以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法は、第1の導電層の表面上にアルカリ可溶性を有する未硬化接着性樹脂層を設ける工程と、前記未硬化接着性樹脂層の表面上に第2の導電層を設ける工程と、前記第2の導電層の一部を除去してコンフォーマルマスクを形成する工程と、前記コンフォーマルマスクの開口部内に露出する前記未硬化接着性樹脂層を、アルカリ溶液を用いたエッチングにより除去して前記第1の導電層に達するビアホールを形成する工程と、を具備し、前記エッチングは、前記未硬化接着性樹脂層を除去するまでの所要時間の0.1倍〜0.6倍に当たる処理時間で、前記アルカリ溶液を前記第2の導電層側からスプレーで噴射し、その後、スプレーにより水圧0.10MPa以上1.0MPa以下で前記第2の導電層側から水洗することにより行うことを特徴とする。
本実施の形態に係るフレキシブル基板の製造方法において、フレキシブル配線板とは、少なくとも2層の導電層を具備し、導電層の間に層間絶縁層を配置したものであり、層間絶縁層を貫通するビアホールを形成し、ビアホールの内部をめっき処理して電気的な導通を可能とし、層間接続したものである。ここで、ビアホールは、貫通ビア又はブラインドビアのいずれであっても良い。
本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法では、まず、第1の導電層の表面上にアルカリ可溶性を有する未硬化接着性樹脂層を設ける。第1の導電層は、例えば、銅箔のような金属箔で構成される。
また、第1の導電層は、コア基板の表面上に既に形成された導電層であっても良い。コア基板とは、少なくとも一層の導電層を有する基板であり、例えば、層間絶縁層の片面又は両面に導電層を設けた単層フレキシブル配線板や、導電層及び層間絶縁層を交互に積層した多層フレキシブル配線板である。
コア基板の表面に設けられた第1の導電層は、回路形成のためにパターニングされていても良い。
アルカリ可溶性を有する未硬化接着性樹脂層は、未硬化状態では、第1の導電層及び第2の導電層を構成する金属箔との接着性を有すると共に、ビアホール形成のためにアルカリ可溶性を有する。また、硬化状態では、第1の導電層及び第2の導電層の間を絶縁する層間絶縁層として機能するため絶縁性を有すると共に、フレキシブル配線板に可僥性を与えるための弾力性を有する。未硬化接着性樹脂層を構成する樹脂組成物の詳細については後述する。
未硬化接着性樹脂層は、例えば、樹脂組成物を有機溶媒に溶解し、第1の導電層を含むコア基板の表面上に塗布、乾燥して形成することができる。また、樹脂組成物をフィルム状に成膜し、第1の導電層としての金属箔にラミネートしても良い。
次に、未硬化接着性樹脂層の表面上に第2の導電層を設ける。第2の導電層は、例えば、銅箔のような金属箔であり、未硬化接着性樹脂層の第1の導電層側とは反対側の表面に金属箔を貼り付けることにより、第2の導電層を設けることができる。
次に、第2の導電層の一部を除去し、未硬化接着性樹脂層の一部を露出させ、ビアホールに対応する開口部を有するコンフォールマスクを形成する。第2の導電層の除去は、例えば、第2の導電層上にレジストマスクを形成し、これを介して第2の導電層をエッチングすることにより行うことができる。
次に、コンフォーマルマスクを介して、その開口部内に露出する未硬化接着性樹脂層を、アルカリ溶液を用いたエッチングにより除去し、ビアホールを形成する。
アルカリ溶液を用いたエッチングは、(1)未硬化接着性樹脂層を除去するまでの所要時間の0.1倍〜0.6倍に当たる処理時間で行うこと、(2)アルカリ溶液を第2の導電層側からスプレーで噴射すること、及び、(3)アルカリ溶液のスプレー噴射に続いて、スプレーにより水圧0.10MPa以上1.0MPa以下で第2の導電層側から水洗すること、により行われる。
ここで使用するアルカリ溶液は、未硬化接着性樹脂層に含まれるアルカリ可溶性樹脂を溶解できるものであれば特に限定されない。このようなアルカリ溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等が挙げられる。これらのうち、一般的なフレキシブル配線板の製造工程で用いられている炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等を用いることが好ましい。
また、アルカリ溶液のスプレー噴射には、例えば、スプレーノズルを有する市販のエッチング装置、現像装置又は剥離装置(以下、アルカリ溶液現像装置と呼ぶ)を用いることができる。有効処理面内に一定量以上の噴射量のアルカリ溶液を噴射する。有効処理面とは、一定時間に噴射されるアルカリ溶液のスプレーパターン及び流量分布が均一な面のことを言う。
アルカリ溶液現像装置は、特に限定されないが、有効処理面内でのアルカリ溶液の噴射量のバランスが取れており、液だまりや滞留を低減できることが好ましい。好適なアルカリ溶液現像装置として、オシレーション機能を有する装置が挙げられる。
スプレー噴射時には、アルカリ溶液の液だまりや滞留を生じさせないように、恒温漕において温度調節されたアルカリ溶液を連続して噴射し、アルカリ溶液を恒温槽に戻し、循環させることによりことが、有効処理面内のアルカリ溶液が常に更新され、ビアホールのサイドエッチングを低減する観点から好ましい。サイドエッチングとは、導電層に形成されたコンフォーマルマスク径よりも未硬化接着性樹脂層内部方向にエッチング部が拡大していくことであり、このサイドエッチング量を大きくなるとこの後のめっきの被覆性が悪くなり、第1導電層と第2導電層との接続信頼性が悪化させる要因となり得る。
また、サイドエッチングを抑制し、且つ、ビアホールの側壁や底部のスミア、即ち、未硬化接着性樹脂層の残渣を除去する観点から、噴射量が0.2L/分以上の打圧でスプレーすることが好ましい。このために、アルカリ溶液現像装置においては、スプレーノズルが高密度に配置されていることが好ましい。
スプレーノズルには、スリット形状のものが、スプレー噴射のインパクトが増大し、且つ、噴射液滴が小粒径化することにより、アルカリ溶液がビアホールの内部に入り込み易くなり、サイドエッチングを抑制する観点から好ましい。
スリット形状の場合、噴射量が低下するため、液圧は0.15MPa以上であることが好ましい。ビアホールのサイドエッチング抑制やスミア除去の観点から、液圧は0.2MPa以上であることがより好ましい。
また、アルカリ溶液の噴射流量の面内バランスに関しては、アルカリ溶液が噴射される有効処理面内でのエッチング速度を均一にするため、液量比率で有効処理面の中央に比べたバラツキが±20%以内であることが好ましく、形成されるブラインドビアの形成バラツキを抑制する観点から、±10%以内であることがより好ましい。スリット形状のスプレーノズルを使用する場合、そのスプレーパターンは扇形のため、面内バランスと滞留防止の観点から、アルカリ溶液現像装置はオシレーション機能を有することが特に好ましい。
スプレー噴射の処理時間は、未硬化接着性樹脂層を除去するまでの所要時間の0.1〜0.6倍であることが、ビアホールのサイドエッチングを抑制する観点から好ましく、0.1〜0.5倍であることがより好ましい。ビアホールが逆台形形状を有し、めっき被覆性が良好となる観点から、上記比率は0.15〜0.3倍であることがさらに、好ましい。
「未硬化接着性樹脂層を除去するまでの所要時間」とは、噴射を開始してから未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでにかかる時間である。未硬化接着性樹脂層が完全に除去されたか否かは、例えば、外観検査装置を用いて確認する。
上述のアルカリ溶液のスプレー噴射に引き続き、水洗処理を行うことが、コンフォーマルマスクを形成する第2の導電層の表面に付着するドライフィルム剥離片や樹脂残渣、及び、アルカリ溶液を洗浄除去すると共に、ビアホール内部のスミアを除去する観点から好ましい。特に小径のビアホールにおいてビアホール側壁や底部のスミアを除去し、その後のめっきの被覆性を向上させる観点から、水圧は0.10MPa以上0.3MPa以下で、30秒以上120秒以下の処理時間で水洗を行うことが好ましい。さらに、コア基板が具備する導電層からの、層間絶縁層として機能する樹脂の剥離を抑制する観点から、水圧は0.15MPa以上0.3MPa以下で、60秒以上120秒以下の処理時間で水洗することが特に好ましい。
水洗装置はアルカリ現像装置と連続していても、分離していても構わないが、水洗処理は、アルカリ溶液によるエッチング処理から時間を置かずに実施することが好ましい。また、水洗処理は一般的にはスプレーにより行うが、有効処理面に前記条件で処理できる装置であれば特に構わない。水洗水は精製水でも市水でも良い。
本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法においては、上述のビアホール形成の後に、加熱により未硬化接着性樹脂層を硬化して、絶縁樹脂層を得る。
ここで行われる熱硬化処理は、硬化剤の反応の観点から、120℃以上400℃以下の温度で加熱硬化を行うことが好ましい。より好ましくは、加熱温度が150℃以上200℃以下である。
加熱硬化における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。加熱硬化に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好ましくは1時間から8時間の範囲で実施される。
さらに、ビアホールの内部を含む第2の導電層の表面にめっきを施して第1の導電層及び第2の導電層の間で電気的に接続する。これにより、フレキシブル配線板を得ることができる。
ここで行われるめっき処理は、まず一般的な無電解銅めっき処理やカーボン微粒子層を積層させた後、電解銅めっきで所定の厚みまでめっきをして形成する。
(未硬化接着剤層)
本実施の形態において、未硬化接着性樹脂層は、基材上に塗工・乾燥して膜厚40μmで成膜した未硬化層の状態では、水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.22μm/秒以上であり、さらに160℃以上で1時間以上加熱することにより得られる樹脂硬化物層の状態では、水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.02μm/秒以下であることが好ましい。未硬化及び硬化後のアルカリ溶解速度が上記範囲内であれば、未硬化接着性樹脂層のアルカリ溶解性の制御が容易となり、フレキシブル配線板の製造工程で一般的に使用されているアルカリ溶液現像装置が使用できる。
また、上述の樹脂硬化物層の弾性率は、フレキシブル配線板の反りが小さく、且つ、柔軟性に優れ、また、ロール・ツー・ロール法での成型を可能とする観点から、0.05GPa〜3.0GPaであることが好ましく、0.05GPa〜2.0GPaであることがより好ましい。
(樹脂組成物)
次に、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法に用いられる樹脂組成物について説明する。樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化のための反応性化合物と、を含有する。その他に、難燃剤、密着材及び溶媒を含有することができる。
