JP2020167097A - 蓄電デバイス電極用バインダー、蓄電デバイス電極用スラリー組成物、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス電極用バインダー、蓄電デバイス電極用スラリー組成物、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス Download PDF

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俊充 田中
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秀治 岩崎
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Abstract

【課題】活物質の集電体への接着性に優れ、かつ、出力特性に優れる蓄電デバイスを形成可能な、蓄電デバイス電極用バインダーを提供する。【解決手段】N−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶性で、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態での粘度が、25℃、せん断速度20s−1で700cP以上であり、62〜90モル%の水酸基量を有するポリビニルアセタール系樹脂を含む、蓄電デバイス電極用バインダー。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリビニルアセタール系樹脂を含有する蓄電デバイス電極用バインダー、該バインダーを含有する蓄電デバイス電極用スラリー組成物、該スラリー組成物の硬化体を含む蓄電デバイス用電極、及び該電極を含む蓄電デバイスに関する。
近年、携帯電話、ノート型パソコン、パッド型情報端末機器などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源に用いられている二次電池には、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスが多用されている。蓄電デバイスの電極は、通常、バインダー、溶媒、活物質及び導電助剤(導電付与剤)等を混合して得られる電極用スラリー組成物を集電体に塗布して、溶媒を乾燥することにより、硬化体として結着させて形成される。該スラリー組成物に含まれるバインダーとして、ポリビニルアセタール系樹脂を含有するバインダーが知られている(例えば特許文献1〜5)。
特許第6126757号公報 特許第5827581号公報 国際公開第2018/079200号 特開2015−115289号公報 特開2015−72901号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、ポリビニルアセタール系樹脂を含有するバインダーを用いる電極を含む蓄電デバイスにおいて、使用中にポリビニルアセタール系樹脂が電解液に溶解することに起因して、活物質の集電体への接着力が低下する場合があることがわかった。さらに、出力特性のさらなる改善が必要であることがわかった。
従って、本発明の目的は、活物質の集電体への接着性に優れ、かつ、出力特性に優れる蓄電デバイスを形成可能な、蓄電デバイス電極用バインダーを提供することである。
本発明者は、鋭意検討した結果、蓄電デバイス電極用バインダーとして、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態で特定の粘度を有し、特定の水酸基量を有するポリビニルアセタール系樹脂を含むバインダーを用いることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕N−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶性で、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態での粘度が、25℃、せん断速度20s−1で700cP以上であり、62〜90モル%の水酸基量を有するポリビニルアセタール系樹脂を含む、蓄電デバイス電極用バインダー。
〔2〕ポリビニルアセタール系樹脂は、架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を有する、前記〔1〕に記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
〔3〕架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤は、多官能性エポキシド及び多官能性イソシアネートからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
〔4〕ポリビニルアセタール系樹脂の重合度は250〜5,000である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
〔5〕ポリビニルアセタール系樹脂のけん化度は90モル%以上である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用バインダーと、活物質とを含有する、蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
〔7〕ポリビニルアセタール系樹脂の含有量は、活物質100質量部に対して0.1〜20質量部である、前記〔6〕に記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
〔8〕前記〔6〕又は〔7〕に記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の硬化体と、集電体とを含む、蓄電デバイス用電極。
〔9〕前記〔8〕に記載の蓄電デバイス用電極を含む、蓄電デバイス。
本発明によれば、活物質の集電体への接着性に優れ、かつ、出力特性に優れる蓄電デバイスを形成可能な、蓄電デバイス電極用バインダーが得られる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
[蓄電デバイス電極用バインダー]
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーは、ポリビニルアセタール系樹脂を含むバインダーであり、該ポリビニルアセタール系樹脂は、N−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶性で、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態での粘度が、25℃、せん断速度20s−1で700cP以上であり、62〜90モル%の水酸基量を有する。なお、本発明の蓄電デバイス電極用バインダーを、単にバインダーとも称する。
(ポリビニルアセタール系樹脂)
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーに含まれるポリビニルアセタール系樹脂は、N−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶性である。ポリビニルアセタール系樹脂がN−メチル−2−ピロリドンに5質量%未満の量しか溶解しない場合、蓄電デバイス電極用スラリー組成物を調製する際に有機溶媒系のスラリーの粘度調整が困難であり、塗工性が悪化する。可溶性であるか否かの判断は、例えばポリビニルアセタール系樹脂から形成した樹脂シートを用い、N−メチル−2−ピロリドンに浸漬させ、適宜加熱及び/又は撹拌等を行い、浸漬前後の重量からN−メチル−2−ピロリドン溶液中への溶出率を算出し、5質量%以上の濃度で溶解したか否かにより判断してよい。また、粒子状のポリビニルアセタール系樹脂を用いて可溶性であるか否かの判断を行う場合には、N−メチル−2−ピロリドンに粒子状のポリビニルアセタール系樹脂を5質量%添加し、適宜加熱及び/又は撹拌等を行った後、例えば動的光散乱法等を用いて溶液中に粒子が残存しているか否かを観察することにより判断してよい。この場合、溶液中に粒子状のポリビニルアセタール系樹脂が残存している場合には、可溶性ではないと判断する。なお、N−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶性であるという特徴は、蓄電デバイス電極用スラリー組成物に含まれる溶媒を何ら限定するものではない。
