JP6325791B2 - 樹脂組成物、積層体、プリント配線板、及びその製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、積層体、プリント配線板、及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物を用いた積層体、積層体を用いたプリント配線板、及びその製造方法に関する。
近年、電子及び電気機器の薄型及び小型化に伴い、プリント配線板には電子部品などを高密度に実装することが要求されており、絶縁層の両主面上に設けられた導電層を高密度に導通することが必要とされている。プリント配線板の製造工程では、一般にNCドリリング、プラズマエッチング、レーザドリリング、パンチングなどにより絶縁層に形成されたビアホールを介して導電層間が導通されている。しかしながら、これらの加工は、ロール・ツー・ロールによるプリント配線板の連続生産には適していない。
一方、化学的なエッチングによって導電層間にビアホールを形成できれば、ロール・
ツー・ロールによるプリント配線板の連続生産が可能となる。従来の化学的なエッチングを用いたプリント配線板の製造工程においては、導電層上に樹脂組成物溶液を塗工及び乾燥して樹脂組成物層を設け、この樹脂組成物層上に導電層を積層する。そして、この樹脂組成物層上に設けられた導電層の所定の領域を金属エッチング液により除去してから、樹脂層をアルカリ溶液によりエッチング除去してビアホールを形成する。そして、樹脂組成物を加熱してキュアした後、ビアホール内壁にめっきを形成することにより、ビアホールを介して一方の導電層と他方の導電層と電気的に接続する。ここで、アルカリ溶液として水酸化ナトリウム水溶液などを用いた場合、導電層のエッチングレジストとして機能するドライフィルムレジストを剥離する工程と樹脂層をエッチングする工程を同時に効率よく成し遂げることができる(特許文献1参照)。これらに用いられる樹脂組成物には、ビアホール形成時にはアルカリ加工性を有し、キュア後には絶縁保護膜としての機能が要求されるためにアルカリ耐性を有する必要がある。特許文献1においてはフェノール性水酸基を含有するポリイミドとオキサゾリン化合物の組み合わせが紹介されている。また、特許文献2にはフェノール性水酸基を含有するポリイミドとエポキシ化合物の組み合わせが紹介されており、これを用いてもビアホール形成時にはアルカリ加工性を有し、キュア後にはアルカリ耐性を有するという性能を付与することができる。
国際公開第2013/108890号パンフレット 特開2009−147116号公報
特許文献1に記載の樹脂組成物は3質量%の水酸化ナトリウム水溶液などでアルカリスプレーすることで樹脂をエッチングすることができるので、これらの樹脂組成物は30秒程度のアルカリエッチング時間と120秒程度の水洗時間を経て、ビアホールを形成することができ、同時に導体表面を覆っているドライフィルムレジストを剥離除去することができる。
一方、基板作製工程において使用されているドライフィルムレジストの型番の違いにより、ドライフィルムレジストを完全に剥離するために要するアルカリエッチング時間は異なり、特許文献1に記載の樹脂組成物では、ドライフィルムレジストを完全に剥離するよりも速くビアホールが形成されてしまう場合がある。このため、最適なアルカリエッチング時間が、使用する各種型番のドライフィルムレジストを剥離除去するのに十分な時間である樹脂組成物が所望されている。
また、アルカリエッチングでビアホールを形成する場合、アルカリエッチング時間が少ないとビア底に残渣が残り、多すぎるとビアホール側壁の過エッチング量が顕著に増大する。そうなると、ビアホールの接続信頼性が低下してしまう。特許文献1,2に記載の非感光性樹脂組成物においては、ビアホールの品質面で許容できるアルカリエッチング時間の下限時間と上限時間の差(アルカリエッチング時間のマージン)の点で、さらなる課題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、アルカリエッチング時間が一般的なドライフィルムレジスト剥離時間に適合し、かつ、アルカリエッチング時間のマージンが広い樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、樹脂組成物層を備えた積層体及びこの樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物を備えたプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明に係る樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと(B)オキサゾリン化合物を含み、ガラス転移温度が60℃以上110℃以下であり、前記(A)ポリイミドに含まれるフェノール性水酸基が下記一般式(2)の構造であり、前記(A)ポリイミドを48質量%以上58質量%以下含有し、前記(B)オキサゾリン化合物を2質量%以上10質量%以下含有することを特徴とする。
Figure 0006325791
(一般式(1)中、Rは、二価の有機基を表す。)
Figure 0006325791
(一般式(2)中、Xは、単結合又は−C(−CF −を表し、kは、1から4の整数を表す。)
本発明に係る樹脂組成物は、前記(A)ポリイミドを構成する全酸二無水物のうち、前記一般式(1)で表される構造を有する酸二無水物を50mol%以上100mol%以下含有することが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物は、前記(A)ポリイミドに下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表される構造を含有することが好ましい。
Figure 0006325791
(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1から炭素数5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示す。mは2以上の整数であり、mの繰り返し単位ごとにR、Rは互いに異なってもよい。)
Figure 0006325791
(一般式(4)中、Qは、炭素数1から炭素数18のアルキレン基を示し、nは2以上の整数であり、nの繰り返し単位ごとにQは互いに異なってもよい。)
本発明に係る樹脂組成物は、前記(A)ポリイミド中の前記一般式(4)中のQが直鎖状テトラメチレン基である構造を含むことが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物溶液は、上記樹脂組成物を、有機溶媒に溶かしてなることを特徴とする。
本発明に係る積層体は、基材と、前記基材上に設けられた上記樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、を具備することを特徴とする。
本発明に係る積層体は、前記基材が、導体であることが好ましい。
本発明に係る積層体は、前記基材が、銅箔であることが好ましい。
本発明に係る多層プリント配線板は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように設けられた上記樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物からなる樹脂硬化物層とを具備することを特徴とする。
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように設けられた樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物からなる樹脂硬化物層とを具備する多層プリント配線板の製造方法であって、前記樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと(B)オキサゾリン化合物を含み、ガラス転移温度が110℃以下であり、前記基材が有する前記配線を覆うようにして前記樹脂組成物からなる前記樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層の表面上に導電層を形成する工程と、前記導電層の上にレジストマスクを形成する工程と、前記レジストマスクを用いて前記導電層の一部をエッチングにより除去してコンフォーマルマスクを形成する工程と、前記コンフォーマルマスクを介して前記樹脂組成物層の一部をアルカリ溶液により除去してビアホールを形成すると共に、前記レジストマスクを除去する工程と、前記樹脂組成物層を熱硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
Figure 0006325791
(一般式(1)中、Rは、二価の有機基を表す。)
本発明によれば、ビアホール形成のための樹脂のアルカリエッチング時間が一般的なドライフィルムレジストの剥離時間に適合し、アルカリエッチング時間のマージンが広い樹脂組成物層が得られる。
本実施の形態に係る両面フレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。 本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。 本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法におけるビアホール形成の各工程を示す断面概略図である。 実施例における過エッチング量の評価方法を説明するための説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと(B)オキサゾリン化合物を含み、ガラス転移温度が110℃以下であることを特徴とする。
Figure 0006325791