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性を有するために分子鎖中にカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する樹脂であることが好ましい。さらに好ましいのはフェノール性水酸基である。この場合には、架橋剤等との硬化時の反応性に優れるからである。
また、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体、ヒドロキシスチレンの重合体、ポリビニルフェノール、ポリα−メチルビニルフェノール、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、レゾール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体、及び、フェノール性水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。これらのうち、ポリビニルフェノール樹脂、ノボラック樹脂、フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂が好ましい。
ポリビニルフェノール樹脂としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等のヒドロキシスチレン類の単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂が挙げられる。ポリビニルフェノール樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が500〜100,000のものが好ましく、1,000〜50,000のものがより好ましい。
ノボラック樹脂としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(尚、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いても良い。)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂が挙げられる。中でもフェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましい。特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
溶融粘度を下げることで埋込み性を向上させるために、ノボラック樹脂として、分子内に4,4’−ビフェニリレン基、2,4’−ビフェニリレン基、2,2’−ビフェニリレン基及び/又は1,4−キシリレン基、1,2−キシリレン基、或いは、1,3−キシリレン基等の架橋基を含有するフェノール樹脂、及び、メチレン架橋基を含有するフェノール樹脂の重合単位を共に有するノボラック樹脂を用いることも好ましい。
ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が、500〜15,000のものが好ましく、1,000〜10,000のものがさらに好ましい。
さらに、200℃以下の加熱後に得られる硬化物層の耐熱性や柔軟性の観点より、分子中にカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するポリイミド又はポリイミド前駆体、或いは、分子中にカルボキシル基を有するポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましい。より好ましくはフェノール性水酸基を有するポリイミドである。
ポリイミドは、酸二無水物とジアミンを反応させ、ポリアミド酸を合成した後に、加熱(加熱イミド化)することによって得ることができる。また、酸二無水物とジアミンを反応させ、ポリアミド酸を合成し、続いて触媒を添加した後にイミド化(化学的イミド化)させることによっても得ることができる。この中で、化学的イミド化が、より低温でイミド化を完結できる点で好ましい。
本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法に用いられるポリイミドには、下記一般式(1)及び(2)で表される構造を含むアルカリ可溶性ポリイミドが好ましい。
(一般式(1)中、Xは単結合、−O−、−SO
2−、−C(=O)−又はシリコーン含有基を表す。)
(一般式(2)中、Zは単結合又は−C(−CF
3)
2−を表し、lは1から4の整数を表す。)
このような構造のアルカリ可溶性ポリイミドは、例えば、下記一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、アミノ基を取り除いた残基が上記一般式(2)で表されるジアミンを含むジアミン成分を反応させることで得られる。
(一般式(3)中、Xは単結合、−O−、−SO
2−、−C(=O)−又はシリコーン含有基を表す。)
上記一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ポリジメチルシロキサン含有酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独又は2種以上混合しても用いてもよい。
アミノ基を取り除いた残基が上記一般式(2)で表されるジアミンは、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール、4,3’−ジアミノビフェニル−3,4’−ジオール、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’,5,5’−テトラオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’,5,5’−テトラオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−2,4−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げられる。これらのジアミンは単独あるいは2種以上混合しても用いてもよい。これらのジアミンの中で、ポリイミドの溶解性、絶縁信頼性や重合速度や入手性の観点から、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましいものとして挙げられる。
アミノ基を取り除いた残基が上記一般式(2)で表されるジアミンの含有量は、全ジアミンに対して5モル%〜30モル%であることが好ましい。より好ましくは10モル%〜25モル%である。5モル%以上であれば、アルカリ溶解性を示し、30モル%以下であれば、溶剤溶解性に優れる。
上記一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の酸二無水物成分として、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、芳香族テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物等を挙げられ、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは2種以上混合しても用いてもよい。
これらのテトラカルボン酸二無水物の中で、ポリイミドの柔軟性、溶解性、絶縁信頼性や重合速度の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物が好ましいものとして挙げられる。
また、アミノ基を取り除いた残基が上記一般式(2)で表されるジアミン以外のジアミン成分として、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知のジアミンを用いることができる。ジアミンの具体例は、例えば、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。
これらのジアミンの中で、接着性樹脂硬化物の弾性率を低減させる場合は、ポリオキシエチレンジアミンや、ポリオキシプロピレンジアミン、その他炭素鎖数の異なるオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレンジアミン等の使用が好ましい。ポリオキシアルキレンジアミン類としては、米ハンツマン社製のジェファーミンED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、HK−511等のポリオキシエチレンジアミンや、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、独BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000等のポリオキシプロピレンジアミンや、ジェファーミンXTJ−542、XTJ533、XTJ536等のポリテトラメチレンエチレン基をもつもの等が使用例として挙げられ、さらに、未硬化接着性樹脂の溶解性を向上させる場合は、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α−(2−アミノプロピル)−ω−アミノポリ(オキシプロピレン)等が使用例として挙げられる。
これらの弾性率を低減させる目的のジアミンの含有量は、全ジアミンに対して25モル%〜65モル%であることが好ましい。より好ましくは40モル%〜65モル%である。25モル%以上であれば、柔軟性、溶剤溶解性に優れる。65モル%以下であれば、アルカリ可溶性に優れる。
また、水酸基又は/及びカルボキシル基を含むジアミンがポリイミドに導入できる。このようなジアミンとしては、2,5−ジアミノフェノ−ル、3,5−ジアミノフェノ−ル、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、4,4’−(2,2’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3−ヒドロキシ−4−アミノビフェニル(HAB)、4,4’−(3,3’−ジカルボキシ)ジフェニルアミン、メチレンビスアミノ安息香酸(MBAA)、2,5−ジアミノ安息香酸(DABA)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル等が挙げられる。
次に、ポリイミドの製造方法について説明する。本実施の形態に係るポリイミドの製造方法は、公知方法を含め、ポリイミドを製造可能な方法が全て適用できる。中でも、有機溶媒中で反応を行うことが好ましい。このような反応において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
本実施の形態においては、ビアホール形成後の熱硬化処理において、ビアホールの形状を維持し、アウトガスによる膨れが無いことが要求され、また、部品実装時の半田リフロー時でのアウトガスによる膨れが無いこと、及び、冷熱サイクル試験での信頼性が要求される。このため、硬化後の残存溶剤は、樹脂組成物の硬化物層中に0.5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以下、さらに、好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以下である。
