結するためには、精緻な作業が要請される傾向になり、短時間での移動足場の分解組立を容易になし得なくなる危惧があるが、本発明にあっては、動力を利用する昇降機構を有しない分、移動足場における短時間での分解組立を容易になし得ることになる。
戻って、伸縮脚S、つまり、下段脚3、上段脚4および中段脚5は、可能な限りの軽量化を可能にするように形成されるとし、図示するところでは、アルミ合金で形成され、特に、内側に作業者が立ち入ることができる空間を出現させるようにいわゆる筒状にしてフレーム構造に形成されるとしている。
ちなみに、この移動足場にあっては、伸縮脚S以外の他の構成部材についても、アルミ合金で形成されるとして、各構成部材における重量を人手による搬送に応えられるように重量を軽くする配慮をしている。
そして、この移動足場にあっては、図1および図2に示すところでは、伸縮脚Sを人力によって伸縮させるためのワイヤからなる牽引索W1(図1参照)を有し、図3および図4に示すところでは、伸縮脚Sを人力によって伸縮させるための一方となる同じくワイヤからなる下方の牽引策W2(図3参照)と、他方となる同じくワイヤからなる上方の牽引策W3(図3参照)とを有する。
牽引索W1は、図1に示すように、一端部が上段脚4に連結すると共に他端側部がプーリ3aを介して下段脚3に掛け回されるとし、下方の牽引索W2は、図3に示すように、一端部が中段脚5に連結すると共に他端側部がプーリ3bを介して下段脚3に掛け回され、上方の牽引索W3は、同じく図3に示すように、一端部が上段脚4に連結すると共に他端側部がプーリ5aを介して中段脚5に掛け回されるとしている。
なお、牽引索W1,下方の牽引策W2および上方の牽引策W3は、図が煩雑化することを避けるために、図1中あるいは図3中にのみ記載して、図2中および図4中にはその記載を省略している。
牽引索W1,W2,W3は、人力で牽引されるが、具体的には、トロ台車1に設けた手動巻き上げ機を利用し、図1に示すように、手動巻き上げ機P1は、牽引索W1の他端部を巻き取り、図3に示すように、手動巻き上げ機P2は、下方の牽引策W2の他端部を巻き取り、また、手動巻き上げ機P3は、上方の牽引策W3の他端側部を巻き取っている。
なお、各手動巻き上げ機P1,P2,P3は、図示しないが、ハンドルの操作で回転するドラムをそれぞれ有し、この各ドラムのいわゆる無用な逆転を阻止する逆転防止機構を有した状態で、各ドラムに各牽引索W1,W2,W3の他端部を連結させ、各ドラムの回転による各牽引索W1,W2,W3の巻き上げおよび送り出しを可能にしている。
ところで、図3および図4に示す三段構成の伸縮脚Sについて少し説明する。この伸縮脚Sは、下段脚3および上段脚4の他に、下段脚3が連結するとともに上段脚4が連結する中段脚5を有するが、この中段脚5は、上下に区分けされる下方体5bと上方体5cとからなるのを基本とする。
そして、図示する実施形態では、下方体5bが下方体5bと上方体5cとに分断され、下方体5bがあらかじめ下段脚3に昇降自在に連結され、また、上方体5cがあらかじめ上段脚4に昇降自在に連結されるとし、爾後に、つまり、この移動足場を組み上げるときに、下方体5bと上方体5cとが分離可能に連結されるとしている。
すなわち、図3,図4に示す実施形態にあって、構成部材としての下段脚3および上段脚4は、搬送されるときの態様が下方体5bあるいは上方体5cを有する態様とされるもので、これによって、伸縮脚Sが下段脚3および上段脚4の他に中段脚5を有するとしても、この中段脚5を一つの構成部材として管理したり搬送したりすることをしなくても済むことになる。
ちなみに、図示したところでは、中段脚5は、あらかじめ下方体5bおよび上方体5cに分断されて下段脚3あるいは上段脚4に昇降自在に連結される段取りとするが、これに代えて、図示しないが、この移動足場の組立の際に、中段脚5の下方体5b部分が下段脚3に昇降自在に連結されると共に、中段脚5の上方体5c部分に上段脚4が昇降自在に連結される段取りとしても良い。
戻って、作業床2は、作業員の立ち入りを許容する限りには、任意に形成されて良いが、基本的には、前記したトロ台車1や伸縮脚Sと同様にアルミ合金で形成されるとし、たとえば、図1〜図4に示すように、軸線方向が軌条Rの敷設方向を横切る方向になり、トンネルTの上方のいわゆる幅狭になる天井近傍部(符示せず)の幅に相応する長さを有するように形成されるのが良い(図4参照)。
ちなみに、図3,図4に示す移動足場にあって、組み上がって使用可能な状態にあるときに、作業床2の最下降位置、つまり、図3に示すように、下段脚3に対して中段脚5が最下降し、この中段脚5に対して上段脚4が最下降した状態にあるときの作業床2の位置は、軌条Rがある路盤Bに立つ作業員の手が届く範囲より上方となるように設定されている。
つまり、路盤Bに立つ作業員の手が届く範囲の作業に作業床2を利用する必要はなく、したがって、路盤Bに立つ作業員の手が届かない範囲の作業を作業床2に立ち入った作業員が実行できる高さ位置に最下降した作業床2が位置決めされるように設定されている。ちなみに、図1,図2に示す移動足場にあっては、最上昇した状態の作業床2に立ち入る作業員がいわゆる高所作業をできるように設定されている。