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーに含まれるポリビニルアセタール系樹脂は、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態での粘度が、25℃、せん断速度20s−1で700cP以上である。ポリビニルアセタール系樹脂の上記の条件での粘度が700cP未満である場合、蓄電デバイス電極用バインダーと活物質とを含有する蓄電デバイス電極用スラリー組成物の硬化体において、該硬化体に含まれる活物質、場合により含まれる導電助剤等と、集電体との接着性が不十分となり、その結果、最終的に得られる蓄電デバイスの放電容量の維持率の低下、内部抵抗の上昇などがもたらされる。また、電極形成時に凝集物が発生しやすくなる。
ポリビニルアセタール系樹脂の、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態での粘度は、活物質、導電助剤等と、集電体との接着性を高めやすく、また活物質・導電助剤の分散性を向上させることで、蓄電デバイスの放電容量の維持率を高めやすい観点、内部抵抗を低下させやすい観点からは、25℃、せん断速度20s−1で測定して、好ましくは800cP以上、より好ましくは900cP以上、さらに好ましくは1,000cP以上、さらにより好ましくは1,100cP以上、特に好ましくは1,200cP以上、極めて好ましくは1,600cP以上、最も好ましくは1,700cP以上である。また、上記の粘度の上限は特に限定されないが、塗工性を向上し、電極の生産性を向上させやすい観点からは、好ましくは4,000cP以下、より好ましくは3,000cP以下、さらに好ましくは2,000cP以下である。
上記粘度は、ポリビニルアセタール系樹脂を5質量%の固形分濃度でN−メチルピロリドンに溶解させた溶液を測定試料とし、25℃、せん断速度20s−1の測定条件で、例えばブルックフィールド粘度計を用いて測定される。
ポリビニルアセタール系樹脂の上記溶液の状態での粘度は、例えばポリビニルアセタール系樹脂の重合度が大きくなる、架橋剤による架橋の程度が大きくなる等によって、上昇する傾向がある。ポリビニルアセタール系樹脂の重合度及び/又は架橋剤による架橋の有無、架橋の程度等を調整することにより、上記の粘度を所望の範囲に調整することができる。
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーに含まれるポリビニルアセタール系樹脂は、62〜90モル%の水酸基量を有する。水酸基量が62モル%未満であると、電解液に対するポリビニルアセタール系樹脂の溶解度が高くなり、ポリビニルアセタール系樹脂が電解液中へ溶解しやすくなる。その結果、活物質が凝集しやすく、活物質の集電体への接着性が低下する。さらに、ポリビニルアセタール系樹脂が架橋構造を有する場合には、水酸基量が62モル%未満であると、ポリビニルアセタール系樹脂と架橋剤との架橋密度が低下することによっても、活物質の集電体への十分な接着性が得られない。また、ポリビニルアセタール系樹脂が電解液により過度に膨潤しやすくなり、その結果、導電助剤と活物質との間の距離が長くなり、電極特性が著しく低下し、得られる蓄電デバイスが高放電容量を発現できない、或いは、放電容量を維持できなくなる。一方、水酸基量が90モル%を超えると、工業的に合成が困難となることに加えて、ポリビニルアセタール系樹脂の有機系溶媒への溶解性が低下し、使用可能な活物質量が制限されると共に、スラリー組成物の塗工性が低下し、電極の製造工程が非常に煩雑になる。
ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量は、62〜90モル%であり、好ましくは65〜90モル%、より好ましくは66〜90モル%、さらに好ましくは68〜89モル%、特に好ましくは70〜88モル%である。ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量が上記の下限値以上であると、活物質の分散性及び接着性を向上させやすく、得られる電池の耐久性を向上させやすい。また、ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量が上記の上限値以下であると、塗工性を向上させやすく、電極における活物質量を高めやすいため、蓄電デバイスの放電容量を向上させやすい。なお、ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量は実施例に記載の方法により算出できる。
ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量は、ポリビニルアセタール系樹脂を合成する際の原料ポリビニルアルコール樹脂のアルデヒドに対する量を調整する方法、原料ポリビニルアルコールのけん化度を調整する方法等により、上記所望の範囲に調整することができる。
ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール化度は、単独アルデヒド、混合アルデヒドのいずれのアセタール化を用いる場合でも、全アセタール化度で、好ましくは10〜38モル%、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは10〜34モル%、特に好ましくは11〜32モル%、最も好ましくは12〜30モル%である。アセタール化度が上記の下限値以上であると、活物質の集電体への接着性を向上させやすい。アセタール化度が上記の上限値以下であると、ポリビニルアセタール系樹脂の電解液の保液率を適当な範囲に調整しやすく、電池の出力特性を向上しやすい。なお、アセタール化度は、例えば実施例に記載の方法により算出できる。ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール化度は、ポリビニルアセタール系樹脂を合成する際の原料ポリビニルアルコール樹脂に対するアルデヒドの量を調整する方法、原料ポリビニルアルコールのけん化度を調整する方法等により上記所望の範囲に調整することができる。
ポリビニルアセタール系樹脂のアセチル基量は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。また、該アセチル基量は、好ましくは0.1モル%以上である。アセチル基量が上記の上限値以下であると、ポリビニルアセタール系樹脂の電解液への溶解を防止しやすく、電池使用時における活物質の集電体への接着性を向上しやすい。また、上記の下限値以上であれば、残留エステル基による有機溶媒への親和性を低下させやすく、有機溶媒への溶解度及び膨潤度を低下させやすいため、スラリーを安定化させやすい。なお、アセチル基量は、例えば実施例に記載の方法により算出できる。ポリビニルアセタール系樹脂のアセチル基量は、原料ポリビニルアルコールのけん化度を調整する方法により上記所望の範囲に調整することができる。
ポリビニルアセタール系樹脂の重合度は、好ましくは250〜5,000、より好ましくは300〜4,000、さらに好ましくは1,000〜3,000、特に好ましくは1,500〜2,000である。重合度が上記の範囲であると、得られる電池の柔軟性が向上しやすく、電池使用時における集電体への活物質の接着性も向上しやすい。なお、重合度は、JIS−K6726に従って測定することができる。ポリビニルアセタール系樹脂の重合度は、原料ポリビニルアルコール樹脂(あるいはその原料のポリ酢酸ビニル樹脂)の重合度を調整する方法により上記所望の範囲に調整することができる。
ポリビニルアセタール系樹脂の電解液への膨潤度は、好ましくは5〜15%、より好ましくは7〜12%である。電解液への膨潤度が上記の上限値以下であると、導電助剤と活物質間の距離が最適となり、得られる電池の放電容量、高速充填時の放電容量維持率、及び耐久性を向上しやすい。また、電解液への膨潤度が上記の下限値以上であると、Liイオン伝導性が向上し、電池の出力特性を向上しやすい。なお、電解液への膨潤度は実施例に記載の方法により測定できる。
ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化した樹脂が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、主にビニルアルコール由来の構成単位とビニルエステル由来の構成単位を有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、これらの構成単位以外の他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和酸類及びその塩又はその炭素数1〜18のアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその酸塩又はその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその酸塩又はその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類;ポリオキシアルキレンアリルエーテルなどのオキシアルキレン基を有する化合物;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸などに由来するカルボキシル基を有する化合物;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロリド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどに由来するカチオン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさや共重合性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;ポリオキシアルキレンアリルエーテルなどのオキシアルキレン基を有する単量体;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有のα−オレフィン類などが好ましい。これらの単量体は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
ビニルアルコール由来の構成単位及びビニルエステル由来の構成単位以外の、他の単量体に由来する構成単位の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂を構成する構成単位の総モル数に対して、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコールと必要に応じて前記単量体とを重合した樹脂を、公知の方法、例えばアルコール等の溶媒に溶解した状態でけん化する方法により製造できる。この方法で使用される溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられ、メタノールを好適に使用できる。けん化反応に使用されるアルコールは、その量が例えば40質量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの溶媒を含有していてもよい。けん化反応に用いられる触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ触媒、又は鉱酸などの酸触媒が使用される。けん化反応の温度について特に制限はないが、20〜60℃の範囲が好ましい。けん化反応によって得られるビニルアルコール系樹脂は、洗浄後、乾燥に付される。
ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。けん化度が上記の下限値以上であると、残留エステル基による有機溶媒への親和性を低下させやすく、有機溶媒への溶解度及び膨潤度を低下させやすく、スラリーを安定化させやすい。けん化度の上限値は好ましくは99.9モル%以下である。なお、本明細書において、ポリビニルアセタール系樹脂のけん化度は、アセタール化する前のポリビニルアルコール系樹脂のけん化度を意味する。また、けん化度は、JIS−K6726に従って測定することができる。
ポリビニルアセタール系樹脂は、例えば、前記ポリビニルアルコール系樹脂をアルデヒドにより、アセタール化することにより製造でき、アセタール化の方法としては、特に限定されず、例えば沈殿法や固液反応法等が挙げられる。沈殿法は、溶媒として例えば水やアセトンを用い、原料であるポリビニルアルコール系樹脂を水やアセトンに溶解しておいて、酸などの触媒を加えてアセタール化反応を行い、生成したポリビニルアセタール樹脂を沈澱させ、触媒として用いた酸を中和し、固体粉末として得る方法である。固液反応法は、原料であるポリビニルアルコール系樹脂が溶解しない溶媒を使用する点が異なるだけで、その他は、沈澱法と同様に反応を行い得る方法である。いずれの方法による場合でも、得られるポリビニルアセタール系樹脂の粉末の中には、未反応のアルデヒド及び中和によって生じた塩等の不純物が含まれるため、この不純物を除くために、不純物が可溶な溶媒を用いて抽出又は蒸発除去することで純度の高いポリビニルアセタール系樹脂を得ることができる。
アセタール化に使用するアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド(1−ブタノール)、sec−ブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ドデシルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;シクロヘキサンカルボアルデヒド、シクロオクタンカルボアルデヒド、トリメチルシクロヘキサンカルボアルデヒド、シクロペンチルアルデヒド、ジメチルシクロヘキサンカルボアルデヒド、メチルシクロヘキサンカルボアルデヒド、メチルシクロペンチルアルデヒドなどの脂肪脂環式アルデヒド;α−カンフォレンアルデヒド、フェランドラール、シクロシトラール、トリメチルテトラハイドロベンズアルデヒド、α−ピロネンアルデヒド、ミルテナール、ジヒドロミルテナール、カンフェニランアルデヒドなどのテルペン系アルデヒド;ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、トルアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;シクロヘキセンアルデヒド、ジメチルシクロヘキセンアルデヒド、アクロレインなどの不飽和アルデヒド;フルフラール、5−メチルフルフラールなどの複素環を有するアルデヒド;グルコース、グルコサミンなどのヘミアセタール;4−アミノブチルアルデヒドなどのアミノ基を有するアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、アルデヒドの代わり又はアルデヒドと併用して、2−プロパノン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、2−ヘキサノンなどの脂肪族ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの脂肪脂環式ケトン;及び、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどの芳香族ケトンなどを用いることもできる。
酸触媒は、公知の酸を用いることができ、その例としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、及びパラトルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。酸触媒は、アセタール化反応の最終系における酸濃度が0.5〜5.0質量%となる量で通常用いられるが、この濃度に限定されるものではない。これらの酸触媒は、所定量を1度に添加してもよいが、沈澱法の場合、比較的細かい粒子のポリビニルアセタール系樹脂を析出沈澱させるために、適当な回数に分割して添加するのが好ましい。一方、固液反応法の場合は、所定量を反応のはじめに一括して添加するのが反応効率の点から好ましい。
本発明の好ましい一態様において、本発明の蓄電デバイス電極用バインダーに含まれるポリビニルアセタール系樹脂は、架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を有する。水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を含有することにより、水酸基反応性架橋剤と特定量の水酸基を有するポリビニルアセタール系樹脂とが分子間で架橋構造を形成し、バインダーから形成される蓄電デバイスにおいて、活物質の集電体への接着性を高めやすい。また、架橋構造を有することによりポリビニルアセタール系樹脂が電解液を適度に補液しやすく、その結果、電池の内部抵抗が低下しやすく、出力特性を向上させやすい。さらに、反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤は、ポリビニルアセタールとの反応時に脱離生成物を生成しないため、得られるバインダー中に不純物が含有されない。不純物が含有される場合には、該不純物が電池活物質等と反応し電池に影響を及ぼす場合があるが、反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤を用いる場合には、このような影響が低減される。すなわち、本発明のバインダーに含まれるポリビニルアセタール系樹脂は、架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を有することが好ましい。