(一般式(1)中、Rは二価の有機基を表す。)
上述のような構成により、本実施の形態に係る樹脂組成物は、多層プリント配線板の層間絶縁層の材料として好適な性能を発揮する。
例えば、多層プリント配線板の製造においては、まず、配線を有する基材の配線を覆うようにして、樹脂組成物からなる樹脂組成物層を形成する。次に、樹脂組成物層の表面上に導電層を形成する。導電層の上にアルカリ可溶性のドライフィルムレジストからなるレジストマスクを形成する。レジストマスクを用いて導電層の一部をエッチングにより除去してコンフォーマルマスクを形成する。コンフォーマルマスクを介して樹脂組成物層の一部をアルカリ溶液により除去してビアホールを形成すると共に、レジストマスクを除去する(この工程をアルカリエッチングという)。次に、樹脂組成物層を熱硬化させて樹脂硬化物層を形成する。
上述のような多層プリント配線板の製造において、本実施の形態に係る樹脂組成物を用いた場合、樹脂組成物は、(A)ポリイミドと、(B)オキサゾリン化合物を含有しているため、一般式(1)で表される構造により樹脂組成物に適度な疎水性が付与され、単位時間あたりのエッチング量が減少する。このため、アルカリエッチング時間を制御できるので、アルカリ溶液を用いたビアホール形成及びドライフィルムレジストの剥離を同時に行うときに、樹脂組成物層を溶解除去するのに必要な最小時間(以下、最小アルカリエッチング時間という)が、ドライフィルムレジストの剥離に必要な時間(以下、DF剥離時間)に適合する。最小アルカリエッチング時間とDF剥離時間が等しい、又は等しい状態に近づくことを、「適合する」という。最小アルカリエッチング時間とDF剥離時間が等しい状態が理想的である。
DF剥離時間は、ドライフィルムレジストのリフティングポイントに安全係数を乗じることで算出される。リフティングポイントとは、ドライフィルムレジストをアルカリ溶液に浸漬した際に、ドライフィルムレジストが剥がれ始める時間のことをいう。また、一般的な安全係数は、1.5〜3である。
また、樹脂組成物は、(A)ポリイミドが一般式(1)で表される構造を含み、ガラス転移温度(以下、Tgとも記す)が110℃以下であり、且つ、オキサゾリン化合物を含有している。このため、熱硬化処理により樹脂硬化物層を形成するときに、熱硬化の初期段階で、80℃〜150℃のような低温領域に樹脂がさらされた際に、処理温度がTgを超えているにもかかわらず、(A)ポリイミドのフェノール性水酸基と(B)オキサゾリン化合物中のオキサゾリン基との架橋反応が緩やかに進行するため、ある程度の時間、樹脂組成物層の流動性が高くなる。このため、アルカリエッチングで過エッチングが発生したとしても欠損した箇所に樹脂組成物層が十分に流入し、最終的な過エッチング量を低減することができる。この結果、樹脂組成物層のアルカリエッチング処理時間のマージンが広くなる。
上記観点から、樹脂組成物のTgは100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。また、樹脂組成物のTgの下限は特に制限はないが、室温でのべたつきを防止し、作業性を向上させる観点から、樹脂組成物のTgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
レジストマスクにはドライフィルムレジストの他、液状レジストを用いても良い。ただし、本実施の形態に係る樹脂組成物からなる樹脂組成物をアルカリエッチングするのと同時に剥離するため、液状レジストはアルカリ可溶性である必要がある。以下、ドライフィルムレジストを例に挙げて説明するが、液状レジストを用いた場合も、同様である。
<多層プリント配線板の製造方法>
本実施の形態に係る多層プリント配線板の製造方法について、添付図面を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して両面フレキシブル配線板10の製造方法について説明する。図1は、本実施の形態に係る両面フレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。この両面フレキシブル配線板10の製造方法においては、積層体11を用いる(図1A参照)。この積層体11は、導電層12a(例えば、銅箔F2−WS(12μm))と、この導電層12a上に設けられ、本実施の形態に係る、上述のアルカリ可溶性樹脂を含有する樹脂組成物を含む樹脂組成物層14(例えば、厚さ12.5μm)と、を備える。
積層体11は、導電層12a上に有機溶媒に溶解させた本実施の形態に係る樹脂組成物を塗布してから、95℃にて12分間加熱して樹脂組成物層14に含まれる有機溶媒を乾燥して除去することにより製造される。
次に、積層体11の樹脂組成物層14に導電層12bを、例えば、100℃にて1分間、4MPaの条件で真空プレスするなどの方法により、積層体13を得る(図1B参照)。次に、積層体13の導電層12a,12b上にドライフィルムレジストからなる感光性のレジストマスクを形成する。レジストマスクを露光及び現像し、レジストマスクを用いて導電層12a,12bの一部をエッチングにより除去して、コンフォーマルマスクを形成する。次に、コンフォーマルマスクを介して導電層12a,12bのエッチング部位に露出した樹脂組成物層14を50℃の3質量%の水酸化ナトリウム水溶液などによりエッチング除去してスルーホール15を形成すると同時に、レジストマスクを剥離した後、5%塩酸などで酸洗浄する(図1C参照)。
次に、硬化乾燥炉を用いて、例えば、180℃にて1時間加熱することにより、樹脂組成物層14を熱硬化(以下、キュアともいう)して樹脂硬化物層16とする。
次に、スルーホール15の内壁に、カーボンブラックを付着させた後で電解メッキを施すなどの方法により、導電層12a,12b間を電気的に接続する。次に、サブトラクティブ法などにより導電層12a,12bをパターニングして回路形成を行うことにより、両面フレキシブル配線板10を製造する(図1D参照)。
次に、図2を参照して多層フレキシブル配線板1の製造方法について説明する。図2は、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法の各工程を示す断面概略図である。この多層フレキシブル配線板1の製造方法においては、図1に示した製造方法により得られた両面フレキシブル配線板10を使用する(図2A参照)。なお、ここでは、市販の両面銅張積層板(エスパネックス(登録商標)M:絶縁層の厚さ25μm、新日鉄化学社製)を用いてもよい。この両面フレキシブル配線板10は、樹脂硬化物層16と、樹脂硬化物層16の両主面上に設けられた一対の導電層(銅箔)12a,12bとを備える。
まず、導電層12a,12b上に外層基板21a,21bを積層する(図2B参照)。この外層基板21a,21bは、導電層22a,22b(銅箔:F2−WS(18μm)、古河サーキットフォイル社製)と、導電層22a,22b上に本実施の形態に係る樹脂組成物及び有機溶媒を含む樹脂組成物溶液を塗布し、有機溶媒を除去して設けられた樹脂組成物層23a,23bとを備える。
外層基板21a,21bは、例えば、100℃にて1分間、4MPaの条件で真空プレスするなどの方法により、両面フレキシブル配線板10上に積層される。これにより、両面フレキシブル配線板10の導電層12a,12b上に、それぞれ樹脂組成物層23a,23bが設けられると共に、これらの樹脂組成物層23a,23b上に導電層22a,22bが順次積層される(図2C参照)。
この積層工程では、樹脂組成物層23a,23bの熱硬化が進まない程度の条件(例えば、100℃で2分程度)で加熱し、樹脂組成物層23a,23bを溶融させて、導電層22a,22bの回路パターン間に埋め込み、圧着する。また、両面フレキシブル配線板10に形成されたスルーホール15内の空孔は、あらかじめ電解めっき、導電性ペースト、穴埋め用絶縁樹脂で完全に塞いでもよいが、積層時に樹脂組成物層23a,23bで充填することもできる。
次に、導電層22a,22b上に、ドライフィルムレジストからなる感光性のレジストマスク(不図示)を形成する。レジストマスクを露光及び現像し、レジストマスクを用いて導電層22a,22bの一部をエッチングにより除去して、コンフォーマルマスクを形成する。次に、コンフォーマルマスクを介して導電層22a,22bのエッチング部位に露出した樹脂組成物層23a,23bを50℃、3質量%の水酸化ナトリウム水溶液などによりエッチングしてビアホール24を形成すると同時に、レジスト層を剥離し、5%塩酸などで酸洗浄する(図2D参照)。
次に、硬化乾燥炉を用いて、例えば、180℃にて1時間加熱することにより、樹脂組成物層23a,23bを熱硬化して樹脂硬化物層31a,31bとし、外層基板26a,26bを得る。
次に、ビアホール24の内壁の樹脂硬化物層31a,31bにめっきなどを施して、導電層12aと導電層22aとの間、及び、導電層12bと導電層22bとの間を電気的に接続する。
次に、サブトラクティブ法などにより導電層22a,22bをパターニングして回路形成を行う(図2E参照)。次に、カバーコート25の形成などの表面処理を行い、多層フレキシブル配線板1を製造する(図2F参照)。
また、本実施の形態に係る樹脂組成物は、フレキシブル配線板の表面保護膜として用いることができ、良好な絶縁特性が得られる。本実施の形態に係る表面保護膜は、上述した両面フレキシブル配線板10の導電層12a,12bや多層フレキシブル配線板1の導電層22a,22b上に上記樹脂組成物の溶液を塗工及び乾燥して設けた樹脂組成物層14,23a,23bを熱硬化することにより得られる。また、この表面保護膜においては、熱硬化の前にアルカリ溶液で処理することにより、不要な表面保護膜を除去することもできる。
本実施の形態に係る樹脂組成物を表面保護膜に用いる場合、表面保護膜の膜厚が1μm〜50μmであることが好ましい。膜厚を1μm以上とすることにより取り扱いが容易となり、50μm以下とすることにより折り曲げやすく組み込みが容易となるためである。
