JP2014130775A - 非水電解質二次電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極と負極と非水電解質とを備え、該正極の作動上限電位(vs.Li/Li+)が4.5V以上であり非水電解質二次電池が提供される。上記正極は、正極活物質粒子と被膜形成剤とを含む正極合材層を備える。その正極活物質粒子は、上記被膜形成剤に由来する被膜をその表面に有する。上記被膜形成剤は、ポリビニルアセタール、ポリオキシアルキレン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそれらの誘導体から選択される1種または2種以上を含む。上記正極合材層は、該正極合材層の表面積1m2当たり0.25mg〜2.5mgの上記被膜形成剤を含む。
【選択図】図4
Description
なお、本明細書中において、被膜形成剤に由来する被膜とは、該被膜形成剤自体、その分解生成物、その変性物(例えば、被膜形成剤内での架橋反応や、被膜形成剤と他の化合物との架橋反応等による変性物)等を包含する概念である。
本明細書において「1C」とは、満充電状態(SOC100%)の電池を1時間で放電終止電圧(SOC0%)まで放電させる電流値を意味する。
また、本明細書において「平均粒径」とは、特記しない場合、一般的なレーザ回折式粒度分布測定装置により得られる体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)を指すものとする。
ここで開示される技術における正極は、少なくともSOC0%〜100%のうち一部範囲における作動電位(vs.Li/Li+)が、一般的な非水電解質二次電池(作動電位の上限が4.1V〜4.2V程度)よりも高く、典型的には凡そ4.5V以上である。このような作動上限電位を示す正極は、SOC0%〜100%における作動電位の最高値が4.5V(vs.Li/Li+)以上である正極活物質を用いることにより実現され得る。
上記正極は、作動電位(vs.Li/Li+)が4.5V以上の正極活物質として機能し得るリチウム遷移金属化合物(典型的には、リチウム遷移金属酸化物)を基本組成とする正極活物質粒子を備える。例えば、作動電位(vs.Li/Li+)が4.5Vよりも高い(さらには4.6V以上、例えば4.7V以上の)のリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質粒子が好ましい。
LixMn2−yM’yO4+d (F1);
で表わされるスピネル型リチウムマンガン酸化物が挙げられる。
ここで、xは、0.9≦x≦1.2であり得る。yは、0≦y<2であり、典型的には0≦y≦1(例えば0.2≦y≦0.6)であり得る。dは、−0.2≦d≦0.2であって電荷中性条件を満たすように定まる値である。yが0より大きい場合(0<y)、M’は、Mn以外の任意の金属元素または非金属元素から選択される一種または二種以上であり得る。より具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等であり得る。M’としては、Ni,Fe,Co,Ti等の遷移金属元素の少なくとも一種を好ましく採用し得る。
Lix(NitMn2−t―uM”u)O4+d (F2);
で表されるスピネル型リチウムニッケルマンガン酸化物が挙げられる。
ここで、M”は、NiおよびMn以外の任意の遷移金属元素または典型金属元素(例えば、Fe,Ti,Co,Cu,Cr,ZnおよびAlから選択される一種または二種以上)であり得、3価のFeおよび3価のCoの少なくとも一方を含むことが好ましい。あるいは、M”の一部または全部が半金属元素(例えば、B,SiおよびGeから選択される一種または二種以上)や非金属元素であってもよい。また、xは、0.9≦x≦1.2であり得る。tは、0<tであり得る。uは、0≦uであり得る。ここで、tおよびuは、t+u<2(典型的にはt+u≦1)を満たす数であり得る。dは、−0.2≦d≦0.2であって電荷中性条件を満たすように定まる値である。好ましい一態様では、tは、0.2≦t≦1.0(より好ましくは0.4≦t≦0.6、さらに好ましくは0.4≦t≦0.55、例えば0.45≦t≦0.55)であり;uは、0≦u<1.0(例えば0≦u≦0.3)である。一般式(F2)で表されるリチウムニッケルマンガン酸化物の具体例としては、LiNi0.5Mn1.5O4等が挙げられる。
