JP2014143000A - 二次電池電極形成用組成物、二次電池用電極および二次電池 - Google Patents

二次電池電極形成用組成物、二次電池用電極および二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】活物質や導電助剤の分散性に優れる電極形成用組成物を提供することであって、さらに長期の充放電サイクル特性に優れる二次電池を提供すること。
【解決手段】ポリビニルアセタール樹脂と、塩基性官能基を有する有機色素誘導体および/または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体である誘導体と、導電助剤である炭素材料とを含んでなる二次電池電極形成用組成物。更に、溶剤、バインダー、活物質を含んでなる二次電池電極形成用組成物およびそれを用いて形成された二次電池用電極を具備してなる二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池を構成する電極を作製するための二次電池電極形成用組成物およびそれを用いて得られる二次電池用電極と二次電池に関する。特に、リチウム二次電池を製造するための二次電池電極形成用組成物、二次電池用電極、二次電池に関する。
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器では、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池が求められている。また、自動車搭載用などの大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池が求められている。
これらの産業上の需要に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合材を、金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
一般的に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)やグラファイト(黒鉛)等の炭素材料を導電助剤として添加することで導電性を改善し、電極の内部抵抗を低減することが試みられている。
一方、負極活物質としては、通常黒鉛が用いられている。黒鉛はそれ自身が導電性を有しているものの、黒鉛とともに導電助剤としてアセチレンブラック等のカーボンブラックを添加すると充放電特性が改善されることが知られている。これは、一般に用いられる黒鉛粒子は大きいために、黒鉛単独で使用すると電極層に充填された時の隙間が多くなってしまうが、導電助剤としてカーボンブラックを併用した場合は、微細なカーボンブラック粒子が黒鉛粒子間の隙間を埋めることで接触面積が増え、抵抗が低くなるためと考えられる。しかしながら、この場合も導電助剤の分散が不十分であると、導電効果が低減する。
この様に、とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要な要素技術の一つとなっている。
しかしながら、導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は凝集力が強く、リチウム二次電池の電極合材形成用スラリー中に均一に混合・分散することが困難である。そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成さないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物やグラファイトなどの性能を十分に引き出せないという問題が生じる。また、電極合材中の導電助剤の分散が不十分であると、部分的な凝集に起因して電極板上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際に電流が集中し、部分的な発熱および劣化が促進される等の不具合が生ずることがある。
また、金属箔などの電極集電体上に電極合材層を形成する場合、多数回の充放電を繰り返すと、集電体と電極合材層の界面や、電極合材内部における活物質と導電助剤界面の密着性が悪化し、電池性能が低下する問題がある。これは、充放電におけるリチウムイオンのドープ、脱ドープにより活物質および電極合材層が、膨張、収縮を繰り返すために、電極合材層と集電体界面および、活物質と導電助剤界面に局部的なせん断応力が発生し、界面の密着性が悪化するためと考えられている。そしてこの場合も、導電助剤の分散が不十分であると、密着低下が著しくなる。これは、粗大な凝集粒子が存在すると、応力が緩和されにくくなるためであると考えられる。
前述の様な問題や不具合に対して、リチウム二次電池においては、導電助剤である炭素材料の分散が重要な技術の一つと考えられ、いくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、導電助剤である炭素材料を分散する際に、分散剤として塩基性官能基を有する有機色素誘導体や塩基性官能基を有するトリアジン誘導体を用いる例が記載されている。また、特許文献2には、分散剤としてポリビニルアセタール樹脂を用いる例が記載されている。これらの方法によれば、分散安定性に優れた炭素材料の分散体および合材スラリーを調製することができ、炭素材料の分散効果等に起因すると思われる電池性能の向上が図られているものの、電池を安定して生産するために、更なる分散体の経時安定性が求められている。また、電池性能として電池の充放電サイクル特性の更なる向上(充放電を繰り返したときの容量低下の抑制)が求められている。
特開2009−26744号公報 特開2011−184664号公報
本発明が解決しようとする課題は、導電助剤を含む二次電池電極形成用組成物において、導電助剤の分散安定性および、合材スラリーの分散安定性に優れた二次電池電極形成用組成物を提供することにある。また、これを用いることによって、電池の充放電サイクル特性に優れた電極と二次電池を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、導電助剤としての炭素材料を分散させる際に、ポリビニルアセタール樹脂(A)および誘導体(B)を分散剤として併用することにより、分散安定性に優れ、二次電池の性能向上に効果を発揮する二次電池電極形成用組成物(分散体および合材スラリー)を得られることを見出し、本発明になすに至ったものである。
すなわち、本発明の実施態様は、ポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性官能基を有する有機色素誘導体および/または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体である誘導体(B)と、導電助剤である炭素材料(C)とを含んでなる二次電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明の実施態様は、更に、溶剤(D)を含んでなる上記電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明の実施態様は、更に、バインダー(F)を含んでなる上記二次電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明の実施態様は、更に、活物質(E)を含んでなる上記二次電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明の実施態様は、活物質(E)の平均粒径/炭素材料(C)の分散粒径(D50)の比が、2以上、100以下である上記二次電池電極形成用組成物に関する。
また、本発明の実施態様は、集電体上に合材層を有する電極であって、合材層が上記二次電池電極形成用組成物によって形成されてなる二次電池用電極に関する。
更に、本発明の実施態様は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、電解質とを具備する二次電池であって、前記正極もしくは負極の少なくとも一方が、上記電池用電極である二次電池に関する。
本発明の好ましい実施態様によれば、活物質や導電助剤の分散性に優れる電極形成用組成物を提供することができる。また、本発明の電極形成用組成物を用いた電極と二次電池は、充放電サイクル特性を向上させることができる。これは、分散剤の使用により分散安定性に優れる炭素材料粒子の分散体および合材スラリーが調製できたためというだけでなく、ポリビニルアセタール樹脂(A)および誘導体(B)を併用することにより、電極作製時に活物質(E)と炭素材料(C)の均一で強固な接触が起きるためと思われる。したがって、本発明の二次電池電極形成用組成物は、リチウム二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドニウム二次電池、アルカリマンガン電池、鉛電池、燃料電池、キャパシタなどに用いることができるが、特にリチウム二次電池に用いると好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、塩基性官能基を有する有機色素誘導体または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体を総称して「誘導体(B)」、二次電池電極形成用組成物を「組成物」、正極活物質および負極活物質を総称して「活物質(E)」と記す場合がある。