また、作業床2の幅、つまり、軌条Rの敷設方向に沿う幅方向の寸法については、一人の作業員が作業をするのに十分な寸法を有するように形成されれば良いが、これは絶対的なことではなく、二人以上の作業員が並列して作業をするのに十分な寸法を有するように形成されても良いことはもちろんである。
ところで、作業床2は、これが長さ方向に、つまり、軌条Rの敷設方向を横切る方向に伸縮可能とされるのが好ましく、図示するところにあっては、図2に示すように、言わば中央部となる長さが固定の本体部2aに対して前後部となる一対の補助部2bがいわゆる移動可能に連結される、つまり、本体部2aに対して補助部2bが出没可能に連結されてなるとしている。
なお、作業床2が本体部2aに補助部2bを有して長さ方向に伸縮可能とされることは、図1,図3および図4の各図中にあって図示していないが、この図1,図3および図4示すところにあっても同様である。
作業床2が本体部2aに対する補助部2bを有して伸縮可能に構成されることで、トンネルTのいわゆる幅広になる主要部(符示せず)の幅に相応する長さを有するように変形でき、作業床2の利用領域を広くすることが可能になる。
一方、作業床2は、図2に示すように、上記の一対の補助部2bに腕21を有し、この腕21は、補助部2bに対して軌条Rの軸線方向を横切る方向に進退可能とされており、図示するところでは、先端部たる当接部21aが対向するトンネルTの壁に当接することで、作業床2がトンネルTを横切る方向に揺れることを阻止するとしている。
そして、腕21は、いわゆる揺れ止めの観点からは、図示しないが、たとえば、頭部が当接部21aとされる長尺のボルトで形成されて、補助部2bの両側の端部に出没可能に設けられるのが良いが、この腕21を利用する状態で、つまり、腕21を突出させた状態で、トロ台車1を軌条Rに沿って移動させる場合を勘案すると、トロ台車1の円滑な移動を可能にするためには、腕21が弾性部材を有して補助部2bに装備されると共に当接部21aがローラを有して、トロ台車1の移動時にトンネルTの壁面における凹凸などの変形に応じてローラが転動すると共に当接部21aが進退して伸縮する設定とされても良い。
なお、腕21は、図示するところでは、補助部2bにおいていわゆる左右一対に設けられるが、揺れ止めの機能を果す限りには、これに代えて、図示しないが、単体に設けられるとしても良い。
また、作業床2は、凡そこの種の作業床がそうであるように、パイプで形成の手摺22および板材で形成の図示しない爪先板を有するのが好ましく、この手摺22および爪先板は、本体部2aだけでなく補助部2bにも設けられて良い。
ちなみに、手摺22は、作業床2にあって、軌条Rあるいは路盤Bを横切る方向に設けられるのが良く、これによって、作業床2上の作業員が軌条R上や路盤B上に落下することを未然に回避できる。また、爪先板は、作業床2上に置かれた工具などが作業員によって蹴飛ばされるなどして作業床2の外に落下するのをあらかじめ阻止する。
なお、作業床2の軌条Rあるいは路盤Bを横切る方向の端部は、トンネルTの壁に対向することになるので、手摺が設けられていなくても、問題はないが、手摺が設けられ、さらには、爪先板が設けられるとしても良いことはもちろんである。
そして、作業床2は、床部(符示せず)が、図示しないが、この種の作業床がそうであるように、全体重量の軽減化に寄与し着脱を可能にする足場板の架け渡しで形成され、また、作業員の作業床2への立ち入りや退去を許容する開口を有し、この開口は、ハッチを有して開閉可能とされるのが良い。なお、作業床2に対する作業員の出入りは、図示しないが、伸縮脚Sの内側に設けられた梯子を利用しても良く、また、伸縮脚S自体を梯子に見立てて、これを利用するとしても良い。
以上のように形成される図1,図2に示す移動足場は、外観上の構成部材で分けると、トロ台車1、作業床2、伸縮脚Sたる下段脚3および上段脚4の四部材となり、人手による搬送作業をいたずらに煩雑化せず、迅速に行えることになる。
また、図3,図4に示す移動足場にあっても、外観上の構成部材で分けると、トロ台車1、作業床2、伸縮脚Sたる下段脚3、上段脚4の四部材となり、同じく、人手による搬送作業をいたずらに煩雑化せず、迅速に行えることになる。
ちなみに、牽引策W1,W2,W3にあっては、具体的には、手動巻き上げ機P1,P2,P3に言わば巻かれており、また、各手動巻き上げ機P1,P2,P3は、トロ台車1に設けられるので、搬送される構成部材としては独立せず、トロ台車1と一緒に搬送されることになる。
なお、各牽引策W1,W2,W3は、この移動足場の組立時に各手動巻き上げ機P1,P2,P3から一端部が引き出されて、相応する上段脚4あるいは中段脚5に連結される。
また、図3,図4に示す移動足場にあって、中段脚5は、下方体5bと上方体5cに分断されて、下方体5bが下方脚3に、また、上方体5cが上方脚4に分離されずに昇降可能に連結されることから、独立する構成部材にならない。
しかし、中段脚5は、下方体5bと上方体5cに区分けされるが、分断されずに下段脚3および上段脚4に連結される場合もあり、この場合には、下段脚3および上段脚4から分離されて独立する構成部材になる。
