本発明の一実施の形態に係るフレキシブル配線板は、第1導電層と、この第1導電層上にアルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂硬化物層を介して設けられた第2導電層と、少なくともビアホール内の接着性樹脂硬化物を覆うように設けられ、第1導電層と第2導電層とを電気的に接続する導電性微粒子層とを具備する。
本実施の形態においては、未硬化接着性樹脂層上に設けられた導電層にコンフォーマルマスクを形成し、このコンフォーマルマスクを介して未硬化接着性樹脂層にビアホール(貫通ビアホール及び/又はブラインドビアホール)を形成する。そして、このビアホール内に導電性粒子層を形成してから、ビアホール内に電気めっきを施すことにより未硬化接着性樹脂層の両主面に形成される導電層間を電気的に接続する。
本実施の形態においては、アルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂硬化物層を用いることにより、アルカリ水溶液を用いた接着性樹脂硬化物層の溶解除去によりビアホール(貫通ビアホールやブラインドビアホール)を効率良く形成できる。また、導電性粒子層を形成することにより厳しい薬液処理条件に晒されることなく短時間で効率的に第1導電層と第2導電層とを電気的に接続することができるので、製造工程の簡略化及び製造コストの削減や接着性樹脂硬化物層間での回路接続において高い信頼性が得られる。
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る両面フレキシブル配線板の断面模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る両面フレキシブル配線板1は、アルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂硬化物層11と、この接着性樹脂硬化物層11の一方の主面上に設けられた導電層12a(第1導電層)と、接着性樹脂硬化物層11の他方の主面上に設けられた導電層12b(第2導電層)と、導電層12aと導電層12bとの間に設けられた貫通ビアホール13と、を有する。貫通ビアホール13は、接着性樹脂硬化物層11及び導電層12a,12bを貫通するように設けられており、この貫通ビアホール13を介して導電層12a及び導電層12bが電気的に接続される。
貫通ビアホール13の内壁には、少なくとも貫通ビアホール13内の接着性樹脂硬化物層11を覆うように導電性粒子を含む導電性粒子層13aが設けられている。導電性粒子層13aは、その一部が導電層12a及び導電層12bと接触するように設けられており、この導電性粒子層13aを介して導電層12aと導電層12bとが電気的に接続される。ここで、貫通ビアホール13内の接着性樹脂硬化物層11は、少なくとも導電層12aと導電層12bとが電気的に接続される程度に導電性粒子層13aで覆われていればよい。導電性粒子層13a上には、貫通ビアホール13内壁を被覆するようにめっき13bが設けられている。
接着性樹脂硬化物層11は、導電層12a,12b間を絶縁すると共に、導電層12a,12bを接着する接着層としても機能する。フレキシブル配線板1においては、接着性樹脂硬化物層11がアルカリ可溶性樹脂を含むので、接着性樹脂硬化物層11をアルカリ溶液で溶解除去して貫通ビアホール13を形成することが可能となる。導電層12a,12bは、例えば、銅箔などの導電性部材で構成される。なお、導電層12a,12bを構成する材料としては、接着性樹脂硬化物層11との密着性が得られるものであれば特に制限はない。
導電性粒子層13aの導電性粒子としては、例えば、炭素系微粒子、金属系微粒子などを用いることができる。炭素系微粒子としては、カーボンブラック粒子、カーボンナノファイバー類などを用いることができる。金属系微粒子としては、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物の粒子(ITO粒子)、酸化スズと酸化リンとの複合酸化物の粒子(PTO粒子)、酸化銀粒子などの金属酸化物粒子が挙げられる。これらの導電性粒子は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの導電性粒子の中でも、利便性や価格などの観点からカーボンブラック粒子が好ましい。
本実施の形態においては、詳細については後述するように、接着性樹脂硬化物層11に含まれるアルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基やカルボキシル基などの官能基を有するので、これらの官能基と導電性微粒子との間の相互作用により接着性樹脂硬化物層11への導電性微粒子への付着性が向上する。これにより、導電性粒子層13aと接着性樹脂硬化物層11との密着性が向上するので、接着性樹脂硬化物層11からの導電性粒子層13aの剥離を防ぐことができ、両面フレキシブル配線板1の接続信頼性が向上する。
導電性粒子の平均粒子径としては、例えば、10nm〜1μmの範囲内のものを用いることができる。導電性粒子の平均粒子としては、導電性粒子層13a形成時に、絶縁不良の原因となる脱離を防止する観点から、10nm以上であることが好ましく、入手が容易で使用しやすい観点から、1μm以下であることが好ましい。平均粒子径としては、10nm〜400nmであることが好ましく、10nm〜100nmであることがさらに好ましい。なお、導電性粒子としてカーボンブラック粒子を用いる場合、比表面積が大きく、アスペクト比が小さいものがビアホールの内壁への付着力や被覆性及び導電層12aを形成した際の導電性が良好となるため好ましい。
本実施の形態においては、導電性粒子層13aを介して導電層12a,12b間を電気的に接続するので、フレキシブル配線板1の貫通ビアホール13近傍を折り曲げた場合においても、接着性樹脂硬化物層11及び導電層12a,12bに導電性粒子が追従する。これにより、接着性樹脂硬化物層11及び導電層12a,12bからの導電性粒子層13aの剥離を抑制できるので、導電層12a,12b間の接続信頼性が向上する。また、フレキシブル配線板1の使用環境における温度が変化した場合においても、熱膨張及び収縮して変形する接着性樹脂硬化物層11及び導電層12a,12bに導電性粒子が追従する。したがって、温度変化が生じた場合においても、接着性樹脂硬化物層11及び導電層12a,12bからの導電性粒子層13aの剥離を抑制できるので、フレキシブル配線板1の接続信頼性が向上する。また、導電性粒子層13aで導電層12a,12b間を電気的に接続することにより、無電解めっきを行うことなく導電層12a,12b間を電気的に接続できるので、接着性樹脂硬化物層11が無電解めっきの薬液処理に晒されることがない。したがって、薬液処理による接着性樹脂硬化物層11の変質などを防ぐことができる。
また、導電性粒子層13aの厚みとしては、0.01μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。導電性粒子層13aの厚みが10μm以下であれば、導電性粒子層13aの脱離や、電解めっき時のビアホール内壁の凹凸の形成を抑制できる。また、導電性粒子層13aの厚みが0.01μm以上であれば、均一に導電性粒子層13aを形成できるので、導電層12a,12b間の導通不良を低減でき、導電層12a,12b間の接続の信頼性が向上する。また、導電性粒子層13aの厚みとしては、0.05μm以上10μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2μm以下であることがより好ましい。
ビアホール内に形成された導電性粒子層13aの厚みは、フレキシブル配線板1をエポキシ樹脂で包埋し、ビアホールの中心を通る断面方向にFIB(Focused Ion Beam)による試料加工を行った後、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により計測して求めることができる。
次に、本実施の形態に係るフレキシブル配線板1の製造方法について説明する。以下においては、ビアホールとして貫通ビアホールを有する両面フレキシブル配線板の製造方法及びブラインドビアホールを有する両面フレキシブル配線板1の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、未硬化接着性樹脂層及び接着性樹脂硬化物層については、同一の番号の符号(未硬化接着性樹脂層11’’又は接着性樹脂硬化物層11)を付して説明する。
図2は、貫通ビアホール13を有する両面フレキシブル配線板1の製造工程の概略図である。まず、接着性樹脂ワニスを塗工・乾燥して設けた未硬化接着性樹脂層11’の両主面上に銅箔を積層して導電層12a,12bを設ける(図2A参照)。次に、導電層12a、12b上にドライフィルム(不図示)をラミネートし、露光・現像及びエッチングにより、導電層12a,12bの一部を除去してコンフォーマルマスク14を形成する(図2B参照)。この工程では、導電層12a,12bのエッチング部位のズレを最小限(例えば、形成する貫通ビアホール13の径が100μmの場合は、20μm以下)にすることが望ましい。
次に、導電層12a,12bが除去されて露出した未硬化接着性樹脂層11’をアルカリ液により溶解除去して貫通ビアホール13を形成する(図2C参照)。アルカリ液としては、アルカリ可溶性樹脂を含む未硬化接着性樹脂層11’を溶解除去であるものであれば特に制限はない。アルカリ液としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を用いることができる。アルカリ液による未硬化接着性樹脂層11’の溶解除去は、一般的なフレキシブル配線板の製造工程で用いられているアルカリスプレー装置などを用いることができる。
次に、乾燥炉を用いて、150℃〜200℃にて10分〜5時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層11’を硬化させて接着性樹脂硬化物層11とする。次に、導電性微粒子の分散液に接着性樹脂硬化物層11を浸漬させて貫通ビアホール13内壁の接着性樹脂硬化物層11に導電性微粒子を付着させた後、例えば、硫酸・過酸化水素・硫酸銅水溶液等の酸性水溶液で分散液の溶媒を除去して導電性粒子層13aを形成する(図2D参照)。ここでは、接着性樹脂硬化物層11と導電性粒子との相互作用により接着性樹脂硬化物層11を覆うように導電性粒子層13aが形成され、導電性粒子層13a一部が導電層12a,12bと接触する。
次に、導電性粒子層13aを覆うように、貫通ビアホール13の内壁に電解銅めっきを施してめっき13bを形成する(図2E参照)。次に、サブトラクティブ法により導電層12a,12bに回路パターンを形成することにより、両面フレキシブル配線板を製造する(図2F参照)。