反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤としては、分子内に複数の架橋性反応基を有する多官能性エポキシド、多官能性イソシアネートが挙げられる。多官能性エポキシドとしては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。多官能イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トルエン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、イソフォルニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられる。これらの水酸基反応性架橋剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアセタール系樹脂と最適な架橋構造を形成しやすく、得られる電池において、活物質の集電体への接着性を向上しやすく、出力特性を向上しやすい観点から、多官能性エポキシド及び多官能性イソシアネートからなる群から選択される架橋剤に由来する成分による架橋構造を有することが好ましく、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選択される架橋剤に由来する成分による架橋構造を有することがより好ましい。なお、ポリビニルアセタール系樹脂が、架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を有することは、例えばフーリエ変換赤外分光光度計等を用いて、架橋に関与する官能基(例えばイソシアネート基又はエポキシ基等)に由来するピークの消失と、架橋後に形成される基(例えばアミド基又はエーテル基)に由来するピークの出現により確認することができる。
本発明のバインダーは、1又は2種以上のポリビニルアセタール系樹脂を含むことができる。本発明のバインダーが2種以上のポリビニルアセタール系樹脂を含む場合、これらポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール化度、アセチル基量、水酸基量、重合度、及び/又は単量体成分等が互いに異なるポリビニルアセタール系樹脂であってよい。
本発明のバインダーにおけるポリビニルアセタール系樹脂の含有量は、蓄電デバイス電極用バインダーの総量に対して、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
本発明のバインダーは、ポリビニルアセタール系樹脂ならびに必要に応じてポリビニルアセタール系樹脂以外の成分を、溶媒に溶解させて溶液とし、溶媒を除去することにより得てよい。また、前記溶液をそのままバインダー溶液として続くスラリー組成物の調製に用いてもよい。その場合、バインダー溶液中の溶媒以外の成分の組成物が本発明のバインダーである。本発明のバインダーは、本発明のスラリー組成物の硬化体中においては、活物質等の成分と混合された状態で含まれている。ポリビニルアセタール系樹脂が架橋構造を有する場合、架橋前のポリビニルアセタール系樹脂、架橋剤、ならびに必要に応じてポリビニルアセタール系樹脂以外の成分を溶媒に溶解させて溶液とし、溶媒を除去することにより、本発明のバインダーを得てよい。また、前記溶液をそのままバインダー溶液として続くスラリー組成物の調製に用いてもよい。前記溶液をそのままバインダー溶液として続くスラリー組成物の調製に用いる場合、バインダー溶液中には未架橋のポリビニルアセタール系樹脂と架橋剤が含まれると考えられるが、最終的に溶媒を除去した段階ではポリビニルアセタール系樹脂が架橋剤に由来する成分により架橋された構造を有することとなり、当該架橋されたポリビニルアセタール系樹脂を含むバインダーが本発明のバインダーである。
[蓄電デバイス電極用バインダー溶液]
バインダー溶液は、本発明の蓄電デバイス電極用バインダーと、少なくとも1種の溶媒とを含む。溶媒は、前記ポリビニルアセタール系樹脂を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。溶媒の例としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチル−α−メチルピロリドン、N−エチル−α−メチルピロリドン等のN−アルキルピロリドンなどの環状アミド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、モルホリン、N−メチルモルホリン等の環状エーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;スルホラン等のスルホン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は二種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、環状アミド系溶媒が好ましい。環状アミド系溶媒を使用すると、本発明のバインダーが活物質を十分に被覆可能なため、活物質の凝集をより有効に抑制し、活物質の接着性を向上しやすい。なお、ポリビニルアセタール系樹脂が架橋構造を有する場合、蓄電デバイス電極用バインダー溶液は、本発明の蓄電デバイス電極用バインダーに含まれる架橋構造を有するポリビニルアセタール系樹脂を含有していてもよいし、架橋前のポリビニルアセタール系樹脂と、架橋剤とを別々に含有していてもよい。
バインダー溶液は、上記の本発明のバインダーの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、溶媒に溶解することが可能な添加剤(添加剤Aとする)を含有することができる。添加剤Aとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。添加剤Aの含有量は、バインダー溶液の総量に基づいて、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、特に添加剤Aを含まないことが好ましい。
バインダー溶液は、前記ポリビニルアセタール系樹脂、前記溶媒、必要に応じて前記添加剤Aを、公知の方法、例えば撹拌等の方法で混合して得られる。混合温度や混合時間は、溶媒の種類に応じて適宜調整し得る。なお、バインダー溶液は、ポリビニルアセタール系樹脂が溶媒に溶解された状態の溶液を示す。溶解された状態とは、溶媒に完全に溶解したポリビニルアセタール系樹脂の質量が、バインダー溶液を作製する際に使用されたポリビニルアセタール系樹脂の総質量(100質量%)に対して、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに99質量%以上、特に好ましくは100質量%以上である状態を意味する。
バインダー溶液の濁度は、好ましくは100NTU(242度)以下、より好ましくは50NTU(121度)以下、さらに好ましくは30NTU(73度)以下、特に好ましくは8NTU(19度)以下、最も好ましくは5NTU(12度)以下である。バインダー溶液の濁度が上記の上限値以下であると、蓄電デバイス用電極の形成に、ポリビニルアセタール系樹脂が活物質の表面を均一に被覆しやすいため、活物質の集電体への接着性を向上しやすく、かつ電池使用時であっても活物質の接着性を保持しやすい。また、バインダー溶液の濁度の下限は通常0.1NTU(0.3度)以上である。なお、バインダー溶液の濁度はJIS K0101やJIS K0801に準じた方法、好ましくはJIS K0101に準じた方法により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。また、バインダー溶液の濁度は、本発明のバインダーの5質量%のNMP溶液における濁度であることが好ましい。