そのため、反応に用いる溶剤としては、乾燥性に優れる溶剤が好ましく、アミド構造を含まない溶剤であって、揮発性に優れるγ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチル等が好ましい。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド構造を有する溶剤を使用する場合、減圧条件においても、本実施の形態のポリイミドとの水素結合のため、溶剤残存量を0.5質量%以下にすることは難しく、アミド構造を有する溶剤を用いて重合を行った場合には、重合後に貧溶剤を添加してポリマーを沈殿させ、析出したポリマーを回収、乾燥させて後、揮発性の良い溶剤に再溶解させて使用することが好ましい。
本重合反応における反応原料の濃度は、通常、2質量%〜80質量%、好ましくは20質量%〜50質量%である。
反応させるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.8〜1.2の範囲内である。この範囲内の場合、分子量を上げることができ、伸度等にも優れる。好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは0.92〜1.07である。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、5000以上150000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は10000以上60000以下がより好ましく、15000以上50000以下が最も好ましい。重量平均分子量が5000以上100000以下であると接着性樹脂硬化物を用いて得られる保護膜の強伸度が改善され、機械物性に優れる。さらに、塗工時に所望する膜厚にて滲み無く塗工できる。
ポリイミドは、以下のような方法で得られる。まず反応原料を室温から80℃で重縮合反応することにより、ポリアミド酸構造からなるポリイミド前駆体が製造される。次に、このポリイミド前駆体を好ましくは100℃〜400℃に加熱してイミド化するか、又は無水酢酸等のイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。加熱してイミド化する場合、副生する水を除去するために、共沸剤(好ましくは、トルエンやキシレン)を共存させて、ディーンシュターク型脱水装置を用いて、還流下、脱水を行うことも好ましい。
また、80℃〜220℃で反応を行うことにより、ポリイミド前駆体の生成と熱イミド化反応を共に進行させて、ポリイミドを得ることも好ましい。すなわち、ジアミン成分と酸二無水物成分とを有機溶媒中に懸濁又は溶解させ、80℃〜220℃の加熱下に反応を行い、ポリイミド前駆体の生成と脱水イミド化とを共に行わせることにより、ポリイミドを得ることも好ましい。
また、ポリイミド前駆体のポリマー主鎖の末端が、モノアミン誘導体又はカルボン酸誘導体からなる末端封止剤で末端封止することも可能である。ポリイミドのポリマー主鎖の末端が封止されることで、末端官能基に由来する貯蔵安定性に優れる。
モノアミン誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール,o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン,o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル,2−アミノビフェニル,3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル,4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセン等の芳香族モノアミンを挙げることができ、この中で好ましくはアニリンの誘導体が使用される。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、主に無水カルボン酸誘導体が挙げられ、例えば、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物等の芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中で、好ましくは無水フタル酸が使用される。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
得られたポリイミド溶液は、脱溶剤することなく、そのまま、あるいはさらに、必要な溶剤、添加剤等を配合して、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の未硬化接着性樹脂層を形成するのに用いることもできる。
(反応性化合物)
本実施の形態に係る樹脂組成物において、反応性化合物は、加熱によりアルカリ可溶性樹脂中のフェノール性水酸基と反応して熱硬化を起こす。
未硬化接着性樹脂層をアルカリ溶液でエッチングしてビアホールを形成する段階では十分なアルカリ溶解性を維持する一方で、熱硬化処理後はアルカリ溶解性を低下させて、アルカリ耐性を有することが好ましい。熱硬化処理後の硬化物層がアルカリ耐性を有することで、層間絶縁膜に要求される、良好な絶縁信頼性を得ることができる。また、ビルドアップ法で多層化を順次行う場合等、より外層側の導電層に回路をエッチングにより形成する際の、導電層上に形成したドライフィルムのアルカリ剥離時に、硬化物層がアルカリにより溶解されない。
このため、反応性化合物は、上述のアルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基と、熱硬化処理前は反応せずアルカリ可溶性を示し、熱硬化処理時に反応して、アルカリ耐性を発現するものであることが望ましい。そのため、反応性化合物は、120℃以下、好ましくは、100℃以下では反応の進行が遅く、150℃以上、好ましくは170℃以上では反応が十分に進行するものが好ましい。
このような反応性化合物として、オキサゾリン化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物及びオキセタン化合物が挙げられる。好ましいものとしては、オキサゾリン化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキセタン化合物が挙げられる。特に好ましいものは、反応することで水酸基を副生することの無いオキサゾリン化合物である。
オキサゾリン化合物は、分子内に1個以上のオキサゾリン基を有する化合物である。オキサゾリン基を含有する化合物としては、ポリイミドの水酸基を封止し、さらにポリイミド間の形成する場合、分子内に2個以上のオキサゾリン基を有するものが好ましい。
オキサゾリン化合物の具体例としては、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、日本触媒社製のK−2010E、K−2020E、K−2030E、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,6−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャルブチル−2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらのオキサゾリン化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン化合物の添加量は、水酸基を有するポリイミドの水酸基のモル量を1とした場合、オキサゾリン基のモル量が、モル比として水酸基/オキサゾリン基=4〜0.5であることが好ましく、3〜0.7がさらに好ましい。水酸基/オキサゾリン基=4以下で樹脂組成物のアルカリ加工性が向上し、水酸基/オキサゾリン基=0.5以上で接着性樹脂硬化物の柔軟性、耐熱性が向上する。
上述のオキサゾリン化合物を含有する樹脂組成物は、溶剤、残存モノマー等の揮発成分を十分に除去し、アルカリ溶液に可溶とするため、真空乾燥法等で50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱乾燥して、未硬化接着性樹脂層とすることが好ましい。
この未硬化接着性樹脂層はアルカリ溶液に可溶であるため、ビアホール形成を、アルカリ溶液を用いたエッチングで行うことができ、フレキシブル配線板の製造で用いられるレーザードリリング加工等が不要となる。
また、ビアホール形成後に未硬化接着性樹脂層を加熱することによって硬化物層を得ることができる。加熱の方法については特に限定されないが、例えば160℃〜200℃の加熱で、主として水酸基の封止や架橋反応が生じ、得られた硬化物層はアルカリ溶液へ不溶となる。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、反応性化合物として、さらに熱架橋性官能基を有する化合物を含有しても良い。熱架橋性官能基を有する化合物としては、トリアジン系化合物、ベンゾオキサジン化合物及びエポキシ化合物等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、メラミン類及びシアヌル酸メラミン類等が好ましい。メラミン類としては、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物及びメラミンの縮合物等が挙げられる。メラミン類の具体例としては、例えば、メチロール化メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリールグアナミン、メラム、メレム及びメロンが挙げられる。
シアヌル酸メラミン類としては、例えば、シアヌル酸とメラミン類との等モル反応物が挙げられる。また、シアヌル酸メラミン類中のアミノ基又は水酸基のいくつかが、他の置換基で置換されていてもよい。このうちシアヌル酸メラミンは、例えば、シアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、90〜100℃で撹拌下反応させ、生成した沈殿を濾過することによって得ることができ、白色の固体であり、市販品をそのまま、又はこれを微粉末状に粉砕して使用できる。
ベンゾオキサジン化合物は、モノマーのみからなるものでも良いし、数分子が重合してオリゴマー状態となっていても良い。また、異なる構造を有するベンゾオキサジン化合物を同時に用いても良い。具体的には、ビスフェノールベンゾオキサジンが好ましく用いられる。
エポキシ化合物としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。
またエポキシ樹脂を使用する場合は、必要に応じて硬化剤を使用することもできる。
(難燃剤)
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、難燃性を向上する観点から、難燃剤を含有しても良い。難燃剤の種類は特に限定はないが、含ハロゲン化合物、含リン化合物及び無機難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤を一種用いてもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。