図3は、ブラインドビアホールを有する両面フレキシブル配線板の製造工程の概略図である。まず、接着性樹脂ワニスを塗工・乾燥して設けた未硬化接着性樹脂層21’の両主面上に銅箔を積層して導電層22a,22bを設ける(図3A参照)。次に、導電層22a、22b上にドライフィルム(不図示)をラミネートし、露光・現像及びエッチングにより、導電層22a,22bの一部を除去してコンフォーマルマスク23を形成する(図3B参照)。この工程では、導電層22a,22bのエッチング部位のズレを最小限(例えば、形成するブラインドビアホール24の径が100μmの場合は、20μm以下)にすることが望ましい。
次に、コンフォーマルマスク23を介して導電層22a,22bが除去された領域に露出した未硬化接着性樹脂層21’をアルカリ液により溶解除去してブラインドビアホール24を形成する(図3C参照)。アルカリ液としては、アルカリ可溶性樹脂を含む未硬化接着性樹脂層21’を溶解除去であるものであれば特に制限はない。アルカリ液としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を用いることができる。アルカリ液による未硬化接着性樹脂層21’の溶解除去は、一般的なフレキシブル配線板の製造工程で用いられているアルカリスプレー装置などを用いることができる。次に、乾燥炉を用いて、150℃〜200℃にて10分〜2時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層21’のアルカリ可溶性樹脂を硬化させて接着性樹脂硬化物層21とする。
次に、導電性微粒子の分散液に接着性樹脂硬化物層21を浸漬させてブラインドビアホール24内壁の接着性樹脂硬化物層21に導電性微粒子を付着させた後、酸性水溶液で分散液の溶媒を除去して導電性粒子層24aを形成する(図3D参照)。ここでは、接着性樹脂硬化物層21と導電性粒子との相互作用により接着性樹脂硬化物層21を覆うように導電性粒子層24aが形成され、導電性粒子層24a一部が導電層22a,22bと接触する。この結果、導電層22a,22bが導電性粒子層13aを介して電気的に接続される。
次に、導電性粒子層24aを覆うように、ブラインドビアホール24の内壁に電解銅めっきを施してめっき24bを形成する(図3E参照)。次に、サブトラクティブ法により導電層22a,22bに回路パターンを形成することにより、両面フレキシブル配線板を製造する(図3F参照)。
このように、上記フレキシブル配線板の製造方法においては、コンフォーマルマスク14,23を介したアルカリ溶液による接着性樹脂硬化物層11,21の溶解除去により、接着性樹脂硬化物層11,21へのビアホール(貫通ビアホール13,ブラインドビアホール24)の形成が可能となるので、ビアホールの形成に伴うスミアの発生を抑制できる。また、接着性樹脂硬化物層11,21の溶解除去により短時間でビアホールを形成できるので、両面フレキシブル配線板の連続生産も可能となる。これにより、生産効率に優れ、回路品質に優れる両面フレキシブル配線板を製造することができる。また、無電解めっきを行うことなく導電層12a,12b間を電気的に接続できるので、接着性樹脂硬化物層11,21が無電解めっきの薬液処理に晒されることがない。したがって、薬液処理による接着性樹脂硬化物層11,21の変質などを防ぐことができる。
次に、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板について説明する。図4は、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板100の断面模式図である。図5は、図4に示す多層フレキシブル配線板のリジッド部100aの部分拡大図である。図4に示すように、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1は、両端部に設けられ各種電子部品が実装されるリジッド部100aと、リジッド部100a間に設けられ屈曲性を有するフレキシブル部100bとを有する。
リジッド部100aは、アルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂硬化物層101の両主面上に設けられた一対の内部導電層102a,102b(第1導電層)と、この内部導電層102a,102b上にアルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂硬化物103(接着性樹脂硬化物層103a,103b)を介して設けられた一対の外部導電層104a,104b(第2導電層)と、一対の外部導電層104a,104bの一部を覆うように設けられたカバーコート105とを有する。接着性樹脂硬化物103(接着性樹脂硬化物層103a,103b)は、内部導電層102aと外部導電層104aとの間及び内部導電層102bと外部導電層102bとの間を接着する接着層として機能する共に、内部導電層102aと外部導電層104aとの間及び内部導電層102bと外部導電層102bとの間を絶縁する絶縁層として機能する。なお、接着性樹脂硬化物103は、上述した接着性樹脂硬化物層11,21,101と同様の材料で構成される。
一対の内部導電層102a,102b間には、内部導電層102a,102b及び接着性樹脂硬化物層101を貫通するように貫通ビアホール106が設けられている。内部導電層102a,102bは、貫通ビアホール106を介して電気的に接続されている。貫通ビアホール106内には、接着性樹脂硬化物103が充填されている。なお、貫通ビアホール106内には、必ずしも接着性樹脂硬化物103を充填する必要はない。
内部導電層102aと外部導電層104aとの間及び内部導電層102bと外部導電層104bとの間には、ブラインドビアホール107が設けられている。内部導電層102aと外部導電層104aとの間及び内部導電層102bと外部導電層104bとの間は、ブラインドビアホール107を介して電気的に接続されている。ブラインドビアホール107内には、カバーコート105が充填されている。なお、ブラインドビアホール107内には、接着性樹脂103を充填してもよい。
図5に示すように、貫通ビアホール106の内壁には、導電性粒子層106aを介してめっき106bが設けられている。導電性粒子層106aは、貫通ビアホール106内の接着性樹脂硬化物103を覆うように設け、その一部が内部導電層102a,102bと接触するように設けられている。この内部導電層102a,102bは、導電性粒子層106aを介して電気的に接続される。導電性粒子層106aは、例えば、カーボンブラック粒子などを含んで構成され、接着性樹脂硬化物層101との高い密着性を有する。このため、導電性粒子層106aを介してめっき106bを設けることにより、接着性樹脂硬化物層101と導電性粒子層106aとの間への他の成分の混入を防ぐことができる。
ブラインドビアホール107の内壁には、導電性粒子層107aを介してめっき107bが設けられている。導電性粒子層107aは、ブラインドビアホール107内の接着性樹脂硬化物103を覆うように設け、その一部が内部導電層102a,102b及び外部導電層104a,104bと接触するように設けられている。この内部導電層102a,102bは、導電性粒子層106aを介して電気的に接続される。この内部導電層102aと外部導電層104aとの間及び内部導電層102bと外部導電層104bとの間は、導電性粒子層107aを介して電気的に接続される。導電性粒子層107aは、例えば、カーボンブラック粒子などを含んで構成され、接着性樹脂103との高い密着性を有する。このため、導電性粒子層107aを介してめっき107bを設けることにより、接着性樹脂103と導電性粒子層107aとの間への他の成分の混入を防ぐことができる。また、ブラインドビアホール107内には、カバーコート105が充填されていてもよい。なお、ブラインドビアホール107内には、接着性樹脂103が充填されていてもよい。
本実施の形態においては、接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物103に含まれるアルカリ可溶性樹脂が、詳細については後述するように、フェノール性水酸基やカルボキシル基などの高い官能基を有するので、これらの官能基と導電性粒子との間の相互作用により接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物103への導電性微粒子への付着性が向上する。これにより、導電性粒子層106a,107aと接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物103との密着性が向上するので、接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物103からの導電性粒子層13aの剥離を防ぐことができ、多層フレキシブル配線板100の接続信頼性が向上する。
フレキシブル部100bは、接着性樹脂硬化物層101の一方の主面上に設けられた内部導電層102aと、この内部導電層102aを覆うように設けられた接着性樹脂103aとを有する。フレキシブル部100bの内部導電層102aは、両端側のリジッド部100aに延在するように設けられ、貫通ビアホール106及びブラインドビアホール107を介してリジッド部100aの内部導電層102b及び外部導電層104a,104bと電気的に接続される。
次に、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板100の製造方法は、接着性樹脂硬化物層101上に第1導電層102a,102bを設ける工程と、内部導電層102a,102b(第1導電層)上にアルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂103を介して外部導電層104a,104b(第2導電層)を設ける工程と、外部導電層104a,104bにコンフォーマルマスクを形成する工程と、コンフォーマルマスクを介して接着性樹脂103を溶解除去してブラインドビアホール107を形成する工程と、接着性樹脂103を加熱硬化させる工程と、ブラインドビアホール107内にめっき107aを施して内部導電層102a,102bと外部導電層104a,104bとを電気的に接続する工程と、外部導電層104a,104bに回路パターンを形成する工程と、を有する。
以下、図6を参照して、各工程について詳細に説明する。図6は、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1の製造工程の概略図である。