ところで、上記したトロ台車1、作業床2、伸縮脚Sたる下段脚3、上段脚4および中段脚5の各構成部材は、人手による搬送を許容するが、その意味は、先ずは、重量が人手による搬送を許容するの意味であり、次には、大きさが人手による搬送を許容するの意味である。そして、人手によるとは、動力を利用する搬送機構を利用しないの意味であり、したがって、人手が一人だけではなく複数人で構成されても良い。
また、重量についてであるが、成人の平均的な作業員が一人で無理なく運べる重量としては、たとえば、20キログラム前後であり、さらには、複数、たとえば、4人の作業員が運べる重量としては、50〜80キログラム前後であり、大きさとしては、地下鉄の地上にある出入り口を無理なく通過できる一辺が、たとえば、60〜90センチメートルとなる立方体あるいは直方体の内側に収まる態様に形成されるのが良い。
各構成部材が人手による搬送を許容するように構成されることで、たとえば、地上から地下鉄の出入り口の経由で駅構内に向けて各構成部材の人手による搬送が可能になり、また、駅構内でホームから線路内、つまり、軌条Rあるいは路盤Bへの各構成部材の人手による搬送が可能になる。そして、撤去時の各構成部材の上記と逆の搬送も容易に可能になる。
その結果、たとえば、特許文献1に開示などの従来の移動足場にあっては、使用および撤去に際して、分解組立をすることを前提にしていないから、これを地下鉄のトンネルT内に導入するのについては、地上にある地下鉄の車両基地などから軌条Rを利用して、あるいは、専用車両を利用するなどして目的地まで移動させ、また、戻すことになるが、このことに比較して、本発明の移動足場にあっては、移動足場を目的地に容易に、しかも、短時間に導入することが可能になり、また、撤去が容易に可能になる。
このことは、この移動足場が利用される場面を勘案すると、きわめて有意義であることが解る。つまり、この移動足場が利用される場面が、前記したように、地下鉄のトンネルT内で、しかも、終電車が通過した後の始発電車が走り出すまでの限られた時間である場合には、たとえば、午前1時から午前4時までの3時間と極めて短時間になるので、トンネルT内に導入するだけに長時間を要したり、トンネルT内から撤去するだけに長時間を要したりすることができない。そこで、可能な限りに短時間に所定の作業を実行できるようにする移動足場が必要になる訳で、本発明は、この要請に応じる用意があることになる。
本発明による移動足場は、原理的には以上のように形成されるが、この移動足場を構成する各構成部材の具体的な状態についてさらに説明すると、先ず、トロ台車1は、図5にも示すように、トンネルT(図1〜図4参照)内に敷設された軌条R(図1〜図4参照)で転動する車輪11を有し、軌条Rに沿って自在に移動し得るとしている。
このことからすると、車輪11は、詳しくは図示しないが、トロ台車1にあって、軌条Rを横切る方向に取付位置が変更可能とされるのが良い。すなわち、トロ台車1にあって、車輪11が軌条Rを転動する場合に、軌条Rの幅、つまり、鉄道車両が有するいわゆる左右の車輪間の幅については、広軌および狭軌に大別されるので、これに対応し得るように、車輪11のトロ台車1に連結される位置が軌条Rを横切る方向に変更可能とされるのが良い。
ちなみに、移動足場を地下鉄のトンネルT内に導入する際に、その地下鉄が広軌であるか狭軌であるかは、あらかじめ把握されているので、事前にトロ台車1に対する車輪11の連結位置を選択しておくことで、いわゆる現場で配設位置を変更する作業が要請されない。
また、移動足場を地下鉄のトンネルT内に導入するのに際しては、トンネルT内における路盤B(図1〜図4参照)における状況も事前に把握されているから、車輪11が路盤Bを走行する場合にも、事前にトロ台車1に対する車輪11の連結位置を選択しておくことで、現場で配設位置を変更する作業が要請されない。
ところで、トロ台車1は、図示するところでは、アルミ合金で形成され、図5(B)に示すように、軌条Rの敷設方向を横切る方向に設けられる二本のパイプ、つまり、二本の角パイプ12を軌条Rの敷設方向に設けられる二本の連結パイプ13で連結して四角形の平面形状を呈するように形成され、図5(A)に示すように、上面に下段脚3を分離可能に立設させるとしている。
トロ台車1にあって、角パイプ12における軌条Rの敷設方向を横切る方向の長さ、つまり、幅長さについては、地下鉄のトンネルTの幅長さより小さく設定されるのもちろんで、そのためには、図示しないが、角パイプ12が外パイプと内パイプとで形成されて、外パイプに対する内パイプの出没によるいわゆる伸縮を可能とし、トンネルTの幅長さが区々となる場合にも対応できるとしても良い。
ちなみに、トロ台車1にあって、軌条Rの敷設方向に設けられて角パイプ12に連結される連結パイプ13の軸線方向の長さについては、基本的には、任意とされて良いが、図示するところでは、角パイプ12の長さとほぼ同じになるとして、いたずらに長くしない設定とされ、このトロ台車1の搬送作業の妨げにならないように配慮している。また、二本の連結パイプ13については、その機能するところからすれば、図示しないが、板材に代えられても良い。