本実施の形態に係る樹脂組成物によれば、アルカリ可溶性樹脂を含んでいるので、例えば、フレキシブルプリント配線板の製造工程における配線加工のドライフィルムの剥離のために汎用的に使用される水酸化ナトリウム水溶液を用いて、ブラインドビア又はスルーホール15などのビアホール加工が可能である。
しかしながら、本実施の形態に係る樹脂組成物を用いた多層プリント配線板の製造方法においては、アルカリでビアホールを加工することが可能であるが、必ずしもこれに限定されず、従来技術であるドリル、レーザでの加工も可能である。
なお、以下の本実施の形態の説明において、単に「ビアホール」という場合には、貫通ビアホール、即ちスルーホール、及び、非貫通ビアホールが包含される。非貫通ビアホールには、外層から内層への接続に用いられるビアホールであるブラインドビアと、内層同士の接続に用いられるビアホールであるベリードビアとが包含される。
<樹脂組成物>
次に本実施の形態に係る樹脂組成物について、詳細を説明する。本実施の形態に係る樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと(B)オキサゾリン化合物を含み、ガラス転移温度(Tg)が110℃以下であることを特徴とする。ここでいうTgは熱・応力・歪測定装置(TMA法)で測定した値を示す。
(A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミド
フェノール性水酸基と下記一般式(1)を構造中に有していれば特に制限はないが、フェノール性水酸基としては、有機溶媒への溶解性、重合時の反応性、入手性などの観点から、下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 0006325791
(一般式(1)中、Rは、二価の有機基を表す。)
Figure 0006325791
(一般式(2)中、Xは、単結合、−C(−CF−を表し、kは1から4の整数を表す。)
また、前記(A)のポリイミドを構成する全酸二無水物のうち、前記一般式(1)で表される構造を有する酸二無水物を50mol%以上100mol%以下含有することが好ましい。50mol%以上含有することで、樹脂組成物に適度な疎水性を付与することができることと、アルカリエッチング時に過エッチング量が多くなってしまっても、後の熱硬化時に樹脂フローが起こるのでビアホールの過エッチング量を低減することができ、アルカリエッチング時間のマージンが広がるという観点で好ましく、その観点でより好ましくは70mol%以上100mol%以下である。
一般式(1)で表される構造を有する酸二無水物は、エーテル鎖含有酸二無水物であることにより親水性が高まり、また芳香族への置換位置がパラ位であることにより疎水性が高まる。親水性と疎水性の因子により、樹脂組成物に適度な疎水性が付与されると推察される。
樹脂組成物中から前記(A)のポリイミド中に含有する前記一般式(1)で表される構造を有する酸二無水物の量は、樹脂組成物をアセトンやエタノールなどの有機溶媒中に溶解し、不溶成分である前記(A)のポリイミドを再沈により分別し、これを熱分解GC/MSで解析することにより、特定することができる。また、熱硬化後の樹脂硬化物においては、前記と同様の再沈処理で(A)ポリイミドと(B)オキサゾリン化合物の架橋体を分別した後、これを前記と同様に熱分解GC/MSで解析することにより、特定することができる。
さらに、(A)のポリイミドには、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表される構造を含有することが、樹脂組成物のTgを容易に110℃以下まで低減できる点、及びそれに付随して屈曲性、ビアホールへの樹脂埋め込み性が良好になる点で好ましい。
Figure 0006325791
(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜炭素数5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示す。mは2以上の整数であり、mの繰り返し単位ごとにR、Rは互いに異なってもよい。)
Figure 0006325791
(一般式(4)中、Qは、炭素数1〜炭素数18のアルキレン基を示し、nは2以上の整数であり、nの繰り返し単位ごとにQは互いに異なってもよい。)
一般式(3)及び/又は一般式(4)で表される骨格は酸二無水物由来のものでもジアミン由来のものでも制約はないが、一般式(3)及び/又は一般式(4)の構造を含む酸二無水物及び/又はジアミンの総含有量としては、全ポリイミドに対して、0〜55質量%であることが好ましく、35〜48質量%であることがより好ましい。一般式(3)及び/又は一般式(4)の構造を含む酸二無水物及び/又はジアミンの含有量が55質量%以下であれば、樹脂組成物のアルカリ加工性、及び樹脂硬化物のはんだ耐性に優れる。
ポリマー中における一般式(3)及び/又は一般式(4)の含有量は、例えば熱分解GC/MSを用いて測定することができるが、ここでは次のように定義する。まず、一般式(3)又は一般式(4)を含む原料(例えばシリコーンジアミンやポリアルキルエーテルジアミン)中における一般式(3)又は一般式(4)の構造の質量含有率(p3)又は(p4)を求める。次に、各原料の仕込み量の総計から、重合によって発生する副生成物(イミド化によって発生する水)の理論質量を引いた値をポリマーの総量(W)とする。一般式(3)を含む原料の仕込み量をw3とし、一般式(4)を含む原料の仕込み量をw4とすると、一般式(3)及び/又は一般式(4)の含有質量%は((w3×p3)+(w4×p4))/Wの式で表される。
また、前記一般式(4)のアルキレン基が直鎖状テトラメチレン基の骨格を含むことが、ポリイミドの溶媒可溶性、樹脂組成物のTgを低減できる点、及び熱硬化時の樹脂フローを促進してビアホールの過エッチング量を低減することができ、樹脂のアルカリエッチング時間のマージンを大幅に広げることが可能である点でさらに好ましい。
ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。
テトラカルボン酸二無水物としては、一般式(1)の構造を有する2,2−ビス((4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物が本実施の形態には必須の成分であるが、これは単独で用いてもよく、他の酸二無水物と組み合わせて用いてもよい。
組み合わせて用いることができるテトラカルボン酸二無水物としては、従来公知のものを例示することができ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)、ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物などが挙げられる。
また、上記一般式(3)で表されるポリジメチルシロキサン含有酸二無水物や上記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレン骨格含有酸二無水物を使用しても良い。
フェノール性水酸基を含有するジアミンとしては、上記一般式(2)で表される3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール、4,3’−ジアミノビフェニル−3,4’−ジオール、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’,5,5’−テトラオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’,5,5’−テトラオール、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−2,4−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのジアミンの中でも、ポリイミドの溶解性、絶縁信頼性や重合速度や入手性の観点から、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
また、一般式(3)の構造を有するジアミンを組み合わせて用いることができ、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサンなどのシリコーンジアミンなどが例示でき、市販品では信越化学工業社製のPAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−1660B−3などが挙げられる。
また、一般式(4)の構造を有するジアミンを組み合わせて用いることができ、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシテトラメチレンジアミン、その他炭素鎖数の異なるオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレンジアミン(ポリアルキルエーテルジアミン)などを使用することができる。市販品としては、米ハンツマン社製のジェファーミンED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、HK−511などのポリオキシエチレンジアミンや、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、独BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000などのポリオキシプロピレンジアミンや、ジェファーミンXTJ−542、XTJ−533、XTJ−536などのポリオキシテトラメチレン基をもつものなどが使用例として挙げられ、ポリイミドの溶媒可溶性、組成物のTg低減効果、及び熱硬化時の樹脂フローを促進してビアホールの過エッチング量を低減することができ、アルカリエッチング時間のマージンを大幅に広げることが可能である点で、ポリオキシテトラメチレン基を含むジェファーミンXTJ−542、XTJ−533、XTJ−536の使用がより好ましい。