<誘導体(B)>
まず、本発明において使用する誘導体(B)について説明する。本発明において使用する誘導体(B)は、塩基性官能基を有する有機色素誘導体または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体である。とりわけ、下記一般式(1)で示される塩基性官能基を有するトリアジン誘導体、または一般式(6)で示される塩基性官能基を有する有機色素誘導体が好ましい。まず、一般式(1)で示される塩基性官能基を有するトリアジン誘導体について説明する。
一般式(1)
Figure 2014143000
1は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X2−Y1−X3−を表し、X2は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−または−NHSO2−を表し、X3は、−NH−または−O−を表し、Y1は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
Pは、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)のいずれかで示される基を表す。
Qは、−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R1または一般式(2)、一般式(3)もしくは一般式(4)のいずれかで示される基を表す。
2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基または置換基を有してもよいアリール基を表す。
一般式(2)
Figure 2014143000

一般式(3)
Figure 2014143000

一般式(4)
Figure 2014143000
4は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−または−X5−Y1−X6−を表す。X5は、−NH−または−O−を表し、X6は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−または−CH2−を表す。
1は、1〜10の整数を表す。
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または複素環残基を表し、R3とR4が結合して環を形成しても良い。
5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
9は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
1は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基または下記一般式(5)で示される基を表す。
一般式(5)
Figure 2014143000
Tは、−X8−R10またはW1を表し、Uは、−X9−R11またはW2を表す。
1およびW2は、それぞれ独立に、−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基または一般式(2)、一般式(3)もしくは一般式(4)のいずれかで示される基を表す。
7は、−NH−または−O−を表し、X8およびX9は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−または−CH2NHCOCH2NH−を表す。
10およびR11は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基または置換基を有していてもよい芳香族環残基を表す。
一般式(1)のR1および一般式(5)のR10、R11における有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の残基が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましい。
一般式(1)のR1および一般式(5)のR10、R11における複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、トリアジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、アクリドン等の残基が挙げられる。これらの複素環残基および芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、およびフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または複素環残基を表し、R3とR4が結合して環を形成しても良い。とりわけ、水素原子であることが、電池内での金属析出を抑える効果が高いと思われ好ましい。
一般式(1)および一般式(5)のY1は、炭素数20以下の置換基を有してもよいアルキレン基、アルケニレン基またはアリーレン基を表すが、好ましくは、置換基を有してもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
一般式(6)
Figure 2014143000

Zは、下記一般式(7)、一般式(8)または一般式(9)で示される基である。mは、1〜4の整数を表す。
一般式(7)
Figure 2014143000

一般式(8)
Figure 2014143000

一般式(9)
Figure 2014143000
24は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−または−X25−Y2−X26−を表す。X25は、−NH−または−O−を表し、X26は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−または−CH2−を表す。Y2は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
2は、1〜10の整数を表す。
23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基または複素環残基を表し、R23とR24が結合して環を形成しても良い。とりわけ、水素原子であることが、電池内での金属析出を抑える効果が高いと思われ好ましい。
25、R26、R27およびR28は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
29は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
22は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基を表す。
22における有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素の残基が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましい。
また、R22における複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、アクリドン等の残基が挙げられる。これらの複素環残基および芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、およびフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
一般式(2)〜(4)および一般式(7)〜(9)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
本発明の塩基性官能基を有する有機色素誘導体または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではないが、特開昭54−62227号公報、特開昭56−118462号公報、特開昭56−166266号公報、特開昭60−88185号公報、特開昭63−305173号公報、特開平3−2676号公報、特開平11−199796号公報等に記載されている方法で合成することができる。
例えば、本発明の塩基性官能基を有する有機色素誘導体は、有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)に式(10)〜式(13)で示される置換基を導入した後、これら置換機とアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等)を反応させることによって、合成することができる。

式(10) −SO2Cl
式(11) −COCl
式(12) −CH2NHCOCH2Cl
式(13) −CH2Cl

また、例えば、式(10)で示される置換基を導入する場合には、有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)をクロロスルホン酸に溶解して、塩化チオニル等の塩素化剤を反応させるが、このときの反応温度、反応時間等の条件により、有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)に導入する式(10)で示される置換基数をコントロールすることができる。