まず、アルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂ワニスを塗工・乾燥して未硬化接着性樹脂硬化物層101’を設け、この未硬化接着性樹脂層101’の両主面上に銅箔を積層して内部導電層102a,102bを設ける。未硬化接着性樹脂層101に用いる接着性樹脂ワニスとしては、接着性樹脂硬化物103に用いるものと同様のものを用いることができる。次に、内部導電層102a、102bにドライフィルム(不図示)をラミネートした後、ドライフィルムの露光・現像及び内部導電層102a、102bのエッチングにより、内部導電層102a,102bの一部を除去してコンフォーマルマスク(不図示)を形成する。次に、コンフォーマルマスクを介して内部導電層102a,102bのエッチング領域に露出した未硬化接着性樹脂層101’をアルカリ溶液により溶解除去して貫通ビアホール106を形成する。未硬化接着性樹脂層101’溶解除去は、図2及び図3で説明したものと同様の条件を用いることができる。次に、乾燥炉を用いて、150℃〜200℃で10分〜2時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層101’のアルカリ可溶性樹脂を硬化させて接着性樹脂硬化物層101とする。
次に、導電性微粒子の分散液に接着性樹脂硬化物層101を浸漬させて貫通ビアホール106内壁の接着性樹脂硬化物層101に導電性微粒子を付着させた後、酸性水溶液で分散液の溶媒を除去して導電性粒子層106a(図6において不図示、図5参照)を形成する。ここでは、接着性樹脂硬化物層101と導電性粒子との相互作用により接着性樹脂硬化物層101を覆うように導電性粒子層106aが形成され、導電性粒子層106aの一部が内部導電層102a,102bと接触する。この結果、内部導電層102a,102bが導電性粒子層106aを介して電気的に接続される。
次に、サブトラクティブ法などにより内部導電層102a、102bに回路パターンを形成することにより、コア基板としての両面フレキシブル配線板110を製造する(図6A参照)。なお、内部導電層102a,102bは、ブラインドビアホールを介して電気的に接続してもよい。また、コア基板として、片面フレキシブル配線板、又は多層フレキシブル配線板などを用いても多層フレキシブル配線板1を製造することができる。また、図2及び図3に示した両面フレキシブル配線板を用いて多層フレキシブル配線板を製造してもよい。
次に、両面フレキシブル配線板110の内部導電層102a,102b上に、接着性樹脂ワニスを塗工・乾燥して未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を設ける。ここでの未硬化接着性樹脂層103a’,103b’は、未硬化状態又は半硬化状態となっている。次に、この未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を介して銅箔を積層して外部導電層104a,104bを設ける(図6B参照)。ここで、未硬化接着性樹脂103’は、両面フレキシブル配線板110の貫通ビアホール106内に充填される。ここでは、内部導電層102a,102b上に未硬化接着性樹脂103’を塗布してから外部導電層104a,104bを積層してもよく、銅箔(外部導電層104a,104b)上に未硬化接着性樹脂103’を塗布した樹脂付き銅箔を内部導電層102a,102b上にそれぞれラミネートしてもよい。外部導電層104a,104bは、真空プレスや真空ラミネーターを用いることにより、50℃〜140℃、好ましくは70℃〜120℃、より好ましくは90℃〜110℃で積層できる。
次に、外部導電層104a,104b上にドライフィルム108をラミネートした後、ドライフィルム108の露光・現像により外部導電層104a,104bの一部を露出させる(図6C参照)。続いて、外部導電層104a,104bをエッチングして外部導電層104a,104bの一部を除去してコンフォーマルマスクを形成すると共に、フレキシブル部100bとなる領域の外部導電層104bを除去する(図6D参照)。
次に、コンフォーマルマスクを介して外部導電層104a,104bのエッチング領域に露出した未硬化接着性樹脂層103a’,103b’をアルカリ溶液により溶解除去して、ブラインドビアホール107を形成する共に、アルカリ溶液によりドライフィルム108を剥離する。また、フレキシブル部100bとなる領域の未硬化接着性樹脂層103a’,103b’も共に溶解除去する(図6E)。このように、ブラインドビアホール107の形成とドライフィルム108の剥離とをアルカリ溶液で行うことができるので、生産効率が向上する共に、ビアホール形成のコストを低減できる。アルカリ溶液としては、例えば、ドライフィルムの剥離液である3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
次に、乾燥炉を用いて、未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を加熱硬化させて接着性樹脂硬化物層103a,103bとする。加熱硬化は、未硬化接着性樹脂層103a’,103b’の反応性の観点から120℃以上、400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、150℃以上、250℃以下である。
加熱硬化における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。高温では窒素気流下であることが導電層の酸化を抑制するために好ましい。加熱硬化に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好ましくは0.1時間から8時間の範囲で実施される。
次に、導電性微粒子の分散液にブラインドビアホール107内の接着性樹脂103に導電性粒子を付着させた後、酸性水溶液で分散液の溶媒を除去して導電性粒子層107a(図6において不図示、図5参照)を形成する。ここでは、接着性樹脂硬化物103と導電性粒子との相互作用により接着性樹脂硬化物103を覆うように導電性粒子層106aが形成され、導電性粒子層106aの一部が内部導電層102a,102b及び外部導電層104a,104bと接触する。この結果、内部導電層102aと外部導電層104aとの間及び内部導電層102bと外部導電層104bとの間が導電性粒子層107aを介して電気的に接続される図6F参照)。
次に、サブトラクティブ法により外部導電層104a、104bをパターニングして回路形成を行う(図6G参照)。次に、従来のフレキシブル基板の配線板の製造方法と同様にして、カバーコート105の形成などの表面処理を行い、多層フレキシブル配線板100を製造する(図6H参照)。
このように、上記多層フレキシブル配線板100の製造方法においては、コンフォーマルマスクを介してアルカリ溶液により未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を溶解除去するので、ブラインドビアホール107の形成に伴うスミアの発生を抑制できる。また、アルカリ溶液により未硬化接着性樹脂層103a’,103b’及びドライフィルムレジスト108を共に溶解除去できるので、多層フレキシブル配線板100の製造工程の簡略化も可能である。また、無電解めっきを行うことなく内部導電層102a,102b及び外部導電層104a,104b間を電気的に接続できるので、接着性樹脂硬化物層103a,103bが無電解めっきの薬液処理に晒されることがない。したがって、薬液処理による接着性樹脂硬化物層103a,103bの変質などを防ぐことができる。
接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103a,103bは、多層フレキシブル配線板100のフレキシブル部100bに柔軟性を付与するためや、ロールツーロール法での成型を可能にするために、低弾性率であることが好ましい。
次に、本実施の形態に係るフレキシブル配線板に用いられるアルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂ワニスについて説明する。ここでは、図4に示した多層フレキシブル配線板100の接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103a,103bを例に説明するが、図1〜図3に示した両面フレキシブル配線板1の接着性樹脂硬化物層11,21においても同様のアルカリ可溶性樹脂を用いることが可能である。
接着性樹脂ワニスとしては、コンフォーマルマスク形成後のアルカリ液による溶解処理で溶解するアルカリ可溶性樹脂を含むものであれば特に限定されない。また、アルカリ可溶性樹脂としては、接着性樹脂ワニスを用いて膜厚25μmの未硬化接着性樹脂層101及び未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を形成した際に水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.30μm/sec以上であることが好ましい。上記の物性は、導電性フィルム上に接着性樹脂ワニスを塗工、加熱による脱溶剤後に得られた未硬化接着性樹脂層101’及び未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を用いて測定する。未硬化接着性樹脂層101’及び未硬化接着性樹脂層103a’,103b’のアルカリ溶解速度が上記範囲内であれば、未硬化接着性樹脂層101’及び未硬化接着性樹脂層103a’,103b’のアルカリ溶解性の制御が容易となり、フレキシブルプリント配線板の製造工程で一般的に使用されているアルカリ液スプレー装置が使用できる。
また、未硬化接着性樹脂層を150℃以上で加熱することにより得られる接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103,103bの水酸化ナトリウム水溶液への溶解速度が0.05μm/sec以下であり、弾性率が、0.05GPa以上3.0GPa以下であることが好ましい。接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103,103bの弾性率が3.0GPa以下であれば、多層フレキシブル配線板100の反りを低減でき、且つ、柔軟性が良好となる。また、接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103,103bの弾性率が0.5GPa以上であれば、接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103a,103bの応力緩和に効果があると共に、ビアホール(貫通ビアホール106及びブラインドビアホール107)内壁の接着性樹脂硬化物層101及び接着性樹脂硬化物層103a,103bへの導電性粒子の付着性が向上し、多層フレキシブル配線板100の内部導電層102a,10b及び外部導電層104a,104b間の接続信頼性が向上する。さらに好ましくは、0.05GPa以上1.5Gpa以下である。さらに、接着性樹脂硬化物層103a,103bとしては、ガラス転移点温度が150℃以下、好ましくは50℃〜120℃であれば、一般的なラミネート装置を用いてのラミネート加工ができるため好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性を有するために分子鎖中にカルボキシル基含有樹脂又は水酸基含有樹脂が好ましい。これらの中でも、加熱硬化時の架橋剤との反応性に優れることから、フェノール性水酸基含有樹脂がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体、ヒドロキシスチレンの重合体、ポリビニルフェノール、ポリα−メチルビニルフェノール、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、レゾール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体、フェノール性水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。これらのうち、ポリビニルフェノール樹脂、ノボラック樹脂、フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂が好ましい。