さらに、ジアミンとしては、本実施の形態の効果を奏する範囲内で、従来公知の他のジアミンを用いることもできる。他のジアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタンなどのジアミンなどが挙げられる。
上記一般式(2)で表されるジアミンの含有量としては、ポリイミドのフェノール性水酸基価の理論値が、30〜100mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。フェノール性水酸基価の理論値が30〜100mgKOH/gの範囲内にあることで、樹脂組成物に適度なアルカリ加工性と疎水性を付与することができ、アルカリエッチングの最適時間を一般的なDF剥離時間に適合させることができ、この観点で、より好ましくは40〜80mgKOH/gの範囲内である。
次に、ポリイミドの製造方法について述べる。本実施の形態に係るポリイミドの製造方法は、公知方法を含め、ポリイミドを製造可能な方法が全て適用できる。中でも、有機溶媒中で反応を行うことが好ましい。このような反応において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸エチル、安息香酸ブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この反応における反応原料の濃度としては、通常、2質量%〜80質量%、好ましくは20質量%〜50質量%である。
反応させるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの総モル比としては、0.8〜1.2の範囲内である。この範囲内の場合、分子量を上げることができ、伸度などにも優れる。モル比としては、0.9〜1.1であることが好ましく、0.92〜1.07であることがより好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、5000以上100000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は10000以上60000以下がより好ましく、15000以上50000以下が最も好ましい。重量平均分子量が5000以上100000以下であると樹脂組成物を用いて得られる保護膜の強伸度が改善され、機械物性に優れる。さらに塗工時に所望する膜厚にて滲み無く塗工できる。
ポリイミドは、以下のような方法で得られる。まず反応原料を室温から80℃で重縮合反応することにより、ポリアミド酸構造からなるポリイミド前駆体が製造される。次に、このポリイミド前駆体を100℃〜400℃に加熱してイミド化するか、又は無水酢酸などのイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。加熱してイミド化する場合、副生する水を除去するために、共沸剤(例えば、トルエンやキシレン)を共存させて、ディーンシュターク型脱水装置を用いて、還流下、脱水を行うことも好ましい。
また、80℃〜220℃で反応を行うことにより、ポリイミド前駆体の生成と熱イミド化反応を共に進行させて、ポリイミドを得ることもできる。即ち、ジアミン成分と酸二無水物成分とを有機溶媒中に懸濁又は溶解させ、80℃〜220℃の加熱下に反応を行い、ポリイミド前駆体の生成と脱水イミド化とを共に行わせることにより、ポリイミドを得ることも好ましい。
また、本実施の形態のポリイミドとしては、さらにモノアミン誘導体又はカルボン酸誘導体からなる末端封止剤で末端封止されていることが樹脂組成物の貯蔵安定性の観点で好ましい。
モノアミン誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセンなどの芳香族モノアミンが挙げられる。これらの中でも、アニリンの誘導体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、主に無水カルボン酸誘導体が挙げられる。無水カルボン酸誘導体としては、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中でも、無水フタル酸を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
得られたポリイミド溶液は、脱溶媒することなく、そのまま用いてもよく、さらに必要な溶媒、添加剤などを配合して本実施の形態に係る樹脂組成物溶液として用いてもよい。
また、本実施の形態に係るポリイミドは、一般式(1)の構造とフェノール性水酸基を含有していれば、他の樹脂で変性したものであっても構わない。具体的にはフェノール樹脂変性ポリイミド、ノボラック樹脂変性ポリイミド、ポリビニルフェノール変性ポリイミド、フェノール性水酸基を含有するポリウレタン変性ポリイミド、フェノール性水酸基を有するポリウレア変性ポリイミドなどが挙げられる。
(B)オキサゾリン化合物
(B)オキサゾリン化合物とは、分子内に少なくとも1個のオキサゾリン基を有する化合物である。オキサゾリン化合物としては、ポリイミドの水酸基を封止し、更にポリイミドとの間に架橋を形成する観点から、分子内に2個以上のオキサゾリン基を有するものが好ましい。
オキサゾリン化合物としては、例えば、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(以下、PBOとも略称する)、日本触媒社製のK−2010E、K−2020E、K−2030E、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,6−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャルブチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。また、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリンなどの重合性単量体の共重合体を挙げることができる。これらのオキサゾリン化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(B)オキサゾリン化合物は、樹脂組成物中に3質量%含有することが好ましい。3質量%含有することで、可塑剤としての機能により、樹脂組成物の熱硬化時の樹脂フローを促進してビアホールの過エッチング量を低減することができ、樹脂のアルカリエッチング時間のマージンを顕著に広げることができる。この観点から、(B)オキサゾリン化合物の含有量は、5質量%以上であることがより好ましい。
また、(B)オキサゾリン化合物の含有量は、25質量%以下であることがさらに好ましい。25質量%以下であることで、後の熱硬化工程を経て、樹脂硬化物となった際に、残存する(B)オキサゾリン化合物に由来する低分子量体の含有量を抑制することができるため、絶縁信頼性が向上する。
(A)ポリイミドのフェノール性水酸基と(B)オキサゾリン化合物は、低温領域においての反応が抑制され、また高温領域では顕著に反応し、適度な3次元架橋構造を形成し、架橋反応時に副生される低分子量体も存在しないため、熱硬化初期の低温領域において、樹脂の流動性を付与するのに好適である。なお、本実施の形態に係る樹脂組成物は最終的に熱硬化して、アルカリ耐性や絶縁信頼性を有する絶縁膜としての性能が要求される。その観点で、樹脂組成物中のフェノール性水酸基の数量とオキサゾリン基の数量との比は、水酸基/オキサゾリン基=4.0〜0.5の範囲であることが好ましく、3.0〜0.7の範囲であることがより好ましい。水酸基/オキサゾリン基=4以下であることにより、熱硬化後の樹脂組成物のアルカリ耐性が向上し、水酸基数量/オキサゾリン基数量=0.5以上であることで、熱硬化後の樹脂組成物の柔軟性、耐熱性が向上する。
(C)難燃剤
また、本実施の形態に係る樹脂組成物においては、難燃性を向上する観点から、難燃剤を含有させて用いることもできる。難燃剤の種類としては、特に制限はないが、含ハロゲン化合物、含リン化合物及び無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
難燃剤の添加量としては、特に制限はなく、用いる難燃剤の種類に応じて適宜変更可能である。難燃剤の添加量としては、一般的に樹脂組成物中のポリイミドを基準として、5質量%から50質量%の範囲で用いられることが好ましい。
含ハロゲン化合物としては、塩素原子や臭素原子を含む有機化合物などが挙げられる。含ハロゲン化合物難燃剤としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンテトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。
含リン化合物としては、ホスファゼン、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル、及び亜リン酸エステルなどが挙げられる。特に、樹脂組成物との相溶性の観点から、ホスファゼン、ホスファイオキサイド、又はリン酸エステルが好ましく用いられる。ホスファゼンとしては、例えば、シアノ基やヒドロキシル基などを有する置換ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼンなどを用いることができる。
なお、含リン系の難燃剤の添加量は40質量%以下であることが望ましい。40質量%以下であることで、熱硬化後の未反応成分に起因するブリードアウトを抑制することができ、導体との高い密着性が得られる。