難燃剤の添加量は、特に限定されることがなく、用いる難燃剤の種類に応じて適宜に変更すればよい。一般的に、アルカリ可溶性樹脂の含有量を基準として、5質量%から50%の範囲で用いられることが好ましい。
含ハロゲン化合物難燃剤としては、塩素を含む有機化合物と臭素を含む化合物等が挙げられる。具体的には、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンテトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
含リン化合物難燃剤としては、例えば、ホスファゼン、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル、及び亜リン酸エステル等のリン化合物が挙げられる。特にポリイミド組成物との相溶性の面から、ホスファゼン、ホスファイオキサイド又はリン酸エステルが好ましく用いられる。
無機難燃剤としては、アンチモン化合物及び金属水酸化物等が挙げられる。アンチモン化合物として、三酸化アンチモンと五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン化合物と上記含ハロゲン化合物難燃剤との併用で、プラスチックの熱分解温度域で、酸化アンチモンが難燃剤からハロゲン原子を引き抜いてハロゲン化アンチモンを生成するため、相乗的に難燃性を上げることができる。金属水酸化物として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
無機難燃剤を用いた場合、有機溶媒に溶解しないため、その粉末の粒径は100μm以下が好ましい。粉末の粒径は100μm以下であれば、アルカリ可溶性樹脂組成物に混入しやすく、硬化後の樹脂の透明性を損ねることなく好ましい。さらに難燃性を上げるためには、粉末の粒径は50μm以下が好ましく、10μm以下は特に好ましい。
(密着材)
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、金属箔と密着性を向上する観点から、密着材を含有させても良い。密着材としては特に限定されないが、フェノール化合物、含窒素有機化合物、アセチルアセトン金属錯体等を挙げることができる。特にフェノール化合物が好ましい。
(溶媒)
本実施の形態に係る樹脂組成物は有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒に溶解した状態とすることにより、ワニスとして好ましく使用することができる。
このような有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン溶媒、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒、クレゾール、フェノール等のフェノール系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル等のエーテル系溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
(その他)
本実施の形態に係る樹脂組成物は、さらに、塗工膜にする時、その塗工方式に応じて粘度とチクソトロピーの調整を行うため、必要に応じて、フィラーやチクソトロピー性付与剤を添加して用いることも可能である。また、公知の消泡剤、レベリング剤、顔料等の添加剤を加えることも可能である。
以下、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を適用可能な、多層フレキシブル配線板の製造方法について説明する。ここでは、まず、基材上に未硬化接着性樹脂層を形成した積層体を作製し、この基材を、コア基板としての両面フレキシブル基板の両側から積層して多層フレキシブル配線板を作製する。
(積層体の作製)
積層体の作製は、基材の表面に、樹脂組成物を有機溶媒に溶解したワニスを塗工し、乾燥することにより行う。
ここで使用する基材は、ロール・ツー・ロール法での連続生産可能な塗工、乾燥設備に対応したものであることが好ましい。このような基材としては、導電性基材、ガラスクロス、キャリアフィルム等が挙げられる。これらの中でも、連続生産性やハンドリングの点から導電性基材が好ましい。導電性基材としては、電解銅箔、圧延銅箔、電着フィルム、導電性ペースト付きフィルム、アルミニウム箔フィルム、ステンレス箔フィルム等が挙げられ、配線加工性や基板圧着後の密着性の観点から、電解銅箔又は圧延銅箔が特に好ましい。
塗工方法としては、例えば、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート及びはけ塗りが挙げられる。
塗工後、必要に応じて、ホットプレート等によりプリベークと呼ばれる加熱処理を行っても良い。
乾燥方法としては、その態様については特に限定されないが、アルカリ溶液に可溶とするため、50℃〜140℃において1分間〜30分間加熱することが好ましい。さらに高温領域(例えば160℃〜200℃)の加熱で主として水酸基の封止や架橋反応が生じ、アルカリ溶液に不溶となる。
上記積層体の未硬化接着性樹脂層上に、汚れ等からの保護のためにカバーフィルムを少なくとも一層設けても良い。本実施の形態に係る積層体において、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレン等、未硬化接着性樹脂層を保護できるフィルムであれば限定されない。
(多層フレキシブル配線板の作製)
次に、コア基板となる両面フレキシブル配線板の両側から、上記積層体を加熱圧着により積層して、多層フレキシブル配線板を作製する。
コア基板としての両面フレキシブル配線板を用意する。両面フレキシブル配線は、絶縁樹脂層の両面に導電層を設けたものである。導電層は、例えば、線回路である。導電層の材質は、例えば、銅である。例えば、銅箔を公知のサブトラクティブ法によりパターニングすることにより、回路形成を行う。
まず、積層体を両面フレキシブル基板の両側に、未硬化接着性樹脂層が導電層に接触するように配置する。この状態で加熱圧着して積層する。
圧着方法は、例えば、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス及び熱真空ラミネートが挙げられる。この中で、未硬化接着性樹脂層と配線層との接着性や、両面フレキシブル配線板に形成されている貫通孔や銅配線回路への樹脂埋め込み性の観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。さらに、ロール・ツー・ロール法による生産性の観点から、熱真空ラミネートが特に好ましい。
熱真空ラミネートを実行可能な真空積層装置においては、真空積層する時にプレス定盤と積層体との間に補強材を含むラバー基材を備えている。ラバー基材は、真空積層装置に固定されていても独立していても良い。
また、ラバー基材は、200℃程度までの耐熱性を具備するものであれば特に限定されないが、シリコーン、又はウレタン素材であることが好ましい。また、ラバーの表面硬度は30度以上70度以下が好ましく、より好ましくは30度以上50度以下である。また、ロール・ツー・ロール製造装置等による連続生産性の観点から、ラバー基材の表面には微小な凹凸構造のあるエンボス加工等が施されていることがより好ましい。
また、ラバー基材の大きさは、積層体より大きいことが、未硬化接着性樹脂が両面フレキシブル配線板の端部から不必要に流れ出す、いわゆる樹脂フローの抑制や、プレス定盤の熱伝導、圧力均一性、どのような積層体の大きさに対してもサイズによる変更の必要性が無く、プレス装置の大きさにも依存しない点等から好ましい。
補強材として、クロスや不織布を用いることが、ラバー基材の変形を抑制し、プレス面内の圧力バラツキを抑え、均一に積層できる点から好ましい。補強材の材質は、耐熱性を具備すればガラス繊維でもスチール繊維でも特に限定されない。
プレス積層する時の積層条件は、温度が80℃以上180℃以下、圧力が0.1MPa以上3MPa以下において0.5分以上10分以下で加熱・加圧処理することが、未硬化接着性樹脂の硬化反応の進行を抑制する観点から好ましい。両面フレキシブル配線板の配線間や内層の貫通孔への樹脂埋め込み性や表面平滑性を良好とする観点から、温度が100℃以上180℃以下、圧力が0.5MPa以上3MPa以下、圧着時間が1分以上5分以下であることが特に好ましい。
上記の積層条件は、真空プレス又は真空ラミネータ装置には特に依存しないため、生産時間の短縮化においては、真空ラミネータやクイックプレス装置等に好適に用いることができる。
以上説明した本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法によれば、未硬化接着性樹脂層のアルカリ溶液を用いたエッチングを、未硬化接着性樹脂層を除去するまでの所要時間の0.1倍〜0.6倍に当たる処理時間で、アルカリ溶液をスプレーで噴射し、その後、スプレーにより水圧0.10MPa以上1.0MPa以下で水洗して行うことによって、(a)ビアホール形成に伴うスミアの発生を抑制できるので、例えば、過マンガン酸カリウム水溶液等を用いて樹脂を分解除去するデスミア処理や、プラズマやUV照射等によるアッシング処理等を省略でき、ビアホール形成コストを大幅に削減できる。また、(b)ビアホールのサイドエッチングを抑制できるため、導電層に形成されたコンフォーマルマスクを介してアルカリエッチング及び水洗処理を行うことにより、内部形状が逆台形となる小径のビアホールを安定的に形成することができる。これによりビア内部の銅めっき被覆性に優れ、また銅めっき厚みを薄くすることができることから、配線回路のファインパターン化や層間接続の信頼性に優れたフレキシブル配線板を製造することが可能となる。
上述のような効果に加えて、未硬化接着性樹脂層がアルカリ可溶性樹脂を含んでいるので、アルカリ溶液で溶解除去することによりビアホールを形成できるので、レーザー加工及びドリル加工によるビアホール形成に比べて、製造工程を簡略化でき、また、製造コストを削減することが可能となる。
また、アルカリ溶液を用いて未硬化接着性樹脂層を溶解除去することにより、レーザー加工及びドリル加工に比べて、短時間でビアホールを形成できるので、フレキシブル配線板の連続生産も可能となる。これにより、回路品質に優れたフレキシブル配線板を高い生産効率で製造することができる。
本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法は、フレキシブル配線板の製造に一般的に使用されている、市販でも入手可能なエッチング装置、現像装置、及び、ラミネート設備等のスプレーを有するアルカリ溶液現像装置を使用できるため、追加の設備投資が不要である。
以下、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を適用した多層フレキシブル配線板の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
以下、第1の実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法について説明する。まず、コア基板としての両面フレキシブル配線板を作製する。図1は、第1の実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。図1Aに示すように、積層体11を用いる。この積層体11は、銅箔12a(例えば、銅箔F2−WS(12μm))と、この銅箔12a上に設けられ上記実施の形態に係る樹脂組成物を含む未硬化接着性樹脂層14と、を備える。