ポリビニルフェノール樹脂としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレンなどのヒドロキシスチレン類の単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂が挙げられる。ポリビニルフェノール樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が500〜100,000のものが好ましく、1,000〜50,000のものがより好ましい。
ノボラック樹脂としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノールなどのフェノール類からなる群から選択された少なくとも1種と、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類(なお、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを用いてもよく、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを用いてもよい。)、又はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類からなる群から選択された少なくとも1種と、を酸触媒下で重縮合させた樹脂が挙げられる。これらの中でもフェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましい。特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
溶融粘度を下げて埋込み性を向上させる観点から、ノボラック樹脂としては、分子内に4,4’−ビフェニリレン基、2,4’−ビフェニリレン基、2,2’−ビフェニリレン基、1,4−キシリレン基、1,2−キシリレン基、1,3−キシリレン基などの架橋基を含有するフェノール樹脂及びメチレン架橋基を含有するフェノール樹脂の重合単位を共に有するノボラック樹脂も好ましい。
ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が500〜15,000のものが好ましく、1,000〜10,000のものが更に好ましい。さらに、200℃以下の加熱後に得られる接着性樹脂硬化物層103a,103bの耐熱性や柔軟性の観点より、カルボキシル基含有ポリイミド、カルボキシル基含有ポリイミド前駆体、フェノール性水酸基含有ポリイミド、フェノール性水酸基含有ポリイミド前駆体、カルボキシル基含有ポリベンゾオキサゾール、カルボキシル基含有ポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましい。これらの中でもフェノール性水酸基含ポリイミドがより好ましい。
上述したポリイミドは、酸二無水物とジアミンとを反応させてポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を合成した後、加熱によりイミド化することによって得ることができる。また、上述したポリイミドは、酸二無水物とジアミンとを反応させてポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を合成した後、触媒を添加した後にイミド化(化学的イミド化)させることによっても得ることができる。この中で、化学的イミド化がより低温でイミド化を完結できる点で好ましい。
以下、ポリイミドについて詳細に説明する。ポリイミドとしては、例えば、以下の実施の形態に示すものが挙げられる。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るフェノール性水酸基を有するポリイミドは、下記一般式(1)〜下記一般式(3)で表される構造を有するアルカリ可溶性シロキサンポリイミドである。このアルカリ可溶性シロキサンポリイミドは、カルボキシル基無水物を取り除いた残基が下記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、アミノ基を取り除いた残基が下記一般式(3)で表されるジアミンと、を反応させることにより得られる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るポリイミドは、下記一般式(4)及び下記一般式(5)で表される構造を含むアルカリ可溶性ポリイミドである。このアルカリ可溶性ポリイミドは、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、アミノ基を取り除いた残基が下記一般式(5)で表されるジアミンと、を反応させることにより得られる。
第1の実施の形態に係るアルカリ可溶性ポリイミドの合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記一般式(2)中、R1は、互いに独立であり、炭素数1〜炭素数30の一価の炭化水素基である。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基などが挙げられる。これら中でも、原料の入手の容易さの観点から、R1としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
また、R2としては、アルキルコハク酸無水物、例えば、プロピルコハク酸無水物、ノルボニル酸無水物、プロピルナジック酸無水物などからカルボキシル基無水物を取り除いた残基が挙げられる。これらの中でも、プロピルコハク酸無水物、ノルボニル酸無水物、プロピルナジック酸無水物からカルボキシル基無水物を取り除いた残基であることが好ましい。nは、1〜50、好ましくは3〜30、更に好ましくは5〜15の整数である。nは、同じであってもよく、異なっていてもよい。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記式群(7)に示すシリコーン鎖を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
フェノール性水酸基を有するポリイミドにおけるシリコーン鎖を有するテトラカルボン酸二無水物成分の含有量としては、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
シリコーン鎖を有する酸無水物を用いて得られるポリイミドは、アルカリ溶解速度と低反り性に優れる。また、乾燥性に優れるアミド構造を有しない重合溶剤を用いて重合することができる。
アミノ基を取り除いた残基が上記一般式(3)で表されるジアミンとしては、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが特に好ましい。
第2の実施の形態に係るアルカリ可溶性ポリイミドの合成に用いられる上記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ポリジメチルシロキサン含有酸二無水物などを挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上混合しても用いてもよい。
アミン基を取り除いた残基が上記一般式(5)で表されるジアミンとしては、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール、4,3’−ジアミノビフェニル−3,4’−ジオール、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’,5,5’−テトラオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’,5,5’−テトラオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−2,4−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合しても用いてもよい。これらのジアミンの中でも、ポリイミドの溶解性、絶縁信頼性や重合速度や入手性の観点から、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
上記一般式(5)で表されるジアミンの含有量としては、全ジアミンに対して5モル%〜30モル%であることが好ましく、10モル%〜25モル%であることがより好ましい。上記一般式(5)で表されるジアミンの含有量が5モル%以上であれば、アルカリ溶解性が向上し、30モル%以下であれば、溶剤溶解性が向上する。
また、上記テトラカルボン酸二無水物以外に、本発明の効果を奏する範囲で従来公知のテトラカルボン酸二無水物を合わせて用いることもできる。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物などの芳香族テトラカルボン酸や、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリイミドの柔軟性、溶解性、絶縁信頼性及び重合速度の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物を用いることが好ましい。
また、上記ジアミン以外に、本発明の効果を奏する範囲で従来公知のジアミノを合わせて用いることができる。このようなジアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