無機難燃剤としては、アンチモン化合物や金属水酸化物などが挙げられる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンが挙げられる。アンチモン化合物と上記含ハロゲン化合物とを併用することにより、プラスチックの熱分解温度域で、酸化アンチモンが難燃剤からハロゲン原子を引き抜いてハロゲン化アンチモンを生成するため、相乗的に難燃性を上げることができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
無機難燃剤は、有機溶媒に溶解しない。このため、無機難燃剤としては、その粉末の粒径が100μm以下であることが好ましい。粉末の粒径が100μm以下であれば、樹脂組成物に混入しやすく、硬化後の樹脂の透明性を損ねることなく好ましい。さらに、難燃性を向上する観点から、粉末の粒径としては、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
塗工膜にする時、その塗工方式に応じて粘度及びチクソトロピーの調整を行う。必要に応じて、フィラーやチクソトロピー性付与剤を添加して用いることも可能である。また、公知の消泡剤やレベリング剤や顔料などの添加剤を加えることも可能である。
(D)可塑剤
本実施の形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物のTgを110℃以下にまで低減する目的で(D)可塑剤を含有させて用いることができる。可塑剤としては例えば、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジフェニルフタレート、ジアリルフタレート、オクチルカプリールフタレートなどのフタル酸エステル類;トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、ジメチルグリコースフタレート、エチルフタリールエチルグリコレート、メチルフタリールエチルグリコレート、ブチルフタリールブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカブリル酸エステルなどのグリコールエステル類;トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−n−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−n−ブチルアセトアミドなどのアミド類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセパケート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレートなどの脂肪族二塩基酸エステル類;クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル、4,5−ジエポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチルなど、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類が挙げられる。
前記可塑剤は、組み合わせて前記樹脂組成物のTgが110℃以下になる量添加すれば良いが、樹脂組成物全成分に対し、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。樹脂と可塑剤の相溶性は構造ごとに異なるが、可塑剤の含有量を50質量%以下にすることで、熱硬化後の未反応成分に起因するブリードアウトを抑制することができ、導体との高い密着性が得られる。
また、難燃剤として前述したリン酸エステル、ホスファゼンなどに関しては、可塑剤としての効果も有しているので、難燃剤兼可塑剤として好適に用いることができる。
(E)その他添加剤
本実施の形態に係る樹脂組成物においては、樹脂組成物の酸化を防ぐ観点から、酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤としては、例えば、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)](商品名:イルガノックス(登録商標)245(IRGANOX245)、BASF社製)などを用いることができる。
また、本実施の形態に係る樹脂組成物においては、樹脂組成物を含む樹脂組成物層14,23a,23bと導電層12a,12b,22a,22bとの間の密着性を向上する観点から、密着材を含有させて用いることもできる。密着材としては特に限定されないが、フェノール化合物、含窒素有機化合物、アセチルアセトン金属錯体などを挙げることができる。これらの中でも、フェノール化合物が好ましい。
<樹脂組成物溶液>
本実施の形態に係る樹脂組成物は、有機溶媒に溶解して、樹脂組成物溶液として使用することができる。
このような有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどのアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン溶媒、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホキシドなどの含硫黄系溶媒、クレゾール、フェノールなどのフェノール系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライム、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
さらに、本実施の形態に係る樹脂組成物溶液は、PETなどの樹脂フィルム上や導体(導電層)上に塗布して乾燥することにより、多層フレキシブル配線板などの層間絶縁膜や、基板材料として好適に用いることができる。また、本実施の形態に係る樹脂組成物溶液は、基材上に形成された配線パターンを覆うように直接塗布することにより、配線板の配線パターンの保護膜として好適に用いることができる。
<積層体>
本実施の形態に係る積層体11は樹脂組成物溶液を塗布後加熱することによって得ることができる。加熱の態様については特に制限されないが、溶媒、残存モノマーなどの揮発成分を十分に除去し、アルカリ水溶液に可溶とする観点から、50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱することが好ましく、真空乾燥法などで実施しても良い。
本実施の形態に係る樹脂組成物は、50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱した後もアルカリ水溶液に可溶である。このため、フレキシブルプリント配線板の製造で用いられるレーザドリリング加工などを不要とし、アルカリ水溶液でビアホール加工、スルーホール加工する際の層間絶縁材料として好適に使用できる。
また、本実施の形態に係る積層体11においては、樹脂組成物層14の厚さが5μm〜50μmであることが好ましい。樹脂組成物層14の厚さが5μm以上であれば、取り扱いが容易となり、樹脂組成物層14の厚さが50μm以下であれば、フレキシブルプリント配線板に用いた場合に折り曲げや組み込みが容易となる。
また、上記積層体13は配線板の製造に用いることができる。すなわち、上記積層体13を用いた配線板の製造方法は、上記のようにして製造された積層体13の導電層12a,12bをパターニングする工程と、パターニングした導電層12a,12bをマスクとして樹脂組成物層14をパターニングする工程と、パターニングした樹脂組成物層14を熱硬化する工程と、導電層12a,12bをパターニングする工程とを含む。また、樹脂組成物層14を熱硬化する工程においては、150℃〜220℃で10分〜100分間加熱することが好ましい。
<多層プリント配線板>
先述の通り、図1及び図2を参照して、多層フレキシブル配線板1を例に挙げて説明したが、本実施の形態に係る樹脂組成物は、多層フレキシブル配線板用途に限定されず、多層プリント配線板全般に適用することができる。
図3は、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法におけるビアホール形成の各工程を示す断面概略図である。図3Aに示すように、両面フレキシブル配線板10の導電層12aの表面上には、樹脂組成物層23aが設けられており、樹脂組成物層23aの表面上には、導電層22aが設けられている。このような導電層12a/樹脂組成物層23a/導電層22aで構成される積層体に対して、図3Bに示すように、導電層22aの表面上にドライフィルムを用いたレジストマスク101を形成する。次に、レジストマスク101に形成された開口部101aに露出する導電層22aをエッチング除去してコンフォーマルマスクを形成する。
次いで、コンフォーマルマスクの開口部22a―1に露出する樹脂組成物層23aを、アルカリ溶液を用いたエッチングにより除去し、図3Cに示すように、ビアホール(ブラインドビア)24を形成する。アルカリ溶液を用いたエッチングは、例えば、水酸化ナトリウム溶液をスプレー噴射し、次いで、スプレーを用いて水洗することにより、又は5%塩酸などで酸洗浄することにより、行うことができる。また、このエッチングの際にレジストマスク101は剥離される。
次いで、図3Dに示すように、ビアホール24の側壁面を形成する樹脂組成物層23aと、ビアホール24に露出する導電層12aの表面を含む導電層22aの表面上に無電解銅めっき処理を施して、銅めっき層102を形成し、導電層12aと導電層22aとの間の電気的導通を得る。