なお、上記したところでは、トロ台車1は、トロ台車1がトンネルT内に導入される前に、二本の角パイプ12が別途準備される二本の連結パイプ13であらかじめ連結されて四角形の平面形状を呈するように形成されてなるとするが、これに代えて、車輪11を利用するなどして二本の角パイプ12を軌条Rに載せた状態でこれを別途準備される二本の連結パイプ13で連結するようにして軌条Rの上で四角形の平面形状を呈するように形成されるとしても良い。
このように、トロ台車1が二本の角パイプ12および二本の連結パイプ13にいわゆる分解された状態で、トンネルT内に導入されるとする場合には、トロ台車1における部品数が増え、また、組立工数も増える構成となるが、人手による搬送作業については、これが一層容易になる点で有利となる。
また、トロ台車1が二本の角パイプ12で構成される場合には、二本の角パイプ12に下段脚3を連結することで、トロ台車1として具現化されるので、この観点からすると、トロ台車1の構成を簡素化し得る点で有利になる。
戻って、トロ台車1は、下段脚3を分離可能に立設させるために、上面に、上方に伸びる螺条ロッド14a(図5(A)参照)を有するベース14を、図示するところでは、四隅部の上面に一体に設けている。
そして、このベース14は、螺条ロッド14aにハンドル14b(図5(A)参照)を螺装させており、このハンドル14bの回動でハンドル14b自体を昇降させ、このハンドル14bの昇降でこのハンドル14bに下端が当接する鍔付カラー14cを昇降させ、この鍔付カラー14cの昇降でこの鍔付カラー14cの上端が当接する下段脚3の下端を昇降させて、下段脚3におけるレベルを調整し得るとする、つまり、トロ台車1と下段脚3との間におけるレベル調整機構を構成するとしている。
なお、上記のベース14にあって、図示する螺条ロッド14aは、トロ台車1の上面に固定状態に立設されるとしているが、これに代えて、図示しないが、トロ台車1の上面に揺動可能に立設されるとしても良い。
このとき、螺条ロッド14aの揺動方向が軌条Rの敷設方向を横切る方向とされる場合には、軌条Rがカーブでカントを有するため、軌条Rの上の移動足場がカーブの内側に傾くことになる場合のいわゆる水準調整を可能にし得ることになる。
対して、螺条ロッド14aの揺動方向が軌条Rの敷設方向とされる場合には、軌条Rが前後方向で傾斜するため、軌条Rの上の移動足場が軌条Rの前後方向に傾くことになる場合のいわゆる水準調整を可能にし得ることになる。
ところで、トロ台車1は、路盤Bが軌条Rの敷設方向たる前後方向に勾配を有する場合には、車輪11がこの傾斜した路盤Bに、あるいは、傾斜した軌条Rに乗った状態でのこの移動足場の利用は、好ましくない利用状態になるので、アウトリガーによって車輪11が路盤Bから、あるいは、軌条Rから離れることを可能にするとしている。
そして、カーブする軌条Rがカントを有する場合には、この軌条Rに載置される移動足場がいわゆるカーブの内側に傾くようになるので、この移動足場の傾倒を阻止する上からも、アウトリガーが車輪11の軌条Rからの離脱を保障することが重要な機能となる。ちなみに、アウトリガーは、軌条Rがカントを有するか否かに関係なくトロ台車1を水平に維持するのはもちろんである。
そのため、図示するアウトリガーは、二本の角パイプ12の両端部でこの角パイプ12の軸線方向に沿って任意の長さに出没するガイドパイプ15と、このガイドパイプ15の先端部に垂直に設けられる螺条ロッドからなる昇降軸16と、この昇降軸16の下端に設けられるキャスタ17とを備えてなる。ちなみに、前記したように、角パイプ12が外パイプと内パイプとで形成されるとする場合には、内パイプが上記のガイドパイプ15とされて良い。
それゆえ、このアウトリガーにあっては、キャスタ17が、たとえば、トンネルT内の路盤Bに着座することで、車輪11を軌条R上に浮上させることが可能になり、トロ台車1が軌条Rに沿って言わば勝手に移動することを阻止し得ることになる。以上からすれば、図示するアウトリガーにあっては、図示しないが、キャスタ17がいわゆる転動を許容しないベースプレートに代えられても良いことはもちろんである。
また、図示するアウトリガー、つまり、下端に路盤Bに着座するキャスタ17を有するアウトリガーにあっては、このキャスタ17の転動でアウトリガーを、すなわち、トロ台車1を、軌条Rを横切る方向に、あるいは、軌条Rの敷設方向に移動し得ることになる。
次に、伸縮脚Sにおける下段脚3と上段脚4との間の連結構造、また、下段脚3と中段脚5における下方体5bとの間の連結構造、そして、上段脚4と中段脚5における上方体5cとの間の連結構造については、図示するところでは、同一の連結構造が採用されている。
以下に、この連結構造について説明するが、図示するところでは、下段脚3と上段脚4との間における連結状態を例にするとして、下段脚3と中段脚5における下方体5bとの間、および、上段脚4と中段脚5における上方体5cとの間における各連結構造については、図示を省略すると共にその説明を省略する。
上段脚4と下段脚3の連結にあっては、図6に示すように、上段脚4の下端側部を下段脚3の上端を介して下段脚3の内側に出没可能に挿入させる((A)参照)とするもので、この状態で、下段脚3の上端部の四隅部(符示せず)の内側角部に回動可能に設けた溝付ローラ6の外周溝6a((B)参照)を上段脚4の四隅部(符示せず)の外側の縦縁部4aに当接させるとする。