上記FT−LNMスピネルは、FeおよびTiの両方を含むものであればよく、FeとTiとの原子数比は特に限定されない。通常は、FeとTiとの原子数比(Fe:Ti)が1:10〜10:1であるFT−LNMスピネルが好ましく、より好ましくは1:5〜5:1(例えば1:3〜3:1、典型的には1:2〜2:1)である。
Lix(NiαMnβMγ)O4+d (F3)
ここで、上記一般式(F3)中のxは、0.90≦x≦1.2(例えば1.0≦x≦1.1)であり得る。αは、0<α≦0.5(典型的には0.3≦α≦0.5、好ましくは0.4≦α≦0.5)であり得る。βは、0<β≦1.6(典型的には1.3≦β≦1.6、好ましくは1.4≦β≦1.6、例えば1.4≦β≦1.5)であり得る。Mは、少なくともFeおよびTiを含み、かつNiおよびMn以外の任意の元素(典型的には金属元素)であり得る。γは、0<γ≦0.5(典型的には0<γ≦0.4、好ましくは0.005<γ≦0.3、例えば0.01<γ≦0.2である。通常は、α+β+γが2または概ね2(例えば、1.9〜2.1)である。dは、−0.2≦d≦0.2(好ましくは−0.15≦d≦0.1)であって、電荷中性条件を満たすように定まる値である。このような基本組成を有する正極活物質粒子は、より耐久性の良い非水電解質二次電池を実現し得るので好ましい。
Lix(Ni0.5−aFePMn1.5−bTiQM0 R)O4+d (1)
ここで、上記一般式(1)中のxは、0.90≦x≦1.2(例えば1.0≦x≦1.1)であり得る。aは、0≦a(典型的には0≦a≦0.2、好ましくは0≦a≦0.1、例えば0.01≦a≦0.08)であり得る。bは、−0.1≦b(典型的には−0.1≦b≦0.2、好ましくは0≦b≦0.1、例えば0.01≦b≦0.08)であり得る。Pは、0<P≦0.1(典型的には0.005≦P≦0.1、好ましくは0.01≦P≦0.08、例えば0.02≦P≦0.07)であり得る。Qは、0<Q≦0.1(典型的には0.005≦Q≦0.1、好ましくは0.01≦Q≦0.08、例えば0.02≦Q≦0.07)であり得る。M0は、Ni,Mn,Fe,Ti以外の任意の元素(典型的には金属元素)であり得る。Rは、0≦R(典型的には0≦R<0.1、好ましくは0≦R<0.05、例えば0≦R<0.02)であり得る。ここで、a+b=P+Q+Rである。dは、−0.2≦d≦0.2(好ましくは−0.15≦d≦0.1)であって、電荷中性条件を満たすように定まる値である。このような基本組成を有する正極活物質粒子は、より耐久性の良い非水電解質二次電池を実現し得るので好ましい。
Li(Ni0.5−aFePMn1.5−bTiQ)O4 (2)
上記一般式(2)中のaは、0≦a(典型的には0≦a≦0.2、好ましくは0≦a≦0.1、例えば0.01≦a≦0.08)であり得る。bは、−0.1≦b(典型的には−0.1≦b≦0.2、好ましくは0≦b≦0.1、例えば0.01≦b≦0.08)であり得る。Pは、0.01≦P≦0.1(好ましくは0.01≦P≦0.08、例えば0.02≦P≦0.07)であり得る。Qは、0.01≦Q≦0.1(好ましくは0.01≦Q≦0.08、例えば0.02≦Q≦0.07)であり得る。ここで、a+b=P+Qである。このような基本組成を有する正極活物質粒子は、特に耐久性の良い非水電解質二次電池を実現し得るので好ましい。
(A)一般式:LiMPO4で表わされる、ポリアニオンを有するオリビン型のリチウム遷移金属化合物(リン酸塩)。ここで、Mは、Mn,Fe,Ni,Co等の遷移金属元素の少なくとも一種を含み、他の金属元素または非金属元素をさらに含み得る。具体例としては、LiMnPO4,LiFePO4等が挙げられる。
(B)一般式:Li2MPO4Fで表わされる、フッ化オリビン型のリチウム遷移金属化合物(リン酸塩)。ここで、Mは、Mn,Ni,Co等の遷移金属元素の少なくとも一種を含み、他の金属元素または非金属元素をさらに含み得る。具体例としては、LiMnPO4F等が挙げられる。
(C)一般式:Li2MSiO4で表わされる、ケイ酸塩型のリチウム遷移金属化合物。ここで、Mは、Mn,Fe,Ni,Co等の遷移金属元素の少なくとも一種を含み、他の金属元素または非金属元素をさらに含み得る。具体例としては、Li2FeSiO4等が挙げられる。
ここに開示される正極活物質粒子の製造方法は、特に限定されない。例えば、公知の方法により製造されたLNMスピネル粒子等を用いることができる。原料としては、適当なLi源(LiまたはLiを含む化合物。例えば水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等)、Mn源(MnまたはMnを含む化合物。例えば二酸化マンガン、炭酸マンガン等)、Ni源(NiまたはNiを含む化合物。例えば水酸化ニッケル)等を用いることができる。好ましい一態様では、このようなLi源、Mn源、Ni源および目的物(すなわちLNMスピネル粒子)の組成により必要に応じて用いられる他の金属源を、該目的物の組成に応じた比率で混合し、その混合物を酸化性雰囲気中で焼成する。その焼成物に、必要に応じて解砕、篩分け等の処理を適用することにより、所望する性状のLNMスピネル粒子を調製することができる。