これらのジアミンの中でも、接着性樹脂硬化物の弾性率を低減させる場合には、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、その他炭素鎖数の異なるオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレンジアミンなどを用いることが好ましい。ポリオキシアルキレンジアミン類としては、ハンツマン社製のジェファーミンED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、HK−511などのポリオキシエチレンジアミンや、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000などのポリオキシプロピレンジアミンや、ジェファーミンXTJ−542、XTJ−533、XTJ−536などのポリテトラメチレンエチレン基を有するジアミンなどが挙げられる。さらに、未硬化接着性樹脂の溶解性を向上させる場合には、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α−(2−アミノプロピル)−ω−アミノポリ(オキシプロピレン)などを用いることができる。
接着性樹脂硬化物の弾性率を低減させるためには、上記ジアミンの含有量としては、全ジアミンに対して25モル%〜65モル%であることが好ましく、40モル%〜65モル%であることがより好ましい。上記ジアミンンの含有量としては、25モル%以上であれば、柔軟性及び溶剤溶解性が向上し、65モル%以下であれば、アルカリ可溶性が向上する。
また、以下のジアミンを用いることにより、水酸基及び/又はカルボキシル基をポリイミドに導入できる。このようなジアミンとしては、2,5−ジアミノフェノ−ル、3,5−ジアミノフェノ−ル、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、4,4’−(2,2’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3−ヒドロキシ−4−アミノビフェニル(HAB)、4,4’−(3,3’−ジカルボキシ)ジフェニルアミン、メチレンビスアミノ安息香酸(MBAA)、2,5−ジアミノ安息香酸(DABA)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルなどが挙げられる。
次に、ポリイミドの製造方法について説明する。ポリイミドの製造方法としては、公知方法を含めた全てのポリイミドの製造方法が適用できる。これらの中でも、有機溶剤中で反応を行うことが好ましい。ポリイミドの合成に用いられる溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施の形態においては、貫通ビアホール106及び/又はブラインドビアホール107形成後の接着性樹脂硬化物103の加熱硬化工程において、アウトガスによるフクレが無いことが要求される。また、フレキシブル配線板に対して部品実装する際に、半田リフロー時のアウトガスによるフクレが無いこと、及び冷熱サイクル試験での信頼性が要求される。これらの観点から、接着性樹脂硬化物103の硬化後の残存溶剤量は0.5質量%以下であることが好ましい。また、接着性樹脂硬化物103の硬化後の残存溶剤量としては、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましい。
以上の観点から、ポリイミドの重合に用いる溶剤としては、乾燥性に優れる溶剤が好ましい。乾燥性に優れる溶剤としては、アミド構造を含まない溶剤が挙げられる。これらの中でも、揮発性に優れるγ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどが好ましい。
ポリイミドを合成する際に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド構造を有する溶剤を使用した場合、減圧条件下においても、ポリイミドとアミド構造を有する溶剤との間の水素結合により、溶剤残存量を0.5%以下にすることは難しい。一方で、アミド構造を有する溶剤を用いてポリイミドを重合した場合には、重合後に貧溶剤を添加してポリマーを析出させ、析出したポリマーを回収、乾燥させた後、揮発性の良い溶剤に再溶解させて使用してもよい。
ポリイミドの合成における反応原料の濃度としては、通常、2質量%〜80質量%であり、20質量%〜50質量%であることが好ましい。
ポリイミドの合成に用いるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.8〜1.2の範囲内である。この範囲内の場合、ポリイミドの分子量を上げることができ、伸度なども向上する。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.9〜1.1であることが好ましく、0.92〜1.07であることがより好ましい。
ポリイミドの重量平均分子量としては、5000以上100000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は10000以上60000以下がより好ましく、15000以上50000以下が最も好ましい。重量平均分子量が5000以上100000以下であると接着剤樹脂を用いて得られる接着性樹脂硬化物層の伸度が改善され、機械物性が向上する。さらに未硬化接着性樹脂103’の塗工時に所望する膜厚に滲み無く塗工できる。
ポリイミドは、具体的には以下のような方法で合成される。まず、反応原料を室温から80℃の範囲内で重縮合反応することにより、ポリアミド酸構造からなるポリイミド前駆体を製造する。次に、このポリイミド前駆体を好ましくは100℃〜400℃に加熱してイミド化するか、または無水酢酸などのイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。加熱してイミド化する場合、副生する水を除去するために、共沸剤(好ましくは、トルエンやキシレン)を共存させて、ディーンシュターク型脱水装置を用いて、還流下、脱水を行うことも好ましい。
また、80℃〜220℃で反応を行うことにより、ポリイミド前駆体の生成と熱イミド化反応を共に進行させて、ポリイミドを得ることも好ましい。すなわち、ジアミン成分と酸二無水物成分とを有機溶剤中に懸濁または溶解させ、80℃〜220℃の加熱下に反応を行い、ポリイミド前駆体の生成と脱水イミド化とを共に行わせることにより、ポリイミドを得ることも好ましい。
また、ポリイミド前駆体のポリマー主鎖の末端が、モノアミン誘導体またはカルボン酸誘導体からなる末端封止剤で末端封止することも可能である。ポリイミドのポリマー主鎖の末端が封止されることで、末端官能基に由来する貯蔵安定性に優れる。
モノアミン誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール,o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン,o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル,2−アミノビフェニル,3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル,4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセンなどの芳香族モノアミンを挙げることができ、この中で好ましくはアニリンの誘導体が使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、主に無水カルボン酸誘導体が挙げられる。カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中で、も、無水フタル酸を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
重合より得られたポリイミド溶液は、脱溶剤することなくそのまま用いてもよい。また、必要な溶剤、添加剤など加えて接着性樹脂ワニスとすることもできる。
本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法においては、外部導電層104a,104bに形成したコンフォーマルマスクを介して未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を溶解除去してブラインドビアホール107を形成する。そして、ブラインドビアホール107を形成してから未硬化接着性樹脂層103a’,103b’を加熱硬化する。このため、加熱前の未硬化接着性樹脂層103a’,103b’には十分なアルカリ溶解性が必要とされ、加熱硬化後の接着性樹脂硬化物層103a,103bにはアルカリ耐性(アルカリ溶解性の低下)が必要となる。このため、本実施の形態においては、反応性化合物としては、120℃以下、好ましくは100℃以下で水酸基含有樹脂の水酸基との反応の進行が遅く、150℃以上、好ましくは170℃以上で反応が速やかに進行して十分に未硬化接着性樹脂層103a,103bが硬化するものを用いる。
反応性化合物としては、例えば、オキサゾリン化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、オキサゾリン化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキセタン化合物が好ましく、水酸基含有樹脂の水酸基との反応により水酸基を副生することの無いオキサゾリン化合物が特に好ましい。ここで、オキサゾリン化合物とは、分子内に少なくとも1個のオキサゾリン基を有する化合物である。また、オキサゾリン化合物としては、水酸基含有化合物の水酸基を封止し、さらに水酸基含有化合物間に架橋を形成する観点から、分子内に2個以上のオキサゾリン基を有するものが好ましい。
本実施の形態においては、水酸基を有する水酸基含有樹脂(例えば、ポリイミド)に反応性化合物(例えば、オキサゾリン化合物)を適正な量添加し、適正な温度で乾燥する。これにより、所定温度(例えば、48℃)にて3質量%の水酸化ナトリウム水溶液により未硬化接着性樹脂層103a,103bを溶解除去して貫通ビアホール、ブラインドビアホール、又はスルーホールを形成することが可能となる。また、所定温度(例えば、180℃)にて1時間の熱処理により水酸基含有樹脂の水酸基と反応性化合物(例えば、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基)とが反応し、アルカリ水溶液耐性を示すことが可能となる。また、複数のオキサゾリン基を含有する反応化合物を使用した場合、水酸基含有化合物(例えば、ポリイミド)の分子間に架橋が形成される。