即ち、本実施の形態に係る多層プリント配線板は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように設けられた上述の樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物層と、を具備する。この多層プリント配線板を構成する樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物は、(A)ポリイミド中のフェノール性水酸基と(B)オキサゾリン化合物中のオキサゾリン基が反応して形成された下記一般式(5)の構造を含んでいる。
Figure 0006325791
(一般式(5)中、Rは(B)のオキサゾリン化合物に由来する二価の有機基を表し、Rは(A)のポリイミドに含有するフェノール性水酸基に由来する二価のフェニル基、及びフェニル誘導体を表す。)
この多層プリント配線板を構成する樹脂硬化物中に一般式(5)の構造を含有するかはNMR測定で判別することができ、一般式(5)の構造の含有量は熱分解GC/MSを用いて測定することができる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(ポリイミドの重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記の条件により測定した。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
(積層体の作製)
樹脂組成物溶液を、12μm厚の電解銅箔(F2−WS)(古河電工社製)のマット面にバーコータを用いて塗布し、室温で5分間〜10分間レベリングを行った。この樹脂組成物溶液塗布銅箔を、95℃の熱風オーブンにて15分間加熱し、更に真空乾燥器(DRR420DA、ADVANTEC社製)、及び、ベルト駆動型油回転真空ポンプ(TSW−150、佐藤真空社製)を用い、90℃にて30分間真空乾燥(約6.7×10−2Paの減圧下)して25μmの厚みの樹脂組成物層が銅箔上に積層された積層体を得た。この積層体をアルカリ加工性の評価用の試料とした。
(ガラス転移温度(Tg))
前記積層体の銅箔全面を塩化第二鉄水溶液でエッチング除去して、水洗し、50℃で5時間乾燥して得られた樹脂組成物の自立膜をあらかじめ準備した。この試料を熱・応力・歪測定装置(TMA試験機(EXSTAR6000、セイコーインスツルメント社製))にセットし、加重1.25mN/μm、窒素下、10℃/minの昇温速度で測定し、室温から200℃まで昇温させた。測定して得られたTMA曲線の熱変形量の変曲点を読み取り、これをTg(単位℃)とした。
(最小アルカリエッチング時間評価方法)
3%塩酸水溶液で酸洗浄した両面フレキシブル基板(エスパネックス(登録商標)M、新日鉄化学社製)の一方の導電層上に先述の積層体の樹脂組成物層を真空プレス機(北川精機社製)にて、1.0MPaで2分間加圧して積層した。この際、プレス機の温度設定は先述のTgよりも30℃高い温度とした。次に、積層体の導電層上にドライフィルムレジスト(サンフォート(登録商標)AQ2578、旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートし、マスクによる露光、さらに現像により150μmφの円孔パターンを形成した後、塩化第二鉄水溶液で円孔形成部の導電層をエッチング除去した。
その後、50℃に加温した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を樹脂組成物層に圧力0.18MPaで所定の時間スプレーにより樹脂をエッチングし、その後、20℃のイオン交換水で30秒、20℃、5質量%の塩酸で15秒、20℃のイオン交換水にて30秒間スプレーして、ブラインドビアホールを形成した。ここで、ビアホール底に両面フレキシブル基板の導電層が完全に露出するのに最低限必要な水酸化ナトリウム水溶液のスプレー時間を最小アルカリエッチング時間とし、最小アルカリエッチング時間が30秒以上60秒未満の場合を△、60秒以上90秒未満の場合を◎、90秒以上180秒未満の場合を○、180秒以上の場合を×とした。
(過エッチング耐性評価方法)
先述の最小アルカリエッチング時間から5秒刻みでアルカリエッチング時間を増やしながら、先述の方法でブラインドビアホール形成を行った後、これらのサンプルを180℃の熱風オーブンで、1時間キュアした。こうして形成したブラインドビアホールは、エポキシ樹脂で包埋し、包埋された配線板に垂直に研磨装置(丸本ストラトス社製)を用いてブラインドビアホール径の中央位置まで断面研磨加工を行った後、測長機能付光学顕微鏡により観察し、形成されたビアホールにおける、下記図4で説明するブラインドビアホール形状のパラメータx、yの値を測定した。最小アルカリエッチング時間から5秒刻みでアルカリエッチング時間を増やした際、後述するビアホール形状の判定基準を満たしているアルカリエッチング時間範囲が広いほど過エッチング耐性が良好と言えるが、この時間範囲が15秒未満の場合を×、15秒以上25秒未満の場合を△、25秒以上40秒未満の場合を○、40秒以上の場合を◎とした。
(良好なブラインドビアホール形状の判定基準)
ビアホール24の形状について説明する。図4は、実施例における過エッチング量の評価方法を説明するための説明図である。図4に示すように、まず、ビアホール24の垂直断面を観察した場合、導電層22aの開口部22a−1の内側の端面105から、ビアホール24の導電層22a側(図4中の上方)の端部106までの水平距離を、パラメータxと規定する。ここで、端面105よりもビアホール24の端部106が内側である場合パラメータxを+、外側である場合を−とした。
また、導電層22aの開口部22a−1の内側の端面105から、ビアホール24の導電層12a側(図4中の下方)の端部107までの水平距離を、パラメータyと規定する。より詳細に説明すると、パラメータyは、導電層22aの開口部22a−1の内側の端面105から導電層12aに向かって(言い換えれば、ビアホール24の底部に向かって)垂線Aをひき、ビアホール24の導電層12a側の端部107からの距離である。ここで、垂線Aよりもビアホール24の端部107が内側である場合パラメータyを+、外側である場合−とした。
ブラインドビアホール10穴の断面観察を行って、図4を参照して説明したブラインドビアホール形状のパラメータx、yが全て下記の範囲内である場合を良好なブラインドビアホール形状と判定した。
0≧x≧−15μmかつ−15μm≦y≦20μm
[ポリイミドAの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン92.0g、トルエン60.0g、2,2−ビス((4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(商品名:BISDA−2000、SABICイノベーティブプラスチックス社製)52.05gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、ポリアルキルエーテルジアミン(商品名:ジェファーミン(登録商標)XTJ−542、ハンツマン社製)40.00gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、γ―ブチロラクトン115.7g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)17.58gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した。さらにアニリン2.24gを添加した後に反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドAワニスを得た。重量平均分子量は2.0万であった。
ポリイミドAを構成する全酸二無水物原料中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は100mol%であった。
[ポリイミドBの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン81.0g、トルエン60.0g、BISDA−2000;39.04g、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)7.76gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、XTJ−542;42.00gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、γ―ブチロラクトン120.6g、6FAP;18.31gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した。さらにアニリン1.49gを添加した後に反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドBワニスを得た。重量平均分子量は2.7万であった。
ポリイミドB中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、75mol%であった。
[ポリイミドCの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン68.7g、トルエン60.0g、BISDA−2000;24.72g、ODPA;14.74gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、XTJ−542;44.00gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、無水フタル酸1.48gを加え均一になるまで撹拌した後、γ―ブチロラクトン127.1g、6FAP;20.51gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した後に反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドCワニスを得た。重量平均分子量は6.2万であった。