ここに開示される技術において使用し得る被膜形成剤としては、ポリビニルアセタールおよびその誘導体、ポリオキシアルキレンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸およびその誘導体、等が挙げられる。このような被膜形成剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。エーテル基(C−O−C)およびカルボニル基(C=O)の一方または両方を比較的多く含むポリマーの使用が好ましい。好適例として、分子内にエーテル基(C−O−C)およびカルボニル基(C=O)の一方または両方を少なくとも一つ有するモノマーユニットの割合が30質量%以上(典型的には30〜100質量%、より好ましくは50質量%〜100質量%、例えば60〜100質量%)である被膜形成剤が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびその誘導体の例としては、ポリオキシエチレンノルマルデシルエーテル、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノルマルトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン分岐トリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン分岐デシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルの硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等)、リン酸塩、リン酸エステル、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、スルホコハク酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩)、アミン(例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル誘導体;が挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの例としては、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル等が挙げられる。
正極合材層全体の質量に占める被膜形成剤の割合は、例えば0.05〜2質量%とすることができ、通常は0.1〜1質量%(典型的には0.15〜0.8質量%、例えば0.2〜0.7質量%)とすることが好ましい。ここに開示される技術は、上述した正極合材層の表面積1m2当たりの被膜形成剤量と、正極合材層に含まれる導電材100質量部当たりの被膜形成剤量との一方または両方(好ましくは両方)に加えて、正極合材層全体の質量に占める被膜形成剤の割合が上記範囲となる態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される技術の一態様に係る正極は、上述のような正極活物質粒子および被膜形成剤とを含む正極合材層と、その正極合材層を支持する正極集電体とを含む。正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられる。集電体の形状は、構築される電池の形状等に応じて異なり得るため特に限定されず、例えば棒状、板状、箔状、網状等の形状であり得る。捲回電極体を備えた電池では、箔状(シート状)の集電体が好ましく用いられる。かかるシート状集電体の厚みは特に限定されない。電池の容量密度と集電体の強度との兼ね合いから、通常は、5μm〜50μm(より好ましくは8μm〜30μm)程度のシート状集電体(例えばアルミニウム箔)を好ましく用いることができる。