また、式(11)で示される置換基を導入する場合には、まずカルボキシル基を有する有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)を公知の方法で合成した後、ベンゼン等の芳香族溶媒中で塩化チオニル等の塩素化剤を反応させる方法等が挙げられる。
式(10)〜式(13)で示される置換基とアミン成分との反応時には、式(10)〜式(13)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素が水酸基に置換することがある。その場合、式(10)で示される置換基はスルホン酸基となり、式(11)で示される置換基はカルボン酸基となるが、いずれも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属もしくは、上記のアミンと塩を形成していてもよい。
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、式(7)〜式(9)または、下記一般式(14)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系有機色素誘導体を製造することもできる。
一般式(14)
Figure 2014143000
1は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−または−X2−Y1−X3−を表し、X2は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−または−NHSO2−を表し、X3はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表し、Y1は炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
Pは、一般式(2)、(3)または、一般式(4)のいずれかで示される置換基を表す。
Qは、−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R1または、一般式(2)、(3)もしくは、一般式(4)のいずれかで示される置換基を表す。
2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または、置換基を有してもよいアルケニル基もしくは、置換基を有してもよいアリール基を表す。
また、本発明の塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に式(7)〜式(9)または、一般式(14)で示される置換基を形成するアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等)を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
上記誘導体(B)は、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用しても良い。
本発明において、誘導体(B)は主に分散剤として機能するとともに、電池性能を向上させるに適した電極膜状態を作り出すための役割も担っているものと考えられる。
<ポリビニルアセタール樹脂(A)>
本発明において使用するポリビニルアセタール樹脂(A)は、下記の式(15)で示されるビニルアルコール構造、式(16)で示される酢酸ビニル構造および一般式(17)で示されるビニルアセタール構造を繰り返し単位として含む重合体である。
式(15)
Figure 2014143000
式(16)
Figure 2014143000
一般式(17)
Figure 2014143000
[一般式(17)中、αは、0または1〜8、好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜4の整数である。]
また、ポリビニルアセタール樹脂(A)中の一般式(17)で示される構造は、単一構造のみならず、異なる複数の構造を含んでも良い。
本発明に用いるポリビニルアセタール樹脂(A)の製法については特に制限はなく、公知の方法で合成された各種ポリビニルアセタール樹脂および市販のものも使用することができる。
代表的な合成方法としては、酢酸ビニルのようなビニルアルコール前駆体を重合させて得たポリマーをアルカリでケン化して、一部を式(15)で示されるビニルアルコール構造に変え、これにアルデヒド類を反応させてアセタール化する方法を挙げることができる。このとき作用させるアルデヒドの種類は、単独もしくは複数の種類を反応させることができる。
炭素材料(C)の分散安定性は、ポリビニルアセタール樹脂中の式(15)で示されるビニルアルコール構造単位の含有量に影響される傾向が見出された。ビニルアルコール構造単位のポリビニルアセタール樹脂全体に占める含有量は12〜30重量%が好ましく、14〜25重量%がさらに好ましい。また、式(16)で示される酢酸ビニル構造単位のポリビニルアセタール樹脂全体に占める含有量は10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
上記一般式(17)で示されるビニルアセタール構造単位において、アセタール基の種類は特に限定されるものではないが、中でもブチラール基(α=3)が、電池性能が比較的良好で、且つ後述する溶剤(特にN−メチル−2−ピロリドン)への溶解性も良好なため好ましい。
また、ポリビニルアセタール樹脂のN−メチル−2−ピロリドンに対する溶解性は、ポリビニルアセタール樹脂の平均分子量もしくは平均重合度に相関がある傾向が見出された。ポリビニルアセタール樹脂の平均分子量が10万以下であれば、本発明における添加量として十分な量がN−メチル−2−ピロリドンに溶解するため好ましく、5万以下であれば溶解速度が大きいためさらに好ましい。また、平均重合度が2000以下であれば、本発明における添加量として十分な量がN−メチル−2−ピロリドンに溶解するため好ましく、800以下であれば溶解速度が大きいためさらに好ましい。
市販のポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、エスレックBL−1、BL−10、BM−1、BH−3(積水化学工業社製ポリビニルブチラール樹脂)、エスレックBX−1、BX−L、KS−10(同社製ポリビニルアセタール樹脂)、デンカブチラール#3000−1、#3000−K、#4000−2(電気化学工業社製ポリビニルブチラール樹脂)、モビタールLPB16H、B20H、B30T、B30H、B30HH、B45M(クラレ社製ポリビニルブチラール樹脂)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂(A)は主に分散剤として機能するとともに、電池性能を向上させるに適した電極膜状態を作り出すための役割も担っているものと考えられる。
<炭素材料(C)>
本発明における導電助剤としては、炭素材料が最も好ましい。炭素材料(C)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいものほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡で測定された粒子径を平均した値である。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li、(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。グラファイトとしては、例えば、人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い
導電性炭素繊維としては、石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば、石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
<溶剤(D)>
本発明の電池用組成物に用いても良い溶剤(D)(本明細書中では、溶媒または液状媒体と称する場合がある)としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類が挙げられる。
これらの中でも、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。比誘電率は、溶剤の極性の強さを表す指標のひとつであり、浅原ほか編「溶剤ハンドブック」((株)講談社サイエンティフィク、1990年)等に記載されている。