そして、このときには、詳しくは図示しないが、上段脚4の下端部における四隅部の外側角部に回動可能に設けた溝付ローラ6における外周溝が下段脚3の四隅部における内側の縦縁部3a((B)参照)に当接されるとする。
これによって、上段脚4が、トロ台車1に立設する下段脚3に対して傾倒することなく連結されることになり、上段脚4の下段脚3に対する移動、つまり、上段脚4の昇降が円滑に実現されることになり、爾後に、上段脚4の上端に連結される作業床2における昇降および作業床2における水平状態を保障し得ることになる。
ちなみに、溝付ローラ6、すなわち、図6(A)中で上方側となる溝付ローラ6は、図6(B)に示すように、横断面をU字状にする取付ブラケット61に枢着する軸62に回動可能に保持され、この軸62を保持する連結ブラケット63の下段脚3への連結によって下段脚3に設けられている。
そして、図6(A)中で下方側となる溝付ローラ6にあっても、詳しくは図示しないが、上記したところと同様に、横断面をU字状にする取付ブラケット61に枢着する軸62に回動可能に保持され、この軸62を保持する連結ブラケット63の上段脚4への連結によって上段脚4に設けられている。
以上のように形成された連結構造にあっては、たとえば、上段脚4が下段脚3の内側から上方に抜け出るようになる伸張作動時に、上段脚4の上昇に伴って、上段脚4の下端部が下段脚3の上端部に衝突する状況になることがあるが、この場合には、上記した溝付ローラ6を枢支する取付ブラケット61同士が、つまり、上下となる取付ブラケット61同士が先に衝突する状況になり、溝付ローラ6同士が衝突する事態を回避できると共に、上段脚4が下段脚3から抜け出る事態の招来を回避でき、移動足場におけるいわゆる安全を保障し得ることになる。
そして、この連結構造にあっては、上段脚4が下段脚3の内側に没入するようになる収縮作動時に、上段脚4の下降に伴って、上段脚4の下端部が下段脚3の下端部に、あるいは、上段脚4の上端部が下段脚3の上端部に衝突する状況になることがあるが、この場合には、上段脚4の下端部で溝付ローラ6を枢支する取付ブラケット61が対向する下段脚3の下端部に、あるいは、上段脚4の上端部で溝付ローラ6を枢支する取付ブラケット61が下段脚3の上端部に衝突する状況になり、上段脚4の下端部の溝付ローラ6が下段脚3の下端部に、あるいは、上段脚4の上端部が下段脚3の上端部の溝付ローラ6に衝突する事態を回避できると共に、上段脚4が下段脚3から下方に抜け落ちる事態の招来を回避できることになる。
ちなみに、上記したところでは、上段脚4と下段脚3との間における昇降の際のいわゆるストッパ機構が溝付ローラ6を枢支する取付ブラケット61で構成されることになるが、これに代えて、図示しないが、上段脚4と下段脚3との間に専用のストッパ機構が設けられても良いことはもちろんである。
また、溝付ローラ6を有する上段脚4と下段脚3との間における連結の順序についてであるが、あらかじめトロ台車1に分離可能に連結されて立設されている下段脚3に後から上段脚4を連結する際には、下段脚3の上端部に溝付ローラ6を備えない状態にして、上段脚4の下端側部を下段脚3の内側に挿入する。
その際には、上段脚4の下端部には溝付ローラ6を備えておき、この溝付ローラ6を下段脚3の相応する位置たる内側の縦縁部3a(図6(B)参照)に当接させてガイドとして利用するのが良い。そして、上段脚4の下端側部が下段脚3の内側に所定の深さに挿入された後に、下段脚3の上端部に溝付ローラ6を備えるとする。これによって、上段脚4は、下段脚3に分離されることなく、昇降可能に連結されることになる。
なお、上段脚4を下段脚3に連結する際に、上段脚4の下端部に溝付ローラ6を設けずに、上段脚4の下端側部を下段脚3の内側に挿入してから、溝付ローラ6を上段脚4の下端部に設けるとしても良いことはもちろんであり、また、上段脚4の下端部には溝付ローラ6を設けないが、下段脚3の上端部に溝付ローラ6を設けた状態で、上段脚4の下端側部を下段脚3の内側に挿入し、爾後に、上段脚4の下端部に溝付ローラ6を設けるとしても良い。
一方、この移動足場にあっては、前記したように、下段脚3がトロ台車1に分離可能に立設される、つまり、連結されるとする他、後述するように、上段脚4に作用床2が分離可能に連結され、さらには、中段脚5にあって、下方体5bと上方体5cとが分離可能に連結されるとしているが、この各連結構造については、分離可能にする限りには、任意の連結構造が選択されて良い。
図7は、中段脚5における下方体5bと上方体5cの連結構造の一例を示すもので、図示するところにあっては、連結プレート7とボルトナット8とを利用する連結構造とされている。
少し説明すると、中段脚5における下方体5bを形成する縦地材51は、上端に連結プレート7を形成する水平プレート材71を一体に有し、中段脚5における上方体5cを形成する縦地材52は、下端に連結プレート7を形成する水平プレート材72を一体に有してなる。
そして、各水平プレート材71,72は、それぞれ四隅部に設けられて積層するとき互いに照準するボルト孔(図示せず)を有し、このボルト孔には、ボルト81がそれぞれ挿通され、各ボルト81にはナット82が螺合されて、ナット82の締め付けによる両水平プレート材71,72の一体的連結を可能にすると共に、締め付けたナット82のいわゆる撤去で両水平プレート材71,72の一体的連結の解除を可能にしている。