ここで開示される非水電解質二次電池の負極は、負極活物質を含んで構成されている。好ましい一態様に係る負極は、上記負極活物質を含む負極合材層と、その負極合材層を支持する負極集電体とを含む。負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性材料が好ましく用いられる。また負極集電体の形状は、正極集電体と同様であり得る。捲回電極体を備えた電池では、箔状(シート状)の集電体が好ましく用いられる。例えば、厚み5μm〜50μm(より好ましくは8μm〜30μm)程度のシート状集電体(例えば銅箔)を好ましく用いることができる。
上記作製した正極と負極とを積層し、電極体を作製する。ここで開示される非水電解質二次電池の典型的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。このセパレータとしては、一般的な非水電解質二次電池用(例えば、リチウムイオン二次電池用)のセパレータと同様のものを特に限定なく用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート、不織布等を用いることができる。好適例として、1種または2種以上のポリオレフィン樹脂を主体に構成された単層または多層構造の多孔性シート(微多孔質樹脂シート)が挙げられる。例えば、PEシート、PPシート、PE層の両側にPP層が積層された三層構造(PP/PE/PP構造)のシート等を好適に使用し得る。セパレータの厚みは、例えば、凡そ10μm〜40μmの範囲内で設定することが好ましい。
特に限定するものではないが、上記正極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該正極活物質の質量(g)との積で算出される正極容量(Cc(mAh))と、上記負極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該負極活物質の質量(g)との積で算出される負極容量(Ca(mAh))と、の比(Ca/Cc)は、通常、例えば1.0〜2.0とすることが適当であり、1.2〜1.9(例えば1.3〜1.8)とすることが好ましい。対向する正極容量と負極容量の割合は、電池容量(または不可逆容量)やエネルギー密度に直接的に影響し、電池の使用条件等(例えば急速充電)によってはリチウムの析出を招き易くなる。対向する正負極の容量比を上記範囲とすることで、電池容量やエネルギー密度等の電池特性を良好に維持しつつ、リチウムの析出を好適に抑制することができる。
ここに開示される技術における非水電解質としては、非水溶媒中に支持塩(支持電解質)を含む電解液を好ましく採用し得る。
ここに開示される技術は、フッ素を含むリチウム塩を支持塩として含む電解液を備えた非水電解質二次電池に好ましく適用され得る。かかる組成の電解液は、酸化分解された場合にフッ化水素(HF)を生じやすい。したがって、ここに開示される技術を適用して正極活物質からの遷移金属の溶出を抑制することが特に有意義である。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記非水電解質がフッ素含有非水溶媒を含む。かかる組成の非水電解質(フッ素含有リチウム塩とフッ素含有非水溶媒とを含む非水電解質であり得る。)は、酸化分解によりフッ化水素(HF)を生じやすい。このフッ化水素は、正極活物質(例えば、スピネル型リチウムニッケルマンガン酸化物)に含まれる遷移金属元素の溶出を加速する要因となり得る。したがって、ここに開示される技術を適用して上記溶出を抑制することが特に有意義である。
好ましい一態様に係る非水電解質は、上記フッ素含有非水溶媒として、1種または2種以上のフッ素化カーボネート(フッ素化環状カーボネートおよびフッ素化鎖状カーボネートのいずれをも好ましく使用可能である。)を含有する。通常は、1分子内に1個のカーボネート構造を有するフッ素化カーボネートの使用が好ましい。かかるフッ素化カーボネートのフッ素置換率は、通常、10%以上が適当であり、例えば20%以上(典型的には20%以上100%以下、例えば20%以上80%以下)であり得る。フッ素置換率30%以上(典型的には30%以上100%以下、例えば30%以上70%以下)のフッ素化カーボネートを含む電解液によると、より高い酸化電位(高い耐酸化性)を実現し得る。
ここで開示される技術における非水電解質の好適例として、上記フッ素含有非水溶媒として少なくとも1種のフッ素化環状カーボネートを含む組成の電解液が挙げられる。上記電解液から支持塩を除いた全成分(以下「支持塩以外成分」ともいう。)のうち、上記フッ素化環状カーボネートの量は、例えば5質量%以上とすることができ、通常は10質量%以上が適当であり、20質量%以上(例えば30質量%以上)が好ましい。上記支持塩以外成分の実質的に100質量%(典型的には99質量%以上)がフッ素化環状カーボネートであってもよい。通常は、電解液の低粘度化、イオン伝導性の向上等の観点から、上記支持塩以外成分のうちフッ素化環状カーボネートの量を90質量%以下とすることが適当であり、80質量%以下(例えば70質量%以下)とすることが好ましい。なお、上記フッ素化環状カーボネートの量とは、上記電解液が2種以上のフッ素化環状カーボネートを含む場合には、それらの合計量を指す。