例えば、メチルアルコール(比誘電率:33.1)、エチルアルコール(23.8)、2−プロパノール(18.3)、1−ブタノール(17.1)、1,2−エタンジオール(38.66)、1,2−プロパンジオール(32.0)、1,3−プロパンジオール(35.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、ジエチレングリコール(31.69)、2−メトキシエタノール(16.93)、2−エトキシエタノール(29.6)、2−アミノエタノール(37.7)、アセトン(20.7)、メチルエチルケトン(18.51)、ホルムアミド(111.0)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.71)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)、N−メチル−2−ピロリドン(32.0)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(29.6)、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)、アセトニトリル(37.5)、プロピオニトリル(29.7)等が挙げられるが、これらに限定されない。
とりわけ、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、更に好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用することが、活物質や導電助剤の分散性に優れており好ましい。
また、溶剤の選択は、活物質との反応性、及びバインダー樹脂に対する溶解性等を鑑みつつ行う。分散性が高く、活物質との反応性が低く、バインダー樹脂の溶解性の高い溶剤を選択することが好ましい。
溶剤は、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用しても良いが、環境負荷軽減や経済的有利性等から、電極製造工程において排出される溶剤を回収・再利用する場合は、混合溶剤ではなく、単一溶剤での使用が好ましい。
これら、比誘電率、活物質との反応性、及びバインダー樹脂の溶解性を満たし、単一使用での汎用性を有する溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系非プロトン性の非水系溶剤の使用が好ましい。特に本発明の使用態様においては、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
<活物質(E)>
本発明の組成物を正極合材もしくは負極合材に用いる場合は、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)、誘導体(B)、導電助剤としての炭素材料(C)、および溶剤(D)以外に、少なくとも正極活物質または負極活物質を含有させる。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
これら活物質(E)の大きさは、平均粒径が0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。本明細書でいう活物質(E)の平均粒径とは、活物質(E)を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
<バインダー(F)>
本発明の組成物には、更に、バインダーを含有させることが好ましい。使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。特に本発明の使用態様においては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
また、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合材成分が著しく凝集してしまうことがある。
<本発明の組成物の用途>
本発明の組成物は、正極合材または負極合材に用いることができる。正極合材または負極合材に用いる場合は、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)と、誘導体(B)と、導電助剤としての炭素材料(C)および、溶剤(D)とを含む組成物に、活物質(E)(正極活物質または負極活物質)、好ましくは更にバインダー(F)を含有させた正・負極合材スラリーとして使用することが好ましい。
電極合材スラリー中の総固形分に占める活物質の割合は、80重量%以上、99重量%以下が好ましい。また、電極合材スラリー中の総固形分に占める、導電助剤としての炭素材料(C)割合は、0.1重量%以上、15重量%以下が好ましい。
また、本発明において、合材スラリー中に占めるポリビニルアセタール樹脂(A)および誘導体(B)の割合は、活物質(E)と導電助剤としての炭素材料(C)の重量の合計に対して、それぞれ0.01〜7.5重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜2.5重量%である。そして、電極合材スラリー中の総固形分に占める、バインダー成分の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい。また、電極合材スラリーの適正粘度は、電極合材スラリーの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
<二次電池電極形成用の製造方法>
次に、二次電池電極形成用組成物の製造方法について説明する。本発明の組成物は、例えば、ポリビニルアセタール樹脂(A)と、誘導体(B)の存在下、導電助剤としての炭素材料(C)を溶剤(D)に分散し、該分散体に、必要に応じて、活物質(E)(正極活物質または、負極活物質)、および/またはバインダー(F)を混合することにより、製造することができる。各成分の添加順序などについては、これに限定されるわけではない。また、必要に応じて、更に溶剤や添加剤を加えても良い。尚、本明細書において、「分散体」とは、特に断りがない限り、ポリビニルアセタール樹脂(A)、誘導体(B)、導電助剤としての炭素材料(C)、溶剤(D)からなる二次電池電極形成用組成物を指すものとする。また、「合材スラリー」とは、「分散体」に、さらに活物質(E)(正極活物質または負極活物質)およびバインダー(F)を含有してなる二次電池電極形成用組成物を指すものとする。
上記製造方法は、ポリビニルアセタール樹脂(A)と誘導体(B)を、溶剤(D)中で完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に導電助剤としての炭素材料(C)を添加、混合することで、これら樹脂(A)および誘導体(B)を、炭素材料(C)に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するものである。このときの分散体中における炭素材料(C)の濃度は、使用する炭素材料(C)の比表面積や表面官能基量などの炭素材料固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、50重量%以下が好ましく、更に好ましくは、5重量%以上、35重量%以下である。炭素材料(C)の濃度が低すぎると生産効率が悪くなり、炭素材料(C)の濃度が高すぎると、分散体の粘度が著しく高くなり、分散効率や、後述するコンタミ除去工程の効率および、分散体の作業性が低下する場合がある。とりわけ、コンタミを除く工程を入れる場合は、分散体の粘度を、好ましくは5mPa・s以上、10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下とする。
また、上記の分散体製造時に分散助剤として塩基(G)を添加しても良い。このとき用いる塩基としては、アルカリ金属などの金属水酸化物、弱酸と強塩基との反応によって生ずる塩類、アンモニア、アミン化合物など、種々の塩基が挙げられる。その中でも、有機溶剤への溶解性からアミン化合物が好ましい。具体的には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ドコデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソオクチルアミン、イソアミルアミン、アリルアミン、シアノエチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ベンジルアミン、アニシジン、アミノベンゾニトリル、ピペリジン、ピラジン、ピリジン、ピロール、ピロリジン、メトキシアミン、メトキシエチルアミン、メトキシエトキシエチルアミン、メトキシエトキシエトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、エトキシアミン、n−ブトキシアミン、2−ヘキシルオキシアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、ヒドロキシアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシプロピルアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリトリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、2−エチルジアミン、2,2−(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリ−n−ブチルアミン、アンモニウムヒドロキシド、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、タウリン、ヒドラジン、ヘキサメチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