積層体11は、銅箔12a上に有機溶媒に溶解させた本実施の形態に係る樹脂組成物を塗布してから、95℃にて12分間加熱して未硬化接着性樹脂層14に含まれる有機溶媒を乾燥して除去することにより製造される。
次に、図1Bに示すように、積層体11の未硬化接着性樹脂層14を銅箔12bに重ねて、例えば、100℃にて1分間、4MPaの条件で真空プレスにより積層する。この結果、銅箔12a、未硬化接着性樹脂層14及び銅箔12bからなる積層体13が得られる。
次に、図1Cに示すように、積層体13の一方の銅箔12b上に感光性のレジスト層を形成し、レジスト層の露光・現像及び銅箔12bのエッチングにより、銅箔12bの一部(以下、エッチング部位という)12b−1を除去してコンフォーマルマスクを形成する。なお、感光性のレジスト層は、後述のビアホール形成のためのアルカリ溶液を用いたエッチングの際に除去される。
次に、図1Dに示すように、コンフォーマルマスクを介して銅箔12bのエッチング部位12b−1に露出した未硬化接着性樹脂層14を、アルカリ溶液を用いたエッチングにより除去して、ビアホール15を形成する。ここで行われるアルカリ溶液を用いたエッチングは、上述の通りの条件でのアルカリ溶液の噴射処理及び水洗処理によって行われる。
次に、硬化乾燥炉を用いて、例えば、180℃にて1時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層14を熱硬化して絶縁樹脂層16とする。
次に、無電解銅めっき、又は、カーボン微粒子を付着させた後電解銅めっきを施して、ビアホール15の内壁を構成する絶縁樹脂層16及び銅箔12a、12bの表面にめっき層を形成する。このめっき層により、銅箔12a,12b間を電気的に接続する。
次に、図1Eに示すように、サブトラクティブ法等により銅箔12a,12bをパターニングして回路形成を行うことにより、両面フレキシブル配線板10を得る。
次に、上述のようにして得られた両面フレキシブル配線板10をコア基板として用いて、ブラインドビアを用いた多層フレキシブル配線板を作製する。
図2は、第1の実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。第1の実施の形態においては、コア基板としての上述の両面フレキシブル配線板(以下、コア基板と記す)10を用いて多層フレキシブル配線板を製造する。コア基板10においては、上述のブラインドビアが形成された両面フレキシブル配線板の他に、貫通ビアが形成されたものを用いても良い。
まず、図2Aに示すように、コア基板10の銅箔12a,12b上に、それぞれ、上述の未硬化接着性樹脂層21a,21bと、銅箔22a,22bと、を順次積層する。
この積層工程には、上述のように、未硬化接着性樹脂層及び導電層からなる積層体を、両面フレキシブル配線板の両側に積層する方法を採用することができる。すなわち、銅箔22a,22bの表面に樹脂組成物を有機溶媒に溶解したワニスを塗工、乾燥し、未硬化接着性樹脂層21a,21bを形成し、積層体23a,23bを作製する。これらの積層体23a,23bをコア基板10の両側に配置し、ラバー基材100で挟んで加圧圧縮する。
次に、銅箔22a,22b上に、ドライフィルムレジストをラミネートした後、ドライフィルムレジストの露光・現像、及び銅箔22a,22bのエッチングにより、図2Bに示すように、銅箔22a,22bの一部(以下、エッチング部位という)22a−1,22b−1を除去してコンフォーマルマスクを形成する。
次に、図2Cに示すように、コンフォーマルマスクを介して銅箔22a,22bのエッチング部位22a−1,22b−1に露出した未硬化接着性樹脂層21a,21bを、アルカリ溶液を用いたエッチングにより除去し、ブラインドビア24を形成する。ここで行われるアルカリ溶液を用いたエッチングは、上述の通りの条件でのアルカリ溶液の噴射処理及び水洗処理により行われる。
次に、硬化乾燥炉を用いて、例えば、60℃〜200℃で、10分〜5時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層21a、21bを硬化させ、図2Dに示すように、絶縁樹脂層25a,25bを形成する。加熱硬化における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。このようにして形成された絶縁樹脂層25a,25bと、銅箔22a,22bと、が積層されたものを、外部基板26a,26bと呼ぶ。
次に、無電解銅めっき、又は、カーボン微粒子を付着させた後電解銅めっきを施して、ブラインドビア24の内壁を構成する絶縁樹脂層25a,25b及び銅箔12a,12bの表面にめっき層を形成する。これにより、コア基板10の一方の主面側の銅箔12aと、外部基板26aの銅箔22aとの間、及びコア基板10の他方の主面側の銅箔12bと、外部基板26bの銅箔22bとの間がそれぞれ電気的に接続される。
次に、図2Dに示すように、サブトラクティブ法により外部基板26a,26bの銅箔22a,22bをパターニングして回路形成を行う。次に、従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして、図2Eに示すように、カバーコート27の形成等の絶縁処理を行い、多層フレキシブル配線板20を得る。
以上説明した第1の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板20の製造方法によれば、未硬化接着性樹脂層21a,22bのアルカリ溶液を用いたエッチングを、未硬化接着性樹脂層21a,22bを除去するまでの所要時間の0.1倍〜0.6倍に当たる処理時間で、アルカリ溶液をスプレーで噴射し、その後、スプレーにより水圧0.10MPa以上1.0MPa以下で水洗して行うことによって、(a)ブラインドビア24の形成に伴うスミアの発生を抑制できるので、デスミア処理等を省略でき、ブラインドビア形成コストを大幅に削減できる。また、(b)ブラインドビア24のサイドエッチングやコンフォーマルマスクからのオーバーハングを抑制できるため、小径のブラインドビア24を安定的に形成することができるので、配線回路のファインパターン化や層間接続の信頼性に優れた多層フレキシブル配線板20を製造することが可能となる。
上述のような効果に加えて、未硬化接着性樹脂層21a,21bがアルカリ可溶性樹脂を含んでいるので、アルカリ溶液で溶解除去することによりブラインドビア24を形成できる。これにより、レーザー加工及びドリル加工によるブラインドビア形成に比べて、製造工程を簡略化でき、また、製造コストを削減することが可能となる。
また、アルカリ溶液を用いて未硬化接着性樹脂層21a,21bを溶解除去することにより、レーザー加工及びドリル加工に比べて、短時間でブラインドビア24を形成できるので、多層フレキシブル配線板20の連続生産も可能となる。これにより、回路品質に優れた多層フレキシブル配線板20を高い生産効率で製造することができる。
また、第1の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板20の製造方法によれば、コア基板10と、外部基板26a,26bとの間にカバーコートを設けることなく多層フレキシブル配線板20を構成することができる。このため、従来の方法によって製造された多層フレキシブル配線板に比べて構成の簡略化が可能となると共に、製造工程の大幅な簡略化が可能となる。すなわち、従来の多層フレキシブル配線板の製造方法においては、両面フレキシブル配線板にボンディングシート(接着材)等を介して積層していた。両面フレキシブル配線板には、通常カバーレイと呼ばれる配線回路のカバーコート層がある。本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板20の製造方法では、ビルドアップ法により、これまでのカバーレイによるカバーコート層とボンディングシートを未硬化接着性樹脂層21a,21bが兼ねるため、従来に比べて構成が簡略化できる。
また、第1の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板20の製造方法は、フレキシブル配線板の製造に一般的に使用されているエッチング装置、現像装置、及び、ラミネート設備等のアルカリ溶液現像装置を使用できるため、追加の設備投資が不要である。
次に、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法を適用した、フレキシブル部を有する、ブラインドビアを用いた多層フレキシブル配線板の製造方法について説明する。
フレキシブル部とは、屈曲性や折り曲げ性を有し、且つ折り曲げた後の反発力が小さいことが望まれる部位である。従って肉薄化や柔軟性が必要となる。従来、この部位をルーター等を用いて機械的に削る等により製造している。しかし、本実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法では、ビアホールをアルカリエッチングすると同時に、この部位をアルカリエッチング除去することにより、簡便に製造できるものである。
図3は、第2の実施の形態に係るフレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。コア基板10の作製及びコア基板10の両側に積層体23a,23bを積層するまでは、第1の実施の形態で説明したのと同様であるので、説明を省略する。また、以下の説明において、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
図3Aに示すように、銅箔22a,22bの一部(エッチング部位)22a―1,22b−1をエッチングにより除去し、コンフォーマルマスクを形成する際に、フレキシブル部に対応するエッチング部位22b−2を同時に除去する。
次いで、コンフォーマルマスクを介して、エッチング部位22a−1、22b−1、及び、22b−2で露出する未硬化接着性樹脂層21a,21bを、アルカリ溶液を用いたエッチングにより除去することにより、図3Bに示すように、ブラインドビア24と同時にフレキシブル部31が形成される。
以降は、第1の実施の形態で説明したのと同様に、未硬化接着性樹脂層21a、21bを硬化させ、図3Cに示すように、絶縁樹脂層25a,25bを形成する。次に、ブラインドビア24の内壁を構成する絶縁樹脂層25a,25b及び銅箔12a,12bの表面にめっき層を形成する。その後、図3Cに示すように、サブトラクティブ法により外部基板26a,26bの銅箔22a,22bをパターニングして回路形成を行う。次に、従来のフレキシブル基板の配線板方法と同様にして、図3Dに示すように、カバーコート27の形成等の絶縁処理を行い、多層フレキシブル配線板30を得る。
第2の実施の形態に係る多層フレキシブル配線板30の製造方法によれば、第1の実施の形態で説明したのと同様の効果に加えて、以下のような効果を奏する。