ここで開示される技術における非水電解質は、上記フッ素含有非水溶媒として、上述のようなフッ素化環状カーボネートに代えて、あるいは該フッ素化環状カーボネートに加えて、例えば、以下の式(C2)で表わされるフッ素鎖状カーボネートを用いることができる。
電解液の還元電位(vs.Li/Li+)は、以下の方法で測定することができる。ま、作用極(WE)としてのグラッシーカーボンと、対極(CE)としての金属リチウムと、参照極(RE)としての金属リチウムと、測定対象たる電解液とを用いて三極式セルを作成し、リニアスイープボルタンメトリー(Linear Sweep Voltammetry)の測定を行う。具体的には、温度20℃において、作用極の電位を、セル作成後の開回路電圧(OCV)から0.05Vに至るまで掃引する。掃引速度は1mV/秒とする。測定結果の電流Iおよび電位Vから微分値dI/dVを算出する。このdI/dVを縦軸とし、電位Vを横軸としてグラフを作成する。このグラフにおいて、測定開始から最初に現れたdI/dVのピークに対応する電位Vを還元電位(還元分解電位)とする。例えば後述する実施例で用いた電解液(MFEC:TFDMCの体積比1:1の混合溶媒中に、LiPF6を1mol/Lの濃度で含む非水電解質)の還元電位は、凡そ1.9V(vs.Li/Li+)である。
電池ケースとしては、従来から非水電解質二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。該ケースの材質としては、例えば、アルミニウム、スチール等の金属材料;ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料;が挙げられる。なかでも、放熱性向上やエネルギー密度を高める目的から、比較的軽量な金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく採用し得る。また、該ケースの形状(容器の外形)は、例えば、円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(直方体形、立方体形)、袋体形、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。
かかる構成の非水電解質二次電池100は、例えば、ケース50の開口部から電極体80を内部に収容し、該ケース50の開口部に蓋体54を取り付けた後、蓋体54に設けられた図示しない電解液注入孔から電解液90を注入し、次いで該注入孔を塞ぐことによって構築することができる。
以下の材料を使用してリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質粒子:組成式LiNi0.5Mn1.5O4で表されるスピネル構造のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子。平均粒径6μm、BET比表面積0.7m2/g。
導電材:アセチレンブラック。
被膜形成剤A:積水化学工業株式会社から入手可能なポリビニルアセタール。商品名「エスレック(登録商標)KS−10」。計算分子量約1.7×104、水酸基約25モル%、アセタール化度74±3、ガラス転移温度106℃、粘度10〜30mPa・s(エタノール:トルエン=1:1の混合溶媒、10%濃度溶液、BM型回転粘度計により測定、測定温度20℃)。
被膜形成剤B:積水化学工業株式会社から入手可能なポリビニルブチラール。商品名「エスレック(登録商標)BL−1」。計算分子量約1.9×104、水酸基約36モル%、ブチラール化度63±3、ガラス転移温度66℃、粘度10〜30mPa・s(エタノール:トルエン=1:1の混合溶媒、10%濃度溶液、BM型回転粘度計により測定、測定温度20℃)。
被膜形成剤C:1,3−プロパンスルトン。
(サンプルA1)
上記正極活物質粒子と、上記導電材と、バインダとしてのPVdFと、上記被膜形成剤Aとを、正極活物質粒子:導電材:バインダ:被膜形成剤Aの質量比が85:10:5:0.25となるようにNMPと混合して、スラリー状の組成物(正極スラリー)を調製した。