ポリイミドC中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、50mol%であった。
[ポリイミドDの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、N−メチル−2−ピロリドン79.5g、トルエン60.0g、BISDA−2000;49.45gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、ポリアルキルエーテルジアミン(Baxxodur(登録商標)EC302、BASF社製)30.10gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、無水フタル酸1.48gを加え均一になるまで撹拌した後、N−メチル−2−ピロリドン91.3g、6FAP;10.99gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した後に反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドDワニスを得た。重量平均分子量は5.4万であった。
ポリイミドD中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、100mol%であった。
[ポリイミドEの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、N−メチル−2−ピロリドン80.5g、トルエン60.0g、BISDA−2000;38.52g、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)7.65gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、XTJ−542;42.00gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、N−メチル−2−ピロリドン106.1g、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール(HAB)10.81gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した。さらにアニリン1.49gを添加した後に反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドEワニスを得た。重量平均分子量は2.5万であった。
ポリイミドE中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、74mol%であった。
[ポリイミドFの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、N−メチル−2−ピロリドン67.2g、トルエン60.0g、BISDA−2000;30.19g、ODPA;9.93gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、シリコーンジアミン(KF−8010、信越化学社製)36.98gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、無水フタル酸1.48gを加え均一になるまで撹拌した後、N−メチル−2−ピロリドン120.3g、6FAP;20.88gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した後で反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドFワニスを得た。重量平均分子量は3.8万であった。
ポリイミドF中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、64mol%であった。
[ポリイミドGの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン66.1g、トルエン60.0g、BISDA−2000;22.12g、ODPA;16.29gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、XTJ−542;44.00gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、無水フタル酸1.48gを加え均一になるまで撹拌した後、γ―ブチロラクトン127.8g、6FAP;20.51gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した後に反応溶液を180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドGワニスを得た。重量平均分子量は6.1万であった。
ポリイミドG中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、45mol%であった。
[ポリイミドHの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、N−メチル−2−ピロリドン155.4g、トルエン50.0g、BISDA−2000;52.05gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(商品名:APB−N、三井化学社製)14.03g、6FAP;16.12gを添加して均一になるまで撹拌してからアニリン1.49gを加えて180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドHワニスを得た。重量平均分子量は3.7万であった。
ポリイミドH中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、100mol%であった。
[ポリイミドIの合成例]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、γ―ブチロラクトン72.7g、トルエン55.0g、ODPA;30.09gを60℃で均一になるまで攪拌した。さらに、XTJ−542;42.60gを少しずつ添加した後に180℃まで昇温し、3時間加熱撹拌した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。この反応溶液を一旦35℃まで冷却した後、無水フタル酸0.89gを加え均一になるまで撹拌した後、γ―ブチロラクトン103.0g、6FAP;21.02gを少しずつ加え、70℃で3時間加熱撹拌した後で180℃まで昇温し、3時間還流した。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドIワニスを得た。重量平均分子量は8.3万であった。
ポリイミドI中の一般式(1)の構造を有する酸二無水物原料の含有率は、0mol%であった。
[ホスファゼン化合物Aの合成]
シアノ基を有するホスファゼン化合物Aは、特開2002−114981号公報の合成例17記載の方法で合成した。
攪拌装置、加熱装置、温度計及び脱水装置を備えた容量2リットルの四ツ口フラスコに4−シアノフェノール1.32モル(157.2g)、フェノール2.20モル(124.2g)、水酸化ナトリウム2.64モル(105.6g)及びトルエン1000mlを添加した。この混合物を加熱還流し、系から水を除き、シアノフェノール及びフェノールのナトリウム塩のトルエン溶液を調製した。このシアノフェノール及びフェノールのナトリウム塩のトルエン溶液に、1ユニットモル(115.9g)のジクロロホスファゼンオリゴマーを含む20%クロルベンゼン溶液580gを撹拌しながら内温30℃以下で滴下した。この混合溶液を12時間還流した後、反応混合物に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加し2回洗浄した。次に有機層を希硫酸で中和した後、水洗を2回行い、有機層を濾過し、濃縮、真空乾燥して、目的物(ホスファゼン化合物A)を得た。
[ホスファゼン化合物Bの合成]
フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物Bは、国際公開第2005/019231号パンフレットの合成例4記載の方法で合成した。
還流冷却器、温度計、撹拌機、滴下ロートを備えた2Lの4ツ口フラスコに純度99.9%のヘキサクロロシクロトリホスファゼン58g(0.5ユニットモル、NPCl2を1ユニットとする)、THF100mLを仕込んで溶液を得た。次に、別に調製した4−メトキシフェノールのNa塩のTHF溶液(4−メトキシフェノール68.3g(0.55モル)、ナトリウム11.1g(0.44g−atom)、THF200mL)を撹拌しながら、1時間かけて上記ヘキサクロロシクロトリホスファゼンのTHF溶液に滴下した。その際、反応温度が30℃を越えないように適宜冷却して反応を行った。滴下終了後、引き続き6時間60℃で撹拌反応を行った。次に、別に調製したナトリウムフェノラートのTHF溶液(フェノール61.2g(0.65モル)、ナトリウム13.8g(0.6g−atom)、THF200mL)を、反応温度が30℃以下になるように冷却制御し1時間かけて滴下した。次いで室温下で5時間、還流温度で3時間反応を行い、反応を完結した。反応終了後、溶媒のTHFを減圧下に留去し、次にトルエン500mLを加えて生成物を再溶解し、さらに水300mLを加えて水洗分液した。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液による洗浄及び2%水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を各々1回行った後に、(1+9)塩酸水溶液で1回洗浄、5%炭酸水素ナトリウム水で1回洗浄し、さらに水で2回洗浄し、水層を中性とした。次に有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、トルエンを留去して淡黄色油状の生成物を得た。残存塩素量は0.01%以下であった。上記の方法で得た4−メトキシフェノキシ基とフェノキシ基が混合置換したシクロトリホスファゼン116.2g(0.45ユニットモル)とピリジン塩酸塩583.6g(5.05モル)を、2Lの4ツ口フラスコに仕込み、徐々に昇温し、205〜210℃で1時間反応を行った。その後、生成物を精製し、目的物(ホスファゼン化合物B)を得た。