銅箔22a,22bにエッチング部位22a―1、22b−1を設けるのと同時に、フレキシブル部31に対応するエッチング部位22b−2を設けることで、アルカリ溶液で未硬化接着性樹脂層21a,21bを溶解除去して、ブラインドビア24を形成するのと同時に、エッチング部位22b−2に露出する未硬化接着性樹脂層21a,21bを溶解除去することで、フレキシブル部31を形成することができるので、フレキシブル部31を有する多層フレキシブル配線板30を、より短時間で且つ低コストで製造することが可能となる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例で使用したアルカリ可溶性樹脂を含む樹脂組成物のワニスの調整について説明する。
〔サンプルS1〕
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン175.7g、トルエン50.0g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)21.02g、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(XTJ−542)、ハンツマン社製)42.60gを入れ60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAと記す)30.09gを少しずつ添加した。30分後、無水フタル酸0.89gを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドAワニスを得た。ポリイミドAワニスの重量平均分子量は83000であった。
得られたポリイミドAワニスをそのまま用いて、固形分が45質量%になるようにγ―ブチロラクトンで希釈した。ポリイミドAワニス中の固形分が51.1質量%、オキサゾリン基を2つ含有する化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が6.9質量%、複合水酸化マグネシウムMGZ−5R(堺化学工業社製)が40.0質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245)(BASF社製)が2.0質量%になるように調合して、サンプルS1のワニスを得た。
〔サンプルS2〕
ODPAの量を30.09gから31.02gに変更し、無水フタル酸を添加せずに、ODPAを添加した後に180℃まで昇温し、2時間加熱したことを除き、サンプルS1と同様に処理して、ポリイミドBワニスを得た。ポリイミドBワニスの重量平均分子量は114000であった。
得られたポリイミドBワニスを、ポリイミドAワニスに代えて用いたことを除きサンプルS1と同様の組成からなるサンプルS2のワニスを調合した。
〔サンプルS3〕
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、γ−ブチロラクトン42.0g、トリエチレングリコールジメチルエーテル18.0g、トルエン20.0g、シリコーンジアミン(以下、KF−8010と記す)19.54mmol(信越化学工業社製)、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル(TMEG)(新日本理化社製)40.00mmolを入れ、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で30分間加熱撹拌した。共沸溶媒であるトルエンを除去した後に、25℃まで冷却し、続いてKF−8010 4.89mmol、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−N)(三井化学社製)15.56mmolを加え、25℃で5時間撹拌した。撹拌後にポリマー固形分の濃度が30重量%となるように、γ−ブチロラクトン/トリエチレングリコールジメチルエーテルの混合溶媒を加え、ポリイミド前駆体の溶液を得た。さらにポリイミド前駆体100質量部に対して、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(TBXP)(大八化学社製)10質量部、ホスファゼン化合物(FP−100)(伏見製薬所社製)7質量部を混合し、サンプルS3のワニスを得た。
〔エッチング所要時間〕
アルカリ可溶性樹脂を含む未硬化接着性樹脂層のアルカリエッチング性の評価は以下の手順により実施した。
真空吸着できる塗工台(テスター産業社製)上に電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)の粗面側を敷き、真空吸着させることで電解銅箔を貼り付けた。電解銅箔上にアプリケーター(テスター産業社製)を用いて、上述のサンプルS1〜S3のワニスのいずれかを塗布した。その後、乾燥機(SPH−201)(エスペック社製)で加熱乾燥し脱溶剤を行い、樹脂厚40μmの未硬化接着性樹脂付き銅箔を作製した。
得られた未硬化接着性樹脂付き銅箔の樹脂層側を、片面フレキシブル銅張板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学社製)の銅箔面に重ねて、真空プレス(北川精機社製)を用いて、100℃、1.0MPaの条件で2分加圧接着させた。さらに、ドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートし、直径3mmの円孔のコンフォーマルマスクパターンを形成した後、塩化第二鉄エッチング液で円孔形成部の銅箔をエッチング除去し未硬化接着性樹脂層を露出させた。
その後、45℃に加温した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液をフルコーン型ノズル(ISJJX8010)(いけうち社製)を用いて、圧力0.18MPa(噴射量0.92L/分)でスプレー噴射し、未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでに要した時間を、エッチング所要時間(秒)とした。
〔ブラインドビア形状評価〕
実施例及び比較例で作製したフレキシブル配線板のブラインドビアについて、開口部及び断面の形状の光学顕微鏡観察により実施した。アルカリエッチング直後に、任意のブラインドビア50点を、内層コア基板上部から光学顕微鏡観察により観察し、ブラインドビアの底部側の開口部、すなわち底部に露出する内層側銅箔面の、銅箔に形成されたコンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比により評価した。任意のブラインドビア50点について評価を行い、その平均値を測定値とした。面積比が90%以上を◎、75%以上90%未満を〇、50%以上75%未満を△、50%未満を×とした。
また、断面形状については、ブラインドビアを有するフレキシブル配線板をエポキシ樹脂で包埋し、包埋されたフレキシブル配線板に垂直に研磨装置(丸本ストラトス社製)を用いてブラインドビア径の中央位置まで断面研磨加工を行った後、光学顕微鏡観察により観察した。また、任意のブラインドビア10点について評価を行い、その平均値を測定値とした。ブラインドビアの断面形状では、樹脂硬化物層の、コンフォーマルマスク端部からのオーバーハング量が15μm以下を◎とし、15μm超25μm以下を○とし、25μm超30μm以下を△とし、30μmを超える場合は×とした。
〔冷熱サイクル試験〕
以下で説明する実施例7〜11及び比較例4で作製した、多層フレキシブル配線板において、直径100μmのブラインドビアを介して内層配線回路と外層配線回路を銅めっきによりデイジーチェーン接続させた配線回路を用い、125℃と−40℃のそれぞれの恒温漕を15分毎に交互に往復させ、その時の接続抵抗値を測定した。各温度での接続抵抗値の初期値からの変動幅(以下、「抵抗変動率」という)が10%以内であるサイクル数が1000サイクル以上である場合を◎、500サイクル以上1000サイクル未満である場合を○とし、500サイクル未満である場合を×とした。
〔実施例1〕
サンプルS1のワニスを、12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)の片面上にバーコータを用いて塗布した。その後、95℃に加温されたオーブン中で15分間乾燥処理して溶媒を除き、外層材となる未硬化接着性樹脂付き銅箔を得た。この未熱硬化接着性樹脂付き銅箔の樹脂層側を、銅箔厚み12μmの片面フレキシブル配線基板(エスパネックス(登録商標)M)(新日鉄化学製)の銅箔上に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んで、積層体Aを準備した。
次に、上下両面定盤に硬度50度の耐熱シリコンラバーを貼り合せた真空プレス装置(北川精機社製)を予め120℃の真空プレス温度に加熱した。この真空プレス装置に積層体Aを入れて、2分間加圧しない状態で真空引きを行った後、圧力1MPaで2分間加圧し、外層材としての未硬化接着性樹脂付き銅箔と内層コア基板としての片面フレキシブル配線基板とを圧着させて、積層体Bを得た。
次に、積層体Bの外層の銅箔上に、ドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)を、ロールラミネータにより貼り合せた後、露光・現像してレジストマスクを形成した。このレジストマスクを用いて、所定の位置の銅箔をエッチング除去して、銅箔に、コンフォーマルマスクを形成した。ここで、コンフォーマルマスクは、ブラインドビアを形成するための、直径100μmのエッチング部位を300μmのピッチ間隔で複数有していると共に、直径3mmの円孔を有する。
次に、銅箔をエッチングした積層体Bについて、アルカリ溶液を用いた未硬化接着性樹脂層の溶解除去(アルカリエッチング)を行った。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は124秒であった。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径100μmのエッチング部位の内部に露出した未硬化接着性樹脂層に、45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を、0.18MPa(噴射量0.92L/分)のフルコーン型スプレーノズルを用いて20秒間スプレー噴射処理し、その後0.12MPa(噴射量0.75L/分)のスプレーを120秒間水洗処理して、未硬化接着性樹脂層をエッチング除去して、複数のブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、75%以上90%未満であった。
次に、硬化乾燥炉を用いて、ブラインドビアを形成した積層体Bを180℃で1時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層を硬化させ樹脂硬化物層を形成した。さらに、ブラインドビア内部に無電解銅/電解銅めっき処理を施して、フレキシブル配線板を得た。
得られたフレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂硬化物層のオーバーハング量は最大12μmであった。
このように、実施例1で作製したフレキシブル基板のブラインドビア断面形状はオーバーハング量が小さく、銅めっき性も良好であった。
〔比較例1〕
実施例1と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