二次電池電極形成用組成物中での導電助剤としての炭素材料(C)の分散粒径は、0.03μm以上、2μm以下、好ましくは、0.05μm以上、1μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下であることが望ましい。
本明細書でいう炭素材料(C)の分散粒径とは、体積粒度分布において、粒径の小さいものからその粒子の体積割合を積算した際に、50%となるところの粒子径(D50)であり、動的光散乱方式の粒度分布計(本明細書の実施例では日機装社製「マイクロトラックUPA」)によって測定される値である。
また、上記樹脂(A)および誘導体(B)を炭素材料(C)に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するための装置としては、顔料分散等に用いられる分散機を使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーターおよびベッセルが、セラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーターおよびベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズや、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましく、中でもジルコニアビーズの使用が好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
また、分散時に金属異物等のコンタミを除く工程を入れることが好ましい。カーボンブラック、グラファイトおよび、炭素繊維等の炭素材料中には、それらの製造工程由来(ラインコンタミや触媒として)の金属異物が含まれている場合が多く、これら金属異物を除去することは、電池の短絡を防ぐために非常に重要となる。本発明では、ポリビニルアセタール樹脂(A)と誘導体(B)の効果により、炭素材料(C)同士の凝集がよくほぐれること、および分散体の粘度が低くなるため、分散体中の炭素材料濃度が高い場合でも、効率良く金属異物を取り除くことができる。金属異物を除く方法としては、磁石による除鉄や、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。
バインダー(F)の添加方法としては、上記樹脂(A)および誘導体(B)の存在下、導電助剤としての炭素材料(C)を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、固形のバインダー成分を添加し、溶解させる方法が挙げられる。また、バインダーを溶剤に溶解したものを事前に作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。また、バインダー(F)を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。また、樹脂(A)および誘導体(B)の存在下、導電助剤としての炭素材料(C)を溶剤(D)に分散するときに、バインダー(F)の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。
活物質(E)(正極活物質または負極活物質)の添加方法としては、上記樹脂(A)および誘導体(B)の存在下、導電助剤としての炭素材料(C)を溶剤(D)に分散してなる分散体を攪拌しつつ、正極活物質または負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。また、上記樹脂(A)および誘導体(B)の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するときに、正極活物質または負極活物質の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。また、上記樹脂(A)および誘導体(B)の存在下、導電助剤としての炭素材料(C)を溶剤(D)に分散してなる分散体を攪拌しつつ、バインダー成分を固形もしくは溶液で添加した後に、正極活物質または負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。更に、上記樹脂(A)、誘導体(B)、炭素材料(C)、溶剤(D)、活物質(E)、バインダー(F)を混合し、同時に分散処理することもできる。混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散機が使用できる。
使用する活物質(E)の大きさは、平均粒径で0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。ここでいう活物質の平均粒径とは、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)による観察画像において、個々の一次粒子の長径の平均値である。ただし、活物質の中には活物質の反応面積を増大させるために、合成過程または合成後に微細な一次粒子を造粒処理するなどした凝集体(二次粒子)を用いる場合があり、その場合は、二次粒子の長径を測定し、活物質の平均粒径とする。
活物質(E)の平均粒径が、上述の炭素材料(C)の分散粒径(D50)との比(活物質(E)の平均粒径/炭素材料(C)の分散粒径(D50))で、2以上、100以下であるのが好ましい。更に好ましくは、8以上、70以下である。
本発明の組成物は、上述するように、通常は溶剤を含む分散体(液)、ペースト等として、製造、流通、使用できる。これは、導電助剤や活物質と分散剤を乾燥粉体の状態で混合しても、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることはできず、液相法で、分散剤の存在下、導電助剤や活物質を溶剤に分散することにより、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることができるからである。また、以下に説明するように、集電体に電極合材層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コストなどの理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体として、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合材層の形成に用いても良い。したがって、本発明の組成物は、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
<電極>
本発明の二次電池電極形成用組成物のうち合材スラリーを、集電体上に塗工・乾燥し、合材層を形成し、二次電池用電極を得ることができる。
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
集電体上に合材スラリーや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池において、従来から知られている電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるが、これらに限定されない。
非水系の溶剤としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持し、ゲル状とした高分子電解質の形態で使用することもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
以下、実施例に基づき、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、部は、重量部を、%は、重量%を、それぞれ表す。また、実施例および比較例で使用したポリビニルアセタール樹脂(A)、誘導体(B)、炭素材料(C)、およびバインダー(F)を以下に示す。また、溶剤(D)として使用するN−メチル−2−ピロリドンを「NMP」と略記することがある。
<ポリビニルアセタール樹脂(A)>
・エスレックBL−1(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:25%、計算分子量:19,000、以下「BL−1」と略記することがある。
・エスレックBL−S(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:15%、計算分子量:23,000、以下「BL−S」と略記することがある。
・エスレックBM−1(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:24%、計算分子量:40,000、以下「BM−1」と略記することがある。
・エスレックBH−3(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:24%、計算分子量:110,000、以下「BH−3」と略記することがある。