この正極スラリーを厚さ15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の片面に塗付し、乾燥させて正極合材層を形成した。この正極合材層付き集電体をロールプレスして上記正極合材層の密度を2.3g/cm3に調整し、所定の長方形状に切り出した。このようにして、理論容量(設計容量)CCが60mAhの正極シートを得た。なお、上記正極合材層は、該正極合材層1cm2当たりのBET比表面積が0.020m2であった。
この電極体と非水電解液E0とを適当なサイズのラミネートフィルム製電池ケースに収容し、封止して、サンプルA1に係るリチウムイオン二次電池を構築した。なお、上記正極シートおよび上記負極シートには、上記電池ケースの外部まで引き出された正極端子および負極端子がそれぞれ設けられている。
正極スラリーの調製において、正極活物質粒子:導電材:バインダ:被膜形成剤Aの質量比を85:10:5:0.50とした点以外はサンプルA1と同様にして、サンプルA2に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
被膜形成剤Aを使用しない点以外はサンプルA1と同様にして、サンプルA0に係るリチウムイオン二次電池を構築した。すなわち、サンプルA0に係るリチウムイオン二次電池は、被膜形成剤A〜Cのいずれをも用いることなく構築されたものである。
被膜形成剤Aに代えて上記被膜形成剤Bを使用した点以外はサンプルA1と同様にして、サンプルB1に係るリチウムイオン二次電池を構築した。すなわち、正極スラリーの調製において、正極活物質粒子:導電材:バインダ:被膜形成剤Bの質量比を85:10:5:0.25とした。
被膜形成剤Aに代えて被膜形成剤Bを使用した点以外はサンプルA2と同様にして、サンプルB1に係るリチウムイオン二次電池を構築した。すなわち、正極スラリーの調製において、正極活物質粒子:導電材:バインダ:被膜形成剤Bの質量比を85:10:5:0.50とした。
上記非水電解液E0(すなわち、MFEC:TFDMCの体積比1:1混合溶媒中に1mol/LのLiPF6を含む電解液)に上記被膜形成剤Cを添加して混合することにより、該被膜形成剤Cを0.5mol/Lの濃度で含む非水電解液E1を調製した。
非水電解液E0に代えて非水電解液E1を用いた点以外はサンプルA0と同様にして、サンプルC1に係るリチウムイオン二次電池を構築した。このリチウムイオン二次電池C1の構築に用いられた非水電解液E2に含まれる被膜形成剤Cの総量は、該リチウムイオン二次電池C1の有する正極合材層の表面積1m2当たり94.5mgに相当し、該正極合材層に含まれる導電材100部当たり400部に相当する。
被膜形成剤Cの濃度が非水電解液E1の1.5倍である非水電解液E2を調製した。この非水電解液E2を用いた点以外はサンプルC1と同様にして、サンプルC2に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
被膜形成剤Cの濃度が非水電解液E1の2.25倍である非水電解液E3を調製した。この非水電解液E3を用いた点以外はサンプルC1と同様にして、サンプルC3に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
上記で構築した各電池に対し、温度25℃にて、各例に係る電池に対し、以下の充放電パターンを3サイクル繰り返してコンディショニング処理を行った。
(1)1/3Cのレートで4.9Vまで定電流(CC)充電した後、10分間休止する。
(2)1/3Cのレートで3.5VまでCC放電した後、10分間休止する。
(初期容量)
上記コンディショニング処理後の各電池の初期容量を、以下の手順で測定した。測定は温度25℃にて行った。
(1)1/3Cのレートで4.9Vまで定電流(CC)充電した後、10分間休止する。
(2)1/3Cのレートで3.5VまでCC放電する。このときの放電容量を初期容量(初期放電容量)とする。
上記初期容量測定後の各電池を、温度25℃にて、1/3Cのレートで4.9Vまで定電流(CC)充電した後、電流値が1/30Cになるまで定電圧(CV)で充電して、SOC100%に調製した。この充電後の電池を60℃の温度条件下に3日間保存した。
上記保存後の各電池を、温度25℃にて、1/3Cのレートで3.5VまでCC放電し、このときの放電容量(保存試験後容量)を測定した。各電池の初期容量を100%として、その初期容量に対する保存試験後容量の割合を、次式:残存容量比(%)=(保存試験後容量/初期容量)×100;により算出した。さらに、被膜形成剤を使用することなく製造されたリチウムイオン電池A0の残存容量比を100%として、各電池の残存容量比の相対値を算出した。