スプレー噴射時間を11秒から20秒に変更した以外は実施例1と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、10%以下であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、ブラインドビアの底部にスミアが認められ、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されていなかった。
〔実施例2〕
真空プレス温度を140℃とした以外は実施例1と同様の方法で、銅箔にコンフォーマルマスク及び直径3mmの円孔が形成された積層体Bを作製した。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は119秒であった。
水洗時間を120秒から60秒に変更した以外は、実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bのコンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、75%以上90%未満であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂硬化層のサイドエッチングは最大15μmであった。
このように、実施例2で作製したフレキシブル基板のブラインドビアの断面形状はオーバーハング量が小さく、銅めっき性も良好であった。
〔実施例3〕
実施例2と同様の方法で、コンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は119秒であった。
0.20MPa(噴射量0.82L/分)のスリット型スプレーノズルを用い、有効処理面へ噴射される液量分布が、液量比率で10%以内となるようにスプレーノズルをオシレーションさせたこと、及び、水洗圧力を0.18Mpa(噴射量0.82L/分)に、水洗時間を60秒にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bのコンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは最大13μmであった。
このように、実施例3で作製したフレキシブル基板のブラインドビアの断面形状はオーバーハング量が小さく、銅めっき性も良好であった。
〔比較例2〕
実施例2と同様の方法でコンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
水洗処理の圧力を0.05Mpaに、水洗時間を60秒にそれぞれ変更した以外は実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bのコンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、約20%であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、ブラインドビアの底部にスミアが認められ、内層コア基板と外層材との銅めっきが十分接続されていなかった。また、コンフォーマルマスク端部からの樹脂硬化層のサイドエッチングは最大15μmであった。
〔実施例4〕
真空プレス温度を160℃とした以外は実施例1と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は128秒であった。
0.25MPa(噴射量0.82L/分)のスリット型スプレーノズルを用い、有効処理面へ噴射される液量分布が、液量比率で10%以内となるようにスプレーノズルをオシレーションさせ、スプレー噴射時間を25秒に変更したこと、及び、水洗圧力を0.18Mpa(噴射量0.88L/分)に、水洗時間を60秒にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bのコンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは最大10μmであった。
このように、実施例4で作製したフレキシブル基板のブラインドビアの断面形状はオーバーハング量が小さく、銅めっき性も良好であった。
〔実施例5〕
真空プレス温度を180℃とした以外は実施例1と同様の方法で、コンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は134秒であった。
スプレー噴射時間を70秒に変更したこと、及び、水洗圧力を0.18Mpaに、水洗時間を120秒にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bのコンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、75%以上90%未満であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つコンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは最大30μmであった。
このように、実施例5で作製したフレキシブル基板のブラインドビアの断面形状はオーバーハング量が小さく、銅めっき性も良好であった。
〔実施例6〕
サンプルS2のワニスを用い、真空プレス温度を160℃とした以外は、実施例1と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は145秒であった。
0.20MPa(噴射量0.82L/分)のスリット型スプレーノズルを用い、有効処理面へ噴射される液量分布が、液量比率で10%以内となるようにスプレーノズルをオシレーションさせ、スプレー噴射時間を36秒に変更したこと、及び、水洗圧力を0.18Mpa(噴射量0.82L/分)に、水洗時間を60秒にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bのコンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、75%以上90%未満であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは最大7μmであった。
このように、実施例6で作製したフレキシブル基板のブラインドビア断面形状はオーバーハング量が小さく、銅めっき性も良好であった。
〔比較例3〕
サンプル3のワニスを用いた以外は実施例1と同様の方法で、コンフォーマルマスクが形成された積層体Bを作製した。
積層体Bの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は22秒であった。
スプレー噴射時間を11秒から15秒に変更した以外は実施例1と同一の方法及び条件で、積層体Bの、コンフォーマルマスクのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、水酸化ナトリウム水溶液を用いたエッチングにより除去して、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
また、実施例1と同一の方法及び条件で、熱硬化処理及びめっき処理を行って得られたフレキシブル配線板について、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のオーバーハングは最少45μmであり、ブラインドビアのサイドウォールへの銅めっき性は不良であった。
〔実施例7〕
内層コア基板を、以下のようにして作製した。まず、両面フレキシブル配線板としてエスパネックスM(新日鉄化学製、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚20μm)を用意した。この両面フレキシブル配線板に、ドリル加工及び銅めっき処理により直径100μmのブラインドビアを形成した。また、外層材のブラインドビアを形成する所定の位置に直径300μmの銅ランド部と、外層材を積層した後に内層と外層とをブラインドビアを介して無電解銅/電解銅めっき層を形成してデイジーチェーンで接続した回路を形成できるように、100μm幅でランド間を交互に繋いだ銅配線回路(28μm厚)を形成した。
次に、サンプルS1のワニスを、12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で15分乾燥処理をして、40μm厚の未硬化接着性樹脂層を形成して、外層材となる未硬化接着性樹脂付き銅箔を得た。
この未硬化接着性樹脂付き銅箔を、内層コア基板の上下面に重ねて置き、さらに両面から離形用フィルムで挟んだ積層体Cを作製した。
積層装置としてロール・トゥ・ロール法での積層が可能なダイヤフラム型真空ラミネータ(名機製作所製)を用いた。積層方法としては、ダイヤフラムのシリコンラバー表面温度を120℃に設定し、積層体Cを真空ラミネータ内部に搬送した後、2分間ラミネート加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力0.9MPaで2分間加圧し、外層材と内層コア基板とを圧着した。
次に、外層の銅箔上にドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)をロールラミネータにより貼り合せた後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔をエッチング除去し、内層コア基板に形成された銅ランド部の上方に位置するように、コンフォーマルマスクを形成した。コンフォーマルマスクは、直径100μmのエッチング部位をピッチ300μmで複数有すると共に、直径3mmの円孔を有する。これにより、コンフォーマルマスクを有する積層体Dを得た。
積層体Dの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は121秒であった。
また、積層体Dの、コンフォーマルマスクの直径100μmのエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、以下のようにして、エッチング除去して、複数のブラインドビアを形成した。エッチングには、山縣機械製の現像装置YCE−85 IIIを用いた。現像装置では、スリット型スプレーノズルを、積層体Dに対して上下に配置し、有効処理面への噴射される液量分布が液量比率で10%以内となるように、毎分40回揺動のオシレーションを行った。
45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を、上側は0.25MPa(噴射量0.92L/分)、下側は0.25MPa(噴射量0.92L/分)の圧力で25秒間スプレー噴液処理し、次いで0.18MPa(噴射量0.88L/分)のスプレーで60秒間水洗処理した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
次に、硬化乾燥炉を用いて180℃で1時間加熱することにより未硬化接着性樹脂層を硬化させて、樹脂硬化物層を形成した。その後、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、ブラインドビアの壁面や底部にはスミアが観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液等によるデスミア工程は不要であった。