[実施例1]
ポリイミドAの固形分が52.9質量%、オキサゾリン化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が5.1質量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF社製)が2.0質量%、難燃剤として複合水酸化マグネシウム(商品名:MGZ−5R、堺化学工業社製)が40.0質量%になるように樹脂組成物を調製し、γ−ブチロラクトンで樹脂組成物の総固形分が43質量%になるように希釈した。この樹脂組成物溶液を用いて積層体を作製し、作製した積層体を用いて、TMA法でTgを測定し、最小アルカリエッチング時間と過エッチング耐性を評価した。樹脂組成物の組成、Tg、評価結果を下記表1に示す。
[実施例2〜実施例10]
実施例1と同様に樹脂組成物を調製して積層体を作製し、作製した積層体を評価した。
なお、溶媒をN−メチル−2−ピロリドンで合成したポリイミドD,E,F,Gに関しては、γ−ブチロラクトンの替わりにN−メチル−2−ピロリドンを用いた。実施例2〜10に関しては、可塑性を有する難燃剤であるホスファゼン化合物A又はホスファゼン化合物Bを用いた。実施例2〜10の樹脂組成物の組成、Tg、評価結果を下記表1に示す。
[比較例1〜比較例3]
実施例1〜9と同様に樹脂組成物を調製して積層体を作製し、作製した積層体を評価した。比較例2においては、オキサゾリン化合物に代えて3官能エポキシ化合物(商品名:VG3101、プリンテック社製)を用いた。比較例1〜比較例3の樹脂組成物の組成、Tg、評価結果を下記表1に示す。表1中、「OH/オキサゾリン」は、樹脂組成物中の水酸基の数量/オキサゾリン基の数量を示す。
Figure 0006325791
表1から分かるように、一般式(1)の骨格を含むポリイミドA〜Hを含み、Tgが110℃以下の樹脂組成物は、最小アルカリエッチング時間が、市販されているドライフィルムレジストの剥離時間と適合し、かつ過エッチング耐性も良好な結果が得られた(実施例1〜10)。この結果は、ポリイミドA〜Hは一般式(1)の骨格を含むので、樹脂組成物に適度な疎水性と熱硬化時の流動性が付与されたためと考えられる。特にポリイミド骨格中に一般式(1)の構造を全酸二無水物中の50mol%以上含み、かつ一般式(3)または一般式(4)の構造を含むポリイミドA〜Hを用いた樹脂組成物においては、熱硬化時に流動性が付与されてビアホール形状が良好になる傾向が強く、過エッチング耐性が良好であった(実施例1〜8)。とりわけ、一般式(4)のQが直鎖状テトラメチレン基であるポリイミドA,B,Eを用いた樹脂組成物は極めて良好な最小アルカリエッチング時間と過エッチング耐性を示した(実施例1〜3、実施例6)。
これらの結果から、実施例1〜10に係る樹脂組成物は、アルカリエッチングを用いた層間絶縁膜のビアホール形成などとして好適に利用できることが分かる。
一方、一般式(1)の骨格を含有しないポリイミドIを含む樹脂組成物は、Tgが110℃以下であるにもかかわらず、熱硬化時に十分な樹脂の流動性を付与することができず、過エッチング耐性が×であった(比較例1)。また、(B)オキサゾリン化合物の替わりにエポキシ化合物を用いた樹脂組成物に関しては、最小アルカリエッチング時間及び過エッチング耐性共に×であった(比較例2)。これは、積層体作製時の低温での溶媒乾燥工程でポリイミドのフェノール性水酸基とエポキシ基の架橋が進行してしまうこと、および熱硬化時にも同様の架橋反応が速やかに進行して樹脂の十分な流動性が阻害されてしまうことが原因であると推定される。また、Tgが110℃を超える樹脂組成物においては、熱硬化時に樹脂流動性が付与されないため、過エッチング耐性は×であった(比較例3)。
これらの結果より、比較例1〜3の樹脂組成物は最小アルカリエッチング時間が、市販されているドライフィルムレジストの一般的な剥離時間(具体的には30秒〜120、より好ましくは60秒〜90秒)と適合していない、及び/又は過エッチング耐性を十分に有してはいないため、アルカリエッチングを用いた層間絶縁膜のビアホール形成などとして使用するのは困難であることが分かる。
本発明は、特に、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、ボンディングシート、プリント配線板用保護絶縁膜、プリント配線板用基板に用いられる樹脂組成物として好適に利用することができる。

Claims (10)

  1. (A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと(B)オキサゾリン化合物を含み、ガラス転移温度が60℃以上110℃以下であり、
    前記(A)ポリイミドに含まれるフェノール性水酸基が下記一般式(2)の構造であり、
    前記(A)ポリイミドを48質量%以上58質量%以下含有し、
    前記(B)オキサゾリン化合物を2質量%以上10質量%以下含有することを特徴とする樹脂組成物。
    Figure 0006325791
    (一般式(1)中、Rは、二価の有機基を表す。)
    Figure 0006325791
    (一般式(2)中、Xは、単結合又は−C(−CF−を表し、kは、1から4の整数を表す。)
  2. 前記(A)ポリイミドを構成する全酸二無水物のうち、前記一般式(1)で表される構造を有する酸二無水物を50mol%以上含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記(A)ポリイミドに下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表される構造を含有することを特徴とする請求項1又は請求項記載の樹脂組成物。
    Figure 0006325791
    (一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1から炭素数5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示す。mは2以上の整数であり、mの繰り返し単位ごとにR、Rは互いに異なってもよい。)
    Figure 0006325791
    (一般式(4)中、Qは、炭素数1から炭素数18のアルキレン基を示し、nは2以上の整数であり、nの繰り返し単位ごとにQは互いに異なってもよい。)
  4. 前記(A)ポリイミド中の前記一般式(4)中のQが直鎖状テトラメチレン基である構造を含むことを特徴とする請求項記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1から請求項のいずれかに記載の樹脂組成物を、有機溶媒に溶かしてなる樹脂組成物溶液。
  6. 基材と、前記基材上に設けられた請求項1から請求項のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、を具備することを特徴とする積層体。
  7. 前記基材が、導体であることを特徴とする請求項記載の積層体。
  8. 前記基材が、銅箔であることを特徴とする請求項記載の積層体。
  9. 配線を有する基材と、前記配線を覆うように設けられた請求項1から請求項のいずれかに記載の樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物からなる樹脂硬化物層とを具備することを特徴とする多層プリント配線板。
  10. 配線を有する基材と、前記配線を覆うように設けられた樹脂組成物を熱硬化した樹脂硬化物からなる樹脂硬化物層とを具備する多層プリント配線板の製造方法であって、
    前記樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基と下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと(B)オキサゾリン化合物を含み、ガラス転移温度が110℃以下であり、
    前記基材が有する前記配線を覆うようにして前記樹脂組成物からなる前記樹脂組成物層を形成する工程と、
    前記樹脂組成物層の表面上に導電層を形成する工程と、
    前記導電層の上にレジストマスクを形成する工程と、
    前記レジストマスクを用いて前記導電層の一部をエッチングにより除去してコンフォーマルマスクを形成する工程と、
    前記コンフォーマルマスクを介して前記樹脂組成物層の一部をアルカリ溶液により除去してビアホールを形成すると共に、前記レジストマスクを除去する工程と、
    前記樹脂組成物層を熱硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程と、
    を具備することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
    Figure 0006325791
    (一般式(1)中、Rは、二価の有機基を表す。)
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