それゆえ、この連結構造にあっては、四隅部にボルト孔を有する水平プレート材71,72を中段脚5における下方体5bあるいは上方体5cを形成する縦地材51,52にそれぞれ連結するだけで、ボルトナット8については既存のものを利用でき、移動足場における製品コストのいたずらな高騰化を回避できると共に、中段脚5における下方体5bと上方体5cの連結分離の作業を容易にする。
図8は、中段脚5における下方体5bと上方体5cの連結構造の変形例を示すもので、図示するところにあっては、連結構造がソケット構造からなる、すなわち、一方たる下方体5bの縦地材51の上端部に設けたソケット9と、他方たる上方体5cの縦地材52の下端部に設けたカラー10とからなるとしている。
少し説明すると、中段脚5における下方体5bを形成する縦地材51は、上端に円筒体からなり、上方に向けて突出するソケット9を有し、中段脚5における上方体5cを形成する縦地材52は、下端に内側断面が円となり、下方に向けて突出し、内側にソケット9の挿通を許容するカラー10を一体に有してなる。
そして、この連結構造にあっては、ソケット9およびカラー10は、図中に矢印で示すように上方体5cが移動されて、図示しないが、下方体5bに連結された状態、すなわち、ソケット9がカラー10内に挿通された状態になったときには、両者を図示しないピンが横方向から貫通して、両者の分離、つまり、ソケット9がカラー10から抜け出ることが阻止されるとしている。
図9は、作業床2の一例を示すもので、図示するところにあっては、作業床2が伸縮脚Sを構成する上段脚4における縦地材41の上端に連結された状態を示し、縦地材41の上端に固定状態に設けられたホルダ42が作業床2を形成する主桁23を下方から分離可能に支えるとしている。なお、この図9にあっては、作業床2における本体部2a(図1〜図4参照)のみを示し、この本体部2aに設けられる補助部2bについては、図示を省略している。
ちなみに、作業床2にあっては、一対の主桁23が軌条Rを横切る方向たる長手方向に配設され、この一対の主桁23の上方に作業員が実質的に立ち入ることになる床部を形成するとし、床部は、角パイプからなり作業床2の短手方向に配設される一対の横架材23aと、丸パイプからなり短手方向の一対の横架材23aに連結される長手方向の一対の横架材23bと、この長手方向の一対の横架材23bに架け渡される複数枚の床板23cとを有してなる。
作業床2にあって、短手方向の横架材23aは、主桁23に溶接されて固定的に連結され、長手方向の横架材23bも、横架材23aに溶接されて固定的に連結され、床板23cは、横架材23bに着脱自在に掛け渡されて横架材23bからの分離を可能にする。
もっとも、床板23cは、作業床2の使用時には、横架材23bから簡単に分離しないように適宜の連結手段で横架材に連結されている。ちなみに、丸パイプからなる横架材23bは、図示しないが、この作業床2における補助部2b(図2参照)を構成するパイプ材を出没自在に挿通させている。また、図示しないが、主桁23は、横架材23bに沿う軸線方向の両端部に腕21(図2参照)を出没可能に保持している。
戻って、ホルダ42は、縦断面形状を上端で開口する角U字状にする樋状に形成されて、内側に作業床2を形成する主桁23を嵌装させ、このホルダ42および主桁23を一体に貫通する連結軸たるボルト43に対するナット44の螺合でホルダ42と主桁23の連結状態を維持している。
これによって、作業床2が上段脚4の上端で軌条Rの敷設方向、および、軌条Rの敷設方向を横切る方向に移動し得なくなる、つまり、ずれなくなり、作業員が作業床2の床部上で安全に作業を実践することを保障することになると共に、ホルダ42において、ボルト43からのナット44の撤去、および、ボルト43の抜き取りで、作業床2と上段脚4との分離を実現し得ることになる。
手摺22は、図示するところでは、横架材23aの上端に溶接されて起立するソケット22aと、このソケット22aに上方から下端部が挿し込まれる手摺支柱22bと、図示しないが、この手摺支柱22bの上端に連結されて下方の横架材23bに沿うように横方向に延びる手摺(棒)とを有して、床部に分離可能に設けられるとしている。
ちなみに、図示するところでは、手摺22が作業床2の床部に設けられるとするが、いわゆる手摺として機能する限りには、図示しないが、たとえば、主桁23に連結されるようにして設けられるとしても良く、また、横架材23bに掛け渡される床板23に、分離可能に、あるいは、一体的に設けられてなるとしても良い。
また、この手摺22については、本発明の意図するところからすると、床部に分離可能に設けられるのが良いが、これに代えて、図示しないが、床部に折り畳み可能に設けられるとしても良く、さらには、床部に固定的に設けられるとしても良い。
以上のように形成された移動足場にあっては、以下のようにして、地下鉄のトンネルT内に導入するが、トンネルT内への導入前の移動足場は、いわゆる分解された状態にあり、トンネルT内にあって、軌条Rに載せた状態、あるいは路盤Bに載せた状態にして組み上げ、車輪11を利用して目的地に移動されてトンネルT内への導入を実現する。