バインダー溶液の25℃における粘度は、好ましくは700cP以上、より好ましくは800cP以上、さらに好ましくは900cP以上であり、好ましくは4,000cP以下、より好ましくは3,000cP以下、さらに好ましくは2,000cP以下である。バインダー溶液の25℃における粘度が、上記の下限値以上であると、塗工性が向上され、電極形成時に凝集物の発生を抑制しやすい。また、該粘度が上記の上限値以下であると、スラリーの粘度が過度に上がることなく電極の生産性を向上させやすい。なお、バインダー溶液の25℃における粘度は、粘度計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。また、バインダー溶液の25℃における粘度は、本発明のバインダーの5質量%のNMP溶液における粘度であることが好ましい。
バインダー溶液におけるポリビニルアセタール系樹脂の含有量は、バインダー溶液の総量に基づいて、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が上記の下限値以上であると、集電体への活物質の接着性を向上しやすい。また、上記の上限値以下であると、活物質の急激な凝集を抑制しやすい。
[蓄電デバイス電極用スラリー組成物]
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物(単にスラリー組成物という場合がある)は、前記蓄電デバイス電極用バインダーと、活物質とを少なくとも含有する。
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、正極、負極のいずれの電極に使用してもよく、また、正極及び負極の両方に使用してもよい。そのため、活物質は、正極活物質又は負極活物質であってもよい。
負極活物質は、従来から蓄電デバイスの負極活物質として用いられている材料を使用することができ、その例としては、アモルファスカーボン、人工グラファイト、天然グラファイト(黒鉛)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、ポリアセン等の導電性高分子などの炭素質材料、SiO、SnO、LiTiOで表される複合金属酸化物やその他の金属酸化物やリチウム金属、リチウム合金などのリチウム系金属、TiS、LiTiSなどの金属化合物、及び、金属酸化物と炭素質材料との複合材料などが挙げられる。これらの中でも、経済性と電池容量の観点から、黒鉛が好ましく、特に球状天然黒鉛が好ましい。これらの負極活物質は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
正極活物質としては、例えば、従来から蓄電デバイスの正極活物質として用いられている材料を使用することができ、その例としては、TiS、TiS、非晶質MoS、Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物やLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnなどのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。これらの正極活物質は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明のスラリー組成物において、ポリビニルアセタール系樹脂の含有量は、活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.2〜15質量部であり、さらに好ましくは0.2〜12質量部である。ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が上記の下限値以上であると、活物質の接着性をより向上しやすく、電池の耐久性を維持しやすい。また、ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が上記の上限値以下であると、放電容量をより向上しやすい。
本発明のスラリー組成物は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤は、蓄電デバイスを高出力化するために用いられるものであり、正極又は負極に使用する場合に応じて適宜選択でき、その例としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が挙げられる。得られる蓄電デバイスが高出力化しやすい観点から、これらの中でも、アセチレンブラックが好ましい。
本発明のスラリー組成物が導電助剤を含有する場合、導電助剤の含有量は、活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。導電助剤の含有量が上記範囲であると、電池容量を低下させることなく十分な導電補助効果がある。
本発明のスラリー組成物は溶媒を含んでいてもよい。特にバインダーを溶解可能な溶媒であることが好ましく、このような溶媒を含むことで、活物質表面をバインダーが均一に被覆でき、活物質の凝集を有効に抑制することができる。従って、溶媒を含むことにより、活物質の接着性及び得られる電池の柔軟性を向上しやすい。
溶媒は、前記バインダーを溶解可能な溶媒であれば、特に限定されず、その例としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチル−α−メチルピロリドン、N−エチル−α−メチルピロリドン等のN−アルキルピロリドンなどの環状アミド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、モルホリン、N−メチルモルホリン等の環状エーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;スルホラン等のスルホン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、環状アミド系溶媒を好適に使用できる。環状アミド系溶媒を使用すると、ポリビニルアセタール系樹脂が活物質を十分に被覆可能なため、活物質の凝集をより有効に抑制し、活物質の接着性及び得られる電池の柔軟性が向上されやすい。
本発明のスラリー組成物が溶媒を含む場合、ポリビニルアセタール系樹脂の含有量は、バインダーと溶媒の総質量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%である。ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が上記の下限値以上であると、活物質の集電体への接着性をより向上しやすく、得られる電池の柔軟性を高めやすい。また、ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が上記の上限値以下であると、電極あたりの電池容量を高めやすい。
本発明のスラリー組成物は、前記バインダー、前記活物質、前記導電助剤及び前記溶媒以外にも、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の添加剤を含むことができる。これらの添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、スラリー組成物の総量に対して、好ましくは0.1〜10質量%程度である。
本発明のスラリー組成物は、前記バインダー、前記活物質、及び必要に応じて、導電助剤、溶媒並びに添加剤を、慣用の方法により、例えばボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の混合機を用いて混合することにより得ることができる。
[蓄電デバイス用電極]
本発明の蓄電デバイス用電極(単に電極という場合がある)は、前記蓄電デバイス電極用スラリー組成物の硬化体と、集電体とを含む。
本発明の電極は、活物質の集電体への接着性に優れている。そのため、本発明の電極の剥離強度は、電解液浸漬前において、好ましくは300N/m以上、より好ましくは500N/m以上、さらに好ましくは600N/m以上、よりさらに好ましくは700N/m以上、特に好ましくは800N/m以上、最も好ましくは900N/m以上である。また、本発明の電極は、電解液に浸漬しても十分な接着強度を維持することができる。そのため、本発明の電極の剥離強度は、電解液浸漬後において、好ましくは300N/m以上、より好ましくは500N/m以上、さらに好ましくは600N/m以上、よりさらに好ましくは700N/m以上、特に好ましくは800N/m以上、最も好ましくは900N/m以上である。なお、電極の剥離強度の上限値は特に限定されないが、浸漬前又は浸漬後において例えば1,500N/mである。
本発明の電極は、前記スラリー組成物を集電体に塗布し、溶媒を乾燥等により除去して得ることができる。また、乾燥後に電極を圧延処理してもよい。