次に、内層コア基板との電気的接続を取るため、ブラインドビアへのめっき処理を行った。まず、ブラインドビアの内壁の樹脂硬化物層に、パラジウム触媒を付着させて活性化処理し、次に、無電解銅めっき浴でエアレーションをさせながら無電解銅めっき層を形成した。その後、電解銅めっきを施して、内層コアの導電層と外層導電層の電気的接続を完了させた。
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様に、外層材に回路形成工程を行った。また、ブラインドビアの周囲には、直径300μmの銅ランド部を形成した。また、内層材側で繋いでいないランド間を幅100μmの配線回路で繋いで内層と外層をデイジーチェーン接続した配線回路を形成した。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。これにより、多層フレキシブル配線板を得た。
得られた多層フレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは上下とも最大15μmであった。また、デスミア処理なしでもブラインドビアの底部にスミアは確認されなかった。
また、得られた多層フレキシブル配線板について、上述の「冷熱サイクル試験」を行った。その結果は、1000サイクルまで抵抗変動率は10%以下であり、層間接続の信頼性の評価は良好であった。
このように、実施例7で作製した多層フレキシブル配線板は、ブラインドビア形成性及び層間接続の信頼性に優れていた。
〔実施例8〕
実施例7と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクを有する積層体Dを作製した。
積層体Dの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は121秒であった。
積層体Dを、スプレー噴射時間を25秒から40秒に変更した以外は、実施例7と同一の条件でエッチング処理し、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
以降の工程も、実施例7と同一の条件で行い、多層フレキシブル配線板を得た。
得られた多層フレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは上下とも最大25μmであった。
また、得られた多層フレキシブル配線板について、上述の「冷熱サイクル試験」を行った。その結果は、880サイクルまで抵抗変動率は10%以下であり、層間接続の信頼性の評価は良好であった。
このように、実施例8で作製した多層フレキシブル配線板は、ブラインドビア形成性及び層間接続の信頼性に優れていた。
〔実施例9〕
実施例7と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクを有する積層体Dを作製した。
積層体Dの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は121秒であった。
積層体Dを、オシレーション機能のないアルカリ剥離装置を用い、また、スプレー噴射時間を25秒から40秒に変更した以外は、実施例7と同一の条件でエッチング処理し、ブラインドビアを形成した。このときの有効処理面への噴射される液量分布は液量比率で50%以上であった。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、70%以上であった。
以降の工程も、実施例7と同一の条件で行い、多層フレキシブル配線板を得た。
得られた多層フレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは上下とも最大25μmであった。
また、得られた多層フレキシブル配線板について、上述の「冷熱サイクル試験」を行った。その結果は、600サイクルまで抵抗変動率は10%以下であり、層間接続の信頼性の評価は良好であった。
このように、実施例9で作製した多層フレキシブル配線板は、ブラインドビア形成性及び層間接続の信頼性に優れていた。
〔実施例10〕
実施例7と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクを有する積層体Dを作製した。
積層体Dの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は121秒であった。
積層体Dを、水洗処理の圧力を0.30MPaに変更した以外は、実施例7と同一の条件でエッチング処理し、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
以降の工程も、実施例7と同一の条件で行い、多層フレキシブル配線板を得た。
得られた多層フレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは上下とも最大20μmであった。
また、得られた多層フレキシブル配線板について、上述の「冷熱サイクル試験」を行った。その結果は、1000サイクルまで抵抗変動率は10%以下であり、層間接続の信頼性の評価は良好であった。
このように、実施例10で作製した多層フレキシブル配線板は、ブラインドビア形成性及び層間接続の信頼性に優れていた。
〔比較例4〕
実施例7と同一の方法及び条件で、コンフォーマルマスクを有する積層体Dを作製した。
積層体Dの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は121秒であった。
積層体Dを、水洗処理を、送液ポンプの能力を上げた高圧洗浄装置を用いて1.2MPaで60秒間行った以外は、実施例7と同一の条件でエッチング処理し、ブラインドビアを形成した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
以降の工程も、実施例7と同一の条件で行い、多層フレキシブル配線板を得た。
得られた多層フレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは上下とも最大35μmであり、ブラインドビアの底部の樹脂が内層コア基板から剥離しており、銅めっきが部分的に断線していることが確認された。
〔実施例11〕
実施例7と同一の方法及び条件で、積層体Cを作製した。この積層体Cの外層の銅箔上にドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578)(旭化成イーマテリアルズ社製)をロールラミネータにより貼り合せた。この後、露光・現像及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、内層コア基板に形成された銅ランド部の上方に位置するように、直径100μmのエッチング部位を複数有すると共に、直径3mmの円孔を有するコンフォーマルマスクを形成した。同時にフレキシブル部となる部位も同じ工程にて銅箔を除去した。これにより、コンフォーマルマスク及びフレキシブル部に対応するエッチング部位を有する積層体Eを得た。
積層体Eの銅箔に形成されたコンフォーマルマスクの、直径3mmの円孔の内部に露出した未硬化接着性樹脂層が完全に除去されるまでのエッチング所要時間を、上述の「エッチング所要時間」で説明した通りに測定した。エッチング所要時間は121秒であった。
また、積層体Eの、コンフォーマルマスクの直径100μmのエッチング部位、及び、フレキシブル部に対応するエッチング部位から露出した未硬化接着性樹脂層を、以下のようにして、エッチング除去して、複数のブラインドビア及びフレキシブル部を形成した。エッチングには、山縣機械製の現像装置YCE−85 IIIを用いた。現像装置では、スリット型スプレーノズルを積層体Eに対して上下に配置し、有効処理面への噴射される液量分布が液量比率で10%以内となるように、毎分40回揺動のオシレーションを行った。
45℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液を、上側は0.2MPa(噴射量0.88L/分)、下側は0.25MPa(噴射量0.92L/分)の圧力で25秒間スプレー噴液処理し、次いで0.18MPa(噴射量0.88L/分)のスプレーで60秒間水洗処理した。
形成されたブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、ブラインドビアの底部側開口部の、コンフォーマルマスクのエッチング部位に対する面積比を求めたところ、90%以上であった。
次に、硬化乾燥炉を用いて180℃で1時間加熱することにより未硬化接着性樹脂層を硬化させて、樹脂硬化物層を形成した。その後、ブラインドビアの断面形状の観察を行ったところ、ブラインドビアの壁面や底部にはスミアが観測されず、ブラインドビア形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液等によるデスミア工程は不要であった。
次に、内層コア基板との電気的接続を取るため、ブラインドビアへのめっき処理を行った。まず、ブラインドビアの内壁の樹脂硬化物層に、パラジウム触媒を付着させて活性化処理し、次に、無電解銅めっき浴でエアレーションをさせながら無電解銅めっき層を形成した。その後、電解銅めっきを施して、内層コアの導電層と外層導電層の電気的接続を完了させた。
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様に、外層材に回路形成工程を行った。また、ブラインドビアの周囲には、直径300μmの銅ランド部を形成した。また、内層材側で繋いでいないランド間を幅100μmの配線回路で繋いで内層と外層をデイジーチェーン接続した配線回路を形成した。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。これにより、多層フレキシブル配線板を得た。
得られた多層フレキシブル配線板のブラインドビアについて、上述の「ブラインドビア形状評価」で説明した通りに、光学顕微鏡で、断面形状の観察を行った。その結果、内層コア基板と外層材とが銅めっき接続されており、且つ、コンフォーマルマスク端部からの樹脂層のサイドエッチングは上下とも最大17μmであった。また、デスミア処理なしでもブラインドビアの底部にスミアは確認されなかった。
また、得られた多層フレキシブル配線板について、上述の「冷熱サイクル試験」を行った。その結果は、1000サイクルまで抵抗変動率は10%以下であり、層間接続の信頼性の評価は良好であった。
このように、実施例11で作製した多層フレキシブル配線板は、ブラインドビア形成性及び層間接続の信頼性に優れていた。
表1及び表2に、実施例1〜11及び比較例1〜4における、ワニス、真空プレス温度、エッチング所要時間(表1及び表2中、「エッチング」と記す)、スプレー噴射時間(表1及び表2中、「噴射」と記す)、噴射時間とエッチング所要時間との比(表1及び表2中、「噴射/エッチング」と記す)、ノズルの種類、オシレーションの有無、液量分布、水洗の圧力及び処理時間、ブラインドビアの開口部及び断面の形状評価、並びに、冷熱サイクル試験の結果を示す。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。