・エスレックBH−S(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:14%、計算分子量:66,000、以下「BH−S」と略記することがある。
・エスレックBX−1(積水化学工業社製):ポリビニルアセタール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:27%、計算分子量:100,000、以下「BX−1」と略記することがある。
・デンカブチラール#3000−1(電気化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:19%、平均重合度:600、以下「#3000−1」と略記することがある。
・デンカブチラール#3000−K(電気化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:12%、平均重合度:800、以下「#3000−K」と略記することがある。
・デンカブチラール#5000−A(電気化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:16%、平均重合度:2000、以下「#5000−A」と略記することがある。
・モビタールLPB16H(クラレ社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む繰り返し単位:18%、平均分子量15000、以下「B16H」と略記することがある。
<誘導体(B)>
塩基性官能基を有する有機色素誘導体の構造を表1に示した。
Figure 2014143000
塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の構造を表2に示した。
Figure 2014143000
<炭素材料(C)>
・デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径48nm、比表面積48m2/g、以下「HS−100」と略記することがある。
・デンカブラック粒状品(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径35nm、比表面積68m2/g、以下「粒状品」と略記することがある。
・#3400B(三菱化学社製):ファーネスブラック、一次粒子径21nm、比表面積165m2/g。
・Super−P Li(TIMCAL社製):ファーネスブラック。一次粒子径40nm、比表面積62m2/g。
<バインダー(F)>
・KFポリマーW#1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、分子量:28万。以下「W#1100」と略記することがある。
・KFポリマーW#7200(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、分子量:63万。以下「W#7200」と略記することがある。
<二次電池電極形成用組成物(分散体)の製造>
[実施例1〜6]
表3に示した組成に従い、炭素材料分散体を調製した。まず、溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドン79部をミキサーで攪拌しつつ、各種ポリビニルアセタール樹脂(A)0.8部および、表1〜2に示した各種誘導体(B)0.2部を加え、当該樹脂(A)および誘導体(B)を完全ないしは一部溶解させた。次に、導電助剤となる各種炭素材料(C)を20部加えてミキサーで混合した後、更にサンドミルで分散を行い、二次電池電極形成用組成物の一態様である分散体1~6を得た。
[実施例7、8]
表3に示した組成に従い、炭素材料(C)として#3400Bを20部、表2に示した各種誘導体(B)0.2部、各種ポリビニルアセタール樹脂(A)1部および、溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドン78.8部に変更した以外は、上記実施例1~6と同様にして、分散体7、分散体8を得た。
[実施例9、10]
表3に示した組成に従い、炭素材料(C)としてSuper−P Liを20部、表2に示した各種誘導体(B)0.4部、各種ポリビニルアセタール樹脂(A)1部および、溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドン78.6部に変更した以外は、上記実施例1~6と同様にして、分散体9、分散体10を得た。
[比較例1]
表3に示した組成に従い、炭素材料分散体を調製した。まず、溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドン79部をミキサーで攪拌しつつ、誘導体(B)として表1に示したB−01を1部加え、当該誘導体(B)を一部溶解させた。次に、導電助剤となる炭素材料(C)としてHS−100を20部加えてミキサーで混合した後、更にサンドミルで分散を行い、分散体11を得た。
[比較例2]
表3に示した組成に従い、誘導体(B)の代わりにポリビニルアセタール樹脂(A)としてBL−1を1部使用した以外は、上記比較例1と同様にして、分散体12を得た。
[比較例3]
表3に示した組成に従い、炭素材料(C)として粒状品、誘導体(B)として表2に示したB−04に変更した以外は、上記比較例1と同様にして、分散体13を得た。
[比較例4]
表3に示した組成に従い、誘導体(B)の代わりにポリビニルアセタール樹脂(A)としてBH−3を使用した以外は、上記比較例3と同様にして、分散体14を得た。
[比較例5]
表3に示した組成に従い、炭素材料(C)として#3400Bを20部、誘導体(B)として表2に示したB−07を1.2部および、溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドン78.8部に変更した以外は、上記比較例1と同様にして、分散体15を得た。
[比較例6]
表3に示した組成に従い、誘導体(B)の代わりにポリビニルアセタール樹脂(A)として#3000−1を使用した以外は、上記比較例5と同様にして、分散体16を得た。
[比較例7]
表3に示した組成に従い、炭素材料(C)としてSuper−P Liを20部、誘導体(B)として表2に示したB−10を1.4部および、溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドン78.6部に変更した以外は、上記比較例1と同様にして、分散体17を得た。
[比較例8]
表3に示した組成に従い、誘導体(B)の代わりにポリビニルアセタール樹脂(A)としてB16Hを使用した以外は、上記比較例7と同様にして、分散体18を得た。
(分散体の分散性評価(分散粒径の測定))
分散体の分散性評価には、その指標として分散粒径を使用した。分散粒径の測定は、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用い、体積粒度分布において、粒径の小さいものからその粒子の体積割合を積算した際に、50%となるところの粒径(D50)を求めた。この粒径(D50)は、炭素材料(C)の分散粒径に該当する。
測定用のサンプル液は、以下のようにして調製した。N−メチル−2−ピロリドン100gをディスパー攪拌しつつ、その液に、上記で得られた各種分散体を1ないし4滴添加し、1,000rpmで5分攪拌した。当該測定用サンプル液を上記の粒度分布計にセットし、ローディングインデックス(レーザーの散乱強度)が0.8~1.2の範囲に入っていることを確認してから測定した。上記の調製方法でローディングインデックスが1.2を超える場合は、0.8~1.2の範囲になるよう、当該サンプル液をN−メチル−2−ピロリドンで適宜希釈してから測定した。測定時間は60秒/1回とし、3回連続で測定して得られた値の平均値を使用した。
分散体の分散性評価結果を表3に示した。数値が小さいものほど、分散性に優れ、均一で良好な分散体であることを示す。尚、分散体の分散粒径の測定は、各種分散体の製造直後および、当該分散体を50℃で10日間保存した後の2回測定した。
Figure 2014143000
表3において、「保存安定性(2)/(1)」とは、「50℃で10日間保存した分散体の分散粒径/製造直後の分散体の分散粒径」の比を意味し、1.00からの乖離が小さいほど保存安定性に優れていることを示す。
表3に示したように、いずれの分散体も導電助剤の分散性に優れ、均一に導電助剤が分散された分散体であることが確認された。とりわけ、本発明の分散体は、比較例に比して50℃で10日保存したときの分散粒径の変化が小さく、保存安定性に優れることが確認された。
<二次電池電極形成用組成物(正極合材スラリー)の製造>
[実施例11]
実施例1で製造した分散体1 11部とバインダー(F)としてW#1100のNMP溶液(固形分12%)17.3部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ正極活物質として平均粒径6.7μmのLiCoO2(以下、LCO−01と略記することがある)68.6部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が73%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、二次電池電極形成用組成物の一態様である正極合材スラリーを製造した。