集電体としては、導電性材料からなるものであれば、特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料などが挙げられる。これらの集電体は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。集電体の中でも、活物質の接着性及び放電容量の観点から、正極集電体としては銅が好ましく、負極集電体としてはアルミニウムが好ましい。
スラリー組成物を集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、押出しコーター、リバースローラー、ドクターブレード、アプリケーター等が挙げられる。スラリー組成物の塗布量は、スラリー組成物由来の硬化体の所望とする厚みに応じて、適宜選択される。
電極の圧延方法としては、金型プレスやロールプレスなどの方法が挙げられ、プレス圧としては、電池容量を高めやすい観点から、1〜40MPaが好ましい。
本発明の蓄電デバイス用電極において、集電体の厚みは好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜15μmである。また、硬化体の厚みは好ましくは10〜400μm、より好ましくは20〜300μmである。電極の厚みは好ましくは20〜200μmである。
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイス(単に電池という場合がある)は、前記蓄電デバイス用電極を負極及び/又は正極として含む。さらに蓄電デバイスは電解液を含む。
本発明の蓄電デバイスは、高い出力性を有し、高速充放電を行ってもその放電容量を維持することができる。低電流で充放電を行った場合の放電容量と、高電流で充放電を行った場合の放電容量から算出される、本発明の蓄電デバイスの容量維持率(放電容量維持率)は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは78%以上である。なお、電池の上記容量維持率は、例えば、以下に示す方法で算出できる。該方法は、例えば充放電試験機を用いて充放電試験を実施する方法であり、具体的には蓄電デバイスを25℃の恒温槽に置き、充電はリチウム電位に対して0Vになるまで、活物質量に対して0.2C(約1mA/cm)の定電流充電を行い、更にリチウム電位に対して0.02mAの電流まで0Vの定電圧充電を実施する。このときの容量を充電容量(mAh/g)とする。次いで、リチウム電位に対して0.2C(約1mA/cm)の定電流放電を1.5Vまで行い、このときの容量を0.2C放電容量(mAh/g)とする。次に、前述と同様の充放電を、活物質量に対して2C(約10mA/cm)で実施する。このときの容量を2C放電容量(mAh/g)とする。この2C放電容量を、0.2C放電容量で割った値を放電容量維持率(%)とする。前記放電容量維持率は例えば実施例に記載の方法により算出できる。
本発明の蓄電デバイスに含まれる電解液は、電解質を溶媒に溶解させた溶液である。該電解質は、通常の蓄電デバイスに用いられるものであれば、液状でもゲル状でもよく、負極活物質、正極活物質の種類に応じて電池としての機能を発揮するものを適宜選択すればよい。具体的な電解質としては、例えば、従来より公知のリチウム塩を好適に使用でき、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪族カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
電解液に含まれる溶媒は、特に限定されず、その具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチルラクトンなどのラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4―メチル−1,3―ジオキソランなどのオキソラン類;アセトニトリルやニトロメタンなどの含窒素化合物類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル類;リン酸トリエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどの無機酸エステル類;ジグライム類;トリグライム類;スルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン類などが挙げられ、これらは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。ゲル状の電解液を用いるときは、ゲル化剤としてニトリル系重合体、アクリル系重合体、フッ素系重合体、アルキレンオキサイド系重合体などを加えることができる。
本発明の蓄電デバイス用電極を正極又は負極のいずれかに使用する場合、蓄電デバイス用電極を使用しない方の電極には、慣用の電極を用いることができる。
本発明の好ましい実施態様において、蓄電デバイスは、本発明の蓄電デバイス用電極を正極として使用し、慣用の電極を負極として使用する。負極は、蓄電デバイスに通常使用される負極が特に制限なく使用される。例えば、上記負極活物質と、上記導電助剤とSBR、NBR、アクリルゴム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデンなどのバインダーとを含む負極スラリーを、例えば、リチウム、アルミニウム等の負極集電体に塗布して溶媒を乾燥させて負極とすることができる。
蓄電デバイスを製造する方法としては、特に限定はないが、例えば、次の製造方法が例示される。すなわち、負極と正極とを、ポリプロピレン多孔膜などのセパレーターを介して重ね合わせ、電池形状に応じて巻く、折るなどして、電池容器に入れ、電解液を注入して封口する。電池の形状は、公知のコイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型などいずれであってもよい。
本発明の蓄電デバイスは、様々な用途に有用である。例えば、小型化、薄型化、軽量化、高性能化の要求される携帯端末に使用される電池としても非常に有用である。また、柔軟性が求められる機器の電池、例えば巻回型乾電池、ラミネート型電池にも好適に用いることができる。
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%は特に断らない限り質量に関するものである。まず、測定方法及び評価方法を以下に示す。
<ポリビニルアセタール系樹脂の分析>
実施例及び比較例で使用したポリビニルアセタール系樹脂の重合度、けん化度、アセタール化度、アセチル基量、水酸基量及び粘度を以下に示す方法に従って測定した。
(a)重合度及びけん化度
JIS−K6726に従って、ポリビニルアルコール(ポリビニルアセタール系樹脂をアセタール化する前の樹脂)の重合度及びけん化度を測定し、ポリビニルアセタール系樹脂の重合度及びけん化度とした。
(b)アセタール化度
ポリビニルアセタール系樹脂を、標準試料であるテトラメチルシランを0.03体積%含有したジメチルスルホキシド−d6(DMSO−d6)に溶解し、測定機器として、核磁気共鳴分光装置(「AVance 600」、Bruker製)を用いて、共鳴周波数1H 600MHz及び温度25℃の条件下で測定した。ビニルアセタール単位のメチル基(0.87ppm)に由来するピーク強度と、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位、及びビニルアセタール単位の主鎖中のメチレン基(1.14〜1.94ppm)に由来するピーク強度からアセタール化度を求めた。
(c)アセチル基量
ポリビニルアセタール系樹脂を、標準試料であるテトラメチルシランを0.03体積%含有したジメチルスルホキシド−d6(DMSO−d6)に溶解し、測定機器として、核磁気共鳴分光装置(「AVance 600」、Bruker製)を用いて、共鳴周波数1H 600MHz及び温度25℃の条件下で測定した。ビニルエステル単位のメチル基(1.94ppm)に由来するピーク強度と、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位、及びビニルアセタール単位の主鎖中のメチレン基(0.87〜1.70ppm)に由来するピーク強度からアセタール化度を求めた。
(d)水酸基量
上記で算出したアセタール化度とアセチル基量から水酸基量を算出した。
(e)粘度