オキサゾリン化合物としては、例えば、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、日本触媒社製のK−2010E、K−2020E、K−2030E、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,6−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャルブチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。これらのオキサゾリン化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン化合物の添加量としては、水酸基含有化合物の水酸基とオキサゾリン化合物のオキサゾリン基とのモル比が、水酸基/オキサゾリン基=0.5〜4であることが好ましく、0.7〜3であることがより好ましい。水酸基/オキサゾリン基=0.5以上であれば、未硬化接着性樹脂層103a,103bの柔軟性、耐熱性が向上し、水酸基/オキサゾリン基=4以下であれば、未硬化接着性樹脂層103a,103bのアルカリ加工性が向上する。
未硬化接着性樹脂は、加熱することによって接着性樹脂硬化物となる。加熱については特に制限されないが、アリカリ水溶液に可溶とする観点から、50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱することが好ましい。さらに高温(例えば160℃〜200℃)での加熱により主として水酸基の封止や架橋反応が生じ、アルカリ水溶液へ不溶となる。
また、未硬化接着性樹脂層103a,103bは、溶剤、残存モノマーなどの揮発成分を十分に除去し、アリカリ水溶液に可溶とする観点から、真空乾燥法などで50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱することが好ましい。50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱した未硬化接着性樹脂層103a,103bは、アリカリ水溶液に可溶であるため、フレキシブルプリント配線板の製造で用いられるレーザードリリング加工などを不要とし、アリカリ水溶液でブラインドビアホールを加工できる接着性樹脂103として使用できる。
アリカリ水溶液でブラインドビアホールを形成した後、残存した未硬化接着性樹脂層103a,103bをさらに高温(例えば160℃〜200℃)で加熱することにより、水酸基含有化合物と反応性化合物との間で主として架橋反応が生じて接着性樹脂硬化物層103a,103bとなり、アルカリ水溶液へ不溶となる。具体的には、形成される未硬化接着性樹脂層103a,103bの膜厚にもよるが、オーブン又はホットプレートで最高温度を150℃〜220℃の範囲とし、5分間〜100分間、空気又は窒素などの不活性雰囲気下で加熱することにより、架橋反応が進行する。加熱温度は、処理時間の全体に亘って一定であってもよく、徐々に昇温させてもよい。
また、本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、難燃性を向上する観点から、難燃剤を含有させて用いることもできる。難燃剤としては、特に制限されないが、含ハロゲン化合物、含リン化合物及び無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
含ハロゲン化合物としては、塩素を含む有機化合物や臭素を含む有機化合物などが挙げられる。含ハロゲン化合物としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA及びヘキサブロモシクロドデカンテトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。
含リン化合物としては、ホスファゼン、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル及び亜リン酸エステルなどのリン化合物が揚げられる。特に、水酸基含有化合物としてポリイミドを用いる場合には、ポリイミドとの相溶性の面から、ホスファゼン、ホスファイオキサイド又はリン酸エステルを用いることが好ましい。
ホスファゼンとしては、フェノキシ基を有する環状ホスファゼンが好ましく、フェノキ基に加えてシアノ基や水酸基を有する環状ホスファゼンがより好ましい。また、水酸基及びフェノキシ基を有する環状ホスファゼンは、未硬化接着性樹脂層103a,103bの硬化時に環状ホスファゼンの水酸基と反応性化合物(例えば、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基)とが反応してアルカリ可溶性を低下させることができるため好ましい。特に、フェノキシ基にシアノ基を有する環状ホスファゼンとフェノキシ基に水酸基を有する環状ホスファゼンとを混合して用いることが好ましい。
無機難燃剤としては、アンチモン化合物や金属水酸化物などが挙げられる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンが挙げられる。アンチモン化合物と上記含ハロゲン化合物との併用することにより、所定の温度(例えば、プラスチックの熱分解温度域)で、アンチモン化合物が含ハロゲン化合物からハロゲン原子を引き抜いてハロゲン化アンチモンを生成するため、相乗的に難燃性を上げることができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
無機難燃剤は、有機溶剤に溶解しないため、その粉末の粒径は100μm以下のものを用いることが好ましい。粉末の粒径は100μm以下であれば、接着性樹脂ワニスに混入しやすく、接着性樹脂硬化物層103a,103bの透明性を損ねることがないため好ましい。さらに難燃性を上げるためには、粉末の粒径としては、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
難燃剤の添加量としては、特に制限されず、用いる難燃剤の種類に応じて適宜選択する。一般的には、水酸基含有化合物の含有量を基準として、5質量%から50%の範囲で用いる。
接着性樹脂ワニスは、塗工膜にする時、その塗工方式に応じて粘度とチクソトロピーの調整を行う。必要に応じて、フィラーやチクソトロピー性付与剤を添加して用いることも可能である。また、公知の消泡剤やレベリング剤や顔料等の添加剤を加えることも可能である。
また、本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、導電層との密着性を向上する観点から、密着材を含有させて用いることもできる。密着材としては特に制限されないが、フェノール化合物、含窒素有機化合物、アセチルアセトン金属錯体などが挙げられる。これらの中でも、フェノール化合物が特に好ましい。
なお、接着性樹脂ワニスは、水酸基含有化合物、反応性化合物などのほか、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤に溶解した状態とすることで塗工が容易となるので、好ましく使用することができる。
このような有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン溶剤、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホキシドなどの含硫黄系溶剤、クレゾール、フェノールなどのフェノール系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチルなどのエーテル溶剤が挙げられる。また、これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
本実施の形態においては、ブラインドビアホールの形成性、及び、多層板の半田リフローや冷熱サイクル試験の耐熱性を発現させるためには、水酸基含有化合物と反応性化合物との反応を抑えつつ、溶剤を揮発させることが必要となる。アミド系溶剤を用いた場合、水酸基含有化合物(例えば、ポリイミド)の水酸基とアミド系溶剤との水素結合が強く、アミド系溶剤が揮発しにくくなる。このため、接着性樹脂ワニスに用いる有機溶剤としては、アミド構造を含まない溶剤であって、揮発性に優れるγ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどの溶剤を用いることが好ましい。これらの溶剤は、常圧下で乾燥することにより、残存溶剤量を低減できるので、生産性に優れる。
接着性樹脂ワニスは、熱架橋性官能基を有する架橋性化合物を含有しても良い。熱架橋性化合物としては、熱架橋性官能基を介して架橋を形成するものであれば特に制限はないが、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾオキサジン化合物などが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、メラミンメラミン類およびシアヌル酸メラミン類などが好ましい。メラミン類としては、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物およびメラミンの縮合物等が挙げられる。メラミン類の具体例としては、例えば、メチロール化メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリールグアナミン、メラム、メレム、メロンなどが挙げられる。
シアヌル酸メラミン類としては、シアヌル酸とメラミン類との等モル反応物が挙げられる。また、シアヌル酸メラミン類中のアミノ基または水酸基のいくつかが、他の置換基で置換されていてもよい。このうちシアヌル酸メラミンは、例えば、シアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、90℃〜100℃で撹拌下反応させ、生成した沈殿を濾過することによって得ることができ、白色の固体であり、市販品をそのまま、またはこれを微粉末状に粉砕して使用できる。
ベンゾオキサジン化合物は、モノマーのみからなるものでも良いし、数分子が重合してオリゴマー状態となっていてもよい。また、異なる構造を有するベンゾオキサジン化合物を同時に用いても良い。具体的には、ビスフェノールベンゾオキサジンが好ましく用いられる。
また、本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、金属箔上に塗布して乾燥することにより、樹脂付金属箔として用いることも可能である。この場合、銅箔の表面への接着性樹脂ワニスの塗工方法及び乾燥方法については特に制限はない。例えば、接着性樹脂ワニスを銅箔の表面にエッジコータ、グラビアコータ、スピンコータなどを用いて塗工し、加熱炉内で加熱乾燥することにより、銅箔上に未硬化接着性樹脂層が形成され樹脂付銅箔が得られる。乾燥後に得られる膜厚は、平均厚さ5μm〜50μmである。接着性樹脂103中の溶剤を低減するために、常圧又は減圧にて、50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱することが好ましい。
また、本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、基材上に形成された配線パターンを覆うように接着性樹脂硬化物層を設けることにより、配線板の配線パターンの保護膜として好適に用いることができる。
以上説明したように、本実施の形態に係るフレキシブル配線板においては、フレキシブル配線板の層間接続のためのビアホール(貫通ビアホール及び/又はブラインドビアホール)の内壁において、アルカリ可溶性樹脂を含む接着性樹脂硬化物層に導電性粒子層を形成して導電層間を電気的に接続する。これにより、ビアホール形成コストを大幅に削減でき、またロールツーロール生産が容易にでき、大幅な生産リードタイム短縮ができ、回路品質に優れると共に、高い接続信頼性を有する両面フレキシブル配線板や多層フレキシブル配線板、リジット・フレキシブル配線板を提供できる。また、従来のフレキシブル基板の製造方法では、スミアによるビアホール欠損不良(重大欠陥)の懸念があるが、本実施の形態によれば、スミアは発生せず、高い接続信頼性を有するビアホールが得られる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
〔調製例1〕
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、トリエチレングリコールジメチルエーテル(22.5g)、γ―ブチロラクトン(52.5g)、トルエン(20.0g)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)1.00g、両末端酸二無水物変性シリコーン(X−22−2290AS、信越化学社製)35.00gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.00g、を少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドAワニスを得た。重量平均分子量は2.7万であった。
ポリイミドAが69質量%、オキサゾリン基含有化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が6質量%、難燃剤として伏見製薬社製のFP300が25質量%となるように接着性樹脂ワニスを調製した。
〔調製例2〕
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール404.2g(4.30モル)、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル150.70g(0.6モル)を仕込み100℃で3時間反応させ、その後42%ホルマリン水溶液28.57g(0.4モル)を添加し、その後、100℃で3時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。反応終了後、得られた反応溶液を冷却し、水洗を3回行った。油層を分離し、減圧蒸留により未反応フェノールを留去することにより251gのフェノールノボラック樹脂を得た。
フェノールノボラック樹脂が62.5質量%、オキサゾリン基を含有する化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)を12.5質量%、難燃剤として伏見製薬社製のFP300を25質量%となるように接着性樹脂を調整し、溶剤としてN−メチルピロリドンを40gで希釈して接着性樹脂ワニスを調製した。
〔調製例3〕
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)344g、トルエン90g、ジメチルスルホキシド78.4g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)48.8g、ポリアルキルエーテルジアミンBaxxodur(登録商標) EC302(BASF社製)112.8gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)120gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、3時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを全抜きし、室温まで冷却した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドBワニスを得た。重量平均分子量は2.8万であった。
このポリイミドBワニスを蒸留水中に投じて、再沈殿させ、得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミドBの固形物を得た。このポリイミドBの固形物に接着性樹脂の固形分が40質量%になるようにγ−ブチロラクトン:ジメチルスルホキシド(DMSO)=80:20の混合溶媒を添加し、かつ接着性樹脂の固形分の合計を100質量%とした際に、接着性樹脂中のポリイミドAが60質量%、オキサゾリン基を含有する化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が15質量%、難燃剤として伏見製薬社製のFP300とFP400をそれぞれ6重量%と18重量%、酸化防止剤としてイルガノックス245(IRG245、BASF製)を1重量%になるよう接着性樹脂ワニスを調製した。
〔接続信頼性の評価〕
フレキシブル配線板に貫通ビアホールまたはブラインドビアホールで2つの導電層間を電気めっき処理により電気接続させた配線回路(デイジーチェーン)を形成し、これを−40℃〜120℃の温度サイクル試験(IPC−TM650 2,6,6準拠)により接続信頼性を評価した。評価方法として接続抵抗変化率が±10%以下の状態が500サイクル以上の場合を◎とし、250サイクル以上500サイクル未満を○とし、250サイクル以下を×とした。
<弾性率>
約25μmの積層体を、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)にて大気中180℃1時間キュアした後、塩化第二鉄水溶液で銅箔部分を溶解させた。蒸留水で水洗後、室温で1日乾燥させてフィルムを得た。得られたフィルムを5mm×100mmに切り出し、試験片とした。得られた試験片を引っ張り試験機(RTG−1210/エー・アンド・デイ社製)にて測定し、引張弾性率を算出した。引張弾性率が0.05GPa以上1.5GPa以下の場合を◎とし、0.05GPa未満、及び1.5GPa以上3GPa以下の場合を○とし、3.0GPa超の場合を×とした。
[実施例1]
(貫通ビアホールを有する両面フレキシブル配線板)
調整例1より得られた接着性樹脂ワニスを12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後、95℃に加温されたオーブン中で30分乾燥処理をして未硬化接着性樹脂層を形成した。この未硬化接着性樹脂層の表面に電解銅箔(F2−WS、古河電工製)を重ねて置き、更に両面から離形用フィルムで挟んだ積層体を作製した。これを上下両面定盤に内部にガラスクロスを含んでいる硬度50%の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせた真空プレス装置(北川精機社製)を用いて、予めシリコンラバー表面温度を加温した状態で、上記積層体を入れ真空引きを行った後、圧力1MPa加圧し積層体を作製した。
次に、上記積層体を用い、両面の銅箔上にDFをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、両面の対応する部位にコンフォーマルマスクを形成した。この工程では、両面の銅箔エッチング部位のズレを最小限(ビアホール径が100μmの場合は、20μm以下)にした。
このように、実施例1で作製した両面フレキシブル基板は、穴あけドリル加工機やレーザー加工機を用いて、1穴ずつ(ドリル加工の場合は数枚を重ねて)加工する従来の両面フレキシブル配線板の製造方法と異なり、露光・現像工程を通すことにより瞬時に穴あけ加工が可能であった。このため、ロールツーロールによる連続自動化生産も容易にできる。
次に、銅箔が除去された部位に露出した未硬化接着性樹脂層に、50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーして、未硬化接着性樹脂層を除去し、貫通ビアホールを形成した。次に硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層を硬化させて接着性樹脂硬化物層とした。得られた貫通ビアホールの壁面には、樹脂残渣が観測されず、貫通ビアホール形成は良好であり、デスミア工程は不要であった。
次に、従来の両面フレキシブル配線板と同様の貫通ビアホールめっき処理を行った。まず、貫通ビアホール内壁の接着性樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法として25℃の平均粒径100nmのカーボンブラック分散液に30秒間浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。次に従来の両面フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程は、従来のフレキシブル基板の製造製法と同様にして実施した。
実施例1で作製した両面フレキシブル基板は、強アルカリ薬液によるデスミア処理なしでも、ビアホール内壁面に厚み不良なく電気めっき層形成されることが確認できた。またビアホールの接続信頼性も◎であった。
[比較例1]
実施例1と同様にして調整例1より得られた樹脂組成物を用いて、貫通ビアホールを形成した両面フレキシブル基板にめっき処理を行った。まず、貫通ビアホール内壁の接着性樹脂硬化物層に無電解銅めっき層を形成した。形成方法としてパラジウム触媒を付着・活性化処理した後に、無電解銅めっき処理浴(上村工業製)で約1μm無電解銅めっき層を形成した。次いで電解銅めっき処理を施して両面の電気的接続を完了させた。
次に、従来の両面フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程は、従来のフレキシブル基板の製造製法と同様にして実施した。
比較例1で作製した両面フレキシブル基板は、強アルカリによるデスミア処理が不要であったが、貫通ビアホールの断面構造を確認したところ、電解銅めっき層に形成不良部認められ、貫通ビアホールの接続信頼性は×であった。
[実施例2]
(ブラインドビアホールを有する両面フレキシブル配線板)