先ず、移動足場を導入するトンネルT内の目的地に最寄りとなる駅の地上にある出入り口から、移動足場を構成する各構成部材を人手で駅構内に搬入し、駅構内における軌条Rあるいは路盤Bの上で各構成部材を連結して移動足場を組み上げる。
各構成部材をトンネルT内に搬入するのにあっては、各構成部材、つまり、トロ台車1、作業床2および伸縮脚Sが人手による搬送を可能にするから、短時間に各構成部材の駅構内への搬入が容易に可能になる。
駅構内に搬入された構成部材の内、先ずは、トロ台車1が軌条Rあるいは路盤Bに載せられ、このトロ台車1に伸縮脚Sを構成する下段脚3を分離可能に立設する。このとき、伸縮脚Sが中段脚5を有する場合には、下段脚3は、中段脚5における下方体5bをあらかじめ昇降可能に連結している。
次に、トロ台車1に立設された下段脚3に、同じく伸縮脚Sを構成する上段脚4を分離可能に連結する。このとき、伸縮脚Sが中段脚5を有する場合には、上段脚3は、中段脚5における上方体5cをあらかじめ昇降可能に連結しているから、この上方体5cを下段脚3に連結されている下方体5bに分離可能に連結する。
トロ台車1に対する伸縮脚Sの連結が終了した時点で、牽引索W1の一端部を上段脚4に分離可能に連結するが、牽引索W1の一端部は、トロ台車1に設けられている手動巻き上げ機P1から引き出される。
このとき、伸縮脚Sが中段脚5を有する構成とされる場合には、一方の牽引索たる下方の牽引索W2の一端部が中段脚5における下方体5bに着脱可能に連結され、他方の牽引索たる上方の牽引索W3の一端部が中段脚5における上方体5cの下端部に着脱可能に連結される。ちなみに、下方の牽引索W2および上方の牽引索W3の各一端部は、トロ台車1に装備の相応の手動巻き上げ機P2,P3から引き出される。
さらに、上段脚4に作業床2を分離可能に連結する。このとき、作業床2は、軌条Rの敷設方向を横切る方向になるように上段脚4に位置決めされて連結されるが、図示するところでは、上段脚4の上端に設けられた樋状のホルダ42に作業床2を形成する主桁23が上から嵌装されるとするから、作業床2が方向を間違えて伸縮脚Sの上端に連結される危惧はない。また、これによって、軌条Rに移動足場が載せられた状態になり、したがって、この状態から、人力による移動足場の目的地への移動が可能になる。
目的地に移動された移動足場における作業床2に作業員が立ち入る場合には、あらかじめ作業床2を所定の高さ位置に位置決めするが、この高さの位置決めには、牽引索W1あるいは下方の牽引索W2および上方の牽引索W3が選択されて、あるいは同時に利用される。
つまり、伸縮脚Sが二段構成とされる場合には、牽引索W1を手動巻き上げ機P1の利用で牽引すると、下段脚3に対して上段脚4が昇降し、作業床2が昇降する。そして、伸縮脚Sが三段構成とされる場合には、他方の手動巻き上げ機P3を利用して上方の牽引索W3を牽引すると、中段脚5に対して上段脚4が上昇する。
一方、伸縮脚Sが三段構成の場合に、一方の手動巻き上げ機P2を利用して下方の牽引索W2を牽引すると、下段脚3に対して中段脚5が上昇し、この状態から、上方の牽引索W3を牽引すると、中段脚5に対して上段脚4が上昇する。
以上からすれば、伸縮脚Sが二段構成の場合には、手動巻き上げ機P1の作動で牽引索W1を牽引すれば良く、また、伸縮脚Sが三段構成の場合には、作業床2を位置決める高さに応じて、下方の牽引索W2あるいは上方の牽引索W3のいずれか一方、または、両方を手動巻き上げ機P2,P3の作動で牽引すれば良い。
作業床2が所定の高さ位置に位置決めされた後は、作業員が作業床2に立ち入って、所望の作業を実行すれば良く、利用後の撤去に際しては、上記したところと逆の手順を辿れば良い。
それゆえ、本発明の移動足場にあっては、構成部材たるトロ台車1、作業床2および伸縮脚Sの人手による搬送を許容するから、各構成部材を地上にある地下鉄の出入り口を通じて駅構内に搬入することが可能になると共に、逆に、駅構内から地上に搬送することが可能になる。
そして、本発明の移動足場にあっては、駅構内に搬入した各構成部材を所定の通りに連結することで組み立てられ、地下鉄のトンネル内への導入が可能とされ、また、逆の手順を踏むことで、地下鉄のトンネルT内からの撤去が可能になる。
そしてまた、この移動足場の組立分解にあっては、この移動足場がトロ台車1を走行させるための動力を利用する駆動機構や作業床2を昇降させるための動力を利用する昇降機構などを有しないから、これら各機構を有する場合に比較して、各構成部材の連結分離の作業だけ足り、手間を要せずして迅速に組立分解を実行し得ることになる。
以上からして、本発明の移動足場によれば、短時間での分解組立を可能にし得るから、特に、移動足場を利用するのが、終電後の地下鉄のトンネルとなる場合に、また、このトンネルにおける作業が壁面における剥れの修理などの一時的部分的となる場合に、短時間でトンネルT内に導入することができ、また、短時間でトンネルT内から撤去することが可能になる。