離形処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に実施例及び比較例で調製したポリビニルアセタール系樹脂溶液(バインダー溶液)を塗工、乾燥することで、ポリビニルアセタール系樹脂のシートを作製した。この樹脂シートを、固形分が5質量%になるようNMP溶液に添加し、80℃で2時間加熱攪拌することで測定試料を得た。この測定試料を用いブルックフィールドデジタル粘度計(HADV−1:ブルックフィールド社製)を用いて粘度を測定した。スピンドルにはコーンプレートを用い、25℃、せん断速度20s−1における粘度を測定した。
(f)膨潤度
離形処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に実施例及び比較例で調製したポリビニルアセタール系樹脂溶液(バインダー溶液)を塗工、乾燥することで、ポリビニルアセタール系樹脂のシートを作製した。このシートを2cm角に切り出し、10gのNMPに室温で1週間浸漬後、シートを取り出し、浸漬後のシートの重量を測定し、浸漬後の重量変化率を次の式により算出し、膨潤度(%)とした。
膨潤度(%)={(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/(浸漬前の重量)}×100
(g)NMPへの溶解性の評価
離形処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に実施例及び比較例で調製したポリビニルアセタール樹脂溶液を塗工、乾燥することで樹脂シートを作製した。この樹脂シートを1g分切り出し、10gのNMPに室温で1週間浸漬後、シートを150℃にて8時間真空乾燥した。この乾燥後のシートと浸漬前のシートとの重量変化率を用いて、次の式により、溶出率を算出した。溶出率が5質量%以上である場合に「〇:可溶性である」と判断し、溶出率が5質量%未満である場合に「×:可溶性でない」と判断した。
溶出率(%)={(浸漬及び乾燥後の重量−浸漬前の重量)/(浸漬及び乾燥後の重量−浸漬前の重量+NMPの重量)}×100
(h)離形処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に実施例及び比較例で調製したバインダー溶液(ポリビニルアセタール系樹脂溶液)を塗工、乾燥することで樹脂シートを作製した。作成した樹脂シートを測定試料とし、フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR6600、日本分光社製)を用い、ATR法にて測定した。多官能性イソシアネートの場合、架橋剤のイソシアネート基に由来する2300cm−1付近のピークの消失及び架橋後に生成されるアミド基に由来する1650〜1700cm−1付近のピークにより、また多官能性エポキシドの場合、架橋剤のエポキシ基に由来する900〜930cm−1付近のピークの消失と架橋後に生成されるエーテル基に由来する1070〜1150cm−1付近のピークにより架橋の有無について判定した。
<バインダー溶液の分析>
(i)濁度
実施例及び比較例で得られた各バインダー溶液について、NMPを用いてバインダー溶液を希釈して、固形分を5質量%になるように調整したうえで、JIS K101に準じて透過散乱光測定法を用いた濁度計(笠原理化工業 TR−55)により濁度を測定した。標準液には、5種混合ポリスチレン濁度標準液を用いた。測定により得られる濁度(度)に0.52/1.26を乗じて、濁度(NTU)に換算した。
<電極及び電池の分析>
(j)剥離強度の測定
実施例及び比較例のリチウム二次電池用電極について、集電体であるアルミニウム箔から硬化体(スラリー組成物に由来する部分を示す)を剥離したときの強度を測定した。具体的には、実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池用電極のスラリー塗布面とステンレス板とを両面テープ(ニチバン製両面テープ)を用いて貼り合わせ、50Nのロードセル(株式会社イマダ製)を用いて、180°剥離強度(剥離幅10mm、剥離速度100mm/分)を測定した。なお、該測定は、電極を電解液に浸漬させる前と、電解液に60分間の浸漬後とにおいて実施した。電解液には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)のエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)にビニレンカーボネート(VC)を添加した混合溶媒系(1M−LiPF、EC/EMC=3/7体積%、VC2質量%)を用いた。
(k)充放電特性試験(高速充放電時の放電容量維持率)
実施例及び比較例のコイン型のリチウム二次電池(コイン電池)について、市販の充放電試験機(TOSCAT3100、東洋システム製)を用いて充放電試験を実施した。具体的にはコインセルを25℃の恒温槽に置き、充電はリチウム電位に対して0Vになるまで、活物質量に対して0.2C(約1mA/cm)の定電流充電を行い、更にリチウム電位に対して0.02mAの電流まで0Vの定電圧充電を実施する。このときの容量を充電容量(mAh/g)とする。次いで、リチウム電位に対して0.2C(約1mA/cm)の定電流放電を1.5Vまで行い、このときの容量を0.2C放電容量(mAh/g)とする。次に、前述と同様の充放電を、活物質量に対して2C(約10mA/cm)で実施する。このときの容量を2C放電容量(mAh/g)とする。この2C放電容量を、0.2C放電容量で割った値を高速充放電時の放電容量維持率(%)とした。
<実施例1>
(バインダー)
還流冷却管、温度計を備え付けた三つ口フラスコに、アセトン150g、水100g、1−ブタナール10gを加え、マグネティックスターラーで撹拌しながらポリビニルアルコール(けん化度99モル%、平均重合度1700)50gを1分間かけて添加した。水50gと47質量%硫酸21.2gの混合溶液を滴下漏斗から5分間かけて滴下し、30℃に昇温して5時間反応を行った。1モル/L水酸化ナトリウム水溶液をpHが8になるまで加えた後、ろ過により固形物を取り出した。アセトンと水の質量比1:1の混合溶媒で前記固形物の洗浄を5回行った後、120℃、圧力0.005MPaで6時間乾燥させることで、ポリビニルアセタール系樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール系樹脂999質量部に、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)1質量部及びNMPを加えて混合し、80℃で2時間加熱攪拌することでポリビニルアセタール系樹脂とHDIとを含有するリチウム二次電池電極用バインダー溶液(固形分:約5質量%)を得た(この溶液を乾燥させて得られる固形分、すなわち溶媒以外の成分から得られる組成物をリチウム二次電池電極用バインダーとして用いた)。
(スラリー組成物)
上記のようにして得たバインダー溶液100質量部に対して、正極活物質としてNCM(日本化学工業社製、「セルシードC−5H」)50質量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、「デンカブラック」)4質量部を加えて混合し、スラリー組成物を得た。
(電極)
上記のようにして得たスラリー組成物を、バーコーター(「T101」、松尾産業製)を用いて集電体のアルミニウム箔(「1N30−H」、富士加工紙製)上に塗工し、80℃で30分間熱風乾燥機(ヤマト科学製)にて一次乾燥後、ロールプレス(宝泉製)を用いて圧延処理した。その後、リチウム二次電池用電極(φ14mm)として打ち抜き後、120℃で3時間減圧条件の二次乾燥によって、リチウム二次電池用電極を作製した。
(リチウム二次電池の作製)
上記リチウム二次電池用電極をアルゴンガス雰囲気下のグローブボックス(美和製作
所製)に移送した。該リチウム二次電池用電極は正極として用いた。負極には金属リチウム箔(厚さ0.2mm、φ16mm)を用いた。また、セパレーターとしてポリプロフィレン系(セルガード#2400、ポリポア製)を使用して、電解液は六フッ化リン酸リチウム(LiPF)のエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)にビニレンカーボネート(VC)を添加した混合溶媒系(1M−LiPF、EC/EMC=3/7体積%、VC2質量%)を用いて注入し、コイン型のリチウム二次電池(2032タイプ)を作製した。
<実施例2>
バインダー溶液調製時の架橋剤の添加量を3質量部にした以外は、実施例1と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<実施例3>
バインダー溶液調製時の架橋剤の添加量を5質量部にした以外は、実施例1と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<実施例4>