[実施例13〜17、比較例9〜12]
表4に示した材料に変更した以外は実施例11と同様にして、正極合材スラリーを製造した。また、活物質としては、LCO−01、平均粒径20μmのLiCoO2(以下、LCO−02と略記することがある)、平均粒径12μmのLiMn24(以下、LMOと略記することがある)、平均粒径15μmのLiNi(1/3)Mn(1/3)Co(1/3)2(以下、NMC−01と略記することがある)のいずれかを使用した。
[実施例18]
実施例7で製造した分散体7 11部とバインダー(F)としてW#1100のNMP溶液(固形分12%)17.2部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ正極活物質としてNMC−01 68.6部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が73%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極合材スラリーを製造した。
[実施例20、比較例13、14]
表4に示した材料に変更した以外は実施例18と同様にして、正極合材スラリーを製造した。また、活物質としては、NMC−01、平均粒径11.5μmのLiNi(1/3)Mn(1/3)Co(1/3)2(以下、NMC−02と略記することがある)のいずれかを使用した。
[実施例21]
実施例9で製造した分散体9 11部とバインダー(F)としてW#1100のNMP溶液(固形分12%)17.0部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ正極活物質としてNMC−02 68.6部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が73%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極合材スラリーを製造した。
[実施例22]
実施例10で製造した分散体10 12.5部とバインダー(F)としてW#7200のNMP溶液(固形分8%)29.1部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ正極活物質として、表面にカーボンコート層を有する平均粒径1μmのLiFePO4(以下、LFP−01と略記することがある)45部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が50%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極合材スラリーを製造した。
[比較例15、16]
表4に示した材料に変更した以外は、実施例22と同様にして、正極合材スラリーを製造した。
[実施例23]
実施例1で製造した分散体1 12.5部とバインダー(F)としてW#7200のNMP溶液(固形分8%)29.7部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ正極活物質として、表面にカーボンコート層を有する平均粒径3μmのLiFePO4(以下、LFP−02と略記することがある)45部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が50%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極合材スラリーを製造した。
[実施例12]
正極活物質としてLCO−01 68.6部、導電助剤である炭素材料(C)としてHS−100 2.2部、表1記載の誘導体(B)B−01 0.02部、ポリビニルアセタール樹脂(A)としてBL−1 0.09部、バインダー(F)としてW#1100のNMP溶液(固形分12%)17.3部をプラネタリーミキサーで混合した後、合材スラリーの固形分が80%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えて混練した。更に、合材スラリーの固形分が73%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合し、正極合材スラリーを製造した。
[実施例19]
正極活物質としてNMC−01 68.6部、導電助剤である炭素材料(C)として#3400B 2.2部、表2記載の誘導体(B)B−07 0.02部、ポリビニルアセタール樹脂(A)として#3000−1 0.11部、バインダー(F)としてW#1100のNMP溶液(固形分12%)17.2部をプラネタリーミキサーで混合した後、合材スラリーの固形分が80%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えて混練した。更に、合材スラリーの固形分が73%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合し、正極合材スラリーを製造した。
<二次電池電極形成用組成物(負極合材スラリー)の製造>
[実施例24]
実施例1で製造した分散体1 9部とバインダー(F)としてW#7200のNMP溶液(固形分8%)28.9部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ負極活物質として平均粒径15μmの人造黒鉛55.8部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が60%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、二次電池電極形成用組成物の一態様である負極合材スラリーを製造した。
[比較例17、18]
表5に示した材料に変更した以外は実施例24と同様にして、負極合材スラリーを調整した。
[実施例25]
実施例7で製造した分散体7 14.3部とバインダー(F)としてW#7200のNMP溶液(固形分8%)33.5部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ負極活物質として平均粒径5μmのLi4Ti512(以下、LTOと略記することがある)51.3部、を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が57%となるように溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、負極合材スラリーを製造した。
[比較例19、20]
表5に示した材料に変更した以外は実施例25と同様にして、負極合材スラリーを調整した。
活物質(E)の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)から得られた観察画像から算出した。ここで、LCO、LMO、LFP、人造黒鉛、LTOついては、一次粒子100個の長径を測定しその平均値から算出した。また、NMCについては、二次粒子100個の長径を測定しその平均値から算出した。
(合材スラリーの分散性評価)
正極合材スラリーおよび負極合材スラリーの分散性評価については、グラインドゲージによる粒度の評価(JIS K5600−2−5に準ずる)により実施した。数値が小さいものほど分散性に優れ、均一で良好な分散体であることを示す。尚、合材スラリーの粒度測定は、各種スラリーの製造直後および、当該スラリーを50℃で3日間保存した後、それぞれ測定した。測定にあたっては、スラリー製造直後、遊星回転式の脱泡装置で脱泡した後に粒度の測定を実施した。また、50℃で3日保存した合材スラリーについては、ディスパーで再攪拌後、遊星回転式の脱泡装置で脱泡した後に、粒度の測定を実施した。
<二次電池用電極(正極、負極)の製造>
上記の正極合材スラリーを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を製造した。
上記の負極合材スラリーを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが80μmとなるよう調整した。さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが70μmとなる負極を製造した。
<二次電池(コイン型電池)の製造>
上記方法により得られた正極または負極を、直径16mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔を対極とした。作用極、対極、作用極と対極の間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)、および電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるコイン型電池を製造した。コイン型電池は、アルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で作製後、以下に示す電池特性評価を行った。