実施例1と同様にして調整例1の接着性樹脂ワニスを用いて積層体を作製し、この両面の銅箔上にドライフィルムをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去し、一般的には片面の所定の部位に150μmφ径のコンフォーマルマスクを形成した。
次に、銅箔が除去された部位に、露出した未硬化接着性樹脂層に、50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーして未硬化接着性樹脂層を除去し、ブラインドビアホールを形成した。次に硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層を硬化させて接着性樹脂硬化物層とした。得られたブラインドビアホールの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビアホール形成は良好であり、デスミア工程は不要であった。次に従来の両面フレキシブル配線板と同様のブラインドビアホールめっきを行った。
まず、ブラインドビアホール内壁の接着性樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法として25℃の平均粒径100nmのカーボンブラック分散液に30秒間浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。次に従来の両面フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来の両面フレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
実施例2で作製した両面フレキシブル基板は、強アルカリ薬液によるデスミア処理なしでも、ブラインドビアホール内壁面に厚み不良なく電気めっき層形成されることが確認できた。またビアホールの接続信頼性も◎であった。
[実施例3]
(多層フレキシブル配線板の製造方法)
コア基板として両面フレキシブル配線板としてエスパネックスM(新日鉄化学製、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚20μm)を用いた。両面フレキシブル配線板には、ドリル加工及び銅めっき処理により100μmφを形成した。また最少130μmピッチの銅配線回路(28μm厚)を形成した。
積層体は、調整例1より得られた接着性樹脂ワニスを12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後95℃に加温されたオーブン中で12分乾燥処理をして得た。この積層体をコア基板の上下面に重ねて置き、更に両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
次に、上下両面定盤に内部にガラスクロスを含んでいる硬度50%の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたもの真空プレス装置を用いて、予めシリコンラバー表面温度を加温した状態で、積層体を入れて真空引きを行い、その後圧力約1MPaで加圧し積層体を作製した。
次に、積層体の銅箔とコア基板の銅箔との間の接続のため、積層体の銅箔上にドライフィルムをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアホールが必要な部位に100μmφのコンフォーマルマスクを形成した。
次に、銅箔が除去された部位に、露出した未硬化接着性樹脂層に、50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液を約30秒間スプレーして未硬化接着性樹脂層を除去し、ブラインドビアホールを形成した。
次に、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層のアルカリ可溶性樹脂を硬化させた。得られたブラインドビアホールの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビアホール形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液等によるデスミア工程は不要であった。
次に、コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアホールへのめっき処理を行った。まずブラインドビアホール内壁の接着性樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法として25℃の平均粒径100nmのカーボンブラック分散液に30秒間浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを厚み約15μm施して両面の電気的接続を完了させた。
実施例3で作製した多層フレキシブル基板は、強アルカリ薬液によるデスミア処理なしでも、ブラインドビアホール内壁面に厚み不良なく電気めっき層形成されることが確認できた。またビアホール間の接続信頼性も◎であった。
次に従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
[実施例5]
実施例3と同様にして調整例2より得られた接着性樹脂ワニスを用いて、多層フレキシブル配線板を作製した。ブラインドビアホール間の電気めっき層の膜厚不良は特に認められず、接続信頼性は○であった。
[比較例2]
実施例3と同様にして調整例1より得られた接着性樹脂ワニスを用いて、ブラインドアを形成した多層フレキシブル基板にめっき処理を行った。まずブラインドビアホール内壁の接着性樹脂硬化物層に無電解銅めっき層を形成した。形成方法としてパラジウム触媒を付着・活性化処理した後に、無電解銅めっき処理浴(上村工業製)で約1μm無電解銅めっき層を形成した。次いで電解銅めっき処理を施して両面の電気的接続を完了させた。
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程は、従来のフレキシブル基板の製造製法と同様にして実施した。
比較例2で作製した多層フレキシブル基板は、強アルカリによるデスミア処理が不要であったが、ブラインドビアホール断面構造を確認したところ外部基板側の銅配線層と隙間に一部形成不良が認められ、ビアホール接続信頼性は×であった。
[実施例6]
(ブラインドビアホールを用いたフレキシブル部を有する多層フレキシブル配線板)
実施例3で作製した両面フレキシブル配線板をコア基板として用いた。コア基板に積層する積層体は、調整例1より得られた接着性樹脂ワニスを12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後110℃に加温されたオーブン中で12分乾燥処理をして得た。この積層体をコア基板の上下面に重ねて置き、更に両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
次に、上下両面定盤に内部にガラスクロスを含んでいる硬度50%の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたもの真空プレス装置を用いて、予めシリコンラバー表面温度を加温した状態で、上記積層体を入れて真空引きを行い、その後圧力約1MPaで加圧し積層体を作製した。
次に、積層体の銅箔とコア基板の銅箔との間の接続のため、積層体の銅箔上にドライフィルムをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアホールが必要な部位に150μmφのコンフォーマルマスクを形成した。同時にフレキシブル部となる部位も同じ工程にて銅箔を除去した。
次に、銅箔が除去された部位に、露出した未硬化接着性樹脂層に、50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液を約30秒間スプレーして未硬化接着性樹脂層を除去し、ブラインドビアホールを形成とフレキ部アルカリ可溶性樹脂の除去を行った。
次に、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層のアルカリ可溶性樹脂を硬化させて接着性樹脂硬化物層とした。得られたブラインドビアホールの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビアホール形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液等によるデスミア工程は不要であった。
次に、積層体の銅箔とコア基板の銅箔との電気的接続を取るためブラインドビアホールへのめっき処理を行った。まずブラインドビアホール内壁の接着性樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法として25℃の平均粒径100nmのカーボンブラック分散液に30秒間浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。この工程で同時にフレキ部にも、ベースフイルム上に銅めっきが施された。
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。この工程において、フレキ部に付いた銅めっきを同時にエッチングにより除去し、外層を除去した構造を形成した。これ以降の工程については、従来のフレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
実施例6で作製したブラインドビアホール間の電気めっき層の膜厚不良は特に認められず、接続信頼性も◎であった。
実施例1から実施例6、比較例1及び比較例2の結果を下記表1に示す。
表1から分かるように、ビアホール内に導電性粒子層を設けた場合には、接続信頼性が得られることが分かる(実施例1〜実施例6)。これに対して、導電性粒子層を設けなかった場合には、接続信頼性が低下することが分かる(比較例1及び比較例2)。
また、実施例1及び実施例2に係る両面フレキシブル配線板、実施例3及び実施例6に係る多層フレキシブル配線板は、は、露光・現像工程を通すことにより瞬時に穴あけ加工が可能であった。このため、ロールツーロールによる連続自動化生産も容易にできる。また、実施例6に係る多層フレキシブル配線板は、ビアホールの形成工程と、ドライフィルムの剥離工程とを共に実施できた。このため、生産効率を大幅に向上させることができた。これらにより、実施例1から実施例6に係るフレキシブル配線板は、穴あけドリル加工機やレーザー加工機を用いて、1穴ずつ(ドリル加工の場合は数枚を重ねて)加工する従来の両面フレキシブル配線板の製造方法に対して大幅に生産効率を向上できた。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。