バインダー溶液調製時において、HDIをポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下ポリメリックMDI)にした以外は、実施例3と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<実施例5>
バインダー溶液調製時の架橋剤の添加量を10質量部にした以外は、実施例4と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<実施例6>
バインダー溶液調製時において、HDIをポエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下EGDGE)にした以外は、実施例3と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<実施例7>
バインダー溶液調製時において、ポリメリックMDIをEGDGEにした以外は、実施例5と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<比較例1>
ポリビニルアセタール系樹脂の合成時において、1−ブタナールの添加量を12.3gにし、バインダー溶液調製時において、HDIを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<比較例2>
バインダー溶液の調製時においてHDIを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウム二次電池電極用バインダー、リチウム二次電池電極用スラリー組成物、リチウム二次電池用電極、及びリチウム二次電池を作製した。
<比較例3>
ポリビニルアセタール系樹脂の合成時において、1−ブタナールの添加量を8gにし、バインダー溶液調製時において、HDIを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、バインダー、スラリー組成物、電極及びリチウム二次電池を作製した。
<比較例4>
エマルションの作成方法
(工程1’)
乾燥させた0.5Lの耐圧重合槽に、イオン交換水395g、PVA系樹脂(株式会社クラレ製「KL506」)30gを添加した後、内容物を撹拌しながら30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行った。内容物を70℃に昇温してPVA系樹脂を溶解し、PVA系樹脂の水溶液を得た。該水溶液中に、重合開始剤(過硫酸カリウム)0.05gをイオン交換水5gに溶解させた水溶液と、単量体(メチルメタクリレート)10gを一括添加した。
(工程2’)
工程1’で加えた単量体の転化率が99質量%を超えたことを確認した時点で、前記工程1で得られた乳化液に、ブチルアクリレート30g及びトリメチロールプロパントリメタクリレート0.3gからなる単量体混合物を脱酸素処理した後、2mL/分の速度で連続的に添加した。総単量体転化率が99質量%を超えたことを確認した時点で、重合槽を25℃まで冷却して、重合体粒子を含むエマルションを取り出した。エマルション中の重合体粒子の平均分散粒子径は114nmであった。
上記で得られたエマルションをPVB(けん化度62〜90%)のエマルションのモデル物質として用いて、当該エマルションの分散液と本実施例のバインダー溶液について比較を行った。当該エマルション分散液については、濁度が280度と大きく、濁りが見られた。一方、本願実施例のバインダー溶液はいずれも濁度が小さいものとなった。また、実施例に比べ該エマルション分散液は粘度が87cPと小さく、電極塗工が困難であり、電極表面に凝集物が散見された。この凝集物が原因で電池特性の大幅な低下が見られた。
<比較例5>
バインダー溶液調製時の架橋剤の添加量を20質量部にした以外は、実施例1と同様にして、バインダー、スラリー組成物を調製した。スラリー組成物を用いて電極を作製する際、乾燥時に架橋剤による架橋構造が形成されると考えられるが、当該比較例5においては、架橋剤の添加量が多すぎることに起因してバインダー溶液調製時にポリビニルアセタール系樹脂がゲル状となり、電極を作製することができなかった。
<比較例6>
バインダー溶液調製時の架橋剤の添加量を50質量部にした以外は、実施例6と同様にして、バインダー、スラリー組成物を調製した。スラリー組成物を用いて電極を作製する際、乾燥時に架橋剤による架橋構造が形成されると考えられるが、当該比較例6においても架橋剤の添加量が多すぎることに起因してバインダー溶液調製時にポリビニルアセタール系樹脂がゲル状となり、電極を作製することができなかった。
実施例1〜7及び比較例1〜6で得たバインダー溶液中に含まれるポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量、アセタール化度、アセチル基量、重合度及びけん化度を上記の方法に従い測定した。また、ポリビニルアセタール系樹脂について、濁度、粘度、NMP溶解性及び膨潤度を上記の方法に従い測定した。さらに、実施例1〜7及び比較例1〜4で製造した電極及び電池について、剥離強度及び電池物性を上記の方法に従い評価した。得られた評価結果を表1に示す。また、実施例1〜7及び比較例5及び6については、ポリビニルアセタール系樹脂が架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を有すること、及び、比較例1〜4については架橋構造を有さないことを、上記フーリエ変換赤外分光光度計を用いる方法にて確認した。
Figure 2020167097
実施例1〜7のリチウム二次電池は、比較例のリチウム二次電池と比べて、電解液浸漬前及び浸漬後の両方において、高い剥離強度を有することが確認された。また、実施例1〜7のリチウム二次電池は、高速充放電時の放電容量維持率が高く、出力特性に優れていることが確認された。これは、所定の範囲の粘度を有するポリビニルアセタール系樹脂を用いることにより、ポリビニルアセタール系樹脂が電解液に対して適度な膨潤性を有し、その結果、Liイオン輸送性が良好となり、充放電時の内部抵抗が低くなるためであると考えられるが、当該メカニズムは本発明を何ら限定するものではない。

Claims (9)

  1. N−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶性で、5質量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液の状態での粘度が、25℃、せん断速度20s−1で700cP以上であり、62〜90モル%の水酸基量を有するポリビニルアセタール系樹脂を含む、蓄電デバイス電極用バインダー。
  2. ポリビニルアセタール系樹脂は、架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤に由来する成分による架橋構造を有する、請求項1に記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
  3. 架橋反応時に脱離物を発生させない水酸基反応性架橋剤は、多官能性エポキシド及び多官能性イソシアネートからなる群から選択される、請求項2に記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
  4. ポリビニルアセタール系樹脂の重合度は250〜5,000である、請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
  5. ポリビニルアセタール系樹脂のけん化度は90モル%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用バインダーと、活物質とを含有する、蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
  7. ポリビニルアセタール系樹脂の含有量は、活物質100質量部に対して0.1〜20質量部である、請求項6に記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
  8. 請求項6又は7に記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の硬化体と、集電体とを含む、蓄電デバイス用電極。
  9. 請求項8に記載の蓄電デバイス用電極を含む、蓄電デバイス。
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