(サイクル特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。 使用する活物質がLiCoO2の場合は、充電電流1.7 mAにて充電終止電圧4.3Vまで定電流充電を続けた。電池の電圧が4.3Vに達した後、放電電流1.7 mAで放電終止電圧2.8Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして50サイクルの充電・放電を繰り返し、「放電容量維持率=50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量」とし、放電容量維持率によって以下の基準に従って判定した。
◎:「放電容量維持率が95%以上」(極めて良好)
○:「放電容量維持率が90%以上、95%未満」(良好)
△:「放電容量維持率が85%以上、90%未満」(使用可能)
×:「放電容量維持率が85%未満」(不良)
また、使用する活物質が、LiMn24の場合は、充電電流1.0mA、充電終止電圧4.3V、放電電流1.0mA,放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiCoO2の場合と同様にサイクル特性を測定した。
また、使用する活物質が、LiNi1/3Mn1/3Co1/32の場合は、充電電流2.0mA、充電終止電圧4.3V、放電電流2.0mA,放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiCoO2の場合と同様にサイクル特性を測定した。
また、使用する活物質が、LiFePO4の場合は、充電電流1.0mA、充電終止電圧4.2V、放電電流1.0 mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiCoO2の場合と同様にサイクル特性を測定した。
また、使用する活物質が人造黒鉛の場合は、充電電流1.8mA、充電終止電圧0.1V、放電電流1.8mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiCoO2の場合と同様にサイクル特性を測定した。
また、使用する活物質が、Li4Ti512の場合は、充電電流1.0 mA、充電終止電圧1.0V、放電電流1.0mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiCoO2の場合と同様にサイクル特性を測定した。
Figure 2014143000
Figure 2014143000
表4および表5において、「活物質/炭素材料分散体粒径比」とは、活物質(E)の平均粒径/炭素材料(C)の分散粒径(D50)の比を意味する。
Figure 2014143000
Figure 2014143000
表6、表7において、「保存安定性(2)/(1)」とは、「50℃で3日間保存した合材スラリーの粒度/製造直後の合材スラリーの粒度」の比を意味し、1.00からの乖離が小さいほど、保存安定性に優れていることを示す。
表6、表7に示すように、実施例11〜25の本発明による合材スラリーは、導電助剤と活物質の分散性に優れた組成物であることが確認された。とりわけ、本発明の分散体は、比較例に比して50℃で3日保存したときの粒度の変化が小さく、保存安定性に優れることが確認された。
また、本発明の二次電池電極形成用組成物から形成された二次電池用電極を用いた電池では、比較例に対してサイクル特性(放電容量維持率)に優れることが明らかとなった。また、ポリビニルアセタール樹脂(A)、誘導体(B)、導電助剤である炭素材料(C)および溶剤(D)としてN−メチル−2−ピロリドンからなる分散体(H)に、バインダー(F)および活物質(E)とを混合して作製した合材スラリーを用いた電池について、上記(A)〜(F)を一括で混合して調製した合材スラリーを用いた電池よりも、サイクル特性(放電容量維持率)がより優れる傾向が見られた。更に、使用する活物質(E)の平均粒径と、分散体(H)中の炭素材料(C)の分散粒径(D50)との比(活物質平均粒径/炭素材料分散粒径(D50))が2以上ものについて、より好ましくは8以上のものについて、電池のサイクル特性(放電容量維持率)が向上する傾向が見られた。
本発明の二次電池電極形成用組成物および当該組成物から形成された二次電池用電極を用いた電池において、分散安定性およびサイクル特性に優れる理由は定かではないが、以下のように推察している。
ポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性官能基を有する有機色素誘導体および/または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上の誘導体(B)とを分散剤として併用した分散体(H)では、誘導体(B)が炭素材料(たとえばカーボンブラック)表面へ強く作用(たとえば吸着)しつつ、誘導体(B)が持つ塩基性官能基と、ポリビニルアセタール樹脂(A)が持つ極性官能基が作用(たとえば水素結合)することで、樹脂(A)と炭素材料(C)との相互作用(たとえば吸着)がより強固になっていると思われる。そのため、炭素材料の分散安定性(保存安定性)が向上しているものと思われる。
また、ここに活物質(E)が入ってくると、樹脂(A)の作用(たとえば吸着)は、活物質(E)との間でも生じることになるが、この時、誘導体(B)の効果により炭素材料表面から樹脂(A)が脱離することなく活物質(E)表面への樹脂吸着が起こるため、塗膜乾燥過程において、炭素材料(C)の分散が保たれたまま、活物質(E)と炭素材料(C)との均一且つ強固な接触が生じ、電池性能の向上に寄与しているのではないかと思われる。
また、活物質(E)の平均粒径と炭素材料(C)の分散粒径(D50)との乖離が大きい場合に電池性能の向上が見られたことについて考える。合材スラリーが乾燥する場合、溶媒の揮発に伴いスラリー中の粒子間(活物質−活物質間、炭素材料−炭素材料間、活物質−炭素材料間)の距離は次第に短くなり最終的には凝集するが、この凝集は凝集体の界面エネルギーをなるべく小さくする形で進んでいくものと思われる。この時、凝集体の界面エネルギーが小さくなるためには、(1)表面エネルギーの近い粒子同士で凝集する、および/または、(2)凝集体の表面積(界面)がより小さくなるように凝集することが考えられる。特に上述した活物質(E)と炭素材料(C)との均一且つ強固な接触が生じると思われる場合は、活物質や炭素材料(C)がそれぞれで(表面エネルギーが近いもの同士で)凝集するよりも、より大きな活物質のまわりに微細な炭素材料(C)が凝集した方が、凝集体の表面積が小さくなる効果の寄与がより大きくなり、エネルギー的に安定になるのではないかと思われる。結果として、電極膜中により均一で強固な導電パスが形成されるなどして、電池性能が向上するのではないかと思われる。
一方、ポリビニルアセタール樹脂(A)を分散剤として単独使用する場合は、活物質(E)混合時に炭素材料(C)と活物質(E)との間で樹脂(A)の競争吸着が起こり、塗膜乾燥過程で炭素材料(C)の分散が十分に保たれず、活物質(E)および炭素材料(C)がそれぞれで凝集するなどして、活物質(E)と炭素材料(C)の接触が不均一で弱いものになっているのではないかと思われる。また、誘導体(B)を分散剤として単独使用する場合、炭素材料(C)の分散安定性は誘導体(B)の塩基性官能基の分極により生ずる電気的な相互作用(反発作用)によりもたらされていると思われる。ここに活物質(E)を混合すると、活物質に由来する(未反応原料(金属塩)や副生成物の解離等による)分散系のイオン強度の増加が生じ、誘導体(B)の電気的な反発作用が弱まることが考えられる。この影響は、塗膜乾燥時に合材スラリーが濃縮される過程でより顕著となり、結果、炭素材料(C)の分散が十分に保たれず、活物質(E)とカーボンブラックの接触が不均一で弱いものになっているのではないかと思われる。

Claims (7)

  1. ポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性官能基を有する有機色素誘導体および/または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体である誘導体(B)と、導電助剤である炭素材料(C)とを含んでなる二次電池電極形成用組成物。
  2. 更に、溶剤(D)を含んでなる請求項1記載の二次電池電極形成用組成物。
  3. 更に、バインダー(F)を含んでなる請求項1または請求項2記載の二次電池電極形成用組成物。
  4. 更に、活物質(E)を含んでなる請求項1〜3いずれか記載の二次電池電極形成用組成物。
  5. 活物質(E)の平均粒径/炭素材料(C)の分散粒径(D50)の比が、2以上、100以下である請求項4記載の二次電池電極形成用組成物。
  6. 集電体上に合材層を有する電極であって、合材層が請求項4または5記載の二次電池電極形成用組成物によって形成されてなる二次電池用電極。
  7. 集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、電解質とを具備する二次電池であって、前記正極もしくは負極の少なくとも一方が、請求項6記載の二次電池用電極である二次電池。
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