本発明の移動足場は、以上のように形成されてなるが、さらには、以下のような配慮、つまり、適宜の変形がなされて良いので、以下に少し説明する。前記したところでは、下段脚3は、ベース14の利用で、トロ台車1に分離可能に連結されるとしているが、これに代えて、図示しないが、下段脚3の下端に溶接などで一体に設けたプレートをトロ台車1の上面にボルトナット利用で連結するとしても良い。このとき、たとえば、ナットは、トロ台車1に溶接されなるとしても良い。
また、トロ台車1への下段脚3の連結に際しては、同じく図示しないが、下段脚3の下端部をトロ台車1の上端に設けた枠体に分離可能に嵌着するとし、この嵌着状態を、たとえば、下段脚3の下端部とトロ台車1上の枠体とを貫通するストッパピンの利用で維持するようにしても良い。
そして、前記したところでは、伸縮脚Sを構成する下段脚3,上段脚4および中段脚5は、フレーム構造に形成されてなるとしたが、これに代えて、各脚3,4,5間における昇降自在な連結が保障される限りには、図示しないが、各脚3,4,5が周壁部を有し上下端を開口する筒状に形成されてなるとしても良く、また、筒状に形成される場合における横断面形状を矩形にするだけでなく、円形や楕円形にするとしても良い。
伸縮脚Sが横断面の形状を矩形にする場合には、下段脚3と上段脚4との間、あるいは、両者間に中段脚5を有する場合に、相互間の昇降を自在にするのにあって、相互間の回動を阻止し得る、つまり、作業床2の水平方向の回動が阻止される点で有利となる。
対して、伸縮脚Sが横断面の形状を円形にする場合には、下段脚3と上段脚4との間、あるいは、両者間に中段脚5を有する場合に、基本的に相互間の回動が許容されるので、作業床2の一端や側面が対向する面が湾曲などする場合に対応可能になる点で有利となる。
そしてまた、前記したところでは、伸縮脚Sは、下段脚3と上段脚4との組み合わせ、あるいは、下段脚3と上段脚4に中段脚5を組み合わせた状態からなるとするが、これに代えて、図示しないが、たとえば、スパイラルリフトからなるとしても良く、このスパイラルリフトを手動操作で伸縮させるのはもちろんであるが、伸縮脚Sにスパイラルリフトを利用する場合には、移動足場を形成する構成部材の総部材数を大幅に減少させることが可能になり、搬送や組立分解を一層容易にすることが可能になる。
さらに、前記したところでは、作業床2と上段脚4の連結に、樋状に形成されるホルダ42を利用するとしたが、これに代えて、図示しないが、ボルトナットの利用によるとしても良い。
この場合に、たとえば、上段脚4が上端に起立するボルトを有し、この起立するボルトが作業床2の主桁23を上下方向に貫通するとし、ボルトの主桁23の貫通高さを規制する複数のナットをボルトが有する構成としても良く、この場合には、上段脚4と作業床2との連結構造を簡素化しながら、ボルトナットにレベル調整機能を具有させることが可能になる。
またさらに、前記したところでは、伸縮脚Sにあって、中段脚5は、下段脚3に昇降可能に連結すると共に上段脚4を昇降可能に連結するから、下段脚3と上段脚4とを上下方向に直列させた長さにほぼ相当する長さを有するように形成され、したがって、下段脚3に対して上昇すると共に上段脚4を上昇させる場合には、上段脚4と下段脚3との間を、上段脚4あるいは下段脚3のほぼ二倍の長さに離すことになるが、中段脚5における下方体5bおよび上方体5cの上下方向となる長さが、下段脚3および上段脚4の上下方向となる長さに比較して短く設定される場合には、上段脚4と下段脚3の離間長さを上記のほぼ二倍より小さくし得る。
そしてさらに、前記したところでは、伸縮脚Sの伸縮に関与する下方の牽引索W2および上方の牽引索W3の各脚への連結位置については、下方の牽引索W2の一端部が中段脚5における下方体5bの下端部に連結されるとし、上方の牽引索W3の一端部が上段脚4の下端部に連結されるとしたが、これに代えて、図示しないが、下方の牽引索W2の一端部が中段脚5における下方体5bの上下方向の中央部に連結され、また、上方の牽引索W3の一端部が上段脚5における上下方向の中央部に連結されても良く、この場合には、相応する各脚が最大でもいわゆる半分しか上昇しなくなり、作業床2の昇降ストロークを小さく抑えることが可能になる。
また、移動足場にあって、伸縮脚Sが三段構成とされ、下段脚3に対して中段脚5が下降した状態にあり、また、中段脚5に対して上段脚4が下降した状態にあるときに、上方の牽引索W3の他端側を固定状態に維持したまま、下方の牽引策W2を牽引すると、上方の牽引索W3も併せて牽引される状態になり、上段脚4が下方の牽引索W2の牽引で上昇する中段脚5に対して連れ運動して同期に上昇することになる。
このことからすると、上方の牽引索W3の他端部は、他方の手動巻き上げ機P3に連結されることに代えて、図示しないが、たとえば、トロ台車1に直接連結されるとしても良いと言える。そして、この場合には、他方の手動巻き上げ機P3のトロ台車1への装備を省略できるから、この装備の省略でトロ台車1における重量の低減化を可能にし得る。
そして、前記したところでは、移動足場が地下鉄のトンネルT内に導入されて利用される場合を例にして説明したが、本発明が意図するところからすれば、本発明の移動足場が地下鉄のトンネルT以外のところ、たとえば、地上などの横方向や上方に制約のないいわゆる開放されている場所での利用を妨げるものではない。