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極合材層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極合材層
40 セパレータシート(セパレータ)
50 電池ケース
52 電池ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
90 電解液(非水電解質)
100 非水電解質二次電池
Claims (8)
- 正極と負極と非水電解質とを備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極の作動上限電位が金属リチウム基準で4.5V以上であり、
前記正極は、正極活物質粒子と被膜形成剤とを含む正極合材層を備え、
前記正極活物質粒子は、前記被膜形成剤に由来する被膜をその表面に有し、
前記被膜形成剤は、ポリビニルアセタール、ポリオキシアルキレン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそれらの誘導体から選択される1種または2種以上を含み、
前記正極合材層における前記被膜形成剤の含有量は、該正極合材層の表面積1m2当たり0.25mg〜2.5mgである、非水電解質二次電池。 - 正極と負極と非水電解質とを備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極の作動上限電位が金属リチウム基準で4.5V以上であり、
前記正極は、正極活物質粒子と導電材と被膜形成剤とを含む正極合材層を備え、
前記正極活物質粒子は、前記被膜形成剤に由来する被膜をその表面に有し、
前記被膜形成剤は、ポリビニルアセタール、ポリオキシアルキレン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそれらの誘導体から選択される1種または2種以上を含み、
前記正極合材層における前記被膜形成剤の含有量は、前記導電材100質量部に対して2〜6質量部である、非水電解質二次電池。 - 前記被膜形成剤はポリビニルアセタールである、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
- 前記正極活物質粒子は、スピネル構造のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池。
- 正極の作動上限電位が金属リチウム基準で4.5V以上である非水電解質二次電池を製造する方法であって:
正極活物質粒子と被膜形成剤と有機溶媒とを含む正極スラリーを調製する工程;
前記正極スラリーから前記有機溶媒を除去して正極合材層を形成することにより、該正極合材層を備えた前記正極を得る工程;および、
前記正極と負極と非水電解質とを用いて非水電解質二次電池を構築する工程;
を包含し、
前記被膜形成剤は、ポリビニルアセタール、ポリオキシアルキレン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそれらの誘導体から選択される1種または2種以上を含み、
前記正極スラリーは、前記正極合材層の表面積1m2当たり前記被膜形成剤0.25mg〜2.5mgを含む、非水電解質二次電池製造方法。 - 正極の作動上限電位が金属リチウム基準で4.5V以上である非水電解質二次電池を製造する方法であって:
正極活物質粒子と被膜形成剤と導電材と有機溶媒とを含む正極スラリーを調製する工程;
前記正極スラリーから前記有機溶媒を除去して正極合材層を形成することにより、該正極合材層を備えた前記正極を得る工程;および、
前記正極と負極と非水電解質とを用いて非水電解質二次電池を構築する工程;
を包含し、
前記被膜形成剤は、ポリビニルアセタール、ポリオキシアルキレン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそれらの誘導体から選択される1種または2種以上を含み、
前記正極スラリーは、前記導電材100質量部に対して前記被膜形成剤2〜6質量部を含む、非水電解質二次電池製造方法。 - 前記被膜形成剤はポリビニルアセタールである、請求項5または6に記載の非水電解質二次電池製造方法。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池を備えた、車両。
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